説明

ナトリウム漏洩検出方法及びナトリウム漏洩検出装置

【課題】プラントからの液体金属の漏洩を精度良く検出することができるナトリウム漏洩検出方法を提供する。
【解決手段】開閉弁15,17を有するサンプリング配管2の両端がナトリウムが流れる配管11を配置した空間1に連絡され、電極式ナトリウム検出器5をサンプリング配管2に設置する。カリウム蒸気を発生する液体金属蒸気発生装置35が校正空間18内に設置され、この校正空間18が開閉弁22を設けたガス供給管21及び開閉弁20を設けたガス戻り管19によりサンプリング配管2に連絡される。高速増殖炉プラントの運転時に、開閉弁15,17,20,21の切替え操作により、校正空間18内のカリウムを含むガスを電極式ナトリウム検出器5に周期的に供給する。構成データ算出装置6が電極式ナトリウム検出器5からカリウムの検出により出力される出力信号を用いて校正データを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム漏洩検出方法及びナトリウム漏洩検出装置に係り、特に、高速増殖炉プラントでのナトリウムの漏洩検出に適用するのに好適なナトリウム漏洩検出方法及びナトリウム漏洩検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速増殖炉プラントでは、一次冷却系及び二次冷却系において液体ナトリウムが用いられ、それぞれの冷却系の配管内を液体ナトリウムが流れている。それぞれの冷却系に設けられた容器内にも液体ナトリウムが存在する。これらの配管及び容器は、高速増殖炉プラントの原子炉建屋内に配置されている。配管(または容器)から、配管(または容器)が存在する部屋内へのナトリウムの漏洩を検出するために、配管(または容器)の周辺のガスをサンプリングして電極式ナトリウム漏洩検出器に導き、サンプリングしたガス中のナトリウム濃度を検出している(特開2003−35696号公報参照)。電極式ナトリウム漏洩検出器は、漏洩したナトリウムを検出したとき、漏洩したナトリウムの濃度に応じた値の電流を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−35696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
万が一、配管(または容器)からナトリウムが漏洩したときには、電極式ナトリウム漏洩検出器は精度良くナトリウムの漏洩を検出する必要がある。しかしながら、電極式ナトリウム漏洩検出器は、経年変化による劣化により漏洩したナトリウム濃度の検出誤差が大きくなるので、万が一、配管(または容器)からナトリウムが漏洩したときにそのナトリウム濃度を精度良く測定することができなくなる。このため、実際には、ナトリウムの漏洩が生じていないにもかかわらず、電極式ナトリウム漏洩検出器から出力される電流値が設定値を超えたときには、ナトリウム漏洩を知らせる警報が発せられる可能性がある。
【0005】
高速増殖炉プラントの運転時間の経過により劣化してナトリウム濃度の検出誤差が増大した電極式ナトリウム漏洩検出器は、その検出誤差の大きさによっては、交換する必要がある。
【0006】
電極式ナトリウム漏洩検出器においてナトリウム濃度の検出誤差が増大したことは、電極式ナトリウム漏洩検出器の校正を行うことによって知ることができる。しかしながら、電極式ナトリウム漏洩検出器の校正は、高速増殖炉プラントの運転停止後における定期検査期間において行われる。このため、高速増殖炉プラントの運転中に電極式ナトリウム漏洩検出器の検出誤差が増大し、ナトリウムの漏洩が実際に生じていないにもかかわらず上記した警報が発生する可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、プラントからの液体金属の漏洩を精度良く検出することができるナトリウム漏洩検出方法及びナトリウム漏洩検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、容器内に設置された液体金属蒸気発生装置から容器内に放出された液体金属の蒸気を含む第1ガスを、電極式液体金属検出器に供給し、その第1ガスに含まれる液体金属の蒸気の検出によって電極式液体金属検出器から出力される第1出力信号に基づいて、校正情報を生成し、ナトリウム漏洩を検出する計測対象空間内の第2ガスを電極式液体金属検出器に供給し、第2ガスが電極式液体金属検出器に供給されているときに電極式液体金属検出器から出力される第2出力信号を校正情報により補正し、補正された第2出力信号に基づいてナトリウムの漏洩を判定することにある。
