説明

ナノインプリント用硬化性樹脂組成物

【課題】 ラインエッジラフネスに優れ、より経済的な電子部品等の微細構造物を高い精度で安定して形成することができるナノインプリント用樹脂組成物及びその硬化物を提供する。
【解決手段】
本発明のナノインプリント用光硬化性樹脂組成物は、硬化性モノマー、又は硬化性モノマーとバインダー樹脂とを含有し、該硬化性モノマーとバインダー樹脂との総量100重量部に対して、同一分子骨格中に反応性官能基と疎水性官能基を有する化合物をさらに0.001〜5重量部含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロリソグラフィの分野で、ナノインプリント加工により微細なパターンを高い精度で形成するのに適したナノインプリント用光硬化性樹脂組成物及びその硬化物、これを用いて微細構造物を製造する方法、及びこの方法で製造される微細構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
1μm未満の範囲に到るまでの解像度が必要な電子部品の小型化は、実質上、フォトリソグラフィ技法により達成されてきた。ますます小さな構造の場合は、ArF及びその液浸技術の進展で達成されつつあるが、32nm辺りからは、用いる樹脂のサイズに近づいてきており、ラインエッジラフネス等の問題が顕在化してきている。他方では、解像度、壁面傾斜および縦横比(高さ対解像度比)に対するますます高い要求により、マスク、マスクアライナおよびステッパなどの、フォトリソグラフィ構造化用に必要な装置を使用する場合、コストの急増が生じている。特に最新のステッパは、その数10億円という価格のために、マイクロチップ製造におけるかなりのコスト要因となっている。更に、電子線およびX線などの短波の放射線を使用し、精細化を図る検討も行われているが、生産性の観点から多くの問題点を残している。
【0003】
これらに代わる手法として、ナノインプリント法が期待されている。ナノインプリント法としては、熱可塑性樹脂を加熱・軟化させた後、モールドを押し付け、パターンを作成する熱ナノインプリント法と、光硬化性化合物を基材に塗布後、モールドを押し当て、露光により組成物を硬化させてパターンを作成するUV-ナノインプリント法とが主に知られている。何れも優れた手法ではあるが、UV-ナノインプリント法は、光により硬化させる為、熱ナノインプリント法での加熱冷却過程が無いため、より高いスループットが望める事が期待されている。また、透明なモールドを使用するため、より高い位置精度を簡便に得られることもその大きな特徴である。更に、UV-ナノインプリント法による組成物は主に液状モノマーの組み合わせから出来ており、熱インプリント法に比べ、非常に低い転写圧力でパターン作成が出来る事も大きな特徴の一つである。
【0004】
特許文献1には、基板の全表面に付着させたレジストの、剛性のスタンプ上に存在するレリーフによる熱可塑性変形に基づくナノインプリント法が記述されている。この方法では、熱スタンピング用レジストとして、熱可塑性樹脂(ポリメタクリル酸メチル、PMMA)が使用されるが、全ウエハ表面にわたる約100nmの厚さの通常の変動幅のために、剛性スタンプを用いて6、8および12インチウェハを1工程で構造化することは不可能である。したがって複雑な「ステップアンドリピート」法を使用しなければならないことになるが、これはすでに構造化された隣接する領域を再加熱するため不適当である。
【0005】
特許文献2、特許文献3および特許文献4では、スタンプをUV硬化性レジスト(自己組織化単膜、たとえばアルキルシロキサン)で濡らし、次いで平滑な基板上にプレスする。従来のスタンププロセスと同様に、スタンプを基板表面から上昇させると、構造化されたレジスト材料が残る。使用したレジスト材料は基板に対して十分な濡れを示すが、剥離方法には適しておらず、また十分なエッチング耐性を有していない。また、構造物の寸法は1μmの領域にあるため、大きさの1オーダーを超えて大き過ぎる。
【0006】
特許文献5には、含フッ素ポリマーを用い、モールド剥離性を向上させた例が報告されている。ただし、反応系がラジカル硬化系であること、また、無溶剤系であることから、モールド剥離性向上とともに基材との密着性が犠牲にされており、優れたパターン形成には不適である。特にフォトリソグラフィー代替として使用する場合には、低残膜が望まれるが、このような使用においては基材との密着性が不十分となる。
【0007】
これらの方法はすべて、本発明の目的を実現するには不適当である。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,772,905号明細書
【特許文献2】米国特許第5,900,160号明細書
【特許文献3】米国特許第5,925,259号明細書
【特許文献4】米国特許第5,817,242号明細書
【特許文献5】特開2007−1250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、高解像度と共に優れた縦横比が得られるフォトリソグラフィ法より、実質上、ラインエッジラフネスに優れ、より経済的な電子部品等の微細構造化法であるナノインプリント法に適した組成物であって、基板への密着性が優れ、かつ、モールドからの剥離性の優れたナノインプリント用光硬化性樹脂組成物及びその硬化物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記ナノインプリント用光硬化性樹脂組成物を用いて、微細構造物を製造する方法、及びこの方法で製造される微細構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、転写レジスト(ナノインプリントレジスト)において、基材との密着性を著しく低下することなくモールド剥離性を著しく向上する特定の化合物をナノインプリント用樹脂組成物に添加することにより、転写精度を向上させることができることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、硬化性モノマー、又は硬化性モノマーとバインダー樹脂とを含有するナノインプリント用光硬化性樹脂組成物であって、該硬化性モノマーとバインダー樹脂との総量100重量部に対して、同一分子骨格中に反応性官能基と疎水性官能基を有する化合物Aを0.001〜5重量部含有することを特徴とするナノインプリント用光硬化性樹脂組成物である。
【0013】
好ましくは、本発明の組成物では、反応性官能基が、水酸基、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタニル基、アルコキシシラン基、又はラジカル重合性を有するビニル基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基である。さらに好ましくは、疎水性官能基が、フッ素原子含有基、アルキルシラン基、脂環式炭化水素基、炭素数4以上の脂肪族炭化水素基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基である。
【0014】
また、好ましくは、本発明では、光硬化性樹脂組成物が、カチオン硬化性モノマーを含むカチオン硬化性組成物及び/又はラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーを含むラジカル硬化性組成物であり、該カチオン硬化性モノマーがエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物、カーボネート化合物、ジチオカーボネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0015】
特に好ましくは、本発明の光硬化性樹脂組成物は、反応性官能基としてビニル基、疎水性官能基としてフッ素原子含有基を有する化合物を化合物Aとして含有し、エポキシ化合物又はオキセタン化合物を硬化性モノマーとして含むカチオン硬化性組成物である。
【0016】
また、好ましくは、本発明の光硬化性樹脂組成物は、該硬化性モノマーとして、アクリル系モノマーを含む。
【0017】
また、本発明は、上記光硬化性樹脂組成物を硬化して形成される硬化物を含む。
【0018】
さらに、本発明は、上記光硬化性樹脂組成物にナノインプリント加工を施して微細構造物を得る微細構造物の製造方法を含む。
【0019】
好ましくは、本発明の微細構造物の製造方法は、(1)上記樹脂組成物からなる被膜を支持体上に形成する工程、(2)前記被膜に、微細構造化されたインプリントスタンプを用いてパターンを転写する工程、(3)パターンが転写された被膜を硬化させる工程、及び(4)インプリントスタンプを取り除いて、インプリントされた微細構造を得る工程を含む。
【0020】
また、本発明は、上記製造方法で得られる微細構造物を含む。上記微細構造物には、半導体材料、フラットスクリーン、ホログラム、導波路、メディア用構造体、精密機械部品又はセンサ等が含まれる。
【0021】
