説明

トリアジンチオール基及びアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン及びその製造方法、並びに当該オルガノポリシロキサンを含有する接着用プライマー組成物

【解決手段】一分子中にトリアジンチオール基及びアルケニル基を有することを特徴とするオルガノポリシロキサン。
【効果】本発明の接着用プライマー組成物は、組成物の構成成分として、トリアジンチオール基とアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを用いる。トリアジンチオール基部分は金、銀、銅等の難接着の金属と強固な化学結合を形成し、シリコーンゴムの加硫に機構に組み込まれることから、結果として高い接着力が発現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアジンチオール基とアルケニル基とを有するオルガノポリシロキサン及びその製造方法に関する。本発明は、更にシリコーンゴム等のエラストマーと金属やプラスチック、ガラス、樹脂などの被着体との接着に好適なプライマー組成物に関する。特に、熱によって硬化するミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化物を金属の表面に接着させるのに好適で、特に従来困難とされた銅、銀、金に対して優れた接着性を有するプライマー組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは物性的、化学的に優れた機能を有することから各種用途に使用され、最近では金属やプラスチック等との複合体に使用されることも多い。
【0003】
シリコーンゴムを各種の被着体、特に金属に接着させるために、各種のプライマーを塗布するという方法が採られており、シリコーンゴムの特長である耐熱性を考慮し、耐熱接着性向上を目的とした数多くのプライマー組成物が提案されている(特許文献1:特開昭61−209269号公報、特許文献2:特開昭62−297367号公報)。
【0004】
通常、プライマー組成物を金属、プラスチック等の被着面に予め塗布した後、その上にシリコーンゴムをパーオキサイド加硫等により硬化、接着させることが行われている。かかるプライマー組成物としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のような不飽和結合を有するアルコキシシラン又はこれらの加水分解縮合物もしくは共加水分解シロキサン、チタン酸エステル及び有機脂肪酸の金属塩とから成るプライマー組成物(特許文献3:特公昭62−17622号公報、特許文献4:特公昭62−17623号公報)、更にこうしたシロキサン組成物に有機脂肪酸の金属塩及びSiH基を有する有機ケイ素化合物とからなるプライマー組成物(特許文献5:特公昭61−2107号公報)等が提案されている。また、特開昭60−115661号公報(特許文献6)では、プライマー中にアルコキシ基含有ポリシロキサンと白金系触媒とを配合することが提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1〜5のプライマー組成物では、接着性が向上するものの、その接着強度の絶対強度は十分とはいえず、また難腐食性の貴金属に対しては接着向上効果が得られていない。また、特許文献6のプライマーは、約1日でゲル化してしまい、プライマーとしての機能を失ってしまう。しかも、プライマーとしての機能を果たし得る時間内で、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを配合したミラブル型シリコーンゴムと、高温雰囲気下で酸化劣化しにくい金、銀、銅のような貴金属部品等とを加硫接着させた場合、必ずしも充分な接着性が得られないという問題があった。
【0006】
このような難接着性の金属基材に対する接着改良として、トリアジンチオール誘導体を用いる技術がいくつか開示されている(特許文献7:特開平09−71664号公報、特許文献8:特開2007−119752号公報)。特許文献7は、樹脂の成形体にニッケルや銅を含む金属メッキを施し、この金属メッキに接触させた状態でトリアジントリチオールのアルカリ金属塩を含有させたゴムを架橋して、金属メッキとゴムを架橋接着することにより、金属メッキを介して樹脂の成形体とゴムとを接着するというものである。しかしながら、この方法では、ゴムにトリアジン誘導体を含有させることから接着表面に架橋に関与する成分が効率よく存在するとはいえず、プライマー等のように直接、被接着基材表面に処理するものに比べ、接着向上効果は不十分である。
【0007】
特許文献8はアルコキシシリル基を有するトリアジンジチオールアルカリ金属塩を用いて、OH基を含有する樹脂に処理し、シランカップリング剤として樹脂の成形体とゴムとを接着するというものである。しかしながら、この技術では、使用するシランカップリング剤の溶解性が悪いため低濃度となることから、樹脂へ処理効率は十分でなく、接着性が安定的に発揮できない。その上、シランカップリング剤であることを考えると、ゴムとの接着基材となる対象はOH基など表面にアルコキシシリル基と化学結合し得る官能基が必要であり、金、銀、銅といったアルコキシシリル基との反応性が悪い金属には適用できない。また、ゴムとの架橋に組み込まれるトリアジンチオール部分はその反応性が十分ではない。
【0008】
【特許文献1】特開昭61−209269号公報
【特許文献2】特開昭62−297367号公報
【特許文献3】特公昭62−17622号公報
【特許文献4】特公昭62−17623号公報
【特許文献5】特公昭61−2107号公報
【特許文献6】特開昭60−115661号公報
【特許文献7】特開平09−71664号公報
【特許文献8】特開2007−119752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記事情を鑑み、シリコーンゴム、特にミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化物と金属、とりわけ金、銀、銅等の難接着の金属とを過酷な条件下でも長期に亘って強固な接着力を保持できる接着方法を可能とする新規なトリアジンチオール基含有オルガノポリシロキサン及びその製造方法を提供することにある。また、該オルガノポリシロキサンを用いたプライマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、シリコーンゴム、特にミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化物に対し、トリアジンチオール基とアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを含有する特定のプライマー組成物を用いることにより、接着性が大幅に改善され、従来成し遂げられなかった金、銀、銅といった金属基材との良好な接着が可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記オルガノポリシロキサン及びその製造方法、並びにプライマー組成物を提供する。
請求項1:
一分子中にトリアジンチオール基及びアルケニル基を有することを特徴とするオルガノポリシロキサン。
請求項2:
下記シロキサン単位式(1)で表されることを特徴とする請求項1記載のオルガノポリシロキサン。
【化1】

