説明

ドライ真空ポンプ

【課題】ポンプ吸入口のフィルタを不要とするドライ真空ポンプを提供する。
【解決手段】ドライ真空ポンプ100は、ガスを吸入する吸入ポート10aに連結される吸気部30を備える。吸気部30は、中空円筒状の外壁34aおよび内筒38を備え、また、ケース34内の吸入室31において、外壁34aの外周面と内筒38の外周面38oとの間に形成される、堆積空間31bを備える。ガスとともに搬送される粉末状の固体は、この堆積空間31bに堆積する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドライ真空ポンプに関し、とくに吸入ポートに連結した吸気部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を製造するための成膜工程において、真空状態を作り出すために、ドライ真空ポンプが用いられる。こうした真空ポンプにおいては、半導体の製造に関連して生成される粉末状の固体粒子に関する考慮が必要となる。
このような粉末は、少量ずつであれば、ポンプに吸入されても、排気とともに外部に吐出されるので、それほど問題とはならない。しかしながら、流路の壁に付着していた粉末が固まった状態で剥離する等の原因により、一度に大量の粉末がポンプに吸入されると、ポンプの内部で詰まりを起こしてポンプが停止する等の不都合が発生する。これを避けるために、ポンプの吸入口にフィルタを設け、これによって粉末をガスから分離してからポンプ内に吸入する構成が知られている。
このような構成の例は、特許文献1の図5に開示される。
【0003】
【特許文献1】特開2003−90292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のドライ真空ポンプ、たとえば特許文献1に記載されるようなものでは、ポンプ運転時にフィルタに粉末が堆積してガスの流路を塞ぐので、フィルタを頻繁に交換する必要があり、このために工数がかかるという問題があった。
【0005】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、フィルタを不要とするドライ真空ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の問題点を解決するため、この発明に係るドライ真空ポンプは、吸入ポートを有するポンプ本体と、吸入ポートに連結して設けられ、外部配管から導入されるガスを吸入して該ガスを吸入ポートに導出する吸気部とを備え、吸気部は、該吸気部の内部を覆うケースと、一端がケースの内部に開口するとともに、他端が吸入ポートに連結される中空筒状の内筒とを備え、ケースは、中空筒状の内筒を取り囲む外壁を有し、ケースには、ガスを該ケースの内部に吸入するための吸入口が形成され、外壁及び該外壁の内周側に配置された遠心分離筒により、該外壁及び該遠心分離筒との間の空間を旋回させて遠心力によりガス中に含まれる固体と気体とを分離する遠心分離構造を有し、吸入口は遠心分離筒の外周とケースの内周との間に連通するように設けられていることを特徴とする。
ドライ真空ポンプは、吸気部に空間を有し、ガスに含まれる粉末状の固体をこの空間に堆積させる。
【0007】
遠心分離筒は、内筒であることを特徴としてもよい。
吸気部は、一端がケースに固定されるとともに、他端がケースの内部に開口する、中空筒状の外筒を備え、外筒の内径は、内筒の外径よりも大きく、内筒が外筒の内周側に配置され、内筒の少なくとも一部が外筒により覆われるように配置され、遠心分離筒の少なくとも一部は、外筒で構成され、外筒の外側において、ガスは重力方向に流れ、外筒の内周面と、内筒の外周面との間において、ガスは重力と反対方向に流れてもよい。
外壁は中空円筒状であり、ケースの内部に流入するガスに対して、外壁の内周面と外筒の外周面との間で、遠心分離を行ってもよい。
吸気部は、外部からガスを吸入する吸入口を有し、内筒の外面には、環状の傘部が取り付けられていることを特徴としてもよい。
傘部は、重力方向に上方から下方に向かって広がるテーパ状であり、該傘部の下端は、吸入口の下端よりも下方に位置してもよい。