本明細書中、「ナノインプリント」とは、支持体上に設けた被膜にナノスタンパをプレスしてパターンを転写する通常のナノインプリント(狭義のナノインプリント)のほか、ナノスタンパの代わりに微細パターンが形成された金型を用い、当該金型上に樹脂組成物を流し込み、その上に支持体を重ね、最上面からプレスする方法を用いた金型による微細パターン転写技術(広義のナノインプリント)をも含む意味に用いる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、マイクロリソグラフィの分野で、半導体材料、フラットスクリーン、ホログラム、メディア用構造体、精密機械部品およびセンサ等の微細構造化用レジストとして、カチオン硬化システム及び/又はラジカル硬化性システムを使用し、著しくパターン形成精度向上の妨げとなるモールド剥離性を飛躍的に向上させることができる。また、欠陥の少ない、優れたパターン形状を得ることができ、特に、残膜厚の小さいパターン形成を安定的に達成する事ができる。本発明によれば、基板への密着性が優れ、かつ、モールドからの剥離性の優れたナノインプリント用硬化性樹脂組成物及びその硬化物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のナノインプリント用光硬化性樹脂組成物は、硬化性モノマー、又は硬化性モノマーとバインダー樹脂とを含有するナノインプリント用光硬化性樹脂組成物であって、該硬化性モノマーとバインダー樹脂との総量100重量部に対して、同一分子骨格中に反応性官能基と疎水性官能基を有する化合物Aを0.001〜5重量部含有することを特徴とする。
【0024】
化合物Aにおいて、疎水性官能基は、ガラス板等の被着板から塗膜を剥離する時の、モールドとの密着性低減に有効であり、被着板剥離性を向上させるのに有効である。反応性官能基は、化合物Aを硬化性モノマーの硬化物中にビルトインするために不可欠であり、ガラス板等の基板との密着性を向上させる。
【0025】
本明細書において、反応性とは、硬化性モノマー(が有する官能基)に対しての反応性を意味する。例えば、水酸基は硬化性モノマーのエポキシ基と反応し、アルコキシシラン基は、硬化性モノマーとしてアクリル系シラン化合物を用いた場合、そのシリル基と反応する。
【0026】
さらに、基材との密着性を維持しつつ、モールド剥離性を向上するためには、塗膜中で、添加する同一分子骨格中に反応性官能基と疎水性官能基を有する化合物を偏析させる必要があり、硬化モノマーとの相溶性を低下させる必要がある。このために、疎水性官能基は非常に重要である。特に、本手法を用いることにより、リソグラフィー用途に使用する場合、特に重要となる残膜厚の小さいパターン形成を安定的に達成することができる。
【0027】
反応性官能基は、光硬化時に骨格中にビルトインされる為に不可欠であり、例えば、水酸基、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタニル基、アルコキシシラン基 又はラジカル重合性を有するビニル基等が挙げられる。
【0028】
同一分子骨格中に反応性官能基と疎水性官能基を有する化合物Aにおいて、疎水性官能基としては、例えば、フッ素原子含有基、アルキルシラン基、脂環式炭化水素基、炭素数4以上の脂肪族炭化水素基が好ましい。また、脂肪族炭化水素基として、C−C結合からなるポリマー鎖を有する基も含まれる。
【0029】
フッ素原子含有基としては、例えば、フッ素原子;C1-20フルオロアルキル基; フルオロビニル基;フルオロアリル基;フルオロシクロアルキル基;フルオロフェニル基,フルオロナフチル基などのフルオロアリール基;フルオロアラアルキル基などが挙げられる。
【0030】
1-20フルオロアルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子に置換された直鎖状又は分岐鎖状のフッ素化アルキル基などが挙げられる。このようなフッ素化アルキル基の代表的な例として、フッ素化メチル基(トリフルオロメチル基等)、フッ素化エチル基(ペンタフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル基等)、フッ素化プロピル基(ヘプタフルオロプロピル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基等)、フッ素化イソプロピル基[2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル基等]、フッ素化ブチル基(ノナフルオロブチル、4,4,4−トリフルオロブチル基等)、フッ素化イソブチル基、フッ素化s−ブチル基、フッ素化t−ブチル基、フッ素化ペンチル基(ウンデカフルオロペンチル、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基等)、フッ素化ヘキシル基(トリデカフルオロヘキシル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフロオロヘキシル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロヘキシル、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等)、フッ素化ヘプチル基(ペンタデカフルオロヘプチル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロヘプチル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル基等)、フッ素化オクチル基(ヘプタデカフルオロオクチル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチル基等)、フッ素化ノニル基(ノナデカフルオロノニル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−ヘプタデカフルオロノニル基等)、フッ素化デシル基(ヘンイコサフルオロデシル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ノナデカフルオロデシル基等)、フッ素化ドデシル基、フッ素化テトラデシル基、フッ素化ヘキサデシル基、フッ素化オクタデシル基などが挙げられる。
【0031】
フッ素化シクロアルキル基としては、例えば、シクロアルキル基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子に置換された基(フルオロシクロアルキル基)、例えば、モノフルオロシクロペンチル基、ジフルオロシクロペンチル基、ノナフルオロシクロペンチル基、モノフルオロシクロヘキシル基、ジフルオロシクロヘキシル基、ウンデカフルオロシクロヘキシル基等の3〜20員のフッ素化シクロアルキル基(好ましくは5〜20員、特に5〜15員のフッ素化シクロアルキル基)などが挙げられる。
【0032】
フッ素化有橋脂環式基としては、例えば、フッ素化ノルボルニル基、フッ素化アダマンチル基、フッ素化ボルニル基、フッ素化イソボルニル基、フッ素化トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、フッ素化テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、フッ素化デカリニル基等が挙げられる。
【0033】
アルキルシラン基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、3−メチルブチル、ヘキシル、4−メチルペンチル、1,3−ジメチルブチル、1−イソプロピルブチル、1,1−ジメチルブチル、2−メチルペンチル、3,3−ジメチルブチル、1,2,2−トリメチルプロピル、2,2−ジメチルブチル基等の炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖アルキル基の、モノ置換シリル基,ジ置換シリル基,トリ置換シリル基などが挙げられる。
【0034】
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基,シクロオクチル基等のシクロアルキル基;シクロアルケニル基;ノルボルニル基、アダマンチル基,ボルニル基、イソボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基、デカリニル基などの橋架け環式基などが挙げられる。
【0035】
炭素数4以上(例えば4〜30程度)の脂肪族炭化水素基としては、例えば、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;ビニル、アリル基等のアルケニル基;エチニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
【0036】
同一分子骨格中に反応性官能基と疎水性官能基を有する化合物Aの具体的な例として、次のような化合物が挙げられる。
【0037】
<疎水性官能基がフッ素原子含有基である化合物>
(i) 反応性官能基が水酸基である化合物としては、炭素数2〜20のフッ素化アルコール、例えば、東ソー・エフテック社製の2,2,2−トリフルオロエタノール、セントラル硝子社製のヘキサフルオロ−2−プロパノール、ダイキン化学工業社製の2,2,3,3−テトラフルオロプロバノール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール、旭硝子社製の2-パーフルオロアルキルエタノール、セントラル硝子社製の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等を挙げることができる。
