説明

ネガ型平版印刷版原版及びそれを用いる平版印刷方法

【課題】現像処理工程を行うことなく、機上現像可能なネガ型平版印刷版原版及びそのネガ型平版印刷版原版を使用する平版印刷方法を提供し、特に、UVインキにおいても、現像性、非画像部細線再現性、カス発生の抑制、耐刷性すべてを満足できるネガ型平版印刷版原版を提供することである。
【解決手段】親水性支持体上に、スルホンアミド基、親水性基および側鎖にエチレン性不飽和結合を有する高分子化合物を含有する光重合層を有することを特徴とするネガ型平版印刷版原版;上記ネガ型平版印刷版原版を、印刷機に装着し、レーザーで画像様に露光した後、又は、レーザーで画像様に露光した後、印刷機に装着し、該ネガ型平版印刷版原版に印刷インキ及び/又は湿し水を供給して、光重合層の未露光部分を除去し、印刷する平版印刷方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版原版及びそれを用いる平版印刷方法に関する。詳しくは、コンピュータ等のデジタル信号に基づいて、例えば300〜1200nmの波長を有するレーザーを走査することにより直接製版することができる、いわゆるダイレクト製版可能なネガ型平版印刷版原版、現像処理工程を経ることなく前記平版印刷版原版を印刷機上で直接現像する製版方法、および印刷する平版印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙等の被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルム等の原画を通した露光を行った後、画像記録層の画像部となる部分を残存させ、それ以外の不要な画像記録層をアルカリ性現像液又は有機溶剤によって溶解して除去することで親水性の支持体の表面を露出させる方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
【0003】
従来の平版印刷版原版の製版工程においては、露光の後、不要な画像記録層を画像記録層に応じた現像液等によって溶解除去する工程が必要であるが、このような付加的に行われる湿式処理を不要化し又は簡易化することが課題の一つとして挙げられている。特に、近年、地球環境への配慮から湿式処理に伴って排出される廃液の処分が産業界全体の大きな関心事となっているので、上記課題の解決の要請は一層強くなってきている。
【0004】
これに対して、簡易な製版方法の一つとして、画像記録層の不要部分の除去を通常の印刷工程の中で行えるような画像記録層を用い、露光後、印刷機上で画像記録層の不要部分を除去し、平版印刷版を得る、機上現像と呼ばれる方法が提案されている。
機上現像の具体的方法としては、例えば、湿し水、インキ溶剤又は湿し水とインキとの乳化物に溶解し又は分散することが可能な画像記録層を有する平版印刷版原版を用いる方法、印刷機のローラー類やブランケット胴との接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法、湿し水、インキ溶剤等の浸透によって画像記録層の凝集力又は画像記録層と支持体との接着力を弱めた後、ローラー類やブランケット胴との接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法が挙げられる。
なお、本発明においては、特別な説明がない限り、「現像処理工程」とは、印刷機以外の装置(通常は自動現像機)を使用し、液体(通常はアルカリ性現像液)を接触させることにより、画像記録層のレーザー未露光部分を除去し、親水性支持体表面を露出させる工程を指し、「機上現像」とは、印刷機を用いて、液体(通常は印刷インキ及び/又は湿し水)を接触させることにより、画像記録層のレーザー未露光部分を除去し、親水性支持体表面を露出させる方法及び工程を指す。
【0005】
一方、近年、画像情報をコンピュータで電子的に処理し、蓄積し、出力する、デジタル化技術が広く普及してきており、このようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきている。これに伴い、レーザー光のような高収斂性の輻射線にデジタル化された画像情報を担持させて、その光で平版印刷版原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術が注目されてきている。したがって、このような技術に適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題の一つとなっている。
上述したように、近年、製版作業の簡素化、乾式化及び無処理化は、地球環境への配慮とデジタル化への適合化との両面から、従来にも増して、強く望まれるようになってきている。
【0006】
平版印刷版原版のうち走査露光可能な平版印刷版原版としては、親水性支持体上にレーザー露光によりラジカルやブレンステッド酸などの活性種を発生しうる感光性化合物を含有した親油性感光性樹脂層が提案され、既に上市されている。この平版印刷版原版をデジタル情報に基づきレーザー走査し活性種を発生せしめ、その作用によって感光層に物理的、或いは化学的な変化を起こし不溶化させ、引き続き現像処理することによってネガ型の平版印刷版を得ることができる。特に、親水性支持体上に感光スピードに優れる光重合開始剤、付加重合可能なエチレン性不飽和化合物、及びアルカリ現像液に可溶なバインダーポリマーとを含有する光重合型の感光層、及び必要に応じて酸素遮断性の保護層とを設けた平版印刷版原版は、生産性に優れ、さらに現像処理が簡便であり、解像度や着肉性もよいといった利点から、望ましい印刷性能を有する刷版となりうる。
また、機上現像可能な平版印刷版原版としては、例えば、特許文献1には、親水性結合剤中に疎水性熱可塑性重合体粒子を分散させた像形成層を親水性支持体上に設けた平版印刷版原版が記載されている。この特許文献1には、上記平版印刷版原版を赤外線レーザーにより露光して、疎水性熱可塑性重合体粒子を熱により合体させて画像を形成させた後、印刷機のシリンダー上に取り付け、湿し水及び/又はインキにより機上現像することが可能である旨記載されている。
【0007】
このような微粒子の単なる熱融着による合体で画像を形成させる方法は、良好な機上現像性を示すものの、画像強度(支持体との密着性)が極めて弱く、耐刷性が不十分であるという問題を有していた。
ここで機上現像性は例えば、機上現像開始時に非画像部にインキが転写しない状態にあるまでに要する印刷用紙、いわゆる損紙の枚数で評価することができる。
【0008】
また、特許文献2及び3には、親水性支持体上に、重合性化合物を内包するマイクロカプセルを含む画像記録層(感熱層)を有する平版印刷版原版が記載されている。
また、特許文献4には、支持体上に、赤外線吸収剤とラジカル重合開始剤と重合性化合物とを含有する画像記録層(感光層)を設けた平版印刷版原版が記載されている。
このような重合反応を用いる方法は、重合体微粒子の熱融着により形成される画像部に比べ、画像部の化学結合密度が高いため画像強度が比較的良好であるという特徴を有するが、実用的な観点から見ると、機上現像性、細線再現性及び耐刷性のいずれも未だ不十分であり、特にUVインキを使用すると耐刷性が極めて不十分であった。
【0009】
さらに、特許文献5には、支持体上に、重合性化合物と、ポリエチレンオキシド鎖を側鎖に有するグラフトポリマー又はポリエチレンオキシドブロックを有するブロックポリマーを含有する画像記録層を設けた機上現像可能な平版印刷版原版が記載されている。
しかし、この技術を用いることで、機上現像性は良好となるが、細線再現性(細線に挟まれた非画像部分の再現性、具体的には一定の幅の細線画像が同じ幅の非画像部を挟んで交互に設けられた画像チャートにおいて、印刷物の細線画像間の非画像部が汚れにより途切れていない性能を言う。以降、非画像部細線再現性と言う。)は未だ不十分である。
特にUVインキを使用した場合には、標準的に使用される印刷インキ(プロセスインキなど)よりも、非画像部細線再現性がさらに劣化する。
これとは別に、一般的に機上現像された光重合層成分が水着けローラやインキローラ上でカスとなり印刷機のメンテナンス性や印刷品質を低下させる問題もある。
これらの改良方法として、スルホンアミド基および親水性基を高分子化合物中に導入することが考えられるが、耐刷性が未だ不十分である。
【0010】
【特許文献1】特許第2938397号明細書
【特許文献2】特開2001−277740号公報
【特許文献3】特開2001−277742号公報
【特許文献4】特開2002−287334号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0064318号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、レーザー露光により画像記録が可能であるネガ型平版印刷版原版を提供することである。また、本発明の目的は現像処理工程を行うことなく、機上現像可能なネガ型平版印刷版原版及びそのネガ型平版印刷版原版を使用する平版印刷方法を提供することである。特に、本発明の目的は、UVインキにおいても、現像性、非画像部細線再現性、カス発生の抑制、耐刷性すべてを満足できるネガ型平版印刷版原版を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を達成するために種々の高分子化合物を検討した結果、複数の特定の官能基を有する高分子化合物を光重合層(画像記録層)に用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
従って本発明は、以下に向けられている。
(1)親水性支持体上に、親水性基、スルホンアミド基及び側鎖にエチレン性不飽和基を有する高分子化合物を含有する光重合層を有することを特徴とするネガ型平版印刷版原版である。
(2)該高分子化合物の例として、下記一般式(I)で示される側鎖にスルホンアミド基を有するモノマーから誘導される単位を有する高分子化合物が挙げられる。
【0013】
【化1】

〔式中、X1はO又はNRを示す。R1は水素原子又はメチル基を示す。R2、R6及びR8はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜12の、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリレン基又はアラルキレン基を示す。R3及びR9はそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12の、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基を示す。R4及びR10はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜12の、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。R5は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を示す。R7は単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12の、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリレン基もしくはアラルキレン基を示す。Rは水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12の、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基を示す。Y1は単結合又はカルボニル基を示す。〕
【0014】
(3)前記親水性基が、下記一般式(II)で示されるアルキレンオキサイド構造であることを特徴とする上記のネガ型平版印刷版原版。
【化2】


(上記式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、aは1、3又は5であり、lは1〜9の整数を表す。)
(4)前記エチレン性不飽和結合が下記一般式(1)、(2)又は(3)で示されることを特徴とする上記のネガ型平版印刷版原版。
【化3】


