説明

ドライフィルムレジストの薄膜化処理方法

【課題】本発明は、ドライフィルムレジストを均一に薄膜化することが可能なドライレジストの薄膜化処理方法を提供するものである。
【解決手段】基板上にドライフィルムレジストを貼り付け、界面活性剤を含む水溶液にて水洗前処理を行った後、無機アルカリ性化合物の含有量が5〜20質量%のアルカリ水溶液によって薄膜化処理することを特徴とするドライフィルムレジストの薄膜化処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライフィルムレジストを均一に薄膜化することが可能なドライフィルムレジストの薄膜化処理方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板やリードフレームの製造方法としては、基板上にエッチングレジスト層を形成し、そのエッチングレジスト層で被覆されていない金属層をエッチングによって取り除くサブトラクティブ法が挙げられる。この手法は、他の手法に比べ、製造工程が短くコスト安であること、金属パターンと絶縁板の接着強度が強いこと等の優位点があるため、現在のプリント配線板およびリードフレーム製造の主流となっている。そして、サブトラクティブ法にてエッチングレジスト層を設ける方法としては、ドライフィルムレジストと呼ばれるシート状の感光材料および液状フォトレジストを用いた方法が挙げられ、これらの中でも、取り扱い性が優れ、テンティングによるスルーホールの保護が可能なことから、ドライフィルムレジストの方が一般的に好まれている。
【0003】
さて、近年の電子機器の小型、多機能化に伴い、機器内部に使用されるプリント配線板も高密度化や金属パターンの微細化が進められており、サブトラクティブ法によって、現在では、導体幅が50〜80μm、導体間隙が50〜80μmの金属パターンを有するプリント配線板が製造されている。また、さらなる高密度化、微細配線化が進み、50μm以下の超微細な金属パターンが求められるようになっている。それに伴い、パターン精度やインピーダンスの要求も高くなっている。このような微細な金属パターンを達成するために、従来から、セミアディティブ法が検討されているが、工程数が大幅に増加するという問題やめっき銅の密着性不良等の問題があった。
【0004】
サブトラクティブ法にて、このような微細な金属パターンを形成する場合、生産ラインすべての技術レベルや管理レベルを向上させる必要があることはもちろんであるが、その中でも、エッチングが大きなポイントとなる。これは、サブトラクティブ法の特徴である導体の側面方向から進行するサイドエッチングが問題となるからであり、サイドエッチングの量を抑えるために、液組成管理、基板への液吹き付け角度や強さ等、最適なエッチング条件を調整する必要がある。また、エッチング条件の調整だけではなく、エッチングレジスト層の膜厚によっても、サイドエッチングは影響を受ける。つまり、膜厚が厚いほど、微細なレジストパターン間に液が循環しにくくなり、その結果、サイドエッチングが大きくなる。現在主流となっているドライフィルムレジストの厚みは、25μm前後の厚みであり、一方、微細な金属パターンを形成するためには、できるだけレジスト膜厚を薄くする必要があり、そのために、近年では10μm以下の厚みのドライフィルムレジストが開発され、商品化されはじめている。しかし、このような薄いドライフィルムレジストでは、ゴミを核とした気泡の混入および凹凸追従性が不十分となり、レジスト剥がれや断線が発生する問題があった。
【0005】
このような問題を解決すべく、サブトラクティブ法によって導電パターンを作製する方法において、基板上にドライフィルムレジストを貼り付けた後、無機アルカリ性化合物の含有量が5〜20質量%のアルカリ水溶液によって、ドライフィルムレジストの薄膜化処理を行い、次に回路パターンの露光、現像、エッチングを行うことを特徴とする金属パターンの形成方法が提案されている。この方法では、確かに薄膜化処理は可能であったが、薄膜化後の膜厚の均一性が不足することや、薄膜化処理する前にレジスト表面に付着したものと思われる異物等により、薄膜化が阻害された欠陥部分が確認されることがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/096438号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ドライフィルムレジストを均一に薄膜化することが可能なドライフィルムレジストの薄膜化処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは検討した結果、基板上にドライフィルムレジストを貼り付け、界面活性剤を含む水溶液にて水洗前処理を行った後、無機アルカリ性化合物の含有量が5〜20質量%のアルカリ水溶液によって薄膜化処理することによって上記課題を解決できた。