説明

ニューレグリンの下流タンパク質であるニューキナーゼ

本発明は、ニューレグリンシグナリング経路における下流のプロテインキナーゼであるニューキナーゼに関する。特定の態様において、本発明は、単離されたニューキナーゼをコードする核酸、ニューキナーゼポリペプチド、ニューキナーゼ核酸にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、及びニューキナーゼをコードする配列を含む発現ベクターを提供する。本発明は、ニューキナーゼに関する、単離された宿主細胞、抗体、トランスジェニック非ヒト動物、組成物、及びキットを更に提供する。その他の態様において、本発明は、心臓機能障害に対する素因を同定する方法、ニューキナーゼの存在を検出する方法、ニューキナーゼ核酸、ニューキナーゼ活性に影響を及ぼす薬剤をスクリーニングする方法、及びニューキナーゼ活性を調整する方法を更に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1. 発明の分野)
本発明は、ニューレグリンシグナリング経路における下流のプロテインキナーゼであるニューキナーゼ(neukinase)に関する。特定の態様において、本発明は、単離されたニューキナーゼをコードする核酸、ニューキナーゼポリペプチド、ニューキナーゼ核酸にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、及びニューキナーゼをコードする配列を含む発現ベクターを提供する。本発明は、ニューキナーゼに関する、単離された宿主細胞、抗体、トランスジェニック非ヒト動物、組成物、及びキットを更に提供する。その他の態様において、本発明は、心臓機能障害に対する素因を同定する方法、ニューキナーゼの存在を検出する方法、ニューキナーゼ核酸、ニューキナーゼ活性に影響を及ぼす薬剤をスクリーニングする方法、及びニューキナーゼ活性を調整する方法を更に提供する。
【背景技術】
【0002】
(2. 発明の背景)
心不全は、およそ5,000,000人のアメリカ人に影響を及ぼし、毎年550,000を超える新患が、本状態と診断される。心不全のための現在の薬物療法は、主に、血管に拡張を生じさせ、血圧を下げて、心臓の労働負荷を減少させる血管拡張薬であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤に向けられる。死亡率の減少率は有意であったものの、ACE阻害剤による実際の死亡率の減少は、3%〜4%だけの平均値となり、かついくつかの潜在的な副作用がある。さらなる制限は、心不全を予防し、又は治療するためのその他の選択肢と関連する。例えば、心臓移植術は、薬物療法よりも明らかに高価かつ浸潤性であり、これは、ドナー心臓の有効性によって更に制限される。両室ペースメーカーなどの機械装置の使用も同じように浸潤性かつ高価である。従って、現在の療法の欠陥を考慮した新たな療法に対する需要があった。
【0003】
1つの有望な新療法には、心不全に罹患しているか、又は心不全を発症するリスクのある患者に対するニューレグリン(以下、「NRG」ともいう)の投与を含む。NRGには、NRG1、NRG2、NRG3、及びNRG4を含む構造的に関連した成長因子及び分化因子のファミリー、並びにこれらのアイソフォームを含む。例えば、NRG1の15個以上の異なるアイソフォームが同定されており、それらの必須の上皮細胞成長因子(EGF)様ドメインの配列の相違に基づいて、α、及びβ型として知られる2つの大きな群に分けられている。NRG1のEGF様ドメインは、サイズが50〜64アミノ酸の範囲であり、これらの受容体に結合して、活性化するために十分であることが示されている。以前の研究により、ニューレグリン-1β(NRG-1β)は、高い親和性でErbB3、及びErbB4に直接結合することができることが示された。
【0004】
最近の研究では、心臓血管疾患発症における、並びに成人の正常心機能の維持における、NRG-1β、ErbB2、及びErbB4の役割が脚光を浴びている。NRG-1βは、成人心筋細胞において筋節組織を増強することが示された。組換えNRG-1βEGF様ドメインの短期投与は、心不全の3つの異なる動物モデルにおいて、心筋作用の悪化を有意に改善し、又は悪化から保護する。更に重要なことに、NRG-1βは、心不全を経験している動物の生存を有意に延長する。これらの効果により、NRG-1βは、種々の生活習慣病による心不全のための、広域治療法、又はリード化合物として約束されることとなる。
【0005】
しかし、心不全及び/若しくは心肥大の予防、治療、又は遅延のための臨床状況において使用することができるニューレグリンシグナル伝達並びに/又は下流のニューレグリンシグナリング標的の活性化に影響を及ぼすさらなる方法に対する需要がある。
【発明の概要】
【0006】
(3. 発明の概要)
本発明は、部分的には、骨格筋ミオシン軽鎖キナーゼに対して構造的類似性を示し、かつニューレグリンシグナリング経路の下流成分として作用するニューキナーゼと称される新規プロテインキナーゼの発見に基づく。ニューキナーゼ cDNAはクローン化及びシーケンスされており、かつニューキナーゼアミノ酸配列が決定されている。上流の調節タンパク質(ニューレグリン)は、ニューキナーゼ発現、及び/又はリン酸化を増強し、これが次に下流の標的ミオシン軽鎖のリン酸化を増加させる。ニューキナーゼは心臓組織において高度に発現されるので、本発明は、心臓に対するニューレグリンの予防効果及び治療効果の根底にある新たなメカニズムを提供し、心臓血管疾患を治療するための新たな標的を同定する。
【0007】
従って、第一の態様において、本発明は、配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドであって、ミオシン軽鎖をリン酸化することができる、前記ポリペプチドを提供する。別の態様において、本発明は、配列番号2に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドであって、ミオシン軽鎖をリン酸化することができる、前記ポリペプチドを提供する。特定の実施態様において、単離されたポリペプチドは、心筋ミオシンのミオシン軽鎖をリン酸化することができる。特定の実施態様において、単離されたポリペプチドは、ラット、マウス、又はヒトを含むが限定されない哺乳動物の心筋ミオシンのミオシン軽鎖をリン酸化することができる。一つの実施態様において、単離されたポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、単離されたポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。一部の実施態様において、単離されたポリペプチドは、配列番号25のアミノ酸配列を含む。
【0008】
別の態様において、本発明は、配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする単離された核酸を提供する。特定の実施態様において、単離された核酸は、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。特定の実施態様において、単離された核酸は、配列番号3、又はその相補物から選択される少なくとも約500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも70%の同一性を有する核酸配列を含む。特定の実施態様において、単離された核酸は、配列番号3、又はその相補物の核酸配列から選択される少なくとも約500個のヌクレオチドを含む。特定の実施態様において、単離された核酸は、配列番号3、又はその相補物の核酸配列を含む。
【0009】
別の態様において、本発明は、配列番号2に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする単離された核酸を提供する。特定の実施態様において、単離された核酸は、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。一部の実施態様において、単離された核酸は、配列番号25に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。特定の実施態様において、単離された核酸は、配列番号25のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。特定の実施態様において、単離された核酸は、配列番号4、又はその相補物から選択される少なくとも約500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも70%の同一性を有する核酸配列を含む。特定の実施態様において、単離された核酸は、配列番号4、又はその相補物の核酸配列から選択される少なくとも約500個のヌクレオチドを含む。特定の実施態様において、単離された核酸は、配列番号4、又はその相補物の核酸配列を含む。
【0010】
別の態様において、本発明は、配列番号3の少なくとも約10個の連続したヌクレオチドを含む単離されたオリゴヌクレオチド、又はその相補鎖を提供する。別の態様において、本発明は、配列番号4の少なくとも約10個の連続したヌクレオチドを含む単離されたオリゴヌクレオチド、又はその相補鎖を提供する。特定の実施態様において、単離されたオリゴヌクレオチドは、配列番号5、又は配列番号6の核酸配列を含む。
【0011】
別の態様において、本発明は、ポリペプチドをコードする単離された核酸を含むベクターであって、該コードされたポリペプチドがミオシン軽鎖をリン酸化することができる、前記ベクターを提供する。特定の実施態様において、ベクターは、配列番号3の核酸配列から選択される少なくとも約500個のヌクレオチドを含む。特定の実施態様において、ベクターは、配列番号3の核酸配列を含む。特定の実施態様において、ベクターは、配列番号4の核酸配列から選択される少なくとも約500個のヌクレオチドを含む。特定の実施態様において、ベクターは、配列番号4の核酸配列を含む。特定の実施態様において、ベクターにおけるニューキナーゼ核酸配列は、転写制御配列に作動可能に連結される。特定の実施態様において、ベクターは、プラスミド、コスミド、ウイルス、及びバクテリオファージを含む群から選択される。特定の実施態様において、ベクターは、配列番号1を含むポリペプチドを、前記ベクターで形質転換された細胞において発現する。特定の実施態様において、ベクターは、配列番号2を含むポリペプチドを、前記ベクターで形質転換された細胞において発現する。特定の実施態様において、ベクターは、配列番号25を含むポリペプチドを、前記ベクターで形質転換された細胞において発現する。
【0012】
別の態様において、本発明は、本発明に従ったニューキナーゼ核酸を含む単離された宿主細胞を提供する。別の態様において、本発明は、ニューキナーゼを発現するベクターを含む単離された宿主細胞を提供する。特定の実施態様において、単離された宿主細胞は、新生児ラット心室筋細胞である。特定の実施態様において、単離された宿主細胞は、H9c2(2-1)細胞である。
【0013】
別の態様において、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。別の態様において、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。一部の実施態様において、抗体は、配列番号25のアミノ酸配列を含むニューキナーゼポリペプチドに特異的に結合する。特定の実施態様において、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、哺乳動物抗体、又はヒト抗体である。
【0014】
別の態様において、本発明は、ニューキナーゼポリペプチドをコードする核酸を発現するトランスジェニック非ヒト動物を提供する。特定の実施態様において、トランスジェニック非ヒト動物ニューキナーゼポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。 特定の実施態様において、トランスジェニック非ヒト動物ニューキナーゼポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、トランスジェニック非ヒト動物ニューキナーゼポリペプチドは、配列番号25のアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、トランスジェニック非ヒト動物は、ニューキナーゼポリペプチドを過剰発現、又は過小発現する。一つの実施態様において、トランスジェニック非ヒト動物は、配列番号3、又はその相補物に対して少なくとも70%の同一性を有する核酸を含む。別の実施態様において、トランスジェニック非ヒト動物は、配列番号4、又はその相補物に対して少なくとも70%の同一性を有する核酸を含む。特定の実施態様において、トランスジェニック非ヒト動物は、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、又はヒツジを含むが、限定されない哺乳動物である。
【0015】
別の態様において、本発明は、その生殖細胞がニューキナーゼをコードする内因性核酸配列にホモ接合性無発現変異を含むトランスジェニック非ヒト動物であって、該突然変異は、ニューキナーゼ転写に対して逆向きの、例えばネオマイシンカセットの挿入によって作成され、かつ前記突然変異は、前記動物が機能的なニューキナーゼポリペプチドを発現しないように、胚性幹細胞における相同組換えによって前記動物に導入された、前記トランスジェニック非ヒト動物を提供する。特定の実施態様において、トランスジェニック非ヒト動物は、妊性であり、前記無発現変異をその子孫に伝達する。具体的な実施態様において、トランスジェニック非ヒト動物は、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、又はヒツジを含むが、限定されない、哺乳動物である。
【0016】
別の態様において、本発明は、ニューキナーゼ活性に影響を及ぼす薬剤をスクリーニングする方法であって:a)ニューキナーゼポリペプチドを発現する細胞に前記薬剤を投与すること;及びb)細胞におけるニューキナーゼの生物活性を評価すること;を含む、前記方法を提供する。特定の実施態様において、生物活性は、自己阻害、心筋ミオシンのリン酸化、及びニューキナーゼの発現からなる群から選択される。
【0017】
別の態様において、本発明は、ニューキナーゼ活性に影響を及ぼす薬剤をスクリーニングする方法であって:a)本発明に従ったトランスジェニック非ヒト動物に前記薬剤を投与すること;及びb)動物を前記薬剤によって影響を受ける心機能の変化について評価することを含む、前記方法を提供する。特定の実施態様において、心機能は、心室中隔サイズ、左心室末端拡張期寸法、後壁厚、左心室末端収縮期寸法、駆出率、短縮率、及び心周期からなる群から選択される。
【0018】
別の態様において、本発明は、試料におけるニューキナーゼ核酸の存在を検出する方法であって:(a)該試料をニューキナーゼ核酸にハイブリダイズする核酸と接触させること;及び(b)該核酸が試料において核酸に結合するかどうかを決定すること;を含む、前記方法を提供する。
【0019】
別の態様において、本発明は、対象が遺伝的に心臓機能障害になりやすいかどうかを同定するための方法であって、対象からの生体試料において心臓機能障害と関連するニューキナーゼ遺伝子を検出することを含む、前記方法を提供する。特定の実施態様において、心臓機能障害は、肥大性心筋症、又は心不全である。
【0020】
別の態様において、本発明は、本発明のニューキナーゼポリペプチド、及び医薬として許容し得る担体を含む組成物を提供する。別の態様において、本発明は、配列番号1を含むアミノ酸配列を有するポリペプチド、及び医薬として許容し得る担体を含む組成物を提供する。別の態様において、本発明は、配列番号2を含むアミノ酸配列を有するポリペプチド、及び医薬として許容し得る担体を含む組成物を提供する。一部の実施態様において、組成物は、配列番号25を含むアミノ酸配列を有するポリペプチド、及び医薬として許容し得る担体を含む。
【0021】
別の態様において、本発明は、本発明のニューキナーゼをコードする核酸、及び医薬として許容し得る担体を含む組成物を提供する。別の態様において、本発明は、配列番号1を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び医薬として許容し得る担体を含む組成物を提供する。特定の実施態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド配列を含む。別の態様において、本発明は、配列番号2を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び医薬として許容し得る担体を含む組成物を提供する。一部の実施態様において、組成物は、配列番号25を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び医薬として許容し得る担体を含む。特定の実施態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号4のヌクレオチド配列を含む。
【0022】
別の態様において、本発明は、i)配列番号3の少なくとも10個の連続したヌクレオチド、又はその相補鎖を含む単離されたオリゴヌクレオチド;及びii)容器;を含むキットを提供する。特定の実施態様において、キットは、配列番号3の少なくとも15個の連続したヌクレオチド、又はその相補鎖を含むオリゴヌクレオチドを含む。
【0023】
別の態様において、本発明は、i)配列番号4の少なくとも10個の連続したヌクレオチド、又はその相補鎖を含む単離されたオリゴヌクレオチド;及びii)容器;を含むキットを提供する。特定の実施態様において、キットは、配列番号4の少なくとも15個の連続したヌクレオチド、又はその相補鎖を含むオリゴヌクレオチドを含む。
【0024】
別の態様において、本発明は、ニューキナーゼ活性を調整する方法であって、ニューキナーゼポリペプチドの自己阻害ドメインを、このようなドメインを阻害する化合物で阻害することを含む、前記方法を提供する。特定の実施態様において、化合物は、Ca2+/カルモジュリンである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
(4. 図面の簡単な説明)
【図1】ラット心臓、脳、脾臓、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、及び精巣組織におけるラットニューキナーゼ mRNA発現のノーザンブロット解析を示す。β-アクチン特異的なプローブとのハイブリダイゼーションは、添加対照として役立つ。
【0026】
【図2】ヒト腸、肝臓、心臓、骨格筋、肺、腎臓、子宮、脾臓、及び甲状腺組織におけるヒトニューキナーゼタンパク質発現のウエスタンブロット分析を示す。膜を抗ニューキナーゼウサギポリクローナル抗体でプローブした。抗GAPDH抗体でのプロービングは、添加対照として役に立つ。
【0027】
【図3】無細胞ニューキナーゼ活性アッセイにおけるリン酸化された調節性ミオシン軽鎖(RLC-P)のレベルを示す。組換えで発現させたニューキナーゼ及びRLCを、Ca2+及びカルモジュリン(CaM)、-/+ EGTAの有無において同時インキュベートした。RLCリン酸化は、抗-RLC-P抗体をプローブとして使用するウエスタンブロット解析によって評価した。
【0028】
【図4】ラットニューキナーゼ(r.NK)、ヒトニューキナーゼ(h.NK)、及びヒト骨格ミオシン軽鎖キナーゼ(s.MLCK;アクセッション番号NP_149109)のアミノ酸配列整列を示す。暗く陰影をつけたボックスは完全に保存された残基を表し、中程度に陰影をつけたボックスは、同一の残基を表し、及び明るく陰影をつけたボックスは類似する残基を表す。骨格ミオシン軽鎖キナーゼのセリン/スレオニンプロテインキナーゼ触媒ドメインには、下線を引いてある(残基291〜540)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(5. 発明の詳細な記載)
本開示は、細胞にトランスフェクトされたときに、ニューキナーゼタンパク質を産生することができる単離されたcDNA分子を初めて提供する。ニューキナーゼタンパク質は、とりわけ、肥大性心筋症、及び中空心室肥大などの、心臓機能障害、心肥大、並びに心筋症の特定の形態に関連すると考えられる。本開示は、このcDNAの分子、ヌクレオチド配列、及びこのcDNAによってコードされるニューキナーゼタンパク質のアミノ酸配列を提供する。
【0030】
本明細書においてニューキナーゼ cDNAのヌクレオチド配列を提供したが、cDNA分子の相補DNA鎖、及びストリンジェントな条件下でニューキナーゼ cDNA分子にハイブリダイズするDNA分子、又はこれらの相補鎖も、対応して提供してある。このようなハイブリダイズする分子には、ヌクレオチド置換、欠失、及び添加を含む軽微な配列変化のみが異なっているDNA分子を含む。また、該cDNA分子の少なくとも一部を含む単離されたオリゴヌクレオチド、又はその相補鎖も、本発明に包含される。これらのオリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応法に使用するための有効なDNAハイブリダイゼーションプローブ、又はプライマーとして使用することができる。このようなプローブ、及びプライマーは、ニューキナーゼ遺伝子変異の結果として、肥大性心筋症、及び心臓機能障害のその他の形態に遺伝的になりやすい人のスクリーニング、及び診断に特に有用である。
【0031】
また、開示したDNA分子を含む組換えDNAベクター、及びこのような組換えベクターを含むトランスジェニック宿主細胞も提供される。また、開示した実施態様は、ニューキナーゼタンパク質を過剰発現若しくは過小発現するか、又はニューキナーゼタンパク質の断片若しくは変異体を過剰発現若しくは過小発現するトランスジェニック非ヒト動物を含む。
【0032】
開示の明快さのために、及び限定を目的とせず、本発明の詳細な説明は、以下において、引き続いて小区分に分けてある。本明細書において言及した全ての刊行物は、刊行物が引用される方法及び/又は材料を開示し、並びに記述するために、参照により組み込まれる。
【0033】
(5.1 定義)
他に定義されない限り、本明細書に使用される全ての専門用語、及び科学用語は、本発明が属する当業者によって当該技術分野において共通に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書において言及した全ての特許、出願、公表された出願、及びその他の刊行物は、これらの全体が参照により組み込まれる。この節に記載した定義が、参照により本明細書に組み込まれる、特許、出願、公表された出願、及びその他の刊行物に記載された定義に反するか、又はそうでなければ不一致である場合、この節に記載された定義が、参照により本明細書に組み込まれた定義を越えて勝る。
【0034】
本明細書に使用される単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「該(the)」は、文脈が他にはっきり指示しない限り、「少なくとも1つ」、又は「1つ以上」を意味する。
【0035】
本明細書に使用される、本発明に使用される「ニューレグリン」、又は「NRG」は、全てのニューレグリンアイソフォーム、ニューレグリンEGFドメイン単独、ニューレグリンEGF様ドメインを含むポリペプチド、ニューレグリン突然変異体、又は誘導体、及び以下に詳細に記載するように上記の受容体も活性化する任意の種類のニューレグリン様遺伝子産物を含むが、限定されない、ErbB2、ErbB3、ErbB4、又はこれらの組み合わせに結合し、及び活性化することができるタンパク質、又はペプチドをいう。好ましい実施態様において、本発明に使用されるニューレグリンは、ErbB2/ErbB4、又はErbB2/ErbB3ヘテロ二量体に結合し、及び活性化する。また、ニューレグリンは、NRG-1、NRG-2、NRG-3、及びNRG-4タンパク質、ニューレグリンの活性を模倣するペプチド、断片、並びに化合物を含む。本発明に使用されるニューレグリンは、上記ErbB受容体を活性化して、これらの生体反応を調整すること、例えば乳癌細胞分化、及び乳タンパク質分泌を刺激すること;神経冠細胞のシュワン細胞への分化を誘導すること;骨格筋細胞におけるアセチルコリン受容体合成を刺激すること;並びに/又は心筋細胞の分化、生存、及びDNA合成を改善すること;ができる。また、ニューレグリンには、これらの生物活性を実質的に変化させない保存的アミノ酸置換をもつこれらの変異体を含む。アミノ酸の適切な保存的置換は、当業者に公知であり、一般に、生じる分子の生物活性を変化させずに作製されるであろう。当業者であれば、一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸置換は、生物活性を実質的に変化させないことを認識する(例えば、Watsonらの文献、遺伝子の分子生物学(Molecular Biology of Gene)、第4版、Benjamin/Cummings Pub.社、p.224(1987)を参照されたい)。ニューレグリンタンパク質は、ニューレグリンタンパク質、及びペプチドを包含する。ニューレグリン核酸は、ニューレグリン核酸、及びニューレグリンオリゴヌクレオチドを包含する。
【0036】