吸気部は、空間を加熱するヒータを備え、加熱は、空間に堆積する昇華性の物質の昇華点より高い温度になされてもよい。
ヒータは、外壁の外周側に配置されていることを特徴としてもよい。
ドライ真空ポンプは、半導体製造装置に連結して使用することが可能なものであり、昇華性の物質の昇華点は、ケイフッ化アンモニウムの昇華点であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、ドライ真空ポンプの吸気部において、外壁と内筒との間に堆積空間が形成され、ここに粉末を堆積させるので、粉末を分離するためのフィルタを不要とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1および図2に、この発明の実施の形態1に係るドライ真空ポンプ100の全体構成を示す。図1は斜視図であり、図2は側面図である。なお、本実施形態において、上方とは重力が働く方向に対して、反対側の方向のことを示し、下方とは、重力が働く方向のことを示す。
ドライ真空ポンプ100は、たとえばプラズマ化学気相成長法(PE−CVD法、Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)を用いて窒化シリコン(Si)の成膜を行うCVD装置や、エッチング装置等の、半導体製造装置に連結して用いられるものである。ドライ真空ポンプ100はたとえばルーツ式のものであるが、他の形式であってもよく、たとえばスクリュー式やスクロール式のものであってもよい。
ドライ真空ポンプ100は、ガスを吸入する吸気部30と、吸気部30から吸入されたガスを排出する排気部20と、吸気部30から排気部20へとガスを搬送するポンプ本体10とを備える。吸気部30はポンプ本体10に連結され、また、外部からガスを吸入する経路である外部配管50にも連結される。
【0010】
図3は、図2における吸気部30およびその周辺の変位図示拡大断面図である。図3においては、図面上側が上方であり、図面下側が下方である。
ポンプ本体10は、その上部に、吸気部30を取り付けるための雌ネジが形成されたボルト穴が設けられた本体側取り付け板12を備える。吸気部30は、吸気部30をポンプ本体10に取り付けるためのボルト取り付け穴が設けられた吸気部側取り付け板32を備える。複数のボルト60が、吸気部側取り付け板32のボルト取り付け穴を貫通するとともに本体側取り付け板12のボルト穴と螺合し、これによって吸気部30がポンプ本体10に脱着可能に固定される。
【0011】
なお、図4に示すように、外部配管50は、吸気部30の外壁34aに対して偏心して設けられる。ここで、図4は、図2における吸気部30と外部配管50との位置関係を示す図であり、図3は、図4のIII−III線における変位図示断面図となっている。
【0012】
吸気部30は、その内部を覆うケース34を備える。ケース34は、吸気部側取り付け板32に対して垂直な中空円筒状の外壁34aと、外壁34aに垂直な上板34bとを含む。この外壁34aと、上板34bと、吸気部側取り付け板32とによって覆われる空間が吸入室31である。この吸入室31は、ポンプ本体10の吸入ポート10aに連通して設けられる。
ここで、外壁34aの円筒中心軸が伸びる方向を「軸方向」、円筒中心軸に対して垂直な方向を「径方向」と定義する。
また、吸気部30には外部配管50が連結され、この外部配管50と外壁34aとがケース34(外壁34a)に形成された吸入口54で連結され、これによってそれぞれの内部が連通する。また、外部配管50は、外部の構造に連結されてそこからガスを吸入する吸気口52を備え、吸気口52の周囲には円環状のフランジ52aが形成される。つまり、ガスは、吸気口52を介して外部配管50から導入され、吸入口54を介してケース34の内部に吸入される。
【0013】
吸気部30は、その内部に、外壁34aと同軸に設けられ、外壁34aに取り囲まれる、中空円筒状の外筒36および内筒38を備える。前記吸入口54は外筒36の外周とケース34の内周との間に連通するように設けられている。
