説明

ニッパ及び当該ニッパを用いたゲートランナ切断装置

【課題】軟質プラスチック製成形品のゲートランナ部を出来る限り付け根部に近いところで切断することができるようにする。
【解決手段】2枚の刃体11、12が、O1点を支点にしてX状に組付けられたニッパ1と、ニッパ1を形成する刃体11側に設けられるものであってプラスチック製成形品本体部9への押圧動作をするプレッシャプレート5と、当該プレッシャプレート5の押圧操作、並びにプラスチック製成形品本体部9側に設けられたゲートランナ部99のニッパ1による切断操作を担うアクチュエータ2と、からなる。ニッパ1は、一方の端部側に片刃状の刃部111、121を有するとともに、X状に組付けられた2本の刃体11、12からなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製成形品におけるゲートランナ部を切断するための切断装置に関するものであり、特に、EPDMを初めとした比較的柔軟性に富んだプラスチック製成形品のゲートランナ部を、出来る限り成形品本体部側に近いところで切断することのできるようにしたニッパ型のゲートランナ切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のニッパ型のプラスチック製成形品用ゲートランナ切断装置としては、例えば、特開平10−193408号公報記載のもの等が挙げられる。このものは、ニッパの刃の部分をゲートランナのところに接触させるとともに、このような状態においてニッパの刃を形成しないレバー部のところをエアシリンダ等にて作動させて、上記ゲートランナ部を上記ニッパの刃にて切断するようにしているものである。
【特許文献1】特開平10−193408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来のものは、主に比較的硬度の高いプラスチック製成形品のゲートランナ部を切断するのに用いられるようになっているものである。これに対して、EPDM等のような柔軟性のある軟質プラスチック成形品に関するゲートランナ部の切断に当って、切断装置の刃の部分を成形品本体部側に限りなく近づけた状態で切断作業を行なおうとすると、成形品本体部側に押付けられた状態の刃の部分が成形品本体部側に深くくい込んだ状態で切断作業が行なわれ、成形品本体部側を傷つけてしまうと言う問題があった(図6の細実線図示)。このような問題点を解決するために、従来においては、上記ゲートランナ部の切断に当っては、先ず、成形品を金型から取出した状態においては、成形品本体部側から数mmの余裕を持った状態で自動切断を行ない、その後に、熟練作業者の手作業にて、上記残された部分のゲートランナ部の切り落とし作業を行なうと言うような、二度手間のゲートランナ部切断作業が採られていた。このような問題点を解決するために、ニッパの刃の部分が軟質プラスチック成形品の本体部側へ必要以上にくい込むことのないようにしたニッパ型の切断装置を提供しようとするのが、本発明の目的(課題)である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明においては次のような手段を講ずることとした。すなわち、請求項1記載の発明である第一の発明においては、プラスチック製成形品のゲートランナ部を切断するニッパに関して、片刃状の形態からなる2枚の刃体を有するものであって、これら2枚の刃体のうちの少なくともいずれか一方のものの、その刃を形成しない方の面側に、当該面と同一面を形成するように拡張形成された平面部からなり、かつ、プラスチック製成形品の本体部側に接触するように形成されたストッパ面を設けるようにした構成を採ることとした。
【0005】
次に、請求項2記載の発明である第二の発明においては、ゲートランナ部の切断装置に関して、片刃状の形態からなる2枚の刃体を有するニッパと、当該ニッパを形成する上記刃体のうちのいずれか一方側のところであって刃を形成しない面側に設けられ、かつ、プラスチック製成形品本体部側へ面接触するように形成されたプレッシャプレートと、当該プレッシャプレートの上記プラスチック製成形品本体部側への押圧操作、並びにこれに続いて行なわれるものであって上記ニッパによる上記プラスチック製成形品本体部側に設けられたゲートランナ部の切断操作を行なうアクチュエータと、からなるようにした構成を採ることとした。
【発明の効果】
【0006】
第一の発明によれば、軟質プラスチック材にて形成される成形品のゲートランナ部の切断作業が効率良く行なわれるようになる。また、この切断作業において、プラスチック製成形品本端部側を傷付けたりするようなことがなく、本体部側に限りなく近いところでゲートランナ部の切断作業を行なうことができるようになる。その結果、ゲートランナ部の切残し部等のない、見栄えに優れたプラスチック製成形品を効率良く製造することができるようになる。
【0007】
