説明

ニトロ置換ジアリールアミンとジアリールアミンとの混合物を含む相乗効果を示す潤滑油組成物

【課題】優れた抗酸化性を示す潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】潤滑粘度の油、および協力して非常に優れた抗酸化性を示すニトロ置換ジフェニルアミンとジアリールアミンとの混合物を含む潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はその一部では、潤滑粘度の油、および共同して非常に優れた酸化防止をもたらすニトロ置換ジアリールアミンとジアリールアミンとの特定の混合物を含有する潤滑油組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジアリールアミン酸化防止剤は公知であり、機械工学に使用される多数の製品の熱・酸化安定性および/または光誘起分解を改善するために広く使用されていて、例えば、二、三の例を挙げると潤滑剤、油圧作動液、金属加工油剤、燃料または高分子材料の性能特性を改善することができる。
【0003】
普通、これらのジアリールアミン類はアルキル化されている。例えば、ジフェニルアミンをアルキル化する改良方法が開示されている特許文献1、および安定剤としてアルキル化ジフェニルアミン類が開示されている特許文献2を参照されたい。アルカリール置換ジフェニルアミン類及びフェニルナフチルアミン類(例、α−メチルスチリル−ジフェニルアミン)は、例えば特許文献3、4及び5に開示されている。一つ以上のフェニル環に結合した電子求引基は、塩基性ジフェニルアミンの防止能力を減退させるか、もしくは完全に破壊することが知られている。非特許文献1では、130℃のパラフィン系石油(シェル・オンディナ33、高沸点シクロアルカンとイソアルカンの混合物)で、ジフェニルアミン(防止係数41)へのニトロ基の付加により触媒活性が完全に破壊されて、得られた防止係数が4−ニトロ−ジフェニルアミンおよびビス−(4−ニトロ)−フェニル−アミンで0になることが実証された。その著者は、電子スピン共鳴分光法による研究で明らかになったように、ジアリールニトロキシルの不対電子密度が強く非局在化し、そしてその結果、ラジカル反応がニトロキシル官能基だけでなく、望ましくないことには芳香環でも起こると説明した。そして、該著者は、自動酸化条件下では中間体ニトロキシルが芳香環のペルオキシルラジカルの攻撃を受けて、ついには防止剤が破壊されることになると結論づけた。
【0004】
さらに、アルキル置換1,2−ジヒドロキノリンおよびその重合体が酸化防止剤として用いられている(特許文献6)。一方、特許文献7には、アルキル置換1,2−ジヒドロキノリンとジアリールアミンとの反応生成物が開示されている。テトラヒドロキノン類および置換テトラヒドロキノン類も酸化防止剤として開示されている(例えば特許文献8、9、10及び11を参照のこと)。一方、特許文献12には、ある種のN置換テトラヒドロキノリン類が開示されている。同様に、デカヒドロキノリン類および置換デカヒドロキノリン類も酸化防止剤として用いられている(特許文献13及び14を参照のこと)。
【0005】
酸化防止剤の相乗的組合せおよび拮抗的組合せも開示されている。酸化防止剤の有効な相乗的な混合物は一般に、異なる二つのメカニズムで酸化を妨害する化合物である。例えば、一方の化合物がペルオキシドの分解剤として機能し、もう一方の化合物がラジカルの防止剤として機能するような化合物である。よく知られた異種の相乗作用は、硫黄及びリン含有化合物(例えば、スルフィド、ジチオカルバメート、亜リン酸エステルおよびジチオリン酸エステル)と、アミン系又はフェノール系酸化防止剤間について開示されている。特許文献15には、潤滑油の酸化を防ぐのに使用する目的で、ワックススルフィドまたはジオクタデシルジスルフィドなどの硫黄含有化合物と、フェニルアルファ−ナフチルアミンなどの少なくとも二個の芳香環を持つ芳香族アミン化合物との相乗的な混合物が開示されている。例えば特許文献16には、硫化オレイン酸、C18−C22アルケニルコハク酸、20乃至60%の塩素を含む塩素化パラフィンワックス、ジフェニルアミンおよびN,N−サリチラール−1,2−プロピレンジアミンの各々を、0.01乃至5%含有する極圧潤滑油組成物が開示されている。特許文献17には、安定剤がジアリールアミンまたはアルキル化フェノールであってよい、機能液として使用される安定化アルキル置換ジアリールスルフィドが開示されている。特許文献18には、第一級アミンと、芳香族又はアルキルスルフィド及びポリスルフィド、硫化オレフィン、硫化カルボン酸エステルおよび硫化エステル・オレフィンから選ばれる酸化防止剤との酸化防止剤混合物を有する潤滑剤が開示されている。
【0006】
【特許文献1】米国特許第2943112号明細書
【特許文献2】米国特許第3655559号明細書
【特許文献3】米国特許第3533992号明細書
【特許文献4】米国特許第3452056号明細書
【特許文献5】米国特許第3660290号明細書
【特許文献6】米国特許第3910918号明細書
【特許文献7】米国特許第5310491号明細書
【特許文献8】米国特許第2794020号明細書
【特許文献9】米国特許第3362929号明細書
【特許文献10】米国特許第4692258号明細書
【特許文献11】米国特許第4965006号明細書
【特許文献12】米国特許第4848741号明細書
【特許文献13】米国特許第2998468号明細書
【特許文献14】米国特許第4069195号明細書
【特許文献15】米国特許第2718501号明細書
【特許文献16】米国特許第2958663号明細書
【特許文献17】米国特許第3345292号明細書
【特許文献18】米国特許第4089792号明細書
【非特許文献1】ベルガー(Berger)、外著、「炭化水素自動酸化の防止(Inhibition of Hydrocarbon Autoxidation)」、ディヴェロープメンツ・イン・ポリマー・スタビリゼイション−6(Developments in Polymer Stabilization-6)、エルスヴィア・アプライド・サイエンス・パブリッシャーズ(Elsevier Applied Science Publishers)、1983年、p.1−27
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はその一部では、改善された酸化安定性を示す潤滑油組成物に関する。
本発明の組成物は、自動車用潤滑剤およびトラッククランクケース用潤滑剤、並びに変速機用潤滑剤、ギヤ用潤滑剤、油圧作動液、圧縮機油、ディーゼル及び舶用潤滑剤など様々な用途を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はその一部では、潤滑油、および下記の成分を含む油溶性の酸化防止剤の相乗混合物を含有する組成物である:
a)0.1乃至10質量%の下記I式に従う第一の酸化防止剤:
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1は、炭素原子数3〜24のアルキル、−NHR、−NRR(ただし、Rは独立に選ばれた炭素原子数1〜18のアルキルである)からなる群より選ばれ、R2は、水素、または炭素原子数1〜20のアルキルである)
および
b)0.1乃至5質量%の下記式から選ばれる第二の酸化防止剤:
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、R3およびR4は各々独立に、水素、または炭素原子数1〜20のアルキルであり、nは、1乃至3の整数であり、R5は、アルキル、アルコキシ、アラルキルまたはアルカリールから選ばれた炭素原子数3〜24の分枝鎖及び直鎖炭化水素基、もしくは−NHR6、−NR67(ただし、R6およびR7は独立に選ばれた炭素原子数1〜18のアルキルであるが、R4がR5に隣接して位置する場合には、R6はR4と一緒に五又は六員複素環を形成することができる)からなる群より選ばれる)。
【0013】
a)成分とb)成分との組合せによる劇的な改善は、a)成分とb)成分との比が約1.25:1乃至約5:1、好ましくは約1.5:1又はそれ以上で実証されている。a)及びb)成分の混合物が与える組成物の酸化安定性の劇的な改善のためには、全組成物中に存在するこれら成分の混合物は5質量%未満とする。より好ましくは、a)及びb)成分の混合物は組成物の全質量に基づき0.5乃至2.0質量%である。
【0014】
I式のニトロ置換ジフェニルアミンおよびII式の置換ジアリールアミンにおける置換基は、一部では性能を改善するために、また一部では化合物が潤滑油に必要な濃度で溶解できるように、化合物の油溶性を改善するために付与されている。油溶性のためにアルキル基およびアミノ基が付加されていて、R1は、好ましくは炭素原子数3〜24、より好ましくは炭素数4〜18の直鎖又は分枝鎖のアルキル基である。別の態様ではR1は、−NHRまたは−NRR(ただし、Rは独立に選ばれる炭素原子数3〜12のアルキル基である)から選ばれる。この態様ではジアルキルアミノ基が良い結果を示している。R1の置換基によっては、R2は水素であってもよく、一般にR2には油溶性が要求されず、水素である。
【0015】
II式の化合物において、R3はその存在毎に独立に水素または炭素原子数1〜20のアルキルから選ばれる。従って、R3を持つと定義されたベンゼン基は未置換であっても、モノアルキル化、ジアルキル化またはトリアルキル化されていてもよく、そしてアルキル基は同じであっても異なっていてもよい。未置換の態様ではR3は全て水素である。R3がアルキルである場合には、架橋環窒素原子に対してオルト又はパラ位であることが好ましく、より好ましくはパラ位である。ある態様では、R5は、炭素原子数3〜24、好ましくは炭素原子数4〜18のアルキル、または−NHR6、−NR67(ただし、R6およびR7は独立に選ばれる炭素原子数1〜18、好ましくは炭素原子数6〜12のアルキルである)から選ばれる。また別の態様では、R5は、−NHR6、−NR67(ただし、R6およびR7は独立に選ばれる炭素原子数1〜18のアルキルであり、あるいはR4がR5に隣接して位置する場合には、R6はR4と共に五又は六員複素環を形成することができる)から選ばれる。
【0016】
上に規定した組成物は他の添加剤も含有することができる。従って、本発明の別の態様は更に、c)成分である油溶性モリブデン化合物を含んでいる。特に好ましい油溶性モリブデン化合物は、(i)酸性モリブデン化合物と、コハク酸イミド、カルボン酸アミド、炭化水素モノアミン、リンアミド(ホスホルアミド)、チオリンアミド(チオホスホルアミド)、マンニッヒ塩基、分散型粘度指数向上剤またはそれらの混合物からなる分散剤群から選ばれた塩基性窒素化合物とを、極性の促進剤の存在下で反応させてオキシモリブデン錯体にすることにより製造された、未硫化又は硫化のオキシモリブデン含有組成物である。より好ましくは、塩基性窒素化合物はコハク酸イミドである。上に規定した組成物は他の酸化防止剤成分、好ましくは異なるメカニズムで作用するものを含有していてもよい。特に好ましいのはペルオキシド分解酸化防止剤である。好適な補助酸化防止剤としては一般に、ヒンダードフェノール、ヒンダードビスフェノール、硫化フェノール、硫化オレフィン、アルキルスルフィド及びポリスルフィド、ジアルキルジチオカルバメートおよびフェノチアジンを挙げることができる。特に好ましいのはヒンダードフェノール系酸化防止剤である。
【0017】
上記の組成物は更に、ジチオリン酸金属塩、ホスフェート、アミンリン酸エステルおよびアミンホスフィネート、硫黄含有リンエステル、リンアミドおよびホスホンアミドからなる群より選ばれた油溶性のリン含有耐摩耗性化合物を含有することができる。好ましい該リンエステルは、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル、酸化ホスフィン、亜リン酸エステル、亜ホスホン酸エステル、亜ホスフィン酸エステルおよびホスフィンからなる群より選ばれる。特に好ましい油溶性のリン含有耐摩耗性化合物は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛などのジチオリン酸金属塩である。
【0018】
上記の組成物は、油溶性のペルオキシド分解剤を含有することができる。
【0019】
別の態様は、主要量の潤滑油組成物、および第二級ジアリールアミンとニトロ置換第二級ジアリールアミンの混合物から選ばれる油溶性の酸化防止剤の組合せを含有してなる、潤滑油組成物に使用できる酸化防止剤組成物に関する。
【0020】
別の態様は、潤滑油および第二級ジアリールアミン酸化防止剤を含有する潤滑油組成物において酸化の開始を遅らせる方法であって、該潤滑油組成物に有効量の下記I式のニトロ含有化合物を添加し、そしてそののち潤滑油組成物を酸化条件にさらすことを含む方法に関する。これら酸化条件は、自動車用潤滑剤およびトラッククランクケース用潤滑剤、並びに変速機用潤滑剤、ギヤ用潤滑剤、油圧作動液、圧縮機油、ディーゼル及び舶用潤滑剤など内燃機関の潤滑剤として、上記組成物を用いることで実現される。
【0021】
【化3】