外筒36の径は、内筒38の径よりも大きく、内筒38の上端開口38aは、外筒36の下端開口36aよりも上方に配置される。すなわち、内筒38は外筒36の内周側に配置され、内筒38の少なくとも一部が外筒36に覆われるように配置される。別の言い方をすると、内筒38と外筒36とは、軸方向において一部が重なるように配置され、また、外筒36の下端開口36aは、内筒38の外周面38oを取り囲み、かつ、内筒38の上端開口38aは、外筒36の内部に位置する。
【0014】
内筒38の外周面38oと外筒36の内周面36iとの間には、連通路である反転連通路31aが形成される。この反転連通路31aは、外筒36の下端開口36aと、内筒38の上端開口38aとを連通するものである。また、反転連通路31aに垂直な断面において、外筒36は、内筒38を取り囲んでいる。
内筒38の上端開口38aは、外筒36の下端開口36aよりも上方にあるので、内筒38の径方向に水平に進もうとするガスの流れが遮られ、上方すなわち重力と反対方向に、反転連通路31aを通って導かれる構成となっている。
外筒36において、反転連通路31aの外側では、ガスは重力方向(すなわち、重力の向きを成分として含む方向)に流れるが、反転連通路31aにおいては、ガスは重力と反対方向(すなわち、重力と反対の向きを成分として含む方向)に流れる。
【0015】
外筒36は、その上端面が上板34bに固定されており、下端開口36aが吸気部30の内部に開口している。外筒36の下端開口36aは、吸入口54の下端54aよりも下方に配置される。すなわち、吸入口54から流入したガスは、外筒36の下端開口36aへと至る経路において、下方向(重力方向)に向かうようになっている。
このように、吸気部30は、図4に示すように、外部配管50から外壁34aに対して偏心して流入するガスに対して、同軸に配置される外壁34aの内周面34iと外筒36の外周面36oとの間で、遠心分離を行う、遠心分離構造を有する。外筒36は遠心分離筒として機能する。
【0016】
内筒38は、取り付け板32を貫通しつつ、取り付け板32に固定されて設けられ、その上端開口38aが吸気部30の内部に開口している。内筒38の下端面の開口であるポンプ連通口56は、ポンプ本体10の吸入ポート10aと整合し、ポンプ連通口56及び吸入ポート10aによって吸気部30の内部とポンプ本体10の内部とが連通する。
内筒38の上端開口38aは、外筒36の下端開口36aよりも上方にある。このため、ガスが外筒36の下端開口36aから内筒38の上端開口38aに至る経路において、反転連通路31aを通って上方向(重力と反対方向)に向かうようになっている。
【0017】
また、図3に示すように、内筒38の外周面38oには、重力方向に上方から下方に向かって傘状に広がる、環状かつテーパ状の傘部である跳ね止め傘42が取り付けられる。跳ね止め傘42は、その上端42aにおいて、内筒38の外周面38oと円環状に接し固定されており、また、その下端42bは内筒38の外周面38oから離れるように傘状に広がり、吸気部30の内部に対して開口した状態となっている。
跳ね止め傘42の上端42aおよび下端42bの位置は、外筒36の下端開口36aよりも下方であり、かつ、吸入口54の下端54aよりも下方であり、かつ、吸気部側取り付け板32の上端面よりも上方である。ただし、上端42aは、外筒36の下端開口36aまたは吸入口54の下端54aよりも上方に位置する構成であってもよい。
また、下端42bにおける跳ね止め傘42の径は、外筒36の径よりも大きい。
【0018】
吸気部30は、外壁34aの外周側に、外壁34aの外周面を取り巻いて設けられるヒータ70を備える。ヒータ70は、外壁34aを通して吸入室31を加熱する。ヒータ70は、たとえば通電によって発熱するシリコンラバーヒータであるが、これは他の種類のヒータ、たとえばリボンヒータ等であってもよい。
【0019】
上記のように構成されるドライ真空ポンプ100の動作の流れを以下に説明する。
