説明

トリプトファナーゼ阻害剤及び該阻害剤を含有する組成物

【課題】新たなトリプトファナーゼ阻害剤を提供する。
【解決手段】オウギ、カンゾウ、ケイヒ、ゴシツ、サイコ、サンシュユ、サンヤク、ジオウ、シャゼンシュ、ショウキョウ、ソウジュツ、タイソウ、ダイオウ、チョレイ、ニンジン、ハンゲ、ボウイ及びボタンピからなる群から選択される1種又は2種以上の生薬から選択される1種又は2種以上を含有する、トリプトファナーゼ阻害剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリプトファナーゼ阻害剤及び該阻害剤を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本には20万人以上の末期腎不全患者が存在しており、その数は増加の一途をたどっている。腎不全には根本的な治療方法はなく、腎代替療法としては、血液透析、腹膜透析及び腎移植がある。しかしながら、これらはいずれも患者に大きな負担がかかる。このため腎不全の進行を抑制することが重要であり、有効な腎不全の治療剤が望まれている。
【0003】
これまで、腎不全の治療剤としては、活性炭を有効成分とし、腸管内で毒素物質を吸着させて腎臓の負担を軽減して腎不全の発症又は進行を抑制する経口吸着剤が用いられている。本発明者は、既に、蛋白代謝産物であるインドキシル硫酸が腎不全進行促進作用を有する尿毒症物質であることを証明し(非特許文献1、非特許文献2及び非特許文献3)、上記の経口吸着剤を用いた治療法の主な作用機序が、インドキシル硫酸の産生抑制であることを明らかにしている。また、慢性腎不全患者に対しては、従来から、その腎不全の進行を抑制するために、低タンパク食が採用されてきている。本発明者は、この低タンパク食が腎不全の進行を抑制する機序として、蛋白質由来のトリプトファン量が低下し、そのためインドールの産生が低下し、結果として腎不全進行促進作用を有するインドキシル硫酸の産生が低下することも、明らかにしている(非特許文献4)。
【0004】
しかしながら、この種の経口治療剤は、大量服用する必要がある他、吸着特異性を有していないため、他の治療剤と併用する場合などには服用タイミングをずらす必要があった。そこで、本発明者は、既に、吸着によらないで選択的に腸管内のインドール量を低減させることのできるトリプトファナーゼ阻害作用を有効成分とする治療剤を開示している(特許文献1)。
【0005】
また、大腸菌は常在菌であり、大腸菌のトリプトファナーゼによって産生されるアンモニアやインドールはヒトを含む動物及び生活環境における各種の異臭源でもある。したがって、トリプトファナーゼ阻害剤によれば、大腸菌の代謝によるインドール産生を抑制することにより異臭を抑制して消臭することもできる。また、アンモニアやインドールは、腸内フローラにおいて悪性菌を増加させる原因ともなっている。
【特許文献1】特開平11−209303号公報
【非特許文献1】J. Lab. Clin. Med. 124:96-104 、1994、
【非特許文献2】Am. J. Nephrol. 14:207-212、1994
【非特許文献3】Kidney Int. 52 (Suppl. 62):S15-S22、1997
【非特許文献4】Miner. Electrol. Metab. 23:179-194、1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、こうしたトリプトファナーゼ阻害剤はその入手が必ずしも容易でない。そこで、本発明は、新たなトリプトファナーゼ阻害剤及び当該阻害剤を含有する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、公知の生薬についてトリプトファナーゼ阻害作用を探索した結果、意外にもいくつかの生薬についてトリプトファナーゼ阻害作用を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明によれば以下の手段が提供される。
【0008】
本発明によれば、
以下の(a)〜(d):
(a)オウギ、カンゾウ、ケイヒ、ゴシツ、サイコ、サンシュユ、サンヤク、ジオウ、シャゼンシュ、ショウキョウ、ソウジュツ、タイソウ、ダイオウ、チョレイ、ニンジン、ハンゲ、ボウイ及びボタンピからなる群から選択される1種又は2種以上の生薬
(b)前記(a)の生薬の抽出物
(c)前記(a)の生薬の基原植物のいずれかの部位(前記(a)の生薬の薬用部位を除く)
(d)前記(c)の抽出物
から選択される1種又は2種以上を含有する、トリプトファナーゼ阻害剤が提供される。
【0009】
