ハイブリッド・エンジンの運転方法
【課題】 エンジンの吸・排気特性や燃焼特性を改善させる事である。
【解決手段】プログラムとクランク角度の信号とから、コンピューターが電動モーターの二種類の運転モードAとBを切り替え、一つの点火時から次の点火時までと同じ長さのクランク角度期間に、一対以上の二種類の運転モード期間を作る。すると、発電期間Bの後期BBと隣接する駆動期間Aの前期AAとの和の時間が、従来例より長くなり、吸気損失量を軽減できる。
【解決手段】プログラムとクランク角度の信号とから、コンピューターが電動モーターの二種類の運転モードAとBを切り替え、一つの点火時から次の点火時までと同じ長さのクランク角度期間に、一対以上の二種類の運転モード期間を作る。すると、発電期間Bの後期BBと隣接する駆動期間Aの前期AAとの和の時間が、従来例より長くなり、吸気損失量を軽減できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの熱効率向上や燃焼特性の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の一サイクルを形成する吸入・圧縮・膨張・排気工程などの工程の一部分の時間を、他の一部分に対して、変化させる事ができなかった。
その為に、内燃機関は、以下の第一から第五までの問題点が解決できなかった。これ以後、吸入・圧縮・膨張・排気工程などの工程を各工程と表記する。
第一から第四までの問題点は、各工程の一部分の時間が短い事によって問題が発生する場合であり、第五の問題点は、各工程の一部分の時間が長い事によって問題が発生する場合である。
【0003】
吸気抵抗に関する第一の問題点を説明する。
図12の吸・排気カムの開弁期間初期M1はリフト・カーブが緩やかで、開弁期間中期以降のM2よりも縦軸方向のリフト量が極端に少ない。その結果、4サイクルエンジンでは、高速回転になるほど、吸気弁の開弁時にはシリンダー内への吸気の流入量が減少して、ピストンの裏のクランクケース内側の圧力よりも、開弁期間初期M1の燃焼室内の圧力は低くなる。すると、ピストンのクランクケース側からピストンの燃焼室側に力が働く。
この状態でピストンは、クランクケース内側からの圧力が加わる方向に逆らって下降し続ける。この為、負の仕事量が増え、吸気抵抗による損失量が増加して、トルクが低下する。
【0004】
山海堂発行の雑誌『内燃機関』1995年11月号・No. 434の90ページに記載されている図1に最大トルク点L1・L2を書き加えた説明図が図11である。この図11の最大トルク点L1・L2よりも高速な回転速度域では、L1・L2よりもトルクが低下している。また、L1・L2に隣接した低速側でトルクカーブが緩やかになる回転域でも、高速回転になるほど、回転速度の増加率に対するトルクの増加率が減少している。
これらのトルクの低下については、第二の問題点で示す排気抵抗による損失量の増加も原因の一つになっている。
【0005】
排気抵抗に関する第二の問題点を説明する。
吸気カムと同様に、排気カムの開弁期間初期もリフト・カーブが緩やかで、開弁期間中期よりも極端にリフト量が少ない。そして、回転速度が高速になるほど、より低い回転時よりも、排気弁の開弁時から排気工程の下死点時までの時間が短くなる。その結果、より低速な回転時よりも、下死点時のシリンダー内圧力値が高くなる。この結果、下死点時直後の排気工程時に、排気抵抗による損失量が増加する。
これに対して、排気バルブの開弁時期を早めると排気抵抗による損失量の増加を制限できるが、この方法は、膨張行程の正の仕事量の期間を短くする事であり、仕事量が減少する。すなわち、排気損失量の減少と仕事量の減少とのトレード・オフの関係にあるので、根本的な解決になっていない。
【0006】
第三の問題点を説明する。
燃焼行程時のエネルギー変換効率は、主に、混合気の燃焼スピードとビストンの下降スピードとによって規定されている。ビストンの下降スピードは燃焼スピードによって規定され、燃焼スピードは燃料供給量によって規定されている。その為に、ビストンの下降スピードだけを遅くする事ができなかった。その為、熱効率を向上できなかった。
第四の問題点を説明する。
2サイクルエンジンでは、高速回転時になるほど、低速回転時よりも混合気量が増加するにもかかわらず、排気口の開口時から掃気口の開口時までの時間が、低速回転時よりも短くなる。そのため、掃気行程開始時のシリンダー内圧力値が低速回転時よりも高くなる。この結果、高速回転時になるほど、掃気流によるシリンダー内の残留排気ガスの掃気効率が低下する。その結果、混合気の充填率が低下し、その分だけトルクが低下する。
【0007】
第五の問題点を説明する。
火花点火式内燃機関では、既燃焼部の燃焼による圧力履歴が高くなり過ぎると、火炎伝播経路の末端部の全てが同時に自己着火する。この時、燃焼室壁に接した消炎層も破壊される為に、燃焼室壁に流入する熱量が増加する。そして、燃焼室壁がメルト・ダウンする。
通常は、この様なノッキングが発生しない様に、圧縮比を低く設定している。この為に、熱効率の向上が制限される。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0008】
本発明の運転方法を行うと、第一から第五までの内燃機関の問題を改善できる。
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、エンジンの吸・排気特性や燃焼特性を改善させる事である。
【課題を解決する為の手段】
【0010】
駆動運転モードと発電運転モードの二種類の運転モードの電気的な切り替えが可能な電動モーターの出力軸とエンジンの出力軸を機械的に結合させる事に加えてエンジンのクランク角度を検出するセンサーからの情報に応じて前記の電気的な切り替えを制御するコンピューターを設けたシリーズ・パラレル方式またはシリーズ方式のハイブリッド・エンジンにおいて、
一つの点火時から次の点火時までと同じ長さのクランク角度の期間中に、予め作成してあるプログラムと前記のクランク角度を検出するセンサーからの情報とによって、前記のコンピューターが一対以上の前記の二種類の運転モードの期間を作る様に電動モーターを制御し、前記のコンピューターが前記の二種類の運転モードの期間の運転を交互に続ける様に電動モーターを制御する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
電動モーター3の駆動運転モードと発電運転モードの切り替えがエンジン1の出力軸の回転に影響を与える様にする目的で、エンジン1のクランクシャフト2またはそれに接続される出力軸の動きと電動モーター3の出力軸の動きを機械的に連結する。図1では二つの出力軸がタイミングベルトで機械的に連結されているが、機械的に連結できれば、連結する方法を限定しない。
電動モーター3は、駆動モーターと発電機を兼ねるものとする。