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、基板上のドライフィルムレジストを高濃度のアルカリ水溶液によって均一に薄膜化するものである。しかし、ドライフィルムレジストの表面は、全面が同等の親水性を示すわけではないため、薄膜化処理を行う段階で、アルカリ水溶液の浸透速度が異なる部分が発生し、これが薄膜化の不均一性を招く原因となっていた。また、ドライフィルムレジスト表面に汚染物や異物が存在した場合、アルカリ水溶液の浸透が阻害されるために、その部分は薄膜化が促進されず、厚残りすることが判明した。薄膜化処理を行った後、露光、現像、エッチングを行うことにより金属パターンを形成する場合、ドライフィルムレジストの厚みが不均一な場合や厚残りが発生した場合には、その後の露光工程において、膜厚が厚い部分の露光量は他の正常部と比較して、露光量が不足して硬化不足となり、結果として、次工程の現像工程において、正常部と比較して薄くなるか、または、完全に溶解してしまうこととなる。このような本来ドライフィルムレジストが存在すべき部分であるのにドライフィルムレジストがない部分や正常部よりもドライフィルムレジストが薄くなった部分は、次工程のエッチング工程でエッチングされ、欠陥のない金属パターンを得ることができなくなる。この問題に対して検討した結果、薄膜化処理の前処理として、界面活性剤を含む水溶液にて水洗前処理を行うことが有効であることが判明した。界面活性剤を含まない水にて水洗前処理を行うことも可能であるが、処理後の均一性は十分とは言えない。界面活性剤を含む水溶液にて水洗前処理を行うことで、ドライフィルムレジスト表面に存在するポリマーの親水基が再配向し、親水性が均一化され、さらに、ドライフィルムレジスト表面に付着した汚染物や異物を有効に取り除くことが可能となり、厚残りさせることなく、均一な薄膜化処理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のドライフィルムレジストの薄膜化処理について詳細に説明する。まず、基板の少なくとも片面にドライフィルムレジストを貼り付ける。貼り付けには、例えば、100℃以上に加熱したゴムロールを加圧して押し当てるラミネータ装置を用いる。基板には、酸洗等の前処理を施しても良い。貼り付け後、ドライフィルムレジストのキャリアフィルムを剥がし、5〜20質量%のアルカリ水溶液によって、ドライフィルムレジストの薄膜化処理を施す。
【0011】
本発明のドライフィルムレジストの薄膜化処理後に、回路パターンの露光を行い、さらに現像を行ってエッチングレジスト層を形成し、次にエッチングレジスト層以外の金属層をエッチングすることで金属パターンを形成する。
【0012】
本発明に係わる基板としては、プリント配線板またはリードフレーム用基板が挙げられる。プリント配線板としては、例えば、フレキシブル基板、リジッド基板が挙げられる。フレキシブル基板は、通常、ポリエステルやポリイミド、アラミド、ポリエステル−エポキシベースが絶縁層の材料として用いられている。フレキシブル基板の絶縁層の厚さは5〜125μmで、その両面もしくは片面に1〜35μmの金属層が設けられており、非常に可撓性がある。絶縁層や金属層の厚みは、この範囲以外のものであっても良い。フレキシブル基板は、シート状の形態でも良いし、ロール状の形態でも良い。ロール状の形態であれば、ロール トゥ ロール(Roll to Roll)の方式で、薄膜化処理、露光、現像、エッチング等の工程を処理できる。リジッド基板としては、紙基材またはガラス基材にエポキシ樹脂またはフェノール樹脂等を浸漬させた絶縁性基板を必要枚数重ねて絶縁層とし、その片面もしくは両面に金属箔を載せ、加熱、加圧して積層し、金属層が設けられたものが挙げられる。また、内層配線パターン加工後、プリプレグ、金属箔等を積層して作製する多層用のシールド板、また貫通孔や非貫通孔を有する多層板も挙げられる。厚みは60μm〜3.2mmであり、プリント基板としての最終使用形態により、その材質と厚みが選定される。金属層の材料としては、銅、金、銀、アルミニウム等が挙げられるが、銅が最も一般的である。これらプリント基板は、例えば「プリント回路技術便覧−第二版−」((社)プリント回路学会編、日刊工業新聞社刊)や「多層プリント回路ハンドブック」(J.A.スカーレット編、(株)近代化学社刊)に記載されているものを使用することができる。リードフレーム用基板としては、鉄ニッケル合金、銅系合金等の基板が挙げられる。