このトリプトファナーゼ阻害剤においては、前記(a)の生薬は、オウギ、カンゾウ、ケイヒ、ゴシツ、シャゼンシュ、サンシュユ、サンヤク、ジオウ、ショウキョウ、ソウジュツ、ダイオウ、ニンジン及びボタンピからなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。また、前記(a)の生薬は、カンゾウ、ケイヒ、ゴシツ、サンシュユ、サンヤク、ジオウ、ショウキョウ、ソウジュツ、タイソウ、ダイオウ及びボタンピからなる群から選択される1種又は2種以上とすることができ、前記(a)の生薬は、カンゾウ、ケイヒ、サンシュユ、ソウジュツ、タイソウ、ダイオウ及びボタンピからなる群から選択される1種又は2種以上とすることができ、さらに、前記(a)の生薬は、カンゾウ、ケイヒ、サンシュユ、ダイオウ及びボタンピからなる群から選択される1種又は2種以上とすることもできる。さらに、前記(a)の生薬は、カンゾウ、ケイヒ及びダイオウからなる群から選択される1種又は2種以上とすることができる。
【0010】
また、こうしたトリプトファナーゼ阻害剤は、前記(b)の生薬抽出物を含有することができる。なお、この生薬とは、前記(a)で記載した各種の組み合わせを全て包含している。
【0011】
本発明によれば、上記いずれかのトリプトファナーゼ阻害剤を有効成分とする、腎障害改善剤組成物が提供される。この腎障害改善組成物には乳酸菌を含有することができる。また、本発明によれば、腎障害患者又は腎障害の可能性のある患者(特に、腎障害として腎不全(慢性腎不全を含む)を対象とする。)に上記腎障害改善組成物を投与する工程を備える、腎障害の予防、改善又は治療方法が提供される。
【0012】
本発明によれば、また、上記いずれかのトリプトファナーゼ阻害剤を含有する、栄養補助組成物も提供される。この栄養補助組成物においては、乳酸菌を含有することができる。この栄養補助組成物は、異臭抑制用又は腸内環境改善用として用いることができる。また、この栄養補助組成物は、腎障害患者を含む病人用又は老人用としても用いることができる。この栄養補助組成物は、飲食品及び/又は乳酸菌製剤とキットを構成することもできる。
【0013】
さらに、本発明によれば、上記いずれかのトリプトファナーゼ阻害剤を含有する、飲食用組成物が提供される。この飲食用組成物は、乳酸菌を含有することができるし、また、乳酸発酵食品とすることができる。
【0014】
本発明によれば、上記いずれかのトリプトファナーゼ阻害剤を含有する、異臭抑制剤組成物が提供される。この異臭抑制剤組成物は、身体若しくはその一部用、住居用、衣類用又は衛生用品用として用いることができる。
【0015】
さらにまた本発明によれば、上記いずれかのトリプトファナーゼ阻害剤を含有する、化粧料組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のトリプトファナーゼ阻害剤は、以下の(a)〜(d):
(a)オウギ、カンゾウ、ケイヒ、ゴシツ、サンシュユ、サンヤク、ジオウ、サイコ、シャゼンシュ、ショウキョウ、ソウジュツ、タイソウ、ダイオウ、チョレイ、ニンジン、ハンゲ、ボウイ及びボタンピからなる群から選択される1種又は2種以上の生薬
(b)前記(a)の生薬の抽出物
(c)前記(a)の生薬の基原植物のいずれかの部位(前記(a)の生薬の薬用部位を除く)
(d)前記(c)の抽出物
から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴としている。このトリプトファナーゼ阻害剤によれば、天然の植物由来であるとともに歴史的に食品原料や医薬品原料に用いられてきているものであるため、ヒト及び非ヒト動物や環境に対して一定の安全性が確保されている。こうしたトリプトファナーゼ阻害剤によれば、ヒトを含む動物や環境に適用するのに好ましいトリプトファナーゼ組成物が提供される。
【0017】
すなわち、トリプトファナーゼ阻害剤は、本発明者によって既に明らかにされているように、ヒトを含む動物の腸内フローラ中の大腸菌のトリプトファナーゼ活性を阻害することにより、トリプトファンからインドールを産生することを抑制することができる。さらに、こうした動物において、インドールの代謝産物であって腎臓に負荷かけて腎不全の進行を促進するインドキシル硫酸の産生を抑制することができる。したがって、トリプトファナーゼ阻害剤は、腎機能の低下を抑制し、腎機能を維持し又は改善することができる。すなわち、トリプトファナーゼ阻害剤によれば、腎不全などの腎障害の予防、進行抑制するほか、治療や改善のための組成物が提供される。また、トリプトファナーゼ阻害剤は、有害であり異臭の原因であるインドールの産生を抑制するほか、同様に有害で異臭の原因であるアンモニアの産生を抑制する。さらに、トリプトファナーゼ阻害剤は、大腸菌のトリプトファンからのピルビン酸の利用も阻害するため、その増殖の抑制が期待される。したがって、本発明によれば、腎障害改善の促進、身体臭や排泄物臭の抑制若しくは腸内環境の改善を可能とする栄養補助剤組成物や又は飲食用組成物も提供される。
【0018】
また、インドールやアンモニアは、ヒト及び非ヒト動物における身体臭及び特定部位臭、便などの排泄物臭のほか、住宅を含む各種環境における異臭の原因物質でもあるため、こうした異臭の発生を抑制する異臭抑制剤(消臭剤)組成物や化粧料組成物も提供される。
【0019】
以下、本発明の各種の態様について、まず、トリプトファナーゼ阻害剤について説明し、次いで、トリプトファナーゼ阻害剤の各種の用途に用いる組成物について詳細に説明する。
