説明

ニッケル水素電池の再生方法及びニッケル水素電池

【課題】ニッケル水素電池を再生する際に電池ケースに加わる負荷を軽減することを目的とする。
【解決手段】少なくとも水素吸蔵合金を含む負極を発電要素として備えるニッケル水素電池の再生方法であって、前記発電要素を収容する電池ケースに形成された水素供給口を塞ぐ位置に配置された熱可塑性の可溶部を熱溶融することにより、前記水素供給口を前記電池ケースの内外において導通させる加熱ステップと、前記加熱ステップにおいて導通した前記水素供給口を介して、水素を前記電池ケースの内部に供給する水素供給ステップと、前記水素供給ステップによる水素供給後に、前記可溶部に熱可塑性の他の可溶部を熱溶着することにより前記水素供給口を閉塞する封止ステップと、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル水素電池の再生方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の二次電池として充放電可能なニッケル水素電池が知られている。ニッケル水素電池は、水酸化ニッケル又はオキシ水酸化ニッケルを主成分とするニッケル化合物からなる正極と、水素吸蔵合金からなる負極と、水酸化カリウム等を主成分とするアルカリ水溶液からなる電解液と、これらの正極、負極及び電解液を収容する電池ケースとを有する。
【0003】
負極の水素吸蔵合金に貯蔵されている水素の一部は、電池ケースを透過することで減少する。水素が減少すると、ニッケル水素電池の電池容量が低下する。
【0004】
特許文献1は、電池容量が低下したニッケル水素電池を再生する方法として、水素ガスを電池ケースに導入する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−319366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電池ケースに水素を供給するための供給口を形成し、この供給口を介して電池ケースの内部に水素を供給した後、供給口を塞ぐ処理を行う一連の再生処理が繰返し行われると、電池ケースの強度低下を招くおそれがある。
【0007】
そこで、本願発明は、ニッケル水素電池を再生する際に電池ケースに加わる負荷を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に解決するために、本願発明に係るニッケル水素電池の再生方法は、(1)少なくとも水素吸蔵合金を含む負極を発電要素として備えるニッケル水素電池の再生方法であって、前記発電要素を収容する電池ケースに形成された水素供給口を塞ぐ位置に配置された熱可塑性の可溶部を熱溶融することにより、前記水素供給口を前記電池ケースの内外において導通させる加熱ステップと、前記加熱ステップにおいて導通した前記水素供給口を介して、水素を前記電池ケースの内部に供給する水素供給ステップと、前記水素供給ステップによる水素供給後に、前記可溶部に熱可塑性の他の可溶部を熱溶着することにより前記水素供給口を閉塞する封止ステップと、を有することを特徴とする。
【0009】
(2)上記(1)の構成において、前記電池ケースは、有底筒状のケース本体と、このケース本体の開口部を閉塞する上蓋とを備え、前記電池ケースの内部には、前記ケース本体の底面に立設される隔壁によって仕切られた複数の電池セル収容部が形成されており、前記複数の電池セル収容部にはそれぞれ電池セルが収容されており、前記水素供給口は、前記電池ケース内の空間を介して前記複数の電池セル収容部に連通している。(2)の構成によれば、水素供給口から導入されたガスが各電池セル収容部に拡散するため、各電池セル収容部に収容された各電池セルの容量バラツキを抑制しながら、電池容量を回復することができる。
【0010】
(3)上記(2)の構成において、前記隔壁と前記上蓋との間には、前記水素供給口から導入される水素が前記各電池セル収容部に向かうのを許容する隙間が形成されており、前記隙間は、前記発電要素において発生したガスを前記上蓋に形成されたガス放出弁から排出するための排出経路を兼ねる。(3)の構成によれば、前記隙間に対して、再生処理の際に用いられる水素供給経路と、過充電などの際に発電要素から発せられるガスの排出経路とを兼用させることができる。
【0011】
