説明

ニコチン性アセチルコリン受容体のモジュレーターとして有用な新規のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体

本発明は、ニコチン性アセチルコリン受容体のモジュレーターであることが見出されている、新規のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体に関する。それらの薬理学的プロフィールによって、本発明の化合物は、中枢神経系(CNS)や末梢神経系(PNS)のコリン作動系に関連する多様な疾患又は障害、平滑筋収縮に関連する疾患又は障害、内分泌疾患又は障害、神経変性に関連する疾患又は障害、炎症や疼痛に関連する疾患又は障害及び化学物質の乱用の停止により引き起こされる離脱症状の治療に有用でありうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニコチン性アセチルコリン受容体のモジュレーターであることが見出されている、新規のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体に関する。それらの薬理学的プロフィールによって、本発明の化合物は、中枢神経系(CNS)や末梢神経系(PNS)のコリン作動系に関連する多様な疾患又は障害、平滑筋収縮に関連する疾患又は障害、内分泌疾患又は障害、神経変性に関連する疾患又は障害、炎症や疼痛に関連する疾患又は障害及び化学物質の乱用の停止により引き起こされる離脱症状の治療に有用でありうる。
【背景技術】
【0002】
内在性コリン作動性神経伝達物質であるアセチルコリンは、2種類のコリン作動性受容体、ムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)及びニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)を介して生物学的効果を発揮する。
【0003】
ムスカリン性アセチルコリン受容体が、記憶及び認識力にとって重要な脳領域においてニコチン性アセチルコリン受容体よりも量的に優位であることは十分に確立されているので、記憶関連障害の治療のための作用物質の開発を目的とする多くの研究は、ムスカリン性アセチルコリン受容体のモジュレーターの合成に焦点を合わせている。
【0004】
しかし、最近、nAChRモジュレーターの開発に対する興味が現れてきた。幾つかの疾患は、コリン作動系の変性に関連しており、すなわち、アルツハイマー型老年性認知症、血管性認知症及びアルコール中毒症に直接関連する器質性脳損傷疾患に起因する認知障害である。
【0005】
US2009 069569は、1−及び/又は4−置換1,2,3−トリアゾール化合物の生成方法を記載している。しかし、生物学的活性は何も報告されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ニコチン性受容体の新規のモジュレーターを提供することを主題としており、このモジュレーターは、コリン作動性受容体、特にニコチン性アセチルコリンα7受容体サブタイプに関連する疾患又は障害の治療に有用である。
【0007】
本発明の化合物は、多様な診断方法、特にインビボの受容体画像化(神経画像化)のための診断用ツール又はモニタリング剤としても有用であり、これらは標識又は非標識形態で使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様において、本発明は、式I:
【化1】


[式中、
Yは、水素、ハロ、アルキル、ハロ−アルキル、ヒドロキシ−アルキル又はアミノ−アルキルを表し;
、R、R及びRは、互いに独立して、水素、アルキル、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、N−(アルキル−カルボニル)−アミノ、スルファモイル及びオキサジアゾリルからなる群より選択される置換基を表す]
で示されるジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体、その立体異性体若しくは立体異性体の混合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0009】
第2態様において、本発明は、本発明のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体又はその薬学的に許容される付加塩の治療有効量を、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は希釈剤と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0010】
別の態様の観点から、本発明は、ヒトを含む哺乳動物の、コリン作動性受容体の調節に対して反応性がある疾患又は障害又は状態を治療、予防又は緩和するための医薬組成物/医薬の製造における、本発明のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体又はその薬学的に許容される付加塩の使用に関する。
【0011】
なお別の態様において、本発明は、ヒトを含む生きている動物体の、コリン作動性受容体の調節に対して反応性がある疾患、障害又は状態を治療、予防又は緩和する方法であって、本発明のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体の治療有効量を、それを必要とする生きている動物体に投与するステップを含む方法を提供する。
【0012】
本発明の他の目的は、以下の詳細な記載及び実施例によって当業者には明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体
第1態様において、本発明は、式I:
【化2】


[式中、
Yは、水素、ハロ、アルキル、ハロ−アルキル、ヒドロキシ−アルキル又はアミノ−アルキルを表し;
、R、R及びRは、互いに独立して、水素、アルキル、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、N−(アルキル−カルボニル)−アミノ、スルファモイル及びオキサジアゾリルからなる群より選択される置換基を表す]
で示されるジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体、その立体異性体若しくは立体異性体の混合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0014】
より好ましい実施態様において、本発明のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体は、式Ia:
【化3】


[式中、Y、R、R、R及びRは、上記に定義されたとおりである]
で示される化合物、その立体異性体若しくは立体異性体の混合物又はその薬学的に許容される塩である。
【0015】
別の好ましい実施態様において、本発明は、
