説明

ナノ化学種が埋め込まれた多孔質材料、その製造方法、およびその使用方法

【課題】より正確で、高感度で、より広範な検出方法が産業界において必要とされている。
【解決手段】簡潔に述べると、本開示の実施形態は、構造体、その構造体の形成方法、およびその構造体の使用方法を含む。特に、構造体の例の1つは、ナノ化学種および多孔質材料を含む。ナノ化学種は、第1の特性と、第2の検出可能な特性とを有する。さらに、第1のエネルギーに曝露することによって、第2の検出可能な特性に対応する第2の検出可能なエネルギーが発生する。多孔質材料は、第1の特性と、複数の細孔とを有する。この第1の特性によって、ナノ化学種は、多孔質材料と相互作用して、多孔質材料の細孔内に入る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2003年8月4日に出願された、発明の名称「ナノ化学種がドープされた多孔質材料、その製造方法、およびその使用方法」(POROUS MATERIALS DOPED WITH NANOSPECIES,METHODS OF FABRICATION THEREOF,AND METHODS OF USE THEREOF)の米国仮出願第60/492,416号明細書に基づく優先権を主張し、その開示内容全体を参照により本明細書中に取り込む。
【0002】
本発明は、一般に、多孔質材料に関し、特に、ナノ化学種(nanospecies)が埋め込まれた多孔質材料に関する。
【背景技術】
【0003】
生物分析科学、および生物工学における最近の発展によって、DNAチップ、小型バイオセンサー、およびマイクロ流体デバイスが開発されてきた。さらに、蛍光標識が好都合となる用途として、医療用(および非医療用)蛍光顕微鏡法、組織学、フローサイトメトリー、基礎的な細胞生物学および分子生物学のプロトコル、蛍光in situハイブリダイゼーション、DNA配列決定、イムノアッセイ、結合アッセイ、および分離が挙げられる。これらの実現可能な技術は、遺伝子発現プロファイリング、抗力発見(drag discovery)、および臨床診断などの生物医学的研究の多くの分野に大きな影響を与えてきた。
【0004】
蛍光標識された分子は、多種多様の用途で広範に使用されてきた。典型的には、有機染料をプローブと結合させ、次にこれを標的分子と選択的に結合させる。次に、染料分子を励起させ蛍光発光させることによって標的分子を同定する。これらの蛍光標識システムに有機染料を使用する場合、多数の欠点が存在する。励起した染料分子からの可視光の発光は、通常、広い発光スペクトル(約100nm)、および赤色波長において発光の広いテール(別の約100nm)が存在することを特徴とする。その結果、標識用分子の広いスペクトル発光および発光テールのために、存在する多数の異なる検出可能な物質の間で、同時または非同時に検出したり区別したりすることが困難となるので、1つの分析において同時または順次使用することが可能な異なる色の有機染料分子の数が非常に制限される。
【0005】
別の問題は、有機染料は狭い吸収スペクトル(約30〜50nm)を有することが多いことであり、そのため、複数の波長プローブ、または、異なる波長でそれぞれ励起する一連のプローブを順次励起させるための異なるフィルターが順次使用される広スペクトル励起源のいずれかが必要となる。有機染料に関する別の問題は、光安定性が不足することである。多くの場合、有機染料は、繰り返し励起することによって、褪色したり、蛍光を発光しなくなったりする。
【0006】
したがって、より正確で、高感度で、より広範な検出方法が産業界において必要とされている。
【特許文献1】米国特許第6,468,808号明細書
【特許文献2】国際公開第03/003015号パンフレット
【特許文献3】第5,906,670号明細書
【特許文献4】第5,888,885号明細書
【特許文献5】第5,229,320号明細書
【特許文献6】第5,482,890号明細書
【特許文献7】第6,306,736号明細書
【特許文献8】第6,225,198号明細書
【非特許文献1】ワン(Wang),Q.C.ら,J.Polymer Science、Part A:Polymer Chemistry,32,2577(1994)
【非特許文献2】キム(Kim),J.W.ら,Colloid Polym Sci,279,146(2001)
【非特許文献3】「蛍光プローブおよび研究用化学物質のハンドブック」(Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals),(第6版),RP.ハウグランド(Haugland),モレキュラー・プローブズ・インコーポレイテッド(Molecular Probes,Inc.)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
簡潔に述べると、本開示の実施形態は、構造体、その構造体の形成方法、およびその構造体の使用方法を含む。特に、構造体の例の1つは、ナノ化学種および多孔質材料を含む。ナノ化学種は、第1の特性と、第2の検出可能な特性とを有する。さらに、第1のエネルギーに曝露することによって、第2の検出可能な特性に対応する第2の検出可能なエネルギーが発生する。多孔質材料は、第1の特性と、複数の細孔とを有する。この第1の特性によって、ナノ化学種は、多孔質材料と相互作用して、多孔質材料の細孔内に入る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記構造体は、たとえば、アレイシステム、フローサイトメトリーシステム、診断ライブラリ、コンビナトリアルライブラリ、蛍光インク、および蛍光化粧品などにおいて使用することができる。
【0009】
構造体の製造方法も提供される。特に、代表的な方法の1つは、第1の特性と第2の検出可能な特性とを有するナノ化学種であって、第1のエネルギーに曝露することによって前記第2の検出可能な特性に対応する第2の検出可能なエネルギーが発生するナノ化学種を提供するステップと;前記第1の特性を有する多孔質材料を提供するステップと;溶液の存在下で前記ナノ化学種および前記多孔質材料を導入するステップと;構造体を形成するステップであって、前記構造体が、少なくとも前記多孔質材料の細孔内部に配置された複数のナノ化学種を有する多孔質材料を含み、前記第1の特性によって、前記ナノ化学種が、前記多孔質材料と相互作用して、前記多孔質材料の前記細孔内部に配置されるようになるステップとを含む。
【0010】
本発明の構造体の使用方法も提供される。特に、代表的な方法の1つは、少なくとも1つの構造体をサンプルと接触させるステップと、前記構造体の前記第2の検出可能な特性の少なくとも1つを検出するステップとを含む。上記サンプルは、少なくとも1つの標的分子を含有し、各構造体は1種類の標的分子のみに対応している。この種類の標的分子がサンプル中に存在する場合に、本発明の構造体が標的分子と相互作用する。第2の検出可能な特性のそれぞれが検出されると、サンプル中にその標的分子が存在することが分かる。
【0011】
以下の図面を参照することで、本発明の多数の側面をより十分に理解することができる。図面中の構成要素は必ずしも縮尺通りであるわけではなく、本発明の原理を明確に説明する場合には強調が行われている。さらに、図面中、類似の参照番号は、いくつかの図面にわたって対応する部分を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書において例示され大まかに説明されるように、一側面において、本発明の実施形態は、多孔質材料の細孔内に配置された1つ以上の部類および/または種類のナノ化学種を有する構造体、これらの構造体の製造方法、およびこれらの構造体の使用方法に関する。これらの構造体の製造方法によって、多孔質材料の細孔内に配置されるナノ化学種の量を精密で定量的に制御することができる。したがって、多孔質材料を適切な比率で複数の部類および/または種類のナノ化学種と混合すると、多くの独特で区別可能な構造体を製造することができる。さらに、本発明の構造体は、第1のエネルギー(たとえば光源)に曝露後に区別可能となるため、第2の検出可能なエネルギーの発生に基づいて本発明の構造体を個別に検出することが可能である。さらに、本発明の構造体がある種の標的分子と相互作用するように本発明の構造体を変更することができ、これによって、第1のエネルギーに曝露した後でその標的分子を検出することができる。この結果、これらの構造体は、標的分子を同定するための「分子コード」として使用することができる。本発明の構造体は、限定するものではないが、バイオセンシング、バイオラベリング、高速スクリーニング、遺伝子発現の研究、タンパク質の研究、医療診断、診断ライブラリ、コンビナトリアルライブラリ、マイクロ流体システム、オプトエレクトロニクス、高密度メモリ、蛍光インク(偽造)、蛍光性化粧品、フローサイトメトリー、波長分解分光法、多重スペクトル画像法、蛍光性安全保障マーク、触媒反応、および人物同定などの多くの活動分野で使用することができる。
【0013】
本明細書で前述したように、本発明の一実施形態は、1種類以上のナノ化学種をドープした多孔質材料を含む。ナノ化学種と多孔質材料とは、同じ第1の特性を有する。この第1の特性によって、ナノ化学種と多孔質材料の相互作用が増強され、それによって多孔質材料の細孔内にナノ科学種が配置されたり埋め込まれたりするようになる。この相互作用によって、1種類以上の種類および/または部類のナノ化学種を、精密に定量的に多孔質材料に加えることができる。これらの構造体およびこれらの構造体の作製の具体的な実施形態の詳細に関しては、以下の実施例1および2においてより詳細に議論する。
【0014】
