説明

ドキソルビシンを含む医薬の熱標的化送達

エラスチン様ポリペプチド(ELP)は、細胞傷害性化学療法薬物を含む治療薬(例えば、ドキソルビシン)の熱的に標的付けられた送達用のベクターとして働く。ELPベースの送達ビヒクルの例は、(1)細胞透過性ペプチド、例えばTatタンパク質、(2)ELP、及び(3)リソソームにより分解可能なグリシルフェニルアラニルロイシルグリシン(GFLG)スペーサー及び治療薬(例えばドキソルビシン又はそのアナログ)に接合したシステイン残基を含んでなることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概して、腫瘍に、特に腫瘍細胞及び腫瘍関連細胞に治療薬剤を送達するための標的化送達システム(targeted delivery system)の分野に関する。本発明は更に、腫瘍細胞及び腫瘍関連細胞を殺傷することによるガンの予防及び治療のために、腫瘍細胞及び腫瘍関連細胞に治療薬剤を送達する方法に関する。具体的には、本発明の送達システムは、他の送達システムと比較して、増大した量の治療薬を腫瘍細胞及び腫瘍関連細胞に送達することができる。詳細には、本発明の送達システムは、他の送達システムと比較して、腫瘍細胞又は腫瘍細胞の生存力に寄与する細胞(例えば、血管内皮細胞)中により高量の治療薬剤を蓄積させることができ、これら細胞を治療レベルの薬剤へより長期間曝露させるように導くことができる。本発明はまた、本発明の送達システムを含んでなる医薬組成物及び腫瘍細胞を記載する。前記送達システム及び医薬組成物は、対象に、好ましくはヒトに、単独で又は他の予防薬剤若しくは治療薬剤及び/若しくは抗ガン治療との組合せで、逐次的に又は同時に投与することができる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ほとんどの化学療法薬物は、正常組織及びガン性組織の両方に作用する。そうであるから、化学療法によるガン性腫瘍の治療における1つの挑戦は、健常組織への危害を最小にする一方でガン細胞の殺傷を最大にすることである。投与経路(例えば、静脈内)及び薬物の性質(例えば、その物理特性及び薬物動態特性)に依存して、しばしば、用量のうち少量のみが標的細胞に到達する;残りの量の薬物は、他の組織に作用するか、又は迅速に排泄される。よって、従来の細胞傷害性化学療法薬物の効力は、非ガン性組織に対する有害効果により制限される。薬物の投与用量のうち少量のみが腫瘍部位に到達する一方で、残りの薬物は全身にわたって分布する。このことは、ガン細胞を根絶するに必要な用量で使用するとき、正常組織に対して望まない損傷を引き起こし、結果として制限された治療指数を生じる。トポイソメラーゼII毒ドキソルビシン(Dox)の使用は、骨髄抑制及び心臓毒性の誘導により制限される。部位特異的薬物送達ビヒクルは、意図した標的に到達する薬物の量を増加させることにより、化学療法の有効性を高め、毒性を低くするであろう。
【0003】
充実性腫瘍への薬物送達の問題に取り組むために一般に使用されるアプローチは、薬物を高分子キャリアに付着させることである。可溶性ポリマー性キャリアは、全身性薬物送達にとって魅力的である。なぜなら、ポリマー-薬物結合体は、亢進した微小血管透過性及び保持力に起因して腫瘍に優先的に蓄積し、フリーの薬物と比較して有意に低い全身毒性を示すからである。研究により、水溶性ポリマーキャリアは多剤耐性を克服できることが示されている。ガン治療にポリマー-薬物結合体を使用することのフリーの化学療法剤に対する利点についての最も有力な証拠は、薬物キャリアとしてのN-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)コポリマーの使用についてのKopecekらによる大規模な前臨床試験及び臨床試験に由来する。
【0004】
エラスチン様ポリペプチド(ELP)は、5アミノ酸反復(XGVPG、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)から構成されるタンパク質である。ELPは、薬物送達用のポリマー性キャリアとして魅力的である。なぜなら、それらは、逆温度相転移(inverse temperature phase transition)を受けるからである。特徴的な転移温度(Tt)より下では、ELPは構造的に不規則であり、高度に溶媒和されている。しかし、温度がTtを超えて上昇すると、それらは急激な(2〜3℃の範囲の)相転移を受け、このバイオポリマーの脱溶媒和及び凝集に至る。このプロセスは、温度がTtを下回って下降すると、完全に逆転可能である。
【0005】
これらポリペプチドの相転移は、腫瘍部位に集中的な穏やかな温熱(hyperthermia)を適用することにより、薬物送達における使用に活用され得る。全身的に注入されたELPは、正常体温では可溶性のまま自由に循環する。しかし、温熱を適用して組織をELPのTtを超えて上昇させた限局部位では、ポリペプチドは凝集し蓄積する。薬物のELPへの付着は、外部から適用される温熱の集中的適用により、これら薬物を所望組織に特異的に送達する能力を提供する。温熱の使用は、血管透過性の上昇という付加的な利点を有する。本明細書に記載のELPベースの薬物送達システムは、高分子送達、温熱、及び熱標的(thermal targeting)の利点を組み合せる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以前の研究により、細胞の細胞質中にドキソルビシンを送達し細胞傷害性を誘導するELPの能力が証明されたが、熱に応答して細胞毒性が有意に増強することは証明されていない。ELPによる薬物送達の究極のゴールは、化学療法剤を熱標的することであるので、細胞傷害性が温度上昇に応答して亢進することは必須である。本発明者らは、追加の標的特徴を含むようにELPの配列を改変することにより創出される熱応答性薬物キャリアを見出した。その結果は、温熱に応答する細胞殺傷の20倍の増強を達成する薬物送達ベクターであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
本発明の1つの観点は、局所温熱を適用することにより、腫瘍部位を標的する薬物送達化合物及び/又は組成物である。
【0008】
本発明の別の観点は、生理学的条件(T<Tt)下で可溶性であり、これら条件下で循環から取り除かれる薬物送達化合物である。しかし、これは、熱(T>Tt)が適用された部位で凝集し、そのことにより、標的され局所的に加温された疾患部位でのみ薬物の優先的な蓄積が可能になる。
【0009】
本発明の別の観点は、例えばドキソルビシン(DOX)のような治療薬剤/抗ガン剤の選択的送達用の薬物送達化合物又は組成物である。化学療法薬物であるドキソルビシン(Dox)は、血液学的悪性腫瘍及び充実性腫瘍における抗腫瘍薬剤として広く使用されている。しかし、その臨床的使用の限界の1つは、有効用量のDoxの全身投与が非選択的な心臓毒性及び骨髄抑制を生じることである。
【0010】
本発明の別の観点は、局所温熱を適用することにより腫瘍部位に標的化される能力を有する、例えば薬物ドキソルビシンのような抗ガン薬剤用の熱応答性ポリペプチドキャリアである。熱応答性ポリペプチドは、エラスチン様ポリペプチド(ELP)、例えばアミノ酸配列VPGXGの繰り返し単位から構成される51キロダルトンタンパク質をベースにすることができる。転移温度(Tt)と呼ばれる特徴的な温度で、ELPは可逆的に不溶性凝集体を形成する。この性質が、ELPに接合した薬物の熱標的化送達(thermally targeted delivery)に利用され得る。
【0011】
1つの実施形態では、送達ビヒクルは、(1)細胞透過性ペプチド配列(HIV1のTatペプチド)と、(2)ELP(Tt = 約40〜42℃のエラスチン様ポリペプチド)と、(3)C末端システインが例えば薬物ドキソルビシンのような抗ガン薬剤に結合したGFLGペプチドリンカーとを含んでなってもよい。
【0012】
HIV Tatタンパク質のタンパク質導入ドメイン(protein transduction domain)は、細胞膜及び脳血液関門(BBB)を横切るタンパク質及び治療化合物の効率的な送達に使用されてきた。したがって、これは、細胞膜を横切るキャリア-ポリペプチドの輸送を媒介する。細胞取込み後、タンパク質分解性切断可能GFLGペプチドリンカーは、リソソーム酵素により切断され、薬剤の細胞内遊離及び標的細胞内の適切な分子上の作用部位への輸送が可能になる。
【0013】
よって、上記のように、本発明は、腫瘍への増加した量の治療薬剤/抗ガン薬剤の送達法を提供する。具体的実施形態では、治療薬剤への腫瘍の曝露レベルの増加は、他の送達システムを使用するレベルと比較して、或る期間にわたって約0.5〜40倍(この間の全ての値)高い。具体的実施形態では、腫瘍は、他の送達システムを使用するレベルと比較して、或る期間にわたって約2〜99%(この間の全ての値)を超えて増加したレベルの薬剤に曝露される。
【0014】
他の具体的実施形態では、本発明の方法は、他の治療法又は治療薬剤の同時又は逐次の施行/投与を更に含んでなる。すなわち、本発明は更に、対象に、治療有効量又は予防有効量の1又はそれより多い送達システム及び/又は医薬組成物を、ガンの治療又は予防のための手術、標準の及び実験的な化学療法、ホルモン療法、生物学的療法、免疫療法、放射線療法、塞栓形成及び/又は化学塞栓形成療法と逐次的又は同時に投与することによる、対象においてガンを治療するための組合せ療法に関する。
【0015】
熱応答性ELPポリペプチドの一例は、HIV-1 Tatタンパク質(Tat)に由来する細胞透過性ペプチドの付加、及び薬物の高分子への付着のために切断可能テトラペプチドリンカーを用いることにより改変されている。Tatペプチドは、形質膜を横切る大きな分子の輸送を容易にすることが知られており、以前の研究によって、エンドサイトーシス機序によるELP取り込みを増強する能力が証明されている。加えて、ELPは、テトラペプチドたるグリシルフェニルアラニルロイシルグリシル(GFLG)リンカー及びC末端システイン残基を含有する。末端システインのチオールが薬物の付着に使用され、GFLGリンカーは、カテプシンファミリーのリソソームプロテアーゼにより切断可能であり、その結果、薬物の細胞内遊離を生じる。本発明の実施形態では、C-3'アミノ基に連結するマレイミド部分を含有するドキソルビシンのチオール反応性誘導体(WP936)を設計して合成した。WP936をELPキャリアのC末端システイン残基に付着した(Tat-ELP-GFLG-Dox)。Dox送達構築物は40℃のTtを示し、その細胞取込みは、Tatペプチド及び温熱の両方により増強された。ELPベクターにより送達されたDoxは、細胞の細胞質中に蓄積した。ELP送達Doxは、MES-SA子宮肉腫細胞に対して細胞傷害性であり、その毒性は、温熱の適用により20倍増強された。ELP送達Doxは、温度依存様式でカスパーゼ活性化によるアポトーシスを誘導した。
【0016】
図面の簡単な説明
【0017】
以下の図面は本発明の実施形態を示し、本発明を限定することを意図するものではない。
【0018】
図1は本発明の実施形態を示す。より具体的には、この図は、静脈内に送達されたDOX保有ELPポリマーが低い血中濃度を有する可能性が高く、生理学的条件(T < Tt)下で迅速に取り除かれる実施形態を示す。しかし、これらは、T>Ttに加温された部位で凝集し、そのことにより、ELPにより送達されたドキソルビシンの優先的な蓄積が可能になる。
【0019】
図2は本発明の化合物の実施形態を示す。より具体的には、図2Aは、Tat膜輸送配列(membrane translocating sequence)、切断可能GFLGペプチド及びDOX用付着部位を示すELPベースのDOX送達ビヒクルの設計図の実施形態を示す。図2Bは、DOXのチオール反応性アナログであるWP936の化学構造を示す。
【0020】
図3は、フリーのDOXで処理した細胞又はTat-ELP-GFLG-DOXで処理した細胞からの薬物流出を分析するために使用したフローサイトメトリの結果を示す。より具体的には、MES-SA/Dx5細胞からのフリーのDOX及びTat-ELP-GFLG-DOXの流出を測定した。Dx5細胞は薬物耐性である。細胞に約10μMのDOX又はELP-DOXを約5時間ロードし、薬物を除去し、示した時点でDOX蛍光を評価した。この例は、とりわけ、Tat-ELP-GFLG-DOXが薬物流出ポンプをバイパスできることを示す。
【0021】
図4は、6-マレイミドカプロン酸のN-スクシンイミジルエステルの合成(A)、ドキソルビシンのチオール反応性誘導体であるWP936の合成(B)、及びドキソルビシンキャリアポリペプチドの概略図(C)を示す。Tat細胞透過性ペプチド及びELPポリペプチドのアミノ酸配列を、一文字表記アミノ酸コードで示す。システインがWP936に接合したGFLGリンカーの化学構造を示す。
【0022】
図5はDox送達構築物の熱特性を示す。標識した及び未標識のTat-ELP-GFLGのPBS中10μM溶液の濁度をモニターする一方で、温度を1℃/分の速度で上昇させた(A)。細胞培養培地中1〜30μMの範囲のTat-ELP1-GFLG-Dox濃度を使用して濁度アッセイを繰り返すことにより、細胞培養条件下でTtに対するELP濃度の効果を決定した(B)。全ての濃度を同じスケールで表示するために、光学密度(O.D.)データを、各曲線について60℃のO.D.のパーセンテージに変換している。Ttが37℃〜42℃の間にある濃度範囲を決定するために、(B)における相転移の中点をタンパク質濃度に対してプロットし、対数方程式を用いてフィットさせている(R2 = 0.9942)(C)。
【0023】
図6はDox標識化ELPの細胞取込みを示す。MES-SA子宮肉腫細胞をDox標識化構築物(細胞培養培地中20μM)と1時間37℃又は42℃にてインキュベートした。Dox蛍光強度は、フローサイトメトリを用いて決定し、相対的蛍光単位(RFU)で表現している。データは少なくとも3つの実験(エラーバー、SEM)の平均を表す。
【化1】

37℃でELP1-GFLG-Doxと比較した有意差。
【化2】

37℃でTat-ELP1-GFLG-Doxと比較した有意差(p < 0.0001,一元配置ANOVA,p < 0.05,シェッフェ検定)。
【0024】
図7は細胞内局在化を示す。37℃又は42℃にてTat-ELP1-GFLG-Dox(細胞培養培地中10μM)への1時間の曝露の1時間後及び24時間後にMES-SA細胞の共焦点蛍光画像を採集した(A)。42℃の画像の採集のためにPMT電圧を低下させた。したがって、画像強度は細胞中のDoxの実際のレベルを反映していない。コントロール細胞は、フリーのDox(細胞培養培地中10μM)で処理するか(左パネル)、又は自己蛍光検査用に未処理であった(右パネル)(B)。
【0025】
図8は細胞増殖を示す。MES-SA細胞を、種々の濃度のTat-ELP1-GFLG-Dox(A)、Tat-ELP2-GFLG-Dox(B)、Tat-ELP1-GFLG(C)、ELP1-GFLG-Dox(D)又はフリーのDox(E)に1時間37℃又は42℃にて曝露し、72時間後に細胞を計数した。データは少なくとも3つの実験の平均を表す(バー、SEM)。
【0026】
図9は、ELP送達Doxによるアポトーシスの誘導を示す。各構築物(10μM)で37℃又は42℃にて1時間の処理後、MES-SA細胞のDIC画像を採集した(A)。MES-SA細胞中のカスパーゼ活性化のヒストグラムを、1時間の処理後に取得した(B)。活性カスパーゼを有する細胞のパーセンテージをヒストグラムから測定し、平均した(C)。データは少なくとも3つの実験の平均を表す(バー、SEM)。
【化3】

37℃で未処理コントロールと比較した有意差。
【化4】

37℃でTat-ELP1-GFLG-Doxと比較した有意差(p < 0.0001,一元配置ANOVA,p < 0.05,シェッフェ検定)。