(4)上記(2)又は(3)の構成において、前記水素供給口は、前記上蓋に形成することができる。
【0012】
(5)上記(2)〜(4)の構成において、前記可溶部は、前記上蓋から延出している。(5)の構成によれば、可溶部を溶融して水素供給口を電池ケースの内外において導通させる際に、十分な溶け代を確保することができる。
【0013】
(6)上記(5)の構成において、前記封止ステップにおいて、前記可溶部と、前記他の可溶部との接触面を熱溶融させた状態で、前記他の可溶部を前記可溶部に向かって押圧することにより、熱融着することができる。前記他の可溶部がより確実に溶着され、電池ケースの封止性を高めることができる。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係るニッケル水素電池は、(7)少なくとも水素吸蔵合金を含む負極を発電要素として備えるニッケル水素電池であって、前記発電要素を収容する電池ケースと、前記電池ケースに形成される、電池ケースの内部に水素を供給するための水素供給口と、前記水素供給口を塞ぐ位置に配置される、熱可塑性を有する可溶部と、を有することを特徴とする。
【0015】
(8)上記(7)の構成において、前記電池ケースは、有底筒状のケース本体と、このケース本体の開口部を閉塞する上蓋とを備え、前記電池ケースの内部には、前記ケース本体の底面に立設される隔壁によって仕切られた複数の電池セル収容部が形成されており、前記複数の電池セル収容部にはそれぞれ電池セルが収容されており、前記水素供給口は、前記電池ケース内の空間を介して前記複数の電池セル収容部に連通している。(8)の構成によれば、水素供給口から導入されたガスが各電池セル収容部に拡散するため、各電池セル収容部に収容された各電池セルの容量バラツキを抑制しながら、電池容量を回復することができる。
【0016】
(9)上記(8)の構成において、前記隔壁と前記上蓋との間には、前記水素供給口から導入される水素が前記各電池セル収容部に向かうのを許容する隙間が形成されており、前記隙間は、前記発電要素において発生したガスを前記上蓋に形成されたガス放出弁から排出するための排出経路を兼ねる。(9)の構成によれば、前記隙間に対して、再生処理の際に用いられる水素供給経路と、過充電などの際に発電要素から発せられるガスの排出経路とを兼用させることができる。
【0017】
(10)上記(8)又は(9)の構成において、前記水素供給口は、前記上蓋に形成することができる。
【0018】
(11)上記(8)〜(10)の構成において、前記可溶部は、前記上蓋から延出している。(11)の構成によれば、可溶部を溶融して水素供給口を電池ケースの内外において導通させる際に、十分な溶け代を確保することができる。
【0019】
本願発明に係るニッケル水素電池の再生方法は、別の観点として、(12)少なくとも水素吸蔵合金を含む負極と電解液とを発電要素として備えるニッケル水素電池の再生方法であって、前記発電要素を収容する電池ケースに形成された供給口を塞ぐ位置に配置された熱可塑性の可溶部を熱溶融することにより、前記供給口を前記電池ケースの内外において導通させる加熱ステップと、前記加熱ステップにおいて導通した前記供給口を介して、前記電解液に向かってアルカリ金属及び/又はアルカリ金属水素化物を供給する供給ステップと、前記供給ステップによる供給後に、前記可溶部に熱可塑性の他の可溶部を熱融着することにより前記供給口を閉塞する封止ステップと、を有することを特徴とするニッケル水素電池の再生方法である。上記(2)〜(6)の構成は、上記(12)の構成に適用することができる。
【0020】
本願発明に係るニッケル水素電池は、(13)少なくとも水素吸蔵合金を含む負極と電解液とを発電要素として備えるニッケル水素電池であって、前記発電要素を収容する電池ケースと、前記電池ケースに形成され、前記電池ケースの内部に収容された前記電解液に向かってアルカリ金属及び/又はアルカリ金属水素化物を供給するための供給口と、前記供給口を塞ぐ位置に配置される、熱可塑性を有する可溶部と、を有することを特徴とする。アルカリ金属及び/又はアルカリ金属水素化物が電解液に投入されることにより、水素ガスが発生し、水素吸蔵合金に吸蔵させることができる。上記(7)〜(11)の構成は、上記(13)の構成に適用することができる。
【発明の効果】
【0021】