ドライ真空ポンプ100は、半導体製造装置に連結されて運転され、半導体製造装置の内部に存在するガスを、吸気口52、外部配管50、吸入口54、吸入室31、ポンプ連通口56をこの順に経由させ、ポンプ本体10の内部に吸入する。このガスの流れを、図3において、順に矢印A、B、C、D、およびEによって示す。さらに、ドライ真空ポンプ100は、ポンプ本体10によって吸入したガスを搬送し、図1および図2に示す排気部20から排気する。このガスは、半導体に関する工程において生成される、昇華性の物質であるケイフッ化アンモニウム((NHSiF)を含む。
【0020】
ケイフッ化アンモニウムのガスは、他のガスとともに搬送される過程で、その一部が昇華して粉末状の固体となる。また、ガスにはその他の物質も粉末状の固体として含まれている。このような粉末状の固体は、ガスとともに搬送され、外部配管50を通って吸入室31に吸入される。
ここで、外部配管50及び吸入口54は図4に示すように外壁34aおよび外筒36に対して偏心しているので、吸入室31に流入した粉末状の固体を含んだガスは、外壁34aの内周面34iと外筒36の外周面36oとの間を回転するように導かれる。これによって、比較的質量の大きい物体、たとえば粉末状の固体は、遠心力によって外側に移動し、外壁34aと外筒36との間を旋回して、外壁34aと外筒36とによる遠心分離作用によって、ガスから分離される。分離された粉末状の固体は、重力によって下方に移動して堆積空間31bに堆積し、ケイフッ化アンモニウムを含む堆積物(デポ)90となる。ここで、堆積空間31bとは、外壁34aの内周面34iと、内筒38の外周面38oとの間に形成される空間であり、吸入室31のうち跳ね止め傘42の下端42bより下の部分を指す。
このように、吸入室31が、粉末状の固体を含んだガスを吸入して、粉末状の固体と気体(ガス)とに分離して、ガスだけを吸入ポート10aに導出する。ガスが吸入室31を介して吸入ポート10aにまで到る過程で、ガスは、まず堆積空間31bの上方をケース34の内周面34iと外筒36の外周面36oとの間を旋回しながら流れ、次に外筒36の下端開口36aを介して、外筒36の内部に流れ、最後に内筒38の内部を流れて吸入ポート10aに導出される。
【0021】
また、外筒36の下端開口36aは、吸入口54の下端54aよりも下方に設けられるので、吸入口54から吸入室31内に流入するガスは、外筒36の外周面36oと外壁34aの内周面34iとの間で旋回しながら、下方向に向かって流れることとなる。さらに、内筒38の上端開口38aは、外筒36の下端開口36aよりも上方に設けられるので、外筒36と内筒38との間を流れるガスは上方向に向かって流れることとなる。このように、外筒36の内側と外側とでガスの流れの方向が急に反転する。これによって、質量の小さい粒子(たとえばガスの分子)のみが、この流れに沿って反転して搬送され、質量の大きい粒子(たとえば粉末状の固体)は慣性によって下方に直進し、堆積して堆積物90となる。
【0022】
このように、遠心分離作用と、流れの方向の反転による分離作用とによって、粉末状の固体がガスから分離されるので、ポンプ連通口56に達する粉末状の固体の量は少ない。粉末状の固体のうち、大きな固まりは、特に遠心分離作用の影響を受け易いため、堆積空間31bに堆積し易い。従って、粉末状の固体の大きな固まりのポンプ本体10内への流入を確実に防止することができる。
つまり、吸気部30は、粉末状の固体を含むガスをガスと固体とに分離して、固体のポンプ内への流入を防止する緩衝装置(バッファ)として機能する。
また、ガスの流れによって巻き上げられる堆積物90を遮る跳ね止め傘42が設けられているので、いったん堆積物90として堆積した粉末状の固体が巻き上げられて内筒38へと入り込み難くなっている。
また、跳ね止め傘42はテーパ状に形成され、下方に向かって、傘が開いた形状となっている。従って、吸入口54から吸入室31に吸入され、吸入室31内を下方に旋回していくガスの流れを遮ることなく、跳ね止め傘42の下方へ旋回させていくことができる。
【0023】
ヒータ70は、外壁34aを加熱することによって吸入室31の堆積空間31bを加熱し、堆積空間31bの温度を所定の温度以上、たとえば90℃以上に保つ。なお、この温度は、ドライ真空ポンプ100が運転されている状態での堆積空間31bの気圧における、ケイフッ化アンモニウムの昇華点より高い温度であればよい。たとえば、ドライ真空ポンプ100が運転されている状態で堆積空間31bの気圧が0.02Torr(約2.7Pa)程度となる場合、ケイフッ化アンモニウムの昇華点は90℃程度であるので、ヒータ70は堆積空間31bをこの温度以上に加熱するものであればよい。
