説明

ナノノズル装置アレイ:その作製および高分子分析における利用

【解決手段】 DNAシーケンシングを含む高分子構造の解析での使用に適した、狭窄ナノチャネル装置を開示する。また、そうした装置を製造するための方法、およびそうした装置を用いた高分子の解析方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願明細書は、2006年7月19日に出願された米国仮出願第60/831,772号;2007年3月28日に出願された米国仮出願第60/908,582号;および2007年3月28日に出願された米国仮出願第60/908,584号の利益を主張するものであり、それらの全ては参照によって本願明細書に組み込まれるものである。
【0002】
本発明はナノスケールの装置の技術分野に関するものである。本発明はまた、高分子のシーケンシングの技術分野、特にDNAのシーケンシングおよび特性解析の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0003】
本願明細書では、様々な科学技術的および特許の刊行物を参照している。それらそれぞれは、その全てが参照として組み込まれる。
【0004】
DNAまたはRNAといった生体分子はヌクレオチドからなる長鎖状分子であり、その配列は生体のゲノムおよびポストゲノミックな遺伝子発現情報と直接的に関連している。個体の一生の間に起こるヌクレオチド配列の変異または転位は、多くの場合、遺伝的異常または悪性腫瘍といった病状を引き起こす可能性がある。他の場合には、各個体間の配列の少しの相違が、集団の遺伝的構成の多様性を反映する。遺伝子配列のそのような相違によって、特定の個体は、薬物療法を含む環境からの刺激およびシグナルに対して異なる反応を示す。例えば、ある患者が特定の組成物に対して良好な反応を示す一方で、他の患者は反応がない、または不都合な副作用を示しさえする。
【0005】
遺伝的多様性および医学的・薬理学的意味合いを研究する集団遺伝学、メディカルゲノミックス、および薬理ゲノム学の分野は、大規模な配列の解析および大量のサンプル数を必要とする。生成される配列情報は、ヘルスケアおよび医薬品業界にとって、特に有用なものであろう。癌ゲノミクスおよび診断は、腫瘍形成へ至るゲノム不安定性を研究する。これら全ての分野は、核酸などのバイオポリマー分子の直線的な配列、またはバイオポリマーのメチル化のパターンなどのエピジェネティックなバイオマーカーの、迅速な決定を可能にする技術の恩恵を受けるであろう。細胞1個よりもさらに少ないほどの極少量のサンプルの利用が長らく望まれている。それにより、細胞の状態をモニターする能力、および癌細胞の悪性のステージといった病気の発生および進行を理解する能力、が飛躍的に向上するであろう。
【0006】
ほとんどのゲノムまたはエピゲノム解析技術は、大きな集団に対して広大なゲノム領域を解析するためには、高価すぎるままである。ゲノム解析のコストをいわゆる「$1,000ゲノム」のマイルストーンまで、少なくとも4桁低くするという目標を達成するためには、分子分析の新たな技術が必要である。2006年7月18日付のニューヨークタイムズ紙のNicholas Wade氏による記事「$1,000のヒトゲノムの探求("The Quest for the $1,000 Human Genome")」を参照されたい。
【0007】
高速シーケンシングのために開発された一つの技術はDNAを糸のように通すナノスケールの孔の利用を含む。歴史的には、「ナノ細孔(nanopore)」の概念が、電圧を印加することによりRNAおよびDNA鎖を孔に通す時にイオン電流の痕跡を作り出すために、生体分子装置を利用した。生体系はしかしながら、pH、温度、および電界に敏感である。さらに生体分子は、鋭敏なオンチップの電子機器に必要とされる半導体プロセスにすぐに組み込むことができない。
【0008】
固体状態の物質に人工的なナノ細孔を設計および製造することに、長らく多くの努力が注がれてきた。しかしながら、膜に孔を形成するだけしかできないこれらの方法では、DNAまたはRNAなどの長鎖状生体ポリマーの真の1分子シーケンシングに必要な、より長いチャネルを形成することができない。
【0009】
従って、本技術分野には、DNAまたはRNAなどの長鎖状生体ポリマーの配列および他の情報を生成することができる装置の必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要約
記述した課題を解決するために、第1の態様では、本発明は、高分子の1若しくはそれ以上の特性を特徴付けるための方法であって、ナノチャネル内に少なくとも一部が存在する高分子を直線状にする工程であって、前記ナノチャネルの少なくとも一部が高分子の少なくとも一部を物理的に拘束することが可能であり、これにより前記高分子のその部分を直線形状に保持し、前記ナノチャネルが少なくとも1つの狭窄を含むものである、前記高分子を直線状にする工程と;前記ナノチャネルの少なくとも一部の中を前記高分子の少なくとも一部を輸送する工程であって、これにより前記高分子の少なくとも一部が前記狭窄を通過するものである、前記輸送する工程と;前記高分子による狭窄の通過に関連して発生する少なくとも1つのシグナルを測定する工程と;前記少なくとも1つのシグナルを、前記高分子の1若しくはそれ以上の特徴と関連付ける工程と、を有するものである、前記特性を特徴付けるための方法、を提供する。
【0011】
第2の態様では、本発明は、2若しくはそれ以上の流体タンクを有し;ナノチャネルが狭窄を含み、前記ナノチャネルが前記少なくとも2つの流体タンクを互いに流体連通するよう設置するものである、線形高分子を解析する装置を提供する。
【0012】
さらに提供されるところのものは、高分子を輸送する方法であって、少なくとも2つの流体タンクを提供する工程と;少なくとも部分的に線形の高分子を提供する工程であって、前記高分子の少なくとも一部がナノチャネル内に存在し、前記ナノチャネルが少なくとも2つのタンクを互いに流体連通するよう設置し、前記ナノチャネルが狭窄を含む、前記線形の高分子を提供する工程と;前記高分子に勾配を適用する工程であって、前記勾配が、前記線形高分子の少なくとも一部が前記ナノチャネルの少なくとも一部の中を輸送されるようにするものである、前記適用する工程と、を有する前記輸送する方法である。
【0013】
追加的に提供するところのものは、狭窄ナノチャネルを製造する方法であって、ナノチャネルを提供する工程であって、前記ナノチャネルは約0.5nm〜約1000nmの範囲の内径を有し、前記ナノチャネルは少なくとも約10nmの長さを有するものである、前記ナノチャネルを提供する工程と;前記ナノチャネルの内部の位置または前記ナノチャネルの端部に近接する位置のいずれか、または両方で前記ナノチャネルの内径を縮小させる工程であって、これにより前記ナノチャネルの内部または近接部に狭窄を生じさせ、この狭窄は前記ナノチャネルと流体連通する内径を有するものであり、前記ナノチャネルは線形高分子をその直線形状に保持することが可能であり、前記縮小内径は前記線形高分子の少なくとも一部の通過を許容することが可能なものである、前記ナノチャネルの内径を縮小させる工程と、を有する前記狭窄ナノチャネルを製造する方法である。
【0014】
同様に開示されるところのものは、高分子を直線状にする方法であって、高分子をナノチャネル内に設置する工程であって、前記ナノチャネルの少なくとも一部分は、前記高分子の少なくとも一部分を物理的に拘束することが可能であり、これにより前記高分子のその部分を直線形状に保持するものである、前記設置する工程を有する、前記高分子を直線状にする方法である。
【0015】
概略および以下の詳細な記述は一例としてのみ示すものであり、添付の請求項で定義するところの本発明を限定するものではない。本発明の他の観点は、本願明細書で提供するところの本発明の詳細な記述から、当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下の詳細な記述と同様に要約も、添付の図面と併せて読んだ場合にはさらに良く理解できるであろう。本発明を図示する目的で、図には本発明の一例となる実施例を示してある。しかしながら、本発明は、開示しているところの特定の方法、組成、および装置に限定されるものではない。さらに、図は必ずしも原寸に比例して描かれてはいない。
【0017】
【図1】図1aは、線形の2本鎖DNAがナノチャネルを通り、排出タンクで測定装置がDNAの通過と関連して排出タンクまたはナノチャネル内の物理的、化学的、電気的、または他の変化を検出する、DNAシーケンサーの概略図である。 図1bは、DNA分子がナノチャネル端部のナノノズル狭窄を流れていくところを描いた図である。 図1cは、DNAの狭窄ナノチャネルの通過に従って導き出されたデータを表した図である。
【図2】図2aは、線形の1本鎖DNAがナノチャネルを通り、排出タンクで測定装置がDNAの通過と関連して排出タンクまたはナノチャネル内のなにかしらの物理的、化学的、電気的、または他の変化を検出する、DNAシーケンサーの概略図である。 図2bは、一本鎖DNA分子がナノチャネル端部のナノノズル狭窄を流れていくところを描いた図である。 図2cは、1本鎖DNAの個々のヌクレオチドがナノチャネルの狭窄を通過するのに従って導き出されたデータを表した図である。