第1の特性は、直接的または間接的のいずれかで、ナノ化学種の多孔質材料への引き付け、結合、または内部への埋め込みを引き起こす化学的特性、電気的特性、生物学的特性、物理学的特性、またはそれらの組み合わせとして説明することができるが、これらに限定されるものではない。たとえば、第1の特性としては、限定するものではないが、疎水性、親水性、静電特性、生物学的特性、バイオアフィニティ特性、リガンド−受容体特性、抗体−抗原特性、金属キレート化特性、磁気特性、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。「類似の」第1の特性を有する多孔質材料とナノ化学種とは、適切な条件下で互いに引き合うため、多孔質材料の細孔内にナノ化学種を定量的に配置することができる。たとえば、ナノ化学種と多孔質材料とのそれぞれが疎水性を有する場合、適切な条件下で、ナノ化学種が多孔質材料に引き付けられて結合する。
【0015】
ナノ化学種および/または多孔質材料は、固有の第1の特性を有することができる。たとえば、ナノ化学種および/または多孔質材料の化学的および/または生物学的組成物が固有の疎水性、親水性などを有する。さらに、ナノ化学種および/または多孔質材料は、第1の特性を有するように、処理、コーティング、またはその他の改質を行うことができる。たとえば、ナノ化学種および/または多孔質材料は、疎水性、親水性などに化学的に改質することができる。
【0016】
多孔質材料としては、メソポーラス材料(たとえば、約1〜100ナノメートル(nm)の細孔直径)、マクロポーラス材料(たとえば、約100nmを超える細孔直径)、および複合メソポーラス/マクロポーラス材料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。多孔質材料の形状は、球形、立方体、およびモノリス(すなわち、塊状材料)であってよいが、これらに限定されるものではない。
【0017】
多孔質材料の好ましい形状は、約0.1〜100μm、好ましくは約1〜50μmの球の直径を有する球形(たとえばビーズ)である。細孔直径は、約1〜500nm、約5〜200nm、および約10〜50nmである。さらに、ビーズは、約500,000〜約1千万個のナノ化学種、さらに特に約2百万〜6百万個のナノ化学種を、ビーズの細孔内に含むことができる。ビーズの種類としては、限定するものではないが、シリカビーズおよびポリマービーズ(たとえばクロマトグラフィー用ビーズ)、セラミック、ならびにモレキュラーシーブを挙げることができる。
【0018】
多孔質材料は、限定するものではないが、ポリマー、コポリマー、金属、シリカ材料、セルロース、セラミック、ゼオライト、およびそれらの組み合わせなどの材料でできていてよい。好ましい多孔質材料は、シリカ 材料およびポリスチレンおよびポリスチレンコポリマー(たとえば、ジビニルベンゼン、メタシル酸(methacylic acid)、マレイン酸)であり、これらは実施例1および2においてより詳細に説明している。
【0019】
ナノ化学種の部類としては、限定するものではないが、ナノ粒子(たとえば、量子ドット、金属粒子、および磁性粒子)および生体分子を挙げることができる。ナノ粒子としては、限定するものではないが、半導体、金属、および金属酸化物のナノ粒子(たとえば、金、銀、銅、チタン、またはそれらの酸化物)、半金属および半金属酸化物のナノ粒子、ランタニド系列金属のナノ粒子、およびそれらの組み合わせなどの多くの種類のナノ粒子を挙げることができる。特に、半導体量子ドットは、以下で、および参照により本明細書に組み込まれている特許文献1および特許文献2により詳細に記載されている。さらに、磁性ナノ粒子(たとえば、磁気的性質を有するナノ粒子)としては、限定するものではないが、鉄ナノ粒子および鉄複合材料ナノ粒子を挙げることができる。生体分子としては、限定するものではないが、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドなどの多くの種類の生体分子を挙げることができる。特に、生体分子としては、タンパク質、リガンド、受容体、抗原、抗体、およびそれらの個別の部分を挙げることができる。好ましくは、ナノ化学種は半導体量子ドットである。
【0020】
多孔質材料は、内部に配置された1つ以上の部類のナノ化学種を有することができる。さらに、多孔質材料は、内部に配置された、1つの部類のナノ化学種の中の1つ以上の異なる種類のナノ化学種を有することができる。さらに、1つ以上の部類のナノ化学種の1つ以上の種類のナノ化学種を、多孔質材料内部に配置することができる。
【0021】
ナノ化学種は、適切な検出システムを使用して第2の検出可能な特性を検出することによってそのナノ化学種を同定するために使用することが可能となる、1つ以上の第2の検出可能な特性を有することができる。限定するものではないが、光エネルギー、熱エネルギー、磁気エネルギー、およびそれらの組み合わせなどの第1のエネルギーへの曝露に反応することで、第2の検出可能な特性を発生させることができる。第1のエネルギーは、適切なエネルギー源によって発生させることができる。
【0022】
ナノ化学種は、限定するものではないが、蛍光特性(たとえば、半導体量子ドット)、磁気特性(たとえば、鉄粒子)、ルミネセンス特性(たとえば、ランタニド系列金属のナノ粒子)、光散乱特性(たとえば、金属ナノ粒子)、表面プラズモン特性(たとえば、金属ナノ粒子)、およびそれらの組み合わせなどの第2の検出可能な特性を有することができる。たとえば、半導体量子ドットを光エネルギーに曝露することができ、その半導体量子ドットは、半導体量子ドットの種類に特有の蛍光エネルギーを発することができ、このことは後により詳細に説明する。
【0023】
前述したように、ナノ化学種は、限定するものではないが、ルミネセンス半導体量子ドットなどの量子ドットを含むことができる。一般に量子ドットは、コアおよびキャップを含むが、キャップのない量子ドットも同様に使用することができる。「コア」は、ナノメートルサイズの半導体のことである。IIB−VIB、IIIB−VB、またはIVB−IVBの半導体のあらゆるコアを本発明の状況に使用することができるが、これらのコアは、キャップと組み合わせることによって、ルミネセンス量子ドットが得られる必要がある。IIB−VIB半導体は、周期表のIIB族の少なくとも1つの元素と、周期表のVIB族の少なくとも1つの元素とを含む化合物のことであり、以下同様である。一実施形態においては、本発明のコアは、大きさが約1nm〜約20nmの範囲であるIIB−VIB、IIIB−VB、またはIVB−IVBの半導体である。別の実施形態においては、本発明のコアは、より好ましくはIIB−VIB半導体であり、大きさが約2nm〜約10nmの範囲である。たとえば、コアはCdS、CdSe、CdTe、またはZnSeであってよい。
【0024】
「キャップ」は、コアの半導体とは異なる半導体であり、コアと結合することによってコアの上に表面層を形成する半導体のことである。キャップは、所与の半導体コアと組み合わせることによってルミネセンス量子ドットを得ることができるものであってよい。キャップは、コアよりも高いバンドギャップを有することによってコアを不動態化すべきである。一実施形態においては、キャップは、高バンドギャップのIIB−VIB半導体である。たとえば、キャップはZnSまたはCdSであってよい。コアとキャップとの組み合わせとしては、限定するものではないが、コアがCdSeまたはCdSである場合にキャップがZnSであってよく、さらにはコアがCdSeである場合にキャップがZnSであってよい。
【0025】
量子ドットによって発せられる波長(すなわち色)は、ナノ結晶の大きさおよび材料などの量子ドットの物理的性質により選択することができる。量子ドットは、約300ナノメートル(nm)〜1700nm(たとえば、UV、近IR、およびIR)の光を発することが知られている。量子ドットの色としては、限定するものではないが、赤、青、緑、およびそれらの組み合わせが挙げられる。色、すなわち蛍光発光の波長は、連続的に調整することができる。量子ドットが発する光の波長域は、コアおよびキャップを構成する材料に依存してコアの大きさ、またはコアおよびキャップの大きさのいずれかによって決定される。発光波長域は、QDの組成物および大きさを変動させることによって、および/または同心のシェルの形態でコアの周囲に1つ以上のキャップを加えることによって調整することができる。
【0026】
量子ドットの色の強度を制御することができる。各色について、10段階の強度レベル(0、1、2、...9)を使用すると、レベル「0」は背景と区別できないので、9個の固有のコード(101−1)が得られる。コード数は、使用される各強度および各色に関して指数的に増加する。たとえば、3色と10段階の強度方式とでは、999(103−1)個のコードが得られ、一方、6色と10段階の強度方式とでは、約百万(106−1)の理論的コード化能力が得られる。一般に、m色でn段階の強度レベルでは、((nm−1)の固有のコードが得られる。
【0027】
一般に、使用可能なコード数を増加させるためには、強度レベルを増やすよりも、多くの色を使用する方が好都合である。強度の数は、好ましくは0〜20であり、より好ましくは約1〜10である。色の数は、好ましくは約1〜10(たとえば2〜8)であり、より好ましくは約3〜7である。用語「多色量子ドット」は、2色以上のルミネセンス量子ドットがビーズ中に埋め込まれていることを意味する。好ましくは2色以上の量子ドットがビーズ中に組み込まれるが、赤:緑:青コードが1:0:0であるビーズなど、1つ以上の色の強度が0である場合も、本発明の実施形態に含まれる。
【0028】
量子ドットは、精密に制御された比率で埋め込むことができる。用語「精密に制御された比率」は、使用される量子ドットの各色の強度比が、多孔質構造体中に組み込まれる前にあらかじめ決定されることを意味する。同じ第1の特性(たとえば疎水性)を有する量子ドットおよび多孔質材料を使用することで、量子ドットの多孔質材料中への混入を定量的で精密に行うことが可能となる。当業者であれば、特定の色について、量子ドットの正確な比率を容易に決定することができる。
