説明

ナノ構造の堆積後封入、前記ナノ構造を含む組成物、デバイス及びシステム

個別被覆ナノ構造の製造用リガンド組成物と、被覆ナノ構造自体及び前記ナノ構造を含むデバイスを提供する。ナノ構造上の堆積後シェル形成方法及びナノ構造の可逆的変性方法も提供する。本発明のリガンド及び被覆ナノ構造は細密充填ナノ構造組成物に特に有用であり、量子閉じ込めの改善及び/又はナノ構造間のクロストーク低減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願とのクロスリファレンス)
本願は以下の先願仮特許出願:USSN60/578,236(出願日2004年6月8日、発明の名称「ナノ構造の堆積後封入、前記ナノ構造を含む組成物、デバイス及びシステム(POST−DEPOSITION ENCAPSULATION OF NANOCRYSTALS:COMPOSITIONS,DEVICES AND SYSTEMS INCORPORATING SAME)」、発明者Jeffery A.Whitefordら)、及びUSSN60/632,570(出願日2004年11月30日、発明の名称「ナノ構造の堆積後封入、前記ナノ構造を含む組成物、デバイス及びシステム(POST−DEPOSITION ENCAPSULATION OF NANOSTRUCTURES:COMPOSITIONS,DEVICES AND SYSTEMS INCORPORATING SAME)」、発明者Jeffery A.Whitefordら)の優先権と特典を主張する非仮特許出願であり、前記各特許出願の開示内容全体を参考資料として全目的で本明細書に組込む。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は主にナノテクノロジーの分野に関する。より詳細には、本発明は個別被覆ナノ構造を含む組成物、デバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
個々のナノ構造と、ナノ複合材料を形成するために他の材料に埋込まれたナノ構造はその光学的及び電気的特性を利用する用途を含む多くの有望な用途がある。特に有用な用途の1つはナノ構造により高密度電荷保存が可能になるナノ複合メモリーの分野であると思われる。
【0004】
ナノ構造を作製するために利用可能な合成アプローチのうちでコア及びコア:シェルナノ構造の作製に一般に使用されているのは化学蒸着(CVD)又は分子ビームエピタキシー(MBE)等のトップダウンパターン化アプローチである。これらの方法は一般に大きなナノ粒子及び/又は無秩序なナノ粒子及び/又は低い充填密度しか得られず、高コスト(高温、高真空)処理段階が必要である。スピンコーティングや他の蒸着法等の溶液堆積法に適合し易い半導体ナノ結晶(コア又はコア/シェル)を合成するためには溶液合成も使用することができる。例えば、CdSeコア(又は結晶コア)とZnSシェルを含むナノ構造は溶液堆積技術により製造することができる(例えば、Murrayら(1993)“Synthesis and characterization of nearly monodisperse CdE(E=S,Se,Te)semiconductor nanocrystals” J.Am.Chem.Soc.115:8706−8715参照)。しかし、これら及び他の標準コア−シェル合成技術により作製されたナノ構造は一般に第1のナノ構造の数ナノメートル内に配置された他のナノ構造への電荷拡散を阻止するのに十分な程度までコア内に電荷を閉じ込めるために十分な厚さのシェルをもたない。
【0005】
あるいは、化学的自己組織化アプローチによるナノ構造合成では一般に最良に制御された形態と結晶寸法が得られるが、これらの合成プロトコールにより作製されたナノ構造は付加的な有機及び/又は界面活性剤化合物と会合している。溶解度を増し、合成中のナノ構造の操作を容易にするには有用であるとしても、有機汚染物質はナノ構造表面と強く会合しているため、新規に合成したナノ構造を更に操作及び/又はデバイス及び最終用途に組込むことは困難になる。
【0006】
高密度充填(例えば約1×1012/cm以上)を可能にする直径をもつようにこれらのCdSe:ZnS構造体を製造できたとしても、このようなZnSシェルではマイクロエレクトロニック及びフォトニックデバイス(限定されないが、例えばメモリー又は電荷保存デバイス)でナノ構造を効率的に使用するために十分な量子閉じ込めは得られないと思われる。
【非特許文献1】Murrayら(1993)“Synthesis and characterization of nearly monodisperse CdE(E=S,Se,Te)semiconductor nanocrystals” J.Am.Chem.Soc.115:8706−8715
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、付加処理を要さずに各種製造方法に容易に組込むことができる個別被覆ナノ構造が当分野で必要とされている。被覆ナノ構造は標準CdSe/ZnSコア:シェル構造よりも強い量子閉じ込めを維持しながら細密充填できることが好ましい。本発明は個別被覆ナノ構造、個別ナノ構造を被覆するためのリガンド、被覆ナノ構造を含むデバイス、及び被覆ナノ構造の製造方法を提供することにより上記及び他の必要を満たす。本発明は以下の記載から完全に理解されよう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの一般分類の態様は個別被覆ナノ構造を提供する。個別被覆ナノ構造は第1の表面をもつ個々のナノ構造と、個々のナノ構造の第1の表面と結合した第1のコーティングを含む。第1のコーティングは第1の光学的、電気的、物理的又は構造的特性をもち、第1のコーティングと異なる1種以上の光学的、電気的、物理的又は構造的特性をもつ第2のコーティングに変換可能である。所定態様では、第1のコーティングはナノ構造を封入しており、他の態様では、第1のコーティングはナノ構造の一部(例えば、基板の表面と結合していないナノ構造の部分)を被覆している。1態様では、第2のコーティングの電気的特性は誘電性であり、この態様の第2のコーティングの例としては酸化シリコン、酸化ボロン、及びその組み合わせが挙げられる。
【0009】
本発明の個別被覆組成物を製造するために使用することができるナノ構造としては限定されないが、ナノ結晶、ナノドット、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノチューブ、各種ナノ粒子(例えば金属、半導体、又は絶縁体ナノ粒子、パラジウム、金、白金、銀、チタン、イリジウム、コバルト、錫、亜鉛、ニッケル、鉄もしくはフェライトナノ粒子等の金属ナノ粒子又はこれらの合金、非晶質、結晶質、及び多結晶無機又は有機ナノ粒子、並びにコンビナトリアル化学合成法で一般に使用されているもの等のポリマーナノ粒子、例えばBangs Laboratories(Fishers,IN)の市販品)、ナノテトラポッド、ナノトライポッド、ナノバイポッド、分岐ナノ構造、分岐ナノ結晶、及び分岐テトラポッドが挙げられる。1好適態様では、ナノ構造は球形、略球形及び/又は等方性ナノ粒子(例えばナノドット及び/又は量子ドット)を含む。被覆ナノ構造は約10nm未満、場合により約8nm、5nm、又は4nm未満の少なくとも1個の寸法(例えば、被覆ナノ構造の直径)をもつ。本発明の所定態様では、被覆ナノ構造の直径は約2nm〜約6nm、例えば2〜4nmである。
【0010】
ナノ構造のコーティングとしては多数のリガンド組成物を使用することができる。1分類の態様では、第2のコーティングは酸化物(例えばSiO)を含む。所定態様では、第1のコーティングは酸化シリコンケージ錯体を含む第1の成分と、1個以上のナノ構造結合部分を含む第2の成分を含む。ナノ構造結合部分の例としてはプロトン化又は脱プロトン化形態のホスホン酸、ホスフィン酸、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、アミン、アルコール、アミド、及び/又はチオール部分が挙げられる。好ましいナノ構造結合部分としてはホスホン酸、ホスフィン酸、カルボン酸、スルホン酸、及びスルフィン酸のエステル部分が挙げられる。一般に、ナノ構造結合部分は独立して例えばケージの酸素又はシリコン原子を介して酸化シリコンケージ錯体と結合している。
【0011】
所定態様では、被覆ナノ構造は第1のコーティングとしてシルセスキオキサン組成物を含む。シルセスキオキサンは閉じたケージ構造又は部分的に開いたケージ構造とすることができる。場合により、酸化シリコンケージ錯体(例えばシルセスキオキサン)は1個以上のボロン、メチル、エチル、炭素原子数3〜22(又はそれ以上)の分岐もしくは直鎖アルカンもしくはアルケン、イソプロピル、イソブチル、フェニル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、イソオクチル、ノルボルニル、及び/又はトリメチルシリル基、電子求引基、電子供与基、又はその組み合わせで誘導体化されている。1代替態様では、個別シリケートを第1のコーティング組成物で使用する。第1のコーティングとして使用することができる個別シリケートの1例はホスホシリケートである。硬化後に、酸化シリコンケージ錯体の第1のコーティングは一般に酸化シリコン(例えばSiO)を含む第2の剛性コーティングに変換される。
【0012】
本発明の組成物で使用されるコーティングは一般にその初期(即ち変換前又は硬化前の)状態における第1の特性と、第2の変換後又は硬化後状態における別の第2の特性を示す。変換又は硬化後に別の電気的特性をもつコーティングの例として、第1の電気的特性は導電性であり、第2の電気的特性は非導電性である(又はその逆)。同様に、第1の状態における材料を電子伝導体又は中性材料とし、第2の状態における材料を正孔伝導体とすることができる。あるいは、光学的特性に関する態様では、第1の光学的特性と第2の光学的特性は例えば可視光に対する不透過性と透過性とすることができる。あるいは、第1の光学的特性を第1の波長における光吸収(又は透過又は発光)とし、第2の光学的特性を第2の波長における光吸収(又は透過又は発光)とすることができる。あるいは、構造的特性に関する態様では、第1の状態における材料を弾性分子とし、第2の状態を剛性(多孔質又は中実)シェルとすることができる。1分類の態様では、第1の物理的特性は例えば選択溶媒に対する溶解性を含み、第2の電気的特性は非導電性を含む。コーティングの変換は例えば加熱及び/又は放射線照射により実施することができる。
【0013】
本発明は複数の個別被覆ナノ構造を含むアレイも提供する。1好適態様では、メンバーナノ構造は>約1×1010/cm、>約1×1011/cm、より好ましくは>約1×1012/cm又は>約1×1013/cmの密度で存在している。場合により、メンバーナノ構造はシリコンウェーハ等の基板の表面と結合している。所定態様では、メンバーナノ構造は基板表面との結合前に封入され、他の態様では、メンバーナノ構造の第1の部分が基板と結合しており、メンバーナノ構造の第2の部分が第1のコーティング又は第2のコーティングと結合している。場合により、基板の表面は例えばナノ構造表面の一部と結合するために第2のナノ構造結合部分とカップリングした表面結合リガンドを含む。例えば、シリコンウェーハの場合には、シラン部分が基板又は表面上の結合リガンドとして機能する。
【0014】
本発明の別の特徴は複数の個別被覆ナノ構造を含むデバイスである。本発明の個別被覆ナノ構造を組込むことができるデバイスの例としては限定されないが、電荷保存デバイス、メモリーデバイス(例えばフラッシュメモリーデバイス)、及び光起電力デバイスが挙げられる。
【0015】
別の側面では、本発明は複数のナノ構造と、各メンバーナノ構造を分離するコーティングをもつ被覆ナノ構造含有組成物を提供する。コーティングはメンバーナノ構造の表面に結合した複数のナノ構造結合部分を含み、ナノ構造結合部分とメンバーナノ構造の表面の結合後に、コーティングを第2のコーティング(例えば絶縁シェル;第1のコーティングも場合により絶縁性である)に変換することができる。場合により、第2のコーティング又は「シェル」は隣接メンバーナノ構造間にスペーシング(例えば選択もしくは規定された距離、又は剛性スペーシング)を提供する非弾性構造である。例えば、使用するコーティングに応じて、所与被覆ナノ構造の直径(又は充填アレイにおける隣接ナノ構造間の中心間距離)は例えば約1〜約100nm、又は場合により約1nm〜約50nmとすることができる。好適側面では、より高い充填密度が望ましいので、ナノ構造間の距離は場合により約1nm〜約10nm、約3nm〜約10nm、より好ましくは約2nm〜約6nm、例えば約3〜約5nm又は約2nm〜約4nmである。高い充填密度を維持しながら許容可能な絶縁を提供する厚さ又はコーティング厚が好ましい所定側面では、被覆ナノ構造の直径は約2nm〜約6nm、又は場合により約3.5nm(以下)である。
【0016】
所定態様では、絶縁シェルは隣接もしくは近接メンバーナノ構造間、又はナノ構造と別の隣接もしくは近接材料もしくは基板の間の(例えば側方)電荷拡散又は透過を低減又は防止する。あるいは、シェルは光や熱等の他の型の透過を低減又は防止することができる。1分類の態様では、絶縁シェルはメンバーナノ構造間の電荷拡散速度を低減し、その結果、電子がメンバーナノ構造間を飛び移る平均時間は所定時間よりも長くなる(例えば1ミリ秒、1秒、1分、1時間、1日、1カ月、又は1年以上)。
【0017】
本発明の組成物で使用することができるナノ構造結合部分としては限定されないが、1個以上のホスホン酸エステル、ホスホン酸、カルボン酸もしくはエステル、アミン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、スルホン酸、スルフィン酸、アルコール、エポキシド、アミド又はチオール部分が挙げられる。絶縁シェルを形成するために使用されるコーティングは有機、又は無機、又はハイブリッド有機/無機組成物とすることができる。本発明の所定態様では、ナノ構造結合コーティングは1個以上のシルセスキオキサン又は個別シリケート等の酸化シリコンケージ錯体を含む。
【0018】
例えばナノ構造の種類、メンバーナノ構造の密度、基板との結合、デバイスへの組込み、及び/又は同等事項に関して上記態様について記載した原則的に全特徴がこれらの態様にも当てはまる。組成物は場合によりトップコート組成物を含み、例えばコーティング又は絶縁シェルと同一材料を含む組成物が挙げられる。
【0019】
別の態様では、本発明は剛性SiOシェルで包囲された複数の個別ナノ構造も提供し、メンバーナノ構造:シェル構造体(即ちメンバーナノ構造とそのシェル)の直径は約10nm未満(又は場合により約8nm未満、約6nm未満、約4nm未満、又は約3.5nm未満)であるか、及び/又はメンバーナノ構造は>1×1010/cm、又は場合により>約1×1011/cm、約1×1012/cm、又は約1×1013/cm以上の密度で存在している。メンバーナノ構造は場合によりアレイ状(例えば規則的又は不規則アレイ状)に配置されている。例えばナノ構造の種類、基板との結合、デバイスへの組込み、トップコート、及び/又は同等事項に関して上記態様について記載した原則的に全特徴がこれらの態様にも当てはまる。
【0020】
本発明は複数の個別被覆ナノ構造をもつデバイス、システム、組成物、フィルム等も提供する。本発明の個別被覆ナノ構造を組込んで使用することができるデバイスの1例はメモリーデバイス(例えばフラッシュメモリーデバイス)である。1好適態様では、フラッシュメモリーデバイスは剛性SiOで包囲された複数の個別ナノ構造を含み、メンバーナノ構造の直径は約6nm未満であり、メンバーナノ構造は約1×1010/cmを上回る密度、より好ましくは1×1012/cmを上回る密度で存在している。他のデバイス例としては電荷保存デバイスと光起電力デバイスが挙げられる。
【0021】
別の側面では、本発明はナノ構造上の堆積後シェル方法を提供する。本方法は第1の表面と結合しており、剛性シェルに変換することが可能なリガンド組成物をもつ1個以上のナノ構造を提供する段階と、リガンド組成物を変換又は硬化させ、ナノ構造の第1の表面に剛性シェルを生成することにより、リガンド組成物の堆積後にシェルを形成する段階を含む。リガンド組成物は例えば本明細書に記載する任意のものとすることができる。
【0022】
