説明

ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システム

ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムは、従来の凍結保護用の結晶取り出し、もしくは内部で成長するタンパク質結晶のその場X線回折研究を可能にする結晶カードにおける、結晶化条件のナノリットル体積スクリーニングを可能にする。本システムは、結晶化反応混液の調合を結晶化実験の準備と統合させる。本システムは、結晶化相空間を効率的に利用するための結晶化実験における勾配スクリーニング、或いは1つの包括的ハイブリッド結晶化トライアルを実行するためのスパースマトリックスおよび勾配スクリーニングの組み合わせのいずれかを研究者が選択することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本願は、2008年6月13日に出願された米国仮特許出願第61/061536号の利益を請求し、当該仮出願は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
政府のライセンスの権利に関する陳述
本発明の主題は、少なくとも部分的に、National Institute of General Medical Sciencesにより授与された、NIGMS U54 GM074961によって提供された政府の支援を受けて行われた。
【背景技術】
【0003】
構造生物学の分野は、スループットおよび効率を向上させる技術を毎年生み出している。かかる進歩は、遺伝子から三次元構造までを3日のうちに発達させることを動機づけた。効率を改善するためには、結晶化スクリーニングと最適化とに十分な材料が、無細胞合成から得られるように、必要なタンパク質量を最小限に抑えることが望ましい。「3日」の構造目標を念頭に置いて、遺伝子から構造へのパイプライン効率を高めるいくつかの技術を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
この要約は、以下の詳細な記載にさらに記載される概念から選択したものを平易に紹介するために示される。この要約は、請求される主題の重要な特徴を特定することは意図しておらず、請求される主題の範囲を決定する助けとして用いることも意図していない。
【0005】
議論される主題の一様態は、ポンピングシステム;および該ポンピングシステムを制御するためにタンパク質結晶化システム上で実行するように構成された複数個のソフトウェア、を備えるタンパク質結晶化のためのシステムを含む。本システムは、ポンピングシステムに連結された1つまたはそれ以上の結晶カードであって、それぞれがミキサー、および貯蔵とタンパク質結晶化検査を容易にするために該ミキサーに連結されたマイクロ流体キャピラリーとを収容するように構成された、結晶カードをさらに含む。
【0006】
本主題の別の様態は、複数個のソフトウェアで働くポンピングシステムを用いて各水流を独立に制御することによって水流を調節することを備える、勾配スクリーニングのための方法を含む。本方法は、タンパク質結晶化実験において沈殿から、微結晶へ、単結晶への転移を示すために、タンパク質の結晶化相空間をマッピングすることをさらに備える。
【0007】
本主題のさらなる様態は、沈殿剤プラグを予め形成すること;およびそれぞれが2つの沈殿剤プラグを互いに分離するプラグ・スペーサーを予め形成することを備えるハイブリッド・スクリーニングのための方法を含む。本方法は、沈殿剤プラグ、プラグ・スペーサー、およびタンパク質の流れを合流させることによって勾配を形成することをさらに備える。本方法は、タンパク質結晶化実験において沈殿から、微結晶へ、単結晶への転移を示すために、タンパク質の結晶化相空間をマッピングすることをさらに含む。
【0008】
本主題のさらなる様態は、キャピラリーをもつ結晶カードを受け取ること;表面エネルギーを低減するためにキャピラリーに試薬をコーティングすること;および試薬を除去することを備える方法を含む。
【0009】
別の様態において、本主題は、ミキサー回路および検査回路を収容するように構成された基板を備える結晶カードを含む。結晶カードは、基板に接合され、基板から剥離されるように構成された層をさらに含む。
【0010】
前述の様態、および本発明に付随する利点の多くは、添付図面と併せて次の詳細な記載を参照することによってよく理解され、従ってより容易に正しく認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】例となるナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを示すブロック図である。
【図2】ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムの例となるポンピングシステムを示すブロック図である。
【図3A】ポンピングシステムを構成するための例となるユーザインターフェースを示す絵図である。
【図3B】本システムの結晶カードに流体をプライミングするための例となるユーザインターフェースを示す絵図である。
【図3C】結晶カードにおけるナノプラグの生成を指定するための例となるユーザインターフェースを示す絵図であって、本主題の一実施形態に従ってナノプラグはサイズが等しく内容物が等しい。
【図3D】結晶カードにおけるナノプラグの生成を指定するための例となるユーザインターフェースを示す絵図であって、本主題の一実施形態に従ってナノプラグは様々な濃度のタンパク質および沈殿剤を有する。
【図3E】結晶カードにおけるナノプラグの生成を指定するための例となるユーザインターフェースを示す絵図であって、本主題の別の実施形態に従ってナノプラグは複数の沈殿剤に対して様々なサイズおよび濃度を有する。
【図4A】結晶カードの一実施形態の上面等角図を示す絵図である。
【図4B】結晶カードの一実施形態の底面等角図を示す絵図である。
【図4C】結晶カードの一実施形態の上面図を示す絵図である。
【図4D】結晶カードの一実施形態の側面図を示す絵図である。
【図4E】結晶カードの一実施形態の底面図を示す絵図である。
【図5A】結晶カードの別の実施形態の上面等角図を示す絵図である。
【図5B】結晶カードの別の実施形態の底面等角図を示す絵図である。
【図5C】結晶カードの別の実施形態の上面図を示す絵図である。
【図5D】結晶カードの別の実施形態の側面図を示す絵図である。
【図5E】結晶カードの別の実施形態の底面図を示す絵図である。
【図6A】結晶カードの第3の実施形態の上面等角図を示す絵図である。
【図6B】結晶カードの第3の実施形態の底面等角図を示す絵図である。
【図6C】結晶カードの第3の実施形態の上面図を示す絵図である。
【図6D】結晶カードの第3の実施形態の側面図を示す絵図である。
【図6E】結晶カードの第3の実施形態の底面図を示す絵図である。
【図7A】結晶カードの第4の実施形態の上面等角図を示す絵図である。
【図7B】結晶カードの第4の実施形態の底面等角図を示す絵図である。
【図7C】結晶カードの第4の実施形態の上面図を示す絵図である。
【図7D】結晶カードの第4の実施形態の側面図を示す絵図である。
【図7E】結晶カードの第4の実施形態の底面図を示す絵図である。
【図8A】結晶カードの第5の実施形態の上面等角図を示す絵図である。
【図8B】結晶カードの第5の実施形態の底面等角図を示す絵図である。
【図8C】結晶カードの実施形態の上面図を示す絵図である。
【図8D】結晶カードの第5の実施形態の側面図を示す絵図である。
【図8E】結晶カードの第5の実施形態の底面図を示す絵図である。
【図9A】結晶カードの第6の実施形態の上面等角図を示す絵図である。
【図9B】結晶カードの第6の実施形態の底面等角図を示す絵図である。
【図9C】結晶カードの第6の実施形態の立体分解等角図を示す絵図である。
【図9D】結晶カードの第6の実施形態の上面図を示す絵図である。
【図9E】結晶カードの第6の実施形態の側面図を示す絵図である。
【図9F】結晶カードの第6の実施形態の底面図を示す絵図である。
【図10】結晶カードの一実施形態の3プラス1ミキサーの一実施形態を示す絵図である。
【図11】結晶カードの一実施形態の3プラス1ミキサーの別の実施形態を示す絵図である。
【図12】結晶カードの一実施形態の3プラス1ミキサーの第3の実施形態を示す絵図である。
【図13】結晶カードの一実施形態の3プラス1ミキサーの第4の実施形態を示す絵図である。
【図14】結晶カードの一実施形態の断面図を示す絵図である。