Yが、アルキル、ハロ−アルキル、ヒドロキシ−アルキル又はアミノ−アルキルを表し;
、R、R及びRが、互いに独立して、水素、アルキル、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、N−(アルキル−カルボニル)−アミノ、スルファモイル及びオキサジアゾリルからなる群より選択される置換基を表す
式I又はIaのジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体、その立体異性体若しくは立体異性体の混合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0016】
好ましい実施態様において、本発明のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体は、Yがアルキル、ハロ−アルキル、ヒドロキシ−アルキル又はアミノ−アルキルを表す式Iの化合物である。
【0017】
より好ましい実施態様において、Yは、アルキル、特にメチルを表す。
【0018】
別のより好ましい実施態様において、Yは、ハロ−アルキル、特にハロメチル、最も好ましくはブロモメチルを表す。
【0019】
第3のより好ましい実施態様において、Yは、ヒドロキシ−アルキル、特にヒドロキシメチルを表す。
【0020】
第4のより好ましい実施態様において、Yは、アミノ−アルキル、特にアミノメチルを表す。
【0021】
第5のより好ましい実施態様において、Yは水素を表す。
【0022】
第6のより好ましい実施態様において、Yは、ハロ、特にクロロを表す。
【0023】
別の好ましい実施態様において、本発明のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体は、R、R、R及びRが、互いに独立して、水素、アルキル、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、N−(アルキル−カルボニル)−アミノ、スルファモイル及びオキサジアゾリルからなる群より選択される置換基を表す式Iの化合物である。
【0024】
より好ましい実施態様において、R、R、R及びRは、互いに独立して、水素、ハロ、特にフルオロ又はクロロ、トリフルオロメチル、アルコキシ、特にメトキシ及びヒドロキシからなる群より選択される置換基を表す。
【0025】
別のより好ましい実施態様において、R及びRの一方は水素を表し、R及びRの他方は、ヒドロキシ又はアルコキシ、特にメトキシを表す。
【0026】
第3のより好ましい実施態様において、Rは、ヒドロキシ又はアルコキシ、特にメトキシを表し、Rは水素を表す。
【0027】
第4のより好ましい実施態様において、Rはヒドロキシを表し、Rは水素を表す。
【0028】
第5のより好ましい実施態様において、Rはアルコキシ、特にメトキシを表し、Rは水素を表す。
【0029】
第6のより好ましい実施態様において、R及びRの一方は、ハロ、特にフルオロ又はクロロを表し、R及びRの他方はトリフルオロメチルを表す。
【0030】
第7のより好ましい実施態様において、Rはトリフルオロメチルを表し、Rは、ハロ、特にフルオロ又はクロロを表す。
【0031】
第8のより好ましい実施態様において、R及びRの一方は、ヒドロキシ又はアルコキシ、特にメトキシを表し、R及びRの他方は、ハロ、特にクロロを表す。
【0032】
第9のより好ましい実施態様において、Rは、ヒドロキシ又はアルコキシ、特にメトキシを表し、Rは、ハロ、特にクロロを表す。
【0033】
最も好ましい実施態様において、本発明のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体は、
1−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−4−(4−メトキシ−フェニル)−5−メチル−1H−[1,2,3]トリアゾール;
1−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−4−(4−メトキシ−フェニル)−5−メチル−1H−[1,2,3]トリアゾール;
4−[1−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−5−メチル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノール;
5−ブロモメチル−1−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−4−(4−メトキシ−フェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール;
C−[3−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−5−(4−メトキシ−フェニル)−3H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−メチルアミン;
4−[5−アミノメチル−1−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノール;
[3−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−5−(4−メトキシ−フェニル)−3H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−メタノール;
4−[1−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−5−ヒドロキシメチル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノール;
1−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−4−(4−メトキシ−フェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール;
4−[1−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノール;
5−クロロ−4−(2−クロロ−4−メトキシ−フェニル)−1−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール;又は
3−クロロ−4−[5−クロロ−1−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノール;
その立体異性体若しくは立体異性体の混合物又はその薬学的に許容される塩である。
【0034】
本明細書に記載されている実施態様の2つ以上の任意の組み合わせは、本発明の範囲内であることが考慮される。
【0035】
置換基の定義
本発明の文脈において、ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを表す。
