説明

ニコチン担体ワクチン製剤

本発明は、医薬、公衆衛生、ワクチンおよび医薬製剤の分野に関する。本発明は、ニコチン担体結合体、ならびに非還元二糖類および非イオン性界面活性剤を含む安定化剤を含んで成る組成物製剤を提供する。組成物製剤は、室温での長期保存に安定である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、医薬、ワクチンおよび医薬製剤の分野に関する。本発明は、ニコチン−ウイルス様粒子結合体および安定化剤を含む製剤であって、当該安定化剤が非還元二糖類および非イオン性界面活性剤を含んで成る製剤を提供する。凍結乾燥製剤は室温での長期保存後に安定である。
【背景技術】
【0002】
関連技術
ニコチン中毒の処置または予防のためのワクチンは、近年国民の注意を集めている。これらのワクチンは典型的には、ニコチンが低分子量有機化合物でありそれ自体が免疫応答を導くことができないため、担体と共有結合したニコチン分子を含む。さらに、ニコチンが担体に結合するのに適した官能基を有していないため、ニコチン分子に結合配列を導入することが典型的には必要である。様々なワクチンの開発が近年報告されており、例えばUS5’876’727、US6’232’082、US6’656’469およびUS6’932’971である。記載されている結合体は、担体の性質を変化させるだけでなく、結合配列および結合配列をニコチンに導入する部位の性質も変化させる。
【0003】
US6’932’971は、ニコチン分子とウイルス様粒子(VLP)の、エステル官能基を含む結合配列によるカップリングを開示しており、これは整序反復ニコチン−担体結合体を形成し、高力価のニコチン特異的抗体の産生を導く。同じ著者らが近年、ニコチン分子がエステル官能基を有する結合配列によって共有結合しているRNAバクテリオファージQβのウイルス様粒子を含むワクチンが、ヒトの筋炎に有効であり得ることを示した(Maurer et al., Eur. J. Immun. 2005 35:2031-40)。
【0004】
安定であり、化学的および/または物理的崩壊を最小にするかまたは回避するワクチン組成物の必要性は、かかる要求を満たす製剤の開発の必要性を暗示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の要約
本発明者らは、驚くべきことに、ウイルス様粒子と少なくとも1個のカルボン酸エステル官能基を含む結合配列によって共有結合しているニコチン分子を含むニコチン−ウイルス様粒子結合体を安定化する凍結乾燥製剤を見出した。さらにまた、本発明者らは、驚くべきことに、この凍結乾燥製剤が室温で、または加速温度(40℃)でさえも、長期保存にわたって安定であることを見出した。さらに、本発明の凍結乾燥製剤は、それに含まれる賦形剤が最小数であるため、簡単で経済的な安定化剤組成物を含む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって1つの局面において、本発明は、(i):(a)ウイルス様粒子;および(b)少なくとも1個のニコチン分子、ここで少なくとも1個のニコチン分子は前記ウイルス様粒子と結合配列によって共有結合しており、当該結合配列はエステル官能基を含む;を含む少なくとも1個のニコチン−ウイルス様粒子結合体と、(ii):(c)少なくとも1種の非還元二糖類、ここで、当該非還元二糖類の濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において0.5%から15%(w/v)である;(d)少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、ここで、当該非イオン性界面活性剤の濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において0.0005%から0.1%(w/v)である;を含む安定化剤組成物を含んで成る凍結乾燥製剤であって、前記安定化剤組成物は凍結乾燥前に5.4から6.6のpH値を有する、製剤を提供する。
【0007】
他の局面において、本発明は、本発明の凍結乾燥製剤の製造方法を提供する。
【0008】
さらに他の局面において、本発明は、生理的に許容される溶液または滅菌水、好ましくは注射用水(WFI)に溶解および/または懸濁させた本発明の凍結乾燥製剤を含む、再構成製剤を提供する。さらに好ましい態様において、再構成製剤はさらにアジュバントを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】製剤
【図2】結果
【図3】安定性試験
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
特に定義がない限り、本明細書において使用されている全ての技術および化学的用語は、本発明の属する技術分野における当業者が通常理解する通りの意味を有する。
【0011】
アジュバント:「アジュバント」なる用語は、本明細書において使用するとき、免疫応答の非特異的刺激物質、または本発明のワクチンおよび医薬組成物それぞれと組み合わせたときより上昇した免疫応答を提供する、デポを宿主中に形成することができる物質を意味する。様々なアジュバントを用いることができる。例えば、完全および不完全フロインドアジュバント、水酸化アルミニウムおよび修飾ムラミールジペプチドが含まれる。さらなるアジュバントは、鉱物ゲル、例えば水酸化アルミニウム、界面活性剤、例えばリソレシチン、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油マルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールおよび潜在的に有用なヒトアジュバント、例えばBCG(bacille Calmette Guerin)およびCorynebacterium parvumである。かかるアジュバントは、当業者に既知でもある。本発明の組成物と共に投与し得るさらなるアジュバントにはこれらに限定されないが、モノホスホリル脂質免疫調節剤、AdjuVax 100a、QS−21、QS−18、CRL1005、アルミニウム塩(Alum)、MF−59、OM−174、OM−197、OM−294、およびVirosomalアジュバント技術が含まれる。アジュバントはまた、これらの物質の混合物を含む。VLPは一般的にアジュバントとして記載される。しかし、本発明の文脈で使用する「アジュバント」なる用語は、本発明の製剤に使用されるVLPであるアジュバントではなく、むしろ当該VLPに加えて用いされるアジュバントを意味する。
【0012】
被覆タンパク質:「被覆タンパク質」なる用語および相互交換可能に使用される「カプシドタンパク質」なる用語は、本明細書において、ウイルス性タンパク質、好ましくはウイルス、好ましくはウイルスカプシドまたはVLPに導入することができるRNAバクテリオファージの天然カプシドのサブユニットを意味する。
【0013】
凍結乾燥前の製剤:「凍結乾燥前の製剤」なる用語は、凍結乾燥手段に、典型的かつ好ましくは24時間以内に、さらに典型的かつ好ましくは8時間以内、およびより典型的かつ好ましくは2から4時間以内に凍結乾燥プロセスに供される本発明の液体製剤を意味する。「凍結乾燥プロセス」および「フリーズドライプロセス」は相互交換可能なように本明細書において使用され、類義語であると考えるべきである。
【0014】
凍結乾燥製剤:「凍結乾燥製剤」なる用語は、液体製剤の凍結乾燥プロセスによって得るまたは入手可能な組成物を意味する。典型的かつ好ましくは、これは5%未満、好ましくは3%未満の水分含有量を有する固体組成物である。好ましくは、「凍結乾燥製剤」なる用語は、本発明の凍結乾燥製剤の製造プロセスによって得るまたは入手可能である組成物を意味する。
【0015】
再構成製剤:「再構成製剤」なる用語は、生理的に許容される溶液に凍結乾燥製剤を溶解および/または懸濁させた液体製剤を意味する。
【0016】
結合配列:「結合配列」なる用語は、本明細書において使用するとき、ニコチン分子をウイルス様粒子と共有結合させる分子構造を意味する。
【0017】
室温:「室温」なる用語は、本明細書において使用するとき、15から30℃、好ましくは20から27℃、より好ましくは25℃を意味する。
【0018】
安定:「安定」なる用語は、本明細書において使用するとき、ニコチン−VLP結合体を含む、好ましくはRNAバクテリオファージQβ結合体のニコチン−VLPを含む、およびさらに好ましくはNic−Qβを含む本発明の凍結乾燥製剤の状態が、15週以下、好ましくは20週以下、より好ましくは25週以下の室温または加速温度(40℃)での貯蔵において、(i)遊離ニコチンおよびニコチン誘導体の総量が、製剤中のニコチンの総量の7%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは3%未満、より好ましくは2%未満である;および(ii)ニコチン−VLPオリゴマーおよび凝集体の合計量、好ましくはRNAバクテリオファージQβのニコチン−VLPオリゴマーおよび凝集体の合計、好ましくはNic−Qβオリゴマーおよび凝集体の合計が、凍結乾燥前の製剤におけるニコチン−VLPオリゴマーおよび凝集体の合計量、好ましくはRNAバクテリオファージQβのニコチン−VLPオリゴマーおよび凝集体の合計、好ましくはNic−Qβオリゴマーおよび凝集体の合計と比較して、10%以上、好ましくは7%以上、より好ましくは4%以上増加していないことを意味する。貯蔵後のニコチン−VLPオリゴマーおよび凝集体の合計量を凍結乾燥前の製剤中のニコチン−VLPオリゴマーおよび凝集体の合計量から引いて、本発明において使用するとき、増加率を得る。例えば、凍結乾燥前の製剤において1% Nic−Qβオリゴマーおよび凝集体が存在し、本発明の凍結乾燥および15週間貯蔵後に再構成製剤において4% Nic−Qβオリゴマーおよび凝集体が存在するとき、増加率は3%である。「遊離ニコチンおよびニコチン誘導体」なる用語は、本明細書において使用するとき、本発明のウイルス様粒子に共有結合していないニコチンおよびニコチン誘導体を意味する。ニコチンならびに遊離ニコチンまたはニコチン誘導体の総量を測定する方法は、好ましくは本明細書の実施例1に記載のRP−HPLCアッセイである。ニコチン−VLPオリゴマーおよび凝集体の合計量、好ましくはRNAバクテリオファージQβのニコチン−VLPオリゴマーおよび凝集体の合計、好ましくはNic−Qβオリゴマーおよび凝集体の合計を測定する方法は、好ましくは本明細書の実施例1に記載の非対称フロー場流動分画(asymmetrical flow field flow fractionation、AF4)であり、ニコチン−VLPオリゴマーおよびダイマーより、好ましくはRNAバクテリオファージQβのニコチン−VLPオリゴマーおよびダイマーより、好ましくはNic−Qβオリゴマーおよびダイマーより大きな粒子を含む分画を計算において組み合わせる。