【0022】
(式中、R1は、炭素原子数3〜24のアルキル、−NHR、−NRR(ただし、Rは独立に選ばれた炭素原子数1〜18のアルキルである)からなる群より選ばれ、R2は、水素、または炭素原子数1〜20のアルキルである)。
【発明の効果】
【0023】
本発明はその一部では、炭化水素に相乗的な酸化防止効果を与える化合物の混合物に関する。第一のa)成分は、酸化安定性に相当な効果を及ぼさないため、単独では安定剤として特に有用ではないニトロ置換ジアリールアミン化合物であるが、b)成分の第二級アリールアミンを添加すると、この組合せは酸化安定性を改善する。相乗作用は、様々な種類の酸化防止剤の組合せで示唆されていて、安定剤の異なるメカニズムによるために異種相乗作用とも呼ばれ、例えばラジカル掃去剤とペルオキシド分解剤の組合せがある。さらに、同じ部類であっても異なる反応メカニズム/速度で作用する化合物が相乗的結果にもたらすことも示唆され、例えばヒンダードフェノール系誘導体とアルキル化ジフェニルアミンとの組合せが研究されている。これまで、a)ニトロ置換ジアリールアミン化合物とb)第二級アリールアミンの混合物では、その相乗作用が明らかにされていない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
ラジカルが媒介する酸化を抑制することは、有機基質における最も重要な反応のうちの一つであり、ゴムや高分子材料、潤滑油では普通に用いられている、すなわち、これらの化学製品は自動酸化工程によって酸化損傷が進むからである。炭化水素の酸化は、開始、生長および停止からなる三段工程である。酸化分解およびその反応メカニズムは、特定の炭化水素、温度、操作条件、金属などの触媒等に依存していて、その詳細はモーティア、R.M.(Mortier R.M.)、外著、「潤滑剤開始の化学と技術(Chemistry and Technology of Lubricants Initiation)」、VCHパブリッシャーズ(VCH Publishers, Inc.)、1992年の第4章に見ることができ、その内容も全て参照内容として本明細書の記載とする。上記の開始は、炭化水素分子での酸素または窒素酸化物(NOx)の反応を含む。一般に、炭化水素プロトンの引抜きによって「開始」が始まる。この結果、過酸化水素(HOOH)およびアルキルラジカル(R・)やペルオキシラジカル(ROO・)のようなラジカルの生成が起こる。生長段階では、ヒドロペルオキシドがそれ自体で、もしくは金属イオンなど触媒の存在下で分解して、アルコキシラジカル(RO・)やペルオキシラジカルになる。これらのラジカルは炭化水素と反応することができて、様々な追加ラジカル、およびアルコールやアルデヒド、ケトン、カルボン酸などの反応性酸素含有化合物になり、それらは再度更に重合したり、あるいは連鎖生長反応を続けることができる。ラジカルの自己停止あるいは酸化防止剤との反応の結果として停止が起こる。
【0025】
約120℃までの温度での炭化水素の非触媒酸化は主として、アルキル−ヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、アルコール、ケトン、並びにジヒドロペルオキシドの開裂の結果生じる生成物、例えばジケトン、ケト−アルデヒドおよびヒドロキシケトン等の生成を招く。更に高い温度(120℃より上)では、反応速度が増大してヒドロペルオキシドの開裂がより重要な役割を果たす。さらに、高温では一次酸化相で生成した二官能性酸化生成物の重縮合の結果として、バルク媒体の粘度が増す。これら高分子量中間体の更なる重縮合及び重合反応の結果、もはや炭化水素に溶解しないでワニス状堆積物やスラッジを形成する生成物が生じる。
【0026】
自動酸化はラジカル連鎖反応であるので、開始及び/又は生長段階で抑制することができる。ジアルキルジフェニルアミンやN−フェニル−α−ナフチルアミンなどのジアリールアミンによる一般的な酸化防止は、ラジカル掃去も含んでいる。アミンのNH基から水素がペルオキシドラジカルに移動した結果として、ジアリールアミノラジカルの生成が起こり、これが共鳴安定化してそれにより新しい鎖が生成するのを防ぐ。二次的なペルオキシラジカルまたはヒドロペルオキシドはジアリールアミノラジカルと反応することができて、ニトロキシラジカルが生成し、これも非常に有力な防止剤となる。多くの機能液について多大な要求があったが、代わって新規な防止剤の開発にその重点が移っている。
【0027】
本発明はその一部では、炭化水素に相乗的な酸化防止効果を与える化合物の混合物に関する。第一のa)成分は、酸化安定性に相当な効果を及ぼさないから、単独では安定剤として特に有用ではないニトロ置換ジアリールアミン化合物であるが、b)成分の第二級アリールアミンを添加すると、この組合せは酸化安定性が改善する。相乗作用は、様々な種類の酸化防止剤の組合せで示唆されていて、安定剤の異なるメカニズムによるために異種相乗作用とも呼ばれ、例えばラジカル掃去剤とペルオキシド分解剤の組合せがある。さらに、同じ部類であっても異なる反応メカニズム/速度で作用する化合物が相乗的結果に達することも示唆され、例えばヒンダードフェノール系誘導体とアルキル化ジフェニルアミンの組合せが研究されている。これまで、a)ニトロ置換ジアリールアミン化合物とb)第二級アリールアミンの混合物では、相乗作用が知られていない。
【0028】
ニトロ芳香族が、ポリプロピレンやポリエチレン中でアルキル及びペルオキシラジカルと反応して、三置換ヒドロキシルアミンになることは知られていて、シロヴ、Y.B.(Shilov,Y.B.)、デニソフ、E.T.(Denisov,E.T.)著、キネティックス・アンド・カタリシス(Kinetics and Catalysis)(2001年)、第42(2)号、p.238−242;b)ノリス、W.P.(Norris,W.P.)、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J. Amer. Chem. Soc.)(1959年)、第81(16)号、p.4239−4243を参照されたい。だが、ニトロジフェニルアミンは、潤滑油に使用しても僅かな酸化抑制しか与えないか、もしくは全く与えない。
【0029】
驚くべきことには、後述の実施例で説明するように、油溶性のニトロ置換ジフェニルアミンを置換第二級ジフェニルアミンと組み合わせると相乗作用が生じる。従って、本発明は一部では、アルキル又はアルキルアミノ官能基を含むニトロジフェニルアミンを、アルキル又はアルキルアミノ置換ジフェニルアミンと共に使用すると、長期間にわたって非常に優れた酸化抑制をもたらすという発見に関する。如何なる理論にもとらわれないが、このことは部分的には、ニトロジフェニルアミンが潤滑油中のアルキル又はペルオキシラジカルの何れかと反応して、ラジカルがジフェニルアミンのN−Hと反応するよりも先にニトロ基と反応した場合にジフェニルアミン三置換ヒドロキシルアミンになることに基づくと言えよう。そして高温では、N−O結合の開裂が進んでアミノジフェニルアミンになると推測できる。従って、高温で電子求引基は電子供与基に転換されると考えられる。だが、この有効性の欠如は、ニトロジフェニルアミンがアミノジフェニルアミンに転換する速度と、必要とされる高温によるものであると考えられる。化学転換が起こる前の初相中に既に、油の急速な酸化が起こる。ニトロジフェニルアミンに追加の官能基を付加してその初期反応性をラジカルの方向に向かせ、そしてN−O結合開裂が起こる速度に影響を及ぼさせることによって、この問題を克服することができるというのが我々の考えであった。この種の置換ニトロジフェニルアミンを、ニトロ基を持たず、適当な電子供与基で置換されたジフェニルアミンと組み合わせて使用することが、所望の化学転換が起こる前の初期酸化保護をもたらす。そしてこの組合せは長期間の酸化抑制を導くことになる。
【0030】
[ニトロ置換ジアリールアミン化合物−a)成分]
a)成分は、単独では酸化防止剤としても、オゾン劣化防止剤としてもあるいは熱安定剤としても充分な用途を持たない、油溶性のニトロ置換ジアリールアミン化合物である。油溶性とは、本明細書で使用するとき、必ずしも化合物または添加剤が油にあらゆる比率で溶ける、溶解できる、混和できる、もしくはけん濁できることを示すものではない。だが、これらの用語は、例えば油が用いられる環境でそれらの意図した効果を及ぼせるほど充分な程度には、油に溶解または安定して分散できることを意味する。また、所望により他の添加剤の追加混合によっても、特定の添加剤の高レベルの混合が可能になりうる。
【0031】
開示するのは、特に好適な下記I式に従う共鳴安定化した防止剤化合物である。
【0032】
【化4】

【0033】
式中、R1は、炭素原子数3〜24のアルキル、−NHR、−NRR(ただし、Rは独立に選ばれた炭素原子数1〜18のアルキルである)からなる群より選ばれ、R2は、水素、または炭素原子数1〜20のアルキルである。環の置換基によって共鳴安定化の向上を達成することができ、よって特に好ましい基は電子供与基であり、架橋窒素原子に対してオルト及びパラ位に位置する場合により一層達成され、それによりこのアミノラジカルが安定化する。電子供与体又は電子供与性置換基とは、本明細書で使用するとき、ベンゼン核に結合したときに電子を供給したり、ベンゼン核の電子密度を高める傾向がある置換基を意味する。また、置換基は得られる化合物の油溶性も向上させる、よって、アルキル基やアルキルアミノ及びジアルキルアミノ基を付与して油溶性を向上させたり、性能を向上させることができる。アルキル基としては本明細書で使用するとき、直鎖、分枝鎖およびそれらの混合物が挙げられる。ある態様では、R1は炭素原子数4〜18のアルキルである。普通、アルキル基はC3又はC4オレフィンから誘導することができ、ここで言うオレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、2−ブテンおよびイソブチレンが挙げられ、その中でも生成物に良好な基油への溶解度を与える点で、プロピレンおよびイソブチレンが好ましい。具体的には、イソブチレン二量体から誘導した分枝オクチル基、プロピレン三量体から誘導した分枝ノニル基、イソブチレン三量体から誘導した分枝ドデシル基、プロピレン四量体から誘導した分枝ドデシル基、またはプロピレン五量体から誘導した分枝ペンタデシル基が特に好ましい。ニトロ置換ジアリールアミン化合物の魅力的な合成方法は、例えば米国特許第5608111号、第5739403号及び第5117063号の各明細書に開示されているように、任意に置換されたアニリンと任意に置換されたニトロベンゼンとを塩基の存在下で反応させることである。モノアルキルアミンおよびジアルキルアミンは強い電子供与基であり、油溶性向上の点では炭素原子数3〜12のアルキル基が好ましい。
【0034】
ニトロ−ジフェニルアミンは、4−アミノジフェニルアミンの製造に用いられる普通に合成される前駆体であり、そして4−アミノジフェニルアミン自体も、オゾン劣化防止剤や酸化防止剤として、単量体や重合体の安定剤として、また一般にゴム工業や高分子工業の種々の特殊化学製品において、有用性があるアルキル化誘導体の製造の重要な中間体である。
出発物質によって、4−アミノジフェニルアミンの今日の製造法としては次のものが挙げられる:(1)アニリン法:原料としてp−ニトロ−クロロベンゼンとアニリンとを触媒の存在下で反応させて4−ニトロジフェニルアミンを生成させ、次いで4−ニトロジフェニルアミンを硫化ナトリウムで還元して4−アミノジフェニルアミンにする;(2)ホルムアニリド法:出発物質としてギ酸とアニリンとを用いてホルムアニリドを合成し、そしてそれを炭酸カリウムなどの酸結合剤の存在下でp−ニトロ−クロロベンゼンと反応させて4−ニトロジフェニルアミンを生成させ、次いで4−ニトロジフェニルアミンを硫化ナトリウムで還元して4−アミノジフェニルアミンにする;(3)ジフェニルアミン法:原料としてジフェニルアミンを有機溶媒中で亜硝酸塩でニトロ化してN−ニトロジフェニルアミンを生成させ、それを無水塩化水素の作用下で転位させて4−ニトロジフェニルアミン塩酸塩にし、次いで4−ニトロジフェニルアミン塩酸塩を塩基で中和して4−ニトロジフェニルアミンとし、そして最後に該4−ニトロジフェニルアミンを硫化ナトリウムで還元して4−アミノジフェニルアミンにする。
上記の方法では異なった出発物質を用いるが、還元剤としては従来の硫化ナトリウムを用いて4−アミノジフェニルアミンを製造する。これらの反応には、厳しい反応条件、煩雑な操作、高いエネルギー消費、低い収量、高い原価、および付随する廃水や廃ガス、廃棄残さが引き起こす環境汚染の問題がある。
【0035】
4−アミノジフェニルアミンの商業的製造法は、大きくは二つの方法に区別される。第一はオウチ法とも呼ばれる。オウチ(Ouchi)法によれば、ジフェニルアミンと硝酸ナトリウム(NaNO2)との反応によりN−ニトロジフェニルアミンを生成させた後、フィッシャー・ヘップ転位で反応体を中和する。次いで、最後に一般的な水素化により製造する。だが、この方法にも、ニトロ化によって大量の有害な廃液が発生するという多少の欠点がある。第二の方法は、モンサント法(米国特許第5117063号、第5453541号、第5608111号、第5623088号明細書)とも呼ばれる。モンサント法によれば、クロロベンゼンをニトロ化してp−クロロニトロベンゼンを生成させた後、ホルムアニリドと反応させて4−ニトロジフェニルアミンを合成する。次いで、最後に一般的な水素化により4−アミノジフェニルアミンを製造する。
【0036】
I式の化合物は、それだけで潤滑油組成物に使用しても特に有用なわけではない。本明細書の実施例および潤滑油組成物の公知技術は、酸化試験でニトロ置換ジフェニルアミン化合物を用いることに利益は無いことが示されている。潤滑粘度の油にI式の化合物だけを加えても酸化安定性は改善されない。しかしながら、I式のニトロ置換ジアリールアミンと共にジアリールアミンとを添加すると、酸化防止効果の劇的な進歩及び遅延並びに堅牢性の向上を示す。潤滑油組成物におけるI式の化合物の濃度は、所望する要求条件や用途、相乗作用度に応じて変えることができる。本発明の好ましい態様では、潤滑油組成物中のニトロ置換ジアリールアミンの実用範囲は、潤滑油組成物の全質量に基づき約百万分の1000部乃至百万分の20000部(すなわち、0.1乃至2.0質量%)であり、好ましくは濃度は百万分の1000部乃至10000部(ppm)であり、より好ましくは約2000乃至8000質量ppmである。
【0037】
[ジアリールアミン−b)成分]
第二級ジアリールアミン類はよく知られた酸化防止剤である。これらは、高温で、ラジカル生成触媒の存在下で、厳しい酸化抑制課題を呈する酸素の豊富な雰囲気中で機能するエンジン油の寿命を延ばすのに特に適している。ジフェニルアミンは、潤滑油の炭素ラジカルと酸素との迅速な反応により生成したペルオキシラジカルを掃去する。酸化したジフェニルアミンは、高温でのN−O結合開裂により自分自身を再生することができる。電子供与基はジフェニルアミンの効力を高めるが、電子求引基はその性能を害することが当該分野では知られている。
【0038】
第二級ジアリールアミン酸化防止剤は、下記式のうちの一つであることが好ましい。
【0039】
【化5】