【0020】
(トリプトファナーゼ阻害剤)
本発明のトリプトファナーゼ阻害剤としては、生薬若しくはその基原植物のいずれかの部位又はこれらを原料とする抽出物を用いることができる。こうした生薬としては、オウギ、カンゾウ、ケイヒ、ゴシツ、サイコ、サンシュユ、サンヤク、ジオウ、シャゼンシュ、ショウキョウ、ソウジュツ、タイソウ、ダイオウ、チョレイ、ニンジン、ハンゲ、ボウイ及びボタンピが挙げられる。これらは、いずれ単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの生薬は、日本薬局方に収載される生薬である場合には、日本薬局方収載の基原(基原植物及び薬用部位を含む。)に記載される特徴を有しているものとして特定することができる。表1及び2にこれらの生薬の基原植物(日本薬局方収載分を含む)及び一般的な薬用部位(日本薬局方収載分を含む。)を示す。
【0021】
【表1】

【表2】

【0022】
生薬は、一般に、基原植物とその有用部位が特定されているが、生薬の基原植物の有用部位以外であっても、本発明におけるトリプトファナーゼ阻害作用を発現する限りにおいて用いることができる。例えば、トリプトファナーゼ阻害作用を有する限り、一般的な有用部位が根茎であっても、根茎以外の地下部(根皮、根)や地上部(葉、樹皮、木部、茎、花、種子、果実、樹脂)の各部を用いることもできるし、全体(全草)を用いることもできる。また、有用部位について、一定の処理を施す場合もあるが、こうした処理も、適宜変更しあるいは修飾することが可能である。したがって、表1及び表2に示す生薬の基原植物の有用部位以外の部位を用いてもよいし、有用部位の処理法として記載される方法以外の処理が施されていたり、記載される処理が施されていなかったりしてもよい。生薬の各種の基原植物の有用部位以外の部位についてトリプトファナーゼ阻害剤の有無について検討し、又は有用部位の処理についての変更や修飾を検討することは当業者であれば容易に行うことができる。たとえば、ケイヒについては、樹皮も用いることができる。さらに、上記の生薬の基原植物の同属植物など近縁植物や上記基原植物に対して代替的に用いられる植物もまた本発明のトリプトファナーゼ阻害活性を有する限り本発明のトリプトファナーゼ阻害又はその原料として用いることができる。
【0023】
生薬の有用部位あるいはそれ以外の部位は、そのまま用いられてもよいし、細片又は粉末(いずれも生であってもよいし乾燥されたものであってもよい。)として用いることができるほか、適当な抽出方法にて抽出したものも用いることができる。
【0024】
抽出方法としては、特に限定しないが、圧搾抽出や溶媒による抽出が挙げられる。抽出物は、そのままであってもよく、精製されていてもよい。溶媒抽出に用いる溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール;酢酸エチル等のエステル;エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレンアルコール、グリセリン等のグリコール類;ジエチルエーテル、石油エーテル等のエーテル類;アセトン、酢酸等の極性溶媒;ベンゼン、ヘキサン、キシレン等の炭化水素類などが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、水及び低級アルコール類である。典型的には、水、エタノール及び水・エタノール混液などの水・低級アルコール混液が挙げられる。
【0025】
抽出方法としては、一般的な方法を採用することができ、例えば、溶媒に原料を浸漬する浸出法、原料を加温下(常温から溶媒の沸点範囲)の溶媒で抽出する溶媒抽出法、原料を加温下の溶媒で還流抽出する還流抽出法などが挙げられる。得られた抽出物は、必要に応じてろ過、遠心分離等して固形物を除去した後、そのままの状態、すなわち、浸出液(チンキを含む)、抽出液(煎じ液を含む)として用いることもできるし、精製するまでの各種の段階のものを任意に用いることができる。例えば、抽出物から溶媒を留去するなどして濃縮して濃縮液(ペーストを含む)としてもよい。さらに抽出物を乾燥してエキス粉末等としてもよい。一例として、各種抽出物を、噴霧乾燥又は凍結乾燥などにより乾燥して、粗精製物として使用することができる。また、こうした溶媒抽出物や粗精製物を、活性炭、シリカゲル、カラムクロマトグラフィー、液−液抽出、分別沈殿などの手法を用いて精製して精製物として用いることもできる。
【0026】