本明細書に使用される「上皮細胞成長因子様ドメイン」、又は「EGF様ドメイン」は、ErbB2、ErbB3、ErbB4、又はこれらの組み合わせに結合して活性化し、かつその内容が参照により全て本明細書に組み込まれるWO00/64400、Holmesらの論文、Science、256:1205-1210(1992);米国特許第5,530,109号、及び第5,716,930号;Hijaziらの論文、Int. J. Oncol.、13:1061-1067(1998);Changらの論文、Nature、387:509-512(1997);Carrawayらの論文、Nature、387:512-516(1997);Higashiyamaらの論文、J. Biochem.、122:675-680(1997);並びにWO97/09425;に開示されているようなEGF受容体結合ドメインに対して構造類似性を有する、ニューレグリン遺伝子によってコードされるポリペプチドモチーフをいう。特定の実施態様において、EGF様ドメインは、ErbB2/ErbB4、又はErbB2/ErbB3ヘテロ二量体に結合し、及び活性化する。特定の実施態様において、EGF様ドメインは、NRG-1の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含む。一部の実施態様において、EGF様ドメインは、NRG-1のアミノ酸残基177-226、177-237、又は177-240に対応するアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、EGF様ドメインは、NRG-2の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、EGF様ドメインは、NRG-3の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、EGF様ドメインは、NRG-4の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、EGF様ドメインは、米国特許第5,834,229に記載されているような、Ala Glu Lys Glu Lys Thr Phe Cys Val Asn Gly Gly Glu Cys Phe Met Val Lys Asp Leu Ser Asn Proのアミノ酸配列を含む。
【0037】
本明細書に使用される「ニューキナーゼ」は、配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号25と同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質、又はペプチド、並びに配列番号1、配列番号2、又は配列番号25のアミノ酸配列と配列類似性、例えば70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれ以上のパーセント同一性を共有するタンパク質をいう。更に、これらのタンパク質は、抗原交差反応、自己阻害、リン酸化活性、及びその他を含むが、限定されない、配列番号1、配列番号2、又は配列番号25のアミノ酸配列を有するポリペプチドと共通の生物活性を有する。ニューキナーゼタンパク質は、配列番号1、配列番号2、又は配列番号25のアミノ酸配列から1つ以上の保存的、又は非保存的アミノ酸置換、付加、又は欠失を有することができることも、このような配列変化を有するタンパク質が配列番号1、配列番号2、又は配列番号25のポリペプチドと上記のような生物活性を共有する限り、想定される。また、ニューキナーゼは、ニューキナーゼ遺伝子の異なる突然変異、異なるスプライスされた形態、及び種々の配列多型から発現されるタンパク質、又はペプチドを含む。
【0038】
本明細書に使用される「ニューキナーゼの機能的断片、及び変異体」は、ニューキナーゼの1つ以上の機能を維持するこれらの断片、及び変異体をいう。ニューキナーゼをコードする遺伝子、又はcDNAは、1つ以上のニューキナーゼ機能を物質的に変化させずにかなり変異させることができることが認識される。第1に、遺伝暗号は、縮重されることが周知であり、従って、異なるコドンが同じアミノ酸をコードし得る。第2に、アミノ酸置換が導入される場合でさえ、突然変異は、保存的であり、かつニューキナーゼの必須機能に影響する要素を有さないことができる。第3に、ニューキナーゼポリペプチドの一部は、その機能の全てを障害又は除去することなく欠失させることができる。第4に、例えば、挿入、又は付加、例えばエピトープタグの付加を、その機能を障害又は除去することなくニューキナーゼに作製することができる。その他の修飾、例えばインビボ、若しくはインビトロにおいて異常アミノ酸を組み込む化学的、及び生化学的修飾を、ニューキナーゼの1つ以上の機能を実質的に障害することなく作製することができる。このような修飾には、例えばアセチル化、カルボキシル化、リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、放射性核種での標識化、及び種々の酵素修飾を含み、これらは、当業者によって容易に認識されるであろう。タンパク質を標識するための種々の方法、及びこのような目的のために有用な置換基又は標識は、当該技術分野において周知であり、標識された抗リガンド(例えば、抗体)に結合するリガンドなどの放射性同位元素、フルオロフォア、化学発光薬剤、酵素、及び抗リガンドを含む。機能的な断片、及び変異体は、長さを変化させることができる。例えば、いくつかの断片は、少なくとも10、25、50、75、100、若しくは200、又はそれ以上のアミノ酸残基を有する。
【0039】
本明細書に使用される「ミオシン軽鎖」は、ミオシン重鎖と会合し、かつミオシンの力を発生するATPase活性の制御に関与する約18kDaのタンパク質をいう。2つの主要なMLCの分類があり:MLC1は、時に必須ミオシン軽鎖と呼ばれ、ELCと略記され;及びMLC2は、時に調節性ミオシン軽鎖と呼ばれ、RLCと略記される。RLCは、ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)を媒介したリン酸化の主要な生物学的標的である。MLCKによってリン酸化されたときに、RLCのリン酸化された形態は、RLC-Pと略記される。骨格筋、平滑筋、及び心筋に存在するELC並びにRLCのアイソフォームが記述されている。一例として、ヒト心臓RLC遺伝子、及びcDNAは、Maceraらの論文、Genomics 13:829-31(1992);(GenBankアクセッション番号NM00432)によって記述されている。
【0040】
本明細書に使用される「ミオシン軽鎖の機能的断片、又は変異体」は、ミオシン軽鎖キナーゼ生物活性を有するタンパク質によってリン酸化することができるポリペプチドをいう。これには、ミオシン軽鎖キナーゼ生物活性を有するタンパク質によってリン酸化することができる6以上の長さのアミノ酸残基の任意のポリペプチドを含む。
【0041】
本明細書に使用される「ミオシン軽鎖キナーゼ生物活性」は、調節性ミオシン軽鎖への共有結合によるホスフェートの組み込みを媒介するポリペプチド若しくはタンパク質の、インビトロ又はインビボにおける酵素の能力をいう。本用語には、任意のMLCKのアイソフォーム(例えば、平滑筋、骨格筋、及び心臓MLCKアイソフォーム)で観察されるこのような酵素活性、並びにMLCKアイソフォームの断片及び変異体(例えば、天然に存在する突然変異体;組換えDNA技術を介して導入された突然変異、挿入、及び欠失;並びにタンパク質分解によって生じた断片)で観察されるこのような酵素活性を包含する。
【0042】
本明細書に使用される「タンパク質」は、文脈が他に明確に指示しない限り、「ポリペプチド」、又は「ペプチド」と同義である。
【0043】
本明細書に使用される、「ニューキナーゼ遺伝子」は、本明細書で定義したとおりのニューキナーゼをコードする遺伝子をいう。ニューキナーゼ遺伝子の突然変異は、ヌクレオチド配列変化、付加、又は大部分若しくは全てのニューキナーゼ遺伝子の欠失を含む欠失、又は遺伝子の全て若しくは実質的に全ての複製を含む。或いは、ニューキナーゼの遺伝子発現は、ニューキナーゼが過剰発現、又は過小発現されるように調節解除することができる。「ニューキナーゼ遺伝子」という用語は、集団内に存在する種々の配列多型及び対立形質変異を含むことが理解される。本用語には、主に単離されたコード配列に関するが、連続する調節エレメント及び/若しくはイントロン配列のいくつか又は全ても含むことができる。突然変異体ニューキナーゼ遺伝子から転写されるRNAは、突然変異ニューキナーゼメッセンジャーRNAである。
【0044】
本明細書に使用される「ニューキナーゼ cDNA」は、トランスフェクトされ、又はさもなければ細胞に導入されたときに、ニューキナーゼタンパク質を発現するcDNA分子をいう。ニューキナーゼ cDNAは、例えばニューキナーゼ遺伝子によってコードされ、かつニューキナーゼ遺伝子に存在する内部非コードセグメント、及び転写制御配列を欠いているmRNAからの逆転写に由来することができる。例示的なヒトニューキナーゼ cDNAは、配列番号4として示される。
【0045】
本明細書に使用される「ベクター」は、その発現又は複製のために異種DNAを細胞に導入するために使用される別個のエレメントをいう。このような媒体の選択、及び使用は、当業者の技術の範囲内で、周知である。発現ベクターは、当該DNA断片の発現を誘起することができるプロモーター領域などの制御配列と機能的に連結されたDNAを発現することができるベクターを含む。従って、発現ベクターは、適切な宿主細胞への導入により、クローン化DNAの発現を生じるプラスミド、ファージ、組換えウイルス、若しくはその他のベクターなどの、組換えDNA又はRNA構築物をいう。適切な発現ベクターは、当業者に周知であり、真核細胞及び/又は原核細胞において複製可能であるもの、並びにエピソームのままであるもの、又は宿主細胞ゲノムに組み込むものを含む。
【0046】
本明細書に使用される「トランスジェニック動物」は、細胞の1つ以上が導入遺伝子を含む非ヒト動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはラット又はマウスなどの齧歯類をいう。その他のトランスジェニック動物には、霊長類、ヒツジ、ウサギ、ハムスター、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリ、両生類、その他を含む。「導入遺伝子」は、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノムに組み込まれ、かつ成熟動物のゲノムに残ったままである外来性DNAである。
【0047】
本明細書に使用される「相同組換え動物」は、動物の発生前に(例えば、胚性)細胞において、内因性ニューキナーゼと相同的に組換わる外来性DNA分子により、内因性ニューキナーゼ遺伝子が変化された非ヒト動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはラット又はマウスなどの齧歯類をいう。その他の相同組換え動物には、ウサギ、ハムスター、及びヒツジを含む。外来性ニューキナーゼをもつ宿主細胞を使用してニューキナーゼをコードする配列が導入された受胎した卵母細胞、又は胚性幹細胞などの非ヒトトランスジェニック動物を産生することができる。次いで、このような宿主細胞を使用して非ヒトトランスジェニック動物、又は相同組換え動物を作製することができる。
【0048】
本明細書に使用される「生体試料」という用語は、対象から単離された組織、細胞、及び体液、並びに対象に存在する組織、細胞、及び体液を含む。
【0049】
本明細書に使用される「医薬として許容し得る」という用語は、連邦政府、若しくは州政府の規制機関によって承認されたか、又は動物に、及びより詳細にはヒトに使用するための、米国薬局方、又はその他の一般に認識された薬局方に収載されたことを意味する。
【0050】
本明細書に使用される「担体」という用語は、本発明の治療が共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は媒体をいう。このような製薬的担体は、水、及びピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などの石油、動物、植物、又は合成起源のものを含む油などの滅菌液であることができる。
【0051】
本明細書に使用される「駆出率」、又は「EF」は、鼓動の結果として、満たされた左心室(LV)からポンピングされる血液の部分を意味する。これは、以下の式によって定義され得る:(LV拡張期容積-LV収縮期容積)/LV拡張期容積。
【0052】
本明細書に使用される「短縮率」、又は「FS」は、収縮状態と弛緩状態との間の左心室の直径の変化の比を意味する。これは、以下の式によって定義され得る:(LV末端拡張期直径−LV末端収縮期直径)/LV末端(心)拡張期直径。
【0053】
本明細書に使用される「心不全」は、心臓が組織を代謝する必要のために必要とされる速度で血液をポンピングしない心機能の異常を意味する。心不全には、鬱血性心不全、心筋梗塞、頻脈性不整脈、家族性肥大性心筋症、虚血性心疾患、特発性拡張型心筋症、心筋炎、その他などの広範囲にわたる疾病状態を含む。心不全には、虚血性、先天性、リウマチ性、又は特発性の形態を含むが、限定されない、多くの要因によって生じ得る。慢性心肥大は、鬱血性心不全、及び心停止の前兆である重大な病気にかかった状態である。
【0054】
本明細書に使用される「心筋梗塞」は、重篤かつ持続的な虚血によって引き起こされる、心筋の一部の限局的壊死を引き起こす冠動脈の遮断、又は血流妨害をいう。
【0055】
本明細書に使用される「心室筋細胞肥大」は、心肥大と同義であり、個々の心室筋細胞のサイズの増大であって、細胞サイズの増大が患者の臨床診断を生じるために十分であるか、又は細胞がより大きいと決定することができるほど十分である(例えば、非肥大細胞よりも2倍以上大きい)ことによって特徴づけられる状態をいう。これには、個々の心臓細胞内の収縮タンパク質の蓄積、及び胚の遺伝子発現の活性化を伴い得る。心室筋細胞肥大の存在を決定するためのインビトロ、及びインビボの方法は、当業者に公知である。心室筋細胞肥大のためのインビトロアッセイは、本明細書に記述したこれらの方法、例えば細胞サイズの増加、及び心房ナトリウム利尿因子(ANF)の発現の増加を含む。細胞サイズの変化は、肥大の程度を決定するための評価法に使用される。これらの変化は、倒立位相差顕微鏡で見ることができ、肥大の程度を7〜0の任意目盛りで記録し、7が完全に肥大した細胞であり、かつ3が非刺激細胞である。3、及び7の状態は、それぞれSimpsonらの論文、Circulation Res. 51:787-801(1982)、図2、A、及びBにおいて見られるであろう。肥大スコアと細胞表面領域(μm2)との間の相関は、線形であることが決定された(相関係数=0.99)。フェニレフリンで誘導される肥大では、非曝露(正常)細胞は、3の肥大スコア、及び581μm2の表面領域/細胞を有し、並びに完全に肥大した細胞は、7の肥大スコア、及び1811μm2、又は正常のおよそ200%の表面領域/細胞を有する。4の肥大スコアをもつ細胞は、771μm2の表面領域/細胞、又は非曝露細胞よりもおよそ30%大きなサイズを有し;5の肥大スコアをもつ細胞は、1109μm2の表面領域/細胞、又は非曝露細胞よりもおよそ90%大きなサイズを有し;及び6の肥大スコアをもつ細胞は、1366μm2の表面領域/細胞、又は非曝露細胞よりもおよそ135%大きなサイズを有する。心室筋細胞肥大の存在は、好ましくは約15%(肥大スコア3.5)、又はそれ以上のサイズの増加を示す細胞を含む。肥大の誘導因子により、これらが上記のアッセイによって記録される最大肥大反応を誘導する能力は変化する。例えば、エンドセリンによって誘導される細胞サイズの最大の増大は、およそ5の肥大スコアである。
【0056】
本明細書に使用される心室筋細胞肥大の「抑制」は、肥大条件と比較して肥大を示すパラメーターの1つの減少、又は標準状態と比較して肥大を示すパラメーターの1つの増大の防止を意味する。例えば、心室筋細胞肥大の抑制は、肥大状態と比較した細胞サイズの減少として測定することができる。心室筋細胞肥大の抑制は、肥大状態において観察されるものと比較して10%以上の細胞サイズの減少を意味する。より好ましくは、肥大の抑制は、30%以上の細胞サイズの減少を意味し;最も好ましくは、肥大の抑制は、50%以上の細胞サイズの減少を意味する。フェニレフリンが誘導剤として使用されるときの肥大スコアアッセイと比較して、これらの減少は、それぞれ約6.5以下、5.0〜5.5、及び4.0〜5.0の肥大スコアと相関するであろう。異なる薬剤が誘導剤として使用されるときは、抑制は、その誘導因子の存在下において測定される最大細胞サイズ(又は肥大スコア)と比較して測定される。
【0057】
心室筋細胞肥大の防止は、完全に肥大を誘導するために十分な誘導因子の濃度の存在下において、正常細胞と比較して細胞サイズの増大を妨げることによって決定することができる。例えば、肥大の防止は、誘導因子の最大刺激濃度の存在下において、誘導されていない細胞よりも200%未満の大きさの細胞サイズ増大を意味する。より好ましくは、肥大の防止は、誘導されていない細胞よりも135%未満大きな細胞サイズ増大を意味し;及び最も好ましくは、肥大の防止は、誘導されていない細胞よりも90%未満大きな細胞サイズ増大を意味する。フェニレフリンが誘導剤として使用されるときの肥大スコアアッセイと比較して、フェニレフリンの最大刺激濃度の存在下における肥大の防止は、それぞれ約6.0〜6.5、5.0〜5.5、及び4.0〜4.5の肥大スコアを意味する。
【0058】
インビボでの肥大の決定には、血圧、心拍数、体血管抵抗、収縮性、心拍力、短縮性肥大又は拡張型肥大、左心室収縮期圧、左心室平均圧、左心室拡張末期圧、心拍出量、脳卒中指標、組織学的パラメーター、並びに心室サイズ、及び壁厚などの心臓血管疾患パラメーターの測定を含む。インビボでの心室筋細胞肥大の発症、及び抑制の決定のために利用可能な動物モデルには、圧負荷マウスモデル、RVマウス機能不全モデル、トランスジェニックマウスモデル、及び心筋梗塞後ラットモデルを含む。ヒト患者における心室筋細胞肥大の存在、発症、及び抑制を評価するための医学的方法は、公知であり、例えば弛緩期及び収縮期のパラメーターの測定、心室質量の推定、及び肺静脈流を含む。
【0059】
本明細書に使用される、特定の疾患を治療するための活性薬剤の「有効量」は、疾患と関連する症候を寛解させるために、又はいくつかの様式において、低減させるために十分である量である。該量は、疾患を治癒し得るが、典型的には疾患の症候を寛解させるために投与される。
【0060】
本明細書に使用される「活性薬剤」は、ヒト、及びその他の動物における疾患の診断、治癒、緩和、治療、若しくは予防のための、又はさもなければ肉体的、及び精神的に十分に増強するための、意図された任意の物質を意味する。
【0061】
「治療」、「治療すること」、及びその他同様の用語は、本明細書において一般に、現在状態に罹患している対象における所望の薬理学的、及び/又は生理学的効果を得ることを意味するために使用される。効果は、その疾患、若しくは症候を完全に、又は部分的に治療してもよく、及び従って、疾患、及び/若しくは疾患に起因する有害作用についての部分的、又は完全な治癒の点から治療的であってもよい。本明細書に使用される「治療」は、哺乳動物、特にヒトにおける任意の疾患の治療を包含し、疾患を阻害すること、すなわちその発症を抑えること;又は疾患を軽減すること、すなわち疾患の退行を生じさせることを含む。一つの例において、治療は、心疾患、及び関連状態、例えば心不全を発症しているか、又は発症するリスクのある患者を治療することをいう。より具体的には、「治療」は、心疾患に罹患している患者に対して治療的に検出可能、及び有益な効果を提供することを意味することが意図される。
【0062】
「予防する」、「予防すること」、及びその他同様の用語は、本明細書において一般に、疾患にかかりやすいであろうが、いまだ疾患に罹患していると診断されていない対象において生じる疾患から予防することをいうために使用される。従って、「予防する」とは、その目的が心肥大を予防し、若しくは遅らせる(少なくする)ことである保護的、又は予防的な手段をいうことができる。
【0063】
(5. 2 本発明のポリペプチド)
本発明は、本出願において、それぞれラットニューキナーゼ、及びヒトニューキナーゼと呼ばれる新たに同定され、かつ単離されたポリペプチドを提供する。一部の実施態様において、ポリペプチドは、天然の配列のラット、及び天然の配列のヒトのニューキナーゼポリペプチドである。一部の実施態様において、ポリペプチドには、天然のニューキナーゼ配列において見いだされるものと実質的に同じアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、本発明は、抗原決定基(すなわち、抗体によって認識することができるポリペプチドの一部)を含むか、又はさもなければ機能的に活性なニューキナーゼの機能的断片、及び変異体のアミノ酸配列、並びに前述のものをコードする核酸を提供する。ニューキナーゼ機能的活性には、全長(野生型)ニューキナーゼポリペプチドと関連する1つ以上の公知の機能的活性、例えばミオシン軽鎖キナーゼ生物活性;抗原性(抗体によって配列番号1又は2のアミノ酸配列からなるタンパク質に結合される能力);免疫原性(配列番号1又は2に結合する抗体の産生を誘導する能力)等を包含する。
【0064】
一部の実施態様において、ポリペプチドは、機能的に重要でないアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、従って、天然のニューキナーゼ配列のものとは異なるアミノ酸配列を有する。置換は、コードされるニューキナーゼのアミノ酸配列の変化を生じるが、ニューキナーゼ機能を変化させないニューキナーゼをコードする核酸配列内の突然変異によって導入することができる。例えば、「非必須」アミノ酸残基にアミノ酸置換を生じさせるヌクレオチド置換を、ニューキナーゼをコードする配列になすことができる。「非必須」アミノ酸残基は、ミオシン軽鎖キナーゼ生物活性を変化させることなく、ニューキナーゼの野生型配列から変化させることができる残基であるが、「必須」アミノ酸残基は、このような生物活性のために必要とされる。例えば、本発明のニューキナーゼポリペプチドの間で保存されたアミノ酸残基は、変更に特に適していないと予測される。保存的置換を作製することができるアミノ酸は、当該技術分野において周知である。
【0065】
有用な保存的置換を表1、「好ましい置換」に示してある。1つのクラスのアミノ酸が同一タイプの別のアミノ酸で置換されることによる保存的置換は、置換が化合物の生物活性を実質的に変化させない限り、本発明の範囲内に入る。このような置換により、生物活性の変化が生じる場合、例として表2に示したより多くの実質的変化を導入して、産物をニューキナーゼポリペプチド生物活性についてスクリーニングする。
【表1】

【0066】
(1)β-シート、又はαらせん高次構造などのポリペプチドバックボーンの構造;(2)電荷;(3)疎水性;又は(4)標的部位の側鎖のかさ;に影響する非保存的置換により、ニューキナーゼポリペプチド機能、又は免疫学的同一性を修飾することができる。残基は、表2に示したように、共通の側鎖特性に基づいてグループに分けられる。非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスに交換することを伴う。置換は、保存的置換部位に、又はより好ましくは非保存部位に導入してもよい。
【表2】

【0067】
変種ポリペプチドは、オリゴヌクレオチドを媒介した(部位特異的)突然変異誘発、アラニン走査、及びPCR突然変異誘発などの当該技術分野において公知の方法を使用して作製することができる。部位特異的変異誘発(Carterの論文、Biochem. J. 237:1-7(1986);Zoller及びSmithの論文、Methods Enzymol. 154:329-50(1987)を参照されたい)、カセット突然変異誘発、制限選択突然変異誘発(Wellsらの論文、Gene 34:315-323(1985)、又はその他の公知の技術を、クローン化したニューキナーゼをコードするDNAに対して実施して、ニューキナーゼ変異体DNAを産生することができる(Ausubelらの文献、分子生物学の現在のプロトコル(Current Protocols In Molecular Biology)、John Wiley and Sons、New York(現在の版);Sambrook らの文献、分子クローニング、実験室マニュアル(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor、New York(2001))。
【0068】
特定の実施態様において、本発明に使用されるニューキナーゼは、非古典的アミノ酸、又は化学的アミノ酸類似体とのアミノ酸置換を有するニューキナーゼ突然変異体、又は誘導体を含む。非古典的アミノ酸には、通常のアミノ酸のD-異性体、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、γ-Abu、ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロアミノ酸、β-メチルアミノ酸などのデザイナーアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、Nα-メチルアミノ酸、及び一般のアミノ酸類似体を含むが、限定されない。
【0069】
一つの実施態様において、本発明は、配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを含む。一部の実施態様において、ポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、又は95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、単離されたポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0070】
また、本発明は、配列番号2に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを含む。一部の実施態様において、ポリペプチドは、配列番号2に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、又は95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、単離されたポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0071】
また、本発明は、配列番号25に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを含む。一部の実施態様において、ポリペプチドは、配列番号25:に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、又は95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、単離されたポリペプチドは、配列番号25のアミノ酸配列を含む。
【0072】