【0029】
多孔質材料内に埋め込まれた量子ドットは、電磁放射線源(広い帯域幅または狭い帯域幅のいずれか)などからのエネルギーを吸収することができ、励起した場合に狭い波長域で検出可能な電磁放射線を発することができる。量子ドットは、約40nm以下、好ましくは約20nm以下の狭い波長域内の放射線を発することができ、このため、スペクトルの重なりがほとんどまたはまったくない状態で、同じ多孔質材料内に配置された複数の異なる色の量子ドットを同時に使用することができる。
【0030】
ある実施形態においては、埋め込まれたナノ化学種を保護するために、多孔質材料を封止材料で封止することができる。一実施形態においては、封止材料が、多孔質材料中の細孔を実質的に封止可能であるべきである。別の実施形態においては、封止材料が、多孔質材料の外面、および細孔の内面または壁の上に層を形成することができるべきであり、細孔を実質的に封止するべきではない。
【0031】
封止材料としては、ポリマー(たとえば、ポリスチレンおよびコポリマー、両親媒性ポリマーおよびコポリマー、たとえば炭化水素(たとえば、C2〜C18線状または環状炭化水素、およびベンゼン、およびそれらの誘導体)で誘導化されたポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリマレイン酸)、生体高分子(たとえば、タンパク質、多糖、およびそれらの誘導体、ならびに脂質およびそれらの誘導体)、界面活性剤、ヒドロゲル、ゾル−ゲル化合物(たとえば、メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、およびトリメトキシシリルプロピミドラジド(trimethoxysilylpropymydrazide)、デンドリマー、重合性モノマーおよび架橋剤、ならびにそれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
量子ドットの合成は公知であり、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献1、特許文献7、特許文献8など、特許文献2、および多くの調査論文に記載されており、これらすべてが参照により本明細書に組み入れられる。量子ドットによって発せられる波長、ならびにその他の物理的特性および化学的特性は、特許文献1および特許文献2に記載されており、これより詳細には説明しない。さらに、量子ドットの作製方法は、特許文献1、および特許文献2に記載されており、これより詳細には説明しない。
【0033】
構造体の一例は、多孔質材料としての疎水性シリカビーズと、疎水性コーティングされた量子ドットとを含む。適切な条件化で、疎水性コーティングされた量子ドットが、疎水性シリカビーズ内に組み込まれる。特に、疎水性コーティングされた量子ドットは、限定するものではないが、O=PR3化合物、O=PHR2化合物、O=PHR1化合物、H2NR化合物、HNR2化合物、NR3化合物、HSR化合物、SR2化合物、およびそれらの組み合わせなどの化学物質でコーティングすることができる。「R」は、C1〜C18炭化水素、たとえば、限定するものではないが、線状炭化水素、分岐炭化水素、環状炭化水素、置換炭化水素(たとえばハロゲン化)、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、およびそれらの組み合わせなどであってよい。好ましくは、炭化水素は、飽和線状C4〜C18炭化水素、飽和線状C6〜C18炭化水素、および飽和線状C18炭化水素である。複数のR基の組み合わせが、P、N、またはSに結合することができる。特に、上記化学物質を、トリ−オクチルホスフィンオキシド、ステアリン酸、およびオクチルデシルアミンから選択することができる。
【0034】
疎水性シリカビーズは、シリカビーズを、限定するものではないがRnSiCl(4-n)化合物、RnSiO(CH3(4-n)化合物、およびRnSiO(C25(4-n)化合物(式中、nは1〜3であり、RはC1〜C18炭化水素であってよく、複数のR基の組み合わせがSiと結合して疎水性シリカビーズを形成することができる)などの化学物質と反応させることによって形成することができる。Cl基、OCH3基、およびOC25基は、この反応中の脱離基となる。たとえば、RnSiCl(4-n)化合物がシリカビーズ上の−OH基と反応する場合、Cl(4-n)が−OH基上のH原子と結合して、HCl脱離基を形成し、その間にRnSi基がビーズ上の−O原子と結合する。特に、上記化学物質は、クロロ(ジメチル)オクタデシルシラン、メトキシ(ジメチル)オクタデシルシラン、(o−トリルオキシ)トリ(o−トリル)シラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、アリル−ジクロロ(メチル)シラン、ブチルジメチル(ジメチルアミノ)シラン、クロロジフェニル(ジフェニルメチル)シラン、クロルメチル−トリエチル−シラン、クロロトリ(2−ビフィニル)シラン、クロロトリ(o−トリル)シラン、クロロトリ(1−ナフチル)シラン,クロロトリス(2−メトキシフェニル)シラン、クロロ(ジイソプロピル)シラン、クロロ(ジメチル)テキシルシラン、クロロジメチル(2−フェニルエチル)シラン、クロロジメチル(2,3,4,5−テトラメチル−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)シラン、クロロトリス(1,3−ジメチルブトキシ)シラン、ジフェニル(ジフェニルメトキシ)(デフェニルメチル)シラン、ジクロロメチル−オクチルシラン、ジクロロメチル(2−フェネチル)シラン、イソブチル(トリメトキシ)シラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、tert−ブチル−ジメチル−フェノキシシラン、トリクロロ(ヘキシル)シラン、トリクロロ(イソブチル)シラン、トリクロロ(オクタデシル)シラン、トリクロロ(オクチル)シラン、トリクロロ(フェネチル)シラン、トリクロロ(フェニル)シラン、トリエトキシ(イソブチル)シラン、トリクロロ(ビニル)シラン,トリクロロ(プロピル)シラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、トリエトキシ(ビニル)シラン、およびトリメトキシ(7−オクテン−1−イル)シランから選択することができる。この例に関するさらなる詳細は、以下の実施例1および2に記載している。
【0035】
疎水性コーティングされた量子ドットを含む疎水性シリカビーズは、第1のエネルギーに曝露することができ、この疎水性シリカビーズは、第1のエネルギーに反応して、検出可能な蛍光エネルギーを放出する。
【0036】
別の例は、多孔質材料としてのポリスチレンまたはポリスチレン/ジビニルベンゼンビーズと、疎水性コーティングされた量子ドットとを含む。ポリスチレンまたはポリスチレン/ジビニルベンゼンビーズは本来疎水性であるため、適切な条件下で、疎水性コーティングされた量子ドットが、ポリスチレンまたはポリスチレン/ジビニルベンゼンビーズ中に組み込まれる。ポリストリエン(polystryene)/ジビニルベンゼンの調製に関する詳細は、非特許文献1、および非特許文献2に記載されており、これらは本明細書に組み入れられる。
【0037】
疎水性コーティングされた量子ドットを含むポリスチレンまたはポリスチレン/ジビニルベンゼンのビーズは、第1のエネルギーに曝露することができ、この疎水性シリカビーズは、第1のエネルギーに反応して、検出可能な蛍光エネルギーを放出する。
【0038】
本発明の構造体は、多孔質材料が分散された溶液(たとえば溶媒)中で1つ以上の部類および/または種類のナノ化学種を混合することによって調製することができる。両方が同じ第1の特性を有するため、ナノ化学種が多孔質材料に引き付けられる。その際、ナノ化学種は多孔質材料に引き付けられ、ナノポーラス材料の細孔内部に配置される。上記溶液は、ナノ化学種を多孔質材料の細孔内に誘導する1種類以上の化学溶液を含むことができる。
【0039】
たとえば、疎水性量子ドットと炭化水素コーティングを有する疎水性ビーズとの間の疎水性相互作用は、救済(salvation)(すなわち、炭化水素および量子ドットと溶媒との相互作用)よりも強い。この化学溶液は、疎水性量子ドットを組み込む場合は、アルコールとクロロホルムとの混合物であってよい。
【0040】
別の実施形態においては、疎水性量子ドットを組み込むための溶液としては、限定するものではないが、化学有機溶媒、たとえば、ハロゲン、酸素、硫黄、および窒素を有するまたは有さない、アシル、脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環式の炭化水素またはアルコールを挙げることができるが、場合によっては、水または水溶液を使用することもできる。有用な溶媒の例としては、限定するものではないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、リグロイン、メチルイソブチルケトン、メチルアセテート、エチルアセテート、ブチルアセテート、メチルセロソルブ(methyl CELLOSOLVE)(登録商標)(ユニオン・カーバイド(Union Carbide))、エチルセロソルブ(登録商標)(ユニオンカーバイド)、ブチルセロソルブ(登録商標)(ユニオンカーバイド)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、アルコール(たとえば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、分岐ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキシルアルコール)、アセトン、DMSO、塩化メチレン、クロロホルム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態においては、溶媒がアルコールであり、より好ましくはC3〜C6線状または分岐アルコールである。別の実施形態においては、溶媒がブタノール(ノルマルまたは第3)であり、ビーズが、スチレン/ジビニルベンゼン/アクリル酸から誘導される架橋したポリマーである。