【0036】
本発明の文脈において、アルキル基は、一価飽和直鎖又は分岐炭化水素鎖を意味する。炭化水素鎖は、好ましくは、1から18個までの炭素原子(C1−18アルキル)、より好ましくは1から6個までの炭素原子(C1−6−アルキル;低級アルキル)を含有し、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、第三級ペンチル、ヘキシル及びイソヘキシルが含まれる。好ましい実施態様において、アルキルは、C1−4−アルキル基を表し、ブチル、イソブチル、第二級ブチル及び第三級ブチルが含まれる。本発明の別の好ましい実施態様において、アルキルはC1−3アルキル基を表し、特にメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルであることができる。
【0037】
本発明の文脈において、アルコキシ基は、「アルキル−O−」基を意味し、ここでアルキルは、上記に定義されたとおりである。本発明の好ましいアルコキシ基の例には、メトキシ及びエトキシが挙げられる。
【0038】
本発明の文脈において、ヒドロキシ−アルキル基は、上記に定義されたアルキル基を意味し、ここでアルキル基は、1つ以上のヒドロキシ基で置換されている。本発明の好ましいヒドロキシ−アルキル基の例には、ヒドロキシ−メチル、2−ヒドロキシ−エチル、3−ヒドロキシ−プロピル、4−ヒドロキシ−ブチル、5−ヒドロキシ−ペンチル及び6−ヒドロキシ−ヘキシルが挙げられる。
【0039】
本発明の文脈において、ハロ−アルキル基は、上記に定義されたアルキル基を意味し、ここで、アルキル基はハロで一置換されており、ハロは上記に定義されたとおりである。本発明の好ましいハロ−アルキル基の例には、ハロ−メチル、2−ハロ−エチル、3−ハロ−プロピル、4−ハロ−ブチル、5−ハロ−ペンチル及び6−ハロ−ヘキシルが挙げられる。
【0040】
本発明の文脈において、アミノ−アルキル基は、上記に定義されたアルキル基を意味し、ここでアルキル基はアミノで一置換されている。本発明の好ましいアミノ−アルキル基の例には、アミノ−メチル、2−アミノ−エチル、3−アミノ−プロピル、4−アミノ−ブチル、5−アミノ−ペンチル及び6−アミノ−ヘキシルが挙げられる。
【0041】
薬学的に許容される塩
本発明のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体は、意図される投与に適した任意の形態で提供することができる。適切な形態には、薬学的(すなわち、生理学的)に許容される塩及び本発明の化合物のプレ−又はプロドラッグ形態が含まれる。
【0042】
薬学的に許容される付加塩の例には、例えば、これらに制限されることなく、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、アコン酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、エンボン酸塩、エナント酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、誘導されたナフタレン−2−スルホン酸塩、フタル酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トルエン−p−スルホン酸塩などの非毒性の無機及び有機酸付加塩が挙げられる。そのような塩は、当該技術において周知であり記載されている手順により形成することができる。
【0043】
本発明のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体の金属塩には、カルボキシ基を含有する本発明の化合物のナトリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられる。
【0044】
立体異性体
本発明のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体は、鏡像異性体、ジアステレオマー並びに幾何異性体(シス−トランス異性体)を含む異なる立体異性体形態で存在できることが、当業者により理解される。本発明は、そのような立体異性体及びラセミ混合物を含むその任意の混合物を全て含む。
【0045】
ラセミ形態を、既知の方法及び技術により光学的対掌体に分割することができる。鏡像異性体化合物(鏡像異性体中間体を含む)を分離する1つの方法は、化合物がキラル酸である場合、光学的に活性なアミンを使用し、ジアステレオマーを遊離させ、酸で処理することにより塩を分割することである。ラセミ化合物を光学的対掌体に分割する別の方法は、光学的に活性なマトリックスによるクロマトグラフィーに基づいている。したがって、本発明のラセミ化合物を、例えばD−又はL−(酒石酸、マンデル酸又はショウノウスルホン酸)塩の分別結晶化により、光学的対掌体に分割することができる。
【0046】
光学的異性体を分割する追加的な方法は、当該技術において知られている。そのような方法には、Jaques J、Collet A及びWilen Sにより「Enantiomers, Racemates,and Resolutions」、John Wiley and Sons、New York(1981)において記載されているものが含まれる。
【0047】
光学的に活性な化合物を、光学的に活性な出発物質又は中間体から調製することもできる。
【0048】
ジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体を生成する方法
本発明のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体を、従来の化学合成の方法、例えば実施例に記載されているものにより調製することができる。本出願に記載されている方法のための出発物質は、既知であるか又は市販の化学薬品から従来の方法により容易に調製することができる。
【0049】
また、本発明の1つの化合物を、従来の方法を使用して、本発明の別の化合物に変換することができる。
【0050】
本明細書に記載される反応の最終生成物を、従来の技術により、例えば抽出、結晶化、蒸留、クロマトグラフィーなどにより単離することができる。
【0051】
生物学的活性
本発明は、ニコチン性受容体の新規のモジュレーターを提供することを主題としており、このモジュレーターは、コリン作動性受容体、特にニコチン性アセチルコリン受容体(cAChR)に関連する疾患又は障害の治療に有用である。本発明の好ましい化合物は、顕著なニコチン性アセチルコリンα7受容体サブタイプ選択性を示す。
【0052】
それらの薬理学的プロフィールによって、本発明の化合物は、中枢神経系(CNS)や末梢神経系(PNS)のコリン作動系に関連する多様な疾患又は障害、平滑筋収縮に関連する疾患又は障害、内分泌疾患又は障害、神経変性に関連する疾患又は障害、炎症や疼痛に関連する疾患又は障害及び化学物質の乱用の停止により引き起こされる離脱症状の治療に有用でありうる。
【0053】