ナノ構造は当分野で公知の多数の技術の任意のものにより1個以上のナノワイヤー、ナノロッド、ナノチューブ、分岐ナノ構造、分岐ナノ結晶、ナノテトラポッド、ナノトライポッド、ナノバイポッド、ナノ結晶、ナノドット、量子ドット、ナノ粒子、又は分岐テトラポッド(又はその組み合わせ)を合成することにより提供することができる。所定態様では、1個以上のナノ構造を提供する段階は、10nm未満、約5nm未満、又は2〜4nm又はそれ以下の少なくとも1個の寸法をもつ半導体ナノ結晶又は金属ナノ結晶を提供する段階を含む。
【0023】
1分類の態様では、第1の表面と結合したリガンド組成物をもつナノ構造は第1の表面と結合した1種以上の界面活性剤をもつ1個以上のナノ構造を提供する段階と、界面活性剤をリガンド組成物と交換する段階により提供される。界面活性剤を交換する段階は種々の方法により実施することができる。例えば、ナノ構造を有機溶媒に懸濁又は溶解する段階と、懸濁したナノ構造をリガンド組成物と混合することにより、第1の表面の界面活性剤をリガンド組成物と交換する段階により、界面活性剤(例えばカルボン酸、脂肪酸、ホスフィン及び/又はホスフィンオキシド)を「質量作用」効果により交換することができる。この段階に使用することができる有機溶媒としては限定されないが、トルエン、クロロホルム、クロロベンゼン、及びその組み合わせが挙げられる。あるいは、低温有機物ストリッピング法を実施した後に(例えばUVオゾン発生、RF単原子酸素発生、又は酸素ラジカル発生により提供される)反応性酸素種により酸化する等の各種技術により界面活性剤をin situ(例えば基板堆積後に)除去することもできる。その後、ストリッピングしたナノ構造とリガンド組成物を結合することができる。代替分類の態様では、リガンド組成物の存在下でナノ構造を合成し、従って、界面活性剤交換段階は不要である。
【0024】
本発明の方法はリガンド組成物を変換又は硬化させ、リガンド交換したナノ構造の第1の表面に第2のコーティング(例えば所定態様では、剛性及び/又は絶縁シェル)を生成する段階を含む。1好適態様では、硬化段階はナノ構造に劣化又は他の損傷を生じない温度にリガンド組成物と結合したナノ構造を加熱することにより実施される。本発明のナノ構造含有組成物では、硬化は一般に約500℃未満の温度で実施される。所定態様では、加熱工程は200〜350℃で実施される。硬化工程の結果、第2のコーティング又はシェル(例えばナノ構造の第1の表面上の薄い中実マトリックス)が形成される。シェルは例えば導電性組成物、電気絶縁性組成物、光透過性組成物、光不透過性組成物、又はこれらにの特徴の組み合わせを含むことができる。1好適態様では、第2のコーティングはガラス又はガラス様組成物(例えばSiO)を含む剛性絶縁シェルである。
【0025】
硬化段階は場合によりナノ構造を酸化雰囲気中で加熱することにより実施される。ナノ構造が金属を含む態様では、酸化雰囲気中でナノ構造を加熱すると、金属を金属酸化物に変換することができる。金属酸化物は例えばナノ構造を処理(例えばナノ構造を約200℃〜約750℃、又は750℃を上回る温度に暴露)後にナノ構造を還元雰囲気中で加熱するか、及び/又はナノ構造に誘電体を配置することにより、場合により金属に変換することができる。
【0026】
場合により、本発明の方法で使用されるナノ構造は例えば第2のナノ構造表面を介して基板とカップリングされる。各種基板を使用することができるが、基板の1例はシリコン基板、例えばシリコンウェーハ(例えば酸化シリコンコーティングをもつか又はもたないもの)である。基板の別の例はシリコンウェーハ、透過型電子顕微鏡(TEM)グリッド、又は他の適切な基板上の窒化シリコン表面である。所定態様では、被覆ナノ構造は第2のナノ構造表面(例えばリガンド組成物と接触していない表面の一部)を介してカップリングされる。
【0027】
場合により、本発明の方法は基板にカップリングした1個以上のナノ構造に平坦化組成物(例えばスピンオンガラス平坦化組成物)を付加する段階を更に含む。この選択的段階は硬化段階の前後のどちらに実施してもよいが、リガンドを硬化して剛性シェルとした後に平坦化組成物を付加することが好ましい。
【0028】
別の側面では、本発明は本明細書に記載する方法により製造された堆積後形成された剛性シェルをもつナノ構造を提供する。所定の好適態様では、剛性シェルはシリコン(例えば、SiO)及び/又はボロン(例えばB)を含む。
【0029】
本発明はナノ構造の可逆的変性方法も提供する。本方法では、金属を含む1個以上のナノ構造を提供する。金属を酸化して金属酸化物を生成し、ナノ構造を処理する。次に金属酸化物を還元して金属を得る。金属はナノ構造を酸化雰囲気(例えば酸素を含む雰囲気)中で加熱することにより酸化することができる。一般に約200℃〜約700℃(例えば約200℃〜約500℃)の温度までナノ構造を加熱する。同様に、金属酸化物はナノ構造を還元雰囲気(例えば水素を含む雰囲気、例えばフォーミングガス)中で加熱することにより還元することができる。
【0030】
本発明の上記及び他の目的と特徴は添付図面と併せて以下の詳細な記載からより十分に理解されよう。
(定義)
【0031】
本発明を詳細に記載する前に、本発明は特定デバイス又はシステムに限定されず、当然のことながら種々のものに適用できると理解すべきである。同様に、本明細書で使用する用語は特定態様のみの説明を目的とし、限定的でないことも理解すべきである。本明細書と特許請求の範囲で使用する単数形はそうでないことが内容から明白である場合を除き、複数形も含む。従って、例えば「ナノ構造」と言う場合には2個以上のナノ構造の組み合わせを含み、「リガンド組成物」と言う場合にはリガンド混合物を含み、他の用語についても同様である。
【0032】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全科学技術用語は本発明が属する分野の当業者に通常理解されている通りの意味をもつ。本発明の試験の実施には本明細書に記載するものに類似又は等価の任意方法及び材料を使用することができるが、好ましい材料と方法は本明細書に記載する。本発明の記載及び特許請求の範囲において、以下の用語は以下の定義に従って使用する。
【0033】
本明細書で使用する「ナノ構造」なる用語は約500nm未満、例えば約100nm未満、約50nm未満、又は約10nmもしくは約5nm未満の寸法の少なくとも1個の領域又は特徴的寸法をもつ構造を意味する。一般に、前記領域又は特徴的寸法は構造の最短軸方向である。このような構造の例としては、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノチューブ、分岐ナノ結晶、ナノテトラポッド、トライポッド、バイポッド、ナノ結晶、ナノドット、量子ドット、ナノ粒子、分岐テトラポッド(例えば無機デンドリマー)等が挙げられる。ナノ構造は実質的に均質な材料特性とすることができるが、所定態様では不均質(例えばヘテロ構造)でもよい。ナノ構造は例えば実質的結晶、実質的単結晶、多結晶、金属、ポリマー、非晶質、又はその組み合わせとすることができる。ナノ構造は例えば金属、半導体、絶縁体、又はその組み合わせを含むことができる。1側面では、ナノ構造の三次元の各々が約500nm未満、例えば約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約10nm未満、又は約5nm未満の寸法をもつ。
【0034】
ナノ構造に関して使用する場合に「結晶」又は「実質的結晶」なる用語はナノ構造が一般に構造の1個以上の寸法に長距離秩序を示すという事実を意味する。当業者に自明の通り、単結晶の秩序は結晶の境界を越えることができないので、「長距離秩序」なる用語は特定ナノ構造の絶対寸法に依存する。この場合、「長距離秩序」はナノ構造の寸法の少なくとも大部分にわたる実質的秩序を意味する。場合により、ナノ構造は酸化物又は他のコーティングをもつこともできるし、コアと少なくとも1個のシェルから構成することもできる。このような場合には、当然のことながら、酸化物、シェル、又は他のコーティングはこのような秩序を示す必要はない(例えば非晶質、多結晶等でもよい)。このような場合には、「結晶」、「実質的結晶」、「実質的単結晶」、又は「単結晶」なる用語はナノ構造の中心コアを意味する(コーティング層又はシェルを除く)。本明細書で使用する「結晶」又は「実質的結晶」なる用語は、構造が実質的長距離秩序(例えばナノ構造又はそのコアの少なくとも1本の軸の長さの少なくとも約80%にわたる秩序)を示す限り、各種欠陥、積層欠陥、原子置換等も含むものとする。更に、当然のことながら、ナノ構造のコアと外側又はコアと隣接シェル又はシェルと第2の隣接シェルの間の界面は非結晶領域を含んでいてもよく、非晶質でもよい。この場合も、本明細書の定義によるとナノ構造は結晶又は実質的結晶である。
【0035】
ナノ構造に関して使用する場合に「単結晶」なる用語はナノ構造が実質的結晶であり、実質的に単結晶を含むことを意味する。コアと1個以上のシェルを含むナノ構造ヘテロ構造に関して使用する場合に「単結晶」とはコアが実質的結晶であり、実質的に単結晶を含むことを意味する。
【0036】
「ナノ結晶」とは実質的単結晶のナノ構造である。従って、ナノ結晶は約500nm未満、例えば約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、又は約20nm未満の寸法の少なくとも1個の領域又は特徴的寸法をもつ。「ナノ結晶」なる用語は各種欠陥、積層欠陥、原子置換等を含む実質的単結晶ナノ構造と、前記欠陥、積層欠陥、又は置換等のない実質的単結晶ナノ構造を含むものとする。コアと1個以上のシェルを含むナノ結晶ヘテロ構造の場合には、ナノ結晶のコアは一般に実質的単結晶であるが、シェルはそうである必要はない。1側面では、ナノ結晶の三次元の各々が約500nm未満、例えば約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、又は約20nm未満の寸法をもつ。ナノ結晶の例としては限定されないが、実質的球形ナノ結晶、分岐ナノ結晶、並びに実質的単結晶ナノワイヤー、ナノロッド、ナノドット、量子ドット、ナノテトラポッド、トライポッド、バイポッド、及び分岐テトラポッド(例えば無機デンドリマー)が挙げられる。
【0037】
「実質的球形ナノ結晶」とは縦横比が約0.8〜約1.2のナノ結晶である。
【0038】
「ナノロッド」とは1本の主軸が他の2本の主軸よりも長いナノ構造である。従って、ナノロッドは縦横比が1よりも大きい。本発明のナノロッドは一般に縦横比が約1.5〜約10であるが、>約10、>約20、>約50、>約100、又は>約10,000の縦横比でもよい。長いナノロッド(例えば縦横比が約10を越えるもの)をナノワイヤーと言う場合もある。ナノロッドの直径は一般に約500nm未満、好ましくは約200nm未満、より好ましくは約150nm未満、最も好ましくは約100nm、約50nm、又は約25nm未満、あるいは約10nm又は約5nm未満である。ナノロッドは直径が変動してもよいし、実質的に均一な直径、即ち最大変動領域の変動が約20%未満(例えば約10%未満、約5%未満、又は約1%未満)の直径でもよい。ナノロッドは一般に実質的結晶及び/又は実質的単結晶であるが、例えば多結晶又は非晶質でもよい。
【0039】
「分岐ナノ構造」とは3本以上のアームをもち、各アームがナノロッドの特徴をもつナノ構造、又は2本以上のアームをもち、各アームがナノロッドの特徴をもち、アームと異なる結晶構造をもつ中心領域から延びているナノ構造である。例としては限定されないが、夫々2、3、又は4本のアームをもつナノバイポッド(バイポッド)、ナノトライポッド(トライポッド)、及びナノテトラポッド(テトラポッド)が挙げられる。
【0040】
「ナノテトラポッド」とは一般に中心領域又はコアから延びる4本のアームをもつ四面体分岐ナノ構造であり、任意2本のアーム間の角度は約109.5°である。一般に、コアは結晶構造をもち、アームは別の結晶構造をもつ。
【0041】
「ナノ粒子」とは縦横比が約1.5未満の任意ナノ構造である。ナノ粒子は任意形状とすることができ、例えば、ナノ結晶、実質的球形粒子(縦横比約0.9〜約1.2)、及び不規則形状粒子が挙げられる。ナノ粒子は非晶質、結晶質、部分結晶、多結晶等とすることができる。ナノ粒子は実質的に均質な材料特性とすることができるが、所定態様では不均質(例えばヘテロ構造)でもよい。ナノ粒子は原則的に任意の1種以上の利用し易い材料から製造することができる。
【0042】
「縦横比」とはナノ構造の第1の軸の長さをナノ構造の第2の軸と第3の軸の長さの平均で割った値であり、ここで第2の軸と第3の軸は相互にほぼ等しい長さの2本の軸である。例えば、完璧なロッドの縦横比はその長軸の長さを長軸に垂直(直角)な横断面の直径で割った値である。
【0043】
本明細書で使用するナノ構造の「直径」とはナノ構造の第1の軸に垂直な横断面の直径を意味し、第1の軸は第2及び第3の軸に対する長さの差が最大である(第2及び第3の軸は相互にほぼ等しい長さの2本の軸である)。第1の軸は必ずしもナノ構造の最長軸ではなく、例えばディスク形ナノ構造では、横断面はディスクの短い長軸に垂直な実質的に円形の横断面である。横断面が円形でない場合には、直径は横断面の長軸と短軸の平均である。ナノワイヤーやナノロッド等の縦横比の大きいナノ構造では、直径は一般にナノワイヤー又はナノロッドの最長軸に垂直な横断面の両端で測定される。量子ドット等の球形ナノ構造では、直径は球の中心を通る表面間で測定される。
【0044】
本明細書で使用する「コーティング」なる用語はナノ構造の表面等の表面に付加されたリガンドを意味する。コーティングはコーティングが付加された構造を完全又は部分的に封入することができる。更に、コーティングは多孔質でも中実でもよい。
【0045】
「光学的特性」なる用語はフォトンの透過又は発生に関する物理的特徴を意味する。
【0046】
同様に、「電気的特性」なる用語は電子(又は正孔)の透過又は発生に関する物理的特徴を意味する。
【0047】
「高密度充填」又は「高密度」なる用語は1cm当たりナノ構造約1012個以上の密度を意味する。
【0048】
「有機基」とは少なくとも1個の炭素−水素結合を含む化学基である。
【0049】
「炭化水素基」とは炭素原子と水素原子から構成される化学基である。
【0050】
「アルキル基」とは直鎖、分岐、又は環状飽和炭化水素部分を意味し、全位置異性体を含み、例えばメチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル及び1−エチル−2−メチルプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル等が挙げられる。アルキル基は例えば置換されていてもよいし、いなくてもよい。
【0051】
「アルケニル基」とは1個以上の炭素−炭素二重結合を含む直鎖、分岐、又は環状不飽和炭化水素部分を意味する。アルケニル基の例としては、エテニル、2−プロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−メチル−2−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−メチル−2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、2−メチル−3−ブテニル、3−メチル−3−ブテニル、1,1−ジメチル−2−プロペニル、1,2−ジメチル−2−プロペニル、1−エチル−2−プロペニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、1−メチル−2−ペンテニル、2−メチル−2−ペンテニル、3−メチル−2−ペンテニル、4−メチル−2−ペンテニル、1−メチル−3−ペンテニル、2−メチル−3−ペンテニル、3−メチル−3−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−メチル−4−ペンテニル、2−メチル−4−ペンテニル、3−メチル−4−ペンテニル、4−メチル−4−ペンテニル、1,1−ジメチル−2−ブテニル、1,1−ジメチル−3−ブテニル、1,2−ジメチル−2−ブテニル、1,2−ジメチル−3−ブテニル、1,3−ジメチル−2−ブテニル、1,3−ジメチル−3−ブテニル、2,2−ジメチル−3−ブテニル、2,3−ジメチル−2−ブテニル、2,3−ジメチル−3−ブテニル、3,3−ジメチル−2−ブテニル、1−エチル−2−ブテニル、1−エチル−3−ブテニル、2−エチル−2−ブテニル、2−エチル−3−ブテニル、1,1,2−トリメチル−2−プロペニル、1−エチル−1−メチル−2−プロペニル、1−エチル−2−メチル−2−プロペニル等が挙げられる。アルケニル基は置換されていてもよいし、いなくてもよい。
