ナノ複合粒子及びその製造方法、並びにナノ複合粒子を含む素子
【課題】安定性、素子効率、及び寿命に優れたナノ複合粒子を提供する。また、当該ナノ複合粒子を効率的に製造するための製造方法を提供する。さらに、当該ナノ複合粒子を含む素子を提供。
【解決手段】半導体ナノ結晶粒子と、前記半導体結晶ナノ粒子の表面に位置する金属錯体リガンド22と、を含むナノ複合粒子20。また、ナノ粒子21と、前記ナノ粒子の表面に位置する金属錯体リガンドとを含み、前記金属錯体リガンドは末端に架橋性作用基を有するナノ複合粒子。ナノ複合粒子は、前記金属錯体リガンドを被覆する高分子シェルをさらに含みうる。
【解決手段】半導体ナノ結晶粒子と、前記半導体結晶ナノ粒子の表面に位置する金属錯体リガンド22と、を含むナノ複合粒子20。また、ナノ粒子21と、前記ナノ粒子の表面に位置する金属錯体リガンドとを含み、前記金属錯体リガンドは末端に架橋性作用基を有するナノ複合粒子。ナノ複合粒子は、前記金属錯体リガンドを被覆する高分子シェルをさらに含みうる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ複合粒子及びその製造方法、並びにナノ複合粒子を含む素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ナノ結晶(「量子ドット」とも称される)は数ナノサイズの結晶構造を有する半導体物質であって、数百から数千個程度の原子から構成されている。
【0003】
半導体ナノ結晶はその大きさが非常に小さいため、単位体積当たりの表面積が大きく、量子閉じ込め効果などを有する。したがって、半導体物質そのものの固有な特性とは異なる独特の物理化学的特性を示す。
【0004】
特に、ナノ結晶の大きさを調節することなどによって、ナノ結晶の光電子工学特性を調節することができるため、ディスプレイ素子又は生体発光標識素子などへの応用開発が行われている。
【0005】
さらに、重金属を含有しない半導体ナノ結晶は、環境親和的で、かつ人体に安全であるので、発光材料として様々な長所を有する。よって、大きさ、構造、均一度などを調節することによって、優れた特性、及び様々な分野への応用可能性を有する半導体ナノ結晶を合成する様々な技術が開発されている。
【0006】
また、半導体ナノ結晶をディスプレイ素子などに利用するために、半導体ナノ結晶の安定性、発光効率、寿命などを向上させるための技術が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、安定性、素子効率、及び寿命に優れたナノ複合粒子を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、当該ナノ複合粒子を効率的に製造するための製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、当該ナノ複合粒子を含む素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態によると、半導体ナノ結晶粒子と、前記半導体結晶ナノ粒子の表面に位置する金属錯体リガンドと、を含むナノ複合粒子が提供される。
【0011】
本発明の他の一形態によると、ナノ粒子と、前記ナノ粒子の表面に位置する金属錯体リガンドとを含み、前記金属錯体リガンドは末端に架橋性作用基を有するナノ複合粒子が提供される。
【0012】
また、本発明の他の一形態によると、ナノ粒子を合成する工程A;前記ナノ粒子の表面を金属錯体リガンドで被覆する工程B;及び反応性作用基を含むモノマー又は高分子を含む反応液に、前記金属錯体リガンドで被覆されたナノ粒子を投入し、反応させて、高分子シェルを形成する工程C;を含むナノ複合粒子の製造方法が提供される。
【0013】
さらに、本発明の他の一形態によると、前記ナノ複合粒子を含む素子が提供される。
【0014】
上記以外の本発明の具体的な事項については、以下の詳細な説明において記載する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のナノ複合粒子は、半導体ナノ結晶粒子又はナノ粒子が有する固有の特性を安定的に維持することができる。よって、当該ナノ複合粒子は生体発光標識素子の発光材料、発光ダイオードなどのディスプレイ用発光材料、メモリ素子などの半導体材料などとして非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るナノ複合粒子を模式的に表した断面図である。
【図2】本発明の他の一実施形態に係るナノ複合粒子を模式的に表した断面図である。
【図3】本発明の他の一実施形態に係るナノ複合粒子を模式的に表した断面図である。
【図4】本発明の他の一実施形態に係るナノ複合粒子を模式的に表した断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るナノ複合粒子を含む発光素子を模式的に表した断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るナノ複合粒子を含む光電変換発光素子を模式的に表した断面図である。
【図7】実施例1で得られたInP/ZnS及びInP/ZnS/Zn(Und)2の紫外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図8】実施例1で得られたInP/ZnS及びInP/ZnS/Zn(Und)2のPL強度を示すグラフである。
【図9】実施例1で得られたInP/ZnS及びInP/ZnS/Zn(Und)2の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図10】実施例1で得られたInP/ZnS/Zn(Und)2及び実施例3で得られたInP/ZnS/Zn(Und)2−EGMAの赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
【図11】実施例1で得られたInP/ZnS及びInP/ZnS/Zn(Und)2、並びに実施例3で得られたInP/ZnS/Zn(Und)2−EGMAのTGA分析結果を示すグラフである。
【図12】実施例3で得られたナノ複合粒子及び比較例1で得られた粉末状態の半導体ナノ結晶粒子を一般の照明下で撮影した写真である。
【図13】実施例3で得られたナノ複合粒子及び比較例1で得られた粉末状態の半導体ナノ結晶粒子をUV(365nm)下で撮影した写真である。
【図14】実施例5、実施例6、及び比較例2で得られた発光ダイオードの時間の経過に伴うPCE変化を示すグラフである。
【図15】実施例5、実施例6、及び比較例2で得られた発光ダイオードの素子の発光効率を示すグラフである。
【図16】実施例7及び比較例3で得られた発光ダイオードの時間の経過に伴うPCE変化を示すグラフである。
【図17】実施例7及び比較例3で得られた発光ダイオードを、483時間駆動前後にUV(365nm)下で撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載により定められるべきものであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0018】
<語句の定義>
本明細書において、ある部分(層、膜、領域、板など)が他の部分の「上に」あるとは、他の部分の「真上に」ある場合だけでなく、ある部分と他の部分との中間に別の他の部分が存在する場合も含む意味である。逆に、ある部分が他の部分の「真上に」あるとは、ある部分と他の部分との中間に別の他の部分がないことを意味する。
【0019】
本明細書において別途定義がない限り、「置換された」とは、炭素原子数1〜18の直鎖状、分枝鎖状、及び環状のアルキル基、炭素原子数6〜18のアリール基、並びにハロゲン原子からなる群から選択される置換基に水素原子が置換されたことを意味する。
【0020】
本明細書において別途定義がない限り、「アルキレン基」は、炭素原子数1〜18のアルキレン基を意味し、「アリーレン基」は、炭素原子数6〜24のアリーレン基を意味し、「ヘテロアリーレン基」は、ヘテロ原子(N、O、S、又はP)を1〜3個含む炭素原子数6〜24のヘテロアリーレン基を意味し、「アルケニル基」は、炭素原子数2〜18のアルケニル基を意味し、「アルキニル基」は、炭素原子数2〜18のアルキニル基を意味し、「芳香族基」は、炭素原子数6〜24のアリール基又は炭素原子数2〜24のヘテロアリール基を意味する。
【0021】
本明細書において、「組み合わせる」とは、構成物の混合物、積層物、複合体、合金などの形態にすることを意味する。
【0022】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味する。
【0023】
<第一形態>
本発明の一形態によると、半導体ナノ結晶粒子と、前記半導体結晶ナノ粒子の表面に位置する金属錯体リガンドと、を含むナノ複合粒子が提供される。
【0024】
以下、本形態のナノ複合粒子について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係るナノ複合粒子の断面を模式的に表した図である。図1によると、ナノ複合粒子10は、半導体ナノ結晶粒子11と、半導体ナノ結晶粒子11の表面に位置する金属錯体リガンド12とから構成される。そして、金属錯体リガンド12は、中心金属13とリガンド15から構成される。
【0025】
前記半導体ナノ結晶粒子11は、II−VI族化合物、III−V族化合物、IV−VI族化合物、及びIV族化合物からなる群から選択される少なくとも1種の半導体を含むことが好ましい。
【0026】
II−VI族化合物としては、例えば、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、MgSe、及びMgSなどの二元素化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、MgZnSe、及びMgZnSなどの三元素化合物;並びにHgZnTeS、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、及びHgZnSTeなどの四元素化合物が挙げられる。
【0027】
III−V族化合物としては、例えば、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、及びInSbなどの二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、及びGaAlNPなどの三元素化合物;並びにGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、及びInAlPSbなどの四元素化合物などが挙げられる。
【0028】
IV−VI族化合物としては、例えば、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、及びPbTeなどの二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、及びSnPbTeなどの三元素化合物;並びにSnPbSSe、SnPbSeTe、及びSnPbSTeなどの四元素化合物などが挙げられる。
【0029】
IV族化合物としては、Si及びGeなどの単元素化合物;並びにSiC及びSiGe二元素化合物などが挙げられる。
【0030】
なお、これらの半導体は1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が組み合わせて使用されても構わない。
【0031】
上記二元素化合物、三元素化合物、又は四元素化合物は、半導体ナノ結晶粒子11中で均一な濃度で存在してもよいし、濃度分布が部分的に異なる状態で存在してもよい。また、一つの半導体ナノ結晶が他の半導体ナノ結晶を囲むコア・シェル構造を有してもよい。コアとシェルの界面においては、シェルに存在する元素の濃度がコアの中心に向かって低くなるような濃度勾配構造を有しうる。なお、当該濃度勾配構造は、高分解透過型電子顕微鏡(High resolution TEM)を用いたエネルギー分散型分光法(EDS:Energy dispersive spectrometry)とX線光電子分光法(XPS:X−ray photoelectron spectroscopy)による分析を通じて、粒子の中心部と外角部分の元素比率を測定することによって確認することができる。
【0032】
半導体ナノ結晶粒子11の粒径は、1nm〜100nmであることが好ましく、1nm〜10nmであることがより好ましい。なお、当該半導体ナノ結晶粒子11の粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission electron microscopy)またはX線回折(XRD:X−ray diffraction)分析を通じて測定することができる。
【0033】
半導体ナノ結晶粒子11の形状としては、当分野で一般に使用される形状を制限なく採用することができる。具体的には、球形、ピラミッド型、多重枝型(multi−arm)、もしくは立方体(cubic)などの粒子状、ナノチューブ、ナノワイヤー、ナノ繊維、又はナノ板状粒子などの形状のものが使用されうる。
【0034】
本形態に係る半導体ナノ結晶粒子の合成方法は特に制限はなく、当分野で一般的に使用される方法が適宜採用されうる。
【0035】
例えば、数ナノサイズの半導体ナノ結晶粒子を合成する方法として、湿式化学法(wet chemical process)が挙げられる。当該湿式化学法は、有機溶媒に半導体ナノ結晶粒子の前駆体物質を入れて結晶を成長させる方法であって、結晶が成長する際に有機溶媒又は有機リガンドが自然に半導体ナノ結晶粒子の表面に配位することを利用して結晶の成長を調節することができる。
【0036】
上記方法で合成された半導体ナノ結晶粒子は、その表面に有機リガンドを有する。当該半導体ナノ結晶粒子は、他の物質と混合されたり、有機リガンドを除去して他のリガンドに置換されたり、様々な連結物質と結合されたりするなどの工程を経て様々な応用分野に適用される。上記工程において、有機リガンドが流失すると、半導体ナノ結晶粒子の表面に存在する金属又は非金属元素の構造及び成分が変化しうる。また、有機リガンドの流失によって露出された半導体ナノ結晶粒子は、互いに凝集してしまい、復旧できない状態になることもある。
【0037】
このような半導体ナノ結晶粒子の凝集を防ぐため、本発明の一形態に係るナノ複合粒子10は、図1に示すように半導体ナノ結晶粒子11の表面の少なくとも一部が金属錯体リガンド12で被覆されてなる構造を有する。
【0038】
金属錯体リガンド12は、好ましくは下記化学式1で示される構造を有する。
【0039】
【化1】
【0040】
前記化学式1中、で、Mは中心金属を表し、m+nはMの原子価に相当し、
R1又はR2は、それぞれ独立して、置換された又は非置換のアルキル基、置換された又は非置換のアリール基、置換された又は非置換のヘテロアリール基、置換された又は非置換のオキシアルキル基、もしくは置換された又は非置換のオキシアリール基、又はこれらに含まれるメチレン基(−CH2−)又はフェニレン基(−C6H4−)の、1又は2以上が、スルホニル基(−SO2−)、カルボニル基(−CO−)、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、又はスルフィニル基(−SO−)に置換されてなる官能基を表す。なお、複数のR1又はR2が存在する場合には、これらのR1又はR2は、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
【0041】
中心金属13は、特に制限はないが、好ましくは周期律表における第2族、第4族、又は第7〜13族のいずれかに属する金属元素を含み、具体的には、Zn、In、Cd、Mg、Ga、Ti、Zr、Hf、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、又はAu含むことがより好ましい。これらの金属元素は1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が組み合わせて使用されても構わない。
【0042】
中心金属13は、半導体ナノ結晶粒子11に含まれる金属元素と、同一の金属元素又は同族の金属元素を含むのが好ましい。特に、半導体ナノ結晶粒子11がコア・シェル構造を有する場合は、中心金属13はシェルに含まれる金属元素と、同一の金属元素又は同族の金属元素であることがより好ましい。
【0043】
図1に示すように、金属錯体リガンド12の中心金属13は半導体ナノ結晶粒子11の表面に結合する。
【0044】
金属錯体リガンド12は、湿式化学法により合成された半導体ナノ結晶粒子の表面に既に存在する有機リガンドと類似した基本構造を有する。よって、金属錯体リガンド12は、半導体ナノ結晶粒子11に対して容易に接近することができるため、両者は優れた混和性を示す。
【0045】
半導体ナノ結晶粒子11は、その表面積の5%以上が金属錯体リガンド12で被覆されていることが好ましい。また、金属錯体リガンド12の含有量は、半導体ナノ結晶粒子11 1モルに対して0.1〜10モルであることが好ましく、1〜5モルであることがより好ましい。上記範囲内に制御することによって、半導体ナノ結晶粒子11を十分に安定化(passivation)することができる。なお、当該半導体ナノ結晶粒子11における金属錯体リガンド12の被覆面積は、後述の実施例に示すように、熱重量分析(TGA:Thermogravimetric analysis)による分析結果に基づき算出することができる。
【0046】
ナノ複合粒子10は、有機リガンドをさらに含みうる。有機リガンドは、半導体ナノ結晶粒子の合成過程において導入された有機溶媒又は有機リガンドであってもよいし、合成後に置換されて導入された有機リガンドであっても構わない。
【0047】
<第二形態>
本発明の他の一形態によると、ナノ粒子と、前記ナノ粒子の表面に位置する金属錯体リガンドと、を含み、前記金属錯体リガンドは末端に架橋性作用基を有するナノ複合粒子が提供される。図2は、本発明の第二実施形態に係るナノ複合粒子の断面を模式的に表した図である。図2によると、ナノ複合粒子20は、ナノ粒子21と、ナノ粒子21の表面に位置する金属錯体リガンド22とから構成される。そして、金属錯体リガンド22は中心金属23とリガンド25と末端に位置する架橋性作用基27とから構成される。
【0048】
ナノ粒子21は、半導体ナノ結晶粒子、金属粒子、及び金属酸化物粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0049】
半導体ナノ結晶粒子としては、上述の第一形態で使用される半導体ナノ結晶粒子と同様のものを使用することができる。