【0041】
溶液の種類は、ナノ化学種および多孔質材料の第1の特性に少なくとも部分的に依存する。前述したように、第1の特性は、化学的特性、電気的特性、生物学的特性、物理的特性、またはそれらの組み合わせであってよい。特に、第1の特性としては、疎水性、親水性、静電特性、生物学的特性、バイオアフィニティ特性、リガンド−受容体特性、抗体−抗原特性、金属キレート化特性、磁気特性、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。一般に、多孔質材料(たとえばビーズ)およびナノ化学種は、選択された溶液中への懸濁または浸漬が可能であるべきである。たとえば、量子ドットがコードされたシリカビーズ、量子ドット、およびシリカビーズは、アルコールとクロロホルムとの混合物中に懸濁可能である。別の例においては、ナノ化学種および多孔質材料が親水性である場合、ナノ化学種および多孔質材料を溶解または懸濁するために極性溶媒の溶液を選択することができる。さらに別の例においては、多孔質材料が抗原でコーティングされ、ナノ化学種が抗体である場合、抗体と抗原でコーティングされた多孔質材料とは、生体分子の変性を回避するために水溶液中に懸濁させるべきである。
【0042】
構造体のさらに別の製造方法は、特許文献1および特許文献2に記載されている。
【0043】
別の実施形態においては、基材(たとえば、内部にナノ化学種が配置された多孔質材料)と、多孔質材料に取り付けたプローブとを含む複合体が提供される。このプローブは、リンカーを介して直接的または間接的のいずれかで多孔質材料と結合することが可能な化学的分子または生体分子であってよい。さらに、プローブは、検出が望まれる1種類以上の標的分子に対する親和性を有する。たとえば、標的が核酸配列である場合、標的とプローブとのハイブリダイゼーションが起こるように、標的分子の配列と実質的に相補的となるようプローブが選択されるべきである。用語「実質的に相補的」とは、選択された反応条件下でハイブリダイズするために、標的配列に対してプローブが十分に相補的であることを意味する。
【0044】
プローブは、ポリペプチド(たとえば、限定するものではないが、抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)などのタンパク質)、核酸(モノマーおよびオリゴマーの両方)、多糖、糖、脂肪酸、ステロイド、プリン類、ピリミジン類、薬物、またはリガンドから選択することができるが、これらに限定されるものではない。好適なプローブの一覧は、非特許文献3から得ることができ、この記載内容全体が本明細書に組み入れられる。
【0045】
語句「ポリペプチド」または「タンパク質」を使用する場合、ウイルス、細菌、植物、または動物(たとえば、ヒトなどの哺乳動物)由来の天然から単離されたもの、あるいは合成のいずれかのタンパク質、糖タンパク質、ポリペプチド、ペプチドなど、ならびにそれらのフラグメントを含むことを意図している。好ましいタンパク質またはそのフラグメントとしては、抗原、抗原のエピトープ、抗体、または抗体の抗原反応性フラグメントが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
語句「核酸」を使用する場合、ウイルス、細菌、植物、または動物(たとえば、ヒトなどの哺乳動物)由来の天然から単離されたもの、合成されたもの、一本鎖、二本鎖、たとえば天然または非天然のヌクレオチドなど、あるいは化学修飾されたもののいずれかのDNAおよびRNAを含むことを意図している。
【0047】
安定した物理的、化学的、または生物学的な結合によって直接的または間接的に、プローブを多孔質材料に取り付けることができる。たとえば、1つ以上の共有結合を介して直接的または間接的にプローブを多孔質材料に取り付けることができる。プローブと多孔質材料とが直接結合するとは、多孔質材料表面上の官能基とプローブ自体のみが、化学物質および/または取り付けの点として機能することを意味する。プローブが多孔質材料と間接的に取り付けられる場合、「リンカー」、中間架橋剤、または二官能性化合物によって取り付けられる。さらに、多孔質材料がその上に封止層を有する場合、プローブを封止材料に取り付けることができる。
【0048】
用語「リンカー」を使用する場合、プローブを多孔質材料に結合させるために使用することができる一官能性または二官能性の物理的、化学的、または生物学的結合を含むことを意図するが、これらに限定されるものではない。たとえば、リンカーとしては、1つ以上のアミン基、カルボン酸基、ヒドロキシ基、および/またはチオール基を有する化合物を挙げることができる。生物学的リンカーの例としては、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、アビジン、およびビオチンを挙げることができる。デイジーチェーン方式(たとえば、多孔質材料−リンカー1−リンカー2−リンカー3−プローブ)などのように、2つ以上のリンカーを使用してプローブを取り付けることができる。さらに、1つのリンカーを多孔質材料(たとえばビオチン)に取り付けることができ、そして1つのリンカーをプローブ(たとえば、アビジン)に取り付けることができる。一般に、取り付けられるタンパク質の機能、結合親和性、または活性に重要なアミノ酸の位置で、リンカーがタンパク質プローブまたはそのフラグメントと接触するべきではない。
【0049】
一実施形態において、多孔質材料の表面は、プローブと相互作用させるために、チオール、アミン、カルボキシル、およびヒドロキシルなどの反応性基を有する官能性有機分子によって表面改質することができる。このような表面活性反応物質としては、脂肪族および芳香族のアミン、メルカプトカルボン酸、カルボン酸、アルデヒド、アミド、クロロメチル基、ヒドラジド、ヒドロキシル基、スルホネート、およびサルフェートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
同じ種類の複数のプローブを多孔質材料に取り付けることができる。さらに、複数の標的を同時に検出するために、複数の異なる種類のプローブを多孔質材料に取り付けることもできる。一般に、最大約100,000,000個のプローブをビーズなどの多孔質材料に取り付けることができ、大型のモノリス多孔質材料にはさらに多くのプローブを取り付けることができる。プローブの基材への取り付けは、たとえば、共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス力、および機械的接合を介して行うことができる。
【0051】
本発明は、本発明の複合体の作製方法も提供する。プローブが基材に直接取り付けられる場合、その方法は、(a)プローブを基材に取り付けるステップと、(b)複合体を単離するステップとを含む。別の実施形態においては、複合体の作製方法は、(a)プローブを(i)1つ以上のリンカーおよび(ii)基材と接触させるステップと、(b)複合体を単離するステップとを含む。さらに別の実施形態においては、複合体の作製方法は、(a)リンカーを基材に取り付けるステップと、(b)プローブをリンカーに取り付けるステップと、(c)複合体を単離するステップとを含む。
【0052】
多孔質材料の細孔が封止される一実施形態においては、直接的または間接的のいずれかで、多孔質材料の外面にプローブが取り付けられる。細孔が封止されない場合(たとえば、封止材料が細孔壁の内部をコーティングするが細孔を封鎖しないために十分な直径を細孔が有する場合)の別の実施形態においては、多孔質材料の外側および細孔の内壁にプローブを取り付けることができる。
【0053】
1種類以上の標的分子の検出に、1種類以上の複合体を使用することができる。それぞれの種類の複合体は、独自の区別可能なコードを有するように製造することができ、それによって複数の標的分子を同時に検出することが可能となる。さらに、標的分子は、標的分子が複合体と結合したことを示すために化学物質(たとえば、フロウロクローム(flourochrome))、または検出可能な特性(たとえば蛍光)を有する構造を含むことができる。したがって、標的分子を有する複合体が、第1のエネルギーに曝露されると、ナノ化学種が第2の検出可能なエネルギーを発することができ、標的分子が第3の検出可能なエネルギーを発することができる。したがって、第2のエネルギーおよび第3のエネルギーの両方が検出されると、標的分子が複合体上にあることを示している。
【0054】
複合体は、限定するものではないが、バイオセンシング、バイオラベリング、高速スクリーニング、遺伝子発現の研究、タンパク質の研究、医療診断、診断ライブラリ、コンビナトリアルライブラリ、マイクロフルイディクス、フローサイトメトリー、および分光学、ならびに画像法などの分野で使用することができる。さらに、複合体は、限定するものではないが、造影剤(たとえば、動物実験および分子プローブ用)およびマイクロキャリア(たとえば薬物送達)として使用することもできる。さらに、複合体は、細胞、組織、またはマイクロプレートなどの標識に使用することができる。特に、複合体は、分子ビーコン中で使用することができる。
【0055】
本発明の複合体の検出は、使用される個々の実験技術の分野における検出システムを使用して実施することができる。たとえば、検出システムは、蛍光を検出する検出システムであってよい。
【0056】