この文脈におけるパーセント同一性は、配列を整列させて、必要に応じて最大パーセント配列相同性を達成するようにギャップを導入した後、ペプチドの対応するアミノ酸残基と同一(すなわち、整列の特定の位置におけるアミノ酸残基が同じ残基である)、又は類似する(すなわち、整列の特定の位置におけるアミノ酸置換が、上で議論したように保存的置換である)候補配列のアミノ酸残基の割合を意味する。特定の実施態様において、ニューキナーゼ相同体は、天然に存在するニューキナーゼ配列とのそのパーセント配列同一性、又はパーセント配列類似性によって特徴づけられる。配列同一性、及び類似性の割合を含む、配列相同性は、当該技術分野において周知の配列整列技術、好ましくはこの目的のためにデザインされたコンピュータアルゴリズムを使用して、前記コンピュータアルゴリズム、又はソフトウェアパッケージのデフォルトパラメーターを使用して決定される。
【0073】
コンピュータアルゴリズムの非限定的な例、及びこのようなアルゴリズムを組み込むソフトウェアパッケージには、以下を含む。プログラムのBLASTファミリーは、2つの配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの好ましい非限定的な例を例証する(例えば、Karlin & Altschulの論文、1990、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268(Karlin & Altschulの論文、1993、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877と同様に改変されたもの)、Altschulらの論文、1990、J. Mol. Biol. 215:403-410(NBLAST、及びXBLASTを記述する)、Altschulらの論文、1997、Nucleic Acids Res. 25:3389-3402(Gapped BLAST、及びPSI-Blastを記述する)。別の好ましい例は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれており、かつGCG配列整列ソフトウェアパッケージの一部として利用できるMyers及びMillerのアルゴリズム(1988 CABIOS4:11-17)である。また、好ましくは、Wisconsin Sequence Analysis Packageの一部として利用できるFASTAプログラムである(Pearson W.R.及びLipman D.J.の論文、Proc. Nat. Acad. Sci. USA、85:2444-2448(1988))。さらなる例には、2つの配列間の最高の類似性の単一領域を見いだすためのSmith及びWaterman(Advances in Applied Mathematics, 2:482-489(1981))の「局部的相同性」アルゴリズムを使用し、かつ比較される2つの配列の長さが異なる場合に好ましいBESTFIT;並びにNeddleman及びWunsch(J. Mol. Biol. 48:443-354(1970))のアルゴリズムに従って「最大類似性」を見いだすことによって2つの配列を整列させ、かつ2つの配列がおよそ同じ長であり、かつ全長にわたって整列が予想される場合に好ましいGAP;を含む。
【0074】
相同体の例は、動物、植物、酵母、細菌、その他を含むその他の種相同分子種タンパク質でもよい。また、相同体は、例えば未変性タンパク質の突然変異誘発によって選択してもよい。例えば、相同体は、タンパク質-タンパク相互作用を検出するためのアッセイと組み合わせて部位特異的突然変異誘発によって同定してもよい。さらなる方法、例えばタンパク質アフィニティークロマトグラフィー、親和性ブロッティング、インビトロ結合アッセイ、その他が、本発明を評価する当業者に明らかであろう。
【0075】
2つの異なる核酸、又はポリペプチド配列を比較する目的ために、一方の配列(試験配列)を、本開示における別の配列(参照配列)に対して具体的「パーセント同一」であると記述してもよい。この点で、試験配列の長さが参照配列の長さの90%未満のときに、パーセント同一性は、Myers及びMillerの論文、Bull. Math. Biol、51:5-37(1989)、並びにMyers及びMillerの論文、Comput. Appl Biosci、4(1):11-17(1988)のアルゴリズムによって決定される。具体的には、同一性は、ALIGNプログラムによって決定される。デフォルトパラメーターを使用することができる。
【0076】
試験配列の長さが参照配列の長さの少なくとも90%である場合、パーセント同一性は、種々のBLASTプログラムに組み込まれているKarlin及びAltschul、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90:5873-77(1993)のアルゴリズムによって決定される。具体的には、パーセント同一性は、「BLAST 2 Sequences」ツールによって決定される。Tatusova及びMaddenの論文、FEMS Microbiol. Lett., 174(2):247-250(1999)を参照されたい。対でのDNA-DNA比較のためには、BLASTN 2.1.2プログラムを、デフォルトパラメーターで使用する(マッチ:1;ミスマッチ:-2;オープンギャップ:5ペナルティー;エクステンションギャップ:2ペナルティー;ギャップx_ドロップオフ:50;エクスペクト:10;及びワードサイズ:11、フィルターを伴う)。対でのタンパク質-タンパク質配列比較のためには、デフォルトパラメーターを使用して、BLASTP 2.1.2プログラムを使用する(マトリックス:BLOSUM62;オープンギャップ:11;ギャップエクステンション:1;x_ドロップオフ:15;エクスペクト:10.0;及びワードサイズ:3、フィルターを伴う)。
【0077】
特定の実施態様において、本発明の単離されたポリペプチドは、心筋ミオシンのミオシン軽鎖をリン酸化することができる。特定の実施態様において、本発明の単離されたポリペプチドは、心筋ミオシンのミオシン軽鎖の機能的断片、又は変異体をリン酸化することができる。特定の実施態様において、単離されたポリペプチドは、哺乳動物の心筋ミオシンの、ミオシン軽鎖、又はミオシン軽鎖の機能的断片、若しくは変異体をリン酸化することができる。特定の実施態様において、哺乳動物は、ラット、マウス、又はヒトである。一部の実施態様において、単離されたポリペプチドは、ラット心筋ミオシンの、ミオシン軽鎖、又はミオシン軽鎖の機能的断片、若しくは変異体をリン酸化することができる。一部の実施態様において、単離されたポリペプチドは、マウス心筋ミオシンの、ミオシン軽鎖、又はミオシン軽鎖の機能的断片、若しくは変異体をリン酸化することができる。具体的な実施態様において、単離されたポリペプチドは、ヒト心筋ミオシンの、ミオシン軽鎖、又はミオシン軽鎖の機能的断片、若しくは変異体をリン酸化することができる。
【0078】
一部の実施態様において、本発明の単離されたポリペプチドは、Ca2+/カルモジュリンに結合することができ、かつCa2+/カルモジュリンによって活性化することができる。任意の特定の作動理論に拘束されることは意図しないが、ミオシン軽鎖キナーゼの活性化には、自己阻害配列をも含むポリペプチドの保存された調節セグメントのカルモジュリン結合配列に対するCa2+/カルモジュリンの結合が関与すると考えられる。Ca2+/カルモジュリンの結合は、ポリペプチドの触媒コアから自己阻害配列を除去し、活性部位が、タンパク質基質結合、及びリン酸化に曝露される。従って、特定の態様において、本発明は、上記の特性を有する単離されたポリペプチドを提供する。
【0079】
(5. 3 本発明の核酸)
別の態様において、本発明は、それぞれラットニューキナーゼ、及びヒトニューキナーゼをコードする新たに同定され、かつ単離されたヌクレオチド配列を提供する。特に、天然の配列のラットニューキナーゼ、及び天然の配列のヒトニューキナーゼポリペプチドをコードする核酸が同定され、かつ単離された。
【0080】
本発明によって提供されるニューキナーゼコード配列、又はニューキナーゼ関連配列は、天然のニューキナーゼにおいて見いだされるものと実質的に同じアミノ酸配列をコードするこれらのヌクレオチド配列、並びに機能的に重要ではないアミノ酸置換を有し、及び従って、天然の配列のものとは異なるアミノ酸配列を有するこれらのコードされたアミノ酸配列を含む。例には、一塩基残基の別のものへの置換(すなわち、ArgをLysへ)、疎水性残基の別のものへの置換(すなわちLeuのIleへの)、又は芳香族残基の別のものへの置換(すなわち、PheのTyrへの、その他)を含む。
【0081】
更に本発明は、ニューキナーゼの断片に関する。従って、このような断片をコードする核酸も、本発明の範囲内である。本発明のニューキナーゼ遺伝子、及びニューキナーゼをコードする核酸配列は、ヒト遺伝子、及びその他の種の関連した遺伝子(相同体)を含む。一部の実施態様において、ニューキナーゼ遺伝子、及びニューキナーゼをコードする核酸配列は、脊椎動物、又はより詳細には、哺乳動物由来である。一部の実施態様において、ニューキナーゼ遺伝子、及びニューキナーゼをコードする核酸配列は、ラット起源である。本発明の好ましい実施態様において、ニューキナーゼ遺伝子、及びニューキナーゼをコードする核酸配列は、ヒト起源である。
【0082】
一つの態様において、本発明は、配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする単離された核酸を提供する。一部の実施態様において、核酸は、配列番号1に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、又は95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。特定の実施態様において、単離された核酸は、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。
【0083】
別の実施態様において、本発明は、配列番号3、又はその相補物から選択される少なくとも約500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも70%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸を提供する。一部の実施態様において、核酸は、配列番号3から選択される少なくとも約500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1500、2000、又は2500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも70%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、配列番号3から選択される少なくとも約500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも75%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、配列番号3から選択される少なくとも約500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1500、2000、又は2500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも75%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、配列番号3から選択される少なくとも約500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、配列番号3から選択される少なくとも約500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1500、2000、又は2500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、配列番号3から選択される少なくとも約500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも85%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、配列番号3から選択される少なくとも約500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1500、2000、又は2500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも85%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、配列番号3から選択される少なくとも約500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、配列番号3から選択される少なくとも約500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1500、2000、又は2500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、配列番号3から選択される少なくとも約500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、配列番号3から選択される少なくとも約500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1500、2000、又は2500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含む。特定の実施態様において、単離された核酸は、配列番号3、又はその相補物の核酸配列から選択される少なくとも約500個のヌクレオチドを含む。特定の実施態様において、単離された核酸は、配列番号3、又はその相補物の核酸配列から選択される少なくとも約500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1500、2000、又は2500個のヌクレオチドを含む。特定の実施態様において、単離された核酸は、配列番号3、又はその相補物の核酸配列を含む。
【0084】
別の態様において、本発明は、配列番号2に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする単離された核酸を提供する。一部の実施態様において、核酸は、配列番号2に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、又は95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。特定の実施態様において、単離された核酸は、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。
【0085】
別の態様において、本発明は、配列番号25に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする単離された核酸を提供する。一部の実施態様において、核酸は、配列番号25に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、又は95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。特定の実施態様において、単離された核酸は、配列番号25のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。
【0086】
別の態様において、本発明は、配列番号4、又はその相補物から選択される少なくとも約500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも70%の同一性を有する核酸配列を含む単離された核酸を提供する。一部の実施態様において、核酸は、配列番号4から選択される少なくとも約500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1500、2000、又は2500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも70%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、配列番号4から選択される少なくとも約500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも75%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、配列番号4から選択される少なくとも約500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1500、2000、又は2500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも75%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、配列番号4から選択される少なくとも約500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、配列番号4から選択される少なくとも約500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1500、2000、又は2500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、配列番号4から選択される少なくとも約500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも85%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、配列番号4から選択される少なくとも約500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1500、2000、又は2500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも85%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、配列番号4から選択される少なくとも約500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、配列番号4から選択される少なくとも約500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1500、2000、又は2500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、配列番号4から選択される少なくとも約500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、核酸は、核酸配列を含む。配列番号4から選択される少なくとも約500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1500、2000、又は2500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも95%の同一性を有する。特定の実施態様において、単離された核酸は、配列番号4、又はその相補物の核酸配列から選択される少なくとも約500個のヌクレオチドを含む。特定の実施態様において、単離された核酸は、配列番号4、又はその相補物の核酸配列から選択される少なくとも約500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1500、2000、又は2500個のヌクレオチドを含む。特定の実施態様において、単離された核酸は、配列番号4、又はその相補物の核酸配列を含む。
【0087】
また、本発明は、前述の配列にハイブリダイズするか、又は前述の配列に対して相補である核酸を含む。特定の実施態様において、ニューキナーゼの少なくとも20、30、40、50、100、200個のヌクレオチド、又は全てのコード領域に対して相補的な配列、又はこれらの配列のいずれかの逆相補物(アンチセンス)を含む核酸が提供される。具体的実施態様において、低ストリンジェンシー条件下で、ニューキナーゼ核酸配列(例えば、配列番号3、又は配列番号4、若しくはその相補物の一部又は全体を有する)にハイブリダイズする核酸が提供される。一部の実施態様において、前記核酸は、配列番号7に対応する。その他の実施態様において、前記核酸は、配列番号8、又はその一部に対応する。
【0088】
例として、限定しないが、このような低ストリンジェンシーの条件を使用する手順は、以下の通りである(また、Shilo及びWeinbergの論文、1981、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:6789-6792を参照されたい)。DNAを含むフィルターは、35%ホルムアミド、5×SSC、50mM Tris-HCl(pH 7.5)、5mM EDTA、0.1% PVP、0.1%フィコール、1% BSA、及び500μg/ml変性サケ精子DNAを含む溶液中で、40℃にて6時間前処理することができる。ハイブリダイゼーションは、以下の修正を伴った溶液中で実施することができる:0.02% PVP、0.02% フィコール、0.2% BSA、100μg/ml サケ精子DNA、10%(wt/vol)のデキストラン硫酸、及び5〜20×106cpm 32P-標識プローブを使用することができる。フィルターは、ハイブリダイゼーション混合物中で40℃にて18〜20時間インキュベートし、次いで2×SSC、25mM Tris-HCl(pH 7.4)、5mM EDTA、及び0.1% SDSを含む溶液中で55℃にて1.5時間洗浄することができる。次いで、洗浄液を新鮮な溶液と交換して、60℃にて更に1.5時間インキュベートすることができる。フィルターをブロット乾燥し、オートラジオグラフィーのために曝露してもよい。必要に応じて、フィルターを65〜68℃にて3回洗浄して、フィルムに再び曝露してもよい。使用してもよい低ストリンジェンシーのその他の条件は、当該技術分野において周知である(例えば、異種間ハイブリダイゼーションのために使用されるとおり)。
【0089】
別の特定の実施態様において、高ストリンジェンシー条件下でニューキナーゼをコードする核酸、又はその逆相補物にハイブリダイズする核酸が提供される。例として、限定しないが、このような高ストリンジェンシーの条件を使用する手順は、以下の通りである。DNAを含むフィルターのプレハイブリダイゼーションは、6×SSC、50mM Tris-HCl(pH 7.5)、1mM EDTA、0.02% PVP、0.02% フィコール、0.02% BSA、及び500μg/ml変性させたサケ精子DNAからなる緩衝中で、65℃にて8時間〜一晩実施してもよい。フィルターは、100μg/ml変性サケ精子DNA、及び5〜20×106cpmの32P-標識プローブを含むプレハイブリダイゼーション混合物中で65℃にて48時間ハイブリダイズしてもよい。フィルターの洗浄は、2×SSC、0.01% PVP、0.01% フィコール、及び0.01% BSAを含む溶液中で37℃にて1時間行ってもよい。これには、オートラジオグラフィー前に、50℃にて0.1×SSC中で45分間洗浄することを伴う。使用してもよい高ストリンジェンシーのその他の条件は、当該技術分野において周知である。
【0090】
(5.3.1 ニューキナーゼ遺伝子又はcDNAのクローニング)
本発明は、ニューキナーゼをコードする遺伝子、又はcDNAのクローニングに関する方法、及び組成物を更に提供する。本発明の一つの実施態様において、発現クローニング(当該技術分野において一般に公知の技術)を使用してニューキナーゼをコードする遺伝子又はcDNAを単離してもよい。発現ライブラリーは、当該技術分野において公知の任意の方法によって構築してもよい。一つの実施態様において、mRNA(例えば、ヒト)を単離して、cDNAを作製し、導入される宿主細胞によってcDNAを発現することができるように、発現ベクターに結合する。次いで、種々のスクリーニングアッセイを使用して、発現されたニューキナーゼ産物を選択することができる。一つの実施態様において、抗ニューキナーゼ抗体を選択のために使用することができる。
【0091】
本発明の別の実施態様において、ポリメラー連鎖反応(PCR)を使用して、ゲノム、又はcDNAライブラリーから、所望の本発明の核酸配列を増幅してもよい。公知のニューキナーゼをコードする配列を示す単離されたオリゴヌクレオチドプライマーを、PCRのプライマーとして使用することができる。特定の実施態様において、単離されたオリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号3の少なくとも10個の連続したヌクレオチド、又はその相補鎖を含む。特定の実施態様において、単離されたオリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号4の少なくとも10個の連続したヌクレオチド、又はその相補鎖を含む。一部の実施態様において、単離されたオリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号5の核酸配列を含む。一部の実施態様において、単離されたオリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号6の核酸配列を含む。好ましい態様において、オリゴヌクレオチドプライマーは、異なる種のニューキナーゼをコードする遺伝子間で強力な相同性の保存されたセグメントの少なくとも一部を表す。合成オリゴヌクレオチドをプライマーとして利用して、潜在的な関心対象のRNA又はDNA、好ましくはcDNAライブラリーからPCR配列によって増幅してもよい。或いは、PCR反応に使用するための縮重プライマーを合成することができる。
【0092】