【0052】
「アルキニル基」はと1個以上の炭素−炭素三重結合を含む直鎖、分岐、又は環状不飽和炭化水素部分を意味する。代表的なアルキニル基としては、例えば2−プロピニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−メチル−2−プロピニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−メチル−2−ブチニル、1−メチル−3−ブチニル、2−メチル−3−ブチニル、1,1−ジメチル−2−プロピニル、1−エチル−2−プロピニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル、1−メチル−2−ペンチニル、1−メチル−3−ペンチニル、1−メチル−4−ペンチニル、2−メチル−3−ペンチニル、2−メチル−4−ペンチニル、3−メチル−4−ペンチニル、4−メチル−2−ペンチニル、1,1−ジメチル−2−ブチニル、1,1−ジメチル−3−ブチニル、1,2−ジメチル−3−ブチニル、2,2−ジメチル−3−ブチニル、3,3−ジメチル−1−ブチニル、1−エチル−2−ブチニル、1−エチル−3−ブチニル、2−エチル−3−ブチニル、1−エチル−1−メチル−2−プロピニル等が挙げられる。アルキニル基は置換されていてもよいし、いなくてもよい。
【0053】
「アリール基」なる用語は芳香族基を含むか又は芳香族基から構成される化学置換基を意味する。アリール基の例としては例えばフェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、アルキル−アリール基等が挙げられる。アリール基は場合により複数の芳香族環を含む(例えばジフェニル基等)。アリール基は例えば置換されていてもよいし、いなくてもよい。「置換アリール基」において、少なくとも1個の水素は1個以上の他の原子で置換されている。
【0054】
「アルキル−アリール基」なる用語はアルキル部分とアリール部分を含む基を意味する。
【0055】
「ヘテロ原子」とは炭素又は水素原子以外の任意原子を意味する。例としては限定されないが、酸素、窒素、硫黄、リン、及びボロンが挙げられる。
【0056】
「界面活性剤」とはナノ構造の1個以上の表面と(強弱を問わずに)相互作用することが可能な分子である。
【0057】
本明細書で使用する「約」なる用語は所与量の値が記載値の+/−10%、又は場合により記載値の+/−5%、又は所定態様では記載値の+/−1%の範囲内であることを意味する。
【0058】
その他の各種用語は本明細書中に定義するか又は他の方法で特徴を述べる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
エネルギー障壁の高さ及び/又は量子閉じ込めを改善したナノ構造を提供する方法及び組成物は多くのエレクトロニクス用途に利用できる。これらの優れた特性をもつナノ構造は例えばマイクロエレクトロニクスの分野における量子化電荷保存及び/又は転送、又はフォトニクスにおけるフォトン発生及び転送に使用することができる。例えば、フラッシュメモリーデバイス等のソリッドステート保存デバイスは個別読み書き特性をもつ保存媒体を使用する。量子ドット等の細密充填個別ナノ構造に電荷を保存することにより高い保存容量を実現することができる。特に、個別及び/又は量子化電荷保存と、フォトン発生及び転送で使用するには高密度で十分に充填するナノ構造(例えばナノドット又は量子ドット等の球形、略球形、及び/又は等方性構造をもつもの)と量子閉じ込め特性の改善が特に有望である。
【0060】
ドット間のクロストーク(即ちナノ構造間の電子相互作用による信号干渉)はデバイス性能の低下につながる。しかし、本発明はナノ構造間の距離を制御することにより及び/又は個別ナノ構造の周囲に二酸化シリコン等の絶縁性又は誘電性コーティング材料を導入することにより、量子閉じ込めを維持又は改善しながら、ナノ構造電荷保存エレメントを(例えば1×1010/cm以上の密度、更には例えば1×1012/cm以上の密度に)細密充填することが可能な組成物、方法及びデバイスを提供する。
【0061】
例えば、電荷保存エレメントとしてのナノ構造の使用に関する2つの大きな問題は適切な表面特性を付加することと、選択されたナノ構造を規則的又は不規則的単層に充填することである。高密度データ保存用途では、ナノ構造を1個以上の細密充填規則的単層として提供することが好ましい。半導体ナノ結晶の場合には、ナノ結晶上の脂肪族界面活性剤と芳香族結合有機材料の間の相分離と、スピンコーティングによる堆積を利用することにより、CdSeの六方充填単層が当分野で製造されている。しかし、メモリーデバイス製造工程で有機マトリックス内に(又はその上部に)ナノ結晶を埋め込むことは望ましくない。そこで、本発明は1態様において各種自己集合法により製造され、電荷保存用途に適合可能なシルセスキオキサン又はシリケートリガンド表面リガンドをもつ量子ドット単層を提供する。
【0062】
ナノ構造間に選択された距離を維持するには、ナノ構造表面と結合したリガンド又はコーティングを使用することができる。リガンド−ナノ構造複合体の寸法、従って隣接するナノ構造間の距離は結合するリガンドの組成を変えることにより種々の用途に合わせて変えることができる。従って、リガンドの寸法を使用してナノ構造含有基板又はマトリックスの製造中にドット間スペーシングを制御することができる。
【0063】
更に、第2の所望特性(例えば誘電性)をもつ第2のコーティングに変換可能なリガンドコーティングを導入することにより、ナノ構造組成物の物理的特性を調節することもできる。例えば、本発明の所定態様では、例えばナノ結晶間のクロストークを低減するために、その「処理後」又は硬化状態の被覆ナノ結晶を第2の二酸化シリコン含有コーティング又はシェルで絶縁する。他の望ましい特性としては限定されないが、該当用途に応じて展性、剛性、耐熱性、伝導性、透明性、及び不透明性(不透過性)が挙げられる。更に、第2のコーティングに変換後にナノ構造組成物のHOMO又は原子価結合レベルを変化させるリガンド組成物を本発明の組成物に加えてもよい。
【0064】
以上、例えば不揮発性メモリー等の電荷保存用途における電荷絶縁及び/又はナノ構造スペーシングについて主に記載したが、本明細書の開示から当業者に自明の通り、本発明、及び/又はその個々の各種側面又はその組み合わせはこれらの特定用途により例示されるよりも遥かに広い範囲に適用できる。特に、in situ、又は他の所望時(例えばナノ構造の特性を変化させるためにはナノ構造と結合後)に変換できる変換可能なコーティングを提供又は付加できるため、広く適用可能な価値がある。例えば、堆積後に第2の光学的特性に変換することができる第1の光学的特性を提供するコーティング材料を使用して光学コーティングを堆積することができる。更に、ある形態で操作し易いコーティングをナノ構造と個々に結合し、コーティングをナノ構造に均質又は他の所望様式で被覆したまま、後で変換できるため、従来記載されているナノ構造コーティング方法よりも著しく有利である。
(個別被覆ナノ構造)
【0065】
本発明は個別被覆ナノ構造を含む方法及び組成物を提供する。これらのナノ構造はマトリックスに埋め込まれたナノ構造と異なり、各被覆ナノ構造が合成後又はその後の付加後に周囲のマトリックスと隣接していないコーティングにより提供される規定境界をもつ。説明し易くするために、本明細書ではコーティング材料を一般に「リガンド」と言うが、これはこのようなコーティングが一般にナノ構造の表面と個々の相互作用(例えば共有、イオン、ファン・デル・ワールス、又は他の特定分子相互作用を)もつ分子を含むという意味である。本発明は個々のナノ構造が直接接触又は他の望ましくない接続(例えば電気接続)をしないように第1のコーティングが第2のコーティングに変換された複数の個別被覆ナノ構造も提供する。更に、被覆ナノ構造の第2のコーティング(シェル)成分は当分野で公知の典型的コア:シェル型ナノ構造とは異なり、多くの場合には非結晶質である。場合により、被覆ナノ構造(例えばナノ構造:コーティング構造体)の直径は約10nm未満、場合により約5nm未満、約4nm未満、又は約3.5nm未満である。
【0066】
本発明の個別被覆ナノ構造は第1の表面をもつ個々のナノ構造と、個々のナノ構造の第1の表面と結合しており、第1の光学的、電気的、物理的又は構造的特性をもつ第1のコーティングを含み、第1のコーティングは第1のコーティングと異なる電気的、光学的、構造的及び/又は他の物理的特性をもつ第2のコーティングに変換可能である。所定態様では、第1のコーティングはナノ構造を封入している(即ち被覆されるナノ構造を完全に包囲している)。他の態様では、ナノ構造は部分的に封入されている。例えば、第1のコーティングは別の組成物と結合していないナノ構造の部分(例えば基板の表面)を被覆することができる。
(複数の被覆ナノ構造)
【0067】
本発明は各メンバーナノ構造を分離する第1のコーティングをもつ複数のナノ構造をもつ被覆ナノ構造含有組成物も提供する。一般にコーティングはコーティングをメンバーナノ構造の表面に結合するために使用される複数のナノ構造結合部分をもつ。第1のコーティングはその後、元のコーティングと異なる少なくとも1種の特性をもつ第2のコーティング又はシェル、例えば電気的、光学的、化学的及び/又は構造的に異なるコーティング、例えば導電性(又は少なくとも非絶縁性)に対して絶縁性、又は展性に対して剛性等のコーティングに変換することができる。本明細書に記載する絶縁コーティング(又は絶縁シェル)は非導電性(例えば誘電性)材料を含む。絶縁シェルは一般に少なくとも短時間実質的電荷転送を防止することができ、例えば、絶縁シェルは電子がメンバーナノ構造間を飛び移る平均時間が少なくとも1ミリ秒、又は場合により少なくとも10ミリ秒、少なくとも100ミリ秒、少なくとも1秒、少なくとも1分、少なくとも1時間、少なくとも1日、少なくとも1カ月、又は少なくとも1年以上となるように、メンバーナノ構造間の電荷拡散速度を低下させることができる。場合により、電荷転送は1ミリ秒から少なくとも1秒、1分、1時間、1日、1年又はそれ以上までの所定時間実質的に防止される(例えば絶縁ナノ構造を含むデバイスは印加電荷を維持することができる)。本発明によると、例えばシェル成分を含む合成ナノ結晶とは対照的に変換可能なコーティングメカニズムを提供することにより、例えばより小型のコア−シェル構造や潜在的によりコヒーレントなシェル層を提供し、このようなナノ結晶が層(例えば単層)状に配置される場合により高い充填密度を実現する等の多数の利点が得られる。所定態様では、約1×1010/cmの密度で複数のナノ構造を提供すれば十分である。しかし、好適態様では、ナノ構造含有組成物中の複数のナノ構造は約1×1011/cm以上、又は約1×1012/cm以上、より好ましくは約1×1013/cm以上の密度で存在する。
【0068】
場合により、(例えば選択された密度の)複数の個別被覆ナノ構造は単層として提供される。しかし、所定態様では、複数のナノ構造は各々独立して選択又は所望密度のメンバーナノ構造をもつ複数の単層を含む。
【0069】
1好適態様では、複数の被覆ナノ構造は各種高密度データ保存用途で電荷保存エレメントとして機能する。これらの用途で複数の被覆ナノ構造を使用する際の2つの要件は適切な表面特性の選択と、ナノ構造を単層アレイ状、場合により十分に規則的な単層アレイ状に細密充填することである。Bulovicら(Coeら2002 “Electroluminescence from single monolayers of nanocrystals in molecular organic devices” Nature 420:800−803)により示されているように、ナノ結晶上の脂肪族界面活性剤とスピンコーティングによりナノ結晶に堆積された芳香族結合有機材料の間の相分離を利用することにより、CdSe型半導体ナノ結晶の六方充填単層を作製することができる。しかし、メモリーデバイス製造工程で40nm厚有機マトリックス内に(又はその上部に)埋め込まれたナノ結晶組成物は望ましくない。特に、(良導性)有機マトリックスの厚みにより十分な量子閉じ込めが得られず、デバイスの読み/書き効率及び予測可能性が低下するという問題がある。更に、有機層は典型的なメモリー製造技術に適合できない。そこで、本発明は電荷保存用途に適合し易い被覆ナノ構造を提供する。特定の好適態様では、本発明の複数の被覆ナノ構造はシルセスキオキサン又はシリケートリガンド表面リガンドをもつナノドットの1個以上の単層を含む。これらは例えば本明細書に記載するような各種自己集合法により製造することができ、硬化後に得られたナノ構造は二酸化シリコン含有リガンドの第2のコーティングにより絶縁されている。特に、第2の酸化物コーティングはナノ構造間のクロストークを低減するという利点がある。
(コーティング及び関連特性)
【0070】
本発明の組成物、デバイス及び方法で第1のコーティングとして使用されるリガンドは1種(以上)の選択又は所望特性をもつ第2のコーティングを生成するための手段として作製される。第2のコーティングは第1のコーティングに比較して剛性、溶解性、及び/又は光学的特性(屈折率、発光及び/又は吸収特性)の変化等の異なる電気的、光学的、物理的又は構造的状態を提供する。本発明で使用するには各種のコーティング組成物が考えられる。例えば、コーティングは例えば架橋、付加的な重合等により別の(第2の)コーティング組成物に化学的手段又は放射線により変換することが可能な各種ポリマー前駆体等の有機組成物とすることができる。有機組成物の例としては限定されないが、デンドリマーPAMAM(アミンデンドリマー)、アミン(又は他のナノ結晶結合ヘッド基)を末端にもつメタクリル酸メチル(ポリメチルメチクリル酸前駆体)、リン酸ヘッド基含有ポリマー、カルボン酸を末端にもつジエン又はジアセチレン組成物、化学、熱又は光活性化後にポリマーに変換可能な任意ヘテロ原子含有モノマー、及びWhitefordらによりUSSN10/656,910(出願日2003年9月4日,発明の名称“Organic Species that Facilitate Charge Transfer to/from Nanostructures”)に記載のリガンドが挙げられる。
【0071】
