説明

ナノ構造化フェライト合金の加工処理方法並びに製品

【課題】ナノ構造化フェライト合金を含んでなる形成された物品が提供される。
【解決手段】有利には、この物品は押出によって形成されず、従って、コスト削減が提供される。その物品を形成する方法も提供され、こうして製造された物品は、ターボ機械部品として、特に、ガス又は蒸気タービンエンジンの大型ホットセクション部品として利用するのに充分な連続的サイクル疲労亀裂成長抵抗及び保持時間疲労亀裂成長抵抗を示す。他の実施形態では、NFAを含むターボ機械部品が提供され、幾つかのかかる実施形態ではターボ機械部品は押出してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ構造化フェライト合金(NFA)に関し、さらに具体的には、加工処理後のNFAを含む製品が厳しい環境での使用に適したものとなるように加工処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】

ガスタービンは過酷な環境で作動し、タービン部品、特にタービンホットセクション部品は高い作動温度及び応力に暴露される。こうした条件にタービン部品が耐えられるようにするため、かかる厳しい条件に耐えることのできる材料で部品を製造する必要がある。超合金は、その融解温度の90%に至る温度までその強度を維持し、優れた環境耐性を有するので、かかる厳しい用途で使用されている。特にニッケル基超合金は、ガスタービンエンジン全般で、例えばタービンブレード、ノズル、ホイール、スペーサー、ディスク、スプール、ブリスク及びシュラウド用途に使用されている。しかし、改良ガスタービン性能の設計には、さらに一段と高い温度性能を有する合金が必要とされる。
【0003】
ヘビーデューティータービン部品に用いられるニッケル基超合金は、所望の機械的特性を達成するため特殊な加工処理段階を必要とする。鋳造・鍛造(C&W)法といわれるこのプロセスは、真空誘導溶解(VIM)、エレクトロスラグ再溶解(ESR)及び真空アーク再溶解(VAR)の3重溶解操作で始まる。最初のVIM操作では、合金を形成する元素を一緒に混合するが、かなりの不純物及びマクロ偏析が存在する。化学的に純粋で均質なインゴットを製造するには、その後のESR及びVAR段階が必要とされる。得られるVARインゴットの結晶粒は、所要の機械的特性を得るには粗大すぎる。そのため、インゴットを二重据込み鍛造・引抜加工によってつぶしてニッケル基超合金組織の再結晶及び微細化を生じさせる。最後に、ビレットを鍛造し、所望の最終形状へと機械加工する。
【0004】
ナノ構造化フェライト合金(NFA)は、機械的合金化段階の後の熱間圧密化中に析出するナノメートルサイズの酸化物クラスターに由来すると思われる例外的な高温特性を示す新しい種類の合金である。これらの酸化物クラスターは高温まで存在し、使用中強固で安定なミクロ組織をもたらす。必要な特性を得るためにC&Wプロセスを必要とする多くのニッケル基超合金とは異なり、NFAは異なる加工処理経路で製造される。C&Wプロセスと同様に、合金組成はVIM作業で得られる。しかし、最初の溶解後に、NFAは微粒化(アトマイズ)され、固体粉末粒子として回収される。粉末粒子を次いで酸化物添加剤と混合し、酸化物添加剤が金属マトリックス中に溶解するまでスチールショットの存在下でミル加工される。ESR及びVAR段階は必要とされない。
【0005】
例えばヘビーデューティーターボ機械の大型ホットセクション部品で最適に有用であるためには、その材料が許容可能な連続サイクル疲労亀裂伝播速度と許容可能な保持時間疲労亀裂伝播速度の両方を示すことも望ましいことがあろう。望ましくは、かかる材料はまた、異なる組の所望又は所要の特性を有し得る、小型ターボ機械部品、例えばジェットエンジンに使用するディスクに利用することもできる。また、かかる合金はいずれも、望ましいことに、従来の鋳造・鍛造プロセスよりエネルギー集約的でなく及び/又は時間のかからないプロセスを利用して所望の物品を製造することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】

【特許文献1】米国特許第6974506号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある態様では、ナノ構造化フェライト合金を含んでなる形成された物品が提供され、この物品は押出で形成されたものではない。
【0008】
ナノ構造化フェライト合金を含んでなるターボ機械部品も提供される。
【0009】