【0013】
本発明に係わるドライフィルムレジストとは、一般的に使用されている回路形成用の感光性材料であり、光照射部が硬化して現像液に不溶化するネガ型のレジストが挙げられる。ドライフィルムレジストは、少なくとも感光性樹脂層からなり、ポリエステル等のキャリアフィルム(透明支持体)上に感光性樹脂層が設けられ、場合によってはポリエチレン等の保護フィルムで感光性樹脂層上を被覆した構成となっている。ネガ型の感光性樹脂層は、例えば、カルボキシル基を含むバインダーポリマー、光重合性不飽和化合物、光重合開始剤、溶剤、その他添加剤からなる。それらの配合比率は、感度、解像度、硬度、テンティング性等の要求される性質のバランスによって決定される。感光性樹脂組成物の例は「フォトポリマーハンドブック」(フォトポリマー懇話会編、1989年刊行、(株)工業調査会刊)や「フォトポリマー・テクノロジー」(山本亜夫、永松元太郎編、1988年刊行、日刊工業新聞社刊)等に記載されており、所望の感光性樹脂組成物を使用することができる。感光性樹脂層の厚みは、15〜100μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。この厚みが15μm未満では、ゴミを核とした気泡の混入や凹凸追従性不良によって、レジスト剥がれや断線が発生する場合があり、100μmを超えると、薄膜化で溶解除去される量が多くなって薄膜化処理時間が長くなることがある。
【0014】
本発明の水洗前処理に係わる界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩等のアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体(いわゆる、プルロニック系界面活性剤)、脂肪酸ペンタエリスリトールエステル、アセチレングリコール等のノニオン系界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤;アルキルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。本発明の水洗前処理は、ドライフィルムレジストの水洗前処理に用いるものであるので、ドライフィルムレジストの品質を損なわないものであれば、どの種類の界面活性剤を用いても問題ないが、アニオン系、カチオン系および両性界面活性剤は、レジスト表面に特異的に吸着する場合や、種類によってはレジスト表面を部分的に侵害する場合があるので、ノニオン系の界面活性剤を用いることが好ましい。ノニオン系界面活性剤のより好ましい具体的例としては、アセチレングリコールが挙げられ、日信化学工業(株)製のサーフィノール(登録商標)465、サーフィノール(登録商標)485、サーフィノール(登録商標)82等を用いることができる。
【0015】
本発明の水洗前処理に係わる界面活性剤の添加量としては、それぞれの界面活性剤の特性により、その添加量は変わってくるが、ドライフィルムレジスト表面に存在するポリマーの親水基を再配行させ、ドライフィルムレジスト表面の親水性を全体的に均一化させること、水洗前処理中の泡立ちが少ないこと、界面活性剤によるドライレジストフィルム上に付着した汚染物や異物を有効に取り除く効果を考え、0.001〜0.1質量%の範囲が好ましく、0.001〜0.05質量%の範囲がより好ましく、0.01〜0.05質量%の範囲がさらに好ましい。
【0016】
本発明に係わる水洗前処理に使用する水としては、水道水、工業用水、純水等が挙げられ、このうち、純水を使用することが好ましい。純水は、一般的に工業用に用いられるものを使用することができる。例えば、水道水をフィルター処理、活性炭処理、イオン交換樹脂によって処理することで得ることができる。純水中の有機物量としては特に制限はないが、1000ppb以下が好ましい。イオン量を示す比抵抗値としても特に制限はないが、0.1〜15MΩ・cmの範囲が好ましい。水洗前処理の方法は、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、ブラッシング、スクレーピング等があり、スプレー方式がドライフィルムレジスト上の汚染物や異物の除去のためには最も適している。スプレー処理の条件(温度、スプレー圧、時間)は、適宜調整することができるが、具体的には、処理温度は10〜30℃が好ましく、より好ましくは20〜25℃である。また、スプレー圧は0.01〜0.5MPaとするのが好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.2MPaである。