【0050】
金属粒子としては、特に制限はないが、例えば、Pd、Pt、Ni、Co、Rh、Ir、Fe、Ru、Au、Ag、又はCuを含むことが好ましい。これらの金属は、1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が組み合わせて使用されても構わない。2種以上の金属を組み合わせて使用する形態の一例として、コア・シェル構造を有する金属粒子が挙げられる。この際、コアとシェルとの界面は、シェルに存在する金属の濃度がコアの中心へ行くほど低くなる濃度勾配構造を有することが好ましい。なお、当該濃度勾配構造は、高分解透過型電子顕微鏡(High resolution TEM)を用いたエネルギー分散型分光法(EDS:Energy dispersive spectrometry)とX線光電子分光法(XPS:X−ray photoelectron spectroscopy)による分析を通じて、粒子の中心部と外角部分の元素比率を測定することによって確認することができる。
【0051】
金属酸化物粒子としては、特に制限はないが、Si、Ti、Co、Sn、Al、Zn、In、Zr、Ni、Hf、又はVの酸化物を含むことが好ましい。
【0052】
ナノ粒子21の粒径は、1〜100nmであることが好ましく、1〜10nmであることがより好ましい。なお、当該ナノ粒子21の粒径は、上述の半導体ナノ結晶粒子11の場合と同様の測定方法で測定することができる。
【0053】
ナノ粒子21の形状としては、当分野で一般に使用される形状を特に制限なく採用することができる。具体的には、球形、ピラミッド型、多重枝型(multi−arm)、もしくは立方体(cubic)の粒子状、ナノチューブ、ナノワイヤー、ナノ繊維、又はナノ板状粒子などの形状のものを使用することが好ましい。
【0054】
本形態に係るナノ粒子の合成方法は特に制限はなく、当分野で一般的に使用される方法が適宜採用されうる。
【0055】
金属錯体リガンド22は、好ましくは下記化学式2で示される構造を有する。
【0056】
【化2】
【0057】
前記化学式2中、Mは中心金属を表し、m+nはMの原子価に相当し、
L1又はL2は、それぞれ独立して、置換された又は非置換のアルキレン基、置換された又は非置換のアリーレン基、置換された又は非置換のヘテロアリーレン基、置換された又は非置換のオキシアルキレン基、もしくは置換された又は非置換のオキシアリーレン基、又はこれらに含まれるメチレン基(−CH2−)又はフェニレン基(−C6H4−)の1又は2以上が、スルホニル基(−SO2−)、カルボニル基(−CO−)、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、スルフィニル基(−SO−)置換されてなる官能基を表し、
X1又はX2は、それぞれ独立して、置換された又は非置換のアルキル基、置換された又は非置換のアリール基、置換された又は非置換のヘテロアリール基、置換された又は非置換のオキシアルキル基、置換された又は非置換のオキシアリール基、置換された又は非置換のアルケニル基、置換された又は非置換のアルキニル基、不飽和芳香族基、ハロゲン原子、−ROR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、−RCOX(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、Xはハロゲン原子を表す)、−RCOOR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、アミド基(−R’C(=O)NR2;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、アミン基(−NRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミン基(−C(=NR)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミド基(−C(=O)NC(=O)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イソシアネート基(−N=C=O)、(メタ)アクリレート基、チオール基(−SH)、ホスフィン基(−PRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、ホスフィンオキシド基(−P(=O)RR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、スルホ基(−SO3H)、又はニトロ基(−NO2)を表し、但し、X1またはX2のうちの少なくとも一つは置換された又は非置換のアルケニル基、置換された又は非置換のアルキニル基、不飽和芳香族基、ハロゲン原子、−ROR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、−RCOX(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、Xはハロゲン原子を表す)、−RCOOR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、アミド基(−R’C(=O)NR2;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、アミン基(−NRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミン基(−C(=NR)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミド基(−C(=O)NC(=O)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イソシアネート基(−N=C=O)、(メタ)アクリレート基、チオール基(−SH)、ホスフィン基(−PRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、ホスフィンオキシド基(−P(=O)RR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、スルホ基(−SO3H)、ニトロ基(−NO2)である。なお、複数のL1、L2、X1、又はX2が存在する場合には、これらのL1、L2、X1、又はX2は、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
【0058】
前記リガンド25の架橋性作用基(X1、X2)は、隣接する互いに相異なる架橋可能な架橋性作用基と結合することもできる。また、前記架橋性作用基(X1、X2)と反応できる他の反応性作用基を有するモノマーを媒介として互いに連結されることもできる。このような反応性作用基の選択はこの分野で通常的に行われることができる。
【0059】
中心金属23は、特に制限はないが、好ましくは周期律表の第2族、第4族、又は第7〜13族のいずれかに属する金属元素を含み、具体例としては、Zn、In、Cd、Mg、Ga、Ti、Zr、Hf、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、又はAuを含むことがより好ましい。これらの金属元素は1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が組み合わされて使用されても構わない。
【0060】
金属錯体リガンド22は、湿式化学法により合成されたナノ粒子の表面に既に存在する有機リガンドと類似した基本構造を有する。よって、金属錯体リガンド22は、ナノ粒子21に対して容易に接近することができるため、両者は優れた混和性を示す。
【0061】
ナノ粒子21は、その表面積の5%以上が金属錯体リガンド22で被覆されていることが好ましい。また、金属錯体リガンド22の含有量はナノ粒子21 1モルに対して0.1〜10モルであることが好ましく、1〜5モルであることがより好ましい。上記範囲内に制御することによって、ナノ粒子21を十分に安定化することができる。なお、当該ナノ粒子21における金属錯体リガンド22の被覆面積は、上述の半導体ナノ結晶粒子11の場合と同様の測定方法で測定することができる。
【0062】
上述の第一実施又は第二実施に係るナノ複合粒子10又は20は、金属錯体リガンドを被覆する高分子シェルをさらに含みうる。図3及び図4は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る、高分子シェルをさらに含むナノ複合粒子の断面を模式的に表した図である。
【0063】
図3に示すように、ナノ複合粒子30は、ナノ粒子31と、ナノ粒子31の表面に位置する金属錯体リガンド32と、金属錯体リガンド32を囲む高分子シェル39から構成される。
【0064】
前記ナノ粒子31は、半導体ナノ結晶粒子、金属粒子、及び金属酸化物粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。ナノ粒子31としては、ナノ粒子21と同様の物質が使用されうる。
【0065】
前記金属錯体リガンド32は、中心金属33とリガンド35からなり、好ましくは上述の化学式1で示される構造を有する。
【0066】
ナノ粒子31は、その表面積の5%以上が金属錯体リガンド32で被覆されてなることが好ましい。また、金属錯体リガンド32の含有量は、ナノ粒子31 1モルに対して0.1〜10モルであることが好ましく、1〜5モルであることがより好ましい。上記範囲内に制御することによって、ナノ粒子31を十分に安定化することができる。なお、当該ナノ粒子31における金属錯体リガンド32の被覆面積は、上述の半導体ナノ結晶粒子11の場合と同様の測定方法により測定することができる。
【0067】
高分子シェル39は、置換された又は非置換のアルケニル基、置換された又は非置換のアルキニル基、不飽和芳香族基、ハロゲン原子、−ROR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、−RCOX(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、Xはハロゲン原子を表す)、−RCOOR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレンを表し、R’は水素原子又はアルキルを表す)、アミド基(−R’C(=O)NR2;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、アミン基(−NRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミン基(−C(=NR)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミド基(−C(=O)NC(=O)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イソシアネート基(−N=C=O)、(メタ)アクリレート基、チオール基(−SH)、ホスフィン基(−PRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、ホスフィンオキシド基(−P(=O)RR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、スルホ基(−SO3H)、又はニトロ基(−NO2)からなる群から選択される反応性作用基を2個以上含むモノマーを重合して製造された高分子、又は前記反応性作用基を含む高分子を含むことが好ましい。
【0068】
高分子シェル39の形成方法は、特に制限はないが、例えば、反応性作用基を含むモノマー又はオリゴマーを重合させる方法や、反応性作用基を含む高分子を架橋させる方法によって形成することができる。
【0069】
反応性作用基を含むモノマー又はオリゴマーの重合反応や、反応性作用基を含む高分子の架橋反応は、化学触媒、熱、UVなどを利用して開始されうる。この際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。
【0070】
また、合成されたナノ粒子31を分離後、新たな反応系で金属錯体リガンド32を結合させた後、高分子シェル39を形成することもできるが、ナノ粒子31を合成した後、金属錯体リガンド32の結合及び高分子シェル39の形成反応をその場(in situ)で行うこともできる。
【0071】
高分子シェル39は、ナノ粒子31の表面積に対して5%以上の表面を覆っていることが好ましい。ここで、高分子シェル39は金属錯体リガンド32を介してナノ粒子31を被覆しているため、当該ナノ粒子31における高分子シェル39の被覆面積は、ナノ粒子31における金属錯体リガンド32の被覆面積と同じであると考えることができる。よって、本明細書においては、ナノ粒子31における金属錯体リガンド32の被覆面積(上述の半導体ナノ結晶粒子11における金属錯体リガンド12の被覆面積と同様の方法により求められる)を、当該ナノ粒子31における高分子シェル39の被覆面積として扱う。また、高分子シェル39の含有量は、ナノ粒子31 100質量部に対して、50〜1000質量部であることが好ましく、200〜500質量部であることがより好ましい。上記範囲内に制御することによって、ナノ粒子31を十分に安定化することができる。
【0072】
図4に示されるナノ複合粒子40は、ナノ粒子41と、ナノ粒子41の表面を被覆する金属錯体リガンド42と、金属錯体リガンド42を囲む高分子シェル49から構成される。そして、金属錯体リガンド42は中心金属43、リガンド45、及び架橋点47から構成される。架橋点47は、高分子シェル49を構成するモノマー又は高分子と、リガンド45の架橋性反応基とが反応して結合した結合部分である。この際、高分子シェル49は、金属錯体リガンド42の架橋性反応基(X1、X2)と反応しうる反応性作用基を含むモノマーを重合することにより形成される高分子を含みうる。したがって、上記モノマーに含まれる反応性作用基は、金属錯体リガンド42の架橋性反応基(X1、X2)と反応できる作用基を有するものを選択する。例えば、前記金属錯体リガンド42の架橋性反応基(X1、X2)がハロゲンである場合、−ROR’又は−RCOXを含むモノマーが選択され、前記金属錯体リガンド42の架橋性反応基(X1、X2)がカルボン酸である場合にはアミド基やアミン基を含むモノマーが選択される。なお、ここでいう、X1、X2、−ROR’、又は−RCOXは上記化学式2で説明したものと同様である。
【0073】
高分子シェル49に含まれる高分子の具体的な構造は、上述の高分子シェル39と同様であるのでここでは詳細な説明を省略する。
【0074】
このようなモノマーは図4に示されているように、2個以上の反応性作用基を含んで、金属錯体リガンド42のリガンド45と架橋結合することによって安定した高分子シェル49を形成することができる。この場合、前記高分子シェル49は前記金属錯体リガンド42の少なくとも一つのリガンド45に連結されていることができる。また、前記で言及された反応性作用基を1個以上含む高分子と金属錯体リガンド42のリガンド45とを反応させて高分子シェル49を形成することもできる。
【0075】
ナノ粒子41は、その表面積の5%以上が金属錯体リガンド42で被覆されてなることが好ましい。また、金属錯体リガンド42の含有量は、ナノ粒子41 1モルに対して0.1〜10モルであることが好ましく、1〜5モルであることがより好ましい。上記範囲内に制御することによって、ナノ粒子41を十分に安定化することができる。なお、当該ナノ粒子41における金属錯体リガンド42の被覆面積は、上述の半導体ナノ結晶粒子11の場合と同様の測定方法により測定することができる。
【0076】
このように金属錯体リガンド42を介して高分子シェル49を形成する場合と、高分子シェル49を直接ナノ粒子41の有機リガンドと置き換える場合とを比べると、前者の方が、ナノ粒子41の表面が損傷される確率が低いため、従来の有機リガンドの流失が抑制され、より安定的にナノ粒子41を保護することができる。
【0077】
ナノ複合粒子40は、ナノ粒子41の表面を金属錯体リガンドで被覆した後、これを反応性作用基を含むモノマー又は高分子を含む反応液に投入し、反応させて、高分子シェルを形成することによって製造されうる。
【0078】
反応性作用基を含むモノマー又はオリゴマーの重合反応、反応性作用基を含む高分子の架橋反応、又は反応性作用基を含むモノマーもしくはオリゴマー、又は高分子と金属錯体リガンド42との化学反応は、化学触媒、熱、UVなどを利用して開始されうる。この際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。
【0079】
また、合成されたナノ粒子41を分離後、新たな反応系で金属錯体リガンド42を結合させた後、高分子シェル49を形成することもできるが、ナノ粒子41を合成した後、金属錯体リガンド42の結合及び高分子シェル49の形成反応をその場(in situ)で行うこともできる。
【0080】
高分子シェル49は、ナノ粒子41の表面積に対して5%以上の表面を覆っていることが好ましい。また、高分子シェル49の含有量は、ナノ粒子41 100質量部に対して10〜500質量部であることが好ましい。上記範囲内に制御することによって、ナノ粒子41を十分に安定化することができる。なお、当該ナノ粒子41における高分子シェル49の被覆面積は、上述のナノ粒子31の場合と同様の測定方法により測定することができる。
【0081】
ナノ複合粒子10、20、30、又は40は、さらに、金属酸化物でコーティングされてもよい。コーティングに用いられる金属酸化物としては、Si、Ti、Co、Sn、Al、Zn、In、Zr、Ni、Hf、又はVの酸化物が使用されうる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
当該金属酸化物は、ナノ複合粒子10、20、30、又は40の表面を保護する保護膜として作用する。さらに、金属酸化物の以外にも、特に制限はないが、有機コロイド、無機コロイド、有機高分子などをさらに含んでもよい。これらの保護膜は、ナノ複合粒子の表面にこれらの物質を吸着又は重合させる方法や、ゾル−ゲル反応又は酸−塩基反応などを通して形成することができる。
【0083】
上記方法のうち、ゾル−ゲル反応では、金属酸化物前駆体の加水分解反応によって金属酸化物が形成される。このような金属酸化物前駆体としては、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリブトキシシラン、ケイ酸ナトリウム、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、スズブトキシド、スズ酸ナトリウム、炭酸コバルト、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化インジウム、塩化ジルコニウム、塩化ニッケル、塩化ハフニウム、及び塩化バナジウムなどが挙げられる。
