説明

ナノ樹脂粒子およびその製造方法

【解決手段】本発明は、平均粒子径が30nm未満でありかつ真球度が5nm以下であり、50nm以上80nm未満の範囲内の粒子の含有量が10%以下であり、80nm以上の粒子の含有量が1%以下であるナノ樹脂粒子分散液であり、このナノ樹脂は、水溶性重合開始剤および滴下重合する重合性単量体100重量部に対して3重量部以上の量の乳化剤を含有する水性反応媒体中に、攪拌下に乳化剤が溶解された重合性単量体を滴下することにより平均粒子径30nm未満のナノ樹脂粒子が分散液に分散した状態で得られる
【効果】本発明のナノ樹脂粒子の製造方法によれば、平均粒子径が30nm未満の樹脂粒子の分散液を製造でき、本発明によれば単分散粒子を効率よく製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は30nm未満の平均粒子径を有し、粒子径がそろった単分散樹脂粒子を効率よく製造する方法に関する。さらにこのようにして得られたナノ樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
超微粒子のポリマー粒子、ラテックス粒子などは、粒子が分散した分散液の粒度調整、紙などの表面コーティング剤、成形体の耐衝撃性の改善剤、各種混和剤などとして広汎に使用されており、特に近時、ナノテクノロジーを利用した超微細粒子の新たな用途が開発されている。
【0003】
このようなナノ樹脂粒子は、一般に乳化重合、特にマイクロエマルジョン重合により製造することが可能であるとされており、通常の乳化重合によっても50nm〜1000nm程度のナノ樹脂粒子を製造することができる。しかしながら、従来の乳化重合で、50nmを下回るような超微細粒子を製造しようとすると、乳化重合液中での粒子の安定性が充分ではなく、微細分散した粒子が反応中に凝集するなど、反応時における粒子の安定性が不充分であり、粒度分布の狭い超微粒子状の樹脂粒子を使用することは大変困難であった。
【0004】
すなわち、一般に乳化重合においては、乳化剤を用いて水性媒体に重合性単量体を微細分散させ、この分散液に重合開始剤を滴下するなどの方法により樹脂粒子が製造されており、乳化剤を用いて水性媒体中に分散させた重合性単量体の分散安定性が充分ではなく、特に30nm未満に微細分散した重合性単量体微細分散粒子の安定性は低いために、反応途中、あるいは反応後に微細粒子が凝集して目的とする30nm未満の独立した粒子を製造しにくく、また平均粒子径が30nm未満であったとしても、その粒子に含まれる粗大粒子、例えば80nm以上の粗大粒子の含有率が高くなるという問題がある。
【0005】
こうした微細粒子の製造に関しては種々の方法が提案されている。
例えば、特開平5-209007号公報(特許文献1)には、「ラジカル重合可能なエチレン性単量体100重量部と反応性乳化剤2〜10重量部の存在下に乳化重合する水溶性樹脂分散体の製造方法において、水と上記単量体の0〜70重量%と上記反応性乳化剤の10〜80重量%とを入れた反応釜に、上記単量体の30〜100重量%と上記反応性乳化剤の20〜90重量%と水とを含む混合液を滴下して有機重合開始剤によりラジカル重合することを特徴とする水性樹脂分散体の製造方法。」の発明が開示されている。この特許文献1では、反応性乳化剤をエチレン性単量体と共存させて42〜65nm程度の樹脂粒子が得られることが示されているが、必須成分として反応性乳化剤を使用する必要があり、したがって、得られる樹脂粒子に反応性乳化剤が取り込まれてしまい、得られる樹脂粒子が限られてしまう。
【0006】
また、特開平7-165802号公報(特許文献2)には、概略、「約15〜約50重量%の固体を含む水性分散液の製造方法であって、(a)水性環境において重合するエチレン系不飽
和モノマーを、このモノマー100部あたり6.3部以下の界面活性剤および水を含む半応用気に徐々に加えて、(b)1種以上の重合開始剤を前記反応容器に徐々に加えること、(c)前記1種以上のエチレン性不飽和モノマーを重合させ、この重合したものの体積中央平均粒度を100nm未満にすることを含む方法。」が開示されている。そして、例4には、4.