(式中、X、Yはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子または−N(R12)−を表す。Zは酸素原子、硫黄原子、−N(R12)−またはフェニレン基を表す。R1〜R12はそれぞれ独立に1価の置換基を表す。)
【0015】
(5)該スルホンアミド基、親水性基及び側鎖にエチレン性不飽和結合を有する高分子化合物がバインダーであることを特徴とする、上記の平版印刷版の製版方法。
(6)該光重合層が、赤外線吸収剤、重合開始剤及び重合性モノマーを含有することを特徴する上記のネガ型平版印刷版原版。
(7)該光重合層が、マイクロカプセル又はミクロゲルを含有することを特徴する上記のネガ型平版印刷版原版。
(8)該光重合層において、スルホンアミド基、親水性基及び側鎖にエチレン性不飽和結合を有する高分子化合物を含むバインダーポリマーと重合性モノマーとの質量比が、3/2〜1/3であることを特徴とする、上記のネガ型平版印刷版原版。
(9)親水性支持体と該光重合層の間に、親水性支持体吸着性基および付加重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物を含有する下塗り層を有することを特徴とする、上記のネガ型平版印刷版原版。
【0016】
(10)該光重合層が印刷インキ及び/又は湿し水により除去可能であることを特徴とする、上記のネガ型平版印刷版原版。
(11)該印刷インキがUVインキであることを特徴とする、上記のネガ型平版印刷版原版。
(12)上記ネガ型平版印刷版原版を、印刷機に装着し、レーザーで画像様に露光した後、又は、レーザーで画像様に露光した後、印刷機に装着し、該ネガ型平版印刷版原版に印刷インキ及び/又は湿し水を供給して、光重合層の未露光部分を除去し、印刷する平版印刷方法。
(13)該印刷インキがUVインキであることを特徴とする上記の平版印刷方法。
【0017】
本発明では、親水性基、側鎖にスルホンアミド基、さらにはエチレン性不飽和結合を有する高分子化合物を用いることによって前記課題の解決を達成できた。その作用機構は定かではないが、スルホンアミド基を有することによって、非画像部においては、スルホンアミド基がもつ高い極性により、湿し水及び印刷インキの浸透性が加速され、除去されやすくなると考えられる。
また、スルホンアミド基を有することで、除去された成分が水成分に分散されやすくカスとして存在し難くなると推定される。さらに親水性基が存在することで、これらの性質が加速され、エチレン性不飽和基を持つことで、耐刷性が良好になり、さらに側鎖の柔軟性が増すことにより、現像性が良化する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のネガ型平版印刷版原版によれば、機上現像性に優れ、機上現像開始時に非画像部にインキが転写しない状態にあるまでに要する印刷用紙、いわゆる損紙の枚数を削減することができ、細線再現性が良好であり、さらにカスの発生を抑制することができ、よって生産性よく、高品質の印刷が可能となる。
さらに本発明のネガ型平版印刷版原版は、UVインキを使用した印刷を行った場合においても良好な印刷物が多数枚得られる。
本発明のネガ型平版印刷版原版によれば、機上現像を採用した平版印刷方法を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[ネガ型平版印刷版原版]
本発明で使用するネガ型平版印刷版原版は、親水性支持体上にレーザー感受性の光重合層を有することを前提とする。以下、光重合層及びその他の構成要素について詳細に説明する。
<光重合層>
〔スルホンアミド基及び親水性基、並びに側鎖にエチレン性不飽和結合を有する高分子化合物〕
光重合層は、バインダーポリマーとして、スルホンアミド基、親水性基及び側鎖にエチレン性不飽和結合を有する高分子化合物(以下、適宜、特定高分子化合物と称する。)を必須成分として含有する。
これらは、画像形成層のバインダーとして機能させることが好ましい。すなわち、光重合層において、連続した層を形成するために使用される。これらの高分子化合物は線状構造を有しているものが非画像部細線再現性の観点より好ましい。架橋構造を有するものは現像性、細線再現性、カス付着抑止の観点より好ましくない。
【0020】
上記特定高分子化合物としては、側鎖又は主鎖中に−SO2−N−結合を含有する高分子化合物が好ましく、さらに好ましくは、側鎖中に−SO2−N−結合を含有する高分子化合物である。親水性基は、側鎖に有することが好ましい。
この特定高分子化合物を含有することにより、特にUVインキを使用した印刷における良好な機上現像性や非画像部細線再現性が得られる。
このような特定高分子化合物は、例えば、スルホンアミド基を有する重合性モノマーと、親水性基を有する重合性モノマーとを公知の重合開始剤を用いて適当な溶媒中で共重合することにより得られる。
好適に使用されるスルホンアミド基を有する重合性モノマーとしては、一般式(Ia)〜(Ie)(総称して一般式(I)ともいう)で示される化合物が挙げられる。
【0021】
【化4】

【0022】
式中、X1はO又はNRを示す。R1は水素原子又はメチル基を示す。R2、R8及びR10はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜12の、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリレン基又はアラルキレン基を示す。R3、R4、R5、R11、R12、及びR13はそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12の、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基を示す。R6及びR14はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜12の、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。R7は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を示す。R9は単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12の、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリレン基もしくはアラルキレン基を示す。Rは水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12の、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基を示す。Y1は単結合又はカルボニル基を示す。
【0023】
一般式(Ia)又は(Ib)で示されるモノマーのうち、本発明において特に好適に使用されるモノマーは、R2がC2〜C6のアルキレン基、シクロアルキレン基、又は置換基を有していてもよいフェニレン基もしくはナフチレン基であり、R3、R4、及びR5が水素原子、C1〜C6のアルキル基、シクロアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基もしくはナフチル基であり、R6がC1〜C6のアルキル基、シクロアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基もしくはナフチル基であり、Rが水素原子、C1〜C6のアルキル基、シクロアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基もしくはナフチル基である化合物である。
【0024】
このようなモノマーとしては、例えばN−(o−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−メチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−メチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−メチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−エチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−エチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−エチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−n−プロピルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−n−プロピルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−n−プロピルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−i−プロピルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−i−プロピルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−i−プロピルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−n−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−n−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−n−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−i−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−i−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−i−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−sec−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−sec−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−sec−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−t−ブルチアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−t−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−t−ブチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−フェニルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−フェニルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−フェニルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−(α−ナフチルアミノスルホニル)フェニル)メタクリルアミド、N−(m−(α−ナフチルアミノスルホニル)フェニル)メタクリルアミド、N−(p−(α−ナフチルアミノスルホニル)フェニル)メタクリルアミド、N−(o−(β−ナフチルアミノスルホニル)フェニル)メタクリルアミド、N−(m−(β−ナフチルアミノスルホニル)フェニル)メタクリルアミド、N−(p−(β−ナフチルアミノスルホニル)フェニル)メタクリルアミド、N−(1−(3−アミノスルホニル)ナフチル)メタクリルアミド、N−(1−(3−メチルアミノスルホニル)ナフチル)メタクリルアミド、N−(1−(3−エチルアミノスルホニル)ナフチル)メタクリルアミド、N−(o−メチルスルホニルアミノフェニル)メタクリルアミド、N−(m−メチルスルホニルアミノフェニル)メタクリルアミド、N−(p−メチルスルホニルアミノフェニル)メタクリルアミド、N−(o−エチルスルホニルアミノフェニル)メタクリルアミド、N−(m−エチルスルホニルアミノフェニル)メタクリルアミド、N−(p−エチルスルホニルアミフェニル)メタクリルアミド、N−(o−フェニルスルホニルアミノフェニル)メタクリルアミド、N−(m−フェニルスルホニルアミノフェニル)メタクリルアミド、N−(p−フェニルスルホニルアミノフェニル)メタクリルアミド、N−(o−(p−メチルフェニルスルホニルアミノ)フェニル)メタクリルアミド、N−(m−(p−メチルフェニルスルホニルアミノ)フェニル)メタクリルアミド、N−(p−(p−メチルフェニルスルホニルアミノ)フェニル)メタクリルアミド、N−(p−(α−ナフチルスルホニルアミノ)フェニルメタクリルアミド、N−(p−(β−ナフチルスルホニルアミノ)フェニル)メタクリルアミド、N−(2−メチルスルホニルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(2−エチルスルホニルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(2−フェニルスルホニルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(2−p−メチルフェニルスルホニルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(2−α−ナフチルスルホニルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(2−β−ナフチルスルホニルアミノ)エチルメタクリルアミド、N−(m−ジメチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−ジメチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(o−ジエチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−ジエチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−ジエチルアミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド等のメタクリルアミド類、上記と同様の置換基を有するアクリルアミド類、
【0025】
またo−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、o−メチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−メチメアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−メチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、o−エチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−エチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−エチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、o−n−プロピルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−n−プロピルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−n−プロピルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、o−i−プロピルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−i−プロピルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、o−n−ブチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−n−ブチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−n−ブチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−i−ブチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−i−ブチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−sec−ブチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−sec−ブチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−t−ブチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−t−ブチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、o−フェニルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−フェニルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−フェニルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−(α−ナフチルアミノスルホニル)フェニルメタクリレート、p−(α−ナフチルアミノスルホニルフェニル)メタクリレート、m−(β−ナフチルアミノスルホニル)フェニルメタクリレート、p−(β−ナフチルアミノスルホニル)フェニルメタクリレート、1−(3−アミノスルホニル)ナフチルメタクリレート、1−(3−メチルアミノスルホニル)ナフチルメタクリレート、1−(3−エチルアミノスルホニル)ナフチルメタクリレート、o−メチルスルホニルアミノフェニルメタクリレート、m−メチルスルホニルアミノフェニルメタクリレート、p−メチルスルホニルアミノフェニルメタクリレート、o−エチルスルホニルアミノフェニルメタクリレート、m−エチルスルホニルアミノフェニルメタクリレート、p−エチルスルホニルアミノフェニルメタクリレート、o−フェニルスルホニルアミノフェニルメタクリレート、m−フェニルスルホニルアミノフェニルメタクリレート、p−フェニルスルホニルアミノフェニルメタクリレート、o−(p−メチルフェニルスルホニルアミノ)フェニルメタクリレート、m−(p−メチルフェニルスルホニルアミノ)フェニルメタクリレート、p−(p−メチルフェニルスルホニルアミノ)フェニルメタクリレート、p−(α−ナフチルスルホニルアミノ)フェニルメタクリレート、p−(β−ナフチルスルホニルアミノ)フェニルメタクリレート、2−メチルスルホニルアミノエチルメタクリレート、2−エチルスルホニルアミノエチルメタクリレート、2−フェニルスルホニルアミノエチルメタクリレート、2−p−メチルフェニルスルホニルアミノエチルメタクリレート、2−α−ナフチルスルホニルアミノエチルメタクリレート、2−β−ナフチルスルホニルアミノエチルメタクリレート、o−ジメチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−ジメチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−ジメチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、o−ジエチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−ジエチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−ジエチルアミノスルホニルフェニルメタクリレート、等のメタクリル酸エステル類、上記と同様の置換基を有するアクリル酸エステル類などが挙げられる。
【0026】
また、一般式(Ic)〜(Ie)で示されるモノマーにおいて、好ましい置換基は、それぞれ、R7は水素原子であり、R8は置換されていてもよいメチレン基、フェニレン基又はナフチレン基であり、R9は単結合又はメチレン基であり、R10は炭素数1〜6のアルキレン基又は置換されていてもよいフェニレン基もしくはナフチレン基であり、R11、R12及びR13は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基もしくはナフチル基であり、R14は炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基もしくはナフチル基である。
【0027】
上記のような一般式(Ic)〜(Ie)で示される化合物の具体例としては、p−アミノスルホニルスチレン、p−アミノスルホニル−α−メチルスチレン、p−アミノスルホニルフェニルアリルエーテル、p−(N−メチルアミノスルホニル)フェニルアリルエーテル、p−(N−ジメチルアミノスルホニル)フェニルアリルエーテル、メチルスルホニルアミノ酢酸ビニルエステル、フェニルスルホニルアミノ酢酸ビニルエステル、メチルスルホニルアミノ酢酸アリルエステル、フェニルスルホニルアミノ酢酸アリルエステル、p−メチルスルホニルアミノフェニルアリルエーテルなどがある。
【0028】
スルホンアミド基を有する構造単位は、本発明に係る特定高分子化合物中に、1種のみが用いられていてもよく、2種以上を含んでいてもよい。これらのスルホンアミド基を有する構造単位は、機上現像性、細線再現性(特に重合性モノマーを含有するUVインキを用いた場合の、細線に挟まれた非画像部の汚れ)および現像カス分散性の観点から、特定高分子化合物中に、1〜80mol%含まれていることが好ましく、10〜80mol%含有されていることがより好ましく、最も好ましくは20〜70mol%の範囲である。
【0029】
また、本発明で使用する特定高分子化合物は親水性基を有する。親水性基は光重合層の機上現像性を加速させる効果、また、現像された光重合層成分が水着けローラやインキローラ上でカスとなり印刷機のメンテナンス性や印刷品質を低下させる問題を改良する効果もある。
このような親水性基としては、たとえば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、アルキレンオキサイド構造、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシエチル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホン酸基、リン酸基等などがあり、好ましいのはアミド基、ヒドロキシル基、ポリオキシエチル基、アルキレンオキサイド構造などが挙げられ、下記一般式(II)で表されるアルキレンオキサイド構造が最も好ましい。特定高分子化合物は該アルキレンオキサイド構造を側鎖に有していることが好ましい。
該アルキレンオキサイド構造は、イオン性基を含まず適当な親水性を有するため、機上現像性と画像部の耐久性のバランスに優れ、また直鎖構造による柔軟性も有するので現像カスを微細化し分散無害化する効果にも優れている。
【0030】
【化5】