【0019】
オリゴマー:「ニコチン−VLPオリゴマー」、「RNAバクテリオファージQβのニコチン−VLPオリゴマー」および「Nic−Qβオリゴマー」なる用語に使用されるように、「オリゴマー」なる用語は、少なくとも3個、10個までのVLPまたはQβのVLPの凝集体をそれぞれ意味する。
【0020】
凝集体:「ニコチン−VLP凝集体」、「RNAバクテリオファージQβのニコチン−VLP凝集体」および「Nic−Qβ凝集体」なる用語に使用されるように、「凝集体」なる用語は、少なくとも10個のVLPまたはQβのVLPの凝集体をそれぞれ意味する。
【0021】
ウイルス粒子:「ウイルス粒子」なる用語は、本明細書において使用するとき、ウイルスの形態学的形態を意味する。いくつかのウイルスタイプにおいて、これはタンパク質カプシドに囲まれたゲノムを含み;さらなる構造(例えばエンベロープ、テールなど)を有するものもある。
【0022】
ウイルス様粒子(VLP)は、本明細書において使用するとき、非複製性または非感染性、好ましくは非複製性かつ非感染性ウイルス粒子を意味するか、または非複製性または非感染性、好ましくは非複製性かつ非感染性のウイルス粒子類似構造、好ましくはウイルスのカプシドを意味する。「非複製性」なる用語は、本明細書において使用するとき、VLPに含まれるゲノムが複製不可能であることを意味する。「非感染性」なる用語は、本明細書において使用するとき、宿主細胞に侵入することができないことを意味する。好ましくは本発明のウイルス様粒子は、ウイルスゲノムまたはゲノム機能の全てまたは一部を欠くため、非複製性および/または非感染性である。1つの態様において、ウイルス様粒子はウイルスゲノムが物理的または化学的に不活性化されているウイルス粒子である。典型的かつより好ましくは、ウイルス様粒子はウイルスゲノムの複製および感染コンポーネントの全てまたは一部を欠く。本発明のウイルス様粒子は、それらのゲノムとは異なる核酸を含んでいてもよい。典型的かつ好ましい本発明のウイルス様粒子の態様は、対応するウイルス、バクテリオファージ、好ましくはRNAファージのウイルス性カプシドのようなウイルス性カプシドである。「ウイルス性カプシド」または「カプシド」なる用語は、ウイルス性タンパク質サブユニットからなる巨大集合分子を意味する。典型的には、60、120、180、240、300、360および360以上のウイルス性タンパク質サブユニットが存在する。典型的かつ好ましくは、これらのサブユニットの相互作用は、固有の反復構造を有する、典型的には球形または管形であるウイルス性カプシドまたはウイルス性カプシド様構造の形成を導く。例えば、RNAファージまたはHBcAgsのカプシドは、正20面体対称球形を有する。「カプシド様構造」なる用語は、本明細書において使用するとき、形態学的に上記定義の意味においてカプシドに類似するが、十分な整序および反復度を維持しながらも典型的な対称集合体とは異なる、ウイルス性タンパク質サブユニットからなる巨大集合分子を意味する。ウイルス粒子とウイルス様粒子の1つの共通する特徴は、そのサブユニットの高い整序および反復配列である。
【0023】
RNAバクテリオファージのウイルス様粒子:本明細書において使用するとき、「RNAバクテリオファージのウイルス様粒子」なる用語は、RNAバクテリオファージの被覆タンパク質、その変異体またはフラグメントを含む、またはこのましくは本質的にそれから成る、またはそれから成るウイルス様粒子を意味する。さらに、RNAバクテリオファージの構造に類似しており、非複製性および/または非感染性であり、そして少なくともRNAバクテリオファージの複製機構をコードする遺伝子を欠き、そして典型的には宿主へのウイルス接着または侵入に関与するタンパク質をコードする遺伝子も欠く、RNAバクテリオファージのウイルス様粒子である。しかし、この定義は、上記遺伝子がなお存在するが、不活性であり、RNAファージの非複製性および/または非感染性ウイルス様粒子を導くRNAバクテリオファージのウイルス様粒子を含むべきである。好ましいRNAバクテリオファージ由来VLPは、正20面体対称を示し、180個のサブユニットから成る。本発明の開示において、「サブユニット」または「モノマー」なる用語は、相互交換可能なように、そして同等に使用される。RNAバクテリオファージのウイルス様粒子を非複製性および/または非感染性とするのに好ましい方法は、物理的、化学的不活性化、例えばUV照射、ホルムアルデヒド処理により、典型的かつ好ましくは遺伝子操作による。
【0024】
1、a、またはan:「1」、「a」、または「an」なる用語は、本明細書で使用されるとき、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を、特に記載がない限り意味する。
【0025】
1つの局面において本発明は、(i):(a)ウイルス様粒子;および(b)少なくとも1個のニコチン分子、ここで少なくとも1個のニコチン分子は前記ウイルス様粒子と結合配列によって共有結合しており、当該結合配列はエステル官能基を含む;を含む少なくとも1個のニコチン−ウイルス様粒子結合体と、(ii):(c)少なくとも1種、好ましくは1種の非還元二糖類、ここで、当該非還元二糖類の濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において0.5%から15%(w/v)である;(d)少なくとも1種、好ましくは1種の非イオン性界面活性剤、ここで、当該非イオン性界面活性剤の濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において0.0005%から0.1%(w/v)である;を含む安定化剤組成物を含んで成る凍結乾燥製剤であって、前記安定化剤組成物は凍結乾燥前に5.4から6.6のpH値を有する、製剤を提供する。当業者に理解されるように、タンパク質組成物の凍結乾燥は通常、より安定な生成物をもたらし、したがってより長い保存寿命を有する。さらにまた、凍結乾燥製剤はニコチン−VLP結合体に存在するエステル官能基の上昇した安定性およびRNA成分の上昇した安定性を有する。
【0026】
あるいは他の局面において、本発明は(i):(a)ウイルス様粒子;および(b)少なくとも1個のニコチン分子、ここで少なくとも1個のニコチン分子は前記ウイルス様粒子と結合配列によって共有結合しており、当該結合配列はエステル官能基を含む;を含む少なくとも1個のニコチン−ウイルス様粒子結合体と、(ii):(c)少なくとも1種、好ましくは1種の非還元二糖類、ここで、当該非還元二糖類の濃度は当該製剤中濃度において0.5%から15%(w/v)である;(d)少なくとも1種、好ましくは1種の非イオン性界面活性剤、ここで、当該非イオン性界面活性剤の濃度は当該製剤中濃度において0.0005%から0.1%(w/v)である;を含む安定化剤組成物を含んで成る液体製剤であって、前記安定化剤組成物は5.4から6.6のpH値を有する、製剤を提供する。さらにまた、本発明は、前記液体製剤を凍結させる工程および前記液体製剤を乾燥させる工程を含む凍結乾燥方法によって入手可能な製剤を提供する。
【0027】
他の局面において、本発明は、(i):(a)ウイルス様粒子;および(b)少なくとも1個のニコチン分子、ここで少なくとも1個のニコチン分子はVLPと結合配列によって共有結合しており、当該結合配列はエステル官能基を含む;を含む少なくとも1個のニコチン−ウイルス様粒子結合体と、(ii):(c)少なくとも1種、好ましくは1種の非イオン性界面活性剤、ここで、当該非イオン性界面活性剤の濃度は当該製剤中濃度において0.0005%から0.1%(w/v)である;を含むまたはそれから成る安定化剤組成物を含んで成る液体製剤であって、前記安定化剤組成物は5.4から6.6のpH値を有する、製剤を提供する。
【0028】
1つの好ましい態様において、本発明の液体または凍結乾燥製剤は、1種のみの炭水化物、好ましくは1種のみの糖を含み、当該糖は好ましくは非還元二糖類である。1つの好ましい態様において、本発明の液体または凍結乾燥製剤は、さらなるアミノ酸を含まない。これは、さらなるアミノ酸を製剤に加えないことを意味する。しかし、当該製剤は、ウイルス様粒子の崩壊のために微量のアミノ酸を含み得る。
【0029】
1つの好ましい態様において、本発明の液体または凍結乾燥製剤はウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンを含まない。さらなる好ましい態様において、本発明の製剤はあらゆる種類の血清タンパク質を含まない。血清を除外することによって、タンパク質血清汚染を有利に回避する。
【0030】
1つの好ましい態様において、本発明の液体または凍結乾燥製剤、とりわけ本発明の凍結乾燥製剤は、塩化ナトリウムを含まない。NaClを除外することによって、製剤の不必要に高い浸透圧を回避することができる。さらにまた、塩の除外によってさらに、凍結乾燥中のタンパク質安定性に対する有害作用の可能性を排除する。