17部のナトリウムラウリルスルフェートおよび313部の水を含む溶液に水に溶解した0.25部の過硫酸アンモニウムを加え、さらに5分後に53重量部のブチルアクリレートと47部のメチルメタクリレートの混合物を2時間かけて加えて、さらに1/2時間92℃で反応させて固形分24.85%のラテックスの分散液を製造した旨の記載があり、
得られたラテックスの体積平均中央粒子径は30nm未満であることが記載されている。しかしながら、このように固形分濃度が高いと、得られる粒子中に含有される粗大粒子が多くなり、得られる粒子の粒度分布が広くなるという問題がある。なおここで、体積中央平均粒度は、光散乱強度から得られた粒径を基にして、これに屈折率などのパラメータを用いて算出した粒径であり、光散乱強度から得られる粒径とは同義ではない。
【0007】
さらに、特開平9-302006号公報(特許文献3)には、概略、「特定の式で表される疎水性
単量体100重量部あたり、乳化剤0.5〜8重量部の存在下に、全単量体を連続的に添加して乳化重合することにより、平均粒子径1〜50nmの超微粒子ポリマーラテックスを製造する方法」が開示されている。特に比較例5には、蒸留水500gに、乳化剤であるエマール10を360g、ロンガリット0.336g、硫酸鉄(II)七水物を0.00144g、EDTAを0.00192gを加えて攪拌下に窒素気流中で50℃に保ち、この反応溶媒中にメチルメタクリレート(MMA)212.8g、2-エチルヘキシルアクリレート16
.8g、アクリル酸(AA)7.0g、メタクリル酸(MAA)3.4gおよびクメンハイドロパーオキサイド(CHP)を0.72g加えて重合させた例が示されており、この特許文献
3に記載の方法で、8.6〜43.6nm程度の平均粒子径を有する粒子を製造することができることが示されている。
【0008】
しかしながら、ここで使用されているクメンハイドロパーオキサイドのような重合開始剤は、水溶性ではなく、従って重合開始剤を水性媒体中に予め溶解させて使用することはできない。このために特許文献3では、重合開始剤は、エチレン性単量体とともに水性媒体中に添加されており、使用する重合性単量体の種類によっては製造されたラテックスが増粘凝集するなど、製造生成物が限られるとの問題がある。
【0009】
このように従来の方法によっても30nm未満の粒子径を製造することは可能であるが、粗大粒子の含有率が高くなったり、粒子の粒度分布が広くなるなど、30nm未満の平均粒子径を有する微細樹脂粒子であって、粒度分布が狭い単分散粒子を効率よく製造する方法は確立していないのが現状である。
【特許文献1】特開平5-209007号公報
【特許文献2】特開平7-165802号公報
【特許文献3】特開平9-302006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、平均粒子径が30nm未満であって、しかも粒子径の揃った単分散樹脂粒子を効率よく製造する方法およびこの方法で製造されるナノ粒子が分散された分散液を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、平均粒子径が30nm未満でありかつ真球度が5nm以下であり、50nm以上80nm未満の範囲内の粒子の含有量が10%以下であり、80nm以上の粒子の含有量が1%以下であるナノ樹脂粒子分散液である。
【0012】
本発明のナノ樹脂粒子の製造方法は、平均粒子径30nm未満のナノ樹脂粒子を製造する方法であって、水溶性重合開始剤および滴下重合する重合性単量体100重量部に対して3重量部以上の量の乳化剤を含有する水性反応媒体中に、攪拌下に乳化剤が溶解された重合性単量体を滴下することを特徴としている。
【0013】
本発明において、上記ナノ樹脂粒子が、
(a)炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン系単
量体、および、グリシジル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の単量体:30〜100重量%を(共)重合してなるナノ樹脂粒子であるか、
(a)炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン系単量
体、および、グリシジル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の単量体:90〜100重量%を(共)重合してなるナノ樹脂粒子であるか、
上記ナノ樹脂粒子が、
(a)炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン系単量
体、および、グリシジル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の単量体:80〜90重量%、
(b)水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有アルキル(メタ)アク
リレート、および、マレイミド基含有モノマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の単量体:10〜20重量%を共重合して得られるナノ樹脂粒子であるか、
上記ナノ樹脂粒子が、
(a)炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン系単量
体、および、グリシジル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の単量体:30〜80重量%、
(b)水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有アルキル(メタ)アク
リレート、および、マレイミド基含有モノマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の単量体:0〜10重量%、