式(II)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、aは1、3又は5であり、lは1〜9の整数を表す。lは好ましくは1〜8の整数であり、より好ましくは1〜7の整数、さらに好ましくは1〜6の整数、最も好ましくは2〜4の整数である。
【0031】
上記親水性基を特定高分子化合物に付与するためのモノマーの具体例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリオキシエチレンモノメタクリレート、ポリオキシエチレンモノアクリレート、ポリオキシプロピレンモノメタクリレート、ポリオキシプロピレンモノアクリレートが挙げられる。これらを1種あるいは2種以上用いることができ、これらの親水性基を有する構造単位は、特定高分子化合物中に、1〜70mol%含まれていることが好ましく、10〜60mol%含有されていることがより好ましく、最も好ましくは20〜50mol%の範囲である。少なすぎると充分な現像性、細線再現性、が得られず、多すぎると特定高分子化合物の柔軟性が大きくなりすぎて耐刷性が不足する場合がある。
【0032】
本発明では、光重合層の皮膜特性や機上現像性の向上のため、特定高分子化合物は側鎖に、エチレン性不飽和結合を有する例えば下記一般式(1)〜(3)で表される基を少なくとも1種有する。これらのエチレン性不飽和結合を有する構造により、画像部では光重合層に含まれるモノマーなど他の重合性化合物と反応することで、耐薬品性や耐刷性を充分確保することが出来る。一方、非画像部においては、これらを側鎖に有することで柔軟性が増し、未露光部の機上現像性を向上することが可能となる。
【0033】
【化6】

(式中、X、Yはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子または−N(R12)−を表す。Zは酸素原子、硫黄原子、−N(R12)−またはフェニレン基を表す。R1〜R12はそれぞれ独立に1価の置換基を表す。)
【0034】
前記一般式(1)において、R1〜R3はそれぞれ独立して1価の置換基を表し、例えばR1としては、水素原子、1価の有機基例えば置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基、メチルアルコキシ基、メチルエステル基が好ましい。また、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有しても良いアルコキシ基、置換基を有しても良いアリールオキシ基、置換基を有しても良いアルキルアミノ基、置換基を有しても良いアリールアミノ基、置換基を有しても良いアルキルスルホニル基、置換基を有しても良いアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアリール基が好ましい。ここで、導入しうる置換基としてはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロピオキシカルボニル基、メチル基、エチル基、フェニル基等が挙げられる。Xは、酸素原子、硫黄原子、又は、−N(R12)−を表し、R12としては、置換基を有しても良いアルキル基などが挙げられる。
【0035】
前記一般式(2)において、R4〜R8は、それぞれ独立して1価の置換基を表し、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。導入しうる置換基としては、一般式(1)においてあげたものが例示される。Yは、酸素原子、硫黄原子、又は−N(R12)−を表す。R12としては、一般式(1)において挙げたものが挙げられる。
【0036】
前記一般式(3)において、R9〜R11は、それぞれ独立して1価の置換基を表し、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。ここで、置換基としては、一般式(1)において挙げたものが同様に例示される。Zは、酸素原子、硫黄原子、−N(R12)−またはフェニレン基を表す。R12としては、一般式(1)において挙げたものが挙げられる。
これらの中で、一般式(1)で表わされるメタクリロイルオキシ基が好ましい。
【0037】
特定高分子化合物において上記のようなエチレン性不飽和結合を有する構造単位を導入する場合、その含有量は、特定高分子バインダー1g当たり、ヨウ素滴定(ラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量の測定)により、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と良好な保存安定性が得られる。
【0038】
該特定高分子化合物は画像強度などの諸性能を向上する目的で、本発明の効果を損なわない限りにおいて、前述の置換基を有するモノマーに加えて、さらに、他のラジカル重合性モノマーを共重合させることも好ましい態様である。本発明において特定高分子化合物に共重合させることができるモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、N,N−2置換アクリルアミド類、N,N−2置換メタクリルアミド類、スチレン類、アクリロニトリル類、メタクリロニトリル類などから選ばれるモノマーが挙げられる。
【0039】
具体的には、例えば、アルキルアクリレート(該アルキル基の炭素原子数は1〜20のものが好ましい)等のアクリル酸エステル類、(具体的には、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−t−オクチル、クロルエチルアクリレート、2,2−ジメチルヒドロキシプロピルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリヌリトールモノアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなど)、アリールアクリレート(例えば、フェニルアクリレートなど)、アルキルメタクリレート(該アルキル基の炭素原子は1〜20のものが好ましい)等のメタクリル酸エステル類(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロルベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクゾレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートなど)、アリールメタクリレート(例えば、フェニルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレートなど)、スチレン、アルキルスチレン等のスチレン(例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオルメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレンなど)、アルコキシスチレン(例えばメトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレンなど)、ハロゲンスチレン(例えばクロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、プロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオルスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレンなど)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0040】
また、本発明の特定高分子化合物は、下記式(III)で表されるエステル基又は下記式(IV)で表されるアミド基を分子内に有していてもよい。
【0041】
【化7】

【0042】
式中、bは2〜5の整数であり、cは2〜7の整数であり、m及びnはそれぞれ独立に1〜100の整数を表す。
【0043】
これらラジカル重合性モノマーのうち、好適に使用されるのは、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン類である。これらを1種あるいは2種以上用いることができ、これら共重合成分の好適に使用される含有量は、0〜95mol%であり、特に好ましくは、20〜90mol%である。
【0044】
また、該特定共高分子化合物は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0045】
このような高分子化合物を合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合してもよい。
【0046】
該特定高分子化合物は、質量平均分子量Mwで、好ましくは2,000以上であり、より好ましくは、5,000〜300,000の範囲である。さらに、耐薬品性の観点から、2,0000〜300,000が好ましく、さらに機上現像性の観点から、20,000〜10,0000であることが最も好ましい。また、特定高分子化合物中には、未反応の単量体を含んでいてもよい。この場合、高分子化合物中に占める単量体の割合は、15質量%以下が望ましい。
【0047】
光重合層に含まれる特定高分子化合物の含有量は固形分で好ましくは5〜95質量%であり、より好ましくは、10〜85質量%である。この範囲内で良好な画像部強度と画像形成性が得られる。
【0048】
以下に、本発明の特定ポリマーの具体例を示すが、本発明の特定ポリマーは、下記の例に限定されるわけではなく、印刷版原版作製のための塗布液成分との組み合わせで、適宜、構造および添加量を変化させて用いることができる。
【0049】
【化8】