あるいは、コーティングは無機組成物である。場合により、コーティングはシリコン又は酸化シリコン部分を含む。当業者に自明の通り、本明細書で使用する「酸化シリコン」なる用語は任意酸化度のシリコンを意味するとみなすことができる。従って、酸化シリコンなる用語は化学構造SiO(式中、xは1〜2である)を意味することができる。本発明で使用される無機コーティングとしては限定されないが、酸化錫、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、及び酸化ニオブ、炭化シリコン、硝化シリコン、並びに他のシリコン含有コーティング及び/又はボロン含有コーティングが挙げられる。所定の好適態様では、コーティングは本明細書に記載する酸化シリコンケージ錯体の所定態様等のハイブリッド有機/無機組成物を含む。Schubert(2001)“Polymers Reinforced by Covalently Bonded Inorganic Clusters” Chem.Mater.13:3487−3494;Feher and Walzer(1991)“Synthesis and characterization of vanadium−containing silsesquioxanes” Inorg.Chem.30:1689−1694;Coronado and Gomez−Garcia(1998)“Polyoxometalate−Based Molecular Materials” Chem.Rev.98:273−296;Katsoulis(1998)“A Survey of Applications of Polyoxometalates” Chem.Rev.98:359−387;Muller and Peters(1998)“Polyoxometalates” Very Large Clusters−Nanoscale Magnets” Chem.Rev.98:239−271;Rhuleら(1998)“Polyoxometalates in Medicine” Chem.Rev.98:327−357;Weinstock(1998)“Homogeneous−Phase Electron−Transfer Reactions of Polyoxometalates” Chem.Rev.98:113−170;及びSuzuki(1999)“Recent Advanced in the Cross−Coupling Reactions of Organoboron Derivatives with Organic Electrophiles 1995−1998” J.Organomet.Chem.576:147−168;Sellierら(2003)“Crystal structure and charge order below the metal−insulator transition in the vanadium bronze β−SrV15” Solid State Sciences 5:591−599;Bulgakovら(2000)“Laser ablation synthesis of zinc oxide clusters:a new family of fullerenes?” Chem.Phys.Lett.320:19−25;Citeauら(2001)“A novel cage organotellurate(IV) macrocyclic host encapsulating a bromide anion guest” Chem.Commun.Pp.2006−2007;Gigantら(2001)“Synthesis and Molecular Structures of Some New Titanium(IV) Aryloxides” J.Am.Chem.Soc.123:11623−11637;Liuら(2001)“A novel bimetallic cage complex constructed from six VCo pentatomic rings:hydrothermal synthesis and crystal structure of [(2,2’−PyNH)Co]23” Chem.Commun.Pp.1636−1637;及び“On the formation and reactivity of multinuclear silsesquioxane metal complexes” 2003 Rob W.J.M.Hanssen,Eindhoven University of Technologyの学位論文に記載の組成物も参照。
【0072】
1好適態様では、コーティングはコーティングを堆積し、ナノ構造結合部分をメンバーナノ構造の表面と結合した後に剛性SiO絶縁シェルに変換することができるシリコン含有コーティング(例えば無機又はハイブリッド無機/有機組成物)である。本発明は第2のコーティングが剛性SiOシェルを含み、個別被覆ナノ構造の直径が場合により50nm以下、20nm以下、10nm以下、6nm以下、又は3.5nm以下である被覆ナノ構造を提供する。
【0073】
所定態様では、コーティングは例えば基板結合ナノ構造組成物の製造中に隣接メンバーナノ構造間にスペーシングを提供するために使用することができる(例えば、図3及び4に示す態様参照)。場合により、本発明のコーティングリガンドはナノ構造間(中心間)に約10nm未満、又は場合によりナノ構造中心間に約8nm未満、約5nm未満、もしくは約4nm未満を提供するように被覆ナノ構造を充填できるような寸法である。多くの態様では、コーティングはナノ構造表面間に約8〜10nm、約4〜8nm、又は好ましくは約2〜4nmのスペーシングを提供する(例えばリガンドは長さ1〜2nmである)。
【0074】
1好適態様では、コーティング組成物又は剛性シェルはメンバーナノ構造間の電荷拡散を低減又は防止する。本態様ではシリコン及び/又はボロン酸化物の第2のコーティングに変換可能なコーティング組成物が特に好ましい。
【0075】
場合により、リガンドコーティングを第2のコーティング(一般に第1のコーティングと異なる特性をもつもの)に変換後に、被覆ナノ構造を基板と結合するか、及び/又はトップコート材料を重層する。場合により、トップコーティング材料は第1のコーティング又は第2のコーティングと類似の組成物である。例えば、個別ナノ構造の周囲に剛性SiOシェルを形成後に、同様にSiOに変換可能な組成物を複数のナノ構造に重層し、ナノ構造をシリコンマトリックスに埋め込むことができる。
【0076】
本発明の組成物、デバイス及び方法で第1のコーティングとして使用されるリガンドは1種(以上)の選択又は所望特性をもつ第2のコーティングを生成するための手段として作製される。例えば、フラッシュメモリーデバイスで使用される量子ドットは隣接ナノ構造間に個別境界を維持する必要がある。これは規定直径をもつ剛性シェル(第2のコーティング)に変換可能なリガンドを提供し、ドット間の距離を制御することにより実施することができる。更に、第2のコーティングも量子閉じ込めを改善すると共に量子ドット間のクロストークを低減するように機能する場合にはデバイス性能を改善することができ、誘電特性をもつ第2のコーティングを生成するリガンドも望ましい。本発明は例えば障壁の高さ及び/又は量子閉じ込めを改善した個別被覆ナノ構造の作製用として、第1のコーティングとして使用するリガンド組成物を提供する。
【0077】
第1のコーティングと第2のコーティングは一般に異なる物理的特性をもつ。例えば、第1のコーティングは電気的に中性とすることができ(第1の電気的特性)、第2のコーティングは双極子モーメントを含み(第2の電気的特性)、同様に第1のコーティングは双極子モーメントを含むことができ、第2のコーティングは電気的に中性である。別の態様では、第1のコーティング非絶縁性又は導電性であり(例えば導電性有機材料−金属結合体ハイブリッド種)、第2のコーティングは絶縁性又は非導電性である(例えば金属酸化物)。別の態様では、第1のコーティングは絶縁性又は非導電性であり、第2のコーティングは非絶縁性又は導電性である。第2の剛性コーティング(特に半導体又は絶縁性をもつもの)に変換される第1の展性コーティングが特に有利である。選択されたナノ構造を封入する剛性絶縁シェルとして使用するのに好適な1組成物態様は酸化シリコン(SiO)であり、このような第2の剛性SiOコーティングは場合により酸化シリコンケージ錯体(例えばシルセスキオキサン)を含む第1の展性コーティングから生成される。
【0078】
あるいは、第1のコーティングと第2のコーティングは光学的特性を変えてもよい。例えば、第1の光学的特性は第1の波長の吸光又は発光を含み、第2の光学的特性は第2の波長の吸光又は発光を含む(例えばランタニド含有コーティング等)。あるいは、第1の光学的特性は低又は非光透過性(不透明性)とすることができ、第2の光学的特性は透明性(又はその逆)である。別の有利な態様は例えば被覆ナノ構造の電子及び/又は導電特性を変えるために、異なるバンドギャップエネルギーをもつ第1及び第2のコーティングを含む。
【0079】
別の例として、第1のコーティングと第2のコーティングは例えば選択溶媒に対する溶解性等の物理的特性を変えることができる。例えば、第1のコーティングはナノ構造の分散、堆積等を助長するために被覆ナノ構造を選択溶媒に溶解性にすることができ、第2のコーティングを含むナノ構造は選択溶媒に低溶解性である。当然のことながら、第1のコーティングと第2のコーティングは上記特性を併有することができ、例えば、第1のコーティングは選択溶媒に対する溶解度を増すことができ、第2のコーティングは非導電性である。
(酸化シリコンケージ錯体)
【0080】
1好適態様では、ナノ構造を被覆するために使用されるリガンドコーティングは酸化シリコンケージ錯体である。シルセスキオキサン(又はシラセスキオキサン)として知られる多環式シリコン含有化合物、例えば多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)は1種の可溶性個別酸化シリコンケージ錯体である(例えば、Hanssen前出参照)。シルセスキオキサンの例としては水素シルセスキオキサン(HSQ)及びメチルシルセスキオキサン(MSQ)が挙げられ、その他のシルセスキオキサン構造を図1に示す(図中、R基は各種化学部分を含み、限定されないが、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル等の短鎖アルキル基、イソオクチル及びノルボルニル等の長鎖アルキル基、並びにフェニル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチル基等の芳香族及び非芳香族環状構造が挙げられる。シルセスキオキサンは閉じたケージ構造でも部分的に開いたケージ構造でもよい(例えばその場合には、環酸素のいくつかは両方の隣接シリコン原子と結合していない;例えば図5B参照)。ケージ錯体の辺又は角に配置される非シリケート有機基はリガンドをナノ構造の露出表面と結合できるように官能化することができる。場合により、非シリケート基は電子求引(又は電子供与)基として機能することができる。シルセスキオキサン部分に組込むことができる官能基としては限定されないが、アルキル、アルコール、ホスフィン、ホスホン酸、チオール、エーテル、カルボン酸、アミン、エポキシド、アルケン及びアリール基、並びに他のナノ構造結合部分、溶解補助部分、又は該当電子求引/供与基が挙げられる。
【0081】
好ましい誘導体化の1例は酸化シリコンケージモノマーへのボロン組込みであり、熱処理後に酸化ボロンと酸化シリコンの第2のコーティングとなる。
【0082】
シルセスキオキサン骨格の例を図1に示す。シルセスキオキサンは購入することもできるし、例えば、RSiCl又はRSi(OR)モノマーの加水分解縮合により合成することもできる(例えば、Feherら(1989)J.Am.Chem.Soc.111:1741;Brownら(1964)J.Am.Chem.Soc.86:1120;Brownら(1965)J.Am.Chem.Soc.87:4313−4323参照)。合成中に形成されるケージ構造の種類(例えば多面体の種類、閉じているか開いているか)は溶媒選択、pH、温度等の反応条件の操作と、R基置換基の選択により決定することができる(Feherら(1995)Polyhedron 14:3239−3253)。(例えばナノ構造結合部分で誘導体化するための)その他のシルセスキオキサン骨格はHybrid Plastics(Fountain Valley,CA;世界ウェブhybridplastics.com)から市販されている。
【0083】
一般に、組成物として又は本発明の方法で使用する前にシルセスキオキサン骨格を1個以上のナノ構造結合部分とカップリングする。シルセスキオキサン骨格を例えば1個以上のナノ構造結合ヘッド基で誘導体化するためには当分野で公知の多数の標準カップリング反応の任意のものを使用することができる。例えば、Feherら(1995)Polyhedron 14:3239−3253に記載の反応参照。(当業者に公知の)一般合成技術に関するその他の情報は例えば、Fessendon and Fessendon,(1982)Organic Chemistry,2nd Edition,Willard Grant Press,Boston Mass;Carey & Sundberg,(1990)Advanced Organic Chemistry,3rd Edition,Parts A and B,Plenum Press,New York;及びMarch(1985)Advanced Organic Chemistry,3rd Edition,John Wiley and Sons,New Yorkに記載されている。場合により、反応効率、収率及び/又は利便性を増すようにこれらの文献に記載されている標準化学反応を改変する。
【0084】
本発明で第1のコーティングとして使用するシルセスキオキサン組成物としては(限定されないが)、図5と表1に示す組成物が挙げられる。
【0085】
本発明の組成物を形成するためにその他の個別シリケートもナノ構造結合部分で誘導体化することができる。例えば、シクロペンチルトリメトキシシラン(CAS 143487−47−2)は水と縮合し、集合してケージ構造となる。その後、ケージ形成前又は後にナノ構造結合ヘッド基を遊離ヒドロキシル位置の1個以上とカップリングすることができる。
【0086】
本明細書に記載する組成物及び方法で使用するのに好ましい別の態様はホスホシリケートリガンドである。図2に示すように、ホスホシリケートリガンド上のリン酸基を使用してリガンドをナノ構造とカップリングすることができる。本発明の方法及び組成物ではSiOに熱分解することが可能なホスホシリケートリガンドを使用することが好ましく、SiOを含むシェルはZnSよりも障壁高さが高くなり、後期処理又は操作段階中の温度耐性が潜在的に高くなる。ホスホシリケートリガンドの例を図5A及びBに示す。
【0087】
ナノ構造結合ヘッド基としてチオール部分をもつその他のリガンドを図5D−Iに示す。当然のことながら、所定ナノ構造組成物には所定ナノ構造結合基が好ましく、例えば、所定金属ナノ構造(例えばPdナノ構造)に好ましいリガンドはチオール(例えばアリールチオール)部分をもつリガンドである。
【0088】
1個以上が一般に独立して酸素又はシリコン原子を介して酸化シリコンケージ錯体とカップリングしているナノ構造結合部分の例としては限定されないが、プロトン化又は脱プロトン化形態のホスホン酸、ホスフィン酸、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、アミン、アルコール、アミド、及び/又はチオール部分、ホスホン酸、ホスフィン酸、カルボン酸、スルホン酸、及びスルフィン酸のエステル部分、ホスフィン、ホスフィンオキシド、及びエポキシドが挙げられる。
(ポリオキソメタレート)
【0089】
本発明の他の態様では、ナノ構造を被覆するために使用されるリガンドコーティングはポリオキソメタレートである。ポリオキソメタレートは一般にその最高酸化状態の前周期遷移金属(V,N,Ta,Mo及びW)から形成される金属−酸素クラスターアニオンである。ハロゲン化物、アルコキシル、チオール、ホスホ、及びオルガノシリル誘導体等の多数の誘導体をポリオキソメタレート組成物から製造することができる。詳細についてはGouzerh and Proust(1990)Chem.Rev.98:77−111参照。例えば、本発明の組成物及び方法では第1のコーティングとしてポリオキソバナデート誘導体を使用することができる。その後、第1のリガンドは酸化シリコンと同等の特性をもつ酸化バナジウムを含む第2のコーティングに変換される。
【0090】
ポリオキソメタレートはナノ構造上の第1のコーティングとして使用することができ、その後、別の特性をもつ第2のコーティングに変換することができる。所定ポリオキソメタレート(例えば酸形態のモリブデン及びタングステン系ポリオキソメタレート)は(例えば有機還元剤で処理するか又は外部印加電場に暴露することにより(例えば、Yamase(1998)Chem.Rev.98:307−325)参照)第2のコーティングに変換後に低下又は変化させることが可能なフォトクロミック又はエレクトロクロミック特性をもつ。
(他のリガンド組成物)
【0091】
場合により、第2のリガンドは第2のコーティングの電気化学的特性を調節するために使用することができるカテコール官能基を含む。本発明で使用するカテコール官能基としては限定されないが、ピロカテコール、サリチル酸、及び2,2−ビフェノールが挙げられる(例えば、Gigantら(2001)J.Am.Chem.Soc.123:11632−11637参照)。
【0092】
本発明の多くの態様では、第2のコーティングは(例えばナノ構造の周囲に絶縁シェルを形成するために使用される)絶縁性組成物である。1好適態様では、第2のコーティングは金属酸化物、又は酸化物多面体を形成することが可能なガラスもしくはガラス様組成物である。(他の酸化状態も利用できるが)例えば熱分解により本発明の第1のコーティングから生成することができる好ましい第2のコーティング成分は二酸化シリコン(SiO)、酸化ボロン(B)、及び酸化チタン(TiO)である。他の有用な第2のコーティングとしては限定されないが、GeO、P、AsO、P、As、Sb、V、Nb、Ta、SnO及びWOを含む組成物と、上記金属酸化物の他の酸化状態が挙げられる。
(組成物例)
【0093】
本発明で第1のコーティングとして使用する組成物例を下表1と図5及び6に示す。
【表1−1】


