説明

トロイダル型無段変速機

【課題】トラニオン側からトラクション面を潤滑油により効率的に且つ効果的に潤滑して冷却できるトロイダル型無段変速機を提供する。
【解決手段】このトロイダル型無段変速機は、トラニオン15側からパワーローラ11とディスク2,3との間の動力伝達を成すトラクション面2a,3a,11aヘ向けて潤滑油を吐出させるための潤滑油吐出手段130,130a,150と、トラクション面2a,3a,11aへと向かう方向から逸れる潤滑油を受けてこれをトラクション面2a,3a,11aへと反射させる反射手段200とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル型無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図6および図7に示すように構成されている。図6に示すように、ケーシング50の内側には入力軸(中心軸)1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
【0003】
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2とカム板7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
【0004】
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1と共に回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面)2a,2aと出力側ディスク3,3の内側面(凹面)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図7参照)が回転自在に挟持されている。
【0005】
図6中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図6の右面)がローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力を付与する。
【0006】
図7は、図6のA−A線に沿う断面図である。図7に示すように、ケーシング50の内側には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図7においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、パワーローラ11を支持する支持板部16の長手方向(図7の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
【0007】
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸(支持軸)23の基端部23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部23bの周囲には、ラジアルニードル軸受99を介して各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
【0008】
また、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図7の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。各ヨーク23A,23Bは鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受30を介して揺動自在に支持されている。また、ヨーク23A,23Bの幅方向(図6の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は円筒面として、球面ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
【0009】
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(図7で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
【0010】
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉(以下、転動体という)26,26と、これら各転動体26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
【0011】
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
【0012】
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図7の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(トラニオン軸)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
【0013】
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、入力軸1の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、更にこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
【0014】
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位する。例えば、図7の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動(傾転)する。
【0015】
その結果、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の変速比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
【0016】
ところで、上記構成のトロイダル型無段変速機において、パワーローラ11と入出力側ディスク2,3との間の動力伝達は、これらの部材表面の損傷を防止するべく、油膜を介したトラクション力により非接触で行なわれる(以下、油膜によって形成されるパワーローラ11と入出力側ディスク2,3との間の界面をトラクション面と称し、本明細書中では、便宜上、パワーローラ11の周面11aをトラクション面と称することがある。)。そのため、パワーローラ11と入出力側ディスクとの間に形成されるトラクション面には、トルクを非接触で伝達するための油膜を形成できる十分な量の潤滑油(トラクション油)を供給する必要がある。
【0017】
従来、パワーローラ11のトラクション面に対する潤滑油の供給は、例えば特許文献1に開示されるようにトラニオン15の下部からトラクション面へ向けて行なわれ、あるいは、特許文献2に開示されるように、外輪28からトラクション面へ向けて行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2007−154952号公報