【図3】図3aは、メチル化された線形の2本鎖DNAがナノチャネルを通り、排出タンクで測定装置がDNAの通過と関連して排出タンクまたはナノチャネル内のなにかしらの物理的、化学的、電気的、または他の変化を検出する、DNAシーケンサーの概略図である。 図3bは、メチル化された2本鎖DNA分子がナノチャネル端部のナノノズル狭窄を流れていくところを描いた図である。 図3cは、メチル化された2本鎖DNAの個々のヌクレオチドがナノチャネルの狭窄を通過するのに従って導き出されたデータを表わした図である。
【図4】図4は、断面積がナノチャネルの他の部分より小さい狭窄をナノチャネルが有し、高分子がナノチャネル内部で線形になり、分子の目的の特徴が狭窄を通過する際に検出される、タンクと結合して取り囲んだナノチャネルの、代表的な実施例を表したものである。
【図5】図5は、高分子がナノチャネル内部で直線状になり、分子の目的の特徴が狭窄を通過する際に検出される、断面積がどちらのナノチャネルよりも小さな狭窄を介して2つ目のナノチャネルと結合して取り囲んだナノチャネル、を表したものである。
【図6】図6aは、添加材料の蒸着による、ナノチャネル端部への狭窄の作製を表わしたものであり、図6bは、ナノチャネル端部のそのような狭窄の実施形態の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、ナノチャネル端部への狭窄の代表的な製造手順を表わしたものであり、(図7a)チャネルを完全に閉塞するようにナノチャネル端部に物質を蒸着する工程;(図7b)強塩基での中和によって反応終了する腐食液の酸を用いた、自動的に終了する狭窄の穴あけの工程;(図7c)腐食液および中和液を除去した後の最終的なナノノズル装置、である。
【図8】図8は、犠牲材料を用いたナノチャネル端部への狭窄の代表的な製造を表わしており、(図8a)一部だけタンクへ出るようナノチャネル内へ設置した犠牲的な高分子;(図8b)流体を除去して犠牲的な分子の周囲に材料を蒸着したところ;(図8c)犠牲的な分子を除去してナノチャネル端部に狭窄が残されたところ、である。
【図9】図9は、材料の付加的な蒸着を用いたチャネル開口部のサイズの段階的な縮小を表わした一連の3枚の走査型電子顕微鏡写真を示しており、(図9a)最初の幅および高さが約150nmである開口ナノチャネルへ、酸化ケイ素を付加的に蒸着することで、直径約50nmの取り囲まれたナノチャネルが生じるところ;(図9b)パラメータである蒸着の変化がさらに小さな取り囲まれたチャネルを作り出すところ;(図9c)さらにその延長線上で、10nm以下の開口部も作り出すことが可能なところ、である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
用語
本願明細書で用いる場合、「実質的に直線状(substantially linear)」という用語は、これに限定するものではないが例えば200残基の核酸が互いに結合したポリ核酸などの長鎖状分子の少なくとも一部のコンフォーメーションが、自身に対して折れ曲がることがないこと、またはいかなる鋭い屈曲、又は約360度より大きなカーブを含まないこと、を意味する。
【0019】
本願明細書で用いる場合、「ナノチャネル」という用語は、導管、チャネル、パイプ、ダクト、または少なくとも1つのナノスケールの寸法を有する他の同様の構造、を意味する。
【0020】
この開示内容の一部を構成する添付の図および実施例と関連させて、以下の詳細な説明を参照することで、本発明をより容易に理解することができるであろう。本発明は、本願明細書に記述するおよび/または示す特定の装置、方法、適用方法、条件、またはパラメータに限定されるものではないということ、および本願明細書で用いる用語は単なる実施例の形によって特定の実施形態を記述する目的のためのものであり、請求する発明を限定する意図はないこと、を理解されたい。また、添付の請求項を含めて本願明細書で用いる場合、文脈上で明確にことわりを述べていない限り、単数形の「a、」「an、」および「the」は複数形を含み、特定の数値への言及は少なくともその数値を含むものである。本願明細書で用いる場合、「複数形」という用語は1よりも多いことを意味する。数値の範囲を記述する場合、もう1つの実施形態は1つの特定の数値から、および/または他の特定の数値までを含む。同様に、「約」という先行詞を用いて数値を概数で表現する場合、その特定の値がもう1つの実施形態を成立させるということを理解されたい。全ての範囲は包含的および結合可能である。
【0021】
本願明細書に明確にするために別の実施形態の文脈で記述した本発明の特定の特徴は、1つの実施形態において組み合わせて提供することもできることも、高く評価されることである。反対に、簡単のために1つの実施形態の文脈において記述した本発明の様々な特徴は、別々にまたは他の組合せで提供することもまた、できる。さらに、範囲のかたちで記述した数値への言及は、その範囲内のそれぞれおよび全ての数値を含む。
【0022】
一態様では、本発明は高分子の1若しくはそれ以上の特徴を明らかにする方法を提供する。それらの方法は、ナノチャネル内に少なくとも一部が存在する高分子を直線状にすること、ナノチャネルの少なくとも一部が高分子の少なくとも一部を物理的に拘束して、それによって高分子のその部分を直線形状に保持すること、を含む。
【0023】
適切なナノチャネルは、伸張構造の高分子の旋回半径の約2倍より小さな直径を有する。そのような寸法のナノチャネルは、コイルを直線状にして引き伸ばすために、自由に延びて変動する高分子のコイルのエントロピーの制約を働かせ始めることで知られる。適切なナノチャネルは、2004年1月20日に出願され、本願明細書にその全てが参照として取り込まれるところの、米国特許出願第10/484,293号「ナノチャネル・アレイおよびその作製および高分子のハイスループット解析における使用(Nanochannel Arrays And Their Preparation And Use For High−Throughput Macromolecular Analysis)」に述べられている方法に従って作製することが可能である。
【0024】
適切なナノチャネルは少なくとも1つの狭窄を有する。そうした狭窄はナノチャネルの有効内径を局所的に縮小させる働きをする。狭窄は線形高分子の通過を許容するようなサイズにすることが可能である。
【0025】
本発明の方法は、高分子の少なくとも一部が狭窄を通過するための、ナノチャネルの少なくとも一部の中での高分子の少なくとも一部の輸送の工程もまた、含む。このことは、例えば、DNAがナノチャネルの狭窄を通過するところを描いた図1b、2b、および3bに示してある。狭窄は例えば、ナノチャネル端部に材料を蒸着してナノチャネルを密封し、そしてナノチャネルよりかなり狭い孔が形成されるまで、蒸着させた物質をエッチング処理することで作ることが可能である。このことは、図6から9にさらに詳細に図示してある。
【0026】
比較的に長い高分子を分析する場合は、高分子の端部をナノチャネルの一方の端部へ輸送する。これは例えば、ナノチャネルへのそうした輸送を助ける勾配構造によって達成できる;適切な勾配構造はto Cao,et al.による米国特許第7,217,562号明細書に記述されている。
【0027】
本発明の方法は、高分子による狭窄の通過に関連して発生する少なくとも1つのシグナルの測定、および前記少なくとも1つのシグナルの分子の1若しくはそれ以上の特徴との関連付け、もまた含む。このことは、高分子によるナノチャネルの狭窄の通過に関連して発生するシグナルの測定の概略を描いた、図1a、2a、および3aに表わしてある。適切なシグナルは、例えば、電荷のシグナル、光学的なシグナル、電磁気的なシグナル、磁器のシグナル、またはそれらのあらゆる組合せ、を含む。電気的なシグナルは例えば、市販の様々な電流計および増幅器を用いて測定することが可能である。例えば、適切なシグナル測定装置は、約1ナノボルト、または1マイクロボルト、または1ミリボルト、または1ボルトまたはそれ以上からの一定電圧を、タンクおよびナノチャネルの部分の流体に接した電極を通して印加することが可能である。適切な測定装置はまた、電極間の電流を毎秒複数回にわたって測定することも可能である。適切な装置は、少なくとも約100ヘルツ(「Hz」、1秒あたりのサイクル)、または約1キロヘルツ(「kHz」)、または10kHz、または100kHz、または約1メガヘルツ(「MHz」)、または約10メガヘルツ、の帯域幅を有する。従って、一旦測定がナノ秒、またはマイクロ秒、またはミリ秒のスケールの変形でできるようになったならば、電流を作り出すことは可能である。電流の増幅はピコ秒から可能である。sDNAの輸送速度は、古典的な「パッチクランプ増幅器」を通してマイクロ秒あたり約40塩基とすることが可能である。今日の最高の機械はマイクロ秒ごとに1回のサンプリングが可能である。100KHzの帯域幅を有する、Molecular Devices(www.moleculardevices.com)社のAxopatch 200Bは、毎秒100,000回の電流測定が可能であり、または、これは2つの排液タンクに接続した電極間の電流変化の電流測定に10マイクロ秒かかるのと同等である。
【0028】