【図15A】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15B】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15C】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15D】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15E】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15F】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15G】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15H】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15I】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15J】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15K】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15L】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15M】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15N】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15O】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15P】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15Q】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15R】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15S】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15T】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15U】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【図15V】図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化するための例となる方法を示すプロセス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本主題の様々な実施形態において、ポンプ;該ポンプを制御するように構成されたソフトウェア;ならびにミキサー回路および検査回路を収容する結晶カード、を備えるナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムが記載される。結晶カードは、X線透過、光学的透明性、成形性、耐薬品性(chemical resistive)および表面エネルギーからなる群から選択された1つまたはそれ以上の特性を含む材料を用いて適切に製造される。結晶カードは、該結晶カードからの結晶の採取またはその場X線回折を可能にする様々な相の巨大分子結晶を収容する。該結晶は、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムによるナノプラグ形成を通じて、結晶カード内で成長が進む。ナノプラグは、水溶液流に非混和性の生物学的に不活性なキャリア流体、例えばフッ化炭素溶液、を混合することによって形成される。ナノプラグ結晶化実験を構成するために、例えば標的分子、緩衝剤、および沈殿剤溶液からなる水溶液流がミキサー回路で混合される。ナノプラグは、結晶化のためにインキュベーションおよびモニタリングが行われる。タンパク質結晶の核発生および成長に関する科学的疑問の解明および新規構造の溶液における結晶生成を目指して、ナノプラグ結晶化実験を然るべく用いることができる。
【0013】
ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムは、2つのスクリーニング様式:勾配モードおよびハイブリッドモードを容易にする。本明細書では、用語勾配モードは、分子の様々な結晶化相を提供する任意の適切なスクリーニング方法を含む。勾配モードは、特定分子の結晶化相空間を明らかにするために、結晶学者が結晶カードを精細にスキャンすることを可能にする。ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムに用いられる各水溶液流は、ポンプを用いてソフトウェアにより独立に制御でき、それ故に個々の流れの流量を変化させることにより、一連のナノプラグにわたって所望の粒度の濃度勾配が然るべく形成される。沈殿剤の流れの流量が減少するときに、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムは、流量の合計が一定のままであるように緩衝剤の流れの流量を増加させる。沈殿から、微結晶へ、単結晶への転移を示すために、勾配モードを用いてタンパク質のような特定分子の結晶化相空間をマッピングすることができる。
【0014】
勾配モードの機能強化として、ハイブリッドモードは、勾配とスパースマトリックス・スクリーニングとを1つの結晶カード上で組み合わせる。予め形成された様々な結晶化剤のカートリッジを作り出すことによって、ナノプラグ中の分子結晶に関するスパースマトリックス・スクリーニングを実現することができる。本明細書において、用語ハイブリッドモードは、予め形成されたカートリッジを含む任意の適切なスクリーニング方法を含めて、ハイブリッド・スクリーニングを含む。ハイブリッドモードは、ナノプラグ・スペーサー(気泡)によって分離された沈殿剤ナノプラグを予め形成し、それらを分子流と合流させたときに濃度勾配を形成することにより、スパースマトリックス・スクリーニングの概念を拡張させる。勾配モードと同様に、ハイブリッドモードは、予め形成された沈殿剤ナノプラグおよび緩衝剤の流れの間で流量変化を連係させることによって勾配を発生させる。スパースマトリックスおよび勾配スクリーニングを1つの結晶カード上で一緒に行うことによって、ハイブリッドモードでは予め形成された各沈殿剤ナノプラグから20〜40の実験が生み出され、結晶化位相空間の広い領域をサンプリングすることが可能になる。
【0015】
前述および後述のように、用語「ナノプラグ」は、本システムのマイクロ流体チャンネルを満たす、10〜20nLの水滴のような、ナノリットル体積サイズの液滴を指す。各ナノプラグが個別の微結晶化実験を備える。前述および後述のように、用語「ミキサー回路」は、結晶カードの検査回路の上流地点で一緒になる、3つの水チャンネルおよび1つのキャリア流体チャンネルを有する回路を含むことを意味する。4つまたは5つの水チャンネルおよび1つのキャリア流体チャンネルをもつミキサーのような、さらなる構成も可能である。水チャンネルは一緒になり、キャリア流体チャンネルと角度90度で然るべく交差する。本明細書では、用語「マクロ・マイクロ接合部分(macro−micro interface)」は、シリンジおよび結晶カード間の連結を含むことを意味する。いくつかの実施形態において、シリンジは、テフロン(登録商標)(PTFE)配管のような配管を通じてミキサー回路または検査回路に接続される。他の実施形態において、該配管は、回路の注入口および排出口を該配管と流体的に接続するように構成されたコネクタを用いて、ミキサー回路または検査回路に接続される。前述および後述のように、用語「検査回路」は、流体が一緒になってキャピラリー内を流れる水性ナノプラグを形成する、該キャピラリーまたはチャンネルを指す。検査回路は、結晶形成についてナノプラグを検査するために用いることもできる。さらにまた、検査回路は、本主題の方法によって形成された結晶を貯蔵するためにも用いることができ、それ故に本明細書では貯蔵キャピラリーとも呼ばれる。本明細書では、用語「主チャンネル」は、ミキサーの下流に位置し、水溶液とキャリア流体とが混ざって水性ナノプラグを形成する検査回路の領域を指す。前述および後述のように、用語「分子」は、有機化合物および/または化学物質のような小分子、ならびに巨大分子を含む。用語「生物学的な分子」は、生物学的な起原に由来する、対応する、またはそれをモデルとする分子を指す。この用語は、無細胞合成によるようにインビトロで、および/または組み換えタンパク質のようにインビボで合成もしくは生成された分子;変異タンパク質、および人工タンパク質、天然および人工核酸分子、ならびに天然には発生しない他の生物学的な分子も含む。本明細書では、用語「巨大分子」は、核酸、タンパク質、炭水化物および脂質のような生体高分子を含む。分かりやすくするために、用語「タンパク質」および「タンパク質溶液」は、本明細書では、タンパク質に加えて他のタイプの分子も包含する。
【0016】
分子の結晶化に役立つナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システム100が図1に示される。結晶構造が所望される分子を備える調製試料102、例えば調製タンパク質試料が水溶液104中に提供される。追加の水溶液、例えば緩衝剤溶液および沈殿剤溶液も提供される。緩衝剤溶液は、生物学的な試料102を調製するために用いられる緩衝剤を備えることができる。キャリア流体も提供される。キャリア流体は、水溶液と非混和性である。キャリア流体の適切な例は、フッ素系オイル;例えば、FC−40(3M Corp.,St.Paul,Minnesota)を含む。水溶液およびキャリア流体104は、1つまたはそれ以上のポンプ108に接続された1つまたはそれ以上のシリンジ106に供給される。ポンプ108は、ナノプラグ形成用コンピュータ110上で実行されるソフトウェアによって制御される。ナノプラグ形成用コンピュータ110上で実行されるソフトウェアは、結晶カード112における水溶液およびキャリア流体104の流れを調節する。顕微鏡114のような拡大デバイスを用いて、結晶カード112における水溶液およびキャリア流体の流れが観察される。
【0017】
