説明

ノイズフィルタ

【課題】静電容量を減少させることなく歩留まりを向上させることができるノイズフィルタを提供することを目的とする。
【解決手段】第1の絶縁層11の上面に設けられた内部導体12と、第1の絶縁層11の下方に設けられた複数の第2の絶縁層13と、前記複数の第2の絶縁層13のそれぞれの同一面に互いに電気的に接続されないように設けられた第1の金属層14および第2の金属層15とを備え、前記第1の金属層14を内部導体12と電気的に接続するとともに、上下方向に隣接する前記第2の絶縁層13に設けられた前記第1の金属層14と前記第2の金属層15とを前記第2の絶縁層13を介して互いに対向させるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小型デジタル機器やOA機器、携帯端末等の電子機器に広く用いられているノイズフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のノイズフィルタは、図9に示すように、セラミック材料からなる第1の絶縁層1に形成されたコイル導体2と、セラミック材料からなる第2の絶縁層3に形成された複数の金属層4とを独立した状態で積層することにより構成しているもので、このような構成とすることにより、従来のノイズフィルタは、複数のコイル導体2からなるインダクタ導体と、互いに対向する複数の金属層4からなるコンデンサ部とをそれぞれ備えた構成となっていた。そして、前記金属層4の面積を大きくすることにより静電容量を増やしていた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】実公昭60−17895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のノイズフィルタは、静電容量を増やすために金属層4の面積を大きくしているが、このように金属層4の面積を大きくした場合、この金属と絶縁層を構成するセラミック材料とでは熱収縮率が異なるため、焼成時に金属層4と第2の絶縁層3との界面に応力が発生して、クラックや剥離が生じる場合があり、これにより、ノイズフィルタの歩留まりが低下するという課題を有していた。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、静電容量を減少させることなく歩留まりを向上させることができるノイズフィルタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0007】
本発明の請求項1に記載の発明は、第1の絶縁層の上面に設けられた内部導体と、前記第1の絶縁層の上方または下方に設けられた複数の第2の絶縁層と、前記複数の第2の絶縁層のそれぞれの同一面に互いに電気的に接続されないように設けられた第1の金属層および第2の金属層とを備え、前記第1の金属層を前記内部導体と電気的に接続するとともに、上下方向に隣接する前記第2の絶縁層に設けられた前記第1の金属層と前記第2の金属層とを前記第2の絶縁層を介して互いに対向させるようにしたもので、この構成によれば、第2の絶縁層の同一面に形成される金属層を、第1の金属層と第2の金属層の2つに分割しているため、第2の絶縁層に形成される金属層の面積を小さくすることができ、これにより、第1、第2の絶縁層がセラミック材料で構成されていても焼成時における第1、第2の金属層と第1、第2の絶縁層との界面の応力を低減できるため、クラックや剥離が発生するのを防止でき、これにより、歩留まりを向上させることができる。
【0008】
さらに、内部導体および第1の金属層と、第2の金属層とで形成されるコンデンサ部における静電容量が、上下方向に対向する内部導体、第1の金属層と第2の金属層との間だけでなく、第2の絶縁層の同一面に形成され横方向に対向する第1の金属層と第2の金属層との間にも発生するため、静電容量が減少することはないという作用効果を有するものである。
【0009】
本発明の請求項2に記載の発明は、特に、内部導体を渦巻き状に構成したもので、この構成によれば、内部導体のインダクタンスを大きくできるため、高周波数帯域でノイズを除去することができるという作用効果を有するものである。
【0010】