【0027】
発明の説明
本発明の1つの実施形態は、局所温熱の適用により該当する部位に標的化される能力を有する薬物送達分子である。この薬物送達ポリペプチドは生理学的条件(T<Tt)下で可溶性であり、これら条件下で循環から取り除かれる可能性が高い。しかし、これは、熱(T>Tt)が適用された部位で凝集し、そのことにより、標的され局所的に加温された疾患部位でのみ薬物(例えば、ドキソルビシン)の優先的な蓄積が可能になる(図1)。
【0028】
上記のように、ガン化学療法における主要な挑戦は、腫瘍細胞への小分子抗ガン薬剤の選択的送達である。水溶性ポリマー-薬物結合体は、良好な水溶性、増大した半減期及び強力な抗腫瘍効果を示す。所望の作用部位に薬物を局在化させることにより、高分子治療薬は、より低用量で向上した効力及び高められた安全性を有する。小分子薬物及び高分子薬物は異なる経路により細胞に進入するので、多剤耐性(MDR)を最小化することができる。抗ガンポリマー-薬物結合体は、2つの標的化様式に分けることができる:受動的及び能動的。腫瘍組織は、正常組織とは異なる解剖学的特徴を有する。高分子は、正常組織に比して優先的に腫瘍を透過し、腫瘍内に受動的に蓄積する。このことにより、拡大された薬理学的効果が導かれる。この「増強した透過性及び保持力」(EPR)効果が、高分子抗ガン薬物を用いた現在の成功の主たる理由である。天然及び合成の両方のポリマーが薬物キャリアとして使用されており、幾つかのバイオ結合体(bioconjugate)は臨床使用が認可されているか、又はヒトで臨床試験されている。受動的な高分子薬物送達システムを使用して臨床的に有用な抗腫瘍活性が達成されている一方で、能動的な標的(例えば、エラスチン様ポリペプチドを用いる熱による標的)によって更なる選択性が可能である。この戦略は、EPR効果を増強し、治療の特異性及び効力を増大させ、正常組織における細胞傷害性を減少させ、そのことにより高分子により送達された薬物の治療指標を更に改善する。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「腫瘍」は、腫瘍細胞及び腫瘍間質細胞を包んでなる。腫瘍間質細胞には、腫瘍支持性細胞、例えば腫瘍脈管系内皮細胞、周皮細胞、腫瘍関連マクロファージ及び他の腫瘍関連腫瘍炎症性細胞が含まれる。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「非経口薬物送達」、「非経口治療薬剤送達」又は「非経口送達」とは、経腸経路以外の経路を介する治療薬剤の送達をいう。ここで、経腸経路には経口経路及び直腸経路(胃腸管への)のみが含まれる。用語 非経口には、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、鞘内、大脳内、小脳内及び吸入が含まれる。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「組合せで」とは、1より多い予防薬剤及び/又は治療薬剤の使用をいう。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「管理する(manage)」及び「管理」とは、疾患又は障害の治癒を生じないが、疾患又は障害の更なる進行又は悪化の防止を生じる、予防薬剤又は治療薬剤の投与から派生する有益効果をいう。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「予防する」及び「予防」とは、予防薬剤又は治療薬剤の投与に起因する、対象における疾患又は障害の発生の抑止をいう。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「予防薬剤」とは、疾患又は障害の予防に使用することができる任意の薬剤をいう。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「予防有効量」とは、疾患又は障害の発生を防止するに十分な予防薬剤の量をいう。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「副作用」は、予防薬剤又は治療薬剤の望まない効果及び有害効果を包含する。有害効果は、常に望まれないが、望まない効果は必ずしも有害ではない。予防薬剤又は治療薬剤の有害効果は、危害を有するか又は不快であるか又は危険であり得る。副作用には、胃腸毒性、早発性及び遅発性の下痢及び鼓腸、悪心、嘔吐、食欲不振(anorexia)、白血球減少、貧血、好中球減少、衰弱(asthenia)、腹部痙攣、発熱、疼痛、体重減少、脱水、脱毛(alopecia)、呼吸困難、不眠、眩暈感、粘膜炎、口内乾燥(xerostomia)、及び腎不全、便秘、神経及び筋肉効果(nerve and muscle effect)、心臓、腎臓及び膀胱に対する一時的又は永続的損傷、インフルエンザ様症状、体液貯留、不妊に関する問題、疲労(fatigue)、口渇(dry mouth)、食欲減退(loss of appetite)、脱毛(hair loss)、投与部位の発疹又は腫脹、発熱、悪寒及び疲労のようなインフルエンザ様症状、消化管に関する問題、アレルギー性反応、抑鬱、食欲減退、眼に関する問題、頭痛、及び体重の変動が含まれるがこれらに限定されない。患者が経験する代表的な更なる望ましくない効果は、数多くあり、当該分野において公知である(例えば、Physicians' Desk Reference(第56版、2002)を参照)。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「対象」及び「患者」は互換可能に使用される。本明細書で使用する場合、対象は、好ましくは、哺乳動物、例えば非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)及び霊長類(例えば、サル及びヒト)であり、最も好ましくはヒトである。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「治療する」及び「治療」とは、治療薬剤の投与に起因して対象において疾患又は障害の症状が改善又は消失すること、或いは疾患又は障害から回復することをいう。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「治療薬剤」とは、疾患又は障害の治療に使用することができる任意の薬剤をいう。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「治療有効量」とは、疾患又は障害の症状を減少させるか又は最小化するに十分な、好ましくは腫瘍又はガンの成長の減少及び/又は対象の生存を生じるに十分な治療薬剤の量をいう。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「治療法」及び「療法」とは、疾患又は障害の予防、治療又は管理に使用することができる任意のプロトコル、方法及び/又は薬剤をいうことができる。或る実施形態では、用語「治療法」及び「療法」とは、ガン化学療法、放射線療法、ホルモン療法、生物学的療法、及び/又は当該分野の医師に公知のガン、感染性疾患、自己免疫疾患及び炎症性疾患の治療に有用な他の治療法をいう。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「アナログ」とは、共通の生物学的活性(抗原性/免疫原性及び抗血管新生活性を含む)及び/又は構造的ドメインを有し、本明細書で規定するような十分なアミノ酸同一性を有する一連のペプチドの任意のメンバーをいう。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「変形体」とは、1又はそれより多いアミノ酸残基がアミノ酸の置換(好ましくは、保存的置換)、付加又は欠失により改変されている、所定ペプチドの天然に存在する対立遺伝子変形物又は所定ペプチド若しくはタンパク質の組換え的に調製した変形物のいずれをもいう。
【0044】
本明細書で使用する場合、用語「誘導体」とは、別の方法で改変された、すなわち、所定のアミノ酸、ペプチド又はタンパク質への任意のタイプの分子(好ましくは、生物活性を有する分子)の共有結合的付着により改変された、そのアミノ酸、ペプチド又はタンパク質の変形物、アミノ酸の誘導体(天然に存在しないアミノ酸を含む)をいう。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「フラグメント」には、少なくとも3つの連続アミノ酸残基、少なくとも10の連続アミノ酸残基、少なくとも15の連続アミノ酸残基、少なくとも20の連続アミノ酸残基、少なくとも25の連続アミノ酸残基、少なくとも40の連続アミノ酸残基、少なくとも50の連続アミノ酸残基、少なくとも60の連続アミノ酸残基、少なくとも70の連続アミノ酸残基、少なくとも連続80のアミノ酸残基、少なくとも連続90のアミノ酸残基、少なくとも連続100のアミノ酸残基、少なくとも連続125のアミノ酸残基、少なくとも150の連続アミノ酸残基、少なくとも連続175のアミノ酸残基、少なくとも連続200のアミノ酸残基、少なくとも連続350のアミノ酸残基のアミノ酸配列を含んでなる、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質、改変ペプチド、改変ポリペプチド、改変タンパク質、又はこれらの誘導体が含まれる。
【0046】
本発明の治療薬剤又はシステムの投与をいう場合、用語「同時に」又は「同時の」とは、同一24時間内の2又はそれより多い療法又は治療薬剤の施行/投与をいい、「逐次(的)に」及び「後に」は、特定の治療薬剤の効果に依存して、複数の治療薬剤の間隔が24時間を超えている、例えば数日、数週間、数ヶ月、数年の間隔が開いていることを意味すると意図される。1つの好ましい実施形態では、「逐次の」又は「後の」とは、1日〜6週間の間隔が開いた投薬をいう。
【0047】
本発明の化合物は、局所温熱の適用により腫瘍部位を標的することができる。温熱は、正常な脈管系と比較して、優先的に腫瘍脈管系の透過性を増大させる。このことにより、腫瘍への薬物の送達を更に増強することができる。温熱は、マイクロ波、無線周波数又は高強度集束超音波を使用して、グリア芽細胞腫並びに頭部及び頸部のガンの治療に導入されてきた。したがって、ドキソルビシン薬物送達ポリペプチドの熱標的を確実にするに必要な方法及び技法は揃っている。
【0048】
更に、ELPベースのドキソルビシンキャリアは、薬物耐性の最も一般的な経路である、腫瘍細胞が小分子薬物を除去しこれら薬物の存在下で生存し続けることを可能にする薬物汲み出し機序を迂回することができる。ELPドキソルビシンキャリアがこの薬物耐性を克服する能力を試験するため、子宮ガン細胞株(MES-SA)及びそのドキソルビシン耐性亜株たるMES-SA/Dx5を、フリーのドキソルビシン又はELP送達ドキソルビシンのいずれかで処理した。MES-SA/Dx5細胞株は、MES-SAと比較して、フリーのドキソルビシンに対する耐性が100倍であるが、ELP送達ドキソルビシンは、感受性細胞株及び耐性細胞株の両方に対して等しく毒性である。このことは、ELP送達ドキソルビシンを使用して薬物耐性を克服し得ることを証明する。
【0049】
以前の、ヌードマウスに移植されたヒト腫瘍へのELP送達のインビボ研究により、腫瘍の温熱療法は、温熱なしでの局在化と比較して、熱応答性ELPの腫瘍局在化の2倍増加を生じることが証明された。増加した蓄積の半分以上が、温熱に応答したELPの相転移により引き起こされた熱トリガーELP凝集の結果であり得る。これら結果は、充実性腫瘍への薬物の増強された送達が、腫瘍の局所的加温と組み合せた熱応答性ポリマーへの接合により達成することができることを示唆する。
【0050】
Chilkotiはこの観察を特許化した。米国特許第6,582,926号は、バイオエラストマーが、化合物を結合させる方法(イムノアッセイ法を含む)、バイオセンサ及びバイオセンサを再生する方法、並びに化合物の送達を動物対象内の特定の位置に標的する方法に使用できることを開示している。
【0051】
充実性腫瘍における薬物送達に対する主たる障害は、(1)一様でなく血流減速を生じる、血管の不均一分布(迷走分岐及び蛇行と併せて);及び(2)高い間質圧力を生じ、高MW(> 2000Da)薬物の対流輸送を遅らせる、腫瘍脈管の高透過性(機能的なリンパ系の不在と併せて)である。
【0052】
薬物送達の効力を増大させ、これら障壁を克服するため、本発明者らは、短ペプチドたる膜輸送配列の付加により、ELP配列をN末端で改変した。1つの実施形態では、HIV Tatタンパク質(細胞膜を横切る大きな貨物タンパク質(cargo protein)の送達を容易にすることが知られている)を膜輸送配列として使用する。このペプチドは、細胞により内在化されるELPの量を増加させる。C末端で、切断可能テトラペプチドリンカーをELP配列に付加する。
【0053】
1つの実施形態では、リンカー配列GFLGは、リソソームプロテアーゼカテプシンBの基質である。加えて、本発明の実施形態では、ELP薬物キャリアのC末端アミノ酸は、例えば細胞傷害性薬物のような薬剤の付着に使用されるシステイン残基である。
【0054】
本発明に使用し得る細胞傷害性薬物の例としては以下のものが挙げられる:アルキル化薬物、例えばシクロホスファミド、イホスファミド、クロランブシル、メルファラン、ブスルファン、ロムスチン、カルムスチン、メクロレタミン(ムスチン)、エストラムスチン、トレオスルファン、チオテパ、ミトブロニトール;細胞傷害性抗生物質、例えばドキソルビシン、エピルビシン、アクラルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロン(ミトザントロン)、ブレオマイシン、ダクチノマイシン及びマイトマイシン;代謝拮抗物質、例えばメトトレキサート、カペシタビン;シタラビン、フルダラビン、グラドリビン、ゲムシタビン、フルオロウラシル、ラルチトレキセド(トムデックス)、メルカプトプリン、テガフール及びチオグルタミン;ビンカアルカロイド、例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン及びエトポシド;他の新生物性薬物、例えばアムサクリン、アルトレタミン、クリサンタスパーゼ(crisantaspase)、ダカルバジン及びテモゾロマイド、ヒドロキシカルバミド(ヒドロキシ尿素)、ペントスタチン、白金化合物(カルボプラチン、シスプラチン及びオキサリプラチンを含む)、ポルフィマーナトリウム、プロカルバジン、ラゾキサン;タキサン(ドセタキセル及びパクリタキセルを含む);トポイソメラーゼI阻害剤(イリノテカン及びトポテカンを含む)、トラスツズマブ、及びトレチノイン。
【0055】
本発明の実施形態では、細胞傷害性薬物はドキソルビシン又はその誘導体(dox)である。
【0056】
本発明の化合物の実施形態については図2Aを参照。別の本発明の化合物たるDOXのマレイミド誘導体を図2Bに示す。図で、これは、システインイオウに共有結合的に付着される。理論や機序に縛られないが、この実施形態の化合物(Tat-ELP-GFLG-DOXと略す)は、エンドソーム経路(Tatペプチドにより増大されるプロセス)により取り込まれる。一旦内在化されると、GFLGリンカーがリソソーム内で切断され、作用薬剤(本実施例ではDOX)を遊離する。
【0057】
本発明(下記でより詳細に議論するドキソルビシンキャリアを含む)は、標的能力を有するだけでなく、送達に対する輸送障壁を克服し、ガン細胞内の分子上の作用部位に到達し、ガン細胞の成長を阻害することができる。
【0058】
本発明の化合物の更なる例としては、切断可能なリンカーを有する上記のTat-ELPポリペプチドが挙げられる。更なる本発明の化合物は、下記のポリペプチド及び切断可能なリンカーを含む。
【表1】

【0059】
更なる本発明の化合物としては、切断可能なリンカー配列がGFLGである上記の化合物の任意のものが挙げられる。