【0031】
1つの好ましい態様において、少なくとも1種、好ましくは1種の非還元二糖類は、ショ糖またはトレハロースである。1つのさらに好ましい態様において、非還元二糖類はトレハロースである。
【0032】
1つの好ましい態様において、少なくとも1種、好ましくは1種の非還元二糖類の濃度は、液体製剤中の濃度において、または凍結乾燥製剤においては凍結乾燥前の製剤中濃度において、3%から15%(w/v)、好ましくは5%から12%(w/v)、好ましくは5%から10%(w/v)、好ましくは7.5%から10%(w/v)、好ましくは10%(w/v)である。特に明示的な記載がない限り、本明細書に記載のトレハロースの濃度は、トレハロース2水和物(2HO)の濃度を意味する。トレハロース2水和物の濃度と無水トレハロースの濃度の変換は当業者に一般に知られている。例えば、10% トレハロース2水和物は9% 無水トレハロースに等しい。
【0033】
1つの好ましい態様において、本発明の液体または凍結乾燥製剤の安定化剤組成物は、さらに少なくとも1種、好ましくは1種の充填剤を含む。1つのさらに好ましい態様において、非還元二糖類および充填剤の総濃度は、液体製剤中の濃度において、または凍結乾燥製剤においては凍結乾燥前の製剤中濃度において、0.5%から15%(w/v)であるが、ただし非還元二糖類の濃度は少なくとも0.5%(w/v)、好ましくは少なくとも1%(w/v)である。1つのさらに好ましい態様において、前記少なくとも1種、好ましくは1種の非還元二糖類および前記少なくとも1種、好ましくは1種の充填剤の総濃度は、液体製剤中の濃度において、または凍結乾燥製剤においては凍結乾燥前の製剤中濃度において、3%から10%、好ましくは3%から8%(w/v)、好ましくは3%から7%、好ましくは4.5%から7%、より好ましくは4.5%から6%(w/v)である。
【0034】
1つの好ましい態様において、前記少なくとも1種、好ましくは1種の非還元二糖類および少なくとも1種、好ましくは1種の充填剤は、凍結乾燥前の製剤において、3%から10%(w/v)、好ましくは4.5%から7%(w/v)であり、非還元二糖類の濃度は少なくとも1%(w/v)である。好ましくは、製剤の浸透圧は250から350mosm/Kg、より好ましくは約300mosm/Kgである。
【0035】
1つの好ましい態様において、少なくとも1種、好ましくは1種の非還元二糖類および少なくとも1種、好ましくは1種の充填剤の総濃度は、凍結乾燥前の製剤において、3%から10%(w/v)、好ましくは4.5%から7%(w/v)であり、充填剤の濃度は少なくとも1%(w/v)である。好ましくは製剤の浸透圧は250から350mosm/Kg、より好ましくは約300mosm/Kgである。
【0036】
1つの好ましい態様において、少なくとも1種、好ましくは1種の非還元二糖類および少なくとも1種、好ましくは1種の充填剤の総濃度は、凍結乾燥前の製剤において、3%から10%(w/v)、好ましくは4.5%から7%(w/v)であり、充填剤の濃度は少なくとも1%(w/v)であり、非還元二糖類の濃度は少なくとも1%(w/v)である。好ましくは製剤の浸透圧は250から350mosm/Kg、より好ましくは約300mosm/Kgである。
【0037】
1つの好ましい態様において、非還元二糖類はトレハロースであり、充填剤はマンニトールである。
【0038】
極めて好ましい態様において、少なくとも1種、好ましくは1種の非還元二糖類および少なくとも1種、好ましくは1種の充填剤の総濃度は凍結乾燥前の製剤において5.0から6.5%(w/v)である。さらに好ましい態様において、充填剤と非還元二糖類の比は3.5:1から4:5:1、好ましくは4:1である。さらに好ましい態様において、非還元二糖類はトレハロースであり、充填剤はマンニトールである。極めて好ましい態様において、凍結乾燥前の製剤において、トレハロースの濃度は1.1%(w/v)であり、マンニトールの濃度は4.4%(w/v)である。
【0039】
1つの好ましい態様において、充填剤はマンニトールまたはグリシンである。さらに好ましい態様において、充填剤はマンニトールである。充填剤、好ましくはマンニトールを含めることによって、安定なケーキ構造を得て、凍結乾燥プロセスにおける1次乾燥温度をより高くすることができ、これは製造コストの減少に有利である。
【0040】
1つの好ましい態様において、安定化剤組成物のpHは5.4から6.6、好ましくは5.6から6.4、好ましくは5.8から6.4、好ましくは6.0から6.4、好ましくは6.2である。さらに好ましい態様において、pHは5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5および6.6である。
【0041】
1つの好ましい態様において、非イオン性界面活性剤は液体製剤中、または凍結乾燥製剤においては凍結乾燥前の製剤中濃度において、0.0025%から0.02%(w/v)、好ましくは0.0025%−0.01%(w/v)、好ましくは0.005%(w/v)である。
【0042】
1つの好ましい態様において、非イオン性界面活性剤はポリソルベート20またはポリソルベート80である。1つの好ましい態様において、非イオン性界面活性剤はポリソルベート20である。
【0043】
ウイルス様粒子は、整序および反復構造を有する既知のあらゆるウイルスであり得る。例示的DNAまたはRNAウイルス、VLPの製造に使用することができる被覆タンパク質またはカプシドタンパク質は、WO2004/009124の25頁10−21行、26頁11−28行および28頁4行から31頁4行に記載されている。これらの開示を出典明示により本明細書の一部とする。
【0044】
さらに好ましい態様において、ウイルス様粒子は下記群から選択されるウイルスのものである:a)RNAバクテリオファージ;b)バクテリオファージ;c)B型肝炎ウイルス、好ましくはそのカプシドタンパク質(Ulrich, et al., Virus Res. 50:141-182 (1998))またはその表面タンパク質(WO92/11291);d)はしかウイルス(Warnes, et al., Gene 160:173-178 (1995));e)シンドビウイルス;f)ロタウイルス(US5,071,651およびUS5,374,426);g)口蹄疫(Twomey, et al., Vaccine 13:1603 1610, (1995));h)ノーウォークウイルス(Jiang, X., et al., Science 250:1580 1583 (1990);Matsui, S.M., et al., J. Clin. Invest. 87:1456 1461 (1991));i)アルファウイルス;j)レトロウイルス、好ましくはそのGAGタンパク質(WO96/30523);k)レトロトランスポゾンTy、好ましくはタンパク質p1;l)ヒトパピローマウイルス(WO98/15631);m)ポリオーマウイルス;n)タバコモザイクウイルス;o)ササゲモザイクウイルス;およびp)Flock House ウイルス;q)ササゲクロロティックモトル(cowpea chlorotic mottle)ウイルス;およびr)アルファルファモザイクウイルス。ササゲクロロティックモトルウイルス、アルファルファモザイクウイルスおよびササゲモザイクウイルスのVLPの製造方法は、US2005/0260758およびWO05067478に記載されている。
【0045】
1つの好ましい態様において、ウイルス様粒子はRNAバクテリオファージのものである。好ましい態様において、RNA−バクテリオファージは下記群から選択される:a)バクテリオファージQβ;b)バクテリオファージR17;c)バクテリオファージfr;d)バクテリオファージGA;e)バクテリオファージSP;f)バクテリオファージMS2;g)バクテリオファージM11;h)バクテリオファージMX1;i)バクテリオファージNL95;k)バクテリオファージf2;l)バクテリオファージPP7およびm)バクテリオファージAP205。1つの好ましい態様において、ウイルス様粒子はRNAバクテリオファージQβのウイルス様粒子である。RNAバクテリオファージのVLP、とりわけバクテリオファージQβのVLPおよびVLPバクテリオファージAP205の製造方法は、WO04009124の37−47頁および実施例1および21に記載されている。
【0046】
1つの好ましい態様において、ウイルス様粒子はRNAバクテリオファージQβのものである。さらに好ましい態様において、ウイルス様粒子はE. coli.で組換え的に発現しているRNAバクテリオファージQβのものである。
【0047】
1つの好ましい態様において、ニコチン−VLP結合体は、液体製剤中、または凍結乾燥製剤においては凍結乾燥前の製剤中濃度において、0.1mg/mlから2.5mg/mlである。1つの好ましい態様において、ニコチン−VLP結合体は、液体製剤中、または凍結乾燥製剤においては凍結乾燥前の製剤中濃度において、0.2mg/mlから2mg/mlである。他の好ましい本発明の態様において、ニコチン−VLP結合体の液体製剤中濃度は、典型的かつ好ましくは凍結乾燥前の製剤の濃度において、0.2mg/ml、0.6mg/ml、1.0mg/mlまたは2mg/mlである。さらに他の好ましい本発明の態様において、ニコチン−VLP結合体の液体製剤中濃度は、典型的かつ好ましくは凍結乾燥前の製剤の濃度において、0.2mg/mlまたは0.6mg/ml、好ましくは0.2mg/mlである。
【0048】
ニコチン分子が担体と共有結合するカルボン酸エステル官能基を含む様々な結合配列がUS5876727、US6656469およびUS6932971に記載されている。これらの具体的な教示を、出典明示により本明細書の一部とする。本発明に有用でありエステル官能基を含む結合配列は、例えばUS5876727の17欄に記載のCJ2、CJ2.1、CJ2.2、CJ2.3、CJ4、CJ4.1、CJ5、CJ5.1、CJ8、CJ8.1、CJ9およびCJ11である。
