説明

ドップラーソーダーシステム

【課題】実用上十分な計測精度を備えたドップラーソーダーシステムを提供する。
【解決手段】音波を大気中に放射し、大気中に存在する密度の揺らぎの領域から反射された反射波を受信してこの反射波に含まれる周波数成分のドップラーシフト量から所望の高度の風速を検出するドップラーソーダーにおいて、音波を大気中に放射する送波器と、上記送波器により該大気中に放射された音波の反射波を受信する受波器とを有し、上記送波器は、音波として連続正弦波を大気中に放射するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドップラーソーダーシステムに関し、さらに詳細には、大気中に音波を放射し、その反射信号を受信して周波数のドップラーシフト量から上空の風速を測定する際に用いるドップラーソーダーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上空における風速を計測するためのシステムとして、ドップラーソーダーシステムが知られている。
【0003】
ところで、現在実用化されているドップラーソーダーシステムは、大気中に放射する音波としてパルス波を用いているが、観測対象が空気の移動、変動であるため反射波のレベルが非常に小さいためS/N比も悪く、位置の分解能を向上させるためにパルス幅を狭くすれば、S/N比だけではなくドップラーシフト周波数の分解能も低下するということが指摘されていた。
【0004】
このため、従来のドップラーソーダーシステムによれば、実用上十分な計測精度を備えたシステムを構築することが困難であるという問題点があった。
【0005】

なお、本願出願人が特許出願時に知っている先行技術は、上記において説明したようなものであって文献公知発明に係る発明ではないため、記載すべき先行技術情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の技術の有する上記したような種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、実用上十分な計測精度を備えたドップラーソーダーシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によるドップラーソーダーシステムは、音波を大気中に放射し、大気中に存在する密度の揺らぎの領域から反射された反射波を受信してこの反射波に含まれる周波数成分のドップラーシフト量から所望の高度の風速を検出するドップラーソーダーにおいて、測定時に放射される音波が連続正弦波であるようにしたものである。
【0008】
また、本発明によるドップラーソーダーシステムは、送波器から放射される音波を連続正弦波とパルス波に切り替える機能を備えるようにしたものである。
【0009】
また、本発明によるドップラーソーダーシステムは、送波器および受波器の指向性の主軸を操向する機能を備えるようにしたものである。
【0010】
また、本発明によるドップラーソーダーシステムは、送波器および受波器を移動させる機能または/および向きを変える機構を有し、それらを制御する機能を有するようにしたものである。
【0011】
また、本発明によるドップラーソーダーシステムは、発信音波の周波数を制御する機能を有するようにしたものである。
【0012】
また、本発明によるドップラーソーダーシステムは、発信音波の音圧を制御する機能を有するようにしたものである。
【0013】

即ち、本発明のうち請求項1に記載の発明は、音波を大気中に放射する送波器と、上記送波器により該大気中に放射された音波の反射波を受信する受波器とを有し、上記受波器が受信した反射波に含まれる周波数成分のドップラーシフト量から風速を測定するドップラーソーダーシステムにおいて、上記送波器は、音波として連続正弦波を大気中に放射するようにしたものである。
【0014】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、本発明のうち請求項1に記載の発明において、上記送波器は、音波としてパルス波を大気中に放射可能であり、上記送波器は、大気中に放射する音波として連続正弦波とパルス波とを切り換えるようにしたものである。
【0015】
また、本発明のうち請求項3に記載の発明は、本発明のうち請求項1または2のいずれか1項に記載の発明において、上記送波器は、指向性の主軸を操向する手段を備え、上記受波器は、指向性の主軸を操向する手段を備えるようにしたものである。
【0016】
また、本発明のうち請求項4に記載の発明は、本発明のうち請求項1、2または3のいずれか1項に記載の発明において、さらに、上記送波器を移動する手段と上記送波器の向きを変える手段との少なくともいずれか一方を備え、上記受波器を移動する手段と上記受波器の向きを変える手段との少なくともいずれか一方を備えるようにしたものである。
【0017】
また、本発明のうち請求項5に記載の発明は、本発明のうち請求項1、2、3または4のいずれか1項に記載の発明において、上記送波器は、放射する音波の周波数を制御する手段を有するようにしたものである。
【0018】
また、本発明のうち請求項6に記載の発明は、本発明のうち請求項1、2、3、4または5のいずれか1項に記載の発明において、上記送波器は、放射する音波の音圧を制御する手段を有するようにしたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上説明したように構成されているので、実用上十分な計測精度を備えたドップラーソーダーシステムを実現することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるドップラーソーダーシステムの実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0021】

