説明

ドーズ量推定方法およびイオン注入装置

【課題】迅速かつ簡易的な測定方法によりイオン注入装置によって注入されるイオンのドーズ量を推定すること。
【解決手段】本発明の実施形態に係るドーズ量管理方法においては、結晶性のSiの水に対する接触角を測定することにより、モニタ基板に注入されたイオンのドーズ量を推定するため、迅速かつ簡易的な測定方法を用いて、イオン注入装置によって注入されたイオンのドーズ量を管理することができる。また、推定したドーズ量に応じてイオン注入装置の設定を補正することにより、半導体基板に対して注入するイオンのドーズ量を目標のドーズ量に近づけることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン注入におけるドーズ量を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路を構成するトランジスタは、例えば、Si(シリコン)などが用いられている。このSiには、B(ボロン)、P(リン)などの不純物がイオン注入などにより導入され、このイオン注入量(ドーズ量)によりトランジスタの特性が制御される。そのため、トランジスタの特性を安定化させるためには、イオン注入におけるドーズ量の高い制御性が要求される。
イオン注入装置においてイオン注入を行うときには予めドーズ量の設定を行うが、その使用状況などの影響により必ずしも設定値と一致したドーズ量のイオン注入が行われるとは限らないため、実際に注入されるイオンのドーズ量を管理する必要がある。そのため、製品に用いられる半導体基板に対してイオン注入を行う直前に、モニタウエハなどを用いてドーズ量がどの程度になっているかを測定して、その結果を設定値にフィードバックすることで、実際のドーズ量が目標とする値になるように調整することが望ましい。
【0003】
ドーズ量の管理するために行う測定には様々な方法があるが、直接的にドーズ量を測定するためには、SIMS(Secondary Ionization Mass Spectrometer)などの測定方法を用いて行う方法(例えば、特許文献1)がある。この測定は直接的なものであるため、精密なドーズ量の管理ができるが、この測定には時間がかかるため、イオン注入装置の設定にフィードバックをするのには適切ではない。
そこで、間接的にドーズ量を推定するために、様々な測定方法が用いられている。例えば、特許文献2には、Siに注入した不純物を活性化させ、そのシート抵抗について4端子プローブ法を用いて測定することでドーズ量を推定する技術が開示されている。また、特許文献3、4には、低ドーズ量においてもシート抵抗を測定することで簡易的にドーズ量を推定できるようにした2重注入法(ダブルインプラ法)を用いた技術が開示されている。さらに、特許文献5には、ポンピングレーザ光を照射することにより生じるサーマルウエーブに起因して変化する反射率を検出するサーマルウエーブ法によりドーズ量を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−245275号公報
【特許文献2】特開平5−206051号公報
【特許文献3】特開平4−326513号公報
【特許文献4】特開2007−281064号公報
【特許文献5】特開平5−283496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、ドーズ量を間接的に推定する方法は様々であるが、シート抵抗を測定する技術を用いる場合には、モニタウエハに熱処理などの活性化処理を行う必要があり手間がかかる。また、熱処理時のゆらぎの影響を受ける場合があり、ドーズ量以外の要素によるシート抵抗の変化が生じる場合もある。また、サーマルウエーブ法を用いる場合においては、低ドーズ量についての測定は精度が高いが、1×1015(以下、1E15と記載する)cm-2程度の高ドーズ量の測定には向かない。また、サーマルウエーブ法を用いる測定装置は非常に高価である。
また、いずれの場合であっても、ドーズ量を推定するためにはSi内で活性化してキャリアを生じるものでなくてはならず、ドーパント(B、Pなど)のイオン注入におけるドーズ量は推定できるが、Siに対して不活性な原子(F(フッ素)、Ar(アルゴン)など)のイオン注入におけるドーズ量は推定できない。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、迅速かつ簡易的な測定方法によりイオン注入装置によって注入されたイオンのドーズ量を推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本発明は、アモルファス化した程度により撥水性が変化する結晶性の部材に対して、イオンを注入する注入工程と、前記部材における前記イオンが注入された面の水に対する接触角を測定する測定工程と、予め測定されて対応付けられた前記接触角とドーズ量との関係に基づいて、前記測定工程において測定された接触角から前記注入工程において注入されたイオンのドーズ量を推定する推定工程とを具備することを特徴とするドーズ量推定方法を提供する。