(c)重合性不飽和結合を2つ以上有するモノマー:20〜70重量%を共重合して得ら
れるナノ樹脂粒子のいずれかであることが好ましい。
【0014】
本発明におけるナノ樹脂粒子の製造では、水性反応溶媒中に通常の乳化重合をするための乳化剤の量と比較すると大過剰の乳化剤を溶解させ、さらにこの水性反応媒体に乳化剤を加えて、滴下された重合性単量体が滴下後、速やかにナノオーダーの微細な樹脂粒子として水性反応溶媒中に分散する。特に重合性単量体中にも乳化剤を配合することにより、きわめて迅速に重合性単量体が水性反応媒体に微分散して反応するので、隣接するナノオーダーの分散粒子とは独立して反応が進行し、これらの粒子が凝集して凝集二次粒子を形成することもなく粒子径の揃った単分散粒子を製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、平均粒子径が30nm未満であって、50nm以上80nm未満の範囲の粒子の含有量が10%以下であり、さらに80nm以上の粒子の含有率が1%以下であるような単分散ナノ樹脂粒子を分散液の形態で効率よく製造することができる。
【0016】
本発明によれば、単分散のナノ樹脂粒子を効率よく製造することができ、しかもこのナノ樹脂粒子は真球度が大変良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明のナノ樹脂粒子およびその製造方法について具体的に説明する。
本発明のナノ樹脂粒子分散液は、分散媒中にナノ樹脂粒子が分散してなり、ここで分散液に分散しているナノ樹脂粒子は、平均粒子径が30nm未満でありかつ真球度が5nmであり、50nm以上80nm未満の範囲内の粒子の含有量が10%以下であり、80nm以上の粒子の含有量が1%以下であるナノ樹脂粒子の分散液である。
【0018】
さらに本発明の分散液中に分散されているナノ樹脂粒子は、
(a)炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン系単
量体、および、グリシジル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の単量体:30〜100重量%を(共)重合してなるナノ樹脂粒子であるか、
(a)炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン系単量
体、および、グリシジル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の単量体:90〜100重量%を(共)重合してなるナノ樹脂粒子であるか、
(a)炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン系単量
体、および、グリシジル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の単量体:80〜90重量%、
(b)水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有アルキル(メタ)アク
リレート、および、マレイミド基含有モノマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の単量体:10〜20重量%を共重合して得られるナノ樹脂粒子であるか、
(a)炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン系単量
体、および、グリシジル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の単量体:30〜80重量%、
(b)水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有アルキル(メタ)アク
リレート、および、マレイミド基含有モノマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の単量体:0〜10重量%、
(c)重合性不飽和結合を2つ以上有するモノマー:20〜70重量%を共重合して得ら
れるナノ樹脂粒子である。
【0019】
なお、本発明において平均粒子径は、ゼータ電位粒子径測定装置(ゼータサイザー3000HSA)を用いて測定し、光散乱強度から算出した値である。また、本発明において真球度
は、ナノ樹脂粒子分散液より作成した試料を、トプコン電解放射型鉱分解能透過型分析電子顕微鏡(分解能:0.18nm)EM−002B/UHRで加速電圧120kvで測定して、そのTEM
写真より、重なりあいのない粒子20個を無作為に選び、それぞれの最小外接円から粒子表面まで半径方向の距離を測定し、その最大値の平均を真球度とした。
【0020】
本発明のナノ樹脂粒子分散液のナノ粒子の製造に使用することができる重合性単量体としては、
(a) メチルアクリレート、メチルメタクリレート(MMA)、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、なかでも炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルメタクリレートが好ましく;
スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、へキシルスチレン、ヘプチルスチレンおよびオクチルスチレンなどのアルキルスチレン、フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨウ化スチレン;ニトロスチレン、アセチルスチレンおよびメトキシスチレン等のスチレン系単量体;
グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート;
(b) アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、クロロ-2-ヒドロキシエチル(メタ)アク
リレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;
マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー等のマレイミド基含有モノマー;
(c) ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)ア
クリレート、1,1,1-トリヒドロキシメチルメタントリアクリレート、1,1,1-トリヒドロキシメチルエタントリアクリレート、1,1,1-トリヒドロキシメチルプロパントリアクリレート、トリビニルベンゼン等の重合性不飽和結合を2つ以上有するモノマーが使用できる。
【0021】
なかでも、
(a)として、メチルメタクリレート、スチレン、グリシジルメタクリレート;
(b)として、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸;
(c)として、ジビニルベンゼンを使用することが好ましい。
【0022】
さらに、上記重合性単量体と共重合可能なその他の単量体を共重合することもできる。その他の単量体は、上記(a)、(b)、(c)の合計に対して0〜20重量%、好ましくは0〜
10重量%の割合で使用することが好ましい。
【0023】
その他の単量体としては、
ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、アクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アリルグリシジルエーテル、ビニルトルエン、トリアリルシアヌレート、(無水)イタコン酸、(無水)マレイン酸、クロトン酸、フマール酸などを挙げることができる。
【0024】
本発明において、ナノ樹脂粒子の分散液を製造するに際しては、上記単量体を適宜組み合わせることによって得られるナノ樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)が20℃以上、好ましくは40℃以上になるように上記単量体を組み合わせて使用することが望ましい。
【0025】
本発明の分散液中に分散されるナノ樹脂粒子を製造するに際しては、水溶性重合開始剤および乳化剤を含有する水性反応媒体に、重合性単量体を滴下して重合性単量体の重合を行う。
【0026】
本発明において使用する水溶性反応媒体としては、通常は水を使用する。水に可溶なアルコール類、ケトン類などの水溶性有機溶媒を本発明の目的を損なわない範囲内で添加した水性媒体であってもよいが、含有していないことが好ましい。
【0027】
本発明におけるナノ樹脂粒子の製造方法において、水性反応溶媒は、製造される樹脂分を含む固形分含量が通常は20重量%以下、好ましくは5〜20重量%の範囲内になるような量で使用することが望ましい。固形分含量が20重量%を超えると、製造される樹脂粒子の平均粒子径を30nm未満に制御することは困難になり、さらに例えば80nm以上の粗大粒子の含有量も多くなる。
【0028】
本発明では、このような水性反応媒体に、水溶性重合開始剤および乳化剤を添加して均一に溶解させる。
本発明で使用する水溶性重合開始剤としては、100mlの水に0.5g以上溶解する溶
解度を有する重合開始剤が好ましい。このように水に可溶な重合開始剤を水性反応媒体に予め溶解した状態で使用することにより、30nm未満の樹脂粒子を効率よく製造することができる。したがって、水に溶解しにくい重合開始剤、例えば油性の重合開始剤を使用したのでは本発明の製造方法によっては30nm未満の樹脂粒子を製造することはできない。
【0029】
本発明で使用する水溶性重合開始剤の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどを挙げることができる。これらの中でも水に可溶
な過酸化物、特にペルオキソ二硫酸アンモニウムは、25℃の水に対する溶解度が58g/100mlであり、水性反応媒体に対する溶解度が高いことから、非常に均一性の高いナノ樹
脂粒子を製造することができる。このような水溶性重合開始剤は、使用する重合性単量体100重量部に対して、通常は0.001〜10重量部、好ましくは0.1〜3重量部の範囲内の量で使用される。また、重合開始剤は、重合性単量体中に溶解し、滴下することもできるが、使用できる開始剤量は、仕込み:滴下=100:0〜90:10であり、反応安定性のためには滴下開始剤は少ない方が好ましい。
【0030】
本発明において、水性反応媒体中に乳化剤を添加して溶解させる。水性反応媒体に配合される乳化剤は、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤などを使用することができるが、特に本発明ではアニオン系界面活性剤を使用することが好ましい。本発明で水性反応媒体に添加して乳化剤として使用することができるアニオン系界面活性剤の例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、モノアルキルスルホコハク酸塩などを挙げることができる。特に本発明ではアルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩のようなアンモニウム塩を使用することが好ましい。このような乳化剤は単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0031】
本発明のナノ樹脂粒子分散液を製造するに際しては、乳化剤を使用する。この乳化剤は、一部を重合性単量体に配合し、残部を水性反応媒体に添加して使用する。本発明で使用される乳化剤の全量を100重量部とすると、このうち通常は80重量部以上、好ましくは90重量部以上を水性反応媒体に溶解し、通常20重量部以下、好ましくは10重量部以下の量の乳化剤を重合性単量体中に溶解して使用する。この乳化剤のうち上記のような水性反応媒体に添加して使用する乳化剤の量は、使用する重合性単量体100重量部に対して3重量部以上であり、さらに3〜20重量部の範囲内に量で使用することが好ましい。このように本発明におけるナノ樹脂粒子の製造では、通常の乳化重合よりも多量の乳化剤を使用することにより、平均粒子径が30nm未満の樹脂粒子を効率よく製造することができる。