【0084】
上記加水分解反応の際、界面活性剤、酸触媒、塩基触媒などの添加剤を必要によりさらに使用することができる。
【0085】
また、ナノ複合粒子10、20、30、又は40は、素子に使用されうる樹脂と混合して使用されうる。
【0086】
ナノ複合粒子10、20、30、又は40は、それぞれナノ粒子11、21、31、又は41の特性を安定した状態に維持させることができるので、各種分野への応用が可能になる。例えば、発光ダイオード素子、メモリ素子、レーザー素子、光電素子、有機光電素子、太陽電池などに好適に用いられる。また、発光ナノ粒子を含むナノ複合粒子は、生体発光標識素子などの生理学的分野にも応用することができる。
【0087】
以下、ナノ複合粒子を発光材料として含む電流駆動型発光素子について説明する。発光素子は電界発光素子を含み、電界発光素子の一例として、有機発光ダイオード(OLED)が挙げられる。電界発光素子は、2つの電極の間に発光層が形成されてなる構成を有し、当該2つの電極からそれぞれ電子と正孔とを発光層内に注入し、電子と正孔の結合により生じた励起子が励起状態から基底状態へ落ちる際に光が発生する原理を利用した素子である。
【0088】
図5は、本発明の一実施形態に係るナノ複合粒子を含む発光素子を模式的に表した断面図である。図5に示される発光表示装置は、有機基板50の上に正極(アノード)52が位置する。正極52に含まれる正極物質としては、正孔の注入が可能な、高い仕事関数を有する物質が好ましく、具体的にはインジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム酸化物などの透明酸化物などが用いられる。正極52の上には正孔輸送層(hole transport layer:HTL)54、発光層(emission layer:EL)56、電子輸送層(electron transport layer:ETL)58が順に形成されている。正孔輸送層54はp型半導体を含みうり、電子輸送層58はn型半導体又は金属酸化物を含みうる。発光層56はナノ複合粒子10、20、30、又は40を含む。
【0089】
電子輸送層58の上には負極(カソード)60が形成されている。負極60に含まれる負極物質としては、通常、電子輸送層58への電子注入が容易な、仕事関数が小さい物質が好ましく、具体的には、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、鉛、セシウム、及びバリウムなどの金属、並びにこれらの金属を含む合金;LiF/Al、LiO2/Al、LiF/Ca、LiF/Al、及びBaF2/Caなどの多層構造物質などを使用することができるが、これらに限定されるわけではない。正極52、正孔輸送層54、発光層56、電子輸送層58、及び負極60それぞれを製造する方法とこれらを組み立てる方法は当該分野で広く知られた事項であるので、本明細書での詳しい説明は省略する。
【0090】
次に、本形態のナノ複合粒子を発光材料として含む発光素子について説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る、光電変換(photoelectric)発光素子を模式的に示した断面図である。
【0091】
図6に示される光電変換発光素子は、Agなどからなる基板104、基板104の上に位置する青色又は紫外線領域に相当する発光ダイオードチップ103、発光ダイオードチップ103の上に位置する、ナノ複合粒子102を含むマトリックス100から構成されている。ここで、ナノ複合粒子102は、赤色、緑色、青色などのナノ粒子を含みうる。マトリックス100は有機物又は無機物でありうる。ナノ複合粒子102はマトリックス100内に分散して存在し、基板104の凹部に塗布されて、発光ダイオードチップ103を覆っている。
【0092】
ナノ複合粒子102は発光ダイオードチップ103の発光エネルギーを吸収した後、励起されたエネルギーを他の波長の光で放出する。ナノ複合粒子102の発光波長は多様に調節されうる。例えば、赤色ナノ複合粒子および緑色ナノ複合粒子と青色発光ダイオードチップとを組み合わせれば、一つの白色発光ダイオードを製造することができる。また、赤色、緑色、及び青色ナノ複合粒子と紫外線発光ダイオードチップとを組み合わせることによっても、一つの白色発光ダイオードを製造することができる。さらに、多様な波長の光を発することのできるナノ複合粒子と発光ダイオードチップを組み合わせれば、多様な波長の光を示す発光ダイオードを製造することができる。
【実施例】
【0093】
本発明の作用効果を、以下の実施例及び比較例を用いて説明する。但し、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0094】
<ナノ複合粒子の合成>
[実施例1]InP/ZnS/Zn(Und)2ナノ複合粒子の合成
(InP/ZnS半導体ナノ結晶粒子の合成)
In(OAc)3 0.75mmol(Acはアセチル基を表す、以下同様)、パルミチン酸(palmitic acid:PA)2.25mmol、及び1−オクタデセン(1−octadecene:ODE)15mLを真空雰囲気下、120℃で1時間攪拌した後、窒素下でトリス(トリメチルシリル)ホスフィン(tris(trimethylsilyl)phosphine:TMSP)0.375mmolを注入して、溶液Aを調製した。
【0095】
また、他のフラスコにIn(OAc)3 0.6mmol、PA1.8mmol、及びODE30mLを入れ、120℃で1時間真空雰囲気で攪拌した後、窒素雰囲気に転換し280℃に加熱した。これにTMSP0.3mmolを注入し、40分後、上記溶液Aを11mL滴下した。30分後、得られた混合物を常温まで冷却し、目的物をアセトンで分離後トルエンに分散させた。
【0096】
一方、Zn(OAc)2 0.6mmol、オレイン酸(oleic acid:OA)1.2mmol、及びトリオクチルアミン(trioctylamine:TOA)20mLを真空雰囲気下、120℃に加熱し、窒素雰囲気に転換した後、220℃に加熱した。これにInP 0.1mmolを注入し、0.4MのS/TOP(硫黄をTOP(trioctyl phosphine)に溶解した溶液)1.2mmolを滴下した後、300℃で1時間反応させた。得られた混合物を常温まで冷却し、目的物をエタノールで分離後トルエンに分散させた。これにより、InPコアにZnSが被覆されてなるInP/ZnS半導体ナノ結晶粒子を得た(量子数率(quantum yield:QY):54%)。なお、得られたInP/ZnSの表面には、合成の際に使用したパルミチン酸(PA)、トリオクチルホスフィン(TOP)、トリオクチルアミン(TOA)、及びオレイン酸(OA)が存在している。
【0097】
(InP/ZnS/Zn(Und)2ナノ複合粒子の合成)
上記で得たInP/ZnSを常温まで冷却した後、Zn(Und)2(Undはウンデシレン酸(undecylenate)を表す、以下同様)1.5mmolを入れ、230℃で1時間反応させた。得られた混合物を冷却後、目的物をエタノールで分離しトルエンに分散させた。これによりInP/ZnSのコア・シェル構造を有する半導体ナノ結晶粒子の表面がZn(Und)2で被覆されてなるInP/ZnS/Zn(Und)2ナノ複合粒子を得た(QY:54%)。
【0098】
得られたInP/ZnS/Zn(Und)2ナノ複合粒子をICP−AES(inductively coupled plasma atomic emission spectroscopy、島津ICPS−8100)を用いて分析したところ、InP/ZnS半導体ナノ結晶粒子1molに対して、Zn(Und)2金属錯体リガンドは1.8mol含まれていた。これより、Zn(Und)2のうちの一部のみがInP/ZnSにリガンドで結合したことが分かる。
【0099】
また、熱重量分析(TGA:Thermogravimetric analysis)の分析結果、InP/ZnS(ナノ粒子)は有機物を27.5%含んでおり、金属錯体リガンドであるZn(Und)2が結合したInP/ZnS/Zn(Und)2は有機物を32.5%含んでいた。InP/ZnSは反応時、界面活性剤として用いたオレイン酸(OA)のみで覆われており、InP/ZnS/Zn(Und)2はZn(Und)2のみで覆われていると仮定すれば、mol比としてOA:Zn(Und)2=1:1.3となる。ナノ粒子と結合する部分を四角形であると仮定すると、オレイン酸のカルボキシレート基(carboxylate group)は(0.13nm)2、Zn(Und)2のZnは(0.24nm)2、またはZnと2つのカルボキシレート基(carboxylate group)は(0.24+0.13+0.13nm)2の2つで計算することができる。したがって、オレイン酸で覆われているInP/ZnSと比較すると、InP/ZnS/Zn(Und)2を覆うZn(Und)2は8.7%であると算出される。
【0100】
[実施例2]InP/ZnSeS/Zn(Und)2ナノ複合粒子の合成
(InP/ZnSeS半導体ナノ結晶粒子の合成)
In(OAc)3 0.2mmol、Zn(OAc)2 0.1mmol、パルミチン酸(palmitic acid:PA)0.8mmol、及び1−オクタデセン(1−octadecene:ODE)10mLを真空雰囲気下、120℃で1時間攪拌し、常温まで冷却した後、窒素下でトリス(トリメチルシリル)ホスフィン(tris(trimethylsilyl)phosphine:TMSP)0.2mmolを注入した。これを320℃まで加熱し、その後常温まで冷却した。目的物をアセトンで分離後、トルエンに分散させた。
【0101】
一方、Zn(OAc)2 0.3mmol、オレイン酸(oleic acid:OA)0.6mmol、及びトリオクチルアミン(trioctylamine:TOA)10mLを真空雰囲気下、120℃に加熱し、窒素雰囲気に転換した後、220℃に加熱した。これにInZnP 0.1mmolを注入し、0.4MのSe/TOP0.05mLを滴下した後、280℃に加熱した。5分後、0.4MのS/TOP0.6mmolを注入し、300℃に加熱後、さらに30分間反応させた。得られた混合物を常温まで冷却し、目的物をエタノールで分離後、トルエンに分散させた。これにより、InPコアにZnSeSが被覆されてなるInP/ZnSeS半導体ナノ結晶粒子を得た(量子数率(QY):52%)。なお、得られたInP/ZnSeSの表面には、合成の際に使用したパルミチン酸(PA)、トリオクチルホスフィン(TOP)、トリオクチルアミン、及びオレイン酸が存在している。
【0102】
(InP/ZnSeS/Zn(Und)2ナノ複合粒子の合成)
上記で得たInP/ZnSeSを常温まで冷却した後、Zn(Und)2 1.5mmolを入れ、230℃で1時間反応させた。得られた混合物を冷却後、目的物をエタノールで分離し、トルエンに分散させた。これにより、InP/ZnSeSのコア・シェル構造を有する半導体ナノ結晶粒子の表面がZn(Und)2で被覆されてなるInP/ZnSeS/Zn(Und)2ナノ複合粒子を得た(QY:50%)。
【0103】
[実施例3]InP/ZnS/Zn(Und)2−EGMAナノ複合粒子の合成
実施例1で合成されたInP/ZnS/Zn(Und)2を常温まで冷却した後、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.015gとエチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol dimethacrylate、EGMA)2.25mmolを入れ、80℃で10分間加熱してEGMAを重合した。得られた混合物を冷却後、エタノール及びヘキサンを用いて洗浄し、ろ過することにより、ピンク色の粉末を得た。得られた粉末はInP/ZnSのコア・シェル構造を有する半導体ナノ結晶粒子の表面がZn(Und)2で被覆されてなり、そして、当該Zn(Und)2のウンデシレン酸のビニル基とEGMAモノマーが反応してなる高分子シェルを含むナノ複合粒子である(以下、InP/ZnS/Zn(Und)2−EGMAと称する)。得られたInP/ZnS/Zn(Und)2−EGMAをTGAを用いて分析したところ、InP/ZnS半導体ナノ結晶粒子100質量部に対して、高分子シェルは360質量部であった。
【0104】
[実施例4]InP/ZnSeS/Zn(Und)2−EGMAナノ複合粒子の合成
実施例2で合成されたInP/ZnSeS/Zn(Und)2を常温まで冷却した後、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.015gとエチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol dimethacrylate、EGMA)2.25mmolを入れ、80℃で10分間加熱してEGMAを重合した。得られた混合物を冷却後、エタノール及びヘキサンを用いて洗浄し、ろ過することにより、浅緑色の粉末を得た。得られた粉末はInP/ZnSeSのコア・シェル構造を有する半導体ナノ結晶粒子の表面がZn(Und)2で被覆されてなり、そして、当該Zn(Und)2のウンデシレン酸のビニル基とEGMAモノマーが反応してなる高分子シェルを含むナノ複合粒子である(以下、InP/ZnSeS/Zn(Und)2−EGMAと称する)。
【0105】
[比較例1]Zn(Und)2を含有しないナノ複合粒子の合成
実施例1で合成されたInP/ZnSを常温まで冷却した後、AIBN0.015gとEGMA2.25mmolを入れ、80℃で10分間加熱した。得られた混合物を冷却後、エタノール及びヘキサンを用いて洗浄し、分離することにより、少量の白色の粉末を得た。
【0106】
<光特性>
実施例1で得られたInP/ZnS(半導体ナノ結晶粒子)及びInP/ZnS/Zn(Und)2(ナノ複合粒子)の紫外線(UV)吸収スペクトルを図7に示す。図7に示すように、InP/ZnS及びInP/ZnS/Zn(Und)2のUV吸収は約568nmに現れる。
【0107】
実施例1で得られたInP/ZnS(半導体ナノ結晶粒子)とInP/ZnS/Zn(Und)2(ナノ複合粒子)のフォトルミネッセンス(PL)強度を図8に示す。図8に示すように、InP/ZnSの最大発光波長は606nmであり、半値全幅(FWHM)は52nmであった。また、InP/ZnS/Zn(Und)2の最大発光波長は607nmであり、半値全幅は53nmであった。図7及び図8より、金属錯体リガンドのZn(Und)2がInP/ZnSに配位されても、InP/ZnSの光特性には影響を与えないことが示された。
【0108】
<構造分析>
実施例1で得られたInP/ZnS(半導体ナノ結晶粒子)及びInP/ZnS/Zn(Und)2(ナノ複合粒子)の赤外線(IR)吸収スペクトルを図9に示す。図9によると、InP/ZnS/Zn(Und)2のIR吸収スペクトルは、InP/ZnSと比較して、1400〜1600cm−1の間のカルボキシレート吸収帯が増加し、3000〜3100cm−1付近に末端ビニル基を示す吸収帯が現れた。このことからInP/ZnS/Zn(Und)2では、Zn(Und)2の結合による、カルボキシレートの含有量の増加、及び末端ビニル基の存在が示された。
【0109】
また、実施例1で得られたInP/ZnS/Zn(Und)2(ナノ複合粒子)及び実施例3で合成されたInP/ZnS/Zn(Und)2−EGMA(高分子シェルを有するナノ複合粒子)のIRスペクトルを図10に示す。図10によると、InP/ZnS/Zn(Und)2−EGMAのスペクトルにおいて、1700〜1800cm−1及び1100〜1200cm−1においてEGMAによる大きなアクリル吸収帯が観察された。
【0110】
実施例1で得られたInP/ZnS(半導体ナノ結晶粒子)及びInP/ZnS/Zn(Und)2(ナノ複合粒子)、並びに実施例3で得られたInP/ZnS/Zn(Und)2−EGMA(高分子シェルを有するナノ複合粒子)を熱重量分析(TGA分析)(10℃/min、N2、常温(25℃)−600℃、TA instruments Q5000IR)に供した。結果を図11に示す。図11によると、InP/ZnS及びInP/ZnS/Zn(Und)2では有機物分解量が約30%であったのに対して、InP/ZnS/Zn(Und)2−EGMAでは有機物分解量が約80%であった。この結果は、InP/ZnS/Zn(Und)2−EGMA中にEGMAが重合されてなる高分子が含まれていることを示すものである。
【0111】
図12は、実施例3で得られたナノ複合粒子(InP/ZnS/Zn(Und)2−EGMA)と比較例1で得られた粉末状態の半導体ナノ結晶粒子を一般照明下で撮影した写真である。また、図13は、実施例3で得られたナノ複合粒子(InP/ZnS/Zn(Und)2−EGMA)と比較例1で得られた粉末状態の半導体ナノ結晶粒子をUV(365nm)下で撮影した写真である。図12からも明らかなように、Zn(Und)2でコーティングされていない比較例1では、EGMAの重合がほとんど起こらなかったために白色粉末が極少量だけ得られたのに対して、Zn(Und)2でコーティングされてなるナノ複合粒子を用いた実施例3では多量のピンク色粉末を得ることができた。また、図13によると、実施例3で合成されたナノ複合粒子は安定した赤色発光を行うことが分かる。実施例3においては、Zn(Und)2がInP/ZnS表面に存在する場合に、ウンデシレン酸のビニル基がInP/ZnSの周辺に密集しているので、InP/ZnSの周辺でEGMAの重合反応が起こり、高分子複合体を形成することができる。
【0112】
<発光ダイオード(LED)の製作>
[実施例5]
実施例1で合成されたInP/ZnS/Zn(Und)2ナノ粒子複合体を用いて、O.D.(O.D.=optical density;toluene 990μLにナノ複合粒子溶液10μLを混合した溶液のUVを測定した時、一番目の吸収ピークの吸光度)が0.1であるナノ複合粒子溶液を調製した。当該溶液1mLとエポキシ樹脂(SJ−4500、(株)SJC)1mLとを混合し、真空で気泡を除去して、ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を調製した。Agフレームを備え、445nm青色を発光する発光ダイオードチップが凹部に実装された回路基板を用意し、回路基板の凹部内にAgフレーム及び発光ダイオードチップを覆うようにOE6630樹脂(Dow corning)を5μLを塗布した。その後、ポリジメチルシロキサン(PDMS)樹脂を硬化するために、150℃に維持されたオーブン中で約1時間加熱した後、室温まで冷却した。そして、上記で調製したナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物15μLを硬化したPDMS樹脂の上に塗布して、均一な厚さにコーティングした。その後、ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を硬化するために120℃に維持されたオーブン中で1時間加熱して、発光ダイオードを製作した。