本発明の請求項3に記載の発明は、特に、第2の絶縁層の同一面に設けられた第1の金属層および第2の金属層にそれぞれ凹部と凸部を形成し、かつ一方の凹部と他方の凸部とを互いに対向させるようにしたもので、この構成によれば、第2の絶縁層の同一面における第1の金属層と第2の金属層との対向する距離が長くなるため、第1の金属層と第2の金属層との対向面積を大きくすることができ、これにより、これらの間の静電容量を増加させることができるという作用効果を有するものである。
【0011】
本発明の請求項4に記載の発明は、特に、第2の絶縁層の上面において、第1の金属層および第2の金属層をそれぞれ複数設けたもので、この構成によれば、第2の絶縁層の同一面において対向する第1の金属層と第2の金属層の数を増やすことができるため、第1の金属層と第2の金属層との対向面積を大きくすることができ、これにより、これらの間の静電容量を増加させることができるという作用効果を有するものである。
【0012】
本発明の請求項5に記載の発明は、特に、内部導体の一端部を、全ての第1の金属層のうちの一部および全ての第2の金属層のうちの一部と電気的に接続し、かつ前記内部導体の他端部を、残りの第1の金属層および第2の金属層と電気的に接続したもので、この構成によれば、コンデンサ部を形成する第1の金属層と第2の金属層の両方をインダクタ導体となる内部導体と接続することができるため、インダクタ導体とコンデンサ部とを並列に接続したLC並列型のノイズフィルタを形成することができるという作用効果を有するものである。
【0013】
本発明の請求項6に記載の発明は、第1の絶縁層の上面に設けられた内部導体と、前記第1の絶縁層の上方または下方に設けられた複数の第2の絶縁層と、前記複数の第2の絶縁層のうち一部の第2の絶縁層の同一面に互いに電気的に接続されないように設けられた複数の第1の金属層と、前記複数の第2の絶縁層のうち他の第2の絶縁層の同一面に互いに電気的に接続されないように設けられた複数の第2の金属層とを備え、前記第1の金属層を前記内部導体と電気的に接続するとともに、上下方向に隣接する前記第2の絶縁層に設けられた前記複数の第1の金属層と複数の第2の金属層とを第2の絶縁層を介して互いに対向させるようにしたもので、この構成によれば、内部導体の両端部に複数の第1の金属層を接続することができるため、複数の第2の金属層をグランドに接続させれば、内部導体からなるインダクタ導体の両端部に第1の金属層と第2の金属層からなるコンデンサ部が接続されたπ型のノイズフィルタを形成することができるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明のノイズフィルタは、第1の絶縁層の上面に設けられた内部導体と、前記第1の絶縁層の上方または下方に設けられた複数の第2の絶縁層と、前記複数の第2の絶縁層のそれぞれの同一面に互いに電気的に接続されないように設けられた第1の金属層および第2の金属層とを備え、前記第1の金属層を前記内部導体と電気的に接続するとともに、上下方向に隣接する前記第2の絶縁層に設けられた前記第1の金属層と前記第2の金属層とを前記第2の絶縁層を介して互いに対向させるようにしているため、第2の絶縁層の同一面に形成される金属層を、第1の金属層および第2の金属層の2つに分割することができ、これにより、第2の絶縁層に形成される金属層の面積を小さくできるため、第1、第2の絶縁層がセラミック材料で構成されていても焼成時における第1、第2の金属層と第1、第2の絶縁層との界面の応力を低減でき、これにより、クラックや剥離が発生するのを防止でき、歩留まりを向上させることができる。
【0015】
さらに、内部導体および第1の金属層と、第2の金属層とで形成されるコンデンサ部における静電容量が、上下方向に対向する内部導体、第1の金属層と第2の金属層との間だけでなく、第2の絶縁層の同一面に形成され横方向に対向する第1の金属層と第2の金属層との間にも発生するため、静電容量が減少することはないという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1〜4に記載の発明について説明する。
【0017】
図1は本発明の実施の形態1におけるノイズフィルタの分解斜視図、図2は同ノイズフィルタの斜視図である。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施の形態1におけるノイズフィルタは、第1の絶縁層11の上面に設けられた内部導体12と、前記第1の絶縁層11の下方に設けられた複数の第2の絶縁層13と、前記複数の第2の絶縁層13のそれぞれの上面に互いに電気的に接続されないように、かつ1つずつ設けられた第1の金属層14および第2の金属層15とを備え、そして、前記複数の第1の金属層14のうち最上部の第1の金属層14を内部導体12と電気的に接続するとともに、上下方向に隣接する第2の絶縁層13にそれぞれ設けられた第1の金属層14と第2の金属層15とを第2の絶縁層13を介して互いに対向させている。