【0032】
本発明にけるナノ樹脂粒子の製造に際して、上記のような水性反応媒体に滴下する重合性単量体としては、上述の単量体を使用することができる。
すなわち、本発明のナノ樹脂粒子の製造方法では、アクリル系樹脂粒子、アクリル系接着粒子、アクリル系粘着粒子、スチレン系樹脂粒子、着色材内包粒子などを製造することができる。特に本発明の方法は、常温で液体である重合性単量体を用いた樹脂粒子の製造に有用性が高い。
【0033】
上記のような重合性単量体には乳化剤を添加して溶解させて使用する。ここで使用する乳化剤は、上記水性反応媒体に添加して使用する乳化剤と同様の乳化剤を使用することができ、同一の乳化剤を使用することが好ましい。ここで使用する乳化剤の量は、重合性単量体100重量部に対して通常は0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部の範囲内にある。このような乳化剤は重合性単量体に溶解して使用する。
【0034】
本発明におけるナノ樹脂粒子の製造に際しては、上記のように乳化剤が溶解された重合性単量体を、乳化剤および水溶性重合開始剤が溶解された水性反応媒体中に滴下して重合させる。このときの水性反応媒体の温度は、通常は30〜90℃、好ましくは50〜85℃であり、通常は攪拌下に重合性単量体を滴下する。このときの重合性単量体の滴下速度は、通常は、滴下する重合性単量体の全量を100重量%としたときに、1分あたりに0.15〜8重量%の量で滴下するような速度(以下、単に「重量%/分」の単位で記載する)に設定するとよく、好ましくは0.15〜5重量%/分程度に設定するのがよい。反応温度が低すぎると、重合反応が円滑に進まず、重合率が低下することがある。また、こ
の反応は水性反応溶媒を攪拌しながら重合性単量体を滴下することが望ましく、このときの攪拌速度は通常は30〜1000rpm、好ましくは50〜300rpmの範囲内に設定される。攪拌速度が低すぎると、滴下された重合性単量体が水性反応媒体に分散されにくくなり生成する樹脂粒子の粒子径が大きくなる傾向がある。また、重合性単量体の滴下速度が速すぎると、生成する粒子の平均粒径が大きくなる傾向があり、滴下速度が8重量%/分を超えると、平均粒子径30nm未満の樹脂粒子の製造が困難になり、特に50nm以上の粗大粒子の生成量が多くなる傾向がある。
【0035】
上記のようにして行う重合反応は、重合性単量体を滴下するとすぐに反応が開始され非常に短時間で滴下した重合性単量体の重合は終了するので、反応時間は、重合性単量体の滴下時間とほぼ同等であり、通常は12分〜12時間、好ましくは20分〜12時間である。反応時間が短いと、すなわち、重合性単量体の滴下速度が速すぎると、滴下した重合性単量体の分散が不充分なまま、重合反応が進行することがあり、したがって、得られる樹脂粒子の平均粒子径が大きくなりやすく、また、得られる粒子中に含有される粗大粒子の割合が高くなる。また、得られる粒子の真球度が低下する。
【0036】
このようにして重合性単量体を滴下すると重合性単量体は水性反応媒体中の乳化剤によって微細滴に分散され、同時に水性反応媒体中に溶解している水溶性重合開始剤によって反応が開始され、反応が進行する。そして、滴下した重合性単量体は、水性反応媒体に滴下されると、水性反応媒体中に含有される過剰の乳化剤によって、即座に微細粒子に分散され、この微細粒子は水性反応媒体中に含有される水性重合開始剤と接触して瞬間的に重合反応が進み過剰に含まれる乳化剤によって安定な分散状態になるので、隣接する微細粒子との間で会合、凝集などが生じにくく、安定なマイクロエマルジョンが形成される、すなわち、滴下した重合性単量体は、滴下重合性単量体に含有される乳化剤および水性反応媒体中の乳化剤との作用により、水性反応溶媒中で瞬時に微細滴になり、即座に微細粒子のほとんど全部がその場で重合するので、本発明における重合率はほぼ100%になり、凝集などが生じない。
【0037】
本発明おけるナノ樹脂粒子の製造方法では、水性反応媒体中における固形分量が20重量%以下、好ましくは5〜20重量%になるように、滴下する重合性単量体の量、水性反応媒体に加える乳化剤の量、水溶性重合開始剤の量を調整する。水性反応媒体中における固形分量が20重量%を超えると、滴下した重合性単量体の分散に供される水性反応媒体中の乳化剤および水溶性重合開始剤が充分に供給されないことがあり、得られる樹脂粒子の平均粒子径を30nm未満に維持することができない。
【0038】
上記のようにして得られる樹脂粒子は、平均粒子径が30nm未満、好ましくは10〜25nmの範囲内にあり、しかも50nm以上80nm未満の粒子径を有する粒子の含有率は通常は10重量%以下、好ましくは0〜8重量%であり、これよりもさらに大きい80nm以上の粒子径を有する粒子の含有量は1重量%以下、好ましくは0〜0.5重量%以下の範囲内にある。
【0039】
さらに、本発明の方法により得られる樹脂粒子は真球度が高く、得られた樹脂粒子の真球度は通常は0〜5nmの範囲、好ましくは0〜3nmの範囲である。
上記のようにして本発明の方法で得られるナノ樹脂粒子は、媒体中に分散した平均粒子径が30nm未満であって、しかも真球度が高く単分散樹脂粒子である。
【0040】
しかも本発明の方法は、既存の設備を使用して、水性反応媒体中に水溶性重合開始剤と過剰量の乳化剤とを溶解させ、ここに乳化剤を含有する重合性単量体を滴下することにより平均粒子径が30nm未満のナノサイズの樹脂粒子をほぼ重合率100%の高い収率で製造することができ、非常に疎水性の高いモノマーでも安定に重合することができる。
【0041】
