説明

トーションダンパー及び制震装置

【課題】トーションバースプリングの捩じり構造に工夫を加えることにより、高いダンパー効果が得られ、しかもコンパクト性にも優れたトーションダンパーを提供することを課題とする。
【解決手段】トーションバースプリング11、トーションバースプリング11の一端部を回転不可能な状態に収納したスプリングホルダー12、ロータリダンパー13、トーションバースプリング11の捩じり端部16に捩じり荷重を加える回転リンク14、スプリングホルダー12に取り付けられた逆回転リンク15によって構成され、回転リンク14と逆回転リンク15に逆トルクを加えることにより、トーションバースプリング11の両端部に逆捩じりを加え、その捩じり回転によってロータリダンパー13を回転させダンパー効果を発揮させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はトーションダンパー及びこれを用いた制震装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロータリダンパーとトーションバースプリングの組み合わせからなるトーションダンパーは、従来から家具の蓋等の緩衝装置に使用されている(特許文献1)。
【0003】
その構成は、有底円筒状のケースに筒状の回転体が収納され、ケースの内径面と回転体とのすき間に粘性流体が封入される。円筒体の内部にトーションバースプリングが挿通される。トーションバースプリングの一端部がケースの内底面に固定され、他端部は回転体に係合される。ケースを装置に固定するとともに回転体を緩衝対象物(例えば、ピアノの蓋)の回転軸に連結する。蓋の開閉時に回転体がトーションバースプリングの一端部に捩じり荷重を付与し、トーションバースプリングの回転に伴ってロータリダンパーが作動され緩衝作用を行う。トーションバースプリングに作用する捩じり荷重に対する固定端部側の反力は、ケースを介して装置の固定部によって受けられる。
【0004】
また、建造物の制震装置として、相対回転可能に嵌合された内筒と外筒との間にゴムのような粘弾性部材を介在させたトーションダンパーを用い、建造物の柱と梁が作るコーナー部において、内筒を柱に、外筒を梁に固定したものが知られている(特許文献3)。柱の傾斜に伴って生じる回転によって内筒が外筒に対して相対回転することにより制震を行う。内筒から外筒に加えられる捩じり荷重に対する反力は、外筒を固定した梁を経て建造物の基礎により受けられる。
【0005】
また、柱と梁によって構成されたラーメン構造物の制震装置として、ラーメン構造物の柱と梁からなる四角形空間の斜めに対向した位置にある連結部に支承プレートを取り付ける。その支承プレート間に四辺形リンクの対角位置の2個所を連結ピンにより取り付け、さらに中間連結ピン相互間に、ピストンシリンダー式のオイルダンパーを介在したものが知られている(特許文献2)。柱の傾斜によって中間連結ピンの間の距離が変化するのに伴いオイルダンパーが作動し制震を行う。
【0006】
なお、オイルダンパーを連結した中間連結ピンに作用する力により、四辺形リンクが面外方向に変形するのを防止するために、各中間連結ピンと左右の柱の間にクランクアーム機構が設けられる。
【0007】
この制震装置の場合は、ピストンとシリンダーが同時に反対方向に直進運動を行い、両方の荷重の反力はそれぞれが連結された中間連結ピン、四辺形リンク及び支承プレートを介して建造物の基礎によって受けられる。オイルダンパーの両端部が共に中間連結ピンに連結され、その中間連結ピンの部分が反対方向に直進運動し、反力が四辺形リンク、支承プレートを経て建造物の基礎によって受けられるという反力支持構造において前記2者の反力支持構造と異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭62−81739号公報
【特許文献2】特開2011−12708号公報
【特許文献3】特開2004−232202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び同2に開示されたトーションダンパーのように、トーションバースプリングの一端部に捩じり荷重を加える一方、他端部を固定した構造では、トーションバースプリングに加えられる捩じり量は一端部に加えられる捩じり荷重の大きさに限定される。ロータリダンパーはトーションバースプリングの捩じり量に応じた大きさのダンパー効果を発揮するので、捩じり荷重に限定があることにより、ダンパー効果にも一定の制限がある。
【0010】
特許文献3の場合は、オイルダンパーのピストンとシリンダーの両方が同時に反対向きに作動することで、いずれか一方が作動する場合に比べ、内部のオイルに対する圧縮荷重が倍増され、その分ダンパー効果も大きくなる。
【0011】
しかし、トーションダンパーが四辺形リンクの中間連結ピンの間に設けられるため、トーションダンパーが柱と梁からなる四角形空間の中央部分を占めることになり、コンパクト性に欠ける問題がある。
【0012】
そこで、この発明は、トーションバースプリングの捩じり構造に工夫を加えることにより、高いダンパー効果が得られ、しかもコンパクト性にも優れたトーションダンパー及びこれを用いた制震装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を解決するために、この発明に係るトーションダンパーは、一端部に捩じり端部、他端に固定端部を有するトーションバースプリングと、前記トーションバースプリングを収納し前記固定端部を相対回転不可能な状態に支持するスプリングホルダーと、前記スプリングホルダーにケーシングが同心状態に結合されたロータリダンパーとによりダンパーユニットが構成され、前記ロータリダンパーの回転中心にトーションバースプリングの捩じり端部が一体回転可能に貫通され、前記捩じり端部に捩じり荷重を加える回転手段及び前記スプリングホルダーの固定手段が設けられたトーションダンパーにおいて、前記回転手段が前記トーションバースプリングの捩じり端部に取り付けられた回転リンクによって構成され、前記固定手段が前記ダンパーユニットと一体化され前記回転リンクと同軸状態に取り付けられた逆回転リンクによって構成され、前記回転リンクと逆回転リンクに外部から逆トルク(逆向きのトルク)を加えるようにしたものである。
