説明

トランスミッション制御クラッチ用の較正方法

【課題】異なったトランスミッションに対する寄生抗力の変動に影響されずに、パワーシフト・トランスミッション用比例制御バルブの制御のために主要なパラメータを較正する方法を提供する。
【解決手段】トランスミッションの摩擦特性によるクラッチ構成要素の速度変化を表す寄生抗力時間値Tpara_dを決定(498)し、寄生抗力時間値から目標速度変化値target_decelを算出(500)し、目標速度変化値からクラッチ較正値を導出することによって、パワーシフト・トランスミッションの液圧作動式クラッチ素子が有する保持圧力を較正する。

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、トランスミッション制御システムに関し、更に特定すれば、トランスミッション制御クラッチの動作および制御に関する主要なパラメータを決定する較正方法に関するものである。
【従来の技術】
【0002】
数々の比例制御バルブを含む電気液圧式トランスミッション制御機器が、これまで製造業者によって用いられてきた。このような比例制御バルブを有するシステムでは、係合の間のクラッチのトルク容量を精度高く制御することが可能であり、かつ望ましい。制御バルブに供給する電気コマンドは非常に精度高くすることができるが、バルブおよびトランスミッションにおける製造許容度が、実際の車両には大きなばらつきを生ずる原因となる。クラッチにトルクを搬送し始めさせる初期クラッチ係合圧力に対応するのはどの電気コマンドであるのかがわかれば、このコマンドを用いて、シフト動作の間に当該クラッチへのシフト・コマンドを変更し、最適な制御を得ることが可能である。例えば、1989年8月8日付でブレッケストランその他(Brekkestran et al.)に発行された米国特許第4,855,913号は、制御システムにおける主要パラメータが、初期クラッチ係合圧力(DC−MAXで表す)および高速充填クラッチ遅延(T1で表す)を含むことを開示している。このブレッケストランの文献は、更に、DC−MAXおよびT1は研究室または現場試験によって決定しなければならないことも述べている。しかしながら、ブレッケストランの文献は、これらの値を決定する方法については何も開示していない。
【0003】
マイクロプロセッサをベースとするトランスミッション制御システムにおける較正方法、即ち、クラッチの係合を行うために必要な圧力を決定する方法が、1991年2月5日付でブルグリアン(Bulgrien)に発行された米国特許第4,989,471号に記載されている。ブルグリアンの方法は、トランスミッションの出力シャフトを制動し、次いでクラッチ圧力を徐々に増大させて行き、エンジン速度が減速し始めるクラッチ圧力に対応する値をセーブすることを含んでいる。しかしながら、この方法は、車両のブレーキ使用による回転に対する抵抗を拠り所として、トランスミッション出力シャフトの回転を防止する。このような手順は、車両のブレーキをかけない場合またはブレーキが故障した場合、危険な状態を招く可能性がある。何故なら、その場合較正の間に望ましくない車両の動きが生じ得るからである。また、ブルグリアン特許は、クラッチが十分なトルクを伝達し車両を動かすときを検知することによって、クラッチを較正する代替方法も示している。この代替方法では、車両の動きが安全上の懸念とならない場所に車両を配置すること、および車両を置いた地面に応じてこのような方法の結果が様々に変化することを要件とする。また、ブルグリアン特許は、エンジン速度の変動検知にも依存するので、エンジンおよびエンジン・ガバナの変動に影響され易い。
【0004】
1992年1月21日付でゲックナーその他(Goeckner et al)に発行された米国特許第5,082,097号は、較正システム、即ち、クラッチがトルクを伝達し始める点に対応する電流信号を決定するシステムを開示している。このシステムは、車両の動きまたはエンジン速度のドループを検知する必要があり、そのためエンジン速度の変動検知に依存し、したがってエンジンおよびエンジン・ガバナの変動に影響され易い。即ち、危険を伴う可能性がある車両の動きを必要とする。
【0005】
他の較正方法が、1993年6月7日付でファルクその他(Falck et al)に発行され、本願の譲受人に譲渡された米国特許第5,224,577号に記載されている。この方法もエンジン速度のドループ検出を伴い、したがってエンジンおよびエンジン・ガバナの変動に影響され易い。
【0006】
