説明

トルクロッド

【課題】所定以上の荷重入力時に下方へ折れるようにする。
【解決手段】第1の円環部21と、第2の円環部22と、第1の円環部21と第2の円環部22とを連結する連結ステー部24と、第1の円環部21内に第1のゴム弾性体41を介して連結される第1の取付け部材31と、第2の円環部22内に第2のゴム弾性体42を介して連結される第2の取付け部材32とを有している。連結ステー部24は、上股部24Uと下股部24Lを有し、下股部24Lの方が上股部24Uよりも曲げ強度が低く設定されている。上股部24Uと下股部24Lとの間には、第1の円環部21の一部が露出した空洞部30が形成されている。第1の円環部21のうち空洞部30に露出した部位には突起部21Bを有する薄肉部21Aが設けられている。空洞部30のうち、第1の円環部21に対向する部位には、下方側が第2の円環部22側に傾斜した傾斜面24Aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクロッドに係り、特に車体に対するパワーユニットの防振支持機構を構成するマウントと一種であり、主としてパワーユニットから車体に及ぼされるトルク反力等が負荷荷重として入力されるトルクロッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム弾性体の外周面に外周側へ凸状とされた突起部が形成されると共に、第2円環部の内周面における連結ステー部との接合部付近に突起部が挿入される凹状のノッチ部が形成されたトルクロッドが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−112537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両に対しては正面衝突やオフセット衝突時に極めて高い安全性が要求されるようになっており、このような車両正面側における衝突時の安全性を高める構造として、例えば、車両が衝突した際の衝撃的な大荷重によりパワーユニットがエンジンルーム内から下方(路面側)へ脱落するようにしたものが開発されている。これにより、車両衝突時にパワーユニット及びその周辺構造物が車内側へ移動することを効果的に防止できるようになる。
【0005】
このようなパワーユニットの脱落構造を実現するためには、例えば、パワーユニットを車体側へ連結するトルクロッドの一部分に意図的に応力集中部を形成し、この応力集中部を起点として車両衝突時の衝撃的な大荷重によりパワーユニットを脱落させる所定の方向へ変形、破壊することが考えられる。
【0006】
しかしながら、上記した従来例においては、高強度の要求される車両走行時の上下振動や、捻り力に対しての強度についても影響を及ぼしてしまう可能性があり、車両の衝突による前後方向の衝撃的入力に対してのみ、パワーユニットを確実に下方へ脱落させる技術が求められている。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、所定以上の荷重入力時に、パワーユニットをより確実に下方へ折れるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、第1の円環部と、第2の円環部と該第2の円環部の外周部分から径方向外側へ延出して前記第1の円環部の外周部分に連なり、該第1の円環部の上方に連結される上股部と下方に連結され該上股部よりも曲げ強度が低く設定された下股部とを有すると共に、前記上股部と前記下股部との間に前記第1の円環部の一部が露出した空洞部が形成された連結ステー部と、前記第1の円環部の内周側に配置され、パワーユニットに連結される第1の取付け部材と、前記第2の円環部の内周側に配置され、車体に連結される第2の取付け部材と、前記第1の円環部と前記第1の取付け部材との間に配設され、第1の円環部と第1の取付け部材とを弾性的に連結した第1のゴム弾性体と、前記第2の円環部と前記第2の取付け部材との間に配設され、第2の円環部と第2の取付け部材とを弾性的に連結した第2のゴム弾性体と、前記第1の円環部のうち前記空洞部に露出した部位に設けられた薄肉部と、該薄肉部に設けられ、前記第1の円環部の軸方向に凸に形成された突起部と、前記空洞部のうち、該第1の円環部に対向する部位に形成され、下方側が前記第2の円環部側に傾斜した傾斜面と、を有している。
【0009】
請求項1に記載のトルクロッドでは、第1の円環部のうち、連結ステー部の上股部と下股部との間の空洞部に露出する部位に薄肉部が設けられ、該薄肉部に、第1の円環部の軸方向に凸に形成された突起部が設けられているので、車両衝突時に、パワーユニットから第1の取付け部材に対して所定以上の荷重が入力され、更に該第1の取付け部材から第1の円環部に伝達された際に、該第1の円環部のうち突起部を有する薄肉部に応力集中が生じ易くなる。これにより、薄肉部を起点として第1の円環部が破断することで、第1の取付け部材が空洞部内に後退可能となる。
