トルク検出装置及び電動パワーステアリング装置
【課題】安価で故障検知の信頼性の高いトルク検出装置を提供する。
【解決手段】トルク検出装置17が、唯一の磁気センサとしてのホールIC35を含むセンサ部22と、センサ部22の出力に基づいて操舵トルクを検出するトルク検出部23を備える。磁界発生装置24がセンサ部22を含む領域に磁界を発生させる。トルク検出部23は、磁界を発生させたときに生ずるホールIC35の出力のオフセット量に基づいてセンサ部22の異常を検出する。
【解決手段】トルク検出装置17が、唯一の磁気センサとしてのホールIC35を含むセンサ部22と、センサ部22の出力に基づいて操舵トルクを検出するトルク検出部23を備える。磁界発生装置24がセンサ部22を含む領域に磁界を発生させる。トルク検出部23は、磁界を発生させたときに生ずるホールIC35の出力のオフセット量に基づいてセンサ部22の異常を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク検出装置及び電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering System)等に用いられるトルク検出装置は、トーションバーの捻れ角を検出することにより、その回転軸への入力トルクを演算する構成となっている。
従来、このようなトルク検出装置として、ホールIC等を用いることにより、そのトーションバーの捻れ角、即ち入力トルクに応じて出力レベル(出力電圧)が変化する信号出力手段を構成したトルク検出装置がある(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−300267号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のトルク検出装置は、2つのホールICを用いて多重化されるため、その信頼性が向上する。すなわち、2つのホールICの出力の比較に基づいて、各ホールICの故障が検出されるため、その信頼性が向上する。
しかしながら、2つのホールICを用いた場合、製造コストが高くなる。一方、唯一のホールICを用いた場合、どのようにして故障検知を行うかが課題となる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、安価で故障検知の信頼性の高いトルク検出装置及び電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、磁束の変化を検出可能な唯一の磁気センサ(35)を含むセンサ部(22)と、上記センサ部の出力に基づいてトルクを検出するトルク検出部(23)と、上記センサ部を含む領域に磁界を発生可能な磁界発生装置(24)と、を備え、上記トルク検出部は、上記磁界発生装置によって磁界を発生させたときに生ずる上記磁気センサの出力のオフセット量に基づいて上記センサ部の異常を検出する故障検出モードを有しているトルク検出装置を提供する(請求項1)。
【0007】
本発明では、単一の磁気センサを用いた簡単な構造であり製造コストを安くすることができる。しかも、磁界発生装置によって磁界を発生させたときのセンサ部の出力のオフセット量に基づいて、センサ部の故障(磁気センサの故障、および磁気センサに接続される信号線の故障等)を検出することができ、信頼性を高くすることがてきる。
上記のトルク検出装置において、上記センサ部からの出力を二重化する一対の出力線(43,49)と、上記一対の出力線の一方および上記トルク検出部の間に介在するコンデンサ(50)と、を備える場合がある(請求項2)。この場合、コンデンサを介する微分出力に基づいて、検出トルクの通常でない急激な変化を取り出すことができる。
【0008】
上記のトルク検出装置によって検出した操舵トルクに基づいて電動モータ(19)を駆動制御する電動パワーステアリング装置(1)であれば(請求項3)、安価で信頼性の高い電動パワーステアリング装置を実現することができる。
上記の電動パワーステアリング装置において、上記故障検出モードでは、磁界発生直前のセンサ部の出力値(Ea)をホールドした第1の値(E1)と、磁界発生時のセンサ部の出力値(Eb)から上記オフセット量(Eoffset)を差し引いた第2の値(E2)との差分の絶対値(|E1−E2|)が所定量(e)を超えた場合に、上記センサ部の異常を検出する場合がある(請求項4)。この場合、第1の値と第2の値の差分に基づいて、センサ部の異常を検出する。ここで、センサ部が正常である場合、第2の値はオフセット量を差し引いて算出されている(磁界発生の影響分をキャンセルされている)ので、通常のセンサ出力と同等に扱い、電動モータの駆動制御に用いることが可能である。
【0009】
具体的には、上記の電動パワーステアリング装置において、上記第1の値または上記第2の値の何れか一方に基づいて、上記電動モータを駆動制御する場合がある(請求項5)。磁界発生装置オンの時間は例えば数msecのような短い時間で十分であり、そのような短時間の間において人間の操舵によって変化するトルク量はごく僅かである(すなわち、殆ど変化しない)と考えられるので、ホールド値としての第1の値および第2の値の何れを用いても、制御のつながりの滑らかさの向上を図ることができ、電動モータの制御に悪影響を与えることがない。したがって、車両の走行中や電動パワーステアリング装置の制御中においても、故障検知を実行することが実質的に可能となる。
【0010】
また、上記の電動パワーステアリング装置において、上記トルク検出部は、上記センサ部の出力の変化率(E* )が所定範囲内(P1≦E* ≦P2)にあるときに故障検出モードを実行する頻度(ゼロを含む)を、上記変化率が所定範囲外(E* <P1またはP2<E* )にあるときに故障検出モードを実行する頻度よりも少なくしている場合がある(請求項6)。この場合、センサ部の出力の変化率が、運転者の通常の操舵動作に対応する所定範囲内にあるときには、故障検出モードの実行頻度を少なくするか或いは故障検出モードを実行しないようにすることにより、制御負荷を軽くすることができる。一方、運転者のハンドル操作では生じ得ないような高変化率やそれに近い変化率のときには、故障検出モードの実行頻度を相対的に高くして、信頼性を向上することができる。
【0011】
また、上記の電動パワーステアリング装置において、上記トルク検出部は、操舵トルクの領域として、操舵トルクが大きくなるにつれて、第1のトルク領域(Q1)、第2のトルク領域(Q2)、第3のトルク領域(Q3)、第4のトルク領域(Q4)を設定しており、上記第2のトルク領域および上記第4のトルク領域において上記故障検出モードを実行する頻度を、上記第1のトルク領域および上記第3のトルク領域において上記故障検出モードを実行する頻度よりも少なくしている場合がある(請求項7)。
【0012】
この場合、第2のトルク領域や、第4のトルク領域において、故障検出モードを実行する頻度を相対的に少なくすることにより、これらのトルク領域で良好な操舵フィーリングを確保することができる。ここで、第2のトルク領域とは、例えば高速道を走行中に運転者が少しずつ修正舵を切るような場合に検出されるトルクの領域である。第4のトルク領域とは、例えば交差点で左折や右折する場合や、左折または右折してパーキングから出るときに検出されるトルクの領域であり、最も多用されるトルクの領域である。第3のトルク領域とは、例えばハンドルの切り始めや、手の中を滑らしながらハンドルを戻すときに検出されるトルクの領域であり、第2のトルク領域と第4のトルク領域との間の中間のトルク領域である。
【0013】
なお、上記において、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素の参 照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態のトルク検出装置を備える電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】トルク検出装置の分解斜視図である。
【図3】トルク検出装置の構成を示す模式図である。
【図4】故障検出の制御の流れを示すフローチャートである。
【図5】非走行且つ非操舵時において、磁界発生装置をオンオフするときのホールICの出力変化を示す図である。
【図6】走行時ないし操舵時において、磁界発生装置をオンオフするときのホールICの出力変化を示す図である。
