説明

ドアガラスランの構造

【課題】ドアガラスランの角部にシャープなラインを形成し、経年劣化による角部の剥がれを防ぎ、外観の向上を図ることが可能なドアガラスランの構造を提供することにある。
【解決手段】本発明は、ドアの窓枠を構成するサッシュ6と昇降可能なウィンドガラス7との間に配設されるドアガラスラン9の構造において、ドアガラスラン9の上端角部9aに車両後方へ向かって張り出す延出部12を形成し、延出部12をサッシュ6の縦辺部に取付けられる外装部品のガーニッシュ14で覆っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアの窓枠を構成するサッシュと昇降可能なウィンドガラスとの間に配設されるドアガラスランの構造に係り、さらに詳しくは、車両室外側の意匠性を高めるためのドアガラスランの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の車体側部には、ウィンドレギュレータによって昇降可能に保持されるウィンドガラスを備えたサイドドアが配置されている。このようなドアにおいては、窓枠を構成するサッシュと昇降可能なウィンドガラスとの間にドアガラスランが配設されており、このドアガラスランがウィンドガラスの昇降を案内するとともに、サッシュとウィンドガラスとの間の気密性を高めている。
【0003】
ところで、上記ドアガラスランは、サッシュの車室外側の端面の一部を覆っており、ドアの外観の意匠性にも影響を及ぼす部品となっている。特にサッシュの角部においては、シャープな外観印象を与えるため、ドアガラスランをできるだけ尖った鋭角な形状に形成する必要がある。その一方で、サッシュ側の角部は、ある程度の丸みを帯びた湾曲形状に形成されている。このため、ドアガラスランの角部とサッシュとの嵌合作業が難しい上、ドアガラスランの形状を保持することが困難であった。
このような問題点を解消する従来技術として、車外側側壁、車外側側壁及び底壁からなる断面略U字状の自動車用ガラスランが提供されている(例えば、特許文献1参照)。このガラスランのコーナー部には、ドア閉時に車体開口部周縁のオープニングウェザストリップに当接するようにした膨出部が一体的に形成されている。
【特許文献1】特開2006−123693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のガラスランにあっては、コーナー部がシャープなラインの形状に形成されていない上に、膨出部が露出した状態で配置されているので、経年劣化が生じることによってコーナー部端縁の剥がれ等を十分に防ぐことができなかった。また、ウィンド開口の周縁に沿って取付けるガラスランのコーナー部に合わせ寸法のズレが生じている場合、外観を損なうおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、ドアガラスランの角部にシャープなラインを形成し、経年劣化による角部の剥がれを防ぎ、外観の向上を図ることが可能なドアガラスランの構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、ドアの窓枠を構成するサッシュと昇降可能なウィンドガラスとの間に配設されるドアガラスランの構造において、前記ドアガラスランの上端角部に車両後方へ向かって張り出す延出部を形成し、該延出部を前記サッシュの縦辺部に取付けられる外装部品で覆っている。
【0007】
また、本発明において、前記ドアガラスランは、前記延出部に連続して下方へ延びるリップ部を備え、該リップ部の端縁の一部も前記外装部品によって覆われている。
【発明の効果】
【0008】
上述の如く、本発明に係るドアガラスランの構造は、ドアの窓枠を構成するサッシュと昇降可能なウィンドガラスとの間に配設されるドアガラスランであって、前記ドアガラスランの上端角部に車両後方へ向かって張り出す延出部を形成し、該延出部を前記サッシュの縦辺部に取付けられる外装部品で覆っているので、経年劣化による角部の剥がれを心配することなく、ドアガラスランの角部に直角に近いシャープなライン形状を形成することができ、車両室外側の外観品質を向上させることができる。
【0009】
また、本発明において、前記ドアガラスランは、前記延出部に連続して下方へ延びるリップ部を備え、該リップ部の端縁の一部も前記外装部品によって覆われているので、剥がれ易い角部のリップ部も外装部品によってしっかりと押さえることができるとともに、合わせ寸法のズレが生じても、上下方向に延びる直線形状を維持でき、より一層外観向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るドアガラスランの構造について、図面を参照しながら、その実施形態に基づき詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係るドアガラスランの構造が適用された自動車全体の側面図、図2は図1における自動車の車体側部に配置されたリヤサイドドアの側面図、図3は上記実施形態に係るドアガラスランの上端角部を拡大するものであって、(A)はガーニッシュを取付ける前の状態を示す側面図、(B)はガーニッシュを取付けた状態を示す側面図、図4は図2におけるA−A線断面図である。
【0011】
図1に示すように、本発明の実施形態における自動車1の左右両側部開口には、それぞれ開閉可能なフロントサイドドア2及びリヤサイドドア3が車両前後方向に沿って配設されている。これらフロントサイドドア2およびリヤサイドドア3のうち、本実施形態のドアガラスラン(後述する)の構造は、リヤサイドドア3に適用されている。
リヤサイドドア3は、図2及び図4に示すように、室内側の面を形成するインナーパネル4と室外側の面を形成するアウターパネル5とを組付けることによって構成されており、上部には、窓枠を構成するサッシュ6が一体的に設けられている。
