説明

ネガティブコントロール方式の油圧システム

【課題】パイロットポンプの使用が不必要で、動力損失を防止し、油圧ポンプと制御弁の間に負荷圧力発生装置の使用が不必要なネガティブコントロール方式の油圧システムを提供すること。
【解決手段】本発明によるネガティブコントロール方式の油圧システムは、エンジンに連結する油圧ポンプと、油圧ポンプに連結する油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータに供給される作動油の流れを制御する切換弁と、油圧ポンプのセンタバイパス通路の下流側に設けられるパイロット信号圧発生手段と、操作量に比例して信号圧力を出力する操作レバーと、センタバイパス通路に一端が分岐接続し、操作レバーの入口ポートに他端が接続するパイロット流路に設けられ、油圧ポンプからの作動油を操作レバーの操作による信号圧として使用することができるように操作レバーを操作時にパイロット流路を通って供給される作動油を制御する減圧弁を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガティブ制御方式(negative control system)により可変容量形油圧ポンプの吐出流量を制御する油圧システムに関するもので、特にパイロットポンプの使用が不必要で、動力損失を防止し、油圧ポンプと制御弁の間に負荷圧力発生装置の使用が不必要なネガティブコントロール方式の油圧システムに関するものである。
【0002】
「ネガティブ制御方式」とは、油圧ポンプのセンタバイパス通路の下流側に設けられたパイロット信号圧発生手段により生成されるパイロット信号圧が高い場合は、油圧ポンプの吐出流量を減らし、パイロット信号圧が低い場合は、油圧ポンプの吐出流量を増加させるように制御するシステムである。
【背景技術】
【0003】
図1に示した従来技術によるネガティブ制御方式の油圧システムは、エンジン1に連結した可変容量形油圧ポンプ2(以下、「油圧ポンプ」という)及び固定容量形パイロットポンプ3(以下、「パイロットポンプ」という)と、油圧ポンプ2のセンタバイパス通路5に設けられた切換弁6、7、8にそれぞれ連結し、それぞれの切換弁6、7、8の切換時、並列流路9を通って供給される作動油により駆動する油圧アクチュエータ10(走行モータ)、11(バケットシリンダ)、12(ブームシリンダ)と、センタバイパス通路5の下流側に設けられ、油圧ポンプ2の吐出流量をネガティブ制御方式により制御するように信号圧力を発生するパイロット信号圧発生手段13、14と、パイロットポンプ3に連結し、操作量に比例して2次信号圧力を発生させる操作レバー15と、パイロットポンプ3と操作レバー15の間のパイロット流路25に取り付けられたアキュムレータ16を含む。
【0004】
前述したように構成された従来技術のネガティブ制御方式の油圧システムにおいて、エンジン1に連結した油圧ポンプ2から吐き出される作動油はセンタバイパス通路5及び並列流路9を通って切換弁6、7、8の入口ポートに供給される。
【0005】
操作レバー15から信号圧力が供給されずに切換弁6、7、8のスプールが中立状態を維持する場合、センタバイパス通路5を通過した作動油はオリフィス13及びリターン流路17を経由して油圧タンクTに帰還する。
【0006】
この時、オリフィス13を通過する作動油の量が多い場合、オリフィス13の通過抵抗が高くなるため、油圧ポンプ制御信号ライン18の圧力が上昇する。そして、設定圧力を超過する場合、ネガティブ制御式リリーフ弁14及びリターン流路17を経由して油圧タンクTに帰還する。
【0007】
一方、前述した油圧ポンプ2はネガティブ制御方式で制御されるので、油圧ポンプ制御信号ライン18の圧力が上昇する場合、吐出流量を減少させ、油圧ポンプ制御信号ライン18の圧力が下がる場合、吐出流量を増加させる。
【0008】
また、切換弁6、7、8が切り換わる場合、センタバイパス通路5の断面積が切換弁6、7、8により縮小し、通過流路が減少するため、オリフィス13の通過抵抗が低くなり、油圧ポンプ2の吐出流量が増加する。
【0009】
一方、パイロットポンプ3から吐き出されたパイロット作動油の一部はアキュムレータ16に貯蔵され、パイロット作動油の残りの一部は操作レバー15を経由して切換弁6、7、8にこれらを切り換えさせる信号圧力として供給される。
【0010】
この時、パイロットポンプ3側の圧力がアキュムレータ16に貯蔵された圧力より低い場合、パイロット流路25に設けたチェック弁19により逆流を防止する。つまり、エンジン1が停止する場合、瞬間的にパイロットポンプ3側の圧力が低い場合に非常用としてアキュムレータ16に貯蔵された作動油をパイロット信号圧力として使用することができる。