【図7】磁界発生装置をオンオフするときの検出トルクの時間変化を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態のトルク検出装置の構成を示す模式図である。
【図9】図8の実施の形態において、ホールIC出力の微分値の時間変化を示す図である。
【図10】図8の実施の形態において、ホールIC出力の微分値故障検出モードの実行の周期を設定する流れを示すフローチャートである。
【図11】本発明の第3の実施の形態において、検出された操舵トルクの時間変化を示すである。
【図12】図11の実施の形態において、検出された操舵トルクに基づいて故障検出モードの実行の周期を設定する流れを示すフローチャートである。
【図13】本発明の第4の実施の形態における電気的構成の要部のブロック図である。
【図14】本発明の第5の実施の形態における電気的構成の要部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。本実施の形態では、トルク検出装置が自動車の電動パワーステアリング装置に適用された例に則して説明するが、本発明のトルク検出装置は、電動パワーステアリング装置以外の他の装置や機器に適用することもできる。
図1は、本発明の第1の実施の形態のトルク検出装置を備える電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結されるステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結される中間軸5と、この中間軸5に自在継手6を介して連結されているピニオン軸7と、ピニオン軸7の先端部に設けられたピニオン8に噛み合うラック9を形成して車両の左右方向に延びるラック軸10とを有している。
【0016】
ラック軸10は、筒状のハウジング11に軸方向移動可能に支持されている。ラック軸10の両端部にはそれぞれタイロッド12が連結されており、各タイロッド12は、対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する転舵輪13に連結されている。
操舵部材2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転は中間軸5等を介してピニオン8に伝達され、ピニオン8およびラック9によって、車両の左右方向に沿うラック軸10の直線運動に変換される。これにより、転舵輪13の転舵が達成される。
【0017】
ステアリングシャフト3は、操舵部材2に連なる第1の軸としての第1の操舵軸14と、自在継手4に連なる第2の軸としての第2の操舵軸15とを有している。これら第1および第2の操舵軸14,15は、連結軸としてのトーションバー16を介して同軸上に互いに連結されている。第1および第2の操舵軸14,15は、互いにトルク伝達可能であり、所定の範囲内で相対回転可能とされている。
【0018】
電動パワーステアリング装置1は、操舵部材2に負荷される操舵トルクを検出するトルク検出装置17と、車速を検出する車速センサ18と、トルク検出装置17および車速センサ18の検出結果に基づいて、操舵補助用の電動モータ19を駆動回路20を介して駆動制御するモータ駆動制御部21とを備えている。
トルク検出装置17は、トーションバー16の近傍に配置されたセンサ部22と、センサ部22からの信号に基づいて操舵トルクを検出するトルク検出部23と、センサ部22の近傍に配置された磁界発生装置24とを備えている。モータ駆動制御部21およびトルク検出部23は、マイクロコンピュータを含むECU25(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)に設けられている。
【0019】
トルク検出装置17では、トーションバー16のねじれに起因する第1の操舵軸14と第2の操舵軸15との相対回転変位量に基づく磁束変化から、第1および第2の操舵軸14,15に付与されるトルクを検出する。
ECU25のモータ駆動制御部21が操舵補助用の電動モータ19を駆動すると、その出力回転(動力)が、ウォームギヤ機構等の減速機構26で減速されて第2の操舵軸15へ伝達される。第2の操舵軸15に伝えられた動力は、さらに中間軸5等を介して、上記ラック軸10、タイロッド12およびナックルアーム等を含む転舵機構27に伝えられ、運転者の操舵が補助される。
【0020】
図2は、トルク検出装置17の要部の概略分解斜視図であり、図3はトルク伝達装置の模式的断面図である。図2および図3に示すように、トーションバー16の一端16aは、ピン28を用いて第1操舵軸14に結合され、トーションバー16の他端16bは、ピン29を用いて第2操舵軸15に結合されている。
トルク検出装置17は、多極磁石30と、一対の軟磁性体製の磁気ヨーク31,32と、磁気ヨーク31,32からの磁束を誘導する一対の集磁リング33,34と、磁気センサとしての唯一のホールIC35と、上記の磁界発生装置24とを備えている。磁界発生装置24は、ホールIC35を含む領域に磁界を発生可能な例えば磁界発生コイルからなる。
【0021】
多極磁石30は、第1の操舵軸14の一端に一体回転可能に結合された多極着磁のリングであり、該リングの複数の周方向位置にN極とS極とが交互に着磁されている。多極磁石30の軸線と、第1の操舵軸14の軸線とは、互いに一致している。
一対の磁気ヨーク31,32は、多極磁石30の回りに回転可能に第2の操舵軸15の一端に結合されている。一対の磁気ヨーク31,32は、互いに離隔して向き合うヨークリング31a,32aと、ヨークリング31a,32aの複数の周方向位置に爪31b,32bとを有している。一対の磁気ヨーク31,32は、それぞれの爪31b,32bが周方向に適当な間隔でずれるように対向する状態で、図3に示すように、合成樹脂部材にモールドされている。多極磁石30に対向する、各磁気ヨーク31,32の内周面は、合成樹脂部材36から露出している。
【0022】
磁気ヨーク31,32を保持した合成樹脂部材36が、第2の操舵軸15に取り付けられており、多極磁石30及び磁気ヨーク31,32が相対回転することによりヨークリング31a,32a間の磁束密度が変化するように構成されている。
磁気ヨーク31,32は、第1および第2の操舵軸14,15にトルクが加えられていない操舵中立状態において、それぞれの爪31b,32bの先端が、多極磁石30のN極及びS極の境界を指すように配置される。
【0023】
一対の集磁リング33,34は、軟磁性体を用いて形成された環状の部材であり、磁気ヨーク31,32の回りに相対回転可能に配置されており、磁気ヨーク31,32にそれぞれ磁気的に結合されている。一対の集磁リング33,34は、第1操舵軸14の軸方向X1に離隔して対向する環状の本体33a,34aと、本体33a,34aからそれぞれ突出形成され1つの周方向位置に互いに対向する平板状の集磁片33b,34bとを有している。集磁片33b,34b間の領域37内に、ホールIC35が挿入されている。上記領域37には、後述する合成樹脂部材38の一部が充填されており、ホールIC35はその合成樹脂部材38内にモールドされている。
【0024】
一対の集磁リング33,34、ホールICおよび図示しない回路基板等が、合成樹脂部材38内にモールドされている。合成樹脂部材38は、筒状のセンサハウジング39の取付孔40を通して、集磁リング33,34がセンサハウジング39と同心になる状態で、センサハウジング39に取り付けられている。
ホールIC35は、集磁片33b,34b間の領域37に生ずる磁束の密度を検出するものであり、上記領域37に生ずる磁束のうち、軸方向X1に平行な成分に応じた出力(電位差)を生じるように配置されている。ホールIC35には、車両のバッテリー等の電源41からの電力が、電源ライン42を介してホールIC35に供給され、また、ホールIC35の出力信号E(電圧信号)は、出力線43を介してECU25内のトルク検出部23に出力される。
【0025】
トルク検出部23は、ホールIC35からの出力信号Eの信号レベル、即ち各ホールIC35の出力電圧に基づいて、ステアリングシャフト3に入力された操舵トルクを算出し、また、ホールIC35の故障検出を実行する構成となっている。