本発明の方法に適した高分子は、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオシド、天然および合成ポリマー、天然および合成共重合体、デンドリマー、界面活性剤、脂質、天然および合成炭水化物、天然および合成ポリペプチド、天然および合成タンパク質、またはそれらの組合せ、を含む。本願明細書の他の箇所で議論する通り、本発明の方法に従って分析可能なものとして、DNAは特に適切な高分子と考えられる。
【0029】
本願明細書が提供する方法に従って分析する高分子は、典型的には流体中に存在する。適切な流体としては、水、緩衝液、細胞培養液、およびそれらに類するもの、である。適切な流体は、電解質液、酸性、または塩基性とすることもまた、可能である。
【0030】
高分子の輸送は、適切なナノチャネルの流れの方向に沿って勾配を適切に適用し、高分子を勾配にさらすことで成し遂げられる。適切な勾配は、電気浸透の場、電気泳動の場、毛細管流動、磁場、電場、放射線場、機械力、電気浸透力、電気泳動力、動電学的な力、温度勾配、圧力勾配、表面性質の勾配、疎水性の勾配、毛細管流動、またはそれらの組合せ、を含む。電場が特に適切な勾配である。
【0031】
勾配は時間的に一定、空間的に一定、またはそれらのあらゆる組合せとすることができる。勾配は必要に応じて空間および時間において変化させることもまた、できる。いくつかの実施形態では、勾配の変化によって、高分子を前進および後退の両方向へ輸送することが可能である。いくつかの実施形態では、勾配を変化させることで、高分子の同じ部分による狭窄の複数回の通過を許可することができる。
【0032】
勾配を変化させることで、あたかもカセットテープを望みの部分まで早送りするのに似た方法で、高分子の特定の目的の領域に到達するまで、使用者が高分子を狭窄を通って素早く進ませることもまた可能である。一旦、目的の領域に到達したならば、目的の領域が狭窄をより遅い速度で通過するように、勾配を変化させることが可能である。高分子が狭窄を通って逆方向へ向かうよう、勾配を反転させることもまた、できる。これはあたかも、カセットテープを望みの箇所まで巻き戻しするのに似ているであろう。従って、「再生」、「早送り」、「巻き戻し」、「一時停止」、「停止」の機能を、タンクの間の勾配の大きさおよび極性を制御することで生じさせることが可能である。
【0033】
検出できる適切なシグナルは、視覚的シグナル、赤外線シグナル、紫外線シグナル、放射線シグナル、磁気シグナル、電気的シグナル、電磁気的シグナル、またはそれらの組合せ、を含む。簡単に測定できるという理由から、電気的シグナルが好ましいと考えられるが、しかし、他のシグナルは効率的に測定できる。
【0034】
高分子は1若しくはそれ以上の標識を含むことができる。適切な標識は、電子スピン共鳴分子、蛍光分子、化学発光する分子、同位体、放射性同位体、酵素基質、ビオチン分子、アビジン分子、電荷移動分子、半導体ナノ結晶、半導体ナノ粒子、コロイド金ナノ結晶、リガンド、マイクロビーズ、電磁ビーズ、常磁性体粒子、量子ドット、発色基質、親和性分子、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、抗原、ハプテン、抗体、抗体断片、脂質、ポリマー、荷電粒子、修飾ヌクレオチド、化学官能基、化学的部分、またはそれらのあらゆる組合せ、を含む。いくつかの実施形態では、標識はメチル基といった化学的部分である。このことは図3bに非限定的なかたちで示しており、そこでは、いくつかのメチル基で標識したDNA鎖および、それらのメチル基を標識DNAの1若しくはそれ以上の特徴の表れとして検出する工程、が描かれている。
【0035】
いくつかの実施形態では、シグナルは高分子から内在的に発せられる。そうした内在的に発せられるシグナルは、高分子または高分子の一部が磁気または放射線を帯びている場合、磁気シグナルまたは放射性シグナルを含む。シグナルが高分子から内在的に発せられる場合、検出可能なシグナルを誘発するために高分子に照射する必要もまた、ないであろう。
【0036】
他の実施形態では、分子に照射することによってシグナルを生成する。照射は高分子の少なくとも一部分の、可視光、紫外線ライト、赤外線ライト、X−線、ガンマ線、電磁放射、電波、放射性粒子、またはそれらの組合せ、への曝露を含む。適切な照射装置は、照射する、励起する、または高分子から散乱する、可干渉性および非干渉性の光源を有する。レーザーおよび他の光表面などの、UV,VIS,IR光源を用いることが可能である。
【0037】
開示した方法によって検出する高分子の特徴は、高分子の大きさ、高分子の分子組成、高分子の分子配列、高分子の1若しくはそれ以上の分子の化学的性質、高分子の1若しくはそれ以上の分子の放射性、高分子の1若しくはそれ以上の分子の磁気的性質、またはそれらのあらゆる組合せ、を含む。
【0038】
本願明細書の他の箇所で議論するように、いくつかの実施形態では、高分子を標識する。従って、そうした高分子の特徴は高分子の1若しくはそれ以上の標識の位置である。
【0039】
分子の分子組成は、瞬間的な方法によってもまた、明らかになる。分子組成は、高分子の1若しくはそれ以上の分子の位置、DNA多型、DNAコピー数の多型、DNA中の重複、DNA中の欠失、DNA中の転位、DNA中の特定の遺伝子座の反転、高分子中のメチル基の位置、またはそれらのあらゆる組合せ、を含む。いくつかの実施形態では、多型は、その多型に対してだけ相補的な標識プローブの存在の観察によって検出する。
【0040】
薬剤と高分子間の結合部位、高分子−薬剤の複合体、DNA修復部位、DNA結合部位、DNAの切断部位、SiRNA結合部位、アンチセンス結合部位、転写因子結合部位、調節因子結合部位、制限酵素結合部位、制限酵素切断部位、またはそれらのあらゆる組合せの検出は、本発明の範囲内に全て含まれる。
【0041】
本願明細書の他の箇所で議論するとおり、それらの特徴は、目的の特徴と相補的な1若しくはそれ以上のプローブの存在に関して高分子を精査することによって決定する。本発明の方法は、図1c2c、および3cに概略が示してあり、それらはそれぞれ、ナノチャネルの狭窄の高分子による通過に関連して発生するシグナルの測定を表している。いくつかの実施形態では、所与の高分子の2若しくはそれ以上の特徴を決定するために、2若しくはそれ以上のプローブを用いる。
【0042】
装置の特定の実施形態は、複数のナノチャネルを有する。そうしたナノチャネルのアレイは、1つの高分子の複数の特徴、または複数の高分子の複数の特徴を効率的に明らかにするにあたって、有用である。当業者にとっては、特定の特徴に相補的な標識を選ぶこと、および所与の高分子上にそうした特徴が存在するか否かを決定するために、分析する所与の高分子に適用すること、が可能であることは明白であろう。
【0043】
さらに開示するのは、線形高分子を分析する装置である。適切な装置は、2若しくはそれ以上の流体タンク、および狭窄を有するナノチャネルを含み、前記ナノチャネルが少なくとも2つの流体タンクを互いに流体連通するように設置している。本願明細書の他の箇所に述べる通り、適切なナノチャネルは高分子の少なくとも一部分を物理的に拘束することが可能で、それによりその部分を直線形状に保持する。このことは、それらのそれぞれの全てが本願明細書に参照として取り込まれるところの特許出願である、2006年7月19日に出願された米国特許出願第60/831,772号、2007年3月28日に出願された米国特許出願第60/908,582号、2007年3月28日に出願された米国特許出願第60/908,584号にさらなる詳細が説明されている。タンクを伴う適切な装置は、標準的なシリコンのフォトリソグラフィおよびエッチングの技術を用いて作ることが可能である。ナノチャネルの長さもまた、それらの技術を用いて制御することが可能である。タンクおよびそれに結合し、マイクロ流体インターフェイス領域を含むところのマイクロ流体領域は、熱接合、透明な蓋(例えば、水晶、ガラス、またはプラスチック)の接着、熱接合といったような、標準的なウエハー(シリコンウエハー−シリコンウエハー)接合技術を用いて密封することが可能である。
【0044】
狭窄はナノチャネルの一方の端部に適切に設置する。しかしながら、いくつかの実施形態では、狭窄はナノチャネルの内部に設置する。狭窄の最終的な設置は、使用者の必要に応じたものとなる。ナノチャネル内部の狭窄は、以下のようにして作ることが可能である:本願明細書でさらに説明するように(例えば、以下でさらに述べるところの実施例7を参照のこと)、犠牲材料を充填剤として用いる。
【0045】
適切なナノチャネルは少なくとも約10nm、または少なくとも15nm、または少なくとも20nm、少なくとも30nm、少なくとも50nm、さらにまたは少なくとも100nm、少なくとも500nm、または少なくとも1000nm、の範囲の長さを有する。いくつかの実施形態では、ナノチャネルは、線形高分子のおおよその長さと少なくとも同じ長さを有する。
【0046】