【0008】
また、別の好ましい態様において、前記部材は、シリコンであることを特徴とする。
【0009】
また、別の好ましい態様において、前記関係は、注入されるイオンの種類または加速電圧ごとに対応付けられていることを特徴とする。
【0010】
また、別の好ましい態様において、前記測定工程の前に、前記部材の前記イオンが注入された面上に形成されている膜を除去する除去工程をさらに具備することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、イオンを注入するイオン注入手段と、アモルファス化した程度により撥水性が変化する結晶性の部材に対して、設定ドーズ量でイオンを注入させるように前記イオン注入手段を制御する制御手段と、前記制御手段によって前記イオンが注入された部材における当該イオンが注入された面の水に対する接触角を測定する測定手段と、予め測定されて対応付けられた前記接触角とドーズ量との関係を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された関係に基づいて、前記測定手段によって測定された接触角から前記部材に対して注入されたイオンのドーズ量を推定する推定手段とを具備し、前記制御手段は、前記推定手段によって推定されたドーズ量および前記設定ドーズ量に基づいて、後に前記イオン注入手段にイオンを注入させるときのドーズ量を調整することを特徴とするイオン注入装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、迅速かつ簡易的な測定方法によりイオン注入装置によって注入されたイオンのドーズ量を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るドーズ量管理方法を示す工程図である。
【図2】本発明の実施形態に係る接触角測定装置において測定される接触角を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係る対応関係データの一例を示す図である。
【図4】本発明の変形例1に係るイオン注入装置の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
本実施形態に係るドーズ量管理方法は、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)などの半導体装置の製造工程において行われるイオン注入において、注入されるイオンのドーズ量を管理する方法である。ドーズ量管理方法の各工程について図1から図3を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るドーズ量管理方法を示す工程図である。図1に示すようにドーズ量管理方法は、モニタ注入工程(ステップS110)、測定工程(ステップS210)および推定工程(ステップS310)を有するドーズ量推定方法と、本注入工程(ステップS410)とを有する。この例においては、モニタ注入工程(ステップS110)および本注入工程(ステップS410)はイオン注入装置、測定工程(ステップS210)は接触角測定装置、推定工程(ステップS310)は管理装置において行われる。
【0016】
イオン注入装置は、設定された条件にしたがって、Siウエハなどの半導体基板に対して、Siに対してドーパントとして働く原子(例えば、P、Bなど)のイオン(P+、B+)、Siに対して不活性な原子(例えば、F、Arなど)のイオン(F+、Ar+)を注入する装置である。ここで、イオン注入装置がイオン注入を行うときの条件として設定される内容は、例えば、注入するイオンの種類、イオンを加速する加速電圧、イオンのドーズ量などである。なお、ここでは、イオン注入装置がイオン注入をする対象は、Siウエハなどの半導体基板としたが、半導体にSiを用いるものに限られるものではない。また、半導体により構成される基板以外、例えばガラス基板の表面に形成された半導体に対してイオンを注入するものであってもよいし、半導体が用いられていない基板であってもよく、様々な基板に対してイオン注入が可能である。
【0017】
モニタ注入工程(ステップS110)は、イオン注入装置において製品となる半導体基板に対してイオン注入を行う前に、そのイオン注入装置により予め決められた条件でモニタ基板にイオン注入を行う工程である。以下、モニタ基板の面のうちイオンが注入される面を表面という。モニタ基板は、例えば単結晶Siウエハであるが、結晶性のSiが表面に形成された基板であればどのような基板であってもよい。結晶性のSiとは、単結晶Si、多結晶Siであるが、単結晶Siであることが望ましい。なお、モニタ基板は、結晶性のSiに限られず、アモルファス化した程度により撥水性が変化する部材であれば、他の部材であってもよい。例えば、不純物(B、Geなど)を含んだ結晶性Siであってもよいし、SiCなどの化合物であってもよいし、主成分がSi以外であってもよい。