磁界発生コイルからなる磁界発生装置24には、電源41からの電力が電源ライン44を介して供給される。電源ライン44には、磁界発生装置24への給電をオンオフするスイッチ45が設けられている。磁界発生装置24のグラウンドライン46およびホールIC35のグラウンドライン47は、共通のグラウンドライン48に接続されており、互いの電源供給回路の一部が共有されているが、互いに独立していてもよい。
【0026】
次いで、図4のフローチャートに基づいて、センサ部22の故障を検出する動作について説明する。
まず、ステップS1において、イニシャライズが行われ、故障検出フラッグFが0に初期設定される。次いで、ステップS2において、故障検出モード(ステップS4以降の処理)を所定の周期Tで実行するためにタイマーをスタートする。タイマースタートから所定の周期Tが経過すると(ステップS3)、ステップS4移行の故障検出モードに移行する。
【0027】
その故障検出モードでは、まず、ステップS5において、ホールIC35からの信号を取り込み、その出力値Eaをホールド値としての第1の値E1として記憶する(図5も参照)。
次いで、ステップS6において、スイッチ45を所定時間(例えば数msecの間)だけオンすることにより、磁界発生装置24に電源を供給して、ホールIC35を含む領域に磁界を発生させる。その後、その磁界発生中のホールIC35の出力値Ebから所定のオフセット量Eoffsetを減算した第2の値E2(E2=Eb−Eoffset)を算出する(ステップS7)。所定のオフセット量Eoffsetは、磁界発生装置24による磁界発生によって正常なホールIC35の出力電圧が変化する量を予め求めて、予め設定されたものである。
【0028】
次いで、ステップS8において、スイッチ45をオフして磁界発生装置24をオフし、ステップS9に移行する。そのステップS9では、第1の値E1と第2の値E2との差分の絶対値|E1−E2|が所定の誤差eの範囲を超えている(|E1−E2|>e)か否かを判定する。上記の差分の絶対値が誤差eの範囲内にある場合(ステップS9においてNOの場合)には、センサ部22に正常に作動していると判断し、ステップS1に戻る。
【0029】
上記差分の絶対値が誤差eの範囲を超えている場合(ステップS9でYESの場合)には、ステップS10において、故障検出フラッグFが1でない(すなわちFが0であり、第1回目の故障検出である)ことを確認する。故障検出フラッグFが1でない、すなわち、第1回目の故障検出であることが確認された場合には、ステップS11において、故障検出フラッグFを1に設定した後、ステップS5に戻り、ステップS5からステップS9の故障検出フローを再度繰り返す。
【0030】
その2回目の故障検出フローを実行したときにも、ステップS9において、上記差分の絶対値が誤差eの範囲を超えていて、2回目も故障が検出された場合には、続くステップS10において、F=1であること(すなわち2回目の故障検出であること)を確認した後、センサ部22が故障していると判断し、ステップS12において、公知のフェイル処理を行う。例えばフェイル処理として、警告ランプを点灯して、運転者に報知したり、電動パワーステアリング装置1を安全に停止させたりする処理を実行した後、処理を終了する。
【0031】
一方、ステップS5〜ステップS9の2回目の故障検出フローを実行したときに、ステップS9において、上記差分の絶対値が誤差eの範囲内にあり、故障が検出されなかった場合には、センサ部22は正常であると判断し、ステップS1に戻る。
図5は、車両停止中で且つ操舵もしていないとき(すなわち非走行且つ非操舵時)に、故障検出モードが所定の周期で実行された場合のホールIC35の出力変化を示している。磁界発生装置24のオンに伴って、ホールIC35の出力が変化量Δで変化し、ホールIC35が正常である場合、その変化量Δは、所定のオフセット量Eoffsetにほぼ等しい。
【0032】
次いで、図6は、走行時または操舵時の少なくとも一方が満たされる条件で、故障検出モードが所定の周期で実行された場合のホールIC35の出力変化を示している。磁界発生のオンに伴って、ホールICの出力が変化量Δ1(磁界発生前の出力値Ea1と磁界発生時の出力値Eb1との差分に相当)や変化量Δ2(磁界発生前の出力値Ea2と磁界発生時の出力値Eb2との差分に相当)で変化する。ホールIC35が正常である場合、変化量Δ1、Δ2が所定の所定のオフセット量Eoffsetにほぼ等しくなる。
【0033】
一方、磁界発生の前後において、図6のホールIC35の出力を用いたトルク検出は、ホールド値としての第1の値E1を用いてもよいし、磁界発生装置24がオンのときの第2の値E2を用いてよい。第2の値E2は磁界発生装置24がオンのときのホールIC35の出力からオフセット量Eoffsetを差し引いて算出されている(磁界発生の影響分をキャンセルされている)ので、センサ部22が正常である場合、第2の値E2を磁界発生装置24がオフのときに得られたセンサ出力と同等に扱うことができる。また、磁界発生装置24がオンの時間が例えば数msecという非常に短い時間であるので、その区間で人間の操舵によって変化するトルク量はごく僅かであると考えられるからである。したがって、ホールド値としての第1の値E1、ないし第2の値E2に基づいて算出される検出トルクとしては、図7に示すように円滑なものとなり、したがって、第1の値E1および第2の値E2の何れに基づいて検出された操舵トルクも、電動モータ19の駆動制御に用いることが可能である。
【0034】
本実施の形態によれば、磁気センサとして単一のホールIC35を用いた簡単な構造でありトルク検出装置17の製造コストを安くすることができる。しかも、磁界発生装置24によって磁界を発生させたときのセンサ部22の出力のオフセット量に基づいて、センサ部22の故障(具体的には、ホールIC35またはホールICに接続される出力線43の故障等)を検出することができ、信頼性を高くすることがてきる。ひいては、安価で信頼性の高い電動パワーステアリング装置1を実現することができる。
【0035】
また、磁界発生直前のセンサ部22の出力値Eaをホールドした第1の値E1と、磁界発生時のセンサ部22の出力値Ebから所定のオフセット量Eoffsetを差し引いた第2の値E2との差分の絶対値|E1−E2|に基づいて、センサ部22の異常を検出する。
また、センサ部22が正常である場合には、トルク検出部23によって、ホールド値としての第1の値E1ないし第2の値E2を用いて操舵トルクを検出し、検出された操舵トルクや車速センサ18の車速検出結果を用いて、電動モータ19を駆動制御することができる。
【0036】
すなわち、第2の値E2は磁界発生時のホールIC35の出力からオフセット量Eoffsetを差し引いて算出されている(磁界発生の影響分をキャンセルされている)ので、センサ部22が正常である場合、第2の値E2を磁界発生装置24がオフのときに得られたセンサ出力と同等に扱って、トルクを検出することができるからである。このように、第1の値E1または第2の値E2の何れを用いても、制御の繋がりの滑らかさを向上することができ、電動モータ19の駆動制御に悪影響を与えることがないので、車両の走行中や電動パワーステアリング装置1の制御中においても、故障検知を実行することが実質的に可能となる。
【0037】
次いで、図8は、本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態が、図3の実施の形態と異なるのは、センサ部22からの出力を二重化する一対の出力線43,49を設け、フェイル検知用としての一方の出力線49とトルク検出部23の間にコンデンサ50介在させた点にある。コンデンサ50はホールIC35の出力の微分値を出力する。また、本実施の形態では、コンデンサ50を介するホールIC35の出力の微分値の変化に基づいて、トルク検出部23によって故障検出モードを実行する頻度を設定する。そのために故障検出モードを実行する周期T(図4のステップS3を参照)を設定する。
【0038】
具体的には、図9に示すように、ホールIC35の出力Eの微分値E* が変化しているとする。図9において、値P2は、運転者のハンドル操作では生じ得ないような高変化率よりも少し低い変化率の値である。また、値P1未満の領域は、非操舵時に相当する領域である。