まず、図1には、本発明によるドップラーソーダーシステムの実施の形態の一例の概念構成説明図が示されている。
【0022】
このドップラーソーダーシステム10は、大気中に音波として連続正弦波を放射する送波手段12と、送波手段12により大気中に放射された連続正弦波の反射波を受信する受波手段14と、受波手段14が受信した反射波に含まれる周波数成分のドップラーシフト量から風速を測定する受波信号解析手段16とを有して構成されている。
【0023】
そして、送波手段12と受波手段14とは、それぞれ鋭い指向性を有するように構成されている。
【0024】
即ち、ドップラーソーダーシステム10は、大気中に放射する音波として連続正弦波を用いるとともに、送波手段12および受波手段14が鋭い指向性をもつように構成し、その指向性の交点にあたる点の流れによるドップラーシフト量を検出することにより、流速を計測するようにしたものである。
【0025】
なお、送波手段12は、例えば、送波器として機能する音源を用いて構築することができ、また、受波手段14は、例えば、受波器として機能するマイクを用いて構築することができ、また、受波信号解析手段16は、例えば、コンピューターを用いて構築することができる。
【0026】

ここで、風の速度をvとして、図2(a)(b)を参照しながら風速の導出について説明することとする。なお、図2(a)(b)において「Observation point」とは観測対象点を示し、他の図においても同様である。
【0027】
送波手段12としての送波器(Transmitter)Tと受波手段14としての受波器(Receiver)Rとを図2(a)に示すように配置し、送波器Tから周波数fなる超音波を放射するものとする。
【0028】
この際に、超音波は速度vで移動する微粒子に散乱反射するが、微粒子は
【数1】

【0029】
なる速度で送波器Tに近づき、同時に
【数2】

【0030】
なる速度で受波器Rへも近づくから、ドップラー現象により受波器Rの受音する周波数fは式(1)となる。
【数3】

【0031】
なお、式(3)において、cは静止した媒質中の音速である。
【0032】
上記は2次元空間で考えた場合であり、後述する本願発明者により実施された実験においては、送波器Tをθなる角度で傾けて超音波を放射した(図2(b)参照)。
【0033】
従って、微粒子は
【数4】

【0034】
なる速度で送波器Tと受波器Rとに近づく。
【0035】
即ち、式(1)は、
【数5】

【0036】
となる。
【0037】
ただし、
【数6】

【0038】
である。
【0039】
次に、f−fをドップラーシフトΔfといい、式(2)は式(3)のようにあらわせる。
【数7】

【0040】
式(3)より風速を求めると、
【数8】

【0041】
となる。
【0042】

次に、本願発明者により実施された実験ならびにその結果について説明するが、図3には、本願発明者により実施された実験に用いた実験装置の概念構成説明図が示されている。
【0043】
即ち、本発明によるドップラーソーダーシステム10を構成する実験装置においては、発振器(Oscillator)100とパワーアンプ(Power amp)102とマッチングトランス(Matching trans)104と音源106とにより送波手段12が構成され、マイク108により受波手段14が構成され、バンドパスフィルター(Band pass filter)110とロックインアンプ(Lock−in amp)112と電圧計(Volt meter)114と発振器(Oscillator)116と周波数計(Frequency meter)118とにより受波信号解析手段16が構成されている。
【0044】
なお、音源106は連続正弦波を大気中に放射する送波器として機能するものであり、また、マイク108は受波器として機能するものである。
【0045】