結晶カードを通る様々な流体の流れを調節するのに役立つポンピングシステム200が図2に示される。ポンプ1 202は、シリンジ1 204およびシリンジ2 208を制御する。シリンジ1 204に緩衝剤206のような水溶液が負荷される。シリンジ2は、沈殿剤試薬210のような水溶液で満たされる。ポンプ2 212は、シリンジ3 214およびシリンジ4 218を制御する。シリンジ3 214は、キャリア流体216のような非混和性流体で満たされる。シリンジ4 218は、注目されるタンパク質220のような分子を含んだ水溶液で満たされる。適切なポンプは、Harvard Twin 33シリンジポンプ(Harvard Apparatus,Holliston,MA)を含む。いくつかの実施形態において、該シリンジポンプは、より良好な精度を提供するために製造者によって改良された。適切なシリンジは、1800シリーズHamilton Gas TightシリンジのようなHamiltonシリンジを含む。適切なシリンジ容積は、10μlから100μlの範囲である。ポンピングシステム200は、ナノプラグ形成用コンピュータ110上で実行されるソフトウェアによって制御される。
【0018】
適切なソフトウェアがポンピングシステム108を制御するために提供される。図3A〜3Eは、ポンピングシステム200を制御する様々なモードを表示する、システムのソフトウェアの代表的なユーザインターフェースを示す。図3Aは、ソフトウェアの構成モードの代表的なユーザインターフェース300を示す。図3Bは、ソフトウェアの主要モードの代表的なユーザインターフェース302を示す。図3Cは、ソフトウェアの一定モードの代表的なユーザインターフェース304を示す。図3Dは、ソフトウェアの勾配モードの代表的なユーザインターフェース306を示す。図3Eは、システムのソフトウェアのハイブリッドモードの代表的なユーザインターフェース308を示す。
【0019】
本明細書に開示される主題の結晶カードを次に参照して、結晶カードの一実施形態の代表的な例が図4A〜4Eに示される。結晶カード400は、標準的な顕微鏡スライドとほぼ同じサイズであるように構成され、長さが約76.20mm、幅が約25.40mm(または約3インチ長×約1インチ幅)である。結晶カード400は、厚さが約1.0から1.5mmである。該結晶カードは、射出成形によって透明ポリカーボネートから製造される(Siloam Bioscience社)。
【0020】
図4Aおよび4Bに示される実施形態を次に参照して、結晶カード400は、上面402、および上面402に平行な下面414を有する。結晶カード400は、ミキサー回路404、ならびに貯蔵および検査回路406を収容するように構成された基板を備える。ミキサー回路404は、4つのマイクロ流体チャンネル421、422、424、および426で構成される。図4Cを参照。チャンネル421、422、および424は一緒になり、角度90度でチャンネル426と交差する。各チャンネルは、注入口410を備える。図4Eを参照。検査回路406は、ミキサー404のすぐ下流に位置し、排出口412で終わる長いマイクロ流体キャピラリー・チャンネルを備える。マイクロ流体キャピラリー406の長さは、約67cmである。マイクロ流体キャピラリー・チャンネル406は検査回路とも呼ばれ、本カードで生成された結晶は、その場X線回折解析に供するか、または凍結のために採取されるまでチャンネル406中に貯蔵することができる。マイクロ流体チャンネル421、422、424、426、およびキャピラリー・チャンネル406は、断面が実質的に正方形であり、約200マイクロメータ(μm)×200μmの内径を有する。しかしながら、他のチャンネル構成も可能である。
【0021】
図4Dを次に参照して、結晶カード400は、基板に熱的に接合され、基板から剥離されるように構成された層420をさらに備える。剥離可能な層420は、基板表面414に熱的に接合される。他の実施形態において、剥離可能な層420は、基板に化学的に結合されてもよい。剥離可能な層420は、厚さが約0.10から0.14mmである。剥離可能な層420は、剥離可能な層420の除去が検査回路チャンネル406の内部空間を暴露するように然るべく構成される。結晶カード400は、該結晶カードにシリンジを接続するマクロ・マイクロ接合部分をさらに備える。一実施形態において、マクロ・マイクロ接合部分は、一端では注入口410および排出口412に接続され、他端ではフレキシブル・シリコン配管でできたスリップフィット・コネクタ432に接続された(例えば、PEEK(商標)ポリマーでできた)硬質プラスチック配管430の断面を含む。スリップフィット・コネクタ432は、テフロン(登録商標)(PTFE)配管(示されていない)を受けるように構成される。該配管の他端は、本システムのシリンジに接続される。テフロン(登録商標)配管は、内径が360μm、外径が760μm(ID/OD 360/760)である一方で、コネクタ432の内径は760μmであり、その結果としてテフロン(登録商標)配管がコネクタ432に挿入されたときに気体および流体漏れのないシールが形成される。
【0022】
動作中に、チャンネル421は、注目されるタンパク質溶液に用いられる緩衝剤のような、水溶液で満たされた配管に接続される。チャンネル422は、沈殿剤溶液で満たされた配管に接続される。本明細書では、用語沈殿剤は、用語クリスタラント(crystallant)と同義であると理解される。チャンネル424は、注目される標的分子を含む溶液で満たされた配管に接続される。一実施形態において、生物学的な標的分子はタンパク質である。チャンネル426は、キャリア流体で満たされた配管に接続される。キャリア流体の適切な例は、フッ素系オイル、またはFC−40のようなフッ化炭素を含むが、他にも可能ではある。キャリア流体は、水性流体に対して非混和性であり、検査回路マイクロチャンネルの壁を選択的に濡らす。その結果、混合された水溶液部分がチャンネル幅にわたるナノプラグに分割される。一実施形態において、水性ナノプラグは、体積が約10〜20nLである。
【0023】
図5A〜5Eを次に参照して、本主題の結晶カードに関する別の実施形態の代表的な例が示される。異なった図面間で同様の要素は、同様の参照番号をもち、図面番号に対応して最上位の数字が1だけ増加する。簡潔にするために、異なった図面間で同様の要素は、さらには記載されない。図5A〜5Eに示される実施形態において、注入口510は、結晶カード500の上面502に位置する浅い円筒状のくぼみ508中に位置する。円筒状のくぼみ508は、注入口510および排出口512に配管を接続するコネクタ(示されていない)を取り付けるように構成される。結晶カード500の寸法が図5Eに示される。結晶カード500は、長さが76.2mmで幅が25.4mmである。注入口510は、4.5mmの間隔をあけて配置される。検査回路506の平行チャンネルは、2.0mmの間隔をあけて配置される。しかしながら、当業者に理解されるように他の適切な構成も可能である。
【0024】
図6A〜6Eを次に参照して、結晶カードの第3の実施形態の代表的な例が示される。簡潔にするために、前出の図面に記載された同様の要素は、ここでは記載されない。図6A〜6Eに示された実施形態において、注入口610および排出口612は、表面602に接続され、そこから外に延びる円筒状の突起608より下に配置される。突起608は、注入口610および排出口612に配管を接続するコネクタ(示されていない)を取り付けるように構成される。本題からそれるが、図4〜6に示される実施形態において例示された結晶カードは、射出成形(Siloam Biosciences社)により透明ポリカーボネート・プラスチックから製造される。
【0025】
次に図7〜9に戻って、結晶カードの第2のタイプの代表的な実施形態が記載される。図形7A〜7Eは、本主題の結晶カードに関する別の実施形態の代表的な例を示す。簡潔にするために、前出の図面に記載された同様の要素は、ここでは記載されない。図7A〜7Eに示された実施形態において、結晶カード700の上面702は、2列のポート708をさらに備える。該ポートは、ポート708より下に位置する注入口710および排出口712に配管を接続するのに適したプラスチック・コネクタ(示されていない)を受けるように構成される。表面702は28のポート708を備える。しかしながら、結晶カード700の設計に依存して、様々なポート数が可能である。ポート708は、結晶カード700の表面702より上に約2.5mm延びる。注入口710および排出口712に位置を合わせて、これらと流体的に接続されるようにポート708底の中心部に然るべく穴が開けられる。該ポートの中心部は、約4.5mm間隔である。ポート708底に開けられた穴は、直径が約0.2mm(200μm)である。当然のことながら、すべてのポートが回路チャンネルに接続されるわけではなく、注入口710および排出口712に配管を接続すべき所望のポートだけに穴を開ける必要がある。他の実施形態において、剥離可能な層720が底面714に接合される前に、レーザを用いて該層に穴が開けられる。レーザドリル穴は、注入口710および排出口712と流体的に接続するように構成される。特別に設計された結晶カード・ホールダ(示されていない)を用いて、レーザドリル穴に配管が接続される。
【0026】
図7A〜7Eをなおも参照して、結晶カードは、2つに分かれた非対称なマイクロ流体チャンネル回路706Aおよび706Bをさらに備える。706Aでは検査回路は長さが約270mmである。706Bでは検査回路は長さが約306mmである。706Aおよび706Bの両回路において、排出口712は、注入口710からの回路およびミキサー回路704A、704Bとは反対側に位置する。図7A〜Eに示される実施形態は、ミキサー回路704A、704Bからなる2つに分かれた構成を備える。図10により詳細に示されるように、ミキサー回路704Aは、水チャンネルおよびキャリア流体チャンネル間に長さがおよそ0.20mmの短いネック領域を備える。図11により詳細に示されるように、ミキサー回路704Bは、水チャンネルおよびキャリア流体チャンネル間にネック領域がない。結晶カードにおける水性ナノプラグ形成には、ミキサー回路704Aが適することがわかった。