図10のフローチャートに示すように、ステップS11で読み込んだ微分値E* が(センサ部22の出力の変化率に相当)が所定範囲内(P1≦E* ≦P2)にあるか否かをステップS12において判定する。微分値E* が所定範囲外(E* <P1またはP2<E* )にある場合(ステップS12においてNOの場合)は、通常の周期Tを採用する。微分値E* が所定範囲内(P1≦E* ≦P2)にある場合(ステップS12においてYESの場合)は、通常の周期Tに加算値TLを加算したより長い周期(T+TL)とする(ステップS13)。ただし、加算値TLは無限大であってもよい。
【0039】
これにより、ホールIC35の出力の微分値E* (センサ部の出力の変化率に相当)が所定範囲内(P1≦E* ≦P2)にあるときの故障検出モードの実行頻度を、所定範囲外(E* <P1またはP2<E* )にあるときの実行頻度よりも少なくする。すなわち、正常に動作していると考えられるときには、故障検出の回数を減らすようしている。これにより、ECU25の制御負荷を軽減する。一方で、センサ部22の出力の変化率が、運転者のハンドル操作では生じ得ないような高変化率やそれに近い変化率であるときには、故障検出モードの実行頻度を相対的に高くして、信頼性を向上することができる。
【0040】
第3の実施の形態は、第1および第2の実施の形態において、検出された操舵トルクに基づいて、故障検出モードを実行する周期Tを設定する。
具体的には、図11に示すように、ホールIC35からの出力に基づいて検出された操舵トルクtが、変化しているとする。本実施の形態では、操舵トルクの領域として、操舵トルクが0から大きくなるにつれて、第1のトルク領域である非操舵トルク領域Q1(t<t1)、第2のトルク領域である敏感な操舵トルク領域Q2(t1≦t≦t2)、第3のトルク領域である中間トルク領域Q3(t2<t<t3)および第4のトルク領域である実用トルク領域Q4(t3≦t≦t4)を順次に設定している。
【0041】
敏感なトルク領域Q2とは、例えば高速道を走行中に運転者が少しずつ修正舵を切るような場合に検出されるトルクの領域である。実用トルク領域Q4とは、例えば交差点で左折や右折する場合や、左折または右折してパーキングから出るときに検出されるトルクの領域であり、最も多用されるトルクの領域である。
一方、敏感なトルク領域Q2と実用トルク領域Q4の間にある中間トルク領域Q3とは、例えはハンドルの切り始めや、手の中を滑らしながらハンドルを戻すときに検出されるトルクの領域である。
【0042】
本実施の形態では、図12のフローチャートに示すように、ステップS21で読み込んだ操舵トルクtが、敏感なトルク領域Q2または実用トルク領域Q4の何れか一方にあるか否かをステップS22において判定する。操舵トルクtが敏感なトルク領域Q2または実用トルク領域Q4の何れか一方にない場合(ステップS22においてNOの場合)、すなわち、操舵トルクtが非操舵トルク領域Q1または中間トルク領域Q3にある場合は、通常の周期Tを採用する。一方、操舵トルクtが敏感なトルク領域Q2または実用トルク領域Q4の何れか一方にある場合(ステップS22においてYESの場合)は、通常の周期Tに加算値TRを加算したより長い周期(T+TR)とする(ステップS23)。ただし、加算値TRは無限大であってもよい。
【0043】
本実施の形態によれば、通常多用されるトルク領域である、敏感なトルク領域Q2および実用トルク領域Q4において、上記故障検出モードを実行する頻度を相対的に少なくしているので、ECU25の制御負荷を軽減することができるとともに、これらのトルク領域Q2,Q4で良好な操舵フィーリングを確保することができる。
なお、発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、例えば、図13に示すように、ホールIC35への電源ライン42の少なくとも一部をライン421,422として二重化したり、ホールIC35からのグラウンドライン47の少なくとも一部をライン471,472として二重化したりして、フェイルセーフの性能を向上してもよい。
【0044】
また、図3の実施の形態におけるホールIC35の出力線43の途中部や、図8の実施の形態や図13の実施の形態におけるホールIC35の出力線49の途中部を、例えば図14に示すように、プルダウン抵抗51を有する接続線52を介してグラウンドライン471と接続するようにしてもよい。この場合、ホールIC35の出力が異常でも正常でもない不定状態(正常範囲内ではあるが操舵トルクとは無関係な不定信号を出力するような状態)になったときに、その出力信号をOVにプルダウンすることができるので、故障検出の信頼性を向上することができる。
【0045】
また、磁気センサとして、ホールICに代えて、磁気抵抗素子(MR素子)を用いるようにしてもよい。その他、請求項記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…電動パワーステアリング装置、2…操舵部材、14…第1の操舵軸、15…第2の操舵軸、16…トーションバー、17…トルク検出装置、18…車速センサ、19…電動モータ、21…モータ駆動制御部、22…センサ部、23…トルク検出部、24…磁界発生装置、25…ECU、26…減速機構、27…転舵機構、30…多極磁石、31,32磁気ヨーク、33,34…集磁リング、35…ホールIC(磁気センサ)、41…電源、42,44…電源ライン、43,49…(ホールICの)出力線、45…スイッチ、46,47,48…グラウンドライン、50…コンデンサ、51…プルダウン抵抗、E1…第1の値、E2…第2の値、Eoffset…オフセット量、e…所定量、E* …(出力の)変化率、Q1…非操舵トルク領域(第1のトルク領域)、Q2…敏感なトルク領域(第2のトルク領域)、Q3…中間トルク領域(第3のトルク領域)、Q4…実用トルク領域(第4のトルク領域)
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク検出装置及び電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering System)等に用いられるトルク検出装置は、トーションバーの捻れ角を検出することにより、その回転軸への入力トルクを演算する構成となっている。
従来、このようなトルク検出装置として、ホールIC等を用いることにより、そのトーションバーの捻れ角、即ち入力トルクに応じて出力レベル(出力電圧)が変化する信号出力手段を構成したトルク検出装置がある(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−300267号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のトルク検出装置は、2つのホールICを用いて多重化されるため、その信頼性が向上する。すなわち、2つのホールICの出力の比較に基づいて、各ホールICの故障が検出されるため、その信頼性が向上する。
しかしながら、2つのホールICを用いた場合、製造コストが高くなる。一方、唯一のホールICを用いた場合、どのようにして故障検知を行うかが課題となる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、安価で故障検知の信頼性の高いトルク検出装置及び電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、磁束の変化を検出可能な唯一の磁気センサ(35)を含むセンサ部(22)と、上記センサ部の出力に基づいてトルクを検出するトルク検出部(23)と、上記センサ部を含む領域に磁界を発生可能な磁界発生装置(24)と、を備え、上記トルク検出部は、上記磁界発生装置によって磁界を発生させたときに生ずる上記磁気センサの出力のオフセット量に基づいて上記センサ部の異常を検出する故障検出モードを有しているトルク検出装置を提供する(請求項1)。
【0007】
本発明では、単一の磁気センサを用いた簡単な構造であり製造コストを安くすることができる。しかも、磁界発生装置によって磁界を発生させたときのセンサ部の出力のオフセット量に基づいて、センサ部の故障(磁気センサの故障、および磁気センサに接続される信号線の故障等)を検出することができ、信頼性を高くすることがてきる。
上記のトルク検出装置において、上記センサ部からの出力を二重化する一対の出力線(43,49)と、上記一対の出力線の一方および上記トルク検出部の間に介在するコンデンサ(50)と、を備える場合がある(請求項2)。この場合、コンデンサを介する微分出力に基づいて、検出トルクの通常でない急激な変化を取り出すことができる。