上記(1)、(12)の構成によれば、ニッケル水素電池を再生する際に電池ケースに加わる負荷を軽減することができる。上記(7)、(13)の構成によれば、ニッケル水素電池を再生する際に電池ケースに加わる負荷を軽減できる構造を備えたニッケル水素電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ニッケル水素電池をX−Y面で切断した断面図である。
【図2】ニッケル水素電池の再生方法を示したフローチャートである。
【図3】ニッケル水素電池の工程図である(加熱工程)
【図4】ニッケル水素電池の工程図である(水素供給工程)
【図5】ニッケル水素電池の工程図である(封止工程)
【図6】ガス供給装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1を参照しながら、本実施形態に係るニッケル水素電池について説明する。図1は、ニッケル水素電池をX−Y面で切断した断面図であり、X軸、Y軸及びZ軸は互いに直交する三軸である。
【0024】
ニッケル水素電池1は、電池ケース10、ガス放出弁20及び可溶部30を備える。電池ケース10は、ケース本体11及び上蓋12を含む。ケース本体11は、ケース底面11aを矩形とする有底筒状のケースである。ケース本体11の内部には、複数の隔壁111が設けられている。これらの隔壁111は、ケース本体11におけるケース底面11aに立設されており、ケース本体11の長手方向(X軸方向)に所定間隔で配列されている。当該所定間隔は、等間隔であってもよい。電池ケース10は、樹脂であってもよい。各隔壁111と上蓋12との間には隙間(ガス排出経路)が形成されており、この隙間を介して、過放電、過充電などの際に発生するガスをガス放出弁20から逃がす構造となっている。ガス放出弁20は、スプリング式の自動復帰弁であってもよい。
【0025】
本実施形態では、5つの隔壁111を設けることにより、ケース本体11の内部の領域を6つに分割している。以下、この6つに分割された各領域を、セル収容部110と定義する。各セル収容部110には図示しない発電要素としての電池セルが収容されている。電池セルとは、充放電可能な最小単位を意味する。電池セルは、正極体と負極体とをセパレータを介した積層した積層体と、これらの積層体に含浸される電解液とを含む。正極体は、ニッケル酸化物であってもよい。ニッケル酸化物は、オキシ水酸化ニッケル(Ni00H)であってもよい。負極体は、水素を貯蔵した水素吸蔵合金を含む。セパレータは、シート状の不織布であってもよい。電解液は、水酸化カリウム(KOH)であってもよい。
【0026】
上蓋12は、ケース本体11の内面に接合されている。接合手段は、溶接であってもよい。すなわち、ケース本体11の内面には、上蓋12が載置される図示しない突部が形成されており、この突部に上蓋12を載置した状態で溶接することにより、上蓋12をケース本体11の内面に対して接合することができる。
【0027】
各セル収容部110に収容された各電池セルは、直列に接続されることにより電池モジュールを構成する。X軸方向の両端に位置する電池セルのうち一方の電池セルは、正極端子112に接続されており、他方の電池セルは、負極端子113に接続されている。正極端子112及び負極端子113は突状に形成されており、電池ケース10の外部に突出している。
【0028】
ニッケル水素電池1は、Z軸方向に複数積層されており、隣接するニッケル水素電池1の正極端子112及び負極端子113を、図示しないバスバーを介して接続することにより、直列接続された高出力の車両用組電池を得ることができる。なお、隣接するニッケル水素電池1は、並列に接続してもよい。この場合、隣接するニッケル水素電池1における同極の端子が、バスバーにより接続される。これにより、高容量の車両用組電池を得ることができる。
【0029】
可溶部30は、上蓋12に形成された水素供給口12aに圧入されている。可溶部30が水素供給口12aの内周面に圧接することにより、電池ケース10の内部を封止することができる。これにより、電池ケース10の内部に異物が侵入するのを抑制することができる。可溶部30は、熱可塑性を有する。ここで、熱可塑性とは、加熱すると軟化して成形しやすくなり、冷却すると再び硬くなる性質のことである。
【0030】
