説明

ナビゲーション装置の表示方法

【課題】 GPS衛星の位置を把握容易に表示する技術を提供する。
【解決手段】
ナビゲーション装置は、現在位置からみた方位及び仰角を出力するGPS受信機を備えている。また、記憶装置には地図データを記憶している。そして、地図データを用いて、特定の視点(現在位置または、それより上空)からの現在位置周辺の投影図を作成する。前記GPS受信機の方位及び仰角から、投影図上のGPS衛星の位置を求め、求めたGPS衛星の位置を投影図とともに表示する。GPS衛星は、受信状態、距離に応じて表示態様を変える。また建物や山に隠れたGPS衛星は、他の衛星と表示態様を異ならせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に関し、特に車載用ナビゲーション装置の表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、GPSにより求めた現在位置を、単に平面的な地図上に表示するのではなく、実際の風景を見るときのような鳥瞰図により表示するナビゲーション装置が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−285619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、ユーザに、GPS衛星の位置を把握させることはできない。現在地の算出には複数のGPS衛星から送信されるGPS信号が用いられるが、GPS信号の受信状態は常に良好であるとは限らない。GPS衛星が建物や山の背面に隠れてしまうと、GPS受信機はGPS信号を良好に受信できない。かかる場合でも、ナビゲーション装置は、受信できたGPS信号や、方位センサ、距離センサ等の出力を用いて、マップマッチングを組み合わせることにより現在位置を算出する。しかし、ユーザは、GPS信号が良好に受信できる状態にあるのかどうかを知る手がかりがないため、算出された現在位置の正確性を判断することができない。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、GPS衛星の位置を把握容易に表示する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく本発明のナビゲーション装置の表示方法は、地図の投影図上にGPS衛星の位置を表示する。具体的には、ナビゲーション装置に、現在位置からみた方位及び仰角を出力するGPS受信機を備えさせる。また、前記ナビゲーション装置の記憶装置には地図データを記憶させる。そして、前記ナビゲーション装置に、地図データを用いて、特定の視点からの現在位置周辺の投影図を作成するとともに、前記GPS受信機の方位及び仰角から、前記投影図上のGPS衛星の位置を求め、求めたGPS衛星の位置を前記投影図とともに表示させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、GPS衛星の位置、受信状態を把握容易に表示する技術が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態を適用した車載用ナビゲーション装置1000の概略構成図である。図示するように、本実施形態の車載用ナビゲーション装置1000は、演算処理部1と、ディスプレイ2と、データ記憶装置3と、音声入出力装置4と、入力装置5と、車輪速センサ6と、地磁気センサ7と、ジャイロセンサ8と、GPS(Global Positioning System)受信装置9とを有する。
【0010】
演算処理部1は、様々な処理を行う中心的ユニットである。例えば各種センサ6〜8やGPS受信装置9から出力される情報を基にして現在地を検出し、得られた現在地情報に基づいて、表示に必要な地図データをデータ記憶装置3から読み出す。また、読み出した地図データをグラフィックス展開し、そこに現在地を示すマークを重ねてディスプレイ2へ表示する。
【0011】
ディスプレイ2は、演算処理部1で生成されたグラフィックス情報を表示するユニットで、CRTや液晶ディスプレイなどで構成される。
【0012】
地図データ記憶装置3は、CD-ROMやDVD-ROMやHDDやICカードといった記憶媒体で構成されている。この記憶媒体には、地図データ等が記憶されている。
【0013】
地図データは、メッシュ領域の識別コード(メッシュID)、および、そのメッシュ領域に含まれる道路を構成する各リンクのリンクデータを有する。リンクデータは、リンクの識別コード(リンクID)、リンクを構成する2つのノード(開始ノード、終了ノード)の座標情報、リンクを含む道路の種別情報などを有する。また、地図データには、建物、山、木等の立体構造物の位置、形、大きさ等のデータも含まれている。これらの立体構造物のデータは、鳥瞰図、投影図、立体図等を表示する際に用いられる。