更に他の較正方法が、1994年8月16日付でテスターマン(Testerman)に発行され、本願の譲受人に譲渡された米国特許第5,337,871号に開示されている。しかしながら、この方法は高価な圧力センサを必要とし、しかも圧力センサは回転速度センサ程精度や信頼性が高くない。
【0007】
他の較正方法が、1997年2月8日に出願され、本願の譲受人に譲渡された米国特許出願第08/800,431号に開示されている。この方法では、保持圧力を決定するために用いる目標減速時間を、多数の試験用トランスミッションによって得られる測定値に基づく平均として経験的に決定しなければならない。しかしながら、製品のトランスミッション(production transmission)の寄生抗力(parasitic drag)が、試験用トランスミッションのそれと大幅に異なる場合、その結果発生する較正対象のクラッチの保持圧力によって生成されるトルクは、所望のトルクとは異なるものとなる。したがって、各クラッチ毎の保持圧力を決定する前に、各トランスミッション毎に寄生抗力時間を測定し、次いで実際の寄生抗力時間を用いて、所与の保持トルクを生成するために必要な目標の減速時間を算出することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、パワーシフト・トランスミッション用比例制御バルブの制御のために主要なパラメータを較正または決定する方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、異なるトランスミッションに対する寄生抗力の変動に影響されない、このような方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらおよびその他の目的は、本発明において、寄生抗力時間を測定し、測定した寄生抗力時間を用いて、所与の保持トルクを生成するために必要な目標減速時間を算出し、次いで各クラッチ毎の保持圧力を決定することによって達成する。
【発明の実施の形態】
【0011】
図1に示すように、車両パワー・トレインは、入力シャフト13を介してパワーシフト・トランスミッション12を駆動するエンジン10を含む。一方、パワーシフト・トランスミッション12は、出力シャフト14および差動装置(differential)を介して、車輪16を駆動する。パワーシフト・トランスミッション12は、1組の電気液圧バルブ18によって動作するようにしてあり、これらの電気液圧バルブ18は、マイクロプロセッサをベースとするトランスミッション・コントローラ20からの信号で制御する。トランスミッション12は、Funk Manufacturing Inc.(ファンク・マニュファクチュアリング社)が製造するDF150またはDF250パワーシフト・トランスミッションのようなトランスミッションとすればよいが、本発明はその他のパワーシフト・トランスミッションにも同様に適用可能である。
【0012】
トランスミッション・コントローラ20は、ディスプレイ22、およびギアシフト・スイッチ/エンコーダ・ユニット26を介してギアシフト・レバー24に接続してある。ギアシフト・スイッチ/エンコーダ・ユニット26としては、ファンク・マニュファクチュアリング社から商業的に入手可能であり、その製品であるDF150およびDF250パワーシフト・トランスミッションと共に用いるものがある。また、トランスミッション・コントローラ20は、電気ジャンパ28にも接続してある。磁気ピックアップ回転速度センサ30,32,34,36が、回転速度信号をコントローラ30に供給する。これについては、以下で更に詳しく説明する。
【0013】
トランスミッション制御ユニット20は、商業的に入手可能なマイクロプロセッサ(図示せず)を含み、ジャンパ28の接続に応答して、以下に記載する較正方法の動作を実現するコンピュータ・プログラムを実行する。また、トランスミッション制御ユニット20は、バルブ駆動部(図示せず)も含み、可変デューティ比のパルス幅変調電圧制御信号をバルブ18に供給する。トランスミッション制御ユニット20およびバルブ駆動部(図示せず)は、このような制御信号を、種々の検知入力およびオペレータが決定した入力の関数として発生し、クラッチにおける所望の圧力を得ると共に、これによって望ましい方法でトランスミッション12のシフト動作を制御可能とする。しかしながら、本発明はある種のパラメータの較正のみに関するのであり、本発明は、トランスミッション12のシフト動作、トランスミッション12自体、あるいはバルブ18の制御を対象とするものではない。本発明の方法は、制御ユニット20がコンピュータ・プログラムを実行することによって実現する。このプログラムは、図4ないし図6に示すアルゴリズムおよび図8ないし図10に示すアルゴリズムに関係する部分を含む。コンピュータ・プログラムのその他の面に関する更なる情報は、米国特許出願番号第08/800,431号に含めてある。その内容は、この言及により本願にも含まれるものとする。
