説明

ドアグラスラン

【課題】ドアガラスの摺動性あるいは昇降容易性に悪影響を及ぼすことなく、ドアガラスの十分なばたつき抑制効果が得られるようにした構造を提供する。
【解決手段】縦辺部2cの本体部7におけるコ字状空間にドアガラスGを受容してそのドアガラスGを摺動可能に案内支持するドアグラスランである。本体部7のうち室内側となる一方の側壁部5の内側面に長手方向に沿って中空状のビード部10を形成する。ビード部10の長手方向両端部ではそのビード部10自体の突出高さが漸次小さくなるように徐変させながら押し潰して、中空部10aを自室的に閉塞してある。ビード部10にはエア抜き穴11を形成して、室内側のシールリップ8にて積極的に開閉させる構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアガラスを昇降可能に案内しつつ車室内外をシールするドアグラスランの構造に関し、さらに詳しくは、ドア閉時等においてドアガラスが振れたり振動したりするいわゆるばたつきの抑制を考慮したドアグラスランの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、自動車のドア本体に付帯するドアサッシュの内側にはシールリップ付きの断面略コ字状をなすドアグラスランが装着されていて、このドアグラスランにてドアガラスを受容した上で、そのドアガラスを昇降(摺動)可能に案内しつつ車室内外をシールするようになっている。
【0003】
ところで、上記ドアグラスランに付帯しているシールリップの機能は主としてシール性確保のためであるが、ドアガラス閉時のそのドアガラスのばたつきを防止する上では、シールリップだけでは必ずしも十分でない。そこで、車室内側シールリップの内側に別のサブリップを追加して、これらのシールリップおよびサブリップの総和をもって相対的にリップ反力を高めることでドアガラスのばたつきを抑制するようにしたものが特許文献1にて提案されている。
【0004】
また、上記サブリップを設けることなく、車室内側のシールリップが突出形成される側壁部そのものを中空状にしたものが特許文献2で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−296897号公報
【特許文献2】特開平2−234841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の技術では、ドアガラスの摺動性を確保するためにはサブリップの反力を高くするにも自ずと限界がある。そのため、ドア閉時などの大入力時には、ドアガラスがばたついて不快な音が発生することがあり、なおも改善の余地を残している。その上、サブリップの設置位置および大きさにも自ずと制約があることから、経時変化によりサブリップにへたりが生ずると、期待したドアガラスのばたつき抑制効果が得られなくおそれがある。
【0007】
他方、特許文献2に記載の技術では、断面コ字状のドアグラスランの最大溝幅を規制している車室内側の側壁部が中空状に形成されているだけであるため、その中空状の空隙の存在により例えば車室内側への騒音の伝播を鈍化させる効果は期待できても、上記のようなドアガラスのばたつき抑制効果は期待することはできない。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、ドアガラスの摺動性あるいは昇降容易性に悪影響を及ぼすことなく、ドアガラスの十分なばたつき抑制効果が得られるようにしたドアグラスランの構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、底壁部と一対の側壁部を含んでなる断面略コ字状の本体部と、それぞれの側壁部の先端から本体部におけるコ字状空間の内方に向けて突出形成されたシールリップと、を備え、上記本体部におけるコ字状空間にドアガラスを受容して当該ドアガラスを摺動可能に案内支持するドアグラスランであることを前提とする。その上で、上記本体部のうちドアガラスの縦辺部に相当する部分であって且つ室内側となる一方の側壁部の内側面に長手方向に沿って中空状のビード部を形成する。そして、このビード部の長手方向両端部では当該ビード部自体の突出高さが漸次小さくなるように徐変させながら押し潰して中空部を閉塞してあることを特徴とする。
【0010】