熱可塑性を有する材料は、熱可塑性樹脂、硫黄成分を含有する硫黄固化体であってもよい。熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の汎用樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート等の汎用エンジニアリング樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー等のスーパーエンジニアリング樹脂であってもよい。硫黄固化体は、常温では固体であり、約119℃を超えると溶融する硫黄の性質を利用して、119℃以上に加熱して溶融させた硫黄に砂、砂利、石炭灰等を混合して、約119〜159℃を保持しながら混練し、これを冷却固化したものである。また、硫黄固化体は、119℃以上に加熱して溶融させた硫黄に、溶融硫黄を変性する硫黄改質剤を混合して改質硫黄を製造し、この改質硫黄に砂、砂利、石炭灰等を混合して、約119〜159℃を保持しながら混練し、これを冷却固化したものであってもよい。硫黄改質剤は、炭素数4〜20のオレフィン系炭化水素又はジオレフィン系炭化水素であってもよい。具体的には、リモネン、ピネン等の環状オレフィン系炭化水素、スチレン、ビニルトルエン、メチルスチレン等の芳香族炭化水素、ジシクロペンタジエン及びそのオリゴマ−、シクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロオクタジエン等のジエン系炭化水素等の1種又は2種以上との混合物であってもよい。
【0031】
可溶部30は、上蓋12の上面(Y軸方向の端面)から突出している。このように、可溶部30の高さ寸法を上蓋12よりも大きく設定することにより、可溶部30を溶解する際に、十分な溶け代を確保することができる。溶け代を確保することによる効果の詳細な説明は、後述する。
【0032】
次に、図2乃至図5を参照しながら、ニッケル水素電池の再生方法について説明する。図2は、ニッケル水素電池の再生方法の手順を示したフローチャートである。図3乃至図5はそれぞれ、図2に示したフローチャートの各ステップに対応する工程図である。なお、本例における可溶部30は、熱可塑性樹脂により構成されているものとする。
【0033】
図2及び図3を参照して、ステップS101の加熱工程では、可溶部30を熱溶融することにより貫通孔部30aを形成し、電池ケース10の内外を導通させる。ここで、説明の便宜上、六つに分割されたセル収容部110をそれぞれ図中左側から第1のセル収容部110a、第2のセル収容部110b、第3のセル収容部110c、第4のセル収容部110d、第5のセル収容部110e及び第6のセル収容部110fと称するものとする。第1〜第6のセル収容部110a〜110fにおいてそれぞれ示される水平方向に延びる点線は、各第1〜第6のセル収容部110a〜110fに収容される各電池セルの容量レベルを模式的に示している。
【0034】
各第1〜第6のセル収容部110a〜110fにそれぞれ収容された各電池セルは、負極体の水素吸蔵合金から放出される水素が電池ケース10を透過して電池ケース10の外部に放出されることにより、容量が低下している。すなわち、水素分子は非常に小さいため、樹脂製の電池ケース10を透過して、外部に流出する。本例では、第4のセル収容部110dに収容される電池セル、第3のセル収容部110cに収容される電池セル、第5のセル収容部110eに収容される電池セル、第2のセル収容部110bに収容される電池セル、第6のセル収容部110fに収容される電池セル、第1のセル収容部110aに収容される電池セルの順序で容量低下量が大きくなっている。
【0035】
そこで、ステップS101では、電池ケース10の内部に水素を供給するために、可溶部30に貫通孔部30aを形成する。ここで、可溶部30は、熱可塑性樹脂によって構成されているため、熱を加えることにより熱溶融させることができる。可溶部30を熱溶融させる工具は、所定温度に加熱された円柱部材であってもよい。この加熱円柱部材を可溶部30の上端面に押し付けながら、下方に向けて押し込むことにより、可溶部30に対して上下方向に貫通する貫通孔部30aを形成することができる。加熱円柱部材は、非金属のセラミックスであってもよい。セラミックスを用いて加熱円柱部材を構成することにより、貫通孔部30aを形成する際に、加熱円柱部材の一部が欠損して電池ケース10の内部に落下した際に、短絡が起こるのを防止することができる。
【0036】