PCR反応において、増幅される核酸には、RNA又はDNA、例えば任意の真核生物種由来のmRNA、cDNA、又はゲノムDNAを含むことができる。PCRは、例えば、Perkin-Elmer Cetusサーマルサイクラー、及びTaqポリメラーゼを使用することによって実施することができる。また、公知のニューキナーゼヌクレオチド配列と単離される核酸相同体との間のヌクレオチド配列類似性の程度をより大きく、又はより小さくさせるために、PCR反応のプライミングに使用されるハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーを変化させることもできる。異種間ハイブリダイゼーションのためには、低ストリンジェンシー条件が好ましい。同じ-種ハイブリダイゼーションのためには、中程度にストリンジェントな条件が好ましい。ニューキナーゼ相同体のセグメントの良好な増幅後、そのセグメントをクローン化し、シーケンスして、完全なcDNA、又はゲノムクローンを単離するためのプローブとして利用してもよい。次に、順次、遺伝子の完全なヌクレオチド配列の決定、その発現の解析、及び機能解析のためのそのタンパク質産物の産生が可能になるであろう。この方法で、ニューキナーゼ、又はニューキナーゼ相同体をコードするさらなるヌクレオチド配列を同定してもよい。
【0093】
上記の詳述された方法は、ニューキナーゼ、又はその相同体をコードする遺伝子のクローンが得られるであろう方法の以下の一般的説明を限定することは意味されない。
【0094】
任意の真核細胞を、ニューキナーゼ遺伝子、ニューキナーゼ cDNA、又はその相同体の分子クローニングのための潜在的な核酸供与源として役立てることができる。ニューキナーゼをコードする核酸配列は、脊椎動物、哺乳動物、ヒト、ブタ、ウシ、ネコ、トリ、ウマ、イヌ、並びにさらなる霊長類供与源から単離することができる。DNAは、クローン化DNA(例えば、DNA「ライブラリー」)からの当該技術分野において公知の標準的方法によって、化学合成によって、cDNAクローニングによって、又は所望の細胞から精製したゲノムDNA、若しくはその断片をクローニングすることによって、又はPCR増幅、及びクローニングによって得てもよい。例えば、Sambrookらの文献、分子クローニング、実験室マニュアル(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor、New York(2001);Gloverの文献、D.M.(編)、DNAクローニング:実用的アプローチ(DNA Cloning:Practical Approach)、第2版、MRL press, Ltd., Oxford、U.K.(1995)。ゲノムDNAに由来するクローンは、コード領域に加えて調節領域及びイントロンDNA領域を含んでいてもよく;cDNAに由来するクローンは、エキソン配列のみを含むであろう。供与源が何であれ、遺伝子は、遺伝子の伝播のために適したベクター内にクローン化してもよい。
【0095】
ゲノムDNAからの遺伝子のクローニングにおいて、DNA断片が産生され、その幾つかが所望の遺伝子をコードするであろう。DNAは、種々の制限酵素を使用して特異的部位にて切断してもよい。或いは、マンガンの存在下においてDNaseを使用してDNAを分解しもよく、又はDNAは、例えば超音波処理によって物理的に剪断することができる。次いで、直鎖状DNA断片を、アガロース、及びポリアクリルアミドゲル電気泳動、並びにカラムクロマトグラフィーを含むが、限定されない標準的技術によってサイズに応じて分離することができる。
【0096】
一旦DNA断片が産生されれば、所望の遺伝子を含む特異的DNA断片の同定は、多数の方法で達成してもよい。例えば、(任意の種の)ニューキナーゼ遺伝子、又はその特異的RNAを利用することができ、かつ精製し、及び標識することができる場合、産生されたDNA断片を、標識プローブに対する核酸ハイブリダイゼーションによってスクリーニングしてもよい(Benton及びDavisの論文、Science 196:180(1977);Grunstein及びHognessの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 72:3961(1975)。プローブに対して実質的に相同性をもつこれらのDNA断片がハイブリダイズするであろう。また、公知の制限酵素切断地図が利用できる場合、制限酵素消化、及び断片サイズをこのようなものに従って予想されるものと比較することにより、適切な断片を同定することもできる。さらなる選択を、遺伝子の特性に基づいて実施することができる。
【0097】
或いは、遺伝子の存在は、その発現される産物の物理的、化学物質、又は免疫学的な特性に基づいたアッセイによって検出してもよい。例えば、同様の若しくは同一の電気泳動での移動、等電点電気泳動挙動、タンパク質分解マップ、基質結合活性、又は特異的ニューキナーゼについて知られているような抗原特性を有するタンパク質を産生する、例えば適当なmRNAをハイブリッド選択するcDNAクローン、又はDNAクローンを選択することができる。特定のニューキナーゼに対する抗体が利用できる場合、そのニューキナーゼは、ELISA(酵素結合抗体免疫吸着アッセイ法)型の手順においてニューキナーゼを推定的に産生するクローンに対する標識抗体の結合によって同定してもよい。
【0098】
また、ニューキナーゼ、又はその相同体は、核酸ハイブリダイゼーションによるmRNA選択、続くインビトロでの翻訳によって同定することができる。この手順では、ハイブリダイゼーションによって相補mRNAを単離するために断片が使用される。このようなDNA断片は、ニューキナーゼをコードする遺伝子を含む別の種の利用可能な、精製されたDNAを表してもよい。単離されたmRNAのインビトロでの翻訳産物の免疫沈降解析、又は機能的アッセイにより、mRNA、及び従って所望の配列を含む相補DNA断片を同定する。加えて、特異的mRNAを、細胞から単離されたポリソームの、特定のニューキナーゼに対して特異的に向けられた固定された抗体に対する吸着によって選択してもよい。放射標識されたニューキナーゼをコードするcDNAは、鋳型として(吸着ポリソームからの)選択したmRNAを使用して合成することができる。次いで、放射標識されたmRNA又はcDNAを、その他のゲノムのDNA断片の中からニューキナーゼをコードするDNA断片を同定するプローブとして使用してもよい。
【0099】
ニューキナーゼゲノムDNAを単離するための変形例には、公知の配列から遺伝子配列自体を化学的に合成すること、又はニューキナーゼをコードするmRNAに対するcDNAを作製することを含むが、限定されない。例えば、ニューキナーゼ cDNAをクローニングするためのRNAは、ニューキナーゼ遺伝子を発現する細胞から単離することができる。その他の方法も、可能であり、本発明の範囲内である。
【0100】
次いで、同定され、及び単離されたニューキナーゼ、又はニューキナーゼ類似体をコードする遺伝子は、適切なクローニングベクターに挿入することができる。当該技術分野において公知の多数のベクター-宿主系を使用してもよい。可能なクローニングベクターには、プラスミド、又は修飾されたウイルスを含むが、限定されず、しかし、ベクター系は、使用する宿主細胞と適合性でなければならない。このようなベクターには、ラムダ誘導体などのバクテリオファージ、又はpBR322、pUCプラスミド誘導体、若しくはpBluescriptベクター(Stratagene)などのプラスミドを含むが、限定されない。クローニングベクターへの挿入は、例えば相補的付着末端を有するクローニングベクター内にDNA断片を結合することによって達成することができる。しかし、DNAを断片化するために使用される相補的な制限部位がクローニングベクターに存在しない場合、DNA分子の末端を酵素で修飾してもよい。或いは、DNA末端にヌクレオチド配列(リンカー)を結合することにより、任意の望まれる部位を産生してもよい。これらの結合されたリンカーには、制限エンドヌクレアーゼ認識配列をコードする特異的な化学合成されたオリゴヌクレオチドを含んでいてもよい。代替法において、切断されたベクター、及びニューキナーゼをコードする遺伝子、又は核酸配列をホモポリマーテーリングによって修飾してもよい。組換え分子は、遺伝子配列の多くのコピーが産生されるように、形質転換、トランスフェクション、感染、電気穿孔法などを介して宿主細胞に導入することができる。
【0101】
代替法において、「ショットガン」アプローチで適切なクローニングベクターに挿入後に、所望の遺伝子を同定し、及び単離してもよい。例えばサイズ細分化(fractionization)により、所望の遺伝子に関する濃縮を、クローニングベクターに挿入する前に行うことができる。
【0102】
単離されたニューキナーゼをコードする遺伝子、cDNA、又は合成されたDNA配列、宿主細胞、例えば大腸菌のコンピテント株の複数コピーを産生するためには、当該技術分野において公知の任意の技術に従って前記配列を組み込んだ組換えDNA分子で形質転換してもよい。従って、遺伝子は、形質転換体を増殖させること、形質転換体から組換えDNA分子を単離すること、及び必要に応じて、単離された組換えDNAから挿入された遺伝子を回収することによって多量に得てもよい。
【0103】
(5.3.2. 発現ベクター)
更にもう一つ態様において、本発明は、単離されたニューキナーゼをコードするcDNA配列を発現するための発現ベクターを提供する。一般に、発現ベクターは、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に対して機能的に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチド分子である。発現ベクターは、安定な転写、及びmRNAの翻訳を生じるように、適切なプロモーター、複製配列、選択可能なマーカーなどを含めることによって原核生物、又は真核生物における機能に容易に適応させることができる。発現ベクターの構築、及び発現ベクターを含む細胞における遺伝子の発現のための技術は、当該技術分野において周知である。例えば、Sambrookらの文献、2001、分子クローニング-実験室マニュアル(Molecular Cloning-A Laboratory Manual)、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor、New York、及びAusubelらの文献、編、現在の版、分子生物学の現在のプロトコル(Current Protocols In Molecular Biology)、Greene Publishing Associates and Wiley Interscience、NYを参照されたい。
【0104】
発現ベクターに使用するために有用なプロモーターには、メタロチオネインプロモーター、構成的アデノウイルス主要後期プロモーター、デキサメタゾン誘導性MMTVプロモーター、SV40プロモーター、MRP pol IIIプロモーター、構成的MPSVプロモーター、RSVプロモーター、テトラサイクリン誘導性CMVプロモーター(ヒト前初期CMVプロモーターなど)、及び構成的CMVプロモーターを含むが、限定されない。
【0105】
発現ベクターは、ニューキナーゼをコードする配列が発現される細胞と適合性の発現シグナル、及び複製シグナルを含むべきである。ニューキナーゼをコードする配列を発現するために有用な発現ベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスなどのウイルスベクター、プラスミドベクター、コスミド、その他を含む。哺乳動物細胞に発現ベクターをトランスフェクトするためには、ウイルスベクター、及びプラスミドベクターが好ましい。例えば、発現制御配列がCMVプロモーターを含む発現ベクターpcDNA1(Invitrogen、San Diego、CA)は、このような細胞内でのトランスフェクション、及び発現において優れた割合を提供する。
【0106】
発現ベクターは、ニューキナーゼをコードする配列の発現のために、限定されないが、当業者に公知の任意の方法によって細胞に導入することができる。このような方法には、例えば溶液からの細胞による組換えDNA分子の直接取り込み;例えばリポソーム、又は免疫リポソームを使用するリポフェクションを介した取り込みの促進;粒子を媒介したトランスフェクション;その他を含むが、限定されない。例えば、米国特許第5,272,065号;Goeddelらの文献、酵素学における方法(Methods in Enzymology)、第185巻、Academic Press、Inc., CA(1990);Kriegerの文献、遺伝子導入及び発現−実験室マニュアル(Gene Transfer and Expression -A Laboratoly Manual)、Stockton Press, New York(1990);Ausubelらの文献、分子生物学の現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、John Wiley and Sons、New York(現在の版);Sambrook らの文献、分子クローニング、実験室マニュアル(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor、New York(2001)を参照されたい。
【0107】
また、発現ベクターは、発現タンパク質の単離を簡単にする精製部分を含むことができる。例えば、6つのヒスチジン残基のポリヒスチジン部分を、例えばタンパク質のアミノ末端に組み込むことができる。ポリヒスチジン部分は、ニッケルキレートクロマトグラフィーによる一段階でのタンパク質の簡便な単離が可能である。特定の実施態様において、精製部分は、精製後に送達構築物の残部から切断することができる。その他の実施態様において、該部分は、発現タンパク質の機能的ドメインの機能を妨げず、従って切断する必要がない。
【0108】
(5.3.3. 細胞)
更に別の態様において、本発明は、本発明のニューキナーゼポリペプチド、又はその一部の発現のための発現ベクターを含む細胞を提供する。細胞は、好ましくは、ポリペプチドのその後の精製を促進するために、高濃度のニューキナーゼポリペプチドを発現するその能力について選択される。特定の実施態様において、細胞は、原核細胞、例えば大腸菌(E. coli))である。好ましい実施態様において、ニューキナーゼポリペプチドは、大腸菌(E. coli)に発現されるときに、適切に折り畳まれ、かつ適切なジスルフィド結合を含む。
【0109】
その他の実施態様において、細胞は、真核細胞である。有用な真核細胞には、酵母、及び哺乳動物細胞を含む。限定されないが、組換えポリペプチドを発現するために有用な当業者に公知の任意の哺乳動物細胞を、送達構築物を発現するために使用することができる。例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、本発明のニューキナーゼポリペプチドを発現させるために使用することができる。一部の実施態様において、ニューキナーゼポリペプチドは、新生児ラット心室筋細胞において発現される。一部の実施態様において、ニューキナーゼポリペプチドは、H9c2(2-1)細胞において発現される。
【0110】
(5.4. 抗体)
本発明に従って、ニューキナーゼ、又はその断片は、ニューキナーゼポリペプチドに免疫学的に結合する抗体を産生するための免疫原として使用してもよい。このような抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、哺乳動物抗体、又はヒト抗体を含むが、限定されない。
【0111】
一部の実施態様において、非ヒトニューキナーゼに対する抗体が産生される。特定の実施態様において、ラットニューキナーゼに対する抗体が産生される。その他の実施態様において、ヒトニューキナーゼに対する抗体が産生される。別の実施態様において、そのアミノ酸配列が配列番号1からなるタンパク質に特異的に結合する抗体が産生される。別の実施態様において、そのアミノ酸配列が配列番号2からなるタンパク質に特異的に結合する抗体が産生される。別の実施態様において、そのアミノ酸配列が配列番号25からなるタンパク質に特異的に結合する抗体が産生される。別の実施態様において、非ヒトニューキナーゼの断片に対する抗体が産生される。別の実施態様において、ラットニューキナーゼの断片に対する抗体が産生される。別の実施態様において、ヒトニューキナーゼの断片に対する抗体が産生される。具体的実施態様において、親水性領域を含むことが同定された、ヒト、又は非ヒトニューキナーゼの断片が、抗体産生のための免疫原として使用される。具体的実施態様において、親水性解析は、潜在的なエピトープであり、従って免疫原として使用することができるニューキナーゼの親水性領域を同定するために使用することができる。
【0112】
抗体の産生のために、種々の宿主動物を天然のニューキナーゼ、又はこれらの合成バージョン、若しくは断片での注射によって免疫することができる。特定の実施態様において、宿主動物は、哺乳動物である。一部の実施態様において、哺乳動物は、ウサギ、マウス、ラット、ヤギ、ウシ、又はウマである。
【0113】
ニューキナーゼに対するポリクローナル抗体の産生のために、当該技術分野において公知の種々の手順を使用してもよい。具体的な実施態様において、一連の配列番号3、若しくは配列番号4、又はこれらの部分列によってコードされるニューキナーゼのエピトープに対するウサギポリクローナル抗体を得ることができる。宿主種に応じて、種々のアジュバントを使用して免疫応答を増加させてもよい。本発明に従って使用してもよいアジュバントは、フロイント(完全、及び不完全)、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシニアン、ジニトロフェノール、CpG含有核酸、並びにBCG(カルメット‐ゲラン菌)、及びコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)などの潜在的に有用なヒトアジュバントを含むが、限定されない。
【0114】
ニューキナーゼポリペプチドに向けられたモノクローナル抗体の調製のために、培養における連続株化細胞による抗体分子の産生を提供する任意の技術を使用してもよい。例えば、モノクローナル抗体は、元来はKohler及びMilstein、Nature 256、495-497(1975)によって開発されたハイブリドーマ技術:並びにヒトB細胞ハイブリドーマ技術であるトリオーマ技術(Kozborらの論文、Immunol. Today 4:72(1983))、又はEBV-ハイブリドーマ技術(モノクローナル抗体及び癌治療(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)におけるColeらの文献、Alan R. Liss社、pp. 77-96(1985))によって調製してもよい。
【0115】
また、米国特許4,946,778に記載されているような、単鎖抗体の産生のための技術は、ニューキナーゼに対して特異的な単鎖抗体を産生するために適応させることができる。本発明のさらなる実施態様では、Fab発現ライブラリー(Huseらの論文、Science 246:1275-1281(1988))の構築のために記述された技術を利用して、ニューキナーゼに対する所望の特異性をもつモノクローナルFab断片の迅速かつ容易な同定が可能である。分子のイディオタイプを含む抗体断片は、公知の技術によって産生することができる。例えば、このような断片には、抗体分子のペプシン消化によって産生することができる断片であるF(ab');F(ab')のジスルフィド架橋を還元することによって産生することができるFab'断片、パパイン、及び還元剤で抗体分子を処理することによって産生することができるFab断片である断片、並びにFv断片を含むが、限定されない。
【0116】
また、「キメラ」抗体の産生のために開発された技術(Morrisonらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:6851-6855(1984);Neubergerらの論文、Nature 312:604-608(1984);Takedaらの論文、Nature 314:452-454(1985))を使用することもできる。例えば、ニューキナーゼに特異的なマウス抗体分子をコードする核酸配列を、ヒト抗体分子をコードする核酸配列にスプライスさせる。
【0117】
加えて、ヒト化抗体の産生のために開発された技術、及びこのようなニューキナーゼに対するヒト化抗体は、本発明の範囲内である。例えば、Queen、米国特許第5,585,089号、及びWinter、米国特許第5,225,539号を参照されたい。免疫グロブリン軽鎖又は重鎖可変領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの高頻度可変領域によって中断された「フレームワーク」領域からなる。フレームワーク領域、及びCDRの範囲は、正確に定義されている。免疫学的関心対象のタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、Kabat, E.らの文献、米国保健福祉省(U.S. Department of Health and Human Services)(1983)を参照されたい。簡潔には、ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つ以上のCDR、及びヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する非ヒト種由来の抗体分子である。
【0118】
ヒト抗体を使用してもよく、ヒトハイブリドーマを使用することによって(Coteらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 80:2026-2030(1983))、又はインビトロにおいてヒトB細胞をEBVウイルスで形質転換することによって(モノクローナル抗体及び癌治療(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)におけるColeらの論文、Alan R. Liss、pp.77-96(1985)における)得ることができる。
【0119】
抗体の産生において、所望の抗体のスクリーニングは、当該技術分野において公知の技術、例えばELISA(酵素結合抗体免疫吸着アッセイ)、RIA(放射免疫アッセイ)、又はRIBA(組換え免疫ブロットアッセイ)によって達成することができる。例えば、ニューキナーゼの特異的ドメインを認識する抗体を選択するためには、産生されたハイブリドーマを、このようなドメインを含むニューキナーゼ断片に結合する産物についてアッセイしてもよい。第1のニューキナーゼ相同体に特異的に結合するが、第2の異なるニューキナーゼ相同体に特異的に結合しない抗体の選択のためには、第1のニューキナーゼ相同体に対する積極的結合、及び第2のニューキナーゼ相同体に対する結合の欠如に基づいて選択することができる。
【0120】
また、ニューキナーゼのドメイン、又はその相同体に特異的な抗体が提供される。前述の抗体は、本発明のニューキナーゼの局在化及び活性に関する技術分野において公知の方法に、例えばこれらのタンパク質を撮像するために、適切な生理学的試料においてそのレベルを測定するために、診断法に、その他に使用することができる。
【0121】
(5.5 トランスジェニックニューキナーゼ動物)
トランスジェニック動物は、ニューキナーゼの機能及び/又は活性を研究するために、並びにニューキナーゼ活性のモジュレーターを同定し、及び/又は評価するために有用である。導入遺伝子は、トランスジェニック動物の1つ以上の細胞タイプ、又は組織におけるコードされた遺伝子産物の発現を指揮する。一部の実施態様において、導入遺伝子は、1つ以上の細胞タイプ、又は組織における天然にコードされる遺伝子産物の発現を妨げる(「ノックアウト」トランスジェニック動物)。一部の実施態様において、導入遺伝子は、組込み、染色体位置、若しくは組換え領域のマーカー、又は指標として役立つ(例えば、cre/loxPマウス)。
【0122】
トランスジェニック動物は、本発明の核酸を、受精した卵母細胞の雄性前核内に導入すること(例えば、微量注入、レトロウイルス感染による)、及び卵母細胞を偽妊娠雌性育成動物(PFFA)において発生させることによって作製することができる。ニューキナーゼ配列は、導入遺伝子として非ヒト動物のゲノムに導入することができる。一部の実施態様において、ニューキナーゼ配列は、ラットニューキナーゼ配列(配列番号3)である。一部の実施態様において、ニューキナーゼ配列は、ヒトニューキナーゼ配列(配列番号4)である。その他の実施態様において、ニューキナーゼの相同体は、導入遺伝子として使用することができる。イントロン配列、及びポリアデニル化シグナルを導入遺伝子に含めて、導入遺伝子発現を増大することもできる。組織特異的制御配列をニューキナーゼ導入遺伝子に作動可能に連結して、特定の細胞に対するニューキナーゼの発現を指揮することができる。胚操作、及び微量注入を介してトランスジェニック動物、特にマウスなどの動物を産生するための方法は、当該技術分野において従来法となってきた。例えば、Evansら、米国特許第4,870,009号(1994); Leder及びStewart、米国特許第4,736,866号、1988;Wagner及びHoppe、米国特許第4,873,191号(1989)。その他の非マウストランスジェニック動物も同様の方法によって作製してもよい。トランスジェニック樹立動物は、さらなるトランスジェニック動物を繁殖するために使用することができ、動物の組織、若しくは細胞におけるそのゲノムにおける導入遺伝子の存在、及び/又は導入遺伝子mRNAの発現に基づいて同定することができる。トランスジェニックニューキナーゼ動物は、その他の導入遺伝子を有するその他のトランスジェニック動物に対して繁殖させることができる。
【0123】
相同組換え動物を作製するためには、その中に欠失、添加、又は置換が導入されて、これによりニューキナーゼ発現を変化させる、例えば機能的に破壊するであろう、ニューキナーゼの少なくとも一部を含むベクター。一部の実施態様において、ベクターは、機能的にニューキナーゼを破壊するためにニューキナーゼ転写に関して逆向きに挿入されたネオマイシンカセットを含んでいてもよい。ニューキナーゼは、ヒト遺伝子(配列番号10)、又はその他のニューキナーゼ相同体であることができる。一つのアプローチにおいて、ノックアウトベクターは、相同組換えにより機能的に内因性ニューキナーゼ遺伝子を破壊して、従って、もしあれば、非機能的なニューキナーゼタンパク質が発現される。
【0124】
或いは、ベクターは、相同組換えにより、内因性ニューキナーゼが変異され、又はさもなければ変化されるが、機能的タンパク質をコードしたままであるようにデザインすることができる(例えば、上流の制御領域を変化させ、これにより内因性ニューキナーゼの発現を変化させることができる)。この種の相同組換えベクターにおいて、ニューキナーゼ配列の変化される部分は、その5'-、及び3'-末端にてニューキナーゼのさらなる核酸配列に連続しており、ベクターによって保有される外来性ニューキナーゼ配列と胚性幹細胞の内因性ニューキナーゼ配列との間に相同組換えを生じさせることができる。さらなる連続ニューキナーゼ配列は、内因性ニューキナーゼとの相同組換えを生じさせるために十分である。典型的には、数キロベースの連続DNA(5'-、及び3'-末端の両方にて)がベクターに含まれる(Thomas及びCapecchiの論文、Cell 51:503-512(1987)を参照されたい)。