なお、本発明において上記のようにしてナノ樹脂粒子を製造する際には、通常の乳化重合に使用されるキレート剤、分散安定剤、可溶化剤、pH調整剤などを使用することもで
きる。
【0042】
本発明におけるナノ樹脂粒子の製造により得られたナノ樹脂粒子は、水性反応媒体に分散した状態、すなわち分散体として得られる。こうして得られたナノ樹脂粒子は公知の方法で、ナノ樹脂粒子と分散媒体とを分離することもできるし他の分散媒に再分散させることもできる。
【0043】
次の本発明のナノ樹脂粒子の製造方法について実施例を示して詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
温度計と、攪拌装置、滴下ロート、窒素導入管とを装着した容量1リットルの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下に、反応溶媒としてイオン交換水900重量部と乳化剤としてドデシルベンセンスルホン酸アンモニウム塩14重量部とを添加して85℃に加熱し、200rpmの速度で攪拌下に、ここに水溶性重合開始剤としてベルオキソ二硫酸アンモニウム
(APS)を0.5重量部添加した。
【0045】
これとは別に、メチルメタクリレート(MMA)100重量部を76〜78℃に加温し、
このMMAに、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1重量部を加えて
溶解した。
【0046】
この乳化剤が溶解したMMAを、窒素雰囲気下に、攪拌しながら上記フラスコ内の反応溶
媒中に3時間かけて滴下して滴下重合を行った。このときの重合性単量体の滴下速度は0
.56重量%/分であった。さらに、攪拌下に、反応液の温度を76〜78℃に30分間保持し、85℃まで昇温してこの温度で1.5時間保持してナノ樹脂粒子を製造した。
【0047】
上記のような反応における重合率は100%であり、反応により得られた反応液中の固形分濃度は12%であり、得られたナノ樹脂粒子の平均粒子径は14.8nmであった。また、得られたナノ樹脂粒子中には粒子径50nm以上80nm未満の樹脂粒子の含有量は0%であり、粒子径80nm以上の粒子の含有量は0%であり、この樹脂粒子の真球度は2nmであり、このナノ粒子は非常に粒子径の揃った真球粒子であった。
【0048】
結果を表1に示す。
【実施例2】
【0049】
実施例1において、メチルメタクリレート(MMA)の代わりに、スチレン(St)75重
量部、ジビニルベンゼン(DVB)25重量部を使用した以外は同様にしてナノ樹脂粒子を
製造した。このときの重合性単量体の滴下速度は0.56重量%/分であった。
【0050】
上記のような反応における重合率は100%であり、反応により得られた反応液中の固形分濃度は12%であり、得られたナノ樹脂粒子の平均粒子径は21.3nmであった。また、得られたナノ樹脂粒子中には粒子径50nm以上80nm未満の樹脂粒子の含有量は4.8%であり、粒子径80nm以上の粒子の含有量は0%であり、この樹脂粒子の真球度は2nmであり、このナノ粒子は非常に粒子径の揃った真球粒子であった。
【0051】
結果を表1に示す。
【実施例3】
【0052】
実施例1において、水性反応溶媒の量を900重量部から500重量部に変えた以外は同様にしてナノ樹脂粒子を製造した。このときの重合性単量体の滴下速度は0.56重量%/分であった。
【0053】
上記のような反応における重合率は100%であり、反応により得られた反応液中の固形分濃度は20%であり、得られたナノ樹脂粒子の平均粒子径は26.0nmであった。また、得られたナノ樹脂粒子中には粒子径50nm以上80nm未満の樹脂粒子の含有量は7.9%であり、粒子径80nm以上の粒子の含有量は0%であり、この樹脂粒子の真球度は3nmであり、このナノ粒子は非常に粒子径の揃った真球粒子であった。
【0054】
結果を表1に示す。
【実施例4】
【0055】
実施例1において、水性反応溶媒に加える乳化剤の量を14重量部から4重量部に変え
た以外は同様にしてナノ樹脂粒子を製造した。このときの重合性単量体の滴下速度は0.56重量%/分であった。
【0056】
上記のような反応における重合率は100%であり、反応により得られた反応液中の固形分濃度は13%であり、得られたナノ樹脂粒子の平均粒子径は19.0nmであった。また、得られたナノ樹脂粒子中には粒子径50以上80nm未満の樹脂粒子の含有量は7.5%であり、粒子径80nm以上の粒子の含有量は0%であり、この樹脂粒子の真球度は2nmであり、このナノ粒子は非常に粒子径の揃った真球粒子であった。
【0057】
結果を表1に示す。
【実施例5】
【0058】
実施例1において、乳化剤が溶解されたMMAの滴下時間を3時間から15分間に変えた
、すなわち、MMAの滴下速度を6.67重量%/分に変えた以外は同様にしてナノ樹脂粒
子を製造した。
【0059】
上記のような反応における重合率は100%であり、反応により得られた反応液中の固形分濃度は12%であり、得られたナノ樹脂粒子の平均粒子径は25.0nmであった。また、得られたナノ樹脂粒子中には粒子径50nm以上80nm未満の樹脂粒子の含有量は7.0%であり、粒子径80nm以上の粒子の含有量は0%であり、この樹脂粒子の真球度は3nmであり、このナノ粒子は非常に粒子径の揃った真球粒子であった。
【実施例6】
【0060】
実施例1において、メチルメタクリレート(MMA)の代わりに、MMAを80重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)20重量部を使用した以外は同様にしてナノ樹脂粒子を製造した。このときの重合性単量体の滴下速度は0.56重量%/分であった。
【0061】
上記のような反応における重合率は100%であり、反応により得られた反応液中の固形分濃度は12%であり、得られたナノ樹脂粒子の平均粒子径は18.0nmであった。また、得られたナノ樹脂粒子中には粒子径50nm以上80nm未満の樹脂粒子の含有量は0%であり、粒子径80nm以上の粒子の含有量は0%であり、この樹脂粒子の真球度は3nmであり、このナノ粒子は非常に粒子径の揃った真球粒子であった。