【0014】
前記回転リンクと逆回転リンクに逆トルクを加えることにより、回転リンクがトーションバースプリングの捩じり端部を一定方向に一定量捩じり、同時に逆回転リンクがスプリングホルダーを介してトーションバースプリングの固定端部を逆方向に同量だけ捩じる。また、ロータリダンパーは、トーションバースプリングの捩じり端部側の捩じりに伴ってシャフト側から回転され、また、ロータリダンパーのケーシング又はスプリングホルダーの逆回転に伴ってケーシング側からも回転される。その結果、ロータリダンパーにおいてはシャフト側からの回転量とケーシング側からの回転量に基づいた大きなダンパー効果が発揮される。
【0015】
ダンパー作用は、ロータリダンパーのみならず、トーションバースプリング自体の捩じりによっても行われ、両方のダンパー作用が相まって、振動エネルギーを吸収する。その結果、回転リンクと逆回転リンクの回転、即ち両リンクの開き角の変化にダンパー効果を付与する。
【0016】
前記回転リンクから加えられる捩じり荷重に対する固定端部側の反力は、トーションバースプリングの固定端部、スプリングホルダー、逆回転リンクを経て装置の固定部によって受けられる。また、逆回転リンクから加えられる逆捩じり荷重に対する捩じり端部側の反力は、トーションバースプリングの捩じり端部、回転リンクを経て装置の固定部によって受けられる。
【0017】
前記回転リンクと逆回転リンクの各自由端部に外部から逆向きのトルクを加える手段として、前記回転リンクと逆回転リンクの自由端部にそれぞれ副リンクを相対回転可能に連結するとともに、両副リンクの他端部を相対回転可能に連結して全体として四辺形リンクを構成し、前記両副リンクの他端部の連結端部を装置の固定部に相対回転可能に連結するようにした構成をとることができる。
【0018】
前記構成によると、装置固定部から加えられる振動のプラス方向の振幅によって前記四辺形リンクが、その中間連結点間の距離を縮小する方向に変化すると、回転リンクと逆回転リンクの開き角が縮小して各リンクに逆トルクを発生させる。振動の振幅がマイナス方向に変化すると開き角が拡大する方向に両方のリンクが移動するので、逆トルクの向きが変わる。
【0019】
外部から逆トルクを加える他の手段として、前記ダンパーユニット、回転リンク及び逆回転リンクとそれぞれ同一構造を持った他のダンパーユニット、回転リンク及び逆回転リンクからなるトーションダンパーによって構成することができる。当該トーションダンパーのダンパーユニットを装置の固定部に相対回転自在に取り付け、両方の回転リンクの自由端相互及び逆回転リンクの自由端相互をそれぞれ相対回転可能に連結して四辺形リンクを構成したものがある。この構成によると、2個のトーションダンパーが連動することにより、ダンパー効果が倍増される。
【0020】
外部からの逆トルクを加える他の手段として、前記回転リンクと逆回転リンクの各自由端部を装置固定部の平坦面に押し当てた構成をとることができる。
【0021】
この場合は、装置固定部からの振動によって平坦面が原点位置から押し上げられ、回転リンクと逆回転リンクの開き角が拡大することにより両方のリンクに逆トルクが加えられる。その状態から振動の向きが変わると前記の開き角が縮小するように逆トルクの向きが変わる。
【0022】
前記のロータリダンパーとしては、軸方向の一端部が開放されたダンパーケーシング、その開放端に固定された蓋部材、前記蓋部材によって閉塞されたチャンバー、前記ケーシングの閉塞端及び蓋部材を液密を保持して回転自在に貫通するシャフト、前記シャフトに一体化され前記チャンバー内部で回転可能に保持されたディスク、前記チャンバーに封入された粘性流体によって構成されたものを使用することができる。
【0023】
前記のロータリダンパーは、シャフトとディスクが、粘性流体及びこれが付着したダンパーケーシングに対して回転することによりダンパー作用を行う。逆に、ダンパーケーシング及びこれに付着した粘性液体が、シャフトとディスクに対して回転することによってもダンパー作用を行うことができる。要するに、シャフトとディスクのグループと、粘性流体とダンパーケーシングのグループ相互が相対回転することによりダンパー作用が行われるので、一方のみから回転が加えられる場合に比べダンパー効果が倍増する。
【0024】
四辺形リンクを用いて逆向きのトルクを加える前記構成のトーションダンパーを用いた制震装置としては、基礎上に構築された柱と梁からなるラーメン構造物の対角位置にある上部又は下部支承プレートのいずれか一方に当該トーションダンパーの回転リンクを支持するリンク軸が回転自在に取り付けられ、他方の支承プレートに回転副リンクと逆回転副リンクを相対回転自在に連結した構成をとることができる。
【0025】
前記構成の制震装置において、ラーメン構造物にその基礎から地震による振動が加えられた場合、ラーメン構造物の2本の柱が左右方向に傾斜して平行四辺形の状態に変形することを繰り返すと、その対角位置間に設けられた四辺形リンクも変形し、その回転リンクと逆回転リンクにそれぞれ逆トルクが加えられる。その結果、いずれかの支承プレートに取り付けられたダンパーユニットが作動し制震効果が発揮される。
【0026】
さらに、制震対象が基礎の床面上にスライド自在に設置されたテーブルである場合の制震装置としては、制震対象となる四角形のテーブルが基礎の床面においてXY座標によって規定される平面の任意方向にスライド可能に支持され、前記テーブルの4側面がそれぞれX軸方向、Y軸方向に沿うように設けられ、前記テーブルの各側面に対応して基礎側とテーブル側にそれぞれ支承プレートが取り付けられ、基礎側又はテーブル側のいずれか一方の支承プレートに前記トーションダンパーのダンパーユニットがZ軸方向の回転中心をもって回転自在に取り付けられ、他方の支承プレートに前記両副リンクの端部が相対回転自在に連結された構成をとることができる。
【0027】
前記構成の場合は、テーブルの各側辺に対応して設けられる四辺形リンクごとに一つのトーションダンパーが設けられる。
なお、四辺形リンクを2つのトーションダンパーの組み合わせにより構成することにより、テーブルの各側辺に対応して設けられる四辺形リンクごとに2つのトーションダンパーを設置する構成をとることができる。
