説明

トーショナルダンパ及びその製造方法

【課題】内マスタイプのトーショナルダンパにセンシング機構を取り付ける場合にセンシング機構について部品重量を軽減するとともに省スペース化を実現し、エンジンとの共振による破損や脱落を生じることがなく、質量体との干渉を生じることもないトーショナルダンパを提供する。
【解決手段】無端ベルトを巻架するプーリ溝を設けたプーリ部を備えたハブと、プーリ部の内周側に配置された質量体と、ハブおよび質量体を連結したゴム状弾性体とを有するトーショナルダンパであって、所定の円周方向着磁パターンを備えたセンシング用磁性ゴムを有し、この磁性ゴムがハブにおけるプーリ部の軸方向端面または外周面に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのクランクシャフト等の回転軸に発生する捩り振動を吸収するために用いられるトーショナルダンパとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からトーショナルダンパの一種として図6に示すように、無端ベルト(図示せず)を巻架するプーリ溝52bを設けたプーリ部52aを備えたハブ52を有し、このハブ52における前記プーリ部52aの内周側にゴム状弾性体53および質量体(マス)54を配置した内マスタイプのトーショナルダンパが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、他の従来技術として図7に示すように、ハブ52、ゴム状弾性体53および質量体54よりなるダンパ本体51を有し、このダンパ本体51に、エンジンの回転状態をセンシングするためのセンサプレート55を取り付けたセンシング機構付きのトーショナルダンパが知られている。センサプレート55は、筒状部55aおよびフランジ部55bを一体に有する金属環よりなるとともにフランジ部55bの外周縁の円周上一部に突起状の歯55cを立てたものであって、この歯55cが回転時にセンサ(図示せず)の正面を通過することにより検知され、エンジンの回転状態がセンシングされる。またこのセンサプレート55は、その筒状部55aをもってハブ52における外周筒部52cの内周面に嵌合されている(特許文献2参照)。
【0004】
上記図6の内マスタイプのトーショナルダンパに上記図7のセンサプレート55を取り付ける場合、センサプレート55はこれをその筒状部55aをもってハブ52におけるプーリ部52aの内周面に嵌合されることになるが、この組み合わせ技術には、以下の不都合がある。
【0005】
すなわち、センサプレート55が質量体54(図6のダンパではプーリ部52a)の径よりも大きな金属環によって形成されているため、センサプレート55はその重量が重く、占有スペースも大きなものである。また金属製のハブ52に同じく金属製のセンサプレート55を嵌合する構成であるために、センサプレート55に、エンジンとの共振による破損や脱落などが生じる虞がある。
【0006】
また、センサプレート55をその筒状部55aをもってハブ52におけるプーリ部52aの内周面に嵌合する場合、上記したようにプーリ部52aの内周側にはすでにゴム状弾性体53および質量体54が配置されている。したがって質量体54が回転時に振れ回りをするのに伴ってこの質量体54がセンサプレート55と干渉する虞があり、この場合、質量体54の正常な作動(十分な振れ回りによる吸振作動)が阻害されることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−18441号公報
【特許文献2】特開2003−148560号公報(図5〜6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上の点に鑑みて、上記したように内マスタイプのトーショナルダンパにセンシング機構を取り付ける場合に、センシング機構について部品重量を軽減するとともに省スペース化を実現し、エンジンとの共振による破損や脱落などを生じることがなく、質量体との干渉を生じることもないトーショナルダンパを提供することを目的とする。