【0113】
[実施例6]
実施例3で合成されたInP/ZnS/Zn(Und)2−EGMAナノ粒子複合体0.05gをエポキシ樹脂1mLと混合し、真空で気泡を除去して、ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を調製した。当該ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を使用したことを除いては、実施例5と同様の方法で発光ダイオードを製作した。
【0114】
[実施例7]
実施例4で合成されたInP/ZnSeS/Zn(Und)2−EGMAナノ複合粒子0.05gをエポキシ樹脂1mLと混合し、真空で気泡を除去して、ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を調製した。当該ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を使用したことを除いては、実施例5と同様の方法で発光ダイオードを製作した。
【0115】
[比較例2]
実施例1で合成されたInP/ZnSを用いて、O.D.が0.1であるナノ複合粒子溶液を調製した。当該溶液1mLをエポキシ樹脂1mLと混合し、真空で気泡を除去して、ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を製造した。前記ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を使用したのを除いては、前記実施例5と同様な方法で発光ダイオードを製作した。
【0116】
[比較例3]
実施例2で合成されたInP/ZnSeSナノ複合粒子溶液のO.D.が0.1である時、1mLをエポキシ樹脂1mLと混合し、真空で気泡を除去して、ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を調製した。当該ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を使用したことを除いては、前記実施例5と同様の方法で発光ダイオードを製作した。
【0117】
<発光ダイオードの性能評価>
上記実施例5、実施例6、及び比較例2で作製した発光ダイオードを、それぞれ60mAの電流で駆動して、積分球でPCE(電力変換効率[%]=(半導体ナノ結晶粒子による発光スペクトルの面積)/(半導体ナノ結晶粒子が吸収した青色スペクトルの面積)×100)を測定した。時間の経過に伴うPCEの変化を図14に示す。図14によると、駆動初期には、実施例5、実施例6、及び比較例2の発光ダイオードのPCEがそれぞれ12、15、及び10%で類似していたが、Zn(Und)2でコーティングされたナノ複合粒子を用いた実施例5の発光ダイオードは、150時間後もPCEが駆動初期と同等に維持された。また、高分子シェルにより安定化されたナノ複合粒子を用いた実施例6の発光ダイオードでは、5%ほどPCEが増加した。一方、InP/ZnSを用いた比較例2の発光ダイオードはPCEが低減した。
【0118】
上記実施例5、実施例6、及び比較例2で作製した発光ダイオードを、それぞれ60mAの電流で駆動し、視認性を考慮した素子の発光効率(単位:[lm/W])を測定した。結果を図15に示す。素子に欠陥がないことを示すために、ナノ複合粒子を含まない発光ダイオードを製作して、これをコントロールとした。図15によると、駆動初期には、実施例5、実施例6、及び比較例2の発光ダイオードの発光効率は同等であったが、Zn(Und)2でコーティングされたナノ複合粒子を用いた実施例5の発光ダイオードは、150時間後も発光効率が駆動初期と同等に維持された。また、高分子シェルにより安定化されたナノ複合粒子を用いた実施例6の発光ダイオードは、時間の経過に伴って発光効率が向上することが確認された。一方、InP/ZnSを用いた比較例2の発光ダイオードは時間の経過に伴って発光効率が低減した。
【0119】
このような現象は、InP/ZnSeSを用いた発光ダイオード(比較例3)と、InP/ZnSeS/Zn(Und)2−EGMAを用いた発光ダイオード(実施例7)との比較よりさらに明確に現れた。図16に実施例7及び比較例3の発光ダイオードにおける時間の経過に伴うのPCEの変化を示す。図16によると、比較例3では時間の経過と共にPCEが低減して、200時間以降では2%の低い効率を示した。一方、高分子シェルを有する実施例7では、700時間以上経過後も10%程度のPCEを維持した。
【0120】
図17は、実施例7及び比較例3の発光ダイオードを、駆動直後と483時間駆動後にUV(365nm)下で撮影した写真である。図17の(a)で、下端右側の発光ダイオードは比較例3の発光ダイオードを駆動した直後の写真であり、残り3個の発光ダイオードは比較例3の発光ダイオードを483時間駆動した後の写真である。483時間駆動後の発光ダイオードは発光特性が全く現れなかった。図17の(b)で、下端の2個の発光ダイオードは実施例7の発光ダイオードを駆動した直後の写真であり、上端の2個の発光ダイオードは483時間駆動した後の写真である。図17の(b)からも明らかなように、実施例7の発光ダイオードは、UV下で、長時間強い発光を維持することができる。
【0121】
以上の結果より、金属錯体リガンドで被覆されてなるナノ複合粒子や、さらに高分子シェルを含むナノ複合粒子は、半導体ナノ結晶粒子の安定性及び効率を向上できることが示された。
【0122】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、及び図面の範囲内で多様に変形して実施することができ、それらについても当然に本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0123】
10、20、30、40 ナノ複合粒子、
11 半導体ナノ結晶粒子、
12、22、32、42 金属錯体リガンド、
13、23、33、43 中心金属、
15、25、35、45 リガンド、
21、31、41 ナノ粒子、
27 架橋性作用基、
39、49 高分子シェル、
47 架橋点、
50 有機基板、
52 正極(アノード)、
54 正孔輸送層(HTL)、
56 発光層(EL)、
58 電子輸送層(ETL)、
60 負極(カソード)、
100 マトリックス、
102 ナノ複合粒子、
103 発光ダイオードチップ、
104 基板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ複合粒子及びその製造方法、並びにナノ複合粒子を含む素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ナノ結晶(「量子ドット」とも称される)は数ナノサイズの結晶構造を有する半導体物質であって、数百から数千個程度の原子から構成されている。
【0003】
半導体ナノ結晶はその大きさが非常に小さいため、単位体積当たりの表面積が大きく、量子閉じ込め効果などを有する。したがって、半導体物質そのものの固有な特性とは異なる独特の物理化学的特性を示す。
【0004】
特に、ナノ結晶の大きさを調節することなどによって、ナノ結晶の光電子工学特性を調節することができるため、ディスプレイ素子又は生体発光標識素子などへの応用開発が行われている。
【0005】
さらに、重金属を含有しない半導体ナノ結晶は、環境親和的で、かつ人体に安全であるので、発光材料として様々な長所を有する。よって、大きさ、構造、均一度などを調節することによって、優れた特性、及び様々な分野への応用可能性を有する半導体ナノ結晶を合成する様々な技術が開発されている。
【0006】
また、半導体ナノ結晶をディスプレイ素子などに利用するために、半導体ナノ結晶の安定性、発光効率、寿命などを向上させるための技術が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、安定性、素子効率、及び寿命に優れたナノ複合粒子を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、当該ナノ複合粒子を効率的に製造するための製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、当該ナノ複合粒子を含む素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態によると、半導体ナノ結晶粒子と、前記半導体結晶ナノ粒子の表面に位置する金属錯体リガンドと、を含むナノ複合粒子が提供される。
【0011】
本発明の他の一形態によると、ナノ粒子と、前記ナノ粒子の表面に位置する金属錯体リガンドとを含み、前記金属錯体リガンドは末端に架橋性作用基を有するナノ複合粒子が提供される。
【0012】
また、本発明の他の一形態によると、ナノ粒子を合成する工程A;前記ナノ粒子の表面を金属錯体リガンドで被覆する工程B;及び反応性作用基を含むモノマー又は高分子を含む反応液に、前記金属錯体リガンドで被覆されたナノ粒子を投入し、反応させて、高分子シェルを形成する工程C;を含むナノ複合粒子の製造方法が提供される。
【0013】
さらに、本発明の他の一形態によると、前記ナノ複合粒子を含む素子が提供される。
【0014】
上記以外の本発明の具体的な事項については、以下の詳細な説明において記載する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のナノ複合粒子は、半導体ナノ結晶粒子又はナノ粒子が有する固有の特性を安定的に維持することができる。よって、当該ナノ複合粒子は生体発光標識素子の発光材料、発光ダイオードなどのディスプレイ用発光材料、メモリ素子などの半導体材料などとして非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るナノ複合粒子を模式的に表した断面図である。
【図2】本発明の他の一実施形態に係るナノ複合粒子を模式的に表した断面図である。
【図3】本発明の他の一実施形態に係るナノ複合粒子を模式的に表した断面図である。
【図4】本発明の他の一実施形態に係るナノ複合粒子を模式的に表した断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るナノ複合粒子を含む発光素子を模式的に表した断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るナノ複合粒子を含む光電変換発光素子を模式的に表した断面図である。
【図7】実施例1で得られたInP/ZnS及びInP/ZnS/Zn(Und)2の紫外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図8】実施例1で得られたInP/ZnS及びInP/ZnS/Zn(Und)2のPL強度を示すグラフである。
【図9】実施例1で得られたInP/ZnS及びInP/ZnS/Zn(Und)2の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【図10】実施例1で得られたInP/ZnS/Zn(Und)2及び実施例3で得られたInP/ZnS/Zn(Und)2−EGMAの赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
【図11】実施例1で得られたInP/ZnS及びInP/ZnS/Zn(Und)2、並びに実施例3で得られたInP/ZnS/Zn(Und)2−EGMAのTGA分析結果を示すグラフである。
【図12】実施例3で得られたナノ複合粒子及び比較例1で得られた粉末状態の半導体ナノ結晶粒子を一般の照明下で撮影した写真である。
【図13】実施例3で得られたナノ複合粒子及び比較例1で得られた粉末状態の半導体ナノ結晶粒子をUV(365nm)下で撮影した写真である。
【図14】実施例5、実施例6、及び比較例2で得られた発光ダイオードの時間の経過に伴うPCE変化を示すグラフである。
【図15】実施例5、実施例6、及び比較例2で得られた発光ダイオードの素子の発光効率を示すグラフである。
【図16】実施例7及び比較例3で得られた発光ダイオードの時間の経過に伴うPCE変化を示すグラフである。
【図17】実施例7及び比較例3で得られた発光ダイオードを、483時間駆動前後にUV(365nm)下で撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載により定められるべきものであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0018】
<語句の定義>
本明細書において、ある部分(層、膜、領域、板など)が他の部分の「上に」あるとは、他の部分の「真上に」ある場合だけでなく、ある部分と他の部分との中間に別の他の部分が存在する場合も含む意味である。逆に、ある部分が他の部分の「真上に」あるとは、ある部分と他の部分との中間に別の他の部分がないことを意味する。
【0019】
本明細書において別途定義がない限り、「置換された」とは、炭素原子数1〜18の直鎖状、分枝鎖状、及び環状のアルキル基、炭素原子数6〜18のアリール基、並びにハロゲン原子からなる群から選択される置換基に水素原子が置換されたことを意味する。
【0020】
本明細書において別途定義がない限り、「アルキレン基」は、炭素原子数1〜18のアルキレン基を意味し、「アリーレン基」は、炭素原子数6〜24のアリーレン基を意味し、「ヘテロアリーレン基」は、ヘテロ原子(N、O、S、又はP)を1〜3個含む炭素原子数6〜24のヘテロアリーレン基を意味し、「アルケニル基」は、炭素原子数2〜18のアルケニル基を意味し、「アルキニル基」は、炭素原子数2〜18のアルキニル基を意味し、「芳香族基」は、炭素原子数6〜24のアリール基又は炭素原子数2〜24のヘテロアリール基を意味する。
【0021】
本明細書において、「組み合わせる」とは、構成物の混合物、積層物、複合体、合金などの形態にすることを意味する。
【0022】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味する。
【0023】
<第一形態>
本発明の一形態によると、半導体ナノ結晶粒子と、前記半導体結晶ナノ粒子の表面に位置する金属錯体リガンドと、を含むナノ複合粒子が提供される。
【0024】
以下、本形態のナノ複合粒子について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係るナノ複合粒子の断面を模式的に表した図である。図1によると、ナノ複合粒子10は、半導体ナノ結晶粒子11と、半導体ナノ結晶粒子11の表面に位置する金属錯体リガンド12とから構成される。そして、金属錯体リガンド12は、中心金属13とリガンド15から構成される。
【0025】
前記半導体ナノ結晶粒子11は、II−VI族化合物、III−V族化合物、IV−VI族化合物、及びIV族化合物からなる群から選択される少なくとも1種の半導体を含むことが好ましい。
【0026】
II−VI族化合物としては、例えば、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、MgSe、及びMgSなどの二元素化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、MgZnSe、及びMgZnSなどの三元素化合物;並びにHgZnTeS、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、及びHgZnSTeなどの四元素化合物が挙げられる。
【0027】
III−V族化合物としては、例えば、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、及びInSbなどの二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、及びGaAlNPなどの三元素化合物;並びにGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、及びInAlPSbなどの四元素化合物などが挙げられる。
【0028】
IV−VI族化合物としては、例えば、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、及びPbTeなどの二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、及びSnPbTeなどの三元素化合物;並びにSnPbSSe、SnPbSeTe、及びSnPbSTeなどの四元素化合物などが挙げられる。
【0029】
IV族化合物としては、Si及びGeなどの単元素化合物;並びにSiC及びSiGe二元素化合物などが挙げられる。
【0030】
なお、これらの半導体は1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が組み合わせて使用されても構わない。
【0031】
上記二元素化合物、三元素化合物、又は四元素化合物は、半導体ナノ結晶粒子11中で均一な濃度で存在してもよいし、濃度分布が部分的に異なる状態で存在してもよい。また、一つの半導体ナノ結晶が他の半導体ナノ結晶を囲むコア・シェル構造を有してもよい。コアとシェルの界面においては、シェルに存在する元素の濃度がコアの中心に向かって低くなるような濃度勾配構造を有しうる。なお、当該濃度勾配構造は、高分解透過型電子顕微鏡(High resolution TEM)を用いたエネルギー分散型分光法(EDS:Energy dispersive spectrometry)とX線光電子分光法(XPS:X−ray photoelectron spectroscopy)による分析を通じて、粒子の中心部と外角部分の元素比率を測定することによって確認することができる。
【0032】
半導体ナノ結晶粒子11の粒径は、1nm〜100nmであることが好ましく、1nm〜10nmであることがより好ましい。なお、当該半導体ナノ結晶粒子11の粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission electron microscopy)またはX線回折(XRD:X−ray diffraction)分析を通じて測定することができる。