[式中、Xは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R1〜R6は置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基である。但し、R1〜R6のいずれかに少なくともアルケニル基及び下記構造式(2)
【化2】

(式中、Aは2価の有機基であり、一端がトリアジン環と結合し、他端がポリシロキサンのケイ素原子と結合している。)
で表される基を共に1個以上含み、aは平均0<a≦0.8であり、bは平均0<b≦1であり、cは平均0≦c<1であり、dは平均0≦d≦0.4であり、eは平均0≦e≦0.5であり、a+b+c+d=1である。]
請求項3:
構造式(2)において、この中の有機基−A−が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子又はカルボニル炭素を間に挟んでもよい2価の炭化水素基であることを特徴とする請求項2記載のオルガノポリシロキサン。
請求項4:
構造式(2)において、2価の有機基−A−が、−CH2CH2CH2NH−又は−CH2CH2CH2NHCH2CH2NH−であることを特徴とする請求項3記載のオルガノポリシロキサン。
請求項5:
アルケニル基がビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、又はシクロヘキセニル基であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のオルガノポリシロキサン。
請求項6:
アミノ官能性基とアルケニル基を側鎖に有するオルガノポリシロキサンと、トリアジントリチオールを反応させることを特徴とする、一分子中にトリアジンチオール基及びアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの製造方法。
請求項7:
アミノ官能性基が、3−アミノプロピル基又はN−2(アミノエチル)−アミノプロピル基である請求項6記載の一分子中にトリアジンチオール基及びアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの製造方法。
請求項8:
下記(A)及び(B)成分を含んでなることを特徴とする接着用プライマー組成物。
(A)一分子中にトリアジンチオール基及びアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン。
(B)有機溶媒
請求項9:
(A)成分のトリアジンチオール基を有するオルガノポリシロキサンが、下記シロキサン単位式(1)で表されることを特徴とする請求項8記載の接着用プライマー組成物。
【化3】

[式中、Xは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R1〜R6は置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基である。但し、R1〜R6のいずれかに少なくともアルケニル基及び下記構造式(2)
【化4】

(式中、Aは2価の有機基であり、一端がトリアジン環と結合し、他端がポリシロキサンのケイ素原子と結合している。)
で表される基を共に1個以上含み、aは平均0<a≦0.8であり、bは平均0<b≦1であり、cは平均0≦c<1であり、dは平均0≦d≦0.4であり、eは平均0≦e≦0.5であり、a+b+c+d=1である。]
請求項10:
(A)成分の構造式(2)において、2価の有機基−A−が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子又はカルボニル炭素を間に挟んでもよい2価の炭化水素基であり、一端がトリアジン環と結合し、他端がポリシロキサンのケイ素原子と結合していることを特徴とする請求項9記載の接着用プライマー組成物。
請求項11:
(A)成分の構造式(2)において、2価の有機基−A−が、−CH2CH2CH2NH−又は−CH2CH2CH2NHCH2CH2NH−であり、一端がトリアジン環と結合し、他端がポリシロキサンのケイ素原子と結合していることを特徴とする請求項10記載の接着用プライマー組成物。
請求項12:
更に、(C)有機チタン酸エステル類を含むことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項記載の接着用プライマー組成物。
請求項13:
シリコーンゴムとの接着用である請求項8乃至12のいずれか1項記載の接着用プライマー組成物。
請求項14:
金属とミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化物との接着用である請求項13記載の接着用プライマー組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の接着用プライマー組成物は、組成物の構成成分として、トリアジンチオール基とアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを用いる。トリアジンチオール基部分は金、銀、銅等の難接着の金属と強固な化学結合を形成し、シリコーンゴムの加硫機構に組み込まれることから、結果として高い接着力が発現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るオルガノポリシロキサンは、トリアジンチオール基とアルケニル基とを有するものである。
上記オルガノポリシロキサンは、下記シロキサン単位式(1)
【化5】