【0017】
本発明に係わる無機アルカリ性化合物としては、リチウム、ナトリウムまたはカリウムの炭酸塩または重炭酸塩等のアルカリ金属炭酸塩、カリウム、ナトリウムのリン酸塩等のアルカリ金属リン酸塩、リチウム、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物等のアルカリ金属水酸化物、カリウム、ナトリウムのケイ酸塩等のアルカリ金属ケイ酸塩から選ばれる無機アルカリ性化合物を挙げることができる。このうち特に好ましい化合物としては、アルカリ金属炭酸塩が挙げられる。
【0018】
本発明に係わる薄膜化処理に用いる処理液は、上記無機アルカリ性化合物を処理液に対して5〜20質量%含有する。5質量%未満では、溶解除去途中のミセルが溶解拡散しやすくなって、処理液の流動によって薄膜化処理が不均一になる。また、20質量%を超えると、析出が起こりやすくなって、液の経時安定性、作業性に劣る。溶液のpHは9〜12の範囲とすることが好ましい。また、界面活性剤、消泡剤、溶剤等を適宜少量添加することもできる。
【0019】
本発明に係わる薄膜化処理とは、ドライフィルムレジストの厚みを略均一に薄くする処理のことであり、薄膜化処理を施す前の厚みの0.05倍〜0.9倍の厚みにする。薄膜化処理の方法は、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、ブラッシング、スクレーピング等があり、ドライフィルムレジストの除去速度のためにはスプレー方式が最も適している。スプレー処理の条件(温度、スプレー圧、時間)は、使用するドライフィルムレジストの溶解除去性に合わせて適宜調整される。具体的には、処理温度は10〜50℃が好ましく、より好ましくは15〜40℃、さらに好ましくは15〜35℃である。また、スプレー圧は0.01〜0.5MPaとするのが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.3MPaである。
【0020】
本発明に係わる薄膜化処理において、5〜20質量%の無機アルカリ性化合物水溶液で処理したのち、水によって十分に洗浄する必要がある。水洗処理の方法は、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式等があり、処理速度が速いため、スプレー方式が最も適している。
【0021】
本発明に係わる薄膜化処理を行った後、露光、現像、エッチングを行うことにより精細な回路パターンを形成することができる。露光方法としては、キセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、UV蛍光灯を光源とした反射画像露光、フォトツールを用いた片面、両面密着露光や、プロキシミティ方式、プロジェクション方式やレーザー走査露光が挙げられる。走査露光を行う場合には、He−Neレーザー、He−Cdレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンイオンレーザー、ルビーレーザー、YAGレーザー、窒素レーザー、色素レーザー、エキシマレーザー等のレーザー光源を発光波長に応じてSHG波長変換して走査露光する、あるいは液晶シャッター、マイクロミラーアレイシャッターを利用した走査露光によって露光することができる。
【0022】
現像の方法としては、使用するドライフィルムレジストに見合った現像液を用い、基板の上下方向から基板表面に向かってスプレーして、レジストパターンとして不要な部分を除去し、回路パターンに相当するエッチングレジスト層を形成する。一般的には、1〜3質量%の炭酸ナトリウム水溶液が使用される。
【0023】
エッチングは、現像で形成されたエッチングレジスト層以外の露出した金属層を除去する方法である。エッチング工程では、「プリント回路技術便覧」((社)日本プリント回路工業会編、1987年刊行、日刊工業新聞社発行)記載の方法等を使用することができる。エッチング液は金属層を溶解除去できるもので、また少なくともエッチングレジスト層が耐性を有しているものであれば良い。一般に金属層に銅を使用する場合には、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液等を使用することができる。
【実施例】
【0024】