また、第二の発明のものにおいても、上記第一の発明の場合と同様、ゲートランナ部における切残し部等のない、見栄えに優れたプラスチック製成形品を形成させる(製造する)ことができるようになる。そして、このような優れた切断機能を発揮するゲートランナ切断装置が、高圧エア等にて作動するアクチュエータにて駆動されるようになっているので、軟質プラスチック成形品のゲートランナ部の切断作業を無人操作にて、かつ、自動的に行なわせることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を実施するための最良の形態について、図1ないし図6を基に説明する。本実施の形態にかかるものは、図1に示す如く、2枚の刃体11、12が、O1点を支点にして組付けられた状態のニッパ1と、当該ニッパ1を形成する上記刃体11側に設けられるものであってプラスチック製成形品本体部9側への押圧動作を行なうプレッシャプレート5と、当該プレッシャプレート5の押圧操作、並びにこれに続いて行なわれるものであって上記ニッパ1による上記プラスチック製成形品本体部9側に設けられたゲートランナ部99の切断操作を制御するように形成されたアクチュエータ2と、からなることを基本とするものである。
【0009】
このような構成からなるものにおいて、上記ニッパ1は、図2に示す如く、一方の端部側に片刃状の刃部111を有するとともに、この片刃状の刃部111を有しないもう一方の端部側にはレバー部19を有する一方の刃体11と、このような一方の刃体11とは対称形に設けられるものであって、一方の端部側であって上記刃部111と向き合うところには同じ片刃状の形態からなる刃部121を有するとともに、他方の端部側にはレバー部29を有するもう一方の刃体12と、からなることを基本とするものである。そして、これらがO1点を支点にして相対回転運動が可能なように、かつ、X字状に配置されるようになっているものである。
【0010】
このような構成からなるものにおいて、上記一方の刃体11に設けられた刃部111の背面側のところには平板状の形態からなるプレッシャプレート5が設けられるようになっているものである。そして、このようなプレッシャプレート5の裏面側が、上記ゲートランナ部99の切断に当っては、図1に示す如く、上記プラスチック製成形品の本体部9側に接触するようになっている。また、このようなプレッシャプレート5を有する側に設けられる一方の刃体11のところに設けられる刃部111は、上記プレッシャプレート5の表面側を滑るように移動して、上記プラスチック製成形品本体部9側に設けられたゲートランナ部99の付け根部91のところに接触するようになっているものである。また、もう一方の刃部121も上記一方の刃部111と対向した状態で上記ゲートランナ部99の付け根部91のところに接触するように移動するようになっている。
【0011】
次に、このような構成からなるニッパ1の作動及び駆動を担うアクチュエータ2は、図1及び図2に示す如く、ニッパ1全体及びプレッシャプレート5を一体的に保持した状態でプラスチック製成形品本体部9側へ接触させるように作動する押圧操作と、当該押圧操作に引続いて行なわれるものであって、上記ニッパ1を形成する各刃体11、12を駆動することによって行なわれる切断操作を担うようになっているものである。そして、これら各種操作を行なわせる上記作動及び駆動等は高圧エア等にて行なわれるようになっているものである。すなわち、上記アクチュエータ2としては、本実施の形態においては、エアアクチュエータが採用されるようになっている。そして、このようなアクチュエータ(エアアクチュエータ)2の各種操作及び作動等は、制御手段3からの指令に基づいて制御されるようになっているものである。なお、この制御手段3は、マイクロプロセッサユニット(MPU)を主に形成されるコンピュータ装置からなるものであり、当該コンピュータ装置に設けられたROM手段に予め入力されたデータに基づき、上記各種操作及び制御等がなされるようになっているものである。
【0012】
次に、このような構成からなる本実施の形態のものに関する、その作動態様について説明する。まず、図1に示す如く、制御手段3からの指令(信号)に基づき、ニッパ1及びプレッシャプレート5を保持した状態で上記プレッシャプレート5の裏面側をプラスチック製成形品の本体部9側へ接触させるようにする。すなわち、アクチュエータ2に上記プレッシャプレート5の押圧操作を行なわせる。具体的には、図1及び図5に示す如く、アクチュエータ2の先端部に取付けられたプレッシャプレート5の裏面側をプラスチック製成形品本体部9のところに所定の押圧力をもって接触させる。そして、このとき、上記プレッシャプレート5の表面側に設けられた各刃部111、121が上記プラスチック製成形品本体部9のところに設けられたゲートランナ部99の付け根部91付近に来るようにする(図5参照)。
【0013】