【0027】
図8A〜8Eを参照して、本主題の結晶カードに関する別の実施形態の代表的な例が示される。簡潔にするために、前述の要素と同様の要素は、ここでさらには記載されない。結晶カード800は、2つに分かれた対称なマイクロ流体チャンネル回路806を備える。この実施形態において、排出口812は、ミキサー804および注入口810と回路806の同じ側に位置する。
【0028】
図9A〜9Eを次に参照して、本主題の結晶カードに関する別の実施形態の代表的な例が示される。簡潔にするために、前述の要素と同様の要素は、ここでさらには記載されない。結晶カード900は、1つのミキサー回路904および長い検査回路906を備える単一のマイクロ流体回路を備える。検査回路906は、長さが約665mmである。図9Cは、結晶カード900の分解立体図を示す。ポート908を備える部分930は、マイクロ流体回路チャンネルを備える部分940に接合される。剥離可能な層920は、部分940の底面914に熱的に接合される。しかしながら、他の実施形態において、剥離可能な層920は、基板表面914に化学的に結合されてもよい。剥離可能な層920は、剥離可能な層920の除去が検査回路チャンネル906の内部空間を暴露するように然るべく構成される。本題からそれるが、図7〜9に示される実施形態において説明された結晶カードは、透明環状オレフィン共重合体(COC)または同等のプラスチックから製造される(ThinXXS Microtechnology AG,Germany)。
【0029】
次に図10〜13に戻って、ミキサー回路の代表的な例がここで記載される。図10は、図7に示されるミキサー704Aに対応するミキサー回路の一実施形態の代表的な例を示す。ミキサー回路1000は、3つの水チャンネル1021、1022および1024を備える。該水チャンネルは、ネック領域1007によってキャリア流体チャンネル1026から分離される。該チャンネルは、水溶液を含んだ3つのチャンネル1021、1022、1024が一緒になり、キャリア流体を含んだチャンネル1026と角度90度で交差するように方向が向けられる。ミキサー1000は、検査回路1006の一部分をさらに備える。図10をなおも参照して、ミキサー1000の寸法が次に記載される。ネック領域1007は、長さが約0.2mmである。チャンネル1021は、直径が約0.2mmである。チャンネル1022、1024は、直径が約0.141mmである。チャンネル1006、1026は、直径が約0.2mmである。しかしながら、ミキサー回路のための他の適切な寸法も可能である。
【0030】
図11は、図7に示されたミキサー回路704Bに対応するミキサー回路の別の実施形態の代表的な例を示す。ミキサー回路1100は、3つの水チャンネル1121、1122および1124を備える。水溶液チャンネルは、ネック領域なしでキャリア流体チャンネル1106に直接に接続される。ミキサー回路は、検査回路1126に流れ込む。該チャンネルは、水溶液を含んだ3つのチャンネルが一緒になりキャリア流体を含んだチャンネルと角度90度で交差するように方向が向けられる。チャンネル1121の直径は、約0.2mmである。チャンネル1122、1124の直径は、約0.141mmである。水チャンネルおよびキャリア流体チャンネル1126間の合流点領域の直径は、約0.285mmである。しかしながら、ミキサーのための他の適切な寸法も可能である。
【0031】
図12を次に参照して、図7に記載されたミキサー回路704Aの別図が示される。ミキサー回路1200は、短いネック領域によってキャリア流体チャンネル1226に接続された3つの水チャンネル1221、1222および1224を備える。該チャンネルは、水溶液を含んだ3つチャンネルが一緒になりキャリア流体を含んだチャンネルと角度90度で交差するように方向が向けられる。各チャンネルは、注入口1210を有する。ミキサー回路1204の下流において、溶液は、検査回路1206の一部分に流れ込む。図12をなおも参照して、ミキサー回路1200の寸法が次に記載される。注入口1210は、チャンネル1206、1226から約4.4mmに位置する。水チャンネル1221、1222、1224は、注入口から約2.9mmで直角に曲がる。直角な曲がりは、内径R0.300および外径R0.500をもつ。チャンネル1206と平行に面内に配置されたチャンネルの部分1221、1222、1224は、チャンネル1206から約1.300mmにある。水チャンネル1221、1222、1224は、ネック領域の上流で互いに接続する前に45度曲がる。チャンネル1206の内径は、約0.200mm(200μm)である。チャンネル1206の平行部分は、約1.2mm間隔である。しかしながら、他の適切な寸法も可能である。
【0032】
図13は、図8および9に示されたミキサー回路804および904に対応するミキサーの別の実施形態の代表的な例を示す。ミキサー回路1300は、水チャンネル1321、1322、および1324を備える。水チャンネルは、キャリア流体チャンネル1306および検査回路1326から短いネック領域によって分離される。該ネック領域の直径は、約0.200mmである。しかしながら、他の適切な寸法も可能である。該チャンネルは、水溶液を含んだ3つチャンネルが一緒になりキャリア流体を含んだチャンネルと角度90度で交差するように方向が向けられる。ミキサー回路の下流において、溶液は検査回路1326に流れ込む。
【0033】
図14は、図9に示された実施形態と同様の結晶カードの断面の代表的な例を示す。結晶カード1400は、3つの層1420、1430および1440から成っている。層1430は、図7〜9に示されるようなポートを備える。層1430は、厚さが約0.4mmである。層1440は、マイクロ流体チャンネル回路を備え、端部での厚さが約1.5mmである。層1420は、結晶カード1400の底面に貼り付けられた剥離可能な層を備え、厚さが約0.14mmである。
【0034】
図15A〜15Vは、ナノ体積マイクロキャピラリー結晶化システムを用いて分子を結晶化させるための方法5000を示す。スタート・ブロックから、方法5000は、継続ターミナル(「ターミナルA」)および出口ターミナル(「ターミナルB」)間で定義された方法ステップの一組5002へ進む。方法ステップの一組5002は、結晶カードの準備、および結晶カードのポンプへの接続について記載する。
【0035】
ターミナルA(図15B)から、方法5000は、結晶カードが射出成形によってポリジメチルシロキサン(PDMS)またはプラスチックのような適切な材料から製造される、方法ステップの一組5008へ進む。本方法は、次に起動ポイントへ戻る。方法5000は、次に継続ターミナル(「ターミナルA2」)によって定義された方法ステップの一組5010へ進む。方法ステップの一組5010は、表面エネルギーを低減するために、結晶カードのマイクロキャピラリー表面を処理する。
【0036】
ターミナルA2(図15C)から、方法5000は、結晶カードがプラスチックから製造されたかどうか判断するためにテストを行う決定ブロック5014へ進む。もしテストへの答えがNOであれば、本方法は、別の継続ターミナル(「ターミナルA4」)へ進む。もし決定ブロック5014におけるテストへの答えがYESであれば、本方法は、プラスチックがポリカーボネートであるかどうか判断するために他のテストを行う別の決定ブロック5016へ進む。もし決定ブロック5016におけるテストへの答えがNOであれば、方法5000は、別の継続ターミナル(「ターミナルA5」)へ進む。もし決定ブロック5016のテストへの答えがYESであれば、方法5000は、別の継続ターミナル(「ターミナルA6」)へ進む。
【0037】
ターミナルA4(図15D)から、方法5000は、結晶カードがPDMSから製造されたとして本方法がこれを処理するブロック5018へ進む。本方法は、マイクロキャピラリー表面が全フッ素置換シラン溶液により室温で2時間処理されるブロック5020へ進む。本方法は、次に全フッ素置換シラン溶液が真空により除去されるブロック5022へ進む。ブロック5024において、結晶カードのマイクロキャピラリー表面は、5〜10psiの圧力下にある空気のような気体を用いて1時間乾燥される。本方法は、次にターミナルA2のステップが起動したポイントに戻り、別の継続ターミナル(「ターミナルA3」)へ進む。ブロック5012を参照。
【0038】
ターミナルA5から(図15E)、方法5000は、結晶カードが環状オレフィン共重合体(COC)を備えるプラスチックまたは同等のプラスチックで作られたとして本方法がこれを処理するブロック5026へ進む。ブロック5028では、該プラスチックの表面エネルギー(疎水性)を低減するために、マイクロキャピラリー表面が室温において2時間試薬で処理される。表面エネルギーを低減するのに適した試薬は、フッ素化共重合体溶液を含むが他の試薬も可能である。適切なフッ素化共重合体溶液は、Cytonix PFC 502AFA(Cytonix社,Beltsville,MD)のような、フルオロ溶媒中の2%フッ素化共重合体溶液を含む。Cytonix PFC 502AFAは、ポリカーボネートへの付着用に製造されたもので、表面エネルギーを6〜10ダイン/cmに低減する。フッ素化共重合体溶液を結晶カードにつけるために、排出口からCytonix PFC 502AFA溶液が満たされる。ブロック5030では、フッ素化共重合体溶液が真空によって除去される。ブロック5032では、マイクロキャピラリー表面が、5〜10psiの圧力下にある空気のような気体を用いて1時間乾燥される。方法5000は、次に結晶カードが1時間、60℃に加熱されるブロック5034へ進む。本方法は、次にターミナルA2のステップの起動ポイントに戻る。ターミナルA3におけるブロック5012を参照。