【0050】
【化9】

【0051】
【化10】

【0052】
【化11】

【0053】
【化12】

【0054】
【化13】

【0055】
【化14】

【0056】
【化15】

【0057】
〔その他のバインダーポリマー〕
ネガ型平版印刷版原版には、上記特定高分子化合物に加えて、従来公知のバインダーポリマーを制限なく使用できるが、なかでも皮膜性を有する線状有機ポリマーが好ましい。このようなバインダーポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられる。
【0058】
このようなバインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していてもよい。バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中又は側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよい。
【0059】
分子の主鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、ポリ−1,4−ブタジエン、ポリ−1,4−イソプレン等が挙げられる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドのポリマーであって、エステル又はアミドの残基(−COOR又はCONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−CR1=CR23、−(CH2nCR1=CR23、−(CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2nNH−CO−O−CH2CR1=CR23、−(CH2n−O−CO−CR1=CR23及び(CH2CH2O)2−X(式中、R1〜R3はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、R1とR2又はR3とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
【0060】
エステル残基の具体例としては、−CH=CH2、−C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH2(特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CH2CH2O−CH2CH=CH2、−CH2C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH−C65、−CH2CH2OCOCH=CH−C65、−CH2CH2−NHCOO−CH2CH=CH2及びCH2CH2O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH=CH2、−C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH2、−CH2CH2−Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2CH2−OCO−CH=CH2が挙げられる。
【0061】
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカル又は重合性モノマーの重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接に又は重合性モノマーの重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。又は、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0062】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と良好な保存安定性が得られる。
【0063】
また、機上現像性向上の観点から、バインダーポリマーは、インキ及び/または湿し水に対する溶解性又は分散性が高いことが好ましい。
バインダーポリマーは、湿し水に対する溶解性又は分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親水的な方が好ましいが、着肉性とのバランスにより、本発明においては、親油的なバインダーポリマーと親水的なバインダーポリマーを併用することも有効である。
【0064】
親水的なバインダーポリマーとしては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホ基、リン酸基等の親水性基を有するものが好適に挙げられる。
【0065】
具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類及びそれらの塩、ポリメタクリル酸類及びそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシピロピルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が60mol%以上、好ましくは80mol%以上である加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー及びポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、ポリビニルピロリドン、アルコール可溶性ナイロン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンとのポリエーテル等が挙げられる。
【0066】
バインダーポリマーは、質量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
【0067】
バインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマーのいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。また、バインダーポリマーは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0068】
バインダーポリマーは、市販品を購入するか、従来公知の方法により合成することにより、入手できる。合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水が挙げられる。これらは単独で又は2種以上混合して用いられる。
バインダーポリマーを合成する際に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等の公知の化合物を用いることができる。
【0069】
本発明において、上記の特定高分子化合物とともに更にバインダーポリマーを併用する場合、該バインダーポリマーの含有量は、光重合層の全固形分に対して、0〜80質量%であり、0〜50質量%であるのが好ましく、0〜30質量%であるのがより好ましい。この範囲で、良好な画像部の強度と画像形成性が得られる。
【0070】
〔赤外線吸収剤〕
本発明の平版印刷版原版を、例えば760〜1200nmの赤外線を発するレーザー光源により画像形成する場合には、赤外線吸収剤を光重合層中に含有させることが好ましい。赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有している。この際発生した熱により、後述する重合開始剤(ラジカル発生剤)が熱分解し、ラジカルを発生する。本発明において使用される赤外線吸収剤としては、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料が挙げられる。
【0071】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等の公報に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等の公報に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許第434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0072】
また、米国特許第5,156,938号明細書記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号の各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号の各公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)及び(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、本発明の赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0073】
【化16】

【0074】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。さらに、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい一つの例として下記一般式(i)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0075】
【化17】

【0076】
一般式(i)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。
【化18】

【0077】
2は酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
a-は後述するZa-と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0078】
一般式(i)におけるR1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0079】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(i)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0080】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(i)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]から[0019]に記載されたものを挙げることができる。
また、特に好ましい他の例としてさらに、前記した特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0081】
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0082】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0083】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0084】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。この範囲で、顔料分散物の光重合層塗布液中での良好な安定性と光重合層の良好な均一性が得られる。
【0085】
顔料を分散する方法としては、インキ製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0086】
これらの赤外線吸収剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよいが、ネガ型平版印刷版原版を作製した際に、光重合層の波長760nm〜1200nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が、反射測定法で0.3〜1.2の範囲にあるように添加する。好ましくは、0.4〜1.1の範囲である。この範囲で、光重合層の深さ方向での均一な重合反応が進行し、良好な画像部の膜強度と支持体に対する密着性が得られる。
光重合層の吸光度は、光重合層に添加する赤外線吸収剤の量と光重合層の厚みにより調整することができる。吸光度の測定は常法により行うことができる。測定方法としては、例えば、アルミニウム等の反射性の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの光重合層を形成し、反射濃度を光学濃度計で測定する方法、積分球を用いた反射法により分光光度計で測定する方法等が挙げられる。
【0087】
〔重合開始剤〕
光重合層には重合開始剤を用いることができる。用いられる重合開始剤は、光、熱あるいはその両方のエネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を開始、促進する化合物であり、使用する光源の波長により、特許、文献等で公知である種々の重合開始剤、又は2種以上の重合開始剤の併用系(重合開始系)を適宜選択して使用することができる。
【0088】
ラジカルを発生する化合物としては、例えば、有機ハロゲン化物、カルボニル化合物、有機過酸化物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、が挙げられる。
【0089】
上記有機ハロゲン化物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc
Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号の各公報、M.P.Hutt”Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)」筆に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:S−トリアジン化合物が挙げられる。
【0090】
より好適には、すくなくとも一つのモノ、ジ、又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体、具体的には、例えば、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2―n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−イソプロピルオキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ナトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0091】
上記カルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドトキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−(4’−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体等を挙げることができる。
【0092】
上記アゾ化合物としては例えば、特開平8−108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
上記有機過酸化物としては、例えば、トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−オキサノイルパーオキサイド、過酸化コハク酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシオクタノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、ターシルカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
【0093】
上記メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、例えば、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
【0094】
上記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の明細書に記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0095】
上記有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特開2000−131837号、特開2002−107916号の各公報、特許第2764769号明細書、特開2002−116539号公報、及び、Kunz,Martin”Rad Tech’98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩、特開平6−157623号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体あるいは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報、特開平6−175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0096】
上記ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号、特開2003−328465号公報等に記載の化合物が挙げられる。
上記オキシムエステル化合物としては、J.C.S. Perkin II (1979 )1653-1660)、J.C.S.Perkin II (1979)156-162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202-232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報記載の化合物、具体的には下記の構造式で示される化合物が挙げられる。
【0097】
【化19】

【0098】
上記オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号公報等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、
【0099】
J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。
【0100】
特に反応性、安定性の面から上記オキシムエステル化合物、あるいはジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、イオン性のラジカル重合開始剤として機能する。
本発明において好適に用いられるオニウム塩は、下記一般式(RI−I)〜(RI−IVで表されるオニウム塩である。
【0101】
【化20】

【0102】
式(RI−I)中、Ar11は置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z11-は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、焼き出し画像の視認性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオンが好ましい。
【0103】
式(RI−II)中、Ar21、Ar22は各々独立に置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z21-は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。
【0104】
式(RI−III)中、R31、R32、R33は各々独立に置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基又はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、好ましくは反応性、安定性の面から、アリール基であることが望ましい。好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z31-は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、焼き出し画像視認性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましく、より好ましいものとして特開2001−343742号公報記載のカルボン酸イオン、特に好ましくは特開2002−148790号公報記載のカルボン酸イオンが挙げられる。
【0105】
式(RI−IV)中、 R41は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表す。R42、R43、R44、R45、R46は各々独立に置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基又はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、好ましくは反応性、安定性の面から、アリール基であることが望ましい。好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。R41とR43、R42とR43、R43とR44、R44とR45、R45とR46はそれぞれ互いに連結し環を形成していてもよい。Z31-は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、焼き出し画像視認性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。
以下に、本発明において重合開始剤として好適に用いられるオニウム塩の例を挙げるが、本発明はこれら制限されるものではない。
【0106】
【化21】