【0040】
式中、R3およびR4は各々独立に、水素、または炭素原子数1〜20のアルキルであり、nは、1乃至3の整数であり、R5は、アルキル、アルコキシ、アラルキルまたはアルカリールから選ばれた炭素原子数3〜24の分枝鎖及び直鎖炭化水素基、もしくは−NHR6、−NR67(ただし、R6およびR7は独立に選ばれた炭素原子数1〜18のアルキルであるが、R4がR5に隣接して位置する場合には、R6はR4と一緒に五又は六員複素環を形成することができる)からなる群より選ばれる。
【0041】
II式から明らかなように、ジフェニルアミンは、少なくとも一個のフェニル環に少なくとも一個以上の置換基を持っている。環の置換基は、特に置換基が電子供与体(又は電子供与性)官能基である場合に、油溶性を付与するのを助け、また防止剤の効果を高めることができる。電子供与体置換基がベンゼン核に結合しているなら、電子を供給してベンゼン核の電子密度を高める傾向にあり、そしてこれが架橋アミノ部が安定化するのを助長し、より好ましいN−H結合解離特性を導く。好適な置換基は、直鎖又は分枝鎖アルキル基であるが、単にアルキル基、アルコキシ基およびアミノ基並びにこれらから誘導された基とも呼ばれる。特に好適であるのは、II式にR5で図示したパラ置換基であり、よってR5は、アルキル、アルコキシ、アラルキルまたはアルカリールから選ばれた炭素原子数3〜24の分枝鎖及び直鎖炭化水素基、もしくは−NHR6、−NR67(ただし、R6およびR7は独立に選ばれた炭素原子数1〜18のアルキルであるが、R4がR5に隣接して位置する場合には、R6はR4と一緒に五又は六員複素環を形成することができる)からなる群より選ばれる。
【0042】
ある態様ではR5は、アルキルまたはアルキルから誘導された基であり、特にはR5はアルキル、アルコキシ、アラルキルまたはアルカリールから選ばれた炭素原子数3〜24の分枝鎖及び直鎖の炭化水素基からなる群より選ばれる。特にはアルキル基は炭素数4〜12である。アラルキル部およびアルカリール部は、置換フェニル部、特には炭素原子数4〜18のようなアルキルで置換されたフェニル部であることが好ましい。
【0043】
ある態様ではR5は、−NHR6、−NR67(ただし、R6およびR7は独立に選ばれる炭素原子数1〜18のアルキルであるが、R4がR5に隣接して位置する場合には、R6はR4と共に五又は六員複素環を形成することができる)である。アミノ置換は、モノアルキルでもジアルキルでも、またアミノが縮合複素環基であっても有効であることが判明している。これらの任意に置換された(2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−イル)−フェニル−アミン、および任意に置換されたフェニル−(1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−6−イル)−アミンをそれぞれ、III式及びIV式の化合物として後に示す。
【0044】
3およびR4は各々独立に、水素または炭素原子数1〜20のアルキルであり、直鎖であっても分枝鎖であってもよく、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル等、並びにそれらの異性体および混合物である。特には置換基は、ジフェニルアミンの架橋窒素原子に対してパラ及びオルト位にある。よって、例えば少なくとも1個のR3が水素以外であるとき、このアルキル基は一般にパラ位に位置する。続いてR3として第二の独立に選ばれたアルキル基は、R3として第三の独立に選ばれたアルキル基と同様に、オルト位に位置することが好ましい。R3が水素であるかアルキル基であるかは、nの数値毎に独立に選ばれる。
【0045】
酸化生成物が油中で良好な溶解度を示すためには、これらC24及びC20又はそれ以下のアルキル基は、C8-16分枝アルキル基であることが好ましく、より好ましくは、C3又はC4オレフィンのオリゴマーから誘導されるようなC8-16分枝アルキル基である。ここで言うC3又はC4オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、2−ブテンおよびイソブチレンが挙げられ、それらの酸化生成物の油中での良好な溶解度の点で、そのうちでもプロピレンおよびイソブチレンが好ましい。具体的には、イソブチレン二量体から誘導した分枝オクチル基、プロピレン三量体から誘導した分枝ノニル基、イソブチレン三量体から誘導した分枝ドデシル基、プロピレン四量体から誘導した分枝ドデシル基、またはプロピレン五量体から誘導した分枝ペンタデシル基が特に好ましい。置換第二級ジアリールアミン、特にp,p’−ジアルキルジフェニルアミンおよびN−p−アルキルフェニル−α−ナフチルアミンは、市販製品であってもよいが、フリーデル・クラフツ触媒を用いてジアリールアミンをC1-6ハロゲン化アルキル、C2-6オレフィンと、あるいはC2-6オレフィンオリゴマーを第二級ジアリールアミンと反応させることにより容易に製造することができる。フリーデル・クラフツ触媒の例としては、塩化アルミニウム、塩化亜鉛および塩化鉄などの金属ハロゲン化物、並びに硫酸、リン酸、五酸化リン、フッ化ホウ素、酸性粘土および活性粘土などの酸性触媒がある。その他のアルキル化法も当該分野では知られている。
【0046】
これら第二級ジアリールアミンは、一方又は両方の環がアルキル基、好ましくは炭素原子数4〜12、より好ましくは炭素原子数8〜9の直鎖及び分枝鎖アルキル基で置換されていてもよい。通常は、ジフェニルアミンを2,4,4−トリメチルペンチルと反応させて製造するようにして、アルキル化ジフェニルアミンの混合物を製造するか、あるいは他のアルキル基、好ましくは分枝鎖を用いて、例えばノニル化ジフェニルアミン(ビス(4−ノニルフェニル)アミン)またはオクチル化ブチル化ジフェニルアミンを製造する。
【0047】
本発明の実施に使用できる第二級ジアリールアミンの幾つかの例としては、次のものが挙げられる:ジフェニルアミン、モノアルキル化ジフェニルアミン、ジアルキル化ジフェニルアミン、トリアルキル化ジフェニルアミンまたはそれらの混合物、モノ及び/又はジブチルジフェニルアミン、モノ及び/又はジオクチルジフェニルアミン、モノ及び/ジノニルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、モノ及びジアルキル化t−ブチル−t−オクチルジフェニルアミンの混合物。
【0048】
市販ジアリールアミンの例としては、例えばイルガノックス(IRGANOX)L06、イルガノックスL57およびイルガノックスL67、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)製;ナウガルーベ(NAUGALUBE)AMS、ナウガルーベ438、ナウガルーベ438R、ナウガルーベ438L、ナウガルーベ500、ナウガルーベ640、ナウガルーベ680、クロンプトン・コーポレーション(Crompton Corporation)製;グッドライト(GOODRITE)3123、グッドライト3190X36、グッドライト3127、グッドライト3128、グッドライト3158X1、グッドライト3190X29、グッドライト3190X40、グッドライト3191およびグッドライト3192、BFグッドリッチ・スペシャルティ・ケミカルズ(BF Goodrich Specialty Chemicals)製;ヴァンルーベ(VANLUBE)DND、ヴァンルーベNA、ヴァンルーベPNA、ヴァンルーベSL、ヴァンルーベSLHP、ヴァンルーベSS、ヴァンルーベ81、ヴァンルーベ848およびヴァンルーベ849、R.T.ヴァンダービルト・カンパニー(R.T.Vanderbilt Company Inc.)製を挙げることができる。
【0049】
III式の化合物は下記の式で表される。
【0050】
【化6】

【0051】
式中、R3およびnは前に定義した通りであり、R10は、水素または炭素原子数1〜18の線状又は分枝アルキルの群から選ばれ、そしてR11は、水素または炭素原子数1〜18の線状又は分枝アルキルの群から選ばれる。ある態様ではR3は各存在毎に水素である。R3がアルキルであるとき、R3は架橋環窒素原子に対してオルト又はパラ位にあることが好ましく、より好ましくはパラ位にある。ある態様ではR10は、水素または炭素原子数1〜6のアルキルであり、好ましくは水素である。ある態様ではR11は、水素または炭素原子数1〜6のアルキルであり、好ましくは水素である。
【0052】
IV式の化合物は下記の式で表される。
【0053】
【化7】