【0012】
上記サッシュ6の内方には、昇降可能なウィンドガラス7を配置するためのウィンド開口部8が設けられている。このウィンド開口部8の前後部及び上部に臨むインナーパネル4とアウターパネル5との間の隙間Sには、ドアガラスラン9が当該ウィンド開口部8の周縁に沿って取付けられている。すなわち、ドアガラスラン9は、サッシュ6とウィンドガラス7との間に配設されており、ウィンドガラス7の昇降を案内するとともに、サッシュ6とウィンドガラス7との間の気密性を保持すべく設けられている。
そのため、ドアガラスラン9は、一対の対向側壁10と底壁11とによって断面略コ字状に形成されており、対向側壁10の内外側面には、内外方へ向かって延びる内外リップ部10a,10bがそれぞれ設けられている。なお、リヤサイドドア3の下部におけるウィンドガラス7は、インナーパネル4とアウターパネル5とで形成される空間に挿入配置され、図示しないウィンドレギュレータによって昇降可能に保持されている。
【0013】
さらに、本実施形態に係るドアガラスラン9の車両後方側の上端角部9aには、図3(A)に示すように、室外側を覆うリップ部10bの一部形状を変更することにより、車両後方へ向かって張り出す延出部12が形成されている。この延出部12は、ドアガラスラン9の周辺部品との係合面積を拡大する機能を有している。一方、この延出部12と対応するアウターパネル5の箇所には、その一部を切り欠いた凹部13が設けられており、該凹部13に延出部12が収納されるようになっている。
【0014】
また、上記延出部12は、図3(B)に示すように、サッシュ6の縦辺部に取付けられるガーニッシュ14で覆われている。このガーニッシュ14は、リヤサイドドア3の室外側に位置するサッシュ6の縦辺部に設置される外装部品であり、延出部12の上部から被せるように組付けられている。
しかも、ドアガラスラン9は、延出部12に連続して下方へ延びる室外側のリップ部10bを備えていることから、図4に示すように、当該リップ部10bの端縁の一部も、ガーニッシュ14によって覆われている。
【0015】
本発明の実施形態に係るドアガラスランの構造では、ドアガラスラン9の車両後方側の上端角部9aに車両後方へ向かって張り出す延出部12が形成されているとともに、該延出部12がガーニッシュ14によって覆われているため、アウターパネル5とガーニッシュ14との間に生じる隙間を延出部12で埋めることが可能となり、リヤサイドドア3の室外側の見栄えを良くすることができる。したがって、ガーニッシュ14の組付け時、アウターパネル5とガーニッシュ14がV字型の合わせになって外観を損なうという問題が生じることは無くなる。しかも、剥がれ易いドアガラスラン9の上端角部9aに位置するリップ部10bが延出部12を介してガーニッシュ14によりしっかりと押え付けられているため、経年劣化によるリップ部10bの剥がれなどを防ぐことができる。
また、本発明の実施形態に係るドアガラスランの構造では、延出部12に連続して下方へ延びるリップ部10bの端縁の一部もガーニッシュ14によって覆われているため、合わせ寸法のズレが生じても上下方向の直線を維持でき、直角に近いシャープな角形状をドアガラスラン9に持たせることが可能となり、車両室外側の意匠性を高めて、より一層外観品質を向上させることができる。
【0016】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、本発明に係るドアガラスランの構造は、リヤサイドドア3のみならず、フロントサイドドア2に適用することも可能である。また、延出部12の形状は既述したものに限定されず、適宜の形状を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るドアガラスランの構造が適用された自動車全体を示す側面図である。
【図2】図1における自動車の車体側部に配置されたリヤサイドドアを示す側面図である。
【図3】上記実施形態に係るドアガラスランの上端角部を拡大するものであって、(A)はガーニッシュを取付ける前の状態を示す側面図、(B)はガーニッシュを取付けた状態を示す側面図である。
【図4】図2におけるA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 自動車
3 リヤサイドドア
4 インナーパネル
5 アウターパネル
6 サッシュ
7 ウィンドガラス
8 ウィンド開口部
9 ドアガラスラン
9a 上端角部
10 対向側壁
10b リップ部
12 延出部
13 凹部
14 ガーニッシュ(外装部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアの窓枠を構成するサッシュと昇降可能なウィンドガラスとの間に配設されるドアガラスランの構造において、前記ドアガラスランの上端角部に車両後方へ向かって張り出す延出部を形成し、該延出部を前記サッシュの縦辺部に取付けられる外装部品で覆っていることを特徴とするドアガラスランの構造。
【請求項2】
前記ドアガラスランは、前記延出部に連続して下方へ延びるリップ部を備え、該リップ部の端縁の一部も前記外装部品によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載のドアガラスランの構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−78683(P2009−78683A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249172(P2007−249172)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】