【0107】
【化22】

【0108】
【化23】

【0109】
【化24】

【0110】
【化25】

【0111】
【化26】

【0112】
【化27】

【0113】
これらの重合開始剤の中でも焼き出し画像視認性向上の観点からは、オニウム塩であって、対イオンとして無機アニオン、例えば、PF6-、BF4-など、を有するものが好ましい。さらに、耐刷性に優れていることから、オニウムとしては、ジアリールヨードニウム及びアンモニウムが好ましい。
【0114】
これらの重合開始剤は、光重合層を構成する全固形分に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%の割合で添加することができる。この範囲で、良好な感度と印刷時の非画像部の良好な汚れ難さが得られる。これらの重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの重合開始剤は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
【0115】
〔重合性モノマー〕
本発明の光重合層には、効率的な硬化反応を行うため重合性モノマーを含有させることが好ましい。本発明に用いることができる重合性モノマーは、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、及び単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、さらにハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0116】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0117】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等がある。
【0118】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0119】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号の各公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号の各公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。さらに、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0120】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0121】
また、イソシアネートとヒドロキシル基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(ii)で示されるヒドロキシル基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0122】
CH2=C(R4)COOCH2CH(R5)OH (ii)
(ただし、R4及びR5は、H又はCH3を示す。)
【0123】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号の各公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。さらに、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号の各公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0124】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂とアクリル酸もしくはメタクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号、各公報記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。さらに日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0125】
これらの重合性モノマーについて、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、さらに、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。また、光重合層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、基板や後述の保護層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
【0126】
重合性モノマーは、光重合層中の不揮発性成分に対して、好ましくは5〜80質量%、さらに好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、重合性モノマーの使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、さらに場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
重合性モノマーは、光重合層中において、バインダーポリマーと該重合性モノマーとの質量比(バインダーポリマー/重合性モノマー)が、4/1〜1/3となる量で用いるのが好ましく、3/1〜1/3となる量がより好ましく、3/2〜1/3となる量が最も好ましい。ここでバインダーポリマーは、上述の特定高分子高分子単独であるか、あるいは該特定高分子高分子に加えて他のバインダーポリマーを用いるときには、該特定高分子高分子と他のバインダーポリマーとの合計となる。
【0127】
〔マイクロカプセル・ミクロゲル〕
本発明においては、上記の光重合層構成成分及び後述のその他の成分を光重合層に含有させる方法として、いくつかの態様を用いることができる。一つは、例えば、特開2002−287334号公報に記載のごとく、該構成成分を適当な溶媒に溶解して塗布する分子分散型光重合層である。他の一つの態様は、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、該構成成分の全て又は一部をマイクロカプセルに内包させて光重合層に含有させるマイクロカプセル型光重合層である。さらに、マイクロカプセル型光重合層において、該構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。ここで、マイクロカプセル型光重合層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。さらに他の態様として、光重合層に架橋樹脂粒子、すなわちミクロゲルを含有する態様が挙げられる。該ミクロゲルは、その中及び/又は表面に該構成成分の一部を含有することが出来る。特に重合性モノマーをその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が、画像形成感度や耐刷性の観点から特に好ましい。
光重合層が機上現像可能な光重合層であるためには、マイクロカプセル又はミクロゲルを含有することが好ましい。
【0128】
光重合層構成成分をマイクロカプセル化、もしくはミクロゲル化する方法としては、公知の方法が適用できる。
例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号明細書、同第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号明細書、特公昭38−19574号公報、同42−446号公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号明細書、同第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号明細書、同第4087376号明細書、同第4089802号明細書にみられる尿素−ホルムアルデヒド系又は尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号公報、同51−9079号公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号明細書、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号明細書、同第967074号明細書にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0129】
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、及びこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレア及びポリウレタンが好ましい。また、マイクロカプセル壁に、バインダーポリマー導入可能なエチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を有する化合物を導入してもよい。
【0130】
一方、ミクロゲルを調製する方法としては、特公昭38−19574号公報、同42−446号公報に記載されている界面重合による造粒、特開平5−61214号公報に記載されているような非水系分散重合による造粒を利用することが可能である。但し、これらの方法に限定されるものではない。
上記界面重合を利用する方法としては、上述した公知のマイクロカプセル製造方法を応用することができる。
【0131】
本発明に用いられる好ましいミクロゲルは、界面重合により造粒され3次元架橋を有するものである。このような観点から、使用する素材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、及びこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレア及びポリウレタンが好ましい。
【0132】
上記のマイクロカプセルやミクロゲルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0133】
〔界面活性剤〕
本発明において、光重合層には、塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0134】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0135】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0136】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
【0137】
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0138】
さらに好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号及び同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
【0139】
界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の含有量は、光重合層の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜7質量%であるのがより好ましい。
【0140】
〔着色剤〕
本発明では、さらに必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、及び特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
【0141】
これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、画像記録材料全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
【0142】
〔焼き出し剤〕
本発明の光重合層には、焼き出し画像生成のため、酸又はラジカルによって変色する化合物を添加することができる。このような化合物としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0143】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH[保土ケ谷化学(株)製]、オイルブルー#603[オリエント化学工業(株)製]、オイルピンク#312[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッド5B[オリエント化学工業(株)製]、オイルスカーレット#308[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドOG[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドRR[オリエント化学工業(株)製]、オイルグリーン#502[オリエント化学工業(株)製]、スピロンレッドBEHスペシャル[保土ケ谷化学工業(株)製]、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシステアリルアミノ−4−p−N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等の染料やp,p’,p”−ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)等のロイコ染料が挙げられる。
【0144】
上記の他に、感熱紙や感圧紙用の素材として知られているロイコ染料も好適なものとして挙げられる。具体例としては、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノ−フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)−フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−(4−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−ベンジルアミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7,8−ベンゾフロオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−ザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、などが挙げられる。
【0145】
酸又はラジカルによって変色する染料の好適な添加量は、それぞれ、光重合層固形分に対して0.01〜10質量%の割合である。
【0146】
〔重合禁止剤〕
本発明の光重合層には、光重合層の製造中又は保存中において(C)ラジカル重合性モノマーの不要な熱重合を防止するために、少量の熱重合防止剤を添加するのが好ましい。
熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が好適に挙げられる。
熱重合防止剤の添加量は、光重合層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
【0147】
〔高級脂肪酸誘導体等〕
光重合層には、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で光重合層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、光重合層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
【0148】
〔可塑剤〕
光重合層は、機上現像性を向上させるために、可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステル等のグリコールエステル類;トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエート等の脂肪族二塩基酸エステル類;ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチル等が好適に挙げられる。
可塑剤の含有量は、光重合層の全固形分に対して、約30質量%以下であるのが好ましい。
【0149】
〔無機微粒子〕
本発明の光重合層は、画像部の硬化皮膜強度向上及び非画像部の機上現像性向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム又はこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは光熱変換性でなくても、皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、光重合層中に安定に分散して、光重合層の膜強度を十分に保持し、印刷時の汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部を形成することができる。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、光重合層の全固形分に対して、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
【0150】
〔低分子親水性化合物〕
本発明の光重合層は、機上現像性向上のため、親水性低分子化合物を含有してもよい。親水性低分子化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩、イソシアヌル酸誘導体類等が挙げられる。このなかでも、イソシアヌル酸誘導体類が耐刷性の劣化なく機上現像性を向上させることができ、好ましく用いられる。
【0151】
〔光重合層の形成〕
本発明の光重合層は、上記感光性組成物の必要な成分を溶剤に分散、又は溶かして塗布液を調製し、支持体上に塗布、乾燥して形成される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明の光重合層は、同一又は異なる上記各成分を同一又は異なる溶剤に分散又は溶解した塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
【0152】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の光重合層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.3〜3.0g/m2が好ましい。この範囲で、良好な感度と光重合層の良好な皮膜特性が得られる。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
【0153】
<支持体>
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状物であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム及びアルミニウム板が挙げられる。なかでも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
【0154】
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のものを適宜利用することができる。
【0155】
支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましく、0.15〜0.3mmであるのがさらに好ましい。
【0156】
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により、親水性の向上及び光重合層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
【0157】
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流又は直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
【0158】
粗面化処理されたアルミニウム板は、必要に応じて、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液を用いてアルカリエッチング処理を施され、さらに、中和処理された後、所望により、耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施される。
【0159】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。一般的には、硫酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸、燐酸又はそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2であるのが好ましく、1.5〜4.0g/m2であるのがより好ましい。この範囲で、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られる。
【0160】
陽極酸化処理を施した後、必要に応じて、アルミニウム板の表面に親水化処理を施す。親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸漬処理し、又は電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。
【0161】
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。この範囲で、光重合層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
また、支持体の色濃度としては、反射濃度値として0.15〜0.65であるのが好ましい。この範囲で、画像露光時のハレーション防止による良好な画像形成性と現像後の良好な検版性が得られる。
【0162】
<バックコート層>
支持体に表面処理を施した後又は下塗り層を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコートを設けることができる。
バックコートとしては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。なかでも、Si(OCH34、Si(OC254、Si(OC374、Si(OC494等のケイ素のアルコキシ化合物を用いるのが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
【0163】
<下塗り層>
本発明において、平版印刷版原版は、必要に応じて、光重合層と支持体との間に下塗り層を設けることができる。下塗り層は、未露光部において、光重合層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、現像性が向上する利点がある。また、赤外線レーザー露光の場合は、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく利用されるようになるため、高感度化が図れるという利点がある。
本発明において、特にUVインキを使用した場合においては、細線再現性を向上させる目的で、親水性支持体表面への吸着性基および付加重合可能なエチレン性二重結合を含有する化合物を下塗り層に含ませることが好ましい。
下塗り層用化合物(下塗り化合物)としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物等が好適に挙げられる。
最も好ましい下塗り化合物としては、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー、及び架橋性基を有するモノマーを共重合した高分子樹脂が挙げられる。
【0164】
下塗り用高分子樹脂の必須成分は、親水性支持体表面への吸着性基である。親水性支持体表面への吸着性の有無に関しては、例えば以下のような方法で判断できる。
試験化合物を易溶性の溶媒に溶解させた塗布夜を作製し、その塗布夜を乾燥後の塗布量が30mg/m2となるように支持体上に塗布・乾燥させる。次に試験化合物を塗布した支持体を、易溶性溶媒を用いて十分に洗浄した後、洗浄除去されなかった試験化合物の残存量を測定して支持体吸着量を算出する。ここで残存量の測定は、残存化合物量を直接定量してもよいし、洗浄液中に溶解した試験化合物量を定量して算出してもよい。化合物の定量は、例えば蛍光X線測定、反射分光吸光度測定、液体クロマトグラフィー測定などで実施できる。支持体吸着性がある化合物は、上記のような洗浄処理を行っても1mg/m2以上残存する化合物である。
【0165】
親水性支持体表面への吸着性基は、親水性支持体表面に存在する物質(例えば、金属、金属酸化物)あるいは官能基(例えば、ヒドロキシル基)と、化学結合(例えば、イオン結合、水素結合、配位結合、分子間力による結合)を引き起こすことができる官能基である。吸着性基は、酸基又はカチオン性基が好ましい。
酸基は、酸解離定数(pKa)が7以下であることが好ましい。酸基の例は、フェノール性ヒドロキシル基、カルボキシル基、−SO3H、−OSO3H、−PO32、−OPO32、−CONHSO2−、−SO2NHSO2−及びCOCH2COCH3を含む。なかでもOPO32及びPO32が特に好ましい。またこれら酸基は、金属塩であっても構わない。
カチオン性基は、オニウム基であることが好ましい。オニウム基の例は、アンモニウム基、ホスホニウム基、アルソニウム基、スチボニウム基、オキソニウム基、スルホニウム基、セレノニウム基、スタンノニウム基、ヨードニウム基を含む。アンモニウム基、ホスホニウム基及びスルホニウム基が好ましく、アンモニウム基及びホスホニウム基がさらに好ましく、アンモニウム基が最も好ましい。
【0166】
吸着性基を有するモノマーの特に好ましい例としては、下記式(iii)又は(iv)で表される化合物が挙げられる。
【0167】
【化28】