本発明者の出願である特願2004−003522で示した運転方法はパラレル方式のハイブリッド・エンジンに適用するものであった。これに対して、駆動モーターと発電機を兼ねる電動モーター3と内燃機関とを機械的に結合してあるならば、特願2004−003522で示したハイブリッド・エンジンの運転方法と同様の運転方法をシリーズ・パラレル方式のハイブリッド・エンジンにも適用できる。また、内燃機関と機械的に連結した発電機を駆動モーターと発電機を兼ねるものとするなら、特願2004−003522で示したハイブリッド・エンジンの運転方法をシリーズ方式のハイブリッド・エンジンに適用できる。
そして、駆動運転モードと発電運転モードの切り替えを電子的に制御するコンピューター4とクランク角度を検出するセンサー5を装備する。
【0012】
電動モーター3の基本的な運転方法を説明する。
一つの点火時から次の点火時までと同じ長さのクランク角度の期間中に、予め作成してあるプログラムとクランク角度を検出するセンサー5からの信号とによって、コンピューター4が一対または複数対の駆動・加速運転モード期間と発電運転モード期間とを作る。そして、コンピューター4が、複数のサイクル数にわたって、図2の駆動運転モード期間Aの運転と発電運転モード期間Bの運転を交互に続ける様に電動モーター3を制御する。
すると、或るサイクルを形成する各工程の内の或る一部の期間に電動モーターが行った運転モードを、その運転モードをおこなったタイミングと同じタイミングで、複数のサイクルにわたって再現できる。この事は、気筒数に関わらず再現できる。また、電動モーター3の基本的な運転方法は、単気筒または複数気筒のエンジンに適用できる。"
電動モーター3が発電運転を行う期間は、エンジン1のクランクの回転速度は低下する。また逆に、電動モーター3が駆動運転を行う期間は、エンジン1のクランクの回転速度は増加する。すると、必要な複数のサイクル数にわたって、内燃機関の一サイクルを形成する各工程の一部分の期間の時間とその期間に隣接する他の運転モード期間の時間との割合を変化させる事ができる。
シリーズ方式の場合は、電動モーター3を発電機として使用する。この為、シリーズ方式の場合は、発電運転モード期間Bの割合を駆動運転モード期間Aよりも大きくする。
駆動運転と発電運転を交互に続けている為に、実際には、エンジン1のクランクの回転速度は直前の運転モードの影響を受ける。この事は後に説明する。
また、どのような場合に二種類のモード期間AとBとをどのように設定するかを予めプログラミングしておく。
【0013】
そして、第一から第五までの問題点は、電動モーター3の基本的な運転方法の設定に加えて、次のように設定すれば解決できる。
すなわち、背景技術に記載した問題点の中で1サイクルを形成する各工程の一部分の時間が短い事によって問題が発生する場合には、その問題が発生する期間を時間を長く変更できる後記の期間内に設定すれば、その問題を発生する期間の時間を長く変更できる。また逆に、1サイクルを形成する各工程の一部分の時間が長い事によって問題が発生する場合には、その問題が発生する期間を時間を短く変更できる後記の期間内に設定すれば、その問題を発生する期間の時間を短く変更できる。
上記の設定に関して、第一から第五までの問題点に対応した具体的な設定例は、実施例1から実施例5までで説明する。
【0014】
電動モーター3の基本的な運転方法によって、エンジン1の回転速度がどのように影響を受けるかについて説明する。
図2のIで示す矢印は、時間の経過する方向を示す。
駆動運転モード期間Aの後期AAAにクランクが加速された影響によって、その直後の発電運転モード期間Bの減速効果が打ち消されてしまう。この為、二種類のモード期間AとBとの割合が等しい場合は、水平線Hで示す従来例の時間よりも、発電運転モード期間Bの前期BBBの時間は長くならない。なお、駆動運転モード期間Aの後期AAAには、発電運転モード期間Bの後期BBの減速作用の影響が及ばない。これらの理由により、駆動運転モード期間Aの後期AAAとその直後に隣接する発電運転モード期間Bの前期BBBとの和である間隔の狭い一点鎖線群で示す期間で、従来例よりも時間が短くなる。
ここで言う従来例とは、内燃機関の一サイクルを形成する各工程の一部分の期間の様に短い期間に、電動モーター3を駆動運転モード期間Aと発電運転モード期間Bの様に切り替えて運転しないエンジンの運転方法を行う場合である。
【0015】
発電運転モード期間Bの後期BBにクランクが減速された影響によって、その直後の駆動運転モード期間Aの加速効果が打ち消されてしまう。この為、二種類のモード期間AとBとの割合が等しい場合は、水平線Hで示す従来例の時間よりも、駆動運転モード期間のAの前半AAの時間は短くならない。なお、発電運転モード期間Bの後期BBは、駆動運転モード期間Aの後期の加速作用の影響が及ばない。これらの理由により、発電運転モード期間Bの後期BBとその直後に隣接する駆動運転モード期間Aの前期AAとの和である間隔の広い点線群で示す期間で、従来例より時間が長くなる。
電動モーター3の容量が大きい程、図2の縦軸で示す時間の従来例との偏差量が大きくなる。
【0016】
一つの点火時から次の点火時までと同じ長さのクランク角度の期間は、気筒数によって異なる。従って、電動モーター3の駆動運転モード期間Aと発電運転モード期間Bを足した期間の長さも、気筒数によって異なる。一対の駆動・加速運転モード期間Aと発電運転モード期間Bとを作った場合は、4サイクル式エンジンでは、720°を気筒数で割ったクランク角度の期間であり、単気筒の場合は720°であり、3気筒の場合は240°である。二気筒の場合は例外で、180°または540°になる。また、2サイクル式エンジンでは、360°を気筒数で割ったクランク角度の期間である。
【実施例1】
【0017】
背景技術の第一の問題点を改善する実施例を説明する。
一サイクルを形成する工程の中の一部分の期間に関して本発明の運転方法を使用しない例と同一の期間の時間より時間が長くできる前記の期間内に、4サイクルエンジンの吸気工程の開弁時から開弁期間初期のリフト量の小さな時期までの期間を設定する。
図2の間隔の広い斜線群で示す期間の長さは、気筒数によって決まり、広い斜線群で示す期間と狭い斜線群で示す期間が同じ長さの場合、720°を気筒数で割った値の半分のクランク角度である。
広い斜線群で示す期間をクランク角度で40°とした場合は、1気筒式から9気筒式まで選択できる。また、広い斜線群で示す期間をクランク角度で60°とした場合は、1気筒式から6気筒式まで選択できる。
【0018】
一例として、4サイクル4気筒式の場合を図4で説明する。
図4の右方向に時間が流れる。そして、図4の下方向に同一時間の他の気筒の工程が第一気筒から順に示されている。
円周の0時方向の丸で表す地点は、吸気上死点を表し、円周の0時方向の二重丸で表す地点は、圧縮上死点を表す。
円周の6時方向の丸で表す地点は、吸気下死点を表し、円周の6時方向の二重丸で表す地点は、排気下死点を表す。
吸気カムのリフト量の小さな期間を、41Aに示す第一気筒の吸気工程の開始時から吸気工程の上死点後25°までの期間Cと仮定する。一般的に、吸気工程の開始時は吸気上死点前5°付近である。この仮定した期間は、クランク角度で約30°である。そして、図2の二種類のモード期間AとBとが等しいとすると、4気筒式では、間隔の広い斜線群で示す期間はクランク角度で約90°である。