(ii) 反応性官能基が、カチオン反応性を有するエポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタニル基、アルコキシシラン基である化合物としては、旭硝子社製のパーフルオロプロピルビニルエーテル、東レ・ダウコーニング社製のFSシリーズ等を挙げる事ができる。また、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸無水物の誘導体としてエポキシ基含有化合物も使用可能である。
(iii) 反応性官能基が、(メタ)アクリル基、ビニル基などのラジカル重合性を有するビニル基である化合物としては、共栄社製のパーフルオロアルキルエチルアクリレート(FA-108)、オムノバ・ソリューションズ・インコーポレーティッド社製PolyFox PFシリーズ等を挙げる事ができる。
【0038】
<疎水性官能基がアルキルシラン基である化合物>
(i) 反応性官能基が水酸基である化合物としては、東レダウコーニング社製のヒロドキシアルキル末端ジメチルシロキサンであるBYシリーズ等を挙げる事ができる。
(ii) 反応性官能基がカチオン反応性を有するエポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタニル基である化合物としては、アルキルクロロシラン処理した活性水素基を有するエポキシ、ビニルエーテル、オキセタン化合物を使用することができる。例えば、ダイセル化学工業社製のエポキシ化テトラヒドロベンジルアルコール、丸善石油化学社製の2−ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)、ジエチレングリコールモノビニルエーテル(DEGV)、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、トリエチレングリコールジビニルエーテル、東亞合成社製の3−エチル−3−(メチロール)オキセタン等にトリアルキルクロロシランを反応させた化合物等がこれにあたる。
(iii) 反応性官能基が、(メタ)アクリル基、ビニル基などのラジカル重合性を有するビニル基である化合物としては、アルキルクロロシラン処理した活性水素基を有する(メタ)アクリレートを使用することができる。例えば、共栄社製の2−ヒドロエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロブチル(メタ)アクリレートにトリアルキルクロロシランを反応させた化合物等がこれにあたる。
【0039】
<疎水性官能基が脂環式炭化水素である化合物>
(i) 反応性官能基が水酸基である化合物としては、水添ビスフェノール型の化合物等がこれにあたる。また、水酸基を持つアダマンタン等のいわゆるカルド樹脂と呼ばれる化合物も使用可能である。
(ii) 反応性官能基がカチオン反応性を有するエポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタニル基である化合物としては、水添ビスフェノールA型グリシジルエーテルがこれにあたる。
(iii) 反応性官能基が、(メタ)アクリル基、ビニル基などのラジカル重合性を有するビニル基である化合物としては、ダイセル化学工業社製アダマンチル(メタ)アクリレート、ダイセルサイテック社製イソボルニル(メタ)アクリレート、日立化成工業社製ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等を挙げる事ができる。
【0040】
<疎水性官能基が炭素数4以上の脂肪族炭化水素基である化合物>
(i) 反応性官能基が水酸基である化合物としては、炭素数4〜20のアルコール類、日信化学工業社製のアセチレン系アルコールのポリエーテル化合物であるサーフィノール、三井化学社製の4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合物末端水酸基のTPXシリーズ等を挙げる事ができる。
(ii) 反応性官能基がカチオン反応性を有するエポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタニル基である化合物としては、ダイセル化学工業社製の長鎖アルキル基を有するモノエポキシドであるAOEシリーズ等を挙げる事ができる。
(iii) 反応性官能基が、(メタ)アクリル基、ビニル基などのラジカル重合性を有するビニル基である化合物としては、長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート等を挙げる事ができる。
【0041】
同一分子骨格中に反応性官能基と疎水性官能基を有する化合物Aの添加量は、硬化性モノマー及びバインダー樹脂の総量100重量部に対して0.001〜5重量部、好ましくは、0.01〜2重量部、さらに好ましくは0.1〜2重量部である。添加量が、0.001重量部未満の場合には、十分なモールド剥離性向上が見られない。また、添加量が5重量部を超える場合には、モールド剥離性向上は見られるが同時に基材との密着性も劣るために、パターン精度が劣る。
【0042】
光硬化性樹脂としては、光カチオン硬化タイプまたは光カチオン硬化タイプ及び光ラジカル硬化タイプ、これらの併用タイプを用いることができる。
【0043】
カチオン硬化性システムに使用できるモノマー(カチオン硬化性モノマー)としては、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物、カーボネート化合物、ジチオカーボネート化合物等が挙げられる。
【0044】
光カチオン重合性を示す官能基は、多く知られているが、特に実用性の高い物として、エポキシ基、ビニル基、オキセタニル基等が広く用いられている。
【0045】
エポキシ基を有する化合物(エポキシ化合物)としては、脂環式エポキシ樹脂(例えば、ダイセル化学工業(株)製のセロキサイド2000、2021、3000、EHPE3150CE;三井石油化学(株)製のエポミックVG−3101:油化シェルエポキシ(株)製のE−1031S;三菱ガス化学(株)製のTETRAD−X、TETRAD−C;日本曹達(株)製のEPB−13,EPB−27等がある)等が挙げられる。また、エポキシ基と(メタ)アクリル基を有するハイブリッド化合物を使用することができる。例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、ビニルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、単独でも混合しても使用することができる。
【0046】
ビニル基含有化合物(ビニルエーテル化合物等)としては、ビニル基を有する化合物であれば特に限定する物ではない。市販品としては、丸善石油化学社製の2−ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)、ジエチレングリコールモノビニルエーテル(DEGV)、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ISP社製 RAPI-CUREシリーズ、V-PYROL(登録商標) (N-Viny-2-Pyrrolidone)、V-CAPTM (N-Vinyl-2-Caprolactam)等々が挙げられる。また、α及び/又はβ位にアルキル、アリル等の置換基を有するビニル化合物も使用することができる。また、エポキシ基及び/又はオキセタン基を含むビニルエーテル化合物を使用することができる。これらは、単独でも混合しても使用することができる。
【0047】
オキセタニル基含有化合物(オキセタン化合物)としては、オキセタニル基を有する化合物であれば特に限定する物ではない。市販品としては、東亞合成社製の3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(POX)、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)] メチルエーテル(DOX)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(EHOX)、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン(TESOX)、オキセタニルシルセスキオキサン(OX-SQ)、フェノールノボラックオキセタン(PNOX-1009)等が挙げられる。また、オキセタニル基と(メタ)アクリル基を有するハイブリッド化合物を使用することができる。これらのオキセタン系化合物は単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0048】
カーボネート化合物、ジチオカーボネート化合物としては、分子内にカーボネート基、又はジチオカーボネート基を有する化合物であれば特に限定されない。
【0049】
なお、本発明の光硬化性樹脂組成物は、硬化膨張性化合物を一成分とする事により、硬化収縮をコントロールでき、優れたパターン形状を作製する事が可能となる。
【0050】
具体的には下記化合物1及び化合物2がこれにあたる。
【0051】
(化合物1)
化合物1は、下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1〜R18は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、もしくはハロゲン原子を含んでよいアルキル基、又は置換基を有してよいアルコキシ基を示す)
で表されるビシクロ環を有するエポキシ化合物である。
【0052】
(化合物2)