【0008】
上記のトルク検出装置によって検出した操舵トルクに基づいて電動モータ(19)を駆動制御する電動パワーステアリング装置(1)であれば(請求項3)、安価で信頼性の高い電動パワーステアリング装置を実現することができる。
上記の電動パワーステアリング装置において、上記故障検出モードでは、磁界発生直前のセンサ部の出力値(Ea)をホールドした第1の値(E1)と、磁界発生時のセンサ部の出力値(Eb)から上記オフセット量(Eoffset)を差し引いた第2の値(E2)との差分の絶対値(|E1−E2|)が所定量(e)を超えた場合に、上記センサ部の異常を検出する場合がある(請求項4)。この場合、第1の値と第2の値の差分に基づいて、センサ部の異常を検出する。ここで、センサ部が正常である場合、第2の値はオフセット量を差し引いて算出されている(磁界発生の影響分をキャンセルされている)ので、通常のセンサ出力と同等に扱い、電動モータの駆動制御に用いることが可能である。
【0009】
具体的には、上記の電動パワーステアリング装置において、上記第1の値または上記第2の値の何れか一方に基づいて、上記電動モータを駆動制御する場合がある(請求項5)。磁界発生装置オンの時間は例えば数msecのような短い時間で十分であり、そのような短時間の間において人間の操舵によって変化するトルク量はごく僅かである(すなわち、殆ど変化しない)と考えられるので、ホールド値としての第1の値および第2の値の何れを用いても、制御のつながりの滑らかさの向上を図ることができ、電動モータの制御に悪影響を与えることがない。したがって、車両の走行中や電動パワーステアリング装置の制御中においても、故障検知を実行することが実質的に可能となる。
【0010】
また、上記の電動パワーステアリング装置において、上記トルク検出部は、上記センサ部の出力の変化率(E* )が所定範囲内(P1≦E* ≦P2)にあるときに故障検出モードを実行する頻度(ゼロを含む)を、上記変化率が所定範囲外(E* <P1またはP2<E* )にあるときに故障検出モードを実行する頻度よりも少なくしている場合がある(請求項6)。この場合、センサ部の出力の変化率が、運転者の通常の操舵動作に対応する所定範囲内にあるときには、故障検出モードの実行頻度を少なくするか或いは故障検出モードを実行しないようにすることにより、制御負荷を軽くすることができる。一方、運転者のハンドル操作では生じ得ないような高変化率やそれに近い変化率のときには、故障検出モードの実行頻度を相対的に高くして、信頼性を向上することができる。
【0011】
また、上記の電動パワーステアリング装置において、上記トルク検出部は、操舵トルクの領域として、操舵トルクが大きくなるにつれて、第1のトルク領域(Q1)、第2のトルク領域(Q2)、第3のトルク領域(Q3)、第4のトルク領域(Q4)を設定しており、上記第2のトルク領域および上記第4のトルク領域において上記故障検出モードを実行する頻度を、上記第1のトルク領域および上記第3のトルク領域において上記故障検出モードを実行する頻度よりも少なくしている場合がある(請求項7)。
【0012】
この場合、第2のトルク領域や、第4のトルク領域において、故障検出モードを実行する頻度を相対的に少なくすることにより、これらのトルク領域で良好な操舵フィーリングを確保することができる。ここで、第2のトルク領域とは、例えば高速道を走行中に運転者が少しずつ修正舵を切るような場合に検出されるトルクの領域である。第4のトルク領域とは、例えば交差点で左折や右折する場合や、左折または右折してパーキングから出るときに検出されるトルクの領域であり、最も多用されるトルクの領域である。第3のトルク領域とは、例えばハンドルの切り始めや、手の中を滑らしながらハンドルを戻すときに検出されるトルクの領域であり、第2のトルク領域と第4のトルク領域との間の中間のトルク領域である。
【0013】
なお、上記において、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素の参 照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態のトルク検出装置を備える電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】トルク検出装置の分解斜視図である。
【図3】トルク検出装置の構成を示す模式図である。
【図4】故障検出の制御の流れを示すフローチャートである。
【図5】非走行且つ非操舵時において、磁界発生装置をオンオフするときのホールICの出力変化を示す図である。
【図6】走行時ないし操舵時において、磁界発生装置をオンオフするときのホールICの出力変化を示す図である。
【図7】磁界発生装置をオンオフするときの検出トルクの時間変化を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態のトルク検出装置の構成を示す模式図である。
【図9】図8の実施の形態において、ホールIC出力の微分値の時間変化を示す図である。
【図10】図8の実施の形態において、ホールIC出力の微分値故障検出モードの実行の周期を設定する流れを示すフローチャートである。
【図11】本発明の第3の実施の形態において、検出された操舵トルクの時間変化を示すである。
【図12】図11の実施の形態において、検出された操舵トルクに基づいて故障検出モードの実行の周期を設定する流れを示すフローチャートである。
【図13】本発明の第4の実施の形態における電気的構成の要部のブロック図である。
【図14】本発明の第5の実施の形態における電気的構成の要部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。本実施の形態では、トルク検出装置が自動車の電動パワーステアリング装置に適用された例に則して説明するが、本発明のトルク検出装置は、電動パワーステアリング装置以外の他の装置や機器に適用することもできる。
図1は、本発明の第1の実施の形態のトルク検出装置を備える電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結されるステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結される中間軸5と、この中間軸5に自在継手6を介して連結されているピニオン軸7と、ピニオン軸7の先端部に設けられたピニオン8に噛み合うラック9を形成して車両の左右方向に延びるラック軸10とを有している。
【0016】
ラック軸10は、筒状のハウジング11に軸方向移動可能に支持されている。ラック軸10の両端部にはそれぞれタイロッド12が連結されており、各タイロッド12は、対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する転舵輪13に連結されている。
操舵部材2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転は中間軸5等を介してピニオン8に伝達され、ピニオン8およびラック9によって、車両の左右方向に沿うラック軸10の直線運動に変換される。これにより、転舵輪13の転舵が達成される。
【0017】
ステアリングシャフト3は、操舵部材2に連なる第1の軸としての第1の操舵軸14と、自在継手4に連なる第2の軸としての第2の操舵軸15とを有している。これら第1および第2の操舵軸14,15は、連結軸としてのトーションバー16を介して同軸上に互いに連結されている。第1および第2の操舵軸14,15は、互いにトルク伝達可能であり、所定の範囲内で相対回転可能とされている。
【0018】
電動パワーステアリング装置1は、操舵部材2に負荷される操舵トルクを検出するトルク検出装置17と、車速を検出する車速センサ18と、トルク検出装置17および車速センサ18の検出結果に基づいて、操舵補助用の電動モータ19を駆動回路20を介して駆動制御するモータ駆動制御部21とを備えている。
トルク検出装置17は、トーションバー16の近傍に配置されたセンサ部22と、センサ部22からの信号に基づいて操舵トルクを検出するトルク検出部23と、センサ部22の近傍に配置された磁界発生装置24とを備えている。モータ駆動制御部21およびトルク検出部23は、マイクロコンピュータを含むECU25(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)に設けられている。