【0014】
図2を参照すると、図示のトランスミッションは、6つのクラッチ55,60,65,69,74,79を有する。入力シャフト13を、ギア53,58と噛み合ったギア52に取り付けてある。クラッチ55が完全な係合状態にある場合、シャフト54,56は同一速度で回転する。クラッチ60が完全な係合状態にある場合、シャフト59および61は同一速度で回転する。シャフト64,56,61,87は、それぞれ、ギア63,57,62,68に接続する。クラッチ65が係合状態にある場合、シャフト64,66は同一速度で回転する。クラッチ69が係合状態にある場合、シャフト87,88は同一速度で回転する。クラッチ74が係合状態にある場合、シャフト73,75は同一速度で回転する。クラッチ79が係合状態にある場合、シャフト78,80は同一速度で回転する。入力シャフト13から出力シャフト84にパワーを伝達するためには、3つのクラッチを係合する必要がある。即ち、55または60のいずれか、および65または69のいずれか、および74または79のいずれかである。ギア63,57,62,68は、ギア67,72,77,70と同様に、常に噛み合っている。
【0015】
磁気ピックアップ速度センサ30は、出力速度を監視する。磁気ピックアップ速度センサ32は、ギア70の速度を監視し、更にギア67,72,77について算出した速度を与える。磁気ピックアップ速度センサ34は、入力速度を監視する。磁気ピックアップ速度センサ36は、ギア68の速度を監視し、更にギア62,57,63について算出した速度を与える。ギア76はシャフト75に接続してあり、ギア81はシャフト80に接続してある。ギア76,81,83は全て噛み合って、シャフト84においてパワー出力を与える。クラッチ55,60,65,69,74,79の各々は、電気液圧バルブ18から供給する液圧によって活性化(係合)する。
較正方法(保持圧力−減速)
次に、図3および図4ないし図6を参照する。これらの図に示す較正方法は、全てのクラッチについて保持圧力を決定するために用いることができる。自動較正手順は、較正ジャンパ28をトランスミッション・コントローラ20に接続することによってイネーブルする。図3には示していないが、コントローラは連続的にチェックして、パーキング・ブレーキ(図示せず)をかけてあること、オイル温度が69Fより高いこと、エンジンが約1500rpmの速度で回転していること、および持続出力シャフト速度が検出可能でないことを保証する。これらのチェックのいずれかが偽であると判定した場合、ルーチンを中断する。一旦較正ジャンパ28を差し込み、エンジン速度およびパーキング・ブレーキを設定したなら、シフト・レバー24をそのニュートラルからその前進位置に動かし、較正プロセスを起動する。表1は、全てのクラッチについて保持圧力を決定するためのクラッチの組み合わせをまとめたものである。
【0016】
【表1】

【0017】
これより、クラッチ55の較正について、この較正方法を説明する。クラッチ1をクラッチ60,クラッチ2をクラッチ65とし、ギア68の速度を磁気ピックアップ36によって検出することとする。ステップ495において、クラッチ60,65を完全に係合する。ステップ496において、速度センサ36をチェックし、ギア68の適正な速度が500ミリ秒(ms)の間持続しているか否かについて検査する。一旦このギア速度が500ms間持続したなら、ステップ497においてクラッチ60を解放する。次に、ステップ498において、関与するトランスミッション構成要素の寄生抗力によりギア68の回転速度が所定量だけ減少するために必要な時間量Tpara_dを決定する。ステップ499は、ステップ495〜498を少なくとも3回、更に最後の3回に測定したTpara_d時間が互いに5%の範囲内となるまで繰り返させる。次に、ステップ500において、最後の3回のTpara_d減速時間の平均および以下の式を用いて、目標の減速時間値(target_decel)を算出する。
【0018】
【数1】

【0019】