【0060】
更なる本発明の化合物としては、治療薬剤/抗ガン薬剤(又はそれらの誘導体)とリンカーを介して接合した上記の化合物の任意のものが挙げられる。
【0061】
更なる本発明の化合物としては、DOX又はDOX誘導体を有する上記化合物の任意のものが挙げられる。
【0062】
本発明のシステムは、従来の薬物送達法を使用する場合と比較して増加した量で、腫瘍細胞又は腫瘍支持性細胞に治療薬剤を送達することが可能である。或る実施形態では、送達システムは、治療薬剤を含んでなるカプセル化された送達ビヒクル(例えばリポソーム)に連結したNGR含有分子を含んでなり、他の非標的化薬物送達システム及び標的化薬物送達システムと比較して、少なくとも0.5〜2倍、2〜5倍、5〜10倍、15〜20倍、20〜30倍、30〜40倍、40〜50倍、50〜100倍多い治療薬剤を標的の細胞へ或る期間にわたって送達することが可能である。具体的実施形態では、腫瘍は、他の送達システム(具体的には、他の非経口送達システム)と比較して、2〜10%、10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%又は90〜99%多い治療薬剤に、少なくとも2〜5時間、5〜10時間、10〜12時間、12〜24時間、24〜36時間、36〜48時間、3〜5日、5〜7日又は1〜3週間の期間にわたって曝露される。腫瘍細胞又は腫瘍支持性細胞中に存在する治療薬剤の量は、当業者が決めてもよいし、下記の6章で使用する方法により決めてもよい。
【0063】
本発明の方法は、対象の利益になり得る任意の治療的、予防的又は診断的適用が含まれる。或る実施形態では、本発明は、有効量の1又はそれより多い疾患標的化薬物送達システムを対象に投与することにより、ガン、血管新生、炎症、心臓状態、又は内皮細胞増殖に関連する他の疾患若しくは障害を予防、管理、治療又は改善する方法に関する。或る他の実施形態では、本発明は、例えばNGRレセプターを発現する血管内皮細胞の存在又は量を診断又はモニターする方法に関する。送達システムを含んでなる医薬組成物及びキットもまた包含される。
【0064】
下記に示すように、本発明は、ドキソルビシンの送達に限定されない。遺伝子によりコードされた合成により、薬物の接合又はキレート化に適切な反応性部位のタイプ、数及び位置を、ポリマー鎖に沿って正確に指定することが可能になる。したがって、細胞内標的が異なる化学療法剤のためのポリペプチドキャリアの設計及び合成において、類似のアプローチを適用し得る。接合体に結合し得る化学療法剤の例としては、メトトレキサート、ビンブラスチン、タキソールなどが挙げられるが、これらに限定されない。下記により完全なリストを記載する。
【0065】
本発明の更なる実施形態は、c-Mycガン遺伝子活性及びサイクリン依存性キナーゼ(cdk)活性を阻害することができるELP送達ペプチドを含む。他の実施形態は、c-Myc及びcdk阻害に限定されず、単に既存ELP配列を遺伝的に改変することにより、任意のガン遺伝子又は分子標的に適用し得る。このような熱応答性ポリペプチド(これは分子設計及び分子工学に馴染み易い)は、容易かつ安価に高純度及び高量で作製され、任意の細胞タイプ又は組織に効率的に標的化及び適合されて特異性を更に高められる。局所温熱による充実性腫瘍への提案している治療ポリペプチドの特異的標的は、治療の特異性及び効力を増大させ、正常組織における細胞傷害性を減少させる。よって、本発明のポリペプチド媒介治療薬送達システムは、限局された腫瘍の治療のための現行の治療法を効果的に置換するか又は増強する代替手段を提供する。
【0066】
本発明の方法及び組成物により治療、管理、予防又は診断することができるガン及び関連障害としては、以下のものが挙げられるがそれらに限定されない:急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病(例えば、骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性)、赤白血病白血病及び骨髄異形成症候群、慢性白血病(例えば、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ球性白血病、ヘアリーセル白血病であるがこれらに限定されない)のような(しかしこれらに限定されない)白血病;真性赤血球増加症;ホジキン病、非ホジキン病のような(しかしこれらに限定されない)リンパ腫;くすぶり型(smoldering)多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞性白血病、孤立性形質細胞腫及び髄外性形質細胞腫のような(しかしこれらに限定されない)多発性骨髄腫;ヴァルデンストレームマクログロブリン血症;意味未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症;良性単クローン性高ガンマグロブリン血症;H鎖病;骨の肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫、骨の線維肉腫、脊索腫、骨膜性骨肉腫、柔組織肉腫、血管肉腫(angiosarcoma、hemangiosarcoma)、線維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫のような(しかしこれらに限定されない)骨組織及び結合組織肉腫;神経膠腫、星状細胞腫、脳幹神経膠腫、上衣細胞腫、希突起神経膠腫、非神経膠腫瘍(nonglial tumor)、前庭神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、松果体腫、松果体芽細胞腫、原発性脳リンパ腫(primary brain lymphoma)のような(しかしこれらに限定されない)脳腫瘍;腺ガン、小葉(小細胞)ガン、腺管内ガン、乳腺髄様ガン、胸部粘液性ガン、胸部管状腺ガン、胸部乳頭ガン、パジェット病及び炎症性乳ガンを含むがこれらに限定されない胸部ガン;褐色細胞腫及び副腎皮質ガン腫のような(しかしこれらに限定されない)副腎ガン;乳頭状又は濾胞状甲状腺ガン、髄様甲状腺ガン及び未分化甲状腺ガンのような(しかしこれらに限定されない)甲状腺ガン;インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌性腫瘍、及びカルチノイド又はランゲルハンス島細胞腫瘍のような(しかしこれらに限定されない)膵臓ガン;クッシング病、プロラクチン分泌性腫瘍、先端巨大症、及び尿崩症のような(しかしこれらに限定されない)下垂体ガン;眼の黒色腫(ocular melanoma)(例えば、虹彩黒色腫、脈絡膜黒色腫及び線毛体(cilliary body)黒色腫)及び網膜芽細胞腫のような(しかしこれらに限定されない)眼のガン;膣ガン、例えば、扁平上皮細胞のガン腫、腺ガン及び黒色腫;外陰ガン、例えば、扁平上皮細胞のガン腫、黒色腫、腺ガン、基底細胞のガン腫、肉腫、及びパジェット病;扁平上皮細胞のガン腫、及び腺ガンのような(しかしこれらに限定されない)子宮頸ガン;子宮内膜ガン腫及び子宮肉腫のような(しかしこれらに限定されない)子宮ガン;卵巣上皮ガン腫、境界領域腫瘍、生殖細胞腫瘍、及び間質性腫瘍のような(しかしこれらに限定されない)卵巣ガン;扁平上皮ガン、腺ガン、腺様嚢胞ガン腫、粘液性類表皮ガン腫、腺扁平上皮ガン腫、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、疣贅ガン腫、及び燕麦細胞(小細胞)ガン腫のような(しかしこれらに限定されない)食道ガン;腺ガン、菌状(fungating)(ポリープ状)、潰瘍状、表在性拡大、散在性拡大、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、線維肉腫、及びガン肉腫のような(しかしこれらに限定されない)胃ガン;結腸ガン;直腸ガン;肝細胞ガン腫及び胚芽細胞腫のような(しかしこれらに限定されない)肝臓ガン、胆嚢ガン(例えば腺ガン);乳頭状、結節性、及び広汎性(diffuse)のような(しかしこれらに限定されない)胆管ガン腫;肺ガン、例えば、非小細胞肺ガン、扁平上皮細胞ガン腫(類表皮ガン腫)、腺ガン、大細胞ガン腫及び小細胞肺ガン;胚腫瘍(germinal tumor)、精上皮腫、未分化、古典的(代表的)、精母細胞性、非セミノーマ、胎生期ガン腫、奇形ガン腫、絨毛ガン腫(卵黄嚢腫瘍)、前立腺ガン(例えば(これらに限定されない)、腺ガン、平滑筋肉腫、及び横紋筋肉腫)のような(しかしこれらに限定されない)睾丸ガン;陰茎ガン(penal cancer);扁平上皮細胞ガン腫のような(しかしこれらに限定されない)口腔ガン;基底ガン(basal cancer);腺ガン、粘液性類表皮ガン腫、及び腺様嚢胞ガン腫(しかしこれらに限定されない)唾液腺ガン;扁平上皮細胞ガン及び疣贅のような(しかしこれらに限定されない)咽頭ガン;基底細胞ガン腫、扁平上皮細胞ガン腫及び黒色腫、表在性拡大性黒色腫、結節性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端部黒子黒色腫のような(しかしこれらに限定されない)皮膚ガン;腎臓細胞ガン、腺ガン、副腎腫、線維肉腫、移行上皮細胞ガン(腎盤及び/又は尿管)のような(しかしこれらに限定されない)腎臓ガン;ウィルムス腫瘍;移行上皮細胞ガン腫、扁平上皮細胞ガン、腺ガン、ガン肉腫のような(しかしこれらに限定されない)膀胱ガン。
【0067】
本発明の方法及び組成物はまた、リンパ系統の造血腫瘍(白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫を含む);骨髄系統の造血腫瘍(急性及び慢性骨髄性白血病並びに前骨髄球性白血病を含む);間葉起源の腫瘍(線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む);他の腫瘍(黒色腫、精上皮腫、奇形ガン腫、神経芽細胞腫及び神経膠腫を含む);中枢神経系及び末梢神経系の腫瘍(星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、及び神経鞘腫を含む);間葉起源の腫瘍(線維肉腫、横紋筋肉腫及び骨肉腫を含む);及び他の腫瘍(黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞状ガン及び奇形ガン腫を含む)の治療、管理、予防又は診断に有用である。また、アポトーシスの異常により引き起こされるガンも本発明の方法及び組成物により治療されると意図される。このようなガンには、濾胞状リンパ腫、p53変異を有するガン腫、胸部、前立腺及び卵巣のホルモン依存性腫瘍、並びに前ガン性病変(例えば、家族性腺腫性ポリポーシス及び骨髄異形成症候群)が含まれ得るがこれらに限定されない。
【0068】
更なるタイプのガンとしては、新生芽細胞腫、粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫、リンパ管内皮肉腫、中皮腫、滑膜腫、血管芽細胞腫、上皮ガン腫、嚢胞腺ガン、気管支原性ガン腫、汗腺ガン腫、脂腺ガン腫、乳頭ガン腫及び乳頭腺ガン(このような障害の総説については、Fishmanら、1985,Medicine,第2版、J.B.Lippincott Co.,Philadelphia、及びMurphyら、1997,Informed Decisions:The Complete Book of Cancer Diagnosis,Treatment,and Recovery,Viking Penguin,Penguin Books U.S.A.,Inc.,米国を参照)が挙げられる。腫瘍は、充実性腫瘍であっても非充実性腫瘍であってもよく、原発性腫瘍であっても散在性転移性(続発性)腫瘍であってもよい。
【0069】
具体的実施形態では、悪性への変化又は増殖異常への変化(dysproliferative change)(例えば、化生及び形成異常)又は高増殖性障害(hyperproliferative disorder)が、卵巣、膀胱、胸部、結腸、肺、皮膚、膵臓又は子宮で治療又は予防される。
【0070】
他の具体的実施形態では、ガンは胸部腫瘍、黒色腫、神経芽細胞腫、腎臓ガン又はカポジ肉腫である。
【0071】
本発明は、ヒト又は非ヒト動物に有効量の腫瘍標的化薬物送達システムを投与することにより、ガンを予防、管理、治療及び寛解する方法を提供する。本発明の標的化薬物送達システムは、対象に、それ自体又は医薬組成物の形態で投与され得る。対象は、好ましくは哺乳動物である。哺乳動物は、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)又は霊長類(例えば、サル及びヒト)であり得、最も好ましくはヒトである。ヒトは、成人、少年少女、幼児又は胎児であり得る。
【0072】
或る実施形態では、送達システムは、ガン、血管新生、炎症、心臓状態又は損傷した若しくは欠陥のある内皮細胞に関連する疾患若しくは障害の治療に有用な1又はそれより多い他の治療組成物又は予防組成物と同時に、対象に投与される。
【0073】
用語「同時に」は、正確に同じ時間の投与に限定されず、むしろ、本送達システムを含んでなる1又はそれより多い治療又は予防組成物が別の組成物と一緒に作用して、その他の方法で投与された場合より増大した利益を提供できるような順次の投与及び時間間隔内の投与を含む。例えば、各々の予防又は治療組成物は、同じ時間に、又は任意の順序で異なる時点に連続的に投与され得る;しかし、同じ時間に投与しない場合、それらは、所望の治療又は予防効果を提供するように、時間的に十分に近接して投与するべきである。各組成物は、別々に、任意の適当な形態で、任意の適切な経路により投与することができる。
【0074】
他の実施形態では、組成物は、手術の前、手術と同時、又は手術後に投与する。好ましくは、手術は、限局された腫瘍を完全に取り除くか、又は大きな腫瘍のサイズを減少させる。手術はまた、予防手段としてか又は疼痛を軽減するために行うことができる。
【0075】
本発明との組み合せで使用することができる薬剤としては、以下のような(しかしそれらに限定されない)1又はそれより多い血管新生阻害剤又は血管退化薬剤(angiolytic agent)が挙げられる:アンジオスタチン(プラスミノゲンフラグメント);抗血管新生性アンチトロンビンIII;アンジオザイム(Angiozyme);ABT-627;Bay 12-9566;ベネフィン(Benefin);ベバシズマブ;BMS-275291;軟骨由来阻害剤(CDI);CAI;CD59補体フラグメント;CEP-7055;Col 3;コンブレタスタチンA-4;エンドスタチン(コラーゲンXVIIIフラグメント);フィブロネクチンフラグメント;Gro-beta;ハロフジノン;ヘパリナーゼ;ヘパリン六糖(hexasaccharide)フラグメント;HMV833;ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG);IM-862;インターフェロンα/β/γ;インターフェロン誘導性タンパク質(IP-10);インターロイキン-12;クリングル5(プラスミノゲンフラグメント);マリマスタット;メタロプロテアーゼ阻害剤(TIMPs);2-メトキシエストラジオール;MMI 270(CGS 27023A);MoAb IMC-1C11;ネオバスタット;NM-3;パンゼム;PI-88;胎盤性リボヌクレアーゼ阻害剤;プラスミノゲンアクチベータ阻害剤;血小板因子-4(PF4);プリノマスタット;プロラクチン16kDフラグメント;プロリフェリン関連タンパク質(PRP);PTK 787/ZK 222594;レチノイド;ソリマスタット;スクアラミン;SS 3304;SU 5416;SU6668;SU11248;テトラヒドロコルチソル-S;テトラチオモリブデート;サリドマイド;トロンボスポンジン-1(TSP-1);TNP-470;トランスホーミング増殖因子-β(TGF-b);バスキュロスタチン(Vasculostatin);バソスタチン(カルレチクリンフラグメント);ZD6126;ZD 6474;ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI);及びビスホスホネート。