別の態様では、ナノ構造化フェライト合金を含んでなるターボ機械部品を形成する方法が提供される。この方法は押出を含まない。
【0010】
別の態様では、ナノ構造化フェライト合金を含んでなるターボ機械部品を形成する方法が提供され、この方法は、ナノ構造化フェライト合金を真空誘導溶解で溶解し、そのナノ構造化フェライト合金の溶解物を微粒化し、その微粒化した粉末を分級し、その微粒化された粉末を酸化物の存在下で、その酸化物が金属マトリックス中に溶解するまでミル加工し、その粉末を不活性雰囲気下で缶に入れ、熱間静水圧プレス成形することを含んでいる。
【0011】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより、より良く理解されるであろう。図面中、類似の符号は全図面を通じて類似の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明で提供される方法の1つの実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特に定義されない限り、本明細書で使用する技術及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で使用する場合、用語「第1の」、「第2の」、などは順序、量、又は重要度を意味するものではなく、1つの要素を別の要素から区別するために用いられている。また、単数形態の用語は量の限定を意味するものではなく、参照したものが少なくとも1つ存在することを意味しており、用語「前」、「後」、「底」及び/又は「頂」は、特に断らない限り、単に説明の便宜上使用されており、いかなる1つの位置又は空間的配向にも限定されるものではない。範囲が示されている場合、同じ成分又は性質に関する全ての範囲の終点は包括的であり独立して組合せ可能である(例えば、範囲「約25wt%以下、又はさらに具体的には、約5〜約20wt%」は「約5〜約25wt%」などの範囲の終点及び全ての中間の値を含む)。量に関連して使用する修飾語「約」は表示した値を含み、背景事情により示唆される意味を有する(例えば、特定の量の測定に伴う程度の誤差を含む)。
【0014】
本発明により、ナノ構造化フェライト合金を含み、押出で形成されたものではない形成された物品が提供される。今回、驚くべきことに、かかる合金から押出段階を使用することなく形成された物品を作成することができることが判明した。これは、押出が最終部品の幾何学的大きさを制限するので、有利である。すなわち、押出段階では断面積の低下が必要であり、このため部分の直径が多くの用途に使用する物品を除外する大きさに制限される。
【0015】
他の実施形態では、本発明は、所望により押出によって形成し得る小型部品を包含する。例えば、航空宇宙用途に使用する部品をNFAから有利に形成し得、その場合NFAはその部品に、従来のニッケル基合金では達成できない、かかる用途に望ましい特性をもたらすことができる。
【0016】
押出、熱間静水圧プレス成形、熱間静水圧プレス成形と鍛造、又はロール締め固めのいずれで形成されたにしても、形成された物品は、1種以上のナノ構造化フェライト合金(NFA)を含む。NFAは、非常に高い密度、すなわち、約1018−3以上、又は約1020−3以上、さらに約1022−3以上のnm−スケール、すなわち、約1nm〜約100nm、又は約1nm〜約50nm、さらに又は約1nm〜約10nmの、Ti−O及びNFA又は合金マトリックスを調製するのに使用した酸化物に由来する1種以上の他の元素を含むナノ構造(nanofeature、NF)で分散強化されたステンレス鋼マトリックスからなる新しい種類の合金である。例えば、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウムをNFAの調製に使用することができ、この場合ナノ構造はイットリウム(Y)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Z)、ハフニウム(Hf)又はこれらの組合せを含み得る。合金マトリックスに由来するFe、Cr、Mo、W、Mn、Si、Nb、Al、Ni、又はTaのような遷移金属もナノ構造の創成に関与することができる。
【0017】