【0049】
本発明の1つの好ましい態様において結合配列はA−X−CO(O)−Y−Z−B(ここで、Aはニコチン分子を意味し、そしてBはウイルス様粒子を意味し、X=(CH2)m(m=1−4)を意味し、Y=(CH2)n(m=1−8)を意味し、Z=C(O)を意味する)を含む。
【0050】
極めて好ましい態様において、結合配列はCHOCO(CH)nCO(ここで、n=1−8、好ましくはn=1−4、好ましくはn=1または2、より好ましくはn=2)を含む、本質的にそれから成る、またはそれから成る。極めて好ましい態様において、結合配列はA−CHOCO(CHCO−B(ここで、Aはニコチン分子を意味し、Bはウイルス様粒子を意味する)から成る。
【0051】
結合配列はニコチン分子のピリジンまたはピロリジン環のいずれかと共有結合し得る。その例は、とりわけUS 5876727、US6656469およびUS6932971に記載されている。極めて好ましい態様において、結合配列はニコチン分子の3’位置と共有結合している。
【0052】
共有結合で結合したニコチン分子の全体は、すなわち全てのニコチン分子が(R)−立体配置を有し、または全てのニコチン分子が天然に生じる(S)−立体配置を有して、同じ絶対立体配置で存在するか、またはそれらは任意の混合物で存在するかの何れかである。好ましくは、ニコチン分子は(R)−立体配置と天然に生じる(S)−立体配置の両方の、およそ等しいまたは等しい混合物が存在するように共有結合する。極めて好ましい態様において、本発明の製剤含まれるニコチン−VLP結合体は、ニコチン分子またはニコチン誘導体のラセミ混合物を用いて、典型的かつ好ましくは、本発明のニコチン−ウイルス様粒子結合体を導くウイルス様粒子とカップリング反応のための、それと共有結合した結合配列を有するニコチン分子を含むニコチン分子またはニコチン誘導体のラセミ混合物を用いて、入手可能であるか、または得る。
【0053】
1つの好ましい態様において、ニコチン−VLP結合体、好ましくはRNAバクテリオファージQβのニコチン−VLP、好ましくはNicQβを、出発物質O−スクシニル−3’−ヒドロキシメチル−ニコチンおよび出発物質QβのVLPから製造する。
【0054】
1つの好ましい態様において、安定化剤組成物は、コハク酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、Tris、Bis−tris、トリエタノールアミン、トリシン、ビシン、ヒスチジン、アスパラギン酸塩、グリシン酸塩、グルタミン酸塩、リシン、フタル酸塩、ギ酸塩、アラニン、フェニルアラニン、アルギニンおよびプロリンのような緩衝化剤を含む。
【0055】
1つの好ましい態様において、緩衝化剤は、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムおよびヒスチジン/ヒスチジンHCl、酢酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムから選択される。さらに好ましい態様において、緩衝化剤の濃度は液体製剤中濃度において、または凍結乾燥製剤においては凍結乾燥前の製剤中濃度において、10−20mMである。さらに好ましい態様において、緩衝化剤はリン酸ナトリウムまたはリン酸カリウム、好ましくはリン酸ナトリウムである。1つの好ましい態様において、緩衝化剤はヒスチジン/ヒスチジンHClである。1つの好ましい態様において、緩衝化剤は酢酸ナトリウムである。1つの好ましい態様において、緩衝化剤はコハク酸ナトリウムである。
【0056】
1つの好ましい態様において、本発明の液体または凍結乾燥製剤はさらに、0から90mM、好ましくは0から60mM、より好ましくは0から30mMの塩化ナトリウムを含む。第1に、塩化ナトリウムを含有せしめることによって、液体製剤が安定化され、本発明の液体または凍結乾燥製剤の浸透圧を調節する。
【0057】
さらに極めて好ましい態様において、本発明は、(i):(a)ウイルス様粒子;および(b)少なくとも1個のニコチン分子、ここで少なくとも1個のニコチン分子は前記ウイルス様粒子と結合配列によって共有結合しており、当該結合配列はエステル官能基を含む;を含む少なくとも1個のニコチン−ウイルス様粒子結合体;および(ii):(c)少なくとも1種、好ましくは1種の非還元二糖類、ここで、当該非還元二糖類の濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において0.5%から15%(w/v)、好ましくは3%から12%(w/v)である;(d)少なくとも1種、好ましくは1種の非イオン性界面活性剤、ここで、当該非イオン性界面活性剤の濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において0.0005%から0.1%(w/v)である;(e)1種の緩衝化剤、ここで当該緩衝化剤はリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムおよびヒスチジン/ヒスチジンHClから選択される;(f)所望により、凍結乾燥前の製剤中濃度において0−30mMのNaClを含む安定化剤組成物を含んで成る、本質的にそれらから成るまたはそれらから成る凍結乾燥製剤であって、前記安定化剤組成物は凍結乾燥前に5.4から6.6のpH値を有する、製剤を提供する。
【0058】
別の好ましい態様において、本発明は、(i):(a)ウイルス様粒子;および(b)少なくとも1個のニコチン分子、ここで少なくとも1個のニコチン分子は前記ウイルス様粒子と結合配列によって共有結合しており、当該結合配列はエステル官能基を含む;を含む少なくとも1個のニコチン−ウイルス様粒子結合体;および(ii):(c)少なくとも1種、好ましくは1種の非還元二糖類、ここで、当該非還元二糖類の濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において0.5%から15%(w/v)である;(d)少なくとも1種、好ましくは1種の充填剤、ここで、前記非還元二糖類と当該充填剤の総濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において、0.5%から15%(w/v)である;ただし、前記非還元二糖類の濃度は少なくとも0.5%(w/v)である;(e)少なくとも1種、好ましくは1種の非イオン性界面活性剤、ここで、当該非イオン性界面活性剤の濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において0.0005%から0.1%(w/v)である;(f)1種の緩衝化剤、ここで当該緩衝化剤はリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムおよびヒスチジン/ヒスチジンHClから選択される;(g)所望により、凍結乾燥前の製剤中濃度において0−30mMのNaClを含む安定化剤組成物を含んで成る、本質的にそれらから成るまたはそれらから成る凍結乾燥製剤であって、前記安定化剤組成物は凍結乾燥前に5.4から6.6のpH値を有する、製剤を提供する。
【0059】
極めて好ましい態様において、本発明は、(i):(a)ウイルス様粒子、好ましくはRNAバクテリオファージQβのウイルス様粒子、ここで、当該結合体の濃度は、凍結乾燥前の製剤中濃度において好ましくは0.1mg/mlから2mg/ml、好ましくは0.2mg/mlから1mg/mlである;および(b)少なくとも1個のニコチン分子、ここで少なくとも1個のニコチン分子は前記ウイルス様粒子、好ましくはRNAバクテリオファージQβのウイルス様粒子と結合配列によって共有結合しており、当該結合配列はエステル官能基を含む;を含む少なくとも1個のニコチン−ウイルス様粒子結合体、好ましくは少なくとも1個のRNAバクテリオファージのニコチン−ウイルス様粒子、好ましくは少なくとも1個のRNAバクテリオファージQβ結合体のニコチン−ウイルス様粒子、より好ましくはNicQβ結合体;および(ii):(c)少なくとも1種、好ましくは1種の非還元二糖類、好ましくはトレハロース、ここで、当該非還元二糖類の濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において5%から12%、好ましくは10%(w/v)である;(d)少なくとも1種、好ましくは1種の非イオン性界面活性剤、好ましくはポリソルベート20、ここで、当該非イオン性界面活性剤の濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において0.0005%から0.1%、好ましくは0.005%(w/v)である;(e)1種の緩衝化剤、ここで当該緩衝化剤はリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムおよびヒスチジン/ヒスチジンHClから選択され、より好ましくはヒスチジン/ヒスチジンHClである;を含む安定化剤組成物を含んで成る、本質的にそれらから成るまたはそれらから成る凍結乾燥製剤であって、前記安定化剤組成物は凍結乾燥前に5.6から6.2のpH値を有する、製剤を提供する。
【0060】