【0011】
一方、操作レバー15が中立位置を維持している場合、パイロットポンプ3から吐き出されるパイロット作動油は遮断(ブロック)される。パイロット流路25から分岐した流路に取り付けられたリリーフ弁20により設定圧力を維持することができ、設定圧力を超過する場合、リリーフ弁20を通して油圧タンクTに帰還する。
【0012】
一方、操作レバー15の操作により供給されるパイロット信号圧力により切換弁8のスプールが図において右側方向に切り換わる場合、油圧ポンプ2からの作動油が並列流路9及び切換弁8を経由してブームシリンダのラージチェンバ12aに供給されブームシリンダを伸長駆動させる。この時、ブームシリンダのスモールチェンバ12bの作動油は、切換弁8、切換弁8のリターン流路8a及びリターン流路17を経由して油圧タンクTに帰還する。
【0013】
これとは反対に、操作レバー15の操作により切換弁8のスプールが図において左側方向に切り換わる場合、油圧ポンプ2の作動油が並列流路9及び切換弁8を経由してブームシリンダのスモールチェンバ12bに供給されてブームシリンダを収縮駆動させる。この時、ブームシリンダのラージチェンバ12aの作動油は切換弁8、切換弁8のリターン流路8b及びリターン流路17を経由して油圧タンクTに帰還する。
【0014】
一方、重量物により油圧アクチュエータ12に荷重が加わる場合、自重によりブームシリンダが収縮駆動することになる。この時、ブームシリンダのスモールチェンバ12bに流入する作動油の量がラージチェンバ12aから流出する作動油の量より少ない場合、切換弁8のリターン流路8aに設けたチェック弁21に作用する背圧チェックスプリング22の力によって、切換弁8のリターン流路8aの圧力が上昇するため、ブームシリンダのスモールチェンバ12bに負圧が発生することを防止できる。
【0015】
つまり、リターン流路8aの圧力がブームシリンダのスモールチェンバ12bの圧力より高くなる場合、再生流路23に設けられた再生チェック弁24を介してブームシリンダから帰還する作動油を再生させることができる。
【0016】
一方、エンジン1に連結するパイロットポンプ3はエンジン1の回転に従って常に一定量の作動油を吐出するようになる。つまり、パイロットポンプ3から吐き出される作動油は操作レバー15の切換時に切換弁6、7、8を切換させるように信号圧力として使用され、それ以外の作動油はリリーフ弁20を経由して油圧タンクTに帰還するので動力損失を招く。
【0017】
つまり、動力損失=(リリーフ弁20の設定圧力)×(リリーフされる排出油量)となる。
【0018】
また、エンジン1により別途のパイロットポンプ3を構成することになるため、部品点数の増加につながりコストが上昇し、油圧システムの構造が複雑になるという問題点がある。
【0019】
図2に示した従来技術による他の油圧システムは、油圧ポンプ30と、油圧ポンプ30に連結した油圧アクチュエータ31と、油圧ポンプ30と油圧アクチュエータ31の間の流路に設けられ、油圧アクチュエータ31の起動、停止及び方向転換を制御する制御弁32と、操作量に比例する2次信号圧力を発生させ、制御弁32等を切換えさせる操作レバー33と、油圧ポンプ30と制御弁32の間の流路に設けられた負荷圧力発生装置34を含む。
【0020】
前述したように構成された従来技術の油圧システムは、前述した制御弁32を切換えさせるためにパイロット信号圧力を吐出させるパイロットポンプを別途に使用せず、操作レバー33を操作時、油圧ポンプ30から吐き出される作動油をパイロット信号圧力として使用するようになっている。これにより制御弁32等を切換えさせるためのパイロットポンプを使わずに部品点数を減らすことができるという利点を持っている。
【0021】
反面、油圧ポンプ30と制御弁32の間の流路に負荷圧力発生装置34を設けることになるため、不必要な動力損失を招くという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、ネガティブ制御方式の油圧システムにおいて、パイロットポンプの使用が不必要なため部品点数が減り、コストを低減し、パイロットポンプの使用によって発生する不必要な動力損失を防止することができるようにした、ネガティブコントロール方式の油圧システムを提供することを目的とする。
【0023】