対照的に、従来の酸化物分散強化(ODS)合金は一般に微細化されている(refined)がより大きな平衡酸化物相を含有しており、この酸化物添加剤は粉末冶金プロセスを通じて安定であり、すなわち、酸化イットリウムがマトリックス合金に添加されたのであれば、合金化段階後酸化イットリウムが存在し、上記ナノ構造(NF)が有意に形成されることはないであろう。NFAでは、添加された酸化物のほぼ全てではないとしても大部分が粉末磨砕(attrition)中に合金マトリックスに溶解し、締め固めプロセス中粉末の温度が上がるときに前述のナノ構造の形成に関与する。上記のように、このNFA内の新しい酸化物は母材合金中に存在する遷移金属と最初に添加した酸化物の金属元素とを含み得る。
【0018】
NFAステンレス鋼マトリックスは殆どの場合フェライトステンレス鋼であるが、マルテンサイト、二相及びオーステナイトステンレス鋼も可能なマトリックス合金である。鋼マトリックス相を変えると環境耐性及び材料延性の制御を向上させることができることがある。
【0019】
いずれのNFAも開示された物品に形成することができる。望ましくは、NFAはクロムを含み得る。クロムは耐食性を確保するために重要である可能性があり、従って約5wt%以上、又は約9wt%以上の量でNFAに配合し得る。約30wt%以下又は約20wt%以下又は約14wt%以下の量を含ませることができる。好適には、NFAの主成分であるクロムと鉄はいずれも、特に幾つかの用途ではNFAが取って代わり得るニッケル基超合金と比較して容易に入手可能であって比較的低コストである。
【0020】
NFAはまた望ましくはある量のチタンを含み得る。チタンは沈降酸化物の形成に関与し得、従って、約0.1〜約2wt%、又は約0.1〜約1wt%又は約0.1〜約0.5wt%の量のチタンをNFAに含ませるのが望ましい。
【0021】
NFAはさらに、上記ナノ構造を、約1018−3以上、又は約1020−3以上、さらに又は約1022−3以上の数密度で含むのが望ましい。ナノ構造(複数のこともある)の組成はNFA及び/又は合金マトリックスを調製するのに利用して基体きた酸化物に依存する。通例、ナノ構造はTi−O及びY、Al、Zr、Hf、Fe、Cr、Mo、W、Mn、Si、Nb、Al、Ni、又はTaの1種以上を含む。
【0022】
物品の形成に使用するのに適した1つの代表的なNFAは、約5〜約30wt%のクロム、約0.1〜約2wt%のチタン、約0〜約5wt%のモリブデン、約0〜約5wt%のタングステン、約0〜約5wt%のマンガン、約0〜約5wt%のケイ素、約0〜約2wt%のニオブ、約0〜約2wt%のアルミニウム、約0〜約8wt%のニッケル、約0〜約2wt%のタンタル、約0〜約0.5wt%の炭素及び約0〜約0.5wt%の窒素を含み得、残部は鉄及び付随する不純物であり、Ti−O及びNFAの調製中に添加した酸化物に由来するか又は合金マトリックスに由来する1種以上の元素を含むナノ構造の数密度が約1018−3以上である。
【0023】
他の実施形態では、NFAは、約9〜約20wt%のクロム、約0.1〜約1wt%のチタン、約0〜約4wt%のモリブデン、約0〜約4wt%のタングステン、約0〜約2.5wt%のマンガン、約0〜約2.5wt%のケイ素、約0〜約1wt%のニオブ、約0〜約1wt%のアルミニウム、約0〜約4wt%のニッケル、約0〜約1wt%のタンタル、約0〜約0.2wt%の炭素及び約0〜約0.2wt%の窒素を含み得、残部は鉄及び付随する不純物であり、Ti−O及びNFAの調製中に添加した酸化物に由来するか又は合金マトリックスに由来する1種以上の元素を含むナノ構造の数密度が約1020−3以上である。
【0024】
さらに他の実施形態では、NFAは、約9〜約14wt%のクロム、約0.1〜約0.5wt%のチタン、約0〜約3wt%のモリブデン、約0〜約3wt%のタングステン、約0〜約1wt%のマンガン、約0〜約1wt%のケイ素、約0〜約0.5wt%のニオブ、約0〜約0.5wt%のアルミニウム、約0〜約2wt%のニッケル、約0〜約0.5wt%のタンタル、約0〜約0.1wt%の炭素及び約0〜約0.1wt%の窒素を含み得、残部は鉄及び付随する不純物であり、このNFAはTi−O及びNFAの調製中に添加した酸化物に由来するか又は合金マトリックスに由来する1種以上の元素を含むナノ構造の数密度が約1022−3以上である。
【0025】
形成される物品は、望ましくはNFAで付与される特性を有するあらゆる物品であり得る。本明細書に記載した原理の適用により特に恩恵を受け得る1つの代表的な種類の物品はターボ機械部品、特に使用中に高温になるものからなる。
【0026】