この場合において、中空状のビード部の反発力を可変とするべく、請求項2に記載のように、上記ビード部のうち徐変部以外の部位にエア抜き穴を開口形成してあることが望ましい。
【0011】
特に、ガラス昇降時の摺動抵抗を可及的に小さくしてそのガラス昇降動作を安定化させるためには、エア抜き穴を積極的に開閉できることが望ましい。そのための手段としては、請求項3に記載のように、上記ビード部のうちそのビード部が形成された一方の側壁部から突出形成されたシールリップの撓み変形時に当該シールリップが当接可能な位置にエア抜き穴を形成してあるとともに、上記ビード部の長手方向におけるエア抜き穴の位置は、ビード部の長手方向両端部のうちドアガラスの締め切り側の端部であって且つ上記徐変部以外の部位としてあるものとする。こうすることにより、エア抜き穴をシールリップによって積極的に開閉することが可能となる。
【0012】
また、上記のようにエア抜き穴をシールリップによって積極的に開閉するためには、当然のことながら請求項4に記載のように、上記シールリップの撓み変形時またはその復元時にビード部はドアガラスに直接当接しないようになっていることが条件とされる。
【0013】
さらに、上記ビード部によるドアガラスのばたつき抑制効果の一層の向上を図る上では、請求項5に記載のように、上記本体部の底壁部の内面はドアガラスが車室内外方向で振れを生じた場合の最大振れ量に相当する幅寸法の底部案内面となっていて、上記ビード部は車室内外方向で底部案内面の幅寸法とオーバーラップするように突出していることが望ましい。
【0014】
その一方、上記のようにドアガラス昇降時にドアガラスに押されたシールリップがビード部に当接することを前提とした場合、それらのシールリップとビード部との間で滑りを生ずる可能性がある。そこで、請求項6に記載のように、上記ビード部には長手方向に直交する断面形状の中央部に窪みを形成してあり、上記シールリップの撓み変形時にそのシールリップの先端部を上記窪みにて受容可能としてあることが望ましい。
【0015】
この場合において、シールリップとビード部との相対位置決めを安定化させる上では、請求項7に記載のように、上記シールリップの先端部には窪みに受容される突起部を形成してあることが望ましい。
【0016】
また、上記ビード部の材質は、請求項8に記載のように、本体部よりも軟質のTPE、スポンジゴム、発泡TPEのうちのいずれかとする。
【0017】
したがって、少なくとも請求項1に記載の発明では、ドアガラスの閉時においては、室内側および室外側のシールリップがそれぞれにドアガラスに弾接しているとともに、室内側のシールリップが中空状のビード部でバックアップされているため、そのビード部の撓みあるいはビード部内に封じ込められた空気の反発力をもってドアガラスのばたつきを抑制することができる。例えばドアガラスの極小量の下降をもってそのドアガラスをわずかに開いた状態で走行したような場合、車体振動あるいは風圧の影響でドアガラスが車室内外方向でばたつきを生ずることになるが、ばたつきの入力としては小さいので、ビード部がシールリップとともに撓み変形することでドアガラスのばたつきを抑制することになる。他方、ドアの急閉時等のようにドアガラスが瞬間的に大きく動く大入力時には、シールリップやビード部の撓み変形に加えて、そのビード部内に封じ込められている空気の反発力をもってドアガラスの動きに対抗して、そのドアガラスのばたつきを抑制することになる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、ドアガラスの摺動性あるいは昇降容易性に悪影響を及ぼすことなく、ドア閉時等におけるドアガラスのばたつきを抑制して、不快な音の発生をする防止することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、ビード部の一部にエア抜き穴を開口形成してあるため、ドアガラスの昇降動作に応じてビード部内に封じ込められている空気が抜くことが可能であり、それによってビード部を設けたことによるドアガラスの摺動性あるいは昇降容易性への影響を一段と回避することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、エア抜き穴がシールリップによって積極的に開閉されるため、ドアガラスの摺動性あるいは昇降容易性を確保できるほか