適切なナノチャネルはまた、約0.5nm〜約1000nmの範囲の、または約10nm〜約500nmの範囲の、または約100nm〜約300nmの範囲の、または約150nm〜約250nmの範囲の、有効内径を有する。ナノチャネルの有効内径はまた、少なくとも15nm、または少なくとも20nm、または少なくとも30nm、または少なくとも40nm、または少なくとも50nm、または少なくとも60nm、または少なくとも70nm、または少なくとも80nm、または少なくとも90nm、または少なくとも100nm、とすることが可能である。述べてきたように、ナノチャネルは、高分子を直線形状に保持することが可能な有効内径を有する。
【0047】
「有効内径(effective inner diameter)」および「内径(inner diameter)」という用語は、他に示さない限り、同じ意味で用いる。「有効内径」という用語は、円形の断面を有するナノチャネルのみでなく、円形でない断面を有するナノチャネルについても言及するものである。例えば、「有効内径」は、ナノチャネルが円形の断面を有すると仮定して、有効内径を有する円形の領域という観点からナノチャネルの実際の断面を強いて効率的に演算することで、決定することが可能である:ナノチャネルの断面積 = π × (有効内径/2)。従って、ナノチャネルの有効内径は以下のように決定できる:
有効内径 = 2〔(ナノチャネルの断面積)/π〕1/2
狭窄は適切には、約0.5nm〜約100nmの範囲、または約1〜約80nmの範囲、または約5〜約50nmの範囲、または約8nm〜約30nmの範囲、または約10nm〜約15nmの範囲の、分子の輸送を許可する有効内径または有効寸法を有する。適切な狭窄は、線形高分子が狭窄を通過する際に直線形状を保持することが可能な有効内径を有する。有効内径または寸法は、エッチングの条件の制御によって、または狭窄領域内の犠牲材料の大きさの制御によって、制御することが可能である。
【0048】
開示する装置はまた、ナノチャネルの少なくとも一部に沿って適切に存在する勾配をも含むものである。適切な勾配は、電気浸透の場、電気泳動の場、毛細管流動、磁場、電場、放射線場、機械力、電気浸透力、電気泳動力、動電学的な力、温度勾配、圧力勾配、表面性質の勾配、毛細管流動、またはそれらの組合せ、を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、勾配は、ナノチャネルの少なくとも一部の内部に存在する高分子の少なくとも一部を、直線状にすることが可能である。しかしながら、好ましい実施形態では、勾配は、ナノチャネルの少なくとも一部に沿ってナノチャネルの内部に位置する高分子の少なくとも一部を、輸送することが可能である。
【0050】
装置は適切には、記述した勾配を供給することが可能な勾配発生器を含む。適切な発生装置は、電源、磁石、音源、圧力源、またはそれらの組合せ、を含む。
【0051】
勾配発生器は適切には、一定の勾配を適用することが可能である。いくつかの実施形態では、勾配発生器はまた、変化する勾配を適用することも可能である。本願明細書の他の箇所で述べる実施例は、さらなる詳細を提供する。当業者にとっては、使用者の必要に従って、勾配の強度および変動性を選択することが明白であろう。
【0052】
いくつかの実施形態では、装置の2若しくはそれ以上の流体タンクは同一の流体を有する。他の実施形態では、2若しくはそれ以上の流体タンクは異なる流体を有する。いくつかの実施形態では、ナノチャネル内で高分子を輸送するために用いる勾配を提供するために異なる流体を用いることができ、そうした勾配を提供するために、異なるイオン強度または他の性質の流体を選択することができる。適切な流体は、緩衝液、酸、塩基、電解液、細胞培養液、界面活性剤、およびそれらに類するもの、を含む。
【0053】
装置はまた、直線状になった高分子の少なくとも一部が狭窄を通過することにより発生するシグナルを検出することが可能な検出器も有する。適切な検出器は、電荷結合素子(charge coupled device:CCD)検出システム、相補型金属酸化膜半導体(complementary metal−oxide semiconductor:CMOS)検出システム、光ダイオード検出システム、光電子増倍管検出システム、シンチレーション検出システム、光子計数検出システム、電子スピン共鳴検出システム、蛍光検出システム、光子検出システム、電子検出システム、写真フィルム検出システム、化学発光検出システム、酵素検出システム、原子間力顕微鏡(atomic force microscopy:AFM)検出システム、走査型トンネル顕微鏡(scanning tunneling microscopy:STM)検出システム、走査型電子顕微鏡(scanning electron microscopy:SEM)検出システム、光学検出システム、核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance:NMR)検出システム、近接場(near field)検出システム、全反射(total internal reflection:TIRF)検出システム、パッチクランプ検出システム、電流検出システム、電気増幅検出システム、抵抗測定システム、容量検出システム、およびそれらに類するもの、を有する。
【0054】
適切な検出器は、1若しくはそれ以上の流体タンク内の1若しくはそれ以上の場所を測定することが可能であり、または、他の実施形態では、ナノチャネル内部の位置、またはナノチャネル端部に近接する位置でも測定することが可能である。異なる位置の異なるシグナルを検出可能な1若しくはそれ以上の検出器の採用によって、所与の高分子の複数の特徴を明らかにすることが可能となることが、使用者にとっては明白であろう。
【0055】
いくつかの実施形態では、装置は照射器を含む。照射器は適切には、レーザー、可視光の光源、放射性粒子の発生源、磁石、紫外線の発生源、赤外線の発生源、またはそれらの組合せ、を含む。いくつかの実施形態では、ナノチャネル内の高分子の一部を励起するために、照射器を用いる。非限定的な実施例としては、特定の波長の光源を用いることで、高分子の特定の特異的な位置に存在する蛍光標識を励起し、それにより、そのような標識の存在を顕在化させる。
【0056】
装置はまた、適切にはデータ処理器も含む。いくつかの実施形態では、装置はデータ記録装置を含む。そうした処理装置は、大きなデータセットを操作および関連付けるために用いる。
【0057】
開示する装置の一実施形態は図4に示してあり、そこにはタンクに近接する側の一端を狭窄させたナノチャネル、および高分子が直線的に輸送されるタンクから発生するシグナルを測定する検出器を描いてある。他の実施形態は図5に示してあり、そこでは狭窄が2つのナノチャネルを結合している。図5では、狭窄ナノチャネルの組立部を通って展開される1若しくはそれ以上のシグナルを検出器が測定する様子が見られる。
【0058】
本願明細書の他の箇所で議論する通り、比較的に長い高分子を分析する場合、高分子の一端をまずナノチャネルの一端へと輸送する。述べた通り、このことは例えば、そうした輸送を助ける勾配構造によって成し遂げられる。適切な勾配構造は、その全てが本願明細書に参照として組み込まれるところのto Cao,et.al.,による米国特許第7,217,562号明細書、に記述されている。
【0059】
さらに開示するところのものは、高分子の輸送方法である。そうした方法は、少なくとも2つのタンクの提供、およびナノチャネルに存在する高分子の少なくとも一部少なくとも部分的に線形の高分子の提供、を含む。本願明細書の他の箇所で議論する通り、線形高分子の旋回半径の約2倍より小さな内径を有する適切な寸法のナノチャネルへ閉じ込めることによって、高分子を直線状にすることができる。
【0060】
適切なナノチャネルは、互いに流体連通するようにタンクを設置する。本願明細書の他の箇所で述べる通り、適切なナノチャネルは狭窄もまた含む。適切な狭窄の寸法は、本願明細書の他の箇所に述べる。
【0061】
本発明の方法は、高分子への勾配の適用もまた含む。勾配は、線形高分子の少なくとも一部の、ナノチャネルの少なくとも一部の中への輸送を適切に生じさせる。適切な勾配は、電気浸透の場、電気泳動の場、毛細管流動、磁場、電場、放射線場、機械力、電気浸透力、電気泳動力、動電学的な力、温度勾配、圧力勾配、表面性質の勾配、毛細管流動、またはそれらの組合せ、を含む。勾配は適切には、使用者の必要に応じて一定とする、または変動させることができる。
【0062】
タンクは、ナノチャネルの部分と比較して容積が大きい。タンクはほとんどいかなる形および大きさとすることが可能である。例えば、タンクは、円形、球形、長方形、またはそれらのあらゆる組合せとすることができる。タンクの大きさは使用者の必要によって決定し、変化させることができる。
【0063】
開示する方法のナノチャネルは、約10nmより長い、または約12nmより長い、または約14nmより長い、または約16nmより長い、または約18nnより長い、または約20nmより長い、または約25nmより長い、または約30nmより長い、または約35nmより長い、または約40nmより長い、または約45nmより長い、長さを有する。いくつかの実施形態では、ナノチャネルは約100nmより長い、または約500nmよりさらに長い、長さを有する。適切なナノチャネルは長さ約1ミクロンよりも長く、または約10ミクロンよりも長く、または約100ミクロンよりも長く、または約1mmよりも長く、または長さ約10mmよりもさらに長く、することが可能である。いくつかの実施形態では、ナノチャネルの長さは、おおよそ線形高分子の長さを超えるように選択する。