モニタ注入工程(ステップS110)においてモニタ基板にイオン注入を行うときの条件は、製品となる半導体基板に対してイオン注入を行う条件と同じ条件とすることが望ましいが、異なる条件であってもよい。異なる条件である場合には、利用者はイオン注入装置に対して条件を予め設定しておけばよい。
【0018】
接触角測定装置は、半導体基板など各種部材の表面の水に対する接触角を測定する測定装置である。この例においては、予め決められた量の水を測定対象となる部材の表面に滴下し、その部材表面の水に対する接触角(以下、単に接触角というときは水に対する接触角をいう)を測定する装置である。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係る接触角測定装置において測定される接触角を説明する図である。接触角測定装置は、測定対象となる部材10の表面に水を滴下して水滴20を形成する。そして、接触角測定装置は、図2に示すように、水滴20の表面のうち、部材10と接する部分における接線Tと部材10との角度αを接触角として測定する。測定工程(ステップS210)は、モニタ注入工程(ステップS110)においてイオンが注入されたモニタ基板の表面の水に対する接触角を、接触角測定装置により測定する工程である。
【0020】
管理装置は、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理部、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクなどの記憶部、キーボード、マウスなど利用者の操作を受け付ける操作部、およびディスプレイなどの表示部を有するコンピュータ装置である。記憶部は、接触角とドーズ量とが対応付けられた対応関係データを記憶する。この対応関係データは、さらにイオンの種類ごと、加速電圧ごとに、接触角とドーズ量とを対応付けるように記憶されている。
この対応関係データは、モニタ注入工程(ステップS110)、測定工程(ステップS210)に対応する処理を予め行っておき、モニタ注入工程(ステップS110)における各条件と、各条件における注入が行われたモニタ基板の表面の接触角との関係を取得することによって得られたデータであり、検量線として機能する。したがって、この関係を取得するために行うモニタ注入工程(ステップS110)および測定工程(ステップS210)に対応する処理は、予め行われていればよいのであるが、本実施形態とは別の手法を用いてイオン注入装置の校正を行った直後など検量線として用いるのに適当なタイミングに処理することが望ましい。対応関係データの一例について図3を用いて説明する。
【0021】
図3は、本発明の実施形態に係る対応関係データの一例を示す図である。図3に示すグラフは、イオンの種類が「P+」であり、加速電圧が「40keV」である場合の対応関係データが示す接触角とドーズ量との関係を示している。この関係においては、ドーズ量が1E11cm-2であるときには接触角は69.4°であった。また、ドーズ量が1E12、1E13、1E14、1E15cm-2であるときには、接触角は、それぞれ68.2°、64.2°、46.4°、15.4°であった。
結晶性のSiの表面は撥水性を有し接触角が大きいが、イオンが注入されると、その注入条件に応じてSiがアモルファス化していくことにより、撥水性が失われていくため、接触角が小さくなっていく。イオン注入におけるドーズ量が増加するほど、結晶性のSiがアモルファス化するため、図3に示すような関係となるのである。ここでは、イオンの種類が「P+」であり、加速電圧が「40keV」である場合の一例として示したが、注入されるイオンの加速電圧、種類によっても結晶性のSiがアモルファス化する程度は異なる。
【0022】
図1に戻って説明を続ける。推定工程(ステップS310)は、管理装置において、対応関係データに基づいて、測定工程(ステップS210)において測定された接触角から、モニタ注入工程(ステップS110)において注入されたイオンのドーズ量を推定する工程である。管理装置の演算処理部は、利用者の操作部の操作によりモニタ注入工程(ステップS110)において行われたイオン注入の条件(この例においては、イオンの種類および加速電圧)が入力され、また、接触角測定装置において測定した接触角が入力されると、入力された条件に対応した対応関係データを参照して、入力された接触角から推定されるドーズ量を表示部に出力する。例えば、入力された条件がイオンの種類「P+」、加速電圧「40keV」である場合には、図3に示す対応関係データが参照される。そして、入力された接触角が64.2°であれば、ドーズ量が1E13であると推定され、推定されたドーズ量が表示部に表示される。なお、対応関係データにおいて直接対応付けられていないデータについては、他のデータの関係から補間して出力され、接触角が60°である場合には、図3に示す例においては、2E13としてドーズ量が推定される。