本発明は、(i):(a)RNAバクテリオファージQβのウイルス様粒子;および(b)少なくとも1個のニコチン分子、ここで少なくとも1個のニコチン分子は前記ウイルス様粒子と結合配列によって共有結合しており、当該結合配列はA−CHOCO(CHCO−B(ここで、Aはニコチン分子を意味し、BはRNAバクテリオファージQβのウイルス様粒子を意味する)から成り、結合配列がニコチン分子の3’位置と共有結合している;を含む少なくとも1個のニコチン−ウイルス様粒子結合体;および(ii):(c)1種の非還元二糖類、ここで当該非還元二糖類はトレハロースであり、ここでトレハロースの濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において10%(w/v)である;(d)1種の非イオン性界面活性剤、ここで当該非イオン性界面活性剤はポリソルベート20であり、ここで、ポリソルベート20の濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において0.005%(w/v)である;を含む安定化剤組成物を含んで成る、またはそれらから成る凍結乾燥製剤であって、前記安定化剤組成物は凍結乾燥前に6.2のpH値を有する、製剤を提供する。
【0061】
本発明は、(i):(a)RNAバクテリオファージQβのウイルス様粒子;および(b)少なくとも1個のニコチン分子、ここで少なくとも1個のニコチン分子は前記ウイルス様粒子と結合配列によって共有結合しており、当該結合配列はA−CHOCO(CHCO−B(ここで、Aはニコチン分子を意味し、BはRNAバクテリオファージQβのウイルス様粒子を意味する)から成り、結合配列がニコチン分子の3’位置と共有結合している;を含む少なくとも1個のニコチン−ウイルス様粒子結合体;および(ii):(c)1種の非還元二糖類、ここで当該非還元二糖類はトレハロースであり、ここでトレハロースの濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において10%(w/v)である;(d)1種の非イオン性界面活性剤、ここで当該非イオン性界面活性剤はポリソルベート20であり、ここで、ポリソルベート20の濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において0.005%(w/v)である;(e)1種の緩衝化剤、ここで当該緩衝化剤はリン酸ナトリウムまたはヒスチジン/ヒスチジンHClであり、当該リン酸ナトリウムまたはヒスチジン/ヒスチジンHClの濃度は20mMである;から本質的に成るか、またはから成る安定化剤組成物を含んで成る、またはそれらから成る凍結乾燥製剤であって、前記安定化剤組成物は凍結乾燥前に6.2のpH値を有する、製剤を提供する。
【0062】
さらに極めて好ましい態様において、本発明は、(i):(a)ウイルス様粒子;および(b)少なくとも1個のニコチン分子、ここで少なくとも1個のニコチン分子は前記ウイルス様粒子と結合配列によって共有結合しており、当該結合配列はエステル官能基を含む;を含む少なくとも1個のニコチン−ウイルス様粒子結合体;および(ii):(c)少なくとも1種、好ましくは1種の非還元二糖類、ここで、当該非還元二糖類の濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において5%から15%(w/v)、好ましくは10%(w/v)である;(d)少なくとも1種、好ましくは1種の非イオン性界面活性剤、ここで、当該非イオン性界面活性剤の濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において0.0005%から0.1%(w/v)、好ましくは0.005%である;(e)1種の緩衝化剤、ここで当該緩衝化剤はリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムおよびヒスチジン/ヒスチジンHClから選択される;(f)所望により、凍結乾燥前の製剤中濃度において0−30mMのNaClを含む安定化剤組成物を含んで成る、本質的にそれらから成るまたはそれらから成る凍結乾燥製剤であって、前記安定化剤組成物は凍結乾燥前に6.0から6.4、好ましくは6.2のpH値を有する、製剤を提供する。
【0063】
1つの好ましい態様において、本発明の凍結乾燥製剤は、少なくとも15週間、好ましくは少なくとも25週間、室温で、または加速温度(40℃)でさえも、安定である。
【0064】
1つの局面において、本発明は、生理的に許容される溶液または滅菌水、好ましくは注射用水に溶解および/または懸濁させた本発明の凍結乾燥組成物を含む再構成製剤を提供する。他の好ましい態様において、溶液はNaCl溶液である。好ましくは、再構成製剤は生理的に許容される浸透圧値を有する。
【0065】
1つの好ましい態様において、再構成製剤はさらにアジュバントを含む。さらに好ましい態様において、アジュバントは水酸化アルミニウム水和ゲルまたはリン酸アルミニウム水和ゲルである。
【0066】
1つの局面において、本発明は、(i)棚温度を−35℃以下、好ましくは−38℃以下、好ましくは−40℃以下、好ましくは−45℃以下、好ましくは−50以下に低下させて凍結乾燥前の製剤を凍結させる工程;(ii)−45℃から−15℃、好ましくは−40℃から−20℃、好ましくは−35℃から−25℃の棚温度で、チャンバー圧0.2mbar以下で製剤を一次乾燥させる工程;(iii)10℃から40℃、好ましくは10℃から30℃の棚温度で、チャンバー圧0.2mbar以下で製剤を二次乾燥させる工程を含む、本発明の凍結乾燥前の製剤の製造方法を提供する。当該方法は所望により、−30℃から−15℃、好ましくは−20℃の棚温度で、(ii)の後に、チャンバー圧0.2mbar以下で製剤を乾燥させる工程を含む。
【0067】
1つの好ましい態様において、一次および二次乾燥中のチャンバー圧は、0.005mbarから0.2mbar、好ましくは0.020mbarから0.2mbar、好ましくは0.03から0.1mbar、好ましくは0.040から0.05mbarである。
【0068】
他の好ましい態様において、棚温度の低下を、0.1℃から1.0℃/分、好ましくは0.5℃から1.0℃/分の速度で行う。
【0069】
1つの好ましい態様において、本発明の方法は:(i)棚温度を−40℃以下、好ましくは−50℃以下に低下させて凍結乾燥前の製剤を凍結させる工程;(ii)−35℃の棚温度で、少なくとも10時間、好ましくは20時間、チャンバー圧0.2mbar以下で製剤を一次乾燥させる工程;(iii)10℃から30℃の棚温度で、チャンバー圧0.2mbar以下で製剤を二次乾燥させる工程を含む。当該方法は所望により、−20℃の棚温度で、(ii)の後に、チャンバー圧0.2mbar以下で製剤を乾燥させる工程を含む。
【0070】
1つの好ましい態様において、本発明は:(i)棚温度を−40℃以下、好ましくは−50℃に低下させて凍結乾燥前の製剤を凍結させる工程;(ii)−35℃の棚温度で、好ましくは25時間、チャンバー圧0.2mbar以下で製剤を一次乾燥させる工程;棚温度を上昇させ、−20℃の棚温度で、好ましくは10時間、チャンバー圧0.2mbar以下;好ましくは0.045mbarで製剤を乾燥させる工程;(iii)20℃の棚温度で、チャンバー圧0.2mbar以下で製剤を二次乾燥させる工程を含んで成る本発明の凍結乾燥製剤の製造方法を提供する。当該方法は所望により、−20℃の棚温度で、(ii)の後に、チャンバー圧0.2mbar以下、好ましくは0.045mbarで製剤を乾燥させる工程を含む。
【0071】
1つの好ましい態様において、本発明の方法は、好ましくは−10から−20℃で、典型的には2から5時間、本発明に記載の凍結方法の1つによって製剤を凍結させた後、さらなるアニーリング工程を含む。かかるアニーリング工程は、好ましくは本発明の安定化組成物が少なくとも1種の充填剤、例えばマンニトールまたはグリシンを含むときに用いる。
【0072】
他の好ましい態様において、本発明は、(i)棚温度を−40℃以下、好ましくは−50℃に低下させて凍結乾燥前の製剤を凍結させる工程;(ii)所望により−15℃でアニーリングさせる工程;(iii)−15℃の棚温度で、好ましくは20時間製剤を一次乾燥させる工程;(iv)40℃の棚温度で、チャンバー圧0.2mbar以下、好ましくは0.007mbarで製剤を二次乾燥させる工程を含んで成る本発明の凍結乾燥製剤の製造方法を提供する。
【実施例1】
【0073】
実施例
実施例1
材料および方法
「NicQβ」 − 「NicQβ」なる用語は、本明細書において使用するとき、(a)RNAバクテリオファージQβのウイルス様粒子;および(b)少なくとも1個のニコチン分子、ここで、当該少なくとも1個のニコチン分子は前記ウイルス様粒子と結合配列によって共有結合しており、当該結合配列はA−CHOCO(CHCO−B(ここで、Aはニコチン分子を意味し、BはRNAバクテリオファージQβのウイルス様粒子を意味する)から成り、結合配列がニコチン分子の3’位置と共有結合している;を含む少なくとも1個のニコチン−ウイルス様粒子結合体を意味するべきである。NicQβを、US6’932’971の実施例1に記載通りに製造した。NicQβ薬剤物質を室温で解凍した。
凍結乾燥プロトコル
【表1】

【表2】

【0074】
凍結乾燥物の再構成
当業者に知られているとおり、下記分析のいくつかは凍結乾燥物を水溶液にする必要がある。したがって、凍結乾燥物を滅菌濾過水、典型的かつ好ましくは、凍結乾燥前の製剤の総体積に調節する体積の滅菌濾過水で再構成した。実施例の方法によって、凍結乾燥プロセス前の製剤がバイアルあたり0.7mlであるとき、凍結乾燥プロセスから得られる好ましく形成されるケーキを、かかる体積の滅菌水、例えば最終組成物が0.7mlから成るように再構成する。
【0075】
VLP凝集体を測定するための非対称フロー場流動分画(AF4)測定
AF4測定を、350μmスペーサー、Eclipse2分離システムを備えたWyatt分離チャンネル(Wyatt Technology Corporation)、Agilent 1100 G1310Aアイソクラティックポンプ、Agilent 1100 G1379A脱気機、Agilent 1100 G1329A オートサンプラー、Agilent 1100 G1330Bオートサンプラー用サーモスタット、Agilent 1100 G1365B MWD 検出器、Agilent 1100 G1362A RI検出器およびWyatt DAWN EOS MALS検出器を用いて行った。