ここで、low_rpmは、減速時間を測定するために用いる、約200rpmの低速カット・オフであり、engine cal_spdは、約1600rpmであり、x_rpmは約150rpm(engine cal_spdおよびx_rpmの双方は、較正対象の特定形式のトランスミッションに対して選択したリセット値である)、Thは、較正対象クラッチの所望の保持トルクであり、Iは、トランスミッションの特性から算出した、較正対象クラッチの下流にある回転部品の慣性であり、Tpara_dは、ステップ500で決定した、寄生抗力減速時間である。
【0020】
ステップ501において、初期保持圧力、例えば、30psiをクラッチ55に加える。ステップ502において、クラッチ60,65を完全に係合し、これによってクラッチ55の入力素子および出力素子双方を回転させる。ステップ503において、速度センサ36をチェックし、ギア68の適正速度が500ミリ秒(ms)の間持続しているか否かについて検査を行う。一旦このギア速度が500ms間持続したなら、ステップ504においてクラッチ60を解放する。
【0021】
ギア68に接続してあるギアおよびシャフトの回転速度は、摩擦のため、およびクラッチ55の係合状態が最大未満であるために、減速し始める。ステップ505において、ギア68の回転速度がある量だけ減少するのに必要な時間量(減速時間)を決定する。ステップ505において、測定した減速時間が、算出し格納してある目標減速時間(target_decel)未満である場合、ステップ506において、ステップ501〜504を繰り返させる。ステップ507において、減速時間を再度測定する場合、および未だtarget_decel未満である場合、ステップ508において、ディスプレイ22に適切なエラー・メッセージを表示させ、更にステップ509において、ルーチンに別のクラッチの保持圧力を決定させる。
【0022】
ステップ505または507において、測定減速時間がtarget_decel未満でない場合、ルーチンはステップ510に進み、保持圧力を1増分単位(increment)だけ増分する。ステップ511において、保持圧力が最大許容保持圧力以上か否か検査するためにチェックを行う。最大許容保持圧力以上である場合、ステップ512においてエラー・メッセージを表示し、ステップ513において、ルーチンに別のクラッチの保持圧力を決定させる。そうでない場合、ステップ511において、アルゴリズムをステップ514に進ませ、クラッチ60を再度係合するため、クラッチ55(シャフト56およびギア57)の出力は再び急速に回転することになる。次に、ステップ515で再度、所定のギア速度が500ms間持続したことをチェックし、次いで、ステップ516において、クラッチ60を解放する。ステップ517において、再度、減速時間をtarget_decel時間と比較する。減速時間の方が大きい場合、ルーチンはステップ510に進み、保持圧力を増分する。
【0023】
最終的に、クラッチ55に加えた圧力が保持圧力値に達したとき、クラッチ55は係合し始め、トルクをシャフト56およびギア57に伝達し、ギア57の回転を減速させようとし、更に、クラッチ60の係合によって生ずる回転とは反対の方向にギア57を回転させようとする。これが発生すると、ステップ517において、測定した減速時間はtarget_decel時間未満となり、ステップ518において保持圧力を格納する。ステップ519では、較正対象の他のクラッチのために、ステップ510ないし518を繰り返す。このように、エンジン速度のドループを検知することなく、しかも車両の動きを生ずることもなく、内部トランスミッション構成要素−ギア68の回転速度を検知することによって保持圧力を判定する。
保持圧力−加速
図7、図8および図9は、別の較正方法を示し、ここでは、トランスミッション12の内部構成要素の加速度を測定することによって、保持圧力を決定する。この特定のトランスミッションでは、74および79を除く全てのクラッチにこの方法を適用すればよい。表2は、クラッチ55,60,65,69について保持圧力を決定するためのクラッチの組み合わせを纏めたものである。
【0024】
【表2】

【0025】
これより、クラッチ55の較正について、図8,図9および図10を説明する。クラッチ1をクラッチ74とし、クラッチ2をクラッチ65とし、ギア68の速度を磁気ピックアップ36によって検知することとする。ステップ595において、クラッチ74,65を完全に係合する。ステップ596において、速度センサ36をチェックし、ギア68の適正な速度が500ミリ秒(ms)間持続しているか否かについて検査する。一旦このギア速度が500ms間持続したなら、ステップ597においてクラッチ74を解放する。次に、ステップ598において、関与するトランスミッション構成要素の寄生抗力によりギア68の回転速度が所定量だけ増大するために必要な時間量Tpara_aを決定する。ステップ599において、ステップ595〜598を少なくとも3回、更に最後の3回の測定Tpara_a時間が互いに5%の範囲内となるまで繰り返させる。次に、ステップ600において、最後の3回のTrapa_a加速時間の平均および次の式を用いて、目標加速時間値(target_accel)を算出する。