【0028】
さらに、制震対象が基礎の床面上にスライド自在に設置されたテーブルである場合の制震装置としては、制震対象となる四角形のテーブルが基礎の床面においてXY座標によって規定される平面の任意方向にスライド可能に支持され、前記テーブルの4側面がそれぞれX軸方向、Y軸方向に沿うように設けられ、各側面に対応して前記基礎に内壁面が設けられ、前記基礎の内壁面にテーブル側に開放された凹部が設けられ、前記凹部にZ方向にのみ移動可能なブロックが設けられ、前記ブロック側とテーブル側にそれぞれ支承プレートが取り付けられ、ブロック側又はテーブル側のいずれかの支承プレートに前記トーションダンパーのダンパーユニットがZ軸方向の回転中心をもって回転自在に取り付けられ、他方の支承プレートに前記両副リンクの端部が相対回転自在に連結され、前記ブロックの上面に固定されたトーションダンパーのV形リンクの自由端が前記凹部のオーバハング部の下面に押し当てられた構成がある。
【0029】
前記の構成によると、テーブルのXY方向へ制震効果だけでなく、Z方向へ制震効果も得られる。
【発明の効果】
【0030】
この発明に係るトーションダンパーは、トーションバースプリングに捩じり荷重を両端部から加えるものであるから、一端部から加える場合に比べて捩じり量が倍になる。その結果、ロータリダンパーの作動量も倍増するので、大きなダンパー効果が得られる。
【0031】
また、トーションダンパーを構成するダンパーユニットは、回転リンクと逆回転リンクのリンク結合部分に連結ピンの軸方向に取り付けられるものであるから、コンパクトな構成となる。
【0032】
さらに、前記トーションダンパーを用いた制震装置は、そのダンパーユニットを四辺形リンクの対向2個所のリンク結合部に設けることができるので、コンパクトに構成できるとともに、一つの四辺形リンクあたり最大2個のダンパーユニットを設置できるので、高い制震効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、実施形態1のトーションダンパーの一部省略斜視図である。
【図2】図2は、図1のX1−X1線の一部省略拡大断面図である。
【図3】図3は、一部省略分解斜視図である。
【図4】図4は、実施形態2の制震装置の正面図である。
【図5】図5は、図4のX2−X2線の拡大断面図である。
【図6】図6は、作用状態の正面図である。
【図7】図7は、他の作用状態の正面図である。
【図8】図8は、実施形態3の制震装置の正面図である。
【図9】図9は、実施形態4の縦断面図である。
【図10】図10は、図9のX3−X3線の断面図である。
【図11】図11は、実施形態5の横断平面図である。
【図12】図12は、実施形態6の縦断面図である。
【図13】図13は、図12のX4−X4線の断面図である。
【図14】図14は、実施形態7の横断平面図である。
【図15】図15は、実施形態8の横断平面図である。
【図16】図16は、同上のZ方向のトーションダンパーの斜視図である。
【図17】図17は、図15のX5−X5線の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
[実施形態1]
【0035】
図1から図3に示した実施形態1に係るトーションダンパー10は、トーションバースプリング11、それを収納したスプリングホルダー12及びロータリダンパー13によって構成されたダンパーユニット20と、そのダンパーユニット20にトルクを伝達する回転リンク14及び逆回転リンク15によって構成される。
【0036】
図2に示したように、トーションバースプリング11は、鋼棒によって形成され、一端部に捩じり端部16、他端部に固定端部17が設けられ、捩じり端部16と固定端部17には、相手部材との嵌合部で回り止めができるようにそれぞれ平行2面の平坦面18が設けられる。捩じり端部16と固定端部17の間はこれらより小径の丸棒部19が設けられる。丸棒部19が軸心を中心に復元性の弾性をもって捩じられる。
【0037】
スプリングホルダー12は、一端部が閉塞された円筒体によって構成され、閉塞部の内端面に固定穴21が設けられ、前記トーションバースプリング11の固定端部17が当該スプリングホルダー12に対し回転不可能な状態に嵌合される。また、スプリングホルダー12の開放端の外周面にツバ12aによって位置決めされた逆回転リンク15の一端部が嵌合され、溶接等によって固定される。その逆回転リンク15の嵌合固定部分の中心対称の2個所に連結凹部22(図3参照)が設けられる。
【0038】
スプリングホルダー12の長さは、その内部にトーションバースプリング11の固定端部17側を固定穴21に嵌合させた状態で、捩じり端部16がスプリングホルダー12の外部に露出する程度に形成される。捩じり端部16の先端部にネジ軸16aが設けられる(図3参照)。
【0039】
ロータリダンパー13は、図2に示したように、軸方向の一端部が開放され他端部が閉塞された円筒状のダンパーケーシング23、そのダンパーケーシング23の開放端に固定された蓋部材24、その蓋部材24によって閉塞されたチャンバー25、ダンパーケーシング23の閉塞端及び蓋部材24を液密を保持して回転自在に貫通するシャフト26を有する。
【0040】
さらに、シャフト26に一体化されチャンバー25の内部で回転可能なディスク27、チャンバー25に封入されたシリコーンオイル等の粘性流体28が構成部材となっている。シャフト26の内部孔30は前記トーションバースプリング11の捩じり端部16の断形状と同形状をもつように形成される。
【0041】
前記ディスク27には、所要数の調整孔31が設けられ、その調整孔31の数や径の大きさによってダンパー特性の調整が行われる。前記ダンパーケーシング23の閉塞端外側面の中心対称の2個所に連結突起29が設けられる。
【0042】
前記閉塞端にスプリングホルダー12が同心状態に突き合わされ、スプリングホルダー12と一体の逆回転リンク15の連結凹部22に連結突起29が嵌入され、逆回転リンク15とダンパーケーシング23は溶接等によって結合一体化される。これにより、スプリングホルダー12、逆回転リンク15、ダンパーケーシング23及び蓋部材24が同心状態に連結される。