【特許文献2】特開2008−281151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、このようにトラニオン15の下部から或いは外輪28などのトラニオン15の上方側から吐出される潤滑油によりパワーローラ11のトラクション面11aを潤滑する場合には1つの問題が生じる。すなわち、パワーローラ11のトラクション面11aを潤滑した油は、伝達動力が相対的に小さい低トルク領域(Low側)および相対的に大きい高トルク領域(High側)では入力側および出力側ディスク2,3に到達して有効に使用されるが、変速比が1.0近傍のときには最終的にポスト64,68に当たってしまい有効に使用されない。
【0020】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、トラニオン側からトラクション面を潤滑油により効率的に且つ効果的に潤滑して冷却できるトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するために、本発明は、互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、これらの両ディスク間に挟持される複数のパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にある枢軸を中心に傾転し且つ前記パワーローラを回転自在に支持するトラニオンとを備え、前記パワーローラと前記ディスクとの間の動力伝達が油膜を介して行なわれるトロイダル型無段変速機において、前記トラニオン側から前記パワーローラと前記ディスクとの間の前記動力伝達を成すトラクション面ヘ向けて潤滑油を吐出させるための潤滑油吐出手段と、前記トラクション面へと向かう方向から逸れる潤滑油を受けてこれをトラクション面へと反射させる反射手段とを具備することを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、トラクション面(パワーローラのトラクション面および/またはディスクのトラクション面)へと向かう方向から逸れる潤滑油を受けてこれをトラクション面へと反射させる反射手段を備えているので、トラクション面へと向かう方向から逸れる(例えば、ポストやヨークなどに到達した)潤滑油をディスクおよび/またはパワーローラのトラクション面へと反射して戻し(廃油を再利用して更に潤滑を行ない)、トラクション面を効率良く潤滑(冷却)できる(すなわち、トラニオン側からトラクション面を潤滑油により効率的に且つ効果的に潤滑して冷却できる)。また、この構成によれば、高いトラクション係数で運転可能となり、低コストで高効率なバリエータを提供できるとともに、バリエータを小型化および軽量化できる。
【0023】
また、上記構成において、前記反射手段は金属または樹脂から成る反射板として形成されてもよい。また、前記トラニオンの枢軸を揺動自在および軸方向に変位自在に支持するヨークと、該ヨークを揺動自在に支持するポストとが設けられる場合において、前記反射板は前記ポストまたは前記ヨークの近傍に設けられることが好ましい。この場合、前記反射板が前記ポストに一体に或いは別体に設けられてもよい。また、上記構成において、前記反射板には、前記パワーローラの回転数を計測するための回転センサが設けられてもよい。その場合、パワーローラの回転数を計測でき、スリップを事前に検知できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のトロイダル型無段変速機によれば、トラクション面へと向かう方向から逸れる潤滑油を受けてこれをトラクション面へと反射させる反射手段を具備するので、トラニオン側からトラクション面を潤滑油により効率的に且つ効果的に潤滑して冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の要部斜視図である。
【図2】(a)は図1の要部をA方向から見た際の部分断面図、(b)は図1の要部をB方向から見た際の部分断面図である。
【図3】(a)は図1のトロイダル型無段変速機に設けられる反射板の斜視図、(b)は反射板による潤滑油の反射拡散状態を示す概念図である。
【図4】(a)は本発明の第2の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の要部斜視図、(b)は該トロイダル型無段変速機に設けられる反射板の斜視図である。
【図5】(a)は本発明の第3の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の要部斜視図、(b)は該トロイダル型無段変速機に設けられる反射板の斜視図である。
【図6】従来から知られているハーフトロイダル型無段変速機の具体的構造の一例を示す断面図である。
【図7】図6のA−A線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明の特徴は、トラクション面に対する潤滑油の供給形態にあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と同様であるため、以下においては、本発明の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図6および図7と同一の符号を付して簡潔に説明するに留める。
【0027】
図1〜図3は、本発明の第1の実施形態を示している。
図1および図2に示すように、本実施形態のトロイダル型無段変速機のトラニオン15も、前述した従来構造と同様に、パワーローラ11を支持する支持板部16と、支持板部16の枢軸14の軸方向の両端部にそれぞれパワーローラ11側に折れ曲がって設けられ且つパワーローラ11を間に挟んだ状態で互いに内側面を対向させるとともに外側面に枢軸14が設けられた一対の折れ曲がり壁部20,20とを有する。なお、本実施の形態では、支持板部16がパワーローラ側に向かって凸になる円筒状凸面を有する支持梁部として形成されるとともに、この円筒状凸面に係合する円筒面状の凹部が外輪28の外側面に形成されており、これにより外輪28はパワーローラ11とともにトラニオン15に対して両ディスク2,3の軸方向に関する揺動変位が可能となっている。この外輪28は支持軸23と一体に形成されており、支持軸23はパワーローラ11の回転中心部を貫通してパワーローラ11を回転可能に支持している。この支持軸23は変位軸ではなく直線状の軸として形成されている。
【0028】
そして、このトラニオン15には、パワーローラ11とディスク2,3との間の動力伝達を成すトラクション面2a,3a,11aヘ向けてトラニオン15側から潤滑油を吐出させるための潤滑油吐出手段が設けられる。具体的には、この潤滑油吐出手段は、枢軸14の下側縁部に設けられてトラクション面2a,3a,11aへ向けて開口する潤滑油穴150と、潤滑油穴150へ向けて潤滑油を供給するための潤滑油供給手段とから成る。潤滑油供給手段は、駆動装置32(図7参照)から延びる油路130と、この油路130から潤滑油穴150へ向けて分岐して延びる分岐路130aとを有する。
【0029】
また、本実施形態では、トラクション面2a,3a,11aへと向かう方向から逸れる潤滑油(潤滑油穴150から吐出する潤滑油)を受けてこれをトラクション面2a,3a,11aへと反射させる反射手段が設けられる。具体的に、この反射手段は、金属または樹脂から成る平板状の反射板200として形成され、本実施形態では、図3に示すように反射面としての円弧状の凹面200aを有している。そして、この反射板200は、ポスト63(68)またはヨーク23A(23B)の近傍に設けられ、特に本実施形態では、図1および図2に示すようにポスト63(68)の下部寄りに設けられる。反射板200は、本実施形態では別体としてポスト63(68)に取り付けられるが、ポスト63(68)に一体形成されてもよい。
