説明

ドセタキセルおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、抗腫瘍併用療法

本発明は、修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびドセタキセルを、併用して使用することにより、がん細胞をドセタキセルに感作させること、および様々な腫瘍の成長を阻害することの方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん治療における治療効果の増強を達成するために、ドセタキセル(タキソテール(Taxotere)(登録商標))との併用において、真核生物翻訳開始因子4E(eIF-4E)を治療上の標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
eIF-4Eは、複数のヒトのがんにおいて上昇しており、そして疾患の進行と直接的に関連する。eIF-4E機能の上昇は、eIF-4Eを構成要素として含むeIF-4F翻訳開始複合体の集合の増強を誘発し、翻訳のためのeIF-4F活性の上昇に特別に依存するmRNAプールの発現を促進し、そして腫瘍細胞の成長、増殖、発生、生存、および血管新生を促進する。腫瘍の成長および発生におけるeIF-4Eの関与の観点において、このタンパク質は魅力的な治療標的である。
【0003】
PCT国際公開WO 2005/028628には、本明細書中で開示されるASOヲ含む、eIF-4Eを標的とするASOが開示され、およびin vitroおよびin vivoにおいてeIF-4Eの発現または過剰発現を調節するためのこれらのASOの使用方法が含まれる。
【0004】
Graffら(2007) J. Clin. Invest. 117:2638-48には、本明細書中で開示されるASOもまた含まれる、eIF-4Eを標的とする多数のASOに関する研究が開示される。
進行性、ホルモン抵抗性前立腺がんは、タキソテール(登録商標)によって最も頻繁に治療される(BradleyおよびHussain (2008) Cancer J. 14(1):5- 19)。乳がん(Metroら(2008) Anticancer Res. 28(2B):1245-58)、および非小細胞肺がん(Stinchcombeら (2008) Oncologist 13 (Suppl. l):28-36)を含む、その他のがんもまた、一般的にタキソテール(登録商標)によって治療される。
【0005】
がんの治療のために、改良された治療が必要である。eIF-4Eの遺伝子およびタンパク質の発現を選択的に減少させることが示された、本明細書中で開示される化学的に修飾されたeIF-4E ASOの、ドセタキセルとの併用使用は、3つの異なるヒト異種移植がんモデルにおいて、どちらかの薬剤単独によって達成される腫瘍容積の減少活性の合計と比較して、加算的な、または加算的より大きい腫瘍容積減少の効果を、様々にもたらす。ASOの化学修飾は、細胞内ヌクレアーゼによる分解に対する耐性を増加し、そしてeIF-4E mRNA標的との核酸二本鎖の安定性を上昇させる。ASOの高い標的選択性により、非標的が関与する、望ましくなくかつ有害な副作用は最小限になる。ドセタキセルおよびASOの両方は、全身に投与され、そして体全体に分布することができる。そのため、ASOおよびドセタキセルの組み合わせは、がん細胞における高い選択性をもつ強力かつ効果的な治療的併用である。さらに、本明細書中で開示される薬物併用は、静脈内投与に付随する高いバイオアベイラビリティ、in vivoにおける良好な代謝安定性、および簡便な投薬を可能にする薬物動態学的/薬力学的特性などの、その他の非常に望ましい薬理学的特性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO 2005/028628
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Graffら(2007) J. Clin. Invest. 117:2638-48
【非特許文献2】BradleyおよびHussain (2008) Cancer J. 14(1):5- 19
【非特許文献3】Metroら(2008) Anticancer Res. 28(2B):1245-58
【非特許文献4】Stinchcombeら (2008) Oncologist 13 (Suppl. l):28-36
【発明の概要】
【0008】
この様に、その様々な観点の中で、本発明は以下を提供する:
ドセタキセル、および薬学的に許容可能な塩の形態である修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドの治療的に有効な組み合わせを、肺がん、前立腺がん、または乳がんを治療することが必要である患者に投与することを含む、肺がん、前立腺がん、または乳がんを治療する方法。薬学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩であってもよい。本発明のこの観点における態様において、ドセタキセルは、修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与後に、治療的に有効である間隔内で投与される。さらなる態様において、治療的に有効な間隔は、約4日〜約21日の範囲内である。
【0009】
薬学的に許容可能な塩の形態である修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチド、および併用した際に肺がん、前立腺がん、または乳がんの治療に効果的である量のドセタキセルを、肺がん、前立腺がん、または乳がんを治療することが必要である患者に投与することを含む、肺がん、前立腺がん、または乳がんを治療する方法。薬学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩であってもよい。本発明のこの観点における態様において、ドセタキセルは、修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与後に、治療に効果的である間隔内で投与される。さらなる態様において、治療的に有効な間隔は、約4日〜約21日の範囲内である。