【0168】
上式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数が1乃至6のアルキル基である。R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数が1乃至6のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素原子数
が1乃至3のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子又はメチル基であること
が最も好ましい。R2及びR3は、水素原子であることが特に好ましい。Zは、親水性支持体表面に吸着する官能基である。
式(iii)において、Xは、酸素原子(−O−)又はイミノ(−NH−)である。Xは、酸素原子であることがさらに好ましい。式(iii)において、Lは、2価の連結基である。Lは、2価の脂肪族基(アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(アリレン基、置換アリレン基)又は2価の複素環基であるか、あるいはそれらと、酸素原子(−O−)、硫黄原子(―S―)、イミノ(−NH−)、置換イミノ(−NR−、Rは脂肪族基、芳香族基又は複素環基)又はカルボニル(−CO−)との組み合わせであることが好ましい。
脂肪族基は、環状構造又は分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1乃至20が好ましく、1乃至15がさらに好ましく、1乃至10が最も好ましい。脂肪族基は、不飽和脂肪族基よりも飽和脂肪族基の方が好ましい。脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、芳香族基及び複素環基を含む。
芳香族基の炭素原子数は、6乃至20が好ましく、6乃至15がさらに好ましく、6乃至10が最も好ましい。芳香族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、脂肪族基、芳香族基及び複素環基を含む。
複素環基は、複素環として5員環又は6員環を有することが好ましい。複素環に他の複素環、脂肪族環又は芳香族環が縮合していてもよい。複素環基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N−R、Rは脂肪族基、芳香族基又は複素環基)、脂肪族基、芳香族基及び複素環基を含む。
Lは、複数のポリオキシアルキレン構造を含む二価の連結基であることが好ましい。ポリオキシアルキレン構造は、ポリオキシエチレン構造であることがさらに好ましい。言い換えると、Lは、−(OCH2CH2)n−(nは2以上の整数)を含むことが好ましい。
式(iv)において、Yは炭素原子又は窒素原子である。Y=窒素原子でY上にLが連結し四級ピリジニウム基になった場合、それ自体が吸着性を示すことからZは必須ではなく、Zが水素原子でもよい。Lは式(iii)の場合と同じ2価の連結基又は単結合を表す。
【0169】
吸着性の官能基については、前述した通りである。
以下に、式(iii)又は(iv)で表される代表的な化合物の例を示す。
【0170】
【化29】

【0171】
本発明に用いることができる下塗り用高分子樹脂の親水性基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホ酸基、リン酸基等が好適に挙げられる。なかでも高親水性を示すスルホ基を有するモノマーが好ましい。スルホ基を有するモノマーの具体例としては、メタリルオキシベンゼンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、メタリルスルホン酸、アクリルアミドt-ブチルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(3−アクリロイルオキシプロピル)ブチルスルホン酸のナトリウム塩、アミン塩が挙げられる。なかでも親水性能及び合成の取り扱いから2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩が好ましい。
【0172】
本発明の下塗り層用の高分子樹脂は、架橋性基を有すことが好ましい。架橋性基によって画像部との密着の向上が得られる。下塗り層用の高分子樹脂に架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の側鎖中に導入したり、高分子樹脂の極性置換基と対荷電を有する置換基とエチレン性不飽和結合を有する化合物で塩構造を形成させたりして導入することができる。
【0173】
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドのポリマーであって、エステル又はアミドの残基(−COOR又はCONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0174】
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−CR1=CR23、−(CH2)nCR1=CR23、−(CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2)nNH−CO−O−CH2CR1=CR23、−(CH2)n−O−CO−CR1=CR23、及び(CH2CH2O)2−X(式中、R1〜R3はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、R1とR2又はR3とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
エステル残基の具体例としては、−CH=CH2、−C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH2(特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CH2CH2O−CH2CH=CH2、−CH2C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH−C65、−CH2CH2OCOCH=CH−C65、−CH2CH2NHCOO−CH2CH=CH2、及びCH2CH2O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH=CH2、−C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH2、−CH2CH2O−Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2CH2OCO−CH=CH2が挙げられる。
下塗り層用高分子樹脂の架橋性基を有するモノマーとしては、上記架橋性基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドが好適である。
【0175】
下塗り層用高分子樹脂中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、高分子樹脂1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と汚れ性の両立、及び良好な保存安定性が得られる。
【0176】
下塗り層用の高分子樹脂は、質量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
下塗り層用の高分子樹脂は、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
【0177】
下塗り用高分子樹脂は単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。下塗り層用塗布液は、上記下塗り用の高分子樹脂を有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンなど)及び/又は水に溶解して得られる。下塗り層用塗布液には、赤外線吸収剤を含有させることもできる。
下塗り層塗布液を支持体に塗布する方法としては、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、1〜30mg/m2であるのがより好ましい。
【0178】
<保護層>
本発明の平版印刷版原版には、酸素遮断性付与、光重合層での傷等の発生防止、高照度レーザー露光時に生じるアブレーション防止等のために、必要に応じて光重合層の上に保護層(オーバーコート層)を設けることができる。
通常、平版印刷版の露光処理は大気中で実施する。露光処理によって生じる光重合層中での画像形成反応は、大気中に存在する酸素、塩基性物質等の低分子化合物によって阻害され得る。保護層は、この酸素、塩基性物質等の低分子化合物が光重合層へ混入することを防止し、結果として大気中での画像形成阻害反応を抑制する。従って、保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性を低くすることであり、さらに、露光に用いられる光の透過性が良好で、光重合層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像処理工程で容易に除去することができるものである。このような特性を有する保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55−49729号公報に記載されている。
【0179】
保護層に用いられる材料としては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができる。具体的には例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニルの部分鹸化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、水溶性セルロース誘導体、ゼラチン、デンプン誘導体、アラビアゴム等の水溶性ポリマーや、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリサルホン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、セロハン等のポリマー等が挙げられる。これらは、必要に応じて2種以上を併用することもできる。
【0180】
上記材料中で比較的有用な素材としては、結晶性に優れる水溶性高分子化合物が挙げられる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸等の水溶性アクリル樹脂、ゼラチン、アラビアゴム等が好適であり、なかでも、水を溶媒として塗布可能であり、かつ、印刷時における湿し水により容易に除去されるという観点から、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾールが好ましい。その中でも、ポリビニルアルコール(PVA)は、酸素遮断性、現像除去性等の基本的な特性に対して最も良好な結果を与える。
【0181】
保護層に用い得るポリビニルアルコールは、必要な水溶性を有する実質的量の未置換ビニルアルコール単位を含有するかぎり、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を含有していてもよい。例えば、カルボキシル基、スルホ基等のアニオンで変性されたアニオン変性部位、アミノ基、アンモニウム基等のカチオンで変性されたカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位等種々の親水性変性部位をランダムに有す各種重合度のポリビニルアルコール、前記のアニオン変性部位、前記のカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位、さらにはアルコキシル変性部位、スルフィド変性部位、ビニルアルコールと各種有機酸とのエステル変性部位、前記アニオン変性部位とアルコール類等とのエステル変性部位、エポキシ変性部位等種々の変性部位をポリマー鎖末端に有す各種重合度のポリビニルアルコール等も好ましく用いられる。
【0182】
これら変性ポリビニルアルコールは71〜100mol%加水分解された重合度300〜2400の範囲の化合物が好適に挙げられる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。また変性ポリビニルアルコールとしては、アニオン変性部位を有すKL−318、KL−118、KM−618、KM−118、SK−5102、カチオン変性部位を有すC−318、C−118、CM−318、末端チオール変性部位を有すM−205、M−115、末端スルフィド変性部位を有すMP−103、MP−203、MP−102、MP−202、高級脂肪酸とのエステル変性部位を末端に有すHL−12E、HL−1203、その他反応性シラン変性部位を有すR−1130、R−2105、R−2130等が挙げられる。
【0183】
また保護層には層状化合物を含有することが好ましい。層状化合物とは薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、下記一般式:
A(B,C)2−5D410(OH,F,O)2
〔ただし、AはLi,K,Na,Ca,Mg,有機カチオンの何れか、B及びCはFe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかであり、DはSi又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群、式3MgO・4SiO・H2Oで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
上記天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg3(AlSi310)F2、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si410)F2等の非膨潤性雲母、及びNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si410)F2、Na又はLiテニオライト(Na,Li)Mg2Li(Si410)F2、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si410)F2等の膨潤性雲母等が挙げられる。また合成スメクタイトも有用である。
【0184】
上記の層状化合物の中でも、合成の層状化合物であるフッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。すなわち、雲母、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイト等の膨潤性粘土鉱物類等は、10〜15Åの厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘度鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi+、Na+、Ca2+、Mg2+、アミン塩、第4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩及びスルホニウム塩等の有機カチオンの陽イオンを吸着している。これらの層状化合物は水により膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。ベントナイト及び膨潤性合成雲母はこの傾向が強い。
【0185】
層状化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きいほどよい。従って、アスペクト比は20以上であり、好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の長径に対する厚さの比であり、たとえば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
層状化合物の粒子径は、その平均径が1〜20μm、好ましくは1〜10μm、特に好ましくは2〜5μmである。粒子径が1μmよりも小さいと酸素や水分の透過の抑制が不十分であり、効果を十分に発揮できない。また20μmよりも大きいと塗布液中での分散安定性が不十分であり、安定的な塗布を行うことができない問題が生じる。また、該粒子の平均の厚さは、0.1μm以下、好ましくは、0.05μm以下、特に好ましくは、0.01μm以下である。例えば、無機質の層状化合物のうち、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは厚さが1〜50nm、面サイズが1〜20μmである。
【0186】
このようにアスペクト比が大きい無機質の層状化合物の粒子を保護層に含有させると、塗膜強度が向上し、また、酸素や水分の透過を効果的に防止しうるため、変形などによる保護層の劣化を防止し、高湿条件下において長期間保存しても、湿度の変化による平版印刷版原版における画像形成性の低下もなく保存安定性に優れる。
保護層中の無機質層状化合物の含有量は、保護層に使用されるバインダーの量に対し、質量比で5/1〜1/100であることが好ましい。より好ましくは2/1〜1/5である。複数種の無機質の層状化合物を併用した場合でも、これら無機質の層状化合物の合計量が上記の質量比であることが好ましい。
【0187】
保護層に上記無機質の層状化合物を用いる場合は、着肉性向上のため、光重合層及び/又は保護層にホスホニウム化合物を添加することが好ましい。該ホスホニウム化合物としては、下記一般式(v)又は(vi)で表されるホスホニウム化合物が好ましい。なかでも、一般式(v)で表されるホスホニウム化合物が好ましい。
【0188】
【化30】