標的分子は、プローブに対する親和性を有する化学的化合物(たとえば有機または無機)または生物学的合物を含むことができる。生物学的化合物としては、生体分子、たとえば、限定するものではないが、タンパク質、核酸、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、抗原、抗体、リガンド、遺伝子の一部、調節配列、ゲノムDNA、cDNA、およびmRNAやrRNAなどのRNAを挙げることができる。さらに、標的分子は、溶液中、細胞内、または組織内に含まれてもよい。
【0057】
一般に、(a)サンプルを1種類以上の複合体と接触させるステップであって、1種類以上の複合体のプローブが1種類以上の標的分子と特異的に結合するステップと、(b)複合体の存在を検出するステップとによって、本発明の複合体を、サンプル中の1つ以上の標的を検出するために使用することができる。「特異的に結合する」とは、サンプル中の非標的分子よりも高い親和性でプローブが標的分子と優先的に結合することを意味する。
【0058】
さらに、サンプル中のある1つの標的分子の2つ以上の領域を同時に検出することができる。たとえば、1つの標的分子の2つ以上の領域を検出する方法は、1組の複合体の使用を含み、固有で区別可能なナノ化学種を有する各複合体が、サンプル中のある標的分子上の異なる領域に特異的に結合するプローブに取り付けられる。標的分子上の異なる領域の検出は、異なる複合体によって得られる固有のコードによって行われる。特に、この方法によって、1種類のタンパク質の異なる機能ドメインの識別が可能になる。さらに、複数の異なるプローブが取り付けられた1種類の複合体を使用して、2種類以上の異なる標的分子、および/または1種類の標的分子上の2つ以上の領域を同時に検出することができる。
【0059】
1種類以上の複合体を使用することによって、複数の標的分子(または1つの標的分子の複数の部分)の検出が可能となり、このため、前述のようなバイオセンシング、バイオラベリング、高速スクリーニング、遺伝子発現の研究、タンパク質の研究、医療診断、診断ライブラリ、コンビナトリアルライブラリ、マイクロフルイディクス、フローサイトメトリー、分光学、および画像法における複合体の使用が容易になる。
【0060】
一実施形態においては、1種類以上の複合体を使用して1種類以上の標的分子を検出するための多重アッセイ手順においてフローサイトメーターを使用することができる。フローサイトメトリーは、粒子の光学特性に基づいて流体混合物中の特定の粒子(たとえばビーズ)を分析する光学的技術の1つである。フローサイトメーターは、流体力学的に、粒子の流体懸濁物を細い流れに集束させ、それによって実質的に1列となって粒子がその流れを流れていき、検査領域を通過する。レーザービームなどの集束させた光ビームが、検査領域を通過するときの粒子を照射する。フローサイトメーター内部の光学検出器が、粒子と相互作用するときの光のある特性を測定する。一般的に使用されるフローサイトメーターは、1つ以上の波長で粒子の蛍光を測定することができる。
【0061】
1種類以上の標的分子は、複合体(たとえば、量子ドット標識されたビーズなどの構造体)、1種類以上の標的分子に対する親和性を有する1種類以上のプローブ、および標的分子に取り付けられたフルオロフォアを使用して検出することができる。フローサイトメーターに導入する前に、ある標的分子に対して特異的な複合体を、1種類以上の標的分子を含みうるサンプルと混合する。複合体が、プローブが親和性を有する対応する標的分子と相互作用する(たとえば、結合またはハイブリダイズする)。続いて、複合体を除去し、フロウロフォア(flourophore)と混合することで、標的分子をフルオロフォアに結合させる。あるいは、複合体に導入する前にフルオロフォアを標的分子に結合させることもできる。
【0062】
次に、複合体をフローサイトメーターに導入する。前述したように、フローサイトメーターは、第1のエネルギーに曝露した後で複合体およびフルオロフォアを検出することができる。フルオロフォアが検出されると、標的分子がサンプル中に存在することが分かる。複合体上のプローブは特定の標的分子に対して特異的な親和性を有するので、フルオロフォアが検出されるとともに複合体が検出されると、検出された標的分子が同定される。
【0063】
別の実施形態においては、1種類以上のポリヌクレオチドの検出に分子ビーコンを使用することができる。分子ビーコンは、複合体(たとえば、量子ドット標識されたビーズなどの構造体)、プローブ、フルオロフォア、および消光部分を含む。プローブは、ステムアンドループ構造を含む一本鎖オリゴヌクレオチドであり、親水性結合部分が一本鎖オリゴヌクレオチドの一端と結合し、消光部分が一本鎖オリゴヌクレオチドの他端と結合している。フルオロフォアは、任意の蛍光有機染料、または量子ドット標識されたビーズと発光が重ならない単独の量子ドットであってよい。望ましくは、消光部分は、フルオロフォアのルミネセンスを消光させる。フルオロフォアのルミネセンスを消光させるあらゆる好適な消光部分を、上記複合体中に使用することができる。
【0064】
上記オリゴヌクレオチドのループは、サンプル中の検出すべきポリヌクレオチド中の標的配列と相補的なプローブ配列を含む。望ましくは、このループは、標的配列と接触すると容易に開くために十分な大きさであるが、容易に剪断されるほど大きくはない。ステムは、一本鎖オリゴヌクレオチドの両端またはその付近の相補的配列のアニーリングによって形成される。フルオロフォアは一本鎖オリゴヌクレオチドの一端と結合し、消光部分は一本鎖オリゴヌクレオチドの他端と共有結合する。次に量子ドット標識されたビーズを、フルオロフォアまたは消光部分のいずれかに(直接的または間接的のいずれかで)取り付けることができる。ステムはフルオロフォアと消光部分とが互いに接近するように維持し、それによって、一本鎖オリゴヌクレオチドが標的配列と結合していないときに、フルオロフォアのルミネセンスが消光される。これに関して、ステムが含む相補的配列は、量子ドットを消光するときに、オリゴヌクレオチド末端に十分接近するべきである。
【0065】
プローブ配列が、サンプル中の検出すべきポリヌクレオチドの標的配列に遭遇すると、標的配列と結合(すなわちハイブリダイズ)し、それによってステムハイブリッドよりも長くより安定なプローブ−標的ハイブリッドを形成する。プローブ−標的ハイブリッドの長さおよび剛性のため、ステムハイブリッドの同時形成は妨害される。その結果、構造が、ステムを広げる自発的な構造変化を起こし、それによってフルオロフォアと消光部分とが分離し、フルオロフォアのルミネセンスが回復する。フルオロフォアのルミネセンスは、標的分子がプローブと結合していることを示しており、量子ドット標識されたビーズの発光コードによってプローブが同定され、したがって標的が同定される。この種類の分子ビーコンを使用する場合は標的自体は蛍光標識する必要がない。
【0066】
生体分子を検出するために量子ドットを使用する方法および技術に関するさらなる詳細は、特許文献1および特許文献2に記載されている。
【0067】
本発明の構造体の実施形態について全般的に説明してきたが、実施例1は、多孔質材料が、量子ドットナノ化学種が内部に配置されたシリカビーズである実施形態を示しており、実施例2は、多孔質材料が、量子ドットナノ化学種が内部に配置されたポリスチレンビーズである実施形態を示している。多孔質材料中に配置されたナノ化学種を有する構造の実施形態を、実施例1および2、ならびに対応する文章および図面と関連させて説明しているが、本発明の構造体の実施形態がこれらの説明に限定されることを意図するものではない。逆に、本発明の実施形態の意図および範囲に含まれるすべての代替物、修正、および同等物を含むことを意図している。
【実施例1】
【0068】
約488nm(青)、約520nm(緑)、約550nm(黄)、約580nm(オレンジ)、または約610nm(赤)の光を発する単色量子ドットをドープしたメソポーラスシリカビーズ(直径約5μm、孔径約32nm)のトゥルーカラー蛍光画像を作成した。これらのビーズは、単色量子ドットを使用して調製され、蛍光画像法のために混合されガラス表面上に広げられるので、「単色性」であると見なされる。1つのみの光源(近UVランプ)を励起のために使用したが、ドープしたすべてのビーズが観察され、明確に区別することができた。注目すべきは、複数の発光色の同時励起が量子ドットの独自の性質であり、有機染料またはランタニド化合物では不可能なことである。量子ドットをドープしたビーズは非常に明るく、デジタルカラーカメラおよび水銀ランプを使用して記録することができる。定量測定によると、これらのメソポーラスビーズは、従来報告されている量子ドットで標識されたラテックスビーズよりも約50〜100倍明るく、同様の大きさの非多孔質ポリスチレンビーズよりも30倍を超えて明るいことが分かった。
【0069】
改善された明るさに寄与する要因の1つは、広い表面積(32nmの細孔のビーズの場合150ra2/g)であり、非多孔質ビーズの表面積の約50〜100倍である。さらに、ビーズの向こう側から通して非常に均一な蛍光が得られることから分かるように、量子ドットはメソポーラスビーズ中に深く浸透することができる。相対的に、ポリスチレンビーズ中への量子ドットの浸透深さは、広範囲で膨潤する条件下でさえも、透過型電子顕微鏡で観察してビーズ半径の5%を超えない。共焦点蛍光画像法で、明確なリングパターンが得られることから、量子ドットが主として表面上または隣接層上に配置されていることが確認できる(データは示していない)。セファロース(Sepharose)などのヒドロゲルでさえも01〜0.2(nm境界層を超えて30〜nmのコロイド金が浸透できないことを従来の研究が示しているので、このことは驚くべきことではない。
【0070】