【0033】
半導体ナノ結晶粒子11の形状としては、当分野で一般に使用される形状を制限なく採用することができる。具体的には、球形、ピラミッド型、多重枝型(multi−arm)、もしくは立方体(cubic)などの粒子状、ナノチューブ、ナノワイヤー、ナノ繊維、又はナノ板状粒子などの形状のものが使用されうる。
【0034】
本形態に係る半導体ナノ結晶粒子の合成方法は特に制限はなく、当分野で一般的に使用される方法が適宜採用されうる。
【0035】
例えば、数ナノサイズの半導体ナノ結晶粒子を合成する方法として、湿式化学法(wet chemical process)が挙げられる。当該湿式化学法は、有機溶媒に半導体ナノ結晶粒子の前駆体物質を入れて結晶を成長させる方法であって、結晶が成長する際に有機溶媒又は有機リガンドが自然に半導体ナノ結晶粒子の表面に配位することを利用して結晶の成長を調節することができる。
【0036】
上記方法で合成された半導体ナノ結晶粒子は、その表面に有機リガンドを有する。当該半導体ナノ結晶粒子は、他の物質と混合されたり、有機リガンドを除去して他のリガンドに置換されたり、様々な連結物質と結合されたりするなどの工程を経て様々な応用分野に適用される。上記工程において、有機リガンドが流失すると、半導体ナノ結晶粒子の表面に存在する金属又は非金属元素の構造及び成分が変化しうる。また、有機リガンドの流失によって露出された半導体ナノ結晶粒子は、互いに凝集してしまい、復旧できない状態になることもある。
【0037】
このような半導体ナノ結晶粒子の凝集を防ぐため、本発明の一形態に係るナノ複合粒子10は、図1に示すように半導体ナノ結晶粒子11の表面の少なくとも一部が金属錯体リガンド12で被覆されてなる構造を有する。
【0038】
金属錯体リガンド12は、好ましくは下記化学式1で示される構造を有する。
【0039】
【化1】
【0040】
前記化学式1中、で、Mは中心金属を表し、m+nはMの原子価に相当し、
R1又はR2は、それぞれ独立して、置換された又は非置換のアルキル基、置換された又は非置換のアリール基、置換された又は非置換のヘテロアリール基、置換された又は非置換のオキシアルキル基、もしくは置換された又は非置換のオキシアリール基、又はこれらに含まれるメチレン基(−CH2−)又はフェニレン基(−C6H4−)の、1又は2以上が、スルホニル基(−SO2−)、カルボニル基(−CO−)、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、又はスルフィニル基(−SO−)に置換されてなる官能基を表す。なお、複数のR1又はR2が存在する場合には、これらのR1又はR2は、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
【0041】
中心金属13は、特に制限はないが、好ましくは周期律表における第2族、第4族、又は第7〜13族のいずれかに属する金属元素を含み、具体的には、Zn、In、Cd、Mg、Ga、Ti、Zr、Hf、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、又はAu含むことがより好ましい。これらの金属元素は1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が組み合わせて使用されても構わない。
【0042】
中心金属13は、半導体ナノ結晶粒子11に含まれる金属元素と、同一の金属元素又は同族の金属元素を含むのが好ましい。特に、半導体ナノ結晶粒子11がコア・シェル構造を有する場合は、中心金属13はシェルに含まれる金属元素と、同一の金属元素又は同族の金属元素であることがより好ましい。
【0043】
図1に示すように、金属錯体リガンド12の中心金属13は半導体ナノ結晶粒子11の表面に結合する。
【0044】
金属錯体リガンド12は、湿式化学法により合成された半導体ナノ結晶粒子の表面に既に存在する有機リガンドと類似した基本構造を有する。よって、金属錯体リガンド12は、半導体ナノ結晶粒子11に対して容易に接近することができるため、両者は優れた混和性を示す。
【0045】
半導体ナノ結晶粒子11は、その表面積の5%以上が金属錯体リガンド12で被覆されていることが好ましい。また、金属錯体リガンド12の含有量は、半導体ナノ結晶粒子11 1モルに対して0.1〜10モルであることが好ましく、1〜5モルであることがより好ましい。上記範囲内に制御することによって、半導体ナノ結晶粒子11を十分に安定化(passivation)することができる。なお、当該半導体ナノ結晶粒子11における金属錯体リガンド12の被覆面積は、後述の実施例に示すように、熱重量分析(TGA:Thermogravimetric analysis)による分析結果に基づき算出することができる。
【0046】
ナノ複合粒子10は、有機リガンドをさらに含みうる。有機リガンドは、半導体ナノ結晶粒子の合成過程において導入された有機溶媒又は有機リガンドであってもよいし、合成後に置換されて導入された有機リガンドであっても構わない。
【0047】
<第二形態>
本発明の他の一形態によると、ナノ粒子と、前記ナノ粒子の表面に位置する金属錯体リガンドと、を含み、前記金属錯体リガンドは末端に架橋性作用基を有するナノ複合粒子が提供される。図2は、本発明の第二実施形態に係るナノ複合粒子の断面を模式的に表した図である。図2によると、ナノ複合粒子20は、ナノ粒子21と、ナノ粒子21の表面に位置する金属錯体リガンド22とから構成される。そして、金属錯体リガンド22は中心金属23とリガンド25と末端に位置する架橋性作用基27とから構成される。
【0048】
ナノ粒子21は、半導体ナノ結晶粒子、金属粒子、及び金属酸化物粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0049】
半導体ナノ結晶粒子としては、上述の第一形態で使用される半導体ナノ結晶粒子と同様のものを使用することができる。
【0050】
金属粒子としては、特に制限はないが、例えば、Pd、Pt、Ni、Co、Rh、Ir、Fe、Ru、Au、Ag、又はCuを含むことが好ましい。これらの金属は、1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が組み合わせて使用されても構わない。2種以上の金属を組み合わせて使用する形態の一例として、コア・シェル構造を有する金属粒子が挙げられる。この際、コアとシェルとの界面は、シェルに存在する金属の濃度がコアの中心へ行くほど低くなる濃度勾配構造を有することが好ましい。なお、当該濃度勾配構造は、高分解透過型電子顕微鏡(High resolution TEM)を用いたエネルギー分散型分光法(EDS:Energy dispersive spectrometry)とX線光電子分光法(XPS:X−ray photoelectron spectroscopy)による分析を通じて、粒子の中心部と外角部分の元素比率を測定することによって確認することができる。
【0051】
金属酸化物粒子としては、特に制限はないが、Si、Ti、Co、Sn、Al、Zn、In、Zr、Ni、Hf、又はVの酸化物を含むことが好ましい。
【0052】
ナノ粒子21の粒径は、1〜100nmであることが好ましく、1〜10nmであることがより好ましい。なお、当該ナノ粒子21の粒径は、上述の半導体ナノ結晶粒子11の場合と同様の測定方法で測定することができる。
【0053】
ナノ粒子21の形状としては、当分野で一般に使用される形状を特に制限なく採用することができる。具体的には、球形、ピラミッド型、多重枝型(multi−arm)、もしくは立方体(cubic)の粒子状、ナノチューブ、ナノワイヤー、ナノ繊維、又はナノ板状粒子などの形状のものを使用することが好ましい。
【0054】
本形態に係るナノ粒子の合成方法は特に制限はなく、当分野で一般的に使用される方法が適宜採用されうる。
【0055】
金属錯体リガンド22は、好ましくは下記化学式2で示される構造を有する。
【0056】
【化2】
【0057】
前記化学式2中、Mは中心金属を表し、m+nはMの原子価に相当し、
L1又はL2は、それぞれ独立して、置換された又は非置換のアルキレン基、置換された又は非置換のアリーレン基、置換された又は非置換のヘテロアリーレン基、置換された又は非置換のオキシアルキレン基、もしくは置換された又は非置換のオキシアリーレン基、又はこれらに含まれるメチレン基(−CH2−)又はフェニレン基(−C6H4−)の1又は2以上が、スルホニル基(−SO2−)、カルボニル基(−CO−)、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、スルフィニル基(−SO−)置換されてなる官能基を表し、
X1又はX2は、それぞれ独立して、置換された又は非置換のアルキル基、置換された又は非置換のアリール基、置換された又は非置換のヘテロアリール基、置換された又は非置換のオキシアルキル基、置換された又は非置換のオキシアリール基、置換された又は非置換のアルケニル基、置換された又は非置換のアルキニル基、不飽和芳香族基、ハロゲン原子、−ROR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、−RCOX(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、Xはハロゲン原子を表す)、−RCOOR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、アミド基(−R’C(=O)NR2;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、アミン基(−NRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミン基(−C(=NR)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミド基(−C(=O)NC(=O)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イソシアネート基(−N=C=O)、(メタ)アクリレート基、チオール基(−SH)、ホスフィン基(−PRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、ホスフィンオキシド基(−P(=O)RR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、スルホ基(−SO3H)、又はニトロ基(−NO2)を表し、但し、X1またはX2のうちの少なくとも一つは置換された又は非置換のアルケニル基、置換された又は非置換のアルキニル基、不飽和芳香族基、ハロゲン原子、−ROR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、−RCOX(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、Xはハロゲン原子を表す)、−RCOOR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、アミド基(−R’C(=O)NR2;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、アミン基(−NRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミン基(−C(=NR)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミド基(−C(=O)NC(=O)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イソシアネート基(−N=C=O)、(メタ)アクリレート基、チオール基(−SH)、ホスフィン基(−PRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、ホスフィンオキシド基(−P(=O)RR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、スルホ基(−SO3H)、ニトロ基(−NO2)である。なお、複数のL1、L2、X1、又はX2が存在する場合には、これらのL1、L2、X1、又はX2は、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
【0058】
前記リガンド25の架橋性作用基(X1、X2)は、隣接する互いに相異なる架橋可能な架橋性作用基と結合することもできる。また、前記架橋性作用基(X1、X2)と反応できる他の反応性作用基を有するモノマーを媒介として互いに連結されることもできる。このような反応性作用基の選択はこの分野で通常的に行われることができる。
【0059】
中心金属23は、特に制限はないが、好ましくは周期律表の第2族、第4族、又は第7〜13族のいずれかに属する金属元素を含み、具体例としては、Zn、In、Cd、Mg、Ga、Ti、Zr、Hf、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、又はAuを含むことがより好ましい。これらの金属元素は1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上が組み合わされて使用されても構わない。
【0060】
金属錯体リガンド22は、湿式化学法により合成されたナノ粒子の表面に既に存在する有機リガンドと類似した基本構造を有する。よって、金属錯体リガンド22は、ナノ粒子21に対して容易に接近することができるため、両者は優れた混和性を示す。
【0061】
ナノ粒子21は、その表面積の5%以上が金属錯体リガンド22で被覆されていることが好ましい。また、金属錯体リガンド22の含有量はナノ粒子21 1モルに対して0.1〜10モルであることが好ましく、1〜5モルであることがより好ましい。上記範囲内に制御することによって、ナノ粒子21を十分に安定化することができる。なお、当該ナノ粒子21における金属錯体リガンド22の被覆面積は、上述の半導体ナノ結晶粒子11の場合と同様の測定方法で測定することができる。
【0062】
上述の第一実施又は第二実施に係るナノ複合粒子10又は20は、金属錯体リガンドを被覆する高分子シェルをさらに含みうる。図3及び図4は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る、高分子シェルをさらに含むナノ複合粒子の断面を模式的に表した図である。
【0063】
図3に示すように、ナノ複合粒子30は、ナノ粒子31と、ナノ粒子31の表面に位置する金属錯体リガンド32と、金属錯体リガンド32を囲む高分子シェル39から構成される。
【0064】
前記ナノ粒子31は、半導体ナノ結晶粒子、金属粒子、及び金属酸化物粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。ナノ粒子31としては、ナノ粒子21と同様の物質が使用されうる。
【0065】
前記金属錯体リガンド32は、中心金属33とリガンド35からなり、好ましくは上述の化学式1で示される構造を有する。
【0066】
ナノ粒子31は、その表面積の5%以上が金属錯体リガンド32で被覆されてなることが好ましい。また、金属錯体リガンド32の含有量は、ナノ粒子31 1モルに対して0.1〜10モルであることが好ましく、1〜5モルであることがより好ましい。上記範囲内に制御することによって、ナノ粒子31を十分に安定化することができる。なお、当該ナノ粒子31における金属錯体リガンド32の被覆面積は、上述の半導体ナノ結晶粒子11の場合と同様の測定方法により測定することができる。
【0067】
高分子シェル39は、置換された又は非置換のアルケニル基、置換された又は非置換のアルキニル基、不飽和芳香族基、ハロゲン原子、−ROR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、−RCOX(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、Xはハロゲン原子を表す)、−RCOOR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレンを表し、R’は水素原子又はアルキルを表す)、アミド基(−R’C(=O)NR2;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、アミン基(−NRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミン基(−C(=NR)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミド基(−C(=O)NC(=O)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イソシアネート基(−N=C=O)、(メタ)アクリレート基、チオール基(−SH)、ホスフィン基(−PRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、ホスフィンオキシド基(−P(=O)RR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、スルホ基(−SO3H)、又はニトロ基(−NO2)からなる群から選択される反応性作用基を2個以上含むモノマーを重合して製造された高分子、又は前記反応性作用基を含む高分子を含むことが好ましい。
【0068】
高分子シェル39の形成方法は、特に制限はないが、例えば、反応性作用基を含むモノマー又はオリゴマーを重合させる方法や、反応性作用基を含む高分子を架橋させる方法によって形成することができる。
【0069】
反応性作用基を含むモノマー又はオリゴマーの重合反応や、反応性作用基を含む高分子の架橋反応は、化学触媒、熱、UVなどを利用して開始されうる。この際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。
【0070】
また、合成されたナノ粒子31を分離後、新たな反応系で金属錯体リガンド32を結合させた後、高分子シェル39を形成することもできるが、ナノ粒子31を合成した後、金属錯体リガンド32の結合及び高分子シェル39の形成反応をその場(in situ)で行うこともできる。
【0071】