【0026】
【数2】

【0027】
ここで、Tpara_aは、ステップ600において決定する寄生抗力加速時間であり、その他の係数は、target_decelについての式に関連して既に説明したものである。
【0028】
ステップ601において、クラッチ74,65を完全に係合し、こうしてクラッチ55およびギア57の出力の回転を防止する。ステップ602において、初期保持圧力をクラッチ55に加える。ステップ603において、ギア68の速度が少なくとも1500msの間0rpmであることを検証するために、チェックを行う。ステップ604において、クラッチ74を解放することにより、いかなるトルクでもクラッチ55を通じて伝達させて、ギア68を加速することができる。
【0029】
ステップ605において、初期保持圧力に対して、ギア68を所定の目標速度まで加速するために要する時間を測定する。この時間がtarget_accel時間よりも短い場合、ステップ606においてステップ601ないしステップ604を繰り返す。ステップ607において、ギア68を所定の目標速度まで加速するために要する時間を測定する。この時間が未だ目標加速時間未満である場合、ステップ608において、適切なエラー・メッセージをディスプレイ12上に表示し、ルーチンは、引き続きステップ609において次のクラッチの保持圧力を決定する。
【0030】
ステップ605または607において、所定の速度までの加速時間がtarget_accel未満である場合、ルーチンはステップ610に進み、保持圧力を増分して、クラッチ55に加える。ステップ611では、保持圧力が最大保持圧力以上である場合、ステップ612においてエラー・メッセージを表示させる。次いで、ルーチンはステップ613において、次のクラッチに進む。その他の場合には、ステップ614においてクラッチ74を係合し、ステップ615においてギア68の速度が500msの間0rpmであることをチェックする。次いで、ルーチンはステップ616に進み、クラッチ74を解放する。
【0031】
クラッチ74を解放することにより、いかなるトルクでもクラッチ55を通じて伝達させてギア68を加速することができる。ステップ617において、再び、測定加速時間を、格納してある基準時間(target_accel)と比較する。測定加速時間がtarget_accelよりも大きい場合、これは、クラッチ55に加えた圧力が未だこれを係合し始めていないことを意味し、ステップ610において、保持圧力を増分する。測定加速時間がtarget_accel時間未満となるまでループを継続し、次いでステップ618により、保持圧力を較正値として格納する。ステップ619において、表2に示した他のクラッチについて前述のプロセスを繰り返す。
【0032】
尚、この方法では、最小トルクのみをクラッチ55を通じて伝達することに注意されたい。その結果、エンジン・プル・ダウン(engine pull down)に対する影響は非常に小さくなるので、較正結果は、エンジン特性の変動による影響を受けない。
【0033】
以上、特定の実施形態に関連付けて本発明の説明を行ったが、多くの代替、変更および変形も、前述の説明を基にすれば、当業者には明白であることは理解されよう。したがって、本発明は、特許請求の範囲の要旨および範囲に該当するような代替、変更および変形全てを含むことを意図するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を適用可能な、マイクロプロセッサをベースとするトランスミッション制御システムの概略ブロック図である。
【図2】本発明を適用可能なトランスミッションを示す図である。
【図3】図4、図5および図6間の関係を示す図である。
【図4】図5および図6と共に、本発明の保持圧力較正方法を示す、簡略化論理フロー図である。
【図5】図4および図6と共に、本発明の保持圧力較正方法を示す、簡略化論理フロー図である。
【図6】図4および図5と共に、本発明の保持圧力較正方法を示す、簡略化論理フロー図である。
【図7】図8、図9および図10間の関係を示す図である。
【図8】図9および図10と共に、本発明の別の保持圧力較正方法を示す、簡略化論理フロー図である。