【0039】
ターミナルA6(図15F)から、方法5000は、結晶カードが氷上で予冷されるブロック5036へ進む。ブロック5038において、マイクロキャピラリー表面は、Cytonix PFC 502AFAのようなフッ素化共重合体溶液を用いて氷上で2時間処理される。ポリカーボネート結晶カードの注入口は、より高い温度で502AFA溶液を用いてインキュベーションされた場合に割れやすい可能性がある。本方法は、次にターミナルA5へ進み、ブロック5030へ飛んでブロック5030、5032、および5034でのステップを行う。本方法は、次にターミナルA2のステップが起動したポイントへ戻る。ブロック5012におけるターミナルA3を参照。ブロック5012における方法ステップの一組は、結晶カードをポンプに連結する。
【0040】
ターミナルA3(図15G)から、方法5000は、シリンジ1に緩衝剤または水溶液が満たされるブロック5040へ進む。ブロック5042では、シリンジ2に沈殿剤溶液が満たされる。ブロック5044では、シリンジ3にキャリア流体が満たされる。適切なキャリア流体の代表的な例は、フッ素化炭素溶液を含む。フッ化炭素流体の適切な例は、FC−40を含む。FC−40は、膜タンパク質の可溶化に用いられる洗剤に対して高い表面張力をもつ。表面張力は、ナノプラグ形成および結晶化を可能にする。代表的な実施形態において、キャリア流体は、水性流体に対して非混和性のフッ素系オイルである。水性ナノプラグが形成されるときに、該キャリア流体はそれらを取り囲んで分離し、本方法の間に結晶カード中を前進させる。ブロック5046では、注目されるタンパク質を然るべき緩衝剤中に含んだタンパク質溶液がシリンジ4に満たされる。ブロック5048では、テフロン(登録商標)配管のような適切な配管が各シリンジのニードルに取り付けられる。ブロック5050では、シリンジ1および2がポンプ1に取り付けられ、シリンジ3および4がポンプ2に取り付けられる。ブロック5052では、該配管が、マクロ・マイクロ接合部分を経て結晶カードに接続される。マクロ・マイクロ接合部分に適した接続は、上述の通りである。本方法は、次に出口ターミナルBへ進む。
【0041】
ターミナルBから、方法5000は、継続ターミナル(「ターミナルC」)および出口ターミナル(「ターミナルD」)間で定義された方法ステップの一組5004へ進む。方法ステップの一組5004は、結晶を得るために結晶カード中の流体の流れを調節するインストラクションを受ける。ターミナルC(図15H)から、方法5000は、継続ターミナル(「ターミナルC1」)で定義された方法ステップの一組5054へ進む。方法ステップ5054の一組はポンプを構成する。
【0042】
ターミナルC1(図15I)から、方法5000は、本システムが制御するシリンジポンプ・モデルのタイプに関するインストラクションを本方法が受けるブロック5060へ進む。適切なポンプは、より良好な精度を提供するために製造者によって改良されたHarvard Apparatus Twin Syringe Pump Model 33(Harvard Apparatus,Holliston,MA)を含む。図2に示されるように、各シリンジポンプは2つのシリンジを制御する。ブロック5062において、本方法は、ポンプシステムの制御に用いるコンピュータのシリアル通信ポートに関するインストラクションを受ける。該通信ポートは、各シリンジポンプが同時にインストラクションを受けるように構成される。その結果として時間遅延が防がれ、溶液が同時に結晶カード中を流れることが可能になる。本方法は、ポンプに接続される各シリンジの容積に関するインストラクションを本方法が受けるブロック5064へ進む。ブロック5066において、本方法は、ポンプに接続される各シリンジの直径を決定する。本方法は、次に進んでターミナルC1のステップが起動したポイントに戻る。
【0043】
ブロック5054から、方法5000は、継続ターミナル(「ターミナルC2」)で定義された方法ステップの一組5056へ進む。該方法ステップの一組は、流体を結晶カードのミキサー回路にプライミングする。ターミナルC2(図15J)から、方法5000は、結晶カードのミキサー中に流体を分注するためにどのシリンジを用いるかに関するインストラクションを本方法が受けるブロック5068へ進む。ブロック5070において、本方法は、各シリンジからの流量に関するインストラクションを受ける。ブロック5072において、本方法は、シリンジが分注する流体の体積に関するインストラクションを受ける。ブロック5074において、本方法は、ミキサー回路上流の流体チャンネルから流体を分注するか、または吸引する。本方法は、次に別の継続ターミナル(「ターミナルC4」)へ続く。
【0044】
ターミナルC4(図15K)から、方法5000は、シリンジが水性流体を分注しているかどうか判断するためにテストを行う決定ブロック5076へ進む。もし決定ブロック5076におけるテストへの答えがNOであれば、本方法は、別の継続ターミナル(「ターミナルC5」)へ進む。もし決定ブロック5076におけるテストへの答えがYESであれば、本方法は、ブロック5078へ進む。本方法は、水性流体が検査回路に入る前にミキサー回路で該流体を停止させるインストラクションを受ける。本方法は、次にターミナルC2へと続き、上記に示されたプロセス・ステップを次のシリンジに対して繰返す。ターミナルC5(図15K)から、方法5000は、ミキサー回路の下流かつ検査回路のわずかに内部でキャリア流体を停止させるインストラクションを本方法が受けるブロック5080へ進む。本方法は、次に進んでターミナルC2のステップが起動したポイントへ戻る。
【0045】
本題からそれるが、水溶液およびキャリア流体を結晶カードのミキサーにプライミングするための例示的プロセスが詳細に記載される。初めに、プライミング中の観察のために、空の結晶カードのミキサー回路が顕微鏡ステージ上に置かれる。本方法は、シリンジ1から溶液、例えば緩衝液をミキサーに分注するインストラクションを受ける。流体チャンネルの合流点のすぐ上流のミキサー領域に溶液が到達したことをユーザが観察するまで、緩衝液が、シリンジ1に接続された流体チャンネルに分注される。本方法は、次に溶液の分注を停止するインストラクションを受ける。試薬を吸引するインストラクションを本方法に与えることによって溶液をチャンネルから除去することもできる。水溶液は、結晶カードの検査回路に入るのを控えることが適切である。水溶液を分注するシリンジ;例えば、シリンジ4(タンパク質溶液)およびシリンジ2(沈殿剤溶液)に接続された3つの流体チャンネルのそれぞれに対して本方法が繰返される。次にキャリア流体が、シリンジ3に接続された第4の流体チャンネルに分注される。キャリア流体は、ミキサーの合流点を通過して結晶カードの検査回路(第5のチャンネル)にわずかに入るまで第4の流体チャンネルに分注される。本方法は、次にキャリア流体の分注を停止するインストラクションを受ける。
【0046】
ブロック5056から戻って、方法5000は、継続ターミナル(「ターミナルC3」)で定義された方法ステップの一組5058へ進む。本方法ステップの一組は、結晶カードの検査回路で水性ナノプラグを生成するインストラクションを受ける。ターミナルC3(図15L)から、方法5000は、どのナノプラグ形成プロトコールを行うかに関するインストラクションをブロック5082で受ける。本方法は、受けたインストラクションが一定モードを実行するためだったかどうか判断するためにテストを行う決定ブロック5084へ次に進む。もしブロック5084におけるテストへの答えがNOであれば、本方法は、別の継続ターミナル(「ターミナルC6)へ進む。もし決定ブロック5084におけるテストへの答えがYESであれば、本方法は、各シリンジに対する流量に関するインストラクションを本方法が受けるブロック5086へ進む。本方法は、次にミキサー回路を通過する流体の全体積に関するインストラクションを本方法が受けるブロック5088へ進む。ブロック5090において、本方法は、各ナノプラグが然るべくサイズが等しく、同様のタンパク質および沈殿剤濃度をもつ水性ナノプラグを結晶カードの検査回路内に生成する。本方法は、次に進んで起動ポイントへ戻る。ブロック5058から、本方法は出口ターミナルDへ進む。
【0047】
ターミナルC6(図15M)から、方法5000は、勾配モードを行うインストラクションを本方法が受けたかどうか判断するためにテストを行う決定ブロック5092へ進む。もしブロック5092におけるテストへの答えがNOであれば、本方法は、別の継続ターミナル(「ターミナルC7」)へ進む。もし決定ブロック5092におけるテストへの答えがYESであれば、本方法は、可変流シリンジに対する最大流量に関するインストラクションを本方法が受けるブロック5094へ進む。一実施形態において、可変流量シリンジは、緩衝液および沈殿剤を含む。別の実施形態において、シリンジ1および2は、可変流量シリンジである。しかしながら、本方法は、任意のシリンジを可変流量シリンジに指定することができる。一実施形態において、可変流量シリンジを合わせた流量は、最大流量に等しい。例えば、一実施形態において、本方法は、シリンジ1の流量が2μl/分に等しいインストラクションを提供し、その一方でシリンジ2の流量が0(ゼロ)μl/分に等しいインストラクションを提供する。この実施形態において、最大流量は2μl/分(2+0μl/分)に等しい。本方法は、次にキャリア流体を制御するシリンジに対する一定流量に関するインストラクションを本法が受けるブロック5096へ進む。一実施形態において、シリンジ3がキャリア流体を制御する。一実施形態において、キャリア流体の流量は、水溶液(緩衝剤、沈殿剤およびタンパク質溶液)の総流量に等しい。別の実施形態において、キャリア流体に対する流量は、水性流体の総流量より小さいか、または大きいように選択することができる。キャリア流体速度が小さいほど、ナノプラグ間のキャリア流体を備える部分は小さく、より大きい水性ナノプラグが生成される。キャリア流体速度が大きいほど、ナノプラグ間のキャリア流体部分は大きく、より小さい水性ナノプラグが生成される。本方法は、次にタンパク質溶液を制御するシリンジに対する一定流量に関するインストラクションを本方法が受けるブロック5098へ進む。一実施形態において、シリンジ4がキャリア流体を制御する。一実施形態において、タンパク質の流量は、他の水溶液(緩衝剤および沈殿剤)の流量の合計に等しい。タンパク質溶液の流量を変化させると、各ナノプラグにおけるタンパク質対結晶化条件の比率は変化する。本方法は、次に本方法の1回の繰返しまたはサイクルの間に分注する水の全体積に関するインストラクションを本方法が受けるブロック6000へ進む。本方法は、次に別の継続ターミナル(「ターミナルC8」)へ進む。