【0062】
結果を表1に示す。
【実施例7】
【0063】
実施例1において、メチルメタクリレート(MMA)の代わりに、グリシジルメタクリレ
ート(GMA)を80重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)20重量部を使用
した以外は同様にしてナノ樹脂粒子を製造した。このときの重合性単量体の滴下速度は0.56重量%/分であった。
【0064】
上記のような反応における重合率は100%であり、反応により得られた反応液中の固形分濃度は12%であり、得られたナノ樹脂粒子の平均粒子径は20.0nmであった。また、得られたナノ樹脂粒子中には粒子径50nm以上80nm未満の樹脂粒子の含有量は3.0%であり、粒子径80nm以上の粒子の含有量は0%であり、この樹脂粒子の真球度は3nmであり、このナノ粒子は非常に粒子径の揃った真球粒子であった。
【0065】
結果を表1に示す。
【実施例8】
【0066】
実施例1において、メチルメタクリレート(MMA)の代わりに、MMAを80重量部、HEMAを20重量部使用した以外は同様にしてナノ樹脂粒子を製造した。このときの重合性単量体の滴下速度は0.56重量%/分であった。
【0067】
上記のような反応における重合率は100%であり、反応により得られた反応液中の固形分濃度は12%であり、得られたナノ樹脂粒子の平均粒子径は20.0nmであった。また、得られたナノ樹脂粒子中には粒子径50nm以上80nm未満の樹脂粒子の含有量は3.1%であり、粒子径80nm以上の粒子の含有量は0%であり、この樹脂粒子の真球度は3nmであり、このナノ粒子は非常に粒子径の揃った真球粒子であった。
【0068】
結果を表1に示す。
〔比較例1〕
実施例1において、反応溶媒に水溶性重合開始剤を加えずに、反応溶媒に乳化剤だけを溶解し、水溶性重合開始剤0.5重量部をMMAに配合し、さらにこのMMAに乳化剤1重量部を配合して溶解させた。このようにして水溶性開始剤および乳化剤が溶解したMMAを、実
施例1と同様にして反応溶媒中に滴下した以外は同様にしてナノ樹脂粒子を製造した。このときの重合性単量体の滴下速度は0.56重量%/分であった。
【0069】
上記のような反応により得られた反応液中の固形分濃度は12%であり、得られたナノ樹脂粒子の平均粒子径は21.0nmであった。また、得られたナノ樹脂粒子中には粒子径50nm以上80nm未満の樹脂粒子の含有量は0.1%であり、粒子径80nm以上の粒子の含有量は3.7%であった。
【0070】
上記のように反応条件を変えることにより単分散の粒子はできるものの、重合開始剤を重合性単量体とともに滴下するために、80nm以上の粗大粒子が生成する。
結果を表1に示す。
〔比較例2〕
実施例1において、水溶性重合開始剤であるベルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)の
代わりに、油溶性重合開始剤であるジメチル-2,2‘-アゾビス(2-メチルプロピオネート
)(V-611)を0.5重量部使用した以外は同様にしてナノ樹脂粒子を製造した。このと
きの重合性単量体の滴下速度は0.56重量%/分であった。
【0071】
上記のような反応により得られた反応液中の固形分濃度は11%であり、得られたナノ樹脂粒子の平均粒子径は21.0nmであった。また、得られたナノ樹脂粒子中には粒子径50nm以上80nm未満の樹脂粒子の含有量は10.8%であり、粒子径80nm以上の粒子
の含有量は1.1%であった。上記のように油溶性重合開始剤を使用しているために、粒度分布が広くなる。
【0072】
結果を表1に示す。
〔比較例3〕
実施例1において、反応性溶媒の量を900重量部から300重量部に変え、この反応溶媒中に配合する乳化剤の量を14重量部から5重量部に変え、さらに滴下する重合性単量体をMMA50重量部とブチルアクリレート(BA)50重量部との混合物に変え、この重
合性単量体に乳化剤を配合しながった以外は同様にしてナノ樹脂粒子を製造した。このときの重合性単量体の滴下速度は0.56重量%/分であった。
【0073】
上記のような反応により得られた反応液中の固形分濃度は27%であり、得られたナノ樹脂粒子の平均粒子径は35.0nmであった。また、得られたナノ樹脂粒子中には粒子径50nm以上80nm未満の樹脂粒子の含有量は14.6%であり、粒子径80nm以上の粒子の含有量は6.5%であった。固体分濃度が高いため平均粒子径が大きく、粒度分布も広くなる。
【0074】
結果を表1に示す。
〔比較例4〕
温度計、攪拌機、還流冷却器、滴下ロートを備えて容量1リットルのフラスコに、蒸留水640ml、ラウリル硫酸ナトリウム(商品名:エマール、花王(株)製)3.6g、ロンガリット0.336g、硫酸鉄(II)七水和物0.00144g、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)0.00192gを溶解させ、攪拌速度200rpmの攪拌下、窒
素気流中で50℃に保った。
【0075】
この水溶液に、メチルメタクリレート(MMA)212.8g、2-エチルヘキシルアクリ
レート(2EHA)16.8g、アクリル酸(AA)7.0g、メチルアクリレート(MA)3.4g、クメンハイドロパーオキサイド(CHP)(商品名:パークミルH-80(80%品)、日本
油脂〔株〕製)0.72gの混合液を3時間かけて連続的に滴下した後、さらに2時間攪拌して重合を行った。このときの重合性単量体の滴下速度は1.33重量%/分であった。上記のようにして反応を行ったが、最終的にラテックスは増粘凝集して、攪拌ができなくなり、正常な重合が行えなかった。