【0010】
薬学的に許容可能な塩の形態であるヌクレオチド配列からなるある量の修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチド、続いてある量のドセタキセルを、肺がん、前立腺がん、または乳がんを治療することが必要である患者に連続して投与することを含む、肺がん、前立腺がん、または乳がんを治療する方法であって、
ここで、前記修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび併用される前記ドセタキセルの前記量は、前記患者における肺がん、前立腺がん、または乳がんを治療するために効果的であり、そして
ここで前記ドセタキセルは、前記修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与後、治療的に有効な間隔内で投与される。薬学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩であってもよい。本発明のこの観点における態様において、治療的に有効な間隔は、約4日〜約21日の範囲内である。
【0011】
以下の工程:
薬学的に許容可能な塩の形態である、ドセタキセル感作量の修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドを、非小細胞肺がんを治療することが必要である患者に投与する工程、次に
治療的に有効な間隔内で効果的な量のドセタキセルを前記患者に投与する工程、
を含む、非小細胞肺がんを治療する方法であって、
ここで、前記量の合計は、修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチド単独、およびドセタキセル単独で投与することによって達成される、非小細胞肺がん腫瘍の容積減少のパーセントの合計と比較して、前記非小細胞肺がん腫瘍の容積の加算的なパーセントでの減少をもたらす。薬学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩であってもよい。本発明のこの観点における態様において、治療的に有効な間隔は、約4日〜約21日の範囲内である。
【0012】
以下の工程:
薬学的に許容可能な塩の形態である、ドセタキセル感作量の修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドを、前立腺がんを治療することが必要である患者に投与する工程、次に
治療的に有効な間隔内で効果的な量のドセタキセルを前記患者に投与する工程、
を含む、前立腺がんを治療する方法であって、
ここで、前記量の合計は、修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチド単独、およびドセタキセル単独で投与することによって達成される、前立腺がん腫瘍の容積減少のパーセントの合計と比較して、前記前立腺がん腫瘍の容積の加算的なパーセントでの減少をもたらす。薬学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩であってもよい。本発明のこの観点における態様において、治療的に有効な間隔は、約4日〜約21日の範囲内である。
【0013】
以下の工程:
薬学的に許容可能な塩の形態である、ドセタキセル感作量の修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドを、乳がんを治療することが必要である患者に投与する工程、次に
治療的に有効な間隔内で効果的な量のドセタキセルを前記患者に投与する工程、
を含む、乳がんを治療する方法であって、
ここで、前記量の合計は、修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチド単独、およびドセタキセル単独で投与することによって達成される、乳がん腫瘍の容積減少のパーセントの合計と比較して、乳がん腫瘍の容積の加算的よりも大きいパーセントでの減少をもたらす。薬学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩であってもよい。本発明のこの観点における態様において、治療的に有効な間隔は、約4日〜約21日の範囲内である。
【0014】
以下の工程:
非小細胞肺がん細胞、前立腺がん細胞、または乳がん細胞を、薬学的に許容可能な塩の形態である、ヌクレオチド配列からなる、修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドのドセタキセル感作量と接触させる工程、および
続いて、前記非小細胞肺がん細胞、前立腺がん細胞、または乳がん細胞を、効果的な間隔内で、効果的な量のドセタキセルと接触させる工程、
を含む、非小細胞肺がん細胞、前立腺がん細胞、または乳がん細胞を、ドセタキセルに感作させる方法。薬学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩であってもよい。本発明のこの観点における態様において、効果的な間隔は、約4日〜約21日の範囲内である。
【0015】
非小細胞肺がん細胞、前立腺がん細胞、または乳がん細胞を、以下のもの:
薬学的に許容可能な塩の形態である、ある量の修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチド、および
ある量のドセタキセル、
と接触させる工程を含む、非小細胞肺がん細胞、前立腺がん細胞、または乳がん細胞の成長または増殖を阻害する方法であって、
ここで、修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびドセタキセルの前記量は、併用において、非小細胞肺がん細胞、前立腺がん細胞、または乳がん細胞の成長または増殖を阻害するのに効果的である。薬学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩であってもよい。本発明のこの観点における態様において、非小細胞肺がん細胞、前立腺がん細胞、または乳がん細胞を、まず修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドと、そして続いてドセタキセルと、効果的な間隔内で接触させる。さらなる態様において、効果的な間隔は、約4日〜約21日の範囲内である。