【表1−2】


【表1−3】


【表1−4】


【表1−5】


第1のコーティングとして使用される他の組成物例としては限定されないが、Rが有機基又は水素原子である以外は化合物1〜3、5〜6、及び8〜13と同様の化合物が挙げられる。例えば、Rは炭化水素基とすることができる。所定態様では、Rはアルキル基(例えば環状アルキル基又は炭素原子数20未満、もしくは炭素原子数10未満の短鎖アルキル基)、アリール基、アルキルアリール基、アルケニル基、又はアルキニル基が挙げられる。例えば、所定態様では、Rはイソブチル基、メチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基である。
【0094】
1側面では、本発明は個別ナノ構造を誘電コーティングで個々に被覆するための組成物も提供する。本組成物は酸化シリコンケージ錯体を含む第1の成分と、1個以上のナノ構造結合部分を含む第2の成分を含み、各ナノ構造結合部分は独立して例えば酸素又はシリコン原子を介して酸化シリコンケージ錯体とカップリングしている。本発明の組成物はナノ構造の表面に組成物を堆積後に誘電コーティングに変換される。
(ナノ構造)
【0095】
当分野で公知の多数の合成技術の任意のものにより製造されたナノ構造を使用して例えば半導体ナノ構造と金属ナノ構造の両者を含む本発明の個別被覆ナノ構造を製造することができる。一般に、ナノ構造の合成の完了後、例えば合成工程中に使用された溶媒又は構成材料からナノ構造を取出した後に第1のコーティングは第2のコーティングに変換される。第1のコーティングはナノ構造表面から除去しにくくないことが好ましい。
【0096】
場合により、シリコンウェーハ又はTEMグリッド等の基板の表面とナノ構造を結合する。所定態様では、官能化自己集合単層(SAM)リガンド等のナノ構造との結合用組成物で基板を処理しておく。基板表面の官能化用組成物の例としては窒化シリコンコーティング、ナノ構造結合部分をもつシランリガンド、又は被覆ナノ構造との水素結合用プロトンを提供もしくは受容することが可能な他の化学部分(例えばアミン、アルコール、ホスホン酸、フッ素又は他の非炭素ヘテロ原子)が挙げられる。例えば、シランリガンドは式[XSi−スペーサー結合基](式中、XはCl、OR、アルキル、アリール、他の炭化水素、ヘテロ原子、又はこれらの基の組み合わせであり、スペーサーはアルキル、アリール及び/又はヘテロ原子組み合わせである)をもつ構造を含むことができる。場合により、リガンドの構造は光活性化に反応し、光架橋基の付加により(例えば相互間、又はSAL被覆基板の表面に)リガンドを架橋させることができる。本発明で使用する表面リガンド(図4では「SAL」と総称する)の例はGelest Inc.(Tullytown,PA;世界ウェブgelest.com)から市販されている。
【0097】
組成物で使用される個々のナノ構造としては限定されないが、ナノ結晶、ナノドット、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノチューブ、量子ドット、ナノ粒子、ナノテトラポッド、トライポッド、バイポッド、分岐ナノ結晶、又は分岐テトラポッドが挙げられる。本発明は半導体ナノ構造又は金属ナノ構造に限定されず、使用されるナノ構造の種類は所期目的によっても決定される。本発明ではこれらのナノ構造態様の任意のものを使用することができるが、ナノドット及び/又は量子ドット等の球形、略球形、及び/又は等方性ナノ結晶を例証目的で典型的ナノ構造として使用する。多くの態様では、被覆ナノドット又は量子ドットの直径(例えば第1の寸法)は約10nm未満、場合により約8nm、6nm、5nm、又は4nm未満である。所定態様では、ナノ構造(例えばドット)直径は約2nm〜約4nmである。細密充填ナノ構造アレイで使用する好適態様では、被覆量子ドット又はナノドットの直径は約6nm以下、又は場合により約3.5nm以下である。
【0098】
ナノ結晶、量子ドット、ナノ粒子等のナノ構造は当業者に公知の多数のメカニズムにより製造することができる。更に、その寸法は各種材料に応用可能な多数の簡便な方法の任意のものにより制御することができ、場合によりナノ構造を洗浄し、その合成から残留している過剰の界面活性剤及び/又は過剰のリガンドを除去する。例えば、米国特許出願USSN10/796,832(発明者Scherら、発明の名称“Process for producing nanocrystals and nanocrystals produced thereby”,出願日2004年3月10日);USSN60/544,285(発明者Scherら、発明の名称“Methods of processing nanocrystals,compositions,devices and systems using same”,出願日2004年2月11日);USSN60/628,455(発明者Scherら、発明の名称“Process for group III−V semiconductor nanostructure synthesis and compositions made using same”,出願日2004年11月15日);及びUSSN60/637,409(発明者Whitefordら、発明の名称“Process for group 10 metal nanostructure synthesis and compositions made using same”,出願日2004年12月16日);並びにその引用文献参照。
【0099】
本発明のナノ構造含有組成物で使用されるナノ構造は原則的に任意の利用し易い材料から製造することができる。例えば、ナノ結晶は無機材料を含むことができ、例えばII−VI族、III−V族、又はIV族の各種半導体から選択される半導体材料が挙げられ、例えば周期表II族から選択される第1の元素とVI族から選択される第2の元素を含む材料(例えばZnS、ZnO、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、及び同等材料);III族から選択される第1の元素とV族から選択される第2の元素を含む材料(例えばGaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、及び同等材料);IV族元素を含む材料(Ge、Si、及び同等材料);PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、及びAlSb等の材料;又はその合金もしくは混合物が挙げられる。金属酸化物と同様にPd、Pt、Au、Ag、Ni、Fe、Sn、Zn、Ti、Ir、及びCo等の金属も本発明で使用するナノ構造の合成に使用することができる。本発明で使用するナノ結晶構造に関する更に詳細は例えば米国特許出願第10/656,802号(出願日2003年9月4日,発明の名称“Nanocomposite Based Photovoltaic Devices”)に記載されており、その開示内容全体を参考資料として全目的で本明細書に組込む。
【0100】
1好適態様では、本発明のデバイスは小さい略球形のCdSeもしくはPdナノ結晶を含むナノ構造、又は球形、略球形、及び/又は等方性ナノ粒子(例えばナノドットs及び/又は量子ドット)として合成することができる他の金属もしくは半導体ナノ構造を使用する。
(ナノ構造上の堆積後シェル形成方法)
【0101】
導電性有機材料層の上又はその中に堆積により作製するコア/シェルCdSe/ZnS半導体の製造及び使用方法は当分野で公知であるが、これらの方法にはいくつかの問題がある。例えば、ナノ構造:シェル構造体の薄いZnSシェルはナノ構造からの電荷漏洩を防ぐために十分高いエネルギー障壁をもたない。この問題は非常に厚いZnSシェルを成長させることにより対処できるが、数個の単層後に歪みが欠陥形成を引き起こし、ナノ結晶が不溶性になり、ナノ結晶間のスペーシングが大き過ぎてメモリー用途に所望される充填密度に合わないため、このアプローチは合成面で非現実的である。この問題は第1のシェル(ZnS)と付加シェル(SiO)をもつコア構造(CdSe)を成長させることにより理論的に対処できるが、このアプローチも欠陥形成、溶解性及びスペーシングに関して同一の欠点がある。本発明は硬化後に第2のコーティング(例えば酸化物)に変換することができるが、(例えば堆積目的のために)有機溶媒に対するナノ構造溶解性を維持するリガンドを使用して選択されたナノ構造上で直接リガンド交換を実施するか、又はこのようなリガンドの存在下でナノ構造を成長させることにより、これらの問題を解決する。
【0102】
本発明はナノ構造上の堆積後シェル形成方法を提供する。これらの方法はa)第1の表面と結合しており、異なる電気的、光学的、物理的又は構造的特性をもつ第2のコーティング(例えば剛性シェル)に変換可能なリガンド組成物をもつ1個以上のナノ構造を提供する段階と、b)リガンド組成物を硬化させ、ナノ構造の第1の表面に第2のコーティング(例えば剛性シェル)を生成することにより、ナノ構造にリガンド組成物を堆積後にナノ構造にシェルを形成する段階を含む。本発明の方法はナノ構造の構造的及び/又は物理的特性を低下又は劣化させない温度で実施することが好ましい。
【0103】
1分類の態様では、リガンド組成物と結合したナノ構造は表面リガンドを交換することにより提供される。この分類の態様では、第1の表面と結合したリガンド組成物をもつ1個以上のナノ構造を提供する段階は、第1の表面と結合した1種以上の界面活性剤をもつ1個以上のナノ構造を提供する段階と、第1の表面の界面活性剤をリガンド組成物と交換する段階を含む。別の分類の態様では、リガンド組成物の存在下でナノ構造を合成し、リガンド交換は不要である。
(ナノ構造の提供)
【0104】
本発明の方法は限定されないが、ナノ結晶、ナノドット、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノチューブ、量子ドット、ナノ粒子、ナノテトラポッド、ナノトライポッド、ナノバイポッド、分岐ナノ構造等の多数のナノ構造の任意のものにシェル又は第2のコーティングを生成するために使用することができる。更に、本発明の方法は特定合成アプローチにより製造されたナノ構造に限定されない。例えば、Pd、CdSe、CdTe及びCdSナノ結晶の有機金属溶液合成は一般に各種界面活性剤及び/又は脂肪酸を溶解補助剤として使用する(例えば、米国特許公開第2002/0066401号(発明者Pengら、発明の名称“Synthesis of colloidal nanocrystals”)、米国特許公開第2003/173541号(発明者Pengら、発明の名称“Colloidal nanocrystals with high photoluminescence quantum yields and methods of preparing the same”)、Kimら(2003)NanoLetters 3:1289−1291、及びQuら(2001)NanoLetters 1:333−337、並びにその引用文献参照)。本発明の方法ではこれら又は他の弱く結合する有機組成物を使用して製造されたナノ構造を使用することができる。
(表面リガンドの交換)
【0105】
前記方法の所定態様では、ナノ構造は弱く結合する有機組成物(「成長リガンド」)の存在下で初期構造(例えばコアナノ構造成分)を製造又は成長させることにより提供される。成長リガンドは第1のコーティングを作製するために使用されるリガンド(「置換」リガンド)よりもナノ構造との結合が弱いため、例えば質量作用により容易に交換することができる。
【0106】
本発明の方法で使用されるナノ構造は一般に(例えば合成工程中にナノ構造を可溶化させるために)ナノ構造表面と結合した1個以上の有機組成物、又は成長リガンドをもつ。典型的な成長リガンドとしては界面活性剤、例えば、ホスフィンもしくはホスフィンオキシド(例えばトリオクチルホスフィン(TOP)、トリ−n−ブチルホスフィン(TBP)、又はトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO))又は酸(例えばヘキサデシルホスホン酸(HDPA)又はオクタデシルホスホン酸(ODPA))が挙げられる。代替又は付加例として、各種長鎖カルボン酸(例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸、カプロン酸及び酪酸等の脂肪酸、並びに他の飽和又は不飽和脂質様構造)も合成中に使用し、ナノ構造表面と結合していてもよい。本発明の方法では、異なる電気的、光学的、物理的又は構造的特性をもつ第2のリガンド又は第2のコーティングに変換可能なリガンド組成物に成長リガンドを変換することにより、リガンド交換ナノ構造組成物を形成する。1好適態様では、酸化物等の剛性絶縁シェルに変換可能なリガンド組成物に成長リガンドを交換する。
【0107】
ナノ構造表面と結合した界面活性剤を本発明のリガンド又は第1のコーティングと交換する段階は、当分野で公知の多数のメカニズムの任意のものにより実施することができる。1態様では、界面活性剤の交換はナノ構造を有機溶媒に懸濁又は溶解し、懸濁したナノ構造をリガンド組成物と混合することにより実施される。交換工程に使用することができる溶媒としてはナノ構造合成及び処理に関連して一般に使用される任意のもの(例えばトルエン、クロロホルム、クロロベンゼン等)が挙げられる。交換段階を実施する温度は該当リガンドにより異なり、室温から100℃、200℃、300℃以上等の高温までとすることができる。例えば、スルホン酸部分を含む表面リガンドを実質的加熱なしに交換することができ、場合により室温で実施することができる。
【0108】
別の態様では、ナノ構造を基板表面とカップリング又は結合する(例えば溶液ではなく固相態様)。ナノ構造表面上の有機界面活性剤は例えば低温有機物ストリッピング法(温度<500℃、場合により200〜350℃)によりin situ除去することができる。ストリッピング法の後に場合により例えば反応性酸素種を使用して酸化する。その後、当分野で公知の多数の技術の任意のもの(蒸着、噴霧、浸漬等)により置換リガンド(例えば第1のコーティングのリガンド)をナノ構造に付加する。
(単層の自己集合)
【0109】
場合により、分子間自己集合力によりリガンド被覆ナノ構造に単層を形成させる。例えば、1好適態様では、本発明は電荷保存用に調整したシルセスキオキサン又はシリケートをもつナノ結晶を提供する。ナノ構造は細密充填アレイ状に配置することが好ましく、高密度及び/又は規則的細密充填アレイ状に配置することがより好ましい。細密充填アレイの制御下の自己集合は自己集合単層(SAM)又は他の官能化基板もしくは酸化物にナノ構造−第1のリガンド組成物を堆積する等の各種湿式法、あるいは蒸発による集合により実施することができる。
【0110】
自己集合した単層のメンバー成分は基板の表面とナノ構造の両者と結合し、従って両者の間に架橋又はリンカーを形成する。本発明で使用する各種SAM成分としては限定されないが、オルガノシラン、ホスホン酸、ホスフィン、チオール、アミン、ヘテロ原子等が挙げられる。1好適態様では、SAMはシルセスキオキサン又はシリケートリガンドのための結合ヘッドをもつシランリガンドから構成される。1代替好適態様では、ナノ結晶との結合に適した結合基で基板を直接官能化する。ナノ構造は例えばスピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、又は従来の印刷技術により、SAM又は官能化基板に溶液状で付加し、堆積する。その後、トルエン又はクロロホルム等の有機溶媒を使用して過剰の(未結合)ナノ構造を基板から洗い流すと、シリコン含有リガンドで被覆されたナノ結晶の単層が得られる。
【0111】
あるいは、特別に処理した基板を必要とせずに蒸発による集合により単層を作製することもできる。スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング又は従来の印刷技術により溶液から基板にナノ結晶を堆積する。溶媒の脱水工程を制御することにより、十分に規則的なナノ結晶アレイを得ることができる。
【0112】
単層形成に関する更に詳細は例えば米国特許出願第60/671,134号(発明者Healdら、発明の名称“Methods and devices for forming nanostructure monolayers and devices including such monolayers”,出願日2005年4月3日)に記載されており、その開示内容全体を参考資料として全目的で本明細書に組込む。
(リガンド組成物の硬化と第2のコーティングの生成)
【0113】
堆積と単層形成後に基板を熱アニールし、第1のコーティング層を硬化させることができる(従って、ナノ構造の第1の表面に第2の層(所定態様では剛性絶縁シェル)を形成することができる)。硬化段階に使用する技術は本方法で使用するリガンド組成物の種類によって異なる。硬化は例えばアルゴンもしくは窒素等の不活性雰囲気下、又は酸素下で実施することができる。硬化工程の温度は表面リガンドに合わせて調節することができる。例えば、組成物の硬化はリガンド組成物と結合したナノ構造を加熱してナノ構造表面に剛性シェルを形成することにより実施することができる。加熱はホットプレートや石英炉等の各種装置を使用して1段階以上で実施することができる(Yangら(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.25:339−343参照)。所定態様では、リガンド:ナノ構造複合体を約500℃未満まで、場合により200〜350℃まで加熱する。シルセスキオキサンリガンドの熱硬化は一般にシルセスキオキサン含有組成物を約500℃未満、好ましくは約350℃未満の温度まで加熱することにより、ケージ構造をネットワーク構造に変換する。シリコン含有リガンドを使用する態様では、熱硬化工程は第1のコーティングをSiOの第2のコーティングに分解する。第1のコーティングから第2のコーティング(又はシェル)への変換は例えばFTIRスプクトロメーターを使用して熱重量分析によりモニターすることができる(Yang(2001)前出とその引用文献参照)。