【0076】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のナノ樹脂粒子の製造方法では、水溶性重合開始剤および過剰の乳化剤を含有する水性反応溶媒中に、乳化剤が溶解された重合性単量体を滴下しているので、平均粒子径30nm未満のナノオーダーの平均粒子径を有する樹脂粒子を製造することができる。しか
も、本発明の方法で製造される樹脂粒子には50nm以上80nm未満の範囲内、および80nm以上の粒子径を有する粗大粒子が生成しにくく、本発明によれば、平均粒子径が30nm未満の粒子径の揃った単分散樹脂粒子が分散状態で得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が30nm未満でありかつ真球度が5nm以下であり、50nm以上80nm未満の範囲内の粒子の含有量が10%以下であり、80nm以上の粒子の含有量が1%以下であるナノ樹脂粒子分散液。
【請求項2】
上記ナノ樹脂粒子が、
(a)炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン系単
量体、および、グリシジル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の単量体:30〜100重量%を(共)重合してなるナノ樹脂粒子であることを特徴とする請求項第1項記載のナノ樹脂粒子分散液。
【請求項3】
上記ナノ樹脂粒子が、
(a)炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン系単量
体、および、グリシジル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の単量体:90〜100重量%を(共)重合してなるナノ樹脂粒子であることを特徴とする請求項第1項記載のナノ樹脂粒子分散液。
【請求項4】
上記ナノ樹脂粒子が、
(a)炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン系単量
体、および、グリシジル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の単量体:80〜90重量%、
(b)水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有アルキル(メタ)アク
リレート、および、マレイミド基含有モノマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の単量体:10〜20重量%を共重合して得られるナノ樹脂粒子であることを特徴とする請求項第1項記載のナノ樹脂粒子分散液。
【請求項5】
上記ナノ樹脂粒子が、
(a)炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン系単量
体、および、グリシジル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の単量体:30〜80重量%、
(b)水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有アルキル(メタ)アク
リレート、および、マレイミド基含有モノマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の単量体:0〜10重量%、
(c)重合性不飽和結合を2つ以上有するモノマー:20〜70重量%を共重合して得ら
れるナノ樹脂粒子であることを特徴とする請求項第1項記載のナノ樹脂粒子分散液。
【請求項6】
平均粒子径30nm未満のナノ樹脂粒子を製造する方法であって、水溶性重合開始剤および滴下重合する重合性単量体100重量部に対して3重量部以上の量の乳化剤を含有する水性反応媒体中に、攪拌下に乳化剤が溶解された重合性単量体を滴下することを特徴とするナノ樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
上記ナノ樹脂粒子の平均粒子径が30nm未満であるとともに、50nm以上80nm未満の範囲内の粒子の含有量が10%未満であり、80nm以上の粒子の含有量が1%以下であることを特徴とする請求項第6項記載のナノ樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
上記水性反応媒体中における固形分濃度を20重量%以下に調整することを特徴とする請求項第6項記載のナノ樹脂粒子の製造方法。
【請求項9】
上記乳化剤が、有機酸のアンモニウム塩であることを特徴とする請求項第6項記載のナ
ノ樹脂粒子の製造方法。
【請求項10】
上記乳化剤がアルキルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩であることを特徴とする請求項第9項記載のナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
上記水溶性重合開始剤が、ベルオキソ二硫酸アンモニウム、水溶性過硫酸化合物、および、水溶性アゾ化合物よりなる群から選ばれる100gの水に対する溶解度が0.5〜1
00gの範囲内にある少なくとも一種類の水溶性重合開始剤であることを特徴とする請求項第6項記載のナノ樹脂粒子の製造方法。
【請求項12】
上記重合性単量体が、(メタ)アクリル系単量体、スチレン系単量体、マレイミド基含有モノマーおよび重合性不飽和結合を2つ以上有するモノマーよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の重合性単量体であることを特徴とする請求項第6項記載のナノ樹脂粒子の製造方法。


【公開番号】特開2007−99897(P2007−99897A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291360(P2005−291360)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】