【0054】
式中、R3およびnは前に定義した通りであり、R12は、水素または炭素原子数1〜18の線状又は分枝アルキルの群から選ばれ、そしてR13は、水素または炭素原子数1〜18の線状又は分枝のアルキルの群から選ばれる。ある態様ではR3は各存在毎で水素である。R3がアルキルであるとき、R3は架橋環窒素原子に対してオルト又はパラ位にあることが好ましく、より好ましくはパラ位にある。ある態様ではR12は、水素または炭素原子数1〜6のアルキルであり、好ましくは水素である。ある態様ではR13は、水素または炭素原子数1〜6のアルキルであり、好ましくは水素である。
【0055】
潤滑油組成物における第二級ジアリールアミンの濃度は、所望する要求条件や用途、相乗作用のレベルに応じて変えることができる。本発明の好ましい態様では、潤滑油組成物中の第二級ジアリールアミンの実用範囲は、潤滑油組成物の全質量に基づき約百万分の1000部乃至百万分の20000部(すなわち、0.1乃至2.0質量%)であり、好ましくは濃度は百万分の1000乃至10000部(ppm)であり、より好ましくは約2000乃至8000質量ppmである。
【0056】
一般に、潤滑油組成物中の全酸化防止剤に関して、1000ppm未満の量では効力が僅かであるか、もしくは最小であり、一方50000ppmより多い量では総じて経済的ではない。潤滑油組成物中のa)成分とb)成分との総量は、潤滑油組成物の全質量に基づき約0.1乃至2質量%であることが好ましく、より好ましくは約0.5乃至約2質量%である。
【0057】
[潤滑粘度の油]
本発明の潤滑油組成物は、主要量の潤滑粘度の基油を含有している。
基油は、本明細書で使用するとき、単一の製造者により同一の仕様に(供給源や製造者の所在地とは無関係に)製造され、同じ製造者の仕様を満たし、そして独特の処方、製造物確認番号またはその両方によって識別される潤滑油成分である、基材油または基材油のブレンド物と定義される。蒸留、溶剤精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化および再精製を含むが、それらに限定されない各種の異なる方法を使用して基材油を製造することができる。再精製基材油には、製造、汚染もしくは以前の使用によって混入した物質は実質的に含まれない。本発明の基油は、任意の天然または合成の潤滑基油留分であってよく、特には、動粘度が摂氏100度(℃)で約5センチストークス(cSt)乃至約20cSt、好ましくは約7cSt乃至約16cSt、より好ましくは約9cSt乃至約15cStのものである。炭化水素合成油としては例えば、エチレンの重合から製造された油、すなわちポリアルファオレフィン又はPAO、あるいはフィッシャー・トロプシュ法におけるような一酸化炭素ガスと水素ガスを用いた炭化水素合成手段により製造された油を挙げることができる。好ましい基油は、重質留分を含む場合でもその量が僅かである、例えば約100℃粘度が20cSt又はそれ以上の潤滑油留分を殆ど含むことのない油である。
【0058】
基油は、天然の潤滑油、合成の潤滑油またはそれらの混合物から誘導することができる。好適な基油としては、合成ろうおよび粗ろうの異性化により得られた基材油、並びに粗原料の芳香族及び極性成分を(溶剤抽出というよりはむしろ)水素化分解して生成した水素化分解基材油を挙げることができる。好適な基油としては、API公報1509、第14版、補遺I、1998年12月に規定された全API分類I、II、III、IV及びVに含まれるものが挙げられる。第1表に、I、II及びIII種基油の飽和度レベルおよび粘度指数を記載する。IV種基油はポリアルファオレフィン(PAO)である。V種基油には、I、II、III又はIV種に含まれなかったその他全ての基油が含まれる。II、III及びIV種基油が本発明に使用するのに好ましいが、これらの好ましい基油は、I、II、III、IV及びV種基材油又は基油を一種以上組み合わせることにより製造することができる。
【0059】
第 1 表
I、II及びIII種基材油の飽和度、硫黄分及び粘度指数
─────────────────────────────────────
種類 飽和度(ASTM 粘度指数(ASTM D4294、
D2007で決定) ASTM D4297又は
硫黄分(ASTM ASTM D3120で決定)
D2270で決定)
─────────────────────────────────────
I 飽和度90%未満及び/又は 80以上、120未満
硫黄分0.03%より上
II 飽和度90%以上及び 80以上、120未満
硫黄分0.03%以下
III 飽和度90%以上及び 120以上
硫黄分0.03%以下
─────────────────────────────────────
【0060】
天然の潤滑油としては、動物油、植物油(例えば、ナタネ油、ヒマシ油およびラード油)、石油、鉱油、および石炭または頁岩から誘導された油を挙げることができる。
【0061】
合成油としては、炭化水素油およびハロ置換炭化水素油、例えば重合及び共重合オレフィン、アルキルベンゼン、ポリフェニル、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、それらの類似物および同族体等を挙げることができる。また、合成潤滑油としては、アルキレンオキシド重合体、真の共重合体、共重合体、および末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等によって変性したそれらの誘導体も挙げることができる。合成潤滑油の別の好適な部類には、ジカルボン酸と各種アルコールとのエステルが含まれる。また、合成油として使用できるエステルとしては、C5−C12のモノカルボン酸とポリオールおよびポリオールエーテルとから製造されたものも挙げられる。トリアルキルホスフェートエステル油、例えばトリ−n−ブチルホスフェートおよびトリ−イソ−ブチルホスフェートで例示されるものも、基油として使用するのに適している。
【0062】
ケイ素系の油(例えば、ポリアルキル、ポリアリール、ポリアルコキシ又はポリアリールオキシ−シロキサン油及びシリケート油)は、合成潤滑油の別の有用な部類を構成する。その他の合成潤滑油としては、リン含有酸の液体エステル、高分子量テトラヒドロフラン、およびポリアルファオレフィン等が挙げられる。
【0063】
基油は、未精製、精製、再精製の油またはそれらの混合物から誘導してもよい。未精製油は、天然原料または合成原料(例えば、石炭、頁岩またはタール・サンド・ビチューメン)から直接、それ以上の精製や処理無しに得られる。未精製油の例としては、レトルト操作により直接得られた頁岩油、蒸留により直接得られた石油、またはエステル化法により直接得られたエステル油が挙げられ、次いで各々それ以上の処理無しに使用することができる。精製油は、一以上の性状を改善するために一以上の精製工程で処理されていることを除いては、未精製油と同じである。好適な精製技術としては、蒸留、水素化分解、水素化処理、脱ろう、溶剤抽出、酸又は塩基抽出、ろ過、およびパーコレートが挙げられ、それらは全て当該分野の熟練者に知られている。再精製油は、使用済の油を精製油を得るために用いたのと同様の方法で処理することにより得ることができる。これらの再精製油は、再生又は再処理油としても知られていて、しばしば使用された添加剤や油分解生成物の除去を目的とする技術により更に処理される。
【0064】
ろうの水素異性化から誘導された基油も、単独で、あるいは前記天然及び/又は合成基油と組み合わせて使用することができる。そのようなろう異性体油は、天然又は合成ろうまたはそれらの混合物を水素異性化触媒上で水素異性化することにより製造される。
【0065】
本発明の潤滑油には主要量の基油を使用することが好ましい。主要量の基油は、本明細書で定義するとき、40質量%又はそれ以上を占める。好ましい量の基油は、約40質量%乃至約97質量%のII、III及びIV種基油のうちの少なくとも一種からなり、あるいは好ましくは、約50質量%より多く約97質量%までのII、III及びIV種基油のうちの少なくとも一種、あるいはより好ましくは、約60質量%乃至約97質量%のII、III及びIV種基油のうちの少なくとも一種からなる。(質量%は、本明細書で使用するとき、特に明記しない限り潤滑油の質量%を意味する。)本発明のより好ましい態様は、潤滑油の約85質量%乃至約95質量%を占める量の基油を含有することができる。
【0066】
[油溶性モリブデン化合物−c)成分]
油溶性モリブデン化合物およびモリブデン/硫黄錯体は、当該分野で知られていて、例えば米国特許第4263152号(キング、外)及び第6962896号(ルーエ)の各明細書に記載され、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とするが、特に好ましいものである。本発明に使用することができるモリブデン化合物のその他の代表的なものとしては、次のものが挙げられる:米国特許第3285942号(プライス、外)明細書に記載されているモリブデン酸グリコール錯体;米国特許第4832857号(ハント、外)明細書に開示され特許請求されているもののような、モリブデンを含む過塩基性アルカリ金属及びアルカリ土類金属スルホネート、フェネート及びサリシレート組成物;米国特許第4889647号(ローワン、外)明細書に記載されているように、脂肪油、ジエタノールアミンおよびモリブデン源を反応させることにより製造されたモリブデン錯体;米国特許第5137647号(カロル)明細書に記載されているように、脂肪酸と2−(2−アミノエチル)アミノエタノールから製造されたモリブデン含有化合物などの、有機アミドの無硫黄無リン有機モリブデン錯体、および脂肪油または脂肪酸から誘導された脂肪残渣が置換した1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリンから製造されたモリブデン含有化合物;米国特許第5143633号(ガロ、外)明細書に記載されているように、アミン、ジアミン、アルコキシル化アミン、グリコールおよびポリオールから製造された過塩基性モリブデン錯体;米国特許第5412130号(カロル)明細書に記載されている2,4−ヘテロ原子置換−モリブデナ−3,3−ジオキサシクロアルカン;およびそれらの混合物。上記のうち代表的なモリブデン化合物は市販されていて、これらに限定されるものではないが、次のものが挙げられる:サクラ−ルーベ(Sakura-Lube、商品名)700、旭電化工業(株)(Asahi Denka Kogyo K.K.、日本国東京) 製、モリブデンアミン錯体;モリブデンHEX−CEM(商品名)、OMグループ(OM Group, Inc.、オハイオ州クリーブランド)製、2−エチルヘキサン酸モリブデン;オクタン酸モリブデン、シェファード・ケミカル・カンパニー(Shepherd Chemical Company、オハイオ州シンシナティ)製、2−エチルヘキサン酸モリブデン;モリヴァン(Molyvan、商品名)855、R.T.ヴァンダービルト・カンパニー(コネチカット州ノーウォーク)製、有機アミドの無硫黄無リン有機モリブデン錯体;モリヴァン856−B(商品名)、同じくR.T.ヴァンダービルト製、有機モリブデン錯体。
【0067】
特に好ましい油溶性モリブデン錯体は、(i)酸性モリブデン化合物と、コハク酸イミド、カルボン酸アミド、炭化水素モノアミン、リンアミド、チオリンアミド、マンニッヒ塩基、分散型粘度指数向上剤またはそれらの混合物からなる分散剤群から選ばれた塩基性窒素化合物とを、極性の促進剤の存在下で反応させてオキシモリブデン錯体にすることにより製造することができる、未硫化又は硫化のオキシモリブデン含有組成物である。このオキシモリブデン錯体を硫黄含有化合物と反応させて、それにより本発明との関係で有用な硫化オキシモリブデン含有組成物とすることができる。分散剤はポリイソブテニルコハク酸イミドであることが好ましい。オキシモリブデン又は硫化オキシモリブデン含有組成物は一般に、塩基性窒素分散剤化合物の硫黄/モリブデン錯体とみることができ、硫黄とモリブデンとの質量比は好ましくは約(0.01〜1.0)対1、より好ましくは約(0.05〜0.5)対1であり、窒素とモリブデンの質量比は好ましくは約(1〜10)対1、より好ましくは約(2〜5)対1である。これらオキシモリブデン組成物の正確な分子式は、確実には分かっていない。だが、モリブデンの価数が酸素または硫黄の原子で満たされ、そしてモリブデンが、これら組成物の製造に用いた塩基性窒素含有化合物の塩基性窒素原子のうちの一以上の窒素原子と錯体を形成しているか、あるいはその塩であるような化合物であると考えられる。ある態様では、摂氏120度又はそれ以下の反応温度でオキシモリブデン錯体を製造し、また任意に硫化する場合でも、摂氏120度又はそれ以下で反応させる。そのような方法によって、同等の圧力でもっと高温の反応条件に比べてより淡色の生成物が生じる。
【0068】
本発明に用いられるオキシモリブデン及びオキシモリブデン/硫黄錯体を製造するのに使用されるモリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物である。酸性とは、ASTM D−664又はD−2896試験の滴定法で測定できるような塩基性窒素化合物と、モリブデン化合物が反応することを意味する。一般に、これらモリブデン化合物は六価であり、代表的なものは次のような組成物である:モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウムおよび他のアルカリ金属モリブデン酸塩、および水素塩など他のモリブデン塩、例えばモリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl4、MoO2Br2、Mo23Cl6、三酸化モリブデン、ビス(アセチルアセトナト)−ジオキソモリブデン(VI)、または類似の酸性モリブデン化合物。好ましい酸性モリブデン化合物は、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウムおよびアルカリ金属モリブデン酸塩である。特に好ましいのはモリブデン酸およびモリブデン酸アンモニウムである。
【0069】
オキシモリブデン錯体を製造するのに使用される塩基性窒素化合物は、少なくとも1個の塩基性窒素を持ち、そして油溶性であることが好ましい。そのような組成物の代表的な例としては、コハク酸イミド、カルボン酸アミド、炭化水素モノアミン、炭化水素ポリアミン、マンニッヒ塩基、リンアミド、チオリンアミド、ホスホンアミド、分散型粘度指数向上剤、およびそれらの混合物がある。窒素含有組成物はいずれも、組成物が塩基性窒素を含有し続ける限り、当該分野で公知の手段を用いて例えばホウ素で後処理することができる。これらの後処理は、特にコハク酸イミドおよびマンニッヒ塩基組成物に適用できる。
【0070】
上記のモリブデン錯体を製造するのに使用することができるモノ及びポリコハク酸イミドは、多数の文献に開示され、当該分野でもよく知られている。コハク酸イミドのある基本的な種類、および「コハク酸イミド」なる技術用語に包含される関連物質は、米国特許第3219666号、第3172892号及び第3272746号の各明細書に教示されていて、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。「コハク酸イミド」には、多数のアミド、イミド、また生成しうるアミジン種が含まれると当該分野では理解されている。だが、主生成物はコハク酸イミドであり、この用語は一般に、アルケニル置換コハク酸又は無水物と窒素含有化合物との反応の生成物を意味すると認められている。好ましいコハク酸イミドは、市販されているものについては、炭化水素基が炭素原子約24〜約350個を含む炭化水素コハク酸無水物とエチレンアミンから製造されるようなコハク酸イミドであり、該エチレンアミンは特に、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、およびテトラエチレンペンタアミンにより特徴づけられる。特に好ましいのは、炭素原子数70〜128のポリイソブテニルコハク酸無水物と、テトラエチレンペンタアミンまたはトリエチレンテトラアミンまたはそれらの混合物とから製造されるようなコハク酸イミドである。
【0071】
また、「コハク酸イミド」には、炭化水素コハク酸又は無水物と、二個以上の第二級アミノ基に加えて少なくとも一個の第三級アミノ窒素を含むポリ第二級アミンとのコオリゴマーも含まれる。通常、この組成物の平均分子量は1500から50000の間にある。代表的な化合物としては、ポリイソブテニルコハク酸無水物とエチレンジピペラジンを反応させて製造したものがある。
【0072】
カルボン酸アミド組成物も、本発明に用いられるオキシモリブデン錯体を製造するのに適した出発物質である。そのような化合物の代表例としては、米国特許第3405064号明細書に開示されているものがあり、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。これらの組成物は通常、主脂肪鎖の脂肪族炭素原子数が少なくとも12〜約350で、所望により分子を油溶性とするのに充分な脂肪族側基を持つカルボン酸又はその無水物又はエステルを、アミンまたはエチレンアミンなどの炭化水素ポリアミンと反応させて、モノ又はポリカルボン酸アミドとすることにより製造される。好ましいのは、(1)一般式R’COOH(ただし、R’はC12-20アルキルである)のカルボン酸、またはこの酸とポリイソブテニル基が炭素原子72〜128個を含むポリイソブテニルカルボン酸との混合物、および(2)エチレンアミン、特にはトリエチレンテトラアミンまたはテトラエチレンペンタアミンまたはそれらの混合物、から製造されるようなアミドである。
【0073】
本発明に使用できる別の部類の化合物は、炭化水素モノアミンおよび炭化水素ポリアミンであり、好ましくは米国特許第3574576号明細書に開示されている種類のものであり、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。炭化水素基は、アルキル、または一乃至二箇所に不飽和があるオレフィンであることが好ましく、通常は炭素原子9〜350個、好ましくは20〜200個を含む。特に好ましい炭化水素ポリアミンとしては、例えば、ポリ塩化イソブテニルと、ポリアルキレンポリアミン、例えばエチレンアミン、具体的にはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタアミン、2−アミノエチルピペラジン、1,3−プロピレンジアミンおよび1,2−プロピレンジアミン等とを反応させることにより誘導されたものがある。
【0074】
塩基性窒素を供給するのに使用できる別の部類の化合物としては、マンニッヒ塩基組成物がある。これらの組成物は、フェノールまたはC9-200アルキルフェノールと、アルデヒド、例えばホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒド前駆体と、アミン化合物とから製造される。アミンはモノアミンでもポリアミンでもよく、そして代表的な組成物は、アルキルアミン、例えばメチルアミンまたはエチレンアミン、具体的にはジエチレントリアミンまたはテトラエチレンペンタアミン等から製造される。フェノール系物質は硫化されていてもよいが、好ましくはドデシルフェノールまたはC80-100アルキルフェノールである。本発明に使用することができる代表的なマンニッヒ塩基は、米国特許第4157309号及び第3649229号、第3368972号及び第3539663号の各明細書に開示されていて、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。最後の参照特許文献には、炭素原子数が少なくとも50、好ましくは炭素原子数50〜200のアルキルフェノールと、ホルムアルデヒドおよびアルキレンポリアミンHN(ANH)nH(ただし、Aは炭素原子数2〜6の飽和二価アルキル炭化水素であり、そしてnは1−10である)とを反応させることにより製造されたマンニッヒ塩基、および該アルキレンポリアミンの縮合物を更に尿素またはチオ尿素と反応させてもよいこと、が開示されている。マンニッヒ塩基を従来技術を用いて処理して組成物にホウ素を導入することによって、潤滑油添加剤製造のための出発物質としてのこれらマンニッヒ塩基の有用性を、しばしば著しく改善することができる。
【0075】
本発明に用いられるオキシモリブデン錯体を製造するのに使用できる別の部類の組成物としては、リンアミドおよびホスホンアミド、例えば米国特許第3909430号及び第3968157号明細書に開示されているものがあり、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。これらの組成物は、少なくとも1個のP−N結合を持つリン化合物を生成させることで製造することができる。例えば、酸塩化リンと炭化水素ジオールをモノアミンの存在下で反応させることにより、あるいは酸塩化リンと二官能性第二級アミンおよび一官能性アミンとを反応させることにより製造することができる。チオリンアミドは、炭素原子2〜450個又はそれ以上含む不飽和炭化水素化合物、例えばポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、エチレン、1−ヘキセン、1,3−ヘキサジエン、イソブチレンおよび4−メチル−1−ペンテン等と、五硫化リンおよび前に明示した窒素含有化合物、特にはアルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルポリアミン、またはアルキレンアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンおよびテトラエチレンペンタアミン等とを反応させることにより製造することができる。
【0076】
本発明に用いられるモリブデン錯体を製造するのに使用できる別の部類の窒素含有組成物としては、いわゆる分散型粘度指数向上剤(VI向上剤)が挙げられる。これらVI向上剤は普通は、炭化水素重合体、特には、脂環式又は脂肪族オレフィン又はジオレフィンなどの一以上のコモノマーから誘導された付加単位を任意に含む、エチレンおよび/またはプロピレンから誘導された重合体を官能化することにより製造される。官能化は、通常は重合体に少なくとも1個の酸素原子があるような反応性部位(群)を、重合体に導入する各種の方法により行うことができる。次いで、重合体を窒素含有源と接触させて重合体の主鎖に窒素含有官能基を導入する。普通用いられる窒素源としては、任意の塩基性窒素化合物、特には前述したような窒素含有化合物及び組成物が挙げられる。好ましい窒素源は、エチレンアミンなどのアルキレンアミン、アルキルアミンおよびマンニッヒ塩基である。
【0077】
本発明に使用するのに好ましい塩基性窒素化合物は、コハク酸イミド、カルボン酸アミドおよびマンニッヒ塩基である。より好ましいのは、平均分子量が1000又は1300又は2300のコハク酸イミドおよびそれらの混合物である。そのようなコハク酸イミドは、当該分野で知られているようにホウ素またはエチレンカーボネートで後処理することができる。
【0078】
本発明のオキシモリブデン錯体は硫化することもできる。本発明に用いられるオキシモリブデン/硫黄錯体を製造するための代表的な硫黄源としては、硫黄、硫化水素、一塩化硫黄、二塩化硫黄、五硫化リン、R”2X(ただし、R”は炭化水素基、好ましくはC1-40アルキルであり、そしてxは少なくとも2である)、(NH42y(ただし、yは少なくとも1である)などの無機硫化物及び多硫化物、チオアセトアミド、チオ尿素、および一般式R”SH(ただし、R”は上に定義した通りである)のメルカプタンがある。また、従来の硫黄含有酸化防止剤、例えばワックススルフィド及びポリスルフィド、硫化オレフィン、硫化カルボン酸及びエステルおよび硫化エステル・オレフィン、および硫化アルキルフェノール及びそれらの金属塩も硫化剤として使用できる。これら硫黄含有酸化防止剤は、有効なペルオキシド分解剤であるので追加の酸化防止剤として用いると有益であり、以下に更に詳しく述べる。
【0079】
硫化脂肪酸エステルは、硫黄、一塩化硫黄および/または二塩化硫黄と不飽和脂肪酸エステルとを高温で反応させることにより製造される。代表的なエステルとしては、C8−C24不飽和脂肪酸、例えばパルミトオレイン酸、オレイン酸、リシノール酸、ペトロセリン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、オレオステアリン酸、リカン酸、パラナリン酸、タリル酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、セトレイン酸等のC1−C20アルキルエステルを挙げることができる。混合不飽和脂肪酸エステル、例えばタル油、アマニ油、オリーブ油、ヒマシ油、ピーナッツ油、ナタネ油、魚油およびマッコウ鯨油等の動物脂肪および植物油から得られたものでは、特に優れた結果が得られている。脂肪酸エステルの例としては、ラウリルタレート、メチルオレエート、エチルオレエート、ラウリルオレエート、セチルオレエート、セチルリノレエート、ラウリルリシノレエート、オレイルリノレエート、オレイルステアレート、およびアルキルグリセリドを挙げることができる。
【0080】
架橋硫化エステルオレフィン、例えばC10−C25オレフィンと、C10−C25脂肪酸とC10−C25アルキル又はアルケニルアルコールの脂肪酸エステル(ただし、脂肪酸および/またはアルコールは不飽和である)との硫化混合物も使用することができる。
【0081】
硫化オレフィンは、C3−C6オレフィンまたはそれから誘導された低分子量ポリオレフィンと、硫黄、一塩化硫黄および/または二塩化硫黄などの硫黄含有化合物との反応により製造される。
【0082】
また、芳香族スルフィドおよびアルキルスルフィド、例えばジベンジルスルフィド、ジキシリルスルフィド、ジセチルスルフィド、ジパラフィンワックススルフィド、および分解ワックス−オレフィンスルフィド等も使用できる。それらは、オレフィン不飽和化合物などの出発物質を硫黄、一塩化硫黄および二塩化硫黄で処理することにより製造することができる。特に好ましいのは、米国特許第2346156号明細書に記載されているパラフィンワックスチオマーである。
【0083】
硫化アルキルフェノール及びそれらの金属塩としては、硫化ドデシルフェノール及びそのカルシウム塩などの組成物が挙げられる。アルキル基は通常は炭素原子9〜300個を含む。金属塩は、I族又はII族の塩であることが好ましく、特にはナトリウム、カルシウム、マグネシウムまたはバリウムである。
【0084】
好ましい硫黄源は、硫黄、硫化水素、五硫化リン、R'"2Z(ただし、R'"は炭化水素基、好ましくはC1−C10アルキルであり、そしてzは少なくとも3である)、R'"がC1−C10アルキルであるメルカプタン、無機硫化物及び多硫化物、チオアセトアミド、およびチオ尿素である。最も好ましい硫黄源は、硫黄、硫化水素、五硫化リンおよび無機硫化物及び多硫化物である。
【0085】
本発明に用いられるモリブデン錯体の製造に用いられる極性の促進剤は、酸性モリブデン化合物と塩基性窒素化合物との間の相互作用を促すものである。多種多様のそのような促進剤は当該分野の熟練者にはよく知られている。代表的な促進剤としては、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ブチルセロソルブ、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、メチルカルビトール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチル−ジエタノールアミン、ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリンアミド、テトラヒドロフラン、および水がある。好ましいのは水およびエチレングリコールである。特に好ましいのは水である。通常は極性の促進剤を反応混合物に別個に添加するが、特に水の場合には、無水ではない出発物質の成分として、あるいは(NH46Mo724・H2Oなど酸性モリブデン化合物の水和水として存在してもよい。また、水を水酸化アンモニウムとして添加してもよい。
【0086】
本発明に用いられるオキシモリブデン錯体を製造する方法は、塩基性窒素含有化合物を含む酸性モリブデン前駆体と極性の促進剤の溶液を、希釈剤を用いてまたは用いないで調製することにある。必要ならば、希釈剤を用いて撹拌を容易にするのに適した粘度にする。代表的な希釈剤は、潤滑油、および炭素と水素のみを含む液体化合物である。所望により、水酸化アンモニウムも反応混合物に加えてモリブデン酸アンモニウムの溶液としてもよい。この反応は様々な温度で行えるが、一般には混合物の融点以下で還流温度までで行う。通常は大気圧で行うが、所望によりそれより高い又は低い圧力を使用してもよい。この反応混合物を任意に、前に明示した硫黄源を用いて、硫黄源が酸性モリブデンおよび塩基性窒素化合物と反応するのに適した圧力および温度で処理してもよい。場合によっては、硫黄源との反応終了前に反応混合物から水を取り除くことが望ましい。オキシモリブデン錯体の好ましい改良製造法では、反応器を撹拌しながら摂氏約120度又はそれ以下、好ましくは摂氏約70度乃至摂氏約90度の温度に加熱する。次いで、酸化モリブデンまたは他の好適なモリブデン源を反応器に入れ、モリブデンが充分に反応するまで温度を摂氏約120度又はそれ以下、好ましくは摂氏約70度乃至摂氏約90度に維持する。反応混合物から余分な水を取り除く。除去方法としては、これらに限定されるものではないが、反応器の温度を摂氏約120度又はそれ以下、好ましくは摂氏約70度から摂氏約90度の間の温度に維持しながらの減圧蒸留または窒素ストリッピングを挙げることができる。モリブデン含有組成物の色度を低く維持するために、ストリッピング工程中の温度を摂氏約120度又はそれ以下の温度に保つ。通常は大気圧で行うが、それより高い又は低い圧力を使用してもよい。ストリッピング工程は一般に約0.5乃至約5時間かけて行う。
【0087】
所望により、この反応混合物を前に明示した硫黄源を用いて好適な圧力および温度で、硫黄源を酸性モリブデンおよび塩基性窒素化合物と反応させるために摂氏約120度を越えない温度で処理することにより、この生成物を硫化することができる。硫化工程は一般には約0.5乃至約5時間、好ましくは約0.5乃至約2時間かけて行う。場合によっては、硫黄源との反応終了前に反応混合物から極性促進剤(水)を除去することが望ましい。
【0088】
反応混合物において、モリブデン化合物と塩基性窒素化合物の比は重要ではないが、塩基性窒素に対してモリブデンの量が増加するにつれて生成物のろ過がより難しくなる。モリブデン成分がおそらくはオリゴマー化するので、組成物中に容易に保持できる限り多量のモリブデンを加えることが有利である。通常は、反応混合物に塩基性窒素原子当りモリブデン0.01乃至2.00原子を入れる。好ましくは塩基性窒素原子当りモリブデン0.3乃至1.0、最も好ましくは0.4乃至0.7原子を反応混合物に加える。
【0089】
任意に硫化した場合に、硫化オキシモリブデン含有組成物は一般に、塩基性窒素分散剤化合物の硫黄/モリブデン錯体とみることができ、硫黄とモリブデンの質量比は好ましくは約(0.01〜1.0)対1、より好ましくは約(0.05〜0.5)対1であり、窒素とモリブデンの質量比は好ましくは約(1〜10)対1、より好ましくは約(2〜5)対1である。硫黄の極めて少ない取込みでは、硫黄とモリブデンの質量比は(0.01〜0.08)対1であってよい。
【0090】
本発明の硫化及び未硫化オキシモリブデン錯体は、一般に潤滑油に0.01乃至10%の量で用いられ、より好ましくは0.04乃至1質量%の量で用いられる。
【0091】
有機基質の耐酸化性を高めるために、a)成分とb)成分と任意にc)成分の相乗的組合せに追加の成分を加えてもよく、これにより相乗作用を増すことが可能である。特に好ましいのは、ペルオキシラジカル掃去剤(分解剤)として働く成分である。これらのヒドロペルオキシド分解剤は、ヒドロペルオキシドを非ラジカル生成物に変換し、それにより連鎖生長反応を防ぐ。普通は有機硫黄化合物および有機リン化合物がこの目的の役に立ち、多数の好適な化合物をオキシモリブデン成分との関連で上記に明らかにしているから改めて繰り返すまでもない。特に好ましい有機リン化合物は、ジチオリン酸金属塩、リンエステル(リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル、ホスフィン・オキシド(酸化ホスフィン)、亜リン酸エステル、亜ホスホン酸エステル、亜ホスフィン酸エステルおよびホスフィン等を含む)、アミンリン酸エステルおよびアミンホスフィン酸エステル、リンモノチオン酸エステルおよびリンジチオン酸エステルを含む硫黄含有リンエステル、リンアミド、およびホスホンアミド等からなる群より選ばれる油溶性のリン含有耐摩耗性化合物である。より好ましいのは、リン含有化合物は金属ジチオリン酸塩であり、更に好ましくはジチオリン酸亜鉛である。好適なリン化合物は米国特許第6696393号明細書に開示されていて、それも参照内容として本明細書の記載とする。
【0092】
以下の添加剤成分は、本発明の潤滑油添加剤と組み合わせて好ましく用いることができる成分の例である。これら添加剤の例は、本発明を説明するために記されるのであって本発明を限定しようとするものではない。
【0093】
(A)無灰分散剤:アルケニルコハク酸イミド、エチレンカーボネートなど他の有機化合物で変性したアルケニルコハク酸イミド、ポリコハク酸イミド、およびホウ酸で変性したアルケニルコハク酸イミド、アルケニルコハク酸エステル。
【0094】
(B)酸化防止剤:
1)フェノール型フェノール系酸化防止剤:4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)−スルフィド、およびビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)。
2)ジフェニルアミン型酸化防止剤:アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、およびアルキル化α−ナフチルアミン。
3)その他の型:金属ジチオカルバメート(例えば、亜鉛ジチオカルバメート)、およびメチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)。以下に、特に好ましいヒンダードフェノール系について詳しく述べる。
【0095】
別の態様では、酸化防止剤はペルオキシド分解酸化防止剤(D)である。(D)として特に適しているのは、少なくとも一種のフェノール酸化防止剤である。フェノール酸化防止剤としては、金属及び無金属ヒンダードフェノール類が挙げられる。ヒンダードフェノールのアルキレンでカップリングした誘導体およびフェノールスルフィド又は硫黄でカップリングしたフェノールも使用することができる。ヒンダードフェノールは、立体障害のあるヒドロキシル基を含むフェノールと定義され、これらとしては、ヒドロキシル基が互いにo又はp位にあるようなジヒドロキシアリール化合物の誘導体が挙げられる。無金属ヒンダードフェノールは、下記式で表すことができる。
【0096】
【化8】