【0114】
代替態様では、第1のコーティングから別の電気的又は光学的特性をもつ第2のコーティング又はシェルへのリガンド組成物の変換は組成物に放射線を照射することにより実施することができる。例えば、PMMA前駆体又はカルボキシレートジエンもしくはジアセチレン部分を使用する態様では、重合工程を光活性化し、第1のコーティングを架橋させて有機シェル(第2のコーティング)を形成する。
【0115】
所定態様では、本発明の方法で提供される1個以上のナノ構造を第2のナノ構造表面を介して基板にカップリングする。場合により、この基板はシリコンウェーハである。所定態様では、基板表面と結合する前にメンバーナノ構造を封入するが、他の態様では、メンバーナノ構造の第1の部分を基板と結合し、メンバーナノ構造の第2の部分を第1のコーティング又は第2のコーティングと結合する。場合により、シリコンウェーハの表面は例えば基板とナノ構造表面の一部の結合を助長するために、第2のナノ構造結合部分とカップリングされたシランリガンドを含む。
【0116】
硬化工程の後に場合により基板と結合した被覆ナノ構造に例えば第1のコーティング、シリケート等の別の層をスピンコーティングし、熱硬化することにより、トップコーティング又はオーバーレイを形成する。所定態様では、トップ層は絶縁性酸化物層である。本発明の方法は場合により基板にカップリングしたナノ構造にオーバーレイ又はトップコーティング組成物として平坦化組成物を付加する段階を更に含む。場合により使用する平坦化組成物はリガンド組成物の硬化段階前後のどちらに付加してもよい。平坦化組成物は残りの狭いスペースを充填し、ウェーハ及び/又はナノ構造組成物の処理部分に(比較的)平坦な表面を形成する。トップコーティング又は平坦化材料は被覆ナノ構造の剛性シェルに適合可能であることが好ましい。場合により、平坦化組成物は(第2のコーティング組成物と類似又は異なる組成の)誘電材料である。
【0117】
平坦化材料の例としては限定されないが、各種シリケート、ホスホシリケート、及びスピンオングラスSpin On Glass(SOG)と呼ばれるシロキサンが挙げられる。場合により、本発明のリガンド組成物を平坦化組成物として使用することができる。
【0118】
本発明は本明細書に記載する方法により堆積後形成された剛性シェルをもつナノ構造も提供する。1好適態様では、剛性シェルはシリコン又は酸化シリコンを含み、ナノ構造:シェル組成物の直径は約6nm以下である。
(複数の量子ドット間の電荷拡散の低減方法)
【0119】
別の側面では、本発明は複数のナノ構造、例えばナノドット、特に量子ドット間の電荷拡散の低減方法を提供する。本方法は電子求引基を含むリガンド組成物をメンバーナノドット(又は量子ドット又は他のナノ構造)とカップリングする段階と、メンバーナノドットの表面に双極子を形成し、ナノドットの電子親和性を増加することにより、ナノドット間の電荷拡散(例えば側方電荷拡散)を低減する段階を含む。場合により、こうして形成されたナノ構造を本明細書に記載する堆積後シェル形成用組成物及び方法で使用する。
【0120】
本発明のリガンド組成物の多くは電子求引特徴をもち、本発明の方法で電子求引基として使用することができる(例えばシルセスキオキサン等の酸化シリコンケージ錯体)。所定態様では、電子求引組成物はフッ素原子を含む(例えば、F、SiF、SiF誘導体、又はポリテトラフルオロエチレン等のフッ素ポリマー)。他の態様では、リガンド組成物はボロン含有組成物である(例えばアリール−ボロンオリゴマー又はボロン酸組成物)。場合により、電子求引組成物はナノ構造表面とカップリングするためのナノ構造結合基(例えばホスホン酸部分、ホスホン酸エステル、又は本明細書に記載するもの等の他のナノ構造結合部分)を含む。
【0121】
場合により、本発明のリガンド組成物の第1及び第2の特性はフォトクロミズム関連特性である(例えば光又は他の入射電磁輻射等の入射刺激によりコーティングに誘導される色変化)。所定態様では、電子求引組成物は光活性化分子内塩(例えばスピロピラン)を含む。本発明の方法及び組成物で使用する分子内塩の例としては限定されないが、HOOCCHCH(NH(CH)CHCHPOが挙げられる。Leausticら(2001)“Photochromism of cationic spiropyran−doped silica gel”New.J Chem.25:1297−1301とその引用文献も参照。
【0122】
1分類の態様では、複数のナノドット(又は量子ドット又は他のナノ構造)は個別量子化フォトン発生及び転送媒体又は個別量子化電荷保存もしくは電荷転送媒体を含む。
【0123】
本発明は本明細書に記載する方法により製造されるような電荷拡散を低減した1個以上(例えば複数)のナノドット(例えば、量子ドット)又は他のナノ構造も提供する。ナノ構造は場合によりリガンド組成物の堆積後に形成された剛性シェル、例えばシリコン又は酸化シリコンを含む剛性シェルをもつ。ナノ構造は原則的に任意の材料、寸法、及び/又は形状とすることができる。1好適分類の態様では、ナノ構造の直径は6nm未満、例えば3.5nm未満である。
【0124】
ナノ構造特性を改変するのに適したリガンド組成物に関する更に詳細は例えば米国特許出願第60/635,799号(発明者Whitefordら、発明の名称“Compositions and methods for modulation of nanostructure energy levels”,出願日2004年12月13日)に記載されている。
(メモリーデバイスの製造方法)
【0125】
本発明は電荷を保存するためにナノ結晶を使用するナノ構造メモリーデバイスの製造方法も提供する。Coeら,2002,前出に記載されているように、コア/シェルCdSe/ZnS半導体を導電性有機材料層の上/中に堆積することができる。しかし、従来記載されているこの方法にはいくつかの問題がある。まず、この方法により作製した薄いZnSシェルはナノ結晶からの電荷漏洩を防ぐために十分高いエネルギー障壁をもたない。この問題は非常に厚いZnSシェルを成長させることにより理論的に対処できるが、このアプローチは合成面で非現実的である。数個のシェル単層の堆積後に歪みが欠陥形成を引き起こし、及び/又はナノ結晶が不溶性になるため、実現可能なシェル厚には現実的な制限がある。更に、厚く被覆したナノ結晶間のスペーシングは大き過ぎてメモリー用途に所望される充填密度に合わない。この問題はコア(CdSe)シェル(ZnS)と第3のシェル(SiO)を成長させることにより対処することもできるが、合成面では実施可能であるとしても、上記に点に関して同様の問題を伴うアプローチである。本発明は本明細書に記載するようなリガンド組成物(例えば修飾シルセスキオキサンリガンド)を使用してナノ構造(例えば小さい略球形のCdSe又はPdナノ結晶)上で直接リガンド交換を実施する新規アプローチを取る。(あるいは、上記のように、リガンド組成物の存在下でナノ構造を成長させることもできる。)リガンドの第1のコーティングを酸化物に変換又は硬化させ、堆積目的のために有機溶媒に対するナノ構造溶解性を維持することが好ましい。
【0126】
電荷を保存するためにナノ結晶を使用するナノ構造メモリーデバイスの製造方法はa)弱く結合する成長リガンドと結合したメンバーを含む複数のナノ構造を提供する段階と;b)成長リガンドを置換リガンドと交換し、メンバーナノ構造に第1のコーティングを形成する段階と;c)被覆メンバーナノ構造を基板の表面と結合する段階と;d)第1のコーティングを1種以上の電気的、光学的、物理的又は構造的特性が異なる第2のコーティングに変換することにより、ナノ構造メモリーデバイスを作製する段階を含む。関連分類の態様では、段階a及びbを1段階とし、リガンドがメンバーナノ構造に第1のコーティングを形成するように、リガンドの存在下でナノ構造を合成する。ナノ構造の細密充填には球形、略球形及び/又は等方性形状をもつナノ粒子(例えばナノドット及び/又は量子ドット)が最も有効であり、好ましい。成長リガンド又は界面活性剤を第1のコーティングの置換リガンドに交換する段階は例えば質量作用交換により実施することができる。この方法を助長するために、弱く結合した成長リガンドの結合定数は第1のコーティングで使用するリガンドよりも小さいことが好ましい。
【0127】
ナノ構造合成のこのアプローチの1つの利点は現在利用可能な方法により製造された製品よりもナノ構造製品の有機汚染物質含有量が少ないことである。別の利点は被覆ナノ構造の直径を制御するように置換リガンドの長さを調節することができ、従って、高密度充填を可能にしながら電荷漏洩を低減及び/又は防止するようにナノ結晶を適正な間隔で配置できることである。
(デバイス)
【0128】
本発明のナノ構造含有組成物を使用して多数の電子及び光学機器を製造することができる。特に、ナノドットナノ構造を使用する(又は使用するように工夫することが可能な)任意デバイスで本発明の組成物及び方法を利用できる。例えば、本発明のナノ構造含有組成物を使用してトランジスターやメモリーデバイス等の各種電子機器を製造することができる。LED、LCD用バックライト、蛍光体、PV、フォトデテクター、及びフォトダイオード等の発光機器や、光起電力デバイス等のオプトエレクトロニックデバイスも本発明のナノ構造含有組成物を利用することができる。更に、被覆ナノ構造は(例えば特定発光波長をもつ第2の光学的特性に基づく)信号減衰組成物及び/又は検出可能なラベルでも利用することができる。
【0129】
本発明のナノ構造含有組成物はフラッシュメモリー構造体の作製に特に有用である。フラッシュメモリーは迅速に消去と再プログラムが可能な1種の電気的に消去可能なプログラマブルリードオンリーメモリー(EEPROM)である。この種の常時給電不揮発性メモリーを使用するデバイスは一度に1バイトではなくブロック単位でメモリーを変更するので、標準EEPROMデバイスよりも迅速な有効速度で動作することができる。
【0130】
フラッシュメモリーは一般に酸化物薄層により分離された2個のトランジスター(制御ゲートと浮遊ゲート)を含むセル当たりシングルビットをコードする。セルは2個のゲート間の特定閾値電圧により特徴付けられる。電荷は浮遊ゲートにプログラム/保存され、浮遊ゲートは更にトランジスター間の2種の可能な電圧レベル(セルのオン/オフ状態)を制御する。セルが2個以上の電圧閾値をもつマルチビットテクノロジー(即ち各セル間の電圧は3レベル以上に分割されている)も開発中である。ナノ構造メモリーデバイス、トランジスター等に関する更に詳細は例えば米国特許出願第11/018,572号(発明者Xiangfeng Duanら、発明の名称“Nano−enabled memory devices and anisotropic charge carrying arrays”,出願日2004年12月21日)に記載されている。
【0131】
本明細書に記載するように、近接信号搬送波間の無制御な信号透過(クロストーク)は所与デバイスの性能/効率を低下させる。ナノ構造含有デバイスでナノ構造間のクロストークを低減することができる1つのメカニズムはナノ構造間の距離の増加である。このアプローチは量子ドット等のナノスケール構造の場合に特に有用である。隣接量子ドット間の距離の増加は、各メンバードットを含む剛性シェルを形成して相互間の距離を制御することにより実施できる。個別ナノ構造に第1のコーティングを堆積後に剛性シェルを形成することにより、個々のナノ構造の個別(物理的分離)特徴を維持する。適当な(例えば誘電性又は非導電性)材料から作製する場合には、剛性シェルはナノ構造間のクロストークを低減するための別のメカニズムも提供することができる。
【0132】
本発明のナノ構造含有組成物は量子閉じ込めの低下又はメンバー量子ドット間のクロストークの増加を伴うことなく、1010/cm、1011/cm、1012/cm、又はそれ以上の密度で製造することができる。
【0133】
本発明はヘテロ構造ナノ結晶(例えばナノ結晶に有用な特性を付与する2種以上の異なる組成成分から構成されるナノ結晶)を製造するための新規方法を提供する。本明細書に記載するように、このようなヘテロ構造は一般に第1の材料のコアを第2の材料のシェルで包囲したコア−シェル構成で具体化される。特筆すべき点として、第1の材料は導体、半導体、又は絶縁体(例えば誘電体)を含むことができ、第2の材料も同様に導体、半導体、又は絶縁体(例えば誘電体)を含むことができ、可能な任意組み合わせ(例えば2種の導電性材料、導電性材料と絶縁体等)とすることができる。本発明の方法は処理のフレキシビリティーを提供し、これらのナノ結晶の製造と所定パラメーター(例えば従来達成できなかった10nm以下の範囲の寸法)の操作を容易にする。その結果、本発明の組成物(例えば本明細書に記載する方法に従って製造されたナノ結晶組成物)は典型的なコア−シェルナノ結晶に想定された任意用途に潜在的に利用できると予想される。更に、これらの新規方法から得られる機能により各種の付加用途が可能になるであろう。
(ナノ構造の可逆的変性方法)
【0134】
所定用途(例えば所定ナノ構造デバイスの製造)では、ナノ構造は例えば溶融及び隣接ナノ構造と融着せずに高温処理に耐える必要がある。このような用途には高融点材料を含むナノ構造を選択することができるが、構造の物理的寸法をナノメートル範囲まで小型化すると、全材料はその融点が低下するため、高融点材料でも高温処理段階は問題となり得る。
【0135】
本発明は後続処理段階からナノ構造(例えば半導体デバイスのナノ構造コンポーネント)を保護するためにナノ構造を可逆的に変性させるための新規方法を提供する。1特定例として、本発明の方法は(例えば酸化雰囲気下の高温アニールにより)パラジウム量子ドットを酸化し、フラッシュメモリーデバイスを製造しながら上層の誘電体にドットを封入する工程中のその耐融着性を増加するために使用することができる。(例えば還元雰囲気下の高温アニールにより)酸化を逆行させ、酸化パラジウムを純(又は実質的純)パラジウムに戻し、パラジウム金属の特性をデバイス性能に活用することができる。特筆すべき点として、本発明の方法は各種後続操作(限定されないが、例えば高温暴露)中に各種材料、形状、及び寸法の任意のもののナノ構造を保護することができる。
【0136】
従って、1つの一般分類の態様はナノ構造の可逆的変性方法を提供する。本方法では、金属を含む1個以上のナノ構造を提供する。金属を酸化して金属酸化物を生成し、ナノ構造を処理する。その後、金属酸化物を還元して金属を得る。
【0137】
金属はナノ構造を酸化雰囲気(例えば酸素を含む雰囲気)中で加熱することにより酸化することができる。ナノ構造は一般に約200℃〜約700℃(例えば約200℃〜約500℃)の温度まで加熱される。同様に、金属酸化物はナノ構造を還元雰囲気、例えば水素を含む雰囲気、例えばフォーミングガス(即ちN中5%H)中で加熱することにより還元することができる。当然のことながら、反応ガスはナノ構造の周囲の任意材料を通ってナノ構造と接触できることが好ましい。あるいは、窒素雰囲気下で加熱することによりナノ構造を少なくとも部分的に還元することもできる。ナノ構造は一般に約200℃〜約700℃(例えば約200℃〜約500℃)の温度まで加熱される。
【0138】
変性させるナノ構造は原則的に任意の寸法及び/又は形状とすることができる。即ち、例えば、ナノ構造としては1種以上のナノワイヤー、ナノロッド、ナノチューブ、分岐ナノ結晶、ナノテトラポッド、トライポッド、バイポッド、ナノ結晶、ナノドット、量子ドット、ナノ粒子、分岐テトラポッド、又はその組み合わせが挙げられる。1分類の態様では、ナノ構造は実質的に球形のナノ構造である。
【0139】
前記方法は可逆的に酸化することが可能な任意金属を含むナノ構造に使用することができる。例えば、金属は貴金属(例えばAu、Ag、又はPt)又は遷移金属(例えばNi、Fe、Sn、又はZn)とすることができる。1好適分類の態様では、金属はPdであり、本分類の態様では、金属酸化物は一般にPdOである。ナノ構造全体を酸化してもよいし、その一部(例えば表面層)を酸化してもよい。例えば、ナノ構造集団を含む金属の>10%、例えば>20%、>50%、>75%、又は>90%を酸化することができる。酸化(及びそれに対する還元)は例えばエネルギー分散型分光法(EDS)等の技術によりモニターすることができる。
【0140】
上記のように、このような可逆的酸化は処理中、例えば高温で実施される所定デバイス製造段階中にナノ構造を保護することができる。従って、例えば1分類の態様では、ナノ構造の処理は約200℃〜約750℃の温度(例えば>約250℃、>約500℃、又は>約600℃の温度)、又は>約750℃の温度にナノ構造を暴露する段階を含む。このような高温は例えば、ナノ構造に誘電体を配置する際に生ずる可能性がある。
【0141】