【0019】
前記の仮定では、発電運転モード期間Bの終了時期Fが吸気工程の上死点後10°である場合に、図2の縦軸の時間の偏差量が最も大きくなる。この場合、図2の縦軸の時間が長くなり始める時点は、すなわち発電運転モード期間Bの中間点は、吸気工程の上死点後10°から前記の90°の半分の45°手前の、吸気上死点前35°である。図2の縦軸の時間が長くなっている期間の最後の時点は、すなわち駆動運転モード期間Aの中間点は、吸気上死点後10°から45°後の、吸気上死点後55°である。
発電運転モード期間Bの終了時期Fは、吸気工程の上死点前50°から吸気工程の上死点後70°までのクランク角度の期間とその期間が180°移動した期間の内から選べる。
他の気筒式の発電運転モード期間Bの終了時期Fや駆動運転モード期間Aの終了時期Gも、4気筒式の場合を参照して決定できる。この為、説明は省略する。
【0020】
第一の問題点を解決する実施例の作用を説明する。
電動モーター3の発電の進行に伴って、負荷が増して、クランク・スピードが遅くなる。すると、開弁期間初期のリフト量の小さな期間の時間が長くなる。すると、発電の終了時のシリンダー内圧力値が本発明の運転方法を使用しない例よりも高くなる。すると、ピストンの裏側からの圧力に逆らってピストンが下降する時の、負の仕事量が従来例よりも減少する。すると、吸気損失量が減少する。
この実施例の効果を説明する。
吸気損失量の減少分だけ、トルクが本発明の運転方法を使用しない例よりも向上する。しかも、このトルクの向上率は、高速化するほど良くなる。
また、本実施例は、4サイクルエンジンなら、火花点火式にも圧縮着火式のエンジンにも適用できる。
【0021】
第一の問題点を改善する実施例の説明を追加する。
偶数気筒の場合は、一つの気筒の吸入工程初期と他の気筒の燃焼工程が同じ時間になってしまう。
4気筒式の場合では、図4の41Bと同じ時期に、第三気筒を示す43Bは吸入工程の上死点後10°である。
図4の41Bに示す燃焼工程D時点の第一気筒は、1サイクル中で最もクランクシャフトの回転を加速して、同時に、吸気カムのリフト量の小さな期間43Bにある第三気筒も加速させる。この為に、4気筒式では、本実施例の作用を制限してしまう。
4気筒以外の偶数気筒の場合も発生する。6気筒式では図6の61Bの期間Dと64Bの期間Dで、また8気筒式では図8の81Bの期間Dと85Bの期間Dで、第一気筒の燃焼工程と同じ時間に吸入工程の初期の気筒が存在する。また、他の偶数気筒式でも、同様の事が存在する。
2気筒式の場合は例外であり、2気筒目が180°遅れるタイプと540°遅れるタイプとがあるが、どちらも2気筒目が吸入工程初期ではない。また、2気筒式の図は、4気筒式の図で代用できるので、省略する。
【0022】
偶数気筒式を採用した場合の問題点の解決策は、奇数気筒式を採用することである。
3気筒式の例では、図3の第一気筒31Bの燃焼工程と同じ時間の期間Dは、32Bに示す第二気筒の排気工程の中期と33Bに示す吸入工程の中期とであり、吸気工程の初期と燃焼工程が重なる気筒がない。
同様に、5気筒式では54Bに示す第四気筒は吸入工程の中期であり、7気筒式では75Bに示す第五気筒は吸入工程の中期であり、76Bに示す第六気筒は吸入工程の後期であり、各気筒式の吸入工程の初期と燃焼工程が重なる気筒がない事が示されている。また、他の奇数気筒式も同様である。この為に、発電運転モード期間に、偶数気筒式よりも、吸気損失量を減少させる効果が大きい。
第一から第五までの問題点を改善する実施例では、二種類のモード期間AとBと設定する期間がそれぞれ異なる。従って、第一から第五までの問題点を解決する実施例を併用する場合には、二種類のモード期間AとBとの割合を変更したり位相をずらしたりする事が有効な手段になる。
【実施例2】
【0023】
第二の問題点を改善する実施例を説明する。
一サイクルを形成する工程の中の一部分の期間に関して本発明の運転方法を使用しない例と同一の期間の時間より時間が長くできる前記の期間内に、排気工程の開弁時から排気工程の下死点時付近までを設定する。
一例として、4サイクル4気筒式の場合を説明する。
4気筒式では、図2の間隔の広い斜線群で示す期間は、クランク角度で約90°である。
排気弁の開弁時を排気工程の下死点前40°とすると、図2の縦軸方向の時間の偏差量が最も大きくなる発電運転モード期間Bの終了時期Fが図4の41Cの期間Eの中間時の排気工程の下死点前20°である場合に、効果が大きくなる。そして発電運転モード期間Bの終了時期Fは、排気工程の下死点前85°から排気工程の下死点後45°までのクランク角度の期間とその期間が180°移動した期間の内から選べる。
なお、この実施例を行うエンジンは、ピストンを持つ4サイクル式なら、火花点火式でも圧縮着火式でも適用できる。
【0024】
この実施例の作用を説明する。
上記の様に設定した期間では、発電の進行に伴って、クランク軸の回転スピードが遅くなり、ピストンのスピードも減速する。すると、排気弁の開弁開始時から下死点時までの期間の時間が長くなる。すると、膨張行程の期間を短くする事無しに、下死点時のシリンダー内圧力値が従来例よりも低下して、下死点時以降にピストンを上昇させる事で発生する排気損失量が減少する。
第二の実施例の効果を説明する。
排気損失量の減少分だけ、トルクが従来例よりも向上する。しかも、このトルクの向上率は、高速化するほど良くなる。そして、トルクの向上は、ハイブリッド・エンジンの中のエンジン部の変換効率の向上を意味する。
図2の間隔の広い斜線群で示す期間は、気筒数によって決まる。排気弁の開弁時を圧縮上死点後140°とすると、720°を排気下死点までの期間40°で割った値の半分は9である。従って、1気筒式から9気筒式までに本実施例を適用した場合は、充分な効果を得られるが、9よりも大きな数の気筒式では、時間が長くなる期間が40°未満になってしまい、1気筒式から9気筒式よりも効果が制限される。
この実施例も、第一の問題点を解決する実施例と同様に、問題にしている期間と他のシリンダーの燃焼によって加速される期間とが同一時間に並列に存在する気筒式では、効果が制限される。
【0025】
第二の実施例の説明を追加する。
2気筒式では膨張下死点時付近で、図3気筒式では図3の32Bに示す様に膨張下死点後50°付近で、4気筒式では図4の42Bに示す様に膨張下死点時付近で、図5気筒式では図5の52Bに示す様に圧縮上死点後154°付近で、6気筒式では62Bに示す様に圧縮上死点後130°付近で、図7気筒式では図7の72Bに示す様に圧縮上死点後113°付近で、8気筒式では図8の82Bと83Bに示す様に圧縮上死点後100°付近と圧縮上死点後190°付近で、9気筒式では圧縮上死点後90°付近と圧縮上死点後170°付近で、他のシリンダーの燃焼工程によって排気工程の気筒が急速に加速される。
従って、5気筒式と9気筒式では、効果が制限されてしまう。2気筒式と4気筒式でも、効果が少し制限されてしまう。
【実施例3】
【0026】
背景技術の第三の問題点を改善する実施例について、説明する。