【0076】
本発明の種々の実施形態(本発明の医薬組成物及び剤型並びにキットを含む)で使用することができる抗ガン薬剤の更なる例としては以下が挙げられるがそれらに限定されない:アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール(acodazole);アクロニン;アドゼレシン(adozelesin);アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン(ambomycin);酢酸アメタントロン(ametantrone);アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アンスラマイシン;1-β-D-アラビノフラノシルシトシン(「AraC」);アスパラギナーゼ;アスペルリン(asperlin);アザシチジン;アゼテパ(azetepa);アゾトマイシン(azotomycin);バチマスタット;ベンゾデパ(benzodepa);ビカルタマイド;塩酸ビサントレン;ビスナフィドジメシラート;ビゼレシン(bizelesin);硫酸ブレオマイシン;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カーベタイマー(carbetimer);カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン(carubicin);カルゼレシン;セデフィンゴール(cedefingol);クロランブシル;シロレマイシン(cirolemycin);シスプラチン;グラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジクオン(diaziquone);ドセタキセル;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン(duazomycin);エダトレキセート;塩酸エフロニチン(eflonithine);エルサミトルシン(elsamitrucin);エンロプラチン;エンプロマート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール(erbulozole);塩酸エソルビシン(esorubicin);エストラムスチン;リン酸ナトリウムエストラムスチン;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン(etoprine);塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロシタビン;ホスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;ヒドロキシ尿素;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモホシン;インターロイキンII(組換えインターロイキンII、即ちrIL2を含む)、インターフェロンα-2a;インターフェロンα-2b;インターフェロンα-n1;インターフェロンα-n3;インターフェロンβ-Ia;インターフェロンγ-Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;メイタシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン(mitocarcin);ミトクロミン;ミトジリン(mitogillin);ミトマルシン(mitomalcin);マイトマイシン;ミトスペル(mitosper);ミトタン(mitotane);塩酸ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン(oxisuran);パクリタキセル;ペグアスパルガーゼ;ペリオマイシン(peliomycin);ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルホスファミド(perfosfamide);N-ホルホノアセチル-L-アスパルテート(「PALA」);ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン(prednimustine);塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン(pyrazofurin);リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォス酸ナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム(spirogermanium);スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェナル(sulofenur);タリソマイシン(talisomycin);テコガラン(tecogalan)ナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン(temoporfin);テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン(thiamiprine);チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン(tiazofurin);チラパザミン;トポテカン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン(trestolone);リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ(uredepa);バプレオチド(vapreotide);ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン(vinepidine);硫酸ビングリシネート(vinglycinate);硫酸ビンロイロシン(vinleurosine);酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン(vinrosidine);硫酸ビンゾリジン(vinzolidine);ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;塩酸ゾルビシン。他の抗ガン薬物としては、以下が挙げられるがそれらに限定されない:20-エピ-1,25ジヒドロキシビタミンD3;5-エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン(acylfulvene);アデシペノール(adecypenol);アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL-TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバススチン;アミドックス(amidox);アミフォスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレライド;アナストロゾール;アンドログラホライド;血管新生阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリクス(antarelix);抗背方化形態形成タンパク質-1;抗男性ホルモン、前立腺ガン腫;抗エストロゲン;アンチネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシネート;アポトーシス遺伝子モジュレータ;アポトーシスレギュレータ;アプリン酸;アラ-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン(asulacrine);アタメスタン(atamestane);アトリムスチン(atrimustine);アキシナスタチン(axinastatin)1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アゼセトロン;アザトキシン(azatoxin);アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール(balanol);バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン(benzochlorins);ベンゾイルスタウロスポリン;βラクタム誘導体;β-アレチン(alethine);ベータクラマイシン(betaclamycin)B;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタマイド;ビサントレン;ビスアジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテン(bistratene)A;ビゼレシン;ブレフレート(breflate);ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリア痘ウイルスIL-2;カペシタビン;カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリクス;クロリン(chlorlns);クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;シス-ポルフィリン;グラドリビン;クロミフェンアナログ;クロトリマゾール;コリスマイシン(collismycin)A;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチンアナログ;コナゲニン(conagenin);クラムベスシジン(crambescidin)816;クリスナトール;クリプトフィシン(cryptophycin)8;クリプトフィシンA誘導体;キュラシン(curacin)A;シクロペントアントラキノン;シクロプラタム(cycloplatam);シペマイシン(cypemycin);シタラビンオクフォスファート;細胞傷害性因子;サイトスタチン;ダクリキシマブ(dacliximab);デシタビン;デヒドロジデムニン(dehydrodidemnin)B;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド(dexifosfamide);デクスラゾキサン(dexrazoxane);デクスベラパミル(dexverapamil);ジアジクオン;ジデムニン(didenmin)B;ジドックス(didox);ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アザシチジン;ジヒドロタキソール,9-;ジオキサマイシン(dioxamycin);ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルホシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン(elemene);エミテフール(emitefur);エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチンアナログ;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;リン酸エトポシド;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン(fluasterone);フルダラビン;塩酸フルオロダウノルビシン(fluorodaunorunicin);ホルフェニメクス;フォルメスタン;フォストリエシン;ホテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン(galocitabine);ガニレリクス;ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム(hepsulfam);ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン(idoxifene);イドラマントン;イルモホシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモッド;免疫刺激ペプチド;インスリン様成長因子-1レセプター阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;イポメアノール(ipomeanol),4-;イロプラクト(iroplact);イルソグラジン;イソベンガゾール(isobengazole);イソホモハリコンドリン(isohomohalicondrin)B;イタセトロン;ジャスプラキノリド(jasplakinolide);カハラライドF;ラメラリン-Nトリアセテート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;硫酸レンチナン;レプトルスタチン(leptolstatin);レトロゾール;白血病阻害因子;白血球αインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;ロイプロレリン;レバミゾール;リアロゾール(liarozole);直鎖状ポリアミンアナログ;脂肪親和性二糖ペプチド;脂肪親和性白金化合物;リソクリナミド(lissoclinamide)7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール(lometrexol);ロニダミン(lonidamine);ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン(lurtotecan);ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;溶菌性ペプチド;マイタンシン(maitansine);マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン(maspin);マトリライシン阻害剤;マトリクスメタロプロティナーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン(merbarone);メテレリン(meterelin);メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテフォシン;ミリモスチム;ミスマッチ二重鎖RNA;ミトグアゾン(mitoguazone);ミトラクトール;マイトマイシンアナログ;ミトナフィド(mitonafide);ミトトキシン(mitotoxin) 線維芽細胞成長因子-サポリン;ミトザントロン;モファロテン;モルグラモスチム(molgramostim);モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン;モノホスホリルリピドA+ミコバクテリア細胞壁sk;モピダモール(mopidamol);多剤耐性遺伝子阻害剤;多発性腫瘍抑制剤1ベースの治療;マスタード抗ガン剤;マイカパーオキシド(mycaperoxide)B;ミコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン(myriaporone);N-アセチルジナリン(N-acetyldinaline);N-置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチップ(nagrestip);ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン(napavin);ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン(nemorubicin);ネリドロン酸(neridronic acid);中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン(nisamycin);一酸化窒素モジュレータ;窒素酸化物抗酸化剤;ニトルリン(nitrullyn);O6-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン(okicenone);オリゴヌクレオチド;オ
ナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン(oracin);口腔サイトカイン誘導剤;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン(oxaunomycin);パクリタキセル;パクリタキセルアナログ;パクリタキセル誘導体;パラウアミン(palauamine);パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール(panaxytriol);パノミフェン;パラバクチン(parabactin);パゼリプチン;ペグアスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリ硫酸ナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール(pentrozole);パーフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール(perillyl alcohol);フェナジノマイシン(phenazinomycin);フェニル酢酸;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニール;塩酸ピロカルピン;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチン(placetin)A;プラセチンB;プラスミノゲンアクチベータ阻害剤;白金錯体;白金化合物;白金-トリアミン錯体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビス-アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;プロテインAベースの免疫モジュレータ;プロテインキナーゼC阻害剤;プロテインキナーゼC阻害剤,微細藻類の;タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレン接合体;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras-GAP阻害剤;脱メチル化レテリプチン;レニウムRe 186エチドロネート;リゾキシン;リボザイム;RII レチナミド(retinamide);ログレチミド;ロヒツキン(rohitukine);ロムルチド;ロキニメクス;ルビギノン(rubiginone)B1;ルボキシル(ruboxyl);サフィンゴール;セイントロピン(saintopin);SarCNU;サルコフィトール(sarcophytol)A;サルグラモスチン;Sdi 1模擬体;セムスチン;老化由来阻害剤1(senescence derived inhibitor 1);センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達モジュレータ;単鎖抗原結合性タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ナトリウムボロカプテート(borocaptate);フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール(solverol);ソマトメジン結合性タンパク質;ソネルミン(sonermin);スパルフォス酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン(splenopentin);スポンジスタチン1;スクアラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分裂阻害剤;スチピアミド(stipiamide);ストロメライシン阻害剤;スルフィノシン(sulfinosine);超活性血管作動性腸管ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ(suradista);スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム(tellurapyrylium);テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロマイド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン(tetrazomine);サリブラスチン(thaliblastine);チオコラリン(thiocoraline);トロンボポエチン;トロンボポエチン模擬体;チマルファシン;サイモポイエチンレセプターアゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;スズエチルエチオプルプリン(tin ethyl etiopurpurin);チラパザミン;二塩化チタノセン;トプセンチン(topsentin);トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン;UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖洞由来成長阻害因子;ウロキナーゼレセプターアンタゴニスト;バプレオチド;バリオリン(variolin)B;ベクターシステム,赤血球遺伝子療法;ベラレソール(velaresol);ベラミン(veramine);ベルジン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンクリスチン,ビンキサルチン(vinxaltine);ビタキシン(vitaxin);ボロゾール;ザノテロン(zanoterone);ゼニプラチン;ジラスコルブ;及びジノスタチンスチマラマー。
【0077】
上記のように、本発明の具体的実施形態では、抗ガン薬物は、ドキソルビシン又はドキソルビシン様化合物である。より具体的には、ELPは、doxの熱標的化送達の高分子キャリアとして働くことができる。
【0078】
熱応答性ELPのエンドサイトーシス性取込みは、該ポリペプチドの熱トリガー相転移により有意に増強されることが以前に示されている。この観察は、ELP送達Doxの細胞取込みがTatペプチド及び温熱の両方により増強されることを示した本研究において確証された。興味深いことに、両方の構築物が37〜42℃の温度枠で相転移を受けるにもかかわらず、ELP1-GFLG-Doxの細胞取込みは、Tatペプチドの不在下では熱処理により有意に増強されなかった。この結果は、以前のフルオレセインで標識したELP1の報告とは異なる。その報告では、幾つか異なる細胞株において、温熱による細胞取込みの2倍もの増強が観察された。可能な説明は、フルオレセイン色素がDoxより疎水性が低いので、ELP1-GFLG-Doxの大きな凝集体は荷電細胞表面に対する親和性が減少しているのかもしれないというものである。しかし、Tat-ELP1-GFLG-Doxの取込みはELP1-GFLG-Doxと比較して37℃にて3倍、42℃にて6倍増加したので、Tatペプチドの付加が細胞膜に対する大きなELP凝集体の親和性を増大させることは明らかである。
【0079】
Tat-ELP-GFLG-Dox処理に起因する細胞Doxレベルは、類似の条件下でのフリーのドキソルビシンでの処理に起因するものより遥かに低かった(データは示さず)。このことは、この2つの分子が細胞進入を達する不同一の機序を反映している。フリーのDoxは、受動拡散により細胞内環境へのアクセスを達するに十分に小さく、疎水性である。一方、Tat-ELP-GFLG-Doxは、細胞進入のための能動輸送機序に依拠する。フリーのDox及びポリマー結合Doxの細胞取込み機序のこの対照性は、HPMA送達Doxを用いて以前に観察されている。HPMA-Doxの場合、エンドサイトーシス性取込みが優位であり、細胞膜における脂質過酸化が関与する代わりの毒性機序、インビボにおける腫瘍活性の増強、全身毒性の低下、多剤耐性を克服する能力を導く。
【0080】
本発明は、Tat-ELP-GFLG送達Doxが核に局在化しないことを証明する。このことは、核に完全に局在し、そこでインターカレーター及びトポイソメラーゼII毒として働くフリーの該薬物とは対照的である。HPMA送達Doxに類似して、Tat-ELP-GFLG送達Doxは細胞質分布を示した。この変化した分布の原因は、Tat-ELP-GFLGにより使用されるエンドサイトーシス態様の細胞侵入、ELPキャリアからのDoxの遊離の失敗、又はDox構造に対してなされた改変であり得る。興味深いことに、Tat-ELP-GFLG送達Doxは、核局在を欠いているにもかかわらず、依然として細胞傷害性である。このことは、フリーのDox及びTat-ELP-GFLG送達Doxごとの毒性機序を示唆する。Tat-ELP-GFLG-Doxはまた、細胞傷害性が弱いにもかかわらず、フリーのDoxより効果的にカスパーゼ活性化を誘導した。このことは、これら2つの形態の薬物が異なる機序により作用しているという仮説に更なる支持を与える。HPMA接合Doxは形質膜透過性の変化を引き起こし、脂質過酸化を誘導し、カスパーゼ依存性アポトーシス及び壊死の両方を誘導することが示されている。Tat-ELP-GFLG送達Doxによる細胞傷害性の機序を決定するための実験は、進行中である。
【0081】
本発明の実施形態では、フリーのDoxは、ELP送達Doxより遥かに強力であることが見出された。しかし、この2つの薬剤の細胞傷害性は、細胞中での異なる薬物レベルのために、直接比較することができない。事実、HPMA送達Doxを使用した以前の研究により、細胞内薬物レベルについて較正すると、ポリマー送達Doxの細胞傷害性はフリーのDoxに匹敵することが見出されている。インビボでの薬物の薬物動態及び組織分布の複雑性のため、インビトロでの効力は、ポリマー接合薬物とフリーの薬物とを比較する場合には特に、薬物の治療値(therapeutic value)の判断材料としては乏しい。HPMA-Dox接合体は、フリーのDoxのIC50より遥かに高いマイクロモル範囲のインビトロIC50を有することが示されているが、これらHPMA-Dox接合体は、予備臨床評価で有望であることが示されている。HPMA-Dox及びTat-ELP-GFLG-DoxのIC50値は匹敵し、このことはTat-ELP-GFLG-Doxの治療濃度が達成可能であることを示している。
【0082】
Dreherらによる以前の研究は、扁平上皮細胞ガン腫株(FaDu)におけるELP送達Doxによる細胞傷害性を報告した。しかし、彼らは、温熱による細胞傷害性効果の増強を観察しなかった。Dreherらの研究と本研究との間には幾つかの相違が存在する。第1に、Dreherらは、該薬物とELPとの接合に、酸に不安定なヒドラゾンリンカーを使用した。対照的に、本研究ではプロテアーゼ切断可能なリンカーを使用した。第2に、反応性部分でのDoxの改変部位が異なっていた。Dreherらは、多段合成プロセスを使用して先ずELPに反応性部分を導入し、次いでC-13カルボニル基を介してDoxを付着した。本発明の実施形態では、C-3'のアミノ窒素にリンカーを介して(一工程で独特なシステイン残基への接合を可能にする)マレイミド基を付加することによりドキソルビシンを改変した。第3に、Dreherらは扁平上皮細胞ガン腫株(FaDu)を使用した。一方、本研究では、MES-SA子宮肉腫細胞を使用した。しかし、これら相違が本研究で観察された温熱による細胞傷害性の増強を導きそうにない。本明細書で報告した熱誘導細胞傷害性が、実験条件及び細胞透過性ペプチドの付加によるELPの改変に起因する可能性のほうがより高い。Dreherらの研究では、細胞は、ELP-Doxに24時間又は72時間継続して曝露され、温熱は最初の1時間にのみ適用された。このことが温熱の影響を減少させたのであろう。本発明の実施形態では、温熱処理の影響に光を当てるために、1時間だけ、薬物及び温熱の両方に細胞を曝露した。この間に、温熱がタンパク質の凝集を引き起こし、ポリペプチド凝集体が細胞表面に蓄積する。その結果、細胞に結合したポリペプチドの量、究極的には細胞により内在化されるポリペプチドの量が、常温の可溶性ポリペプチドと比較して増加する。本発明者らにより観察された熱増強はまた、Tatペプチドの使用により補助された。未標識のTat-ELP-GFLGポリペプチドにより幾らかの細胞傷害性が観察された。これはおそらく、高度荷電ポリマーの形質膜との相互作用及び形質膜の破壊に起因する。この毒性の正確な機序は、現在、更なる評価中である。しかし、Tat-ELP-GFLG-Doxによる細胞殺傷は、単純にTat-ELP-GFLGの毒性に起因するものではない。なぜならば、未標識化タンパク質は、Dox標識化構築物より効力が1オーダー弱く、MES-SA細胞株においてDoxの不在下でカスパーゼ活性化を誘導しなかったからである。Tat-ELP1-GFLG-Doxの熱標的指数19.9に対し、ELP1-GFLG-Doxのみは2.85の指数を示したので、Tatペプチドは、この大きなタンパク質凝集体の細胞送達を増強した。
【0083】
本発明の実施例は、ドキソルビシンの細胞内送達のための熱標的化薬物キャリアとしてのELPの使用を示す。Dox送達構築物は40℃で相転移を受け、細胞による内在化は、細胞透過性ペプチドの使用及び温熱誘導相転移の両方により増強された。ELPベクターはDoxを細胞の細胞質に送達し、カスパーゼ依存性機序を通じてアポトーシスを誘導することにより細胞を殺傷した。細胞傷害性は、治療が温熱と組み合わされると、20倍増強された。
【0084】
好ましくは、薬物/薬剤又はそれらの誘導体は、本発明のリンカー基のシステインに付着されるか、又は別の反応性アミノ酸(例えばリジン)に付着して改変される。
【0085】
組成物は、意図する投与経路に依存して、溶液、懸濁液、乳液、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、持続放出製剤などの形態を取ることができる。投与経路の例としては、非経口、例えば、動脈内、門脈内、筋肉内、静脈内、髄腔内、皮内、皮下、経皮(局所)、経粘膜、関節内、腹腔内及び胸膜腔内、並びにクモ膜下腔内、大脳内、吸入及び肺投与が挙げられる。別の観点では、送達システム及び医薬組成物は、対象に局所的に、例えば障害又は疾患に悩まされている特定の腫瘍、臓器、組織又は細胞へ血液を供給する局所血管への注射により、投与される。
【0086】
非経口投与用には、組成物は、以下の成分の1又はそれより多くを含んでなる:滅菌希釈剤、例えば、注射水、生理食塩水溶液;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコール又はメチルパラベン(parabens);抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム;キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩、及び張度調節用の薬剤、例えば、塩化ナトリウム又はデキストロース。非経口調製物は、ガラス製又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ又は複用量バイアルに封入することができる。