、例えばドアガラスの極小量の下降をもってそのドアガラスをわずかに開いた状態では、ビード部内には空気が封じ込められたままであるため、ドアガラスの小開時のばたつきを効果的に抑制できる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、ビード部はドアガラスに直接当接しないようになっているため、その耐摩耗性や耐久性が問題となることがなく、所期の機能を長期にわたって安定して維持できる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、ビード部は車室内外方向で底部案内面の幅寸法とオーバーラップするように突出しているため、先に述べたドアガラスのばたつき抑制効果が一段と向上する。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、ビード部に形成した窪みでシールリップの先端部を受容するようにしてあるため、その相対位置決め効果のためにシールリップの撓み変形時にビード部との間で滑りが生ずることがなく、シールリップがドアガラスに及ぼす反力および摺動抵抗が安定化する利点がある。特に、請求項7に記載のように、シールリップの先端に窪みに受容される突起部を形成してあると、上記利点が一段と顕著となる。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、ビード部の材質および硬さを特定したものであるから、ビード部の機能を長期にわたって安定して維持する上での性能安定性およびクッション性をも確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】自動車のドアの概略説明図。
【図2】本発明に係るドアグラスランの第1の実施の形態を示す図で、図1のドアに適用されるドアグラスランの概略説明図。
【図3】図2におけるドアグラスランの縦辺部の拡大斜視図。
【図4】図3のA−A線に沿う拡大断面図。
【図5】図3のC−C線に沿う拡大断面図。
【図6】図3のB−B線に沿う拡大断面図。
【図7】図4の状態でドアガラスを受容したときの断面図。
【図8】図6の状態でドアガラスを受容したときの断面図。
【図9】本発明に係るドアグラスランの第2の実施の形態を示す図で、図4と同等部位の断面図。
【図10】同じく図7と同等部位の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1以下の図面は本発明に係るドアグラスランのより具体的な第1の実施の形態を示す図であり、特に図1は自動車のドア1全体の概略説明図を、図2は図1のドア1に装着されるドアグラスラン2とドアガラスGの概略説明図をそれぞれ示し、さらに図3〜6はドアグラスラン2の細部の構造を示している。
【0027】
図1,2に示すように、ドア本体1aのほかそのウエスト部(ベルトライン)Wから上方のドアフレーム1bを含んでなるドア1にあっては、ドアフレーム1bからドア本体1a内の図示外の前後のロアサッシュにまたがってアーチ状に長尺紐状のドアグラスラン2が装着される。ドアグラスラン2は、一般部たる上辺部2aと前後の縦辺部2b,2cとをコーナー部の型成形部3a,3bをもって相互に接続したものであり、前後の縦辺部2b,2cにおいてドアガラスG側の該当部分である前後の縦辺部、すなわちドアガラスGの前端部および後端部が昇降可能に案内支持されている。なお、図2のG1はドアガラスGの全閉時におけるガラス上端の下降限位置を示している。
【0028】
より詳しくは、図3は図2における縦辺部2cの全長Lにわたる拡大図を、図4は図3のA−A線に沿う断面図であって、同図に示すように、ドアグラスラン2の縦辺部2cは、底壁部4と室内側,室外側の一対の側壁部5,6とからなる断面略コ字状の本体部7と、それぞれの側壁部5,6の先端から当該本体部7のコ字状空間の内方に向けて斜めに突出形成された室内側,室外側の一対のシールリップ8,9とを有している。
【0029】
そして、本体部7におけるコ字状空間にドアガラスGの後側の縦辺部である後端部を受容しつつ、一対のシールリップ8,9がそのドアガラスGの表裏両面に弾接することで、当該ドアガラスGを摺動可能に、すなわち昇降可能に案内支持している。なお、図3では、本体部7の内部を見せるために室内側のシールリップ8を切除している。また、図4の符号12aは図1のドアフレーム1bを形成しているドアインナパネルを、12bはドアアウタパネルを、12cはボトムチャンネルをそれぞれ示していて、これらからなる図1のドアフレーム1bにドアグラスラン2が嵌合保持されている。