【0009】
プラントの運転時において、第1ガスに含まれる、液体金属蒸気発生装置から容器内に放出された液体金属の蒸気の検出によって、電極式液体金属検出器から出力される出力信号に基づいて、校正情報を生成し、ナトリウム漏洩を検出する計測対象空間内の第2ガスが電極式液体金属検出器に供給されているときに電極式液体金属検出器から出力される出力信号を校正情報により補正するので、プラントからの液体金属の漏洩を精度良く検出することができる。
【0010】
ナトリウム漏洩を検出する計測対象空間に両端部を連絡させるサンプリング配管と、サンプリング配管に設けられた電極式液体金属検出器と、電極式液体金属検出器の上流でサンプリング配管に設けられた第1弁と、電極式液体金属検出器の下流でサンプリング配管に設けられた第2弁と、液体金属の蒸気を発生する液体金属蒸気発生装置が内部に設けられた容器と、この容器に連絡されて第3弁が設けられ、電極式液体金属検出器と第1弁の間でサンプリング配管に接続されたガス供給管と、その容器に連絡されて第4弁が設けられ、電極式液体金属検出器と第2弁の間でサンプリング配管に接続されたガス戻り管と、第1弁及び第2弁を開き且つ第3弁及び第4弁を閉じる第1制御信号、及び第3弁及び第4弁を開き且つ第1弁及び第2弁を閉じる第2制御信号を出力する制御装置と、第2制御信号を入力したとき、電極式液体金属検出器の出力に基づいて校正情報を求める校正情報生成装置と、第1制御信号を入力したとき、電極式液体金属検出器の出力を校正情報により補正する補正装置と、補正装置から出力される補正された出力に基づいてナトリウムの漏洩を判定する漏洩判定装置とを備えることによっても、上記の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プラントからの液体金属の漏洩を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好適な一実施例であるナトリウム漏洩検出装置の構成図である。
【図2】図1に示す電極式ナトリウム検出器の検出誤差に基づいて分類された各ケースの内容を示す説明図である。
【図3】図2に示す各ケースにおける対策の内容を示す説明図である。
【図4】電極式ナトリウム検出器の産出された検出誤差の一例に対して選択された対策の一例の内容を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0014】
本発明の好適な一実施例であるナトリウム漏洩検出方法を、図1を用いて説明する。
【0015】
高速増殖炉プラントのナトリウムが流れている配管11が、建屋内の、或る区切られた空間(例えば、部屋)1内に配置されている。
【0016】
本実施例のナトリウム漏洩検出方法に用いられるナトリウム漏洩検出装置は、図1に示すように、サンプリング配管2、対向する一対の電極16を有する電極式ナトリウム検出器(電極式液体金属検出器)5、制御装置23、液体金属蒸気発生装置35及びデータ処理装置42を備えている。データ処理装置42は、校正データ算出装置(校正情報生成装置)6、補正装置7、漏洩量判定器(漏洩判定装置)8及び対策選択装置9を有する。
【0017】
サンプリング配管2のサンプリングガス流入口が、ナトリウム漏洩を検出する計測対象空間である空間1に連絡され、サンプリング配管2のサンプリングガス流出口も空間1に連絡される。電極式ナトリウム検出器5がサンプリング配管2に設けられる。開閉弁15及び排風機3が電極式ナトリウム検出器5の上流でサンプリング配管2に設けられる。開閉弁15は排風機3よりも上流に配置される。開閉弁17が電極式ナトリウム検出器5の下流でサンプリング配管2に設けられる。
【0018】