【0023】
次に、本注入工程(ステップS410)を行う。本注入工程(ステップS410)は、製品となる半導体基板に対して、上述したイオン注入装置を用いてイオン注入を行う工程である。利用者は、本注入工程(ステップS410)におけるイオン注入の条件を以下のようにして設定する。
利用者は、推定工程(ステップS310)において推定されたドーズ量と、モニタ注入工程(ステップS110)においてイオン注入装置に設定したドーズ量とを比較して、ずれの程度を認識する。このように認識されるずれの程度は、対応関係データに係る対応付けを行ったときのイオン注入装置の状態からの変化の程度に応じたものである。そのため、製品となる半導体基板にイオンを注入するときの条件を、認識したずれの程度に応じて補正したドーズ量として設定する。例えば、設定したドーズ量より推定されたドーズ量が大きい場合には、ドーズ量が設定値より多めになっていることを示しているから、製品となる半導体基板にイオンを注入するときに設定するドーズ量は、目標とするドーズ量より少なくして設定すればよい。
このようにして補正した設定を行うことにより、半導体基板に注入されるイオンのドーズ量を目標のドーズ量に近づけることができる。
【0024】
このように、本発明の実施形態に係るドーズ量管理方法においては、結晶性のSiの水に対する接触角を測定することにより、モニタ基板に注入されたイオンのドーズ量を推定するため、迅速かつ簡易的な測定方法を用いて、イオン注入装置によって注入されるイオンのドーズ量を管理することができる。
【0025】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな態様で実施可能である。
[変形例1]
上述した実施形態においては、ドーズ量管理方法の各工程をイオン注入装置、接触角測定装置および管理装置によって行っていたが、イオン注入装置において全ての工程を行ってもよい。この場合のイオン注入装置の構成について、図4を用いて説明する。
【0026】
図4は、本発明の変形例1に係るイオン注入装置100の構成を説明する図である。イオン注入装置100は、イオン注入部110、接触角測定部120、推定部130、記憶部140、制御部150および操作部160を有する。
イオン注入部110は、制御部150からの制御により、半導体基板などに対してイオン注入を行う。制御部150から制御される内容は、後述するようにイオン注入における条件、イオン注入を行う対象の基板(製品となる半導体基板またはモニタ基板)などである。
イオン注入部110は、制御部150により、半導体基板に対してイオン注入を行うように制御された場合には、図示しない半導体基板収納部から半導体基板をロードし、制御に応じた条件でその半導体基板にイオンを注入し、再び半導体基板収納部へアンロードする。一方、イオン注入部110は、制御部150により、モニタ基板に対してイオン注入を行うように制御された場合には、図示しないモニタ基板を収納するモニタ収納部からモニタ基板をロードし、制御に応じた条件でそのモニタ基板にイオンを注入し、接触角測定部120にモニタ基板を引き渡す。
【0027】
接触角測定部120は、実施形態における接触角測定装置に相当する機能を有し、イオン注入部110から引き渡されたモニタ基板の表面の接触角測定を行う。そして接触角測定部120は、測定した接触角を示す接触角情報を推定部130に出力する。また、接触角測定部120は、測定が終了したモニタ基板を図示しないモニタ基板回収部にアンロードする。
推定部130は、接触角測定部120から接触角情報を取得すると、制御部150からイオン注入の設定内容(イオンの種類、加速電圧)を取得し、設定内容に対応する対応関係データを記憶部140から取得する。この対応関係データは、実施形態と同様のものである。そして、推定部130は、取得した対応関係データを参照して、取得した接触角情報が示す接触角から推定されるドーズ量を認識し、そのドーズ量を示す推定情報を制御部150に出力する。
【0028】
制御部150は、キーボード、マウスなどの操作部160に対する操作により利用者から入力された指示により設定、この例においては、半導体基板に対するイオン注入における各条件(この例においては、イオンの種類、加速電圧、ドーズ量など)が設定される。そして、制御部150は、設定された条件によりイオン注入部110を制御する。この制御により最初にイオン注入部110を制御してイオン注入をさせるときは、制御部150は、イオン注入を行う対象の基板をモニタ基板として、イオン注入部110を制御する。