この実験装置においては、発振器100により音源106の共振周波数を発振し、パワーアンプ102で入力電圧の増幅を行なうようになされている。
【0046】
しかしながら、パワーアンプ102の出力インピーダンスと音源106の入力インピーダンスとの差が大きい場合には、音源106の出力効率が下がってしまう。
【0047】
そのため、マッチングトランス104をパワーアンプ102と音源106との間に接続し、インピーダンスマッチングを行うことにより音源106の出力効率を上げるようにしている。
【0048】
また、マイク106、反射波、周囲の音には、雑音が多く含まれているため、この実験装置においては、バンドパスフィルター110を通して反射によるドップラーシフト周波数成分を抽出するように構成した。
【0049】

ここで、図4(a)(b)には音源106の概略構成説明図が示されており、音源106は、段つき円形振動板106aと、エクスポネンシャルホーン106bと、ランジュバン振動子106cとで構成されている。
【0050】
この音源106は、上記したように構成することにより、高い音圧の出力と指向性の鋭い音波の発生が可能となされている。図5には、こうした音源106の指向特性が示されており、そのビーム幅は6°である。また、音源106の共振周波数は、19.734kHzである。
【0051】
一方、図6(a)(b)にはマイク108の概略構成説明図が示されており、マイク108は、エレクトレットコンデンサマイクロホン108aにホーン108bを併用したものにより構成されている。図7には、こうしたマイク108の指向特性が示されており、そのビーム幅は8°である。
【0052】
また、ロックインアンプ112は、バンドパスフィルター110により抽出した音波と発振器116より発振した参照信号(Reference signal)周波数を同期させ、参照信号周波数と等しい成分のみが、直流となって出力されるようにしたものである。
【0053】
そして、電圧計114は、ロックインアンプ112から出力された直流成分を計測するために用いられる。
【0054】

なお、この実験装置においては、風流源として、地上から離れた位置に第1送風機(Blower1)200を設置している。
【0055】
この第1送風機200は、インダクションモータが使用されており、吹出し口は直径30cmの円筒形をしている。
【0056】
ここで、インダクションモータとは、商用電源の変化によって回転数の制御を可能にしたものであり、定格電圧100Vにおける最大平均風速はおよそ14.0m/sから16.5m/sである。
【0057】

そして、この実験装置において、風速を観測する対象の点たる観測対象点(Observation point)は、第1送風機200の吹き出し口の下端から5cm上、かつ、そこから前方へ20cm進んだ点に位置し、観測対象点までの距離によって測定結果に差がでないように、音源106とマイク108との観測対象点までの距離をそれぞれ1mで一定とした。
【0058】
このように、音源106と観測対象点ならびにマイク108と観測対象点までの距離をそれぞれ1mで一定とするため、θ(後述する。)の変化に応じて第1送風機200の高さを変化させるようにした。
【0059】
また、測定する風速の変化は、第1送風機200の入力電圧を10Vから80Vに変化させることで行った。
【0060】
ここで、図8(a)(b)には、風向に対して音波を逆方向へ発射した場合の実験装置の位置関係が示されている。θは第1送風機200の吹き出し口側の中心を0°とした水平方向の角度であり、θは地面を0°とした鉛直方向の角度である。
【0061】
また、図9(a)(b)には、風向に対して順方向へ音波を発射した場合の実験装置の位置関係が示されている。吹き出し口の下端に音波が当たらないように第1送風機200を配置しており、θならびにθについては図8(a)(b)の場合と同様である。
【0062】

次に、実験方法について説明すると、まず音源106から、観測対象点に向けて送信周波数f=19.734kHzで一定の音波(連続正弦波)を発射し、反射した音波をマイク108で受音した。
【0063】
その受音した音波の受信周波数と発振器116で調整した参照信号周波数とを、ロックインアンプ112で同期させ、同期した周波数fと音源106の発振周波数との差(ドップラーシフト周波数Δf[kHz])を求め、ドップラーシフト周波数Δfを式(4)に代入して風速を求めた。
【0064】
また、上記のようにして実験装置により風速の値を求めた後に、比較対象として観測対象点と同じ位置に設置した市販の風速計により風速を測定し、実験装置により得られた風速の値と市販の風速計により測定された風速の値とを比較し検討を行った。
【0065】
なお、本実験において用いた市販の風速計は、株式会社アイ電子技研製のハンディタイプ風速計(V−01−AND2H)である。
【0066】
次に、風が音源106ならびにマイク108の近傍に当たるように第2送風機(Blower2)202を設置し(図3参照)、観測対象点以外に風がある場合について上記と同様の実験を行った。
【0067】