一サイクルを形成する工程の中の一部分の期間に関して本発明の運転方法を使用しない例と同一の期間の時間より時間が長くできる前記の期間内に、エンジンの燃焼行程の期間を設定する。
この実施例を行うエンジンは、4サイクル式でも2サイクル式でも適用でき、火花点火式でも圧縮着火式でも適用できる。
この実施例では、第一および第二の問題点を解決する実施例の様な、気筒式によって効果が制限される事は無い。
この実施例の作用を説明する。
上記の様に減速時期を設定すると、燃焼行程でクランク軸の回転スピードが加速される時期であっても、発電の進行に伴って、負荷が増して、クランク軸の回転スピードが遅くなり、ピストンの下降スピードも減速する。すると、ピストンの下降による燃焼圧力値の減少要因が減って、従来例よりも燃焼行程時のシリンダー内の圧力値が増加する。
【0027】
この実施例の効果を説明する。
燃焼行程時のシリンダー内の圧力値が増加する分だけ、トルクが従来例よりも向上する。そして、トルクの向上は、ハイブリッド・エンジンの中のエンジン部の変換効率の向上を意味する。
また、燃料供給量以外に、燃焼行程時のエネルギー変換効率を支配する要素を持つ事になる。
高負荷時は燃焼スピードが早くなり過ぎてノッキングが発生し易いので、この実施例を適用できない。従って、高負荷時以外の場合に効果が挙がる。
なお、高負荷時には、第五の実施例を適用すると良い。
【実施例4】
【0028】
背景技術の第四の問題点を改善する実施例を説明する。
一サイクルを形成する工程の中の一部分の期間に関して本発明の運転方法を使用しない例と同一の期間の時間より時間が長くできる前記の期間内に、2サイクルエンジンの排気口の開口時から掃気口の開口時までの期間を設定する。
この実施例を行うエンジンは、火花点火式でも圧縮着火式でも適用できる。
一例として、2サイクル2気筒式の場合を図9で説明する。
円周の0時方向の丸で表す地点は、上死点である。
円周の6時方向の丸で表す地点は、下死点を表す。
図2の間隔の広い斜線群で示す期間は、クランク角度で約180°である。
発電運転モード期間Bの終了時期Fが排気口の開口時から掃気口の開口時までの中間点である場合に、効果が大きくなる。そして発電運転モード期間Bの終了時期Fは、排気口の開口時の90°前から排気口の開口時の90°後までのクランク角度の期間とその期間が180°移動した期間の内から選べる。
燃焼工程Dにある第一気筒121Aは、同じ時間に下死点直後の掃気工程の期間Dにある第2気筒122Aも一緒に加速させるが、直前の時期である下死点前の排気工程Hの期間にある第2気筒122Bを加速させない。
【0029】
他の一例として、2サイクル3気筒式の場合を図10で説明する。
131AのDに示す第一気筒の燃焼工程と同じ時間の第2気筒の132AのDに示す期間は、下死点前の排気工程の開始時期に近い。従って、3気筒式では、この実施例の効果が制限される。
第四の問題点を解決する実施例の作用と効果を説明する。
上記の様に減速時期を設定すると、排気口の開口時から掃気口の開口時までの時間が、従来例よりも長くなる。そのため、掃気行程開始時のシリンダー内圧力値が従来例よりも低くなる。この結果、高負荷になるほど、従来例よりも掃気流によるシリンダー内の残留排気ガスの掃気効率と混合気の充填率が向上し、その分だけトルクが向上する。
【実施例5】
【0030】
背景技術の第五の問題点を改善する実施例を説明する。
発電運転モード期間Bの後期の減速作用の影響によってその直後に行う駆動運転モード期間の加速効果が打ち消される駆動運転モード期間前期を除いた駆動運転モード期間と駆動運転モード期間Aの加速作用の影響によってその直後に減速効果を打ち消してしまう発電運転モード期間前期との和である期間内に、4サイクル火花点火式エンジンの高負荷時の燃焼継続期間を設定する。
第一の問題点を解決する実施例を参考にすれば、各気筒式の駆動運転モード期間Aの終了時期Gや発電運転モード期間Bの終了時期Fは決定できる。
一例として、4サイクル4気筒式の場合を説明する。
4気筒式では、前記の図2の間隔の狭い斜線群で示す期間は、クランク角度で約90°である。
駆動運転モード期間Aの終了時期Gが図4のDで示す燃焼継続期間の中間点である場合に、効果が大きくなる。そして駆動運転モード期間Aの終了時期Gは、圧縮工程の上死点前40°から圧縮工程の上死点後50°までのクランク角度の期間内から選べる。
本実施例と第三の問題点を解決する実施例とは相反する。しかし二つの実施例は適用する負荷時が異なり、本実施例は高負荷時に適用され、第三の問題点を解決する実施例は高負荷時以外に適用される。
【0031】
第五の問題点を解決する実施例の作用を説明する。
上記の様に設定すると、毎分当たりの回転数が同じ従来例の場合に比べて、燃焼工程時のクランク軸の回転速度を加速できる。この結果、ピストンが下降する事で燃焼室容積が増加する事による圧力の減少要素が増加して、高速に加速する程、ノッキングが発生し難くなる。
第五の問題点を解決する実施例の効果を説明する。
その結果、従来よりも多くの混合気をノッキング無しに燃焼できる。従って、高速時のトルクが向上する。
また、毎分当たりの回転数が従来例よりも低い回転域で、耐ノッキング性の改善が得られる。
この実施例は、加速に関する時期を決めているのであるから、気筒式によって効果が制限されてしまうという事は無い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】電動モーターとエンジンの出力軸を機械的に結ぶ事を示したハイブリッド・エンジンの概念図である。
【図2】電動モーターによってクランク軸を駆動する期間・発電運転する期間と実際に従来例より時間が短くなる期間・長くなる期間との関係を説明する図で、本発明のすべての実施例を共通に説明する図である。
【図3】本発明の第一から第五までの実施例を説明する円図群で、第一気筒の工程の進行に伴って各シリンダーがどの工程にあるのかをクランク角度で示してあって、左側のA列は第一の問題点を解決する実施例を示し、中央のB列は第三と第五の問題点を解決する実施例を示し、右側のC列は第二の問題点を解決する実施例を示し、一番上の一行目は第一気筒を示し、二行目は第二気筒を示し、図3は4サイクル3気筒式に適用した場合の円図である。
【図4】図3とほぼ同様の説明図で、相違点は4サイクル4気筒式に適用した点である。
【図5】図3とほぼ同様の説明図で、相違点は4サイクル5気筒式に適用した点である。
【図6】図3とほぼ同様の説明図で、相違点は4サイクル6気筒式に適用した点である。
【図7】図3とほぼ同様の説明図で、相違点は4サイクル7気筒式に適用した点である。
【図8】図3とほぼ同様の説明図で、相違点は4サイクル8気筒式に適用した点である。
【図9】本発明の第四の実施例を説明した円図群で、左側のA列は第一気筒の燃焼行程時と同じ時間の各気筒の工程を示し、右側のB列は第一気筒の燃焼行程時直後と同じ時間の各気筒の工程を示し、2サイクル2気筒式に適用した場合の円図である。
【図10】図9とほぼ同様の説明図で、相違点は2サイクル3気筒式に適用した点である。
【図11】3RZ-FEエンジンと22R-Eエンジンの出力とトルクを示す従来例の図。