【0010】
これに加えて、連結ステー部が、第1の円環部の上方に連結される上股部と、下方に連結された下股部とを有しており、該下股部の方が上股部よりも曲げ強度が低く設定されているので、第1の取付け部材への所定以上の荷重入力時に、下股部が破断する。
【0011】
更に空洞部のうち、第1の円環部に対向する部位には、下方側が第2の円環部側に傾斜した傾斜面が形成されているので、空洞部内に後退して該傾斜面に当接した第1の取付け部材は、該傾斜面に案内されて下方へ移動する。第1の取付け部材には、パワーユニットが連結されており、第1の取付け部材31が下方へ移動することで、パワーユニットをより確実に下方へ脱落させることができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載のトルクロッドにおいて、前記上股部は、リブにより補強されている。
【0013】
請求項2に記載のトルクロッドでは、上股部がリブにより補強され、下股部の曲げ強度が相対的により一層低く構成されているので、第1の取付け部材への所定以上の荷重入力時に、下股部をより確実に破断させることができる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のトルクロッドにおいて、前記突起部は、前記第1の取付け部材への荷重入力方向と交差する位置に設けられている。
【0015】
請求項3に記載のトルクロッドでは、第1の取付け部材への所定以上の荷重入力時に、該荷重が、第1の円環部における薄肉部の突起部に集中的に入力される。これにより、第1の円環部の薄肉部に、より大きな応力集中が生じる。このため、該薄肉部をより確実に破断させることができる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項3に記載のトルクロッドにおいて、前記第1の取付け部材のうち、前記突起部と対向する位置には、該突起部に接近するように張り出した張出し部が設けられている。
【0017】
請求項4に記載のトルクロッドでは、第1の取付け部材への所定以上の荷重入力時に、該第1の取付け部材の張出し部が、第1の円環部における突起部に速やかに接触して、荷重が伝達される。このため、薄肉部をより確実に破断させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のトルクロッドによれば、所定以上の荷重入力時により確実に下方へ折れるようにすることができる、という優れた効果が得られる。
【0019】
請求項2に記載のトルクロッドによれば、下股部をより確実に破断させることができる、という優れた効果が得られる。
【0020】
請求項3に記載のトルクロッドによれば、薄肉部をより確実に破断させることができる、という優れた効果が得られる。
【0021】
請求項4に記載のトルクロッドによれば、薄肉部をより確実に破断させることができる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】車体とパワーユニットとの間に取り付けられたトルクロッドを示す斜視図である。
【図2】トルクロッドを示す斜視図である。
【図3】第2の円環部の軸方向から見たトルクロッドを示す平面図である。
【図4】トルクロッドにおける第1の円環部付近の構造を示す拡大斜視図である。
【図5】(A)第1の取付け部材への所定以上の荷重入力時に、第1の円環部が薄肉部を起点として破断した状態を示す要部側面図である。(B)連結ステー部の下股部が破断して、第1の取付け部材が空洞部内に後退し、更に該空洞部の傾斜面に案内されて下方へ移動している状態を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。図1,図2において、本実施形態に係るトルクロッド10は、車両に用いられ、車体14に対するパワーユニット12の防振支持機構を構成するマウントの一種であって、例えば、パワーユニット12の端部12Aと車体14との間に介装されている。このトルクロッド10は、第1の円環部21と、第2の円環部22と、連結ステー部24と、第1の取付け部材31と、第2の取付け部材32と、第1のゴム弾性体41と、第2のゴム弾性体42と、薄肉部21Aと、突起部21Bと、傾斜面24Aと、を有し、パワーユニット12のトルク反力や慣性力により、パワーユニット12が、例えばロール方向や車体前後方向へ変位することを制限するように構成されている。
【0024】