ここで、熱溶融した樹脂は、高い粘度を有するため可溶部30に留まり、電池ケース10の内部に滴下するのを抑制できる。これにより、電池ケース10の内部に熱可塑性樹脂が混入するのを抑制できる。
【0037】
貫通孔部30aが形成された後、加熱円柱部材は貫通孔部30aから直ちに引き抜かれる。これにより、可溶部30が必要以上に熱溶融するのを抑制できる。ここで、貫通孔部30aから加熱円柱部材を引き抜くタイミングは、可溶部30の高さ寸法(Y軸方向の寸法)を予め計測しておき、この寸法に相当する加熱円柱部材上の位置に目印を付けておき、この目印と可溶部30の上端部が水平方向(X軸方向)において重なる位置に達したときに、加熱円柱部材を貫通孔部30aから退避させる方法であってもよい。
【0038】
図2及び図4を参照して、ステップS102における水素供給工程では、ステップS101において形成された貫通孔部30aに水素供給管80を挿入して、水素ガスを導入する。水素ガスを導入するガス導入装置の一例を図6のブロック図を参照しながら、簡単に説明する。水素ガス導入装置50は、ガスタンク51、ガス供給路52、減圧弁53及び流量調節弁54を備える。ガスタンク51は、水素ガスを所定圧力で貯蔵する。ガス供給路52は、水素供給管80に接続されている。減圧弁53は、ガスタンク51から供給された水素ガスを減圧する。減圧弁53は、ガス供給路52をオリフィスによる絞りによって減圧する構成であってもよい。流量調節弁54は、ガスタンク51から供給された水素ガスの流量を調節する。
【0039】
図4及び図6を参照して、ガスタンク51から排出された水素ガスは、ガス供給路52及び水素供給管80を介して、電池ケース10の内部に供給される。ここで、水素吸蔵合金は、失った水素が多いほど、水素を吸蔵し易い性質を持っている。したがって、第4のセル収容部110dに収容される電池セルは、第1〜第3のセル収容部110a〜110c及び第5〜第6のセル収容部110e〜110fに収容される電池セルよりも多くの水素を吸蔵し、第3のセル収容部110cに収容される電池セルは、第1〜第2のセル収容部110a〜110b及び第5〜第6のセル収容部110e〜110fに収容される電池セルよりも多くの水素を吸蔵し、第5のセル収容部110eに収容される電池セルは、第1〜第2のセル収容部110a〜110b及び第6のセル収容部110fに収容される電池セルよりも多くの水素を吸蔵し、第2のセル収容部110bに収容される電池セルは、第1のセル収容部110a及び第6のセル収容部110fに収容される電池セルよりも多くの水素を吸蔵し、第6のセル収容部110fに収容される電池セルは、第1のセル収容部110aに収容される電池セルよりも多くの水素を吸蔵する。したがって、水素を導入する再生処理を行うことにより、各第1〜第6のセル収容部110a〜110fに収容される各電池セルの容量バラツキを抑制しながら、水素吸蔵合金に水素を吸蔵させることができる。
【0040】
さらに、電池ケース10の内部に供給された水素ガスは、上蓋12と隔壁111との間に形成された隙間、つまり、過充電などの際に発生したガスを逃がすためのガス排出経路を介して、電池ケース10の全体に拡散するため、再生処理を行う際に、電池ケース10の内部に独立した導入経路を設ける必要がない。したがって、再生処理時の手間を削減することができる。
【0041】
なお、減圧弁53は、少なくとも水素吸蔵合金が水素を吸蔵し得る圧力よりも低い圧力とならないように、水素ガスの供給圧を減圧する必要がある。水素の充填作業が完了すると、水素供給管80は貫通孔部30aから引き抜かれる。
【0042】
図2及び図5を参照して、ステップS103における封止工程では、可溶部30の上端面に熱可塑性樹脂からなる封止板(他の可溶部)90を熱溶着する。ここで、熱溶着は、可溶部30の上端面及び封止板90の下端面を熱溶融させ、封止板90を下方に押圧しながら行うことができる。封止板90を押圧することにより、可溶部30の高さが低くなる。可溶部30は、上蓋12から延出しているため、可溶部30の上端面が、上蓋12の上端面よりも低くなることはない。つまり、可溶部30の溶け代を十分に確保することにより、封止板90の溶着をより確実に行うことができる。なお、封止板90による熱溶着は、水素雰囲気下で行ってもよい。これにより、流入した水素ガスが電池ケース10の外部に再流出するのを抑制できる。
【0043】