高分子シェル39は、ナノ粒子31の表面積に対して5%以上の表面を覆っていることが好ましい。ここで、高分子シェル39は金属錯体リガンド32を介してナノ粒子31を被覆しているため、当該ナノ粒子31における高分子シェル39の被覆面積は、ナノ粒子31における金属錯体リガンド32の被覆面積と同じであると考えることができる。よって、本明細書においては、ナノ粒子31における金属錯体リガンド32の被覆面積(上述の半導体ナノ結晶粒子11における金属錯体リガンド12の被覆面積と同様の方法により求められる)を、当該ナノ粒子31における高分子シェル39の被覆面積として扱う。また、高分子シェル39の含有量は、ナノ粒子31 100質量部に対して、50〜1000質量部であることが好ましく、200〜500質量部であることがより好ましい。上記範囲内に制御することによって、ナノ粒子31を十分に安定化することができる。
【0072】
図4に示されるナノ複合粒子40は、ナノ粒子41と、ナノ粒子41の表面を被覆する金属錯体リガンド42と、金属錯体リガンド42を囲む高分子シェル49から構成される。そして、金属錯体リガンド42は中心金属43、リガンド45、及び架橋点47から構成される。架橋点47は、高分子シェル49を構成するモノマー又は高分子と、リガンド45の架橋性反応基とが反応して結合した結合部分である。この際、高分子シェル49は、金属錯体リガンド42の架橋性反応基(X1、X2)と反応しうる反応性作用基を含むモノマーを重合することにより形成される高分子を含みうる。したがって、上記モノマーに含まれる反応性作用基は、金属錯体リガンド42の架橋性反応基(X1、X2)と反応できる作用基を有するものを選択する。例えば、前記金属錯体リガンド42の架橋性反応基(X1、X2)がハロゲンである場合、−ROR’又は−RCOXを含むモノマーが選択され、前記金属錯体リガンド42の架橋性反応基(X1、X2)がカルボン酸である場合にはアミド基やアミン基を含むモノマーが選択される。なお、ここでいう、X1、X2、−ROR’、又は−RCOXは上記化学式2で説明したものと同様である。
【0073】
高分子シェル49に含まれる高分子の具体的な構造は、上述の高分子シェル39と同様であるのでここでは詳細な説明を省略する。
【0074】
このようなモノマーは図4に示されているように、2個以上の反応性作用基を含んで、金属錯体リガンド42のリガンド45と架橋結合することによって安定した高分子シェル49を形成することができる。この場合、前記高分子シェル49は前記金属錯体リガンド42の少なくとも一つのリガンド45に連結されていることができる。また、前記で言及された反応性作用基を1個以上含む高分子と金属錯体リガンド42のリガンド45とを反応させて高分子シェル49を形成することもできる。
【0075】
ナノ粒子41は、その表面積の5%以上が金属錯体リガンド42で被覆されてなることが好ましい。また、金属錯体リガンド42の含有量は、ナノ粒子41 1モルに対して0.1〜10モルであることが好ましく、1〜5モルであることがより好ましい。上記範囲内に制御することによって、ナノ粒子41を十分に安定化することができる。なお、当該ナノ粒子41における金属錯体リガンド42の被覆面積は、上述の半導体ナノ結晶粒子11の場合と同様の測定方法により測定することができる。
【0076】
このように金属錯体リガンド42を介して高分子シェル49を形成する場合と、高分子シェル49を直接ナノ粒子41の有機リガンドと置き換える場合とを比べると、前者の方が、ナノ粒子41の表面が損傷される確率が低いため、従来の有機リガンドの流失が抑制され、より安定的にナノ粒子41を保護することができる。
【0077】
ナノ複合粒子40は、ナノ粒子41の表面を金属錯体リガンドで被覆した後、これを反応性作用基を含むモノマー又は高分子を含む反応液に投入し、反応させて、高分子シェルを形成することによって製造されうる。
【0078】
反応性作用基を含むモノマー又はオリゴマーの重合反応、反応性作用基を含む高分子の架橋反応、又は反応性作用基を含むモノマーもしくはオリゴマー、又は高分子と金属錯体リガンド42との化学反応は、化学触媒、熱、UVなどを利用して開始されうる。この際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。
【0079】
また、合成されたナノ粒子41を分離後、新たな反応系で金属錯体リガンド42を結合させた後、高分子シェル49を形成することもできるが、ナノ粒子41を合成した後、金属錯体リガンド42の結合及び高分子シェル49の形成反応をその場(in situ)で行うこともできる。
【0080】
高分子シェル49は、ナノ粒子41の表面積に対して5%以上の表面を覆っていることが好ましい。また、高分子シェル49の含有量は、ナノ粒子41 100質量部に対して10〜500質量部であることが好ましい。上記範囲内に制御することによって、ナノ粒子41を十分に安定化することができる。なお、当該ナノ粒子41における高分子シェル49の被覆面積は、上述のナノ粒子31の場合と同様の測定方法により測定することができる。
【0081】
ナノ複合粒子10、20、30、又は40は、さらに、金属酸化物でコーティングされてもよい。コーティングに用いられる金属酸化物としては、Si、Ti、Co、Sn、Al、Zn、In、Zr、Ni、Hf、又はVの酸化物が使用されうる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
当該金属酸化物は、ナノ複合粒子10、20、30、又は40の表面を保護する保護膜として作用する。さらに、金属酸化物の以外にも、特に制限はないが、有機コロイド、無機コロイド、有機高分子などをさらに含んでもよい。これらの保護膜は、ナノ複合粒子の表面にこれらの物質を吸着又は重合させる方法や、ゾル−ゲル反応又は酸−塩基反応などを通して形成することができる。
【0083】
上記方法のうち、ゾル−ゲル反応では、金属酸化物前駆体の加水分解反応によって金属酸化物が形成される。このような金属酸化物前駆体としては、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリブトキシシラン、ケイ酸ナトリウム、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、スズブトキシド、スズ酸ナトリウム、炭酸コバルト、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化インジウム、塩化ジルコニウム、塩化ニッケル、塩化ハフニウム、及び塩化バナジウムなどが挙げられる。
【0084】
上記加水分解反応の際、界面活性剤、酸触媒、塩基触媒などの添加剤を必要によりさらに使用することができる。
【0085】
また、ナノ複合粒子10、20、30、又は40は、素子に使用されうる樹脂と混合して使用されうる。
【0086】
ナノ複合粒子10、20、30、又は40は、それぞれナノ粒子11、21、31、又は41の特性を安定した状態に維持させることができるので、各種分野への応用が可能になる。例えば、発光ダイオード素子、メモリ素子、レーザー素子、光電素子、有機光電素子、太陽電池などに好適に用いられる。また、発光ナノ粒子を含むナノ複合粒子は、生体発光標識素子などの生理学的分野にも応用することができる。
【0087】
以下、ナノ複合粒子を発光材料として含む電流駆動型発光素子について説明する。発光素子は電界発光素子を含み、電界発光素子の一例として、有機発光ダイオード(OLED)が挙げられる。電界発光素子は、2つの電極の間に発光層が形成されてなる構成を有し、当該2つの電極からそれぞれ電子と正孔とを発光層内に注入し、電子と正孔の結合により生じた励起子が励起状態から基底状態へ落ちる際に光が発生する原理を利用した素子である。
【0088】
図5は、本発明の一実施形態に係るナノ複合粒子を含む発光素子を模式的に表した断面図である。図5に示される発光表示装置は、有機基板50の上に正極(アノード)52が位置する。正極52に含まれる正極物質としては、正孔の注入が可能な、高い仕事関数を有する物質が好ましく、具体的にはインジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム酸化物などの透明酸化物などが用いられる。正極52の上には正孔輸送層(hole transport layer:HTL)54、発光層(emission layer:EL)56、電子輸送層(electron transport layer:ETL)58が順に形成されている。正孔輸送層54はp型半導体を含みうり、電子輸送層58はn型半導体又は金属酸化物を含みうる。発光層56はナノ複合粒子10、20、30、又は40を含む。
【0089】
電子輸送層58の上には負極(カソード)60が形成されている。負極60に含まれる負極物質としては、通常、電子輸送層58への電子注入が容易な、仕事関数が小さい物質が好ましく、具体的には、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、鉛、セシウム、及びバリウムなどの金属、並びにこれらの金属を含む合金;LiF/Al、LiO2/Al、LiF/Ca、LiF/Al、及びBaF2/Caなどの多層構造物質などを使用することができるが、これらに限定されるわけではない。正極52、正孔輸送層54、発光層56、電子輸送層58、及び負極60それぞれを製造する方法とこれらを組み立てる方法は当該分野で広く知られた事項であるので、本明細書での詳しい説明は省略する。
【0090】
次に、本形態のナノ複合粒子を発光材料として含む発光素子について説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る、光電変換(photoelectric)発光素子を模式的に示した断面図である。
【0091】
図6に示される光電変換発光素子は、Agなどからなる基板104、基板104の上に位置する青色又は紫外線領域に相当する発光ダイオードチップ103、発光ダイオードチップ103の上に位置する、ナノ複合粒子102を含むマトリックス100から構成されている。ここで、ナノ複合粒子102は、赤色、緑色、青色などのナノ粒子を含みうる。マトリックス100は有機物又は無機物でありうる。ナノ複合粒子102はマトリックス100内に分散して存在し、基板104の凹部に塗布されて、発光ダイオードチップ103を覆っている。
【0092】
ナノ複合粒子102は発光ダイオードチップ103の発光エネルギーを吸収した後、励起されたエネルギーを他の波長の光で放出する。ナノ複合粒子102の発光波長は多様に調節されうる。例えば、赤色ナノ複合粒子および緑色ナノ複合粒子と青色発光ダイオードチップとを組み合わせれば、一つの白色発光ダイオードを製造することができる。また、赤色、緑色、及び青色ナノ複合粒子と紫外線発光ダイオードチップとを組み合わせることによっても、一つの白色発光ダイオードを製造することができる。さらに、多様な波長の光を発することのできるナノ複合粒子と発光ダイオードチップを組み合わせれば、多様な波長の光を示す発光ダイオードを製造することができる。
【実施例】
【0093】
本発明の作用効果を、以下の実施例及び比較例を用いて説明する。但し、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0094】
<ナノ複合粒子の合成>
[実施例1]InP/ZnS/Zn(Und)2ナノ複合粒子の合成
(InP/ZnS半導体ナノ結晶粒子の合成)
In(OAc)3 0.75mmol(Acはアセチル基を表す、以下同様)、パルミチン酸(palmitic acid:PA)2.25mmol、及び1−オクタデセン(1−octadecene:ODE)15mLを真空雰囲気下、120℃で1時間攪拌した後、窒素下でトリス(トリメチルシリル)ホスフィン(tris(trimethylsilyl)phosphine:TMSP)0.375mmolを注入して、溶液Aを調製した。
【0095】
また、他のフラスコにIn(OAc)3 0.6mmol、PA1.8mmol、及びODE30mLを入れ、120℃で1時間真空雰囲気で攪拌した後、窒素雰囲気に転換し280℃に加熱した。これにTMSP0.3mmolを注入し、40分後、上記溶液Aを11mL滴下した。30分後、得られた混合物を常温まで冷却し、目的物をアセトンで分離後トルエンに分散させた。
【0096】
一方、Zn(OAc)2 0.6mmol、オレイン酸(oleic acid:OA)1.2mmol、及びトリオクチルアミン(trioctylamine:TOA)20mLを真空雰囲気下、120℃に加熱し、窒素雰囲気に転換した後、220℃に加熱した。これにInP 0.1mmolを注入し、0.4MのS/TOP(硫黄をTOP(trioctyl phosphine)に溶解した溶液)1.2mmolを滴下した後、300℃で1時間反応させた。得られた混合物を常温まで冷却し、目的物をエタノールで分離後トルエンに分散させた。これにより、InPコアにZnSが被覆されてなるInP/ZnS半導体ナノ結晶粒子を得た(量子数率(quantum yield:QY):54%)。なお、得られたInP/ZnSの表面には、合成の際に使用したパルミチン酸(PA)、トリオクチルホスフィン(TOP)、トリオクチルアミン(TOA)、及びオレイン酸(OA)が存在している。
【0097】
(InP/ZnS/Zn(Und)2ナノ複合粒子の合成)
上記で得たInP/ZnSを常温まで冷却した後、Zn(Und)2(Undはウンデシレン酸(undecylenate)を表す、以下同様)1.5mmolを入れ、230℃で1時間反応させた。得られた混合物を冷却後、目的物をエタノールで分離しトルエンに分散させた。これによりInP/ZnSのコア・シェル構造を有する半導体ナノ結晶粒子の表面がZn(Und)2で被覆されてなるInP/ZnS/Zn(Und)2ナノ複合粒子を得た(QY:54%)。
【0098】
得られたInP/ZnS/Zn(Und)2ナノ複合粒子をICP−AES(inductively coupled plasma atomic emission spectroscopy、島津ICPS−8100)を用いて分析したところ、InP/ZnS半導体ナノ結晶粒子1molに対して、Zn(Und)2金属錯体リガンドは1.8mol含まれていた。これより、Zn(Und)2のうちの一部のみがInP/ZnSにリガンドで結合したことが分かる。
【0099】
また、熱重量分析(TGA:Thermogravimetric analysis)の分析結果、InP/ZnS(ナノ粒子)は有機物を27.5%含んでおり、金属錯体リガンドであるZn(Und)2が結合したInP/ZnS/Zn(Und)2は有機物を32.5%含んでいた。InP/ZnSは反応時、界面活性剤として用いたオレイン酸(OA)のみで覆われており、InP/ZnS/Zn(Und)2はZn(Und)2のみで覆われていると仮定すれば、mol比としてOA:Zn(Und)2=1:1.3となる。ナノ粒子と結合する部分を四角形であると仮定すると、オレイン酸のカルボキシレート基(carboxylate group)は(0.13nm)2、Zn(Und)2のZnは(0.24nm)2、またはZnと2つのカルボキシレート基(carboxylate group)は(0.24+0.13+0.13nm)2の2つで計算することができる。したがって、オレイン酸で覆われているInP/ZnSと比較すると、InP/ZnS/Zn(Und)2を覆うZn(Und)2は8.7%であると算出される。
【0100】
[実施例2]InP/ZnSeS/Zn(Und)2ナノ複合粒子の合成
(InP/ZnSeS半導体ナノ結晶粒子の合成)
In(OAc)3 0.2mmol、Zn(OAc)2 0.1mmol、パルミチン酸(palmitic acid:PA)0.8mmol、及び1−オクタデセン(1−octadecene:ODE)10mLを真空雰囲気下、120℃で1時間攪拌し、常温まで冷却した後、窒素下でトリス(トリメチルシリル)ホスフィン(tris(trimethylsilyl)phosphine:TMSP)0.2mmolを注入した。これを320℃まで加熱し、その後常温まで冷却した。目的物をアセトンで分離後、トルエンに分散させた。
【0101】
一方、Zn(OAc)2 0.3mmol、オレイン酸(oleic acid:OA)0.6mmol、及びトリオクチルアミン(trioctylamine:TOA)10mLを真空雰囲気下、120℃に加熱し、窒素雰囲気に転換した後、220℃に加熱した。これにInZnP 0.1mmolを注入し、0.4MのSe/TOP0.05mLを滴下した後、280℃に加熱した。5分後、0.4MのS/TOP0.6mmolを注入し、300℃に加熱後、さらに30分間反応させた。得られた混合物を常温まで冷却し、目的物をエタノールで分離後、トルエンに分散させた。これにより、InPコアにZnSeSが被覆されてなるInP/ZnSeS半導体ナノ結晶粒子を得た(量子数率(QY):52%)。なお、得られたInP/ZnSeSの表面には、合成の際に使用したパルミチン酸(PA)、トリオクチルホスフィン(TOP)、トリオクチルアミン、及びオレイン酸が存在している。
【0102】
(InP/ZnSeS/Zn(Und)2ナノ複合粒子の合成)
上記で得たInP/ZnSeSを常温まで冷却した後、Zn(Und)2 1.5mmolを入れ、230℃で1時間反応させた。得られた混合物を冷却後、目的物をエタノールで分離し、トルエンに分散させた。これにより、InP/ZnSeSのコア・シェル構造を有する半導体ナノ結晶粒子の表面がZn(Und)2で被覆されてなるInP/ZnSeS/Zn(Und)2ナノ複合粒子を得た(QY:50%)。
【0103】
[実施例3]InP/ZnS/Zn(Und)2−EGMAナノ複合粒子の合成
実施例1で合成されたInP/ZnS/Zn(Und)2を常温まで冷却した後、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.015gとエチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol dimethacrylate、EGMA)2.25mmolを入れ、80℃で10分間加熱してEGMAを重合した。得られた混合物を冷却後、エタノール及びヘキサンを用いて洗浄し、ろ過することにより、ピンク色の粉末を得た。得られた粉末はInP/ZnSのコア・シェル構造を有する半導体ナノ結晶粒子の表面がZn(Und)2で被覆されてなり、そして、当該Zn(Und)2のウンデシレン酸のビニル基とEGMAモノマーが反応してなる高分子シェルを含むナノ複合粒子である(以下、InP/ZnS/Zn(Und)2−EGMAと称する)。得られたInP/ZnS/Zn(Und)2−EGMAをTGAを用いて分析したところ、InP/ZnS半導体ナノ結晶粒子100質量部に対して、高分子シェルは360質量部であった。
【0104】
[実施例4]InP/ZnSeS/Zn(Und)2−EGMAナノ複合粒子の合成