【0043】
一方、トーションバースプリング11の捩じり端部16が前記シャフト26の内部孔30に挿通嵌合され、その捩じり端部16の露出端に滑り軸受32を挟んで回転リンク14のリンク孔33(図3参照)が嵌合される。リンク孔33も捩じり端部16の断面形状に合致する断形状を有する。さらに、捩じり端部16の先端のネジ軸16aがリンク孔33の外側に突き出し、座金34を介してナット35によりネジ結合される。
【0044】
回転リンク14と逆回転リンク15はトーションバースプリング11の軸心を共通の回転中心としたV形リンク36(図1参照)を構成する。V形リンク36は、トーションバースプリング11が中立状態にある場合に一定の開き角θを有する。各自由端部には連結孔37を設けたものを示しているが、設けない場合もある。
【0045】
なお、スプリングホルダー12の径及び長さを適当に設定することにより、その開放端の内部にロータリダンパー13を嵌合一体化した構成をとることもできる。
【0046】
実施形態1に係るトーションダンパー10は以上のような構成であり、これを使用する場合は、図2に示したように、ダンパーケーシング23の外径面に転がり軸受38を介して制震対象となる装置の支承プレート44(図4参照)等の固定部にダンパーケーシング23の軸心、即ち、V形リンク36のリンク結合の軸心を中心に回転自在に保持させる。
【0047】
V形リンク36を構成する回転リンク14と逆回転リンク15の自由端部に装置側から逆トルクTを同時に加える。いま、図1の矢印Tのように、V形リンク36の開き角θを小さくする内向きの逆トルクTが加えられたとすると、回転リンク14によってトーションバースプリング11の捩じり端部16に時計回りの捩じり荷重が付与される。
【0048】
捩じり端部16の捩じり回転によってロータリダンパー13のシャフト26とディスク27が一体となって、粘性流体28及びこれが付着したダンパーケーシング23に対して回転し、回転リンク14の回転に対しダンパー作用を及ぼす。回転リンク14とロータリダンパー13の間には滑り軸受32が介在されているので、回転リンク14の回転トルクがダンパーケーシング23に及ぶことが避けられる。
【0049】
一方、逆回転リンク15によってスプリングホルダー12及びダンパーケーシング23に反時計回りの捩じり荷重、即ち逆捩じり荷重が付与されると、スプリングホルダー12と一体の固定端部17に逆捩じり荷重が付与される。またダンパーケーシング23の反時計回りの回転によって、粘性流体28及びこれが付着したダンパーケーシング23がディスク27とシャフト26に対して回転し、逆回転リンク15の回転に対してダンパー作用を及ぼす。
【0050】
このように、トーションバースプリング11の捩じり端部16及び固定端部17にそれぞれ逆トルクTが伝達されることにより、トーションバースプリング11の両端部が逆方向に捩じられ、両方の捩じれ量に応じてロータリダンパー13によるダンパー作用が行われる。その結果、回転リンク14と逆回転リンク15の回転に対しダンパー効果が付与される。
【0051】
回転リンク14又は逆回転リンク15のいずれか一方だけで捩じり荷重を加える場合に比べ、一定の回転角当たり2倍の捩じれ量がトーションバースプリング11に付与され、その捩じれ量に基づきダンパー作用が行われるので、ダンパー効果が倍増する。
【0052】
ダンパー効果は、前記のロータリダンパー13だけでなく、トーションバースプリング11自体の捩じり弾性によっても発揮されるので、両方の効果が相まって大きなダンパー効果が得られる。
【0053】
回転リンク14及び逆回転リンク15に加えられた逆トルクの向きが変わると、トーションバースプリング11の捩じり弾性が解放され元の状態に戻ると回転リンク14及び逆回転リンク15の開き角θも元の大きさ、即ち原点位置に戻る。このとき、ロータリダンパー13は、回転の向きが逆になってダンパー作用を発揮する。
【0054】
前記逆トルクが原点位置を越える大きさであると、回転リンク14及び逆回転リンク15は原点位置を越えて開き角θを縮小する方向に作動し、トーションバースプリング11を前記と逆方向に捩じる。ロータリダンパー13は引き続き逆向きに回転してダンパー作用を行う。
【0055】
ここで従来のダンパーユニットとの関係を見ると、従来の場合(特許文献1参照)は、トーションバースプリング11の捩じり端部にのみ捩じり荷重が加えられ、反対側の固定端部を装置の固定部に直接固定することにより捩じり荷重に対する反力を受ける構成がとられていた。これに対し、この発明の場合は、捩じり端部16及び固定端部17にそれぞれ捩じり荷重が加えられる。その反力の支持構造は次のようになっている。
【0056】
即ち、回転リンク14から捩じり端部16に作用する捩じり荷重に対する反力は、固定端部17、スプリングホルダー12、逆回転リンク15を経てトルクTを発生する装置(図示省略)の固定部によって受けられる。反対に、逆回転リンク15から固定端部17に作用する逆捩じり荷重に対する反力は、捩じり端部16、回転リンク14を経て同じくトルクTを付与する装置(図示省略)の固定部によって受けられる。
[実施形態2]
【0057】
図4から図7に示した実施形態2は前記のトーションダンパー10を使用した制震装置に関し、柱41と梁42とからなる四角形の建築物要素、いわゆるラーメン構造物43の制震に適したものである。ラーメン構造物43の対角位置にあるコーナー部に、それぞれ上部支承プレート44、下部支承プレート45が取り付けられる。
【0058】
上部支承プレート44に転がり軸受38(図5参照)を介して前述のトーションダンパー10のダンパーユニット20が回転自在に支持される。ダンパーユニット20は柱41と梁42を含む四角形の面に対して直交する向きに配置される。また、回転リンク14及び逆回転リンク15によって構成されたV形リンク36は、一定の開き角θをもってV字形に四角形空間の中央部に広がっている。各リンク14、15は同一長さに形成される。
【0059】