熱溶融した可溶部30及び封止板90が自然冷却されると、これらの接合部が硬化し、貫通孔部30aを閉塞した状態で、封止板90を可溶部30に固定することができる。
【0044】
このように、本実施形態の再生処理によれば、可溶部30を熱溶融させるだけで水素ガスを供給することができるため、上蓋12に水素供給口を新たに形成する方法と比べて、上蓋12に加わる負荷を軽減することができる。これにより、上蓋12の強度低下を抑制することができる。
【0045】
(変形例1)
上述の実施形態では、電池ケース10の内部に六個の電池セルが配列された電池モジュールについて説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、他の構成であってもよい。当該他の構成は、電池ケースの内部に一つの発電要素を収容した電池セルであってもよい。すなわち、一つの電池セルのみを備えるニッケル水素電池において、水素吸蔵合金から放出され、電池ケースの外部に排出された水素ガスを補填するために、上記実施形態の再生方法を適用することができる。なお、電池モジュールを構成するセル数は、六個に限定されるものではなく、複数であれば他の個数であってもよい。
【0046】
(変形例2)
上述の実施形態では、電池ケース10を樹脂により構成したが、本発明はこれに限られるものではなく、他の構成であってもよい。当該他の構成は、金属で構成された電池ケースであってもよい。金属で構成された電池ケースであっても、ガスケットなどの部位から水素が流出するため、この流出した水素を補うために、上記実施形態の再生方法を適用することができる。
【0047】
(変形例3)
上述の実施形態では、ニッケル水素電池の再生処理を行う際に、電池ケース10の内部に水素ガスを導入したが、本発明はこれに限られるものではなく、アルカリ金属及び/又はアルカリ金属水素化物を導入する方法であってもよい。電池ケース10の内部に導入されたアルカリ金属及び/又はアルカリ金属水素化物は、電解液と反応して、水素を発生する。発生した水素は、負極の水素吸蔵合金に吸蔵され、低下した容量を回復することができる。なお、アルカリ金属及び/又はアルカリ金属水素化物を添加する方法は、電解質(アルカリ金属水酸化物)を補充する効果もある。
【0048】
(変形例4)
上述の実施形態では、水素供給口12aを上蓋12に形成したが、本発明はこれに限られるものではなく、ケース本体11に形成してもよい。ケース本体11に形成された水素供給口12aを介して導入された水素ガスは、ケース本体11の内部において拡散し、各セル収容部110a〜110fに収容された水素吸蔵合金に吸蔵される。
【0049】
(変形例5)
第1〜第6のセル収容部110a〜110fに対向する上蓋12の壁部にそれぞれ水素供給口12aを設ける構成であってもよい。各セル収容部に必要な量の水素ガスを簡単に供給することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 ニッケル水素電池 10 電池ケース 11 ケース本体 12 上蓋
12a 水素供給口 20 ガス放出弁 30 可溶部 30a 貫通孔部
80 水素供給管 90 封止板 110 セル収容部
110a 第1のセル収容部 110b 第2のセル収容部
110c 第3のセル収容部 110d 第4のセル収容部
110e 第5のセル収容部 110f 第6のセル収容部 111 隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水素吸蔵合金を含む負極を発電要素として備えるニッケル水素電池の再生方法であって、
前記発電要素を収容する電池ケースに形成された水素供給口を塞ぐ位置に配置された熱可塑性の可溶部を熱溶融することにより、前記水素供給口を前記電池ケースの内外において導通させる加熱ステップと、
前記加熱ステップにおいて導通した前記水素供給口を介して、水素を前記電池ケースの内部に供給する水素供給ステップと、
前記水素供給ステップによる水素供給後に、前記可溶部に熱可塑性の他の可溶部を熱溶着することにより前記水素供給口を閉塞する封止ステップと、
を有することを特徴とするニッケル水素電池の再生方法。
【請求項2】