[式中、Xは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R1〜R6は置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基である。但し、R1〜R6のいずれかに少なくともアルケニル基及び下記構造式(2)
【化6】

(式中、Aは2価の有機基であり、一端がトリアジン環と結合し、他端がポリシロキサンのケイ素原子と結合している。)
で表される基を共に1個以上含み、aは平均0<a≦0.8であり、bは平均0<b≦1であり、cは平均0≦c<1であり、dは平均0≦d≦0.4であり、eは平均0≦e≦0.5であり、a+b+c+d=1である。]
で表される。
【0014】
上式中でa,b,c,dは、それぞれ1官能、2官能、3官能、4官能のシロキサン構造の合計モル数を1とした場合の平均モル数を意味し、各シロキサン単位の成分比を示している。eは2〜4官能シロキサン単位のケイ素原子に直接結合した水酸基、若しくは加水分解性基の平均モル数を意味し、シロキサン単位式全体の内、加水分解性基が何モル%であるかを表す。従って、a+b+c+d=1であり、0≦e<(b+c+d)である。
【0015】
オルガノポリシロキサン樹脂中に1官能シロキサン単位(R123SiO1/2)が導入されると一般に分子量が低下するため、その範囲は平均0<a≦0.8、好ましくは0<a≦0.4である。2官能シロキサン単位(R45SiO2/2)が導入されると樹脂の分岐度が減少し、樹脂全体のモジュラスが低下するため、樹脂全体の流動性が向上することから、その範囲は0<b≦1であり、好ましくは平均0<b≦0.8である。3官能シロキサン単位(R6SiO3/2)が導入されると、一般に分岐度が向上して樹脂全体のモジュラスが大きくなり、流動性が低下し、ハンドリングが困難となる可能性があるため、その範囲は0≦c<1であり、好ましくは0≦c≦0.6である。4官能シロキサン単位(SiO4/2)が導入されると、一般に樹脂の分岐度が顕著に向上し、樹脂全体のモジュラスが顕著に大きくなり、流動性が大きく低下するため、その範囲は平均0≦d≦0.4であり、好ましくはd=0である。加水分解性基を含むシロキサン単位が導入されると、無機基材との反応点が増加するが、その一方で樹脂中に反応活性基が残存することとなり、保存安定性が低下するため、eは平均0≦e≦0.5であり、好ましくは平均0≦e≦0.3である。
【0016】
上記シロキサン単位式(1)中、ケイ素原子に結合した置換基であるR1〜R6のうち、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4の置換基を有してもよいアルキル基又は炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等がアルキル基として例示され、メチル基が特に好ましい。また、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられ、ビニル基が特に好ましい。また、炭素数6〜10の一価芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、フェニルエチル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。置換基にはフェニル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、(メタ)アクリロキシ基、グリシジル基等のエポキシ構造含有基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ官能性基、トリアジニルチオール基、パーフルオロアルキル基、ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキサイド)構造含有基が挙げられる。これらの中でもアルケニル基と下記構造式(2)
【化7】

で表される有機基が置換基としてR1〜R6のうちに少なくとも一つは含まれる(即ち、シリコーン樹脂のケイ素原子に結合する有機基の少なくとも二つはアルケニル基と上記式(2)の構造を持つ有機基である。Aは2価の有機基であり、酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子又はカルボニル炭素を挟んでもよい2価の炭化水素基が好ましく、特に−CH2CH2CH2NH−又は−CH2CH2CH2NHCH2CH2NH−が好ましい。)。
【0017】
ケイ素原子に結合した加水分解性基について、Xは水素原子、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましくは水素原子、メチル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0018】
本発明のトリアジンチオール基とアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は、好ましくは1000〜200000、より好ましくは2000〜100000、特に好ましくは10000〜50000である。
【0019】
本発明のトリアジンチオール基とアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの製造方法は、下記構造式(3)
【化8】

で表されるトリアジントリチオールとアミノ官能性基含有オルガノポリシロキサンを反応させる方法が好ましい。
【0020】
ここで、上記アミノ官能性基としては1級及び/又は2級アミノ基であれば特に限定されないが、好ましくは3−アミノプロピル基、N−2(アミノエチル)−アミノプロピル基である。この場合、アミノ基含有オルガノポリシロキサンは、以下の単位式(4)で表されるものである。
【化9】