また、このような作用効果を備えるトーショナルダンパを容易に製作することができるトーショナルダンパの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるトーショナルダンパは、無端ベルトを巻架するプーリ溝を設けたプーリ部を備えたハブと、前記プーリ部の内周側に配置された質量体と、前記ハブおよび前記質量体を連結したゴム状弾性体とを有するトーショナルダンパであって、所定の円周方向着磁パターンを備えたセンシング用磁性ゴムを有し、前記磁性ゴムを前記ハブにおける前記プーリ部の軸方向端面または外周面に取り付けたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2によるトーショナルダンパは、上記した請求項1記載のトーショナルダンパにおいて、前記ハブにおける前記プーリ部の軸方向端面または外周面に取付用凹部が設けられ、前記取付用凹部に前記磁性ゴムが半埋設または埋設した状態で取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3によるトーショナルダンパの製造方法は、上記した請求項1または2記載のトーショナルダンパを製造する方法であって、前記ゴム状弾性体および前記磁性ゴムを同時加硫成形により前記ハブに同時接着する工程と、前記接着後に前記磁性ゴムに所定の円周方向着磁パターンを施す工程とを有することを特徴とする。
【0012】
上記構成を有する本発明のトーショナルダンパにおいては、無端ベルトを巻架するプーリ溝を設けたプーリ部を備えたハブと、プーリ部の内周側に配置された質量体と、ハブおよび質量体を連結したゴム状弾性体とよりなるダンパ本体のほかに、所定の円周方向着磁パターンを備えたセンシング用磁性ゴムが設けられ、この磁性ゴムが従来の金属製センサプレートの代わりとしてダンパ本体のハブにおけるプーリ部の外周面または軸方向端面に取り付けられる。磁性ゴムは、ゴムであるが故に、また筒状部、フランジ部および歯を一体に備える大ぶりな形状でないが故に、金属製センサプレートと比較して軽量小型の部品であり、よって部品重量の軽減および省スペース化を実現することが可能となり、併せてエンジンとの共振によって破損や脱落などを生じることがなく、質量体との干渉を生じることもない。
【0013】
磁性ゴムをハブに取り付けるには、磁性ゴムをハブの表面にそのまま取り付けても良いが、ハブの表面にあらかじめ取付用凹部を設けて、この取付用凹部に磁性ゴムを半埋設または埋設した状態で取り付けるようにしても良く、この場合には、ハブの表面から突出する磁性ゴムの体積が減少し、またはハブの表面から磁性ゴムがまったく突出しなくなるために、一層の省スペース化が実現される。また、このように磁性ゴムを取付用凹部に取り付ける構造であれば、磁性ゴムが取付用凹部によって保持されるため、磁性ゴムが正確に位置決めされるとともに磁性ゴムに傾き、位置ずれまたは脱落などが発生しにくくなる。
【0014】
また、磁性ゴムをハブに取り付けるには、磁性ゴムをハブに直接加硫接着する構造と、磁性ゴムを単体で成形してからハブに後付けで取り付ける構造とが考えられ、本発明では何れでも良いが、前者の磁性ゴムをハブに直接加硫接着する場合には、これと並行して、ダンパ本体のゴム状弾性体もハブに加硫接着される場合がある。すなわちダンパ本体において、ハブにゴム状弾性体を介して質量体を連結する構造すなわちハブと質量体との間にゴム状弾性体を介装する構造としては、
(1)ハブと質量体の間に、あらかじめ単独で成形したゴム状弾性体を圧入する、
(2)ハブと質量体の間でゴム状弾性体を加硫成形して、これら3者による一体の加硫成形品を成形する、
(3)ハブとスリーブの間でゴム状弾性体を加硫成形して、これら3者によるブッシュ体を成形し、このブッシュ体のスリーブに対して質量体を後付けで嵌合する、または
(4)質量体とスリーブの間でゴム状弾性体を加硫成形して、これら3者によるブッシュ体を成形し、このブッシュ体をスリーブをもってハブに嵌合する、
ことが考えられるが、このうち(2)および(3)の場合には、ハブにゴム状弾性体が加硫接着されるとともに、これと並行して、上記したようにハブに磁性ゴムが加硫接着される。したがってこの場合には、ハブを金型にインサートした状態で、ゴム状弾性体および磁性ゴムを同時加硫成形によりハブに同時接着するのが好ましく、これによれば同じ1つのハブを接着の対象として加硫接着工程を2度に亙って行なわなければならないと云う二度手間の弊を免れることが可能となる。尚、この場合には、上記工程を経て磁性ゴムをハブに接着してから、この磁性ゴムに所定の円周方向着磁パターンを施す工程を実施することになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0016】