以下に、上記した実験による測定結果について説明するが、はじめに、実験装置により得られた風速の値と市販の風速計により測定された風速の値との比較について説明する。
【0068】
ここで、図10には、θ=30°で一定にして、θを変化させた場合の風速特性図が示されている。なお、図10に示す風速特性図において、縦軸は実験装置により得られた風速の値[m/s]を示し、横軸は市販の風速計により測定した風速の値[m/s]を示す。
【0069】
この図10より、θを5°、15°、30°、45°と変化させた場合に、実験装置により得られた風速の値と市販の風速計により測定した風速の値との傾きがθによらずほぼ一致していることが分かる。このことより、照射角度に関わらず(θが5°〜45°の間で)風速測定が可能なことが分かる。
【0070】
次に、θを変化させた場合にθが5°〜45°になるように音源106とマイク108との間隔を一定にして実験を行った。
【0071】
また、風向に対して順方向に音波を発射した場合(θ=135°〜175°)についても同様の実験を行った。
【0072】
ここで、図11(a)には、θ=5°〜45°とし、θを変化させた場合の風速特性図が示されている。なお、図11(a)に示す風速特性図において、縦軸は実験装置により得られた風速の値[m/s]を示し、横軸は市販の風速計により測定した風速の値[m/s]を示す。
【0073】
図11(a)に示すように、θを30°、45°、60°と変化させた場合に、実験装置により得られた風速の値と市販の風速計により測定した風速の値との傾きが、θによらずほぼ一致していることが分かる。
【0074】
また、図11(b)には、θ=135°〜175°とし、θを変化させた場合の風速特性図が示されている。なお、図11(b)に示す風速特性図において、縦軸は実験装置により得られた風速の値[m/s]を示し、横軸は市販の風速計により測定した風速の値[m/s]を示す。
【0075】
図11(b)に示すように、θを30°、45°、60°と変化させた場合に、実験装置により得られた風速の値と市販の風速計により測定した値との傾きが、θによらずほぼ一致していていることが分かる。
【0076】
以上の実験結果から、照射角度に関わらず、音波を風向きに対し逆方向、順方向のどちらから発射した場合も風速の測定が可能であることが分かった。
【0077】

次に、観測対象点以外に存在する風の影響について説明するが、図12(a)には、第2送風機202の入力電圧を40V一定とし、θを変化させ、第1送風機200と第2送風機202との風向きに対して音波を逆方向に発射した場合の風速特性図が示されている。なお、図12(a)に示す風速特性図において、縦軸は実験装置により得られた風速の値[m/s]を示し、横軸は市販の風速計により測定した風速の値[m/s]を示す。
【0078】
図12(a)に示すように、θを30°、45°、60°と変化させた場合に、実験装置により得られた風速の値と市販の風速計により測定した値との傾きが、θによらずほぼ一致していることが分かる。
【0079】
また、図12(b)には、第2送風機202の入力電圧を40V一定とし、θを変化させ、第1送風機200の風向きに対して音波を順方向に、第2送風機202の風向きに対して音波を逆方向に発射した場合の風速特性図が示されている。なお、図12(b)に示す風速特性図において、縦軸は実験装置により得られた風速の値[m/s]を示し、横軸は市販の風速計により測定した風速の値[m/s]を示す。
【0080】
図12(b)に示すように、θを30°、45°、60°と変化させた場合に、実験装置により得られた風速の値と市販の風速計により測定した値との傾きが、θによらずほぼ一致していることが分かる。
【0081】
以上の実験結果から、観測対象点以外に風の影響がある場合でも風速の測定が可能であることが分かった。
【0082】