[式中、aは平均0≦a<0.8であり、bは平均0<b≦1であり、cは平均0≦c<1であり、dは平均0≦d<0.4であり、eは平均0≦e<0.5であり、a+b+c+d=1であり、Xは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R’1〜R’6は置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数6〜10のアリール基等の芳香族炭化水素基である。但し、R’1〜R’6のいずれかにアルケニル基及び下記構造式(5)
7―(NH−R8Z−NH2 (5)
(式中、R7は炭素数1〜10のアルキレン基等の2価の炭化水素基、R8は炭素数2〜10のアルキレン基等の2価の炭化水素基であり、一端がポリシロキサンのケイ素原子と結合している。この場合、R7はC36であることが好ましい。Zは0〜3の整数を示す。)
で示されるアミノ官能基を少なくとも1つは含む。]
【0021】
とりわけ、下記の平均一般式(6)を有するオルガノポリシロキサンが好ましい。
QR102SiO−(SiQR10O)x−(SiR910O)y−SiQR102
(6)
(式中、Qは、構造式(5)で表されるアミノ官能基、R9又はR10であり、R9は炭素原子2〜10のアルケニル基であり、R10は炭素原子1〜10個を有する一価の飽和炭化水素基、特にアルキル基であり、xはゼロ又は正の数であり、yは正の数であり、そしてx+yは1,100未満である。)
【0022】
最も望ましい構造の一つは、以下のものである。
【化10】