すなわち、本発明のトーショナルダンパにおいては、無端ベルトを巻架するプーリ溝を設けたプーリ部を備えたハブと、プーリ部の内周側に配置された質量体と、ハブおよび質量体を連結したゴム状弾性体とよりなるダンパ本体のほかに、所定の円周方向着磁パターンを備えたセンシング用磁性ゴムが設けられ、この磁性ゴムが従来の金属製センサプレートの代わりとしてダンパ本体のハブにおけるプーリ部の外周面または軸方向端面に取り付けられる。磁性ゴムは金属製センサプレートと比較して軽量小型の部品である。したがってセンシング機構を備える内マスタイプのトーショナルダンパにおいて、所期の目的どおり部品重量を軽減するとともに省スペース化を実現することができ、併せてエンジンとの共振による破損や脱落など、および質量体との干渉を抑えることができる。また、ハブに取付用凹部を設けてこの取付用凹部に磁性ゴムを取り付ける構造によれば、更なる省スペース化が実現され、磁性ゴムに傾き、位置ずれまたは脱落などが生じにくい。また、製造手順として、ゴム状弾性体および磁性ゴムを同時加硫成形によりハブに同時接着する場合には、加硫接着工程における作業の二度手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施例に係るトーショナルダンパの半裁断面図
【図2】本発明の第二実施例に係るトーショナルダンパの半裁断面図
【図3】本発明の第三実施例に係るトーショナルダンパの半裁断面図
【図4】本発明の第四実施例に係るトーショナルダンパの半裁断面図
【図5】本発明の第五実施例に係るトーショナルダンパの半裁断面図
【図6】従来例に係るトーショナルダンパの半裁断面図
【図7】(A)は他の従来例に係るトーショナルダンパの半裁断面図、(B)は(A)におけるB方向矢視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
【0019】
(1)従来のトーショナルダンパは、クランクシャフトのクランク角を検知する場合のセンサ部をトーショナルダンパに設ける場合、金属板の打ち抜きプレートをハブ部に嵌合する必要があり、部品点数の増加に伴う質量の増加およびプレートのエンジンとの共振による破損や脱落などの問題があった。
(2)上記問題を解決するため、以下の構成とする。
(2−1)ハブ側にベルト駆動用の溝を設けたハブプーリ形状とする。
(2−2)上記ハブプーリの外周側(または端面部)に凹みを設け、凹み部に着磁可能な磁性ゴムを加硫接着する。
(2−3)振動リングをハブ内側に設け、ダンパゴムにて加硫接着する。
(2−4)ダンパゴムは防振機能を有する弾性体とする。
(2−5)磁性ゴムおよびダンパゴムは二材同時加硫接着を行なう。
(2−6)製品組立後に磁性ゴムを磁化させ、センサ機能を持たせる。
(3)上記構成により、以下の効果を得られる。
(3−1)金属板によるプレートの役割を外周部に設置した磁性ゴムにすることでプレートが不要になり、製品重量の低減になる。
(3−2)磁性ゴムとダンパゴムを二材同時加硫接着することで、外周部のゴム部加硫接着工程を一度に行なうことができる。尚、磁性ゴムは耐久性の観点からダンパゴムとしての使用は難しく、ダンパゴムと磁性ゴムは別材料の必要がある。そこで、トーショナルダンパの振動リングを内マス化し、かつ加硫接着タイプにすることで一回の加硫工程にて磁性ゴムとダンパゴムの成型が可能になり、製造工数の削減になる。また、プレート嵌合の工程をなくすことができ、加工工数の低減が可能になる。
(3−3)プレートの嵌合とは異なり、磁性ゴムは加硫接着されているため、脱落等の心配がない。
(3−4)磁性ゴムを使用することで、金属板のプレートと比較してより詳細な検知が可能になる(磁性ゴムは例えばMax0.04deg、金属板のプレートは例えばMax0.12deg)。
(3−5)組立後に着磁を行なうため、組立の際の取付誤差がなくなりプレートに比べて高精度である。
【実施例】
【0020】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0021】
第一実施例・・・
図1は、本発明の第一実施例に係るトーショナルダンパ1を示しており、当該実施例に係るトーショナルダンパ1は以下のように構成されている。
【0022】
すなわち図1に示すように、当該トーショナルダンパ1は、各種の補機へ回転トルクを伝達するため無端ベルト(図示せず)を巻架するプーリ溝12dを設けたプーリ部12cを備えたハブ12と、プーリ部12cの内周側に配置された質量体13と、ハブ12および質量体13を連結したゴム状弾性体14とよりなるダンパ本体11、ならびに所定の円周方向着磁パターンを備えたセンシング用磁性ゴム21を有するものであって、ハブ12におけるプーリ部12cの軸方向端面部に磁性ゴム21が取り付けられている。各部品は以下のように構成されている。
【0023】
すなわち先ず、ハブ12は、所定の金属材によって環状に成形されており、当該ハブ12をシャフト(図示せず)に固定するためのボス部(内周筒部)12aと、径方向の立ち上がり部12bと、無端ベルトを巻架するためのプーリ溝12dを外周面に設けたプーリ部(外周筒部)12cとを一体に有している。また、プーリ部12cにおけるエンジン側(図では右側)の軸方向端面に段差状を呈する環状の取付用凹部12eが設けられ、この取付用凹部12eに同じく環状の磁性ゴム21が取り付けられている。取付用凹部12eとしては、幅方向(図では上下方向)一方のみに側壁を備える段差状のものが描かれているが、このほか幅方向双方に側壁を備える溝状のものであっても良い。