次に、風速分布について説明すると、はじめに観測対象点の設定についてであるが、図13に示すように風速分布の測定のための観測対象点の位置を設定した。
【0083】
即ち、図13に示すように、第1送風機200の吹き出し口に測定点を1面(Side1)としてA〜E点、2面(Side2)としてF〜I点をそれぞれ設定し、各測定点について吹き出し口から前方へそれぞれ20cm、40cm、60cm、80cm、100cm、120cm、140cm、160cmの距離だけ離れた位置をそれぞれ観測対象点とした。また、第1送風機200の入力電圧を80Vで一定とした。各観測対象点の計測値を補間し、補間結果を元に風速分布図を作成し、比較、検討を行った。
【0084】
ここで、図14(a)(b)(c)に、風向きに対して音波を逆方向に放射し、A、B、C、D、E点を測定点とした場合の測定結果を示した。
【0085】
図14(a)には、風速特性図が示されており、図14(a)に示す風速特性図において、縦軸は実験装置により得られた風速の値[m/s]を示し、横軸は市販の風速計により測定した風速の値[m/s]を示している。
【0086】
この図14(a)に示す風速特性図より、各観測対象点における実験装置により得られた風速の値と市販の風速計により測定した風速の値との傾きはほぼ一致していることが分かる。
【0087】
また、図14(b)は市販の風速計により得られた風速分布を示すグラフであり、図14(c)は実験装置により得られた風速分布を示すグラフであって、図14(b)(c)の風速分布を示すグラフにおいて、縦軸は第1送風機200の吹き出し口からの距離[cm]を示し、横軸は吹き出し口における測定点の位置[cm]を示している。
【0088】
これら図14(b)(c)より、実験装置により得られる風速分布と市販の風速計により得られる風速分布とはほぼ一致していることが分かる。
【0089】
次に、図15(a)(b)(c)に、風向きに対して音波を逆方向に放射し、F、G、H、I点を測定点とした場合の測定結果を示した。
【0090】
図15(a)には、風速特性図が示されており、図15(a)に示す風速特性図において、縦軸は実験装置により得られた風速の値[m/s]を示し、横軸は市販の風速計により測定した風速の値[m/s]を示す。
【0091】
この図15(a)に示す風速特性図より、各観測対象点における実験装置により得られた風速の値と市販の風速計により測定した風速の値との傾きはほぼ一致していることが分かる。
【0092】
また、図15(b)は市販の風速計により得られた風速分布を示すグラフであり、図15(c)は実験装置により得られた風速分布を示すグラフであって、図15(b)(c)の風速分布を示すグラフにおいて、縦軸は第1送風機200の吹き出し口からの距離[cm]を示し、横軸は吹き出し口における測定点の位置[cm]を示している。
【0093】
これら図15(b)(c)より、実験装置により得られる風速分布と市販の風速計により得られる風速分布とはほぼ一致していることが分かる。
【0094】
次に、図16(a)(b)(c)に、風向きに対して音波を順方向に放射し、A、B、C、D、E点を測定点とした場合の測定結果を示した。
【0095】
図16(a)には、風速特性図が示されており、図16(a)に示す風速特性図において、縦軸は実験装置により得られた風速の値[m/s]を示し、横軸は市販の風速計により測定した風速の値[m/s]を示す。
【0096】
この図16(a)に示す風速特性図より、各観測対象点における実験装置により得られた風速の値と市販の風速計により測定した風速の値との傾きはほぼ一致していることが分かる。
【0097】
また、図16(b)は市販の風速計により得られた風速分布を示すグラフであり、図16(c)は実験装置により得られた風速分布を示すグラフであって、図16(b)(c)の風速分布を示すグラフにおいて、縦軸は第1送風機200の吹き出し口からの距離[cm]を示し、横軸は吹き出し口における測定点の位置[cm]を示している。
【0098】
これら図16(b)(c)より、実験装置により得られる風速分布と市販の風速計により得られる風速分布とはほぼ一致していることが分かる。
【0099】
次に、図17(a)(b)(c)に、風向きに対して音波を順方向に放射し、F、G、H、I点を測定点とした場合の測定結果を示した。
【0100】
図17(a)には、風速特性図が示されており、図17(a)に示す風速特性図において、縦軸は実験装置により得られた風速の値[m/s]を示し、横軸は市販の風速計により測定した風速の値[m/s]を示す。
【0101】
この図17(a)に示す風速特性図より、各観測対象点における実験装置により得られた風速の値と市販の風速計により測定した風速の値との傾きはほぼ一致していることが分かる。
【0102】
また、図17(b)は市販の風速計により得られた風速分布を示すグラフであり、図17(c)は実験装置により得られた風速分布を示すグラフであって、図17(b)(c)の風速分布を示すグラフにおいて、縦軸は第1送風機200の吹き出し口からの距離[cm]を示し、横軸は吹き出し口における測定点の位置[cm]を示している。
【0103】
これら図17(b)(c)より、実験装置により得られる風速分布と市販の風速計により得られる風速分布とはほぼ一致していることが分かる。
【0104】
以上のことより、本発明によるドップラーソーダーシステム10によって風速分布の測定が可能であることが分かった。
【0105】