【図12】吸・排気カムのリフト・カーブを示す従来例の図。
【符号の説明】
【0033】
1 エンジン
2 クランクシャフト
3 電動モーター
4 コンピューター
5 クランク角度を検出するセンサー
A Bに隣接する図2の駆動・加速運転モード期間
AA 駆動運転モード期間Aの前期
AAA 駆動運転モード期間Aの後期
B Aに隣接する図2の発電運転モード期間
BB 発電運転モード期間Bの後期
BBB 発電運転モード期間Bの前期
D 燃焼工程と同じ時間の全ての気筒の工程
F 図2の発電運転モード期間の終了時期
G 図2の駆動運転モード期間の終了時期
H 図2の従来例との時間の偏差量を示す基準になる水平線
I 図2の時間の経過する方向を示す矢印
L1 3RZ-FEエンジンの最大トルク値
L2 22R-Eエンジンの最大トルク値
M1 図12の吸・排気カムの開弁期間初期
M2 図12の吸・排気カムの開弁期間中期
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの熱効率向上や燃焼特性の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の一サイクルを形成する吸入・圧縮・膨張・排気工程などの工程の一部分の時間を、他の一部分に対して、変化させる事ができなかった。
その為に、内燃機関は、以下の第一から第五までの問題点が解決できなかった。これ以後、吸入・圧縮・膨張・排気工程などの工程を各工程と表記する。
第一から第四までの問題点は、各工程の一部分の時間が短い事によって問題が発生する場合であり、第五の問題点は、各工程の一部分の時間が長い事によって問題が発生する場合である。
【0003】
吸気抵抗に関する第一の問題点を説明する。
図12の吸・排気カムの開弁期間初期M1はリフト・カーブが緩やかで、開弁期間中期以降のM2よりも縦軸方向のリフト量が極端に少ない。その結果、4サイクルエンジンでは、高速回転になるほど、吸気弁の開弁時にはシリンダー内への吸気の流入量が減少して、ピストンの裏のクランクケース内側の圧力よりも、開弁期間初期M1の燃焼室内の圧力は低くなる。すると、ピストンのクランクケース側からピストンの燃焼室側に力が働く。
この状態でピストンは、クランクケース内側からの圧力が加わる方向に逆らって下降し続ける。この為、負の仕事量が増え、吸気抵抗による損失量が増加して、トルクが低下する。
【0004】
山海堂発行の雑誌『内燃機関』1995年11月号・No. 434の90ページに記載されている図1に最大トルク点L1・L2を書き加えた説明図が図11である。この図11の最大トルク点L1・L2よりも高速な回転速度域では、L1・L2よりもトルクが低下している。また、L1・L2に隣接した低速側でトルクカーブが緩やかになる回転域でも、高速回転になるほど、回転速度の増加率に対するトルクの増加率が減少している。
これらのトルクの低下については、第二の問題点で示す排気抵抗による損失量の増加も原因の一つになっている。
【0005】
排気抵抗に関する第二の問題点を説明する。
吸気カムと同様に、排気カムの開弁期間初期もリフト・カーブが緩やかで、開弁期間中期よりも極端にリフト量が少ない。そして、回転速度が高速になるほど、より低い回転時よりも、排気弁の開弁時から排気工程の下死点時までの時間が短くなる。その結果、より低速な回転時よりも、下死点時のシリンダー内圧力値が高くなる。この結果、下死点時直後の排気工程時に、排気抵抗による損失量が増加する。
これに対して、排気バルブの開弁時期を早めると排気抵抗による損失量の増加を制限できるが、この方法は、膨張行程の正の仕事量の期間を短くする事であり、仕事量が減少する。すなわち、排気損失量の減少と仕事量の減少とのトレード・オフの関係にあるので、根本的な解決になっていない。
【0006】
第三の問題点を説明する。
燃焼行程時のエネルギー変換効率は、主に、混合気の燃焼スピードとビストンの下降スピードとによって規定されている。ビストンの下降スピードは燃焼スピードによって規定され、燃焼スピードは燃料供給量によって規定されている。その為に、ビストンの下降スピードだけを遅くする事ができなかった。その為、熱効率を向上できなかった。
第四の問題点を説明する。
2サイクルエンジンでは、高速回転時になるほど、低速回転時よりも混合気量が増加するにもかかわらず、排気口の開口時から掃気口の開口時までの時間が、低速回転時よりも短くなる。そのため、掃気行程開始時のシリンダー内圧力値が低速回転時よりも高くなる。この結果、高速回転時になるほど、掃気流によるシリンダー内の残留排気ガスの掃気効率が低下する。その結果、混合気の充填率が低下し、その分だけトルクが低下する。
【0007】
第五の問題点を説明する。
火花点火式内燃機関では、既燃焼部の燃焼による圧力履歴が高くなり過ぎると、火炎伝播経路の末端部の全てが同時に自己着火する。この時、燃焼室壁に接した消炎層も破壊される為に、燃焼室壁に流入する熱量が増加する。そして、燃焼室壁がメルト・ダウンする。
通常は、この様なノッキングが発生しない様に、圧縮比を低く設定している。この為に、熱効率の向上が制限される。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0008】
本発明の運転方法を行うと、第一から第五までの内燃機関の問題を改善できる。
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、エンジンの吸・排気特性や燃焼特性を改善させる事である。
【課題を解決する為の手段】
【0010】
駆動運転モードと発電運転モードの二種類の運転モードの電気的な切り替えが可能な電動モーターの出力軸とエンジンの出力軸を機械的に結合させる事に加えてエンジンのクランク角度を検出するセンサーからの情報に応じて前記の電気的な切り替えを制御するコンピューターを設けたシリーズ・パラレル方式またはシリーズ方式のハイブリッド・エンジンにおいて、
一つの点火時から次の点火時までと同じ長さのクランク角度の期間中に、予め作成してあるプログラムと前記のクランク角度を検出するセンサーからの情報とによって、前記のコンピューターが一対以上の前記の二種類の運転モードの期間を作る様に電動モーターを制御し、前記のコンピューターが前記の二種類の運転モードの期間の運転を交互に続ける様に電動モーターを制御する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
電動モーター3の駆動運転モードと発電運転モードの切り替えがエンジン1の出力軸の回転に影響を与える様にする目的で、エンジン1のクランクシャフト2またはそれに接続される出力軸の動きと電動モーター3の出力軸の動きを機械的に連結する。図1では二つの出力軸がタイミングベルトで機械的に連結されているが、機械的に連結できれば、連結する方法を限定しない。
電動モーター3は、駆動モーターと発電機を兼ねるものとする。