【0024】
質量体13は、所定の金属材によって環状に成形されており、ハブ12におけるプーリ部12cの内周側に所定の径方向間隔をあけて同芯上に配置されている。尚、この質量体13は、慣性質量体、マスまたは振動リングなどと称されることもある。
【0025】
ゴム状弾性体14は、所定のゴム状弾性材によって環状に成形されており、質量体13におけるエンジン側の軸方向端面とこれに対向するハブ12の径方向立ち上がり部12bの端面との間に加硫接着され、このゴム状弾性体14を介して質量体13とハブ12とが連結されている。尚、このゴム状弾性体14は、ダンパゴムなどと称されることもある。
【0026】
磁性ゴム21は、磁性紛を混入した所定のゴム状弾性材によって環状に成形されており、上記したようにハブ12におけるプーリ部12cの軸方向端面に設けた取付用凹部12eに取り付けられている。磁性ゴム21の断面形状は、取付用凹部12eの断面形状が径方向に長い長方形(矩形)とされるのに伴って同様に径方向に長い長方形(矩形)とされており、よって磁性ゴム21は角リング状に成形されて、その軸直角平面をなすエンジン側の軸方向端面がセンシングにおける被検出面とされている。磁性ゴム21の軸方向幅寸法(厚み寸法、例えば2mm以下)は取付用凹部12eの軸方向幅寸法(深さ寸法)と略同じに設定され、磁性ゴム21の径方向幅寸法も取付用凹部12eの径方向幅寸法と略同じに設定されている。したがって磁性ゴム21は取付用凹部12eに埋設された状態で取り付けられている。
【0027】
また、この磁性ゴム21は、その円周方向着磁パターンとして、N極S極を円周上交互に所定ピッチで多数磁極化した磁気エンコーダ構造を有しており、図示するように磁気センサ31と組み合わされてエンジン回転検出やクランク角度検出等のセンシングが行なわれる。
【0028】
上記構成のトーショナルダンパ1においては、無端ベルトを巻架するためのプーリ溝12dを設けたプーリ部12cを備えたハブ12と、プーリ部12cの内周側に配置された質量体13と、ハブ12および質量体13を連結したゴム状弾性体14とよりなる内マスタイプのダンパ本体11のほかに、所定の円周方向着磁パターンを備えたセンシング用磁性ゴム21が設けられ、この磁性ゴム21が従来の金属製センサプレートの代わりとしてダンパ本体11のハブ12におけるプーリ部12cの軸方向端面に取り付けられる。上記したように磁性ゴム21は金属製センサプレートと比較して軽量小型の部品である。したがって、従来対比で部品重量の軽減および省スペース化を実現することができ、併せて、エンジンとの共振によって破損や脱落などが生じることがなく、質量体13との干渉が生じることもない。
【0029】
また、ハブ12のプーリ部12cにおけるエンジン側の軸方向端面に段差状を呈する環状の取付用凹部12eが設けられ、この取付用凹部12eに同じく環状の磁性ゴム21が埋設された状態で取り付けられているために、磁性ゴム21の一部または全部がハブ12の表面から突出する場合と比較して一層の省スペース化が実現されている。また、取付用凹部12eによって磁性ゴム21の取付位置が規定されるため、取付位置精度を向上させることができ、取付用凹部12eによって磁性ゴム21が保持されるため、磁性ゴム21に傾き、位置ずれまたは脱落などが生じにくい。
【0030】
つぎに、上記トーショナルダンパ1の製造方法を説明すると、上記ダンパ1は以下の手順で製造される。
【0031】
すなわち先ず、ハブ12および質量体13をそれぞれ部品形状に製造する。次いで、このハブ12および質量体13を金型にインサートし、このインサートした状態で、この金型を用いてゴム状弾性体14および磁性ゴム21を同時加硫成形し、ハブ12に同時接着する。したがって金型には、ゴム状弾性体14を成形するためのキャビティ空間と磁性ゴム21を成形するためのキャビティ空間がそれぞれ設けられており、これらに異なる材料が充填される。次いで離型後、磁性ゴム21に所定の円周方向着磁パターンを施す。
【0032】
したがって、上記製造方法によれば、先に詳記したとおりゴム加硫接着工程における作業の二度手間を省くことができる。
【0033】
尚、上記トーショナルダンパ1については、その構成を以下のように付加・変更することが考えられる。
【0034】
第二実施例・・・