即ち、本発明によるドップラーソーダーシステム10は、ACパルス波を用いずに連続正弦波を用いた新しい測定方式を採用するものであり、実用上十分な精度を確保することができるものである。
【0106】
即ち、本発明によるドップラーソーダーシステム10によれば、音源106やマイク108の水平角、仰角の照射角度を変えた場合に、照射角度によらず風速の測定が可能であり、また、観測対象点以外に風が存在する場合にも風速の測定が可能であ。
【0107】
さらに、観測対象点が送波器ならびに受波器の指向性の交点に対応しているので、指向性を操向するだけで空間をマッピングでき、風速分布が得られるようになる。
【0108】

上記したように、本発明によるドップラーソーダーシステムは、大気中に放射する音波として連続正弦波を用いることを特徴とするものである。
【0109】
このように大気中に放射する音波として連続正弦波を用いることにより、S/N比を向上することができるようになる。
【0110】
また、本発明によるドップラーソーダーシステムは、鋭い指向性を有する送受波器の指向性の交点の流れによる周波数シフトを検出することにより流速を計測するものであり、指向性の交点以外の感度が低いため、観測対象点以外に風が存在する場合も測定が可能となる。
【0111】
また、本発明によるドップラーソーダーシステムは、送受波器の指向性の主軸を操向することにより、送受波器の位置を移動させることなく流速分布の計測が可能となる。
【0112】
即ち、短・中距離の風速を計測するにあたって、送受波器の指向性の主軸方向を操向することによって目的空間を走査させることができれば、送受波器の位置を移動させることなしに流速の計測が可能である。
【0113】
このように本発明によるドップラーソーダーシステムは、大気中に放射する音波として連続正弦波を採用し、また、鋭い指向性をもつ送受波器を採用し、その指向性の交点にあたる地点の流れによるドップラーシフトを検出することにより、流速を計測するものである。
【0114】
これらの指向性の主軸方向は物理的にあるいは電子的に操向することによって、送受波器の位置を移動させることなしに目的空間を走査させることができる。
【0115】
なお、指向性の操向は、鋭い指向性を有した送受波器を機械的に移動させたり、あるいは、機械的に向きを変えることで可能となる。
【0116】
また、指向性の操向は、超音波振動子など小さな放射体を平面上に並べ、各々の放射体から放射する音波の位相を制御すること(フェイズドアレイ)により行うことも可能である。このようにフェイズドアレイを用いた場合には、送受波器を動かす機械的な駆動装置は不要となる。
【0117】
なお、本発明によるドップラーソーダーシステムにおいては、測定対象のターゲットまでの距離は、パルス波を送信し、当該パルス波の反射波を受波するまでの遅延時間で求めればよい。
【0118】

従って、上記した本発明によるドップラーソーダーシステムによれば、1対の送受波器のみで風速分布を計測することができる。
【0119】
また、上記した本発明によるドップラーソーダーシステムによれば、送受波器の水平角、仰角の照射角度を変えた場合に、照射角度によらず風速分布の測定が可能となる。
【0120】
また、上記した本発明によるドップラーソーダーシステムによれば、観測対象点以外に風が存在する場合も測定が可能となる。
【0121】