【0064】
さらに開示するところのものは、狭窄ナノチャネルの製造方法である。これらの方法はまず、ナノチャネルの提供を含む。適切なナノチャネルは、約0.5nm〜約1000nmの範囲、または約1nm〜約500nmの範囲、または約5nm〜約100nmの範囲、または約10nm〜約15nmの範囲、の有効内径を有する。ナノチャネルの有効内径は、少なくとも約15nm、または少なくとも約20nm、少なくとも約30nm、または少なくとも約40nm、または少なくとも約50nm、または少なくとも約60nm、または少なくとも約70nm、または少なくとも約80nm、または少なくとも約90nm、または少なくとも約100nm、とすることもまた可能である。
【0065】
本発明の方法は、ナノチャネルの内部または近接部に狭窄が生じ、狭窄がナノチャネルと流体連通するような内径を有するように、ナノチャネルの内部またはナノチャネル端部に近接した位置のいずれか、または両方で、ナノチャネルの有効内径を縮小する工程もまた含む。狭窄のサンプルは、図1b、図4、図5、および図6に示す。適切なナノチャネルは、線形高分子を直線形状に保持することが可能である;本発明の他の箇所で議論する通り、このことは、適切な寸法のナノチャネルの部分を用いて適切に成し遂げられ、それにより高分子を実質的に直線形状に保持するように高分子を物理的に拘束する。狭窄ナノチャネルの縮小した内径は、適切には、線形高分子の少なくとも一部の通過を許可することが可能である。
【0066】
一実施形態では、ナノチャネルの内径を縮小し、それにより、ナノチャネルの内部または外側への1若しくはそれ以上の材料の付加的な蒸着によって狭窄を形成する。このことは、スパッタリング、スプレー、物理蒸着、化学蒸着、またはそれらのあらゆる組合せ、によって適切に成し遂げられる。いくつかの実施形態では、ナノチャネルを完全に閉塞する前に、付加的な蒸着を停止する。このことは図6aおよび6bに表しており、そこにはナノチャネルの一方の端部の近接部への追加的な材料の蒸着を示しており、ナノチャネルが完全に閉塞する前に蒸着が停止している。そうしたナノチャネルは図9にも示してあり、そこではナノチャネル端部(図9a)が付加的な材料の様々な蒸着(図9bおよび9c)によって縮小する様子として、有効内径の縮小が示してある。
【0067】
本発明の他の実施形態では、ナノチャネルを完全に閉塞した後に付加的な蒸着を停止する。それらの実施形態では、本発明の方法は、蒸着した添加材料の少なくとも一部の除去によって、密封したナノチャネルを再度開く工程を含む。このことは、エッチング処理によって適切に成し遂げられる。エッチング処理は、蒸着した添加材料の一方の面に、蒸着した添加材料を腐食させることが可能な第1の種類の物質を接触させる工程、および蒸着した添加材料の他方の面に、第1の種類の物質との接触によって腐食させる種類の物質の腐食作用を妨害することが可能な第2の種類の物質を接触させる工程、を必要とする。いくつかの実施形態では、第2の種類の物質は、第1の種類の物質との接触によって、腐食させる種類の物質の腐食作用を停止させることが可能である。このことは図7aに示してあり、そこではシーリング材をナノチャネルの一方の端部へ塗布し、そして図7bでは、それを強塩基性溶液で腐食させ、エッチングが停止する図7cでは、塩基性溶液がシーリング材を腐食させながら進み、シーリング材の反対側に存在する強酸によって中和される。当業者にとっては明白なように、ナノチャネル内の条件、第1および第2の種類の物質の相対的な量、および他の施行上のパラメータは、所望の直径を得るために調節する。
【0068】
さらに他の実施形態では、ナノチャネル内径の縮小はいくつかの工程を含む:(図8a)ナノチャネル内に犠牲材料を設置する工程、(図8b)ナノチャネルを完全に閉塞するために、犠牲材料の近傍に添加材料を蒸着する工程、(図8c)除去する犠牲材料の寸法となるナノチャネルの縮小内径を生じさせるために、近傍の添加材料をほぼ完全に残しつつ犠牲材料の少なくとも一部分を選択的に除去する工程、である。当業者にとっては明白なように、本発明のこの態様は、ナノスケールおよびより大きなチャネルの内部、または他の構造の内部に様々な寸法を有する空間を製造する際に有用である。適切な犠牲材料としては、DNAおよびカーボンナノチューブが共に考えられる。選択的に溶解または腐食できる他の材料は、当業者にとっては明白であろう。
【0069】
本発明はまた、高分子の自由度を3次元から本質的に1次元へ制約するための、高分子を直線状とする方法、も提供する。それらの方法は、ナノチャネルの少なくとも一部が高分子の少なくとも一部を物理的に拘束することが可能であり、それにより高分子のその部分を直線形状に保持する、ナノチャネル内への高分子の設置の工程を含む。
【0070】
ナノチャネルは適切には狭窄を含む。狭窄の適切な寸法は、本願明細書の他の箇所に記述する。
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明の方法はまた、高分子の少なくとも一部がナノチャネルの狭窄を直線的に通過するような、高分子への勾配の適用を含む。適切な勾配は、電気浸透の場、電気泳動の場、毛細管流動、磁場、電場、放射線場、機械力、電気浸透力、電気泳動力、動電学的な力、温度勾配、圧力勾配、表面性質の勾配、毛細管流動、またはそれらのあらゆる組合せ、を含む。
【0072】
開示する方法のマイクロチャネルは、2若しくはそれ以上の流体タンクを互いに流体連通するように適切に設置する。
【0073】
ナノチャネルは適切には、高分子の直線状コンフォーメーションの旋回半径の約2倍より小さな内径を含む。ナノチャネルは適切には、少なくとも約10nm、少なくとも約50nm、少なくとも約100nm、少なくとも約500nm、の長さを有する。ナノチャネルの適切な内径は、約0.5nm〜約1000nmの範囲、または約5nm〜約200nmの範囲、または約50nm〜約100nmの範囲、である。
【0074】
実施例および説明のための他の実施形態
以下は非限定的な実施例および説明のための実施形態であり、必ずしも本発明の範囲を限定するものではない。
【0075】
全般的な手順。充填剤の蒸着は、様々な角度に傾けたサンプルウエハーへの、スパッタリング、CVD、電子ビーム蒸着法、によって提供する。この工程は、ナノチャネル開口部を縮小させる際、およびチャネル端部に先細のノズルを形成する際、の両方に用いる。
【0076】
典型的には、取り囲まれたナノチャネルの製造には、100〜340nmの二酸化ケイ素をチャネル開口部へ蒸着する。効果的なシーリングは、テストした様々な蒸着の条件で達成できた。ガス圧30mTorrにおいて、RFパワー〜900W,DCバイアス1400V、蒸着速度〜9nm/min、を達成できた。より低い5mTorrの圧力においては、蒸着速度は概算17nm/minに上昇した。充填剤は、5mTorrにおけるスパッタリングによってナノチャネル開口部へ蒸着した。ナノチャネル・アレイおよび装置の製作に関するさらなる詳細は、それらの全てが本願明細書に参照として取り込まれるところの、米国公開特許第US 2004−0033515 A1、およびUS 2004−0197843 A1に記されている。
【0077】
実施例1:シリコン基板は、150nmのトレンチ幅および150nmのトレンチ高を有する複数の平行な直線状のチャネルを有するように、提供する。それらのチャネル開口部は、上述の全般的な手順に従って、5mTorrのガス圧でスパッタリングした。部分的に密封した、または完全に密封したナノチャネル・アレイを提供するための、スパッタリングによる蒸着の時間は10〜25分間である。
【0078】
実施例2:この実施例では、電子ビーム蒸着技術を用いた、取り囲まれたナノチャネル・アレイを提供する。基板は実施例1のようにして提供することが可能である。電子(熱)蒸着装置(Temescal BJD−1800)によって、二酸化ケイ素を基板上へ蒸着させることが可能である。二酸化ケイ素源ターゲットからの蒸着ビームの様々な入射角で、基板を設置することが可能である;蒸着速度は約3nm/分に設定することが可能であり、150nmのシーリング材を約50分で蒸着させることが可能である。チャネルの幅および高さをそれぞれ150nm以下および150nmに縮小するために、および接線方向の浅い蒸着角度を提供することによってチャネルを実質的に密封するために、入射するシーリング材の蒸着ビームの角度を変化させることが可能である。
【0079】
実施例3:この実施例では、ナノチャネル・アレイに表面修飾剤を接触させることが可能である。実施例1に従って作製したナノチャネル・アレイを、良く湿るように、および非特異的な結合を減少させるために、溶液中へ沈めることが可能である。溶液は、トルエン中に0.1〜100mMの範囲の濃度でポリエチレングリコール・シランを含有することが可能であり、約1〜約24時間の間ナノチャネル・アレイと接触させておくことが可能である。それに続くエタノールおよび水中での洗浄は、結合しなかった材料の除去に用いられる。
【0080】