【0024】
このようにして堆積空間31bが加熱され、ケイフッ化アンモニウムの昇華点より高い温度となる。これによって、堆積空間31bの、ケイフッ化アンモニウムを含む堆積物90からケイフッ化アンモニウムが昇華し、ガスとしてポンプ本体10に吸入されるので、堆積物90の堆積量が減少する。
【0025】
以上のように構成される、実施の形態1に係るドライ真空ポンプ100によれば、粉末状の固体は堆積空間31bに堆積する。このため、フィルタがない構成であっても、一度に大量の粉末状の固体がポンプ本体10に吸入されることがない。よって、ドライ真空ポンプ100は、フィルタを不要とすることができる。
【0026】
また、ヒータ70は、吸入室31の堆積空間31bを加熱し、堆積物90の成分である昇華性物質、すなわちケイフッ化アンモニウムの昇華点より高い温度に保つ。このため、昇華性物質が固体から気体へと昇華し、ガスとしてポンプ本体10に吸入される。従って、堆積空間31bにおける堆積物90の量を減少させるか、あるいは、その増加を防ぐことができる。これによって、吸入室31内でのガスの流路断面積が広く保たれるので、吸入室31内が堆積物90によって詰まるという状態を回避できる。仮にヒータ70を配置しない場合、定期的に堆積物90を取り除くメンテナンスが必要となるが、本実施形態のようにヒータ70の配置により、定期的な堆積物90除去のメンテナンス回数を大幅に減らすことが可能となる。また、このため、吸入室31を長期間使用することができる。
【0027】
また、ヒータ70はケース34の外部から加熱を行い、これによって堆積物90を昇華させ、堆積量を減少させるので、堆積物90を取り出すための構造を吸入室31に設ける必要がない。このため、たとえば開閉式のシャッター等が不要となり、吸入室31の構造を簡素にするとともに、強度および気密性をより高くすることができる。
本実施形態においては、外壁34aの外周側に配置しているため、ヒータ70を外壁34a内周側に設ける場合と比較して、ガス等によるヒータ70の劣化を防止することができる。
【0028】
また、吸入室31に流入したガスが外筒36のまわりを回転し、これによって遠心分離作用を受けるので、ガスとともに搬送される粉末がポンプ本体10に吸入される量を減少させることができる。また、一度に大量の粉末がポンプ本体10に吸入されるのを防ぐことができる。
【0029】
また、外筒36の内側と外側とでガスの流れの方向が反転し、これによってガスと粉末との分離作用を受けるので、分離作用をさらに強くすることができる。
【0030】
また、跳ね止め傘42が、ガスによって巻き上げられる堆積物90を遮るので、堆積物90の一部がポンプ本体10に吸入されるのを防ぐことができる。また、跳ね止め傘42の下端42bの径は、外筒36の径よりも大きいので、跳ね止め傘42の下端42bの径が、外筒36の径よりも小さい場合と比較して、巻き上げられる堆積物90の反転連通路31aへの流入を確実に遮ることができる。
【0031】
また、ヒータ70の加熱温度は、堆積物90に含まれる昇華性物質の昇華点より高い温度、たとえば本実施の形態では90℃より高い温度であればよく、特定の化学反応を起こすために要求される数百℃といった温度よりも低い。このため、ヒータ70に関する選択の自由度が大きくなる。
【0032】
また、吸気部30とポンプ本体10とは、複数のボルト60によって脱着可能に固定される。このため、吸入室31の長期間の使用により、ヒータ70によって昇華しない物質が大量に堆積空間31bに堆積した場合には、吸気部30を取り外して容易に清掃等のメンテナンス作業を行うことができる。
【0033】
上述の実施の形態1において、以下のような変形を施すことができる。
図5に示すように、吸気部30は、外筒36を有しないものであってもよい。この場合、外部配管50から吸入室31に流入するガスに対して、同軸に配置される外壁34aの内周面34iと内筒138の外周面138oとの間で、遠心分離を行う、遠心分離構造を有する。すなわち、この構成では、内筒138が遠心分離筒として機能する。