【0019】
トルク検出装置17では、トーションバー16のねじれに起因する第1の操舵軸14と第2の操舵軸15との相対回転変位量に基づく磁束変化から、第1および第2の操舵軸14,15に付与されるトルクを検出する。
ECU25のモータ駆動制御部21が操舵補助用の電動モータ19を駆動すると、その出力回転(動力)が、ウォームギヤ機構等の減速機構26で減速されて第2の操舵軸15へ伝達される。第2の操舵軸15に伝えられた動力は、さらに中間軸5等を介して、上記ラック軸10、タイロッド12およびナックルアーム等を含む転舵機構27に伝えられ、運転者の操舵が補助される。
【0020】
図2は、トルク検出装置17の要部の概略分解斜視図であり、図3はトルク伝達装置の模式的断面図である。図2および図3に示すように、トーションバー16の一端16aは、ピン28を用いて第1操舵軸14に結合され、トーションバー16の他端16bは、ピン29を用いて第2操舵軸15に結合されている。
トルク検出装置17は、多極磁石30と、一対の軟磁性体製の磁気ヨーク31,32と、磁気ヨーク31,32からの磁束を誘導する一対の集磁リング33,34と、磁気センサとしての唯一のホールIC35と、上記の磁界発生装置24とを備えている。磁界発生装置24は、ホールIC35を含む領域に磁界を発生可能な例えば磁界発生コイルからなる。
【0021】
多極磁石30は、第1の操舵軸14の一端に一体回転可能に結合された多極着磁のリングであり、該リングの複数の周方向位置にN極とS極とが交互に着磁されている。多極磁石30の軸線と、第1の操舵軸14の軸線とは、互いに一致している。
一対の磁気ヨーク31,32は、多極磁石30の回りに回転可能に第2の操舵軸15の一端に結合されている。一対の磁気ヨーク31,32は、互いに離隔して向き合うヨークリング31a,32aと、ヨークリング31a,32aの複数の周方向位置に爪31b,32bとを有している。一対の磁気ヨーク31,32は、それぞれの爪31b,32bが周方向に適当な間隔でずれるように対向する状態で、図3に示すように、合成樹脂部材にモールドされている。多極磁石30に対向する、各磁気ヨーク31,32の内周面は、合成樹脂部材36から露出している。
【0022】
磁気ヨーク31,32を保持した合成樹脂部材36が、第2の操舵軸15に取り付けられており、多極磁石30及び磁気ヨーク31,32が相対回転することによりヨークリング31a,32a間の磁束密度が変化するように構成されている。
磁気ヨーク31,32は、第1および第2の操舵軸14,15にトルクが加えられていない操舵中立状態において、それぞれの爪31b,32bの先端が、多極磁石30のN極及びS極の境界を指すように配置される。
【0023】
一対の集磁リング33,34は、軟磁性体を用いて形成された環状の部材であり、磁気ヨーク31,32の回りに相対回転可能に配置されており、磁気ヨーク31,32にそれぞれ磁気的に結合されている。一対の集磁リング33,34は、第1操舵軸14の軸方向X1に離隔して対向する環状の本体33a,34aと、本体33a,34aからそれぞれ突出形成され1つの周方向位置に互いに対向する平板状の集磁片33b,34bとを有している。集磁片33b,34b間の領域37内に、ホールIC35が挿入されている。上記領域37には、後述する合成樹脂部材38の一部が充填されており、ホールIC35はその合成樹脂部材38内にモールドされている。
【0024】
一対の集磁リング33,34、ホールICおよび図示しない回路基板等が、合成樹脂部材38内にモールドされている。合成樹脂部材38は、筒状のセンサハウジング39の取付孔40を通して、集磁リング33,34がセンサハウジング39と同心になる状態で、センサハウジング39に取り付けられている。
ホールIC35は、集磁片33b,34b間の領域37に生ずる磁束の密度を検出するものであり、上記領域37に生ずる磁束のうち、軸方向X1に平行な成分に応じた出力(電位差)を生じるように配置されている。ホールIC35には、車両のバッテリー等の電源41からの電力が、電源ライン42を介してホールIC35に供給され、また、ホールIC35の出力信号E(電圧信号)は、出力線43を介してECU25内のトルク検出部23に出力される。
【0025】
トルク検出部23は、ホールIC35からの出力信号Eの信号レベル、即ち各ホールIC35の出力電圧に基づいて、ステアリングシャフト3に入力された操舵トルクを算出し、また、ホールIC35の故障検出を実行する構成となっている。
磁界発生コイルからなる磁界発生装置24には、電源41からの電力が電源ライン44を介して供給される。電源ライン44には、磁界発生装置24への給電をオンオフするスイッチ45が設けられている。磁界発生装置24のグラウンドライン46およびホールIC35のグラウンドライン47は、共通のグラウンドライン48に接続されており、互いの電源供給回路の一部が共有されているが、互いに独立していてもよい。
【0026】
次いで、図4のフローチャートに基づいて、センサ部22の故障を検出する動作について説明する。
まず、ステップS1において、イニシャライズが行われ、故障検出フラッグFが0に初期設定される。次いで、ステップS2において、故障検出モード(ステップS4以降の処理)を所定の周期Tで実行するためにタイマーをスタートする。タイマースタートから所定の周期Tが経過すると(ステップS3)、ステップS4移行の故障検出モードに移行する。
【0027】
その故障検出モードでは、まず、ステップS5において、ホールIC35からの信号を取り込み、その出力値Eaをホールド値としての第1の値E1として記憶する(図5も参照)。
次いで、ステップS6において、スイッチ45を所定時間(例えば数msecの間)だけオンすることにより、磁界発生装置24に電源を供給して、ホールIC35を含む領域に磁界を発生させる。その後、その磁界発生中のホールIC35の出力値Ebから所定のオフセット量Eoffsetを減算した第2の値E2(E2=Eb−Eoffset)を算出する(ステップS7)。所定のオフセット量Eoffsetは、磁界発生装置24による磁界発生によって正常なホールIC35の出力電圧が変化する量を予め求めて、予め設定されたものである。
【0028】
次いで、ステップS8において、スイッチ45をオフして磁界発生装置24をオフし、ステップS9に移行する。そのステップS9では、第1の値E1と第2の値E2との差分の絶対値|E1−E2|が所定の誤差eの範囲を超えている(|E1−E2|>e)か否かを判定する。上記の差分の絶対値が誤差eの範囲内にある場合(ステップS9においてNOの場合)には、センサ部22に正常に作動していると判断し、ステップS1に戻る。
【0029】
上記差分の絶対値が誤差eの範囲を超えている場合(ステップS9でYESの場合)には、ステップS10において、故障検出フラッグFが1でない(すなわちFが0であり、第1回目の故障検出である)ことを確認する。故障検出フラッグFが1でない、すなわち、第1回目の故障検出であることが確認された場合には、ステップS11において、故障検出フラッグFを1に設定した後、ステップS5に戻り、ステップS5からステップS9の故障検出フローを再度繰り返す。
【0030】
その2回目の故障検出フローを実行したときにも、ステップS9において、上記差分の絶対値が誤差eの範囲を超えていて、2回目も故障が検出された場合には、続くステップS10において、F=1であること(すなわち2回目の故障検出であること)を確認した後、センサ部22が故障していると判断し、ステップS12において、公知のフェイル処理を行う。例えばフェイル処理として、警告ランプを点灯して、運転者に報知したり、電動パワーステアリング装置1を安全に停止させたりする処理を実行した後、処理を終了する。
【0031】
一方、ステップS5〜ステップS9の2回目の故障検出フローを実行したときに、ステップS9において、上記差分の絶対値が誤差eの範囲内にあり、故障が検出されなかった場合には、センサ部22は正常であると判断し、ステップS1に戻る。
図5は、車両停止中で且つ操舵もしていないとき(すなわち非走行且つ非操舵時)に、故障検出モードが所定の周期で実行された場合のホールIC35の出力変化を示している。磁界発生装置24のオンに伴って、ホールIC35の出力が変化量Δで変化し、ホールIC35が正常である場合、その変化量Δは、所定のオフセット量Eoffsetにほぼ等しい。