また、本発明は、油圧ポンプと制御弁の間に、負荷圧力発生装置の使用が不必要なため動力損失を防止できるようにした、ネガティブコントロール方式の油圧システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明に係るネガティブコントロール方式の油圧システムは、エンジンと、エンジンに連結する少なくとも一つ以上の可変容量形油圧ポンプと、油圧ポンプに連結する少なくとも一つ以上の油圧アクチュエータと、油圧ポンプのセンタバイパス通路に設けられ、外部からの信号圧供給に従いそれぞれ切換えられて油圧アクチュエータに供給される作動油の流れを制御する切換弁と、センタバイパス通路の下流側に設けられ、油圧ポンプの吐出流量を可変制御するように信号圧力を発生するパイロット信号圧発生手段と、操作量に比例して信号圧力を出力する操作レバーと、センタバイパス通路に一端が分岐接続し、操作レバーの入口ポートに他端が接続するパイロット流路に設けられ、油圧ポンプからの作動油を操作レバーの操作による信号圧として使用することができるように、操作レバーを操作時、パイロット流路を通って供給される作動油を制御する減圧弁とを含む。
【0025】
また、本発明に係るネガティブコントロール方式の油圧システムは、エンジンと、エンジンに連結する少なくとも一つ以上の可変容量形油圧ポンプと、油圧ポンプに連結する少なくとも一つ以上の油圧アクチュエータと、油圧ポンプのセンタバイパス通路に設けられ、外部からの信号圧供給に従いそれぞれ切換えられて油圧アクチュエータに供給される作動油の流れを制御する切換弁と、センタバイパス通路の下流側に設けられ、油圧ポンプの吐出流量を可変制御するように信号圧力を発生するパイロット信号圧発生手段と、操作量に比例して信号圧力を出力する操作レバーと、センタバイパス通路に分岐接続するパイロット流路を通って油圧ポンプから供給される作動油と、油圧アクチュエータから帰還する作動油を再生させる再生弁と連結する再生リターン流路を通って供給される帰還油の中でいずれか一つを選択して出力するシャトル弁と、シャトル弁と操作レバーの間のパイロット流路に設けられ、シャトル弁を通って供給される作動油を操作レバーの操作による信号圧として使用することができるように操作レバーを操作時、シャトル弁から供給される作動油を制御する減圧弁とを含む。
【0026】
望ましくは、前述した減圧弁と操作レバーの間のパイロット流路に設けられ、油圧ポンプ側の作動油圧力が予め設定された圧力より低い場合、逆流を防止する逆流防止用チェック弁を含む。
【0027】
前述した逆流防止用チェック弁と操作レバーの間のパイロット流路に設けられ、油圧ポンプ側の作動油圧力が予め設定された圧力より低い場合、貯蔵された作動油を操作レバーの信号圧として使用するアキュムレータを含む。
【発明の効果】
【0028】
前述したように構成される本発明によるネガティブコントロール方式の油圧システムは、下記のような利点がある。
【0029】
ネガティブ制御方式の油圧システムにおいて、可変容量形油圧ポンプからの作動油をパイロット信号圧として活用するので、パイロットポンプが不必要でコストを節減し、パイロットポンプの使用による不必要な動力損失を防止することができる。
【0030】
また、油圧ポンプと制御弁の間に負荷圧力発生装置の使用が不必要になるので、これにより動力損失を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来技術によるネガティブ制御方式の油圧システムの回路図である。
【図2】従来技術による他の油圧回路図である。
【図3】本発明の第1実施例によるネガティブコントロール方式の油圧システムの回路図である。
【図4】本発明の第2実施例によるネガティブコントロール方式の油圧システムの回路図である。
【図5】ネガティブオリフィス特性及びネガティブ制御式リリーフ弁の特性を説明するためのグラフである。
【図6】ネガティブコントロール油圧システムを説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の望ましい実施例について添付図面を参照しながら説明する。ただし、以下で説明する実施例は本発明が属する技術分野において、通常の知識を有する者が発明を容易に実施できる程度に詳細に説明するためのものに過ぎず、これにより本発明の技術的な思想及び範疇が限定されることを意味するものではない。
【0033】