化合物2は、下記一般式(2)
【化2】

(式中、R19aは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10の一価又は多価の炭化水素基、一価若しくは多価のアルキルエステル、又は一価若しくは多価のアルキルエーテルを示し、R19bは、水素原子、アルキル基を示し、R20〜R23は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を示す。pは1〜6の整数を示し、m及びnは0〜3の整数を示し、X,Y,Zは酸素原子又は硫黄原子を示す。但し、pが1のとき、R19aは、水素原子又は炭素数1〜10の一価のアルキル基、一価のアルキルエステル、又は一価のアルキルエーテルを示し、pが2以上のとき、R19aは単結合、p価の炭化水素基、p価のアルキル基又はp価のアルコキシ基を示す)
で表されるカーボネート化合物系である。
【0053】
また、上記の化合物は、前記光カチオン重合性を有する官能基を有する構造であることが好ましい。このように、反応性を有し膨張性を有する化合物を系内に共存させることにより、硬化収縮をコントロールでき、全く体積収縮の起こらない、理想的なナノインプリント用硬化性組成物となる。
【0054】
ラジカル硬化システム(ラジカル重合システム)に使用できるモノマー(ラジカル硬化性モノマー)としては、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン系化合物、アクリル系シラン化合物、多官能モノマーなどが挙げられる。
【0055】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロカクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソオクチルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類などが挙げられる。スチレン系化合物としては、スチレン等が挙げられる。
【0056】
また、アクリル系シラン化合物としては、例えば、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、アクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシエトキシプロピルトリエトキシシラン、アクリロキシジエトキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシジエトキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0057】
多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及び上記アクリレートに対応する各メタクリレート類、多塩基酸とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのモノ−、ジ−、トリ−又はそれ以上のポリエステルなどがあり、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
ラジカル硬化性モノマーとして、ラジカル重合性の不飽和基を含有し、且つ少なくとも1個以上酸基を有する化合物も好ましく用いられる。このような化合物としては、具体的には、(メタ)アクリル酸、ビニルフェノール、不飽和基とカルボン酸の間に鎖延長された変成不飽和モノカルボン酸、例えばβ−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ラクトン変成等エステル結合を有する不飽和モノカルボン酸、エーテル結合を有する変成不飽和モノカルボン酸などが挙げられる。または、マレイン酸等のカルボン酸基を分子中に2個以上含む物であってもよい。また、これらは単独で用いても混合して用いても良い。中でも、特に好ましくは、不飽和基とカルボン酸の間にラクトンで鎖延長された変成不飽和モノカルボン酸である。
【0059】
具体的な例としては、下記式(3)及び(4)に示した化合物3及び化合物4が挙げられる。
【0060】
化合物3は、下記一般式(3)
【化3】

(式中、R31は、水素原子又はメチル基を表す。R32及びR33は、各々水素原子、メチル基またはエチル基を表す。qは4〜8の整数、sは1〜10の整数を表す。)
で表される(メタ)アクリル酸をラクトン変成した化合物である。
【0061】
化合物4は、下記一般式(4)
【化4】

(式中、R31、R32及びR33は、上記と同じ。R34は炭素数1〜10の2価の脂肪族飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の2価の脂環式飽和又は不飽和炭化水素基、p-キシレン、フェニレン基等を表す。q、sは上記と同じ。)
で表される末端水酸基を酸無水物により酸変性させたラクトン変成物である。具体的には、ダイセルサイテック社製のβ-CEA、東亞合成社製のアロニックスM5300、ダイセル化学工業社製のプラクセルFAシリーズ等がこれにあたる。
【0062】
なお、本発明の光硬化性樹脂組成物は、50μmを超えるような厚膜加工に用いることが出来る。厚膜を必要とする用途であるフラットスクリーン、ホログラム、導波路、精密機械部品およびセンサの微細構造化用レジストとして使用する場合には、増粘剤として次に示すバインダー樹脂(造膜助剤)を用いる事ができる。
【0063】
本発明の光硬化性樹脂組成物に使用できるバインダー樹脂としては、例えば、ポリメタアクリル酸エステルまたはその部分加水分解物、ポリ酢酸ビニル、またはその加水分解物、ポリビニルアルコール、またはその部分アセタール化物、トリアセチルセルロース、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、シリコーンゴム、ポリスチレン、ポリビニルブチラール、ポリクロロプレン、ポリ塩化ビニル、ポリアリレート、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、またはその誘導体、ポリ−N−ビニルピロリドン、またはその誘導体、ポリアリレート、スチレンと無水マレイン酸との共重合体、またはその半エステル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリルニトリル、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル等の共重合可能なモノマー群の少なくとも1つを重合成分とする共重合体等、またはそれらの混合物が用いられる。
【0064】
また、バインダー樹脂として、オリゴマータイプの硬化性樹脂を使用することも可能である。例えば、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化ブタジエンスチレンブロック共重合体等不飽和基含有エポキシ化樹脂等を挙げることができる。その市販品としては、ダイセル化学工業(株)製のエポリードPB,ESBS等がある。
【0065】
また、バインダー樹脂として、共重合型エポキシ樹脂(例えば、グリシジルメタクリレートとスチレンの共重合体、グリシジルメタクリレートとスチレンとメチルメタクリレートの共重合体である日本油脂(株)製CP−50M、CP−50S,或いはグリシジルメタクリレートとシクロヘキシルマレイミド等の共重合体等がある)も好適に使用できる。
【0066】
その他、バインダー樹脂として、特殊な構造を有するエポキシ化樹脂(例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートとスチレンの共重合体、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートとブチルアクリレートとの共重合体、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートとスチレンとメチルメタクリレートの共重合体であるダイセル化学工業(株)製 セルトップ等がある)等を挙げることができる。
【0067】
また、バインダー樹脂として、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノール、クレゾール、ハロゲン化フェノールおよびアルキルフェノール等のフェノール類とホルムアルデヒドとを酸性触媒下で反応して得られるノボラック類とエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応して得られるもの等を使用することも可能である。その市販品としては、日本化薬(株)製EOCN−103,EOCN−104S,EOCN−1020,EOCN−1027,EPPN−201,BREN−S:ダウ・ケミカル社製、DEN−431,DEN−439:大日本インキ化学工業(株)製,N−73,VH−4150等が挙げられる。
【0068】
また、バインダー樹脂として、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びテトラブロムビスフェノールA等のビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させてえられるものや、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルと前記ビスフェノール類の縮合物とエピクロルヒドリンとを反応させ得られるもの等を使用することも可能である。その市販品としては、油化シェル(株)製、エピコート1004、エピコート1002;ダウケミカル社製DER−330,DER−337等が挙げられる。