【0048】
ターミナルC8(図15N)から、方法5000は、検査回路に分注する各水性ナノプラグの体積に関するインストラクションを本方法が受けるブロック6002へ進む。ブロック6004において、本方法は、行う繰返しまたはサイクルの総数(すなわち、勾配スクリーニング・ステップが繰返される回数)に関するインストラクションを受ける。一実施形態において、もし本方法がゼロ回の繰返しを実行するインストラクションを受ければ、ブロック6000で選択した水の全体積が分注されたときにポンプが停止する。別の実施形態において、もし本方法が1回またはそれ以上の繰返しを実行するインストラクションを受ければ、上述のプロセス・ステップが所望の回数繰返されたときにポンプが停止する。ブロック6006において、本方法は、緩衝剤および沈殿剤溶液の流量の合計がブロック5094で選択した最大流量に等しいように、緩衝剤および沈殿剤溶液の流量を互いに変化させる。例えば、一実施形態において、本方法は、ブロック5094で最大流量が2μl/分に等しいようにシリンジ1の流量が2μl/分に等しいインストラクションを提供し、かつシリンジ2の流量が0μl/分に等しいインストラクションを提供する。本方法がスタートしたときに、シリンジ1からの流量は、2μl/分で始まって0μl/分にランプダウンし、一方でシリンジ2からの流量は、同時に0μl/分から2μl/分にランプアップする。ブロック6008において、本方法は、各液滴のサイズは等しいが各液滴におけるタンパク質および沈殿剤濃度が異なる、一連の水性ナノプラグを検査回路内に生成する。ブロック6010において、本方法は、所望数の繰返しまたはサイクルを行った後に終了する。本方法は、次に出口ターミナルDへ本方法が進むブロック5058へ戻る。
【0049】
ターミナルC7(図15O)から、方法5000は、ハイブリッドモードを行うインストラクションを本方法が受けたかどうか判断するためにテストを行う決定ブロック6012へ進む。もしブロック6012におけるテストへの答えがNOであれば、本方法は、別の継続ターミナル(「ターミナルC9」)へ進む。もしブロック6012におけるテストへの答えがYESであれば、本方法は、沈殿剤カートリッジが準備されたかどうか判断するためにテストを行う別の決定ブロック6014へ進む。もし決定ブロック6014におけるテストへの答えがNOであれば、本方法は、別の継続ターミナル(「ターミナルC10」)へ進む。もしブロック6014におけるテストへの答えがYESであれば、本方法は、また別の継続ターミナル(「ターミナルC11」)へ進む。
【0050】
ターミナルC9(図15P)から、方法5000は、脈動モードを行うインストラクションを本方法が受けたかどうか判断するためにテストを行う決定ブロック6016へ進む。もし決定ブロック6016におけるテストへの答えがNOであれば、本方法は、上記に示されたステップが繰返されるターミナルC3へ戻る。もし決定ブロック6016におけるテストへの答えがYESであれば、本方法は、拍動モードを行うことに関するインストラクションを本方法が受けるブロック6018へ進む。本方法は、次にブロック5058へ戻る。ブロック5058から、本方法はターミナルDへ出る。
【0051】
ターミナルC10(図15Q)から、方法5000は、キャリア流体を含んだテフロン(登録商標)配管のような配管にシリンジを接続するブロック6020へ進む。本方法は、次に該シリンジをシリンジポンプに接続するブロック6022へ進む。ブロック6024において、本方法は、規定体積、例えば、約40nLを入れるインストラクションを受け、約40nLの気泡を該配管に吸引する。ブロック6026において、本方法は、規定体積、例えば、約120nLの沈殿剤溶液を該配管に吸引する。ブロック6028において、本方法は、適切な数の沈殿剤が該配管中に負荷されるまで上記の2ステップを繰返す。例えば、適切な数の沈殿剤は、1〜24またはそれ以上に及ぶことができる。ブロック6030において、本方法は、キャリア流体、約1μl、を該配管の開口先端中に吸引する。ブロック6032では、該配管を結晶カードの沈殿剤注入口に接続する。本方法は、次に継続ターミナルC11へ進む。
【0052】
ターミナルC11(図15R)において、方法5000は、緩衝剤溶液(シリンジ1)の初めの流量に関するインストラクションを本方法が受けるブロック6034へ進む。ブロック6036において、本方法は、緩衝剤溶液の流量変化(ステップサイズ)に関するインストラクションを受ける。ステップサイズは、本方法の各ランプアップまたはランプダウンに適用される流量変化である。ブロック6038において、本方法は、沈殿剤カートリッジ(シリンジ2)の初めの流量に関するインストラクションを受ける。ブロック6040において、本方法は、沈殿剤溶液の流量変化(ステップサイズ)を計算する。一実施形態において、緩衝剤に対するステップサイズは、沈殿剤に対するステップサイズに等しい。ブロック6042において、本方法は、総流量を決定するために緩衝剤および沈殿剤の流量を合計する。ブロック6044において、本方法は、キャリア流体(シリンジ3)に対する初めの流量に関するインストラクションを受ける。ブロック6046において、本方法は、キャリア流体の流量変化(ステップサイズ)に関するインストラクションを受ける。本方法は、次に別の継続ターミナル(「ターミナルC12」)へ進む。
【0053】
ターミナルC12(図15S)から、方法5000は、タンパク質溶液(シリンジ4)の一定流量に関するインストラクションを本方法が受けるブロック6048へ進む。本方法は、次に各沈殿剤に対するランプアップ・ステップ数(流れの変化速度)に関するインストラクションを本方法が受けるブロック6050へ進む。ブロック6052において、本方法は、本方法の各繰返しまたはサイクルに対して、ランプダウン・ステップ数がランプアップ・ステップ数に等しいように設定する。ブロック6054において、本方法は、行う繰返しまたはサイクル数に関するインストラクションを受ける。一実施形態において、1回の繰返しまたはサイクルは、沈殿剤カートリッジに負荷された単一の沈殿剤に対応する。ブロック6056において、本方法は、各ランプ・ステップの継続時間に関するインストラクションを受ける。例えば、一実施形態において、各ランプ・ステップの持続時間は1.5秒である。ブロック6058において、本方法は、合計が初めの流量に等しいように、緩衝剤および沈殿の流量を互いに変化させる。本方法は、次に別の継続ターミナル(「ターミナルC13」)へ進む。
【0054】
ターミナルC13(図15T)から、方法5000は、キャリア流体の流量を本方法が変化させるブロック6060へ進む。本方法は、次に各液滴が等量のタンパク質および様々な量の沈殿剤および緩衝液をもつ検査回路中で本方法が一連のナノプラグを生成するブロック6062へ進む。一実施形態において、本方法は、各サイクルに対して様々な量の沈殿剤を一定量のタンパク質とともに提供する。表1は、ハイブリッドモードに関する上述の方法の一実施形態を示す。本方法は、次にターミナルDへ進む。
【0055】
【表1】

ブロック5004におけるターミナルDから、方法5000は、継続ターミナル(「ターミナルE」)および出口ターミナル(「ターミナルF」)間で定義された方法ステップの一組5006へ進む。方法ステップの一組5006は、結晶カードから得られた結晶に関する回折実験を行う。ターミナルE(図15U)から、方法5000は、回折の前に結晶カードの検査回路から結晶を採取したかどうか判断するためにテストを行う決定ブロック6064へ進む。もしブロック6064におけるテストへの答えがNOであれば、本方法は、別の継続ターミナル(「ターミナルE1」)へ進む。もしブロック6064におけるテストへの答えがYESであれば、本方法は、剥離可能な層を結晶カードの底面から除去するブロック6066へ進む。一実施形態において、剥離可能な層は、マイクロ流体チャンネルを含んだ結晶カードのプラスチック部分に接合されている。該接合は、マイクロ流体回路から流体が漏れ出すのを防ぐには十分強いが、手作業で剥がれるように十分弱く設計される。一実施形態において、該接合は熱接合である。別の実施形態において、該接合は化学結合である。剥離可能な層の除去は、結晶カードのマイクロ流体チャンネル内部を暴露し、水性ナノプラグにアクセスすることを可能にする。別の実施形態では、剥離可能な層が除去された後に、結晶を含んだ水性ナノプラグは結晶カードのマイクロ流体チャンネル中に保持される。ブロック6068では、検査回路中に形成された結晶がクライオループを用いて結晶カードから採取される。一実施形態において、クライオループは、ナイロンのクライオループである。ブロック6070では、結晶が凍結され、回折データが得られる。本方法は、次に本方法が実行を終了する出口ターミナルFへ進む。