本発明のトリプトファナーゼ阻害剤又はその原料としては、オウギ、カンゾウ、ケイヒ、ゴシツ、シャゼンシュ、サンシュユ、サンヤク、ジオウ、ショウキョウ、ソウジュツ、ダイオウ、ニンジン及びボタンピのいずれかあるいは2種以上を用いることが好ましい。さらに好ましくは、カンゾウ、ケイヒ、ゴシツ、サンシュユ、サンヤク、ジオウ、ショウキョウ、ソウジュツ、タイソウ、ダイオウ及びボタンピのいずれかあるいは2種以上であり、より好ましくは、カンゾウ、ケイヒ、サンシュユ、ソウジュツ、タイソウ、ダイオウ及びボタンピのいずれか又は2種以上である。より一層好ましくは、カンゾウ、ケイヒ、サンシュユ、ダイオウ及びボタンピのいずれかあるいは2種以上である。最も好ましくは、カンゾウ、ケイヒ及びダイオウのいずれかあるいは2種以上である。カンゾウは、甘味があるとともに食品用途にも広く用いられており各種組成物に適用しやすい。ケイヒは、香料やスパイスとして広く用いられていることから各種用途に適用しやすい。なお、サンシュユやボタンピもそれぞれ好ましく用いることができる。作用からすれば、最も好ましくは、ダイオウである。なお、こうして列挙した好ましい生薬の基原植物の薬用部位以外の部位やこれらの基原植物の近縁植物なども本発明のトリプトファナーゼ阻害剤として使用することができる可能性がある。
【0027】
生薬又は植物体の抽出物としては、水抽出液、熱水抽出液、水・エタノール抽出液(アルコール20〜50%程度、好ましくは30〜40%程度)、エタノール抽出液(常温又は加熱)あるいはこれらの上清の乾燥粉末などが典型的な形態である。
【0028】
生薬である植物体の部分若しくはそれ以外の部分又はこれら粉末や抽出により取得した各種形態の抽出物、すなわち、浸出液、抽出液、ペースト、粗精製物及び精製物は、いずれもトリプトファナーゼ阻害剤として使用することができる。本トリプトファナーゼ阻害剤は、その作用により、医薬品、医薬部外品、栄養補助剤、機能性食品などの食品、住居用品、衛生用品、化粧品などに有効成分としてまた添加物として含有させることができる。また、トリプトファナーゼ阻害剤は、トリプトファナーゼ含有細菌の研究用試薬等としても用いることができる。
【0029】
なお、トリプトファナーゼ阻害活性は、乳酸脱水素酵素(LDH)を用いる酵素法とHPLC法とが挙げられる。これらの方法は、いずれも、L−トリプトファンを基質としてトリプトファナーゼを作用させる反応の阻害程度を測定するものである。酵素法は、基質としてL−トリプトファンを用いこれにトリプトファナーゼによる酵素反応により生成されるピルビン酸を乳酸脱水素酵素(LDH)の酵素反応に共役するNADHの減少量を分光光度計で測定する方法である。HPLC法は、トリプトファナーゼによる反応生成物であるピルビン酸又はインドールをHPLCで測定する方法である。いずれも、トリプトファナーゼ阻害剤が存在しないときの酵素活性を対照とする。LDH活性に依存しないでトリプトファナーゼ阻害作用だけを測定できることから、より正確な測定にはHPLC法を用いることが好ましい。
【0030】
本発明の腎障害改善剤組成物、栄養補助組成物、飲食用組成物、異臭抑制剤組成物、化粧料組成物は、本発明のトリプトファナーゼ阻害剤を有効成分として含有している。こうした各種の組成物は、その用途や適用形態に応じて様々な形態を採ることができる。
【0031】
腎障害改善剤組成物は、ヒト及び非ヒト動物の腸内におけるインドール産生を抑制し及び/又は血中インドキシル硫酸濃度上昇を抑制するため、腎臓負担を軽減して、腎疾患のある個体や腎疾患の可能性の高い個体における腎機能の維持及び/又は改善を図るのに用いることができる。なお、本明細書において「非ヒト動物」とは、ヒト以外の霊長類、哺乳類及び非哺乳類を包含しており、イヌ、ネコ、サル、ウサギ等のいわゆるペットである哺乳類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の家畜である哺乳類、ニワトリ、カモ、シチメンショウ、ウズラなどの家禽などが挙げられる。
【0032】
また、本明細書において「腎障害」としては、特に限定しないが、例えば、糸球体腎炎、慢性腎炎、ネフローゼ症候群、腎不全(慢性腎不全)、糖尿病性腎不全、腎盂腎炎、通風腎、間質性腎炎、腎硬化症、多発性嚢胞腎、腎臓腫瘍、腎臓の先天異常等が挙げられる。こうした腎不全の前段階の患者においても本発明の組成物は有効であるが、なかでも、本発明のトリプトファナーゼ阻害剤は、残腎機能を維持するのに好ましいため、現在又は将来的に腎不全や透析や腎臓移植が必要となる慢性腎不全の個体に適用するのが有効である。したがって、本発明によれば、腎障害個体または腎障害の可能性ある個体に対してこうした腎障害改善組成物を投与する工程を含む、腎障害の予防、改善又は治療方法が提供される。こうした方法によれば、腎不全を予防し、改善し、腎不全の進行を遅延させることができる。
【0033】
腎障害改善剤組成物は、ヒト及び非ヒト動物に対して、経口又は非経口(経胃又は経腸(小腸、大腸)等)にて投与することができる。腎障害改善剤組成物は、従来公知の医薬品等における製剤形態を有することができる。典型的には、煎じ液そのままの煎剤や浸出液や抽出液、濃縮液など含有する溶液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤などの液剤、原料末、粗精製粉末、精製粉末などを含有する、散剤、丸剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、チュアブル剤、トローチ剤、口腔内貼付剤などの固形剤や凍結乾燥製剤などが挙げられる。こうした各種の製剤形態の製剤は、常套手段により調製することができ、製剤形態に応じて用いることのできる担体も当業者において周知である。こうした担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、デンプン、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩液などが挙げられる。また、必要に応じ、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤などの添加剤を用いることができる。