前記電池ケースは、有底筒状のケース本体と、このケース本体の開口部を閉塞する上蓋とを備え、前記電池ケースの内部には、前記ケース本体の底面に立設される隔壁によって仕切られた複数の電池セル収容部が形成されており、前記複数の電池セル収容部にはそれぞれ電池セルが収容されており、前記水素供給口は、前記電池ケース内の空間を介して前記複数の電池セル収容部に連通していることを特徴とする請求項1に記載のニッケル水素電池の再生方法。
【請求項3】
前記隔壁と前記上蓋との間には、前記水素供給口から導入される水素が前記各電池セル収容部に向かうのを許容する隙間が形成されており、前記隙間は、前記発電要素において発生したガスを前記上蓋に形成されたガス放出弁から排出するための排出経路を兼ねることを特徴とする請求項2に記載のニッケル水素電池の再生方法。
【請求項4】
前記水素供給口は、前記上蓋に形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のニッケル水素電池の再生方法。
【請求項5】
前記可溶部は、前記上蓋から延出していることを特徴とする請求項2乃至4のうちいずれか一つに記載のニッケル水素電池の再生方法。
【請求項6】
前記封止ステップにおいて、前記可溶部と、前記他の可溶部との接触面を熱溶融させた状態で、前記他の可溶部を前記可溶部に向かって押圧することにより、熱融着することを特徴とする請求項5に記載のニッケル水素電池の再生方法。
【請求項7】
少なくとも水素吸蔵合金を含む負極を発電要素として備えるニッケル水素電池であって、
前記発電要素を収容する電池ケースと、
前記電池ケースに形成され、前記電池ケースの内部に水素を供給するための水素供給口と、
前記水素供給口を塞ぐ位置に配置される、熱可塑性を有する可溶部と、
を有することを特徴とするニッケル水素電池。
【請求項8】
前記電池ケースは、有底筒状のケース本体と、このケース本体の開口部を閉塞する上蓋とを備え、
前記電池ケースの内部には、前記ケース本体の底面に立設される隔壁によって仕切られた複数の電池セル収容部が形成されており、
前記複数の電池セル収容部にはそれぞれ電池セルが収容されており、
前記水素供給口は、前記電池ケース内の空間を介して前記複数の電池セル収容部に連通していることを特徴とする請求項7に記載のニッケル水素電池。
【請求項9】
前記隔壁と前記上蓋との間には、前記水素供給口から導入される水素が前記各電池セル収容部に向かうのを許容する隙間が形成されており、
前記隙間は、前記発電要素において発生したガスを前記上蓋に形成されたガス放出弁から排出するための排出経路を兼ねることを特徴とする請求項8に記載のニッケル水素電池。
【請求項10】
前記水素供給口は、前記上蓋に形成されていることを特徴とする請求項8又は9に記載のニッケル水素電池。
【請求項11】
前記可溶部は、前記上蓋から延出していることを特徴とする請求項8乃至10のうちいずれか一つに記載のニッケル水素電池。
【請求項12】
少なくとも水素吸蔵合金を含む負極と電解液とを発電要素として備えるニッケル水素電池の再生方法であって、
前記発電要素を収容する電池ケースに形成された供給口を塞ぐ位置に配置された熱可塑性の可溶部を熱溶融することにより、前記供給口を前記電池ケースの内外において導通させる加熱ステップと、
前記加熱ステップにおいて導通した前記供給口を介して、前記電解液に向かってアルカリ金属及び/又はアルカリ金属水素化物を供給する供給ステップと、
前記供給ステップによる供給後に、前記可溶部に熱可塑性の他の可溶部を熱融着することにより前記供給口を閉塞する封止ステップと、
を有することを特徴とするニッケル水素電池の再生方法。
【請求項13】
少なくとも水素吸蔵合金を含む負極と電解液とを発電要素として備えるニッケル水素電池であって、
前記発電要素を収容する電池ケースと、
前記電池ケースに形成され、前記電池ケースの内部に収容された前記電解液に向かってアルカリ金属及び/又はアルカリ金属水素化物を供給するための供給口と、
前記供給口を塞ぐ位置に配置される、熱可塑性を有する可溶部と、
を有することを特徴とするニッケル水素電池。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−20817(P2013−20817A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153258(P2011−153258)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】