(式中、Qは上記の通り。mは0≦m≦400、nは1≦n≦50、kは1≦k≦50である。)
【0023】
このオルガノポリシロキサンは、対応するアミノ基含有ジアルコキシシランを過剰の水の中で、又は水と溶剤、例えばテトラヒドロフランとの混合物の中で、約10〜約50℃、好ましくは室温で約2〜約5時間加水分解した後に、真空ストリッピングし、そして得られた水解物を、ジ(アルキル)−シクロポリシロキサンあるいは(アルキル、アルケニル)−シクロポリシロキサン(R2SiO基の源)及びヘキサメチルジシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、又は式(6)によって定義された通りの末端QR102SiO1/2基の源として作用するその他の反応体とともに、塩基触媒、例えばKOHの存在下で、約130〜約150℃で、約5〜約12時間加熱しながら平衡させることによって、あるいは、平衡化に依らず、両末端に水酸基を有するジメチルポリシロキサンとアミノアルキルジアルコキシシランとの脱アルコール反応による方法などにより製造される。
【0024】
本発明の製造方法について、本反応は加熱反応であり、適宜に有機溶媒を使用してもよい。反応温度は使用する有機溶媒の沸点とも関係するため一義的に設定できないが、通常、0〜200℃の範囲で設定され、より好ましくは30〜150℃である。0℃未満では反応性が悪く、生産性が落ちてしまう。200℃を超えると、反応性が飽和し、生産性向上の効果がないほか、分解反応を含めた副反応が生じるおそれがあり、逆に生産性を落としてしまいかねない。
【0025】
使用する有機溶媒は目的とする反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、得られるオルガノポリシロキサンの溶解性、分散性に優れたものであることが好ましい。具体的には炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、芳香族系溶媒、ケトン系溶媒等が挙げられ、より具体的には炭化水素系溶媒としてペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エーテル系溶媒としてはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、エステル系溶媒としては酢酸アルキルエステル、アミド系溶媒としてはホルムアミド、ジメチルホルムアミド、芳香族系溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレン、ケトン系溶媒としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。これらの有機溶媒を単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
本反応は、アミノ性官能基含有オルガノポリシロキサン中のアミノ官能性基1モルに対して、トリアジントリチオール0.3〜1.5モルを添加して行うが、好ましくは0.5〜1.3モル、より好ましくは0.7〜1.0モルの添加量である。0.3モルより少ないと、オルガノポリシロキサン中のトリアジンチオール基の量が少なくなってしまい、本発明の接着効果が十分に発現しない。一方、1.5モルを超えて添加すると、未反応のトリアジントリチオールが不純物として残存してしまう他、それに伴う反応物の粘度増加が起こり、製造時のハンドリングが困難となってしまう。
【0027】
ここで、アミノ官能性基の一級及び二級アミノ基部分と、トリアジントリチオールとの反応では、硫化水素が副生成物として発生する。
【0028】
本発明のプライマー組成物は、前記したトリアジンチオール基とアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、有機溶媒、及び必要に応じて有機チタン酸エステルとを含むものである。
【0029】
有機溶媒は、有効成分の溶解性、分散性があるものならば特に限定されず、具体的な例は前記した反応溶媒と同様であるが、トリアジンチオール基とアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとチタン酸エステルの溶解性及びプライマーとしての塗布作業に当たっての蒸発性を考慮して選択され、例えば、リグロイン、トルエン、キシレン、ヘキサン、酢酸エチル、ベンゼン、ヘプタン、イソプロピルアルコール、塩化メチレン、トリクロロエチレン等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上の混合物として使用できる。
【0030】
有機チタン酸エステルは、市販されているものを用いてよく、構造等は特に限定されないが、具体的にはチタン酸エステル類としては、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、及びこれらの重合物が挙げられ、また、チタンアセチルチタネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチルグリコート、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート等のチタンキレート化合物を使用することもでき、これらの1種を単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0031】
トリアジンチオール基とアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとチタン酸エステル類を有機溶媒に溶解する場合の配合割合は、特に限定されず、各成分が溶解して塗布作業に適するものであればよいが、通常、トリアジンチオール基とアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの濃度は1〜30質量%であり、チタン酸エステル類の濃度は0.5〜10質量%である。
【0032】
本発明に係るプライマー組成物は、これを基材に塗布し、これをミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化物等と接着させることができる。この場合、基材としては特に制限されないが、本発明に係るトリアジンチオール基とアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと有機溶媒とを含むプライマー組成物は、好ましくはシリコーンゴムと金属の接着性を向上させることができ、特に金、銀、銅等の非腐食性金属に対して接着させることができる。
【0033】
ここで、本発明において、ミラブル型シリコーンゴム組成物とは、加硫硬化してエラストマーとなることができるポリオルガノシロキサンをベースとし、これに硬化剤を配合したものである。
【0034】
その反応機構としては、(1)有機過酸化物加硫剤による架橋方法、(2)付加反応による方法等が知られており、その反応機構によって、ベース成分と硬化剤成分、即ち、硬化用触媒もしくは架橋剤との好ましい組み合わせが決まることは周知である。即ち、上記(1)の架橋方法を適用する場合においては、通常、ベース成分としては、一分子中のケイ素原子に結合した有機基のうち、アルケニル基を含有する、重合度1000以上のポリジオルガノシロキサンが用いられる。また、硬化剤成分としては、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、クミル−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、ジ−t−ブチルペルオキシド等の各種の有機過酸化物加硫剤が用いられ、特に低い圧縮永久歪みを与えることから、ジクミルペルオキシド、クミル−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、ジ−t−ブチルペルオキシドが好ましい。なお、これらの有機過酸化物加硫剤は、1種単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0035】
上記硬化成分の有機過酸化物の配合量は、一般にベース成分100質量部に対して、0.05〜15質量部の範囲が好ましい。有機過酸化物の配合量が0.05質量部未満では加硫が充分に行われず、また15質量部を超えて配合してもそれ以上の格別の効果がないばかりか、得られたシリコーンゴムの物性に悪影響を与えるおそれがある。
【0036】
また、上記した(2)の付加反応を適用する場合のベース成分としては、上記(1)におけるベース成分と同様なものが用いられる。また、硬化剤は、硬化用触媒として、塩化白金酸、白金オレフィン錯体、白金ビニルシロキサン錯体、白金黒、白金トリフェニルホスフィン錯体等の白金系触媒が用いられ、架橋剤として、ケイ素原子に結合した水素原子が一分子中に少なくとも平均2個を超える数を有するポリジオルガノシロキサンが用いられる。上記の硬化剤のうち、硬化用触媒の配合量は、一般にベース成分に対して白金原子の量として1〜200ppmの範囲となる量が好ましい。硬化用触媒の配合量が白金原子の量として1ppm未満では充分に硬化が進行せず、また200ppmを超えて配合しても特に硬化速度の向上等が期待できない。
【0037】
架橋剤の配合量は、ベース成分中のアルケニル基1個に対して、架橋剤中のケイ素原子に結合した水素原子が0.5〜4.0個となるような量が好ましく、更に好ましくは1.0〜3.0個となるような量である。水素原子の量が0.5個未満である場合は、組成物の硬化が充分に進行せず、硬化後の組成物の硬さが低くなり、また水素原子の量が4.0個を超えると、硬化後の組成物の物理的性質や耐熱性が低下する。
【0038】
以上のような各種の反応機構において用いられるポリオルガノシロキサンベースポリマーの有機基は、1価の置換又は非置換の炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基のようなアルキル基、フェニル基のようなアリール基、β−フェニルエチル基、β−フェニルプロピル基のようなアラルキル基等の非置換の炭化水素基や、クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等の置換炭化水素基が例示され、一般的には合成のしやすさ等からメチル基が多用される。
【0039】
ここで、本発明において、基材とシリコーンゴムとを接着させる方法としては、基材に本発明のプライマー組成物を塗布し、このプライマー組成物の塗布層にミラブル型シリコーンゴム組成物等を積層し、加熱してシリコーンゴム組成物を硬化させる方法が好適に採用される。
【0040】
この場合、プライマー組成物の塗布層の厚さは、1〜30μmが好ましい。また、シリコーンゴム組成物の硬化は加硫方法、成形物の形状等により選択すればよいが、一般に100〜250℃、特に120〜200℃に1〜30分、特に5〜15分加熱する方法が採用される。なお、シリコーンゴム組成物の厚さに制限はなく、用途によって相違するが、通常0.1〜10mmである。
【0041】
本発明のトリアジンチオール基とアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、トリアジンチオール基が金、銀、銅といった金属基材と−S−M(M=金、銀、銅)結合を形成し、アルケニル基がシリコーンゴム組成物の架橋に組み込まれることで、接着向上に有効なプライマーとして機能する。
【実施例】
【0042】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。例中、IRは赤外分光法の略である。なお、以下の例において部は質量部を、Meはメチル基を、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるスチレン換算値を示す。
【0043】
[合成例1]
下記シロキサン単位式(8)で示されるビニル基及びアミノ基含有シリコーンオイル122.4g(アミン当量4400)、トリアジントリチオール1.7g、トルエン250gを温度計、水冷コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに収め、120℃で4時間加熱攪拌して反応を進行させた。反応の進行と共に混合物の粘度は増加し、増粘が停止したところで反応終了とした。その後、溶媒を減圧下で留去し、発生した硫化水素も除去した。得られた反応生成物は淡黄濁色のワックス状物質であり、重量平均分子量は23000であった。この生成物のIRスペクトルを測定したところ、反応前と比べて、N−H構造に由来する吸収が減少し、新たにトリアジンチオール構造に由来する吸収が観測されたことから、目的とする反応が理想通り進行し、本生成物がトリアジンチオール基とアルケニル基を有する下記単位式(9)で示されるオルガノポリシロキサンであることを確認した。なお、図1は、反応前後のIRスペクトル図である。
【化11】