本発明の化合物は、多様な診断方法、特にインビボ受容体画像化(神経画像化)のための診断用ツール又はモニタリング剤としても有用であり、これらは標識又は非標識形態で使用することができる。
【0054】
好ましい実施態様において、本発明に考慮され、ニコチン性アセチルコリン受容体の調節に反応性のある疾患、障害又は状態は、不安、認知障害、学習障害、記憶欠損又は機能障害、アルツハイマー病、注意欠陥、注意欠陥多動障害、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、ジルドラトゥーレット症候群、うつ病、躁病、躁うつ病、精神病、統合失調症、強迫反応障害(OCD)、パニック障害、神経性食欲不振、過食及び肥満を含む摂食障害、ナルコレプシー、侵害受容、エイズ認知症、老年性認知症、末梢神経障害、自閉症、失読症、遅発性ジスキネジー、運動亢進症、てんかん、外傷後症候群、社会恐怖症、睡眠障害、仮性認知症、ガンサー症候群、月経前症候群、黄体期後期症候群、慢性疲労症候群、無言症、脱毛癖、時差ぼけ、高血圧、心不整脈、けいれん性障害、狭心症、早期分娩、けいれん、下痢、喘息、てんかん、遅発性ジスキネジー、運動亢進症、早漏及び勃起困難を含む平滑筋収縮障害、甲状腺中毒症及び褐色細胞腫を含む内分泌系障害、一過性無酸素症及び誘発性神経変性を含む神経変性障害、疼痛、軽度、中等度又は重度の疼痛、急性疼痛、慢性疼痛、再発性の疼痛、神経因性疼痛、片頭痛により引き起こされる疼痛、術後疼痛、幻肢痛、神経因性疼痛、慢性頭痛、中心性疼痛、糖尿病性神経障害に関連する、帯状疱疹後神経痛に関連する又は末梢神経損傷に関連する疼痛、炎症性皮膚障害、ざ瘡、酒さ、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎及び下痢を含む炎症性障害、ニコチン離脱症状、ヘロイン、コカイン及びモルヒネを含むオピオイド離脱症状、ベンゾジアゼピン様薬を含むベンゾジアゼピン離脱症状、並びにアルコールを含む、常習性物質の使用の停止により引き起こされる離脱症状に関連する障害である。
【0055】
より好ましい実施態様において、ニコチン性アセチルコリン受容体の調節に反応性のある疾患、障害又は状態は、認知障害、精神病、統合失調症又はうつ病である。
【0056】
別のより好ましい実施態様において、ニコチン性アセチルコリン受容体の調節に反応性のある疾患、障害又は状態は、けいれん性障害、狭心症、早期分娩、けいれん、下痢、喘息、てんかん、遅発性ジスキネジー、運動亢進症、早漏及び勃起困難を含む平滑筋収縮障害に関連する。
【0057】
更に別のより好ましい実施態様において、ニコチン性アセチルコリン受容体の調節に反応性のある疾患、障害又は状態は、甲状腺中毒症及び褐色細胞腫などの内分泌系に関連する。
【0058】
なお別のより好ましい実施態様において、ニコチン性アセチルコリン受容体の調節に反応性のある疾患、障害又は状態は、一過性無酸素症及び誘発性神経変性を含む神経変性障害である。
【0059】
更なるより好ましい実施態様において、ニコチン性アセチルコリン受容体の調節に反応性のある疾患、障害又は状態は、急性、慢性又は再発性の軽度、中等度又はより重度の疼痛、並びに片頭痛より引き起こされる疼痛、術後疼痛及び幻肢痛を含む疼痛である。疼痛は、特に、神経因性疼痛、慢性頭痛、中心性疼痛、糖尿病性神経障害に関連する、帯状疱疹後神経痛に関連する又は末梢神経損傷に関連する疼痛であることができる。
【0060】
更なるより好ましい実施態様において、ニコチン性アセチルコリン受容体の調節に反応性のある疾患、障害又は状態は、ざ瘡及び酒さなどの炎症性皮膚障害、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎及び下痢である。
【0061】
最後に、本発明の化合物は、常習性物質の使用の停止により引き起こされる離脱症状の治療に有用でありうる。そのような常習性物質には、タバコなどのニコチン含有製品、ヘロイン、コカイン及びモルヒネなどのオピオイド、ベンゾジアゼピン及びベンゾジアゼピン様薬物、並びにアルコールが含まれる。常習性物質からの退薬は、一般に、不安及び欲求不満、怒り、不安、集中困難、情動不安、心拍数の減少、並びに食欲増加及び体重増加により特徴付けられる外傷性の経験である。
【0062】
この文脈において、「治療」は、離脱症状及び禁断の治療、防止、予防及び緩和、並びに常習性物質の自発的な摂取量の減少をもたらす治療を網羅する。
【0063】
医薬組成物
別の態様において、本発明は、本発明のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体の治療有効量を含む新規医薬組成物を提供する。
【0064】
治療に使用される本発明のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体が原料化合物の形態で投与されうる場合、活性成分を、場合により生理学的に許容される塩の形態で、1つ以上の佐剤、賦形剤、担体、緩衝剤、希釈剤及び/又は他の慣用の医薬助剤と一緒に医薬組成物に導入することが好ましい。
【0065】
好ましい実施態様において、本発明は、本発明のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体又はその薬学的に許容される塩若しくは誘導体を、1つ以上の薬学的に許容される担体と、並びに場合により当該技術において既知であり使用される他の治療及び/又は予防成分と一緒に含む医薬組成物を提供する。担体(単数又は複数)は、製剤の他の成分と適合性があり、且つ受容者に有害ではないという意味において「許容」されなければならない。
【0066】
本発明の医薬組成物は、所望の治療に適した任意の従来の経路によって投与することができる。好ましい投与経路には、特に、錠剤、カプセル剤、糖衣錠剤、粉剤又は液剤での経口投与及び特に、皮膚、皮下、筋肉内又は静脈内への非経口投与が含まれる。本発明の医薬組成物を、標準的な方法及び所望の製剤に適した従来の技術の使用により当業者によって製造することができる。望ましい場合、活性成分の持続放出を与えるように適合された組成物を用いることができる。
【0067】
製剤及び投与の技術についての更なる詳細は、最新版のRemington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co.,Easton,PA)において見出すことができる。
【0068】
実際の投薬量は、治療される疾患の性質及び重症度によって決まり、医師の裁量の範囲内であり、所望の治療効果を生じるために、本発明の特定の状況に対して投薬量を増減することにより変えることができる。しかし、個別の用量あたり約0.1から約500mgまでの活性成分、好ましくは約1から約100mgまで、最も好ましくは約1から約10mgまでを含有する医薬組成物が治療処置に適していることが、現在考慮されている。
【0069】