また、このように外筒36を有しない場合、内筒138の上端開口138aは、図5に示すように、吸入口54の上端54bよりも上方にあってもよい。こうすることにより、内筒138の上端開口138aは吸入口54から流入するガスの旋回位置よりも上方に位置することになり、遠心分離の効率が向上する。
【0034】
また、ガスの流路にフィルタを設け、これによって粉末状の固体がポンプ本体10に吸入されるのを防ぐ構成としてもよい。このフィルタは、たとえばポンプ連通口56に設けられる。このような構成とすることにより、ポンプ本体10に吸入される粉末状の固体の量をさらに減少させることができる。
吸入室31を配置した構造では、跳ね止め傘42が配置され、粉末状の固体の巻き上げにより外筒36内部への流入も遮られている。しかし、僅かな粉末状の固体が巻き上げ等により、跳ね止め傘42も回避して、外筒36の内部に流入する場合がある。この場合にポンプ連通口56上に設けたフィルタが機能する。外筒36の内部に流入する僅かな粉末状の固体は、大きさが小さく、量も少ないため、フィルタ自体に粉末状の固体は堆積し難い。従って、フィルタに堆積した粉末状の固体により流路を塞いでしまうという従来のような問題は生じ難い。仮にフィルタに少し堆積したとしても、ヒータ70により、フィルタに堆積した粉末状の固体は昇華して、ポンプ本体10内にガス(気体)として流入される。
【0035】
実施の形態1では、図3に示されるように、吸入口54におけるガスの流れの方向は水平となる構成であるため、外筒36の下端開口36aが吸入口54の下端54aより下方である。外部配管50の取り付け角度等の状況によって、吸入口54におけるガスの流れの方向が水平とならない構成である場合には、その流れの方向に応じて、外筒36の上下方向の配置が変更されてもよい。この場合には、図3において、吸入口54に最も近い下端開口36aの点が、吸入口54におけるガスの流れと平行な直線で、吸入口54の下端54aを通る直線よりも下側に来る位置であればよい。また、吸入口54と内筒38の上端開口38aとの位置関係に応じて、これらの間の直線的な流れを遮るように外筒36が配置されてもよい。
【0036】
吸気部30は、跳ね止め傘42を備えないものであってもよい。このような構成とすることにより、吸気部30の構造を簡素なものにできる。
なお、実施の形態1において説明したようにガスと粉末の分離が行われるので、跳ね止め傘42を備えない構成であっても、粉末は遠心分離作用により堆積空間31bに堆積するため、一度に大量の粉末がポンプ本体10に吸入されることはない。
【0037】
吸気部30は、ヒータ70を備えないものであってもよい。このような構成とすることにより、吸気部30の構造を簡素なものにできる。
なお、実施の形態1において説明したようにガスと粉末の分離が行われるので、ヒータ70を備えない構成であっても、粉末は遠心分離作用により堆積空間31bに堆積するため、一度に大量の粉末がポンプ本体10に吸入されることはない。
【0038】
跳ね止め傘42は、実施の形態1のようにテーパ状の傘部となっていなくてもよい。環状に広がる形状となっていてもよいし、堆積空間31bに堆積した堆積物90が巻き上げられた時に、外筒36の内部への流入を防止する形状であればよい。
図6は、実施の形態1の跳ね止め傘42を、水平方向に環状に広がる形状を有する環状傘43で置き換えた構成を示す。
【0039】
また、前記吸入口54の開口位置は図3において、外壁34aに限定されず、上板34bの位置で、外筒36と外壁34aとの間に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の実施の形態1に係るドライ真空ポンプ100の構成を示す斜視図である。
【図2】図1のドライ真空ポンプ100の構成を示す斜視図である。
【図3】図2における吸気部30およびその周辺の変位図示拡大断面図である。
【図4】図2における吸気部30と外部配管50との位置関係を示す図である。