【0069】
また、バインダー樹脂として、トリスフェノールメタン、トリスクレゾールメタン等のエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの等を使用することも可能である。その市販品としては、日本化薬(株)製EPPN−501,EPPN−502等が挙げられる。また、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、ビフェニルジグリシジルエーテル等も使用することができる。これらのエポキシ樹脂は単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0070】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、さらに、感放射性カチオン重合開始剤を含んでもよい。感放射線性カチオン重合開始剤としては、公知の活性エネルギー線を照射して酸を発生するものであれば特に制限なく利用できるが、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩あるいはピリジニウム塩等を挙げることができる。
【0071】
スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル)スルフィド−ビス(ヘキサフルオロホスフェート)、ビス(4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル)スルフィド−ビス(ヘキサフルオロアンチモネート)、4−ジ(p−トルイル)スルホニオ−4′−tert−ブチルフェニルカルボニル−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロアンチモネート、7−ジ(p−トルイル)スルホニオ−2−イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロホスフェート、7−ジ(p−トルイル)スルホニオ−2−イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロアンチモネート等や、特開平6−184170号公報、特開平7−61964号公報、特開平8−165290号公報、米国特許第4231951号、米国特許第4256828号等に記載の芳香族スルホニウム塩等を挙げることができる。
【0072】
ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等や、特開平6−184170号公報、米国特許第4256828号等に記載の芳香族ヨードニウム塩等を挙げることができる。
【0073】
また、ホスホニウム塩としては、例えば、テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等や、特開平6−157624号公報等に記載の芳香族ホスホニウム塩等を挙げることができる。
【0074】
ピリジニウム塩としては、例えば、特許第2519480号公報、特開平5−222112号公報等に記載のピリジニウム塩等を挙げることができる。
【0075】
また、感放射線性カチオン重合開始剤の陰イオンは、SbF6-、または下記式(5)
【化5】

(式中のそれぞれのX1〜X4は0から5の整数を表し、全ての合計が1以上である。)
で表されるボレート類(化合物5)であると、反応性が高くなり好ましい。前記ボレート類のより好ましい例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0076】
スルホニウム塩およびヨードニウム塩は、市場より容易に入手することもできる。市場より容易に入手することができる感放射線性カチオン重合開始剤としては、例えば、ユニオンカーバイド社製のUVI−6990およびUVI−6974、旭電化工業(株)製のアデカオプトマーSP−170およびアデカオプトマーSP−172等のスルホニウム塩や、ローディア社製のPI 2074等のヨードニウム塩を挙げることができる。
【0077】
これら感放射線性カチオン重合開始剤の添加量は、特に制限されないが、前記カチオン硬化性ポリマー100重量部に対し0.1〜15重量部が好ましく、より好ましくは1〜12重量部である。
【0078】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、さらに、感放射性ラジカル重合開始剤を含んでいてもよい。感放射線性ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン・ベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンなどのアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;キサントン類;1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタンなどの公知慣用の光重合開始剤を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
また、これらの光重合開始剤は、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの三級アミン類のような公知慣用の光増感剤の1種あるいは2種以上と組み合わせて用いることができる。
【0080】
例えば市販されている開始剤の例としては、Ciba社から入手可能なIrgacure(登録商標)184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、Irgacure(登録商標)500(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン)、およびIrgacure(登録商標)タイプのその他の光開始剤;Darocur(登録商標)1173、1116、1398、1174および1020(Merck社から入手可能)等が挙げられる。適した熱開始剤は、とりわけジアシルペルオキシド類、ペルオキシジカーボネート類、アルキルペルエステル類、ジアルキルペルオキシド類、ペルケタール類、ケトンペルオキシド類およびアルキルヒドロペルオキシドの形態の有機過酸化物である。こうした熱開始剤の具体例は、ジベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチルおよびアゾビスイソブチロニトリルである。
【0081】
本発明の樹脂組成物は、増感剤を含んでいても良い。使用できる増感剤としては、アントラセン、フェノチアゼン、ぺリレン、チオキサントン、ベンゾフェノンチオキサントン等が挙げられる。更に、増感色素としては、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム塩系色素等が例示される。
【0082】
特に好ましいのは、アントラセン系の増感剤であり、カチオン硬化触媒(感放射性カチオン重合開始剤)と併用する事により、感度が飛躍的に向上すると共に、ラジカル重合開始機能も有しており、本発明のカチオン硬化システムとラジカル硬化システムを併用するハイブリッドタイプでは、触媒種をシンプルにできる。具体的なアントラセンの化合物としては、ジブトキシアントラセン、ジプロポキシアントラキノン(川崎化成社製 Anthracure(登録商標) UVS-1331、1221)等が有効である。
【0083】
増感剤は、硬化性モノマー100重量部に対して0.01〜20重量部、好ましくは0.01〜10重量部の割合で使用される。
【0084】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、必要に応じてナノスケール粒子を添加する事ができる。たとえば、下記式(6)
SiU4 (6)
(式中、基Uは同一、または異なり、加水分解性基またはヒドロキシル基である)で表される化合物(化合物6)、および/または、下記式(7)
41a42bSiU(4-a-b) (7)
(式中、R41は非加水分解性基であり、R42は官能基を有する基であり、Uは上記の意味を有し、aおよびbは値0、1、2または3を有し、合計(a+b)は値1、2または3を有する)
で表される化合物(化合物7)などの重合性シラン、および/またはそれらから誘導された縮合物を添加する事ができる。
【0085】
ナノスケール粒子としては、他に、酸化物類、硫化物類、セレン化物類、テルル化物類、ハロゲン化物類、炭化物類、ヒ化物類、アンチモン化物類、窒化物類、リン化物類、炭酸塩類、カルボン酸塩類、リン酸塩類、硫酸塩類、ケイ酸塩類、チタン酸塩類、ジルコン酸塩類、アルミン酸塩類、スズ酸塩類、鉛酸塩類およびこれらの混合酸化物からなる群から選択されるナノスケール粒子が挙げられる。
【0086】
必要に応じて添加するナノインプリント用組成物中のナノスケール粒子の体積分率(含有量)は、光硬化性樹脂組成物全体に対して、例えば0〜50体積%、好ましくは0〜30体積%、特に好ましくは0〜20体積%である。
【0087】
ナノスケール粒子は、通常1〜200nm程度、好ましくは2〜50nm程度、特に好ましくは2〜20nm程度の粒径を有する。
【0088】