【0087】
注射用には、送達システムは、水性溶液中、好ましくは生理学的に適合性の緩衝剤(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液又は生理学的食塩水緩衝剤)中で製剤化され得る。溶液は、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散化剤のような処方薬剤(formulatory agent)を含有してもよい。1つの実施形態では、送達システムは、滅菌水性溶液中で製剤化される。
【0088】
静脈内投与用には、適切なキャリアとしては、生理学的食塩水、静菌水又はリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合で、組成物は無菌でなければならず、シリンジで容易に注射可能な程度に流動性であるべきである。これは、製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、微生物(例えば細菌及び真菌)の汚染作用に対して保護されなければならない。キャリアは、例えば水を含有する溶媒又は分散媒及びそれらの適切な混合物であることができる。微生物の作用の予防は、種々の抗菌性薬剤及び抗真菌性薬剤(例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど)により達成することができる。多くの場合、組成物中に等張薬剤、例えば糖、ポリアルコール(例えばマンニトール、ソルビトール)、塩化ナトリウムを含ませることが好ましい。
【0089】
投与すべき組成物の量は変化し得る。当業者は、疾患又は障害の重篤度、以前の治療、対象の全身の健康状態及び/又は年齢(他の疾患が存在する場合)投与の態様及び処方する医師の判断を含むがこれらに限定されない或る種の因子が対象を効果的に治療するために必要な投薬量に影響し得ることを理解する。治療は単回治療又は一連の治療であることができる。治療法は、症状が検出可能である間、又は検出可能でないときでさえ、断続的に繰り返してもよい。また、治療に使用する核酸分子の有効投薬量は、特定の治療の経過にわたって、増加してもよいし減少してもよいことも理解される。投薬量の変化は、本明細書に記載の診断アッセイ及びモニターアッセイの結果に起因し、その結果から明らかになり得る。
【0090】
全身投与用には、治療有効用量は、最初は、インビトロアッセイから見積もることができる。例えば、用量は、細胞培養物で決定されるIC50を含む循環濃度範囲を動物モデルで達成するように処方することができる。このような情報は、動物モデルで観察される薬物動態及び生体内分布の変化をヒト用量の推定値に外挿することにより、ヒトで有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。
【0091】
最初の投薬量はまた、当該分野において周知の技法を用いて、インビボデータ、例えば、動物モデルから推定することができる。当該組成物の投薬量は、好ましくは、ED50を含み毒性がほとんどないか全くない循環濃度範囲内である。当業者は、キャリア中に薬物をカプセル化することにより、カプセル化された薬物の薬物動態及び生体内分布の有意な変化が生じることがあることに留意しながら、動物データに基づいてヒトへの投与を容易に最適化し得る。
【0092】
投薬の量及び間隔は、疾患部位で、治療効果の維持に十分な薬物のレベルを提供するように、個々に調整してもよい。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーにより、測定してもよい。
【0093】
注射による投与について通常患者投薬量は、約0.01〜30mg/kg/日の範囲、好ましくは約0.1〜10mg/kg/日の範囲、より好ましくは0.1〜1mg/kg体重の範囲である。
【0094】
本発明の1つの実施形態では、ドキソルビシンを含んでなる本発明のシステムの投与用の投薬量は、0.1〜1mg/kgを週2回、又は1〜12mg/kgを週1回、6週間までである。好ましい実施形態では、ビンクリスチンを含んでなる本発明のシステムを投与するための投薬量は、0.1〜1mg/kgを週2回、又は1〜6mg/kgを週1回、6週間までである。
【0095】
本発明の送達システム及び/又は医薬組成物は、ガンの治療又は予防のために、手術、標準的及び実験的な化学療法、ホルモン療法、生物学的療法、免疫療法、放射線療法、塞栓形成及び/又は化学塞栓形成療法と逐次に又は同時に対象に投与することができる。
【0096】
本明細書に記載の組成物はまた、無機酸(例えば、塩酸、臭素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸及びリン酸)及び有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸及びフマル酸)との反応により、又は無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム)及び有機塩基(例えば、モノ-、ジ-、トリアルキルアミン、アリールアミン及び置換エタノールアミン)との反応により形成される医薬的に許容可能な酸-又は塩基-付加塩として投与することができる。
【実施例】
【0097】
実施例
以下の実施例は説明目的にのみ記載され、本発明の実施形態の特徴を示す。したがって、以下の実施例は、如何なる形式でも本発明を制限するものとして意図されていない。
【0098】
実施例1:ポリペプチドの熱特性
ELPベースのポリペプチドを薬物送達に適用するために、適切な温度転移が達成されなければならない。薬物標識化ELPは、望まない全身性凝集を防止するに十分に正常体温を超えるが、広範な毒性を引き起こすに十分には暖かくない温度範囲たる39〜42℃で相転移を受けるべきである。エラスチン様ポリペプチドは、簡単な分子生物学技法を用いてVPGXG配列中のゲスト残基(guest residue)Xの分子量又はアミノ酸組成を変えることにより転移温度を容易に操作することができるので、熱標的化薬物キャリアとして理想的に適切である。Tat-ELP-GFLG-DOXの転移温度は、生理学的緩衝剤中で加温しながらポリペプチドの溶液の濁度をモニターすることにより評価した。Tat-ELP1-GFLG-DOXは、薬物送達に理想的な相転移を有することが見出された。生理学的温度(37℃)でポリペプチドは可溶であり、溶液は明澄である。
【0099】
温度が温熱温度(42℃)まで上昇すると、ポリペプチドは凝集し、溶液は最大濁度に近づく(下記の表1)。Tat-ELP2-GFLG-DOXは、Tat-ELP1-GFLG-DOXと類似のサイズであるが異なるELP部分が組み込まれたポリペプチドである。Tat-ELP2-GFLG-DOXは、温熱温度を有意に上回る温度で凝集し、ELP相転移の効果を非特異的な温熱誘導効果と区別するためのコントロールとして働く。
【表2】

【0100】
実施例2:ELP送達ドキソルビシンの細胞取込み
温熱によるELP凝集の誘導がポリペプチドの細胞取込みを増強することができるかどうかを試験するために、MES-SA子宮肉腫細胞を、Tat-ELP-GFLG-DOXと共に1時間37又は42℃のいずれかでインキュベートした。次いで、天然DOX蛍光を用いてフローサイトメトリにより細胞を分析し、細胞中の薬物の量を定量した。ELP1含有構築物(これは40℃で凝集する)で処理すると、細胞に送達される薬物の量は、ほぼ2倍増加する(下記表2)。他方、温熱により凝集しないコントロール構築物の取り込みは、42℃に加温することにより影響を受けなかった。このことは、温熱後に観察される取り込みの増強が、ELPの相転移の結果であり、温熱の非特異的効果ではないことを説明している。この実験は、ELPの熱特性が、標的細胞に送達される薬物の量を増加させるために使用し得ることを証明する。
【表3】

【0101】
実施例3:細胞増殖の阻害
MES-SA細胞を5μMのTat-ELP-GFLG-DOX、ELP-GFLG-DOX(これはTat細胞透過性ペプチドを欠いている)又はTat-ELP-GFLG(これはDOXで標識されていない)で1時間37℃又は42℃にて処理した。1時間の処理後、細胞をリンスし、新鮮な培地に換えて72時間おいた。72時間後に残っている細胞をトリプシン処理により採集し、Coulterカウンタを用いて計数した。下記表3に示すように、未標識化Tat-ELP-GFLGは、いずれの温度でも細胞に対して毒性をほとんど示さなかった。Tat配列を欠くコントロールポリペプチドは、おそらく細胞に効率的に進入することができないので、同様に細胞傷害性ではなかった。Tat-ELP1-GFLG-DOXは、37℃(この温度では当該ペプチドは可溶である)で処理したときはほとんど毒性を示さなかった。しかし、温熱温度でのTat-ELP1-GFLG-DOXによる処理は、細胞増殖の完全な阻害を引き起こした。コントロールポリペプチドTat-ELP2-GFLG-DOX(これは温熱に応答して凝集しない)は、熱応答を示さず、37℃のTat-ELP1-GFLG-DOXと同様に細胞傷害性を示さない。このデータは、ELP及び温熱を使用して、温度依存性様式で細胞を殺傷するためにDOXを送達し得ることの最初の証明を表す。
【表4】

【0102】
実施例4:Tat-ELP-GFLG-DOXによるアポトーシスの誘導
MES-SA細胞をTat-ELP-GFLG-DOX、Tat配列を欠くコントロール構築物、フリーのDoxで1時間37℃又は42℃にて処理した。1時間の曝露後に細胞を採取し、蛍光カスパーゼ阻害剤(Immunochemistry Technologies,Bloomington,MN)及びフローサイトメトリを用いてカスパーゼ活性を検出した。温熱のみ又はELP-GFLG-DOXではカスパーゼ活性は誘導されなかった(下記表4)。細胞を37℃で処理したとき、Tat-ELP1-GFLG-DOX及びTat-ELP2-GFLG-DOXは、コントロールレベルをわずかに上回るアポトーシスを誘導した。しかし、処理温度を42℃に上昇させると、Tat-ELP1-GFLG-DOXは、当該集団の有意により高い割合が、カスパーゼ活性化を誘導した。Tat-ELP2-GFLG-DOXによるアポトーシス誘導は、温熱により増強されなかった。このことは、Tat-ELP1-GFLG-DOX及び温熱で見られたより高いレベルのアポトーシスがELP相転移に起因するという仮説を支持する。フリーのDoxは、試験した条件下でアポトーシスを誘導したが、そのレベルは温熱により影響を受けなかった。また、フリーのDoxは、温熱によるELP送達Doxと同程度に効率的には、アポトーシスを誘導しなかった。
【表5】

【0103】
実施例5:DOX耐性細胞におけるTat-ELP-GFLG-DOXの増殖
古典的化学療法での主要な課題は、薬剤耐性の発現である。耐性の最も一般的な機序は、薬物治療に応じたガン細胞による薬物流出ポンプ(MDR1)の発現である。このポンプは、細胞から薬物を取り除くことができ、1つの薬物により誘導されるが、他の広範な種々の薬物に対して作用することができ、結果的に多剤耐性と呼ばれる現象を生じる。ポリマー送達薬物は、しばしば、この薬物汲み出し機序をバイパスすることが可能であり、多剤耐性を克服することができる(12)。MES-SA/Dx5は、ドキソルビシンに対する耐性について選択された細胞株であり、また多くの他の薬物に対して交差耐性も示す。本発明者らはこの細胞株を使用して、ELP送達DoxがMDR1媒介ドキソルビシン耐性を克服することができるかどうかを決定した。MES-SA/Dx5細胞をTat-ELP-GFLG-DOXと72時間継続してインキュベートした。これら条件下でフリーのDoxで処理すると、これら細胞は薬物を汲み出すことができる。これらは、フリーのDoxに対して、MES-SA細胞より約100倍耐性である。しかし、Tat-ELP-GFLG-DOXは、両方の細胞株に対して同様な細胞傷害性を示す(下記表5)。この結果は、ELP送達Doxが薬物流出ポンプを迂回可能であり得ることを証明する。
【表6】

【0104】
Tat-ELP-GFLG-DOXが薬物流出ポンプをバイパスすることができることの更なる証拠のために、フローサイトメトリを使用して、フリーのDox又はTat-ELP-GFLG-DOXで処理した細胞からの薬物流出を分析した。10μMのDOX又はTat-ELP-GFLG-DOXのいずれかを細胞に5時間ロードし、その後薬物を除去し、新鮮な培地に換えた。細胞を採集し、フローサイトメトリを用いてDOX含量について分析した。フリーのDoxで処理すると、MES-SA/Dx5細胞は2つの集団を示す(図3のヒストグラム中の2つのピークで示される)。1つはDOX蛍光が高く、1つはDOX蛍光が低い。DOX蛍光が低い細胞は薬物が汲み出されている。薬物除去後、時間が経過するにつれて、DOX陽性ピークは強度が低くなり、当該集団の少数になる。このことは、培地から薬物を洗い流した後の時間につれて、これら細胞からのDOXの除去を説明する。これとは対照的に、Tat-ELP-GFLG-DOX処理細胞は、フローサイトメトリヒストグラムで1つのピークのみを示す。このことは、全ての細胞が同量の薬物を有していることを意味する。この単一ピークは、薬物除去後のすべての時点で、依然として明らかである。このことは、これら細胞がELP送達Doxを汲み出すことができないことを意味する。この結果は、両細胞株がTat-ELP-GFLG-DOXにより等しく影響されるという観察を説明し、ヒト療法における多剤耐性を克服するためにELP送達Doxが有望であることを明らかにする。
【0105】
実施例6:ELP及びDox
第1部:材料及び方法
【0106】
1.1.チオール反応性ドキソルビシン誘導体であるWP936の合成
6-マレイミドカプロン酸のN-スクシンイミジルエステルを図4Aに示すように製造した。水(10mL)中6-マレイミドカプロン酸(211mg、1mmol)と炭酸ナトリウム(50.3mg、0.5mmol)との混合物を調製し、全ての酸が溶解するまで室温で撹拌した。水を蒸発させて乾燥させた。残留物をメタノール(10mL)に溶解して、トルエン(25mL)を加え、溶媒を蒸発させて乾燥させた。メタノールとトルエンとの混合物の添加及び蒸発を3回繰り返した。得られたナトリウム塩(図4、(1))の白色粉体を氷冷DMF(2mL)に溶解した。N,N-ジスクシンイミジルカルボネート(281.8mg、1.1mmol)を加え、反応混合物を0℃にて1時間撹拌した。反応混合物をジクロロメタン(25mL)で希釈し、水で洗浄し(3×15mL)、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。無機塩を濾取し、溶媒を蒸発させて乾燥させ、溶離剤としてジクロロメタンを用いるカラムクロマトグラフィー(SilicaGel 60,Merck)により残留物を精製し、184mgの(2)を得た(収率60%)。
【0107】
ドキソルビシン(塩酸塩)(38.4mg、0.065mmol)、(2)(30mg、0.08mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(28μL、0.16mmol)及びDMF(1mL)の混合物を調製し、TLC(クロロホルム:メタノール:アンモニア=85:15:2)により反応の進行をモニターしながら室温で撹拌した(図4B)。40分後、反応を完了した。反応混合物をジクロロメタン(2mL)で希釈し、ヘキサン(50mL)で沈澱させた。得られた固相を遠心分離により溶媒から分離した。溶離剤としてクロロホルム、クロロホルム:メタノール98:2、95:5を用いるカラムクロマトグラフィー(SilicaGel 60、Merck)により生成物を分離した。WP936を含有する画分を一緒にしてプールし、蒸発させて乾燥させ、クロロホルム(1mL)に溶解し、ヘキサン(25mL)で沈澱させた。得られた固相を減圧下で乾燥させて、24mgのWP936を得た(収率60%)。WP936についての1H NMRスペクトルを得た。これは予定していた構造と一致していた。