【0076】
チャンネル流速は1.5ml/分であった。クロス流速は18分間2.0ml/分、続いて15分間0.15ml/に減少させ、5分間0.15ml/分で行った。最終工程においてクロス流速は5分間0.0ml/分であった。
【0077】
VLPの濃度を、260nmでMWD検出器で測定した。Wyatt DAWN EOS MALS検出器を、VLP種の流体力学径および分子量を測定するために用いた。液体製剤および再構成凍結乾燥物(上記の通り水で再構成した)由来のVLP 約20μgの量を、AF4にそれぞれ注入した。
【0078】
ガラス転移温度を測定するための示差走査熱量計(DSC)測定
DSC測定を、Netzsch Differential Scanning Calorimeter 204 Phoenixで行った。典型的には、1から25mgのサンプルをアルミニウムパンに秤量した。パンをアルミニウムのフタで、汎用密封加圧器(closure press)を用いて固く封した。参照パンは空のままとし、同じ方法で調製した。パンを測定セルに置いた。セルを窒素でフラッシュした。サンプルを、10℃/分の加熱速度で測定した。
【0079】
凍結乾燥物のガラス転移温度(Tg)を、シングルDSCスキャンによって測定した。
【0080】
水含有分析
凍結乾燥物の水分含量測定を、電量分析Karl Fischer滴定装置で、ヘッドスペースオーブン(Analytic Jena AG)で行った。凍結乾燥物を2Rガラスバイアル中そのままで、ヘッドスペース温度80℃で測定した。サンプルをオーブンチャンバー内で少なくとも5分間加熱した。
【0081】
製剤の均質性を測定するための動的光散乱(DLS)測定
動的光散乱測定を、Malvern Zetasizer Nano ZS 装置で行った。液体製剤または再構成凍結乾燥物(上記の通り再構成した)0.5から1.0mlをUVマイクロキュベットプラスチブランド(Plastibrand)にピペットで入れ、バリデーションしたLMU Munich 標準プロトコル(SOPタンパク質_m_99%)を用いて測定した。多分散度指数(PI)、主NicQbピークの割合、ならびに体積変換および強度モデルを適用した主たるピークサイズを計算した。
【0082】
粒子汚染およびVLP凝集体を測定するための光遮断測定
光遮断測定を、PAMAS SVSS-C装置で行った。システムを製剤の一部、続いて0.1−0.3mlの液体製剤または再構成凍結乾燥物でフラッシュし、粒子汚染について評価した。溶液を測定セルに吸引し、1mlあたりで計算した1、10および25μmより大きな粒子の量を測定した。
【0083】
SE−HPLC−RNAインテグリティー
粒子をTRI−Reagent(フェノールとグアニジンチオシアネートの一相溶液中混合物、RNアーゼ活性を阻害する)中でホモジナイズし、RNAを1−ブロモ−3−クロロプロパン(BCP)−Phase Separation Reagentで抽出した。抽出したRNAをイソプロパノールで沈殿させ、ペレットをエタノールで洗浄した。RNAをDEPC−HOに溶解させ、HPLCで分析した(A260nmアイソクラティック溶出でモニタリング)。抽出したRNAの保持時間を、同じシリーズのtRNA標準分析と比較して測定した。
【0084】
RP−HPLC−遊離ニコチン
溶解性ニコチン誘導体ヒドロキシメチル−ニコチン(エステル結合の加水分解による)およびスクシニル−ヒドロキシメチル−ニコチン(アミド結合の分解による)をNicQβから、スピンフィルターで濾過して分離した。流水式をRP−HPLC(ニコチンおよびニコチン誘導体のA260nm−吸収波長)によって分析した。ニコチン誘導体の濃度を、平衡して行ったニコチン標準曲線の回帰から計算した。遊離ニコチンの値を、全ニコチンの割合で得た。
【0085】
RP−HPLC−総ニコチン
Qβタンパク質と共有結合しているニコチン部分を、40℃、pH>11で3時間インキュベーションして定量的に切断し、その後タンパク質を沈殿させた。加水分解生成物であるヒドロキシメチル−ニコチンは上清に留まり、それをRP−HPLC(A260nm)によって、ニコチン標準曲線を用いて、同じクロモフォアの加水分解生成物およびニコチン割合として定量した。
【0086】
SE−HPLC−VLP完全性
SE−HPLCは1つのサンプル中の異なる化合物をそれらのサイズに従って分離する分析方法である。したがって、大きなQβ粒子をより小さい分子、例えばQβ被覆タンパク質モノマーまたは核酸フラグメントから分離することができ、したがって、当該方法を用いてVLPの完全性を確認した。かかる方法を用いて、薬剤物質の重度も確認した。対照としてVLP標準を、同じシリーズにおいて当該サンプルで分析した。検出を260nmで行った。生成物の不純物は、タンパク質凝集体、小さな切断生成物および/または核酸である。全てのこれらの生成物の不純物をSE−HPLCによって検出したところ、これは生成物ピークからこれらの不純物を分離することができることが示された。検出のために、波長260nmを用いた。
【0087】
濁度測定
液体サンプル溶液の濁度を、実験室的濁度計(2100 AN, HACH company)を用いて測定した。濁度測定を、透過光とサンプル溶液中の粒子によって散乱される光の比率を測定する比濁度計によって行った。装置を、定義済みのサンプルセル中のフォルマジン(formazin)濁度標準懸濁液を用いてキャリブレーションした。小試験管内サンプル体積1−5mlを測定するため、ユーザー定義のキャリブレーション曲線を、0−200NTUの範囲で確立した。サンプル1mlを、ガラスによって引き起こされる散乱作用を減少させるためにシリコンオイルを適用した使い捨てガラス試験管で測定した。
【0088】
VIS−透過率測定
透過率測定を、2本ビームUV/Visible Spectrophotometer UV1(Thermo Spectronic)で行った。液体製剤0.5から1.0mlをUVマイクロキュベットPlastibrandにピペットで入れた。600nmで透過率を測定した。
【実施例2】
【0089】
実施例2
NicQβの安定性に対するpHの影響
NicQβの安定性を、4.6から8.2の範囲の10種類の異なるpHで分析した。バルクウェア(bulkware)のpHを、0.1N NaOH溶液または0.1N HPO溶液を用いて調節した。全サンプルを、水を用いて1mg/ml NicQβの濃度に希釈した。サンプルを室温で14日まで貯蔵した。結果を表3に示す。
【表3】

【0090】
NicQβの化学的安定性を、RP−HPLCおよびSE−HPLC法を用いて調査した。NicQβの化学的不安定性によって、VLPがQβタンパク質のモノマーもしくはマルチマーに崩壊し、および/またはニコチンとQβのVLPに分離する。
【0091】
遊離ニコチン誘導体の含量が、pH値の増加と共に増加した。pH4.6から6.2では、わずかな遊離ニコチン誘導体の増加のみが検出された。pH6.2以上では、遊離ニコチン誘導体の量が貯蔵時間にわたって急速に増加した。さらに、VLP完全性は、pH値の増加によって負に影響された。7.4に等しいかそれ以上のpHで、Qβカプシドの完全性は、SE−HPLCで測定したとき、7日後に劇的に減少した。pH7.0で、室温で7日後のNicQβの相対含量は約96%であったが、pH7.4では約91%であった。
【0092】
NicQβの物理的安定性を、光遮断、DLSおよびVIS−透過率測定によって調査した。Nic−Qβの物理的安定性:「物理的安定性」なる用語は、本明細書において使用するとき、QβのVLPの凝集を意味する。3つの分析法全てで、NicQβが5.8以下のpH値で凝集する傾向があることが示された。DLS測定では、pH5.8以下で、主たるピークの割合が減少したが、VLPおよびオリゴマーを含むピークの増加および多分散度(PI)が増加したことが示された。光遮断およびVIS−透過率測定によって得られた結果によって、pHの減少によってNicQβが凝集する傾向があることを確認された。
【実施例3】
【0093】
実施例3
凍結解凍ストレス条件の、NicQβの安定性に対する影響
NicQβの総計36個の異なる製剤を凍結/解凍サイクルに供した。サンプルを−80℃で凍結させ、20℃から25℃で解凍した。この凍結/解凍サイクルを5回反復した。凍結/解凍サイクルの前および後に、製剤をDLS測定および光遮断測定によって測定した。
【0094】
トレハロースおよびポリソルベート20添加の影響 − 製剤に0.2mg/ml NicQβ、0または10%トレハロース、pH=6.4、30mM NaClを、0.005%ポリソルベート20有りまたは無しで含めた。トレハロース含有ポリソルベート無しの製剤で得られたDLS測定結果は、主たるピークのわずかな減少およびPIの増加を示した。したがって、トレハロースはNicQβの凝集レベルのわずかな増加をもたらした。しかし、この効果はポリソルベート20の添加によって予防された。光遮断結果はDLS測定を支持した。ポリソルベートを含まない製剤における>1μm粒子の数と比較して、顕著に低い数の>1μm粒子が凍結/解凍サイクル後のポリソルベート含有製剤において検出された。
【0095】
異なるNaCl濃度およびポリソルベート20添加の影響 − 製剤に0.2mg/ml NicQβ、10% トレハロース、pH=6.4、様々な濃度のNaClを、0.005% ポリソルベート20有りまたは無しで含めた。DLS測定結果は、凍結/解凍サイクル後のNicQβの凝集レベルにNaClが影響を有していることが示された。溶液のPIは凍結/解凍サイクル後、NaCl濃度の増加と共に増加した。したがって、NicQβの物理的安定性は、NaCl濃度の増加によって顕著に減少された。しかし、ポリソルベート20の添加によって、この物理的不安定性は90mM以下のNaCl濃度について補償することができた。これらの結果は、光遮断測定によって支持された。凍結/解凍後、ポリソルベートを含まない製剤は、1μm以上の粒子の顕著な増加が示され、これは凝集体の量が多いことを示している。ポリソルベート20の添加によって、ほぼ1μm以上の粒子が検出されないように、凝集が予防された。