たとえば国際公開第96/31572号から知られているものなどとしてのナノスケール無機粒子は、たとえばCaO、ZnO、CdO、SiO2、TiO2、ZrO2、CeO2、SnO2、PbO、Al23、In23およびLa23などの酸化物類;CdSおよびZnSなどの硫化物類;GaSe、CdSeまたはZnSeなどのセレン化物類;ZnTeまたはCdTeなどのテルル化物類;NaCl、KCl、BaC12、AgCl、AgBr、AgI、CuCl、CuBr、CdI2またはPbI2などのハロゲン化物類;CeC2などの炭化物類;AlAs、GaAsまたはCeAsなどのヒ化物類;InSbなどのアンチモン化物類;BN、AlN、Si34またはTi34などの窒化物類;GaP、InP、Zn32またはCd32などのリン化物類;Na2CO3、K2CO3、CaCO3、SrCO3およびBaCO3などの炭酸塩類;カルボン酸塩類、たとえばCH3COONaおよびPb(CH3COO)4などの酢酸塩類;リン酸塩類;硫酸塩類;ケイ酸塩類;チタン酸塩類;ジルコン酸塩類;アルミン酸塩類;スズ酸塩類;鉛酸塩類、およびその組成が好ましくは低熱膨張係数を有する通常のガラスの組成、たとえばSiO2、TiO2,ZrO2およびAl23の二成分、三成分または四成分の組合せに一致する、対応する混合酸化物類である。
【0089】
これらのナノスケール粒子類は、従来の方法、たとえば国際公開第96/31572号に記載された文献による火炎加水分解、火炎熱分解およびプラズマ法で作製することができる。安定化されたコロイド状無機粒子のナノ分散ゾル類、たとえばBAYER社製のシリカゾル、Goldschmidt社製のSnO2ゾル類、MERCK社製のTiO2ゾル類、Nissan Chemicals社製のSiO2、ZrO2、A123およびSb23ゾルまたはDEGUSSA社製のAerosil分散物類などが特に好ましい。
【0090】
好ましいナノインプリント用光硬化性樹脂組成物はさらに、下記式(8)
43(U1)3Si (8)
(式中、R43は部分的にフッ素化またはペルフルオロ化されたC2〜C20−アルキルであり、U1はC1〜C3−アルコキシ、メチル、エチル基または塩素原子である)
で表されるフルオロシラン(化合物8)を含む。
【0091】
部分的にフッ素化されたアルキルとは、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子により置き換えられたアルキル基を意味する。
好ましい基R43は、CF3CH2CH2、C25CH2CH2、C49CH2CH2、n-C613CH2CH2、n-C817CH2CH2、n-C1021CH2CH2およびi-C37O-(CH2)3である。
【0092】
式(8)のフルオロシランの例で、市販されているものは、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル−1−トリエトキシシラン、CF3CH2CH2SiCl2CH3、CF3CH2CH2SiCl(CH3)2、CF3CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、i-C37O-(CH2)3SiCl2CH3、n-C613CH2CH2SiCl2CH3およびn-C613CH2CH2SiCl(CH32である。
【0093】
式(8)のフルオロシランは、ナノインプリント用樹脂組成物の合計重量に対して例えば0〜3重量%、好ましくは0.05〜3重量%、さらに好ましくは0.1〜2.5重量%、特に好ましくは0.2〜2重量%の量で存在し得る。特に転写インプリントスタンプとしてガラススタンプまたはシリカガラススタンプが使用された場合は、フルオロシランが存在することが好ましい。
【0094】
本発明はさらに、
(1)本発明の光硬化性樹脂組成物からなる被膜を支持体上に形成する工程、
(2)前記被膜に、微細構造化されたインプリントスタンプを用いてパターンを転写する工程、
(3)パターンが転写された被膜を硬化させる工程、及び
(4)インプリントスタンプを取り除いて、インプリントされた微細構造を得る工程
を含む、微細構成物の製造方法に関する。この微細構成物は、マイクロリソグラフィに好適に用いられる。
【0095】
ステップ(1)で未硬化被膜を作製する支持体は、たとえばガラス、シリカガラス、フイルム、プラスチックまたはシリコンウェハである。
【0096】
次いで、本発明によるナノインプリント用樹脂組成物を接着促進被膜に、好ましくは0.01〜1μmの厚さに、たとえばスピンコーティング、スリットコーティング、スプレーコーティングまたはローラーコーティングなどの知られている方法により、被膜として付着させる。本発明によるナノインプリント用樹脂組成物は、好ましくは1mPas〜10Pas、さらに好ましくは5mPas〜5Pas、特に好ましくは5mPas〜1000mPasの粘度を有する。
【0097】
ナノインプリント用樹脂組成物はそれ自体で、あるいは有機溶媒の溶液として付着させることができる。本発明において組成物に用いる有機溶媒は、組成物を希釈することによりペースト化し、容易に塗布工程を可能とし、次いで乾燥させて造膜し、接触露光を可能とするために用いられる。具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0098】
インプリント用転写スタンプとしては、透明テフロン(登録商標)樹脂、シリコーンゴム又はシクロオレフィンポリマー類を用いることができる。
【0099】
転写スタンプを塗膜上に置いた後に、スタンプを例えば10から300秒、好ましくは20〜100秒、特に好ましくは30〜60秒の持続時間で、0.1〜100MPaの圧力下でプレスする。転写した材料の層厚は、例えば50〜1000nm、好ましくは150〜500nmである。
【0100】
転写インプリントスタンプがコート塗膜上に静止している間に、UV硬化を実施する。必要に応じて熱を併用することも可能である。たとえば、約80〜150℃で約1〜10分間の加熱後、約0.1秒〜2分間のUV照射を行い、被膜材料を硬化させ、転写インプリントスタンプを取り除いて、インプリントされた微細構造を得る。
【0101】
この微細構造化構成物を、走査電子顕微鏡を用いて調査すると、標的基板上にインプリントされた微細構造だけでなく、30nm未満の厚さを有する被膜の構造化されていない残留層も残っていることが示される。
【0102】
次のマイクロエレクトロニクス中への使用では、急峻な壁面傾斜および高い縦横比(アスペクト比)を達成するために、残留層を取り除く必要が有る。
【0103】
したがって、本発明により使用されるナノインプリント用組成物は、酸素プラズマ又はCHF3/O2ガス混合物によりエッチングすることができる。
【0104】
上記ステップ(1)から(4)と、支持体が構造化される半導体材料であり、エッチングした領域中の半導体材料をドーピングするか、またはその半導体材料をエッチングするステップとを含む方法は、微細構造化された半導体材料を製造する有効な手段となる。
【0105】
エッチングの後、レジストコーティングを、たとえば水酸化テトラメチルアンモニウムなどの従来の溶媒により除去することができる。
【0106】
カチオン硬化性モノマーは、(i)硬化収縮が小さい、(ii)酸素障害が無いという長所を有する反面、(i)反応速度が遅い、(ii)アルカリ等の影響が大きい等の短所がある。これに対し、ラジカル硬化性モノマーは、(i)貯蔵安定性が高く、(ii)重合速度が速い、(iii)水分等の影響が少ない、(iv)厚膜硬化が可能、(v)モノマーの種類が豊富である等の長所があるが、(i)硬化収縮が大きい、(ii)酸素障害がある、(iii)モノマー臭気・皮膚刺激性が大きい等の短所を有する。
【0107】
本発明において、カチオン硬化性組成物に、硬化性モノマーとバインダー樹脂の総量100重量部に対して、同一分子骨格中に反応性官能基と疎水性官能基を有する化合物を0.001〜5重量部含有させることにより、塗布性、ガラス基板密着性、被着板剥離性、硬化収縮性、及びパターン形状のいずれも優れ、モールドからの剥離性に優れた組成物及びその硬化物が得られる。
【0108】
また、本発明において、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーを含むラジカル硬化性組成物に、同一分子骨格中に反応性官能基と疎水性官能基を有する化合物を、硬化性モノマーとバインダー樹脂の総量100重量部に対して0.001〜5重量部含有させることにより、塗布性、ガラス基板密着性、被着板剥離性、及びパターン形状のいずれも優れ、モールドからの剥離性に優れ、かつ、ラジカル硬化系の欠点である硬化収縮を抑制した、硬化収縮性も良好な組成物及びその硬化物が得られる。
【0109】
また、本発明において、カチオン硬化性モノマーとラジカル硬化性モノマーとを含む組成物に、同一分子骨格中に反応性官能基と疎水性官能基を有する化合物を、硬化性モノマーとバインダー樹脂の総量100重量部に対して0.001〜5重量部含有させることにより、塗布性、ガラス基板密着性、被着板剥離性、硬化収縮性、及びパターン形状のいずれも優れ、モールドからの剥離性に優れた組成物及びその硬化物が得られる。
【0110】
カチオン硬化性モノマーとラジカル硬化性モノマーとを含むカチオン・ラジカル硬化併用系組成物は、硬化速度及び硬化収縮のバランスがとれた硬化系であり、本発明において、同一分子骨格中に反応性官能基と疎水性官能基を有する化合物を、硬化性モノマーとバインダー樹脂の総量100重量部に対して0.001〜5重量部含有させることにより、硬化収縮をコントロールした解像度の高い矩形を有するパターン形状を有し、かつ、塗布性、ガラス基板密着性、被着板剥離性、硬化収縮性も優れ、モールドからの剥離性に優れた組成物及びその硬化物を得ることができる。