【0125】
次いでベクターを胚性幹細胞系に(例えば、電気穿孔法によって)導入して、導入されたニューキナーゼ配列が内因性ニューキナーゼ配列と相同的に組み換えられた細胞を選択する(Liらの論文、Cell 69:915-926(1992))。
【0126】
次いで、選択した細胞を動物(例えば、マウス)の胚盤胞に注射して、凝集キメラを形成させる(Bradleyの文献、奇形癌腫、及び胚性幹細胞:実用的なアプローチ(Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, Oxford University Press社、Oxford(1987)を参照されたい)。次いで、キメラ胚を適切なPFFAに移植することができ、ここで胚を臨月まで育てる。それらの胚細胞に相同組換えされたDNAを有する子孫を使用して、動物の全ての細胞が導入遺伝子の生殖系列伝達によって相同組換えされたDNAを含む動物を繁殖させることができる。相同組換えベクター、及び相同組換え動物を構築するための方法は、記述されている(Bernsら、WO93/04169、1993;Kucherlapatiら、WO91/01140、1991;Le Mouellic、及びBrullet、WO90/11354、1990)。
【0127】
或いは、導入遺伝子の発現の調節を可能にするように選択された系を含むトランスジェニック動物を産生することができる。このような系の例は、バクテリオファージP1のcre/loxPリコンビナーゼ系である(Laksoらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:6232-6236(1992))。別のリコンビナーゼ系は、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のFLPリコンビナーゼ系である(O'Gormanらの論文、Science 251:1351-1355(1991))。導入遺伝子の発現を調節するためにcre/loxPリコンビナーゼ系が使用される場合、Creリコンビナーゼ、及び選択されたタンパク質の両方をコードする導入遺伝子を含む動物が必要とされる。このような動物は、選択したタンパク質をコードする導入遺伝子を含む動物を、リコンビナーゼをコードする導入遺伝子を含む別の動物に交配することにより、「二重」トランスジェニック動物として産生することができる。
【0128】
また、トランスジェニック動物のクローンを産生することができる(Wilmutらの論文、Nature 385:810-813(1997))。簡潔には、トランスジェニック動物からの細胞を単離して、成長周期から出てG0期に入るように誘導することができる。次いで、静止細胞を、静止細胞が単離されたものと同じ種の動物からの除核した卵母細胞に融合することができる。次いで、再構築された卵母細胞を培養して、桑実胚、又は胚細胞まで発生させ、次いでPFFAへ導入する。この雌育成動物でうまれた子孫は、「親」トランスジェニック動物のクローンであるだろう。
【0129】
(5. 6 ニューキナーゼ活性のモジュレーターをスクリーニングする方法)
また、本発明は、関心対象の細胞、又は組織におけるニューキナーゼの活性を調整する化合物を同定する方法を提供する。化合物は、例えば:(1)細胞におけるニューキナーゼ遺伝子のコピーの数(増幅因子、及び非増幅因子);(2)ニューキナーゼ遺伝子の転写を増減すること(転写アップレギュレーター、及びダウンレギュレーター);に影響を及ぼすことにより、(3)タンパク質(翻訳アップレギュレーター、及びダウンレギュレーター)へのニューキナーゼ mRNAの翻訳を増減することにより;又は(4)ニューキナーゼタンパク質の活性を増減することにより(アゴニスト、及びアンタゴニスト)、ニューキナーゼ活性を調整してもよい。DNA、RNA、及びタンパク質レベルにてニューキナーゼに影響を及ぼす化合物を同定するために、細胞、又は生物体を候補化合物と接触させて、対応するニューキナーゼ DNA、RNA、又はタンパク質の変化を評価してもよい。DNA増幅因子、又は非増幅因子については、ニューキナーゼ DNAの量を測定してもよい。転写アップレギュレーター、及びダウンレギュレーターである化合物については、ニューキナーゼ mRNAの量を測定してもよい。或いは、ニューキナーゼプロモーター配列をリポーター遺伝子に作動可能に連結してもよく、ニューキナーゼの潜在性転写モジュレーターは化合物の有無においてリポーター遺伝子活性を測定することによってアッセイしてもよい。翻訳アップレギュレーター、及びダウンレギュレーターについては、ニューキナーゼポリペプチドの量を測定してもよい。或いは、下記に記述した技術によって測定されるように、ニューキナーゼ生物活性の変化は、化合物がニューキナーゼ翻訳を調整する能力の間接的な指標にもなるであろう。
【0130】
本明細書に記述した方法のニューキナーゼ活性は、心筋ミオシン軽鎖及び/又はミオシン軽鎖の機能的断片若しくは変異体のリン酸化、カルモジュリン結合、並びに自己阻害を含むが、限定されない、ニューキナーゼの生物活性を包含する。細胞に基づいたリン酸化イベントを調べるための方法は、当該技術分野において一般に公知であり、ニューキナーゼ生物活性の推定上のモジュレーターと接触後のミオシン軽鎖リン酸化の変化を調べるために利用してもよい。
【0131】
一つの実施態様において、本明細書に記述した方法のために有用な細胞又は組織は、ニューキナーゼ遺伝子の内因性コピーからニューキナーゼポリペプチドを発現する。別の実施態様において、細胞又は組織は、本発明のニューキナーゼポリペプチドをコードする核酸での一過性、又は安定な形質転換後にニューキナーゼポリペプチドを発現する。限定されないが、組換えポリペプチドを発現するために有用な当業者に公知の任意の哺乳動物細胞を、本明細書に記述した方法のために有用なニューキナーゼポリペプチドを発現するために使用することができる。
【0132】
一つの実施態様において、ニューキナーゼの活性を調整する化合物を同定する方法は、ニューキナーゼポリペプチドを発現する細胞又は組織におけるニューキナーゼ活性の第1のレベルを決定すること、前記細胞又は組織を試験化合物と接触させること、次いで前記細胞又は組織におけるニューキナーゼ活性の第2のレベルを決定することを含む。ニューキナーゼ活性の第1のレベルと第2のレベルとの相違は、試験化合物がニューキナーゼ活性を調整する能力を示す。一つの実施態様において、ニューキナーゼ活性の第2のレベルがニューキナーゼ活性の第1のレベルよりも大きい場合、化合物は、アゴニスト活性を有し得る。特定の実施態様において、アゴニスト活性は、ニューキナーゼ活性の第1のレベルと比較して、ニューキナーゼ活性の第2のレベルの少なくとも約2、4、6、8、10倍、又はそれ以上の増大を含む。別の実施態様において、ニューキナーゼ活性の第2のレベルがニューキナーゼ活性の第1のレベル未満である場合、化合物は、アンタゴニスト活性を有し得る。特定の実施態様において、アンタゴニスト活性は、ニューキナーゼ活性の第1のレベルと比較して、ニューキナーゼ活性の第2のレベルの少なくとも約2、4、6、8、10倍、又はそれ以上の低減を含む。
【0133】
別の実施態様において、本発明は、ニューキナーゼポリペプチドを発現する細胞又は組織におけるニューキナーゼの活性を調整する化合物を同定する方法であって、前記細胞又は組織を試験化合物と接触させること、並びに前記細胞又は組織におけるニューキナーゼのレベルを決定することを含む、前記方法を提供する。このレベルと、比較される細胞又は組織、例えば試験化合物と接触されていない対照細胞又は組織におけるニューキナーゼ活性の標準レベル又はベースラインレベルとの相違は、前記試験化合物がニューキナーゼ活性を調整する能力を示す。一つの実施態様において、前記化合物と接触した細胞又は組織におけるニューキナーゼ活性のレベルが対照細胞又は組織におけるニューキナーゼ活性のレベルよりも大きい場合、化合物は、アゴニスト活性を有し得る。特定の実施態様において、アゴニスト活性は、対照細胞又は組織におけるニューキナーゼ活性のレベルと比較して、試験化合物と接触させた細胞、又は組織のニューキナーゼ活性のレベルの少なくとも約2-、4-、6-、8-、10倍、又はそれ以上の増大を含む。別の実施態様において、前記化合物と接触された細胞、又は組織におけるニューキナーゼ活性のレベルが対照細胞、又は組織におけるニューキナーゼ活性のレベル未満である場合、化合物は、アンタゴニスト活性を有し得る。特定の実施態様において、アンタゴニスト活性は、対照細胞、又は組織におけるニューキナーゼ活性のレベルと比較して、試験化合物と接触させた細胞、又は組織のニューキナーゼ活性のレベルの少なくとも約2-、4-、6-、8-、10倍、又はそれ以上の低減を含む。
【0134】
また、本発明は、ニューキナーゼポリペプチドを発現するトランスジェニック非ヒト動物におけるニューキナーゼの活性を調整する化合物を同定する方法であって、前記動物に化合物を投与すること、及び該動物を、該化合物によって影響を受ける心機能の変化について評価することを含む、前記方法を提供する。心機能は、心室中隔サイズ、左心室末端拡張期寸法(LVEDD)、後壁厚、左心室末端収縮期寸法(LVESD)、駆出率(EF)、短縮率(FS)、及び心周期を介して評価してもよい。一つの実施態様において、化合物の投与後のLVEDD値が、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、又はそれ以上まで低減される場合、化合物は、アゴニスト活性を有し得る。別の実施態様において、化合物の投与後のLVESD値が少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、又はそれ以上まで低減される場合、化合物は、アゴニスト活性を有し得る。別の実施態様において、左心室のEF値が少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、又はそれ以上まで増強される場合、化合物は、アゴニスト活性を有し得る。別の実施態様において、左心室のFS値が少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、又はそれ以上まで増強される場合、化合物は、アゴニスト活性を有し得る。
【0135】
また、本発明は、ニューキナーゼ核酸、又はポリペプチドに特異的に結合し、従ってニューキナーゼのアゴニスト又はアンタゴニストとして使用可能性を有する化合物を同定する方法を提供する。特定の実施態様において、このような化合物は、心肥大、心室筋細胞肥大、その他に影響を及ぼし得る。好ましい実施態様において、アッセイは、心不全療法、又は薬物開発のためのリード化合物として潜在的有用性を有する化合物についてスクリーニングするために行われる。従って、本発明は、ニューキナーゼ核酸又はポリペプチドに特異的に結合する化合物を検出するためのアッセイを提供する。例えば、ニューキナーゼ核酸を発現する組換え細胞は、例えばニューキナーゼポリペプチドに結合する化合物をスクリーニングするこれらのアッセイに使用するためのニューキナーゼポリペプチドを組換えで産生するために使用することができる。前記化合物(例えば、ニューキナーゼの推定上の結合パートナー)を、結合を促す条件下で、ニューキナーゼポリペプチド又はこれらの断片と接触させて、ニューキナーゼに対して特異的に結合する化合物を同定する。同様の方法を使用して、ニューキナーゼ核酸に結合する化合物をスクリーニングすることができる。前述のものを実行するために使用することができる方法は、当該技術分野において一般に公知である。
【0136】
一部の実施態様において、精製されたニューキナーゼポリペプチドを利用する無細胞アッセイを行って、(1)心筋ミオシン軽鎖、及び/又はその機能的断片、若しくは変異体のリン酸化、(2)Ca2+/カルモジュリンの非存在下におけるニューキナーゼの自己阻害活性、及び/又は(3)カルモジュリンのニューキナーゼ結合、及びカルモジュリンによる活性化、を調整する化合物を同定してもよい。ミオシン軽鎖キナーゼアッセイは、当該技術分野において周知であり、例えばPolakらの論文、J. Neurosci.、11:534-54(1991)、Ausubelらの文献、分子生物学における現在のプロトコル(Current Protocols In Molecular Biology)、John Wiley and Sons、New York(現在の版)、及び米国特許第5,906,810号によって記述されており、これらの内容は、これらの全体が参照として本明細書に組み込まれる。ニューキナーゼ生物活性の推定上のモジュレーターは、種々の濃度の化合物の存在下においてニューキナーゼキナーゼ活性をアッセイすること、及び適切な基質へのホスフェート組み込みの程度を調べることによって同定してもよい。一部の実施態様において、基質は、ミオシン軽鎖である。一部の実施態様において、基質は、ミオシン軽鎖の機能的断片である。一部の実施態様において、基質は、ミオシン軽鎖の変異体である。
【0137】
特定の実施態様において、米国特許第5,840,697号、Sharmaらの論文、Adv. Cyclic Nucleotide Res., 10:187-89(1979) 、及びWallaceらの論文、Methods Enzymol, 102:39-47(1983)(これらの内容は、これらの全体が本明細書に参照として組み込まれる)に記載されているように、ニューキナーゼ活性の調整は、カルモジュリン活性アッセイによって測定してもよい。また、カルモジュリンに結合し、かつカルモジュリン活性を阻害する化合物は、ニューキナーゼのCa2+/カルモジュリン依存的活性化を阻害し得る。例えば、限定されないが、ニューキナーゼ活性の潜在性モジュレーターの有無におけるカルモジュリン活性を、カルシウム依存的ホスホジエステラーゼアッセイを使用して測定してもよい。カルモジュリン活性は、下記の反応(1)、及び(2)によって例証される二段階アッセイ法によって決定されるホスホジエステラーゼ活性を刺激する、その能力によって測定される。
【化1】

アッセイの第1の工程の間に、環状アデノシン3'5'-一リン酸(cAMP)を、カルシウムで活性化したホスホジエステラーゼ(Cal-PDE)と共にインキュベートし、3'結合を加水分解してアデノシン5'-一リン酸(5'-AMP)を生じる。第2の工程の間に、5'-AMPは、5-ヌクレオチダーゼの作用を介して、アデノシン、及び無機リン酸(Pi)に定量的に変換される。反応には、モリブデン酸アンモニウムと反応した後の660nmにおける読みによって形成されるPiの吸光度の測定を伴う。形成されるPiの量は、カルモジュリンによる活性化のレベルに依存するホスホジエステラーゼ活性に直接関連がある。
【0138】
種々の実施態様において、ニューキナーゼを調整する化合物は、タンパク質、例えば抗体;核酸;又は小分子である。本明細書に使用される「小分子」という用語は、1モルあたり10,000グラム未満の分子量を有する有機化合物又は無機化合物(すなわち、ヘテロ有機及び有機金属化合物を含む)、1モルあたり5,000グラム未満の分子量を有する有機化合物又は無機化合物、1モルあたり1,000グラムグラム未満の分子量を有する有機化合物又は無機化合物、1モルあたり500グラム未満の分子量を有する有機化合物又は無機化合物、1モルあたり100グラム未満の分子量を有する有機化合物又は無機化合物、並びにこのような化合物の塩、エステル、及びその他の医薬として許容し得る形態を含むが、限定されない。また、このような化合物の塩、エステル、及びその他の医薬として許容し得る形態も包含される。
【0139】
例えば、ランダム、若しくはコンビナトリアルなペプチド、又は非ペプチドライブラリーなどの多様なライブラリーにより、ニューキナーゼに特異的に結合する分子をスクリーニングすることができる。当該技術分野において公知のライブラリー、例えば化学的に合成されたライブラリー、組換え(例えば、ファージディスプレイライブラリー)、及びインビトロでの翻訳に基づいたライブラリー)を使用することができる。
【0140】
化学的に合成されたライブラリーの例は、Fodorらの論文、Science 251:767-773(1991);Houghtenらの論文、Nature 354:84-86(1991);Lamらの論文、Nature 354:82-84(1991);Medynskiの論文、Bio/Technology 12:709-710(1994);Gallopらの論文、J. Medicinal Chemistry 37(9):1233-1251(1994);Ohlmeyerらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:10922- 10926(1993);Erbらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:11422-11426(1994);Houghtenらの論文、Biotechniques 13:412(1992);Jayawickremeらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:1614-1618(1994);Salmonらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:11708-11712(1993);PCT公開番号WO 93/20242;並びにBrenner、及びLernerの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:5381-5383(1992)に記述されている。
【0141】
ファージディスプレイライブラリーの例は、Scott及びSmithの論文、Science 249:386-390(1990);Devlinらの論文、Science、249:404-406(1990);Christian、R.B.らの論文、J. Mol. Biol. 227:711-718(1992));Lenstraの論文、J Immunol. Meth. 152:149-157(1992);Kayらの論文、Gene 128:59-65(1993);及び1994年8月18日に公開されたPCT公開番号WO94/18318に記述されている。インビトロでの翻訳に基づいたライブラリーは、1991年4月18日に公開されたPCT公開番号WO91/05058;及びMattheakisらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:9022-9026(1994)に記述されたものを含むが、限定されない。
【0142】
非ペプチドライブラリーの例として、ベンゾジアゼピンライブラリー(例えば、Buninらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:4708-4712(1994)を参照されたい)を使用のために適応することができる。また、ペプトイドライブラリー(Simonらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:9367-9371(1992))を使用することもできる。ペプチドのアミド官能性を過メチル化させて化学的に変換されたコンビナトリアルライブラリーを作製するために使用することができるライブラリーのもう1つの例は、Ostreshらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:11138-11142(1994)によって記述されている。
【0143】
ライブラリーのスクリーニングは、種々の一般に公知の方法のいずれかによって達成することができる。例えば、ペプチドライブラリーのスクリーニングを開示する以下の参照文献を参照されたい:Parmley及びSmithの論文、Adv. Exp. Med. Biol 251:215-218(1989);Scott、及びSmithの論文、Science 249:386-390(1990);Fowlkesらの論文、Bio/Technologies 13:422-427(1992);Oldenburgらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:5393-5397(1992);Yuらの論文、Cell 76:933-945(1994);Staudtらの論文、Science 241:577-580(1988);Bockらの論文、Nature 355:564-566(1992);Tuerkらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:6988-6992(1992);Ellingtonらの論文、Nature 355:850-852(1992);米国特許第5,096,815号、米国特許第5,223,409号、及び米国特許番号5,198,346.;Rebar、及びPaboの論文、Science 263:671-673(1993);並びに1994年8月8日に公開されたPCT公開番号WO94/18318。
【0144】
具体的実施態様において、スクリーニングは、ライブラリーメンバーを,固相上に固定されたニューキナーゼポリペプチド(又は核酸)と接触させること、及びタンパク質(又は核酸)に結合したこれらのライブラリーメンバーを収集することによって実施することができる。「パニング」技術と名付けられたこのようなスクリーニング法の例は、Parmley及びSmithの論文、Gene 73:305-318(1988);Fowlkesらの論文、Bio/Techniques 13:422-427(1992);PCT公開番号WO94/18318;及び本明細書において上で引用した文献において実施例として記述されている。
【0145】
別の実施態様において、酵母において相互作用タンパク質を選択するためのツーハイブリッド系((Fields及びSongの論文、Nature 340:245-246(1989);Chienらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88:9578-9582(1991))を使用して、ニューキナーゼタンパク質、又はその類似体に特異的に結合する分子を同定することができる。
【0146】
別の実施態様において、スクリーニングは、原核生物細胞、又は真核生物細胞において、ライブラリータンパク質が細胞の表面上に発現されるようにペプチドライブラリーを作製すること、続いて細胞表面をニューキナーゼと接触させること、及び結合が起こったかどうか決定することによって実施することができる。或いは、細胞を、ニューキナーゼが細胞の表面上に発現されるように、ニューキナーゼをコードする核酸で形質転換させる。次いで、細胞を潜在的アゴニスト、又はアンタゴニストと接触させて、結合、又はその欠如を決定する。前述の特定の実施態様において、潜在的アゴニスト、又はアンタゴニストは、潜在的アゴニスト、又はアンタゴニストが細胞の表面上に発現されるように、同じ、又は異なる細胞において発現される。
【0147】
当業者には明らかに理解されるであろうように、本明細書に開示したような、合理的ドラッグデザインを組み込むような手順を含めて、ニューキナーゼの活性調整することができる任意の及び/又は全ての薬剤、薬物若しくは化合物を同定するための本明細書に開示した実施態様を組み合わせて、さらなる薬物スクリーン、及びアッセイを形成することができ、これらの全てが、本発明によって想定される。
【0148】
(5. 7 診断法)
また、本発明は、診断アッセイ、及び予後アッセイが予防的に個体を治療するための予後(予測的)目的のために使用される予測医学の分野に属する。従って、本発明の一つの態様は、個体が疾患、若しくは障害で苦しめられるかどうか、又は障害を発症するリスクがあるかどうかを決定するために、生体試料(例えば、血液、血清、細胞、組織)の状況におけるニューキナーゼ核酸発現、並びにニューキナーゼ活性を決定するための診断アッセイに関する。このような疾患、又は障害は、異常なニューキナーゼ発現、又は活性と関連し得るし、心臓機能障害を含み得るが、限定されない。具体的な実施態様において、心臓機能障害は、肥大性心筋症である。その他の実施態様において、心臓機能障害は、心不全である。また、本発明は、個体がニューキナーゼ核酸発現、又は活性と関連する障害を発症するリスクがあるかどうかを決定するための予後アッセイを提供する。例えば、ニューキナーゼの突然変異は、生体試料中でアッセイすることができる。このようなアッセイは、異常なニューキナーゼ核酸発現、若しくは生物活性によって特徴づけられるか、又は関連する障害の発病前に予防的に個体を治療するに、予後目的、又は予測目的のために使用することができる。
【0149】
(5. 7. 1 診断アッセイ)
生体試料におけるニューキナーゼの有無を検出するための例示的な方法は、対象から生体試料を得ること、及び生体試料を、ニューキナーゼ核酸(例えば、mRNA、ゲノムDNA)を検出することができる化合物、又は薬剤と接触させることを含み、その結果ニューキナーゼの存在が試料において確認される。ニューキナーゼ mRNA、又はゲノムDNAを検出するための薬剤は、ニューキナーゼ mRNA、又はゲノムDNAにハイブリダイズすることができる標識された核酸プローブである。核酸プローブは、例えば配列番号3、若しくは4の核酸などの全長ニューキナーゼ核酸、又はその一部であることができる。一部の実施態様において、核酸プローブは、少なくとも長さが15、30、50、100、250、又は500ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドであり、かつニューキナーゼ mRNA、又はゲノムDNAにストリンジェント条件下で特異的にハイブリダイズするために十分である。
【0150】
ニューキナーゼポリペプチドを検出するための薬剤は、ニューキナーゼに対して結合することができる抗体、好ましくは検出可能なラベルをもつ抗体であることができる。抗体は、ポリクローナル、又はモノクローナルであることができる。無処置の抗体、又は抗体断片、例えばFab断片を使用することができる。標識されたプローブ、若しくは抗体を検出可能な物質に結合して(すなわち、物理的に連結させて)もよく、又は直接標識された二次試薬との反応性を介してプローブ若しくは抗体が検出される間接的な検出方法を使用してもよい。間接的な標識化の例には、蛍光標識された二次抗体を使用する一次抗体の検出、又はビオチンを蛍光標識されたストレプトアビジンで検出することができるようなビオチンによるDNAプローブの末端標識化を含む。