【0019】
上記構成において、前記第1の絶縁層11は、BaTiO3やTiO2等をベースとした誘電材料、またはFe23をベースとしたフェライト等の磁性材料からなるセラミック材料によりシート状に構成されているもので、絶縁性を有している。また、この第1の絶縁層11には所定の位置にバイア電極16が設けられている。
【0020】
前記内部導体12は、銀等の導電材料を印刷したり、あるいは転写したりすることにより渦巻き状に形成されているもので、第1の絶縁層11の上面にそれぞれ一つ設けられ、一つのインダクタ導体を構成している。また、内部導体12の一端部は、第1の絶縁層11から露出して第1の引出電極12aを構成し、かつ他端部12bは前記バイア電極16と接続されている。
【0021】
なお、前記内部導体12の形状は、必ずしも渦巻き状に限定されるものではなく、蛇行状、直線状、螺旋状でもよいが、渦巻き状にすることによって、内部導体12のインダクタンスを高くすることができるため、高周波数帯域でノイズを除去することができる。また、内部導体12の形状、長さ等の調整によって、内部導体12のインダクタンスを変化させることができるため、ノイズを除去することができる周波数帯域を幅広い範囲で設定することができる。そしてまた、前記第1の絶縁層11の枚数および内部導体12の数は必ずしも1つに限定されるものではないが、2つ以上設けることによって、インダクタンスを高くすることができるため、幅広い周波数帯域でノイズを除去することができる。
【0022】
また、前記第1の絶縁層11には、内部導体12が設けられている面と同一面において、他の内部導体を内部導体12に沿うように内部導体12の線間に形成してもよい。なお、前記他の内部導体は必ずしも設ける必要はないが、他の内部導体を設けることによって、内部導体12と他の内部導体とでコンデンサ部を形成し、この間において、静電容量を分布定数的に得ることができるため、より広い周波数帯域でノイズを除去することができる。
【0023】
前記第2の絶縁層13は、第1の絶縁層11の下方に2枚設けられているもので、BaTiO3やTiO2等をベースとした誘電材料、またはFe23をベースとしたフェライト等の磁性材料からなるセラミック材料によりシート状に構成され、かつ絶縁性を有している。また、前記第2の絶縁層13の上面には、それぞれ第1の金属層14が1つと、第2の金属層15が1つ設けられている。
【0024】
前記第1の金属層14は、銀等の導電材料を印刷したり、あるいは転写したりすることにより形成され、2枚の第2の絶縁層13の上面に1つずつ、すなわち合計2つ形成されている。また、この第1の金属層14は、一端部にそれぞれ凸状部を有しており、そしてこの凸状部を第2の絶縁層13から露出させて第2の引出電極14aを構成している。さらに、最上部の第1の金属層14はバイア電極16を介して内部導体12と電気的に接続されている。
【0025】
前記第2の金属層15は、第1の金属層14と同様に、銀等の導電材料を印刷したり、あるいは転写したりすることにより形成され、2枚の第2の絶縁層13の上面に1つずつ、すなわち合計2つ形成されている。また、この第2の金属層15も、端部にそれぞれ凸状部を有しており、そしてこの凸状部を第2の絶縁層13から露出させて第3の引出電極15aを構成している。なお、図1においては、2つの第3の引出電極15aを同一方向に引き出しているが、別方向に引き出してもよい。さらに、第1、第2の金属層14,15の熱収縮率と第2の絶縁層13との熱収縮率が近くなるように、それぞれの材料を選定してもよい。
【0026】
また、第1の金属層14と第2の金属層15は、2枚の第2の絶縁層13の上面にそれぞれ1つずつ設けられ、かつ互いに電気的に接続されないように所定の間隔をあけて設けられている。なお、これらは上下に対向させる必要があるため、それぞれ必ず複数形成する。
【0027】