第1の円環部21及び第2の円環部22は、共に略円環状に構成され、例えば第2の円環部22の方が第1の円環部21よりも大径に形成されている。また第1の円環部21と、第2の円環部22と、連結ステー部24は、例えば合成樹脂により一体成形されてロッド本体部26を構成している。車両への取付け状態において、第2の円環部22の軸方向は例えば車両上下方向とされ、第1の円環部21の軸方向は例えば車幅方向とされる。このため、第1の円環部21の軸方向と、第2の円環部22の軸方向とは、互いに直交している。なお、車両へのトルクロッド10の取付け方はこれに限られるものではなく、例えば第2の円環部22の軸方向を車幅方向とし、第1の円環部21の軸方向を車両上下方向としてもよい。
【0025】
図2に示されるように、連結ステー部24は、第2の円環部22の外周部分から径方向外側へ延出して第1の円環部21の外周部分に連なっている。この連結ステー部24は、第1の円環部21の上方に連結される上股部24Uと、該第1の円環部21の下方に連結された下股部24Lとを有している。下股部24Lは、上股部24Uよりも曲げ強度が低く設定されており、該上股部24Uよりも薄肉とされている。換言すれば、上股部24Uは、下股部24Lよりも曲げ強度が高く、厚肉とされている。
【0026】
具体的には、上股部24Uの肉厚は、特に第1の円環部21に連なる部位において、第1の円環部21の外径よりも一段と高く設定されている。これに加えて、上股部24Uはリブ28により補強されている。この上股部24Uは、曲げ強度だけなく、第1の取付け部材31への荷重入力時の圧縮強度についても、下股部24Lより高く構成されている。このように、上股部24Uと下股部24Lとの間には、大きな曲げ強度差が設けられている。なお上股部24Uが厚肉とされることから、成形性等を考慮して該上股部24Uの側部に肉抜き部24Bを適宜設けてもよい。
【0027】
連結ステー部24において、上股部24Uと下股部24Lとの間には、第1の円環部21の一部が露出した空洞部30が形成されている。空洞部30のうち、第1の円環部21に対向する部位には、下方側が第2の円環部22側に傾斜した傾斜面24Aが形成されている。空洞部30の上下寸法は、例えば第1の円環部21の内径と同等以上に設定されている。車両衝突時、薄肉部21Aを起点として第1の円環部21が破断した際に、第1の取付け部材31が空洞部30内に後退し易くするためである。
【0028】
第1の円環部21のうち空洞部30に露出した部位には、薄肉部21Aが設けられている。この薄肉部21Aは、空洞部30に露出しない一般部21Cよりも肉厚が小さく設定された部位であり、例えば空洞部30の上方に向かうに従って、肉厚が漸減するように構成されている。
【0029】
また薄肉部21Aには、第1の円環部21の軸方向に凸に形成された突起部21Bが設けられている。この突起部21Bは、薄肉部21Aにおいて、第1の取付け部材31への荷重入力方向と交差する位置に設けられている。本実施形態では、第1の取付け部材31への荷重入力方向は、第1の取付け部材31における平板部31Aの面方向である。これは、図1に示されるように、第1の取付け部材31の平板部31Aが、パワーユニット12からの荷重の入力方向である車両前後方向に沿った状態で、該パワーユニット12の端部12Aに固定されるためである。
【0030】
なお、パワーユニット12の端部12Aに対する平板部31Aの取付け状態が上記構成と異なり、第1の取付け部材31への荷重入力方向と、平板部31Aの面方向とが異なる場合には、突起部21Bの位置は、第1の取付け部材31への荷重入力方向を基準として設定される。
【0031】
第1の円環部21の周方向における突起部21Bの範囲は、第1の取付け部材31の平板部31Aの厚さと同等とされている。第1の円環部21の軸方向への突起部21Bの突出量は任意である。図3に示されるように、突起部21Bは、例えば第1の円環部21の軸方向の一方側にのみ設けられているが、これに限られず、該軸方向の両側に設けられていてもよい。
【0032】
図1から図4において、第1の取付け部材31は、第1の円環部21の内周側に配置され、パワーユニット12に連結される、例えば金属製の軸状部材である。具体的には、第1の取付け部材31は、例えば第1の円環部21に挿通されており、該第1の円環部21の軸方向両側に突出する両端に平板部31Aが設けられている。この平板部31Aには、例えばボルト34を通すための貫通孔31Bが夫々形成されている。図1に示されるように、第1の取付け部材31は、該ボルト34を貫通孔31Bに通して、パワーユニット12の端部12Aに締結することで、該パワーユニット12に固定されるようになっている。
【0033】
第1の取付け部材31のうち、第1の円環部21の突起部21Bと対向する位置、例えば平板部31Aの端面31Eの根元部には、該突起部21Bに接近するように張り出した張出し部31Cが設けられている。第1の取付け部材31のうち、第1の円環部21に挿通される中央部31Dは、例えば円柱状に構成されており、張出し部31Cは、該中央部31Dの外径よりも径方向外側まで張り出して構成されている。