活性成分を1日あたり1回又は数回の用量で投与することができる。満足のいく結果は、特定の場合において、静注0.1μg/kg及び経口1μg/kgの低い投薬量によって得ることができる。投薬量範囲の上限は、現在、静注約10mg/kg及び経口100mg/kgであると考えられる。好ましい範囲は、静注約0.1μg/kgから約10mg/kg/日まで及び経口約1μg/kgから約100mg/kg/日までである。
【0070】
治療方法
本発明のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体は、貴重なニコチン性受容体のモジュレーターであり、したがって、コリン作動性機能不全を伴う一連の病気、並びにnAChRモジュレーターの作用に反応性のある一連の疾患の治療に有用である。
【0071】
別の態様において、本発明は、ヒトを含む生きている動物体の、コリン作動性受容体の調節に対して反応性がある疾患又は障害又は状態を治療、予防又は緩和する方法であって、本発明のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体の有効量を、それを必要とするヒトを含む生きている動物体に投与することを含む方法を提供する。
【0072】
本発明の文脈において、用語「治療」は、治療、防止、予防又は緩和を網羅し、用語「疾患」は、病気、疾患、障害及び当該の疾患に関連する状態を網羅する。
【0073】
本発明において企図される好ましい適応症は、上記されたものである。
【0074】
適切な投薬範囲は、従来通り、正確な投与様式、投与される形態、投与が向けられる適応症、関与する対象者及び関与する対象者の体重、並びに担当医師又は獣医師の選択及び経験に応じて、1日0.1から1000ミリグラムまで、1日10から500ミリグラムまで、特に1日30から100ミリグラムまでであることが現在企図されている。
【0075】
満足のいく結果は、特定の場合において、静注0.005mg/kg及び経口0.01mg/kgの低い投薬量によって得ることができる。投薬量範囲の上限は、静注約10mg/kg及び経口100mg/kgである。好ましい範囲は、静注約0.001から約1mg/kgまで及び経口約0.1から約10mg/kgまでである。
【実施例】
【0076】
本発明を、以下の実施例を参照して更に説明するが、これらの実施例は、請求される本発明の範囲をいかようにも制限することを意図していない。
【0077】
(例1)
調製例
1−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−4−(4−メトキシ−フェニル)−5−メチル−1H−[1,2,3]トリアゾール(化合物1)
メタノール(25ml)中のナトリウムメトキシド(0.296g、5.4848mmol)の撹拌、氷冷溶液に、4−メトキシフェニルアセトン(0.661g、4.0222mmol)及び1−アジド−2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンゼン(0.750g、3.6565mmol)を、窒素雰囲気下で少量ずつ加える。反応混合物を一晩かけて自然に室温にし、真空下で濃縮し、水を加え、酢酸エチル(3×80ml)で抽出する。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、蒸発させて、暗褐色の固体(1.185g、質量収支92%)を得る。この粗物質を、石油エーテル中の9%酢酸エチルで溶出するシリカゲル(230〜400メッシュ)のカラムクロマトグラフィーにより精製して、標記化合物を白色の固体(0.600mg、収率47%)として得る。融点153.8〜154.9℃、[M+H]のLC−ESI−HRMSは、352.107Daを示す、計算値352.107299Da、偏差−0.8ppm。
【0078】
1−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−4−(4−メトキシ−フェニル)−5−メチル−1H−[1,2,3]トリアゾール(化合物2)
メタノール(200ml)中のナトリウムメトキシド(2.750g、50.9036mmol)の撹拌、氷冷溶液に、市販の4−メトキシフェニルアセトン(6.100g、37.1492mmol)及び1−アジド−2−クロロ−4−トリフルオロメチル−ベンゼン(7.500g、33.8495mmol)を、窒素雰囲気下で加える。反応混合物を0℃に1時間保持し、次に自然に室温にし、最後に一晩還流する。反応混合物を濃縮し、水を加え、酢酸エチル(3×500ml)で抽出する。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、蒸発させて、暗褐色のガム状物質(約12.3g、質量収支98%)を得る。粗残渣を、石油エーテル中の2〜9%酢酸エチルで溶出するシリカゲル(230〜400メッシュ)のカラムクロマトグラフィーにより精製して、標記化合物を黄色の固体(4.100g、収率33%)として得る。LCMS:>99% UV分析、MH=368。
【0079】
4−[1−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−5−メチル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノール(化合物3)
無水ジクロロメタン(30ml)中の化合物2(0.400g、1.0877mmol)の−78℃に冷却した、窒素流下の撹拌溶液に、5mlの無水ジクロロメタン中の三臭化ホウ素(1.900g、約0.72ml、7.6139mmol)の溶液を滴加する。混合物を一晩かけて自然に室温にし、次に氷塩浴で再度冷却し、過剰量の試薬を12mlのメタノール及び12mlの水の滴加により分解する。5分間撹拌した後、10%水酸化ナトリウム溶液(15ml)を加え、水層を、分離した後、10%塩酸溶液で酸性化し、クロロホルム(3×150ml)で抽出する。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、蒸発させて、固体残渣(0.380g)を得て、それを石油エーテルで粉砕し、デカントし、乾燥して、標記化合物をオフホワイトの固体(0.350g、収率91%)として得る。融点175.6〜176.6℃、[M+H]のLC−ESI−HRMSは、354.0634Daを示す、計算値354.062099Da、偏差3.7ppm。
【0080】
5−ブロモメチル−1−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−4−(4−メトキシ−フェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール(化合物4)
四塩化炭素(80ml)中の化合物2(2.500g、6.798mmol)の撹拌溶液に、N−ブロモスクシンイミド(1.940g、10.197mmol)及び触媒量の過酸化ベンゾイル(0.250g、2.0639)を加え、得られた反応混合物を一晩還流する。反応混合物を室温に冷却し、形成された固体を濾過し、濾液を蒸発させて、黄色の固体(約3g、質量収支97%)を得る。粗残渣を、石油エーテル中の9%酢酸エチルで溶出するシリカゲル(230〜400メッシュ)のカラムクロマトグラフィーにより精製して、標記化合物を黄色の固体(2.5g、収率76%)として得る。融点152.4〜153.9℃、[M+H]のLC−ESI−HRMSは、445.9881Daを示す、計算値445.988262Da、偏差−0.4ppm。