【0016】
以下の工程:
非小細胞肺がん細胞または前立腺がん細胞を、薬学的に許容可能な塩の形態であり、ヌクレオチド6〜15が2’-デオキシヌクレオチド、各シトシン残基が5-メチルシトシンである、修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドのドセタキセル感作量と接触させる工程、続いて
非小細胞肺がん細胞または前立腺がん細胞を、効果的な間隔内で、効果的な量のドセタキセルと接触させる工程、
を含む、非小細胞肺がん細胞または前立腺がん細胞の、成長または増殖を阻害する方法であって、
ここで、前記量の合計は、修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチド単独、およびドセタキセル単独によって達成される、効果の合計と比較して、非小細胞肺がん細胞または前立腺がん細胞の成長または増殖を阻害する際に、加算的な効果を生じる。薬学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩であってもよい。本発明のこの観点における態様において、効果的な間隔は、約4日〜約21日の範囲内である。
【0017】
以下の工程:
乳がん細胞を、薬学的に許容可能な塩の形態である、修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドのドセタキセル感作量と接触させる工程、続いて
前記乳がん細胞を、効果的な間隔内で、効果的な量のドセタキセルと接触させる工程、
を含む、乳がん細胞の成長または増殖を阻害する方法であって、
ここで、前記量の合計は、修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチド単独、およびドセタキセル単独によって達成される、効果の合計と比較して、前記乳がん細胞の成長または増殖を阻害する際に、加算的より大きい効果を生じる。薬学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩であってもよい。本発明のこの観点における態様において、効果的な間隔は、約4日〜約21日の範囲内である。
【0018】
薬学的に許容可能な塩の形態である、修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチド、および、併用において肺腫瘍、前立腺腫瘍、または乳腫瘍の成長を阻害するために効果的な量のドセタキセルを、肺腫瘍、前立腺腫瘍、または乳腫瘍の成長を阻害することが必要である患者に投与することを含む、肺腫瘍、前立腺腫瘍、または乳腫瘍の成長を阻害する方法。薬学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩であってもよい。本発明のこの観点における態様において、ドセタキセルは修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与後、治療的に有効な間隔内で投与される。さらなる態様において、治療的に有効な間隔は、約4日〜約21日の範囲内である。
【0019】
以下の工程:
薬学的に許容可能な塩の形態である修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドのドセタキセル感作量を、非小細胞肺がん腫瘍または前立腺がん腫瘍の腫瘍容積の増加を阻害することが必要である患者に投与する工程、続いて
治療的に有効な間隔内で、効果的な量のドセタキセルを投与する工程、
を含む、非小細胞肺がん腫瘍または前立腺がん腫瘍の腫瘍容積の増加を阻害する方法であって、
ここで、前記量の合計は、修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチド単独、およびドセタキセル単独で投与することによって達成される、腫瘍容積増加における減少のパーセントの合計と比較して、非小細胞肺がん腫瘍または前立腺がん腫瘍の腫瘍容積増加を阻害する、加算的なパーセントの減少を生じる。薬学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩であってもよい。本発明のこの観点における態様において、治療的に有効な間隔は、約4日〜約21日の範囲内である。
【0020】
以下の工程:
薬学的に許容可能な塩の形態である修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドのドセタキセル感作量を、乳がん腫瘍の腫瘍容積の増加を阻害することが必要である患者に投与する工程、続いて
治療的に有効な間隔内で、効果的な量のドセタキセルを投与する工程、
を含む、乳がん腫瘍の腫瘍容積の増加を阻害する方法であって、
ここで、前記量の合計は、修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチド単独、およびドセタキセル単独で投与することによって達成される、腫瘍容積増加における減少のパーセントの合計と比較して、前記乳がん腫瘍の腫瘍容積増加を阻害する、加算的より大きいパーセントの減少を生じる。薬学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩であってもよい。本発明のこの観点における態様において、治療的に有効な間隔は、約4日〜約21日の範囲内である。
【0021】
(1)薬学的に許容可能な塩の形態であるヌクレオチド配列からなる修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチド、および(2)ドセタキセル、の治療的に有効な組み合わせを、肺がん、前立腺がん、または乳がんを治療することが必要である患者に投与することを含む、肺がん、前立腺がん、または乳がんの治療において、ドセタキセルの治療効果を増強する方法。薬学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩であってもよい。本発明のこの観点における態様において、ドセタキセルは修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与後、治療的に有効な間隔内で投与される。さらなる態様において、治療的に有効な間隔は、約4日〜約21日の範囲内である。