なお、本発明によるドップラーソーダーシステムは、送受波器は一対必要であり、パルス波方式のように送受共用にはなっていないが、送受の切り替えスイッチは不要である。
【0122】
本発明によるドップラーソーダーシステムは、対象が近傍の比較的狭い範囲に限っているので、伝搬減衰をあまり考慮する必要がなく、波源には波長の短い超音波を採用することが可能である。即ち、波源音波の周波数は対象領域に応じて選定される。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、上空における風速分布の計測に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、本発明によるドップラーソーダーシステムの実施の形態の一例の概念構成説明図である。
【図2】図2(a)(b)は風速の導出に関する説明図であり、図2(a)は平面(Top view)説明図であり、また、図2(b)は側面(Side view)説明図である。
【図3】図3は、本願発明者により実施された実験に用いた実験装置の概念構成説明図である。
【図4】図4(a)(b)は音源の概略構成説明図であり、図4(a)は平面(Top view)説明図であり、また、図2(b)は側面(Side view)説明図である。
【図5】図5は、音源の指向特性を示す特性図である。
【図6】図6(a)(b)はマイクの概略構成説明図であり、図6(a)は平面(Top view)説明図であり、また、図6(b)は側面(Side view)説明図である。
【図7】図7は、マイクの指向特性を示す特性図である。
【図8】図8(a)(b)は風向に対して音波を逆方向へ発射した場合の実験装置の位置関係を示す説明図であり、図8(a)は平面(Top view)説明図であり、また、図8(b)は側面(Side view)説明図であって、θは第1送風機の吹き出し口側の中心を0°とした水平方向の角度であり、θは地面を0°とした鉛直方向の角度である。
【図9】図9(a)(b)は風向に対して順方向へ音波を発射した場合の実験装置の位置関係を示す説明図であり、図9(a)は平面(Top view)説明図であり、また、図9(b)は側面(Side view)説明図であって、θは第1送風機の吹き出し口側の中心を0°とした水平方向の角度であり、θは地面を0°とした鉛直方向の角度である。
【図10】図10は、θ=30°で一定にして、θを変化させた場合の風速特性図であり、縦軸は実験装置により得られた風速の値[m/s]を示し、横軸は市販の風速計により測定した風速の値[m/s]を示す。
【図11】図11(a)は、θ=5°〜45°とし、θを変化させた場合の風速特性図であり、また、図11(b)は、θ=135°〜175°とし、θを変化させた場合の風速特性図であって、図11(a)(b)に示す風速特性図において、縦軸は実験装置により得られた風速の値[m/s]を示し、横軸は市販の風速計により測定した風速の値[m/s]を示す。
【図12】図12(a)は、第2送風機の入力電圧を40V一定とし、θを変化させ、第1送風機と第2送風機との風向きに対して音波を逆方向に発射した場合の風速特性図であり、また、図12(b)は、第2送風機の入力電圧を40V一定とし、θを変化させ、第1送風機の風向きに対して音波を順方向に、第2送風機の風向きに対して音波を逆方向に発射した場合の風速特性図であって、図12(a)(b)に示す風速特性図において、縦軸は実験装置により得られた風速の値[m/s]を示し、横軸は市販の風速計により測定した風速の値[m/s]を示す。
【図13】図13は、風速分布の測定のために設定した観測対象点の位置を示す説明図である。
【図14】図14(a)(b)(c)は、風向きに対して音波を逆方向に放射し、A、B、C、D、E点を測定点とした場合の測定結果を示し、図14(a)は風速特性図であって、図14(a)に示す風速特性図において、縦軸は実験装置により得られた風速の値[m/s]を示し、横軸は市販の風速計により測定した風速の値[m/s]を示すものであり、また、図14(b)は市販の風速計により得られた風速分布を示すグラフであり、図14(c)は実験装置により得られた風速分布を示すグラフであって、図14(b)(c)の風速分布を示すグラフにおいて、縦軸は第1送風機200の吹き出し口からの距離[cm]を示し、横軸は吹き出し口における測定点の位置[cm]を示す。
【図15】図15(a)(b)(c)は、風向きに対して音波を逆方向に放射し、F、G、H、I点を測定点とした場合の測定結果を示し、図15(a)は風速特性図であって、図15(a)に示す風速特性図において、縦軸は実験装置により得られた風速の値[m/s]を示し、横軸は市販の風速計により測定した風速の値[m/s]を示すものであり、また、図15(b)は市販の風速計により得られた風速分布を示すグラフであり、図15(c)は実験装置により得られた風速分布を示すグラフであって、図15(b)(c)の風速分布を示すグラフにおいて、縦軸は第1送風機200の吹き出し口からの距離[cm]を示し、横軸は吹き出し口における測定点の位置[cm]を示す。