【実施例】
【0111】
以下に本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。ただし本発明はこの実施例により限定されるものではない。
【0112】
実施例1〜11、比較例1〜3
1)塗膜調製法
<Si基材>
Si基材として、ヘキサメチルジシラザンで前処理した4インチシリコンウェハを用いた。
<ナノインプリント用光硬化性樹脂組成物>
ナノインプリント用光硬化性樹脂組成物は、表1に示すように、同一分子骨格中に反応性官能基と疎水性官能基を有する化合物(A)、硬化性モノマー(B)、開始剤(C)、増感剤(D)、ナノスケール粒子(E)、バインダー樹脂(造膜助剤:F)、及び溶剤(G)を使用して、公知の方法により、スピンコータ中で調製した。表1中の各成分の具体的な化合物を以下に示す。
同一分子骨格中に反応性官能基と疎水性官能基を有する化合物:表2に示す。
硬化性モノマー:表3に示す。
開始剤
C-1:4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニルヨウドニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート/ローデア製 PI2074/感放射性カチオン重合開始剤
C-2:2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン/チバジャパン社製 Irgacure651/感放射性ラジカル重合開始剤
増感剤
D-1:ジブトキシアントラセン/川崎化成 DBA/AnthracureR/UVS-1331
ナノ粒子
E-1:フルオロシラン/R43(U1)3Si(化合物8)
バインダー樹脂
F-1:A400共重合体;CB1100;3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレート/ブチルアクリレート=1/1共重合物
溶剤
G-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/ダイセル化学社製 MMPGAC
<塗膜調製>
上記のシリコンウェハに、スピンコーティング(3000回転、30秒)により、上記のナノインプリント用組成物の塗膜を、それぞれ形成した。溶剤を使用したものについては、溶媒を除去するために、約95℃で5分間乾燥させた。乾燥後のdry塗膜の層厚は約500nmであった。
【0113】
2)微細構造の標的基板上への転写およびインプリンティング
微細構造の標的基板上への転写およびインプリンティングは、インプリンティング装置(明昌機工社製NM−0401モデル)を用いて行った。このインプリンティング装置は、コンピュータで制御された試験器であり、装荷、緩和速度、加熱温度等をプログラムすることにより、規定された圧力を特定の時間維持することが可能である。また、付帯する高圧水銀燈により、UV放射線により光化学的に硬化が開始される。実施例1〜11、比較例1〜3では、上記で調製した塗膜に、表1に示した、プレス圧、プレス温度、プレス時間、及びUV露光量で、転写およびインプリンティングを行った。実施例1〜11、比較例1〜3では、200nmのライン&スペースのパターンを転写した。
【0114】
以上のようにして作成したパターンについて、パターン両端の状況、エッジの矩形、および約90°の壁面傾斜を有するナノ構造物を走査電子顕微鏡を用いて観察し、その形状を評価した。その後、残存膜を酸素を用いてプラズマエッチングした後、CHF3/O2(25:10(体積比))でエッチングする事により、Si上にパターンを作製(微細加工)した。
【0115】
<微細加工の評価>
実施例1〜11、比較例1〜3の樹脂組成物における微細加工について、塗布性、硬化収縮、及び微細構造パターンの形状について、以下に示す方法で評価を行った。その結果を表1に示した。
【0116】
(塗布性)
硬化性組成物をSiウエハ上にスピンコートした後の表面の状態を観察し、均一な塗膜形成の有無を観察した。下記の基準により評価し、結果を表1に示した。
○:均一な塗膜が得られた。
×:スピンコート後塗膜のはじきが観察された。
【0117】
(硬化収縮)
転写インプリントスタンプを取り除いた後に形成したパターンを、走査顕微鏡を用いて観察し、その外観を観察した。下記の基準により評価し、結果を表1に示した。
◎:パターンエッジ及びパターン端が矩形を保っていた。
○:パターンエッジ及びパターン端がやや婉曲していた。
△:パターンエッジ及びパターン端が婉曲していた。
×:両端のパターン面が収縮し、はがれが生じていた。
【0118】
(微細構造パターンの作製)
転写したパターンの残存部分を酸素のプラズマエッチングで除去した後、CHF3/O2(25:10(体積比))でドライエッチングしたSiウエハ上のパターンの形状を、走査顕微鏡を用いて確認した。下記の基準により評価し、結果を表1に示した。
○:パターンエッジの矩形を保っていた。
×:パターンエッジの矩形が崩れた。
【0119】
<転写インプリントスタンプとの剥離性の評価>
実施例1−11、比較例1〜3の樹脂組成物について、転写インプリントスタンプとの剥離性を、以下のようにして評価した。その結果を表1に示した。
【0120】
26mm×76mmのガラス板(以下「ガラス基板」と称する)の中心部に硬化性組成物を0.005gから0.01g滴下し、溶剤含有の場合には、90℃×5分プレベイクして溶剤を除去した後、別に容易した26mm×76mmのガラス基板(以下「被着板」と称する)を直角に交差する形で密着させた。その後、硬化性組成物が直交交差部分に均一に広がった状態になるまで押圧して、その状態を維持したまま紫外線露光を行い硬化させた。ついで、2枚のガラス基板を剥離させ、この剥離強さを測定した。
【0121】
被着板は、表面処理を全くしないものと、表面を離型剤処理したものの2種類を用いて剥離試験を行い、表面処理をしていない被着版を使用した場合の剥離強さにより、ガラス基板に対する密着性を評価し、表面離型剤処理した被着板を使用した場合の剥離強さにより、離型性の良/否を評価した。
【0122】
被着板表面の離型処理は、フッ素系表面処理剤デュラサーフHD−1100(ダイキン工業株式会社製)に被着板を浸漬し、溶剤を自然乾燥により除去し、室温で24時間放置することにより離型剤を定着させ、その後、フルオロカーボンにて余分の離型剤を洗浄除去することにより行った。
【0123】
ガラス基板の密着性は、剥離強さについて
>=15N:○
<15N:×
として評価した。
【0124】
離型処理を施した被着板に対する剥離性は、剥離強さを
<10N:○
>=10N:×
として評価した。
【0125】
以上の評価結果を表1に示す。
【0126】
表1から、本光硬化性樹脂組成物は、モールド剥離性に優れることが判った。
【0127】
【表1】

なお、表1において、硬化性樹脂組成物の各成分量は、重量部で示す。
【0128】
【表2】

【0129】
注1)
【化6】

【0130】
注2)
【化7】

【0131】
【表3】

【0132】
実施例1では、エポキシ化合物50重量部とオキセタン化合物50重量部とからなるカチオン硬化性モノマーを用い、同一分子骨格中に反応性官能基としてビニル基、疎水性官能基としてフッ素基を有する化合物を、該硬化性モノマー100重量部に対して、0.5重量部添加して、カチオン硬化性組成物からなるナノインプリント用樹脂組成物及びその硬化物を得た。得られた組成物からは均一な塗膜が得られ、塗布性に優れていた。
【0133】
得られた組成物を、表面処理をしていない被着板に塗布し、硬化した場合の剥離強さは15N以上であり、優れたガラス基板密着性を示した。また、得られた組成物を、表面離型剤処理した被着板に塗布し、硬化した場合の剥離強さは10N未満であり、被着板剥離性にも優れていた。
【0134】
得られた組成物の塗膜をSiウエハ上にスピンコートした後硬化して、転写インプリントスタンプを取り除いて形成したパターンでは、パターンエッジ及びパターン端は矩形を保っており、硬化収縮性も優れていた。
【0135】
上記パターンの残存部分を酸素のプラズマエッチングで除去した後、CHF3/O2でドライエッチングしたSiウエハ上のパターンは、パターンエッジの矩形が保たれ、優れたパターン形状を示した。
【0136】
これに対し、比較例2では、実施例1と同じエポキシ化合物50重量部とオキセタン化合物50重量部とからなるカチオン硬化性モノマーを用い、実施例1と同じ同一分子骨格中に反応性官能基としてビニル基、疎水性官能基としてフッ素基を有する化合物を、該硬化性モノマー100重量部に対して、6重量部添加した。こうして得られた組成物から得られた硬化物は、実施例1と比較してUV露光量を2倍にしたにもかかわらず、ガラス基板密着性が劣り、また、得られたパターンの矩形は崩れていた。
【0137】
さらに、比較例3では、同一分子骨格中に反応性官能基と疎水性官能基を有する化合物を添加しない以外は、実施例1と同様にしてナノインプリント用樹脂組成物及びその硬化物を得たが、得られた硬化物は、被着板剥離性が劣り、また、得られたパターンの矩形は崩れていた。
【0138】