【0022】
医薬がドセタキセルと組み合わせて投与される、患者における非小細胞肺がん、前立腺がん、または乳がんの治療のための、併用療法における使用のための、前記医薬の製造における式I:
【0023】
【化1】

【0024】
の化合物、またはその他の薬学的に許容可能なその塩の使用。本発明のこの観点における態様において、式Iの化合物またはその他の薬学的に許容可能なその塩、およびドセタキセルは、治療的に有効な間隔内で、別々に投与される。さらなる態様において、ドセタキセルは、式Iの化合物またはその他の薬学的に許容可能なその塩の後に、治療的に有効な間隔内で投与される。さらなる態様において、治療的に有効な間隔は、約4日〜約21日の範囲内である。これらの使用のいずれかのさらなる態様において、併用療法は、非経口経路を介し、好ましくは静脈内投与を介し、より好ましくは速度の遅い注入を介する。これらの使用のいずれかのさらなる態様において、式Iの化合物またはその他の薬学的に許容可能なその塩、およびドセタキセルのそれぞれは、滅菌注射用溶液の形態である。
【0025】
非小細胞肺がん、前立腺がん、または乳がんの治療における、同時使用または別々の使用のための、併用される製剤としての、式I:
【0026】
【化2】

【0027】
の化合物、またはその他の薬学的に許容可能なその塩、およびドセタキセルを含む製品。本発明のこの観点における態様において、式Iの化合物またはその他の薬学的に許容可能なその塩、およびドセタキセルのそれぞれは、滅菌注射用溶液の形態である。
【0028】
表1〜表3は、マウスにおける、ヒト非小細胞肺がん、ホルモン抵抗性前立腺がん、および乳がんの異種移植の平均腫瘍容積に対する、eIF-4E ASOおよびドセタキセルの併用投与の効果を示す。データは、併用治療が、どちらかの薬剤単独による治療を介して達せられる減少のパーセントの合計と比較して、腫瘍型に依存する平均腫瘍容積における、加算的な、または加算的より大きいパーセントの減少をさまざまにもたらすことを示す(加算的:肺がんおよび前立腺がん;加算的より大きい:乳がん)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
がんにおける併用療法
がんの化学療法における臨床プロトコールは、一般に、単一治療薬よりもむしろ複数の薬物を使用する。各薬物単独で阻害効果を示す場合、併用効果は、拮抗作用、加算性、または相乗効果であってもよい。薬物の1つがそれ自身によっては効果をもたないが、その他の薬物の効果を上昇させる場合、その結果は増強作用と呼ばれる。相乗効果の予測は難しい。併用における各薬物は、それ自身の効果、すなわちそれ自身の効力、および特異的な形状の用量効果曲線を有する。これらの効果は、親和性および有効性にも関連する。フィードバック阻害、空間的、時間的、および微小環境的因子(pH、イオン強度、および温度など)などの因子は、薬物効果の生物学的複雑性(complexity and intricacy)を付加する。相乗効果の予測を複雑にするさらなる因子には、個々の薬物の吸収、透過性、輸送および代謝の、活性化および不活性化が含まれる。相乗効果が生じる可能性の仮説には、最終的には、実験的発見による確証が必要とされる(RideoutおよびChou (1991)、ChouおよびRideout編、Synergism and Antagonism in Chemotherapy、Academic Press, Inc.、New York、p6-21)。加算性の予測は同様に難しく、そして拮抗作用は、複数の薬剤を組み合わせて投与する場合は、常に可能性がある。
【0030】
Mizushimaら((1995) Anticancer Res. 15(l):37-43)は、細胞の化学感作のためにアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用する場合、研究者が注意しなければならないことを開示する。アンチセンスオリゴヌクレオチドによる前治療は、薬物の細胞毒性を増強するよりもむしろ、時には減少させる傾向を有する可能性がある。これは、細胞毒性薬と直接的に相互作用するオリゴヌクレオチドの能力などの、多数の非特異的なオリゴヌクレオチドの効果によって引き起こされる可能性がある(Blagosklonnyら (1994) Anticancer Drugs 5(4):437-442)。
【0031】
上述のすべての因子の観点において、がん細胞におけるeIF-4E ASOのドセタキセル感作効果、およびeIF-4E ASOおよびドセタキセルの併用によって達成される、がん細胞増殖および腫瘍成長の、加算的または加算的よりも大きい阻害効果の、本発明者による証明は、新規であり、驚くほど予想外であり、そして治療に有用である。
【0032】
定義
本明細書中で使用される場合、“eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチド”または“eIF-4E ASO”という用語は、最初はWO 2005/028628に記述され、そして化学名:d(P-チオ)([2'-O-(2-メトキシエチル)]m5rU - ([2'-O-(2-メトキシエチル)]rG -([2'-O-(2-メトキシエチル)] m5rU - ([2'-O-(2-メトキシエチル)] m5rC - ([2'-O-(2-メトキシエチル)] rA -T-A-T-T- m5C-m5C-T-G-G-A- ([2'-O-(2-メトキシエチル)] m5rU -([2'-O-(2-メトキシエチル)] m5rC -([2'-O-(2-メトキシエチル)] m5rC -([2'-O-(2-メトキシエチル)] m5rU -([2'-O-(2-メトキシエチル)] m5rU)によって知られるeIF-4E アンチセンスオリゴヌクレオチドを言い、これは薬学的に許容可能な塩、好ましくはアルカリ金属塩、より好ましくはリチウム、ナトリウム、またはカリウム塩、および最も好ましくはナトリウム塩の形態である。後者の化学構造は:
【0033】
【化3】

【0034】
である。
eIF-4E ASOは、PCT国際公開WO 2005/028628に記述される。
ドセタキセルは、タキソイドファミリーに属する抗腫瘍剤である。その化学名は、5β-20-エポキシ-l,2α,4,7β,10β,13α-ヘキサヒドロキシタクス-11-エン-9-オン4-アセテート2-ベンゾエート三水和物との(2R,3S)-N-カルボキシ-3-フェニルイソセリン、N-tert-ブチルエステル、13-エステルである。
【0035】
ドセタキセルの構造は:
【0036】
【化4】

【0037】
である。
ドセタキセルは、合成、製剤化、および、感受性腫瘍の治療のためにこの化合物を使用する方法を開示する、アメリカ合衆国特許番号4,814,470に記述される。The Physicians ' Desk Reference((2008)、Edition 62、Thomson Healthcare Inc.、Montvale、NJ、 pp. 2883-2895)は、ドセタキセルの治療への使用に関わるさらなる指針を提供し、例えば、デキサメタゾン、またはプレドニゾンなどの、コルチコステロイドの併用を含む。そこで開示される通り、ドセタキセルは、細胞内の微小管ネットワークを妨害し、有糸分裂および細胞増殖を阻害する。
【0038】
本明細書中で使用される場合、“患者”という用語は、eIF-4Eの発現または過剰発現に付随する、1つまたはそれ以上の障害に罹患した哺乳動物を言う。最も好ましい患者はヒトである。
【0039】
“治療すること”(または“治療する”あるいは“治療”)という用語は、さまざまながんを含む、eIF-4E活性に付随する障害の治療処置を言う。治療処置は、症候、障害、症状、または疾患の、進行または重症度を、遅らせること、妨げること、阻止すること、調節すること、停止すること、減少させること、または逆行させることに関与する過程を言うが、必ずしもすべての疾患関連症候、障害、または症状、または疾患そのものの完全な消失には関与しない。
【0040】
“阻害すること”とは、抑制すること、遅延させること、制限すること、減少させること、阻止すること、または防ぐことを意味する。
“ドセタキセルに感作させる”という表現、およびeIF-4E ASOに関連する同様のものは、ドセタキセルに応答するようにさせること、ドセタキセルの作用に反応しやすくさせること、またはドセタキセルによって容易にまたは簡便に影響を受けるようにさせることを意味する。いくつかの場合において、これはドセタキセルのある用量またはある量に対して、ASOの非存在下に生じるであろうものよりも、大きい反応を引き起こすことを意味することもできる。
【0041】
“ドセタキセル感作量”という用語は、がん細胞をドセタキセルに応答させるため、ドセタキセルの作用に反応しやすくさせるため、またはドセタキセルによって容易にまたは簡便に影響を受けるようにさせるため、あるいはドセタキセルの量または用量の作用に対して、eIF-4E ASOの非存在下で同量または同用量のドセタキセルに応答して生じるであろうものよりも大きい、がん細胞の応答を引き起こすために、効果的である、eIF-4E ASOの量または用量を言う。
【0042】
治療的文脈において、ドセタキセル感作量を含む、治療的に有効な量のeIF-4E ASOは、ヒトにおいて約100 mg〜約1,200 mgの範囲内である。有効性および忍容性の観点から好ましい用量は、単回用量または単回投与当たり、約1,000 mg〜約1,200 mgであり、非経口で、好ましくは静脈内に、より好ましくは1〜3時間かけて速度の遅い静脈内注入を介して、投与される。
【0043】
“有効量のドセタキセル”とは、eIF-4E ASOと組み合わせて使用される場合に、特定のがん細胞の成長阻害効果または増殖阻害効果、腫瘍成長阻害効果、腫瘍容積増加阻害効果、またはがん細胞または腫瘍におけるがん治療効果をもたらす、ドセタキセルの量または用量を言う。
【0044】
治療的に有効な量のドセタキセルは、単回用量または単回投与当たり、約60 mg/m2〜約100 mg/m2、好ましくは約75 mg/m2〜約100 mg/m2の範囲内であり、非経口で、好ましくは静脈内に、より好ましくは、週に1度、または3週間ごとに、1時間かけて速度の遅い静脈内注入を介して投与される。75 mg/m2の用量が好ましい。
【0045】
一般に、これらの治療剤のそれぞれの最適用量は、個々の患者における活性成分の相対的効力に依存して変化することができる。開業医は、体液中または組織中の活性成分の測定された滞留時間および濃度、および/または特定のがんについて関連する疾患関連バイオマーカーのモニタリングに基づいて、用量および投与の繰り返し回数を決定することができる。
【0046】
eIF-4E ASOおよびドセタキセルの併用使用を介して達成される、本明細書中で開示される、加算的、および加算的より大きい治療効果の観点において、ドセタキセルが単独で使用された場合のものと比較して、潜在的に有効量のドセタキセルは、本明細書中で開示される併用療法の方法において、治療に効果的であるだろうことが期待される。あらゆる個々の患者について、併用で使用される場合、eIF-4E ASOおよびドセタキセルの治療に有効な量は、関連がんバイオマーカーに対する併用の効果をモニタリングすることにより、医療サービス提供者によって決定されることができる。肺がんの場合、関連バイオマーカーは、胸部X線、コンピュータ断層撮影(CT)、低線量らせんCT評価、核磁気共鳴画像法(MRI)、ガリウムスキャン(シンチグラフィー)、またはポジトロン断層撮影(PET)スキャンによって、評価することができる。前立腺がんについては、前立腺特異抗原(PSA)をモニタリングすることができる。乳がんについては、モニタリングは、マンモグラフィー、デジタルマンモグラフィー、超音波検査、サーモグラフィー、光走査、MRIによって、または血液中の癌胎児性抗原(CEA)またはMUC1レベルを測定することによって、行うことができる。これらの方法によって得られるデータの解析により、治療中の治療計画の修正が可能になり、その結果、併用療法においてeIF-4E ASOおよびドセタキセルの最適量が投与され、そして同様に治療の期間を決定することができる。このような方法で、投与/治療計画は、治療の経過に従って修正することができ、その結果、満足できる治療効果を示す併用で使用されるeIF-4E ASOおよびドセタキセルの最も低い量が投与され、そしてこれらの化合物の投与は、患者の治療を成功させるために必要な限られた期間のみ、継続される。