図1Aおよび1Bは、ドーピング速度に対する孔径の影響を示す時間依存性の蛍光画像である(図1Aは32nmの細孔のビーズ、図1Bは10nmの細孔のビーズ)。孔径を除いて、他のすべてのビーズの性質(たとえば、大きさ、材料、および表面化学)およびデータ収集条件(たとえば、励起波長、強度、および曝露時間)は同じであった。一方が孔径32nmで他方が10nmの2種類のシリカビーズについて時間依存性の蛍光信号を比較することによって、孔径のドーピング速度に対する影響を調べる。これらの結果から、32nmの細孔のビーズの方がドーピングが遙かに速く、1分間でほぼ均一の量子ドット分布が得られ、5分未満で飽和することが分かった。しかし、10nmの細孔のビーズの場合、約1〜60分のドーピングで不鮮明なリング構造が観察され、主としてビーズ表面上でドーピングが起こったことを示している。この不均一な構造は約3時間後にはなくなるが、蛍光強度は約10時間後まで飽和しない。この比較から、32nmの細孔は、量子ドットを迅速に拡散させるために十分大きいが、10nmの細孔では、量子ドットの拡散およびドーピング速度ははるかに低下することが分かる。炭化水素コーティングの厚さ(すべての面上に2nm)を考慮すると、10nmの細孔における空間は6nmまで減少し、ほぼ3〜4nmの量子ドット+1nmのTOPOキャップ層の寸法となる。炭化水素および界面活性分子の両方の構造に自由度があり、互いに入り込んで安定で一体となった構造を形成することができるため、これでもなおドーピングが起こりうる。
【0071】
図2Aは、5mmのシリカビーズのTEM画像を示しており、非常に多孔質の内部構造が見られる。図2Bは、ドープしたビーズが安定性であり、室温で終夜曝露後の水またはエタノールに浸出する量子ドットが存在しないことを示す蛍光データを示している。図2Cは、水溶液中に分散させた量子ドット、またはメソポーラスシリカビーズ中に固定した量子ドットが同じ光学特性を示す蛍光データを示している。上澄みの曲線から、溶液中に量子ドットが存在しないことが分かった(ビーズ中に100%組み込まれた)。ドープしたビーズ(薄片として作製)のTEM測定から非常に多孔質の構造が確認できたが、比較的低解像度で1つのナノ細孔または量子ドットを解像することはできなかった。細孔の内部では、炭化水素とTOPO分子との間の疎水性互作用を介して量子ドットが閉じ込められる。1平方ナノメートル当たり1〜2個の炭化水素またはTOPO分子の表面密度(単層被覆の場合に典型的)を仮定すると、1つのドット上で約10個のTOPO分子が、ナノ細孔壁上のほぼ同数の炭化水素分子と反応することができると推定される(分子間相互作用の場合に立体的に可能な0.5nの立体角に基づく)。化学および生物学の分野で広く知られているように、弱い多価相互作用によって、非常に遅い解離速度で安定な複合体が形成される。したがって量子ドットは、細孔内にしっかりと固定され、解離または浸出に対して安定であると予想される。図2Bは、ドープしたビーズを水または一般的な有機溶媒(たとえば、エタノール、アセトン、アセトニトリル、およびDMF)に終夜曝露した場合に、QDの漏れが観察されなかったことを示している。
【0072】
図2Cは、有機溶媒中に分散させた場合と、シリカビーズ中に固定した場合で、量子ドットの光学的性質がほぼ同じであることを示している。これは、ビーズの内部でQDが互いに空間的に分離して存在し、メソポーラスシリカ中に分散した有機染料の場合と類似していることを示している。以前に報告された2つの独立した測定(単一ドット分光法およびバルク濃度測定)を使用することによって、ビーズ1つ当たりの量子ドットの数は、最大2〜6百万(孔径に依存する)であると推定することができ、これは約5%の表面被覆率または占有率に対応する。この条件は、表面の飽和にはほど遠く、ビーズ内部での量子ドットの分散に好ましい。さらに、定量的データから、ビーズ中にほぼ100%の量子ドットが組み込まれたために自由溶液中に量子ドットが実質的に存在しないことが分かる。このことは、異なる量子ドットの量を精密に制御する必要がある多色ドーピングの場合に特に重要である。
【0073】
図3は、2つの量子ドット色および2つの強度レベルを使用したレシオメトリックドーピング結果を示している。図3の上部は、510nmおよび580nmの発光波長における3:2、1:1、および2:1の3つの強度比を示す実際の蛍光スペクトルを示しており、下部は、各比で30のデータ点(1種類のビーズの測定)に基づく強度比(対数スケール)の散布図を示している。2つの強度を使用すると、3つの特有の強度比(1:2,1:1、および2:1)が得られる。これらの比は、所与の部類のドープしたビーズにおいて非常に一致しているが、絶対強度はビーズ間で大きく変動しうる(ビーズの大きさおよび装置の配置のばらつきのため)。密な散布図から分かるように、これらの強度比の標準偏差は2.0%未満である。この高い再現性のため、20の強度比がx軸に沿って1log内に分布し、40の比が2log内に分布する。したがって、3色ドーピング方式(2つの独立した比率が得られる)では、400のドーピングの組み合わせが±1logとなることが可能であり、最大1,600の組み合わせが±2logとなることができる。ワイス(Weiss)および共同研究者による生体分子の画像化で報告されるように、個々の信号の同時ドリフトまたはゆらぎによる影響を比の値は受けないため、レシオメトリック測定は絶対強度よりもはるかに信頼性が高い。この利点は、高精度および高速でドープしたビーズを読み取るためのマイクロデバイスおよびアルゴリズムの開発に有用である。
【0074】
他のドーピングまたは光学的コード化技術と比較すると、メソ構造化シリカを使用することで、類を見ないレベルでドーピングを制御でき、2%を超える再現性が得られ、製造費は少ない。コンビナトリアルアッセイまたは多重アッセイにおける可能性のある用途では、ドープしたビーズを、オリゴヌクレオチド、ペプチド、または抗体などの生体分子と結合させることができる。メソポーラス構造体によって急速な拡散および迅速な反応が可能となるので、ビーズ外面と細孔内面との両方を使用することができる。さらに、量子ドットをドープしたメソポーラスの繊維および薄膜は、化学的/生物学的センシング、量子ドットレーザー、および集積オプトエレクトロニクスにおける用途が存在する。さらに、ナノポーラス材料を種々の分子およびナノ粒子でドーピングするために、多価ドーピング方法を静電的相互作用、リガンド−受容体相互作用、および金属イオンキレート化相互作用に拡張することができる。
【0075】
材料:文献の手順により、コア−シェル量子ドット(ZnSでキャップしたCdSe)を合成した。得られた量子ドットを、高温配位溶媒として使用したトリ−n−オクチルホスフィンオキシド(TOPO)の層でコーティングした。この量子ドットの蛍光の量子収率は室温において約50%であり、大きさのばらつきは約5%であった。メソ自己集合界面活性剤またはポリマー(ポロゲンと呼ばれる)などの細孔形成性テンプレートを使用してポーラス材料を合成した。合成後、テンプレートを除去すると、テンプレート構造に依存して規則的または不規則のいずれかであるメソサイズの細孔が形成される。この作業において、孔径が約10nmまたは32nmであるメソポーラスシリカビーズ(直径約5μm)を、フェノメネックス(Phenomenex)(カリフォルニア州トランス(Torrance,CA))より入手した。これらの細孔表面を、Si−C1837(オクタデシルまたはC18、18炭素直鎖炭化水素)の単層でコーティングした。
【0076】
これらのシリカ材料は不規則な細孔を含んだが、この基本原理および方法は、規則的な細孔に対しても適用可能となるべきである。
【0077】
ドーピング:多孔質ビーズを、制御された量の量子ドットと有機溶媒(ブタノール)中で混合することによって、単色ドーピングを行った。32nmの細孔のビーズの場合、ドーピング工程は10分未満で完了した(溶液中に遊離のドットは残留せず)。10nmの細孔のビーズの場合、ドーピング速度の研究のためより長時間を使用した。多色ドーピングの場合、異なる色の量子ドットを、精密に制御された比率であらかじめ混合した。この予備混合溶液の一部に多孔質ビーズを加えた。ドープしたビーズを遠心分離により単離し、エタノールで3回洗浄した。
【0078】
透過型電子顕微鏡法(TEM):ドープしたビーズを、樹脂(テッド・ペラ(Ted Pella)、カリフォルニア州レディング(Redding,CA))中に埋め込み、ウルトラミクロトーム装置(ライカ・ウルトラカットS(Leica Ultracut S)、イリノイ州バノックバーン(Bannockburn,IL))で60〜70nmの薄片に切断した。75kの電圧で作動させ、23,000倍の倍率で、ヒタチHアバウト7500(Hitachi H about 7500)透過型電子顕微鏡でこの薄片を画像化した。
【0079】
光学的画像化および分光法:デジタルカラーカメラ(ニコンDL(Nikon Dl))、広帯域紫外(330〜385nm)光源(100W水銀ランプ)、およびロングパス干渉フィルター(DM 400、クロマ・テック(Chroma Tech)、バーモント州ブラトルバロ(Brattleboro,VT))を取り付けた倒立オリンパス(Olympus)顕微鏡(IX−70)を使用してトゥルーカラー蛍光画像化を行った。単一ステージ分光計(スペクトラプロ150(SpectraPro 150)、ローパー・サイエンティフィック(Roper Scientific)、トレントン(Trenton),NT))を使用して、波長分解スペクトルを得た。
【実施例2】
【0080】
約488nm(青)、約520nm(緑)、約550nm(黄)、約580nm(オレンジ)、または約610nm(赤)の光を発する単色量子ドットをドープした単色量子ドットのドープ(直径約15μm)のトゥルーカラー蛍光画像を作成した。これらのビーズは、単色量子ドットを使用して調製され、蛍光画像法のために混合されガラス表面上に広げられるので、「単色性」であると見なされる。1つのみの光源(近UVランプ)を励起のために使用したが、ドープしたすべてのビーズが観察され、明確に区別することができた。注目すべきは、複数の発光色の同時励起が量子ドットの独自の性質であり、有機染料またはランタニド化合物では不可能なことである。量子ドットをドープしたビーズは非常に明るく、デジタルカラーカメラおよび水銀ランプを使用して記録することができる。