本発明者の出願である特願2004−003522で示した運転方法はパラレル方式のハイブリッド・エンジンに適用するものであった。これに対して、駆動モーターと発電機を兼ねる電動モーター3と内燃機関とを機械的に結合してあるならば、特願2004−003522で示したハイブリッド・エンジンの運転方法と同様の運転方法をシリーズ・パラレル方式のハイブリッド・エンジンにも適用できる。また、内燃機関と機械的に連結した発電機を駆動モーターと発電機を兼ねるものとするなら、特願2004−003522で示したハイブリッド・エンジンの運転方法をシリーズ方式のハイブリッド・エンジンに適用できる。
そして、駆動運転モードと発電運転モードの切り替えを電子的に制御するコンピューター4とクランク角度を検出するセンサー5を装備する。
【0012】
電動モーター3の基本的な運転方法を説明する。
一つの点火時から次の点火時までと同じ長さのクランク角度の期間中に、予め作成してあるプログラムとクランク角度を検出するセンサー5からの信号とによって、コンピューター4が一対または複数対の駆動・加速運転モード期間と発電運転モード期間とを作る。そして、コンピューター4が、複数のサイクル数にわたって、図2の駆動運転モード期間Aの運転と発電運転モード期間Bの運転を交互に続ける様に電動モーター3を制御する。
すると、或るサイクルを形成する各工程の内の或る一部の期間に電動モーターが行った運転モードを、その運転モードをおこなったタイミングと同じタイミングで、複数のサイクルにわたって再現できる。この事は、気筒数に関わらず再現できる。また、電動モーター3の基本的な運転方法は、単気筒または複数気筒のエンジンに適用できる。"
電動モーター3が発電運転を行う期間は、エンジン1のクランクの回転速度は低下する。また逆に、電動モーター3が駆動運転を行う期間は、エンジン1のクランクの回転速度は増加する。すると、必要な複数のサイクル数にわたって、内燃機関の一サイクルを形成する各工程の一部分の期間の時間とその期間に隣接する他の運転モード期間の時間との割合を変化させる事ができる。
シリーズ方式の場合は、電動モーター3を発電機として使用する。この為、シリーズ方式の場合は、発電運転モード期間Bの割合を駆動運転モード期間Aよりも大きくする。
駆動運転と発電運転を交互に続けている為に、実際には、エンジン1のクランクの回転速度は直前の運転モードの影響を受ける。この事は後に説明する。
また、どのような場合に二種類のモード期間AとBとをどのように設定するかを予めプログラミングしておく。
【0013】
そして、第一から第五までの問題点は、電動モーター3の基本的な運転方法の設定に加えて、次のように設定すれば解決できる。
すなわち、背景技術に記載した問題点の中で1サイクルを形成する各工程の一部分の時間が短い事によって問題が発生する場合には、その問題が発生する期間を時間を長く変更できる後記の期間内に設定すれば、その問題を発生する期間の時間を長く変更できる。また逆に、1サイクルを形成する各工程の一部分の時間が長い事によって問題が発生する場合には、その問題が発生する期間を時間を短く変更できる後記の期間内に設定すれば、その問題を発生する期間の時間を短く変更できる。
上記の設定に関して、第一から第五までの問題点に対応した具体的な設定例は、実施例1から実施例5までで説明する。
【0014】
電動モーター3の基本的な運転方法によって、エンジン1の回転速度がどのように影響を受けるかについて説明する。
図2のIで示す矢印は、時間の経過する方向を示す。
駆動運転モード期間Aの後期AAAにクランクが加速された影響によって、その直後の発電運転モード期間Bの減速効果が打ち消されてしまう。この為、二種類のモード期間AとBとの割合が等しい場合は、水平線Hで示す従来例の時間よりも、発電運転モード期間Bの前期BBBの時間は長くならない。なお、駆動運転モード期間Aの後期AAAには、発電運転モード期間Bの後期BBの減速作用の影響が及ばない。これらの理由により、駆動運転モード期間Aの後期AAAとその直後に隣接する発電運転モード期間Bの前期BBBとの和である間隔の狭い一点鎖線群で示す期間で、従来例よりも時間が短くなる。
ここで言う従来例とは、内燃機関の一サイクルを形成する各工程の一部分の期間の様に短い期間に、電動モーター3を駆動運転モード期間Aと発電運転モード期間Bの様に切り替えて運転しないエンジンの運転方法を行う場合である。
【0015】
発電運転モード期間Bの後期BBにクランクが減速された影響によって、その直後の駆動運転モード期間Aの加速効果が打ち消されてしまう。この為、二種類のモード期間AとBとの割合が等しい場合は、水平線Hで示す従来例の時間よりも、駆動運転モード期間のAの前半AAの時間は短くならない。なお、発電運転モード期間Bの後期BBは、駆動運転モード期間Aの後期の加速作用の影響が及ばない。これらの理由により、発電運転モード期間Bの後期BBとその直後に隣接する駆動運転モード期間Aの前期AAとの和である間隔の広い点線群で示す期間で、従来例より時間が長くなる。
電動モーター3の容量が大きい程、図2の縦軸で示す時間の従来例との偏差量が大きくなる。
【0016】
一つの点火時から次の点火時までと同じ長さのクランク角度の期間は、気筒数によって異なる。従って、電動モーター3の駆動運転モード期間Aと発電運転モード期間Bを足した期間の長さも、気筒数によって異なる。一対の駆動・加速運転モード期間Aと発電運転モード期間Bとを作った場合は、4サイクル式エンジンでは、720°を気筒数で割ったクランク角度の期間であり、単気筒の場合は720°であり、3気筒の場合は240°である。二気筒の場合は例外で、180°または540°になる。また、2サイクル式エンジンでは、360°を気筒数で割ったクランク角度の期間である。
【実施例1】
【0017】
背景技術の第一の問題点を改善する実施例を説明する。
一サイクルを形成する工程の中の一部分の期間に関して本発明の運転方法を使用しない例と同一の期間の時間より時間が長くできる前記の期間内に、4サイクルエンジンの吸気工程の開弁時から開弁期間初期のリフト量の小さな時期までの期間を設定する。
図2の間隔の広い斜線群で示す期間の長さは、気筒数によって決まり、広い斜線群で示す期間と狭い斜線群で示す期間が同じ長さの場合、720°を気筒数で割った値の半分のクランク角度である。
広い斜線群で示す期間をクランク角度で40°とした場合は、1気筒式から9気筒式まで選択できる。また、広い斜線群で示す期間をクランク角度で60°とした場合は、1気筒式から6気筒式まで選択できる。
【0018】
一例として、4サイクル4気筒式の場合を図4で説明する。
図4の右方向に時間が流れる。そして、図4の下方向に同一時間の他の気筒の工程が第一気筒から順に示されている。
円周の0時方向の丸で表す地点は、吸気上死点を表し、円周の0時方向の二重丸で表す地点は、圧縮上死点を表す。
円周の6時方向の丸で表す地点は、吸気下死点を表し、円周の6時方向の二重丸で表す地点は、排気下死点を表す。
吸気カムのリフト量の小さな期間を、41Aに示す第一気筒の吸気工程の開始時から吸気工程の上死点後25°までの期間Cと仮定する。一般的に、吸気工程の開始時は吸気上死点前5°付近である。この仮定した期間は、クランク角度で約30°である。そして、図2の二種類のモード期間AとBとが等しいとすると、4気筒式では、間隔の広い斜線群で示す期間はクランク角度で約90°である。