【0034】
腎障害改善用組成物は乳酸菌を含有していてもよい。こうした菌としては、例えば、一般の食品等に用いられる乳酸菌が使用でき、特に、ヒトの腸内に生存する乳酸菌類が好ましく用いられる。典型的には、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アドレッセンテス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス及びストレプトコッカス・フェカリスなどが挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、ビフィドバクテリウム属及び/又はラクトバチルス属を用いることが好ましい。なお、こうした乳酸菌は、生きた状態で含有されていることが好ましい。生きた状態の乳酸菌は、例えば、培地とともに懸濁された懸濁液、固形物、乾燥粉末等として得ることができる。
【0035】
腎障害改善剤組成物を医薬品として使用する場合のトリプトファナーゼ阻害剤の有効な投与量は、個々の患者の年齢、体重、症状、疾患の程度、投与経路、スケジュール、製剤形態等により適宜決定されるが、例えば、経口投与の場合、植物又はその抽出物の乾燥重量換算で、一般に一日あたり0.001〜1000mg/kg体重程度であり、好ましくは0.01〜500mg/kg体重程度であり、より好ましくは0.1〜100mg/kg体重程度である。
【0036】
栄養補助組成物は、ヒト及び非ヒト動物(特にペットなど)の腸内におけるインドール産生の抑制及び/又は血中インドキシル硫酸濃度の抑制により、腎障害を有する個体(特に腎不全又はその前段階の個体)のQOLの向上や健常個体の健康を維持又は改善するのに用いることができる。また、毒素であるインドールの産生を抑制するため、腸内環境を改善する用途のほか、乳酸菌やビフィズス菌など他の腸内フローラ構成菌の増殖を促進する用途に用いることができる。特に、コレステロールなど脂肪分の多い食餌を摂取した場合には、腸内フローラにおいて腸内のウェルシュ菌が増加し、糞便内のトリプトファナーゼ活性が増加することが報告されており、本栄養補助組成物によれば、こうした食事に対しても、腸内フローラの健全性を維持又は改善することができる。したがって、本栄養補助組成物は、高脂肪食(高コレステロール食)用の栄養補助組成物として好適である。また、本栄養補助組成物は、ウェルシュ菌などの悪性菌が増加する傾向にある老人や病人(腎障害患者を含む)における腸内フローラにおいて有用菌である嫌気性菌を増加させることができる。
【0037】
さらに、本栄養補助組成物は、腸内のインドール及びアンモニア産生を抑制し、血中のインドール濃度も抑制するため、汗、便など排泄物の異臭抑制用途のほか、体臭や口、足、腋、頭部等の身体部位の異臭抑制(消臭)用途にも用いることができる。特に、病人や老人のために用いることで介護者の負担を軽減することができる。
【0038】
なお、栄養補助組成物には、上記のような乳酸菌を含有していてもよい。さらに、オリゴ糖なども含んでいてもよい。本栄養補助組成物は、飲食品とのキットの一部を構成していてもよい。キット内の飲食品を飲食するときに、その飲食品に添加して摂取することもできるし、飲食品の食前食中食後に別途摂取することもできる。こうしたキットには、さらに乳酸菌製剤を含んでいてもよい。
【0039】
栄養補助組成物は、ヒト及び非ヒト動物に対して経口又は経胃若しくは経腸にて投与することができる。栄養補助組成物は、医薬品又は医薬部外品における各種の経口用の製剤形態を採ることができるほか、非経口投与のための形態としては、経胃又は経腸栄養剤の形態を採ることができる。栄養補助組成物としては、固形剤であっても液剤であってもよいが、必要時に溶解又は懸濁して液剤に調製できるものであってもよい。なお、非ヒト動物に対しては、飼料添加物の形態とすることができる。
【0040】
栄養補助組成物として使用する場合のトリプトファナーゼ阻害剤の有効な投与量は、個々の患者の年齢、体重、症状、疾患の程度、投与経路、スケジュール、製剤形態等により適宜決定されるが、例えば、経口投与の場合、植物又はその抽出物の乾燥重量換算で、一般に一日あたり0.001〜1000mg/kg体重程度であり、好ましくは0.01〜500mg/kg体重程度であり、より好ましくは0.1〜100mg/kg体重程度である。
【0041】