【0151】
本発明の検出方法を使用して、インビトロ、並びにインビボにおいて生体試料中のニューキナーゼ mRNA、タンパク質、又はゲノムDNAを検出することができる。例えば、ニューキナーゼ mRNAの検出のためのインビトロ技術には、ノーザンブロット法、及びインサイチューハイブリダイゼーションを含む。ニューキナーゼポリペプチドの検出のためのインビトロ技術には、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降、及び免疫蛍光を含む。ニューキナーゼゲノムDNAの検出のためのインビトロ技術は、サザンハイブリダイゼーション、及び蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)を含む。更にまた、ニューキナーゼを検出するためのインビボ技術には、標識された抗ニューキナーゼ抗体を対象に導入することを含む。例えば、抗体は、対象における存在、及び位置を標準的なイメージング技術によって検出することができる放射性マーカーで標識することができる。
【0152】
一つの実施態様において、対象由来の生体試料には、タンパク質分子、及び/又はmRNA分子、及び/又はゲノムDNA分子を含む。特定の実施態様において、生体試料は、血液である。
【0153】
別の実施態様において、さらなる方法には、対照を提供するために対象から生体試料を得ること、試料を化合物若しくは薬剤と接触させてニューキナーゼ mRNA又はゲノムDNAを検出すること、及び対照試料におけるニューキナーゼ mRNA若しくはゲノムDNAの存在を、試験試料におけるニューキナーゼ mRNA又はゲノムDNAの存在と比較することを含む。
【0154】
(5.7.2 予後アッセイ)
本明細書に記述した診断法は、異常なニューキナーゼ発現若しくは活性と関連する疾患又は障害を有するか、又は発症するリスクがある対象を同定するために更に利用することができる。このような疾患、又は障害には、心臓機能障害、特に肥大性心筋症、及び心不全を含み得るが、限定されない。本発明は、異常なニューキナーゼ発現、若しくは活性と関連する疾患、又は障害を同定するための方法であって、試験試料が対象から得られ、かつニューキナーゼ核酸(例えば、mRNA、ゲノムDNA)が検出される、前記方法を提供する。試験試料は、対象から得られる生体試料である。例えば、試験試料は、体液(例えば、血清)、細胞試料、又は組織であることができる。
【0155】
予後アッセイを使用して、対象が異常なニューキナーゼ発現、又は活性と関連する疾患、又は障害を治療するためのモダリティー(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド擬態、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子、食物、その他)を投与することができるかどうかを決定することができる。このような方法を使用して、対象を障害のための薬剤で効率的に治療することができるかどうかを決定することができる。本発明は、異常なニューキナーゼ発現、又は活性と関連する障害のために薬剤で対象を効率的に治療することができるかどうかを決定するための方法であって、試験試料が得られ、かつニューキナーゼ核酸が検出される(例えば、ニューキナーゼ核酸の存在が、異常なニューキナーゼ発現、又は活性と関連する障害を治療するために薬剤を投与することができる対象に関する診断である場合)、前記方法を提供する。
【0156】
また、本発明の方法は、遺伝子損傷をもつ対象が肥大性心筋症、又は心不全を含むが、限定されない障害に対するリスクがあるかどうかを決定するために、ニューキナーゼ遺伝子の遺伝子損傷を検出するためにも使用することができる。方法には、対象由来の試料において、ニューキナーゼポリペプチドをコードする遺伝子の完全性に影響を及ぼす変化、又はニューキナーゼ遺伝子のミス発現によって特徴づけられる遺伝子損傷の有無を検出することを含む。このような遺伝子損傷は、以下を確認することによって検出することができる:(1)ニューキナーゼ遺伝子からの1つ以上のヌクレオチドの欠失;(2)ニューキナーゼ遺伝子に対する1つ以上のヌクレオチドの付加;(3)ニューキナーゼ遺伝子における1つ以上のヌクレオチドの置換;(4)ニューキナーゼ遺伝子の染色体再編成;(5)ニューキナーゼ mRNA転写物のレベルの変化;(6)ゲノムDNAメチル化の変化などのニューキナーゼ遺伝子の異常な修飾;(7)ニューキナーゼ mRNA転写物における非野生型スプライスパターンの存在、(8)ニューキナーゼポリペプチドの非野生型レベル;(9)ニューキナーゼの対立形質の喪失;及び/又は(10)ニューキナーゼポリペプチドの不適当な翻訳後修飾。ニューキナーゼの損傷を検出するために使用することができる多数の公知のアッセイ技術がある。任意の生体試料を含む有核細胞を使用してもよい。
【0157】
ニューキナーゼの遺伝子損傷の発見には、当該技術分野において公知の任意の技術を使用してもよい。特定の実施態様において、損傷検出には、アンカーPCR、又はcDNA末端PCRの迅速増幅(RACE)などのポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)反応において、核酸プローブ/プライマーを使用してもよい。この方法は、患者から試料を収集すること、試料から核酸を単離すること、ニューキナーゼ配列(存在する場合)のハイブリダイゼーション、及び増幅が生じるような条件下でニューキナーゼ核酸に特異的にハイブリダイズする1つ以上の核酸プライマーと核酸を接触させること、増幅産物の有無を検出すること、又は増幅産物のサイズを検出すること、並びに対照試料と長さを比較することを含んでいてもよい。PCRは、本明細書に記述した突然変異を検出するために使用される任意の技術と組み合わせて、予備的増幅工程として使用することが望ましいであろうことが予測される。
【0158】
また、試料由来のニューキナーゼ遺伝子の突然変異は、制限酵素切断パターンの変化によっても同定することができる。例えば、試料、及び対照DNAを単離して、増幅して(任意に)、1つ以上の制限エンドヌクレアーゼで消化して、断片長サイズをゲル電気泳動によって決定して、比較する。試料と対照DNAとの間の断片長サイズの相違は、試料DNAにおける突然変異を示す。その上、配列特異的リボザイムの使用は、リボザイム切断部位の発生、又は喪失による特異的突然変異の存在をスコアするために使用することができる。
【0159】
更にまた、試料、及び対照核酸、例えばDNA、又はRNAを何百、又は何千ものオリゴヌクレオチドプローブを含む高密度アレイにハイブリダイズすることにより、ニューキナーゼの遺伝子突然変異を同定することができる(Croninらの論文、Hum. Mutat. 7:244-255(1996);Kozalらの論文、Nat. Med. 2:753-759(1996)を参照されたい)。例えば、ニューキナーゼにおける遺伝子突然変異は、上記Croninらの論文、に記載されているように、光を生じたDNAプローブを含む二次元アレイにおいて同定することができる。簡潔には、プローブの第1のハイブリダイゼーションアレイを使用して、試料、及び対照におけるDNAの長いストレッチを介してスキャンして、連続して重なり合うプローブの直線状アレイを作製することによって配列間の塩基変化を同定することができる。この工程により、点突然変異の同定が可能である。これには、検出される全ての変異体、又は突然変異に対して相補的な、より小さな特化されたプローブアレイを使用することによって、特異的な突然変異の特性付けが可能な第2のハイブリダイゼーションアレイを伴う。それぞれの突然変異アレイは、一方が野生型遺伝子に対して相補的で、かつ他方が突然変異遺伝子に対して相補的な平行プローブセットで構成される。
【0160】
更に別の実施態様において、当該技術分野において公知の任意の種々のシーケンシング反応を使用して直接ニューキナーゼ遺伝子をシーケンスして、試料ニューキナーゼ配列の配列を対応する野生型(対照)配列と比較することによって突然変異を検出することができる。シーケンシング反応の例には、古典的な技術に基づいたものを含む(Maxam及びGilbertの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74:560-564(1977);Sangerらの論文、Natl. Acad. Sci. USA 74:5463-5367(1977)を参照されたい)。質量分析によるシーケンシングを含む(Cohenらの論文、Adv. Chromatogr. 36:127-162(1996);Griffin及びGriffinの論文、Appl. Biochem. Biotechnol. 38:147-159(1993))、任意の種々の自動化されたシーケンシング法を本発明の診断アッセイを行うために使用することができる(Naeveらの論文、Biotechniques 19:448-453(1995)を参照されたい)。
【0161】
点突然変異を検出するためのその他の技術の例には、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅、又は選択的プライマー伸長を含むが、限定されない。例えば、公知の突然変異が中央に置かれたオリゴヌクレオチドプライマーを調製し、次いで完璧なマッチが見いだされる場合にのみハイブリダイゼーションを可能にする条件下で、標的DNAにハイブリダイズさせてもよい(Saikiらの論文、Nature 324:163-166(1986); Saikiらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6230-6234(1989)を参照されたい)。このような対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドがハイブリダイズ膜に付着し、かつ標識された標的DNAとハイブリダイズするときに、PCR増幅された標的DNA、又は多数の異なる突然変異にハイブリダイズする。
【0162】
(5.8 組成物)
本発明は、本発明の治療薬の有効量の対象に対する投与による治療(及び予防)の方法を提供する。好ましい態様において、治療薬は、実質的に精製される。対象は、好ましくは、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌ、その他などの動物を含むが、限定されない動物であり、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。具体的実施態様において、非ヒト哺乳動物が対象である。使用することができる製剤、及び投与の方法は、本明細書に下記に記述したものの中から選択することができる。
【0163】
種々の送達系、例えばリポソーム内のカプセル化、微小粒子、マイクロカプセル、治療薬を発現することができる組換え細胞、受容体依存的エンドサイトーシス(例えば、Wu、及びWuの論文、J. Biol Chem. 262:4429-4432(1987)を参照されたい)、レトロウイルス、又はその他のベクターの一部としての治療的核酸の構築、その他が公知であり、本発明の治療薬を投与するために使用することができる。導入の方法には、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路を含むが、限定されない。化合物は、任意の便利な経路によって、例えば輸液、又は大量瞬時投与によって、上皮、又は粘膜皮膚の裏打ち(例えば、口腔粘膜、直腸、及び腸管の粘膜、その他)を介した吸収によって投与してもよく、及びその他の生物活性薬と共に投与してもよい。投与は、全身的、又は局部的であることができる。加えて、脳室内、及び髄腔内注射を含む任意の適切な経路によって本発明の医薬組成物を中枢神経系に導入することも望ましいであろうし;脳室内注射は、例えばオマヤレザバーなどの貯蔵所に取り付けられた脳室内カテーテルによって促進してもよい。また、肺投与も、吸入器、又は噴霧器の使用により、及びエアロゾル化剤を伴う製剤によって使用することができる。
【0164】
具体的実施態様において、治療を必要とする領域に局所的に本発明の医薬組成物を投与することが望ましいであろうし;これは、例えば、及び限定するためではなく、外科手術の間の局部的輸液、局所適用、例えば手術後の創傷被覆材と組み合わせて、注射によって、カテーテルによって、坐薬の手段によって、又はインプラントによって達成してもよく、前記インプラントは、サイラスティック膜などの膜、若しくは線維を含む、多孔性、非多孔性、又はゲル状材料のものである。
【0165】
別の実施態様において、治療薬は、小胞内で、特にリポソーム内で送達することができる(Langerの論文、;Science 249:1527-1533(1990);感染症、及び癌の治療におけるリポソーム(Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer)のTreatらの文献、Lopez-Berestein and Fidler(編)、Liss、New York、pp. 317-372、353-365(1989)を参照されたい)。
【0166】
更に別の実施態様において、治療薬は、徐放系において送達することができる。一つの実施態様において、ポンプを使用してもよい(上記、Langerの論文;Sefton, CRC Crit. Ref Biomed. Eng. 14: 201(1987);Buchwaldらの論文、Surgery 88:507(1980);Saudekらの論文、N. Engl. J. Med. 321:574(1989)を参照されたい)。別の実施態様において、重合物質を使用することができる(徐放の医学的適用(Medical Applications of Controlled Release)、Langer及びWise(編)、CRC Pres.、Boca Raton, Florida(1974);制御薬物生物学的利用能:薬物製品設計、及び性能(Controlled Drug Bioavailability: Drug Product Design and Performance)、Smolen及びBall(編)、Wiley, New York(1984);Ranger及びPewasの論文、J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61(1983)を参照されたい;また、Levyらの論文、Science 228:190(1985);Duringらの論文、 Ann. Neurol. 25:351(1989);Howardらの論文、J. Neurosurg. 71:105(1989)も参照されたい。更に別の実施態様において、徐放系は、治療標的、すなわち胸腺の付近に置くことができ、従って全身用量一部分が必要なだけである(例えば、上記、徐放の医学的適用(Medical Applications of Controlled Release)の、Goodsonの文献、第2巻、pp. 115-138(1984)を参照されたい)。その他の徐放系は、Langer(Science 249:1527-1533(1990))による総説において論議されている。
【0167】
治療薬が治療的タンパク質をコードする核酸(例えば、配列番号1、又は配列番号2)である特定の実施態様において、核酸は、適切な核酸発現ベクターの一部としてそれを構築すること、及び例えばレトロウイルスのベクターを使用することによって(米国特許第4,980,286号を参照されたい)、又は直接注射によって、又は微小粒子照射を使用することによって(例えば、遺伝子銃;微粒子銃、DuPont)、又は脂質、若しくは細胞表面受容体、又はトランスフェクト薬でコーティングするか、又は核に入ることが知られているホメオボックス様ペプチドに対してそれを結合して投与すること(例えば、Joliotらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88:1864-1868(1991)を参照されたい)など、それが細胞内に入るように投与することによって、そのコードされるタンパク質の発現を促進するようにインビボ投与することができる。或いは、核酸治療薬を細胞内に導入して、相同組換えにより、発現のための宿主細胞DNA内に組み込むことができる。
【0168】
また、本発明は、医薬組成物を提供する。このような組成物には、治療上有効量の治療薬、及び医薬として許容し得る担体を含む。水は、医薬組成物が静脈内に投与されるときに好ましい担体である。また、生理食塩水、及び水性デキストロース、及びグリセロールを液体担体として、特に注射用溶液のために使用することができる。適切な薬学的賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、滑石、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール、その他が含まれる。組成物には、また、必要に応じて、微量の湿潤剤、若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含むことができる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、徐放性製剤などの形態をとることができる。組成物は、トリグリセリドなどの従来の結合剤、及び担体と共に坐薬として製剤化することができる。経口製剤は、薬学的等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウム、その他などの標準的な担体を含むことができる。適切な薬剤担体の例は、E.W. Martinによるレミントンの医薬品科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)に記述されている。このような組成物は、好ましくは精製された形態で、患者に対して適当な投与のための形態を提供するように、適切な量の担体と共に、治療薬の治療上有効量を含むであろう。製剤は、投与様式に合わせるべきである。
【0169】
好ましい実施態様において、組成物は、ヒトに対する静脈内投与のために適応された医薬組成物として、ルーチン手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与のための組成物は、無菌の等張性の水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、組成物は、また、注射部位における疼痛を和らげるためのリグノカインなどの、溶解剤、及び局所麻酔薬を含んでいてもよい。一般に、成分は、別々に、又は単位剤形に共に混合されて、例えば活性な薬剤の量を示すアンプル、又はサッシェなどの密閉して封をした容器内の乾燥凍結乾燥粉末、又は水を含まない濃縮物として供給される。組成物を輸液により投与する場合は、無菌の薬品級の水、又は食塩水を含有する輸液ボトルにより分配される。組成物が注射によって投与される場合、成分を投与前に混合されるように、注射用滅菌水、又は塩類溶液のアンプルを提供することができる。
【0170】
本発明の治療薬は、中性、又は塩形態として製剤化することができる。医薬として許容し得る塩は、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、その他に由来するものなどの遊離アミノ基と共に形成されたもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン、その他に由来するものなどの遊離カルボキシル基と共に形成されたものを含む。
【0171】
特定の障害、又は状態の治療に有効であろう本発明の治療薬の量は、障害、又は状態の性質に依存するであろうし、標準的な臨床技術によって決定することができる。加えて、任意に最適な用量範囲を同定するのを補助するために、インビトロアッセイを使用してもよい。また、製剤に使用される正確な用量は、投与の経路、及び疾患、又は障害の重症度に依存するであろうし、当業者の判断、及びそれぞれの患者の環境に従って決定されるべきである。しかし、静脈内投与のための適切な用量範囲は、一般に1キログラム体重あたり約20〜500マイクログラムの活性化合物である。鼻腔内投与のための適切な用量範囲は、一般に約0.01pg/kg体重〜1mg/kgの体重である。有効な用量は、インビトロ、又は動物モデル試験系に由来する用量反応曲線から推定してもよい。
【0172】
坐薬は、一般に0.5%〜10重量%の範囲の活性成分を含み;経口製剤は、好ましくは10%〜95%の活性成分を含む。
【0173】
(5.9 キット)
医薬組成物は、投与のための説明書と共に、キット、容器、パック、又はディスペンサーに含めることができる。本発明がキットとして供給されるときは、異なる成分の組成物を別々の容器に包装してもよく、使用直前に混合してもよい。このような成分の別々のパッケージングにより、活性成分の機能を失うことなく長期貯蔵が可能になるであろう。
【0174】
また、キットは、診断試験、又は組織タイピングなどの特定の検査の実行を促進する別々の容器に試薬を含んでいてもよい。例えば、ニューキナーゼ DNA鋳型、及び適切なプライマーを内部標準のために供給してもよい。
【0175】
(5.9.1 容器、又は器)
キットに含まれる試薬は、異なる成分の寿命が保存され、かつ容器の材料によって吸着されず、又は変化されない任意の種類の容器で供給することもできる。例えば、封をしたガラスアンプルには、窒素などの中性の非反応性気体の下でパックされた凍結乾燥されたルシフェラーゼ、又は緩衝液を含んでいてもよい。アンプルは、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレン、その他などの有機重合体、セラミック、金属、又は典型的には試薬を保持するために使用される任意のその他の材料などの任意の適切な材料からなっていてもよい。適切な容器のその他の例には、簡素な瓶を含み、アンプル、及びエンベロープと同様の物質から製造されていてもよく、アルミニウム、又は合金などの箔の裏付きの内部からなっていてもよい。その他の容器には、試験管、バイアル、フラスコ、瓶、注射器、又はその他を含む。容器は、皮下注射針によって突き通すことができるストッパーを有する瓶など、無菌のアクセスポートを有していてもよい。その他の容器は、除去することにより成分を混合することができる容易に除去可能な膜によって分離された2つのコンパートメントを有してもよい。除去可能な膜は、ガラス、プラスチック、ゴム、その他であってもよい。
【0176】
(5.9.2 説明資料)
また、キットは、説明資料と共に供給してもよい。説明書は、紙、又はその他の基体上に印刷されていてもよく、及び/又はフロッピーディスク、CD-ROM、DVD-ROM、Zipディスク、ビデオテープ、オーディオテープなどの電子読み込み可能な媒体として供給されてもよい。詳細な説明書は、キットと物理的に結合していなくてもよく;その代わりに、使用者は、キットの製造業者、又は販売者によって特定されるインターネットウェブサイトに誘導させても、又は電子メールとして供給してもよい。
【0177】
(5. 10 治療方法)
本発明は、異常なニューキナーゼ発現、又は活性と関連する障害に対するリスクのある(又は感受性のある)か、又は該障害を有する対象を治療する予防的、及び治療的な両方の方法を提供する。例示的な障害は、鬱血性心不全、心筋梗塞、急不整脈、家族性心肥大、虚血性心疾患、特発性拡張型心筋症、心筋炎その他を含むが、限定されない心機能異常によって特徴づけられる。
【0178】
(5.10.1 疾患、及び障害)
ニューキナーゼレベル、又は生物活性の増加によって特徴づけられる疾患、及び障害は、活性をアンタゴナイズする(すなわち、低減させ、又は阻害する)治療薬で治療してもよい。アンタゴニストは、治療的、又は予防的様式で投与してもよい。使用してもよい治療薬には:(1)ニューキナーゼペプチド、又はその類似体、誘導体、断片、若しくは相同体;(2)ニューキナーゼペプチドに対するAb;(3)ニューキナーゼ核酸;(4)相同組換えによってニューキナーゼの内因性機能を除去するために使用される「機能不全である」(すなわち、コード配列内への異種挿入による)アンチセンス核酸、及び核酸群の投与(Capecchiの論文、Science 244:1288-1292(1989));又は(5)ニューキナーゼ、及びその結合パートナーとの相互作用を変化させるモジュレーター(すなわち、本発明のさらなるペプチド擬態、若しくはニューキナーゼに特異的なAbを含む、阻害剤、アゴニスト、及びアンタゴニスト);を含む。
【0179】
ニューキナーゼレベル、又は生物活性の低減によって特徴づけられる疾患、及び障害は、活性を増加させる(すなわち、アゴニストである)治療薬で治療してもよい。活性をアップレギュレートする治療薬は、治療的、又は予防的に投与してもよい。使用してもよい治療薬には、ペプチド、又はその類似体、誘導体、断片、若しくは相同体;又は生物学的利用能を増加させるアゴニスト、又は特定の実施態様において、ニューキナーゼの自己阻害ドメインを阻害することによってニューキナーゼ活性を増加させるアゴニスト;を含む。
【0180】
レベルの増加、又は低減は、ペプチド、及び/又はRNAを定量化することによって、患者の組織試料を(例えば、生検組織から)得て、発現されたペプチド(又はニューキナーゼ mRNA)のRNA、若しくはペプチドレベル、構造、及び/又は活性をインビトロでアッセイすることにより、容易に検出することができる。方法には、免疫アッセイ(例えば、ウエスタンブロット解析、免疫沈降、続くドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動、免疫細胞化学、その他によって)、及び/又はmRNAの発現を検出するためのハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンブロットアッセイ、ドットブロット、インサイチューハイブリダイゼーション、その他)を含むが、限定されない。
【0181】
(5.10.2 予防法)
本発明は、対象において、ニューキナーゼ発現、又は少なくとも1つのニューキナーゼ活性を調整する薬剤を投与することによって、異常なニューキナーゼ発現、若しくは活性と関連する疾患、又は状態を予防するための方法を提供する。異常なニューキナーゼ発現、若しくは活性によって生じ、又は寄与する疾患のリスクのある対象は、例えば任意の診断アッセイ、若しくは予後アッセイによって、又は組み合わせて同定することができる。予防薬の投与は、疾患、若しくは障害が予防され、又は代わりに、その進行が遅れるように、ニューキナーゼ異常の症候特徴の徴候前に行うことができる。本発明の特定の実施態様において、心室筋細胞肥大は、前記予防薬の投与によって予防され、又は遅れる。ニューキナーゼ異常のタイプに応じて、例えばニューキナーゼアゴニスト、又はニューキナーゼアンタゴニストを、対象を治療するために使用することができる。適切な薬剤は、スクリーニングアッセイに基づいて決定することができる。