下部支承プレート45には、前記四角形の面と直交する方向の連結ピン39によって、回転副リンク47と逆回転副リンク48の各端部がそれぞれ相対回転可能な状態に同軸状態に連結される。これらの副リンク47、48は前記の回転リンク14及び逆回転リンク15と同じ長さに形成され、それぞれの自由端相互が中間連結ピン49、50によってそれぞれ相対回転可能にリンク結合されている。これら4本のリンク14、15、47、48によってひし形リンク46が構成される。
【0060】
なお、リンク14、15、47、48はひし形リンク46に限らず、凧形リンク、平行四辺形リンク等の四辺形リンクであればよい。このような一つの四辺形リンクに対し、1個のトーションダンパー10が設けられる。
【0061】
実施形態2の免震装置は以上のようなものである。制震対象であるラーメン構造物43が正規の姿勢に維持され、トーションバースプリング11に何らの捩じり荷重が作用しない位置、即ち原点位置にある場合(図4参照)において、基礎40からラーメン構造物43に地震の振動が加えられたとする。その振動によって、図6に示したように、梁42の一方の端部(上部支承プレート44の無い方の端部)から梁42の長さ方向の振動外力Fが加えられ、ラーメン構造物43が二点鎖線の状態から実線の状態に角度δだけ傾斜したとする。
【0062】
その変形に伴い、中間連結ピン49、50の間隔が縮小するので、回転リンク14と逆回転リンク15に対し、副リンク47、48側からそれぞれ大きさ同じ、内向きの逆トルクTが同時に加えられる。これによりV形リンク36は、開き角θが縮小する方向に変形する。
【0063】
前記の逆トルクTにより、トーションダンパー10においては、回転リンク14を経てトーションバースプリング11の捩じり端部16に捩じり荷重が加えられる(図2参照)。同時に、逆回転リンク15、スプリングホルダー12を経て固定端部17に逆捩じり荷重が加えられ、トーションバースプリング11は、両端部から逆方向に捩じられる。
【0064】
回転リンク14側からトーションバースプリング11の捩じり端部16に加えられる捩じり荷重に対する反力は、固定端部17、スプリングホルダー12、逆回転リンク15、逆回転副リンク48、支承プレート45を経て基礎40で受けられる。同様に、逆回転リンク15側から固定端部17に加えられる逆捩じり荷重に対する反力は、捩じり端部16、回転リンク14、回転副リンク47、支承プレート45を経て基礎40で受けられる。
【0065】
また、トーションバースプリング11の前記の捩じり回転に伴い、ロータリダンパー13のシャフト26とディスク27に対し粘性流体28とダンパーケーシング23が相対回転することにより、回転リンク14及び逆回転リンク15の回転に対しダンパー効果が付与される。
【0066】
回転リンク14及び逆回転リンク15はひし形リンク46を構成し、ひし形リンク46は、両方の支承プレート44、45間の間隔を規定するので、回転リンク14及び逆回転リンク15の回転に対しダンパー効果が付与されることにより、ラーメン構造物43の振動に伴う変形に対しダンパー効果が発揮される。
【0067】
前記とは逆に、上部支承プレート44側から振動外力Fが作用し、前記とは逆方向に角度δだけ変形したとすると(図7参照)、中間連結ピン49、50の間隔が拡大し、回転リンク14と逆回転リンク15に、それぞれ大きさが同じ、外向きの逆トルクTが同時に加えられ、前記の開き角θが拡大するように変形する。
【0068】
この場合のトーションバースプリング11に作用する捩じり荷重、その反力支持構造、ロータリダンパー13によりダンパー作用は前記の場合と向きは逆であるが、同様の作用となるのでその説明を省略する。
【0069】
以上のように、地震振動による振動外力Fがラーメン構造物43に作用した場合、ひし形リンク46を経て加えられる逆トルクTによって、トーションバースプリング11の両端にそれぞれ反対方向の捩じれ荷重が加えられる。その結果、ロータリダンパー13は両方の捩じれに基づくダンパー効果を発揮し、同時にトーションバースプリング11自体によるダンパー効果も相まって、大きなダンパー効果が発揮される。
【0070】
このようにして、地震振動によって発生した振動外力Fは急速に制震され、ラーメン構造物43は初期の姿勢である原点位置に戻る。
【0071】
なお、以上の説明では、上部支承プレート44にダンパーユニット20を取り付けた構成として説明しているが、ダンパーユニット20を下部支承プレート45に取り付け、上部支承プレート44に副リンク47、48の端部を相対回転可能に連結した構成をとることもできる。
[実施形態3]
【0072】
図8に示した実施形態3の場合は、前記のトーションダンパー10を上部と下部の両方の支承プレート44、45に設けたものである。両方のトーションダンパー10の各V形リンク36を構成する回転リンク14及び逆回転リンク15の自由端部相互がそれぞれ中間連結ピン49、50によってリンク結合され、全体としてひし形リンク46が構成される。
【0073】
前記の構成によれば、振動外力が加わった場合に両方のトーションダンパー10が同時にダンパー作用を行うので、前記実施形態2の場合にくらべ制震効果が倍増する。
【0074】
この実施形態3のように、対向一対の支承プレート44、45間に、同一構造の二つのトーションダンパー10を取り付け、V形リンク13の自由端部を相互に連結することによりひし形リンク46を構成した場合の全体構造を、以下の説明の便宜上「複合トーションダンパー10a」と呼ぶこととする。この複合トーションダンパー10aは、一つのひし形リンク46に2個のトーションダンパー10を組み合わせているのでダンパー効果(制震効果)は実施形態2の場合に比べ倍増する。
[実施形態4]
【0075】
図9及び図10に示した実施形態4は、建造部等の基礎52に設置されたテーブル53の制震装置に関するものである。
【0076】
この制震装置は、基礎52の四角形の内壁面54に囲まれた床面55に、任意方向にスライド自在に設置された四角形のテーブル53と、その4辺にそれぞれ設けられた4台の複合トーションダンパー10aとの組み合わせによって構成される。
【0077】
テーブル53は中央部と四隅の5個所に支持脚56が設けられる(図10参照)。各支持脚56の下面に滑りシート57が取り付けられ、床面55に対し任意の方向にスライドが可能となっている。滑りシート57に代えて支持脚56の底面にキャスターを取り付けてもよい。