実施例4:この実施例は、ナノ流体チップのためのナノチャネル・アレイを伴うサンプルタンクを記述する。実施例1の全般的な手順に従って、幅100nm、深さ100nmのナノチャネルを有するナノチャネル・アレイを作製した。ナノチャネル・アレイを、AZ−5214Eなどのフォトレジストでスピンコートし、タンクの準備のためにチャネル・アレイの反対側の端の領域を提供するために、アライナー装置Karl Suss MA6を用いてフォトマスクによるフォトリソグラフィによってパターンを作成する。ナノチャネル端部を露光し、基板の端のチャネルの反対側の端部に幅約1ミリメーターで深さ数ミクロンのタンクを提供するために、Plasma−Therm 720SLR中でCFおよびOの組合せを用い、圧力5mTorrおよびRFパワー100W、エッチング速度20nm/minにて、露光した領域を、反応性イオンエッチングを用いてエッチングした。
【0081】
実施例5:この実施例では、DNAを分析するための、DNA分子を含有する流体によるナノ流体チップの充填の工程を記述する。直径2mmの円筒形でプラスチック製のサンプル輸送チューブを、実施例3のナノチャネル・アレイのタンクの1つと流体連通するように設置した。輸送チューブは、さらに圧力/真空発生装置につなぐことが可能なところの、外部のサンプル輸送/収集装置と結合することが可能である。ナノチャネルは、緩衝液の毛細管現象を用いて湿らせる。染色した例えばラムダ・ファージの高分子(ラムダDNA)を含む緩衝液を、電場(1〜50V/cm)によってナノチャネル・アレイへと導入する;溶液濃度は0.05〜5マイクログラム/mL、ラムダDNAはTOTO−1染色液(Molecular Probes,オレゴン州Eugene)を用いて10:1塩基対/染色液の比率で染色する。0.1Mの抗酸化剤および付着防止剤として用いる0.1%直線状ポリアクリルアミドを含む0.5×TBE(pH7.0のトリスホウ酸塩緩衝液)中で、染色したDNAのこの溶液を0.01〜0.05マイクログラム/mLに希釈する。
【0082】
実施例6:この実施例では、酸によるエッチングを用いた、ナノチャネル端部へのナノノズルの製造工程を記述する。ナノノズル装置の製造は、実施例1で提供する取り囲まれたナノチャネルを有する完成したシリコンのナノチャネルをもって始める。チャネルの露光した端部に、クロムの薄層をスパッタコーティングすることにより、ナノ細孔の作成を進める。Temescalシステムを用いたスパッタコーティングは、速度0.01〜1nm/秒において蒸着量5〜200nmで、またはナノチャネル端部がクロムで完全に覆われるまで、ナノメーター以下の精度で制御可能である。クロム中に10nm以下の細孔を開けるために、次にウェットエッチングの過程を利用することが可能である。Cr−7のような希釈したクロムの腐食液を、毛細管力または他の揚水方法の形を用いて、チャネルへ流れ込ませることが可能である。希釈は1×〜10,000×の範囲とすることが可能である。Cr−7は非常に選択的な酸腐食液であるため、シリコンのチャネル自体よりも、チャネル端部のクロムと選択的に反応する。エッチング処理を停止させるためには、細孔が一旦開くと、チャネルの外部領域が高濃度の塩基性溶液(水酸化ナトリウムのような)で満たされ、それが貫通とともに弱酸を急激に中和する。続く装置の洗浄の後には、結果としてナノチャネル端部にナノスケールのノズルが出来上がる。
【0083】
実施例7:この実施例は、犠牲的な高分子を用いた、ナノノズル・チップの製造方法を記述するものである。2本鎖DNAを直線状にするために、ナノチャネルによって連結した入力/出力のタンクを有するナノ流体チップを利用する(図8a)。この実施例では、長さ約1〜10MbpのDNAの長い断片をYOYO−1で均一に染色したものが好ましい。DNA濃度は約0.5マイクログラム/mLとするべきであり、染色液で10:1塩基対/染色液の比率で染色する。緩衝液は、0.1Mの抗酸化剤および付着防止剤として用いる0.1%直線状ポリアクリルアミドを含む0.5×TBE(pH7.0)から成る。ナノ流体チップおよび前述の方法(Cao 2002)を用いて、犠牲的なDNA分子の溶液をチップのナノチャネルへ流れ込ませると、それがナノチャネルから排液タンクへ出る。蛍光顕微鏡を用いて、DNA分子が出る様子をリアルタイムで観察し、その動きをタンク中の電場(1〜50V/cm)の適用により制御する。そうした方法によって、DNA断片を、ナノチャネルを部分的にだけ出た望みの位置で留めることが可能である。そして、ナノチャネル・チップを真空状態の50℃で乾燥させ、残った緩衝溶液を全て除去することで、目的のDNA断片をナノチャネル内部に部分的に残す。ナノチャネル表面とDNA断片間の相互作用、例えばファンデルワールス力による結合が、乾燥の間、チャネル内での断片の位置を保持する。
【0084】
ナノチャネル・チップを乾燥した後、ナノチャネルへの入り口がブロックされ、DNA断片が取り囲まれるように、チップ表面上に二酸化ケイ素などの材料を蒸着させる(図8b)。材料の蒸着速度および蒸着温度は、この過程中にDNA断片が損傷しないように、慎重に選択すべきである。クーリングステージを用いて−160℃に保ったサンプルへ、0.2A/sまたはそれ以下で材料を蒸着すると、小さな有機分子を損傷から保護できることが示されている(Austin 2003)。ナノノズルを適切に形成するために、ナノチャネル周辺の均一な被覆を得るために、蒸着の過程中、ステージを回転および傾斜させる。直径80nmのナノチャネルを完全に閉じるためには、約200nmの二酸化ケイ素材料を蒸着する必要がある。
【0085】
実施例8.装置の操作−1本鎖核酸の配列の電気的な測定:ナノチャネルのそれぞれの端部にあり直径約5〜100ミクロンおよび深さ1〜2ミクロンの寸法を有するタンクに接触した電極(銅、銀、チタン、金、またはアルミニウムとすることが可能である)を用いたシーケンシングに供する1本鎖核酸のために、ナノチャネルの一方の端部に位置して内径約1.5nmの狭窄(ナノゲートまたはナノノズルのいづれでも)を有するナノチャネル装置で、前記ナノチャネルが長さ約200ミクロンである、前記ナノチャネル装置に電圧バイアスを適用した。電極はタンク中へ設置し、リード線は電流計に接続するために流体領域の外部へ導く。100mV〜100Vの電圧範囲が利用可能である。それぞれのタンクに生理的緩衝液(TE、TBE、TAE)を入れて、適切な流体輸送のポンプまたはシリンジを用いて、毛細管現象および圧力差の助けによってナノ流体装置を湿らせる。緩衝液(1ナノリットル〜約100マイクロリットル)中の核酸サンプル(例えば、100塩基のsDNAおよび少なくとも1000塩基、または10000塩基、または100000塩基、または1百万、または10百万、または100百万以上、染色体の長さまで)を、1つまたは両方のタンクへ輸送した。1若しくはそれ以上のポリ核酸分子をナノチャネル内へ、狭窄へ輸送する助けとして、勾配を適用する。特にこの実施例では、場を適用し、1つのタンクからナノチャネルを通って狭窄を通り、ポリ核酸が狭窄に存在するように、および2つめのタンクへ行くように、制御した電圧の勾配を適用する。このシステムを通して流れる電流は、Axopatch 200B(Molecular Devices)パッチクランプ増幅器を用いて、検出および増幅をする。典型的に測定した電流は、約100fA〜約1uAの範囲であり、DNAの狭窄通過の動きに応じて約100ピコアンプの変動を伴う。1本鎖DNAへ付けた標識は、DNA自体が作り出すよりも小さな追加的な変動を生じる可能性がある。1塩基の空間的解像度での測定の場合、典型的な移動速度は、測定システムが1塩基あたり最低1回の測定を記録できるような速度である。Axopatch 200Bで帯域幅100kHzの場合、ナノチャネル内でのDNA分子の伸びが50%と仮定すれば、輸送の最高速度は100kB/秒である。このことは、DNAが構造を通過する輸送速度として約0.015nm/マイクロ秒を生じさせる。測定した電流の相違は、測定および較正基準のシートと関連づけられ、DNAサンプルの配列を生成する。
【0086】
様々な対象分子の分析のための適切な断面寸法を表す表を、以下に示した。
【0087】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子の1若しくはそれ以上の特徴を明らかにする方法であって、
ナノチャネルの内部に少なくとも一部が存在する高分子を直線状にする工程であって、
前記ナノチャネルの少なくとも一部が、前記高分子の少なくとも一部を物理的に拘束することが可能であり、これにより前記高分子のその部分を直線形状に保持し、
前記ナノチャネルが少なくとも1つの狭窄を有するものである、前記直線状にする工程と、
前記ナノチャネルの少なくとも一部の中に前記高分子の少なくとも一部を輸送する工程であって、これにより前記高分子の少なくとも一部が前記狭窄を通過するものである、前記輸送する工程と、
前記高分子による狭窄の通過に関連して発生する少なくとも1つのシグナルを測定する工程と、
前記少なくとも1つのシグナルを、前記高分子の1若しくはそれ以上の特徴と関連付ける工程と