校正空間18が、例えば、密封されたタンク(または容器)内に形成される。液体金属蒸気発生装置35が校正空間18内に設置される。液体金属蒸気発生装置35が、容器36、加熱装置37、液体金属ガス放出管38及び開閉弁39を有する。配管11内を流れているナトリウムとは異なる液体金属であるカリウムが、容器36内に充填されている。開閉弁39が設けられた液体金属ガス放出管38が容器36の頂部に接続されている。開閉弁22が設けられて校正空間18に連絡されたガス供給管21が、開閉弁15と排風機3の間でサンプリング配管2に接続される。電極式ナトリウム検出器5と開閉弁17の間でサンプリング配管2に接続されたガス戻り管19が、校正空間18に連絡される。開閉弁20がガス戻り管19に設けられる。
【0019】
電極式ナトリウム検出器5が配線29によって校正データ算出装置6及び補正装置7にそれぞれ接続される。補正装置7が、配線30によって校正データ算出装置6に接続され、配線31によって漏洩量判定器8に接続される。漏洩量判定器8が配線32によって警報表示装置40に接続される。対策選択装置9が、配線33によって校正データ算出装置6に接続され、配線41によって表示装置25に接続される。入力装置24が、配線43によって、制御装置23及び漏洩量判定器8にそれぞれ接続される。制御装置23は、さらに、配線44によって校正データ算出装置6及び補正装置7にそれぞれ接続される。
【0020】
高速増殖炉プラントの運転時において、配管11内を液体ナトリウムが流れている。空間1内には、不活性ガスである窒素ガスが充填されている。窒素ガスがガス供給ダクト13から空間1内に供給され、空間1内の窒素ガスが排気ダクト14に排出される。
【0021】
制御装置23から第1制御信号が出力されたとき、開閉弁15,17が開き、開閉弁20,22が閉じる。制御装置23から出力された第1制御信号は、校正データ算出装置6及び補正装置7にも入力される。排風機3が駆動しており、空間1内のガスがサンプリング配管2内に流入し、サンプリングされたガスが電極式ナトリウム検出器5に供給される。電極式ナトリウム検出器5が、サンプリング配管2によって導かれるガスに含まれているナトリウムの濃度を検出する。電極式ナトリウム検出器5で計測されたサンプリングガスは、サンプリング配管2によって空間1内に戻される。サンプリング配管2内に配置された、電極式ナトリウム検出器5の一対の電極16間にナトリウムが存在するとき、このナトリウムの量に対応する電流がこれらの電極16間に流れ、この電流値の電流信号が出力信号として電極式ナトリウム検出器5から出力される。
【0022】
電極式ナトリウム検出器5が、サンプリング配管2によって導かれた空間1内のガスに含まれたナトリウムの濃度に応じた大きさの電流値を有する電流信号を出力する。この電流信号が配線29によって校正データ算出装置6及び補正装置7に伝えられる。校正データ算出装置6は、第1制御信号を入力したとき、校正データ算出装置6のメモリ(図示せず)に記憶されている電流値(ナトリウム濃度)の校正データ(校正情報)を、配線30により補正装置7に出力する。校正データ算出装置6は、第1制御信号を入力したときには、後述の校正データの算出を実行しない。
【0023】
補正装置7は、電極式ナトリウム検出器5から配線29を通して入力さした電流信号の電流値を、配線30により入力した校正データを用いて補正する。補正装置7は、制御装置23から第1制御信号を入力したとき、すなわち、空間1内のガスが電極式ナトリウム検出器5に供給されているとき、補正された電流値(補正されたナトリウム濃度)を、配線31によって漏洩量判定器8に出力する。漏洩量判定器8は、入力した補正された電流値(補正されたナトリウム濃度)が設定電流値(設定ナトリウム濃度)以上であるかを判定する。漏洩量判定器8において補正された電流値(補正されたナトリウム濃度)が設定電流値(設定ナトリウム濃度)よりも低いと判定されたときには、配管11からのナトリウムの漏洩が生じていない。このとき、警報表示装置40からは警報が発せられない。
【0024】
制御装置23は、例えば、1回/週の割合で第2制御信号を出力する。制御装置23から出力された第2制御信号が、開閉弁20,22を開いて開閉弁15,17を閉じる。この第2制御信号を出力する前に、制御装置23は、第3制御信号を出力する。この第3制御信号の出力によって、加熱装置37が、カリウム蒸気を発生する所定の温度になるように、容器35内のカリウムを加熱する。加熱装置37はカリウムの温度をこの所定の温度に保持する。容器35に設けられた温度計(図示せず)で計測した温度を入力する制御装置23は、入力した計測温度がその所定温度になったとき、第2制御信号を出力する。このとき、前述したように、開閉弁20,22が開くので、校正空間18内のガスが電極式ナトリウム検出器5に供給され、開閉弁15,17が閉じられるので、空間1内のガスの電極式ナトリウム検出器5への供給が停止される。第2制御信号が校正データ算出装置6及び補正装置7にもそれぞれ入力される。