制御部150は、推定部130から推定情報を取得すると、推定情報が示すドーズ量と、既に設定されているドーズ量(設定ドーズ量)とを比較し、そのずれの程度を認識する。そして、制御部150は、イオン注入を行う対象の基板を半導体基板とし、また、認識したずれの程度に応じてドーズ量の補正量を算出して、補正したドーズ量でイオン注入を行うように、イオン注入部110を制御する。これにより、上述したようにイオン注入部110は、補正したドーズ量に基づいて、半導体基板に対してイオンを注入することになる。
【0029】
このように、本変形例のイオン注入装置100においては、利用者が操作部160を用いてイオン注入の条件指示を行えば、半導体基板へのイオン注入においてはイオン注入装置100の装置状況に応じてドーズ量を補正して設定するから、目標となるドーズ量で半導体基板にイオンが注入されることになる。
なお、この例においては、複数の半導体基板に対してイオン注入を行う場合は、条件設定後最初のイオン注入においてモニタ基板を用いてドーズ量の推定をして、条件の補正をしていたが、各半導体基板に対してイオン注入を行う前にモニタ基板を用いてドーズ量の推定をして条件の補正を行ってもよい。
【0030】
[変形例2]
上述した実施形態、変形例1においては、モニタ基板にイオン注入が行われると接触角の測定を行っていたが、イオン注入後、接触角測定前に、Siの表面に形成されたSiの酸化膜を除去する工程を行ってもよい。酸化膜の除去は、例えば、希釈したフッ化水素酸を用いればよい。これにより、接触角測定において、モニタ基板の表面にSiの酸化膜が形成されていることによる撥水性低下の影響、すなわち、接触角が酸化膜の存在により小さくなってしまうという影響を少なくして、推定されるドーズ量と測定された接触角との関係が変わってしまうことを防ぐことができる。
【0031】
[変形例3]
上述した実施形態においては、モニタ基板に対してイオン注入を行うことによりドーズ量の推定をしていたが、製品となる半導体基板の表面が、アモルファス化した程度により撥水性が変化する部材になっている場合には、その表面の水に対する接触角を測定して、ドーズ量を推定してもよい。このようにすれば、各半導体基板に対して注入されたイオンのドーズ量についても、推定することができる。
【符号の説明】
【0032】
10…部材、20…水滴、100…イオン注入装置、110…イオン注入部、120…接触角測定部、130…推定部、140…記憶部、150…制御部、160…操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファス化した程度により撥水性が変化する結晶性の部材に対して、イオンを注入する注入工程と、
前記部材における前記イオンが注入された面の水に対する接触角を測定する測定工程と、
予め測定されて対応付けられた前記接触角とドーズ量との関係に基づいて、前記測定工程において測定された接触角から前記注入工程において注入されたイオンのドーズ量を推定する推定工程と
を具備することを特徴とするドーズ量推定方法。
【請求項2】
前記部材は、シリコンである
ことを特徴とする請求項1に記載のドーズ量推定方法。
【請求項3】
前記関係は、注入されるイオンの種類または加速電圧ごとに対応付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のドーズ量推定方法。
【請求項4】
前記測定工程の前に、前記部材の前記イオンが注入された面上に形成されている膜を除去する除去工程をさらに具備する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のドーズ量推定方法。
【請求項5】
イオンを注入するイオン注入手段と、
アモルファス化した程度により撥水性が変化する結晶性の部材に対して、設定ドーズ量でイオンを注入させるように前記イオン注入手段を制御する制御手段と、
前記制御手段によって前記イオンが注入された部材における当該イオンが注入された面の水に対する接触角を測定する測定手段と、
予め測定されて対応付けられた前記接触角とドーズ量との関係を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された関係に基づいて、前記測定手段によって測定された接触角から前記部材に対して注入されたイオンのドーズ量を推定する推定手段と
を具備し、
前記制御手段は、前記推定手段によって推定されたドーズ量および前記設定ドーズ量に基づいて、後に前記イオン注入手段にイオンを注入させるときのドーズ量を補正する
ことを特徴とするイオン注入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−142222(P2011−142222A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2205(P2010−2205)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】