【0030】
上記本体部7のうち室内側の側壁部5の内側面には、断面形状が略アーチ状をなす中空状のビード部10を長手方向に沿って、すなわち上下方向に沿って形成してある。このビード部10は図2の型成形部3aを除いた縦辺部2cの全長Lに及んでいて、図3に示すように、このビード部10の長手方向両端部では当該ビード部10自体の突出高さおよび断面形状が漸次小さくなるように徐変させながら押し潰して、中空部10aを閉塞してある。なお、徐変部を符号10bで示している。ここで、ドアグラスラン2の縦辺部2cは均一断面形状のものとして押出成形されるが、その際にいわゆる多重押出成形の形態とすることで中空状のビード部10も同時に成形することができる。ただし、中空状のビード部10の徐変による押し潰しと閉塞は、別工程にて例えば金型を用いた公知の型成形法によって行われる。
【0031】
図4に示した本体部7における底壁部4の内面は、ドアガラスGが前後方向および車室内外方向で振れを生じた場合の底部案内面4aとして機能するもので、その幅寸法MはドアガラスGが車室内外方向で振れを生じた場合の最大振れ量に相当するものとして設定してある。そして、この底部案内面4aとビード部10のうち徐変部10b以外の部位での突出量との関係に着目した場合、ビード部10は車室内外方向で底部案内面4aの幅寸法Mと所定量αだけオーバーラップするように突出している。
【0032】
また、図3に示すように、ビード部10の断面形状の中央部に相当する頂部であって且つ上記の徐変部10b以外の部位には、エア抜き穴11を開口形成してある。このエア抜き穴11は、図2の縦辺部2cのうちでも型成形部3aに近い上端部、すなわちドアガラスGの閉め切り側の端部であって且つ上記徐変部10b以外の部位として、例えば図2のPの範囲(P=30〜100mm程度)に少なくとも一箇所設定してある。ここで、ビード部10を閉塞している徐変部10Bに相当する図3のC−C線に沿う断面図を図5に、エア抜き穴11の位置に相当する図3のB−B線に沿う断面図を図6にそれぞれ示す。なお、図2のQの範囲(全長Lのうち全閉時にドアガラスGが位置するPの範囲を除く部分)であれば、上記エア抜き穴11のほかに別のエア抜き穴を設定しても良い。
【0033】
そして、図7は縦辺部2cの本体部7にてドアガラスGを実際に受容した状態を示していて、同図から明らかなように、本体部7のコ字状空間にてドアグガラスGを受容した際には、双方のシールリップ8,9が撓み変形してドアガラスGに弾接することになるが、ドアガラスGが直接ビード部10と接触することがないように、ビード部10の位置やシールリップ8の長さ等が予め設定されている。同時に、ビード部10のうちエア抜き穴11が形成されている部分では、図6に示すように、ドアガラスGがシールリップ8に弾接していない時にはエア抜き穴11が開放されてはいても、図8に示すように、ドアガラスGにシールリップ8が弾接するとそのシールリップ8によってエア抜き穴11が閉塞されるように当該エア抜き穴11の位置等が予め設定されている。
【0034】
また、ビード部10は低へたり性やクッション性を確保するために本体部7およびシールリップ8,9よりも軟質の材料にて形成される。例えば、本体部7およびシールリップ8,9がEPDMのほかオレフィン系のものに代表されるTPE(熱可塑性エラストマー=サーマル・プラスチック・エラストマーのことで、オレフィン系のものをTPOと称することもある。)のソリッド材にて形成される場合には、ビード部10は本体部7およびシールリップ8,9よりも軟質の材料にて形成するものとし、例えばビード部10は軟質のTPEのソリッド材、TPEの発泡材、スポンジゴムのうちのいずれかにて形成するものとする。なお、軟質TPEのソリッド材の硬さとしてはショアA硬度で20〜40度程度のものを用いるものとする。
【0035】
さらに、図4から明らかなように、室内側,室外側のシールリップ8,9のほか底部案内面4aおよび室外側の側壁部6のうちドアガラスGとの摺動面には摺動材13を予め塗布してある。
【0036】