飲食用組成物は、ヒト及び非ヒト動物(ペットなど)の腸内におけるインドール産生の抑制及び/又は血中インドキシル硫酸濃度の抑制により、腎障害を有する個体(腎不全の個体又は腎不全の前段階にある個体)のQOLの向上や健常個体の健康を維持又は改善する機能を有する飲食品に用いることができる。また、栄養補助組成物と同様、腸内環境を改善する機能のほか、乳酸菌やビフィズス菌など他の腸内フローラ構成菌の増殖を促進する機能、汗、便など排泄物の異臭抑制用途のほか、体臭や口、足、腋、頭部等の身体部位の異臭抑制(消臭)機能を有する飲食品に用いることができる。
【0042】
飲食用組成物は、一般の食品又は飲料のほか、主としてヒト用の機能性飲料又は食品、未熟児用飲料又は食品、乳児用飲料又は食品、妊産婦用飲料又は食品、老人用食品、病人用飲料又は食品、保健用飲料又は食品などとすることができる。飲料又は食品の形態としては特に限定しないが、クッキー、ビスケット、キャンディ、ガム、ゼリー等の固形又は半固形嗜好食品類、果汁、茶、コーヒー、清涼飲料等の嗜好飲料類、パン、加工米飯、麺類等の主食系の食品類、スープ、カレー、シチュー、各種ソースなどの副食系食品類、各種の風味・調味料類とすることができる。なお、トリプトファナーゼ阻害剤を、こうした飲料又は食品とすることは当業者において容易である。
【0043】
また、飲食用組成物は、これを摂取した場合であっても、タンパク質の一日所要量が1.0g/kg/日以下となるように制御された低タンパク質食品であることが好ましい。より好ましくは、0.8g/kg/日である。例えば、本飲食用組成物が、一日三食とした場合の一食分の場合、本飲食用組成物のタンパク質含有量は20g以下であることが好ましく、10g以下であることがより好ましく、さらに好ましくは5g以下であることが好ましく、最も好ましくは2g以下である。
【0044】
飲食用組成物には、上記のような乳酸菌を含有していてもよいし、また、組成物自体がヨーグルトや発酵乳などの乳酸発酵食品であってもよい。
【0045】
飲食用組成物におけるトリプトファナーゼ阻害剤の含有量は特に限定されるものではないが、例えば、乾燥重量換算で0.01〜20質量%程度が好ましく、より好ましくは、0.1〜5質量%である。なお、非ヒト動物に対しては、飼料又はペットフードの形態とすることができる。
【0046】
異臭抑制剤組成物は、常在菌である大腸菌が身体の表面においてアカや汗などの排泄物に存在しうるトリプトファンから悪臭原因物質であるインドールを産生するのを抑制することにより、ヒト及び非ヒト動物(特にペットなど)の身体臭、口腔、足、腋、頭部、毛髪等の身体部位の異臭抑制(消臭)用途に用いることができる。また、住環境中の汚れやゴミのある部位やペット回りの異臭抑制(消臭)用途に用いることができる。さらにまた、衛生用品などにおける異臭抑制(消臭)用途に用いることができる。
【0047】
異臭抑制剤組成物は、身体又はその一部の異臭抑制用途に用いる場合には、組成物を身体の全身又はその一部に容易に適用可能な、ローション、スプレー、乳液、ゲル、クリーム、貼付剤等の各種の外用形態とすることができる。例えば、デオドラントスプレーやローション、口腔ケアスプレー、足、腋、頭部又は毛髪用スプレー等とすることができる。なお、こうした異臭抑制組成物には、エタノールなどの除菌又は殺菌成分や、芳香成分などを含めることができる。
【0048】
また、住環境(衣類を含む。)における異臭抑制用途に用いる場合には、スプレー剤、洗浄剤、清拭材(シート状の清拭用基材にトリプトファナーゼ阻害剤を含有させたもので拭き取りなどに用いるもの)などの形態とすることができる。こうした異臭抑制組成物は、例えば、住居の壁、天井、床のほか、トイレ、台所(生ゴミなどの容器等や排水口を含む)、浴室(排水口を含む)、靴箱や靴、ベッド、寝具、カーテン、ペット回り(以上、住居用である。)、衣類(肌着、靴下を含む)(以上、衣類用である。)などに対して適用することができる。なお、こうした異臭抑制組成物にも、エタノールなどの除菌又は殺菌成分や芳香成分などを含めることができる。
【0049】
さらに、衛生用品などにおける異臭抑制用途に用いる場合には、おむつ、衛生用品、医療用品、寝具、肌着などの衣類、毛髪用ブラシなどヒトの便、尿、血液、汗、アカなどの排泄物に接触する可能性のある製品に対して適用できるスプレー剤、洗浄剤、清拭材の形態を採ることができる。また、こうした製品のうち使い捨てされる製品の場合であれば、予めトリプトファナーゼ阻害剤を含浸、噴霧等により含有させた製品形態も採ることができる。さらに、こうした製品とともに使用可能なシート状態等の基材にトリプトファナーゼ阻害剤を含有させた異臭抑制基材の形態とすることもできる。例えば、オムツや寝具に対して適用可能なシート状の異臭抑制基材とすることができる。なお、衣類等に対する洗浄剤又はリンス剤(柔軟仕上げ剤を含む。)にトリプトファナーゼ阻害剤を含めて当該阻害剤の衣類等への残留を意図することにより、洗濯後の衣類に異臭抑制効果を付与することもできる。こうした異臭抑制組成物にも、エタノールなどの除菌又は殺菌成分や、芳香成分などを含めることができる。
【0050】
異臭抑制剤組成物におけるトリプトファナーゼ阻害剤の含有量は特に限定されるものではないが、例えば、乾燥重量換算で0.01〜20質量%程度が好ましく、より好ましくは、0.1〜5質量%である。