【0034】
また図4に示されるように、張出し部31Cを、第1の円環部21の突起部21Bと対向する位置だけでなく、第1の取付け部材31の径方向におけるその反対側にも設けることができる。換言すれば、張出し部31Cを、平板部31Aの両側の端面31Eの根元部に夫々設けてもよい。このように構成することで、第1の円環部21に第1の取付け部材31を取り付ける際に、張出し部31Cの前後、或いは平板部31Aの表裏に関係なく、張出し部31Cを突起部21Bに対向させることができ、作業性が向上するからである。
【0035】
図2,図3において、第2の取付け部材32は、第2の円環部22の内周側に配置され、車体14(図1)に連結される、例えば金属製の円筒状部材である。第2の取付け部材32には、車体14に締結される例えばボルト36(図1)が挿通されるようになっている。
【0036】
図1から図4において、第1のゴム弾性体41は、第1の円環部21と第1の取付け部材31との間に配設され、第1の円環部21と第1の取付け部材31とを弾性的に連結している。具体的には、第1のゴム弾性体41は、例えば第1の取付け部材31における中央部31Dの外周面に加硫成形されると共に、第1の円環部21の内周面に加硫接着されている。
【0037】
図2,図3において、第2のゴム弾性体42は、第2の円環部22と第2の取付け部材32との間に配設され、第2の円環部22と第2の取付け部材32とを弾性的に連結している。具体的には、第2のゴム弾性体42は、例えば第2の取付け部材32の外周面に加硫成形されると共に、第2の円環部22の内周面に加硫接着されている。
【0038】
連結ステー部24の軸方向における第2の取付け部材32の両側には、すぐり部38,40が形成されている。このすぐり部38,40は、第2の取付け部材32の軸方向に沿って第2のゴム弾性体42を貫通している。すぐり部38,40の間には、ゴム連結部44が形成されている。第2の取付け部材32は、第2の円環部22に対して、該ゴム連結部44において弾性的に支持されている。
【0039】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図1において、本実施形態に係るトルクロッド10は、パワーユニット12の端部12Aと車体14との間に取り付けて用いられる。このトルクロッド10によれば、パワーユニット12のトルク反力や慣性力により、該パワーユニット12が、例えばロール方向や車体前後方向へ変位することを弾性的に制限することができる。
【0040】
また第2の円環部22が、第2の取付け部材32に対して、連結ステー部24の軸方向に所定量以上相対変位した場合、すぐり部38,40の内壁面同士、又は該内壁面と第2の取付け部材32とが当接することで、それ以上の相対変位を制限することができる。
【0041】
そして、車両衝突時には、次のようにして、トルクロッド10が下方へ折れた状態となる。トルクロッド10では、第1の円環部21のうち、連結ステー部24の上股部24Uと下股部24Lとの間の空洞部30に露出する部位に薄肉部21Aが設けられ、該薄肉部21Aに、第1の円環部21の軸方向に凸に形成された突起部21Bが設けられているので、車両衝突時に、パワーユニット12から第1の取付け部材31に対して所定以上の荷重が入力され、該荷重が更に該第1の取付け部材31から第1の円環部21に伝達された際に、該第1の円環部21のうち突起部21Bを有する薄肉部21Aに応力集中が生じ易くなる。
【0042】
ここで、突起部21Bは、第1の取付け部材31への荷重入力方向である例えば平板部31Aの面方向と交差する位置に設けられており、また該第1の取付け部材31のうち、突起部21Bと対向する位置には、該突起部21Bに接近するように張り出した張出し部31Cが設けられているので、第1の取付け部材31への所定以上の荷重入力時に、第1のゴム弾性体41が弾性変形することで、該第1の取付け部材31の張出し部31Cが、第1の円環部21における突起部21Bに速やかに接触する。これにより、第1の取付け部材31に入力された荷重が、該突起部21Bに迅速かつ集中的に入力され、第1の円環部21の薄肉部21Aに大きな応力集中が生じる。これにより、図5(A)に示されるように、第1の円環部21を、薄肉部21Aを起点として、より確実に破断させることができる。またこれによって、第1の取付け部材31が空洞部30内に後退可能となる。
【0043】
これに加えて、本実施形態では、連結ステー部24が、第1の円環部21の上方に連結される上股部24Uと、下方に連結された下股部24Lとを有しており、下股部24Lの曲げ強度が、リブ28により一層補強された上股部24Uに対して、相対的に低く設定されているので、第1の取付け部材31への所定以上の荷重入力時に、下股部24Lが確実に破断する。