【0047】
“効果的な間隔”という用語は、がん細胞とeIF-4E ASOの接触で始まる期間であり、そして、細胞が、ASOおよびドセタキセルの併用による、抗有糸分裂効果、および細胞の成長阻害および増殖阻害効果に応答する期間である。この効果は、がん細胞または腫瘍において:(a)がん細胞のドセタキセルの効果への感作;(b)がん細胞の成長または増殖の阻害;(c)腫瘍成長の阻害;(d)腫瘍容積の増加の阻害;または(d)治療上、増強されるがん治療効果、によって明らかにすることができる。本明細書中で開示される、非小細胞肺がん、前立腺がん、および乳がんの腫瘍異種移植の場合、効果的な間隔は、初めは8日間である。
【0048】
本明細書中で開示される治療的に有効なeIF-4E ASO/ドセタキセル併用療法は、eIF-4E ASOおよびドセタキセルの別々の投与によって達成することができる。ASOを初めに投与し、続いて治療的に有効な間隔内で、ドセタキセルを投与することができる。別々に投与される場合、eIF-4E ASOおよびドセタキセルは、2つの投与間の時間が治療的に有効な間隔内に入る範囲で、異なる日程で患者に導入することができる。“治療的に有効な間隔”とは、患者へのeIF-4E ASOの投与後の期間であり、それは、腫瘍が、ASOおよびドセタキセルの併用による有益な抗腫瘍治療効果に応答する期間である。例えば、患者の治療の開始における治療的に有効な最初の間隔は、eIF-4E ASOの3回の負荷用量の投与を含む、ドセタキセル前治療期間を含むことができ、すなわち、第一週は1日当たり1回、1〜3時間、3日連続でeIF-4E ASOを注入し、次にさらなる2週間、少なくとも週1回、維持用量のASOを投与する。この様式でeIF-4E ASOの投与の21日後、次にドセタキセルを投与することができる。つまり、治療的に有効な最初の間隔は、eIF-4E ASOの治療開始から21日であることがき、それには、第一週の間の3回の負荷用量、その後、2回の週1回の維持用量が含まれる。この投与計画は、腫瘍細胞を、ドセタキセルによってもたらされる抗有糸分裂、抗増殖作用(insult)に感作させる。21日目にeIF-4E ASOとともにドセタキセルを投与する場合、患者に、初めにeIF-4E ASOを1〜3時間かけて静脈内投与し、続いて、eIF-4E ASO注入の終了後、30〜60分以内にドセタキセルを投与する。ドセタキセルは、1時間の静脈内注入を介して、簡便に投与される。最初の21日の治療の後、この投与計画は、治療の経過にわたって21日毎に繰り返すことができ、さらなる維持用量を使用するが、さらなる負荷用量は使用しない。つまり、最初の21日の治療的に有効な間隔の後、続く治療的に有効な間隔は、同じ日のeIF-4E ASO/ドセタキセル併用の投与後、21日であってもよい。本明細書中で開示される、併用治療の方法において効果的なeIF-4E ASOおよびドセタキセルの量の場合のように、eIF-4E ASOおよびドセタキセルによる治療を受けているいずれかの個々の患者のための、治療的に有効な間隔は、そのがんに適切であるバイオマーカーをモニタリングすることによって決定することができる。上述の通り、非小細胞肺がん、前立腺がん、および乳がんのモニタリングに有用である、様々な異なるバイオマーカーが、この目的において使用可能である。治療的に有効な最初の間隔、および治療的に有効なそれに続く間隔の両方に関連して、上記で議論された21日の間隔は、典型的な開始工程を示し、それは柔軟性があり、そして修正の対象となることは、注意されるべきである。これらの間隔は、さらに最適化することができ、そしてより短く、またはより長くすることができ、その効果は、上述のように関連バイオマーカーの使用を介してモニタリングすることができる。
【0049】
別の態様において、eIF-4E ASOおよびドセタキセルを用いる治療は、eIF-4E ASOの3回の負荷用量の投与を含む、ドセタキセル前治療期間を含むことができる、すなわち、第一週は1日当たり1回、1〜3時間、3日連続でeIF-4E ASOを注入し、次に、第二週は上述のようにeIF-4E ASOおよびドセタキセルの両方を投与する。つまり、この場合の治療的に有効な間隔は、約4〜7日である。これに続いて、次の連続する2週間のそれぞれの間は、eIF-4E ASOのみを投与し、続いてその次の週に、ASOおよびドセタキセルを再び投与することができる。つまり、治療が続く限り、eIF-4E ASOおよびドセタキセルの両方を投与する第二週の治療の後、毎週のeIF-4E ASOの投与と組み合わせて、ドセタキセルは約14日ごとに投与することができる。
【0050】
このように、ドセタキセルをeIF-4E ASOの投与後に投与することができる、様々な間隔を含む上述の異なる投与計画の観点において、特定の態様において、治療的に有効な間隔には、eIF-4E ASO単独投与後、約4日〜約21日、約4日〜約7日、約14日、および約21日が含まれる。in vivoにおける本方法において、eIF-4E ASOおよびドセタキセルが使用される場合、効果的な間隔は、eIF-4E ASO単独投与後、約4日〜約21日、約4日〜約7日、約14日、および約21日であってもよい。
【0051】
eIF-4E ASOは、薬学的に許容可能な塩、好ましくはアルカリ金属塩、より好ましくはリチウム、ナトリウム、またはカリウム塩、最も好ましくはナトリウム塩の形態において、使用される。このような塩、およびそれらを調製するための一般的な方法論は、当技術分野においてよく知られている。例えば、P. Stahlら、(2002) Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties, Selection and Use、VCHA/Wiley-VCH;Bergeら(1977) "Pharmaceutical Salts," Journal of Pharmaceutical Sciences 66 (1):1 - 19を参照のこと。ドセタキセルは塩ではない三水和物である。