次に、このような状態において、制御手段3からの指令に基づき、上記プレッシャプレート5の表面側に存在する刃部111を有する刃体11並びに上記刃部111と対向するように存在する刃部121を有する刃体12を作動させる。具体的には、図1に示す如く、プレッシャプレート5をプラスチック製成形品本体部9に設けられたゲートランナ部99の付け根部91のところに接触させた状態で、かつ、プレッシャプレート5及びニッパ1を上記プラスチック製成形品本体部9側へ押付けた状態で保持するようにする。次に、このような状態において、図2に示す如く、上記プレッシャプレート5の表面側に設けられた刃部111をプレッシャプレート5の表面側を滑らせるように作動させる。これと同時に、刃部111と対向するように設けられた刃部121及び当該刃部121を有する刃体12を作動させて、両刃部111、121が接合し合うように作動させる。これによって、ゲートランナ部99は、その付け根部91のところにおいて、例えば図4に示す如く、上記両刃部111、121にて切断されることとなる。
【0014】
また、本実施の形態のものにおいては、上記のような構成を採ることにより、上記ゲートランナ部99の切断作業において、プラスチック製成形品本体部9側を傷付けたりするようなことがない。具体的には、図5に示す如く、各刃部111、121がゲートランナ部99の付け根部91のところに押し当てられた状態において、一方の刃部111側に設けられるものであって面積が広く形成されたプレッシャプレート5がプラスチック製成形品の本体部9のところに接触することとなる。この状態においては、上記プラスチック製成形品が、例えばEPDM等の軟質プラスチック材からなるものであったとしても、上記刃部111等はプラスチック製成形品本体部9側へはめり込まない(くい込まない)ようになる。すなわち、従来のものにおいて懸念されていた両刃部111’、121’のプラスチック製成形品本体部9側へのくい込み現象が抑止されることとなる(図6の細実線図示参照)。
【0015】
このように、本実施の形態のものにおいては、図1に示す如く、まず、プレッシャプレート5をアクチュエータ2を介して自動的に、かつ、機械的にプラスチック製成形品の本体部9のところに押当てるようにしたので、ニッパ1の各刃部111、121が本体部9側へ必要以上にくい込んでしまうようなことがない。従って、ゲートランナ部99の付け根部91のところまで各刃部111、121を積極的に押し当てることができるようになり、ゲートランナ部99に切残し部を生じさせない状態でゲートランナ部99の切断作業を行なうことができるようになり、見栄えに優れた軟質プラスチック製成形品のゲートランナ部切断作業を自動的に行なわせることができるようになる(図5参照)。これによって、プラスチック製成形品の生産性の向上を図ることができるようになる。
【0016】
次に、このような構成からなるニッパに関して、それを手動装置として使用する場合のものについて説明する。このものは、例えば図3に示す如く、一方の端部側に片刃状の刃部111を有するとともに、この片刃状の刃部111を形成しない方の面である反対側の面側にはストッパ面15を有し、更に、このような刃部111及びストッパ面15を有しないもう一方の端部側にはレバー部19を有する一方の刃体11と、このような一方の刃体11とは対称形に設けられるものであって、一方の端部側であって上記刃部111と向き合うところには同じ片刃状の形態からなる刃部121を有するとともに、他方の端部側にはレバー部29を有するもう一方の刃体12と、からなることを基本とするものである。そして、これらがO1点を支点にして相対回転運動が可能なように、かつ、X字状に配置されるようになっているものである。
【0017】
このような構成からなるものにおいて、上記一方の刃体11のところに形成されるストッパ面15は、当該刃体11を形成する刃部111のところであって刃を形成しない方の面側に形成される面と同一の面を形成するように拡張形成された平面部からなるものである。そして、このような面(ストッパ面)15がゲートランナ部99の切断に当っては、プラスチック製成形品の本体部9側に接触するようになっているものである。また、このようなストッパ面15を有する一方の刃体11は、上記ゲートランナ部99の切断作業に当っては、図6に示す如く、上記ストッパ面15がプラスチック製成形品本体部9側であって上記ゲートランナ部99の付け根部91の近傍部のところに接触するように押付けられるとともに、刃部111は上記付け根部91のところに接触した状態で移動しないように固定されるようになっているものである。すなわち、このようなストッパ面15及び刃部111を有する側の刃体11は固定側刃体11を形成するようになっているものである。
【0018】
次に、このような構成からなる手動ニッパの、その作動態様について、図3及び図4を主に説明する。まず、図3に示すニッパのレバー部19、29を作業者が手でつかんだ状態で、プラスチック製成形品の本体部9側へ、上記ニッパ1を形成する各刃体11、12が接触するように持って行く。具体的には、図3及び図4に示す如く、ニッパ1の固定側刃体11のところに設けられたストッパ面15が、プラスチック製成形品本体部9のところに所定の押圧力をもって接触するように上記ニッパ1を保持する。そして、このとき、上記ストッパ面15を有する側の刃部111、すなわち、固定側刃体11のところに形成された刃部111は、上記プラスチック製成形品本体部9のところに設けられたゲートランナ部99の付け根部91付近に来るようにする。