【0182】
(5.10.3 治療方法)
本発明の別の態様は、治療目的のためにニューキナーゼ発現、又は活性を調整する方法に属する。本発明の調整方法は、細胞を、細胞と関連するニューキナーゼ活性の1つ以上を調整する薬剤と接触させることを含む。ニューキナーゼ活性を調整する薬剤は、核酸、若しくはタンパク質、ニューキナーゼの天然に存在する同族リガンド、ペプチド、ニューキナーゼペプチド擬態、アプタマー、又はその他の小分子であることができる。薬剤は、ニューキナーゼ活性を刺激してもよい。このような刺激薬の例には、細胞に導入された活性なニューキナーゼ、及びニューキナーゼ核酸分子を含む。ニューキナーゼ活性の刺激は、ニューキナーゼが異常にダウンレギュレートされており、及び/又はニューキナーゼ活性の増加が有益効果を有する可能性が高い状況において望ましい。
【0183】
その他の実施態様において、ニューキナーゼを調整する薬剤は、ニューキナーゼ活性を阻害する。阻害剤の例には、抗ニューキナーゼ Ab、又は阻害性核酸分子を含む。例えば、核酸分子には、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー、又は阻害/干渉RNA(例えば、小さな阻害/干渉RNA)を含んでいてもよい。これらの核酸モジュレーターをスクリーニングし、同定し、及び作製するための方法は、当該技術分野において公知である。
【0184】
一部の実施態様において、RNA干渉(RNAi)(例えば、Chuangらの論文、97:4985(2000)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.を参照されたい)を、ニューキナーゼをコードする遺伝子の発現を阻害するために使用することができる。干渉RNA(RNAi)断片、特に二本鎖(ds)RNAiを、ニューキナーゼの機能喪失を生じさせるために使用することができる。哺乳動物、線虫(C. elegans)、ショウジョウバエ(Drosophila)、植物、及びヒトを含む生物体における沈黙遺伝子に対するRNAiの使用に関する方法は、公知であり(例えば、Fireらの論文、Nature 391:806-811(1998);Fireの論文、Trends Genet.15:358-363(1999);Sharpの論文、Genes Dev. 15:485-490(2001);Hammondらの論文、Nature Rev. Genet. 2:1110-1119(2001);Tuschlの論文、Chem. Biochem. 2:239-245(2001);Hamiltonらの論文、Science 286:950-952(1999);Hammondらの論文、Nature 404:293-296(2000);Zamoreらの論文、Cell 101:25-33(2000);Bernsteinらの論文、Nature 409:363-366(2001);Elbashirらの論文、Genes Dev. 15:188 200(2001);Elbashirらの論文、Nature 411:494-498(2001);国際PCT出願番号WO01/29058;及び国際PCT出願番号WO99/32619を参照されたい)、これらの内容は、参照により組み込まれる。二重鎖RNA(dsRNA)を発現する構築物は、エピソームのままであるか、又はゲノムに組み込まれる複製可能なベクターを使用して宿主に導入される。適切な配列を選択することにより、dsRNAの発現は、ニューキナーゼをコードする内因性mRNAの蓄積を妨げることができる。
【0185】
調整方法は、インビトロで(例えば、薬剤と共に細胞を培養することによって)、又は代わりに、インビボで(例えば、対象に薬剤を投与することによって)行うことができる。従って、本発明は、ニューキナーゼ若しくは核酸分子の異常な発現若しくは活性によって特徴づけられる疾患又は障害に苦しめられている個体を治療する方法を提供する。一つの実施態様において、本方法は、ニューキナーゼ発現若しくは活性を調整する(例えば、アップレギュレートする、又はダウンレギュレートする)薬剤(例えば、スクリーニングアッセイによって同定される薬剤)、又は該薬剤の組み合わせを投与することを含む。別の実施態様において、本方法は、低減した又は異常なニューキナーゼ発現又は活性を補う療法として、ニューキナーゼ又は核酸分子を投与することを含む。
【0186】
(5.10.4 治療薬の生物学的高価の決定)
適切なインビトロ、又はインビボアッセイを行って、特定の治療薬の効果、及びその投与が患部組織の治療に表れているかどうかを決定することができる。
【0187】
種々の具体的実施態様において、インビトロアッセイを、患者の障害に含まれる代表的な細胞のタイプ(群)で行って、所与の治療薬が細胞タイプ(群)に対して所望の効果を及ぼすかどうかを決定してもよい。療法に使用するための様式は、ヒト被験者における試験の前に、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギ、その他を含むが、限定されない適切な動物モデル系で試験してもよい。
【0188】
同様に、インビボ試験のために、任意の当該技術分野において公知の動物モデル系をヒト被験者への投与前に使用してもよい。一つの実施態様において、治療薬候補は、心肥大のためのインビボモデルにおいて有効性について試験してもよい。インビボでの肥大の決定は、血圧、心拍数、体血管抵抗、収縮性、心拍動の力、求心性又は拡張性肥大、左心室収縮期圧、左心室平均圧、左心室拡張末期圧、心拍出量、脳卒中インデックス、組織学的パラメーター、並びに心室サイズ、及び壁厚などの心臓血管疾患パラメーターの測定を含む。インビボにおける心室筋細胞肥大の発症、及び抑制の決定のために利用可能な動物モデルは、圧負荷マウスモデル、機能不全RVマウスモデル、トランスジェニックマウスモデル、及び心筋梗塞後ラットモデルを含む。ヒト患者における心室筋細胞肥大の存在、発症、及び抑制を評価するための医学的方法は、公知であり、例えば弛緩期及び収縮期パラメーター、心室塊の評価、並びに肺静脈の測定を含む。
【0189】
(5.10.5 本発明の化合物の予防的、及び治療的使用)
ニューキナーゼ核酸及びタンパク質は、鬱血性心不全、心筋梗塞、急不整脈、家族性心肥大、虚血性心疾患、特発性拡張型心筋症、心筋炎その他を含むが、限定されない種々の障害に関係した、潜在的な予防的、及び治療的適用に有用である。
【0190】
一例として、ニューキナーゼをコードするcDNAは、遺伝子療法に有用であろうし、タンパク質は、その必要のある対象に投与されたときに有用であろう。非限定的な例として、本発明の組成物は、心不全に罹患している患者の治療に対して、有効性を有するであろう。
【0191】
また、ニューキナーゼ核酸又はその断片は、該核酸又はタンパク質の存在、又は量が評価される診断適用にも有用であろう。抗バクテリア分子(すなわち、いくつかのペプチドは、抗バクテリア特性を有することが見いだされた)として、更に使用することができるであろう。これらの材料は、治療方法、又は診断方法に使用するための本発明の新規物質に対して免疫特異的に結合するAbの産生において、更に有用である。
【実施例】
【0192】
(6. 実施例)
本発明は、いかなる様にも限定されることは意図されない以下の実施例によって例証される。
【0193】
(6. 1 実施例1:心筋梗塞ラット左心室におけるニューレグリンの適用後のニューキナーゼ遺伝子発現のアップレギュレーション)
ニューレグリン(NRG)によって調節され得る遺伝子を同定するために、浸透ポンプによるNRGの長時間注入後の、正常、及び心筋梗塞ラットの左心室の両方において遺伝子発現を調べた。
【0194】
NRGで浸透ポンプを満たすために、1mlの滅菌水、及び1mlの滅菌した0.9%生理食塩水を連続的にフード内でNRG(993.1U、62.5μg)のバイアルに注入した。NRG溶液を無菌の注射器に抜き取った。先端を平滑にした針を注射器に交換し、注射器内の泡を除去した。ポンプを正立状態に保持し、針を、それがさらに進まなくなるまで、正立ポンプの上部の小さな開口部に挿入した。プランジャをゆっくり押して、溶液がポンプからあふれ出始めるまで、ポンプ内にNRG溶液を添加した。針を除去して、ポンプをきれいに拭いた。流速調節器の透明なキャップを取り除いて、短いステンレス鋼管を曝露させた。次いで、鋼管を5cmのPE60チューブの一端に挿入した。注射器の針をPE60チューブの別の末端に挿入した。注射器のプランジャを押して、それが満たされるまで、流速調節器にNRG溶液を添加した。次いで、流速調節器の長いチューブを、その白いフレンジがポンプに付着するまで、ポンプ内に挿入した。針を流速調節器から引き抜いた後、滅菌した0.9%生理食塩水にポンプを37℃にて一晩浸漬した。
【0195】
浸透ポンプを設置するために、ウィスター雄ラット(中国科学アカデミーの上海動物センター)のそれぞれ200±20gの重さのものを、100mg/kg(薬物/体重)のケタミンを腹腔内に注射することによって麻酔した。ラットの頚部と肩部との間の領域を脱毛して、衛生化にした。無菌の湿った布の小片で体を覆った。次いで、肩甲骨間の皮膚において、切開を慎重に行って、外頸静脈の位置を決め、分離した。心臓からの静脈の遠位端を結紮した。外頸静脈の壁に眼はさみによって小さな穴を作製し、ミクロ鉗子によって拡げた。浸透ポンプに接続したPE60チューブを、穴を介して静脈内に2cm挿入した。次いで、心臓からの静脈の近端部をPE60チューブと結合して、チューブを固定した。PE60チューブを囲んでいる静脈の遠位端をきつく結んで、チューブを更に固定した。止血薬を使用して、切開部から肩甲骨までの皮膚を鈍く分離することにより、トンネルを作製した。更に皮膚を広げることにより、ラットの背中に対して、肩胛骨の間の領域に、最終的にポケットを形成した。ポンプをポケット内にトンネルを通してすべらせて、流速調整器を切開部から離した。次いで、皮膚切開部を縫合で閉じた。ラットを回復させた後、動物室に戻して、通常通り餌を供給した。
【0196】
MIラットを、浸透ポンプを介してNRGで7日間処理した後、ラットを殺して、これらの左心室を採取して、遺伝子発現解析のためにAffymetrix社に送った。次いで、ラット左心室をホモジナイズし、総mRNAをホモジネートから抽出した。次いで、mRNA試料をAffymetrix Rat発現アレイ230 2.0によって研究して、遺伝子のmRNAレベルを、マイクロアレイを使用して調べた。ミオシン軽鎖キナーゼに関連したタンパク質に対応するmRNAの算出レベルは、表1に収載してある。それぞれのデータポイントは、3匹のラットからの平均発現レベルを表す。
【表3】

【0197】
プローブセット1376789、及び1382239にハイブリダイズするmRNA配列について、発現は、対照(媒体)処理した試料と比較して、NRG処理したMIラット左心室において、少なくとも2倍増加した。これらの結果は、NRGがMIラット左心室においてプローブセット1376789、及び/又は1382239と結合するmRNAのレベルを有意に増強することを証明する。従って、プローブセット1376789、又は1382239に結合するmRNAは、ニューレグリンの下流の標的(群)であるタンパク質をコードする可能性が高い。
【0198】
(6.2 実施例2:ラット左心室RNA由来のニューキナーゼ cDNAのクローニング)
総RNAは、正常ラット左心室から抽出した。RNA、プライマー(GACTCGAGTCGACATCGATTTTTTTTTTTTTTTTTT(配列番号5))、及びAMV逆転写酵素(Promega)をPromega逆転写系(cat.#A3500)に添加し、製造業者のプロトコルに従って逆転写を行った。反応後、反応混合物の一定分量、リバースプライマー(GACTCGAGTCGACATCGATTTTTTTTTTTTTTTTTT(配列番号5))、及びフォワードプライマー(ATGTCAGGAGTTTCAGAGGA(配列番号6))(ミオシン軽鎖キナーゼ2に対する予測された類似性に基づいた)をPCRマスター混合物(Sinobio)に添加してPCRによって標的cDNAを増幅した。PCRに続いて、生じた試料を電気泳動によって精製して、pUCm-Tプラスミド(Promega)に連結した。次いで、プラスミドを前述の2つのプライマー(配列番号5、及び6)でシーケンスした。cDNA配列は、配列番号1としての収載してあり、相当するタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号2として収載してある。このタンパク質をニューキナーゼと命名して、そのcDNA配列をプローブセット1382239(配列番号9)、及びプローブセット1376789(配列番号10)のための配列と共に整列することによって更に確認した(上の実施例1を参照されたい)。ラットゲノムに対するこれらの3つの配列の整列により、配列番号9の5'末端の325bpがニューキナーゼ遺伝子の3'末端に重なり、配列番号10の5'末端の77bpが配列番号9の3'と重なることが明らかになった。
【0199】
(6. 3 実施例3:ラット心臓におけるニューキナーゼ遺伝子の特異的発現)
鋳型としてニューキナーゼ cDNAを使用して、ニューキナーゼの部分配列(配列番号8)を、フォワードプライマー(ATGTCAGGAGTTTCAGAGGA(配列番号6))、及びリバースプライマー(CTTGAATTCTCACAGTGACGTATCGATGAT(配列番号7))を使用するPCRによって合成した。次いで、この断片(配列番号8)を精製して、放射標識されたニューキナーゼ cDNAプローブを合成するための鋳型として使用した。ニューキナーゼ cDNA断片、及び[α-32P]dCTPをPromegaのPrime-a Gene(登録商標)標識系(DNAポリメラーゼIラージ断片、及びランダムヘキサデオキシリボヌクレオチドを含む)に添加し、標識プローブを合成した。反応生成物をSephacryl(登録商標)S-400スピンカラム(Promega)に充填し、カラムを回転して270bpよりも長いプローブを収集した。次いで、プローブを、種々のラット器官(心臓、脳、脾臓、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、及び精巣)から抽出したポリA+ RNAを含むClontechのRat MTN(商標)ブロットのノーザンブロット解析のために使用した。図1は、ニューキナーゼ特異的プローブが心臓組織由来のおよそ4.4kbのmRNAのみとハイブリダイズしたことを示し、ニューキナーゼ遺伝子が心臓特異的遺伝子であることを示唆している。また、ブロットは、充填対照としてのβ-アクチン特異的プローブ(Clontech)ともハイブリダイズした。
【0200】
(6. 4 実施例4:ヒト左心室RNA由来のヒトニューキナーゼ cDNAのクローニング)
総RNAをヒト左心室から抽出した。RNA、オリゴdTプライマー((TTTTTTTTTTTTTTT))、及びAMV逆転写酵素(Promega)をPromega逆転写系に添加して、逆転写した。反応後、反応混合物の一定分量、フォワードプライマー(GACACCACCGCCTGAGTGAGAAC(配列番号11))、及びリバースプライマー(CCATTGGAGCAGCAGAGTTGAAGA(配列番号12))をPCRマスター混合物(Sinobio)に添加して、PCRを行って標的cDNAを増幅した。反応後、生じた混合物を電気泳動によって精製して、pUCm-Tプラスミド(Promega)に連結してシーケンスした。ヒトニューキナーゼ cDNA配列は、配列番号4として収載してある。推定の別の翻訳開始部位が、配列番号4の139及び211の位置に同定され、そこからの翻訳により、それぞれ795アミノ酸(配列番号2)、及び819アミノ酸(配列番号25)のポリペプチドを生じる。
【0201】
(6. 5 実施例5:ヒトニューキナーゼ抗体の産生)
ヒトニューキナーゼ-GST融合タンパク質に対するウサギポリクローナル抗体を作製した。簡単には、ヒトニューキナーゼ cDNA、フォワードプライマー(CGCGGATCCATGGACACAAAGCTGAACATG(配列番号13))、及びリバースプライマー(CCTTAAGTCACGTGGCCCCCACCAAAGCGAT(配列番号14))をPCRマスター混合物(Sinobio)に添加して、PCRを行った。PCRの後、生じた混合物を電気泳動によって精製した。精製したDNA、及びpGEX-2Tプラスミド(GEヘルスケア)の両方を、ライゲーションの前にそれぞれBamHI、及びEcoRIによって消化した。ヒトニューキナーゼ断片のcDNA配列は、配列番号15として収載し、断片のアミノ酸配列を配列番号16として示してある。
【0202】
ヒトニューキナーゼ断片cDNAを含む連結した構築物をBL21細胞に形質転換した後、IPTGを培養に添加してニューキナーゼ断片の高発現を誘導した。細胞を培養の遠心分離によって収集した後、超音波処理した。超音波処理した細胞懸濁液を更に遠心分離して、封入体をペレットにした。上清の除去後、8M 尿素を添加して、封入体を溶解した。次いで、ニューキナーゼ断片溶液を透析して尿素を除去し、かつ同時に断片を再び折り畳んだ。次いで、断片をGSTアフィニティーカラムによって精製して、抗体を産生するためにウサギに皮下注射した。2週後に、ウサギ血清を抗体の精製のために抜き取った。
【0203】
(6. 6 実施例6:ヒト心臓組織におけるニューキナーゼの特異的発現)
ヒト腸、肝臓、心臓、骨格筋、肺、腎臓、子宮、脾臓、及び甲状腺からの組織を別々にホモジナイズして、溶解緩衝液(50mM Tris、pH 7.4、150mM NaCl、1% Triton X-100、5mM EDTA、50mM NaF、2mMバナジン酸ナトリウム、2mM PMSF、カクテルプロテアーゼ阻害剤(Roche、25mlにつき1ピース))で溶解した。溶解した組織からのタンパク質試料をSDS-PAGEに供し、次いでウエスタンブロットのためにPVDF膜へ移した。異なるヒト組織におけるニューキナーゼタンパク質の発現は、実施例5で産生した抗体によって検出した。膜は、充填対照としてGAPDH特異抗体でプローブした。図2に示したように、ニューキナーゼは、ヒト心臓においてのみ発現された。この結果は、例3に示したように、ラット心臓組織におけるニューキナーゼのmRNA発現を補い、更にニューキナーゼの発現が心臓特異的であることを証明する。
【0204】
(6. 7 実施例7:ヒトニューキナーゼ活性は、カルシウム、及びカルモジュリン依存的である)
(ヒト調節性ミオシン軽鎖(RLC)の発現及び精製)
総RNAは、ヒト左心室組織から抽出した。RNA、フォワードプライマー(GGGAATTCCATATGGCACCTAAGAAAGCAAAGAA(配列番号17))、リバースプライマー(CCGCTCGAGGTCCTTCTCTTCTCCGTGGGTG(配列番号18))、及びAMV逆転写酵素を、逆転写のためのPromega逆転写系に添加した。反応後、二本鎖cDNAをpet22bプラスミドに連結した。次いで、連結した構築物をBL21細胞に形質転換した後、IPTGを添加してhisタグを付けたRLCの高発現を誘導した。細胞を遠心分離によってペレットにした後、封入体を放出するために超音波処理した。封入体をさらなる遠心分離によって収集し、8M尿素によって溶解した。変性させたhisタグ付きのRLCをニッケルカラムによって精製し、透析によって尿素を除去して再び折り畳んだ。RLCのアミノ酸配列は、配列番号19と一致する。
【0205】
(ニューキナーゼの組換え発現、及び精製)
ニューキナーゼ cDNA、フォワードプライマー(CATCATCTGGTTCCGCGTGGATCTATGTCAGGAACCTCCAAGGAGAGT(配列番号20))、リバースプライマー(CGGAATTCCCATTGGAGCAGCAGAGTTGAAG(配列番号21))、及びPfuTurbo(登録商標)DNAポリメラーゼ(Stratagene)を、PCRのためのPCR反応系に添加した。数ラウンドの増幅に続いて、反応混合物の一定分量、新たなフォワードプライマー(CGGGATCCATGCATCATCATCATCATCATCTGGTTCCGCGT(配列番号22))、リバースプライマー(CGGAATTCCCATTGGAGCAGCAGAGTTGAAGA(配列番号21)、及びPfuTurbo(登録商標)DNAポリメラーゼ(Stratagene)を、PCRのさらなるラウンドのためのPCR反応系に添加した。反応混合物のDNAを電気泳動によって分離し、ニューキナーゼをコードする標的DNAを精製して、pcDNA3プラスミドに連結した。連結反応産物を増幅、及びシーケンシングのためにDH5α細胞に形質転換した。正確な構築物を含むクローンをスケールアップ培養において増幅し、ニューキナーゼ cDNAを含むプラスミドDNAを、Qiagen Plasmid Maxi Kitを使用して抽出した。次いで、精製したpcDNA3/ニューキナーゼプラスミドを、Lipofectamine(商標)2000(Invitrogen)を使用してCOS7細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの数時間後の最初の培地交換の後、細胞を37℃にて48時間インキュベートした。次いで、細胞を溶解緩衝液(50mM Tris、pH 7.4、150mM NaCl、1% Triton X-100、5mM EDTA、50mM NaF、2mMバナジン酸ナトリウム、2mM PMSF、カクテルプロテアーゼ阻害剤(Roche、25mlの溶解緩衝液につき1錠剤))を使用して溶解し、収集した。細胞懸濁液を12000gにて20分間遠心分離し、再懸濁したペレットを0.45μm膜(Millipore)を通して濾過した。次いで、試料をHis-タグ抗体(Beyotime)、及び50%プロテインAセファロース4 Fast Flowと共に溶解緩衝液中で混合して、穏やかに振盪しながら3時間氷上でインキュベートした。混合物を12000gにて20秒間遠心分離した後、上清を除去した。次いで、ペレットを溶解緩衝液で3回洗浄した。最後の洗浄に続いて、ペレットを1mlの反応緩衝液(20mM Tris、pH 7.5、60mM KCl)に再懸濁し、混合して、氷上で5分間インキュベートした。次いで、混合物を遠心分離し、上清を除去して、さらなる300μlの反応緩衝液を添加した。
【0206】
(ニューキナーゼによるRLCのカルシウム及びカルモジュリン依存的リン酸化)
インビトロリン酸化アッセイを、精製したニューキナーゼ、RLC、及びカルモジュリン(Calbiochem)を利用して行って、RLCのニューキナーゼリン酸化がカルシウム、及びカルモジュリンの両方に依存的であるかどうかを決定した。ニューキナーゼの活性は、リン酸化されたRLC(RLC-P)についてのウエスタンブロットによって決定されるRLCリン酸化の量をモニターすることによって、Ca2+、及びカルモジュリンの有無の双方についてインビトロで評価した。3つの実験を同時に行った。実験1では、反応成分には、ニューキナーゼ、ATP、RLC、Ca2+、CaMを含んだ。実験2では、反応成分には、ニューキナーゼ、ATP、RLC、CaMを含むが、カルシウムを含まず、反応緩衝液中のカルシウムをキレート化するためにEGTAを添加した。実験3では、反応成分には、ニューキナーゼ、ATP、RLC、及びCa2+を含むが、カルモジュリンを含まなかった。反応物の濃度は、反応に含まれたときに、以下の通りであった:2mM EGTAを含む又は含まない、2mM ATP、2.5μM RLC、0.3μM Ca2+、1μM CaM。リン酸化反応は、穏やかに振盪しながら室温で2時間実施した。それぞれの反応の20μlの一定分量を取り出して、ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供して、ウエスタンブロット解析のためにPVDF膜へ転写した。RLC-P抗体(Cell Singnaling)を使用してRLC-Pを検出した;結果を図3に示してある。
【0207】
RLCは、ニューキナーゼをCa2+及びカルモジュリンの存在下においてRLCと組み合わせるときに、高度にリン酸化される(レーン1)。対照的に、RLCのリン酸化は、反応溶液へのEGTAの添加と組み合わせたCa2+の非存在下で、かろうじて検出可能である(レーン2)。同様に、RLCのリン酸化は、カルモジュリンの非存在下で検出不可能である(レーン3)。合わせて考えると、これらの結果は、RLCのニューキナーゼリン酸化がCa2+及びカルモジュリンの存在に高度に依存的であることを示す。従って、RLCのニューキナーゼリン酸化は、以下の様式で生じると考えられる:
【化2】

式において、CaMは、カルモジュリンを意味し、RLCは、調節性ミオシン軽鎖を意味し、RLC-Pは、リン酸化されたRLを意味する。
【0208】
(6. 8 実施例8:昆虫細胞で発現したヒトニューキナーゼの活性)
(ヒトニューキナーゼ cDNAを含むBacmidの調製)
実施例7からのpcDNA3/ニューキナーゼプラスミドDNAをBamHI、及びEcoRIで消化し、ニューキナーゼ cDNA断片を切り出した。消化産物を電気泳動によって分離し、ヒトニューキナーゼ cDNA断片を精製して、その後EcoRI BamHIで消化したpFastBacプラスミドDNAに連結した。DH5αコンピテント細胞を連結産物で形質転換し、プレートにまいて、一晩インキュベートした。いくつかの一晩のコロニーから単離したミニプレップDNAを、ニューキナーゼ陽性クローンを同定するためのシーケンシングのためにInvitrogenに送った。正確なニューキナーゼ cDNA配列を含むpFastBac/ニューキナーゼプラスミドを保持するコロニーを更に増幅し、プラスミドDNAを、Plasmid Maxi Kit(Qiagen)を使用して精製した。次いで、pFastBac/ニューキナーゼプラスミドDNAをDH10Bac細胞に形質転換し、該細胞を、50μg/mlカナマイシン、7μg/mlゲンタマイシン、10μg/mlテトラサイクリン、200μg/ml X-gal、及び40μg/ml IPTGを含むアガロースプレート上へ播種して、37℃にて48時間インキュベートした。白いコロニーを選び出し、50μg/mlカナマイシン、7μg/mlゲンタマイシン、10μg/mlテトラサイクリン、200μg/ml X-gal、及び40μg/ml IPTGを含む新たなアガロースプレート上へ再び播種して、37℃にて一晩インキュベートした。次いで、白いコロニーを50μg/mlカナマイシン、7μg/mlゲンタマイシン、10μg/mlテトラサイクリンを含む液体培地に播種して、37℃にて一晩、穏やかに振盪した。6mlの液体培養を採取して、1分間14000gにて遠心した。上清を除去し、1.2mlの溶液1(15mM Tris-HCl、pH8.0、10mM EDTA、100μg/ml RNase A)を添加して、穏やかに混合して細胞を再懸濁した。次いで、1.2mlの溶液2(0.2N NaOH、1% SDS)を添加して、5分間室温で穏やかに混合した。1.2mlの3M酢酸カリウムpH 5.5を振盪しながらゆっくりと添加し、混合物を14000gにて10分間遠心分離した。上清を、3.2mlのイソプロパノールを含むチューブへ移した。チューブを数回反転して、6分間氷上に置いた後、14000gで15分間遠心分離した。上清を、ペレットを乱すことなく慎重に除去した。2mlの70%のエタノールをペレットに添加した後、チューブを数回反転し、14000gにて5分間遠心分離した。チューブを室温で5〜10分間開放したままにして、ペレットを残留する上清を除去させた。40μlのTE緩衝液、pH8.0を添加して、精製したBacmid DNAを溶解した。