を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記高分子は、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオシド、ポリマー、共重合体、デンドリマー、界面活性剤、脂質、炭水化物、ポリペプチド、タンパク質、またはそれらのあらゆる組合せ、を有するものである。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記高分子は流体中に存在するものである。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記輸送する工程は、前記高分子を勾配に曝露する工程を有するものである。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、前記勾配は、電気浸透の場、電気泳動の場、磁場、電場、電磁場、流動場、放射線場、機械力、電気浸透力、電気泳動力、動電学的な力、温度勾配、圧力勾配、表面性質の勾配、毛細管流動、またはそれらのあらゆる組合せ、を有するものである。
【請求項6】
請求項4記載の方法において、前記勾配は一定のものである。
【請求項7】
請求項4記載の方法において、前記勾配は変化するものである。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記シグナルは、視覚的シグナル、赤外線シグナル、紫外線シグナル、放射線シグナル、磁気シグナル、電気的シグナル、電磁気的シグナル、またはそれらのあらゆる組合せ、を有するものである。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記高分子は1若しくはそれ以上の標識を有するものである。
【請求項10】
請求項9記載の方法において、前記1若しくはそれ以上の標識は、電子スピン共鳴分子、蛍光分子、化学発光分子、放射性同位体、および酵素基質、ビオチン分子、アビジン分子、荷電輸送分子、半導体ナノ結晶、半導体ナノ粒子、コロイド金ナノ結晶、リガンド、マイクロビーズ、電磁ビーズ、常磁性体粒子、量子ドット、発色基質、親和性分子、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、抗原、ハプテン、抗体、抗体断片、脂質、ポリマー、荷電粒子、修飾ヌクレオチド、またはそれらのあらゆる組合せ、を有するものである。
【請求項11】
請求項8記載の方法において、前記シグナルは前記高分子によって本質的に発せられるものである。
【請求項12】
請求項8記載の方法において、前記シグナルは前記分子に照射することによって生成するものである。
【請求項13】
請求項12記載の方法において、前記照射は、可視光、紫外線、赤外線、X線、ガンマ線、電磁放射線、電波、放射性粒子、またはそれらのあらゆる組合せによる、前記高分子の少なくとも一部分の露光、を有するものである。
【請求項14】
請求項8記載の方法において、前記高分子の特徴は、前記高分子の大きさ、前記高分子の分子組成、前記高分子の分子配列、前記高分子の1若しくはそれ以上の分子の電気的性質、前記高分子の1若しくはそれ以上の分子の化学的性質、前記高分子の1若しくはそれ以上の分子の放射性に関する性質、前記高分子の1若しくはそれ以上の分子の磁性、またはそれらのあらゆる組合せ、を有するものである。
【請求項15】
請求項9記載の方法において、前記高分子の特徴は、前記高分子の1若しくはそれ以上の標識の位置を有するものである。
【請求項16】
請求項14記載の方法において、前記高分子の分子組成は、前記高分子の1若しくはそれ以上の分子の位置、DNA多型、DNAコピー数の多型、DNA内の増幅、DNA内の欠失、DNA内の転座、DNA内の特定の遺伝子座の逆位、前記高分子内のメチル基の位置、またはそれらのあらゆる組合せ、を有するものである。
【請求項17】
請求項15記載の方法において、この方法は、さらに、
薬剤と前記高分子間との結合部位の検出、高分子−薬剤複合体、DNA修復部位、DNA結合部位、DNA切断部位、SiRNA結合部位、アンチセンス結合部位、転写因子結合部位、制御因子結合部位、制限酵素結合部位、制限酵素切断部位、またはそれらのあらゆる組合せ、を有するものである。
【請求項18】
線形高分子を分析する装置であって、
2若しくはそれ以上の流体タンクと、
狭窄を有するナノチャネルであって、
前記ナノチャネルが少なくとも2つの流体タンクを互いに流体連通するように設置するものである、前記ナノチャネルと
を有する装置。
【請求項19】
請求項18記載の装置において、前記狭窄は前記ナノチャネルの一方の端に存在するものである。
【請求項20】
請求項18記載の装置において、前記狭窄は前記ナノチャネルの内部に存在するものである。
【請求項21】
請求項18記載の装置において、前記ナノチャネルは、少なくとも約10nmの範囲の長さを有するものである。
【請求項22】
請求項18記載の装置において、前記ナノチャネルは、少なくとも約50nmの範囲の長さを有するものである。
【請求項23】
請求項18記載の装置において、前記ナノチャネルは、少なくとも約100nmの範囲の長さを有するものである。
【請求項24】
請求項18記載の装置において、前記ナノチャネルは、少なくとも約500nmの範囲の長さを有するものである。
【請求項25】
請求項18記載の装置において、前記ナノチャネルは、前記線形高分子の長さと少なくとも等しい長さを有するものである。
【請求項26】
請求項18記載の装置において、前記ナノチャネルは、約0.5nm〜約1000nmの範囲の有効内径を有するものである。
【請求項27】
請求項18記載の装置において、前記ナノチャネルは、約10nm〜約500nmの範囲の有効内径を有するものである。
【請求項28】
請求項18記載の装置において、前記ナノチャネルは、約100nm〜約300nmの範囲の有効内径を有するものである。
【請求項29】
請求項18記載の装置において、前記ナノチャネルは、約150nm〜約250nmの範囲の有効内径を有するものである。
【請求項30】
請求項18記載の装置において、前記ナノチャネルは、高分子の少なくとも一部を直線形状に保持するために、前記高分子の少なくとも一部を物理的に拘束することが可能な有効内径を有するものである。
【請求項31】
請求項18記載の装置において、前記狭窄は、約0.5nm〜約100nmの範囲の有効内径を有するものである。
【請求項32】
請求項18記載の装置において、前記狭窄は、約10nm〜約50nmの範囲の有効内径を有するものである。
【請求項33】
請求項18記載の装置において、前記狭窄は、前記狭窄を通過する線形高分子を直線形状に保持することが可能な有効内径を有するものである。
【請求項34】
請求項18記載の装置において、この装置は、さらに、
勾配を有するものである。
【請求項35】
請求項34記載の装置において、前記勾配は、電気浸透の場、電気泳動の場、毛細管流動、磁場、電場、放射線場、機械力、電気浸透力、電気泳動力、動電学的な力、温度勾配、圧力勾配、表面性質の勾配、毛細管流動、またはそれらのあらゆる組合せ、を有するものである。
【請求項36】
請求項34記載の装置において、前記勾配は、前記ナノチャネルの少なくとも一部の中に存在する高分子の少なくとも一部を直線状にすることが可能なものである。
【請求項37】
請求項34記載の装置において、前記勾配は、前記ナノチャネル内部に位置する高分子の少なくとも一部を、前記ナノチャネルの少なくとも一部に沿って輸送することが可能なものである。
【請求項38】
請求項34記載の装置において、この装置は、さらに、
勾配発生器を有するものである。
【請求項39】
請求項38記載の装置において、前記勾配発生器は、電源、磁石、音源、圧力源、またはそれらのあらゆる組合せ、を有するものである。
【請求項40】
請求項34記載の装置において、前記勾配発生器は、一定の勾配を適用することが可能なものである。
【請求項41】
請求項34記載の装置において、前記勾配発生器は、可変的な勾配を適用することが可能なものである。
【請求項42】
請求項18記載の装置において、2若しくはそれ以上の流体タンクは同じ流体を有するものである。
【請求項43】
請求項18記載の装置において、2若しくはそれ以上の流体タンクは異なる流体を有するものである。
【請求項44】
請求項18記載の装置において、この装置は、さらに、
前記線形高分子の少なくとも一部による前記狭窄の通過によって発生するシグナルを検出することが可能な検出器を有するものである。
【請求項45】
請求項44記載の装置において、前記検出器は、電荷結合素子(charge coupled device:CCD)検出システム、相補型金属酸化膜半導体(complementary metal−oxide semiconductor:CMOS)検出システム、光ダイオード検出システム、光電子増倍管検出システム、シンチレーション検出システム、光子計数検出システム、電子スピン共鳴検出システム、蛍光検出システム、光子検出システム、電気的検出システム、写真フィルム検出システム、化学発光検出システム、酵素検出システム、原子間力顕微鏡(atomic force microscopy:AFM)検出システム、走査型トンネル顕微鏡(scanning tunneling microscopy:STM)検出システム、走査型電子顕微鏡(scanning electron microscopy:SEM)検出システム、光学検出システム、核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance:NMR)検出システム、近接場(near field)検出システム、全反射(total internal reflection:TIRF)検出システム、パッチクランプ検出システム、電流検出システム、電気増幅検出システム、抵抗測定システム、容量検出システム、またはそれらのあらゆる組合せ、を有するものである。