【0052】
本発明の化合物は、様々な経路によって投与される、ヒトまたは獣医学における薬剤として使用することができる。最も好ましくは、前記組成物は、非経口投与、特に速度の遅い注入による静脈内投与用である。速度の遅い静脈内注入による、これらの化合物の溶液、特に、滅菌注射用非発熱性溶液、の投与が、最も好ましい。前記医薬組成物は、当技術分野においてよく知られる方法によって調製することができ(Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 19th ed. (1995)、A. Gennaroら、Mack Publishing Co.参照)、そして本発明の化合物、および薬学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤を含むことができる。
【実施例】
【0053】
以下の限定的ではない実施例は、本発明を説明する。
実施例1 eIF-4E ASOおよびドセタキセルの併用使用による、マウス異種移植における、肺腫瘍、前立腺腫瘍、および乳腫瘍の容積の減少
eIF-4E ASOがドセタキセルの活性を補足または増強するかを決定するため、ヒト異種移植がんモデルにおける腫瘍容積に対する、eIF-4E ASOおよびドセタキセルの併用使用の効果を以下のように研究する。
【0054】
異種移植研究は、Graffら、(2005) Cancer Res. 65:7462-7469に記述されるように、実行される。非小細胞肺がん(細胞株A549;ATCC、アクセッション番号CCL-185)、ホルモン抵抗性前立腺がん(細胞株PC-3;ATCC、アクセッション番号CRL-1435)、およびER-/PR-HER2乳がん(細胞株MDA-231;ATCC、アクセッション番号HTB-26)を示す、500万個のヒトがん細胞を、1:1の無血清成長培地およびマトリゲル(Becton Dickinson、Bedford、MA、カタログ# 354234)の混合液中、6〜8週齢の無胸腺ヌードマウス(Harlan、Indianapolis、IN)の側腹部に皮下注射する。触知可能な腫瘍について毎日マウスをモニタリングする。
【0055】
腫瘍容積が約50〜100 mm3に達する場合、マウスを治療群に無作為抽出する(Graffら(2007) J. Clin. Invest. 117:2638-48)。腫瘍を計測するたびに体重をモニタリングする。
【0056】
治療について、すべてのマウスに、生理食塩水中eIF-4E ASO、総容量200μlを静脈内注射する。ASOはヌクレオチド配列5' -TGTCATATTCCTGGATCCTT-3 '(SEQ ID NO: 1)からなり、各ヌクレオシド間結合はホスホロチオエート結合であり、5’末端から3’末端に1〜5番目および16〜20番目のヌクレオチドのそれぞれは、2'-O-(2-メトキシエチル)糖を含み、6〜15番目のヌクレオチドは2’-デオキシヌクレオチドであり、各シトシン残基は5-メチルシトシンであり、そして、それはナトリウム塩の形態である。マウスに、まず初回負荷用量50 mg/kgのASOを3日間連続で、続いてその後50 mg/kgを週3回、注射する。
【0057】
タキソテール(登録商標)(ドセタキセル)投与は、eIF-4Eタンパク質発現が減少する時間を考慮に入れ、初めのASO投与の8日後に始める。マウスに、5%ブドウ糖液中、1%エタノール中、2.5または10 mg/kgのタキソテール(登録商標)(Sanofi-Aventis)を、200μlの容量で、週1回、3週間、腹腔内投与(IP)する。
【0058】
すべての動物作業は、Institutional Animal Care and Use Committeeの承認のもと、AALAC認定施設内で行われる。
腫瘍容積は、キャリパーを用いて最大(L)および最小(W)直径を測定して計算する。式は:容積=L×W2×0.534である。腫瘍容積データを対数尺度に変換し、時間および治療群にわたる分散を均一にする。対数の容積データを、空間指数共分散構造(spatial power covariance structure)を使用するSAS PROC MIXEDソフトウェア(SAS Institute Inc、Cary、N.C.)を使用して、時間および治療による二元反復測定分散分析を用いて分析する。各時点および全体において、治療群を対照群と比較する。各治療群について時間に対する平均および標準誤差としてデータをプロットすることができる。加算性は2つの方法:(1)反復測定分析における、ASOおよびタキソテール(登録商標)の間の全体の相互作用効果として、および(2)研究の最終日においてBliss Independence法を使用すること(C.I. Bliss (1939) Ann. Appl. Biol. 26:585-615)、によって評価される。これらの2つの方法は、同じ結果を生じる。
【0059】
結果は以下の表1〜表3に示される。様々な治療の結果得られる各研究の終わりに、観測される平均腫瘍容積減少のパーセントは、表4に示される。これらは以下のように計算される:
(ビヒクル対照平均腫瘍容積―治療平均腫瘍容積)/ビヒクル対照平均腫瘍容積×100
表4に示される平均腫瘍容積における、“加算的である場合に予測される”減少のパーセントは、加算性のBliss Independence定義を使用して以下のように計算される:
ASO平均腫瘍容積×ドセタキセル平均腫瘍容積/ビヒクル対照平均腫瘍容積。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
表1〜表3のデータは、eIF-4E ASOおよびドセタキセルの併用による治療群が、最も十分な、統計的に有意な(*ビヒクル対照に対してp < 0.05)腫瘍成長の減少を示す。非小細胞肺がん(A549)、ホルモン抵抗性前立腺がん(PC-3)、およびER-/PR-/HER2-乳がん(MDA-231)を示す3つの異なるヒト腫瘍異種移植において、eIF-4E ASOおよびドセタキセルの併用は、各薬剤単独によりもたらされる減少と比較して、腫瘍成長の十分な減少を生じる。
【0065】