以下実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0025】
実施例1〜11、比較例1〜3、参考例1〜3
両面銅張積層板(面積510mm×340mm、銅箔厚み12μm、基材厚み0.2mm、三菱ガス化学(株)製、商品名:CCL−E170)にドライフィルムレジスト(旭化成イーマテリアルズ(株)製、商品名:サンフォートAQ−4038、厚み40μm)を貼り付けた。次に、キャリアフィルムを剥離した後、表1に示すように、純水に各種界面活性剤を表1に記載の添加量で加えたもので水洗前処理を行ったもの(実施例)、水洗前処理を行わなかったもの(比較例)および純水で水洗前処理を行ったもの(参考例)に対して、引き続き、表1に示すアルカリ水溶液を用いたドライフィルムレジストの薄膜化処理および水洗浄処理を実施した。水洗浄処理は、薄膜化したドライフィルムレジスト表面に残存するアルカリ水溶液を水洗浄する工程であり、十分に除去できるまで、スプレー方式にて水洗浄を行った。純水は、オルガノ(株)製、カートリッジ純水器G−10C型を用いて、比抵抗値10MΩ・cmに処理したものを用いた。また、水洗前処理の条件は、スプレー圧0.1MPa、処理温度は20℃にて行い、薄膜化処理の条件は、スプレー圧0.05MPa、処理温度25℃、処理時間は表1に示すように、ドライフィルムレジストの厚みが平均10μmとなる条件にて行った。薄膜化処理および水洗後、ドライフィルムレジストの膜厚を40点で測定し、膜厚のばらつきを標準偏差σの値で評価した。なお、膜厚は、(株)スペクトラ・コープ製の小型高分解能分光装置SolidLambdaUV−NIRを用い、非接触、非破壊により測定し、反射率分光法から算出した。
【0026】
【表1】

【0027】
サーフィノール(登録商標)465:日信化学工業(株)製
エマルゲン(登録商標)103:花王(株)製
NIKKOL(登録商標)OTP−75:日光ケミカルズ(株)製
サニゾール(登録商標)B50:花王(株)製
アンヒトール(登録商標)20AB:花王(株)製
【0028】
表1で明らかな如く、水洗前処理なしおよび純水による水洗前処理と比較し、界面活性剤を含んだ水洗前処理を行うことで、ドライフィルムレジストをより均一に薄膜化することが可能であることがわかる。界面活性剤の種類は、特に制限なく用いることができるが、ノニオン界面活性剤を用いたものが膜厚のばらつきが少なく、ノニオン界面活性剤の中でもサーフィノール(登録商標)を用いたものの性能が良かった。
【0029】
また、界面活性剤の添加量を多くするほど、さらに均一化されていることがわかる。これは、水洗前処理に用いる界面活性剤によって、ドライフィルムレジスト表面の濡れの均一性が向上したことと、ドライレジストフィルム上に付着した汚染物や異物を取り除く効果が向上したことによるものと思われる。しかしながら、実施例8では、界面活性剤の添加量が少ないため、膜厚のばらつきを示す標準偏差の値が、純水のみで水洗前処理した参考例2と同じ値となった。実施例12の膜厚のばらつきは、実施例11で処理したものと同じであり、界面活性剤の添加量が0.05質量%を超えると、膜厚の均一性への効果は飽和に達することが示唆された。また、実施例11よりも実施例12の方が水洗前処理時における泡立ちが大きく、このことからも界面活性剤の添加量は0.05質量%以下であることが好ましいことが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、サブトラクティブ法における金属パターンの形成に広く使用され、例えば、プリント配線板、リードフレーム等の作製に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にドライフィルムレジストを貼り付け、界面活性剤を含む水溶液にて水洗前処理を行った後、無機アルカリ性化合物の含有量が5〜20質量%のアルカリ水溶液によって薄膜化処理することを特徴とするドライフィルムレジストの薄膜化処理方法。
【請求項2】
該界面活性剤がノニオン系界面活性剤である請求項1記載のドライフィルムレジストの薄膜化処理方法。
【請求項3】
界面活性剤の添加量が0.01〜0.05質量%の範囲にある請求項1または2記載のドライフィルムレジストの薄膜化処理方法。

【公開番号】特開2012−4205(P2012−4205A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135903(P2010−135903)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】