【0078】
いま、前記床面55にXY座標(図10参照)を想定すると、基礎52の各内壁面54がX方向、Y方向に沿う面となる。テーブル53の各側面はこれらの内壁面54に平行に設置され、その設置状態が原点位置となる。
【0079】
基礎52の各内壁面54と、テーブル53の下面の一部に対向一対の支承プレート58、59が取り付けられる。両方の支承プレート58、59の間にそれぞれ複合トーションダンパー10aが設けられる。各複合トーションダンパー10aのダンパーユニット20の回転中心、即ちV形リンク36のリンク結合の軸心は、X、Y方向に直角のZ方向を向く(図9参照)。
【0080】
実施形態4の制震装置は以上のように構成され、基礎52に発生するX方向の振動は、X方向の2個所の複合トーションダンパー10aによって減衰される。Y方向の振動は、Y方向の2個所の複合ダンパーユニット10aによって減衰され制震効果が発揮される。
【0081】
X、Y方向に対して角度をもった振動は、それぞれの複合トーションダンパー10aがX方向の振動分力、Y方向の振動分力を受けて減衰され制震効果が発揮される。
[実施形態5]
【0082】
図11に示した実施形態5は、前記実施形態4の一部を変更したものである。即ち、この場合は、複合トーションダンパー10aを用いる代わりに、基礎52側の支承プレート58にトーションダンパー10のダンパーユニット20を回転可能に取り付ける。テーブル53側の支承プレート59には回転副リンク47、逆回転副リンク48を連結ピン39によって相対回転自在に連結し、各副リンク47、48の自由端を回転リンク14、逆回転リンク15の自由端に相対回転可能に連結し、四辺形リンクを構成するようにしたものである。
【0083】
トーションダンパー10をテーブル53側の支承プレート59に取り付ける構成をとることもできる。いずれの場合も、トーションダンパー10の数が半減するので、ダンパー効果、即ち制震効果も半減することになる。
[実施形態6]
【0084】
図12及び図13に示した実施形態6は、前記実施形態4(図9、図10参照)の制震装置にZ方向の制震作用を追加したものである。X、Y方向の制震作用を行う構成は、実施形態4の場合と同様であるので、その説明を省略し、主として相違する部分について説明する。
【0085】
相違する部分は、以下の部分である。即ち、基礎52の内壁面54の中間部分にテーブル53側に開放された凹部61が設けられ、その凹部61にZ方向にのみ移動可能なブロック62が設けられ、そのブロック62の内側面に前記支承プレート58が取り付けられる。また、ブロック62の上面にZ方向制震用トーションダンパー10のダンパーユニット20が取り付けられ、その回転リンク14と逆回転リンク15の自由端部が凹部61のオーバハング部63の下面に当接される。
【0086】
前記凹部61の開放面と対向した内壁面にV形断面のガイドリブ64が設けられるとともに、凹部61の底面と基礎52の床面55の境界にも規制リブ65が設けられ、ブロック62のX、Y方向への移動が規制される。ガイドリブ64の内側面に滑りシート66が設けられ、ブロック62がZ方向(上下方向)へ自由にスライドできるようになっている。また、ブロック62の底面にクッションシート67が設けられ、下降時のショックを吸収するようにしている。
【0087】
実施形態6の制震装置は以上のように構成され、テーブル53のX、Y方向の振動に対しては、前記実施形態4の場合と同様に、複合トーションダンパー10aのダンパー作用によって制震が行われる。Z方向の振動に対しては、各複合トーションダンパー10aを経てブロック62に伝導され、ブロック62をZ方向に移動させる。
【0088】
ブロック62の上面に取り付けられたZ方向制震用トーションダンパー10の回転リンク14と逆回転リンク15がオーバハング部63に押し当てられて開き角θが拡大する方向に回転することにより、それぞれ逆向きのトルクがダンパーユニット20に加えられダンパー作用が行われる。
【0089】
ブロック62が前記の状態から下向きに移動すると、回転リンク14と逆回転リンク15が開き角θの縮小する方向に回転することによりダンパー作用が行われることにより、Z方向の制震が行われる。
【0090】
なお、以上の説明では、4台の複合トーションダンパー10aを用いた場合について示しており、ダンパーユニット20が全体で8個設けられているが、場合によっては、複合トーションダンパー10aに代えてトーションダンパー10と、回転副リンク47と逆回転副リンク48との組み合わせによって構成することにより、全体で4個のダンパーユニット20を設けた構成(図11に示した実施形態5の構成)を採用することができる。
[実施形態7]
【0091】
図14に示した実施形態7の制震装置は、基礎52の床面55上に設置されたテーブル53のX、Y方向の制震を行うものである点で前記の実施形態4(図9、図10参照)の場合と共通するが、トーションダンパー10の使用状態において相違している。
【0092】
即ち、基礎52の各内壁面54に2個所の支承プレート58が取り付けられ、各支承プレート58に取り付けられるトーションダンパー10は、そのダンパーユニット20がZ方向の回転中心をもつように取り付けられ、回転リンク14と逆回転リンク15の自由端がそれぞれ対向したテーブル53の側面に押し当てられる。
【0093】
図示のように、回転リンク14と逆回転リンク15が一定の開き角θをもってテーブル53に当接した状態で各トーションダンパー10のトーションバースプリング11には一定の捩じりが付与されているものとし、その状態を原点位置とする。
【0094】
X方向振動がテーブル53に加えられると、X方向に対向した一方のトーションダンパー10の回転リンク14と逆回転リンク15の開き角θが拡大する一方、反対側においては縮小し、それぞれ制震を行う。Y方向の振動に対しても同様の制震が行われる。また、X、Y方向に対し角度を持った振動の場合は、X方向の分力、Y方向の分力によって同様の制震が行われる。
【0095】
なお、Z方向の制震作用を行う場合は、前記実施形態6(図12、図13参照)の場合と同様のZ方向の制震構造、即ち、内壁面54に凹部61を設け、その内部にZ方向にのみ移動可能なブロック62を収納し、ブロック62の上面に設置したトーションダンパー10の回転リンク14と逆回転リンク15の自由端部をオーバハング部63に押し当てた構造を採用することができる。