従来、これらの用途にはガンマプライム(γ′)又はガンマダブルプライム(γ″)相で強化されたニッケル基超合金が使用されている。例えば、γ″で強化されたヘビーデューティータービンホイールは現在最高作動温度が1000°F〜1100°Fの範囲である。しかし、温度が1100°Fを超えて上昇すると、多くのγ″強化ニッケル基超合金の保持時間亀裂成長抵抗はヘビーデューティータービンホイールの設計要件を満たさない。その結果、より高い作動温度でのみ達成することができる効率利得及びCO低下がニッケル基超合金の材料特性の制限のために達成できない。
【0027】
それ故、幾つかの実施形態では、形成される物品は好適にはヘビーデューティーガスタービン又は蒸気タービンの大型ホットセクション部品からなり得る。かかる物品、特にホイール及びスペーサーは通例直径が60インチ以上であり、押出では形成することができない。
【0028】
かかる実施形態では、すなわち、形成される物品が単一の合金から熱間静水圧プレス成形、熱間静水圧プレス成形と鍛造又はロール締め固めによって製造されるヘビーデューティータービンホイールからなる場合、使用する合金はホイール内の位置によって様々な条件に耐えることができる必要がある。リムが1100°Fを超えて作動するとき、ボアは900°F以下の温度で作動することができる。この温度で、合金は、およそ120ksiの引張応力に耐えることができなければならず、一方重要なことには全ての位置で充分な疲労亀裂成長抵抗も示さなければならない。
【0029】
今回、驚くべきことに、NFAをかかる用途に利用することができ、所望の及び/又は所要のリム及びボア特性を提供することができることが判明した。さらに具体的には、NFAを含む物品は、ASTM E647で測定して1000°F、応力拡大係数(k)45ksi×in0.5で約1.20E−4in/サイクル未満、又は約9.03E−5in/サイクル未満の連続サイクル疲労亀裂伝播速度を示すことができる。また、NFAを含む物品は、ASTM E1457で測定して1000°F、k=45ksi×in0.5で約1.80E−3in/hr未満、又は約1.35E−3in/hr未満の保持時間疲労亀裂伝播速度を示すことができる。
【0030】
好適には、記載された物品は従来の鋳造・鍛造プロセスでは形成されないので、時間が節約される。幾つかの実施形態では、物品は押出を含むプロセスでは形成されないので、最終の部品サイズは特に制限されない。NFAで提供され得る特性を必要とする部品が通例ヘビーデューティータービンで使用されるものより小さい可能性がある航空宇宙タービン用途のような他の実施形態では、好適には部品は押出し得る。
【0031】
物品が押出なしで形成される実施形態では、本発明で提供される物品は最初に真空誘導溶解(VIM)でNFAを溶解することによって形成することができる。真空誘導溶解の結果、全ての元素種が溶解し互いに混合されて所定の合金を形成する。そのためには、所定の元素を真空誘導溶解炉に装入し、混合物が溶解するまで加熱する。そのために必要とされる条件は望ましく利用される元素に依存し、当業者は容易に決定することができる。
【0032】
底部に気孔を有する真空誘導溶解系(bottom pore vacuum induction melting system)を使用することができ、その場合溶解された金属は不活性ガス微粒化器を通って落下する。この微粒化器は任意の不活性ガスを利用することができるが、殆どの場合Ar、N、又はHeを使用する。幾つかの実施形態では、アルゴンを利用する。このガス微粒化器で粉末粒子が生成し、この粒子は飛行中に冷却され、完全に固化及び/又は凍結されたら回収される。
【0033】
その後、微粒化した粉末を、まだ不活性ガスに覆われているうちに、最終の粉末カット(powder cut)まで分級する。通例、かかる粉末カットは、粒径分布を狭くし、充填密度を改良し、あらゆる大きな不純物を除去するために行われる。この粉末を、不活性ガスの被覆を維持し続けながら磨砕容器に移す。微粒化した粉末に加えて、所望の酸化物及びスチールショットを磨砕容器に添加する。任意の酸化物を任意の量で利用することができるが、通例、酸化イットリウム、アルミナ酸化物、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウムをNFAの総重量に基づいて1wt%以下の量で利用する。スチールショットは、通例5mmであり、ショットと粉末の質量比が約10:1となるように添加する。次に、粉末を、所望の酸化物が金属マトリックスに溶解するまでミル加工する。このミル加工時間は選択した酸化物によって変化し得、通例10時間より長くなり得る。
【0034】