ナノ構造は可逆的酸化により例えば高温融着から保護することができる。付加(又は代替)例では、本明細書に記載するようなコーティングによりナノ構造を保護することができる。従って、1分類の態様では、提供される1個以上のナノ構造は各ナノ構造の第1の表面と結合した第1のコーティングをもつ。第1のコーティングは第1の光学的、電気的、物理的又は構造的特性をもち、異なる光学的、電気的、物理的又は構造的特性をもつ第2のコーティングに変換可能である。第1及び/又は第2のコーティングは例えば本明細書に記載する任意コーティングとすることができる。従って、例えば第2のコーティングは酸化物、例えば場合により本明細書に記載するもの等のシルセスキオキサン組成物から形成されるSiOを含むことができる。第1のコーティングはナノ構造を酸化雰囲気下で加熱することにより第2のコーティングに変換することができ、当然のことながら、変換は金属の酸化と同時に実施することができる。コーティング(例えばSiO)はナノ構造間の物理的分離を維持するのに役立ち、従って、高温に暴露された場合に隣接ナノ構造を融着しにくくすることができる。シルセスキオキサンリガンドはSiOの形成のために亜化学量論的酸素を含有しているため、シルセスキオキサンを含む第1のコーティングを酸化雰囲気下で硬化すると、良好な品質の第2のSiOコーティングを形成することができ、更に付加機能(又は代替機能)としてナノ構造融着を阻止するのにも役立つ。
【0142】
以下、実施例により本発明を例証するが、これらの実施例により本発明を限定するものではない。当然のことながら、本明細書に記載する実施例と態様は例証の目的に過ぎず、これらの記載に鑑み、種々の変形又は変更が当業者に示唆され、このような変形又は変更も本願の精神及び範囲と特許請求の範囲に含むものとする。
【実施例1】
【0143】
細密充填ナノ構造単層の作製
細密充填ナノ構造をもつ基板の作製方法を図3及び4に模式的に示す。表面を界面活性剤で被覆したナノドット(球として表す)を合成する。界面活性剤をシルセスキオキサン又は他のシリケートリガンド(L)とリガンド交換する。
【0144】
選択した基板(例えば二酸化シリコンウェーハ)にナノ構造結合ヘッド基(B)をもつシランリガンドを被覆する。シランリガンドは相互作用して結合し、基板表面に表面集合リガンド(SAL)の自己集合単層を形成し、ナノ構造結合界面(直立矢印により表す)を提供する。表面集合リガンドの1例としてはリンカーを介して相互にカップリングした環状ジメチルアミノ部分とSiMe基(環状ジメチルアミノ−有機スペーサー−SiMe)が挙げられる。
【0145】
次にドットを加えた溶媒をスピンコーティング又はディップコーティングすることによりリガンド交換ナノドットをSAL基板に付加する。過剰のドットを基板から洗い流すと、二酸化シリコン含有リガンドで絶縁されたナノドットの単層が得られる。表面集合リガンドの単層性により、ナノドットは(図4の側面図に示すように)細密充填される。次にナノ構造結合基板を熱アニールして層を硬化させ、第1のコーティング(例えば、ホスホシリケートリガンド)を第2のコーティング(SiOのシェル)に変換する。得られたアニール後の表面を場合により別のシリケート層(トップコート又はオーバーレイ)のスピンコーティングと熱硬化により処理すると、ナノドットメモリーデバイスが得られる。
【実施例2】
【0146】
ヘプタシクロペンチルPOSSジシラノールジエトキシホスフェートの合成
多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)リガンドの1例としてヘプタシクロペンチルPOSSジシラノールジエトキシホスフェート2の合成を本明細書に記載するように実施した(図6)。全手順はシュレンク法を使用して不活性雰囲気下に実施した。溶媒を4Åモレキュラーシーブで乾燥し、凍結−真空−解凍サイクル3回で脱気した。ヘプタシクロペンチルPOSSトリシラノール1を五酸化リンの存在下にデシケーターで静的真空により12時間乾燥し、使用前にクロロリン酸ジエチル(Cl−P(O)(OEt))をバキュームトランスファーした。La Jollaに所在のScripps Research Instituteで質量分析を実施し、162MHzで31Pを使用してBruker FT NMRで31P{H}NMRスペクトロスコピーを実施した。
【0147】
50mLシュレンクフラスコで反応を準備した。ヘプタシクロペンチルPOSSトリシラノール1(1.00g,1.14mmol)をトルエン(10mL)とトリエチルアミン(15mL)に溶かし、透明溶液を生成した。ClP(O)(OEt)(0.650g,0.545mL,3.77mmol)を1分間撹拌下にシリンジで加えた。約5分後に透明溶液は濁った。溶液をアルゴン下に一晩撹拌した。
【0148】
ClP(O)(OEt)添加から約20時間後に揮発性成分をバキュームトランスファーにより除去した。残渣をヘキサン(3×8mL)で抽出し、揮発分をバキュームトランスファーにより再び除去した。残渣をトルエン1.25mLに溶かし、アセトニトリル6mLで溶液から油状物として沈殿させた。上相を捨て、沈殿工程を2回繰返した。次に、油状物をTHF6mL、トルエン2mL、最後にアセトニトリル約6mLに溶かした。溶液が濁るまで混合しながら最終溶媒をゆっくりと加えた。次に、混合物を−35℃まで一晩冷却すると、多少の白色微結晶が生じた。上清を捨て、最初の出発容量の約3分の1になるまで揮発性溶媒をバキュームトランスファーにより除去すると、実質的量の白色微結晶が得られた。残りの上清を捨てると、フラスコに生成物が残った。次に、<0.010トルの圧力に達するまで白色結晶生成物2を1時間減圧乾燥した。生成物を白色微結晶0.320g、0.313mmol又は27.5%収率として単離した。質量分析:ESI−TOF(−)m/z 1034 [M−H+Na],ESI−TOF(+)m/z 1011 [M−H]。NMR31P{H}(162MHz,Tol−d,25C)δ−11.3(s,1P)。
【0149】
トルエン中でCl−P(O)(OEt) 2.0当量とEtN又はピリジン2.0当量を使用してこの反応を実施してもよい。反応手順はヘキサン洗浄を含めて上記と同様に実施し、THF、トルエン及びアセトニトリルから構成される混合溶媒系から−35℃で結晶化させることにより生成物を単離した。
【0150】
本発明の他のシルセスキオキサン誘導体としては以下のものが挙げられる。
1)エーテル(アリール又はアルキル誘導体)を形成するためにアルコールと結合した有機スペーサーと、ナノ構造結合ヘッド基を形成するスペーサーの他端の炭素結合をもつ閉じたシリケートケージPOSS分子モノシラノール。
2)トリエーテルを形成するためにアルコールと結合した3個の有機スペーサーと、ナノ構造結合部分に結合するスペーサーの他端の炭素結合をもつ開いたシリケートケージPOSS分子トリシラノール。
3)縮合により製造されるシリケートダイマー(又はより大きいオリゴマー)化合物。二官能性シランとモノヘテロ原子をもつPOSSであり、二官能性シランスペーサー単位の中心の周囲に結合基をもつ。
4)ケージ分子の側鎖結合又は架橋のための、ケージの選択的(Si−O−Si)開環(例えば片側)と露出ジオールの結合ヘッド基修飾による閉じたシリケートケージのエンド→エキソ変換。
【実施例3】
【0151】
SAM上の被覆ナノ構造単層の作製
電荷保存用に調整したシルセスキオキサン又はシリケートリガンドをもつナノ結晶単層の制御下自己集合は自己集合単層(SAM)への堆積等の各種湿式法により実施することができる。このアプローチを使用し、細密充填ナノ構造アレイ、好ましくは規則的細密充填ナノ構造アレイをもつ単層を作製することができる。
【0152】
シルセスキオキサン又はシリケートリガンド用結合ヘッドをもつシランリガンドから構成される自己集合単層を基板表面に付加する。スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、又は従来の印刷技術によりナノ結晶を溶液からSAMに堆積する。過剰のドットを基板から洗い流すと、二酸化シリコン含有リガンドで絶縁されたナノ結晶単層が得られる。
【実施例4】
【0153】
蒸発による集合による被覆ナノ構造の規則的単層の作製
本発明のナノ構造含有単層は蒸発による集合により作製することもできる。この態様では、ナノ構造との結合用化学部分で官能化するか又はこのような部分を積層した特殊処理基板は不要である。CdSeナノ結晶を窒化シリコン基板にドロップキャストする。表面リガンドの組成と溶媒吸収性クリーンルームクロスによる表面ウィッキングにより脱水プロセスを制御する。溶媒の脱水プロセスを制御することにより、十分に規則的なナノ結晶アレイを得ることができる。
【実施例5】
【0154】
メモリーデバイス用アレイ状ナノ構造の作製
本発明は電荷保存のためにナノ結晶を使用するメモリーデバイス作製の一般アプローチに関する。シェルなしのCdSeナノ結晶を使用して方法を実施し、その後、ナノ結晶と結合するためにホスホン酸エステルヘッド基で修飾したシルセスキオキサンリガンドとリガンド交換した。その後、酸化物を被覆した基板にこれらのナノ結晶を単層で堆積した。
【0155】
他方、弱い結合リガンドをもつ略球形金属ナノ結晶(例えばPdナノ結晶)を作製するようにナノ結晶合成を変更することにより、使用する同一の一般アプローチを金属ナノ結晶に容易に応用することができる。その後、これらのナノ結晶を洗浄し、例えばNMRにより特性決定する。シルセスキオキサンに別のヘッド基(例えばナノ結晶との結合を良好にするためにチオール又はスルホン酸基)を結合することによりリガンドを修飾する。リガンドを精製した後、NMRと質量分析により特性決定する。VT−NMRを使用して交換をモニターしながらリガンドをナノ結晶に交換する。交換したナノ結晶を次に洗浄し、過剰のリガンドを除去する。その後、作製した基板(SAM被覆、官能化、又は非官能化酸化物基板)にスピンコーティング又は蒸着によりナノ結晶を堆積する。
【0156】
個別被覆ナノ構造の合成を実施しながら本発明の各種側面を容易に変更又は改変できる。使用するナノ構造の種類は種々のものを利用でき、CdSe、任意II−VI、III−V、又はIV族半導体、任意金属(限定されないが、Pd、Pt、Au、Ag、Ni、Fe、Sn、Zn、及びCo)が挙げられる。初期合成中、又は後記サイズ選択により狭いサイズ分布を提供することができる。更に、弱く結合した成長リガンド又は第1のコーティング(例えば酸化物関連)リガンドのリガンド結合基も種々のものを利用でき、チオール、スルホン酸、スルフィン酸、ホスフィン酸、カルボン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、アミン、ホスフィン等が挙げられる。第1のコーティングの選択と所期用途に応じて(硬化後に)SiO、TiO、VnO又は他の酸化物等の各種酸化物リガンドを作製することができる。堆積方法も本明細書に記載する方法以外の方法に変更できる。
【0157】
別の酸化物形成方法では、(例えばナノ結晶の希薄溶液に酸素をバブリングすることにより)ナノ結晶表面を制御可能に酸化し、エネルギー障壁を提供する酸化物(例えば、酸化コバルトシェルをもつCoコア)を生成する。単層の堆積後に本発明の第1のコーティングリガンドを溶液として付加し、硬化させることができる。このメモリー用途に適用されるアプローチはタガントや蛍光体等のマトリックスに埋め込む必要があるナノ結晶にも使用することができる。
【実施例6】
【0158】
ナノ構造電荷保存デバイスの作製
例えばフラッシュメモリーデバイス等のナノ結晶電荷保存デバイスの実現可能性の立証としてナノ結晶キャパシターを作製することができる。このようなデバイス例を作製するために、厚さ3〜6nmのトンネル酸化物層をもつシリコンウェーハを作製する。本発明のリガンド組成物(例えば図5Fに示すPOSSリガンド)と結合したパラジウム量子ドットを界面活性剤交換又はリガンドの存在下の合成により作製し、トルエン等の有機溶媒に懸濁する。次に、酸化物を被覆したウェーハの表面にナノ結晶を湿潤状態でスピンコーティング又は滴下し、乾燥させる。過剰のナノ結晶をリンスすると、基本的にウェーハ上にナノ結晶単層が残る。酸素を含む雰囲気中でウェーハを250℃で10〜30分間焼成してリガンド組成物を硬化させ、第2のコーティング(例えばSiOシェル)を形成する。別の酸化物層(例えばSiO層)を化学蒸着によりナノ結晶に堆積し、クロムと金を酸化物層に蒸着して電極を形成する。その後、プログラム電圧と消去電圧を印加する前後にCV曲線を測定することによりデバイスを特性決定することができる。
【0159】
以上、明確に理解できるように本発明を多少詳細に記載したが、本発明の真の範囲を逸脱することなく形態や細目に種々の変更が可能であることは以上の開示から当業者に自明である。例えば、上記全技術及び装置は種々に組み合わせて使用することができる。本明細書に引用した全刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文献はその開示内容全体を全目的で参考資料として組込み、各刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文献を全目的で参考資料として組込むと個々に記載しているものとして扱う。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明でナノ構造リガンドとして使用されるシルセスキオキサン骨格の例を示す。
【図2】ナノ構造結合ヘッド基として付加されるリン酸部分をもつ個別シリケートリガンドの例を示す。
【図3】リガンド被覆量子ドットを使用した基板作製の模式図を示す。上段では、CdSeナノドットの表面を被覆する界面活性剤(結晶合成リガンド)をホスホシリケートリガンドに交換する。中段では、SiO表面をシランリガンドで被覆し、表面集合リガンド(SAL)の自己集合単層を形成する。下段では、リガンド交換ナノドットをSAL被覆基板に付加すると、集合、洗浄、及び硬化段階後にドット間にSiOを挿入した状態でSiO基板上にCdSeドットの細密充填単層が残る。
【図4】複数の隣接する量子ドット上の第1のコーティングから第2のコーティングへの変換を示す概略側面図(上段)及び平面図(下段)である。左側の図はドット間にSiOリガンドを挿入した状態のSiO基板上のCdSeドットの細密充填単層を示す。熱硬化中にリガンドはSiO誘電体に変換され、右側の図は熱硬化後にドット間にSiOを挿入した状態のSiO基板上のCdSeドットの細密充填単層を示す。
【図5A】本発明の第1のコーティング組成物の例を示す。
【図5B】本発明の第1のコーティング組成物の例を示す。
【図5C】本発明の第1のコーティング組成物の例を示す。
【図5D】本発明の第1のコーティング組成物の例を示す。
【図5E】本発明の第1のコーティング組成物の例を示す。
【図5F】本発明の第1のコーティング組成物の例を示す。
【図5G】本発明の第1のコーティング組成物の例を示す。
【図5H】本発明の第1のコーティング組成物の例を示す。
【図5I】本発明の第1のコーティング組成物の例を示す。
【図6】シルセスキオキサンリガンドヘプタシクロペンチルPOSSジシラノールジエトキシホスフェートの製造のための合成プロトコールの例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面をもつ個々のナノ構造と;
個々のナノ構造の第1の表面と結合しており、第1の光学的、電気的、物理的又は構造的特性をもつ第1のコーティングを含み、第1のコーティングが第1のコーティングと異なる光学的、電気的、物理的又は構造的特性をもつ第2のコーティングに変換可能である個別被覆ナノ構造。
【請求項2】
第1のコーティング又は第2のコーティングがナノ構造を封入している請求項1に記載の被覆ナノ構造。
【請求項3】
個別被覆ナノ構造の直径が約2nm〜約6nmである請求項1に記載の被覆ナノ構造。
【請求項4】
個々のナノ構造がナノ結晶、ナノドット、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノチューブ、量子ドット、ナノ粒子、ナノテトラポッド、ナノトライポッド、ナノバイポッド、又は分岐ナノ構造を含む請求項1に記載の被覆ナノ構造。
【請求項5】
第2のコーティングが酸化物を含む請求項1に記載の被覆ナノ構造。
【請求項6】
第2のコーティングがSiOを含む請求項5に記載の被覆ナノ構造。
【請求項7】
第1のコーティングが、
酸化シリコンケージ錯体を含む第1の成分と;
1個以上のナノ構造結合部分を含む第2の成分を含み、各ナノ構造結合部分が独立して酸化シリコンケージ錯体とカップリングしている請求項6に記載の被覆ナノ構造。
【請求項8】
各ナノ構造結合部分が独立して酸素原子を介して酸化シリコンケージ錯体とカップリングしている請求項7に記載の被覆ナノ構造。
【請求項9】
酸化シリコンケージ錯体がシルセスキオキサン組成物を含む請求項7に記載の被覆ナノ構造。
【請求項10】
シルセスキオキサンが閉じたケージ構造を含む請求項9に記載の被覆ナノ構造。
【請求項11】
シルセスキオキサンが部分的に開いたケージ構造を含む請求項9に記載の被覆ナノ構造。
【請求項12】
シルセスキオキサンが1個以上のボロン、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、炭素数3〜22の分岐もしくは直鎖アルカン、炭素数3〜22の分岐もしくは直鎖アルケン、フェニル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、イソオクチル、ノルボルニル、又はトリメチルシリル基、あるいはその組み合わせで誘導体化されている請求項9に記載の被覆ナノ構造。
【請求項13】
酸化シリコンケージ錯体が1個以上の個別シリケートを含む請求項7に記載の被覆ナノ構造。
【請求項14】
個別シリケートがホスホシリケートを含む請求項13に記載の被覆ナノ構造。
【請求項15】
ナノ構造結合部分がプロトン化又は脱プロトン化形態のホスホン酸、カルボン酸、アミン、ホスフィン酸、ホスホン酸エステル、スルホン酸、スルフィン酸、アルコール、アミド、又はチオール部分の1種以上を含む請求項7に記載の被覆ナノ構造。
【請求項16】
第1のコーティングが、
【化1】