実施例2で合成されたInP/ZnSeS/Zn(Und)2を常温まで冷却した後、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.015gとエチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol dimethacrylate、EGMA)2.25mmolを入れ、80℃で10分間加熱してEGMAを重合した。得られた混合物を冷却後、エタノール及びヘキサンを用いて洗浄し、ろ過することにより、浅緑色の粉末を得た。得られた粉末はInP/ZnSeSのコア・シェル構造を有する半導体ナノ結晶粒子の表面がZn(Und)2で被覆されてなり、そして、当該Zn(Und)2のウンデシレン酸のビニル基とEGMAモノマーが反応してなる高分子シェルを含むナノ複合粒子である(以下、InP/ZnSeS/Zn(Und)2−EGMAと称する)。
【0105】
[比較例1]Zn(Und)2を含有しないナノ複合粒子の合成
実施例1で合成されたInP/ZnSを常温まで冷却した後、AIBN0.015gとEGMA2.25mmolを入れ、80℃で10分間加熱した。得られた混合物を冷却後、エタノール及びヘキサンを用いて洗浄し、分離することにより、少量の白色の粉末を得た。
【0106】
<光特性>
実施例1で得られたInP/ZnS(半導体ナノ結晶粒子)及びInP/ZnS/Zn(Und)2(ナノ複合粒子)の紫外線(UV)吸収スペクトルを図7に示す。図7に示すように、InP/ZnS及びInP/ZnS/Zn(Und)2のUV吸収は約568nmに現れる。
【0107】
実施例1で得られたInP/ZnS(半導体ナノ結晶粒子)とInP/ZnS/Zn(Und)2(ナノ複合粒子)のフォトルミネッセンス(PL)強度を図8に示す。図8に示すように、InP/ZnSの最大発光波長は606nmであり、半値全幅(FWHM)は52nmであった。また、InP/ZnS/Zn(Und)2の最大発光波長は607nmであり、半値全幅は53nmであった。図7及び図8より、金属錯体リガンドのZn(Und)2がInP/ZnSに配位されても、InP/ZnSの光特性には影響を与えないことが示された。
【0108】
<構造分析>
実施例1で得られたInP/ZnS(半導体ナノ結晶粒子)及びInP/ZnS/Zn(Und)2(ナノ複合粒子)の赤外線(IR)吸収スペクトルを図9に示す。図9によると、InP/ZnS/Zn(Und)2のIR吸収スペクトルは、InP/ZnSと比較して、1400〜1600cm−1の間のカルボキシレート吸収帯が増加し、3000〜3100cm−1付近に末端ビニル基を示す吸収帯が現れた。このことからInP/ZnS/Zn(Und)2では、Zn(Und)2の結合による、カルボキシレートの含有量の増加、及び末端ビニル基の存在が示された。
【0109】
また、実施例1で得られたInP/ZnS/Zn(Und)2(ナノ複合粒子)及び実施例3で合成されたInP/ZnS/Zn(Und)2−EGMA(高分子シェルを有するナノ複合粒子)のIRスペクトルを図10に示す。図10によると、InP/ZnS/Zn(Und)2−EGMAのスペクトルにおいて、1700〜1800cm−1及び1100〜1200cm−1においてEGMAによる大きなアクリル吸収帯が観察された。
【0110】
実施例1で得られたInP/ZnS(半導体ナノ結晶粒子)及びInP/ZnS/Zn(Und)2(ナノ複合粒子)、並びに実施例3で得られたInP/ZnS/Zn(Und)2−EGMA(高分子シェルを有するナノ複合粒子)を熱重量分析(TGA分析)(10℃/min、N2、常温(25℃)−600℃、TA instruments Q5000IR)に供した。結果を図11に示す。図11によると、InP/ZnS及びInP/ZnS/Zn(Und)2では有機物分解量が約30%であったのに対して、InP/ZnS/Zn(Und)2−EGMAでは有機物分解量が約80%であった。この結果は、InP/ZnS/Zn(Und)2−EGMA中にEGMAが重合されてなる高分子が含まれていることを示すものである。
【0111】
図12は、実施例3で得られたナノ複合粒子(InP/ZnS/Zn(Und)2−EGMA)と比較例1で得られた粉末状態の半導体ナノ結晶粒子を一般照明下で撮影した写真である。また、図13は、実施例3で得られたナノ複合粒子(InP/ZnS/Zn(Und)2−EGMA)と比較例1で得られた粉末状態の半導体ナノ結晶粒子をUV(365nm)下で撮影した写真である。図12からも明らかなように、Zn(Und)2でコーティングされていない比較例1では、EGMAの重合がほとんど起こらなかったために白色粉末が極少量だけ得られたのに対して、Zn(Und)2でコーティングされてなるナノ複合粒子を用いた実施例3では多量のピンク色粉末を得ることができた。また、図13によると、実施例3で合成されたナノ複合粒子は安定した赤色発光を行うことが分かる。実施例3においては、Zn(Und)2がInP/ZnS表面に存在する場合に、ウンデシレン酸のビニル基がInP/ZnSの周辺に密集しているので、InP/ZnSの周辺でEGMAの重合反応が起こり、高分子複合体を形成することができる。
【0112】
<発光ダイオード(LED)の製作>
[実施例5]
実施例1で合成されたInP/ZnS/Zn(Und)2ナノ粒子複合体を用いて、O.D.(O.D.=optical density;toluene 990μLにナノ複合粒子溶液10μLを混合した溶液のUVを測定した時、一番目の吸収ピークの吸光度)が0.1であるナノ複合粒子溶液を調製した。当該溶液1mLとエポキシ樹脂(SJ−4500、(株)SJC)1mLとを混合し、真空で気泡を除去して、ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を調製した。Agフレームを備え、445nm青色を発光する発光ダイオードチップが凹部に実装された回路基板を用意し、回路基板の凹部内にAgフレーム及び発光ダイオードチップを覆うようにOE6630樹脂(Dow corning)を5μLを塗布した。その後、ポリジメチルシロキサン(PDMS)樹脂を硬化するために、150℃に維持されたオーブン中で約1時間加熱した後、室温まで冷却した。そして、上記で調製したナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物15μLを硬化したPDMS樹脂の上に塗布して、均一な厚さにコーティングした。その後、ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を硬化するために120℃に維持されたオーブン中で1時間加熱して、発光ダイオードを製作した。
【0113】
[実施例6]
実施例3で合成されたInP/ZnS/Zn(Und)2−EGMAナノ粒子複合体0.05gをエポキシ樹脂1mLと混合し、真空で気泡を除去して、ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を調製した。当該ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を使用したことを除いては、実施例5と同様の方法で発光ダイオードを製作した。
【0114】
[実施例7]
実施例4で合成されたInP/ZnSeS/Zn(Und)2−EGMAナノ複合粒子0.05gをエポキシ樹脂1mLと混合し、真空で気泡を除去して、ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を調製した。当該ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を使用したことを除いては、実施例5と同様の方法で発光ダイオードを製作した。
【0115】
[比較例2]
実施例1で合成されたInP/ZnSを用いて、O.D.が0.1であるナノ複合粒子溶液を調製した。当該溶液1mLをエポキシ樹脂1mLと混合し、真空で気泡を除去して、ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を製造した。前記ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を使用したのを除いては、前記実施例5と同様な方法で発光ダイオードを製作した。
【0116】
[比較例3]
実施例2で合成されたInP/ZnSeSナノ複合粒子溶液のO.D.が0.1である時、1mLをエポキシ樹脂1mLと混合し、真空で気泡を除去して、ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を調製した。当該ナノ複合粒子/エポキシ樹脂混合物を使用したことを除いては、前記実施例5と同様の方法で発光ダイオードを製作した。
【0117】
<発光ダイオードの性能評価>
上記実施例5、実施例6、及び比較例2で作製した発光ダイオードを、それぞれ60mAの電流で駆動して、積分球でPCE(電力変換効率[%]=(半導体ナノ結晶粒子による発光スペクトルの面積)/(半導体ナノ結晶粒子が吸収した青色スペクトルの面積)×100)を測定した。時間の経過に伴うPCEの変化を図14に示す。図14によると、駆動初期には、実施例5、実施例6、及び比較例2の発光ダイオードのPCEがそれぞれ12、15、及び10%で類似していたが、Zn(Und)2でコーティングされたナノ複合粒子を用いた実施例5の発光ダイオードは、150時間後もPCEが駆動初期と同等に維持された。また、高分子シェルにより安定化されたナノ複合粒子を用いた実施例6の発光ダイオードでは、5%ほどPCEが増加した。一方、InP/ZnSを用いた比較例2の発光ダイオードはPCEが低減した。
【0118】
上記実施例5、実施例6、及び比較例2で作製した発光ダイオードを、それぞれ60mAの電流で駆動し、視認性を考慮した素子の発光効率(単位:[lm/W])を測定した。結果を図15に示す。素子に欠陥がないことを示すために、ナノ複合粒子を含まない発光ダイオードを製作して、これをコントロールとした。図15によると、駆動初期には、実施例5、実施例6、及び比較例2の発光ダイオードの発光効率は同等であったが、Zn(Und)2でコーティングされたナノ複合粒子を用いた実施例5の発光ダイオードは、150時間後も発光効率が駆動初期と同等に維持された。また、高分子シェルにより安定化されたナノ複合粒子を用いた実施例6の発光ダイオードは、時間の経過に伴って発光効率が向上することが確認された。一方、InP/ZnSを用いた比較例2の発光ダイオードは時間の経過に伴って発光効率が低減した。
【0119】
このような現象は、InP/ZnSeSを用いた発光ダイオード(比較例3)と、InP/ZnSeS/Zn(Und)2−EGMAを用いた発光ダイオード(実施例7)との比較よりさらに明確に現れた。図16に実施例7及び比較例3の発光ダイオードにおける時間の経過に伴うのPCEの変化を示す。図16によると、比較例3では時間の経過と共にPCEが低減して、200時間以降では2%の低い効率を示した。一方、高分子シェルを有する実施例7では、700時間以上経過後も10%程度のPCEを維持した。
【0120】
図17は、実施例7及び比較例3の発光ダイオードを、駆動直後と483時間駆動後にUV(365nm)下で撮影した写真である。図17の(a)で、下端右側の発光ダイオードは比較例3の発光ダイオードを駆動した直後の写真であり、残り3個の発光ダイオードは比較例3の発光ダイオードを483時間駆動した後の写真である。483時間駆動後の発光ダイオードは発光特性が全く現れなかった。図17の(b)で、下端の2個の発光ダイオードは実施例7の発光ダイオードを駆動した直後の写真であり、上端の2個の発光ダイオードは483時間駆動した後の写真である。図17の(b)からも明らかなように、実施例7の発光ダイオードは、UV下で、長時間強い発光を維持することができる。
【0121】
以上の結果より、金属錯体リガンドで被覆されてなるナノ複合粒子や、さらに高分子シェルを含むナノ複合粒子は、半導体ナノ結晶粒子の安定性及び効率を向上できることが示された。
【0122】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、及び図面の範囲内で多様に変形して実施することができ、それらについても当然に本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0123】
10、20、30、40 ナノ複合粒子、
11 半導体ナノ結晶粒子、
12、22、32、42 金属錯体リガンド、
13、23、33、43 中心金属、
15、25、35、45 リガンド、
21、31、41 ナノ粒子、
27 架橋性作用基、
39、49 高分子シェル、
47 架橋点、
50 有機基板、
52 正極(アノード)、
54 正孔輸送層(HTL)、
56 発光層(EL)、
58 電子輸送層(ETL)、
60 負極(カソード)、
100 マトリックス、
102 ナノ複合粒子、
103 発光ダイオードチップ、
104 基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ナノ結晶粒子と、
前記半導体結晶ナノ粒子の表面に位置する金属錯体リガンドと、を含むナノ複合粒子。
【請求項2】
前記半導体ナノ結晶粒子は、II−VI族化合物、III−V族化合物、IV−VI族化合物、及びIV族化合物からなる群から選択される少なくとも1種の半導体を含む、請求項1に記載のナノ複合粒子。
【請求項3】
前記半導体ナノ結晶粒子は、コア・シェル構造を有する、請求項1又は2に記載のナノ複合粒子。
【請求項4】
前記コア・シェル構造におけるコアとシェルとの界面は、シェルに存在する元素の濃度がコアの中心へ向かって低くなる濃度勾配構造を有する、請求項3に記載のナノ複合粒子。
【請求項5】
前記金属錯体リガンドの中心金属は、半導体ナノ結晶粒子に含まれる金属元素と、同一の金属元素又は同族の金属元素を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のナノ複合粒子。
【請求項6】
前記金属錯体リガンドは、下記化学式1で表される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノ複合粒子:
【化1】
前記化学式1中、Mは中心金属を表し、m+nはMの原子価に相当し、
R1又はR2は、それぞれ独立して、置換された又は非置換のアルキル基、置換された又は非置換のアリール基、置換された又は非置換のヘテロアリール基、置換された又は非置換のオキシアルキル基、もしくは置換された又は非置換のオキシアリール基、又はこれらに含まれるメチレン基(−CH2−)又はフェニレン基(−C6H4−)の1又は2以上が、スルホニル基(−SO2−)、カルボニル基(−CO−)、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、スルフィニル基(−SO−)に置換されてなる官能基を表す。
【請求項7】
前記中心金属は、第2族、第4族、又は第7〜13族のいずれかに属する金属元素を含む、請求項5又は6に記載のナノ複合粒子。
【請求項8】
前記中心金属は、Zn、In、Cd、Mg、Ga、Ti、Zr、Hf、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、又はAuを含む、請求項5〜7のいずれか1項に記載のナノ複合粒子。
【請求項9】
前記半導体ナノ結晶粒子の表面積の5%以上が前記金属錯体リガンドで被覆されてなり、前記金属錯体リガンドの含有量は、前記半導体ナノ結晶粒子1モルに対して0.1〜10モルである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のナノ複合粒子。
【請求項10】
ナノ粒子と、
前記ナノ粒子の表面に位置する金属錯体リガンドと、を含み、
前記金属錯体リガンドは末端に架橋性作用基を有するナノ複合粒子。
【請求項11】
前記ナノ粒子は、半導体ナノ結晶粒子、金属粒子、及び金属酸化物粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項10に記載のナノ複合粒子。
【請求項12】
前記半導体ナノ結晶粒子は、II−VI族化合物、III−V族化合物、IV−VI族化合物、及びIV族化合物からなる群から選択される少なくとも1種の半導体を含む、請求項11に記載のナノ複合粒子。
【請求項13】
前記半導体ナノ結晶粒子は、コア・シェル構造を有する、請求項11又は12のいずれか1項に記載のナノ複合粒子。
【請求項14】
前記コア・シェル構造におけるコアとシェルとの界面は、シェルに存在する元素の濃度がコアの中心へ向かって低くなる濃度勾配構造を有する、請求項13に記載のナノ複合粒子。
【請求項15】
前記金属粒子は、Pd、Pt、Ni、Co、Rh、Ir、Fe、Ru、Au、Ag、又はCuを含む、請求項11に記載のナノ複合粒子。
【請求項16】
前記金属酸化物粒子は、Si、Ti、Co、Sn、Al、Zn、In、Zr、Ni、Hf、又はVの酸化物を含む、請求項11に記載のナノ複合粒子。
【請求項17】
前記金属錯体リガンドは、下記化学式2で表される、請求項10〜16のいずれか1項に記載のナノ複合粒子:
【化2】
前記化学式2中、Mは中心金属を表し、m+nはMの原子価に相当し、
L1又はL2は、それぞれ独立して、置換された又は非置換のアルキレン基、置換された又は非置換のアリーレン基、置換された又は非置換のヘテロアリーレン基、置換された又は非置換のオキシアルキレン基、置換された又は非置換のオキシアリーレン基、又はこれらに含まれるメチレン基(−CH2−)又はフェニレン基(−C6H4−)の1又は2以上が、スルホニル基(−SO2−)、カルボニル基(−CO−)、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、スルフィニル基(−SO−)に置換されてなる官能基を表し、