粉末を不活性ガス被覆下で磨砕機から取り出し、スチールショットを除去する。スチールショットを除去したら、粉末を熱間静水圧プレス成形(HIP)用の容器(又は缶)に入れる。次に、この缶を室温で、許容可能な漏れ戻り率(leak back rate)が達成されるまで排気する。次いで、この缶を例えば約550°Fに加熱し、例えばその温度で許容可能な漏れ戻り率が達成されるまで再び排気する。
【0035】
排気し密封したら、粉末を次に熱間静水圧プレス成形で圧密化する。さらに具体的には、缶を、望ましく圧密化されたNFAに基づいて適当な条件で熱間静水圧プレス成形する。かかる条件には通例、約20ksi以上、又はさらに30ksiの圧力、少なくとも約900℃、又は1000℃、又は1100℃以上の温度で、少なくとも約1時間、又は2時間、又は3時間、又は4時間以上が含まれる。熱間静水圧プレス成形後、ナノ構造化フェライト合金は理論密度の95%を超える密度を有すると期待される。
【0036】
幾つかの実施形態では、HIP缶を約1000℃、又は1100℃、又は1200℃の温度に再加熱した後開放型鍛造プレスに移し、缶の高さを少なくとも約30%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%低下させることができる。缶を鍛造プレスから取り出し、缶全体が再度約1000℃、又は1100℃、又は1200℃の温度になるまで再加熱する。次に、缶を開放型鍛造プレスに移して据込む(upset)。すなわち、缶の高さは二回目に少なくとも約30%、又は少なくとも約40%又は少なくとも約50%だけ下げられる。次に、鍛造された材料を空冷する。鍛造後、ナノ構造化フェライト合金は理論密度の98%より大きい密度を有する。幾つかの実施形態では、冷たくなったら、本物品を鍛造品から機械加工して所望の物品を提供することができる。
【0037】
また、物品はロール締め固めによって形成してもよい。かかる実施形態では、ミル加工後鋼球を除去し、粉末を分級したら、所望により粉末をロールミル(圧延装置)に供給することができ、そこで粉末を締め固めてシートにする。その後、金属のシートを焼結して緻密な物体(dense body)を創成してもよい。幾つかの実施形態では、焼結したシートをその後複数のロール加工及び焼結操作にかけることができる。
【0038】
図1は、提供された本方法の1つの実施形態を概略的に示す。さらに具体的には、方法100はNFAの元素の真空誘導溶解という第1の段階102を含んでいる。所定の元素を真空誘導溶解炉に装入し、混合物が溶解するまで加熱する。底部に気孔を有する真空誘導溶解系を使用して、溶解した金属が不活性ガス微粒化器を通って落下するようにしてもよい。
【0039】
第2の段階104では、溶解した金属を粉末微粒化及び磨砕にかける。微粒化段階で粉末粒子が生成し、これが飛行中に冷却され、固体になったら収集される。その後、微粒化した粉末を段階106で分級又は磨砕し、分級した粉末を酸化物の存在下で、酸化物が金属マトリックスに溶解するまでミル加工する。
【0040】
粉末を次に容器に入れ、排気した後、段階108で熱間静水圧プレス成形で圧密化する。熱間静水圧プレス成形の後、ナノ構造化フェライト合金は理論密度の95%より大きい密度を有すると期待される。また、粉末を上記のようにロール締め固めを用いて圧密化してもよい。
【0041】
場合により、得られる圧密化されたビレットを次に段階110で鍛造し、段階112で機械加工する。鍛造後、ナノ構造化フェライト合金は理論密度の98%より大きい密度を有し得る。
【実施例】
【0042】
代表的であって非限定的であることを意味する以下の実施例で、本発明で提供されるNFAの幾つかの実施形態を含む物品の様々な実施形態の一部を製造するための組成と方法を例示する。
【0043】
実施例1
真空誘導溶解炉に次の組成物:Fe−14Cr−0.4Ti−3W−0.5Mn−0.5Si(wt%)を装入する。合金が溶解し充分に混合されたら、アルゴンガスで微粒化する。不活性ガスの被覆下にあるうちに、粉末を最終カットサイズ+325/−100に分級し、容器内に密封する。粉末を不活性ガス被覆を維持し続けたまま磨砕容器に移す。微粒化した粉末に加えて、0.25重量パーセントの酸化イットリウムと5mmのスチールショットを磨砕容器に添加する。スチールショットは、ショット対粉末の質量比が10:1となるように添加する。次に、粉末を、およそ12時間又は酸化イットリウムが金属マトリックス中に溶解するまでミル加工する。粉末を不活性ガス被覆下で磨砕機から取り出し、スチールショットを除去する。スチールショットを除去したら、粉末を熱間静水圧プレス成形(HIP)用の容器(又は缶)に入れる。次に、缶を室温で、漏れ戻り率が15ミクロン/時間又はこれより良くなるまで排気する。次いで、この缶を300℃に加熱し、この温度で漏れ戻り率が15ミクロン/時間又はこれより良くなるまで排気する。排気し、密封したら、次にHIP缶を1150℃の温度で30ksiで4時間HIPする。