【0025】
第2制御信号によって、開閉弁39が開く。加熱装置37の加熱により容器36内で発生したカリウム蒸気が、液体金属ガス放出管38を通して校正空間18内に放出される。排風機3が駆動しているので、カリウム蒸気を含む校正空間18内のガスが、ガス供給管21及びサンプリング配管2を通して電極式ナトリウム検出器5に供給される。電極式ナトリウム検出器5が、供給されたガスに含まれたカリウムを検出したとき、このカリウムの濃度に対応した電流値を有する電流信号を出力する。出力されたこの電流信号が配線29により校正データ算出装置6及び補正装置7にそれぞれ入力される。
【0026】
校正データ算出装置6は、第2制御信号を入力したとき、すなわち、校正空間18内のガスが電極式ナトリウム検出器5に供給されているとき、校正データの補正装置7への出力を実行しなく、以下に述べるように電流値の校正データを求める。補正装置7は、第2制御信号を入力したとき、電極式ナトリウム検出器5から入力した電流値の校正データによる補正を実行しない。当然のことながら、前述した補正された電流値が、補正装置7から漏洩量判定器8に出力されない。
【0027】
校正データ算出装置6は、カリウムの検出により電極式ナトリウム検出器5から出力された電流値(以下、便宜的に、現在電流値という)に基づいて、空間1内のガスが電極式ナトリウム検出器5に供給されているときに電極式ナトリウム検出器5から出力される電流値を補正する電流値の校正データを求める。この校正データの算出に際しては、新品の電極式ナトリウム検出器5をサンプリング配管2に設置した後で、初めて、上記したように、校正空間18内のカリウム蒸気を含むガスをガス供給管21及びサンプリング配管2により電極式ナトリウム検出器5に供給したときに、カリウムの検出によって電極式ナトリウム検出器5から出力された電流値(以下、便宜的に、初期電流値という)も用いられる。具体的には、その校正データは、現在電流値から初期電流値を差し引くことによって算出される。求められた校正データは、校正データ算出装置6のメモリに格納される。このメモリに格納された校正データは、校正データ算出装置6で求められた最新の校正データによって更新される。
【0028】
校正空間18から電極式ナトリウム検出器5へのカリウムを含むガスの供給が、設定時間の間、行われる。校正データ算出装置6は、この設定時間の間で、電極式ナトリウム検出器5から出力された電流値(現在電流値)、及び初期電流値を用いて校正データを求める。制御装置23は、第2制御信号を出力してからその設定時間が経過したとき、再び、第1制御信号を出力する。
【0029】
制御装置23から第1制御信号が出力されたとき、開閉弁15,17が開いて開閉弁20,21,39が閉じられ、加熱装置37によるカリウムの加熱が停止される。カリウムが液状に保たれる温度に保持されるように、加熱温度を低下させて加熱装置37によるカリウムの加熱を継続してもよい。その第1制御信号が校正データ算出装置6及び補正装置7にもそれぞれ入力される。
【0030】
排風機3が駆動されているので、空間1内のガスが、サンプリング配管2を通って電極式ナトリウム検出器5に供給される。空間1内の配管11に配管11の間壁を貫通するき裂12が発生したことを想定する。配管11内を流れている液体ナトリウムの一部が、き裂12を通して空間1内に漏洩する。漏洩したナトリウムを含むガスが、空間1から、サンプリング配管2を通って電極式ナトリウム検出器5に供給される。電極式ナトリウム検出器5は、ガスに含まれているナトリウムを検出し、このナトリウムの濃度に対応した電流値を有する電気信号(出力信号)を、配線29に出力する。この電気信号が校正データ算出装置6及び補正装置7にそれぞれ入力される。
【0031】