【図9】図8および図10と共に、本発明の別の保持圧力較正方法を示す、簡略化論理フロー図である。
【図10】図8および図9と共に、本発明の別の保持圧力較正方法を示す、簡略化論理フロー図である。
【符号の説明】
【0035】
10 エンジン
12 パワーシフト・トランスミッション
13 入力シャフト
14 出力シャフト
16 車輪
18 電気液圧バルブ
20 トランスミッション・コントローラ
22 ディスプレイ
24 ギアシフト・レバー
26 ギアシフト・スイッチ/エンコーダ・ユニット
28 電気ジャンパ
30,32,34,36 磁気ピックアップ回転速度センサ
55,60,65,69,74,79 クラッチ
53,57,58,62,63,67,68,70,72,76,77,81,83 ギア
54,56,59,61,64,73,75,78,80,87,88 シャフト
84 出力シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに接続した入力シャフトを有し、更に出力シャフトを有するトランスミッションの制御クラッチを較正する方法であって、前記トランスミッションは、複数の制御クラッチを有し、各制御クラッチが、トルクを受け取る入力素子を有し、更に出力素子を有し、前記方法が、
前記トランスミッションの摩擦特性によるクラッチ構成要素の速度変化を表す寄生抗力時間値を決定するステップと、
前記寄生抗力時間値から、目標速度変化値を算出するステップと、
前記目標速度変化値、およびトランスミッション構成要素の検知した回転速度から、クラッチ較正値を導出するステップと、
から成る較正方法。
【請求項2】
エンジンに接続した入力シャフトを有し、更に出力シャフトを有するトランスミッションの制御クラッチを較正する方法であって、前記トランスミッションは、複数の制御クラッチを有し、各制御クラッチが、トルクを受け取る入力素子を有し、更に出力素子を有し、前記方法が、
a)前記エンジンを実質的に一定の速度に維持するステップと、
b)前記トランスミッションの摩擦特性によるクラッチ構成要素の速度変化を表す寄生抗力時間値を決定するステップと、
c)前記寄生抗力時間値から目標速度変化値を算出するステップと、
d)検査液圧信号を、較正対象のクラッチに印加するステップと、
e)前記トランスミッションの構成要素の回転速度を検知するステップと、
f)前記検知した回転速度を、前記目標速度変化値の関数として分析するステップと、
g)前記分析が所定の基準を満たす場合、前記印加した検査出力信号に関連する値を、較正値として格納するステップと、
h)前記分析が前記所定の基準を満たさない場合、前記検査液圧信号を変更し、ステップd)ないしf)を繰り返すステップと、
から成る較正方法。
【請求項3】
エンジンに接続した入力シャフトを有し、更に出力シャフトを有するトランスミッションの制御クラッチを較正する方法であって、前記トランスミッションは、複数の制御クラッチを有し、各制御クラッチが、トルクを受け取る入力素子を有し、更に出力素子を有し、前記方法が、
a)前記エンジンを実質的に一定の速度に維持するステップと、
b)前記トランスミッションの摩擦特性によるクラッチ構成要素の速度変化を表す寄生抗力時間値を決定するステップと、
c)前記寄生抗力時間値から目標速度変化値を算出するステップと、
d)検査液圧信号を、較正対象のクラッチに印加するステップと、
e)前記トランスミッションの入力および出力シャフト以外の内部トランスミッション構成要素の回転速度を検知するステップと、
f)前記検知した回転速度を、前記目標速度変化値の関数として分析するステップと、
g)前記分析が所定の基準を満たす場合、前記印加した検査出力信号に関連する値を、較正値として格納するステップと、
h)前記分析が前記所定の基準を満たさない場合、前記検査液圧信号を変更し、ステップd)ないしf)を繰り返すステップと、
から成る較正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−224044(P2008−224044A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159166(P2008−159166)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【分割の表示】特願平11−8058の分割
【原出願日】平成11年1月14日(1999.1.14)
【出願人】(591005165)ディーア・アンド・カンパニー (109)
【氏名又は名称原語表記】DEERE AND COMPANY
【Fターム(参考)】