【0019】
前記の仮定では、発電運転モード期間Bの終了時期Fが吸気工程の上死点後10°である場合に、図2の縦軸の時間の偏差量が最も大きくなる。この場合、図2の縦軸の時間が長くなり始める時点は、すなわち発電運転モード期間Bの中間点は、吸気工程の上死点後10°から前記の90°の半分の45°手前の、吸気上死点前35°である。図2の縦軸の時間が長くなっている期間の最後の時点は、すなわち駆動運転モード期間Aの中間点は、吸気上死点後10°から45°後の、吸気上死点後55°である。
発電運転モード期間Bの終了時期Fは、吸気工程の上死点前50°から吸気工程の上死点後70°までのクランク角度の期間とその期間が180°移動した期間の内から選べる。
他の気筒式の発電運転モード期間Bの終了時期Fや駆動運転モード期間Aの終了時期Gも、4気筒式の場合を参照して決定できる。この為、説明は省略する。
【0020】
第一の問題点を解決する実施例の作用を説明する。
電動モーター3の発電の進行に伴って、負荷が増して、クランク・スピードが遅くなる。すると、開弁期間初期のリフト量の小さな期間の時間が長くなる。すると、発電の終了時のシリンダー内圧力値が本発明の運転方法を使用しない例よりも高くなる。すると、ピストンの裏側からの圧力に逆らってピストンが下降する時の、負の仕事量が従来例よりも減少する。すると、吸気損失量が減少する。
この実施例の効果を説明する。
吸気損失量の減少分だけ、トルクが本発明の運転方法を使用しない例よりも向上する。しかも、このトルクの向上率は、高速化するほど良くなる。
また、本実施例は、4サイクルエンジンなら、火花点火式にも圧縮着火式のエンジンにも適用できる。
【0021】
第一の問題点を改善する実施例の説明を追加する。
偶数気筒の場合は、一つの気筒の吸入工程初期と他の気筒の燃焼工程が同じ時間になってしまう。
4気筒式の場合では、図4の41Bと同じ時期に、第三気筒を示す43Bは吸入工程の上死点後10°である。
図4の41Bに示す燃焼工程D時点の第一気筒は、1サイクル中で最もクランクシャフトの回転を加速して、同時に、吸気カムのリフト量の小さな期間43Bにある第三気筒も加速させる。この為に、4気筒式では、本実施例の作用を制限してしまう。
4気筒以外の偶数気筒の場合も発生する。6気筒式では図6の61Bの期間Dと64Bの期間Dで、また8気筒式では図8の81Bの期間Dと85Bの期間Dで、第一気筒の燃焼工程と同じ時間に吸入工程の初期の気筒が存在する。また、他の偶数気筒式でも、同様の事が存在する。
2気筒式の場合は例外であり、2気筒目が180°遅れるタイプと540°遅れるタイプとがあるが、どちらも2気筒目が吸入工程初期ではない。また、2気筒式の図は、4気筒式の図で代用できるので、省略する。
【0022】
偶数気筒式を採用した場合の問題点の解決策は、奇数気筒式を採用することである。
3気筒式の例では、図3の第一気筒31Bの燃焼工程と同じ時間の期間Dは、32Bに示す第二気筒の排気工程の中期と33Bに示す吸入工程の中期とであり、吸気工程の初期と燃焼工程が重なる気筒がない。
同様に、5気筒式では54Bに示す第四気筒は吸入工程の中期であり、7気筒式では75Bに示す第五気筒は吸入工程の中期であり、76Bに示す第六気筒は吸入工程の後期であり、各気筒式の吸入工程の初期と燃焼工程が重なる気筒がない事が示されている。また、他の奇数気筒式も同様である。この為に、発電運転モード期間に、偶数気筒式よりも、吸気損失量を減少させる効果が大きい。
第一から第五までの問題点を改善する実施例では、二種類のモード期間AとBと設定する期間がそれぞれ異なる。従って、第一から第五までの問題点を解決する実施例を併用する場合には、二種類のモード期間AとBとの割合を変更したり位相をずらしたりする事が有効な手段になる。
【実施例2】
【0023】
第二の問題点を改善する実施例を説明する。
一サイクルを形成する工程の中の一部分の期間に関して本発明の運転方法を使用しない例と同一の期間の時間より時間が長くできる前記の期間内に、排気工程の開弁時から排気工程の下死点時付近までを設定する。
一例として、4サイクル4気筒式の場合を説明する。
4気筒式では、図2の間隔の広い斜線群で示す期間は、クランク角度で約90°である。
排気弁の開弁時を排気工程の下死点前40°とすると、図2の縦軸方向の時間の偏差量が最も大きくなる発電運転モード期間Bの終了時期Fが図4の41Cの期間Eの中間時の排気工程の下死点前20°である場合に、効果が大きくなる。そして発電運転モード期間Bの終了時期Fは、排気工程の下死点前85°から排気工程の下死点後45°までのクランク角度の期間とその期間が180°移動した期間の内から選べる。
なお、この実施例を行うエンジンは、ピストンを持つ4サイクル式なら、火花点火式でも圧縮着火式でも適用できる。
【0024】
この実施例の作用を説明する。
上記の様に設定した期間では、発電の進行に伴って、クランク軸の回転スピードが遅くなり、ピストンのスピードも減速する。すると、排気弁の開弁開始時から下死点時までの期間の時間が長くなる。すると、膨張行程の期間を短くする事無しに、下死点時のシリンダー内圧力値が従来例よりも低下して、下死点時以降にピストンを上昇させる事で発生する排気損失量が減少する。
第二の実施例の効果を説明する。
排気損失量の減少分だけ、トルクが従来例よりも向上する。しかも、このトルクの向上率は、高速化するほど良くなる。そして、トルクの向上は、ハイブリッド・エンジンの中のエンジン部の変換効率の向上を意味する。
図2の間隔の広い斜線群で示す期間は、気筒数によって決まる。排気弁の開弁時を圧縮上死点後140°とすると、720°を排気下死点までの期間40°で割った値の半分は9である。従って、1気筒式から9気筒式までに本実施例を適用した場合は、充分な効果を得られるが、9よりも大きな数の気筒式では、時間が長くなる期間が40°未満になってしまい、1気筒式から9気筒式よりも効果が制限される。
この実施例も、第一の問題点を解決する実施例と同様に、問題にしている期間と他のシリンダーの燃焼によって加速される期間とが同一時間に並列に存在する気筒式では、効果が制限される。
【0025】
第二の実施例の説明を追加する。
2気筒式では膨張下死点時付近で、図3気筒式では図3の32Bに示す様に膨張下死点後50°付近で、4気筒式では図4の42Bに示す様に膨張下死点時付近で、図5気筒式では図5の52Bに示す様に圧縮上死点後154°付近で、6気筒式では62Bに示す様に圧縮上死点後130°付近で、図7気筒式では図7の72Bに示す様に圧縮上死点後113°付近で、8気筒式では図8の82Bと83Bに示す様に圧縮上死点後100°付近と圧縮上死点後190°付近で、9気筒式では圧縮上死点後90°付近と圧縮上死点後170°付近で、他のシリンダーの燃焼工程によって排気工程の気筒が急速に加速される。
従って、5気筒式と9気筒式では、効果が制限されてしまう。2気筒式と4気筒式でも、効果が少し制限されてしまう。
【実施例3】
【0026】
背景技術の第三の問題点を改善する実施例について、説明する。