【0051】
化粧料組成物は、トリプトファナーゼ阻害剤を含有することで、皮膚や頭皮表面の常在菌である大腸菌がアカや汗中に存在しうるトリプトファンから悪臭原因物質であるインドールを産生するのを抑制させて、ヒトの身体臭等を抑制することができる化粧料組成物となっている。
【0052】
化粧料組成物としては、ヒトの顔を含む身体に適用できるローション、乳液、クリームなどの外用剤や頭皮や毛髪用のローション、スプレー、クリーム等の外用剤の形態とすることができる。また、ヒトの身体の洗浄剤、毛髪の洗浄剤やリンス剤などの形態とすることもできる。こうした化粧料組成物には、除菌殺菌成分や適当な芳香成分を含めることができる。
【0053】
化粧料組成物におけるトリプトファナーゼ阻害剤の含有量は特に限定されるものではないが、例えば、乾燥重量換算で0.01〜20質量%程度が好ましく、より好ましくは、0.1〜5質量%である。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を具体例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
表3に示す市場で入手可能な生薬(日本薬局方適合品)について、トリプトファナーゼの阻害活性を調べた。なお、各種エキス末は、いずれも熱水抽出によるエキス末であった。また、カンゾウエキス抽出末は、カンゾウの熱水抽出物をさらに水・エタノール抽出したエキス抽出末であった。すなわち、以下の組成のうち、トリプトファナーゼ以外の成分を予め混合しておき、37℃で10分静置した後、トリプトファナーゼ溶液を添加して、37℃で10分間反応を行い、100μlの50%のトリクロロ酢酸で反応を停止させ、遠心後の上清を試料とした。この試料につき、以下の条件で液体クロマトグラフィーを行い、試料中のトリプトファナーゼの反応生成物であるインドールのピーク面積を測定した。なお、反応液組成中の生薬の試料溶液に替えて蒸留水を用いたものをコントロールとして同様に操作した上、液体クロマトグラフィーにてインドールのピーク面積を測定した。トリプトファナーゼ阻害活性は、以下の式で阻害率を算出することにより評価した。各生薬について結果を表3に併せて示す。

阻害率(%)=100−(PAs/PAc)×100
ただし、PAs:試料のインドールのピーク面積
PAc:コントロールのインドールのピーク面積

反応液の組成
成分 使用濃度 最終濃度 使用量
KPB(pH7.0) 1.0M 50mM 50μl
L−トリプトファン 5mM 2.5mM 500μl
PLP 0.75mM 0.025mM 33.3μl
試料溶液*1 0.1% 0.01% 100μl
蒸留水 300μl
トリプトファナーゼ*2 0.84U/ml 0.014U/ml 16.7μl
1000μl

*1:試料溶液は、生薬が0.1質量%となるように蒸留水に添加し混合した後、遠心して得た上清を用いた。
*2:トリプトファナーゼは、水溶液(50mM KPB(pH7.0)+0.0075mM PLP +0.0065mM DTT)にて希釈して0.84U/ml(ピルビン酸を基質とする乳酸脱水素酵素(LDH)反応に伴うNADHの減少量を測定する方法による)に調製して使用した。

HPLC条件
カラム:Develosil UG−5(ガードカラム装着)
移動相:1%酢酸:メタノール混液=1:1
流速:1.0ml/分
検出:蛍光検出器(Ex:275nm、Em:355nm)
注入量:10μl
【0056】
【表3】

【0057】
表3に示すように、オウギ、カンゾウ、ケイヒ、ゴシツ、サイコ、シャゼンシュ、サンシュユ、サンヤク、ジオウ、ショウキョウ、ソウジュツ、チョレイ、ダイオウ、ニンジン、ハンゲ、ボウイ及びボタンピについてトリプトファナーゼ阻害活性が認められた。これに対し、ブクリョウ、オウゴン、タクシャについて、トリプトファナーゼ阻害活性はほとんど認められなかった。
【0058】
これらのなかでも、オウギ、カンゾウ、ケイヒ、ゴシツ、シャゼンシュ、サンシュユ、サンヤク、ジオウ、ショウキョウ、ソウジュツ、ダイオウ、ニンジン及びボタンピが良好であり、さらに、阻害率約20%以上は、カンゾウ、ケイヒ、ゴシツ、サンシュユ、サンヤク、ジオウ、ショウキョウ、ソウジュツ、タイソウ、ダイオウ及びボタンピであった。さらに、阻害率30%以上は、カンゾウ、ケイヒ、サンシュユ、ソウジュツ、タイソウ、ダイオウ及びボタンピであった。阻害率約50%以上は、カンゾウ(エキス抽出末のみ)、ケイヒ、サンシュユ、ダイオウ及びボタンピであり、阻害率約70%以上はケイヒ及びダイオウであった。
【0059】
カンゾウについては、カンゾウエキス抽出末がカンゾウエキス末に比較して高いトリプトファナーゼ阻害率を示していた。また、高濃度のカンゾウエキス抽出末の試料溶液を用いて最終濃度0.1質量%としてトリプトファナーゼ阻害活性を測定したところ、ほぼ100質量%の阻害活性を示した。本実施例での生薬の試料液は単に生薬末を水に添加し混合した上清に過ぎないものである。以上のことから、生薬を適当な抽出法で抽出するか又は単に高濃度化するだけでも、さらに高いトリプトファナーゼ阻害活性が期待できることがわかった。