【0081】
図4は、緑色蛍光および赤色蛍光の同時分析に基づく12の微小球の組(コントロール、未処理の微小球を含む)の分類を示す二次元濃度プロットを示している。このグラフは、多色量子ドットがコードするポリスチレンビーズの組を復号するためにフローサイトメトリーを使用できることを示している。
【0082】
材料:文献の手順により、コア−シェル量子ドット(ZnSでキャップしたCdSe)を合成した。得られた量子ドットを、高温配位溶媒として使用したトリ−n−オクチルホスフィンオキシド(TOPO)の層でコーティングした。この量子ドットの蛍光の量子収率は室温において約50%であり、大きさのばらつきは約5%であった。手順にしたがってメソポーラスポリスチレン材料を合成した。
【0083】
ドーピング:多孔質ビーズを、制御された量の量子ドットとブタノールなどの有機溶媒中で混合することによって、単色ドーピングを行った。多色ドーピングの場合、異なる色の量子ドットを、精密に制御された比率であらかじめ混合した。この予備混合溶液の一部に多孔質ビーズを加えた。ドープしたビーズを遠心分離により単離し、エタノールで3回洗浄した。
【0084】
光学的画像化および分光法:デジタルカラーカメラ(ニコンD1)、広帯域紫外(330〜385nm)光源(100W水銀ランプ)、およびロングパス干渉フィルター(DM 400、クロマ・テック、バーモント州ブラトルバロ)を取り付けた倒立オリンパス(Olympus)顕微鏡(IX−70)を使用してトゥルーカラー蛍光画像化を行った。単一ステージ分光計(スペクトラプロ150、ローパー・サイエンティフィック、ニュージャージー州トレントン(Trenton,NJ))を使用して、波長分解スペクトルを得た。
【0085】
フローサイトメトリー。量子ドットをコードするマイクロビーズは、実質的にあらゆる市販のフローサイトメーターを使用して復号することができる。この実験においては、ビーズはフロースキャン(FlowScan)およびフローソート(FlowSort)(ベクトン・ディキンソン(Becton Dickinson))で解析した。
【0086】
本発明の上記実施形態、特に、あらゆる「好ましい」実施形態は、単に実施可能な例であり、単に本発明の原理を明確的に理解するために記載していることを強調したい。本発明の意図および原理から実質的に逸脱することなく、本発明の上記実施形態の多くの変形および修正が可能である。このようなすべての修正および変形は、本開示および本発明の範囲内にある本発明に含まれ、請求項によって保護されることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1A】ドーピング速度に対する孔径の影響を示す時間依存性の蛍光画像を示している(32nmの細孔のビーズ)。
【図1B】ドーピング速度に対する孔径の影響を示す時間依存性の蛍光画像を示している(10nmの細孔のビーズ)。
【図2A】5μmのシリカビーズのTEM画像を示しており、非常に多孔質の内部構造が見られる。
【図2B】ドープしたビーズが安定性であり、室温で終夜曝露後の水またはエタノールに浸出する量子ドットが存在しないこと示す蛍光データを示している。
【図2C】水溶液中に分散させた量子ドット、またはメソポーラスシリカビーズ中に固定した量子ドットが同じ光学的性質を示す蛍光データを示している。
【図3】2つのQD色および2つの強度レベルを使用した比例ドーピング結果を示している。
【図4】緑色蛍光および赤色蛍光の同時分析に基づく多くの微小球の組の分類を示す二次元濃度プロットを示している。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の特性と、第2の検出可能な特性とを有するナノ化学種であって、第1のエネルギーに曝露することによって、前記第2の検出可能な特性に対応する第2の検出可能なエネルギーが発生するナノ化学種と、
前記第1の特性と、複数の細孔を有する多孔質材料であって、前記第1の特性によって、前記ナノ化学種は、前記多孔質材料と相互作用して、前記多孔質材料の前記細孔内に配置される多孔質材料とを含む、構造体。
【請求項2】
前記ナノ化学種が、半導体量子ドット、金属ナノ粒子、生体分子、および磁性ナノ粒子から選択される、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記金属ナノ粒子が、金ナノ粒子、白金ナノ粒子、銀ナノ粒子、および銅ナノ粒子から選択される、請求項2に記載の構造体。
【請求項4】
前記生体分子が、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、タンパク質、リガンド、受容体、抗原、抗体、およびそれらの分離した部分から選択される、請求項2に記載の構造体。
【請求項5】
前記多孔質材料が、メソポーラス材料、マクロポーラス材料、および複合メソポーラス/マクロポーラス材料から選択される、請求項1に記載の構造体。
【請求項6】
前記多孔質材料が、ポリマー、金属、シリカ材料、セルロース、セラミック、ゼオライト、およびそれらの組み合わせから選択される材料でできている、請求項1に記載の構造体。
【請求項7】
前記多孔質材料が、炭化水素で誘導体化された表面を有するシリカである、請求項1に記載の構造体。
【請求項8】
前記第1の特性が、疎水性、親水性、静電特性、生物学的特性、バイオアフィニティ特性、リガンド−受容体特性、抗体−抗原特性、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の構造体。
【請求項9】
前記第2の検出可能な特性が、蛍光特性、磁気特性、ルミネセンス特性、光散乱特性、および表面プラズモン特性から選択される、請求項1に記載の構造体。
【請求項10】
前記ナノ化学種が化学的化合物でコーティングされ、前記化学的化合物でコーティングされた後で前記ナノ化学種が前記第1の特性を有する、請求項1に記載の構造体。
【請求項11】
前記ナノ化学種が疎水性コーティングされた半導体量子ドットであり、前記コーティングが、前記半導体量子ドット上に実質的に配置される疎水性化合物を含む、請求項1に記載の構造体。
【請求項12】
前記疎水性化合物が、O=PR3化合物、O=PHR2化合物、O=PHR1化合物、H2NR化合物、HNR2化合物、NR3化合物、HSR化合物、SR2化合物、およびそれらの組み合わせから選択され、RがC1〜C18炭化水素、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項11に記載の構造体。
【請求項13】
Rが飽和線状C4〜C18炭化水素である、請求項12に記載の構造体。
【請求項14】
前記疎水性化合物が、O=PR3化合物、HNR2化合物、HSR化合物、SR2化合物、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項11に記載の構造体。
【請求項15】
前記疎水性化合物が、トリ−n−オクチルホスフィン、ステアリン酸、およびオクチルデシルアミンから選択される、請求項11に記載の構造体。
【請求項16】
前記疎水性化合物がトリ−n−オクチルホスフィンを含む、請求項11に記載の構造体。
【請求項17】
前記疎水性化合物がステアリン酸を含む、請求項11に記載の構造体。
【請求項18】
前記疎水性化合物がオクチルデシルアミンを含む、請求項11に記載の構造体。
【請求項19】
前記量子ドットがコアおよびキャップを含む、請求項11に記載の構造体。
【請求項20】
前記量子ドットの前記コアが、IIB−VIB半導体、IIIB−VB半導体、およびIVB−IVB半導体からなる群より選択される、請求項11に記載の構造体。
【請求項21】
前記量子ドットの前記コアが、IIB−VIB半導体からなる群より選択される、請求項20に記載の構造体。
【請求項22】
前記量子ドットの前記コアがCdSまたはCdSeである、請求項20に記載の構造体。
【請求項23】
前記キャップが、高バンドギャップのIIB−VIB半導体からなる群より選択される、請求項20に記載の構造体。
【請求項24】
前記キャップがZnSおよびCdSから選択される、請求項20に記載の構造体。
【請求項25】
前記多孔質材料と直接的に取り付けられたプローブをさらに含む、請求項1に記載の構造体。
【請求項26】
結合性化合物を介して前記多孔質材料と間接的に取り付けられたプローブをさらに含む、請求項1に記載の構造体。
【請求項27】
前記プローブが、生体分子、およびフルオロフォアに取り付けられた生体分子から選択される、請求項26に記載の構造体。
【請求項28】
前記プローブが、生体分子、およびフルオロフォアに取り付けられた生体分子から選択される、請求項27に記載の構造体。
【請求項29】
前記多孔質材料に取り付けられたプローブと、前記プローブに取り付けられたフルオロフォアおよび消光部分とをさらに含む、請求項1に記載の構造体。
【請求項30】
構造体を製造する方法であって、
第1の特性と第2の検出可能な特性とを有するナノ化学種を提供するステップであって、第1のエネルギーに曝露することによって前記第2の検出可能な特性に対応する第2の検出可能なエネルギーが発生するステップと;
前記第1の特性を有する多孔質材料を提供するステップと;
溶液の存在下で前記ナノ化学種および前記多孔質材料を導入するステップと;
前記構造体を形成するステップであって、前記構造体が、少なくとも前記多孔質材料の細孔内部に配置された複数のナノ化学種を有する多孔質材料を含み、前記第1の特性によって、前記ナノ化学種が、前記多孔質材料と相互作用して、前記多孔質材料の前記細孔内部に配置されるステップとを含む、方法。
【請求項31】