[実施形態8]
【0096】
図15から図18に示した実施形態8の制震装置は、基礎52の床面55上に設置されたテーブル53のX、Y及びZ方向の制震を行うものである。テーブル53の4側面と、基礎52の4内側面54の関係は、前述の場合(例えば実施形態4の図10に関する説明参照)と同様である。
【0097】
X、Y方向の制震のために、内壁面54の4コーナー部に支承プレート58を設け、各支承プレート58に前記のトーションダンパー10(実施形態1参照)を取り付けている。各トーションダンパー10の回転リンク14と逆回転リンク15は、一定の開き角θをもってテーブル53のコーナー部を挟んだ両側面に押し当てられ、その状態で原点位置となっている。
【0098】
基礎52に発生する地震の振動外力が、水平面内においてX、Y方向に対し角度を持ったものである場合は、対角位置にある一方のトーションダンパー10の回転リンク14と逆回転リンク15の開き角θが拡大すると、他方のトーションダンパー10が縮小し、両方においてダンパー効果が発揮される。震動外力がX方向又はY方向に向く場合は、回転リンク14又は逆回転リンク15のいずれか一方のみが回転され、他方はテーブル53の側面に押し当てられ、反力支持の作用のみ行い、逆回転は行わない。
【0099】
Z方向の制震に用いられるトーションダンパー10bは、図16に示したように、前述のトーションダンパー10(実施形態1参照)から逆回転リンク15を除いた点、スプリングホルダー12が角筒形に形成されている点、その角筒形のスプリングホルダー12の一部に内壁面54に対する取り付け片68が設けられている点が異なる。その他は同一構造である。
【0100】
即ち、トーションダンパー10bは、一端部に捩じり端部16、他端に固定端部17を有するトーションバースプリング11と、前記トーションバースプリング11を収納し固定端部17を相対回転不可能な状態に支持するスプリングホルダー12と、前記スプリングホルダー12に同心状態に結合されたロータリダンパー13とによりダンパーユニット20が構成される。
【0101】
また、前記ロータリダンパー13の回転中心にトーションバースプリング11の捩じり端部16が一体回転可能に貫通され、捩じり端部16に捩じり荷重を加える回転リンク14を設けている。ダンパーユニット20は前記の取り付け片68によって内壁面54に固定され、回転リンク14による捩じり荷重の反力をその取り付け片68を経て内壁面54において支持する。
【0102】
前記回転リンク14の自由端がテーブル53の側面に突き出した規制凸部69の上面に押し当てられる。テーブル53のZ方向上向きの移動に伴い回転リンク14が回転されると、ダンパーユニット20によるダンパー作用が働らきZ方向の制震が行われる。
【符号の説明】
【0103】
10 トーションダンパー
10a 複合トーションダンパー
10b トーションダンパー
11 トーションバースプリング
12 スプリングホルダー
12a ツバ
13 ロータリダンパー
14 回転リンク
15 逆回転リンク
16 捩じり端部
16a ネジ軸
17 固定端部
18 平坦面
19 丸棒部
20 ダンパーユニット
21 固定穴
22 連結凹部
23 ダンパーケーシング
24 蓋部材
25 チャンバー
26 シャフト
27 ディスク
28 粘性流体
29 連結突起
30 内部孔
31 調整孔
32 滑り軸受
33 リンク孔
34 座金
35 ナット
36 V形リンク
37 連結孔
38 転がり軸受
39 連結ピン
40 基礎
41 柱
42 梁
43 ラーメン構造物
44、45 支承プレート
46 ひし形リンク
47 回転副リンク
48 逆回転副リンク
49、50 中間連結ピン
52 基礎
53 テーブル
54 内壁面
55 床面
56 支持脚
57 滑りシート
58、59 支承プレート
61 凹部
62 ブロック
63 オーバハング部
64 ガイドリブ
65 規制リブ
66 滑りシート
67 クッションシート
68 取り付け片
69 規制凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に捩じり端部、他端に固定端部を有するトーションバースプリングと、前記トーションバースプリングを収納し前記固定端部を相対回転不可能な状態に支持するスプリングホルダーと、前記スプリングホルダーに同心状態に結合されたロータリダンパーとによりダンパーユニットが構成され、前記ロータリダンパーの回転中心にトーションバースプリングの捩じり端部が一体回転可能に貫通され、前記捩じり端部に捩じり荷重を加える回転手段及び前記スプリングホルダーの固定手段が設けられたトーションダンパーにおいて、前記回転手段が前記トーションバースプリングの捩じり端部に取り付けられた回転リンクによって構成され、前記固定手段が前記ダンパーユニットと一体化され前記回転リンクと同軸状態に取り付けられた逆回転リンクによって構成され、前記回転リンクと逆回転リンクに外部から逆トルクを加えるようにしたことを特徴とするトーションダンパー。
【請求項2】
前記回転リンクと逆回転リンクに外部から前記の逆トルクを加える手段が、前記回転リンクと逆回転リンクの自由端部にそれぞれ副リンクを相対回転可能に連結するとともに、両副リンクの他端部を相対回転可能に連結して全体として四辺形リンクを構成し、前記両副リンクの他端部の連結端部を制震装置等の固定部に相対回転可能に連結した構成であり、一つの四辺形リンク当たり1個のダンパーユニットを有することを特徴とする請求項1に記載のトーションダンパー。
【請求項3】
前記回転リンクと逆回転リンクに外部から前記の逆トルクを加える手段が、同一構造を持った他のトーションダンパーによって構成され、当該他のトーションダンパーのダンパーユニットを制震装置等の固定部に相対回転自在に取り付け、両方の回転リンクの自由端相互及び逆回転リンクの自由端相互をそれぞれ相対回転可能に連結して四辺形リンクを構成し、一つの四辺形リンク当たり2個のダンパーユニットを複合的に有することを特徴とする請求項1に記載のトーションダンパー。
【請求項4】