【0056】
ターミナルE1(図15V)から、方法5000は、結晶を含んだ結晶カードをX線源のゴニオメータに搭載するブロック6072へ進む。ブロック6074において、本方法は、検査回路内の元の位置にある結晶から回折データを得る。本方法は、次にブロック5006、さらに終了ターミナルFへ進む。本方法は、次に実行を終了する。
【0057】
メチオニン−R−スルホキシド還元酵素の結晶を生成するために、本主題における様々な実施形態の勾配スクリーニングと組み合わせて、上述の結晶採収ステップを用いることができる。結晶カードからクライオループで結晶が取り出され、その後回折実験のために凍結された。例として、1.7Åデータセットが、アルゴンヌ国立研究所のAdvanced Photon SourceにあるSBC−CATビームライン19BMで収集され、続いて構造が解明されて精緻化された。最終的な座標と構造因子とがProtein Data Bankに寄託された(受入番号3CXK)。
【0058】
本主題の様々な実施形態の結晶カードは、その場回折にも適する。その場回折は、凍結保護プロセスによって結晶が変化する前に、結晶学者がその品質を評価することを可能にする。強固な結晶では、完全な回折データを得ることが可能である。本結晶カードは、室温での回折データ収集用にX線源のゴニオメータに搭載するのに十分なX線透過性をもつ。例えば、結晶カードによるX線吸込を分析するために簡単なテストが行われた。APSリング電流で規格化したイオンチャンバーのビーム電流(I/I)が、0.979261A(12.66099keV)の波長に対して結晶カードの挿入あり、およびなしで測定された。結晶カードなしのI/Iは1.91671E−6と測定され、結晶カードありのI/Iは1.5511E−6と測定された。この結果、結晶カードによるX線吸光度は19%ということになる。さらにまた、本結晶カードは、XおよびY軸に沿って平行移動でき、複数の結晶からデータを収集して完全なデータセットに一体化することができる。この技術を実証するために、リゾチーム結晶を含んだ結晶カードが、アルゴンヌ国立研究所のAdvanced Photon SourceにあるNE−CATビームライン24ID−Cのゴニオメータ・ヘッドに搭載された。データは、結晶カード中の3つの結晶から室温で収集された。結晶学的データは、付録Aに提示される。
【0059】
構造決定に関して、データセットは、Advanced Photon Source:メチオニン−R−スルホキシド還元酵素はビームライン19BM、100K;およびリゾチームはビームライン24−IDC、室温で収集された。データは、HKL2000を用いて積分およびスケーリングされた。リゾチーム構造に対してmosflmパッケージを用い、3つのデータセットのそれぞれに対して別々に強度が積分された。Molrep、ならびに探索モデルとしてそれぞれPDBエントリーの1IEEおよび3CEZを用い、分子置換によってリゾソームおよびメチオニン−R−スルホキシド還元酵素の構造が解明された。構造は、Refmac5を用いて精緻化され、Cootを用いてモデル構築が行われた。
【0060】
説明に役立つ実施形態が図示ならびに記載されたが、当然のことながら、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々にそれらを変更することができる。
【0061】
付録A
【0062】
【表2】

独占的な所有権または特権が請求される本発明の実施形態が、以下のように明示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンピングシステム;
前記ポンピングシステムを制御するためにタンパク質結晶化システム上で実行するように構成された複数個のソフトウェア;ならびに
前記ポンピングシステムに連結された1つまたはそれ以上の結晶カードであって、それぞれがミキサーと貯蔵およびタンパク質結晶化検査を容易にするために前記ミキサーに連結されたマイクロ流体キャピラリーとを収容するように構成された結晶カード
を備える、前記タンパク質結晶化システム。
【請求項2】
前記ポンピングシステムは、シリンジポンピングシステムまたは圧力ポンピングシステムを含み、前記シリンジポンピングシステムは、第2、第3、および第4のマイクロ流体チャンネルを通って前記1つまたはそれ以上の結晶カード中に運ばれる水溶液と、第5のマイクロ流体チャンネル中に運ばれるフルオラス溶液とを調節するための4チャンネル・シリンジポンプを含む、請求項1に記載のタンパク質結晶化システム。
【請求項3】
前記複数個のソフトウェアは、水溶液の流れの粒子勾配を発生させるために、前記4チャンネル・シリンジポンプの各ポンプの制御、ならびに第2、第3、第4、および第5のマイクロ流体チャンネルの各チャンネルの制御を容易にする、請求項1に記載のタンパク質結晶化システム。
【請求項4】
前記1つまたはそれ以上の結晶カードは、X線透過性、光学的透明性、モーダブル、耐薬品性、適切な表面エネルギー、および以上に列挙された特性の2つまたはそれ以上の組み合わせからなる群から選択された特性を有する材料から形成される、請求項1に記載のタンパク質結晶化システム。
【請求項5】
前記ミキサーは、水性プラグが形成される第2、第3、第4、および第5のマイクロ流体チャンネルの合流点を含み、前記第2、第3、第4、および第5のマイクロ流体チャンネルは、およそ200×200マイクロメートルであるマイクロ流体チャンネルから形成される、請求項1に記載のタンパク質結晶化システム。
【請求項6】
前記合流点は、およそ10ナノリットルから20ナノリットルの範囲にある水性プラグの形成を支援する疎水性表面を規定し、前記マイクロ流体キャピラリーは、前記水性プラグを前記合流点から移送する、請求項5に記載のタンパク質結晶化システム。
【請求項7】
前記1つまたはそれ以上の結晶カードは、精細な勾配スクリーニング用に構成されたプラスチックから形成され、或いはハイブリッド・スクリーニングおよび膜タンパク質用に構成されたPDMS/テフロン(登録商標)から形成される、請求項2のタンパク質結晶化システム。
【請求項8】
前記タンパク質結晶化システムは、前記ポンピングシステムに連結されたニードルをもつシリンジをさらに備え、前記シリンジの前記ニードルと前記1つまたはそれ以上の結晶カードとの間のマクロ・マイクロ接合部分として機能を果たすように構成された遠位端および近位端を有する配管をなおさらに備え、各配管は、約360マイクロメートルの内径および約760マイクロメートルの外径をもち、配管の前記遠位端は、ニードル上へスライドするように構成され、前記配管の前記近位端は、前記1つまたはそれ以上の結晶カードに連結するように構成された、請求項1に記載のタンパク質結晶化システム。
【請求項9】
複数個のソフトウェアで働くポンピングシステムを用いて各水流を独立に制御することによって水流を調節すること;および
タンパク質結晶化実験において沈殿から、微結晶へ、単結晶への転移を示すためにタンパク質の結晶化相空間をマッピングすること
を備える、勾配スクリーニングのための方法。
【請求項10】
前記調節する行為は、各水流の流量を変化させることにより、一連の水性プラグにわたって濃度勾配を形成することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記調節する行為は、タンパク質、結晶化剤、フッ化炭素、沈殿剤、リガンド、タンパク質パートナー、DNA複合体、緩衝剤および凍結保護物質から選択された水流を調節することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記調節する行為は、沈殿剤の水流の流量が減少したときに、流量の合計が一定のままであるように緩衝剤の水流の流量を増加させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
沈殿剤プラグを予め形成すること;
それぞれが2つの沈殿剤プラグを互いに分離するプラグ・スペーサーを予め形成すること;
沈殿剤プラグ、プラグ・スペーサー、およびタンパク質の流れを合流させることによって勾配を形成すること;ならびに
タンパク質結晶化実験において沈殿から、微結晶へ、単結晶への転移を示すためにタンパク質の結晶化相空間をマッピングすること
を備える、ハイブリッド・スクリーニングのための方法。
【請求項14】
プラグ・スペーサーを予め形成することは、気泡を用いて予め形成することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
勾配を形成することは、前記沈殿剤プラグ、プラグ・スペーサーから形成された流れと緩衝剤の流れとの間で流量変化を連係させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
各沈殿剤プラグは、約100ナノリットルである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
キャピラリーをもつ結晶カードを受け取ること;
表面エネルギーを低減するためにキャピラリーに試薬をコーティングすること;および
前記試薬を除去すること
を備える方法。
【請求項18】
前記結晶カードを氷上で所定の時間数インキュベーションすることをさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記キャピラリーは内面を含み、キャピラリーにコーティングする行為は、表面エネルギーをセンチメートル当たり約6〜10ダインに低減するために前記キャピラリーの前記内面にコーティングすることを含む、請求項17の方法。
【請求項20】