図3に示した本発明の第1実施例によるネガティブコントロール方式油圧システムは、エンジン1と、エンジン1に連結する少なくとも一つ以上の可変容量形油圧ポンプ2と(以下、「油圧ポンプ」という)、油圧ポンプ2に連結する少なくとも一つ以上の油圧アクチュエータ10(走行モータ)、11(バケットシリンダ)、12(ブームシリンダ)と、油圧ポンプ2のセンタバイパス通路5に設けられ、外部からの信号圧供給に従ってそれぞれ切換えられ油圧アクチュエータ10、11、12に供給される作動油の流れをそれぞれ制御する切換弁6、7、8と、センタバイパス通路5の下流側に設けられ、油圧ポンプ2の吐出流量をネガティブ制御方式により可変制御するように信号圧力を発生するパイロット信号圧発生手段13、14と、使用者の操作量に比例して信号圧力を出力する操作レバー15と、センタバイパス通路5に一端が分岐接続し、操作レバー15の入口ポートに他端が接続するパイロット流路5aに設けられ、油圧ポンプ2からの作動油を操作レバー15の操作による信号圧として使用することができるように操作レバー15を操作する時、パイロット流路5aを通って操作レバー15に供給される作動油を制御する減圧弁40を含む。
【0034】
この時、前述した減圧弁40と操作レバー15の間の出口側パイロット流路5bに設けられ、油圧ポンプ2側の作動油圧力が予め設定された圧力(アキュムレータ16に貯蔵された作動油の圧力をいう)より低い場合、逆流を防止する逆流防止用チェック弁19を含む。
【0035】
前述した逆流防止用チェック弁19と操作レバー15の間の出口側パイロット流路5bに設けられ、油圧ポンプ2側の作動油圧力が予め設定された圧力より低い場合、貯蔵された作動油を操作レバー15の信号圧として使用するアキュムレータ16を含む。
【0036】
この時、前述したセンタバイパス通路5に分岐接続したパイロット流路5aと、パイロット流路5aに設けられ、操作レバー15を操作時、油圧ポンプ2から吐き出される作動油を操作レバー15の信号圧として使用することができる減圧弁40を除いた油圧システムの構成は、図1に示したネガティブコントロール方式の油圧システムの構成と実質的には同一なので、これらの構成及び作動の詳細な説明は省略し、図面符号は同一に表記する。
【0037】
以下、本発明の第1実施例によるネガティブコントロール方式の油圧システムの使用例について添付図面を参照しながら説明する。
【0038】
図3に示したように、前述した油圧ポンプ2から吐き出された作動油の一部はセンタバイパス通路5を経由して切換弁6、7、8に供給され、同時に油圧ポンプ2から吐き出された作動油の残りの一部はパイロット流路5aに設けられた減圧弁40の入口側に流入する。
【0039】
減圧弁40の出口側パイロット流路5bの作動油は、信号ライン41を通ってバルブスプリング42の反対側ポートに信号圧として加わり、減圧弁40の入口と出口の連結を遮断することになる。
【0040】
バルブスプリング42の設定された弾性力が信号ライン41により発生する信号圧より大きい場合、減圧弁40の連結通路46により減圧弁40の入口と出口を連結することになる。
【0041】
また、減圧弁40の出口側パイロット流路5bの作動油圧力がバルブスプリング42の弾性力より大きい場合、減圧弁40の連結通路44により減圧弁40の出口側パイロット流路5bの作動油を減圧弁40のドレーンライン43に連結するようになっている。
【0042】
つまり、減圧弁40の設定圧力は出口側パイロット流路5bの信号圧力とバルブスプリング42の弾性力の差により制御される。
【0043】
また、減圧弁40の出口側パイロット流路5bに設定圧力を超過する高圧が生じた場合、リリーフ弁20により油圧タンクTにドレーンさせるので高圧発生を防止することができる。
【0044】
この時、リリーフ弁20の設定圧力を減圧弁40の設定圧力より相対的に高く設定することにより、減圧弁40の出口側パイロット流路5bに設定圧力を超過する高圧が生じない場合、リリーフ弁20を介して油圧タンクTに作動油をドレーンすることを防止することができる。
【0045】
また、減圧弁40の出口側パイロット流路5bにアキュムレータ16を設けて油圧ポンプ2から吐き出される作動油の一部を貯蔵することができる。この時、エンジン1の停止または瞬間的に油圧ポンプ2側の作動油圧力がアキュムレータ16に貯蔵された圧力より相対的に低い場合、出口側パイロット流路5bに設けられているチェック弁19により逆流することを防止できる。また、前述したような非常作動時にアキュムレータ16に貯蔵された作動油を操作レバー15のパイロット信号圧として活用することができる。
【0046】
前述した操作レバー15が中立位置を維持する場合、減圧弁40の吐出流量はブロックされ、操作レバー15を操作する場合、操作力に比例して生成される信号圧力が切換弁6、7、8にそれぞれ供給され、これらのスプールを切換えさせるように使用される。
【0047】