【0097】
式中、各R1は独立に、炭素原子3〜約9個を含む炭化水素基であり、各R2は、水素または炭化水素基であり、R3は、水素または炭素原子1〜約9個を含む炭化水素基であり、そして各R4は独立に、水素またはメチル基である。ある態様ではR2は、炭素原子約3〜約24個、又は約6〜約20個、又は約6〜約12個を含むアルキル基である。ある態様ではアルキル基は、1個以上の前記ポリアルケンから誘導される。アルキル基は、エチレン、プロピレン、1−ブテン及びイソブテンの重合体、好ましくはプロピレン四量体又は三量体から誘導することができる。R2基の例としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル、トリプロペニル、テトラプロペニル等を挙げることができる。R1、R2及びR3基の例としては、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ヘプチル、オクチル、およびノニルを挙げることができる。別の態様では各R1およびR3は、tert−ブチル基またはtert−アミル基のような第三級基である。フェノール系化合物は種々の技術により製造することができるが、ある態様では、まずパラ置換アルキルフェノールを合成し、そののち所望のようにパラ置換フェノールの2及び/又は6位をアルキル化することにより、そのようなフェノールを段階的に製造する。IVa式及びVa式で表された種類のカップリングしたフェノールを製造することが望ましいときには、ヒドロキシル基に対してオルト位の一方だけにアルキル化が起こる条件で、第二工程のアルキル化を行う。有用なフェノール系物質の例としては次のものが挙げられる:2−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール、2−t−ブチル−4−オクチルフェノール、2−t−ブチル−4−ドデシルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ドデシルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−テトラプロペニルフェノール、2−メチル−6−ジ−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−トリプロペニルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−t−ブチル−4−エチルフェノール、4−t−ブチルカテコール、2,4−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、および2−メチル−6−ジ−t−ブチル−4−ドデシルフェノール。オルト位カップリングフェノールの例としては次のものが挙げられる:2,2’−ビス(6−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール)、2,2’−ビス(6−t−ブチル−4−オクチルフェノール)、2,6−ビス(1’−メチルシクロヘキシル)−4−メチルフェノール、および2,2’−ビス(6−t−ブチル−4−ドデシルフェノール)。
【0098】
アルキレンでカップリングしたフェノール系化合物は、フェノール系化合物と、アルデヒド、通常はホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドなどの炭素原子1〜約8個を含むもの、パラホルムアルデヒドまたはトリオキサンなどのアルデヒド前駆体、もしくはアセトンなどのケトンとの反応により、フェノールから製造することができる。0.3乃至約2モルのフェノールを1当量のアルデヒドまたはケトンと反応させることにより、アルキレンでカップリングしたフェノールを得ることができる。アルデヒドおよびケトンによるフェノール系化合物のカップリング手法は、当該分野の熟練者に知られている。フェノール系化合物の例としては、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−オクチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−ドデシル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−オクチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−オクチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−ドデシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−ヘプチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−ドデシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−テトラプロペニルフェノール)、および2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−ブチルフェノール)が挙げられる。
【0099】
別の態様では酸化防止剤(D)は、無金属(又は無灰)アルキルフェノールスルフィド、または硫黄でカップリングしたフェノールである。スルフィドが製造されるアルキルフェノールには、上述した種類のIIIa式で表された(ただし、R3は水素である)フェノールも含まれる。例えば、アルキルフェノールスルフィドに変換することができるアルキルフェノールとしては、次のものが挙げられる:2−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール、2−t−ブチル−4−オクチルフェノール、および2−t−ブチル−4−ドデシルフェノール、2−t−ブチル−4−テトラプロペニルフェノール。「アルキルフェノールスルフィド」は、ジ(アルキルフェノール)モノスルフィド、ジスルフィド及びポリスルフィド、並びにアルキルフェノールと一塩化硫黄、二塩化硫黄または硫黄元素との反応で得られた他の生成物を含むことを意味する。1モルのフェノールは、一般に約0.5−1.5モル又はそれ以上の硫黄化合物と反応する。例えば、1モルのアルキルフェノールと0.5−2.0モルの二塩化硫黄を混合することにより、アルキルフェノールスルフィドが容易に得られる。反応混合物を通常は、約100℃で約2−5時間維持し、そののちに得られたスルフィドを乾燥してろ過する。硫黄元素を用いたときは、一般に約150−250℃又はそれ以上の温度を使用する。乾燥操作を窒素または同様の不活性ガス中で行うことも望ましい。特に有用なアルキルフェノールスルフィドは、チオ−ビス(テトラプロペニルフェネート)である。
【0100】
好適な塩基性アルキルフェノールスルフィドは、例えば米国特許第7372116号、第3410798号及び第4021419号の各明細書に開示されていて、それらも参照内容として本明細書の記載とする。米国特許第4021419号明細書に記載されているこれら硫黄含有フェノール系組成物は、置換フェノールを硫黄またはハロゲン化硫黄で硫化し、そののち硫化フェノールをホルムアルデヒド、もしくはパラホルムアルデヒドまたはトリオキサンなどのアルデヒド前駆体等と反応させることにより得られる。あるいは、まず置換フェノールをホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドと反応させ、その後に硫黄またはハロゲン化硫黄と反応させても、所望のアルキルフェノールスルフィドが生成する。
【0101】
別の態様では酸化防止剤(D)は、ジチオカルバメート酸化防止剤である。ジチオカルバメート酸化防止剤としては、ジチオカルバミン酸又はその塩と、1個以上の上記不飽和化合物、例えば不飽和アミド、カルボン酸、その無水物又はエステル又はエーテルとの反応生成物;アルキレンでカップリングしたジチオカルバメート;およびビス(S−アルキルジチオカルバモイル)ジスルフィドを挙げることができる。ある態様では、ジチオカルバメート化合物は無灰、すなわち無金属である。ジチオカルバメートについては前に述べている。別の態様では、酸化防止剤は硫化ディールス・アルダー付加物である。
【0102】
(C)さび止め添加剤(さび止め剤):
1)非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート。
【0103】
2)その他の化合物:ステアリン酸および他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステル。
【0104】
(D)抗乳化剤:アルキルフェノールとエチレンオキシドの付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステル。
【0105】
(E)極圧剤(EP剤):硫化油、ジフェニルスルフィド、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、ヨウ化ベンジル、フルオロアルキルポリシロキサン、およびナフテン酸鉛。
【0106】
(F)摩擦緩和剤:脂肪アルコール、脂肪酸、アミン、ホウ酸化エステル、および他のエステル。
【0107】
(G)多機能添加剤:硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンオルガノリンジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン・モリブデン錯化合物、および硫黄含有モリブデン錯化合物。
【0108】
(H)粘度指数向上剤:ポリメタクリレート型重合体、エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、水和スチレン・イソプレン共重合体、ポリイソブチレン、および分散型粘度指数向上剤。
【0109】
(I)流動点降下剤:ポリメチルメタクリレート。
【0110】
(K)消泡剤:アルキルメタクリレート重合体、およびジメチルシリコーン重合体。
【0111】
(L)摩耗防止剤:ジアルキルジチオリン酸亜鉛(Zn−DTP、第一級アルキル型及び第二級アルキル型)。
【実施例】
【0112】
本発明について以下の実施例により更に説明するが、これら実施例は本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。以下の限定しない製造および実施例により本発明の更なる理解を得ることができる。逆に特に断わらない限り、温度および温度範囲は全て摂氏度系を意味し、「周囲温度」又は「室温」は約20乃至25℃を意味する。「パーセント又は%」は質量%を意味し、「モル」はグラムモルを意味する。「当量」は、その実施例で一定モルまたは一定質量又は容量で記された前後の反応体のモル数と、モル数が等しい試薬の量を意味する。プロトン磁気共鳴スペクトル(p.m.r.又はn.m.r.)が記されている場合には、300mHzで測定したものであり、シグナルは一重項(s)、幅広一重項(bs)、二重項(d)、2つの二重項(dd)、三重項(t)、2つの三重項(dt)、四重項(q)および多重項(m)に帰属され、そしてcpsはサイクル毎秒を意味する。
【0113】
(A1成分、N−(4−n−ブチルフェニル)−N−(4−ニトロフェニル)アミンの製造)
【0114】
【化9】