以上のような縦辺部2cの構造は、図2の前側の縦辺部2bについても基本的に同様である。
【0037】
したがって、このように構成されたドアグラスラン2の構造によれば、ドアガラスGの全閉時には、図7に示すように、そのドアガラスGの表裏両面に室内側,室外側のそれぞれのシールリップ8,9が弾接し、さらに室内側のシールリップ8は中空状のビード部10に弾接していて、室内側のシールリップ8は中空状のビード部10にてバックアップされていることになる。その上、ビード部10に開口形成されているエア抜き穴11は、図8に示すように、シールリップ8の弾接によって閉塞されており、ビード部10の中空部10aは実質的に密閉空間となって空気が封じ込められたままとなっている。
【0038】
その結果、ドアガラスGがシールリップ8,9のほか中空状のビード部10にて表裏両面から弾性的に挟持されていることになる。そのため、例えばドア急閉時等のようにドアガラスGを車室内外方向で瞬間的に大きく動かそうとする外部入力があった場合でも、シールリップ8,9やビード部10の撓み変形に加えて、特にビード部10に封じ込められた空気の反発力にてドアガラスGの動きを押さえて、ドアガラスGのばたつきやそれに伴う不快な異音の発生を抑制することができる。
【0039】
また、ドアガラスGを下降させる場合には、ドアガラスGがエア抜き穴11に相当する位置を通過してしまえば、ドアガラスGがシールリップ8,9から離れるとともに、シールリップ8はそれまで閉塞していたエア抜き穴11を開放することになる。そのため、ドアガラスGの下降時の挙動に基づいてビード部10が撓み変形あるいは圧縮変形を受けると、そのビード部10内の空気が抜け出て必要に応じてビード部10が潰れ変形することになるので、ドアガラスGの摺動抵抗を増加させることなく、そのドアガラスGのスムースな下降動作を許容することになる。
【0040】
このような挙動はドアガラスGの上昇時でも同様であって、ドアガラスGがエア抜き穴11に相当する位置に到達するまではそのエア抜き穴11は開放されており、ビード部10はドアガラスGの上昇時の挙動に応じて潰れ変形することが可能である。そして、ドアガラスGの上昇時にそのドアガラスGがエア抜き穴11に相当する位置を通過すると初めてエア抜き穴11がシールリップ8にて閉塞されて、ビード部10内に空気が封じ込められたままとなる。
【0041】
したがって、ビード部10の存在によってドアガラスGの昇降時の摺動抵抗が増加することはなく、結果としてビード部10がドアガラGの摺動性あるいは昇降容易性に悪影響を及ぼすこともない。また、ビード部10にはドアガラスGと直接摺動することはないから、その耐摩耗性や耐久性が問題となることはなく、低へたりに基づく適度なクッション性を安定して維持できることになる。
【0042】
その一方、例えばドアガラスGの極小量の下降をもってそのドアガラスGをわずかに開いた状態で走行したような場合には、車体振動あるいは風圧の影響でドアガラスGをゆっくりと車室内外方向で動かそうとする入力が加わることになる。この場合には、ドアガラスGがエア抜き穴11に相当する位置を通過してしまわない限りはエア抜き穴は閉塞されたままであり、また、いわゆるばたつきを発生させようとする入力としては小さいので、ビード部10がシールリップ8,9とともに撓み変形することでドアガラスGのばたつきやそれに伴う異音の発生を抑制することになる。
【0043】
このように本実施の形態によれば、ドアガラスGの摺動性あるいは昇降容易性に悪影響を及ぼすことなく、ドア閉時等におけるドアガラスGのばたつきを抑制して、不快な異音の発生を防止することができる。
【0044】
図9,10は本発明に係るドアグラスランの第2の実施の形態を示すで、先の第1の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。なお、図9は図4の状態に相当していて、また図10は図7の状態に相当している。
【0045】
この第2の実施の形態では、中空状のビード部10の頂部に長手方向に沿って溝状の窪み15を形成する一方、ドアガラスGの弾接した際に同時にビード部10にも弾接することになる室内側のシールリップ8の先端に、窪み15にて受容可能または係合可能な突起部16を形成したものである。
【0046】