X1又はX2は、それぞれ独立して、置換された又は非置換のアルキル基、置換された又は非置換のアリール基、置換された又は非置換のヘテロアリール基、置換された又は非置換のオキシアルキル基、置換された又は非置換のオキシアリール基、置換された又は非置換のアルケニル基、置換された又は非置換のアルキニル基、不飽和芳香族基、ハロゲン原子、−ROR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、−RCOX(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、Xはハロゲン原子を表す)、−RCOOR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、アミド基(−R’C(=O)NR2;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、アミン基(−NRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミン基(−C(=NR)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミド基(−C(=O)NC(=O)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イソシアネート基(−N=C=O)、(メタ)アクリレート基、チオール基(−SH)、ホスフィン基(−PRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、ホスフィンオキシド基(−P(=O)RR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、スルホ基(−SO3H)、又はニトロ基(−NO2)を表し、但し、X1又はX2のうちの少なくとも一つは、置換された又は非置換のアルケニル基、置換された又は非置換のアルキニル基、不飽和芳香族基、ハロゲン原子、−ROR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、−RCOX(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、Xはハロゲン原子を表す)、−RCOOR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、アミド基(−R’C(=O)NR2;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、アミン基(−NRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミン基(−C(=NR)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミド基(−C(=O)NC(=O)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イソシアネート基(−N=C=O)、(メタ)アクリレート基、チオール基(−SH)、ホスフィン基(−PRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、ホスフィンオキシド基(−P(=O)RR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、スルホ基(−SO3H)、又はニトロ基(−NO2)である。
【請求項18】
前記中心金属は、第2族、第4族、又は第7〜13族のいずれかに属する金属元素を含む、請求項17に記載のナノ複合粒子。
【請求項19】
前記中心金属は、Zn、In、Cd、Mg、Ga、Ti、Zr、Hf、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、又はAuを含む、請求項17又は18に記載のナノ複合粒子。
【請求項20】
前記ナノ粒子の表面積の5%以上が前記金属錯体リガンドで被覆されてなり、前記金属錯体リガンドの含有量はナノ粒子1モルに対して0.1〜10モルである、請求項10〜19のいずれか1項に記載のナノ複合粒子。
【請求項21】
前記架橋性作用基は、隣接する互いに相異なる架橋可能な架橋性作用基と結合している、又は、前記架橋性作用基と反応できる反応性作用基を有するモノマーを介して互いに連結されている、請求項10〜20のいずれか1項に記載のナノ複合粒子。
【請求項22】
前記ナノ複合粒子は、前記金属錯体リガンドを被覆する高分子シェルをさらに含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載のナノ複合粒子。
【請求項23】
前記高分子シェルは、置換された又は非置換のアルケニル基、置換された又は非置換のアルキニル基、不飽和芳香族基、ハロゲン原子、−ROR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、−RCOX(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、Xはハロゲン原子を表す)、−RCOOR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキルを表す)、アミド基(−R’C(=O)NR2;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、アミン基(−NRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミン基(−C(=NR)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミド基(−C(=O)NC(=O)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イソシアネート基(−N=C=O)、(メタ)アクリレート基、チオール基(−SH)、ホスフィン基(−PRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、ホスフィンオキシド基(−P(=O)RR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、スルホ基(−SO3H)、又はニトロ基(−NO2)からなる群から選択される反応性作用基を2個以上含むモノマーを重合して製造された高分子、又は前記反応性作用基を含む高分子を含む、請求項22に記載のナノ複合粒子。
【請求項24】
前記高分子シェルは、前記金属錯体リガンドの少なくとも一つのリガンドと結合されている、請求項22又は23に記載のナノ複合粒子。
【請求項25】
ナノ粒子を合成する工程A;
前記ナノ粒子の表面を金属錯体リガンドで被覆する工程B;及び
反応性作用基を含むモノマー又は高分子を含む反応液に、前記金属錯体リガンドで被覆されたナノ粒子を投入し、反応させて、高分子シェルを形成する工程C;
を含むナノ複合粒子の製造方法。
【請求項26】
前記工程A〜Cがイン・サイチュ(in situ)で実施される、請求項25に記載のナノ複合粒子の製造方法。
【請求項27】
請求項1〜24のうちのいずれか1項に記載のナノ複合粒子を含む素子。
【請求項1】
半導体ナノ結晶粒子と、
前記半導体結晶ナノ粒子の表面に位置する金属錯体リガンドと、を含むナノ複合粒子。
【請求項2】
前記半導体ナノ結晶粒子は、II−VI族化合物、III−V族化合物、IV−VI族化合物、及びIV族化合物からなる群から選択される少なくとも1種の半導体を含む、請求項1に記載のナノ複合粒子。
【請求項3】
前記半導体ナノ結晶粒子は、コア・シェル構造を有する、請求項1又は2に記載のナノ複合粒子。
【請求項4】
前記コア・シェル構造におけるコアとシェルとの界面は、シェルに存在する元素の濃度がコアの中心へ向かって低くなる濃度勾配構造を有する、請求項3に記載のナノ複合粒子。
【請求項5】
前記金属錯体リガンドの中心金属は、半導体ナノ結晶粒子に含まれる金属元素と、同一の金属元素又は同族の金属元素を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のナノ複合粒子。
【請求項6】
前記金属錯体リガンドは、下記化学式1で表される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノ複合粒子:
【化1】
前記化学式1中、Mは中心金属を表し、m+nはMの原子価に相当し、
R1又はR2は、それぞれ独立して、置換された又は非置換のアルキル基、置換された又は非置換のアリール基、置換された又は非置換のヘテロアリール基、置換された又は非置換のオキシアルキル基、もしくは置換された又は非置換のオキシアリール基、又はこれらに含まれるメチレン基(−CH2−)又はフェニレン基(−C6H4−)の1又は2以上が、スルホニル基(−SO2−)、カルボニル基(−CO−)、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、スルフィニル基(−SO−)に置換されてなる官能基を表す。
【請求項7】
前記中心金属は、第2族、第4族、又は第7〜13族のいずれかに属する金属元素を含む、請求項5又は6に記載のナノ複合粒子。
【請求項8】
前記中心金属は、Zn、In、Cd、Mg、Ga、Ti、Zr、Hf、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、又はAuを含む、請求項5〜7のいずれか1項に記載のナノ複合粒子。
【請求項9】
前記半導体ナノ結晶粒子の表面積の5%以上が前記金属錯体リガンドで被覆されてなり、前記金属錯体リガンドの含有量は、前記半導体ナノ結晶粒子1モルに対して0.1〜10モルである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のナノ複合粒子。
【請求項10】
ナノ粒子と、
前記ナノ粒子の表面に位置する金属錯体リガンドと、を含み、
前記金属錯体リガンドは末端に架橋性作用基を有するナノ複合粒子。
【請求項11】
前記ナノ粒子は、半導体ナノ結晶粒子、金属粒子、及び金属酸化物粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項10に記載のナノ複合粒子。
【請求項12】
前記半導体ナノ結晶粒子は、II−VI族化合物、III−V族化合物、IV−VI族化合物、及びIV族化合物からなる群から選択される少なくとも1種の半導体を含む、請求項11に記載のナノ複合粒子。
【請求項13】
前記半導体ナノ結晶粒子は、コア・シェル構造を有する、請求項11又は12のいずれか1項に記載のナノ複合粒子。
【請求項14】
前記コア・シェル構造におけるコアとシェルとの界面は、シェルに存在する元素の濃度がコアの中心へ向かって低くなる濃度勾配構造を有する、請求項13に記載のナノ複合粒子。
【請求項15】
前記金属粒子は、Pd、Pt、Ni、Co、Rh、Ir、Fe、Ru、Au、Ag、又はCuを含む、請求項11に記載のナノ複合粒子。
【請求項16】
前記金属酸化物粒子は、Si、Ti、Co、Sn、Al、Zn、In、Zr、Ni、Hf、又はVの酸化物を含む、請求項11に記載のナノ複合粒子。
【請求項17】
前記金属錯体リガンドは、下記化学式2で表される、請求項10〜16のいずれか1項に記載のナノ複合粒子:
【化2】
前記化学式2中、Mは中心金属を表し、m+nはMの原子価に相当し、
L1又はL2は、それぞれ独立して、置換された又は非置換のアルキレン基、置換された又は非置換のアリーレン基、置換された又は非置換のヘテロアリーレン基、置換された又は非置換のオキシアルキレン基、置換された又は非置換のオキシアリーレン基、又はこれらに含まれるメチレン基(−CH2−)又はフェニレン基(−C6H4−)の1又は2以上が、スルホニル基(−SO2−)、カルボニル基(−CO−)、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、スルフィニル基(−SO−)に置換されてなる官能基を表し、
X1又はX2は、それぞれ独立して、置換された又は非置換のアルキル基、置換された又は非置換のアリール基、置換された又は非置換のヘテロアリール基、置換された又は非置換のオキシアルキル基、置換された又は非置換のオキシアリール基、置換された又は非置換のアルケニル基、置換された又は非置換のアルキニル基、不飽和芳香族基、ハロゲン原子、−ROR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、−RCOX(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、Xはハロゲン原子を表す)、−RCOOR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、アミド基(−R’C(=O)NR2;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、アミン基(−NRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミン基(−C(=NR)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミド基(−C(=O)NC(=O)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イソシアネート基(−N=C=O)、(メタ)アクリレート基、チオール基(−SH)、ホスフィン基(−PRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、ホスフィンオキシド基(−P(=O)RR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、スルホ基(−SO3H)、又はニトロ基(−NO2)を表し、但し、X1又はX2のうちの少なくとも一つは、置換された又は非置換のアルケニル基、置換された又は非置換のアルキニル基、不飽和芳香族基、ハロゲン原子、−ROR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、−RCOX(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、Xはハロゲン原子を表す)、−RCOOR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、アミド基(−R’C(=O)NR2;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、アミン基(−NRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミン基(−C(=NR)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミド基(−C(=O)NC(=O)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イソシアネート基(−N=C=O)、(メタ)アクリレート基、チオール基(−SH)、ホスフィン基(−PRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、ホスフィンオキシド基(−P(=O)RR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、スルホ基(−SO3H)、又はニトロ基(−NO2)である。
【請求項18】
前記中心金属は、第2族、第4族、又は第7〜13族のいずれかに属する金属元素を含む、請求項17に記載のナノ複合粒子。
【請求項19】
前記中心金属は、Zn、In、Cd、Mg、Ga、Ti、Zr、Hf、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、又はAuを含む、請求項17又は18に記載のナノ複合粒子。
【請求項20】
前記ナノ粒子の表面積の5%以上が前記金属錯体リガンドで被覆されてなり、前記金属錯体リガンドの含有量はナノ粒子1モルに対して0.1〜10モルである、請求項10〜19のいずれか1項に記載のナノ複合粒子。
【請求項21】
前記架橋性作用基は、隣接する互いに相異なる架橋可能な架橋性作用基と結合している、又は、前記架橋性作用基と反応できる反応性作用基を有するモノマーを介して互いに連結されている、請求項10〜20のいずれか1項に記載のナノ複合粒子。
【請求項22】
前記ナノ複合粒子は、前記金属錯体リガンドを被覆する高分子シェルをさらに含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載のナノ複合粒子。
【請求項23】
前記高分子シェルは、置換された又は非置換のアルケニル基、置換された又は非置換のアルキニル基、不飽和芳香族基、ハロゲン原子、−ROR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す)、−RCOX(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、Xはハロゲン原子を表す)、−RCOOR’(ここで、Rは置換された又は非置換のアルキレン基を表し、R’は水素原子又はアルキルを表す)、アミド基(−R’C(=O)NR2;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、アミン基(−NRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミン基(−C(=NR)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イミド基(−C(=O)NC(=O)R’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、イソシアネート基(−N=C=O)、(メタ)アクリレート基、チオール基(−SH)、ホスフィン基(−PRR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、ホスフィンオキシド基(−P(=O)RR’;R及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基を表す)、スルホ基(−SO3H)、又はニトロ基(−NO2)からなる群から選択される反応性作用基を2個以上含むモノマーを重合して製造された高分子、又は前記反応性作用基を含む高分子を含む、請求項22に記載のナノ複合粒子。
【請求項24】
前記高分子シェルは、前記金属錯体リガンドの少なくとも一つのリガンドと結合されている、請求項22又は23に記載のナノ複合粒子。
【請求項25】
ナノ粒子を合成する工程A;
前記ナノ粒子の表面を金属錯体リガンドで被覆する工程B;及び
反応性作用基を含むモノマー又は高分子を含む反応液に、前記金属錯体リガンドで被覆されたナノ粒子を投入し、反応させて、高分子シェルを形成する工程C;
を含むナノ複合粒子の製造方法。
【請求項26】
前記工程A〜Cがイン・サイチュ(in situ)で実施される、請求項25に記載のナノ複合粒子の製造方法。
【請求項27】
請求項1〜24のうちのいずれか1項に記載のナノ複合粒子を含む素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−80067(P2011−80067A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229008(P2010−229008)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】
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