【0115】
磁気撹拌器、還流冷却器および窒素導入口を備えたフラスコに、4−n−ブチルアニリン(48.5グラム、0.325モル)、1−フルオロ−4−ニトロベンゼン(15.3グラム、0.108モル)、および無水メチルスルホキシド(120ml)を加えた。フラスコの内容物を100℃で3日間加熱し、室温まで冷却し、ジエチルエーテル(300ml)と水(100ml)とに分配した。エーテル抽出物を水(4×100ml)で、続いて食塩水(2×50ml)で洗った。エーテル抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、そして減圧で濃縮して、褐色の油性残留物が生じた。残留物をヘキサン(300ml)から再結晶させて、生成物18.4グラムが黄色固形物として生じた。1H NMR(CDCl3)δ8.1(d,2H)、7.2(d,2H)、7.15(d,2H)、6.9(d,2H)、6.3(bs,1H)、2.6(t,2H)、1.6(pent,2H)、1.4(hextet,2H)、0.9(t,3H)。
【0116】
(A2成分、N−(4−n−ヘキシルフェニル)−N−(4−ニトロフェニル)アミンの製造)
【0117】
【化10】

【0118】
磁気撹拌器、還流冷却器および窒素導入口を備えたフラスコに、4−n−ヘキシルアニリン(49.1グラム、0.283モル)、1−フルオロ−4−ニトロベンゼン(13.3グラム、0.094モル)、および無水メチルスルホキシド(80ml)を加えた。フラスコの内容物を100℃で4日間加熱し、室温まで冷却し、ジエチルエーテル(300ml)と水(100ml)とに分配した。エーテル抽出物を水(4×100ml)で、続いて食塩水(3×50ml)で洗った。エーテル抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、そして減圧で濃縮して、褐色液体が生じた。褐色液体をヘキサン(500ml)から再結晶させて、生成物15.0グラムが黄色固形物として生じた。1H NMR(CDCl3)δ8.1(d,2H)、7.2(d,2H)、7.15(d,2H)、6.9(d,2H)、6.3(bs,1H)、2.6(t,2H)、1.6(pent,2H)、1.2−1.4(m,6H)、0.9(t,3H)。
【0119】
(A3成分、N’−(4−ニトロフェニル)−N,N−ジ−n−ヘキシルベンゼン−1,4−ジアミンの製造)
【0120】
【化11】

【0121】
工程1:N,N−ジ−n−ヘキシル−N−(4−ニトロフェニル)アミンの製造
【0122】
【化12】

【0123】
磁気撹拌器、還流冷却器および窒素導入口を備えたフラスコに、ジ−n−ヘキシルアミン(14.1グラム、0.3モル)、1−フルオロ−4−ニトロベンゼン(14.1グラム、0.1モル)、および無水メチルスルホキシド(40ml)を加えた。フラスコの内容物を100℃で20時間加熱し、室温まで冷却し、ジエチルエーテル(300ml)と水(100ml)とに分配し、ろ過した。エーテル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、そして減圧で濃縮して、余分なジヘキシルアミンを含む黄色油が生じた。黄色油をシリカゲルの短いカラムに通し、ヘキサン(300ml)で溶離することで精製して、生成物25.0グラムが黄色油として生じた。1H NMR(CDCl3)δ8.1(d,2H)、6.5(d,2H)、3.35(t,4H)、1.6(pent,4H)、1.2−1.4(m,12H)、0.9(t,6H)。
【0124】
工程2:N,N−ジ−n−ヘキシルベンゼン−1,4−ジアミンの製造
【0125】
【化13】

【0126】
N,N−ジ−n−ヘキシル−N−(4−ニトロフェニル)アミン25.0グラムの酢酸エチル100ml溶液(10%パラジウム活性炭1.02グラム含有)を、40psiで1.5時間水素化した。溶液をろ過し、そして減圧で濃縮して、生成物23.2グラムが無色油として生じた。1H NMR(CDCl3)δ6.4(ABquartet,4H)、3.3(bs,2H)、3.15(t,4H)、1.5(pent,4H)、1.2−1.4(m,12H)、0.9(t,6H)。
【0127】
工程3:N’−(4−ニトロフェニル)−N,N−ジ−n−ヘキシルベンゼン−1,4−ジアミンの製造
【0128】
【化14】

【0129】
磁気撹拌器、還流冷却器および窒素導入口を備えたフラスコに、N,N−ジ−n−ヘキシルベンゼン−1,4−ジアミン(22.3グラム、0.09モル)、1−フルオロ−4−ニトロベンゼン(4.3グラム、0.03モル)、および無水メチルスルホキシド(40ml)を加えた。フラスコの内容物を100℃で3日間加熱し、室温まで冷却し、酢酸エチル(200ml)と水(100ml)とに分配した。酢酸エチル抽出物を水(4×100ml)で、続いて食塩水(50ml)で洗った。酢酸エチル抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、そして減圧で濃縮して、余分なN,N−ジ−n−ヘキシル−N−(4−ニトロフェニル)アミンを含む暗褐色油が生じた。暗褐色油をシリカゲルのクロマトグラフに掛け、ヘキサン/酢酸エチルで勾配溶離して、所望の生成物11.8グラムを暗紫色油として得た。1H NMR(DMSO−d6)δ8.95(bs,1H)、8.0(d,2H)、7.0(d,2H)、6.8(d,2H)、6.6(d,2H)、3.25(t,4H)、1.5(pent,4H)、1.2−1.4(m,12H)、0.9(t,6H)。
【0130】
(比較のためのA4成分、2−エチルヘキシル−4−[(4−ニトロフェニル)アミノ]ベンゾエートの製造)
【0131】
工程1:2−エチルヘキシル−4−ニトロベンゾエートの製造
【0132】
【化15】