前述したように、操作レバー15が中立位置のとき切換弁6、7、8は中立位置を維持し、油圧パンプ2から吐き出される作動油はセンタバイパス通路5の下流側に設けられたオリフィス13を通過するようになる。この時、オリフィス13を通過する作動油の量が多い場合、圧力が上昇するので、油圧ポンプ2からの作動油は最小流量として吐き出される。
【0048】
図5に示したように、前述したオリフィス13の断面積は、油圧ポンプ2の最小吐出流量より少ない流量でネガティブ制御式リリーフ弁14の設定圧力以上になるように設定する。また、ネガティブ制御式リリーフ弁14の設定圧力を操作レバー15の要求圧力水準に設定するようにして、操作レバー15のパイロット信号圧として使用することができる。
【0049】
図4に示した本発明の第2実施例によるネガティブコントロール方式油圧システムは、エンジン1と、エンジン1に連結する少なくとも一つ以上の可変容量形油圧ポンプ2(以下、「油圧ポンプ」という)と、油圧ポンプ2に連結する少なくとも一つ以上の油圧アクチュエータ10、11、12と、油圧ポンプ2のセンタバイパス通路5に設けられ、外部からの信号圧供給に従いそれぞれ切換えられて油圧アクチュエータ10(走行モータ)、11(バケットシリンダ)、12(ブームシリンダ)に供給される作動油の流れをそれぞれ制御する切換弁6、7、8と、センタバイパス通路5の下流側に設けられ、油圧ポンプ2の吐出流量を可変制御するように信号圧力を発生するパイロット信号圧発生手段13、14と、操作量に比例して信号圧力を出力する操作レバー15と、センタバイパス通路5に分岐接続するパイロット流路5aを通って油圧ポンプ2から供給される作動油と、油圧アクチュエータ12から帰還する作動油を再生させる再生弁24(再生油路23に設けた再生チェック弁をいう)と連結する再生リターン流路8cを通って供給される帰還油の中で高い圧力を出力するシャトル弁45と、シャトル弁45と操作レバー15の間の出口側パイロット流路5bに設けられ、シャトル弁45を通って供給される作動油を操作レバー15の操作による信号圧として使用することができるように、操作レバー15を操作時、シャトル弁45から操作レバー15に供給される作動油を制御する減圧弁40とを含む。
【0050】
この時、前述した油圧ポンプ2から供給される作動油と再生リターン流路8cを通して供給される帰還油の中で高い圧力を出力するシャトル弁45及び減圧弁40を除いた油圧システムの構成は、図3に示した本発明の一実施例によるネガティブコントロール方式油圧システムの構成と実質的に同一なので、これらの構成及び作動の詳細な説明は省略し、図面符号は同一に表記した。
【0051】
以下、本発明の第2実施例によるネガティブコントロール方式の油圧システムの使用例について添付図面を参照しながら説明する。
【0052】
図4に示したように、前述した油圧アクチュエータ12に重量物の荷重が加わる場合、自重によりブームシリンダが収縮駆動することになり、場合によってはブームシリンダのスモールチェンバに流入する作動油の量がブームシリンダのラージチェンバ12aから流出する作動油の量より少なくなる。これにより、ブームシリンダのスモールチェンバ12bに負圧が発生して油圧ポンプ2から吐き出される作動油を操作レバー15の信号圧としての使用が適合しない。
【0053】
この時、切換弁8のスプールに設けられている再生弁24の設定圧力を操作レバー15の要求圧力以上に設定することによって、操作レバー15を操作時、再生リターン流路8cに発生する作動油がシャトル弁45と減圧弁40を経由して操作レバー15に供給されるので、操作レバー15の補助信号圧として使用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 エンジン
2 可変容量形油圧ポンプ(油圧ポンプ)
5 センタバイパス通路
5a パイロット流路
5a 出口側パイロット流路
6、7、8 切換弁
9 並列流路
10、11、12 油圧アクチュエータ
13 ネガティブ制御式オリフィス(パイロット信号圧発生手段)
14 ネガティブ制御式リリーフ弁(パイロット信号圧発生手段)
15 操作レバー
16 アキュムレータ
17 リターン流路
19 チェック弁
20 リリーフ弁
40 減圧弁
T 油圧タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンに連結する少なくとも一つ以上の可変容量形油圧ポンプと、
前記油圧ポンプに連結する少なくとも一つ以上の油圧アクチュエータと、