【0189】
式(v)中、Ar1〜Ar6は、各々独立してアリール基又は複素環基を表し、Lは2価の連結基を表し、Xはn価のカウンターアニオンを表し、nは1〜3の整数を表し、mはn x m=2を満たす数を表す。ここでアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、ジメチルアミノフェニル基などが好適なものとして挙げられる。複素環基としては、ピリジル基、キノリル基、ピリミジニル基、チエニル基、フリル基などが挙げられる。
【0190】
Lは2価の連結基を表す。連結基中の炭素数は6〜15が好ましく、より好ましくは、炭素数6〜12の連結基である。
【0191】
-はカウンターアニオンを表し、好ましいものとしては、Cl-、Br-、I-などのハロゲンアニオン、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、硫酸エステルアニオン、PF6-、BF4-、過塩素酸アニオンなどが挙げられる。なかでも、Cl-、Br-、I-などのハロゲンアニオン、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオンが特に好ましい。
【0192】
本発明に用いられる上記一般式(v)で表されるホスホニウム塩の具体例を以下に示す。
【0193】
【化31】






















【0194】
【化32】

【0195】
上記一般式(vi)において、R1〜R4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、複素環基又は水素原子を表す。R1〜R4の少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。X-はカウンターアニオンを示す。
ここで、R1〜R4がアルキル基、アルコキシ基又はアルキルチオ基であるときの炭素数は通常1〜20、アルケニル基又はアルキニル基であるときの炭素数は通常2〜15、シクロアルキル基であるときの炭素数は通常3〜8であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が、アリールオキシ基としてはフェノキシ基、ナフチルオキシ基等が、アリールチオ基としてはフェニルチオ基等が、複素環基としてはフリル基、チエニル基等が、それぞれ挙げられる。また、これらの有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、スルフィノ基、スルホ基、ホスフィノ基、ホスホリル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基及びハロゲン原子等が挙げられる。なお、これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。
-の表すアニオンとしては、Cl-、Br-、I-などのハロゲン化物イオン、ClO4-、PF6-、SO4-2などの無機酸アニオン、有機カルボン酸アニオン、有機スルホン酸アニオンが挙げられる。有機カルボン酸アニオン、有機スルホン酸アニオンの有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、メトキシフェニル、ナフチル、フルオロフェニル、ジフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、チエニル、ピロリル等が挙げられる。これらの中で、Cl-、Br-、I-、ClO4-、PF6-等が好ましい。本発明において好適なホスホニウム化合物の具体例を以下に示す。
【0196】
【化33】

【0197】
光重合層又は保護層へのホスホニウム塩の添加量としては、各層の固形分中0.01〜20質量%が好ましく、0.05〜10質量%がさらに好ましく、0.1〜5質量%がもっとも好ましい。これらの範囲内で良好なインキ着肉性が得られる。
【0198】
保護層の他の組成物として、グリセリン、ジプロピレングリコール等を(共)重合体に対して数質量%相当量添加して可撓性を付与することができ、また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を添加することができる。これら活性剤の添加量は(共)重合体に対して0.1〜100質量%添加することができる。
【0199】
また、画像部との密着性を良化させるため、例えば、特開昭49−70702号公報及び英国特許出願公開第1303578号明細書には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルション、水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体等を20〜60質量%混合させ、光重合層上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明においては、これらの公知の技術をいずれも用いることができる。
【0200】
さらに、保護層には、他の機能を付与することもできる。例えば、露光に用いられる赤外線の透過性に優れ、かつ、それ以外の波長の光を効率よく吸収しうる、着色剤(例えば、水溶性染料)の添加により、感度低下を引き起こすことなく、セーフライト適性を向上させることができる。
【0201】
次に、保護層に用いる層状化合物の一般的な分散方法の例について述べる。まず、水100質量部に先に層状化合物の好ましいものとして挙げた膨潤性の層状化合物を5〜10質量部添加し、充分水になじませ、膨潤させた後、分散機にかけて分散する。ここで用いる分散機としては、機械的に直接力を加えて分散する各種ミル、大きな剪断力を有する高速攪拌型分散機、高強度の超音波エネルギーを与える分散機等が挙げられる。具体的には、ボールミル、サンドグラインダーミル、ビスコミル、コロイドミル、ホモジナイザー、ティゾルバー、ポリトロン、ホモミキサー、ホモブレンダー、ケディミル、ジェットアジター、毛細管式乳化装置、液体サイレン、電磁歪式超音波発生機、ポールマン笛を有する乳化装置等が挙げられる。上記の方法で分散した無機質層状化合物の5〜10質量%の分散物は高粘度あるいはゲル状であり、保存安定性は極めて良好である。この分散物を用いて保護層塗布液を調製する際には、水で希釈し、充分攪拌した後、バインダー溶液と配合して調製するのが好ましい。
【0202】
この保護層塗布液には、塗布性を向上させためのアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤や皮膜の物性改良のため水溶性可塑剤などの公知の添加剤を加えることができる。水溶性の可塑剤としては、例えば、プロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。また、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマーを加えることもできる。さらに、この塗布液には、光重合層との密着性、塗布液の経時安定性を向上するための公知の添加剤を加えてもよい。
【0203】
このように調製された保護層塗布液を、支持体上に備えられた光重合層の上に塗布し、乾燥することで保護層を形成する。塗布溶剤はバインダーとの関連において適宜選択することができるが、水溶性ポリマーを用いる場合には、蒸留水、精製水を用いることが好ましい。保護層の塗布方法は、特に制限されるものではなく、米国特許第3,458,311号明細書又は特公昭55−49729号公報に記載されている方法など公知の方法を適用することができる。具体的には、例えば、保護層は、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等が挙げられる。
保護層の塗布量としては、乾燥後の塗布量で、0.01〜10g/m2の範囲であることが好ましく、0.02〜3g/m2の範囲がより好ましく、最も好ましくは0.02〜1g/m2の範囲である。
【0204】
[平版印刷方法]
本発明の平版印刷版原版を露光する光源としては、公知のものを用いることができる。具体的には各種レーザーを光源として用いることが好適である。本発明の平版印刷方法においては、平版印刷版原版を赤外線レーザーで画像様に露光する。用いられる赤外線レーザーは、特に限定されないが、波長760〜1200nmの赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適なものとして挙げられる。
露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等のいずれでもよい。赤外線レーザーの出力は、100mW以上であるのが好ましい。また、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザーデバイスを用いるのが好ましい。1画素あたりの露光時間は、20μs以内であるのが好ましい。また、照射エネルギー量は、10〜300mJ/cm2であるのが好ましい。
【0205】
本発明の平版印刷方法においては、本発明の平版印刷版原版を上述のように赤外線レーザーで画像様に露光した後、何らの現像処理工程を経ることなく油性インキと水性成分とを供給して印刷することができる。
具体的には、平版印刷版原版を赤外線レーザーで露光した後、現像処理工程を経ることなく印刷機に装着して印刷する方法、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上において赤外線レーザーで露光し、印刷する方法等が挙げられる。
【0206】
平版印刷版原版を赤外線レーザーで画像様に露光した後、湿式現像処理工程等の現像処理工程を経ることなく水性成分と油性インキとを供給して印刷すると、機上現像型の平版印刷版原版の場合は、光重合層の露光部においては、露光により硬化した光重合層が、親油性表面を有する油性インキ受容部を形成する。一方、未露光部においては、供給された水性成分及び/又は油性インキによって、未硬化の光重合層が溶解し又は分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。その結果、水性成分は露出した親水性の表面に付着し、油性インキは露光領域の光重合層に着肉し、印刷が開始される。
ここで、最初に版面に供給されるのは、水性成分でもよく、油性インキでもよいが、本発明の機上現像型の平版印刷版原版では、機上現像を速やかに行うために水性成分を最初に供給するのが好ましい。水性成分及び油性インキとしては、通常の平版印刷用の、湿し水と印刷インキが用いられる。
【0207】
本発明の平版印刷版原版を用いることにより、UVインキを用いる場合においても上記平版印刷方法と同様にして、機上現像及び引き続いての印刷を行うことでき、良好な耐刷性が得られる。UVインキは、通常市販のインキを用いることができる。
このようにして、平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
【実施例】
【0208】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〜5及び比較例1〜3〕
1.平版印刷版原版の作成
(1)支持体の作製
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミ表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温は50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0209】
さらに、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dm2の条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。この板を15質量%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dm2で2.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。さらにこの基板を、70℃に保った三号珪酸ソーダ2.5質量%水溶液中に7秒浸漬し、水洗乾燥した。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。さらに、下記下塗り液(1)を乾燥塗布量18mg/m2になるよう塗布して支持体とした。
−下塗り液(1)−
・下塗り化合物(1)(質量平均分子量:60,000) 0.051g
・メタノール 9.00g
・水 1.00g
【0210】
【化34】