そしてまた、上方の第2の絶縁層13に設けられた第1の金属層14は、上方の第2の絶縁層13を介して下方の第2の絶縁層13に設けられた第2の金属層15と互いに対向するように設けられ、かつ上方の第2の絶縁層13に設けられた第2の金属層15は、上方の第2の絶縁層13を介して下方の第2の絶縁層13に設けられた第1の金属層14と互いに対向するように設けられている。これにより、上下方向の第2の金属層15と第1の金属層14との間においてコンデンサ部が形成され、静電容量を分布定数的に得ることができる。さらに、最上部の第1の金属層14と電気的に接続された内部導体12と最上部の第2の金属層15との間でもコンデンサ部が形成され、静電容量を分布定数的に得ることができる。
【0028】
すなわち、第1の金属層14と内部導体12はインダクタ導体としてだけではなく、第2の金属層15と同様にコンデンサ部の一部である対向電極の片側としても機能する。
【0029】
なお、第2の絶縁層13は2枚だけでなく、3枚以上設けてもよい。この場合も、上下方向に隣接する第2の絶縁層13に設けられた第1の金属層14と第2の金属層15は第2の絶縁層13を介して互いに対向するように形成する必要がある。
【0030】
また、内部導体12の上面および下方に位置する第2の絶縁層13の下面には、それぞれ他の絶縁層17を所定枚数備えている。そしてまた、この他の絶縁層17と前記第1の絶縁層11および第2の絶縁層13を同じ材料で構成すれば、焼成によりこれらの間の密着性が向上するため、クラックや剥離を防止することができる。
【0031】
そしてまた、前記第1の絶縁層11、内部導体12、第2の絶縁層13、他の絶縁層17、第1の金属層14、第2の金属層15を上述した構成で積層することにより、図2に示すようなノイズフィルタ本体18が得られる。
【0032】
このノイズフィルタ本体18の両端面には、第1、第2の引出電極12a,14aと接続された入出力端子となる第1、第2の外部電極19,20が設けられ、さらにこのノイズフィルタ本体18の両側面には、第3の引出電極15aと接続されたグランド端子となる第3の外部電極21が設けられている。
【0033】
ここで、第1の外部電極19から入力した信号は、第1の引出電極12aを介して内部導体12、内部導体12の他端部12b、バイア電極16、最上部の第1の金属層14の順に流れ、そして第2の引出電極14aを介して第2の外部電極20から出力される。
【0034】
また、第1の外部電極19から入力した信号は、最下部の第1の引出電極12a、第1の金属層14にも流れる。そして、第1の金属層14とその上部の第2の金属層15との間のコンデンサ部によって、上部の第2の金属層15における第3の引出電極15aからグランドに流れる。一方、第2の外部電極20から入力した信号については、最上部の第1の引出電極12aと第1の金属層14に流れ、この第1の金属層14とその下部の第2の金属層15との間のコンデンサ部によって、下部の第2の金属層15における第3の引出電極15aからグランドに流れることになる。
【0035】
次に、本発明の実施の形態1におけるノイズフィルタの製造方法について説明する。
【0036】
図1、図2において、まず、それぞれの原材料であるセラミック材料の粉体および樹脂からなる混合物により、方形の第1、第2の絶縁層11,13、他の絶縁層17をそれぞれ所定枚数作製する。このとき、第1、第2の絶縁層11,13、他の絶縁層17はすぐには焼成せず、グリーンシートの状態にしておく。また、第1の絶縁層11の所定箇所に、レーザ、パンチング等で孔あけ加工をし、この孔に銀を充填して、バイア電極16を形成しておく。
【0037】
次に、所定枚数の他の絶縁層17の上面に、第2の絶縁層13を配置した後、この第2の絶縁層13の上面両端部に第1の金属層14と第2の金属層15を1つずつ印刷によって形成する。
【0038】
次に、この第1の金属層14、第2の金属層15の上面に、他の第2の絶縁層13を配置する。
【0039】
次に、この他の第2の絶縁層13の上面に、他の第1の金属層14と第2の金属層15を1つずつ印刷によって形成する。この場合、他の第1の金属層14は、上方に位置する他の第2の絶縁層13を介して下方に位置する第2の絶縁層13に設けられた第2の金属層15と互いに対向するように形成し、一方、他の第2の金属層15は、上方に位置する他の第2の絶縁層13を介して下方に位置する第2の絶縁層13に設けられた第1の金属層14と互いに対向するように形成する。
【0040】
なお、前記第1の金属層14、第2の金属層15は、印刷によって形成するのではなく、その他の転写、蒸着、めっき、金属板を配設する等の方法によって形成してもよい。