01: H2NCH2CH2NHC36
【0044】
【化12】

【0045】
[合成例2]
下記シロキサン単位式(10)で示されるビニル基及びアミノ基含有シリコーンオイル100.0g(アミン当量6299)、トリアジントリチオール2.8g、トルエン250gを温度計、水冷コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに収め、120℃で4時間加熱攪拌して反応を進行させた。反応の進行と共に混合物の粘度は増加し、増粘が停止したところで反応終了とした。その後、溶媒を減圧下で留去し、発生した硫化水素も除去した。得られた反応生成物は淡黄濁色のワックス状物質であり、重量平均分子量は23000であった。この生成物のIRスペクトルを測定したところ、反応前と比べて、N−H構造に由来する吸収が減少し、新たにトリアジンチオール構造に由来する吸収が観測されたことから、目的とする反応が理想通り進行し、本生成物がトリアジンチオール基とアルケニル基を有する下記単位式(11)で示されるオルガノポリシロキサンであることを確認した。
【化13】

03:H2NC36
【0046】
【化14】

【0047】
[合成例3]
下記シロキサン単位式(12)で示されるビニル基及びアミノ基含有シリコーンオイル100.0g(アミン当量783)、トリアジントリチオール22.6g、トルエン250gを温度計、水冷コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに収め、120℃で4時間加熱攪拌して反応を進行させた。反応の進行と共に混合物の粘度は増加し、増粘が停止したところで反応終了とした。その後、溶媒を減圧下で留去し、発生した硫化水素も除去した。得られた反応生成物は淡黄濁色のワックス状物質であり、重量平均分子量は28000であった。この生成物のIRスペクトルを測定したところ、反応前と比べて、N−H構造に由来する吸収が減少し、新たにトリアジンチオール構造に由来する吸収が観測されたことから、目的とする反応が理想通り進行し、本生成物がトリアジンチオール基とアルケニル基を有する下記単位式(13)で示されるオルガノポリシロキサンであることを確認した。
【化15】

03: H2NC36
【0048】
【化16】

【0049】
[合成例4]
下記シロキサン単位式(14)で示されるビニル基及びアミノ基含有シリコーンオリゴマー100.0g(アミン当量881)、トリアジントリチオール20.1g、トルエン250gを温度計、水冷コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに収め、120℃で4時間加熱攪拌して反応を進行させた。反応の進行と共に混合物の粘度は増加し、増粘が停止したところで反応終了とした。その後、溶媒を減圧下で留去し、発生した硫化水素も除去した。得られた反応生成物は淡黄濁色のワックス状物質であり、重量平均分子量は10000であった。この生成物のIRスペクトルを測定したところ、反応前と比べて、N−H構造に由来する吸収が減少し、新たにトリアジンチオール構造に由来する吸収が観測されたことから、目的とする反応が理想通り進行し、本生成物がトリアジンチオール基とアルケニル基を有する下記単位式(15)で示されるオルガノポリシロキサンであることを確認した。
【化17】

03: H2NC36
【0050】
【化18】

【0051】
[合成例5]
下記シロキサン単位式(16)で示されるビニル基及びアミノ基含有シリコーンオリゴマー100.0g(アミン当量881)、トリアジントリチオール20.1g、トルエン250gを温度計、水冷コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに収め、120℃で4時間加熱攪拌して反応を進行させた。反応の進行と共に混合物の粘度は増加し、増粘が停止したところで反応終了とした。その後、溶媒を減圧下で留去し、発生した硫化水素も除去した。得られた反応生成物は淡黄濁色のワックス状物質であり、重量平均分子量は18000であった。この生成物のIRスペクトルを測定したところ、反応前と比べて、N−H構造に由来する吸収が減少し、新たにトリアジンチオール構造に由来する吸収が観測されたことから、目的とする反応が理想通り進行し、本生成物がトリアジンチオール基とアルケニル基を有する下記単位式(17)で示されるオルガノポリシロキサンであることを確認した。
【化19】