【0081】
C−[3−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−5−(4−メトキシ−フェニル)−3H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−メチルアミン(化合物5)
無水エタノール(20ml)中の化合物4(0.900g、2.015mmol)の溶液に、−20℃で、アンモニアガスを25分間パージし、反応混合物を自然に室温にする。得られた反応混合物を蒸発乾固して、黄色の固体(0.77g、質量収支100%)を得る。粗残渣を、石油エーテル中の40%酢酸エチルで溶出するシリカゲル(230〜400メッシュ)のカラムクロマトグラフィーにより精製して、標記化合物をオフホワイトの固体(0.650g、収率84%)として得る。[M+H]のLC−ESI−HRMSは、383.0898Daを示す、計算値383.088648Da、偏差3ppm。
【0082】
4−[5−アミノメチル−1−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノール(化合物6)
無水ジクロロメタン(25ml)中の化合物5(0.150g、0.3762mmol)の、0℃に冷却した、窒素流下の撹拌溶液に、5mlの無水ジクロロメタン中の三臭化ホウ素(0.25ml、2.6334mmol)の溶液を滴加する。撹拌を0℃で1時間、室温で1時間続ける。得られた混合物を氷塩浴で再度冷却し、過剰量の試薬を3mlのメタノール及び3mlの水で分解し、これを反応混合物に滴加する。5分間撹拌した後、10%水酸化ナトリウム溶液(8ml)を加え、水層を、分離したら、10%塩酸溶液で酸性化し、クロロホルム(3×50ml)で抽出する。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、蒸発させて、緑色を帯びた固体(0.130g)を得る。この粗残渣を、石油エーテル中の40%酢酸エチルで溶出するシリカゲル(230〜400メッシュ)のカラムクロマトグラフィーにより精製して、標記化合物を黄色の固体(0.096g、収率69%)として得る。融点96.5〜98.9℃、[M+H]のLC−ESI−HRMSは、369.0744Daを示す、計算値369.072998Da、偏差3.8ppm。
【0083】
[3−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−5−(4−メトキシ−フェニル)−3H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−メタノール(化合物7)
水(80ml)及びジオキサン(80ml)中の化合物4(0.900g、2.015mmol)の溶液に炭酸カルシウム(0.3025g、3.0225mmol)を加え、混合物を一晩還流する。得られた反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(3×150ml)で抽出する。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、蒸発させて、黄色のガム状物質(0.773g、質量収支100%)を得る。粗残渣を、石油エーテル中の30%酢酸エチルで溶出するシリカゲル(230〜400メッシュ)のカラムクロマトグラフィーにより精製して、標記化合物を明黄色の固体(0.600g、収率69%)として得る。融点130.8〜132.2℃、[M+H]のLC−ESI−HRMSは、384.0732Daを示す、計算値384.072664Da、偏差1.4ppm。
【0084】
4−[1−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−5−ヒドロキシメチル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノール(化合物8)
無水ジクロロメタン(25ml)中の化合物7(0.300g、0.7817mmol)の、−20℃に冷却した、窒素流下の撹拌溶液に、5mlの無水ジクロロメタン中の三臭化ホウ素(1.371g、約0.52ml、5.4719mmol)の溶液を滴加する。撹拌を−20℃で1時間、室温で一晩続ける。得られた混合物を氷塩浴で再度冷却し、過剰量の試薬を8mlのメタノール及び8mlの水で分解し、これを反応混合物に滴加する。5分間撹拌した後、10%水酸化ナトリウム溶液(10ml)を加え、水層を、分離したら、10%塩酸溶液で酸性化し、クロロホルム(3×100ml)で抽出する。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、蒸発させて、固体残渣(0.280g)を得て、それを石油エーテルで粉砕し、デカントし、乾燥して、標記化合物をオフホワイトの固体(0.243g、収率83%)として得る。融点180.6〜182.2℃、[M+H]のLC−ESI−HRMSは、370.0569Daを示す、計算値370.057014Da、偏差−0.3ppm。
【0085】
1−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−4−(4−メトキシ−フェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール(化合物9)
エタノール(60ml)中の新たに調製した1−アジド−2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンゼン(3.000g、14.626mmol)及び市販の1−エチニル−4−メトキシベンゼン(2.320g、17.551mmol)の溶液を80℃で24時間環流し、続いて蒸発乾固し、水(150ml)を加える。この得られた混合物を酢酸エチル(3×300ml)で抽出し、合わせた有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、蒸発させて、暗褐色の油状残渣(約4.9g、質量収支99%)を得る。2つの位置異性体(1,4−及び1,5−ジアリール置換トリアゾール)の混合物を含有する粗残渣を、ヘキサン中の2〜4%酢酸エチルで溶出するシリカゲル(60〜120メッシュ)のカラムクロマトグラフィーにより精製して、標記化合物をオフホワイトの固体(0.900g、収率18%)として得る。融点152.3〜153.5℃、[M+H]のLC−ESI−HRMSは、338.0912Daを示す、計算値338.091104Da、偏差0.3ppm。
【0086】
4−[1−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノール(化合物10)