【0019】
次に、このような状態において、作動側刃体12を作動させる。具体的には、図4において、固定側刃体11に設けられた刃部111と作動側刃体12に設けられた刃部121とでゲートランナ部99を挟んだ状態において、上記作動側刃体12を形成するレバー部29を、図4に示す如く、両刃部111、121が接合し合うように作動させる。これによって、ゲートランナ部99は、その付け根部91のところにおいて、上記両刃部111、121にて切断されることとなる。
【0020】
このとき、本実施の形態のものにおいては、上記ゲートランナ部99の切断作業において、プラスチック製成形品本体部9側を傷付けたりするようなことがない。具体的には、図6の太実線図示の如く、各刃部111、121がゲートランナ部99の付け根部91のところに押し当てられた状態において、固定側刃体11のところに設けられるものであって比較的面積の広く形成されたストッパ面15がプラスチック製成形品の本体部9のところに接触することとなる。この状態においては、上記プラスチック製成形品が、例えばEPDM等の軟質プラスチック材からなるものであったとしても、上記刃部111等はプラスチック製成形品本体部9側へはめり込まない(くい込まない)ようになる。すなわち、従来のものにおいて懸念されていた両刃部111’、121’のプラスチック製成形品本体部9側へのくい込み現象が抑止されることとなる(図6の細実線図示参照)。
【0021】
このように、本実施の形態のものにおいては、ニッパ1の刃部111、121を機械的にプラスチック製成形品の本体部9のところに押当てるようにしても、ニッパ1の各刃部111、121が本体部9側へくい込んでしまうことがないので、ゲートランナ部99の付け根部91のところまで各刃部111、121を積極的に押し当てることができるようになる。その結果、ゲートランナ部99に切残し部を生じさせない状態でゲートランナ部99の切断作業を行なうことができるようになり、見栄えに優れた軟質プラスチック製成形品のゲートランナ部切断作業を効率良く行なうことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の主要部をなすニッパの全体構成を示す概観図である。
【図3】本発明の一実施形態である手動ニッパの全体構成を示す図である。
【図4】手動ニッパの作動状態を示す説明図である。
【図5】本発明における切断装置にてゲートランナ部を切断する状態を示す説明図である。
【図6】本発明における手動ニッパにてゲートランナ部を切断する状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ニッパ
11 刃体(固定側刃体)
111 刃部
111’ 刃部
12 刃体(作動側刃体)
121 刃部
121’ 刃部
15 ストッパ面
19 レバー部
2 アクチュエータ
29 レバー部
3 制御手段
5 プレッシャプレート
9 プラスチック製成形品本体部
91 付け根部
99 ゲートランナ部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
片刃状の形態からなる2枚の刃体を有するものであって、これら2枚の刃体のうちの少なくともいずれか一方のものの、その刃を形成しない方の面側に、当該面と同一面を形成するように拡張形成された平面部からなり、かつ、プラスチック製成形品の本体部側に接触するように形成されたストッパ面を設けるようにした構成からなることを特徴とするニッパ。
【請求項2】
片刃状の形態からなる2枚の刃体を有するニッパと、当該ニッパを形成する上記刃体のうちのいずれか一方側のところであって刃を形成しない面側に設けられ、かつ、プラスチック製成形品本体部側へ面接触するように形成されたプレッシャプレートと、当該プレッシャプレートの上記プラスチック製成形品本体部側への押圧操作、並びにこれに続いて行なわれるものであって上記ニッパによる上記プラスチック製成形品本体部側に設けられたゲートランナ部の切断操作を行なうアクチュエータと、からなることを特徴とするゲートランナ切断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−212305(P2006−212305A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−29967(P2005−29967)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(505047740)三喜工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】