第1制御信号を入力した校正データ算出装置6は、入力した電気信号の電流値を用いた校正データの算出を実行しなく、メモリに記憶している校正データ(最新の校正データ)を補正装置7に出力する。補正装置7は、第1制御信号を入力したとき、電極式ナトリウム検出器5から出力された電気信号の電流値(ナトリウム濃度に対応した電流値)を、校正データ算出装置6から入力した校正データを用いて補正する。補正された電流値(補正されたナトリウム濃度)が漏洩量判定器8に入力される。漏洩量判定器8は、入力した、補正された電流値(補正されたナトリウム濃度)が設定電流値(設定ナトリウム濃度)以上であると判定する。この判定結果は配管11からのナトリウム漏洩が生じていることを表しており、この判定結果の情報を入力した警報表示装置40はナトリウム漏洩発生の警報を発する。
【0032】
対策選択装置9の機能を以下に説明する。対策選択装置9は、校正データ算出装置6で求められた全ての校正データを、配線33を通して入力する。校正データ算出装置6で、例えば、1回/週で1日間に求められた校正データは、校正データを求めた時点での現在電流値と初期電流値の差、換言すれば、電極式ナトリウム検出器5の検出誤差を示している。対策選択装置9は、入力した校正データである検出誤差を、対策選択装置9のメモリ(図示せず)に格納する。対策選択装置9は、入力した各校正データ(検出誤差)を積分して検出誤差の積分値を求め、さらに、各校正データ(検出誤差)に基づいて検出誤差の変化率を求める。求められた検出誤差の積分値及び検出誤差の変化率が対策選択装置9のメモリに登録される。
【0033】
本実施例では、電極式ナトリウム検出器5の検出誤差の値、検出誤差の積分値及び検出誤差の変化率の値に基づいて、電極式ナトリウム検出器5の性能が、図2に示すように、例えば、Aケース、Bケース、Cケース及びDケースの4つのケースに分類されているとする。Aケースでは、検出誤差の値が「1%未満」、検出誤差の積分値が「10%未満/日」及び検出誤差の変化率の値が「0.1%未満/日」である。Bケースでは、検出誤差の値が「1〜1.5%」、検出誤差の積分値が「10〜20%/日」及び検出誤差の変化率の値が「0.1〜0.3%/日」である。Cケースでは、検出誤差の値が「1.5〜2.5%」、検出誤差の積分値が「20%より大/日」及び検出誤差の変化率の値が「0.3〜0.5%/日」である。Dケースでは、検出誤差の値が「2.5%より大」、検出誤差の積分値が「20%より大/日」及び検出誤差の変化率の値が「0.5%より大/日」である。
【0034】
また、本実施例では、図3に示すように、各ケースに対して、電極16の交換推奨時期、漏洩判定に用いる設定電流値の変更推奨値、及び電極16の劣化を自動的に測定する周期をそれぞれ定めている。上記のAケースでは、電極16の交換推奨時期が「通常交換(1回/3年)」、漏洩判定に用いる設定電流値の変更推奨値が「通常設定値(0.5A)」、及び電極16の劣化を自動的に測定する周期が「通常周期(1回/週)」である。上記のBケースでは、電極16の交換推奨時期が「1年以内」、漏洩判定に用いる設定電流値の変更推奨値が「0.5Aを0.7Aに変更」、及び電極16の劣化を自動的に測定する周期が「1回/2日」である。上記のCケースでは、電極16の交換推奨時期が「即日交換」、漏洩判定に用いる設定電流値の変更推奨値が「0.7Aを1Aに変更」、及び電極16の劣化を自動的に測定する周期が「1回/1日」である。上記のDケースでは、電極16の交換推奨時期が「プラント停止」、漏洩判定に用いる設定電流値の変更推奨値が「0.7Aを1Aに変更」、及び電極16の劣化を自動的に測定する周期が「1回/1日」である。
【0035】
A〜Dケースのそれぞれの検出誤差の値、検出誤差の積分値、検出誤差の変化率の値、電極16の交換推奨時期、漏洩判定に用いる設定電流値の変更推奨値、及び電極16の劣化を自動的に測定する周期が、対策選択装置9のメモリに登録されている。AケースからDケースに向って、検出誤差が大きくなる。
【0036】