【0041】
次に、上方に位置する他の第1の金属層14、第2の金属層15の上面に、バイア電極16を有する第1の絶縁層11を配置する。このとき、バイア電極16と上方に位置する他の第1の金属層14の一部とを接続する。
【0042】
次に、この第1の絶縁層11の上面に、内部導体12をめっきによって形成する。
【0043】
このとき、内部導体12の他端部12b、すなわち渦巻きの中心部をバイア電極16と接続する。これにより、内部導体12と上方に位置する他の第1の金属層14とがバイア電極16を介して電気的に接続される。
【0044】
なお、内部導体12の形成方法は、別途用意したベース板(図示せず)に所定パターン形状の導体をめっきによって形成し、その後、この導体をグリーンシート状態の第1の絶縁層11に転写することにより形成する。なお、内部導体12は、めっきで形成するのではなく、その他の印刷、蒸着等の方法で形成してもよい。
【0045】
次に、内部導体12の上面に、他の絶縁層17を所定枚数形成し、積層物(図示せず)を得る。
【0046】
また、上記製造工程においては、製造効率を向上させるために、内部導体12、第1の金属層14、第2の金属層15を上述した構成で複数積層した後、各個片に切断するようにして、同時に複数の積層物を得るようにしてもよい。
【0047】
次に、この積層物を所定の温度、時間で焼成し、ノイズフィルタ本体18を形成する。
【0048】
次に、ノイズフィルタ本体18の両端面に、第1、第2の引出電極12a,14aと接続されるように、銀を印刷することによって第1、第2の外部電極19,20を形成し、かつ両側面に第3の引出電極15aと接続されるように、銀を印刷することによって第3の外部電極21を形成する。
【0049】
最後に、第1〜第3の外部電極19〜21の表面にめっきによってニッケルめっき層を形成するとともに、さらにこのニッケルめっき層の表面にめっきによってすずやはんだ等の低融点金属めっき層を形成する。
【0050】
上記した本発明の実施の形態1においては、第2の絶縁層13の同一面に形成される金属層を、第1の金属層14と第2の金属層15の2つに分割しているため、第2の絶縁層13に形成される金属層の面積を小さくでき、これにより、第1、第2の絶縁層11,13がセラミック材料で構成されていても焼成時における第1、第2の金属層14,15と第1、第2の絶縁層11,13との界面の応力を低減できるため、クラックや剥離が発生するのを防止でき、これにより、歩留まりを向上させることができるという優れた効果が得られるものである。
【0051】
また、複数の第2の絶縁層13のそれぞれの上面に、互いに電気的に接続されないように、かつ1つずつ設けられた第1の金属層14と第2の金属層15を備えているため、コンデンサ部における静電容量が、上下方向に対向する内部導体12、第1の金属層14と第2の金属層15との間だけでなく、第2の絶縁層13の同一面に形成され、かつ横方向に対向する第1の金属層14と第2の金属層15との間にも発生することになり、これにより、静電容量が減少することはない。すなわち、第2の絶縁層13の同一面に設けられる金属層を第1の金属層14と第2の金属層15とに分断しても、第1の金属層14と第2の金属層15を上下方向に対向させているため、静電容量が減少することはない。
【0052】
これらの結果、静電容量を減少させることなく、歩留まりを向上させることができる。
【0053】
そしてまた、金属層を第1の金属層14と第2の金属層15とに分断することにより、第1、第2の金属層14,15の上下面に位置する第1、第2の絶縁層11,13同士が接触する面積を大きくすることができるため、第1、第2の金属層14,15が形成された箇所でノイズフィルタが剥離するのを防止することができる。なお、この剥離をさらに確実に防止するためには、第1、第2の金属層14,15に貫通孔やスリットを形成すればよい。
【0054】
さらに、図3に示すように、第1の金属層14と第2の金属層15にそれぞれ凹部14b,15bと凸部14c,15cを形成して、第1の金属層14と第2の金属層15の形状をそれぞれ櫛形にし、そして一方の凹部14b,15bに他方の凸部15c,14cを嵌め込むようにして凹部と凸部を対向するようにすれば、第1の金属層14と第2の金属層15との対向面積を大きくすることができるため、これらの間の静電容量を増加させることができ、これにより、ノイズフィルタのインピーダンスをさらに大きくすることができるものである。