【0044】
更に、図5(B)に示されるように、空洞部30のうち、第1の円環部21に対向する部位には、下方側が第2の円環部22側に傾斜した傾斜面24Aが形成されているので、空洞部30内に後退した第1の取付け部材31は、該傾斜面24Aに当接後、該傾斜面24Aに案内されて車両後方側の下方(矢印A方向)へ移動する。第1の取付け部材31には、パワーユニット12(図1)が連結されており、上記のようにトルクロッド10が下方へ折れ、第1の取付け部材31が下方へ移動することで、該パワーユニット12をより確実に下方へ脱落させることができる。
【0045】
このように、本実施形態では、連結ステー部24における上股部24Uと下股部24Lとの間に曲げ強度差を設けたり、第1の円環部21に設けた薄肉部21A及び突起部21Bにより、該第1の円環部21に応力集中を生じさせる構造としたりすることで、車両衝突時にトルクロッド10が折れる荷重(破断荷重)を容易に設定することができる。
【0046】
(他の実施形態)
第1の円環部21及び第2の円環部22が、共に略円環状に構成されるものとしたが、これらはトルクロッドの分野において用いられる円形以外の環状部であってもよい。
【0047】
また、連結ステー部24の上股部24Uをリブ28により補強するものとしたが、これに限られず、上股部24Uを下股部24Lに対して十分に肉厚にする等、該下股部24Lの曲げ強度を相対的に十分に低くできれば、リブ28を設けなくてもよい。更に連結ステー部24が、上股部24Uと下股部24Lを有する二股構造としたが、これに限られず、本実施形態と同様の作用効果が得られるものであれば、三股以上の構造であってもよい。
【0048】
また、第1の円環部21における薄肉部21Aの突起部21Bが、第1の取付け部材31へ荷重入力方向と交差する位置に設けられるものとしたが、薄肉部21Aにおいて、該荷重入力方向と交差しない位置に突起部21Bを設けてもよい。
【0049】
第1の取付け部材31のうち、突起部21Bと対向する位置に、張出し部31Cが設けられるものとしたが、これに限られず、該張出し部31Cを設けない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 トルクロッド
12 パワーユニット
14 車体
21 第1の円環部
21A 薄肉部
21B 突起部
22 第2の円環部
24A 傾斜面
24L 下股部
24U 上股部
24 連結ステー部
28 リブ
30 空洞部
31 第1の取付け部材
31C 張出し部
32 第2の取付け部材
41 第1のゴム弾性体
42 第2のゴム弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の円環部と、
第2の円環部と
該第2の円環部の外周部分から径方向外側へ延出して前記第1の円環部の外周部分に連なり、該第1の円環部の上方に連結される上股部と下方に連結され該上股部よりも曲げ強度が低く設定された下股部とを有すると共に、前記上股部と前記下股部との間に前記第1の円環部の一部が露出した空洞部が形成された連結ステー部と、
前記第1の円環部の内周側に配置され、パワーユニットに連結される第1の取付け部材と、
前記第2の円環部の内周側に配置され、車体に連結される第2の取付け部材と、
前記第1の円環部と前記第1の取付け部材との間に配設され、第1の円環部と第1の取付け部材とを弾性的に連結した第1のゴム弾性体と、
前記第2の円環部と前記第2の取付け部材との間に配設され、第2の円環部と第2の取付け部材とを弾性的に連結した第2のゴム弾性体と、
前記第1の円環部のうち前記空洞部に露出した部位に設けられた薄肉部と、
該薄肉部に設けられ、前記第1の円環部の軸方向に凸に形成された突起部と、
前記空洞部のうち、該第1の円環部に対向する部位に形成され、下方側が前記第2の円環部側に傾斜した傾斜面と、
を有するトルクロッド。
【請求項2】
前記上股部は、リブにより補強されている請求項1に記載のトルクロッド。
【請求項3】
前記突起部は、前記第1の取付け部材への荷重入力方向と交差する位置に設けられている請求項1又は請求項2に記載のトルクロッド。
【請求項4】
前記第1の取付け部材のうち、前記突起部と対向する位置には、該突起部に接近するように張り出した張出し部が設けられている請求項3に記載のトルクロッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−197876(P2012−197876A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62663(P2011−62663)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】