無水ジクロロメタン(15ml)中の化合物8(0.570g、1.690mmol)の、−78℃に冷却した、窒素流下の撹拌溶液に、5mlの無水ジクロロメタン中の三臭化ホウ素(2.964g、約1.1ml、11.83mmol)の溶液を滴加する。混合物を自然に室温にし、次に撹拌を室温で続ける(合計5時間)。得られた混合物を氷塩浴で再度冷却し、過剰量の試薬を20mlのメタノール及び20mlの水の滴加により分解する。5分間撹拌した後、5%重炭酸ナトリウム溶液(25ml)を加え、得られた混合物をクロロホルム(3×200ml)で抽出する。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、蒸発させて、標記化合物をオフホワイトの固体(0.540g、収率99%)として得る。融点214.8〜215.7℃、[M+H]+のLC−ESI−HRMSは、324.074715043693Daを示す、計算値324.075454Da、偏差−2.3ppm。
【0087】
5−クロロ−4−(2−クロロ−4−メトキシ−フェニル)−1−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール(化合物11)
エタノール(99%)(20ml)中の5−(2−クロロ−4−メトキシ−フェニル)−3−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−3H−[1,2,3]トリアゾール−4−イルアミン(0.650g、1.6807mmol)(WO2009/019278に記載された一般的手順に従って調製)の氷冷懸濁液の中で、乾燥HClガスを穏やかに泡立てる。亜硝酸イソアミル(0.394g、3.362mmol)を加え、反応混合物を0〜5℃で12時間撹拌し、蒸発乾固する。水(100ml)を加え、新たな混合物をジクロロメタン(3×150ml)で抽出する。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、蒸発させて、粗残渣を得る。この残渣を、ヘキサン中の4%酢酸エチルで溶出するシリカゲル(60〜120メッシュ)のカラムクロマトグラフィーにより精製して、標記化合物を白色の固体(0.260g、収率38%)として得る。融点95.8〜97.5℃。
【0088】
3−クロロ−4−[5−クロロ−1−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノール(化合物12)
無水ジクロロメタン(5ml)中の化合物10(0.150g、0.3693mmol)の、−78℃に冷却した、窒素流下の撹拌溶液に、5mlの無水ジクロロメタン中の三臭化ホウ素(0.648g、約0.25ml、2.5851mmol)の溶液を滴加する。混合物を自然に室温にし、次に撹拌を室温で続ける(合計8時間)。混合物を氷塩浴で再度冷却し、過剰量の試薬を5mlのメタノール及び5mlの水の滴加により分解する。5分間撹拌した後、5%重炭酸ナトリウム溶液(10ml)を加え、得られた混合物をジクロロメタン(3×25ml)で抽出する。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、蒸発させて、標記化合物を灰色の固体(0.101g、収率69%)として得る。融点150.2〜151.5℃。
【0089】
(例2)
生物学的活性
この実施例において、本発明の代表例の化合物3、7及び8による野生型nAChRα7受容体の正の調節を、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞に異種発現したnAChRα7受容体を使用して決定した。
【0090】
nAChRα7チャンネルを通る電流を、従来の2電極電位固定を使用して測定し、nAChRα7の電流は、アゴニスト含有溶液のパルスを、nAChRα7発現卵母細胞に適用することによって活性化した。
【0091】
簡潔には、卵母細胞を記録チャンバーに入れ、90mMのNaCl、2.5mMのKCl、2.5mMのCaCl、1mMのMgCl及び5mMのHEPESを含有する卵母細胞リンゲル(OR)液(pHを7.4に調整)により連続的に灌流した。卵母細胞を−60mVに固定し、ORに溶解した100μMのアセチルコリンの20秒パルスを適用することにより電流を誘導した。アセチルコリン適用の間隔は5分間であり、その間に卵母細胞をORで洗浄した。最初の3回の適用は、100μMのアセチルコリンの一定反応レベルを確実にするための、対照適用であった。続く試験適用では、試験化合物の増加濃度(0.01〜31.6μM)を、アセチルコリン(100μM)の適用の30秒前及び間に適用し、アセチルコリン誘導電流増幅に顕著な増加をもたらした。
【0092】
化合物4の存在下での正の調節は、(試験−対照)/対照×100%として計算し、この正の調節の濃度反応曲線を、シグモイドロジスティック方程式:I=Imax/(1+(EC50/[化合物]))に当てはめる(式中、Imaxは、対照反応の最大調節を表し、EC50は、最大半減反応を引き起こす濃度を表し、そしてnは、傾斜係数である)。
【0093】
化合物3、7及び8の計算されたEC50値は、それぞれ、14、17及び11μMであり、化合物3、7及び8の計算されたEC50max値は、それぞれ、119、128及び136%であった。このことは、ニコチン性アセチルコリンα7受容体サブタイプの強力なモジュレーターとしての生物学的活性を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】


[式中、
Yは、水素、ハロ、アルキル、ハロ−アルキル、ヒドロキシ−アルキル又はアミノ−アルキルを表し;
、R、R及びRは、互いに独立して、水素、アルキル、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、N−(アルキル−カルボニル)−アミノ、スルファモイル及びオキサジアゾリルからなる群より選択される置換基を表す]
により表されるジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体、その立体異性体若しくは立体異性体の混合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
Yが、アルキル、ハロ−アルキル、ヒドロキシ−アルキル又はアミノ−アルキルを表す
請求項1に記載のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体、その立体異性体若しくは立体異性体の混合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
、R、R及びRが、互いに独立して、水素、アルキル、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、N−(アルキル−カルボニル)−アミノ、スルファモイル及びオキサジアゾリルからなる群より選択される置換基を表す