【0096】
異なるpHおよびポリソルベート20添加の影響 − 5.4から7.2の範囲のpHの、ポリソルベート20を含むか含まない製剤の安定性に対する影響を調査した。製剤に0.2mg/ml NicQβ、10% トレハロース、様々なpH、NaCl 30mM、0.005% ポリソルベート20有りまたは無しで含めた。結果は、実施例2に記載のpH安定性試験の知見を支持した。製剤溶液の製造中に既に、体積変換モデルを用いたDLS測定によって検出したとき、主たるNicQβピークの割合がpHの減少と共に減少した。ポリソルベート20の添加によって、試験したpH値6.4および7.2でNicQβの凝集が予防された。さらにまた、ポリソルベート20の添加によって、pH5.4でのNicQβの凝集が減少した。DLS測定に加えて、光遮断測定によって得られた結果はこれらの知見を支持した。このpH試験のコースにおいてDLS測定結果および光遮断測定によって得られた上記観察は、NaCl濃度30、60、90および150mMで一致した。
【実施例4】
【0097】
実施例4
凍結乾燥中のNicQβの安定性に対する様々な組成物の影響
NicQβを室温で解凍した。様々なNicQβ、トレハロース、ポリソルベート、NaCl濃度および様々なバッファー系を含む様々な製剤(図1に示す)を、NicQβを賦形剤原液にピペッティングして製造した。溶液をIKA マグネチックスターラーで5−10分間攪拌した。最終薬剤溶液を滅菌濾過し(0.22μmメンブランフィルター)、凍結乾燥した。
【0098】
簡単に説明すると、薬剤溶液を滅菌2Rガラスバイアルに充填した。製剤F29RL、F48RLおよびF49RLから、0.7ml/バイアルを充填した。他の製剤については、0.6ml/バイアルを充填した。ポリジメチルシロキサンおよびETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)被覆凍結乾燥ストッパー(West Pharmaceutical Services)をバイアルに置いた。バイアルをChrist Epsilon 2-12 D凍結乾燥装置(Martin Christ Gefriertrocknungsanlagen GmbH)の凍結乾燥チャンバーに移した。棚温度を0.5℃から1.0℃/分で−40℃に低下させ、−40℃未満に3時間保った。チャンバー圧を0.045mbarに低下させ、棚を−35℃に1℃/分で加温し、20時間保った。その後、棚温度を−20℃に、0.1℃/分で上昇させ、10時間保った。その後、棚温度を20℃に0.5℃/分で上昇させ、10時間保った。凍結乾燥チャンバーを濾過乾燥窒素で800mbarに通気し、バイアルを凍結乾燥チャンバー内で封した。バイアルをチャンバーから取り出し、Flip-Off(登録商標)シールで密封した。凍結乾燥後、安定な凍結乾燥物が得られ、十分なケーキ構造が得られた。
【0099】
結果を図2に示す。様々なNic−Qb(0.2mg/mlから2.0mg/mlについて試験した)、トレハロース(5%から10%について試験した)、ポリソルベート(0.005から0.01%について試験した)、NaCl濃度(0から60mM)を含む凍結乾燥前の製剤からの凍結乾燥物は、全て1%未満の水分含量であった。上記製剤のNicQβ−オリゴマーおよびNicQβ−凝集体の量は、AF4で分析したとき、凍結乾燥前製剤と比較して凍結乾燥後に1%以上増加しなかった。DLS測定はこれらの製剤が典型的に、体積変換モデルを用いて測定したときそれぞれ0.2以下の多分散度(PI)を有し、主たるNicQβピークの割合が98.5%以上であることを示した。行った分析測定によって、これら上記の製剤は0.20mg/mlから2mg/mlの濃度においてNicQbを安定化することができるという結論が導かれた。
【0100】
ポリソルベート20を含まないF22RLは、多分散度(PI)値約0.35を有した。さらにまた、NicQβ−オリゴマーおよびNicQβ−凝集体の合計量が、凍結乾燥前と比較して約5.5%増加した。これらの結果は、非イオン性界面活性剤がVLP凝集の予防に必要であることを示した。
【0101】
F08RL、F39RL、F37RL、F38RLは、30mM、60mM、90mMおよび150mMの塩化ナトリウムをそれぞれ含む。ポリソルベート20の存在によって、NicQβの物理的安定性に対するNaCl(60mM以下の濃度)の影響を補償するが(F08RLおよびF39RLは凍結乾燥後、NicQβオリゴマーおよびNicQβ凝集体の量の実質的な増加を有さなかった)、NicQβオリゴマーとNicQβ凝集体の合計量が凍結乾燥後2.8および3.5%増加したように、ポリソルベート20の存在によっては、90mM以上のNaCl濃度のNaCl効果を一部のみ補償した。さらにまた、90mM以上のNaClの存在によって、400mosm/kg以上の浸透圧値となった。
【実施例5】
【0102】
実施例5
凍結乾燥中のNicQβ安定化剤としてのマンニトール/トレハロース組成物の試験
【表4】

4種の製剤(図1のF30RL、F32RL、F42RL、F54RL)を、実質的に実施例4に記載の通りに製造した。バイアルの充填体積は0.6mlであった。製剤F30RL、F32RLおよびF42RLを簡単に、以下の条件で凍結乾燥した:棚温度を1.0℃/分で−50℃に低下させ、−50℃に3時間保った。チャンバー圧を0.045mbarに低下させ、棚を−15℃に、0.15℃/分で加温し、20時間保った。あるいは、製剤F42RLおよびF54RLを、−15℃で2時間アニーリング工程を行う以外は同じ凍結乾燥プロセスを適用して、凍結乾燥した。続いて、チャンバー圧を0.007mbarに低下させ、棚を40℃に、0.15℃/分で加温して、さらに10時間保った。凍結乾燥チャンバーを濾過乾燥窒素で800mbarに通気し、バイアルを凍結乾燥チャンバー内で封した。バイアルをチャンバーから取り出し、Flip-Off(登録商標)シールで密封した。
【0103】
結果を一部図2に示した。凍結乾燥後、安定な凍結乾燥物を得て、十分なケーキ構造が得られた。3種の凍結乾燥製剤の水分含量は典型的には0.3%未満であった。製剤の浸透圧は典型的には、250から340[mosm/kg]の範囲であった。浸透圧はトレハロースおよびマンニトール濃度の上昇と共に上昇した。
【0104】
アニーリング工程を適用せずに製造した製剤F30RL、F32RLおよびF42RLのマンニトール分画は、アモルファスまたは部分的にアモルファスであった。アニーリング工程を適用して製造した製剤F42RLおよびF54RLのマンニトール分画は、凍結乾燥後、結晶であった。
【0105】
製剤F30RL、F32RLおよびF42RLは、AF4測定で分析したとき、凍結乾燥後、NicQβオリゴマーとNicQβ凝集体の合計量の顕著な明白な増加は見られなかった。DLS測定によって体積変換モデルを用いて測定したとき、3製剤が多分散度(PI)0.2未満を有し、主たるNicQβピークの割合が典型的には99%以上であることが示された。製剤F54RLについては、凍結乾燥後、NicQβオリゴマーとNicQβ凝集体の合計量の増加がAF4によって測定された。
【0106】
光遮断測定によって、再構成凍結乾燥物の粒子汚染が典型的には、1mlあたり100個以下の>10μm粒子であり、>1μm粒子の数は典型的には1mlあたり2000粒子以下であることが示された。これらの結果によって、トレハロースとマンニトールのような充填剤の混合物が凍結乾燥中のNicQβを安定化し得ることが示された。
【実施例6】
【0107】
実施例6
凍結乾燥NicQβ製剤の安定性試験
5種の製剤F42RL、F35RL、F10RL、F16RLおよびF54RLを、実施例4および5と実質的に同様に製造した。バイアルの充填体積は0.6mlであった。
【0108】
トレハロースのみを含む製剤(F35RL、F10RL、F16RL)を下記条件で凍結乾燥した:棚温度を1.0℃/分で−50℃に低下させ、−50℃で3時間保った。チャンバー圧を0.045mbarに減少させ、棚を−35℃に1℃/分で加温し、25時間保った。続いて、棚温度を−20℃に0.1℃/分で上昇させ、10時間保った。続いて、棚温度を20℃に、0.5℃/分で上昇させ、10時間保った。
【0109】
トレハロースとマンニトールのいずれもを含む製剤(F42RL)を、下記条件で凍結乾燥した:棚温度を1.0℃/分で−50℃に低下させ、−50℃で3時間保った。チャンバー圧を0.045mbarに減少させ、棚を−15℃に0.15℃/分で加温し、25時間保った。続いて、チャンバー圧を0.007mbarに減少させ、棚温度を40℃に、0.15℃/分で上昇させ、10時間保った。
【0110】
マンニトールのみを含む製剤(F54RL)を、下記条件で凍結乾燥した:棚温度を1.0℃/分で−50℃に低下させ、−50℃で2時間保った。−15℃でアニーリング工程を2時間適用した。棚温度を−50℃に低下させ、−50℃で2時間保った。チャンバー圧を0.045mbarに減少させ、棚を−15℃に0.15℃/分で加温し、20時間保った。続いて、チャンバー圧を0.007mbarに減少させ、棚温度を40℃に、0.15℃/分で上昇させ、10時間保った。
【0111】
凍結乾燥後、安定な凍結乾燥物を全ての凍結乾燥製剤について得て、十分なケーキ構造が得られた。
【0112】