例えば図7に示した第1の実施の形態の場合には、本体部7のコ字状空間にドアガラスGを受容すると、室内側のシールリップ8は撓み変形によりドアガラスGに弾接するのと同時にビード部10にも弾接することなるが、ドアガラスGの進入軌跡等によってはシールリップ8とビード部10との間で滑りを生じ、反力や摺動抵抗が安定しない可能性がある。
【0047】
これに対して、図9に示した第2の実施の形態では、図10に示すように、本体部7のコ字状空間にドアガラスGを受容すると、ビード部10側の窪み15とシールリップ8側の突起部16とが係合することになるので、その相対位置決め効果のために両者の間での滑りを抑制することができて、反力や摺動抵抗が安定化するようになる。
【0048】
なお、図9,10では図示省略してあるが、先に説明したエア抜き穴11は、窪み15のうち突起部16が係合した場合に閉塞される位置に形成される。
【符号の説明】
【0049】
1…ドア
1b…ドアフレーム
2…ドアグラスラン
2b…縦辺部
2c…縦辺部
4…底壁部
5…室内側の側壁部
6…室外側の側壁部
7…本体部
8…室内側のシールリップ
9…室外側のシールリップ
10…中空状のビード部
11…エア抜き穴
15…窪み
16…突起部
G…ドアガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁部と一対の側壁部を含んでなる断面略コ字状の本体部と、それぞれの側壁部の先端から本体部におけるコ字状空間の内方に向けて突出形成されたシールリップと、を備え、
上記本体部におけるコ字状空間にドアガラスを受容して当該ドアガラスを摺動可能に案内支持するドアグラスランであって、
上記本体部のうちドアガラスの縦辺部に相当する部分であって且つ室内側となる一方の側壁部の内側面に長手方向に沿って中空状のビード部を形成し、
この中空状のビード部の長手方向両端部では当該ビード部自体の突出高さが漸次小さくなるように徐変させながら押し潰して中空部を閉塞してあることを特徴とするドアグラスラン。
【請求項2】
上記ビード部のうち徐変部以外の部位にエア抜き穴を開口形成してあることを特徴とする請求項1に記載のドアグラスラン。
【請求項3】
上記ビード部のうちそのビード部が形成された一方の側壁部から突出形成されたシールリップの撓み変形時に当該シールリップが当接可能な位置にエア抜き穴を形成してあるとともに、
上記ビード部の長手方向におけるエア抜き穴の位置は、ビード部の長手方向両端部のうちドアガラスの締め切り側の端部であって且つ上記徐変部以外の部位としてあることを特徴とする請求項2に記載のドアグラスラン。
【請求項4】
上記シールリップの撓み変形時またはその復元時にビード部はドアガラスに直接当接しないようになっていることを特徴とする請求項2または3に記載のドアグラスラン。
【請求項5】
上記底壁部の内面はドアガラスが車室内外方向で振れを生じた場合の最大振れ量に相当する幅寸法の底部案内面となっていて、
上記ビード部は車室内外方向で底部案内面の幅寸法とオーバーラップするように突出していることを特徴とする請求項4に記載のドアグラスラン。
【請求項6】
上記ビード部には長手方向に直交する断面形状の中央部に窪みを形成してあり、
上記シールリップの撓み変形時にそのシールリップの先端部を上記窪みにて受容可能としてあることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一つに記載のドアグラスラン。
【請求項7】
上記シールリップの先端部には窪みに受容される突起部を形成してあることを特徴とする請求項6に記載のドアグラスラン。
【請求項8】
上記ビード部は、本体部よりも軟質のTPE、スポンジゴム、発泡TPEのうちのいずれかの材質のもので形成してあることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載のドアグラスラン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−25354(P2012−25354A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168747(P2010−168747)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000158840)鬼怒川ゴム工業株式会社 (171)
【Fターム(参考)】