【0014】
音声入出力装置4は、演算処理部1で生成したユーザへのメッセージを音声信号に変換し出力すると共に、ユーザが発した声を認識し演算処理部1にその内容を転送する処理を行う。
【0015】
入力装置5は、ユーザからの指示を受け付けるユニットで、スクロールキー、縮尺変更キーなどのハードスイッチ、ジョイスティック、ディスプレイ上に貼られたタッチパネルなどで構成される。
【0016】
センサ6〜8およびGPS受信装置9は、車載用ナビゲーション装置で現在地(自車位置)を検出するために使用するものである。車輪速センサ6は、車輪の円周と計測される車輪の回転数の積から距離を測定し、さらに対となる車輪の回転数の差から移動体が曲がった角度を計測する。地磁気センサ7は、地球が保持している磁場を検知し、移動体が向いている方角を検出する。ジャイロ8は、光ファイバジャイロや振動ジャイロ等で構成され、移動体が回転した角度を検出するものである。
【0017】
GPS受信装置9は、GPS衛星からの信号を受信し移動体とGPS衛星間の距離と距離の変化率を3個以上の衛星に対して測定することで移動体の現在地、進行速度および進行方位を測定する。また、GPS受信装置9は、GPS衛星ごとに、現在位置から見た位置(方位、仰角)を求める。また、GPS衛星ごとの受信状態(受信感度)を求める。
【0018】
図2は、演算処理部1のハードウェア構成例を示す図である。
【0019】
図示するように、演算処理部1は、各デバイス間をバス32で接続した構成としてある。演算処理部1は、数値演算及び各デバイスを制御するといった様々な処理を実行するCPU(Central Processing Unit)21と、地図データ記憶装置3から読み出した地図データや演算データなどを格納するRAM(Random Access Memory)22と、プログラムやデータを格納するROM(Read Only Memory)23と、メモリ間およびメモリと各デバイスとの間のデータ転送を実行するDMA(Direct Memory Access)24と、グラフィックス描画を実行し且つ表示制御を行う描画コントローラ25と、グラフィックスイメージデータを蓄えるVRAM(Video Random Access Memory)26と、イメージデータをRGB信号に変換するカラーパレット27と、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器28と、シリアル信号をバスに同期したパラレル信号に変換するSCI(Serial Communication Interface)29と、パラレル信号をバスに同期させてバス上にのせるPIO(Parallel Input/Output)30と、パルス信号を積分するカウンタ31と、を有する。
【0020】
図3は、演算処理部1の機能構成を示す図である。
【0021】
図示するように、演算処理部1は、ユーザ操作解析部41と、経路探索部42と、表示処理部45と、現在位置演算部46とを有する。
【0022】
現在位置演算部46は、各センサ6〜8およびGPS受信装置9からの出力をもとに、現在位置を定期的に演算する。
【0023】
ユーザ操作解析部41は、入力装置5に入力されたユーザからの要求を受け、その要求内容を解析して、その要求内容に対応する処理が実行されるように演算処理部1の各部を制御する。
【0024】
経路探索部42は、ダイクストラ法等を用いて、指定された2地点(現在地、目的地)間を結ぶ経路のコスト(例えば、旅行時間)が最少となる経路を探索する。
【0025】
表示処理部45は、ディスプレイ2への表示が要求される領域にある地図データをデータ記憶装置3から受け取り、ユーザ操作解析部41等から指定された縮尺、描画方式で、道路、その他の地図構成物や、現在地、目的地、誘導経路のための矢印といったマークを描画するように地図描画コマンドを生成する。
【0026】
[動作の説明] 次に、上記のように構成される車載用ナビゲーション装置1000の動作を説明する。
【0027】
上記のように構成される車載用ナビゲーション装置1000は、現在位置の表示要求がなされると、現在位置周辺の地図をディスプレイ2に表示する。その際、ユーザからの要求に応じて、現在位置周辺の地図を、ある視点からの投影図(鳥瞰図)により表示する。そして、表示の範囲内に、GPS衛星が位置する場合、現在位置周辺の地図を、GPS衛星の位置、受信感度等が把握できるように表示する。
【0028】