上記第一実施例では、ハブ12におけるプーリ部12cの軸方向端面に磁性ゴム21を取り付けたが、これに代えて、ハブ12におけるプーリ部12cの外周面に磁性ゴム21を取り付けるようにしても良い。
【0035】
すなわち、第二実施例として示す図2では、ハブ12におけるプーリ部12cの外周面に環状の取付用凹部12eが設けられ、この取付用凹部12eに同じく環状の磁性ゴム21が取り付けられている。取付用凹部12eはハブ12におけるプーリ部12cの外周面に設けられたプーリ溝12dのエンジン側に配置されている。
【0036】
この場合、磁性ゴム21の断面形状は、取付用凹部12eの断面形状が軸方向に長い長方形(矩形)とされるのに伴って同様に軸方向に長い長方形(矩形)とされており、よって磁性ゴム21は角リング状に成形されて、その円筒面状をなす外周面がセンシングにおける被検出面とされている。磁性ゴム21の径方向幅寸法(厚み寸法)は取付用凹部12eの径方向幅寸法(深さ寸法)と略同じに設定されるとともに磁性ゴム21の軸方向幅寸法も取付用凹部12eの軸方向幅寸法と略同じに設定され、よって磁性ゴム21は取付用凹部12eに埋設された状態で取り付けられている。
【0037】
尚、上記第一および第二実施例では、磁性ゴム21を取付用凹部12eに埋設した状態で取り付けたが、これに代えて、磁性ゴム21を取付用凹部12eに半埋設した状態で取り付けるようにしても良く、この場合には、磁性ゴム21の厚み寸法が取付用凹部12eの深さ寸法よりも大きく設定され、磁性ゴム21はその一部がハブ12の表面から突出することになる。
【0038】
第三および第四実施例・・・
また、取付用凹部12eを省略し、磁性ゴム21をハブ12の表面に直接取り付けるようにしても良く、第三実施例として示す図3では、磁性ゴム21がハブ12におけるプーリ部12cの軸方向端面に直接取り付けられており、第四実施例として示す図4では、磁性ゴム21がハブ12におけるプーリ部12cの外周面に直接取り付けられている。
【0039】
第五実施例・・・
また、内マスタイプのダンパ本体11の構成について、上記各実施例では、ゴム状弾性体14が質量体13におけるエンジン側の軸方向端面とこれに対向するハブ12の径方向立ち上がり部12bの端面との間に加硫接着されて質量体13およびゴム状弾性体14が軸方向に並べられているが、これに代えて図5に示すように、ゴム状弾性体14を質量体13における外周面とこれに対向するハブ12のプーリ部12cの内周面との間に加硫接着して質量体13およびゴム状弾性体14を径方向に並べるようにしても良く、これを例示として本発明では内マスタイプのダンパ本体11の構成は何ら限定されず、プーリ部12cの内周側に質量体13およびゴム状弾性体14が配置されていれば良い。
【0040】
上記第二ないし第五実施例のその他の構成および作用効果は、上記第一実施例と同じである。したがって、同一の符号を付して説明を省略する。
【符号の説明】
【0041】
1 トーショナルダンパ
11 ダンパ本体
12 ハブ
12a ボス部
12b 径方向立ち上がり部
12c プーリ部
12d プーリ溝
12e 取付用凹部
13 質量体
14 ゴム状弾性体
21 磁性ゴム
31 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ベルトを巻架するプーリ溝を設けたプーリ部を備えたハブと、前記プーリ部の内周側に配置された質量体と、前記ハブおよび前記質量体を連結したゴム状弾性体とを有するトーショナルダンパであって、
所定の円周方向着磁パターンを備えたセンシング用磁性ゴムを有し、
前記磁性ゴムを前記ハブにおける前記プーリ部の軸方向端面または外周面に取り付けたことを特徴とするトーショナルダンパ。
【請求項2】
請求項1記載のトーショナルダンパにおいて、
前記ハブにおける前記プーリ部の軸方向端面または外周面に取付用凹部が設けられ、前記取付用凹部に前記磁性ゴムが半埋設または埋設した状態で取り付けられていることを特徴とするトーショナルダンパ。
【請求項3】
請求項1または2記載のトーショナルダンパを製造する方法であって、
前記ゴム状弾性体および前記磁性ゴムを同時加硫成形により前記ハブに同時接着する工程と、
前記接着後に前記磁性ゴムに所定の円周方向着磁パターンを施す工程とを有することを特徴とするトーショナルダンパの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−13115(P2012−13115A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148481(P2010−148481)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】