【0209】
精製したBacmid DNA、フォワードプライマー(GTTTTCCCAGTCACGAC(配列番号23)、またM13+)、及びリバースプライマー(CGGAATTCCCATTGGAGCAGCAGAGTTGAAGA(配列番号24))を、PCRのためのPCRマスター混合物(Sinobio)に添加した。次いで、反応混合物を電気泳動して、陽性クローンを検出した。
【0210】
(ヒトニューキナーゼの発現、及び精製)
5.4×106個のsf9昆虫細胞をグレース昆虫培地(Invitrogen)の10cmプレート上で播種して、室温にて1時間置いた。この時間の間に、24μgのヒトニューキナーゼ cDNAを含むBacmid(Bacmid/ニューキナーゼ)を1.5mlのグレース培地(抗生物質及びFBSを含まない)に添加して、混合した。60μlのLipofectamine(商標)2000(Invitrogen)は、1.5mlのグレースの培地(抗生物質及びFBSを含まない)と混合し、室温にて5分間インキュベートした。Bacmid/ニューキナーゼを含む溶液を希釈したLipofectamine(商標)2000と混合し、室温にて20分間インキュベートした。2mlのグレース培地(抗生物質、及びFBSを含まない)を添加して、培地を交換後に全ての溶液をsf9細胞に添加した。5時間のインキュベーション後、培地を27℃にて除去して、10mlのグレース培地(100Uストレプトマイシン、100Uアンピシリン、及び10%FBSを含む)と交換した。27℃にて72時間のインキュベーション後に、培地を収集した。培地を500gにて5分間遠心分離して、ウイルスを含む上清を、短期貯蔵のためには暗所4℃にて貯蔵し、長期貯蔵のためには-80℃で貯蔵した。
【0211】
ウイルス含む溶液をSf9細胞に添加して、これを組織培養のプラスチックに1時間付着させた。細胞を、ウイルスを含む培地中で27℃にて72時間インキュベートした後、培地を収集し、少量を、瓶に入った100mlのSf9細胞懸濁液(2xl06細胞/ml)に添加した。懸濁液を振盪しながら(振盪速度:130rpm)27℃にて84時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞懸濁液を収集して、1000rpmにて10分間遠心分離し、上清を除去した。次いで、溶解緩衝液(50mM Tris、pH 7.4、150mM NaCl、1%Triton X-100、5mM EDTA、50mM NaF、2mMバナジン酸ナトリウム、2mM PMSF、カクテルプロテアーゼ阻害剤(Roche、25mlにつき1ピース))を細胞ペレットに添加して、細胞懸濁液を超音波処理した後、12000rpmにて20分間遠心分離した。次いで、上清を濾過した後、ヒトニューキナーゼを精製するためのニッケルカラム(Niセファロース高性能、GE)に充填した。タンパク質溶液をゲル濾過カラム(HiTrap Desaltingカラム、GE)に充填して更にタンパク質を精製し、タンパク質を50mM Tris-HCl、pH 7.5、150mM NaCl、0.5mM EDTA、0.02%Triton X-100、2mM DTT、20%のグリセロールを含む緩衝液でカラムから洗浄した。ヒトニューキナーゼ溶液を分注して、-80℃にて保存した。
【0212】
(ヒトニューキナーゼ活性の評価)
以下は、ニューキナーゼ活性をインビトロで決定するための例示的方法を提供する。ニューキナーゼによるRLCのリン酸化には、以下の反応、及び反応生成物を含む:
【化3】

【0213】
式において、PEPは、ホスホエノールピルビン酸を意味し;PKは、ピルビン酸キナーゼを意味し;β-NADHは、β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(還元型)を意味し;LDHは、乳酸脱水素酵素を意味し;及びβ-NADは、β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(酸化型)を意味する。
【0214】
従って、ニューキナーゼ活性は、340nmにおけるNADH吸光度の減少の割合を測定することによって決定することができ、これはニューキナーゼによる定常状態ATP加水分解の割合に比例する。また、このアッセイを使用して、ニューキナーゼの活性を増強、又は阻害することができる薬剤を検出することができる。アッセイにおいて、800μlの反応には、以下を含む:20mM Tris、pH 7.5、60mM KCl、1mM DTT、3.75mM MgCl2、1mM ATP、0.3μM CaCl2、1.5mM PEP、20 U/ml PK、20 U/ml LDH、90μM RLC、250μM β-NADH、lμM CaM、及び100nM ニューキナーゼ、ΔOD/分/nmol ニューキナーゼ(nukinase)= 0.0152/分/nmol ニューキナーゼ。
【0215】
本明細書において引用された全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかも個々の刊行物、又は特許出願が参照により組み込まれ、具体的かつ個々に示されたかのように、本明細書に参照により組み込まれる。前述の本発明が理解するものの明瞭化のために図と例とをあげていくらか詳細に記述したが、当業者には、本発明の教示を考慮して、添付の特許請求の範囲の精神、又は範囲から逸脱することなく、特定の変更、及び修飾をこれに対して行ってよいことが直ちに明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、単離された核酸。
【請求項2】
配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、請求項1記載の単離された核酸。
【請求項3】
配列番号3、又はその相補物から選択される約500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも70%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項1記載の単離された核酸。
【請求項4】
配列番号3、又はその相補物の核酸配列を含む、請求項1記載の単離された核酸。
【請求項5】
配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドであって、ミオシン軽鎖をリン酸化することができる、前記ポリペプチド。
【請求項6】
配列番号2、又は配列番号25に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、単離された核酸。
【請求項7】
配列番号2、又は配列番号25のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、請求項6記載の単離された核酸。
【請求項8】
配列番号4、又はその相補物から選択される約500個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも70%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項6記載の単離された核酸。
【請求項9】
配列番号4、又はその相補物の核酸配列を含む請求項6記載の単離された核酸。
【請求項10】
配列番号2、又は配列番号25に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドであって、ミオシン軽鎖をリン酸化することができる、前記ポリペプチド。
【請求項11】
前記ポリペプチドが、心筋ミオシンのミオシン軽鎖をリン酸化することができる、請求項5、又は請求項10記載の単離されたポリペプチド。
【請求項12】
前記ポリペプチドが、哺乳動物の心筋ミオシンのミオシン軽鎖をリン酸化することができる、請求項5、又は請求項10記載の単離されたポリペプチド。
【請求項13】
前記ポリペプチドが、ラットの心筋ミオシンのミオシン軽鎖をリン酸化することができる、請求項5、又は請求項10記載の単離されたポリペプチド。
【請求項14】
前記ポリペプチドが、マウスの心筋ミオシンのミオシン軽鎖をリン酸化することができる、請求項5、又は請求項10記載の単離されたポリペプチド。
【請求項15】
前記ポリペプチドが、ヒトの心筋ミオシンのミオシン軽鎖をリン酸化することができる、請求項5、又は請求項10記載の単離されたポリペプチド。
【請求項16】
前記ポリペプチドが配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項5記載の単離されたポリペプチド。
【請求項17】
前記ポリペプチドが配列番号2、又は配列番号25のアミノ酸配列を含む、請求項10記載の単離されたポリペプチド。
【請求項18】
配列番号3の少なくとも10個の連続したヌクレオチド、又はその相補鎖を含む、単離されたオリゴヌクレオチド。
【請求項19】
配列番号4の少なくとも10個の連続したヌクレオチド、又はその相補鎖を含む、単離されたオリゴヌクレオチド。
【請求項20】
前記オリゴヌクレオチドが配列番号5の核酸配列を含む、請求項18記載の単離されたオリゴヌクレオチド。
【請求項21】
前記オリゴヌクレオチドが配列番号6の核酸配列を含む、請求項18記載の単離されたオリゴヌクレオチド。
【請求項22】
前記コードされた前記ポリペプチドがミオシン軽鎖をリン酸化することができる、請求項1記載の単離された核酸を含むベクター。
【請求項23】
配列番号3の核酸配列を含む、請求項22記載のベクター。
【請求項24】
前記核酸が転写制御配列に作動可能に連結されている、請求項22記載のベクター。
【請求項25】
前記ベクターが、プラスミド、コスミド、ウイルス、及びバクテリオファージを含む群から選択される、請求項22記載のベクター。
【請求項26】
前記配列番号1を含むポリペプチドが前記ベクターで形質転換された細胞によって発現される、請求項22記載のベクター。
【請求項27】
前記コードされたポリペプチドがミオシン軽鎖をリン酸化することができる、請求項6記載の単離された核酸を含むベクター。
【請求項28】
配列番号4の核酸配列を含む、請求項27記載のベクター。
【請求項29】
前記核酸が転写制御配列に作動可能に連結される、請求項27記載のベクター。
【請求項30】
前記ベクターが、プラスミド、コスミド、ウイルス、及びバクテリオファージを含む群から選択される、請求項27記載のベクター。
【請求項31】
配列番号2、又は配列番号25を含むポリペプチドが、前記ベクターで形質転換された細胞によって発現される、請求項27記載のベクター。
【請求項32】
請求項1記載の核酸を含む、単離された宿主細胞。
【請求項33】
請求項22記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項34】
前記宿主細胞がH9c2(2-1)である、請求項32記載の単離された宿主細胞。
【請求項35】
前記宿主細胞が新生児ラット心室筋細胞である、請求項32記載の単離された宿主細胞。
【請求項36】
前記宿主細胞がH9c2(2-1)である、請求項33記載の単離された宿主細胞。
【請求項37】
前記宿主細胞が新生児ラット心室筋細胞である、請求項34記載の単離された宿主細胞。
【請求項38】
請求項6記載の核酸を含む、単離された宿主細胞。
【請求項39】
請求項27記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項40】
前記宿主細胞がH9c2(2-1)である、請求項38記載の単離された宿主細胞。
【請求項41】
前記宿主細胞が新生児ラット心室筋細胞である、請求項38記載の単離された宿主細胞。
【請求項42】
前記宿主細胞がH9c2(2-1)である、請求項39記載の単離された宿主細胞。
【請求項43】
前記宿主細胞が新生児ラット心室筋細胞である、請求項40記載の単離された宿主細胞。
【請求項44】
配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体。
【請求項45】
前記抗体がポリクローナルである、請求項44記載の抗体。
【請求項46】
前記抗体がモノクローナルである、請求項44記載の抗体。
【請求項47】
前記抗体が単鎖モノクローナルである、請求項44記載の抗体。
【請求項48】
前記抗体が組換えである、請求項44記載の抗体。
【請求項49】
前記抗体がキメラである、請求項44記載の抗体。
【請求項50】
前記抗体がヒト化されている、請求項44記載の抗体。
【請求項51】
前記抗体が哺乳動物である、請求項44記載の抗体。
【請求項52】
前記抗体がヒトである、請求項44記載の抗体。
【請求項53】
配列番号2、又は配列番号25のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体。
【請求項54】
前記抗体がポリクローナルである、請求項53記載の抗体。
【請求項55】
前記抗体がモノクローナルである、請求項53記載の抗体。
【請求項56】
前記抗体が単鎖モノクローナルである、請求項53記載の抗体。
【請求項57】
前記抗体が組換えである、請求項53記載の抗体。
【請求項58】
前記抗体がキメラである、請求項53記載の抗体。
【請求項59】
前記抗体がヒト化されている、請求項53記載の抗体。
【請求項60】
前記抗体が哺乳動物である、請求項53記載の抗体。
【請求項61】
前記抗体がヒトである、請求項53記載の抗体。
【請求項62】
ニューキナーゼポリペプチドをコードする核酸を発現するトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項63】
前記ニューキナーゼポリペプチドが配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項62記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項64】
前記ニューキナーゼポリペプチドが配列番号2又は配列番号25のアミノ酸配列を含む、請求項62記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項65】
前記動物がニューキナーゼポリペプチドを過剰発現、又は過小発現する、請求項62記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項66】
前記動物が、配列番号3、又はその相補物に対して少なくとも70%の同一性を有する核酸を含む、請求項62記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項67】
前記動物が、配列番号4、又はその相補物に対して少なくとも70%の同一性を有する核酸を含む、請求項62記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項68】
前記動物が哺乳動物である、請求項62記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項69】
前記動物がマウスである、請求項62記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項70】
前記動物がラットである、請求項62記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項71】
前記動物がウサギである、請求項62記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項72】
前記動物がハムスターである、請求項62記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項73】
前記動物がヒツジである、請求項62記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項74】
その生殖細胞がニューキナーゼをコードする内因性核酸配列にホモ接合性無発現変異を含むトランスジェニック非ヒト動物であって、該突然変異は、ニューキナーゼ転写に対して逆向きの、ネオマイシンカセットの挿入によって作製され、かつ前記突然変異は、前記動物が機能的ニューキナーゼポリペプチドを発現しないように、胚性幹細胞における相同組換えによって前記動物に導入された、前記トランスジェニック非ヒト動物。
【請求項75】
前記動物が妊性であり、かつ前記無発現変異をその子孫に伝達する、請求項74記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項76】
前記動物が哺乳動物である、請求項74記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項77】
前記動物がマウスである、請求項74記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項78】
前記動物がラットである、請求項74記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項79】
前記動物がウサギである、請求項74記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項80】
前記動物がハムスターである、請求項74記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項81】
前記動物がヒツジである、請求項74記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項82】
ニューキナーゼ活性に影響を及ぼす薬剤をスクリーニングする方法であって:a)前記薬剤を、ニューキナーゼポリペプチドを発現する細胞と接触させること;及びb)該細胞におけるニューキナーゼの生物活性を評価すること;を含み、該生物活性は、自己阻害、心筋ミオシン軽鎖のリン酸化、及びニューキナーゼの発現からなる群から選択される、前記方法。
【請求項83】
ニューキナーゼ活性に影響を及ぼす薬剤をスクリーニングする方法であって:a)前記薬剤を請求項62記載の動物に投与すること;及びb)前記薬剤によって影響を受ける心機能の変化について該動物を評価すること;を含む、前記方法。
【請求項84】
前記心機能が、心室中隔サイズ、左心室末端拡張期寸法、後壁厚、左心室末端収縮期寸法、駆出率、短縮率、及び心周期からなる群から選択される、請求項83記載の方法。
【請求項85】
試料における請求項1記載の核酸の存在を検出する方法であって:(a)該試料を請求項1記載の核酸にハイブリダイズする核酸と接触させること;及び(b)該核酸が該試料において核酸に結合するかどうかを決定すること;を含む、前記方法。
【請求項86】
試料における請求項6記載の核酸の存在を検出する方法であって:(a)該試料を請求項1記載の核酸にハイブリダイズする核酸と接触させること;及び(b)該核酸が該試料において核酸に結合するかどうかを決定すること;を含む、前記方法。
【請求項87】
対象が遺伝的に心臓機能障害になりやすいかどうかを同定するための方法であって、該対象からの生体試料において心臓機能障害と関連するニューキナーゼ遺伝子を検出することを含む、前記方法。
【請求項88】
前記心臓機能障害が肥大性心筋症である、請求項87記載の方法。
【請求項89】
前記心臓機能障害が心不全である、請求項87記載の方法。
【請求項90】
配列番号1を含むアミノ酸配列を有するポリペプチド、及び医薬として許容し得る担体を含む組成物。
【請求項91】
配列番号1を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び医薬として許容し得る担体を含む組成物。
【請求項92】
前記ポリヌクレオチドが配列番号3のヌクレオチド配列を含む、請求項91記載の組成物。
【請求項93】
配列番号2、又は配列番号25を含むアミノ酸配列を有するポリペプチド、及び医薬として許容し得る担体を含む組成物。
【請求項94】
配列番号2又は配列番号25を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び医薬として許容し得る担体を含む組成物。
【請求項95】
前記ポリヌクレオチドが配列番号4のヌクレオチド配列を含む、請求項94記載の組成物。
【請求項96】
i)配列番号3の少なくとも10個の連続したヌクレオチド、又はその相補鎖を含む単離されたオリゴヌクレオチド、及びii)容器、を含むキット。
【請求項97】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号3の少なくとも15個の連続したヌクレオチド、又はその相補鎖を含む、請求項96記載のキット。
【請求項98】
i)配列番号4の少なくとも10個の連続したヌクレオチド、又はその相補鎖を含む単離されたオリゴヌクレオチド、及びii)容器、を含むキット。
【請求項99】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号3の少なくとも15個の連続したヌクレオチド、又はその相補鎖を含む、請求項98記載のキット。
【請求項100】
ニューキナーゼ活性を調整する方法であって、該ニューキナーゼポリペプチドの自己阻害ドメインを阻害することを含む、前記方法。
【請求項101】
宿主細胞においてニューキナーゼポリペプチドを産生する方法であって、i)該宿主細胞を、該ニューキナーゼポリペプチドをコードする核酸配列で形質転換すること;、及びii)該ニューキナーゼポリペプチドが該宿主細胞によって産生されるように、該核酸配列を発現すること;を含む、前記方法。
【請求項102】
前記ニューキナーゼポリペプチドが配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項101記載の方法。
【請求項103】
前記ニューキナーゼポリペプチドが配列番号2、又は配列番号25のアミノ酸配列を含む、請求項101記載の方法。
【請求項104】
哺乳動物の心臓細胞におけるニューキナーゼ遺伝子発現を調整する方法であって:該細胞に、配列番号4の少なくとも10個の連続したヌクレオチド、若しくはその相補鎖を含む単離されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを投与することを含む、前記方法。
【請求項105】
前記ポリヌクレオチドが配列番号2、又は配列番号25をコードする、請求項104記載の方法。
【請求項106】
前記ニューキナーゼ遺伝子発現が増加される、請求項104記載の方法。
【請求項107】
前記ニューキナーゼ遺伝子発現が低減される、請求項104記載の方法。
【請求項108】
対象の1つ以上の心臓細胞(群)のニューキナーゼ遺伝子における遺伝子損傷を検出する方法であって:(a)該対象の1つ以上の心臓細胞(群)から核酸を単離すること、及び(b)前記試料のニューキナーゼ遺伝子における遺伝子損傷又は損傷群の存在を検出すること、を含む、前記方法。
【請求項109】
前記ニューキナーゼ遺伝子における前記遺伝子損傷が:該ニューキナーゼ遺伝子からの1つ以上のヌクレオチドの欠失、該ニューキナーゼ遺伝子に対する1つ以上のヌクレオチドの付加、該ニューキナーゼ遺伝子における1つ以上のヌクレオチドの置換、該ニューキナーゼ遺伝子の染色体再配列、ニューキナーゼ mRNA転写物レベルの変化、該ニューキナーゼ遺伝子の異常な修飾、該ニューキナーゼ遺伝子のメチル化の変化、又はニューキナーゼ mRNA転写物の非野生型スプライスングパターンの存在を決定することによって検出される、請求項108記載の方法。
【請求項110】
対象の1つ以上の心臓細胞(群)におけるニューキナーゼ遺伝子発現の異常なレベルを検出する方法であって、(a)該対象の1つ以上の心臓細胞を含む生体試料を得ること、及び(b)対照試料と比較して、前記生体試料における該ニューキナーゼ mRNAのレベルを決定することを含み、ニューキナーゼ mRNAレベルが該対照試料と比較して前記生体試料においてより高いか、又はより低い場合、ニューキナーゼ遺伝子発現の異常なレベルが検出される、前記方法。
【請求項111】
前記対照試料が1つ以上の健康なヒト心臓細胞で構成される、請求項110記載の方法。
【請求項112】
ニューキナーゼ遺伝子発現の異常なレベルは、ニューキナーゼ mRNAレベルが前記対照試料と比較して前記生体試料においてより高い場合に検出される、請求項110記載の方法。
【請求項113】
ニューキナーゼ遺伝子発現の異常なレベルは、ニューキナーゼ mRNAレベルが前記対照試料と比較して前記生体試料においてより低い場合に検出される、請求項110記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−501167(P2010−501167A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524883(P2009−524883)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【国際出願番号】PCT/CN2007/002531
【国際公開番号】WO2008/028405
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(504274712)ゼンサン (シャンハイ) サイエンス アンド テクノロジー リミテッド (5)
【Fターム(参考)】