サンプルを2〜8℃、25および40℃で、25週まで貯蔵した。分析結果を一部図3に示した。全てのトレハロースまたはトレハロース/マンニトール利用製剤の凍結乾燥物のケーキ構造は、貯蔵の間、加速温度でさえも安定であった。このことは、すべての保存条件および時点で観察された。マンニトールを含まない凍結乾燥物のガラス転移温度は典型的には、60℃から110℃の範囲であり、貯蔵の間顕著に変化しなかった。製剤の浸透圧は、300から350[mosm/kg]の範囲であった。
【0113】
凍結乾燥製剤の初期水分含量は、1.0%以下であった。2−8℃および25℃で貯蔵した凍結乾燥物の水分含量は、25週間の貯蔵を通じて、0.5%未満の水分含量の増加と安定であった。40℃で貯蔵した凍結乾燥物は、水分含量がわずかに増加した;貯蔵後の水分含量は典型的には、貯蔵前の約1%と比較して、1.7%以下であった。
【0114】
NicQβオリゴマーとNicQβ凝集体の合計量は、AF4測定で分析したとき、凍結乾燥後、トレハロースまたはトレハロース/マンニトール利用製剤において増加しなかった。AF4で分析したとき、凍結乾燥前製剤と比較して、貯蔵後、3%未満のわずかな増加が観察された。マンニトール利用製剤は、NicQβオリゴマーとNicQβ凝集体の合計量の明白な増加が示された。
【0115】
光遮断測定によって、貯蔵後の再構成凍結乾燥物の粒子汚染が典型的には、全製剤、貯蔵条件および時点を通じて1mlあたり500個以下の>10μm粒子であることが示された。
【0116】
DLS測定は、4つのトレハロースまたはトレハロース/マンニトール利用製剤に由来する貯蔵後再構成凍結乾燥物が典型的に、体積変換モデルを用いて測定したときそれぞれ0.2以下の多分散度(PI)を有し、主たるNicQβピークの割合が98.5%以上であることを示した。このことは、全ての製剤、貯蔵条件および時点について観察された。製剤F54RLは40℃6週間の貯蔵によって、多分散度が0.24に上昇した。
【0117】
IEF、SE−HPLC(RNAインテグリティー)、RP−HPLC(総ニコチン)、Spectrometry(RNA含有量)、濁度およびLDS−Page測定は、全てのトレハロースおよびトレハロース/マンニトール利用製剤の顕著な変化を、全ての貯蔵条件および時点について示さなかった。組換え的に生産されたQβのウイルス様粒子は典型的には、宿主RNA分子を含み、これは通常ウイルス様粒子の内部空間(inner space)に存在する。
【0118】
遊離ニコチン誘導体の含有量は、全てのトレハロースまたはトレハロース/マンニトール利用製剤、全ての貯蔵条件および時点について、典型的に、RP−HPLC測定で測定したとき、総結合ニコチンの1.5%以下であった。遊離ニコチン誘導体の量は、製剤F54RLにおいて、40℃で6週間貯蔵によって4.2%まで増加した。
【0119】
SE−HPLC(VLP完全性)測定によって、NicQβの相対含量が全てのトレハロースまたはトレハロース/マンニトール利用製剤、時点および貯蔵条件を通じて97%以上であることが示された。NicQβの相対含量は、製剤F54RLにおいて、40℃で6週間貯蔵によって93%に減少した。
【0120】
行った分析測定によって、全てのトレハロースまたはトレハロース/マンニトール利用製剤は凍結乾燥および続く貯蔵(40℃の加速温度でさえ)中の、のNicQβを安定化することができるという結論が導かれた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i):
(a)ウイルス様粒子;および
(b)少なくとも1個のニコチン分子、ここで、当該少なくとも1個のニコチン分子は前記ウイルス様粒子と結合配列によって共有結合しており、当該結合配列はエステル官能基を含む;
を含んで成る少なくとも1個のニコチン−ウイルス様粒子結合体、および
(ii):
(c)少なくとも1種の非還元二糖類、ここで前記非還元二糖類の濃度は、凍結乾燥前の製剤中濃度において、0.5%から15%(w/v)である;
(d)少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、ここで当該非イオン性界面活性剤の濃度は、凍結乾燥前の製剤中濃度において0.0005%から0.1%(w/v)である;
を含む安定化剤組成物を含んで成る凍結乾燥製剤であって、当該安定化剤組成物は凍結乾燥前に5.4から6.6のpH値を有している、製剤。
【請求項2】
非還元二糖類がショ糖またはトレハロースである、請求項1の凍結乾燥製剤。
【請求項3】
非還元二糖類がトレハロースである、請求項1または2の凍結乾燥製剤。
【請求項4】
少なくとも1種の非還元二糖類の濃度が凍結乾燥前の製剤中濃度において3%から12%(w/v)であり、好ましくは少なくとも1種の非還元二糖類の濃度が凍結乾燥前の製剤中濃度において10%(w/v)である、請求項1〜3のいずれかの凍結乾燥製剤。
【請求項5】
安定化剤組成物がさらに充填剤を含む、請求項1〜4のいずれかの凍結乾燥製剤。
【請求項6】
非還元二糖類および充填剤の濃度が凍結乾燥前の製剤中濃度において0.5%から15%(w/v)である;ただし非還元二糖類の濃度が凍結乾燥前の製剤中濃度において少なくとも0.5%(w/v)である、請求項5の凍結乾燥製剤。
【請求項7】
充填剤がマンニトールである、請求項5または6の凍結乾燥製剤。
【請求項8】
非イオン性界面活性剤の濃度が、凍結乾燥前の製剤中濃度において0.0025%から0.01%(w/v)、好ましくは0.005%(w/v)である、請求項1〜7のいずれかの凍結乾燥製剤。
【請求項9】
非イオン性界面活性剤がポリソルベート20である、請求項1〜8のいずれかの凍結乾燥製剤。
【請求項10】
ウイルス様粒子がRNAバクテリオファージのウイルス様粒子であり、好ましくはウイルス様粒子がRNAバクテリオファージQβのウイルス様粒子である、請求項1〜9のいずれかの凍結乾燥製剤。
【請求項11】
結合配列がA−CHOCO(CHCO−B(ここで、Aはニコチン分子を意味し、Bはウイルス様粒子を意味する)から成る、請求項1〜10のいずれかの凍結乾燥製剤。
【請求項12】
結合配列がニコチン分子の3’位置と共有結合している、請求項11の凍結乾燥製剤。
【請求項13】
安定化剤組成物がさらに、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、およびヒスチジン/ヒスチジンHClから選択される緩衝化剤を含む、好ましくは安定化剤組成物がさらに、ヒスチジン/ヒスチジンHClである緩衝化剤を含む、請求項1〜12のいずれかの凍結乾燥製剤。
【請求項14】
(i):
(a)RNAバクテリオファージQβのウイルス様粒子;および
(b)少なくとも1個のニコチン分子、ここで少なくとも1個のニコチン分子は前記ウイルス様粒子と結合配列によって共有結合しており、当該結合配列はA−CHOCO(CHCO−B(ここで、Aはニコチン分子を意味し、BはRNAバクテリオファージQβのウイルス様粒子を意味する)から成り、当該結合配列はニコチン分子の3’位置と共有結合している;
を含む少なくとも1個のニコチン−ウイルス様粒子結合体;および
(ii):
(c)1種の非還元二糖類、ここで当該非還元二糖類はトレハロースであり、トレハロースの濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において10%(w/v)である;
(d)1種の非イオン性界面活性剤、ここで当該非イオン性界面活性剤はポリソルベート20であり、そしてポリソルベート20の濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において0.005%(w/v)である;
を含む安定化剤組成物を含んで成る凍結乾燥製剤であって、当該安定化剤組成物は凍結乾燥前に6.2のpH値を有している、製剤。
【請求項15】
(i):
(a)RNAバクテリオファージQβのウイルス様粒子;および
(b)少なくとも1個のニコチン分子、ここで少なくとも1個のニコチン分子は前記ウイルス様粒子と結合配列によって共有結合しており、当該結合配列はA−CHOCO(CHCO−B(ここで、Aはニコチン分子を意味し、BはRNAバクテリオファージQβのウイルス様粒子を意味する)から成り、当該結合配列はニコチン分子の3’位置と共有結合している;
を含む少なくとも1個のニコチン−ウイルス様粒子結合体;および
(ii):
(c)1種の非還元二糖類、ここで当該非還元二糖類はトレハロースであり、トレハロースの濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において10%(w/v)である;
(d)1種の非イオン性界面活性剤、ここで当該非イオン性界面活性剤はポリソルベート20であり、そしてポリソルベート20の濃度は凍結乾燥前の製剤中濃度において0.005%(w/v)である;
(e)1種の緩衝化剤、ここで当該緩衝化剤はヒスチジン/ヒスチジンHClであり、当該ヒスチジン/ヒスチジンHClの濃度は20mMである;
を含む安定化剤組成物を含んで成る凍結乾燥製剤であって、当該安定化剤組成物は凍結乾燥前に6.2のpH値を有している、製剤。
【請求項16】
凍結乾燥製剤が室温で少なくとも15週間、好ましくは少なくとも25週間安定である、請求項1〜15のいずれかの凍結乾燥製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−536936(P2009−536936A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508393(P2009−508393)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054604
【国際公開番号】WO2007/131972
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(501087515)サイトス・バイオテクノロジー・アクチェンゲゼルシャフト (3)
【氏名又は名称原語表記】CYTOS BIOTECHNOLOGY AG
【Fターム(参考)】