なお、本実施形態では、投影図として、図5に示すように現在位置を含めた投影図(鳥瞰図)を表示するモードと、図6に示すようにユーザの視線方向(車両の進行方向)の視野を投影図として表示するモードがある。前者の投影図は、図7に示すように、現在位置より後方かつ高い位置(例えば、10m後方の、10m高い位置)に視点を設定し、表示画面の大きさに応じて視野角を定め、地図平面を投影面(表示画面)に投影することで得ることができる。後者の投影図は、図8に示すように、現在位置に視点を設定し、表示画面の大きさに応じて視野角を定め、地図平面を投影面(表示画面)に投影することで得ることができる。これらの投影図を求める際は、地図データに含まれる立体構造物の存在も考慮する。すなわち、立体構造物の形、大きさから、その投影形状を求め、ディスプレイ2には、視点から最も手前にある構造物が表示されるようにする。これら投影図を求める処理は、表示処理部45によりなされる。
【0029】
図4は、GPS衛星の位置を表示する処理の流れを示すフロー図である。このフローは、現在位置周辺を投影図により表示しているときに行われる。
【0030】
まず、表示処理部45は、GPS受信装置9から出力されるGPS衛星の方位及び仰角情報に基づいて、GPS衛星ごとに、投影面への投影位置を算出する(S102)。なお、鳥瞰図の場合、投影の視点は現在位置から多少ずれるが、GPS衛星までの距離に比べれば微小である。したがって、鳥瞰図の場合の視点からのGPS衛星の方位及び仰角は、現在位置からのGPS衛星の方位及び仰角と同じであるとすることができる。
【0031】
次に、表示処理部45は、投影位置を求めたGPS衛星が、ディスプレイ2で表示されている範囲に含まれるか否か判定する(S104)。含まれない場合(S104でNo)、表示処理部45は、そのGPS衛星を表示しないで、S108の処理に移行する。
【0032】
一方、GPS衛星の投影位置が、ディスプレイ2に表示されている範囲に含まれる場合(S104でYes)、表示処理部45は、そのGPS衛星の投影位置に、GPS衛星があること分かるように表示する。
【0033】
図5は、現在位置を含む周辺の投影図(鳥瞰図)においてGPS衛星を表示した画面の例である。
【0034】
図示するように、表示処理部45は、表示画面500に、現在位置800周辺の鳥瞰図710、立体構造物712を表示する。また、GPS衛星601〜605も、投影により求めた位置に表示する。
【0035】
表示処理部45は、GPS受信装置9の出力からも止まるGPS衛星の受信状態に応じて、表示態様を異ならせるようにしてもよい。例えば、受信状態が良好なGPS衛星は緑色、GPS信号が受信できるが測位には用いることができないGPS衛星は黄色、GPS信号が受信できないGPS衛星は灰色で表示するなどしてもよい。このように表示態様を異ならせれば、ユーザは、容易に、受信状態を把握できる。
【0036】
また、表示処理部45は、GPS衛星までの距離に応じて、表示態様を異ならせてもよい。例えば、遠い順にGPS衛星を小さく表示してもよい。
【0037】
表示処理部45は、立体構造物の背面に位置するGPS衛生の表示態様を他の衛星を異ならせてもよい。また、そのようなGPS衛星は表示しないようにしてもよい。
【0038】
図6は、現在位置を投影の視点とした場合の投影図の表示画面である。図6では、立体構造物の山725に隠れたGPS衛星606を破線で表示し、他のGPS衛星と表示態様を異ならせている。
【0039】
このようにすることで、ユーザは、GPS信号を受信できないGPS衛星を把握することができる。また、位置が分かるので、現在位置から移動することにより、受信できる状態になる可能性、または、受信できなくなる可能性を容易に知ることができる。
【0040】
図4に戻って説明する。このようにして、表示処理部45は、すべてのGPS衛星について、S102〜S106の処理を行う(S108)と、現在位置演算部46の出力から現在位置が変化したか否か判定する(S120)。現在位置が変化した場合、表示処理部45は、S102に戻って、再びGPS衛星ごとに、S102〜S106の処理を行う。
【0041】
以上、本発明が適用された一実施形態について説明した。
【0042】
上記実施形態によれば、GPS衛星の位置が把握容易に表示するナビゲーション装置が提供される。また、GPS衛星ごとの受信状態が把握容易に表示されるナビゲーション装置が提供される。
【0043】
これにより、ユーザは、現在位置を求めるにあたって、どのGPS衛星のGPS信号を利用したかを容易に把握できる。
【0044】
また、風景のように表示される投影図上にGPS衛星が表示されるので、娯楽性の高いナビゲーション装置となる。
【0045】
なお、本実施形態は、本発明の要旨の範囲内で、様々な変形が可能である。
【0046】
例えば、本発明を車載用ナビゲーション装置に適用した例について説明したが、本発明は車載用以外のナビゲーション装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、車載用ナビゲーション装置1000の概略構成図である。
【図2】図2は、演算処理部1のハードウェア構成を示す図である。