前記フッ素化共重合体溶液は、フルオロ溶媒中に2パーセントのフッ素化共重合体溶液を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記フルオロ溶媒を除去することは、前記結晶カードを真空処理することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
5psiで約1時間実行される、前記結晶カードを通して強制的に清浄な乾燥空気を送る行為をさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
摂氏約60度で約1時間実行される、前記結晶カードをベーキングする行為をさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
結晶カードの基板に接合された薄層を剥離させること;
前記基板上に収容されたマイクロ流体回路からクライオループにより結晶を採取すること;
前記結晶を凍結させること;および
回折データを得るために前記結晶に関する回折実験を行うこと
をさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
マイクロ流体回路をもつ結晶カードをゴニオメータに搭載すること;
前記結晶カードにX線を照射すること;および
回折データを収集すること
をさらに備える、請求項17の方法。
【請求項26】
前記マイクロ流体回路によって貯蔵された複数の結晶から前記回折データを収集するために、xおよびy軸に沿って前記結晶カードを平行移動させることをさらに備える、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ミキサー回路および検査回路を収容するように構成された基板;ならびに
前記基板に接合され、前記基板から剥離されるように構成された層
を備える、結晶カード。
【請求項28】
前記層は、前記基板に熱的に接合されるか、または前記基板に化学的に結合される、請求項27に記載の結晶カード。
【請求項29】
前記基板および前記層は、非晶質ポリマー、環状オレフィン共重合体、熱可塑性ポリマー、およびポリカーボネートからなる群から形成される、請求項27に記載の結晶カード。
【請求項30】
前記基板は、約1ミリメートルの厚さを含み、前記層は、約100から150マイクロメートルの範囲の厚さを含む、請求項27に記載の結晶カード。
【請求項31】
前記ミキサー回路は、第1、第2、第3、および第4の加数チャンネルを含み、各加数チャンネルは、遠位端および近位端を含み、各加数チャンネルの前記遠位端は、溶液を流体的に受け取るように構成された開口部を規定し、各加数チャンネルの前記近位端は、水性プラグまたはプラグ・スペーサーを流体的に連通するように構成された開口部を規定し、各加数チャンネルは、前記遠位端に連結された第1の部分、および前記近位端に連結された前記第1、第2、および第3の加数チャンネルの第2の部分を有し、各加数チャンネルの前記第1の部分は、別の加数チャンネルと間隔をあけて平行方向に配置され、前記第1および第3の加数チャンネルの前記第2の部分は、それらの近位端が交差するように角度をなし、前記第2および第4の加数チャンネルの前記第2の部分は、前記第2の加数チャンネルの前記近位端が、前記第1および第3の加数チャンネルの前記近位端と交差して頂点を形成するまで並列に延び、前記第4の加数チャンネルの第3の部分は、前記第4の加数チャンネルの前記第2の部分から角度90度で延び、その近位端は、また別の角度90度で前記頂点と交差する、請求項27に記載の結晶カード。
【請求項32】
各加数チャンネルの前記第1の部分は、別の加数チャンネルの前記第1の部分から約4.50ミリメートルの間隔をあけて配置される、請求項31に記載の結晶カード。
【請求項33】
前記基板は、第1の側面、第2の側面、第3の側面、および第4の側面を含み、前記基板の前記第2の側面は、前記第3の加数チャンネルの前記遠位端から約3.70ミリメートルの間隔をあけて配置され、前記第1および第3の側面の長さは、およそ25.40ミリメートルであり、前記第2および第4の側面の長さは、約76.20ミリメートルであり、前記基板の前記第1の側面は、前記加数チャンネルの前記遠位端から約6.00ミリメートルの間隔をあけて配置される、請求項31に記載の結晶カード。
【請求項34】
前記基板の前記第2の側面は、前記第3の加数チャンネルの前記遠位端から約3.70ミリメートルの間隔をあけて配置され、前記基板の前記第1の側面は、前記加数チャンネルの前記遠位端から約6.00ミリメートルの間隔をあけて配置され、前記基板の前記第3の側面は、前記検査回路からおよそ6.00ミリメートルの間隔をあけて配置される、請求項33に記載の結晶カード。
【請求項35】
前記検査回路は、加算チャンネル、蛇行部、および流体的に連通するように構成された開口部で終端する尾部チャンネルを含み、前記加算チャンネルは、前記頂点に連結され、かつ前記加数チャンネルが前記第3の加数チャンネルの前記第1の部分と同一直線上にある軸に到達するまで、前記第4の加数チャンネルの前記近位端と同一直線上にある方向に延び、前記加算チャンネルは、そこで90度曲がって前記検査回路の前記蛇行部に繋がる、請求項31に記載の結晶カード。
【請求項36】
前記検査回路の前記蛇行部は、流体連通を容易にするために蛇行チャンネルによって互いに連結された複数の凸な曲がりをもつ複合曲線から形成され、1つの凸な曲がりは、それに続く凸な曲がりと約53.31ミリメートルの間隔をあけて配置され、それぞれの凸な曲がりは、約2.00ミリメートルの長さをもつ、請求項35に記載の結晶カード。
【請求項37】
前記蛇行部の最後の凸な曲がりは、前記尾部チャンネルに連結される、請求項36に記載の結晶カード。
【請求項38】
前記加算チャンネル、前記蛇行部、および前記尾部チャンネルの長さは、合わせて約67センチメートルであり、前記加算チャンネル、前記蛇行部、および前記尾部チャンネルの断面寸法は、約200×200マイクロメートルである、請求項37に記載の結晶カード。
【請求項39】
前記基板は、2つのミキサー回路および2つの検査回路を収容するように構成された、請求項27に記載の結晶カード。
【請求項40】
前記基板は、上方に突き出た複数の環状ポートを収容し、前記複数の環状ポートのいくつかは、溶液を流体的に受け取るか、または水性プラグまたはプラグ・スペーサーを流体的に連通するように適合される、請求項39に記載の結晶カード。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図15E】
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【図15F】
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【図15G】
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【図15H】
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【図15I】
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【図15J】
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【図15K】
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【図15L】
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【図15M】
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【図15N】
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【図15O】
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【図15P】
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【図15Q】
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【図15R】
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【図15S】
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【図15T】
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【図15U】
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【図15V】
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【公表番号】特表2011−525166(P2011−525166A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513753(P2011−513753)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/047414
【国際公開番号】WO2009/152520
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(506422593)エメラルド バイオストラクチャーズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】