【0044】
HIPに続いて、まだ缶に入っている材料を、アルゴンが流れている炉内で1150℃の温度に加熱する。缶を開放型鍛造プレスに移し、1in/minの移動速度で高さを50%減らす。缶を鍛造プレスから取り出し、炉内で1時間又は缶全体が再度1150℃の温度になるまで再加熱する。次に、缶を開放型鍛造プレスに移し、1in/minの移動速度で二回目の50%の据込みをする。鍛造した材料を次に空冷する。
【0045】
冷めたら、鍛造物から機械的試験用試片を機械加工する。特に、圧縮引張(compact tension)C(T)試片をR−C配向で機械加工する。このC(T)試片はASTM E647付録A1に規定されている幾何学に適合する。サイクル亀裂成長速度試験はASTM E647に従って実施し、クリープ亀裂成長速度試験はASTM E1457に従って実施する。
【0046】
以上、本発明の幾つかの特徴のみを例示し説明して来たが、多くの修正と変更が当業者には明らかであろう。従って、特許請求の範囲は、かかる修正と変更を全て本発明の真の思想内に入るものとして包含するものと了解されたい。
【符号の説明】
【0047】
100 方法
102 段階
104 段階
106 段階
108 段階
110 段階
112 段階

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ構造化フェライト合金を含んでなり、押出によって形成されたものではない、形成された物品。
【請求項2】
ナノ構造化フェライト合金が、約5〜約30wt%のクロム、約0.1〜約2wt%のチタン、約0〜約5wt%のモリブデン、約0〜約5wt%のタングステン、約0〜約5wt%のマンガン、約0〜約5wt%のケイ素、約0〜約2wt%のニオブ、約0〜約2wt%のアルミニウム、約0〜約8wt%のニッケル、約0〜約2wt%のタンタル、約0〜約0.5wt%の炭素及び約0〜約0.5wt%の窒素を含み、残部が鉄及び付随する不純物であり、Ti−O及びNFAの形成中に添加された酸化物に由来するか、又は合金マトリックスに由来する1種以上の元素を含むナノ構造の数密度が約1018−3以上である、請求項1記載の物品。
【請求項3】
ナノ構造化フェライト合金が、約9〜約14wt%のクロム、約0.1〜約0.5wt%のチタン、約0〜約3wt%のモリブデン、約0〜約3wt%のタングステン、約0〜約1wt%のマンガン、約0〜約1wt%のケイ素、約0〜約0.5wt%のニオブ、約0〜約0.5wt%のアルミニウム、約0〜約2wt%のニッケル、約0〜約0.5wt%のタンタル、約0〜約0.1wt%の炭素及び約0〜約0.1wt%の窒素を含み、残部が鉄及び付随する不純物であり、Ti−O及びNFAの形成中に添加された酸化物に由来するか、又は合金マトリックスに由来する1種以上の元素を含むナノ構造の数密度が約1022−3以上である、請求項2記載の物品。
【請求項4】
1種以上の元素がY、Al、Hf、又はZrを含む、請求項3記載の物品。
【請求項5】
ナノ構造化フェライト合金を含んでなるターボ機械部品。
【請求項6】
エネルギー用途に有用である、請求項5記載のターボ機械部品。
【請求項7】
ホイール又はスペーサーを含む、請求項6記載のターボ機械部品。
【請求項8】
航空宇宙用途に有用なディスクを含む、請求項5記載のターボ機械部品。
【請求項9】
ナノ構造化フェライト合金を含むターボ機械部品を形成する方法であって、当該方法が押出を含まない、方法。
【請求項10】
ナノ構造化フェライト合金を含むターボ機械部品を形成する方法であって、
ナノ構造化フェライト合金を真空誘導溶解で溶解する段階、
ナノ構造化フェライト合金溶解物を微粒化する段階、
微粒化した粉末を酸化物の存在下で、酸化物が金属マトリックス中に溶解するまでミル加工する段階及び
粉末を不活性雰囲気下で缶に入れ、熱間静水圧プレス成形する段階
を含んでなる、方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−122246(P2011−122246A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275190(P2010−275190)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】