【0060】
さらに、ダイオウについて、さらに最終濃度を低下(0.001質量%、0.0001質量%)させてトリプトファナーゼ阻害活性を測定したところ、それぞれ、33.1%、13.4%の阻害率を示した。以上のことから、ダイオウについては、極めてトリプトファナーゼ阻害活性が高いことがわかった。また、糖類下剤であるラクツロースにはトリプトファナーゼ阻害活性は認められなかった。
【0061】
以上のことから、ある種の生薬についてトリプトファナーゼ阻害活性があることがわかった。この種のトリプトファナーゼ阻害活性と、動物に投与したときの血中インドキシル硫酸の低下作用との関係はすでに明らかとなっている(特開平11−209303号)。したがって、これらの生薬はいずれも動物に投与された際に血中インドキシル硫酸を低下させる、すなわち、腸内のインドールやアンモニア産生を抑制できることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(d):
(a)オウギ、カンゾウ、ケイヒ、ゴシツ、サイコ、サンシュユ、サンヤク、ジオウ、シャゼンシュ、ショウキョウ、ソウジュツ、タイソウ、ダイオウ、チョレイ、ニンジン、ハンゲ、ボウイ及びボタンピからなる群から選択される1種又は2種以上の生薬
(b)前記(a)の生薬の抽出物
(c)前記(a)の生薬の基原植物のいずれかの部位(前記(a)の生薬の薬用部位を除く)
(d)前記(c)の抽出物
から選択される1種又は2種以上を含有する、トリプトファナーゼ阻害剤。
【請求項2】
前記(a)の生薬は、オウギ、カンゾウ、ケイヒ、ゴシツ、シャゼンシュ、サンシュユ、サンヤク、ジオウ、ショウキョウ、ソウジュツ、ダイオウ、ニンジン及びボタンピからなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載のトリプトファナーゼ阻害剤。
【請求項3】
前記(a)の生薬は、カンゾウ、ケイヒ、ゴシツ、サンシュユ、サンヤク、ジオウ、ショウキョウ、ソウジュツ、タイソウ、ダイオウ及びボタンピからなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載のトリプトファナーゼ阻害剤。
【請求項4】
前記(a)の生薬は、カンゾウ、ケイヒ、サンシュユ、ソウジュツ、タイソウ、ダイオウ及びボタンピからなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載のトリプトファナーゼ阻害剤。
【請求項5】
前記(a)の生薬は、カンゾウ、ケイヒ、サンシュユ、ダイオウ及びボタンピからなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載のトリプトファナーゼ阻害剤。
【請求項6】
前記(a)の生薬は、カンゾウ、ケイヒ及びダイオウからなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載のトリプトファナーゼ阻害剤。
【請求項7】
前記(b)の生薬抽出物を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載のトリプトファナーゼ阻害剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のトリプトファナーゼ阻害剤を有効成分とする、腎障害改善剤組成物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のトリプトファナーゼ阻害剤を含有する、栄養補助組成物。
【請求項10】
乳酸菌を含有する、請求項9に記載の栄養補助組成物。
【請求項11】
異臭抑制用である、請求項9又は10に記載の栄養補助組成物。
【請求項12】
腸内環境改善用である、請求項9又は10に記載の栄養補助組成物。
【請求項13】
腎障害患者を含む病人用又は老人用である、請求項9〜12のいずれかに記載の栄養補助組成物。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれかに記載のトリプトファナーゼ阻害剤を含有する、飲食用組成物。
【請求項15】
乳酸発酵食品である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれかに記載のトリプトファナーゼ阻害剤を含有する、異臭抑制剤組成物。
【請求項17】
身体若しくはその一部用、住居用、衣類用又は衛生用品用である、請求項16に記載の異臭抑制剤組成物。
【請求項18】
請求項1〜7のいずれかに記載のトリプトファナーゼ阻害剤を含有する、化粧料組成物。

【公開番号】特開2007−1900(P2007−1900A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182317(P2005−182317)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】