【図16】図16(a)(b)(c)は、風向きに対して音波を順方向に放射し、A、B、C、D、E点を測定点とした場合の測定結果を示し、図16(a)は風速特性図であって、図16(a)に示す風速特性図において、縦軸は実験装置により得られた風速の値[m/s]を示し、横軸は市販の風速計により測定した風速の値[m/s]を示すものであり、また、図16(b)は市販の風速計により得られた風速分布を示すグラフであり、図16(c)は実験装置により得られた風速分布を示すグラフであって、図16(b)(c)の風速分布を示すグラフにおいて、縦軸は第1送風機200の吹き出し口からの距離[cm]を示し、横軸は吹き出し口における測定点の位置[cm]を示す。
【図17】図17(a)(b)(c)は、風向きに対して音波を順方向に放射し、F、G、H、I点を測定点とした場合の測定結果を示し、図17(a)は風速特性図であって、図17(a)に示す風速特性図において、縦軸は実験装置により得られた風速の値[m/s]を示し、横軸は市販の風速計により測定した風速の値[m/s]を示すものであり、また、図17(b)は市販の風速計により得られた風速分布を示すグラフであり、図17(c)は実験装置により得られた風速分布を示すグラフであって、図17(b)(c)の風速分布を示すグラフにおいて、縦軸は第1送風機200の吹き出し口からの距離[cm]を示し、横軸は吹き出し口における測定点の位置[cm]を示す。
【符号の説明】
【0125】
10 ドップラーソーダーシステム
12 送波手段
14 受波手段
16 受波信号解析手段
100 発振器(Oscillator)
102 パワーアンプ(Power amp)
104 マッチングトランス(Matching trans)104
106 音源
108 マイク
110 バンドパスフィルター(Band pass filter)
112 ロックインアンプ(Lock−in amp)
114 電圧計(Volt meter)
116 発振器(Oscillator)
118 周波数計(Frequency meter)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波を大気中に放射する送波器と、前記送波器により該大気中に放射された音波の反射波を受信する受波器とを有し、前記受波器が受信した反射波に含まれる周波数成分のドップラーシフト量から風速を測定するドップラーソーダーシステムにおいて、
前記送波器は、音波として連続正弦波を大気中に放射する
ことを特徴とするドップラーソーダーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のドップラーソーダーシステムにおいて、
前記送波器は、音波としてパルス波を大気中に放射可能であり、
前記送波器は、大気中に放射する音波として連続正弦波とパルス波とを切り換える
ことを特徴とするドップラーソーダーシステム。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載のドップラーソーダーシステムにおいて、
前記送波器は、指向性の主軸を操向する手段を備え、
前記受波器は、指向性の主軸を操向する手段を備えた
ことを特徴とするドップラーソーダーシステム。
【請求項4】
請求項1、2または3のいずれか1項に記載のドップラーソーダーシステムにおいて、さらに、
前記送波器を移動する手段と前記送波器の向きを変える手段との少なくともいずれか一方を備え、
前記受波器を移動する手段と前記受波器の向きを変える手段との少なくともいずれか一方を備えた
ことを特徴とするドップラーソーダーシステム。
【請求項5】
請求項1、2、3または4のいずれか1項に記載のドップラーソーダーシステムにおいて、
前記送波器は、放射する音波の周波数を制御する手段を有した
ことを特徴とするドップラーソーダーシステム。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5のいずれか1項に記載のドップラーソーダーシステムにおいて、
前記送波器は、放射する音波の音圧を制御する手段を有した
ことを特徴とするドップラーソーダーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−222506(P2009−222506A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66253(P2008−66253)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月10日 http://www.asj.gr.jp/annualmeeting/pdf/2008haru_web01type2.pdf
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】