【0211】
(2)光重合層及び保護層の形成
上記下塗り層形成済みの支持体上に、下記表1の組成(単位:グラム)の成分を溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル/メチルエチルケトン/メチルアルコール/水=55/20/15/10(質量比))12.00gに溶かした溶液(光重合層塗布液)を、乾燥塗布量が1.2g/m2になるようワイヤーバーを用いて塗布し、120℃で40秒間オーブン乾燥し光重合層を形成した。
引き続き、下記組成の保護層塗布液を前記光重合層上にバー塗布し、125℃、75秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量0.18g/m2の保護層を形成することで実施例1〜5の平版印刷版原版及び比較例1〜3の平版印刷版原版を得た。
なお、光重合層塗布液は、表1記載の感光液と下記ミクロゲル液(1)を塗布直前に混合し、攪拌することにより得た。使用した例示化合物の符号は、前述した本発明で使用する特定高分子化合物の具体例に付けた符号に該当する。
なお、比較例においては、本発明の特定高分子化合物に代えて、ポリメチルメタクリレート(Mw5万)、下記構造の比較特定高分子(R−1)(Mw7万)又は比較特定高分子(R−2)(Mw10万)を用いた。
【0212】
【表1】

【0213】
−ミクロゲル分散液(1)の合成−
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N、75質量%酢酸エチル溶液)8.4g、タケネートD−110NとユニオックスM−4000(日本油脂製)の重量比1:1の付加体(50質量%酢酸エチル溶液)3.15g、重合性モノマーとしてSR399E(サートマー社製)6.30g、パイオニンA−41−C(竹本油脂(株)製)0.19gを酢酸エチル16.39gに溶解した。この油相成分と蒸留水39.4gを混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水24gに添加し、40℃で4時間攪拌した。このようにして得られたミクロゲル分散液の固形分濃度を、21質量%になるように蒸留水を用いて希釈し、ミクロゲル分散液(1)を得た。平均粒径は0.23μmであった。
【0214】
【化35】



比較特定高分子(R−2)
【化36】

【0215】
保護層塗布液
・下記無機層状化合物分散液(1) 1.50g
・ポリビニルアルコール 0.01g
(PVA405、クラレ製、ケン化度81.5mol%)
・ポリビニルアルコール 0.03g
(CKS-50、日本合成化学工業製、ケン化度99mol%、アニオン変性)
・界面活性剤 0.01g
(エマレックス710、日本エマルジョン社製)
・シリカフィラー 0.05g
(MP−1040、日産化学工業社製)
・水 3.51g
【0216】
−無機層状化合物分散液(1)の調製−
イオン交換水193.6gに合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた層状化合物分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0217】
〔実施例6〜10および比較例4〜6〕
1.平版印刷版原版の作製
実施例1〜5で用いられたのと同様のアルミニウム基板それぞれに、下記表2の組成(単位:グラム)の成分を溶媒(n−プロパノール/水/2−ブタノン=76/20/4(質量比))500gに溶かした溶液(光重合層塗布液)を、乾燥塗布量が1.5g/m2になるようワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で90秒間乾燥した。
【0218】
【表2】

【0219】
※1:DESMODUR N100(ヘキサメチレンジイソシアネートを含む脂肪族ポリイソシアネート樹脂:バイエル社製)をヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレートと反応して得られた重合性化合物。2−ブタノン中の80質量%溶液
※2:ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート/スチレン/アクリロ二トリル=10/20/70共重合体の21質量%のn−プロパノール/水=80/20混合溶媒分散液
※3:トリメチロールプロパンテトラアクリレート(サートマー社製)
※4:2質量%水溶液
※5:プロピレンカーボネート中のヨードニウム(4−メトキシフェニル[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヘキサフルオロリン酸)の75質量%溶液(チバスペシャルティケミカルズ社製)
※6:PCAS社(仏)から入手可能なメルカプト−3−トリアゾール−1H,2,4
※7:キシレン/メトキシプロピル酢酸溶液中の変性ジメチルポリシロキサンコポリマーの25質量%溶液(BYKケミー社製)
【0220】
【化37】

【0221】
2.平版印刷版原版の露光、印刷及び評価
上記実施例及び比較例で得られた各平版印刷版原版を水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像には細線チャートを含むようにした。
一般に、ネガ型平版印刷版原版の場合、露光量が少ないと感光層(本発明では光重合層)の硬化度が低くなり、露光量が多いと硬化度が高くなる。光重合層の硬化度が低すぎる場合には、平版印刷版の耐刷性が低くなり、また、小点や細線の再現性が不良となる。一方、光重合層の硬化度が高い場合には、耐刷性が高くなり、また、小点や細線の再現性が良好となる。
本実施例では、以下に示すように、上記で得られたネガ型平版印刷版原版を、上述した同一の露光量条件で耐刷性及び細線再現性を評価することにより、平版印刷版原版の感度の指標とした。すなわち、耐刷性における印刷枚数が高いほど、また、細線再現性における細線幅が細いほど、平版印刷版原版の感度が高いと言える。
【0222】
(1)機上現像性
印刷インキとして(i)通常インキ(TRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製))、又は(ii)UVインキ(ベストキュアーUV−BF−WRO標準墨インキ(T&K TOKA社製))を用いて、機上現像を以下のように行った。
得られた露光済み原版を現像処理することなく、三菱重工業社製ダイヤIF−2印刷機のシリンダーに取り付け、湿し水(EU−3(富士フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))と上記印刷インキを供給した後、毎時6,000枚の印刷速度で印刷を行った。この時、光重合層の未露光部(非画像部)に、インキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数(機上現像性)を評価した。枚数が少ないほど、機上現像性に優れると評価する。評価結果を表3に示す。
(2)細線再現性
上述したように、100枚印刷して非画像部にインキ汚れがない印刷物が得られたことを確認した後、続けて500枚の印刷を行った。合計600枚目の印刷物の細線チャート(10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、60、80、100及び200μmの細線画像部と非画像部が同じ幅で交互に存在するチャート)を25倍のルーペで観察し、途切れることなく再現された細線幅により、細線再現性を評価した。評価結果を表3に示す。
(3)機上現像カス
上述したように、細線再現性の評価において印刷を行った後、同時に水着けローラ上の除去カスの付着状況を評価した。指標は以下の通りである。
○:水着けローラ上にカスは見られない
△:かすかに水着けローラ上にカスが見られる
×:水着けローラ上にカスが多く見られる
【0223】
(4)耐刷性
(i)通常インキを使用した印刷
機上現像カスの評価を行った後、さらに印刷を続けた。印刷枚数を増やしていくと徐々に光重合層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、耐刷性を評価した。評価結果を表3に示す。
(ii)UVインキを使用した印刷
機上現像カスの評価を行った後、さらに印刷を続けた。印刷枚数を増やしていくと徐々に光重合層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、耐刷性を評価した。評価結果を表3に示す。
【0224】
【表3】

表3の結果より、本発明に従って特定高分子化合物を光重合層に含有するネガ型平版印刷版原版は、機上現像を採用した平版印刷方法において通常インキ耐刷性及び機上現像性のみならずUVインキ耐刷性も優れていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性支持体上に、スルホンアミド基、親水性基および側鎖にエチレン性不飽和結合を有する高分子化合物を含有する光重合層を有することを特徴とするネガ型平版印刷版原版。
【請求項2】
前記高分子化合物が、下記一般式(Ia)〜(Ie)で示されるスルホンアミド基を有するモノマーから誘導される単位を有することを特徴とする請求項1記載のネガ型平版印刷版原版。
【化1】


〔式中、X1はO又はNRを示す。R1は水素原子又はメチル基を示す。R2、R6及びR8はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜12の、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリレン基又はアラルキレン基を示す。R3及びR9はそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12の、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基を示す。R4及びR10はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜12の、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。R5は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を示す。R7は単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12の、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリレン基もしくはアラルキレン基を示す。Rは水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12の、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基を示す。Y1は単結合又はカルボニル基を示す。〕
【請求項3】
前記親水性基が、下記一般式(II)で示されるアルキレンオキサイド構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載のネガ型平版印刷版原版。
【化2】


(上記式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、aは1、3又は5であり、lは1〜9の整数を表す。)
【請求項4】
前記エチレン性不飽和結合が下記一般式(1)、(2)又は(3)で示されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のネガ型平版印刷版原版。
【化3】


(式中、X、Yはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子または−N(R12)−を表す。Zは酸素原子、硫黄原子、−N(R12)−またはフェニレン基を表す。R1〜R12はそれぞれ独立に1価の置換基を表す。)
【請求項5】
スルホンアミド基、親水性基及び側鎖にエチレン性不飽和結合を有する高分子化合物がバインダーであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項6】
該光重合層が、赤外線吸収剤、重合開始剤及び重合性モノマーを含有することを特徴する請求項1〜5のいずれか1項に記載のネガ型平版印刷版原版。
【請求項7】
該光重合層が、マイクロカプセル又はミクロゲルを含有することを特徴する請求項1〜6のいずれか1項に記載のネガ型平版印刷版原版。
【請求項8】
該光重合層において、スルホンアミド基、親水性基及び側鎖にエチレン性不飽和結合を有する高分子化合物を含むバインダーポリマーと重合性モノマーとの質量比が、3/2〜1/3であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のネガ型平版印刷版原版。
【請求項9】
親水性支持体と該光重合層の間に、親水性支持体吸着性基および付加重合可能なエチレン性二重結合を有する化合物を含有する下塗り層を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載のネガ型平版印刷版原版。
【請求項10】
該光重合層が印刷インキ及び/又は湿し水により除去可能であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のネガ型平版印刷版原版。
【請求項11】
該印刷インキがUVインキであることを特徴とする、請求項10に記載のネガ型平版印刷版原版。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のネガ型平版印刷版原版を、印刷機に装着し、レーザーで画像様に露光した後、又は、レーザーで画像様に露光した後、印刷機に装着し、該ネガ型平版印刷版原版に印刷インキ及び/又は湿し水を供給して、光重合層の未露光部分を除去し、印刷する平版印刷方法。
【請求項13】
該印刷インキがUVインキであることを特徴とする請求項12に記載の平版印刷方法。

【公開番号】特開2009−241258(P2009−241258A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87165(P2008−87165)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】