【0133】
磁気撹拌器、還流冷却器および窒素導入口を備えたフラスコに、4−ニトロベンゾイルクロライド(53.0グラム、0.285モル)、2−エチルヘキサノール(28.6グラム、0.22モル)、トリエチルアミン(30.2グラム、0.30モル)、4−ジメチルアミノピリジン(6.98グラム、0.57モル)、および無水トルエン(420ml)を加えた。フラスコの内容物を還流温度で16時間加熱し、室温まで冷却した。ジエチルエーテル(300ml)で希釈した。エーテル抽出物を希HCl(1質量%、3×100ml)で、続いて飽和重炭酸ナトリウム溶液(3×100ml)、食塩水(3×100ml)で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、そして減圧で濃縮して、粗生成物57.2グラムが黄色油として生じた。1H NMR(CDCl3)δ8.3(d,2H)、8.2(d,2H)、4.3(d,2H)、1.75(heptet,1H)、1.2−1.6(m,8H)、0.8−1.0(m,6H)。
【0134】
工程2:2−エチルヘキシル−4−アミノベンゾエートの製造
【0135】
【化16】

【0136】
2−エチルヘキシル−4−アミノベンゾエート(20.0グラム、0.072モル)の酢酸エチル100ml溶液(10%パラジウム活性炭0.36グラム含有)を、50psiで2時間水素化した。溶液をろ過し、減圧で濃縮して、生成物17.3グラムが黄色固形物として生じた。1H NMR(CDCl3)δ7.85(d,2H)、6.65(d,2H)、4.75(bs,2H)、4.15(d,2H)、1.7(heptet,1H)、1.2−1.5(m,8H)、0.8−1.0(m,6H)。
【0137】
工程3:2−エチルヘキシル−4−[(4−ニトロフェニル)アミノ]ベンゾエートの製造
【0138】
【化17】

【0139】
磁気撹拌器、還流冷却器および窒素導入口を備えたフラスコに、2−エチルヘキシル−4−アミノベンゾエート(8.38グラム、30.0ミリモル)、1−ブロモ−4−ニトロベンゾフラン(5.05グラム、25.0ミリモル)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)(0.57グラム、0.625ミリモル)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン(1.04グラム、1.88ミリモル)、ナトリウムtert−ブトキシド(3.6グラム、37.5ミリモル)、および無水トルエン(80ml)を加えた。フラスコの内容物を80℃で3日間加熱し、室温まで冷却し、そしてシリカゲルのパッドでろ過した。次に、シリカゲルのパッドをジクロロメタン(200ml)と酢酸エチル(200ml)とで溶離した。一緒にした有機層を減圧で濃縮して、黄色固形物(11.0グラム)が生じた。固形物をシリカゲルのクロマトグラフに掛け、ヘキサン/酢酸エチルで勾配溶離し、そののちヘキサンと酢酸エチルの混合物から再結晶させて、所望の生成物3.5グラムを薄黄色固体粉末として得た。1H NMR(CDCl3)δ8.15(d,2H)、8.05(d,2H)、7.21(d,2H)、7.1(d,2H)、6.7(bs,1H)、4.22(d,2H)、1.7(heptet,1H)、1.2−1.6(m,8H)、0.8−1.0(m,6H)。
【0140】
(比較のためのA5成分、N−{4−[(2−エチルヘキシル)オキシ]フェニル}−N−(4−ニトロフェニル)アミンの製造)
【0141】
工程1:1−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−4−ニトロベンゼンの製造
【0142】
【化18】

【0143】
磁気撹拌器、還流冷却器および窒素導入口を備えたフラスコに、4−ニトロフェノール(27.14グラム、0.195モル)、炭酸カリウム(51.13グラム、0.370モル)、1−メチル−ピロリジン−2−オン(180ml)中のヨウ化2−エチルヘキシル(45.63グラム、0.185モル)を加えた。フラスコの内容物を100℃で3時間加熱し、室温まで冷却し、酢酸エチルと水とに分配した。水性層を酢酸エチル(3×100ml)で抽出した。酢酸エチル抽出物を1N水酸化ナトリウム溶液(4×75ml)、食塩水(3×100ml)で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、そして減圧で濃縮して、粗生成物29.9グラムが黄色油として生じた。クーゲルロール蒸留装置を用いて生成物から余分なヨウ化2−エチルヘキシルを取り除いて、精製物20グラムを黄色油として得た。1H NMR(CDCl3)δ8.2(d,2H)、6.95(d,2H)、3.95(d,2H)、1.75(heptet,1H)、1.2−1.6(m,8H)、0.85−1.0(m,6H)。
【0144】
工程2:4−[(2−エチルヘキシル)オキシ]アニリンの製造
【0145】
【化19】

【0146】
1−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−4−ニトロベンゼン(18.5グラム、0.074モル)の酢酸エチル80ml溶液(10%パラジウム活性炭1.86グラム含有)を、50psiで8時間水素化した。溶液をろ過し、そして減圧で濃縮して、生成物10.0グラムが濃黄色油として生じた。1H NMR(CDCl3)δ6.75(d,2H)、6.6(d,2H)、3.75(d,2H)、3.4(bs,2H)、1.7(heptet,1H)、1.2−1.6(m,8H)、0.8−1.0(m,6H)。
【0147】
工程3:N−{4−[(2−エチルヘキシル)オキシ]フェニル}−N−(4−ニトロフェニル)アミンの製造
【0148】
【化20】

【0149】
磁気撹拌器、還流冷却器および窒素導入口を備えたフラスコに、4−[(2−エチルヘキシル)オキシ]アニリン(10.0グラム、0.045モル)、1−フルオロ−4−ニトロベンゼン(2.13グラム、0.015モル)、および無水メチルスルホキシド(40ml)を加えた。フラスコの内容物を100℃で2日間加熱し、室温まで冷却し、ジエチルエーテル(300ml)と水(100ml)とに分配した。エーテル抽出物を食塩水(2×50ml)で洗った。エーテル抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、そして減圧で濃縮して、暗褐色油が生じた。暗褐色油をシリカゲルのクロマトグラフィーに掛け、ヘキサン/酢酸エチルで勾配溶離して、所望の生成物4.1グラムを暗褐色油として得た。1H NMR(CDCl3)δ8.05(d,2H)、7.1(d,2H)、6.9(d,2H)、6.75(d,2H)、6.2(bs,1H)、3.85(d,2H)、1.75(heptet,1H)、1.2−1.7(m,8H)、0.8−1.0(m,6H)。
【0150】
(B1:フェニル−(1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−イル)−アミンの製造)
【0151】
【化21】

【0152】
6−アニリノキノリン(ブー・ホイ(Buu-Hoi)、ロイヤー(Royer)及びヒューバート・ハバート(Hubert-Habart)著、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサエティ(J. Chem. Soc.)、1956年、p.2048−2051に記載されているようにして製造した)20.4グラムの酢酸400ml溶液(酸化白金(IV)1.3グラム含有)を、パール低圧水素化器にて30psiで4.2時間水素化した。溶液をろ過し、そしてろ液を6N水酸化ナトリウム水溶液で中和した。水性相をジクロロメタンで3回抽出した。一緒にしたジクロロメタン層を6N水酸化ナトリウム水溶液で、続いて食塩水で洗った。ジクロロメタン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、そして減圧で濃縮して、薄黒い残留物20.4グラムが生じた。薄黒い残留物を95%エタノールから再結晶させて、所望の生成物15.2グラムが灰色固形物として生じた。1H NMR(CDCl3)δ7.2(m,2H)、6.8(m,4H)、6.45(d,1H)、5.35(bs,1H)、3.4(bs,1H)、3.25(t,2H)、2.75(t,2H)、1.95(p,2H)。
【0153】
B2:イルガノックス(Irganox、商品名)L57(2,4,4−トリメチルペンテンでアルキル化したジフェニルアミン)、チバ・ガイギー(Ciba-Geigy)製
【0154】
B3:4−(2−オクチルアミノ)ジフェニルアミン、TCIアメリカ(TCI America)製
【0155】
(B4:N−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−8−アミンの製造)
【0156】
【化22】

【0157】
磁気撹拌器、還流冷却器および窒素導入口を備えたフラスコに、8−アミノキノリン(14.4グラム、0.10モル)、4−tert−ブチルブロモベンゼン(21.3グラム、0.10モル)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)(1.8グラム、0.002モル)、rac−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(2.5グラム、0.004モル)、ナトリウムtert−ブトキシド(19.4グラム、0.20モル)、および無水トルエン(150ml)を加えた。フラスコの内容物を4日間還流し、室温まで冷却し、そしてシリカゲルのパッドでろ過した。次に、シリカゲルのパッドをジクロロメタン(240ml)で溶離した。一緒にした有機層を減圧で濃縮して暗青色固形物が生じた。固形物をシリカゲルのクロマトグラフィーに掛け、ヘキサン/酢酸エチル(20:1)で溶離して、所望の生成物23グラムを黄色固形物として得た。1H NMR(CDCl3)δ8.8(m,1H)、8.2(bs,1H)、8.1(d,1H)、7.1−7.5(m,9H)、1.35(s,9H)。
【0158】
上記で製造したN−(4−tert−ブチルフェニル)キノリン−8−アミン2.46グラムの酢酸100ml溶液(酸化白金(IV)0.15グラム含有)を、パール低圧水素化器にて45psiで1.5時間水素化した。溶液を珪藻土でろ過し、減圧で濃縮し、そして3N水酸化ナトリウム水溶液で中和した。水性相を水で希釈し、酢酸エチルで3回抽出した。一緒にした酢酸エチル層を食塩水で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、そして減圧で濃縮して、暗青色油2.5グラムが生じた。油をシリカゲルのクロマトグラフィーに掛け、ヘキサン/酢酸エチル(20:1)で溶離して、所望の生成物2.0グラムを黄色油として得た。1H NMR(CDCl3)δ7.2(d,2H)、6.5−6.95(m,5H)、4.95(bs,1H)、3.3(t,2H)、2.8(t,2H)、1.9(p,2H)、1.3(s,9H)。
【0159】
(B5:N−(4−ブチルフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−8−アミンの製造)
【0160】
【化23】