前記油圧ポンプのセンタバイパス通路に設けられ、外部からの信号圧供給に従ってそれぞれ切換えられ、前記油圧アクチュエータに供給される作動油の流れをそれぞれ制御する切換弁と、
前記センタバイパス通路の下流側に設けられ、前記油圧ポンプの吐出流量を可変制御するように信号圧力を発生するパイロット信号圧発生手段と、
操作量に比例して信号圧力を出力する操作レバーと、
前記センタバイパス通路に一端が分岐接続し、前記操作レバーの入口ポートに他端が接続するパイロット流路に設けられ、前記油圧ポンプからの作動油を操作レバーの操作による信号圧として使用することができるように、前記操作レバーを操作時、パイロット流路を通って供給される作動油を制御する減圧弁とを含むことを特徴とする、ネガティブコントロール方式の油圧システム。
【請求項2】
エンジンと、
前記エンジンに連結する少なくとも一つ以上の可変容量形油圧ポンプと、
前記油圧ポンプに連結する少なくとも一つ以上の油圧アクチュエータと、
前記油圧ポンプのセンタバイパス通路に設けられ、外部からの信号圧供給に従ってそれぞれ切換えられ、前記油圧アクチュエータに供給される作動油の流れをそれぞれ制御する切換弁と、
前記センタバイパス通路の下流側に取り付けられ、前記油圧ポンプの吐出流量を可変制御するように信号圧力を発生するパイロット信号圧発生手段と、
操作量に比例して信号圧力を出力する操作レバーと、
前記センタバイパス通路に分岐接続するパイロット流路を通って前記油圧ポンプから供給される作動油と、前記油圧アクチュエータから帰還する作動油を再生させる再生弁と連結する再生リターン流路を通って供給される帰還油とのいずれか一方を選択して出力するシャトル弁と、
前記シャトル弁と前記操作レバーの間のパイロット流路に設けられ、シャトル弁を通って供給される作動油を前記操作レバーの操作による信号圧として使用することができるように、前記操作レバーを操作時、シャトル弁から供給される作動油を制御する減圧弁とを含むことを特徴とする、ネガティブコントロール方式の油圧システム。
【請求項3】
前記減圧弁と前記操作レバーの間のパイロット流路に設けられ、前記油圧ポンプ側の作動油圧力が予め設定された圧力より低い場合、逆流を防止する逆流防止用チェック弁を含むことを特徴とする、請求項1に記載のネガティブコントロール方式の油圧システム。
【請求項4】
前記減圧弁と前記操作レバーの間のパイロット流路に設けられ、前記油圧ポンプ側の作動油圧力が予め設定された圧力より低い場合、逆流を防止する逆流防止用チェック弁を含むことを特徴とする、請求項2に記載のネガティブコントロール方式の油圧システム。
【請求項5】
前記逆流防止用チェック弁と前記操作レバーの間のパイロット流路に設けられ、前記油圧ポンプ側の作動油圧力が予め設定された圧力より低い場合、貯蔵された作動油を前記操作レバーの信号圧として使用するアキュムレータを含むことを特徴とする、請求項3に記載のネガティブコントロール方式の油圧システム。
【請求項6】
前記逆流防止用チェック弁と前記操作レバーの間のパイロット流路に設けられ、前記油圧ポンプ側の作動油圧力が予め設定された圧力より低い場合、貯蔵された作動油を前記操作レバーの信号圧として使用するアキュムレータを含むことを特徴とする、請求項4に記載のネガティブコントロール方式の油圧システム。
【請求項7】
前記パイロット流路から分岐して油圧タンクに連結する流路に設けられたリリーフ弁の設定圧力を前記減圧弁の設定圧力より相対的に高く設定し、前記減圧弁の出口側パイロット流路に設定圧力を超過する高圧が発生しない場合、前記リリーフ弁を通って油圧タンクにドレーンされることを防止することを特徴とする、請求項5に記載のネガティブコントロール方式の油圧システム。
【請求項8】
前記パイロット流路から分岐して油圧タンクに連結する流路に設けられたリリーフ弁の設定圧力を前記減圧弁の設定圧力より相対的に高く設定し、前記減圧弁の出口側のパイロット流路に設定圧力を超過する高圧が発生しない場合、前記リリーフ弁を通って油圧タンクにドレーンされることを防止することを特徴とする、請求項6に記載のネガティブコントロール方式油圧システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−137547(P2011−137547A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292412(P2010−292412)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(502032378)ボルボ コンストラクション イクイップメント アーベー (156)
【Fターム(参考)】