【図3】図3は、演算処理部1の機能構成を示す図である。
【図4】図4は、車載用ナビゲーション装置1000の投影図表示中のGPS衛星表示処理の概略を示すフロー図である。
【図5】図5は、鳥瞰図の表示画面の一例を示す図である。
【図6】図6は、ユーザ視点の投影図の表示画面の一例を示す図である。
【図7】図7は、鳥瞰図の投影方法を説明するための図である。
【図8】図8は、ユーザ視点の投影図の投影方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0048】
1・・・演算処理部、2・・・ディスプレイ、3・・・データ記憶装置、4・・・音声出入力装置、5・・・入力装置、6・・・車輪速センサ、7・・・地磁気センサ、8・・・ジャイロ、9・・・GPS受信機、21・・・CPU、22・・・RAM、23・・・ROM、24・・・DMA、25・・・描画コントローラ、26・・・VRAM、27・・・カラーパレット、28・・・A/D変換器、29・・・SCI、30・・・PIO、31・・・カウンタ、41・・・ユーザ操作解析部、42・・・経路探索部、45・・・表示処理部、46・・・現在位置演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置からみた方位及び仰角を出力するGPS受信機を備えたナビゲーション装置の表示方法であって、
前記ナビゲーション装置は、
地図データを記憶する記憶装置を有し、
地図データを用いて、特定の視点からの現在位置周辺の投影図を作成するとともに、前記GPS受信機の方位及び仰角から、前記投影図上のGPS衛星の位置を求め、求めたGPS衛星の位置を前記投影図とともに表示する
ことを特徴とするナビゲーション装置の表示方法。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置の表示方法であって、
前記特定の視点は、現在位置より高度が高い位置であり、前記投影図は、現在位置を含む鳥瞰図である
ことを特徴とするナビゲーション装置の表示方法。
【請求項3】
請求項1に記載のナビゲーション装置の表示方法であって、
前記特定の視点は、現在位置であり、前記投影図は、ナビゲーション装置が搭載された移動体の進行方向の投影図である。
ことを特徴とするナビゲーション装置の表示方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のナビゲーション装置の表示方法であって、
前記GPS受信装置は、GPS衛星ごとのGPS信号の受信状態を出力し、
前記ナビゲーション装置は、GPS衛星の位置を表示する際、GPS信号の受信状態に応じた表示態様で表示する
ことを特徴とするナビゲーション装置の表示方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のナビゲーション装置の表示方法であって、
前記GPS受信装置は、GPS衛星ごとの現在位置からの距離を出力し、
前記ナビゲーション装置は、GPS衛星の位置を表示する際、現在位置からの距離に応じた表示態様で表示する
ことを特徴とするナビゲーション装置の表示方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のナビゲーション装置の表示方法であって、
前記地図データは、立体構造物のデータを含み、
前記投影図は、前記立体構造物の投影像を含み、
前記ナビゲーション装置は、前記立体構造物の背面に隠れないGPS衛星を表示する
ことを特徴とするナビゲーション装置の表示方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のナビゲーション装置の表示方法であって、
前記地図データは、立体構造物のデータを含み、
前記投影図は、前記立体構造物の投影像を含み、
前記ナビゲーション装置は、前記立体構造物の背面に隠れるGPS衛星の位置を他のGPS衛星と異なる態様で表示する
ことを特徴とするナビゲーション装置の表示方法。
【請求項8】
現在位置からみた方位及び仰角を出力するGPS受信機を備えたナビゲーション装置であって、
地図データを記憶する記憶装置と、
地図データを用いて、特定の視点からの現在位置周辺の投影図を作成するとともに、前記GPS受信機の方位及び仰角から、前記投影図上のGPS衛星の位置を求め、求めたGPS衛星の位置を前記投影図とともに表示する手段と
を有することを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−64414(P2006−64414A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244306(P2004−244306)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】