【請求項46】
請求項44記載の装置において、前記検出器は、1若しくはそれ以上の流体タンク中の、1若しくはそれ以上の位置を測定することが可能なものである。
【請求項47】
請求項44記載の装置において、前記検出器はナノチャネル内の位置を測定することが可能なものである。
【請求項48】
請求項44記載の装置において、前記検出器はナノチャネル端部に近接する位置で測定することが可能なものである。
【請求項49】
請求項18記載の装置において、この装置は、さらに、
照射器を有するものである。
【請求項50】
請求項49記載の装置において、前記照射器は、レーザー、可視光の光源、放射性粒子の発生源、磁石、紫外線の発生源、赤外線の発生源、またはそれらのあらゆる組合せ、を有するものである。
【請求項51】
請求項18記載の装置において、この装置は、さらに、
データ処理器を有するものである。
【請求項52】
高分子を輸送する方法であって、
少なくとも2つの流体タンクを提供する工程と、
少なくとも部分的に線形の高分子を提供する工程であって、
前記高分子の少なくとも一部がナノチャネル内に存在し、
前記ナノチャネルが少なくとも2つのタンクを互いに流体連通するよう設置し、
前記ナノチャネルが狭窄を有するものである、前記線形の高分子を提供する工程と、
前記高分子に勾配を適用する工程であって、
前記勾配が、前記線形高分子の少なくとも一部が前記ナノチャネルの少なくとも一部の中に輸送されるようにするものである、前記適用する工程と
を有する方法。
【請求項53】
請求項52記載の方法において、前記ナノチャネルは、約10nm以上の長さを有するものである。
【請求項54】
請求項52記載の方法において、前記ナノチャネルは、約50nm以上の長さを有するものである。
【請求項55】
請求項52記載の方法において、前記ナノチャネルは、約100nm以上の長さを有するものである。
【請求項56】
請求項52記載の方法において、前記ナノチャネルは、約500nm以上の長さを有するものである。
【請求項57】
請求項52記載の方法において、前記ナノチャネルは、前記線形高分子の長さ以上の長さを有するものである。
【請求項58】
請求項52記載の方法において、前記勾配は、電気浸透の場、電気泳動の場、毛細管流動、磁場、電場、放射線場、機械力、電気浸透力、電気泳動力、動電学的な力、温度勾配、圧力勾配、表面性質の勾配、毛細管流動、またはそれらのあらゆる組合せ、を有するものである。
【請求項59】
請求項58記載の方法において、前記勾配は一定のものである。
【請求項60】
請求項58記載の方法において、前記勾配は変化するものである。
【請求項61】
狭窄ナノチャネルを製造する方法であって、
ナノチャネルを提供する工程であって、
前記ナノチャネルは約0.5nm〜約1000nmの範囲の内径を有し、
前記ナノチャネルは少なくとも約10nmの長さを有するものである、前記提供する工程と、
前記ナノチャネルの内部の位置または前記ナノチャネルの端部に近接する位置のいずれか、または両方で前記ナノチャネルの内径を縮小させる工程であって、これにより前記ナノチャネルの内部または近接部に狭窄を生じさせ、この狭窄は前記ナノチャネルと流体連通する内径を有するものであり、
前記ナノチャネルは線形高分子をその直線形状に保持することが可能であり、
前記縮小内径は前記線形高分子の少なくとも一部の通過を許容することが可能なものである、前記縮小させる工程と
を有する方法。
【請求項62】
請求項61記載の方法において、前記ナノチャネルの内径は、1若しくはそれ以上の物質を前記ナノチャネルの内部または外部に付加的に蒸着することにより、縮小されるものである。
【請求項63】
請求項62記載の方法において、前記付加的な蒸着は、スパッタリング、スプレー、物理蒸着、化学蒸着、またはそれらのあらゆる組合せ、を有するものである。
【請求項64】
請求項62記載の方法において、前記付加的な蒸着は、前記ナノチャネルが完全に閉塞する前に停止するものである。
【請求項65】
請求項62記載の方法において、前記付加的な蒸着は、前記ナノチャネルが完全に閉塞した後に停止するものである。
【請求項66】
請求項65記載の方法において、この方法は、さらに、
蒸着した添加材料の少なくとも一部を除去することによって、密封したナノチャネルに再度穴を開ける工程を有するものである。
【請求項67】
請求項66記載の方法において、前記除去はエッチングによって成し遂げられるものである。
【請求項68】
請求項67記載の方法において、前記エッチングは、蒸着した添加材料の一方の側を、前記蒸着した添加材料をエッチング(腐食)させることが可能な第一の種類の物質と接触させる工程を有するものである。
【請求項69】
請求項68記載の方法において、この方法は、さらに、
前記蒸着した添加材料の他方の側を、前記エッチングする種類の物質の前記腐食活性を前記第一の種類の物質との接触によって妨害することが可能な第二の種類の物質と接触させる工程を有するものである。
【請求項70】
請求項68記載の方法において、この方法は、さらに、
前記蒸着した添加材料の他方の側を、前記エッチングする種類の物質の前記腐食活性を前記第一の種類の物質との接触によって停止させることが可能な第二の種類の物質と接触させる工程を有するものである。
【請求項71】
請求項69記載の方法において、この方法は、さらに、
望みの縮小した内径を得るために、前記ナノチャネル内の状態、前記第一および第二の種類の物質の相対的な量、またはそれらのあらゆる組合せを調節する工程を有するものである。
【請求項72】
請求項61記載の方法において、前記ナノチャネルの内径に影響を与える工程は、(a)前記ナノチャネル内に犠牲材料を設置する工程と、(b)前記犠牲材料に近接して添加材料を蒸着する工程であって、これにより前記ナノチャネルを完全に閉塞させるものである、前記蒸着する工程と、(c)前記犠牲材料の少なくとも一部を選択的に除去する工程であって、これにより前記除去された犠牲材料の寸法にまで縮小した前記ナノチャネルの内径を生じさせるものである、前記除去する工程とを有するものである。
【請求項73】
高分子を直線状にする方法であって、
高分子をナノチャネル内に設置する工程であって、
前記ナノチャネルの少なくとも一部分は、前記高分子の少なくとも一部分を物理的に拘束することが可能であり、これにより前記高分子のその部分を直線形状に保持するものである、前記設置する工程
を有する方法。
【請求項74】
請求項73記載の方法において、前記ナノチャネルは狭窄を有するものである。
【請求項75】
請求項73記載の方法において、この方法は、さらに、
前記高分子の少なくとも一部分が、前記ナノチャネルの狭窄を直線的に通過するように、前記高分子に勾配を適用する工程を有するものである。
【請求項76】
請求項75記載の方法において、前記勾配は、電気浸透の場、電気泳動の場、毛細管流動、磁場、電場、放射線場、機械力、電気浸透力、電気泳動力、動電学的な力、温度勾配、圧力勾配、表面性質の勾配、毛細管流動、またはそれらの組合せ、を有するものである。
【請求項77】
請求項73記載の方法において、前記ナノチャネルは、2若しくはそれ以上の流体タンクを、互いに流体連通するように設置するものである。
【請求項78】
請求項73記載の方法において、前記ナノチャネルは、前記高分子の線形コンフォーメーションの旋回半径の約2倍以下の内径を有するものである。
【請求項79】
請求項73記載の方法において、前記ナノチャネルは、少なくとも約10nmの長さを有するものである。
【請求項80】
請求項79記載の方法において、前記ナノチャネルは、少なくとも約50nmの長さを有するものである。
【請求項81】
請求項79記載の方法において、前記ナノチャネルは、少なくとも約100nmの長さを有するものである。
【請求項82】
請求項79記載の方法において、前記ナノチャネルは、少なくとも約500nmの長さを有するものである。
【請求項83】
請求項73記載の方法において、前記ナノチャネルは、約0.5nm〜約1000nmの範囲の内径を有するものである。
【請求項84】
請求項83記載の方法において、前記ナノチャネルは、約5nm〜約200nmの範囲の内径を有するものである。
【請求項85】
請求項84記載の方法において、前記ナノチャネルは、約50nm〜約100nmの範囲の内径を有するものである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−510476(P2010−510476A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520847(P2009−520847)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/016408
【国際公開番号】WO2008/079169
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(509018638)バイオナノマトリックス、インク. (7)
【Fターム(参考)】