03:H2NC36
【0052】
【化20】

【0053】
[合成例6]
下記シロキサン単位式(18)で示されるビニル基及びアミノ基含有シリコーンオリゴマー100.0g(アミン当量881)、トリアジントリチオール20.1g、トルエン250gを温度計、水冷コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに収め、120℃で4時間加熱攪拌して反応を進行させた。反応の進行と共に混合物の粘度は増加し、増粘が停止したところで反応終了とした。その後、溶媒を減圧下で留去し、発生した硫化水素も除去した。得られた反応生成物は淡黄濁色のワックス状物質であり、重量平均分子量は17000であった。この生成物のIRスペクトルを測定したところ、反応前と比べて、N−H構造に由来する吸収が減少し、新たにトリアジンチオール構造に由来する吸収が観測されたことから、目的とする反応が理想通り進行し、本生成物がトリアジンチオール基とアルケニル基を有する下記単位式(19)で示されるオルガノポリシロキサンであることを確認した。
【化21】

03:H2NC36
【0054】
【化22】

【0055】
[比較合成例1]
アミノ基含有シリコーンオイルX−22−161A 223.7g(アミン当量800、信越化学工業(株)製)、トリアジントリチオール50g、トルエン250gを温度計、水冷コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに収め、120℃で4時間加熱攪拌して反応を進行させた。反応の進行と共に、混合物の粘度は増加し、増粘が停止したところで反応終了とした。その後、溶媒を減圧下で留去し、発生した硫化水素も除去した。得られた反応生成物は淡黄濁色のワックス状物質であり、重量平均分子量は2000であった。この生成物のIRスペクトルを測定したところ、反応前と比べて、N−H構造に由来する吸収が減少し、新たにトリアジンチオール構造に由来する吸収が観測されたことから、本生成物が下記単位式で示されるオルガノポリシロキサンであることを確認した。
[R04Me2SiO1/20.17[Me2SiO2/20.83
【0056】
【化23】

【0057】
[比較合成例2]
アミノ基含有シリコーンオイルKF−8008 158.6g(アミン当量5700、信越化学工業(株)製)、トリアジントリチオール5g、トルエン250gを温度計、水冷コンデンサーを備えた1Lセパラブルフラスコに収め、120℃で4時間加熱攪拌して反応を進行させた。反応の進行と共に、混合物の粘度は増加し、増粘が停止したところで反応終了とした。その後、溶媒を減圧下で留去し、発生した硫化水素も除去した。得られた反応生成物は淡黄濁色のワックス状物質であり、重量平均分子量は12000であった。この生成物のIRスペクトルを測定したところ、反応前と比べて、N−H構造に由来する吸収が減少し、新たにトリアジンチオール構造に由来する吸収が観測されたことから、本生成物が下記単位式で示されるオルガノポリシロキサンであることを確認した。
[R04Me2SiO1/20.012[Me2SiO2/20.988
【0058】
【化24】