各研究の終わりまでの腫瘍容積における減少のパーセントに関して、表4に示す通り、ドセタキセルと併用してeIF-4E ASOを用いる治療は、前立腺がんおよび非小細胞肺がん腫瘍モデルにおいて、加算的な効果をもたらす。これらの場合のそれぞれにおいて、併用によりもたらされる治療効果は、加算的よりも良好である、すなわち、-56.1%は-41.7%よりも良好であり、そして、-83.3%は-72.6%より良好であるが、加算的よりも統計的に有意に良好ではない。
【0066】
乳がんモデルにおいて、ASO単独による治療は、平均腫瘍容積の平均腫瘍容積における統計的に有意ではない増加をもたらし、一方、ASOおよびドセタキセルの併用による治療は、平均腫瘍容積において、有意に加算的より大きい減少を生じる。星印は、-45.5%が0%(ビヒクル対照)と統計的に差があることを示し、一方、ナンバー記号(#)は、-45.5%が+15%(加算的の場合予測される)と統計的に差があることを示しており、乳がん細胞株においては、統計的に有意な相乗効果があることが示される。
【0067】
すべての場合において、eIF-4E ASOによる治療は、腫瘍細胞をドセタキセルの抗有糸分裂作用、成長阻害作用、および増殖阻害作用に感作する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドセタキセル、および薬学的に許容可能な塩の形態である修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドの、治療的に有効な組み合わせを、肺がん、前立腺がん、または乳がんを治療することが必要である患者に投与することを含む、肺がん、前立腺がん、または乳がんを治療する方法。
【請求項2】
前記ドセタキセルが、前記修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与後、治療的に有効な間隔内で投与される、請求項1の方法。
【請求項3】
前記治療的に有効な間隔が、約4日〜約21日の範囲内である、請求項2の方法。
【請求項4】
併用に際して肺がん、前立腺がん、または乳がんの治療に効果的である量の、薬学的に許容可能な塩の形態である修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチド、およびドセタキセルを、肺がん、前立腺がん、または乳がんを治療することが必要である患者に投与することを含む、肺がん、前立腺がん、または乳がんを治療する方法。
【請求項5】
前記ドセタキセルが、前記修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与後、治療的に有効な間隔内で投与される、請求項4の方法。
【請求項6】
前記治療的に有効な間隔が、約4日〜約21日の範囲内である、請求項5の方法。
【請求項7】
薬学的に許容可能な塩の形態である、ある量の修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチド、続いてある量のドセタキセルを、肺がん、前立腺がん、または乳がんを治療することが必要である患者に連続的に投与することを含む、肺がん、前立腺がん、または乳がんを治療する方法であって、
ここで、修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびドセタキセルの併用における前記量は、患者の肺がん、前立腺がん、または乳がんの治療において効果的であり、そして
ここで、前記ドセタキセルは、修飾eIF-4Eアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与後、治療的に有効な間隔内で、投与される、
前記肺がん、前立腺がん、または乳がんを治療する方法。
【請求項8】
治療的に有効な間隔が、約4日〜約21日の範囲内である、請求項7の方法。
【請求項9】
医薬がドセタキセルと組み合わせて投与される、患者における、非小細胞肺がん、前立腺がん、または乳がんの治療のための、併用療法における使用のための前記医薬の製造における、式I:
【化5】

の化合物、またはその他の薬学的に許容可能なその塩の使用。
【請求項10】
前記式Iの化合物、またはその他の薬学的に許容可能なその塩、およびドセタキセルが、治療的に有効な間隔内で別々に投与される、請求項9に従う使用。
【請求項11】
ドセタキセルが、前記式Iの化合物、またはその他の薬学的に許容可能なその塩の後に、治療的に有効な間隔内で投与される、請求項10に従う使用。
【請求項12】
治療的に有効な間隔が、約4日〜約21日の範囲内である、請求項11に従う使用。
【請求項13】
併用療法が非経口経路を介する、請求項9〜請求項12のいずれか1つに従う使用。
【請求項14】
前記非経口経路が、静脈内投与を介する、請求項13に従う使用。
【請求項15】
前記静脈内投与が、速度の遅い注入を介する、請求項14に従う使用。
【請求項16】
前記式Iの化合物、またはその他の薬学的に許容可能なその塩のそれぞれ、およびドセタキセルが、滅菌注射用溶液の形態である、請求項13〜請求項15のいずれか1つに従う使用。
【請求項17】
非小細胞肺がん、前立腺がん、または乳がんの治療における、同時使用または別々の使用のための、併用される製剤としての、式I:
【化6】

の化合物、またはその他の薬学的に許容可能なその塩、および、ドセタキセルを含む、製品。
【請求項18】
前記式Iの化合物またはその他の薬学的に許容可能なその塩、および前記ドセタキセルのそれぞれが、滅菌注射用溶液の形態である、請求項17に従う製品。

【公表番号】特表2012−509878(P2012−509878A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537545(P2011−537545)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/064694
【国際公開番号】WO2010/059589
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(595104323)アイシス ファーマシューティカルズ, インコーポレーテッド (53)
【Fターム(参考)】