請求項1から2までのいずれか一項に記載のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体、その立体異性体若しくは立体異性体の混合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
1−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−4−(4−メトキシ−フェニル)−5−メチル−1H−[1,2,3]トリアゾール;
1−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−4−(4−メトキシ−フェニル)−5−メチル−1H−[1,2,3]トリアゾール;
4−[1−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−5−メチル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノール;
5−ブロモメチル−1−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−4−(4−メトキシ−フェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール;
C−[3−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−5−(4−メトキシ−フェニル)−3H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−メチルアミン;
4−[5−アミノメチル−1−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノール;
[3−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−5−(4−メトキシ−フェニル)−3H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−メタノール;
4−[1−(2−クロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−5−ヒドロキシメチル−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノール;
1−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−4−(4−メトキシ−フェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール;
4−[1−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノール;
5−クロロ−4−(2−クロロ−4−メトキシ−フェニル)−1−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール;又は
3−クロロ−4−[5−クロロ−1−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノール;
その立体異性体若しくは立体異性体の混合物又はその薬学的に許容される塩である
請求項1に記載のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体又はその薬学的に許容される付加塩の治療有効量を、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は希釈剤と一緒に含む、医薬組成物。
【請求項6】
ヒトを含む哺乳動物の、ニコチン性アセチルコリン受容体の調節に対して反応性がある疾患又は障害又は状態を治療、予防又は緩和するための医薬組成物の製造における、請求項1から4までのいずれか一項に記載のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体又はその薬学的に許容される付加塩の使用。
【請求項7】
ニコチン性アセチルコリン受容体の調節に反応性のある疾患、障害又は状態が、不安、認知障害、学習障害、記憶欠損又は機能障害、アルツハイマー病、注意欠陥、注意欠陥多動障害、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、ジルドラトゥーレット症候群、うつ病、躁病、躁うつ病、精神病、統合失調症、強迫反応障害(OCD)、パニック障害、神経性食欲不振、過食及び肥満を含む摂食障害、ナルコレプシー、侵害受容、エイズ認知症、老年性認知症、末梢神経障害、自閉症、失読症、遅発性ジスキネジー、運動亢進症、てんかん、外傷後症候群、社会恐怖症、睡眠障害、仮性認知症、ガンサー症候群、月経前症候群、黄体期後期症候群、慢性疲労症候群、無言症、脱毛癖、時差ぼけ、高血圧、心不整脈、けいれん性障害、狭心症、早期分娩、けいれん、下痢、喘息、てんかん、遅発性ジスキネジー、運動亢進症、早漏及び勃起困難を含む平滑筋収縮障害、甲状腺中毒症及び褐色細胞腫を含む内分泌系障害、一過性無酸素症及び誘発性神経変性を含む神経変性障害、疼痛、軽度、中等度又は重度の疼痛、急性疼痛、慢性疼痛、再発性の疼痛、神経因性疼痛、片頭痛により引き起こされる疼痛、術後疼痛、幻肢痛、神経因性疼痛、慢性頭痛、中心性疼痛、糖尿病性神経障害に関連する、帯状疱疹後神経痛に関連する又は末梢神経損傷に関連する疼痛、炎症性皮膚障害、ざ瘡、酒さ、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎及び下痢を含む炎症性障害、ニコチン離脱症状、ヘロイン、コカイン及びモルヒネを含むオピオイド離脱症状、ベンゾジアゼピン様薬を含むベンゾジアゼピン離脱症状、並びにアルコールを含む、常習性物質の使用の停止により引き起こされる離脱症状に関連する障害である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
ヒトを含む生きている動物体の、ニコチン性アセチルコリン受容体の調節に対して反応性がある疾患又は障害又は状態を治療、予防又は緩和する方法であって、請求項1から4までのいずれか一項に記載のジフェニル1,2,3−トリアゾール誘導体の治療有効量を、それを必要とする生きている動物体に投与するステップを含む上記方法。

【公表番号】特表2011−530495(P2011−530495A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521546(P2011−521546)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059992
【国際公開番号】WO2010/015583
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(505377201)ノイロサーチ アクティーゼルスカブ (135)
【Fターム(参考)】