【0030】
このような反射板200を設けると、トラクション面2a,3a,11aへと向かう方向から逸れる潤滑油(潤滑油穴150から吐出する潤滑油)は、図2および図3(b)に矢印で示すように、反射板200に当たって拡散され、トラクション面2a,3a,11aへ向けて反射されて戻される。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、トラクション面(パワーローラ11のトラクション面11aおよび/またはディスク2,3のトラクション面2a,3a)へと向かう方向から逸れる潤滑油を受けてこれをトラクション面2a,3a,11aへと反射させる反射手段として反射板200を具備するので、トラクション面2a,3a,11aへと向かう方向から逸れる(具体的には、ポスト64(68)に到達した)潤滑油をディスク2,3および/またはパワーローラ11のトラクション面2a,3a,11aへと反射して戻し(廃油を再利用して更に潤滑を行ない)、トラクション面2a,3a,11aを効率良く潤滑(冷却)できる(すなわち、トラニオン15側からトラクション面2a,3a,11aを潤滑油により効率的に且つ効果的に潤滑して冷却できる)。また、この構成によれば、高いトラクション係数で運転可能となり、低コストで高効率なバリエータを提供できるとともに、バリエータを小型化および軽量化できる。なお、本実施形態において、反射板200には、パワーローラ11の回転数を計測するための回転センサ(図示せず)が設けられてもよい。その場合、パワーローラ11の回転数を計測でき、スリップを事前に検知できる。
【0032】
図4は、本発明の第2の実施形態を示している。
図示のように、本実施形態では、トラクション面2a,3a,11aへと向かう方向から逸れる潤滑油(潤滑油穴150から吐出する潤滑油)を受けてこれをトラクション面2a,3a,11aへと反射させる反射手段として角錐形状の反射体200Aがポスト64(68)に別体で取り付けられている。反射体200Aは、金属または樹脂から成り、パワーローラ11のトラクション面11aに沿うように延びるテーパ状の反射面200a’を有する。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同じである。したがって、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
図5は、本発明の第3の実施形態を示している。
図示のように、本実施形態では、トラクション面2a,3a,11aへと向かう方向から逸れる潤滑油(潤滑油穴150から吐出する潤滑油)を受けてこれをトラクション面2a,3a,11aへと反射させる反射手段として湾曲板状の反射体200Bがポスト64(68)の近傍に別体で設けられている。反射体200Bは、金属または樹脂から成り、パワーローラ11のトラクション面11aに対向する湾曲面としての反射面200a”を有する。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同じである。したがって、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0034】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、反射手段は、板状等である必要はなく、ポストやヨークに一体に形成される反射面であってもよく、あるいは、任意の形状を成してポストやヨークあるいはポスト近傍のパワーローラやディスクと干渉しない任意の部位に別体で取り付けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、シングルキャビティ型やダブルキャビティ型などの様々なハーフトロイダル型無段変速機に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
2 入力側ディスク
3 出力側ディスク
11 パワーローラ
11a トラクション面
14 枢軸
15 トラニオン
23A,23B ヨーク
64,68 ポスト
150 潤滑油穴(潤滑油吐出手段)
200 反射板(反射手段)
200A,200B 反射体(反射手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、これらの両ディスク間に挟持される複数のパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にある枢軸を中心に傾転し且つ前記パワーローラを回転自在に支持するトラニオンとを備え、前記パワーローラと前記ディスクとの間の動力伝達が油膜を介して行なわれるトロイダル型無段変速機において、
前記トラニオン側から前記パワーローラと前記ディスクとの間の前記動力伝達を成すトラクション面ヘ向けて潤滑油を吐出させるための潤滑油吐出手段と、
前記トラクション面へと向かう方向から逸れる潤滑油を受けてこれをトラクション面へと反射させる反射手段と、
を具備することを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項2】
前記反射手段が金属または樹脂から成る反射板として形成されることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項3】
前記トラニオンの枢軸を揺動自在および軸方向に変位自在に支持するヨークと、該ヨークを揺動自在に支持するポストとを更に備え、前記反射板が前記ポストまたは前記ヨークの近傍に設けられることを特徴とする請求項2に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項4】
前記反射板が前記ポストに設けられることを特徴とする請求項3に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項5】
前記反射板がポストと一体に形成されることを特徴とする請求項4に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項6】
前記反射板がポストと別体に設けられることを特徴とする請求項4に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項7】
前記反射板には、前記パワーローラの回転数を計測するための回転センサが設けられることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のトロイダル型無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−96561(P2013−96561A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242948(P2011−242948)
【出願日】平成23年11月6日(2011.11.6)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】