【0108】
1H NMR (CDCl3,δ) ppm:14.0,13.25 (2s,1H ea,6,11-OH),8.04 (dd,1H,J = 7.6 Hz,J = 0.7 Hz,H-1),7.72 (dd,1H,J = J = 8.4 Hz,H-2),7.4 (d,1H,J = 8.1 Hz,H-3),6.67 (s,2H,CHマレイミド),5.82 (d,1H,J = 8.6 Hz,NH),5.50 (d,1H,J = 3.5 Hz,H-1'),5.38 (bs,1H,H-7),4.76 (s,2H,14-CH2),4.56 (s,1H,9-OH),4.16 (q,1H,J = 6.1 Hz,H-5'),4.08 (s,3H,OMe),3.63 (bs,1H,H-4),3.49 (t,2H,J = 7.1 Hz,CH2-リンカー),3.28 (dd,1H,J = 18.8 Hz,J = 1.8 Hz,H-10),3.24 (d,1H,J = 18.8 Hz,H-10),3.02 (m,1H,H-3'),2.34 (d,1H,J = 14.7 Hz,H-8),2.17 (dd,1H,J = 14.7 Hz,J = 4.1 Hz,H-8),2.12 (dd,2H,J = 7.2 Hz,J = 2.4 Hz,リンカーのCH2),1.83 (dd,1H,J = 12.7 Hz,J = 5.5 Hz,H-2'e),1.78 (ddd,1H,J = J = 12.7 Hz,J = 4.1 Hz,H-2'a),1.63-1.55 (m,4H,リンカーのCH2),1.29 (d,3H,J = 6.1 Hz,H-6'),1,30-1.25 (m,2H,リンカーのCH2)。
【0109】
分析元素 C37H40N2O14 x 2H2Oについて計算:C,57.51;H,5.74;N,3.63,実測:C,57.90;H,5.42;N,3.60。
【0110】
1.2.ELPの発現及び精製
ELP1及びELP2の遺伝子配列はChilkoti博士のご厚意により提供して頂いた。本研究で使用したTat-ELP-GFLG及び他の構築物は、前記のように作製した。全てのELP構築物は、高発現系を使用してE.coliで発現させ、逆転移サイクリング(inverse transition cycling)により精製した。簡潔には、pET 25b発現ベクター中にTat-ELP-GFLG構築物を含有するE.coli株BLR(DE3)をCircle Grow培地(Q-Biogene,Irvine,CA)中で24時間37℃にて増殖させた。超音波処理により細胞を溶解させ、核酸の沈澱後に、塩化ナトリウム濃度を上昇させ、ELPのTtを超えて温度を上昇させることにより、可溶性溶解物からTat-ELP-GFLGを沈澱させた。遠心分離によりタンパク質を採集し、SDS-PAGEゲル上の単一バンドによって評価されるような所望の純度が得られるまで、このプロセスを繰り返した。
【0111】
1.3.ELPとWP936との接合
ELP(ELP-GFLG又はTat-ELP-GFLG)の溶液を50mM Na2HPO4中100μMに希釈した。トリス-(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP;Molecular Probes,Eugene,OR)を10倍モル過剰に加えた。混合しながら最終濃度100μMまでWP936をゆっくりと加え、4℃にて一晩連続撹拌しながらインキュベートした。PBS中への3回の逆転移サイクル[25]により未反応の標識を除去した。単一システイン残基の標識効率を、UV-可視分光光度法([21]を改変)により評価した。代表的な標識 対 タンパク質モル比は0.83 ± 0.15であった。
【0112】
1.4.転移温度の特徴付け
温度を上昇させながら350nmでの吸光度をモニターすることによりこのタンパク質の温度誘導凝集を特徴付けた。Dox標識化ELPの最初の分析には、PBS中10μMのタンパク質を含有する溶液を、UV-可視分光光度計(Cary 100,Varian instruments)の温度制御マルチセルホルダー中で、1℃/分の一定速度で加温又は冷却した。実験条件下での相転移の濃度依存性を決定するために、細胞培養培地中1μM〜30μMの範囲の濃度のTat-ELP1-GFLG-Doxを用いて分析を繰り返した。吸光度データを各曲線の最大吸光のパーセンテージに変換した。Ttは、OD350が最大濁度の50%に達する温度として定義した。対数方程式を用いてTtの濃度依存性をフィットさせた。
【0113】
1.5.細胞培養及びポリペプチド処理
MES-SA子宮肉腫細胞(ATCC,Manassas,VA)は、75cm2組織培養フラスコ中で単層として増殖させ、3〜5日毎に継代した。MES-SA細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS)、100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン及び25μg/mlアンホテリシンB(Invitrogen,Carlsbad,CA)を補充したマコイ5A培地中で増殖させた。培養物を湿潤雰囲気+5%CO2中で37℃にて維持した。実験のために、0.05%v/vトリプシン-EDTA(Invitrogen)での短時間処理により、細胞を組織培養フラスコから取出し、6ウェルプレートに播種し(フローサイトメトリには300,000細胞/ウェル、増殖には25,000細胞/ウェル)、24時間増殖させた。細胞をポリペプチド含有培地で示された温度にて1時間処理し、リンスし、新鮮な培地に換えた。異なるタンパク質又は標識バッチ間での標識レベルの変動に起因する可変性を排除するために、細胞処理濃度は、常に、495nmの吸光ピークにより判断されるDox濃度に基づいた。
【0114】
1.6.ポリペプチド取り込み
20μMのTat-ELP1-GFLG-Dox、Tat-ELP2-GFLG-Dox又は上記のTat配列を欠くコントロールポリペプチドで細胞を処理した。二連のプレートを37℃及び42℃にて1時間処理した。細胞をPBSでリンスし、非酵素性の細胞脱離緩衝剤(Invitrogen)を用いて採取し、2分間遠心分離し、0.5mL PBS中に再懸濁した。ドキソルビシン標識化ポリペプチドの取り込みの合計は、固有Dox蛍光を用い、Cytomics FC 500フローサイトメータ(Beckman Coulter,Fullerton,CA)により測定した。前方散乱 対 側方散乱によるゲート開閉(forward versus side scatter gating)を使用して細胞残渣を分析から除き、FL3を用いてDox蛍光を測定した。各ヒストグラムは単峰性ピークであった(n = 5000細胞)。ピーク平均をプロピジウム標準ビーズに対して正規化した。
【0115】
1.7.レーザ走査共焦点蛍光顕微鏡観察
MES-SA細胞を22mm2カバーガラス上に約50%コンフルエンスで播種し、上記のようにTat-ELP-GFLG-Doxで処理した。細胞を示された時間にPBSでリンスし、パラホルムアルデヒド(PFA,2%v/v)で固定し、100×の油浸接眼レンズを備えたTCS SP2レーザ走査共焦点顕微鏡(Leica,Wetzlar,ドイツ)を用いて可視化した。画像収集の間、42℃で処理した細胞の撮像用PMT電圧を低くして画像の解像度及び強度を最大化した。したがって、37℃及び42℃で処理した細胞間の画像強度の差は、細胞中のポリペプチド量の実際の差を表さない。
【0116】
1.8.細胞傷害性アッセイ
細胞を播種し、Tat-ELP1-GFLG-Dox、Tat-ELP2-GFLG-Dox又はTat配列を欠くか若しくはDoxで標識していないコントロールポリペプチドで上記のように37℃及び42℃にて1時間処理した。細胞をリンスし、処理の72時間後にトリプシン処理によって採取し、遠心分離により採集し、等張性緩衝剤に再懸濁した。細胞数はCoulterカウンタを用いて決定し、未処理細胞のパーセンテイジとして表した。
【0117】
1.9.アポトーシスアッセイ
微分干渉コントラスト(DIC)顕微鏡観察のために、MES-SA細胞を22mm2カバーガラス上に50%コンフルエンスで播種した。細胞を示したタンパク質で上記のように処理し、PBSでリンスし、スライドグラスに載置した。直ぐに、40×の油浸対物レンズ及びCoolsnap HQカメラを備えたZeiss Axiovert 200 DIC顕微鏡を用いて未固定の細胞を撮像した。
【0118】
カスパーゼ活性化は、カルボキシフルオレセインFLICAポリカスパーゼアッセイ(Immunochemistry Technologies,Bloomington,MN)を用いて測定した。細胞を示したタンパク質で上記のように処理し、トリプシン処理により採集し、カルボキシフルオレセインFLICA試薬で製造業者により記載されるように37℃にて2時間染色した。細胞を2回リンスし、Cytomics FC 500フローメーター(n = 5,000細胞)を用いてフローサイトメトリによりカスパーゼ活性化について分析した。前方散乱 対 側方散乱によるゲート開閉を使用して細胞残渣を分析から排除した。フルオレセイン蛍光(チャネルFL1)のヒストグラムは、カスパーゼ陽性細胞及びカスパーゼ陰性細胞のピークを有する二峰性であった。カスパーゼ陽性細胞のパーセンテージは、ヒストグラムから決定し、3つの実験の平均として表した。
【0119】
1.10.データフィッティング及び統計学的分析
Microsoft Excelを用いてTtの濃度依存性に対数方程式をフィットさせた。50%阻害濃度(IC50)を決定するために、Microcal Originを用い規定どおりに指数方程式又はS字方程式を使用して用量-応答曲線にフィットさせた。熱標的指数は、各構築物について、37℃のIC50を42℃のIC50で除算することにより算出した。熱標的指数の有意性は、Microsoft Excelで、対応のあるスチューデントのt検定を用いて常温(normothermia)群を温熱群と比較することにより評価した。0.05未満のp値を統計学的に有意であると見なした。ポリペプチド取り込み及びカスパーゼ活性化は、一元ANOVA分析と、その後の処理群の2つ1組の比較(pair-wise comparison)についてのシェッフェ検定とを用いて、統計学的な差異について分析した。統計学的有意レベルはp < 0.05であった。
【0120】
第2部 実験結果
【0121】
2.1.Tat-ELP-GFLG及びWP936の設計、合成及び接合
ELP薬物送達ベクターは、ペンタペプチド反復XGVPGから構成され、温度が特性Ttを上回って上昇すると相転移を受けるように設計されている。2つの異なるELP反復を使用して、2つ型のDox送達ベクターを作製した。ELP1ベースの構築物は、ゲスト位置(guest position)が5:3:2の比のアミノ酸V、G及びAから構成される150ペンタペプチド反復を含有する(MW = 59.1kDa)。ELP1は、熱標的化ベクターとしての使用のために、生理学的温度の直ぐ上にTtを有するように設計した。第2のポリペプチドはELP2を含んで構築した。ELP2は160のXGVPG反復を含有し(MW = 61kDa)、ここで、Xは1:7:8の比のV,G及びAを表す。ELP2はELP1と類似する分子量を有するが、本研究で使用する穏やかな温熱の間に相転移を受けない。よって、ELP2は、温熱の効果の非熱応答性コントロールとして働く。Tat-ELP-GFLGは、Tat細胞透過性ペプチドを含み高分子構築物の細胞進入を可能にするように設計し、GFLGテトラペプチドリンカーを含ませてリソソームプロテアーゼによる細胞内薬物放出を可能にした。このベクターのC末端アミノ酸はシステインであり、このシステインは薬物接合のための化学反応性チオール基を提供する。WP936は、マレイミド部分をリンカーを介してC-3'位のアミノ基と接合することにより得られるチオール反応性Dox誘導体である(図4A及び4B)。WP936は、求核性付加により、システインのイオウに共有結合的に付着することができる。標識反応の結果、Dox:タンパク質の平均モル比は0.83 ± 0.15であった。C末端システインのイオウ原子に共有結合したWP936のアミノ酸配列及び化学構造を図4Cに示す。
【0122】
3.2.Dox送達ベクターの熱特性
ELPベースのポリペプチドを薬物送達に適用するために、適切な温度転移が達成されなければならない。薬物標識化ELPは、望まない全身性凝集を防止するに十分に正常体温を上回る温度範囲たる39℃〜42℃で相転移を受けるべきである。この温度範囲は、加温した腫瘍周囲の健常組織での浮腫及び壊死の発生を最小にするので、温熱の臨床適用に好ましい。エラスチン様ポリペプチドは、簡単な分子生物学技法を用いて分子量又はXGVPG配列中のゲスト残基Xのアミノ酸組成を変えることによりTtを容易に操作することができるので、熱標的化薬物キャリアとして理想的に適切である。Tat-ELP-GFLG-DoxのTtは、PBS中で加温しながらポリペプチドの10μM溶液の濁度をモニターすることにより評価した。Tat-ELP1-GFLGのTtは46℃であることが判った。しかし、このポリペプチドのDoxでの標識は、Ttの有意な低下を引き起こし(図5A)、その結果、Tat-ELP1-GFLG-Doxは薬物送達に理想的な相転移を有した(Tt = 40℃)。生理学的温度(37℃)でこのポリペプチドは可溶性であり、溶液は明澄であったが、温度が温熱温度(42℃)まで上昇すると、このポリペプチドは凝集し、溶液は最大濁度に接近した。Tat-ELP2-GFLG-Doxは、Tat-ELP1-GFLG-Doxと類似のサイズであるが異なるELP部分が組み込まれたポリペプチドである。Tat-ELP2-GFLG-Doxは、温熱温度(Tt = 65℃)を有意に上回る温度で凝集し、ELP相転移の効果を非特異的な温熱誘導効果と区別するためのコントロールとして働く。
【0123】
ELPの相転移は、ELPの濃度に逆比例し、他の共存する溶質の濃度によっても影響される。したがって、Tat-ELP1-GFLG-DoxのTtが37〜42℃の所望の温度範囲となる濃度範囲を試験するために、10%FBS含有細胞培養培地中の種々の濃度のTat-ELP1-GFLG-Doxを用いて濁度アッセイを繰り返した(図5B)。Ttを各曲線について決定し、Tt 対 ポリペプチド濃度のプロットにより、対数関数を使用してベストフィットさせた逆比例関係が明らかとなった(図5C)。この分析は、濃度10〜39μMについて、相転移の中間点が所望の温度範囲内にあることを示した。しかし、10μM未満の濃度については42℃で幾らかの凝集が生じることに留意しなければならない。したがって、幾分かの熱効果がこれら条件下で処理した細胞について観察され得る。Tat-ELP-GFLG-Doxの濃度は、熱標的に関して重要な特徴である。なぜなら、ELPキャリアの濃度が高すぎると、ELPキャリアは通常の生理学的温度で相転移を受けるからである。
【0124】
3.3.ELP送達ドキソルビシンの細胞取込み