前記ナノ化学種が、半導体量子ドット、金属ナノ粒子、生体分子、および磁性ナノ粒子から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記金属ナノ粒子が、金ナノ粒子、白金ナノ粒子、銀ナノ粒子、および銅ナノ粒子から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記生体分子が、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、タンパク質、リガンド、受容体、抗原、抗体、およびそれらの分離した部分から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記多孔質材料が、メソポーラス材料、マクロポーラス材料、および複合メソポーラス/マクロポーラス材料から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記多孔質材料が、ポリマー、金属、シリカ材料、セルロース、セラミック、ゼオライト、およびそれらの組み合わせから選択される材料でできている、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記多孔質材料が、炭化水素で誘導体化された表面を有するシリカである、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の特性が、疎水性、親水性、静電特性、生物学的特性、バイオアフィニティ特性、リガンド−受容体特性、抗体−抗原特性、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記第2の検出可能な特性が、蛍光特性、磁気特性、ルミネセンス特性、光散乱特性、および表面プラズモン特性から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項39】
前記ナノ化学種が化学的化合物でコーティングされ、前記化学的化合物でコーティングされた後で前記ナノ化学種が前記第1の特性を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項40】
前記ナノ化学種が疎水性コーティングされた半導体量子ドットであり、前記コーティングが、前記半導体量子ドット上に実質的に配置される疎水性化合物を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項41】
前記疎水性化合物が、O=PR3化合物、O=PHR2化合物、O=PHR1化合物、H2NR化合物、HNR2化合物、NR3化合物、HSR化合物、SR2化合物、およびそれらの組み合わせから選択され、RがC1〜C18炭化水素、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項42】
Rが飽和線状C4〜C18炭化水素である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記疎水性化合物が、O=PR3化合物、HNR2化合物、HSR化合物、SR2化合物、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記疎水性化合物が、トリ−n−オクチルホスフィン、ステアリン酸、およびオクチルデシルアミンから選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記多孔質材料がシリカビーズを含み、前記ナノ化学種がコーティングされた疎水性半導体量子ドットを含み、導入ステップが、前記シリカビーズと、前記コーティングされた疎水性半導体量子ドットとを、アルコールおよびクロロホルムの溶液中で混合するステップを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項46】
少なくとも1つの標的を検出する方法であって、
請求項1に記載の少なくとも1種類の構造体をサンプルと接触させるステップであって、前記サンプルが、少なくとも1種類の標的分子を含有し、各構造体が、1種類の標的分子にのみ対応し、前記種類の標的分子が前記サンプル中に存在する場合、前記構造体が前記標的分子と相互作用し、前記少なくとも1種類の構造体のそれぞれが第2の検出可能な特性を有するステップと;
前記第2の検出可能な特性の少なくとも1つを検出するステップであって、各第2の検出可能な特性の検出が、前記サンプル中に前記標的が存在することを示すステップとを含む、方法。
【請求項47】
前記少なくとも1種類の構造体を第1のエネルギーに曝露するステップと;
前記第2の検出可能な特性に対応する少なくとも1つの第2のエネルギーを検出するステップとをさらに含み、前記少なくとも1つの第2のエネルギーが、前記第1のエネルギーに反応して発生する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
各標的分子が第3の検出可能な特性を含み、検出ステップが:
前記第2の検出可能な特性および前記第3の検出可能な特性の少なくとも1つを検出するステップを含み、前記第2の検出可能な特性および前記第3の検出可能な特性の検出が、前記サンプル中に前記標的が存在することを示す、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記少なくとも1種類の構造体を第1のエネルギーに曝露するステップと;
前記第2の検出可能な特性に対応する少なくとも1つの第2のエネルギーと、前記第3の検出可能な特性に対応する第3のエネルギーとを検出するステップとをさらに含み、前記少なくとも1つの第2のエネルギーが前記第1のエネルギーに反応して発生する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記標的分子が生体分子である、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記標的分子がフルオロフォアを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記第2の検出可能な特性が、蛍光特性、磁気特性、ルミネセンス特性、光散乱特性、および表面プラズモン特性から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
第1の特性と、第2の検出可能な特性とを有するナノ化学種であって、第1のエネルギーに曝露することによって、前記第2の検出可能な特性に対応する第2の検出可能なエネルギーが発生するナノ化学種と、
前記第1の特性と、複数の細孔を有する多孔質材料であって、前記第1の特性によって、前記ナノ化学種は、前記多孔質材料と相互作用して、前記多孔質材料の前記細孔内に配置される多孔質材料とを含む、複数の構造体を含む、アレイシステム。
【請求項54】
第1の特性と、第2の検出可能な特性とを有するナノ化学種であって、第1のエネルギーに曝露することによって、前記第2の検出可能な特性に対応する第2の検出可能なエネルギーが発生するナノ化学種と、
前記第1の特性と、複数の細孔を有する多孔質材料であって、前記第1の特性によって、前記ナノ化学種は、前記多孔質材料と相互作用して、前記多孔質材料の前記細孔内に配置される多孔質材料とを含む、複数の構造体を含む、診断ライブラリ。
【請求項55】
第1の特性と、第2の検出可能な特性とを有するナノ化学種であって、第1のエネルギーに曝露することによって、前記第2の検出可能な特性に対応する第2の検出可能なエネルギーが発生するナノ化学種と、
前記第1の特性と、複数の細孔を有する多孔質材料であって、前記第1の特性によって、前記ナノ化学種は、前記多孔質材料と相互作用して、前記多孔質材料の前記細孔内に配置される多孔質材料とを含む、複数の構造体を含む、コンビナトリアルライブラリ。
【請求項56】
第1の特性と、第2の検出可能な特性とを有するナノ化学種であって、第1のエネルギーに曝露することによって、前記第2の検出可能な特性に対応する第2の検出可能なエネルギーが発生するナノ化学種と、
前記第1の特性と、複数の細孔を有する多孔質材料であって、前記第1の特性によって、前記ナノ化学種は、前記多孔質材料と相互作用して、前記多孔質材料の前記細孔内に配置される多孔質材料とを含む、複数の構造体を含む、蛍光インク。
【請求項57】
第1の特性と、第2の検出可能な特性とを有するナノ化学種であって、第1のエネルギーに曝露することによって、前記第2の検出可能な特性に対応する第2の検出可能なエネルギーが発生するナノ化学種と、
前記第1の特性と、複数の細孔を有する多孔質材料であって、前記第1の特性によって、前記ナノ化学種は、前記多孔質材料と相互作用して、前記多孔質材料の前記細孔内に配置される多孔質材料とを含む、複数の構造体を含む、蛍光性化粧品。
【請求項58】
第1の特性と、第2の検出可能な特性とを有するナノ化学種であって、第1のエネルギーに曝露することによって、前記第2の検出可能な特性に対応する第2の検出可能なエネルギーが発生するナノ化学種と、
前記第1の特性と、複数の細孔を有する多孔質材料であって、前記第1の特性によって、前記ナノ化学種は、前記多孔質材料と相互作用して、前記多孔質材料の前記細孔内に配置される多孔質材料とを含む、複数の構造体を含む、フローサイトメトリーシステム。

【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−521460(P2007−521460A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507919(P2005−507919)
【出願日】平成15年9月18日(2003.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2003/029384
【国際公開番号】WO2005/017525
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(504357495)エモリー ユニバーシティー (5)
【Fターム(参考)】