対策選択装置9において、入力した各校正データ(検出誤差)を用いて求められた検出誤差の積分値が「10〜20%/日」で、検出誤差の変化率の値が「0.1%未満/日」である。また、校正データ算出装置6で求められた検出誤差(校正データ)の値(最新の値)が「1%未満」である。これらの値は、図4において「算出値」として記載されている。検出誤差及び検出誤差の変化率の各値はAケースであるが、検出誤差の積分値がBケースである。対策選択装置9は、上記した検出誤差の値、検出誤差の積分値及び検出誤差の変化率の値に基づいて、電極式ナトリウム検出器5に対する対策を選択する。対策選択装置9は、「1%未満」、「10〜20%/日」及び「0.1%未満/日」に基づいて、Bケースの対策である、電極16の交換推奨時期として「1年以内」、設定電流値の変更奨励値として「0.5Aを0.7Aに変更」、及び電極の劣化を自動的に測定する周期として「1回/2日」を選択し、表示装置25に出力する。
【0037】
対策選択装置9は、電極16の交換推奨時期に関して言えば、検出誤差に基づいて電極16の交換時期を予測する予測装置である。
【0038】
表示装置25は、電極16の交換推奨時期26である「1年以内」、設定電流値の変更奨励値27である「0.5Aを0.7Aに変更」、及び電極の劣化を自動的に測定する周期28である「1回/2日」を表示する(図1及び図4参照)。これらの表示情報は、測定空間18内のカリウムを含むガスが電極式ナトリウム検出器5に供給され、電極式ナトリウム検出器5によってカリウムが検出されたときに出力される電流値に基づいて得られたものである。表示装置25には、それらの対策を選択する基になった検出誤差の値、検出誤差の積分値及び検出誤差の変化率の値も併せて表示される。
【0039】
オペレータは、表示装置25に表示された検出誤差の値、検出誤差の積分値、検出誤差の変化率の値、電極16の交換推奨時期26、設定電流値の変更奨励値27及び電極の劣化を自動的に測定する周期28の各情報を見ることによって、現時点での電極式ナトリウム検出器5の性能、及び対策の内容を知ることができる。オペレータは、電極式ナトリウム検出器5に設けられた電極16の交換を1年以内に行う必要があることを知る。高速増殖炉プラントが運転されている現時点では、表示装置25に表示された情報によれば、設定電流値の変更奨励値及び電極の劣化を自動的に測定する周期をそれぞれ変更する必要がある。
【0040】
オペレータは、それらの表示情報に基づいて、入力装置24に、設定電流値を0.5Aから0.7Aに変更すること、及び電極の劣化を自動的に測定する周期を1回/2日に変更することを入力する。制御装置23は、入力装置24から電極16の劣化を自動的に測定する周期である「1回/2日」を入力することによって、1回/2日の割合で第2制御信号を出力する。これにより、1回/2日の割合で校正空間18からカリウムを含むガスが電極式ナトリウム検出器5に供給され、カリウムが電極式ナトリウム検出器5によって検出される。
【0041】
入力装置24から出力された、設定電流値を0.5Aから0.7Aに変更する旨の情報が漏洩量判定器8に入力される。これにより、漏洩量判定器8に設定された設定電流値が0.5Aから0.7Aに変更される。このため、漏洩量判定器8では、補正装置7から出力された、補正された電流値が、設定電流値である0.7A以上になったときに、空間1内に配置された配管11でナトリウム漏洩が発生していると判定される。
【0042】
本実施例では、液体金属蒸気発生装置35を設けて校正空間18を内部に形成するタンク(または容器)を備えており、高速増殖炉プラントの運転時において、高速増殖炉プラントの、液体ナトリウムが内部に存在する配管(または容器)が配置された空間内のガスを電極式ナトリウム検出器5に供給しているので、カリウムの検出により電極式ナトリウム検出器5から出力された現在電流値、及び初期電流値に基づいて電極式ナトリウム検出器5の出力信号の校正データ(検出誤差)を高速増殖炉プラントの運転時に求めることができる。また、高速増殖炉プラントの運転時において、高速増殖炉プラントの、液体ナトリウムが内部に存在する配管(または容器)が配置された空間内のガスと、液体金属蒸気発生装置35から校正空間18内に放出されたカリウムの蒸気を、交互に電極式ナトリウム検出器5に供給しているので、求められたその校正データ(検出誤差)を用いて、液体ナトリウムが内部に存在する配管(または容器)が配置された空間内のガスが電極式ナトリウム検出器5に供給された時点での電極式ナトリウム検出器5の出力を補正することができ、この補正された出力を用いてナトリウムの漏洩を判定することができる。このため、高速増殖炉プラントからの液体金属の漏洩を精度良く検出することができる。