【0055】
さらにまた、図4に示すように、第2の絶縁層13の同一面において、第1の金属層14と第2の金属層15をそれぞれ複数設ければ、同一面において対向する第1の金属層14と第2の金属層15の数を増やすことができるため、第1の金属層14と第2の金属層15との対向面積を大きくでき、これにより、これらの間の静電容量を増加させることができるため、ノイズフィルタのインピーダンスを大きくすることができるものである。
【0056】
なお、説明を簡単にするために、図3、図4は第2の絶縁層13と第1の金属層14、第2の金属層15のみを示している。
【0057】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項5に記載の発明について説明する。
【0058】
図5は本発明の実施の形態2におけるノイズフィルタの分解斜視図である。なお、本発明の実施の形態2において、前述した本発明の実施の形態1の構成と同様の構成を有するものについては、同一符号を付しその説明は省略する。
【0059】
図5において、本発明の実施の形態2が前述した本発明の実施の形態1と相違する点は、内部導体12の一端部12aを下方に位置する第1の金属層14および上方に位置する第2の金属層15と電気的に接続し、かつ内部導体12の他端部12bを上方に位置する第1の金属層14および下方に位置する第2の金属層15と電気的に接続した点である。
【0060】
この場合、上方に位置する第2の金属層15と下方に位置する第1の金属層14は、図2に示す第1の外部電極19を介して内部導体12の一端部12aと電気的に接続し、かつ上方に位置する第1の金属層14と下方に位置する第2の金属層15は、バイア電極16および図2に示す第2の外部電極20を介して内部導体12の他端部12bと電気的に接続する。なお、この場合は、グランド端子となる第3の外部電極21は必要ない。
【0061】
これにより、コンデンサ部を構成する第1の金属層14と第2の金属層15の両方をインダクタ導体である内部導体12と接続することができるため、インダクタ導体とコンデンサ部とを並列に接続したLC並列型のノイズフィルタを形成することができる。この場合は、図6に示すような等価回路となる。
【0062】
また、この本発明の実施の形態2においても、第1の金属層14と第2の金属層15とが上下方向に対向し、かつ第2の絶縁層13の同一面において第1の金属層14と第2の金属層15とが横方向にも対向しているため、静電容量が減少することはない。
【0063】
なお、上記本発明の実施の形態1、2におけるノイズフィルタにおいては、第1の金属層14のうち内部導体12と接続されるのは最上部に位置する第1の金属層14のみとしたが、他の第1の金属層14と接続しても構わない。
【0064】
また、上記本発明の実施の形態1、2におけるノイズフィルタにおいては、第1の金属層14と第2の金属層15をそれぞれ2個設けたものについて説明したが、3個以上でも構わない。この場合、内部導体12の一端部12aと他端部12bには、それぞれ第1の金属層14と第2の金属層15を必ず1個以上接続させる必要がある。
【0065】
(実施の形態3)
以下、実施の形態3を用いて、本発明の特に請求項6に記載の発明について説明する。
【0066】
図7は本発明の実施の形態3におけるノイズフィルタの分解斜視図である。なお、本発明の実施の形態3において、前述した本発明の実施の形態1の構成と同様の構成を有するものについては、同一符号を付しその説明は省略する。
【0067】
図7において、本発明の実施の形態3が前述した本発明の実施の形態1と相違する点は、複数の第1の金属層14を上方に位置する第2の絶縁層13の同一面に設け、かつ複数の第2の金属層15を下方に位置する第2の絶縁層13の同一面に設けた点である。この場合、第1の金属層14同士、第2の金属層15同士はそれぞれ互いに電気的に接続されないようにする。
【0068】
これにより、内部導体12の両端部12a,12bに複数の第1の金属層14を接続することができるため、複数の第2の金属層15をグランドに接続させれば、内部導体12からなるインダクタ導体の両端部に第1の金属層14と第2の金属層15からなるコンデンサ部が接続されたπ型のノイズフィルタを形成することができる。この場合は、図8に示すような等価回路となる。
【0069】