実施例2、5〜8では、エポキシ化合物からなるカチオン硬化性モノマー50重量部とアクリル化合物からなるラジカル重合性不飽和結合を有するモノマー30重量部とからなる硬化性モノマーを用い、表1に示した種々の同一分子骨格中に反応性官能基と疎水性官能基を有する化合物を、硬化性モノマー(80重量部)及びバインダー樹脂(20重量部)100重量部に対して、0.5重量部添加して、それぞれ、カチオン硬化性組成物とラジカル硬化性組成物とからなるナノインプリント用樹脂組成物及びその硬化物を得た。得られた全ての組成物から均一な塗膜が得られ、塗布性に優れていた。
【0139】
得られた各組成物を、表面処理をしていない被着版に塗布し、硬化した場合の剥離強さはいずれも15N以上であり、優れたガラス基板密着性を示した。また、得られた各組成物を、表面離型剤処理した被着板に塗布し、硬化した場合の剥離強さはいずれも10N未満であり、被着板剥離性にも優れていた。
【0140】
得られた各組成物の塗膜を硬化後、転写インプリントスタンプを取り除いて形成したパターンは、いずれも、パターンエッジ及びパターン端が矩形を保っており、硬化収縮性も優れていた。
【0141】
上記パターンの残存部分を酸素のプラズマエッチングで除去した後、CHF3/O2でドライエッチングしたSiウエハ上のパターンは、パターンエッジの矩形が保たれ、優れたパターン形状を示した。
【0142】
実施例3では、アクリル化合物からなるラジカル重合性不飽和結合を有するモノマー50重量部とバインダー樹脂50重量部と溶剤400重量部とを用い、同一分子骨格中に反応性官能基としてビニル基、疎水性官能基としてフッ素基を有する化合物を、硬化性モノマー(50重量部)及びバインダー樹脂(50重量部)100重量部に対して、0.5重量部添加して、ラジカル硬化性組成物からなるナノインプリント用樹脂組成物及びその硬化物を得た。得られた組成物からは均一な塗膜が得られ、塗布性に優れていた。
【0143】
得られた組成物を、表面処理をしていない被着版に塗布し、硬化した場合の剥離強さは15N以上であり、ラジカル硬化系であるにもかかわらず、優れたガラス基板密着性を示した。また、得られた組成物を、表面離型剤処理した被着板に塗布し、硬化した場合の剥離強さは10N未満であり、被着板剥離性にも優れていた。
【0144】
得られた組成物の塗膜を硬化後、転写インプリントスタンプを取り除いて形成したパターンは、パターンエッジ及びパターン端が婉曲していたが、両端のパターン面の収縮やはがれは見られず、ラジカル硬化系であるにもかかわらず、硬化収縮性は良好であった。
【0145】
上記パターンの残存部分を酸素のプラズマエッチングで除去した後、CHF3/O2でドライエッチングしたSiウエハ上のパターンは、パターンエッジの矩形が保たれ、優れたパターン形状を示した。
【0146】
また、実施例9では、実施例3と同様のアクリル化合物からなるラジカル重合性不飽和結合を有するモノマー50重量部とバインダー樹脂50重量部と溶剤400重量部とを用い、同一分子骨格中に反応性官能基としてビニル基、疎水性官能基としてフッ素基を有する化合物を、硬化性モノマー(50重量部)及びバインダー樹脂(50重量部)100重量部に対して、0.1重量部添加した。得られた組成物からは均一な塗膜が得られ、塗布性に優れていた。また、得られた組成物の硬化物は、ガラス基板密着性、被着板剥離性、及びパターン形状のいずれも優れ、硬化収縮性も良好であった。
【0147】
これに対し、比較例1では、実施例3及び9と同様のアクリル化合物からなるラジカル重合性不飽和結合を有するモノマー50重量部とバインダー樹脂50重量部と溶剤400重量部とを用い、同一分子骨格中に反応性官能基としてビニル基、疎水性官能基としてフッ素基を有する化合物を、硬化性モノマー(50重量部)及びバインダー樹脂(50重量部)100重量部に対して、0.0008重量部添加した。得られた組成物の硬化物は、ガラス基板密着性、被着板剥離性が共に悪く、また、得られたパターンの矩形は崩れていた。
【0148】
実施例4では、ビニルエーテル化合物からなるカチオン硬化性モノマー70重量部を用い、同一分子骨格中に反応性官能基としてビニル基、疎水性官能基としてフッ素基を有する化合物を、硬化性モノマー(70重量部)及びバインダー樹脂(30重量部)100重量部に対して、0.5重量部添加した。得られた組成物からは均一な塗膜が得られ、塗布性に優れていた。また、得られた組成物の硬化物は、ガラス基板密着性、被着板剥離性、及びパターン形状のいずれも優れ、硬化収縮性も良好であった。
【0149】
実施例11では、ビニルエーテル化合物からなるカチオン硬化性モノマー70重量部を用い、同一分子骨格中に反応性官能基として水酸基、疎水性官能基として脂肪族官能基を有する化合物を、硬化性モノマー(70重量部)及びバインダー樹脂(30重量部)100重量部に対して、0.5重量部添加した。得られた組成物からは均一な塗膜が得られ、塗布性に優れていた。また、得られた組成物の硬化物は、ガラス基板密着性、被着板剥離性、及びパターン形状のいずれも優れ、硬化収縮性も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明のナノインプリント用光硬化性樹脂組成物によれば、ラインエッジラフネスに優れ、より経済的な電子部品等の微細構造物を高い精度で製造できるため、半導体材料、フラットスクリーン、ホログラム、導波路、メディア用構造体、精密機械部品又はセンサなどの精密機械部品等の分野で極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性モノマー、又は硬化性モノマーとバインダー樹脂とを含有するナノインプリント用光硬化性樹脂組成物であって、該硬化性モノマーとバインダー樹脂との総量100重量部に対して、同一分子骨格中に反応性官能基と疎水性官能基を有する化合物Aを0.001〜5重量部含有することを特徴とするナノインプリント用光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
反応性官能基が、水酸基、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタニル基、アルコキシシラン基、又はラジカル重合性を有するビニル基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基である請求項1記載のナノインプリント用光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
疎水性官能基が、フッ素原子含有基、アルキルシラン基、脂環式炭化水素基、炭素数4以上の脂肪族炭化水素基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基である請求項1又は2記載のナノインプリント用光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
光硬化性樹脂組成物が、カチオン硬化性モノマーを含むカチオン硬化性組成物及び/又はラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーを含むラジカル硬化性組成物であり、該カチオン硬化性モノマーがエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物、カーボネート化合物、ジチオカーボネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1〜3の何れかの項に記載のナノインプリント用光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
反応性官能基としてビニル基、疎水性官能基としてフッ素原子含有基を有する化合物を化合物Aとして含有し、エポキシ化合物又はオキセタン化合物を硬化性モノマーとして含むカチオン硬化性組成物である請求項1〜4の何れかの項に記載のナノインプリント用光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
硬化性モノマーが、アクリル系モノマーを含む請求項1〜5の何れかの項に記載のナノインプリント用光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかの項に記載の光硬化性樹脂組成物を硬化して形成される硬化物。
【請求項8】
請求項1〜6の何れかの項に記載の光硬化性樹脂組成物にナノインプリント加工を施して微細構造物を得る微細構造物の製造方法。
【請求項9】
(1)請求項1〜6の何れかの項に記載の光硬化性樹脂組成物からなる被膜を支持体上に形成する工程、
(2)前記被膜に、微細構造化されたインプリントスタンプを用いてパターンを転写する工程、
(3)パターンが転写された被膜を硬化させる工程、及び
(4)インプリントスタンプを取り除いて、インプリントされた微細構造を得る工程
を含む請求項8記載の微細構造物の製造方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9の何れかの項に記載の製造方法で得られる微細構造物。
【請求項11】
半導体材料、フラットスクリーン、ホログラム、導波路、メディア用構造体、精密機械部品又はセンサである請求項10記載の微細構造物。

【公開番号】特開2009−191172(P2009−191172A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33455(P2008−33455)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】