【0043】
本実施例によれば、高速増殖炉プラントの運転時に、求められた電極式ナトリウム検出器5の検出誤差に基づいて電極式ナトリウム検出器5(または電極16)の交換予定時期を推定することができ、表示装置25に表示されたその交換予定時期を見ることによってオペレータはそれの交換予定時期を知ることができる。また、本実施例では、求められた電極式ナトリウム検出器5の検出誤差に基づいて、カリウムを含むガスの、校正空間18から電極式ナトリウム検出器5に供給する周期を求めるので、求められた検出誤差により校正空間18から電極式ナトリウム検出器5へのガスの供給周期を調節することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…空間、2…サンプリング配管、3…排風機、5…電極式ナトリウム検出器、6…校正データ算出装置、7…補正装置、8…漏洩量判定器、9…対策選択装置、11…配管、12…き裂、15,17,20,21,39…開閉弁、16…電極、18…校正空間、19…ガス戻り管、21…ガス供給管、23…制御装置、25…表示装置、35…液体金属蒸気発生装置、36…容器、37…加熱装置、38…液体金属ガス放出管、40…警報表示装置、42…データ処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に設置された液体金属蒸気発生装置から前記容器内に放出された液体金属の蒸気を含む第1ガスを、電極式液体金属検出器に供給し、
前記第1ガスに含まれる前記液体金属の蒸気の検出によって前記電極式液体金属検出器から出力される第1出力信号に基づいて、校正情報を生成し、
ナトリウム漏洩を検出する計測対象空間内の第2ガスを前記電極式液体金属検出器に供給し、
前記第2ガスが前記電極式液体金属検出器に供給されているときに前記電極式液体金属検出器から出力される第2出力信号を前記校正情報により補正し、
補正された前記第2出力信号に基づいてナトリウムの漏洩を判定することを特徴とするナトリウム漏洩検出方法。
【請求項2】
前記第1出力信号を用いて求められた前記電極式液体金属検出器の検出誤差に基づいて、前記電極式液体金属検出器の電極の交換時期を予測する請求項1に記載のナトリウム漏洩検出方法。
【請求項3】
ナトリウム漏洩を検出する計測対象空間に両端部を連絡させるサンプリング配管と、前記サンプリング配管に設けられた電極式液体金属検出器と、前記電極式液体金属検出器の上流で前記サンプリング配管に設けられた第1弁と、前記電極式液体金属検出器の下流で前記サンプリング配管に設けられた第2弁と、液体金属の蒸気を発生する液体金属蒸気発生装置が内部に設けられた容器と、この容器に連絡されて第3弁が設けられ、前記電極式液体金属検出器と前記第1弁の間で前記サンプリング配管に接続されたガス供給管と、前記容器に連絡されて第4弁が設けられ、前記電極式液体金属検出器と前記第2弁の間で前記サンプリング配管に接続されたガス戻り管と、前記第1弁及び前記第2弁を開き且つ前記第3弁及び前記第4弁を閉じる第1制御信号、及び前記第3弁及び前記第4弁を開き且つ前記第1弁及び前記第2弁を閉じる第2制御信号を出力する制御装置と、前記第2制御信号を入力したとき、前記電極式液体金属検出器の出力に基づいて校正情報を求める校正情報生成装置と、前記第1制御信号を入力したとき、前記電極式液体金属検出器の出力を前記校正情報により補正する補正装置と、前記補正装置から出力される補正された前記出力に基づいてナトリウムの漏洩を判定する漏洩判定装置とを備えたことを特徴とするナトリウム漏洩検出装置。
【請求項4】
前記第1出力信号を用いて求められた前記電極式液体金属検出器の検出誤差に基づいて、前記電極式液体金属検出器の電極の交換時期を予測する予測装置を設けた請求項3に記載のナトリウム漏洩検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−226830(P2011−226830A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94672(P2010−94672)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】