【0032】
次いで、図6は、走行時または操舵時の少なくとも一方が満たされる条件で、故障検出モードが所定の周期で実行された場合のホールIC35の出力変化を示している。磁界発生のオンに伴って、ホールICの出力が変化量Δ1(磁界発生前の出力値Ea1と磁界発生時の出力値Eb1との差分に相当)や変化量Δ2(磁界発生前の出力値Ea2と磁界発生時の出力値Eb2との差分に相当)で変化する。ホールIC35が正常である場合、変化量Δ1、Δ2が所定の所定のオフセット量Eoffsetにほぼ等しくなる。
【0033】
一方、磁界発生の前後において、図6のホールIC35の出力を用いたトルク検出は、ホールド値としての第1の値E1を用いてもよいし、磁界発生装置24がオンのときの第2の値E2を用いてよい。第2の値E2は磁界発生装置24がオンのときのホールIC35の出力からオフセット量Eoffsetを差し引いて算出されている(磁界発生の影響分をキャンセルされている)ので、センサ部22が正常である場合、第2の値E2を磁界発生装置24がオフのときに得られたセンサ出力と同等に扱うことができる。また、磁界発生装置24がオンの時間が例えば数msecという非常に短い時間であるので、その区間で人間の操舵によって変化するトルク量はごく僅かであると考えられるからである。したがって、ホールド値としての第1の値E1、ないし第2の値E2に基づいて算出される検出トルクとしては、図7に示すように円滑なものとなり、したがって、第1の値E1および第2の値E2の何れに基づいて検出された操舵トルクも、電動モータ19の駆動制御に用いることが可能である。
【0034】
本実施の形態によれば、磁気センサとして単一のホールIC35を用いた簡単な構造でありトルク検出装置17の製造コストを安くすることができる。しかも、磁界発生装置24によって磁界を発生させたときのセンサ部22の出力のオフセット量に基づいて、センサ部22の故障(具体的には、ホールIC35またはホールICに接続される出力線43の故障等)を検出することができ、信頼性を高くすることがてきる。ひいては、安価で信頼性の高い電動パワーステアリング装置1を実現することができる。
【0035】
また、磁界発生直前のセンサ部22の出力値Eaをホールドした第1の値E1と、磁界発生時のセンサ部22の出力値Ebから所定のオフセット量Eoffsetを差し引いた第2の値E2との差分の絶対値|E1−E2|に基づいて、センサ部22の異常を検出する。
また、センサ部22が正常である場合には、トルク検出部23によって、ホールド値としての第1の値E1ないし第2の値E2を用いて操舵トルクを検出し、検出された操舵トルクや車速センサ18の車速検出結果を用いて、電動モータ19を駆動制御することができる。
【0036】
すなわち、第2の値E2は磁界発生時のホールIC35の出力からオフセット量Eoffsetを差し引いて算出されている(磁界発生の影響分をキャンセルされている)ので、センサ部22が正常である場合、第2の値E2を磁界発生装置24がオフのときに得られたセンサ出力と同等に扱って、トルクを検出することができるからである。このように、第1の値E1または第2の値E2の何れを用いても、制御の繋がりの滑らかさを向上することができ、電動モータ19の駆動制御に悪影響を与えることがないので、車両の走行中や電動パワーステアリング装置1の制御中においても、故障検知を実行することが実質的に可能となる。
【0037】
次いで、図8は、本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態が、図3の実施の形態と異なるのは、センサ部22からの出力を二重化する一対の出力線43,49を設け、フェイル検知用としての一方の出力線49とトルク検出部23の間にコンデンサ50介在させた点にある。コンデンサ50はホールIC35の出力の微分値を出力する。また、本実施の形態では、コンデンサ50を介するホールIC35の出力の微分値の変化に基づいて、トルク検出部23によって故障検出モードを実行する頻度を設定する。そのために故障検出モードを実行する周期T(図4のステップS3を参照)を設定する。
【0038】
具体的には、図9に示すように、ホールIC35の出力Eの微分値E* が変化しているとする。図9において、値P2は、運転者のハンドル操作では生じ得ないような高変化率よりも少し低い変化率の値である。また、値P1未満の領域は、非操舵時に相当する領域である。
図10のフローチャートに示すように、ステップS11で読み込んだ微分値E* が(センサ部22の出力の変化率に相当)が所定範囲内(P1≦E* ≦P2)にあるか否かをステップS12において判定する。微分値E* が所定範囲外(E* <P1またはP2<E* )にある場合(ステップS12においてNOの場合)は、通常の周期Tを採用する。微分値E* が所定範囲内(P1≦E* ≦P2)にある場合(ステップS12においてYESの場合)は、通常の周期Tに加算値TLを加算したより長い周期(T+TL)とする(ステップS13)。ただし、加算値TLは無限大であってもよい。
【0039】
これにより、ホールIC35の出力の微分値E* (センサ部の出力の変化率に相当)が所定範囲内(P1≦E* ≦P2)にあるときの故障検出モードの実行頻度を、所定範囲外(E* <P1またはP2<E* )にあるときの実行頻度よりも少なくする。すなわち、正常に動作していると考えられるときには、故障検出の回数を減らすようしている。これにより、ECU25の制御負荷を軽減する。一方で、センサ部22の出力の変化率が、運転者のハンドル操作では生じ得ないような高変化率やそれに近い変化率であるときには、故障検出モードの実行頻度を相対的に高くして、信頼性を向上することができる。
【0040】
第3の実施の形態は、第1および第2の実施の形態において、検出された操舵トルクに基づいて、故障検出モードを実行する周期Tを設定する。
具体的には、図11に示すように、ホールIC35からの出力に基づいて検出された操舵トルクtが、変化しているとする。本実施の形態では、操舵トルクの領域として、操舵トルクが0から大きくなるにつれて、第1のトルク領域である非操舵トルク領域Q1(t<t1)、第2のトルク領域である敏感な操舵トルク領域Q2(t1≦t≦t2)、第3のトルク領域である中間トルク領域Q3(t2<t<t3)および第4のトルク領域である実用トルク領域Q4(t3≦t≦t4)を順次に設定している。
【0041】
敏感なトルク領域Q2とは、例えば高速道を走行中に運転者が少しずつ修正舵を切るような場合に検出されるトルクの領域である。実用トルク領域Q4とは、例えば交差点で左折や右折する場合や、左折または右折してパーキングから出るときに検出されるトルクの領域であり、最も多用されるトルクの領域である。
一方、敏感なトルク領域Q2と実用トルク領域Q4の間にある中間トルク領域Q3とは、例えはハンドルの切り始めや、手の中を滑らしながらハンドルを戻すときに検出されるトルクの領域である。
【0042】
本実施の形態では、図12のフローチャートに示すように、ステップS21で読み込んだ操舵トルクtが、敏感なトルク領域Q2または実用トルク領域Q4の何れか一方にあるか否かをステップS22において判定する。操舵トルクtが敏感なトルク領域Q2または実用トルク領域Q4の何れか一方にない場合(ステップS22においてNOの場合)、すなわち、操舵トルクtが非操舵トルク領域Q1または中間トルク領域Q3にある場合は、通常の周期Tを採用する。一方、操舵トルクtが敏感なトルク領域Q2または実用トルク領域Q4の何れか一方にある場合(ステップS22においてYESの場合)は、通常の周期Tに加算値TRを加算したより長い周期(T+TR)とする(ステップS23)。ただし、加算値TRは無限大であってもよい。
【0043】
本実施の形態によれば、通常多用されるトルク領域である、敏感なトルク領域Q2および実用トルク領域Q4において、上記故障検出モードを実行する頻度を相対的に少なくしているので、ECU25の制御負荷を軽減することができるとともに、これらのトルク領域Q2,Q4で良好な操舵フィーリングを確保することができる。