【0059】
[実施例、比較例]
表1に示す成分を十分混合してプライマー組成物1〜22を製造した。
【0060】
【表1】

【0061】
トリアジンチオールシランは、下記構造式で示されるトリアジンジチオール基含有シランカップリング剤を示す。
【化25】

【0062】
ビニルシランはKBM−1003(信越化学工業(株)製)、アミノシランはKBE−903(信越化学工業(株)製)を使用した。
次に上記プライマー組成物1〜22を使用して接着力と接着界面を下記方法により測定した。
【0063】
〈接着力〉
シリコーンゴムコンパウドKE951U(信越化学工業(株)製)100部に2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン0.5部を2本ロールで練り込み、よく分散させて未加硫ゴム(ミラブル型シリコーンゴム組成物)を作製した。被着体として揮発油などで十分に洗浄して清浄な表面にした1インチ幅の板状の金属テストサンプルを用い、その2枚にプライマーを塗布し、プライマー塗布面を上記未加硫ゴムを間に挟んで1平方インチだけ重ね、50kgf/cm2で圧着して165℃において10分間プレスキュアーし、図2のようなサンプルを成形した。なお、図2において1は被着体、2はゴムを示す。
このテストサンプルの両端を両手で持ち、引き離す方向(左右)に引っ張り、破断が起きた後の、被着体に残るゴムの接着面積の大きさで接着力を評価し、接着したゴムの残存面積が80〜100%を◎、50〜80%を○、20〜50%を△、0〜20%を×とした。
【0064】
〈接着界面〉
上記の接着力試験を行った剥離後のシリコーンゴム表面及び被着体のプライマー付着を目視で確認した。この場合、剥離後のシリコーンゴム表面と被着面の両方にプライマー成分が付着しているときはプライマー内凝集破断(A)、シリコーンゴム表面にプライマーの付着が認められなかったときはプライマー/シリコーンゴム界面剥離(B)、被着体表面にプライマーの付着が認められなかったときはプライマー/被着体界面剥離(C)とした。
【0065】
なお、プライマーの塗布は下記の方法で行った。
【0066】
[実施例1]
プライマー1に被着体を30秒間浸漬させた後、150℃×60分間加熱乾燥後、シリコーンゴムと接着した。得られた接着サンプルを上記方法により、接着力、接着界面の評価を行った。
【0067】
[実施例2〜12、比較例1〜10]
実施例1のプライマー1を表2に示したプライマーに変更した以外は同様の作業を行った。
以上の結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
表2の結果より、アルケニル基及びトリアジンチオール基のどちらか一方のみを含むか、もしくはどちらも含まないシロキサン化合物を主成分とするプライマー(比較例)に比べ、アルケニル基とトリアジンチオール基を有するシロキサン化合物を主成分とするプライマーを用いた場合、金属(銅、銀)/シリコーンゴム間の接着を向上させることが認められる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は合成例1における反応の前後のIRスペクトル図である。
【図2】図2は接着力試験で用いたサンプルを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0071】
1 被着体
2 ゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一分子中にトリアジンチオール基及びアルケニル基を有することを特徴とするオルガノポリシロキサン。
【請求項2】
下記シロキサン単位式(1)で表されることを特徴とする請求項1記載のオルガノポリシロキサン。
【化1】

[式中、Xは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R1〜R6は置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基である。但し、R1〜R6のいずれかに少なくともアルケニル基及び下記構造式(2)
【化2】

(式中、Aは2価の有機基であり、一端がトリアジン環と結合し、他端がポリシロキサンのケイ素原子と結合している。)
で表される基を共に1個以上含み、aは平均0<a≦0.8であり、bは平均0<b≦1であり、cは平均0≦c<1であり、dは平均0≦d≦0.4であり、eは平均0≦e≦0.5であり、a+b+c+d=1である。]
【請求項3】
構造式(2)において、この中の有機基−A−が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子又はカルボニル炭素を間に挟んでもよい2価の炭化水素基であることを特徴とする請求項2記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項4】
構造式(2)において、2価の有機基−A−が、−CH2CH2CH2NH−又は−CH2CH2CH2NHCH2CH2NH−であることを特徴とする請求項3記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項5】
アルケニル基がビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、又はシクロヘキセニル基であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項6】
アミノ官能性基とアルケニル基を側鎖に有するオルガノポリシロキサンと、トリアジントリチオールを反応させることを特徴とする、一分子中にトリアジンチオール基及びアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項7】
アミノ官能性基が、3−アミノプロピル基又はN−2(アミノエチル)−アミノプロピル基である請求項6記載の一分子中にトリアジンチオール基及びアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項8】
下記(A)及び(B)成分を含んでなることを特徴とする接着用プライマー組成物。
(A)一分子中にトリアジンチオール基及びアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン。
(B)有機溶媒
【請求項9】
(A)成分のトリアジンチオール基を有するオルガノポリシロキサンが、下記シロキサン単位式(1)で表されることを特徴とする請求項8記載の接着用プライマー組成物。
【化3】

[式中、Xは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R1〜R6は置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基である。但し、R1〜R6のいずれかに少なくともアルケニル基及び下記構造式(2)
【化4】

(式中、Aは2価の有機基であり、一端がトリアジン環と結合し、他端がポリシロキサンのケイ素原子と結合している。)
で表される基を共に1個以上含み、aは平均0<a≦0.8であり、bは平均0<b≦1であり、cは平均0≦c<1であり、dは平均0≦d≦0.4であり、eは平均0≦e≦0.5であり、a+b+c+d=1である。]
【請求項10】
(A)成分の構造式(2)において、2価の有機基−A−が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子又はカルボニル炭素を間に挟んでもよい2価の炭化水素基であり、一端がトリアジン環と結合し、他端がポリシロキサンのケイ素原子と結合していることを特徴とする請求項9記載の接着用プライマー組成物。
【請求項11】
(A)成分の構造式(2)において、2価の有機基−A−が、−CH2CH2CH2NH−又は−CH2CH2CH2NHCH2CH2NH−であり、一端がトリアジン環と結合し、他端がポリシロキサンのケイ素原子と結合していることを特徴とする請求項10記載の接着用プライマー組成物。
【請求項12】
更に、(C)有機チタン酸エステル類を含むことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項記載の接着用プライマー組成物。
【請求項13】
シリコーンゴムとの接着用である請求項8乃至12のいずれか1項記載の接着用プライマー組成物。
【請求項14】
金属とミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化物との接着用である請求項13記載の接着用プライマー組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−197048(P2009−197048A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37132(P2008−37132)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】