【化2】




【化3】



【化4】




【化5】




【化6】



【化7】




【化8】




【化9】



【化10】


;および

【化11】



(式中、Rは有機基又は水素原子である)から構成される群から選択される請求項6に記載の被覆ナノ構造。
【請求項17】
Rが炭化水素基である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
Rがアルキル基、環状アルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基である請求項16に記載の方法。
【請求項19】
Rがイソブチル基、メチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1のコーティングが、
【化12】


(式中、Rはアルキル基、ヘテロ原子、又は電子求引基である);及び
【化13】


(式中、Rはハロゲン化物である)から構成される群から選択される請求項6に記載の被覆ナノ構造。
【請求項21】
第1の物理的特性が溶解性を含み、第2の電気的特性が非導電性を含む請求項1に記載の被覆ナノ構造。
【請求項22】
第1の光学的特性が第1の波長の発光を含み、第2の光学的特性が第2の波長の発光を含む請求項1に記載の被覆ナノ構造。
【請求項23】
第1のコーティングが加熱後に第2のコーティングに変換される請求項1に記載の被覆ナノ構造。
【請求項24】
第1のコーティングが放射線照射後に第2のコーティングに変換される請求項1に記載の被覆ナノ構造。
【請求項25】
複数の請求項1に記載の個別被覆ナノ構造を含むアレイ。
【請求項26】
メンバーナノ構造が1×1010/cmを上回る密度で存在している請求項25に記載のアレイ。
【請求項27】
メンバーナノ構造が1×1012/cmを上回る密度で存在している請求項25に記載のアレイ。
【請求項28】
メンバーナノ構造が基板の表面と結合している請求項25に記載のアレイ。
【請求項29】
基板がシリコンウェーハを含む請求項28に記載のアレイ。
【請求項30】
メンバーナノ構造の第1の部分が基板と結合しており、メンバーナノ構造の第2の部分が第1のコーティング又は第2のコーティングと結合している請求項28に記載のアレイ。
【請求項31】
複数の請求項1に記載の個別被覆ナノ構造を含むデバイス。
【請求項32】
デバイスが電荷保存デバイスを含む請求項31に記載のデバイス。
【請求項33】
デバイスがメモリーデバイスを含む請求項31に記載のデバイス。
【請求項34】
デバイスがフラッシュメモリーデバイスを含む請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
デバイスが光起電力デバイスを含む請求項31に記載のデバイス。
【請求項36】
複数のナノ構造と;
各メンバーナノ構造を分離するコーティングを含み、コーティングがメンバーナノ構造の表面に結合した複数のナノ構造結合部分を含み;
コーティングの堆積及びナノ構造結合部分とメンバーナノ構造の表面の結合後にコーティングを絶縁シェルに変換することができる被覆ナノ構造含有組成物。
【請求項37】
メンバーナノ構造が基板の表面と結合している請求項36に記載のナノ構造含有組成物。
【請求項38】
基板がシリコン基板を含む請求項37に記載のナノ構造含有組成物。
【請求項39】
シリコン基板が官能化又は酸化シリコン基板を含む請求項38に記載のナノ構造含有組成物。
【請求項40】
シリコン基板が第2のナノ構造結合部分とカップリングしたシランリガンドを更に含む請求項38に記載のナノ構造含有組成物。
【請求項41】
第2のナノ構造結合部分が1個以上のホスホン酸エステル、ホスホン酸、カルボン酸、アミン、ホスフィン、スルホン酸、スルフィン酸、又はチオール部分を含む請求項40に記載のナノ構造含有組成物。
【請求項42】
複数のナノ構造結合部分と第2のナノ構造結合部分が類似化学部分である請求項40に記載のナノ構造含有組成物。
【請求項43】
複数のナノ構造結合部分と第2のナノ構造結合部分が異なる化学部分である請求項40に記載のナノ構造含有組成物。
【請求項44】
更にトップコート組成物を含む請求項36に記載のナノ構造含有組成物。
【請求項45】
トップコート組成物がコーティングと同一材料を含む請求項44に記載のナノ構造含有組成物。
【請求項46】
トップコート組成物が絶縁シェルと同一材料を含む請求項44に記載のナノ構造含有組成物。
【請求項47】
剛性SiOシェルで包囲された複数の個別ナノ構造であって、メンバーナノ構造とそのシェルの直径が約6nm未満であり、メンバーナノ構造が1×1012/cmを上回る密度で存在している前記複数の個別ナノ構造。
【請求項48】
複数のナノ構造がアレイ状に配置されている請求項47に記載の複数のナノ構造。
【請求項49】
複数のナノ構造が基板の表面と結合している請求項47に記載の複数のナノ構造。
【請求項50】
更にトップコーティングを含む請求項49に記載の複数のナノ構造。
【請求項51】
トップコーティングが酸化シリコントップコーティングを含む請求項50に記載の複数のナノ構造。
【請求項52】
請求項47に記載の複数の個別ナノ構造を含むデバイス。
【請求項53】
デバイスが電荷保存デバイスを含む請求項52に記載のデバイス。
【請求項54】
ナノ構造上の堆積後シェル形成方法であって、
第1の表面と結合しており、剛性シェルに変換することが可能なリガンド組成物をもつ1個以上のナノ構造を提供する段階と;
リガンド組成物を硬化させ、ナノ構造の第1の表面に剛性シェルを生成することにより、堆積後にシェルを形成する段階を含む前記方法。
【請求項55】
第1の表面と結合したリガンド組成物をもつ1個以上のナノ構造を提供する段階が、
第1の表面と結合した1種以上の界面活性剤をもつ1個以上のナノ構造を提供する段階と;
第1の表面の界面活性剤をリガンド組成物と交換する段階を含む請求項54に記載の方法。
【請求項56】
1種以上の界面活性剤が1種以上のカルボン酸を含む請求項55に記載の方法。
【請求項57】
1種以上の界面活性剤が1種以上の脂肪酸を含む請求項55に記載の方法。
【請求項58】
1種以上の界面活性剤が1種以上のホスフィン又はホスフィンオキシドを含む請求項55に記載の方法。
【請求項59】
界面活性剤を交換する段階が、
ナノ構造を有機溶媒に懸濁又は溶解する段階と;
懸濁したナノ構造をリガンド組成物と混合することにより、第1の表面の界面活性剤をリガンド組成物と交換する段階を含む請求項55に記載の方法。
【請求項60】
有機溶解がトルエン、クロロホルム、クロロベンゼン、及びその組み合わせから構成される群から選択される請求項59に記載の方法。
【請求項61】
界面活性剤を交換する段階が、
低温有機物ストリッピング法を実施し、ストリッピングしたナノ構造を形成する段階と;
ストリッピングしたナノ構造を反応性酸素種で酸化する段階と;
ストリッピングしたナノ構造とリガンド組成物を混合することにより、第1の表面の界面活性剤をリガンド組成物と交換する段階を含む請求項55に記載の方法。
【請求項62】
反応性酸素種がUVオゾン発生、RF単原子酸素発生、又は酸素ラジカル発生により提供される請求項61に記載の方法。
【請求項63】
第1の表面と結合したリガンド組成物をもつ1個以上のナノ構造を提供する段階がリガンド組成物の存在下で1個以上のナノ構造を合成する段階を含む請求項54に記載の方法。
【請求項64】
1個以上のナノ構造を提供する段階が1個以上のナノワイヤー、ナノロッド、ナノチューブ、分岐ナノ結晶、ナノテトラポッド、ナノトライポッド、ナノバイポッド、ナノ結晶、ナノドット、量子ドット、ナノ粒子、分岐テトラポッド、又はその組み合わせを合成する段階を含む請求項54に記載の方法。
【請求項65】
1個以上のナノ構造を提供する段階が10nm未満の少なくとも1個の寸法をもつ半導体ナノ結晶を提供する段階を含む請求項54に記載の方法。
【請求項66】
1個以上のナノ構造を提供する段階が10nm未満の少なくとも1個の寸法をもつ金属ナノ結晶を提供する段階を含む請求項54に記載の方法。
【請求項67】
硬化段階が第1の表面と結合したリガンド組成物をもつ1個以上のナノ構造を加熱する段階を含む請求項54に記載の方法。
【請求項68】
加熱段階が500℃未満で実施される請求項67に記載の方法。
【請求項69】
加熱段階が200〜350℃で実施される請求項67に記載の方法。
【請求項70】
加熱段階が酸化雰囲気中で実施される請求項67に記載の方法。
【請求項71】
リガンド組成物が酸化シリコンケージ錯体とカップリングした複数のナノ構造結合部分を含む請求項54に記載の方法。
【請求項72】
酸化シリコンケージ錯体がシルセスキオキサン組成物を含む請求項71に記載の方法。
【請求項73】
リガンド組成物が、
【化14】




【化15】



【化16】




【化17】




【化18】




【化19】




【化20】




【化21】



【化22】




【化23】


;および

【化24】



(式中、Rは有機基又は水素原子である)から構成される群から選択される請求項54に記載の方法。
【請求項74】
Rが炭化水素基である請求項73に記載の方法。
【請求項75】
Rがアルキル基、環状アルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基である請求項73に記載の方法。
【請求項76】
Rがイソブチル基、メチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基である請求項75に記載の方法。
【請求項77】
リガンド組成物が、
【化25】


(式中、Rはアルキル基、ヘテロ原子、又は電子求引基である);及び
【化26】


(式中、Rはハロゲン化物である)から構成される群から選択される請求項54に記載の方法。
【請求項78】
剛性シェルが導電性組成物を含む請求項54に記載の方法。
【請求項79】
剛性シェルが電気絶縁性組成物を含む請求項54に記載の方法。
【請求項80】
剛性シェルが光透過性組成物を含む請求項54に記載の方法。
【請求項81】
1個以上のナノ構造を提供する段階が第2のナノ構造表面を介してナノ構造を基板にカップリングする段階を含む請求項54に記載の方法。
【請求項82】
基板がシリコン基板を含む請求項81に記載の方法。
【請求項83】
基板にカップリングした1個以上のナノ構造に平坦化組成物を付加する段階を更に含む請求項81に記載の方法。
【請求項84】
平坦化組成物を付加する段階がリガンド組成物の硬化段階の前に実施される請求項83に記載の方法。
【請求項85】
平坦化組成物を付加する段階がリガンド組成物の硬化段階の後に実施される請求項83に記載の方法。
【請求項86】
請求項54に記載の方法により製造された堆積後形成された剛性シェルをもつナノ構造。
【請求項87】
剛性シェルがシリコン又は酸化シリコンを含む請求項86に記載のナノ構造。
【請求項88】
剛性シェルが剛性誘電コーティングであり;剛性シェルを作製するために使用されるリガンド組成物が、a)酸化シリコンケージ錯体を含む第1の成分と、b)1個以上のナノ構造結合部分を含む第2の成分を含み、各ナノ構造結合部分が独立して酸化シリコンケージ錯体にカップリングされている請求項86に記載のナノ構造。
【請求項89】
各ナノ構造結合部分が独立して酸素原子を介して酸化シリコンケージ錯体にカップリングされている請求項86に記載のナノ構造。
【請求項90】
ナノ構造の直径が6nm未満である請求項86に記載のナノ構造。
【請求項91】
ナノ構造の直径が3.5nm未満である請求項90に記載のナノ構造。
【請求項92】
金属を含む1個以上のナノ構造を提供する段階と;
金属を酸化して金属酸化物を生成する段階と;
ナノ構造を処理する段階と;
金属酸化物を還元して金属を提供する段階を含むナノ構造の可逆的変性方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図5I】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−505773(P2008−505773A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527681(P2007−527681)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/020100
【国際公開番号】WO2005/123373
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(505082822)ナノシス・インク. (32)
【Fターム(参考)】