なお、上記本発明の実施の形態1〜3におけるノイズフィルタにおいては、内部導体12、第1の金属層14および第2の金属層15を上下方向に配置して1つのノイズフィルタを構成したものについて説明したが、これらをそれぞれ複数設けて、アレイタイプとしてもよいものである。
【0070】
また、第2の絶縁層13を第1の絶縁層11の下方に設けているが、これとは逆に第2の絶縁層13を第1の絶縁層11の上方に設けてもよいものである。
【0071】
そしてまた、上記本発明の実施の形態3におけるノイズフィルタにおいては、複数の第1の金属層14を上方に位置する第2の絶縁層13に設け、かつ複数の第2の金属層15を下方に位置する第2の絶縁層13に設けているが、これとは逆に複数の第1の金属層14を下方に位置する第2の絶縁層13に設け、かつ複数の第2の金属層15を上方に位置する第2の絶縁層13に設けてもよいものである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係るノイズフィルタは、静電容量を減少させることなく歩留まりを向上させることができ、小型デジタル機器やOA機器、携帯端末、携帯電話、情報機器等のノイズ対策が必要な電子機器等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施の形態1におけるノイズフィルタの分解斜視図
【図2】同ノイズフィルタの斜視図
【図3】同ノイズフィルタの他の例の主要部を示す上面図
【図4】同ノイズフィルタの他の例の主要部を示す上面図
【図5】本発明の実施の形態2におけるノイズフィルタの分解斜視図
【図6】同ノイズフィルタの等価回路図
【図7】本発明の実施の形態3におけるノイズフィルタの分解斜視図
【図8】同ノイズフィルタの等価回路図
【図9】従来のノイズフィルタの分解斜視図
【符号の説明】
【0074】
11 第1の絶縁層
12 内部導体
12a 内部導体の一端部
12b 内部導体の他端部
13 第2の絶縁層
14 第1の金属層
14b 凹部
14c 凸部
15 第2の金属層
15b 凹部
15c 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁層の上面に設けられた内部導体と、前記第1の絶縁層の上方または下方に設けられた複数の第2の絶縁層と、前記複数の第2の絶縁層のそれぞれの同一面に互いに電気的に接続されないように設けられた第1の金属層および第2の金属層とを備え、前記第1の金属層を前記内部導体と電気的に接続するとともに、上下方向に隣接する前記第2の絶縁層に設けられた前記第1の金属層と前記第2の金属層とを前記第2の絶縁層を介して互いに対向させるようにしたノイズフィルタ。
【請求項2】
内部導体を渦巻き状に構成した請求項1記載のノイズフィルタ。
【請求項3】
第2の絶縁層の同一面に設けられた第1の金属層および第2の金属層にそれぞれ凹部と凸部を形成し、かつ一方の凹部と他方の凹部とを互いに対向させるようにした請求項1記載のノイズフィルタ。
【請求項4】
第2の絶縁層の同一面において、第1の金属層および第2の金属層をそれぞれ複数設けた請求項1記載のノイズフィルタ。
【請求項5】
内部導体の一端部を、全ての第1の金属層のうちの一部および全ての第2の金属層のうちの一部と電気的に接続し、かつ前記内部導体の他端部を、残りの第1の金属層および第2の金属層と電気的に接続した請求項1記載のノイズフィルタ。
【請求項6】
第1の絶縁層の上面に設けられた内部導体と、前記第1の絶縁層の上方または下方に設けられた複数の第2の絶縁層と、前記複数の第2の絶縁層のうち一部の第2の絶縁層の同一面に互いに電気的に接続されないように設けられた複数の第1の金属層と、前記複数の第2の絶縁層のうち他の第2の絶縁層の同一面に互いに電気的に接続されないように設けられた複数の第2の金属層とを備え、前記第1の金属層を前記内部導体と電気的に接続するとともに、上下方向に隣接する前記第2の絶縁層に設けられた前記複数の第1の金属層と複数の第2の金属層とを前記第2の絶縁層を介して互いに対向させるようにしたノイズフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−148736(P2006−148736A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338430(P2004−338430)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】