MES-SA子宮肉腫細胞を本研究で使用して、ドキソルビシンのELP媒介細胞送達の効率を評価した。MES-SA細胞を20μMのTat-ELP-GFLG-Dox又はTat配列を欠くコントロールポリペプチドと37℃又は42℃のいずれかにて1時間インキュベートした。細胞表面に付着したポリペプチドの分解を防止するために非酵素性細胞脱離緩衝剤を用いて細胞を採取後、未固定の細胞をフローサイトメトリにより分析してDox蛍光を測定した。このアッセイは、細胞と会合したDox(Dox associated with the cell)(内在化したもの及び細胞膜に結合したものの両方)の総量についての情報を提供する。図6は、Tatペプチドの不在下で、低レベルのELPがいずれの温度でも細胞に会合することを示す。しかし、Tat-ELP1-GFLG-Doxの細胞会合及び取り込みは、細胞を37℃で処理したときのELP1-GFLG-Doxと比較して、3倍を超えて増大した(p < 0.05)。加えて、温熱は、Tat-ELP1-GFLG-Doxの会合及び取り込みを更に増強した。細胞蛍光は、MES-SA細胞をTat-ELP1-GFLG-Doxで37℃よりむしろ42℃にて処理したときに2倍を超えて増大した(p < 0.05)。非熱応答性コントロールポリペプチドであるTat-ELP2-GFLG-Doxのレベルは、温熱での処理により影響を受けなかった。このことは、Tat-ELP1-GFLG-Dox及び温熱を用いて観察された更なる細胞会合が、温熱の非特異的効果ではなく、ポリペプチドの相転移に起因するという仮説を支持する。
【0125】
3.4,細胞分布
Tat-ELP-GFLG-Doxが内在化され、細胞外部に単に付着しているのではないことを確証するため、ELP送達薬物の細胞分布を共焦点蛍光顕微鏡観察により検査した。MES-SA細胞を10μMのTat-ELP1-GFLG-Doxで37℃及び42℃にて1時間処理した。細胞をリンスし、固有Dox蛍光を用いて処理直後及び24時間後に分析した。細胞中心部を通る共焦点セクションを取ることにより、処理直後にTat-ELP1-GFLG-Doxは内在化され、薬物は形質膜及び核膜に蓄積し、細胞質では点状パターンであることが確証された(図7A、左上)。Tat-ELP1-GFLG-Dox処理を温熱と組み合せると、膜及び細胞質分布は依然として存在したが、タンパク質は大きな凝集体で存在し、細胞は、アポトーシスのホールマーク(丸まり(rounding)及び膜小胞形成を含む)を示し始めていた(図7A、左下)。処理の24時間後、ELP送達Doxは細胞の細胞質に依然として残留し、より散在性の分布を示した(図7A、右上)。温熱と組み合せたTat-ELP1-GFLG-Dox処理の24時間後に観察した細胞も、やはり、散在性の細胞質分布の大きなELP-薬物凝集体の蓄積及び広範なアポトーシスを示した(図7A、右下)。ELP送達ドキソルビシンとは対照的に、フリーの薬物は細胞核に専ら見出された(図7B、左パネル)。未処理細胞は、自己蛍光の画像への寄与を除外すると、用いた撮像設定ではシグナルを有していなかった(図7B、右パネル)。
【0126】
3.5.ELP送達Doxの細胞傷害性
Tat-ELP-GFLG-Doxの成長阻害活性をMES-SA子宮肉腫細胞株で評価した。MES-SA細胞を種々の濃度のTat-ELP-GFLG-Dox、ELP-GFLG-Dox(これはTat細胞透過性ペプチドを欠く)、Doxを有しないTat-ELP-GFLGポリペプチド又はフリーのDoxで37℃又は42℃にて1時間処理した。1時間の処理後、細胞をリンスし、新鮮な培地に換えて72時間おいた。72時間後に残っている細胞をリンスし、トリプシン処理により採集し、Coulterカウンタを用いて計数した。図8Aは、Tat-ELP1-GFLG-Doxが37℃で細胞傷害性であるが、高濃度を必要としたことを示す。しかし、Tat-ELP1-GFLG-Doxを温熱との組み合せで適用すると、細胞傷害性は大きく増強された。Tat-ELP2-GFLG-Doxもまた細胞傷害性であったが(図8B)、毒性は、温熱により影響されず、37℃のTat-ELP1-GFLG-Doxと同様であった。未標識Tat-ELP-GFLGタンパク質の毒性は、Ttより低い温度で処理したときには無視できた。しかし、Tat-ELP1-GFLGは、42℃で処理したとき、高濃度で幾らかの毒性を確かに示した。しかし、この非特異的毒性は、Dox標識タンパク質で観察された毒性レベルには近くなかった(図8C)。ELP1-GFLG Doxは、いずれの処理温度でも非常に乏しい効力を示した。このことは、Tatペプチドの不在下で細胞取込みが乏しいことと一致している(図8D)。フリーのDoxはポリマー送達薬物より細胞傷害性であった(図8E)。このことは、受動的な細胞進入を反映し、合成ポリマーに結合したDoxの他の研究と一致する。また、Dox毒性は温熱により影響を受けた。これは、細胞中への薬物の拡散の増強に起因する可能性が高い。
【0127】
Dox送達構築物の細胞傷害性効果の直接比較のために、各データセットに指数方程式又はS字方程式をフィットさせてIC50値を決定した。加えて、熱標的指数を、各ポリペプチドの37℃でのIC50を42℃でのIC50で除算することにより算出し、下記の表6に示した。
【表7】

【0128】
この計算により、温熱誘導相転移によるポリペプチド毒性の増強の分析が可能になる。フリーのDoxのIC50はTat-ELP-GFLG送達Doxより約150倍低かった。DoxのIC50は熱処理により増大したが、温度増強は僅か2.3倍であった(p = 0.02)。熱により凝集を誘導したとき特に、Doxを含有しないTat-ELP1-GFLGタンパク質による幾分かの毒性に気付いた。しかし、細胞殺傷レベルはTat-ELP1-GFLG-Doxより10倍弱かった。ELP1-GFLG-Dox(これは、熱応答性であるがTat細胞透過性ペプチドを欠く)は、僅かな熱効果を示したが、効力は、Tat-ELP1-GFLG-Doxより37℃で2倍高く、42℃で15倍高かった。事実、温熱条件下で、Tat-ELP1-GFLGはELP1-GFLG-Doxより毒性である。Tat-ELP1-GFLG-Doxは37℃で細胞傷害性であったが、有意な細胞殺傷を達成するためには比較的高濃度を必要とした。しかし、Tat-ELP1-GFLG-Dox処理を温熱と組み合せると、IC50は20倍減少した(p = 0.04)。温熱及びTat-ELP1-GFLG-Dox処理により誘導される細胞傷害性の20倍増強は、Tatペプチド及びDoxの毒性の組合せに起因する。Tat-ELP2-GFLG-DoxのIC50は温熱処理により影響を受けなかった。このことは、ELP1ベースの構築物で観察された毒性の熱増強が、ポリマーの凝集による増強した細胞送達に起因したことを示している。
【0129】
2.6.アポトーシスの誘導
上記のように、(特に温熱と組み合せた)Tat-ELP1-GFLG-Doxでの処理後の細胞形態で、アポトーシスのホールマークに気付いた。この効果は、カバーガラスに接着したMES-SA細胞を各構築物で処理し、DIC顕微鏡観察により撮像することによって実証された。細胞を上記のように1時間処理し、次いで直ぐにスライド上に載置し、固定しないで撮像した。図9Aは、各処理集団の代表的な画像を示す。未処理細胞はガラス上に広がり、形態学的特徴(例えば、核及びエンドサイトーシス性小胞)が容易に見えた。この形態は、細胞を単に温熱に曝露することによっては変化しなかった。細胞をTat-ELP1-GFLGで処理した場合、Ttより低い温度での処理では形態は変化せず、Ttを超える温度での処理により、当該集団の少数のみで、微かな丸まり及び僅かな小胞形成が生じた。ELP1-GFLG-Doxで処理した細胞は、幾らかのアポトーシスのホールマーク(丸まり及び膜小胞形成を含む)を示した。しかし、このような効果は僅かで、一部の細胞に限られた。Tat-ELP1-GFLG-Doxによる37℃での処理は、より広範な丸まり及び小胞形成を引き起こした。細胞をTat-ELP1-GFLG-Doxにより42℃で処理した場合、正常な細胞形態は完全に破壊された。検査した全ての細胞が丸まり、識別できる核がなく、染色体が断片化していた。Tat-ELP2-GFLG-Doxは、37℃でのTat-ELP1-GFLG-Doxと同様に、当該集団の一部で微量の小胞形成を誘導し、熱効果はなかった。フリーのDoxもまた顕著な丸まり及び膜小胞形成を引き起こしたが、42℃のTat-ELP1-GFLG-Dox程ではなかった。
【0130】
Tat-ELP1-GFLG-Doxがアポトーシスを誘導する機序を、カスパーゼ活性の決定により調べた。MES-SA細胞を上記のように処理し、1時間の曝露後に細胞を採取し、蛍光カスパーゼ阻害剤及びフローサイトメトリ分析を用いてカスパーゼ活性を検出した。蛍光 対 細胞数のヒストグラムにより2つのピークが明らかとなった。1つは、陽性カスパーゼ活性を有する細胞を含む明るい蛍光であり、1つは、カスパーゼ陰性細胞から構成されるより低い蛍光である(図9B)。各ピーク下の細胞数を定量し平均して、各処理条件下でカスパーゼが活性化された細胞集団のパーセンテージを決定した。温熱単独により、Tat-ELP1-GFLGにより又はELP-GFLG-Doxにより誘導されたカスパーゼ活性は、コントロールレベルと同様であった(図9C)。細胞を37℃で処理した場合、Tat-ELP1-GFLG-Doxは、コントロールレベルを僅かに上回るアポトーシスを誘導した。しかし、処理温度を42℃に上昇させると、Tat-ELP1-GFLG-Doxは、当該集団の有意により高い割合で、カスパーゼ活性化を誘導した。事実、カスパーゼ陽性細胞のパーセントは、細胞をTat-ELP1-GFLG-Doxで42℃にて処理した場合、37℃に対してほぼ4倍増強した(p < 0.05)。Tat-ELP2-GFLG-Doxによるアポトーシス誘導は、温熱により増強されなかった。このことは、Tat-ELP1-GFLG-Dox及び温熱で観察されたより高いレベルのアポトーシスが、ELP相転移の結果としてのポリペプチドの蓄積に起因したという仮説を支持する。フリーのDoxは、試験した条件下でアポトーシスを誘導したが(p < 0.05)、レベルは温熱により影響を受けなかった。
【0131】
本明細書で説明し、添付の特許請求の範囲に記載した本発明の原理及び範囲内で、上記の詳細、工程及び材料の種々の変更が当業者によりなされ得る。したがって、本発明は、最も現実的で好適な実施形態であると考えられる形態で本明細書に示され記載されているが、そのような形態からの逸脱を本発明の範囲内でなすことができると認識される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に開示された詳細に制限されず、等価な任意の全ての装置及び方法を包含するような全範囲が特許請求の範囲であると認められるべきである。
【0132】
他に示さない限り、量を表す全ての数、特に実験について記述するときの量は、全ての場合において用語「約」により修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、反対の表示がない限り、本明細書に記載の数値パラメータは、本発明により決定されるべき求める所望の特性に依存して変化し得る近似値である。
【0133】
本出願を通じて、特に下記に、種々の参考文献に言及する。全ての参考文献は、その全てが参照により本明細書中に組み込まれ、本発明の一部として見なされるべきである。
【0134】
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【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明の実施形態を示す。
【図2】本発明の化合物の実施形態を示す。
【図3】フリーのDOXで処理した細胞又はTat-ELP-GFLG-DOXで処理した細胞からの薬物流出を分析するために使用したフローサイトメトリの結果を示す。
【図4】6-マレイミドカプロン酸のN-スクシンイミジルエステルの合成(A)、ドキソルビシンのチオール反応性誘導体であるWP936の合成(B)、及びドキソルビシンキャリアポリペプチドの概略図(C)を示す。
【0152】
【図5】Dox送達構築物の熱特性を示す。
【図6】Dox標識ELPの細胞取込みを示す。
【図7】細胞内局在化を示す。
【図8】細胞増殖を示す。
【図9】ELP送達Doxによるアポトーシスの誘導を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ELP含有タンパク質と、これに結合したGFLGリンカーと、該リンカーに結合した治療薬剤とを含んでなる、標的化薬物送達システム。
【請求項2】
ELPが、配列XGVPG(式中、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)を含んでなる5アミノ酸反復である、請求項1に記載の標的化薬物送達システム。
【請求項3】
GFLGリンカーが、前記治療薬剤に結合したC末端システイン残基を含んでなる、請求項1に記載の標的化薬物送達システム。
【請求項4】
前記治療薬剤が化学療法剤である、請求項1に記載の標的化薬物送達システム。
【請求項5】
前記化学療法剤がドキソルビシンである、請求項4に記載の標的化薬物送達システム。
【請求項6】
前記化学療法剤がメトトレキサート、ビンブラスチン又はタキソールである、請求項4に記載の標的化薬物送達システム。
【請求項7】
他の非経口薬物送達システムと比較して、少なくとも0.5〜2倍、2〜5倍、5〜10倍、10〜15倍、15〜20倍、20〜30倍又は30〜40倍の治療薬剤を腫瘍に送達し得る、請求項1に記載の標的化薬物送達システム。
【請求項8】
他の非経口薬物送達システムと比較して、少なくとも2〜10%、10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%、50〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%又は90〜99%増加した量の前記治療薬剤に少なくとも2〜5時間、5〜10時間、10〜12時間、12〜24時間、24〜36時間、36〜48時間、3〜5日、5〜7日又は1〜3週間の期間にわたって腫瘍を曝露する、請求項1に記載の標的化薬物送達システム。
【請求項9】
前記腫瘍が、胸部腫瘍、肺腫瘍、結腸ガン又は黒色腫である、請求項7又は8に記載の標的化薬物送達システム。
【請求項10】
前記ELPと結合した細胞透過性ペプチド配列を含んでなる、請求項1に記載の標的化薬物送達システム。
【請求項11】
前記細胞透過性ペプチド配列がTatペプチドである、請求項10に記載の標的化薬物送達システム。
【請求項12】
前記細胞透過性ペプチドが、Antp、Tat、MTS、Bac-7、Trans、pVECから選択される、請求項10に記載の標的化薬物送達システム。
【請求項13】
Tat-ELP-GFLG-治療薬剤である、請求項1に記載の標的化薬物送達システム。
【請求項14】
前記薬剤がDoxである、請求項13に記載の標的化薬物送達システム。
【請求項15】
約39℃〜約42℃の相転移を有する、請求項1に記載の標的化薬物送達システム。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の標的化薬物送達体を投与する工程;及び
腫瘍部位に局所温熱を適用する工程
を含んでなる、腫瘍に治療薬剤を送達する方法。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の標的化薬物送達体を投与し;及び
腫瘍部位に局所温熱を適用する
ことを含んでなる、ガンを治療、予防又は管理する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−528984(P2009−528984A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552614(P2008−552614)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/061240
【国際公開番号】WO2007/090094
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(505123011)ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシシッピ・メディカル・センター (2)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF MISSISSIPPI MEDICAL CENTER
【Fターム(参考)】