なお、発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、例えば、図13に示すように、ホールIC35への電源ライン42の少なくとも一部をライン421,422として二重化したり、ホールIC35からのグラウンドライン47の少なくとも一部をライン471,472として二重化したりして、フェイルセーフの性能を向上してもよい。
【0044】
また、図3の実施の形態におけるホールIC35の出力線43の途中部や、図8の実施の形態や図13の実施の形態におけるホールIC35の出力線49の途中部を、例えば図14に示すように、プルダウン抵抗51を有する接続線52を介してグラウンドライン471と接続するようにしてもよい。この場合、ホールIC35の出力が異常でも正常でもない不定状態(正常範囲内ではあるが操舵トルクとは無関係な不定信号を出力するような状態)になったときに、その出力信号をOVにプルダウンすることができるので、故障検出の信頼性を向上することができる。
【0045】
また、磁気センサとして、ホールICに代えて、磁気抵抗素子(MR素子)を用いるようにしてもよい。その他、請求項記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…電動パワーステアリング装置、2…操舵部材、14…第1の操舵軸、15…第2の操舵軸、16…トーションバー、17…トルク検出装置、18…車速センサ、19…電動モータ、21…モータ駆動制御部、22…センサ部、23…トルク検出部、24…磁界発生装置、25…ECU、26…減速機構、27…転舵機構、30…多極磁石、31,32磁気ヨーク、33,34…集磁リング、35…ホールIC(磁気センサ)、41…電源、42,44…電源ライン、43,49…(ホールICの)出力線、45…スイッチ、46,47,48…グラウンドライン、50…コンデンサ、51…プルダウン抵抗、E1…第1の値、E2…第2の値、Eoffset…オフセット量、e…所定量、E* …(出力の)変化率、Q1…非操舵トルク領域(第1のトルク領域)、Q2…敏感なトルク領域(第2のトルク領域)、Q3…中間トルク領域(第3のトルク領域)、Q4…実用トルク領域(第4のトルク領域)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束の変化を検出可能な唯一の磁気センサを含むセンサ部と、
上記センサ部の出力に基づいてトルクを検出するトルク検出部と、
上記センサ部を含む領域に磁界を発生可能な磁界発生装置と、を備え、
上記トルク検出部は、上記磁界発生装置によって磁界を発生させたときに生ずる上記磁気センサの出力のオフセット量に基づいて上記センサ部の異常を検出する故障検出モードを有しているトルク検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のトルク検出装置において、上記センサ部からの出力を二重化する一対の出力線と、上記一対の出力線の一方および上記トルク検出部の間に介在するコンデンサと、を備えるトルク検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のトルク検出装置によって検出した操舵トルクに基づいて電動モータを駆動制御する電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置において、
上記故障検出モードでは、磁界発生直前のセンサ部の出力値をホールドした第1の値と、磁界発生時のセンサ部の出力値から上記オフセット量を差し引いた第2の値との差分の絶対値が所定量を超えた場合に、上記センサ部の異常を検出する電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電動パワーステアリング装置において、
上記第1の値または上記第2の値の何れか一方に基づいて、上記電動モータを駆動制御する電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
請求項3から5の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置において、
上記トルク検出部は、上記センサ部の出力の変化率が所定範囲内にあるときに故障検出モードを実行する頻度(ゼロを含む)を、上記変化率が所定範囲外にあるときに故障検出モードを実行する頻度よりも少なくしている電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
請求項3から6の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置において、
上記トルク検出部は、操舵トルクの領域として、操舵トルクが大きくなるにつれて、第1のトルク領域、第2の操舵トルク領域、第3のトルク領域、第4のトルク領域を設定しており、上記第2のトルク領域および上記第4のトルク領域において上記故障検出モードを実行する頻度を、上記第1のトルク領域および上記第3のトルク領域において上記故障検出モードを実行する頻度よりも少なくしている電動パワーステアリング装置。
【請求項1】
磁束の変化を検出可能な唯一の磁気センサを含むセンサ部と、
上記センサ部の出力に基づいてトルクを検出するトルク検出部と、
上記センサ部を含む領域に磁界を発生可能な磁界発生装置と、を備え、
上記トルク検出部は、上記磁界発生装置によって磁界を発生させたときに生ずる上記磁気センサの出力のオフセット量に基づいて上記センサ部の異常を検出する故障検出モードを有しているトルク検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のトルク検出装置において、上記センサ部からの出力を二重化する一対の出力線と、上記一対の出力線の一方および上記トルク検出部の間に介在するコンデンサと、を備えるトルク検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のトルク検出装置によって検出した操舵トルクに基づいて電動モータを駆動制御する電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置において、
上記故障検出モードでは、磁界発生直前のセンサ部の出力値をホールドした第1の値と、磁界発生時のセンサ部の出力値から上記オフセット量を差し引いた第2の値との差分の絶対値が所定量を超えた場合に、上記センサ部の異常を検出する電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電動パワーステアリング装置において、
上記第1の値または上記第2の値の何れか一方に基づいて、上記電動モータを駆動制御する電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
請求項3から5の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置において、
上記トルク検出部は、上記センサ部の出力の変化率が所定範囲内にあるときに故障検出モードを実行する頻度(ゼロを含む)を、上記変化率が所定範囲外にあるときに故障検出モードを実行する頻度よりも少なくしている電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
請求項3から6の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置において、
上記トルク検出部は、操舵トルクの領域として、操舵トルクが大きくなるにつれて、第1のトルク領域、第2の操舵トルク領域、第3のトルク領域、第4のトルク領域を設定しており、上記第2のトルク領域および上記第4のトルク領域において上記故障検出モードを実行する頻度を、上記第1のトルク領域および上記第3のトルク領域において上記故障検出モードを実行する頻度よりも少なくしている電動パワーステアリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−203091(P2011−203091A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70203(P2010−70203)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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