前記回転リンクと逆回転リンクに外部から前記の逆トルクを加える手段が、前記回転リンクと逆回転リンクの各自由端部を制震装置等の固定部に押し当てた構成であることを特徴とする請求項1に記載のトーションダンパー。
【請求項5】
前記ロータリダンパーは、軸方向の一端部が開放されたケーシング、その開放端に固定された蓋部材、前記蓋部材によって閉塞されたチャンバー、前記ケーシングの閉塞端及び蓋部材を液密を保持して回転自在に貫通するシャフト、前記シャフトに一体化され前記チャンバー内部で回転可能に保持されたディスク、前記チャンバーに封入された粘性流体によって構成されたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のトーションダンパー。
【請求項6】
請求項2、3又は5記載のトーションダンパーを用いた制震装置において、基礎上に構築された柱と梁からなるラーメン構造物の対角位置にある上部又は下部支承プレートのいずれか一方に当該トーションダンパーの回転リンクを支持するリンク軸が回転自在に取り付けられ、他方の支承プレートに回転副リンクと逆回転副リンクを相対回転自在に連結したことを特徴とする請求項5に記載の制震装置。
【請求項7】
前記トーションダンパーとして請求項2又は5に記載のものを用い、上部又は下部支承プレートのいずれか一方に当該トーションダンパーの回転リンクを支持するリンク軸が回転自在に取り付けられ、他方の支承プレートに回転副リンクと逆回転副リンクを相対回転自在に連結したことを特徴とする請求項6に記載の制震装置。
【請求項8】
前記トーションダンパーとして請求項3又は5に記載のトーションダンパーを用いた制震装置において、前記上部及び下部支承プレートにそれぞれ当該両トーションダンパーの各回転リンクを支持するリンク軸がそれぞれ回転自在に取り付けられことを特徴とする請求項6に記載の制震装置。
【請求項9】
請求項3又は5に記載のトーションダンパーを用いた制震装置において、制震対象となる四角形のテーブルが基礎の床面においてXY座標によって規定される平面の任意方向にスライド可能に支持され、前記テーブルの4側面がそれぞれX軸方向、Y軸方向に沿うように設けられ、前記テーブルの各側面に対応して基礎側とテーブル側にそれぞれ支承プレートが取り付けられ、両方の支承プレートに前記トーションダンパーのダンパーユニットがZ軸方向の回転中心をもって回転自在に取り付けられ、両方のトーションダンパーの回転リンクの自由端部相互及び逆回転リンクの自由端部相互をそれぞれ相対回転可能に連結して四辺形リンクが構成されたトーションダンパー。
【請求項10】
請求項2又は5のいずれかに記載のトーションダンパーを用いた制震装置において、制震対象となる四角形のテーブルが基礎の床面においてXY座標によって規定される平面の任意方向にスライド可能に支持され、前記テーブルの4側面がそれぞれX軸方向、Y軸方向に沿うように設けられ、各側面に対応して前記基礎に内壁面が設けられ、前記基礎の内壁面にテーブル側に開放された凹部が設けられ、前記凹部にZ方向にのみ移動可能なブロックが設けられ、前記ブロック側とテーブル側にそれぞれ支承プレートが取り付けられ、ブロック側又はテーブル側のいずれかの支承プレートに前記トーションダンパーのダンパーユニットがZ軸方向の回転中心をもって回転自在に取り付けられ、他方の支承プレートに前記両副リンクの端部が相対回転自在に連結され、前記ブロックの上面に固定されたトーションダンパーのV形リンクの自由端が前記凹部のオーバハング部の下面に押し当てられたことを特徴とする制震装置。
【請求項11】
請求項3又は5のいずれかに記載のトーションダンパーを用いた制震装置において、制震対象となる四角形のテーブルが基礎の床面においてXY座標によって規定される平面の任意方向にスライド可能に支持され、前記テーブルの4側面がそれぞれX軸方向、Y軸方向に沿うように設けられ、各側面に対応して前記基礎に内壁面が設けられ、前記基礎の内壁面にテーブル側に開放された凹部が設けられ、前記凹部にZ方向にのみ移動可能なブロックが設けられ、前記ブロック側とテーブル側にそれぞれ支承プレートが取り付けられ、前記各支承プレートに前記トーションダンパーのダンパーユニットがZ軸方向の回転中心をもって回転自在に取り付けられ、両方のトーションダンパーの回転リンクの自由端相互及び逆回転リンクの自由端相互をそれぞれ相対回転可能に連結して四辺形リンクを構成したことを特徴とする制震装置。
【請求項12】
請求項4に記載のトーションダンパーを用いた制震装置において、制震対象となる四角形のテーブルが基礎の床面においてXY座標によって規定される平面の任意方向にスライド可能に支持され、前記テーブルの4側面がそれぞれX軸方向、Y軸方向に沿うように設けられ、各側面に対応して前記基礎に内壁面が設けられ、前記内壁面のコーナー部に設けた支承プレートに前記トーションダンパーが取り付けられ、その回転リンクと逆回転リンクの自由端部が対向するテーブルのコーナー部を挟んだ2側面に押し当てられたことを特徴とする制震装置。
【請求項13】
前記テーブルにZ方向の振動に対するトーションダンパーが設けられ、当該トーションダンパーは、一端部に捩じり端部、他端に固定端部を有するトーションバースプリングと、前記トーションバースプリングを収納し前記固定端部を相対回転不可能な状態に支持するスプリングホルダーと、前記スプリングホルダーに同心状態に結合されたロータリダンパーとによりダンパーユニットが構成され、前記ロータリダンパーの回転中心にトーションバースプリングの捩じり端部が一体回転可能に貫通され、前記捩じり端部に捩じり荷重を加える回転リンクを設け、前記ダンパーユニットは前記内壁面に固定され、前記回転リンクをテーブル側面に突き出した規制凸部の上面に押し当てた構成であることを特徴とする制震装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−40643(P2013−40643A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177087(P2011−177087)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】