【0161】
磁気撹拌器、還流冷却器および窒素導入口を備えたフラスコに、8−ヒドロキシキノリン(20.0グラム、0.14モル)、4−ブチルアニリン(24.0グラム、0.16モル)、およびヨウ素(0.52グラム、2.0ミリモル)を加えた。フラスコの内容物を8日間還流し、室温まで冷却し、そしてトルエンで希釈した。トルエン溶液を珪藻土でろ過し、更にジクロロメタンで希釈した。溶液を5%水酸化ナトリウム水溶液で3回洗い、水で3回洗った。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、そして減圧で濃縮して、暗褐色油が生じた。油をシリカゲルのクロマトグラフに掛け、ヘキサン/酢酸エチル(10:1)で溶離して、褐色油3.7グラムを得た。
【0162】
油を酸化白金(IV)0.22グラムを含む酢酸70mL中で、パール低圧水素化器にて35psiで4.5時間水素化した。溶液をろ過し、そしてろ液を6N水酸化ナトリウム水溶液で中和した。水性相をジクロロメタンで3回抽出した。一緒にしたジクロロメタン層を6N水酸化ナトリウム水溶液で、続いて食塩水で洗った。ジクロロメタン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、そして減圧で濃縮して、暗褐色油3.9グラムが生じた。油をシリカゲルのクロマトグラフィーに掛け、ヘキサン/酢酸エチルで勾配溶離して、所望の生成物2.1グラムを黄色油として得た。1H NMR(CDCl3)δ7.05(d,2H)、6.95(d,1H)、6.80(d,1H)、6.70(d,2H)、6.6(t,1H)、4.95(bs,1H)、4.05(bs,1H)、3.3(t,2H)、2.8(t,2H)、2.5(t,2H)、1.95(p,2H)、1.55(p,2H)、1.35(h,2H)、0.95(t,3H)。
【0163】
[性能実施例]
選択した実施例の生成物の酸化研究を、E.S.ヤマグチ(E.S.Yamaguchi)、外著、トライボロジー・トランスアクションズ(Tribology Transactions)、第42(4)巻、p.895−901、1999年に記載されているように、バルク油酸化台上試験にて行った。この試験では、一定質量の油による定圧での酸素消費の速度をモニタした。試料25グラム当りの急速酸素消費に要した時間(誘導時間)を、171℃、酸素圧1.0気圧で測定した。試料を毎分1000回転で撹拌した。だが、結果は、試料100グラム当りの急速酸素消費に要した時間で報告する。油は、油溶性ナフテネートとして加えた触媒を含み、鉄26ppm、銅45ppm、鉛512ppm、マンガン2.3ppmおよびスズ24ppmであった。
【0164】
(性能実施例)
a)成分のAI乃至A5式のニトロジフェニルアミンと、b)成分のB1、B2及びB3式のジアリールアミンとの混合物の性能を酸化台上試験で評価するために、基準配合物を製造した。基準配合物−配合物Aは、2+種基油中に、ジアルキルジチオリン酸亜鉛12.5ミリモル/kg、ポリイソブテニルコハク酸イミド5.0%、過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤35.0ミリモル/kg、カルシウムフェネート清浄剤15.0ミリモル/kg、米国特許第6962896号(ルーエ)明細書に記載のようにして製造したモリブデン含有ポリイソブテニルコハク酸イミド(このポリイソブテニルコハク酸イミドはモリブデン5.5質量%を含む)0.25質量%、およびVI向上剤0.3%を含有した。基準配合物Aを上記のバルク油酸化台上試験で試験して、その結果、急速O2消費に対して10時間の値を得た。
【0165】
性能実施例で注目に値するのは、ニトロジフェニルアミンそれだけでは酸化台上試験で基準を越える改善が全く無いことである、例えば、実施例1−4および比較例において性能実施例aと性能実施例bとの比較に注目されたい。
【0166】
実施例1
──────────────────────────────────
性能 配合物Aに仕上げ処理した混合物 結果
実施例 A1成分 B2成分 (急速O2
濃度(質量%) 濃度(質量%) 消費時間)
──────────────────────────────────
a 0 0 10.0
b 1.0 0.0 10.0
c 0 0.5 23.5
d 0.50 0.5 27.0
e 0.75 0.5 27.5
f 1.00 0.5 51.5
──────────────────────────────────
【0167】
実施例1は、アルキル化ジフェニルアミン(B2成分)0.5質量%に、アルキル化ニトロジフェニルアミン(A1成分)0.5−1.00質量%を添加することによる、潤滑油の酸化安定性の改善を示している。1.00質量%のアルキル化ニトロジフェニルアミン(実施例1b)だけでは、基準配合物(実施例1a)に対して改善を示さない。アルキル化ジフェニルアミン(実施例1c)は、酸化安定性を改善する。アルキル化ニトロジフェニルアミンとアルキル化ジフェニルアミンの組合せは、それ以上の酸化安定性の改善を示す(実施例1d−f)。
【0168】
実施例2
──────────────────────────────────
性能 配合物Aに仕上げ処理した混合物 結果
実施例 A1成分 B1成分 (急速O2
濃度(質量%) 濃度(質量%) 消費時間)
──────────────────────────────────
a 0 0 10.0
b 1.0 0.0 10.0
c 0 0.5 36.0
d 0.16 0.5 39.0
e 0.33 0.5 50.0
f 0.50 0.5 54.0
g 0.75 0.5 75.0
h 1.00 0.5 106.0
──────────────────────────────────
【0169】
実施例2は、複素環アミノジフェニルアミン(B1成分)0.5質量%に、アルキル化ニトロジフェニルアミン(A1成分)0.16−1.00質量%を添加することによる、潤滑油の酸化安定性の改善を示している。1.00質量%のアルキル化ニトロジフェニルアミン(実施例2b)だけでは、基準配合物(実施例2a)に対して改善を示さない。複素環アミノジフェニルアミン(実施例2c)は、酸化安定性を改善する。アルキル化ニトロジフェニルアミンと複素環アミノジフェニルアミンの組合せは、それ以上の酸化安定性の改善を示す(実施例2d−h)。
【0170】
実施例3
──────────────────────────────────
性能 配合物Aに仕上げ処理した混合物 結果
実施例 A1成分 B3成分 (急速O2
濃度(質量%) 濃度(質量%) 消費時間)
──────────────────────────────────
a 0 0 10.0
b 1.0 0.0 10.0
c 0 0.5 32.5
d 0.75 0.5 44.0
e 1.00 0.5 53.0
f 1.50 0.5 95.5
──────────────────────────────────
【0171】
実施例3は、アミノジフェニルアミン(B3成分)0.5質量%に、アルキル化ニトロジフェニルアミン(A1成分)0.75−1.50質量%を添加することによる、潤滑油の酸化安定性の改善を示している。1.00質量%のアルキル化ニトロジフェニルアミン(実施例3b)だけでは、基準配合物(実施例3a)に対して改善を示さない。アミノジフェニルアミン(実施例3c)は、酸化安定性を改善する。アルキル化ニトロジフェニルアミンとアミノジフェニルアミンの組合せは、それ以上の酸化安定性の改善を示す(実施例3d−f)。
【0172】
実施例4
──────────────────────────────────
性能 配合物Aに仕上げ処理した混合物 結果
実施例 A3成分 B3成分 (急速O2
濃度(質量%) 濃度(質量%) 消費時間)
──────────────────────────────────
a 0 0 10.0
b 1.0 0.0 10.0
c 0 0.5 33.5
d 0.75 0.5 58.0
e 1.00 0.5 57.5
f 1.50 0.5 78.0
──────────────────────────────────
【0173】
実施例4は、アミノジフェニルアミン(B3成分)0.5質量%に、アルキルアミノニトロジフェニルアミン(A3成分)0.75−1.50質量%を添加することによる、潤滑油の酸化安定性の改善を示している。1.00質量%のアルキルアミノニトロジフェニルアミン(実施例4b)だけでは、基準配合物(実施例4a)に対して改善を示さない。アミノジフェニルアミン(実施例4c)は、酸化安定性を改善する。アルキル化ニトロジフェニルアミンとアミノジフェニルアミンの組合せは、それ以上の酸化安定性の改善を示す(実施例4d−f)。
【0174】
実施例5
──────────────────────────────────
性能 配合物Aに仕上げ処理した混合物 結果
実施例 A3成分 B3成分 C成分 (急速O2
濃度(質量%) 濃度(質量%) 濃度(質量%) 消費時間)
──────────────────────────────────
5.1 0 0 − 10.0
5.2 0.75 0.5 − 58.0
5.3 0.75 0.5 0.375 62
5.4 1.0 0.5 0.50 69.5
5.5 1.5 0.5 0.75 86.5
──────────────────────────────────
【0175】
C成分は、基準配合物に対して加えた、米国特許第6962896号(ルーエ)明細書に記載のようにして製造したモリブデン含有ポリイソブテニルコハク酸イミド(このポリイソブテニルコハク酸イミドはモリブデン5.5質量%を含む)の質量%である。従って、例えば、5.1及び5.2ではC成分を基準の0.25質量%使用したが、一方5.3−5.5では欄に開示した量で仕上げ処理した。実施例5.3−5.4は、酸化安定性の改善を実証している。
【0176】
比較例1
──────────────────────────────────
性能 配合物Aに仕上げ処理した混合物 結果
実施例 A4成分 B3成分 (急速O2
濃度(質量%) 濃度(質量%) 消費時間)
──────────────────────────────────
a 0 0 10.0
b 1.0 0.0 10.0
c 0 0.5 33.5
d 0.75 0.5 32.0
e 1.00 0.5 33.0
f 1.50 0.5 19.5
──────────────────────────────────
【0177】
比較例2
──────────────────────────────────
性能 配合物Aに仕上げ処理した混合物 結果
実施例 A5成分 B3成分 (急速O2
濃度(質量%) 濃度(質量%) 消費時間)
──────────────────────────────────
a 0 0 10.0
b 1.0 0.0 10.0
c 0 0.5 33.5
d 0.75 0.5 33.0
e 1.00 0.5 35.5
f 1.50 0.5 38.5
──────────────────────────────────
【0178】
比較例1及び2は、アルコキシ置換ニトロジフェニルアミン(比較例2)、およびエステル置換ニトロジフェニルアミン(比較例1)と、アミノジフェニルアミンとの組合せが、潤滑油の酸化安定性のそれ以上の改善を示さないことを実証している。これは、コシュキン、L.V.(Koshkin,L.V.)、ロジオノバ、N.M.(Rodionova,N.M.)、ジュジナ、L.N.(Zyuzina,L.N.)、ヤブロンスキー、O.P.(Yablonski,O.P.)著、イズヴェスチヤ・ヴィッシク・ウケブニク・ザヴェデニー、キミヤ・イ・キミケスカヤ・テクノロジヤ(Izvestiya Vysshikh Uchebnykh Zavedenii, Khimiya i Khimicheskaya Tekhnologiya)、1985年、第28(8)号、p.97−100に開示されているように、ジフェニルアミンにアルコキシ基が結合しているのとは正反対である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油、および下記の成分を含む油溶性の相乗効果を示す酸化防止剤の混合物を含有する組成物:
a)0.1乃至10質量%の下記I式に従う第一の酸化防止剤:
【化1】




ただし、R1は、炭素原子数3〜24のアルキル、−NHR、及び−NRR、ただし、Rは独立に選ばれる炭素原子数1〜18のアルキルである、からなる群より選ばれ、R2は、水素、または炭素原子数1〜20のアルキルである、
および
b)0.1乃至5質量%の下記式から選ばれる第二の酸化防止剤:
【化2】




ただし、式中、R3およびR4は各々独立に、水素、または炭素原子数1〜20のアルキルであり;nは、1〜3の整数であり;R5は、アルキル、アルコキシ、アラルキルまたはアルカリールから選ばれた炭素原子数3〜24の分枝鎖及び直鎖の炭化水素基、もしくは−NHR6、−NR67、ただし、R6およびR7は独立に選ばれる炭素原子数1〜18のアルキルであるが、R4がR5に隣接して位置する場合には、R6はR4と共に五又は六員複素環を形成することができる、からなる群より選ばれる。
【請求項2】
a)成分とb)成分との比が約1.25:1乃至約5:1である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物中の酸化防止剤の混合物の全質量%が5質量%未満である請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物中の酸化防止剤の混合物の全質量%が2質量%未満である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
a)成分において、R2が水素である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
1が炭素原子数4〜18のアルキルである請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
1が、−NHRまたは−NRR、ただし、Rは独立に選ばれる炭素原子数3〜12のアルキル基である、である請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
b)成分において、R5が、炭素原子数3〜24のアルキル、または−NHR6、−NR67、ただし、R6およびR7は独立に選ばれる炭素原子数1〜18のアルキルである、から選ばれる請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
b)成分において、R5が炭素原子数4〜18のアルキルから選ばれる請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
b)成分が、モノアルキル化ジフェニルアミン、ジアルキル化ジフェニルアミン、トリアルキル化ジフェニルアミンおよびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
b)成分が、ブチルジフェニルアミン、ジ−ブチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ−オクチルジフェニルアミン、ノニルジフェニルアミン、ジ−ノニルジフェニルアミン、t−ブチル−t−オクチルジフェニルアミンおよびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
b)成分において、R5が、−NHR6、−NR67、ただし、R6およびR7は独立に選ばれる炭素原子数1〜18のアルキルである、から選ばれる請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
b)成分において、R6およびR7が独立に選ばれる炭素原子数6〜12のアルキルである請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
b)成分において、R5が、−NHR6、−NR67、ただし、R6およびR7は独立に選ばれる炭素原子数1〜18のアルキルであるか、あるいはR4がR5に隣接して位置する場合には、R6はR4と共に五又は六員複素環を形成することができる、から選ばれる請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
4がR5に隣接して位置し、そしてR6がR4と共に五又は六員複素環を形成している請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
4がR5に隣接して位置し、そしてR6がR4と共に六員複素環を形成している請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
さらに、c)成分として油溶性モリブデン化合物を含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
c)成分が、(i)酸性モリブデン化合物と、コハク酸イミド、カルボン酸アミド、炭化水素モノアミン、リンアミド、チオリンアミド、マンニッヒ塩基、分散型粘度指数向上剤またはそれらの混合物からなる分散剤群から選ばれる塩基性窒素化合物とを、極性の促進剤の存在下で反応させてオキシモリブデン錯体にすることにより製造された、未硫化又は硫化のオキシモリブデン含有組成物である請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
塩基性窒素化合物がコハク酸イミドである請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
さらに、ジチオリン酸金属塩、リン酸エステル、アミンホスフェートおよびアミンホスフィネート、硫黄含有リン酸エステル、リンアミドおよびホスホンアミドからなる群より選ばれる油溶性のリン含有耐摩耗性化合物を含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
該リンエステルが、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル、ホスフィン・オキシド、亜リン酸エステル、亜ホスホン酸エステル、亜ホスフィン酸エステルおよびホスフィンからなる群より選ばれる請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
油溶性のリン含有耐摩耗性化合物がジチオリン酸金属塩である請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
ジチオリン酸金属塩がジアルキルジチオリン酸亜鉛である請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
さらに、ヒンダードフェノール、ヒンダードビスフェノール、硫化フェノール、硫化オレフィン、アルキルスルフィド、ポリスルフィド、ジアルキルジチオカルバメートおよびフェノチアジンからなる群より選ばれる補助酸化防止剤を含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
主要量の潤滑油組成物、および第二級ジアリールアミンとニトロ置換第二級ジアリールアミンの混合物から選ばれる油溶性の酸化防止剤の組合せを含有する、潤滑油組成物での使用が有効な酸化防止剤組成物。
【請求項26】
さらに、油溶性のモリブデン化合物を含有する請求項25に記載の酸化防止剤組成物。
【請求項27】
潤滑油および第二級ジアリールアミン酸化防止剤を含有する潤滑油組成物において酸化の開始を遅らせる方法であって、該潤滑油組成物に有効量の下記I式のニトロ含有化合物を添加し、そしてそののち潤滑油組成物を酸化条件にさらすことを含む方法:
【化3】




ただし、R1は、炭素原子数3〜24のアルキル、−NHR、−NRR、ただし、Rは独立に選ばれた炭素原子数1〜18のアルキルである、からなる群より選ばれ、R2は、水素、または炭素原子数1〜20のアルキルである。

【公開番号】特開2009−1798(P2009−1798A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160990(P2008−160990)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】