【図5】実施の形態1に係るドライ真空ポンプ100の変形例を示す図である。
【図6】実施の形態1の跳ね止め傘42を、水平方向に環状に広がる形状を有する環状傘43で置き換えた構成を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10 ポンプ本体、10a 吸入ポート、30 吸気部、31 吸気部の内部(吸入室)、31b 堆積空間(空間)、34 ケース、34a 外壁、36a 下端開口(外筒の他端)、36 外筒(遠心分離筒)、38a、138a 上端開口(内筒の一端)、38、138 内筒(遠心分離筒)、42 跳ね止め傘(傘部)、42b 下端(傘部の下端)、43 環状傘(傘部)、54a 吸入口の下端、54 吸入口、70 ヒータ、100 ドライ真空ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入ポートを有するポンプ本体と、
前記吸入ポートに連結して設けられ、外部配管から導入されるガスを吸入して該ガスを前記吸入ポートに導出する吸気部と
を備え、
前記吸気部は、
該吸気部の内部を覆うケースと、
一端が前記ケースの内部に開口するとともに、他端が前記吸入ポートに連結される中空筒状の内筒と
を備え、
前記ケースは、中空筒状の内筒を取り囲む外壁を有し、
前記ケースには、前記ガスを該ケースの内部に吸入するための吸入口が形成され、
前記外壁及び該外壁の内周側に配置された遠心分離筒により、該外壁及び該遠心分離筒との間の空間を旋回させて遠心力により前記ガス中に含まれる固体と気体とを分離する遠心分離構造を有し、
前記吸入口は前記遠心分離筒の外周とケースの内周との間に連通するように設けられていることを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項2】
前記遠心分離筒は、前記内筒であることを特徴とする請求項1に記載のドライ真空ポンプ。
【請求項3】
前記吸気部は、一端がケースに固定されるとともに、他端が前記ケースの内部に開口する、中空筒状の外筒を備え、
前記外筒の内径は、前記内筒の外径よりも大きく、
前記内筒が前記外筒の内周側に配置され、
前記内筒の少なくとも一部が前記外筒により覆われるように配置され、
前記遠心分離筒の少なくとも一部は、前記外筒で構成され、
前記外筒の外側において、前記ガスは重力方向に流れ、
前記外筒の内周面と、前記内筒の外周面との間において、前記ガスは重力と反対方向に流れる
請求項1に記載のドライ真空ポンプ。
【請求項4】
前記外壁は中空円筒状であり、
前記ケースの内部に流入する前記ガスに対して、前記外壁の内周面と前記外筒の外周面との間で、遠心分離を行う
請求項3に記載のドライ真空ポンプ。
【請求項5】
前記吸気部は、外部から前記ガスを吸入する吸入口を有し、
前記内筒の外面には、環状の傘部が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のドライ真空ポンプ。
【請求項6】
前記傘部は、重力方向に上方から下方に向かって広がるテーパ状であり、該傘部の下端は、前記吸入口の下端よりも下方に位置する
請求項5に記載のドライ真空ポンプ。
【請求項7】
前記吸気部は、前記空間を加熱するヒータを備え、
前記加熱は、前記空間に堆積する昇華性の物質の昇華点より高い温度になされる
請求項1〜6のいずれか一項に記載のドライ真空ポンプ。
【請求項8】
前記ヒータは、前記外壁の外周側に配置されていることを特徴とする請求項7に記載のドライ真空ポンプ。
【請求項9】
前記ドライ真空ポンプは、半導体製造装置に連結して使用することが可能なものであり、
前記昇華性の物質の昇華点は、ケイフッ化アンモニウムの昇華点である
請求項7または8に記載のドライ真空ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−205287(P2007−205287A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26173(P2006−26173)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】