一サイクルを形成する工程の中の一部分の期間に関して本発明の運転方法を使用しない例と同一の期間の時間より時間が長くできる前記の期間内に、エンジンの燃焼行程の期間を設定する。
この実施例を行うエンジンは、4サイクル式でも2サイクル式でも適用でき、火花点火式でも圧縮着火式でも適用できる。
この実施例では、第一および第二の問題点を解決する実施例の様な、気筒式によって効果が制限される事は無い。
この実施例の作用を説明する。
上記の様に減速時期を設定すると、燃焼行程でクランク軸の回転スピードが加速される時期であっても、発電の進行に伴って、負荷が増して、クランク軸の回転スピードが遅くなり、ピストンの下降スピードも減速する。すると、ピストンの下降による燃焼圧力値の減少要因が減って、従来例よりも燃焼行程時のシリンダー内の圧力値が増加する。
【0027】
この実施例の効果を説明する。
燃焼行程時のシリンダー内の圧力値が増加する分だけ、トルクが従来例よりも向上する。そして、トルクの向上は、ハイブリッド・エンジンの中のエンジン部の変換効率の向上を意味する。
また、燃料供給量以外に、燃焼行程時のエネルギー変換効率を支配する要素を持つ事になる。
高負荷時は燃焼スピードが早くなり過ぎてノッキングが発生し易いので、この実施例を適用できない。従って、高負荷時以外の場合に効果が挙がる。
なお、高負荷時には、第五の実施例を適用すると良い。
【実施例4】
【0028】
背景技術の第四の問題点を改善する実施例を説明する。
一サイクルを形成する工程の中の一部分の期間に関して本発明の運転方法を使用しない例と同一の期間の時間より時間が長くできる前記の期間内に、2サイクルエンジンの排気口の開口時から掃気口の開口時までの期間を設定する。
この実施例を行うエンジンは、火花点火式でも圧縮着火式でも適用できる。
一例として、2サイクル2気筒式の場合を図9で説明する。
円周の0時方向の丸で表す地点は、上死点である。
円周の6時方向の丸で表す地点は、下死点を表す。
図2の間隔の広い斜線群で示す期間は、クランク角度で約180°である。
発電運転モード期間Bの終了時期Fが排気口の開口時から掃気口の開口時までの中間点である場合に、効果が大きくなる。そして発電運転モード期間Bの終了時期Fは、排気口の開口時の90°前から排気口の開口時の90°後までのクランク角度の期間とその期間が180°移動した期間の内から選べる。
燃焼工程Dにある第一気筒121Aは、同じ時間に下死点直後の掃気工程の期間Dにある第2気筒122Aも一緒に加速させるが、直前の時期である下死点前の排気工程Hの期間にある第2気筒122Bを加速させない。
【0029】
他の一例として、2サイクル3気筒式の場合を図10で説明する。
131AのDに示す第一気筒の燃焼工程と同じ時間の第2気筒の132AのDに示す期間は、下死点前の排気工程の開始時期に近い。従って、3気筒式では、この実施例の効果が制限される。
第四の問題点を解決する実施例の作用と効果を説明する。
上記の様に減速時期を設定すると、排気口の開口時から掃気口の開口時までの時間が、従来例よりも長くなる。そのため、掃気行程開始時のシリンダー内圧力値が従来例よりも低くなる。この結果、高負荷になるほど、従来例よりも掃気流によるシリンダー内の残留排気ガスの掃気効率と混合気の充填率が向上し、その分だけトルクが向上する。
【実施例5】
【0030】
背景技術の第五の問題点を改善する実施例を説明する。
発電運転モード期間Bの後期の減速作用の影響によってその直後に行う駆動運転モード期間の加速効果が打ち消される駆動運転モード期間前期を除いた駆動運転モード期間と駆動運転モード期間Aの加速作用の影響によってその直後に減速効果を打ち消してしまう発電運転モード期間前期との和である期間内に、4サイクル火花点火式エンジンの高負荷時の燃焼継続期間を設定する。
第一の問題点を解決する実施例を参考にすれば、各気筒式の駆動運転モード期間Aの終了時期Gや発電運転モード期間Bの終了時期Fは決定できる。
一例として、4サイクル4気筒式の場合を説明する。
4気筒式では、前記の図2の間隔の狭い斜線群で示す期間は、クランク角度で約90°である。
駆動運転モード期間Aの終了時期Gが図4のDで示す燃焼継続期間の中間点である場合に、効果が大きくなる。そして駆動運転モード期間Aの終了時期Gは、圧縮工程の上死点前40°から圧縮工程の上死点後50°までのクランク角度の期間内から選べる。
本実施例と第三の問題点を解決する実施例とは相反する。しかし二つの実施例は適用する負荷時が異なり、本実施例は高負荷時に適用され、第三の問題点を解決する実施例は高負荷時以外に適用される。
【0031】
第五の問題点を解決する実施例の作用を説明する。
上記の様に設定すると、毎分当たりの回転数が同じ従来例の場合に比べて、燃焼工程時のクランク軸の回転速度を加速できる。この結果、ピストンが下降する事で燃焼室容積が増加する事による圧力の減少要素が増加して、高速に加速する程、ノッキングが発生し難くなる。
第五の問題点を解決する実施例の効果を説明する。
その結果、従来よりも多くの混合気をノッキング無しに燃焼できる。従って、高速時のトルクが向上する。
また、毎分当たりの回転数が従来例よりも低い回転域で、耐ノッキング性の改善が得られる。
この実施例は、加速に関する時期を決めているのであるから、気筒式によって効果が制限されてしまうという事は無い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】電動モーターとエンジンの出力軸を機械的に結ぶ事を示したハイブリッド・エンジンの概念図である。
【図2】電動モーターによってクランク軸を駆動する期間・発電運転する期間と実際に従来例より時間が短くなる期間・長くなる期間との関係を説明する図で、本発明のすべての実施例を共通に説明する図である。
【図3】本発明の第一から第五までの実施例を説明する円図群で、第一気筒の工程の進行に伴って各シリンダーがどの工程にあるのかをクランク角度で示してあって、左側のA列は第一の問題点を解決する実施例を示し、中央のB列は第三と第五の問題点を解決する実施例を示し、右側のC列は第二の問題点を解決する実施例を示し、一番上の一行目は第一気筒を示し、二行目は第二気筒を示し、図3は4サイクル3気筒式に適用した場合の円図である。
【図4】図3とほぼ同様の説明図で、相違点は4サイクル4気筒式に適用した点である。
【図5】図3とほぼ同様の説明図で、相違点は4サイクル5気筒式に適用した点である。
【図6】図3とほぼ同様の説明図で、相違点は4サイクル6気筒式に適用した点である。
【図7】図3とほぼ同様の説明図で、相違点は4サイクル7気筒式に適用した点である。
【図8】図3とほぼ同様の説明図で、相違点は4サイクル8気筒式に適用した点である。
【図9】本発明の第四の実施例を説明した円図群で、左側のA列は第一気筒の燃焼行程時と同じ時間の各気筒の工程を示し、右側のB列は第一気筒の燃焼行程時直後と同じ時間の各気筒の工程を示し、2サイクル2気筒式に適用した場合の円図である。
【図10】図9とほぼ同様の説明図で、相違点は2サイクル3気筒式に適用した点である。
【図11】3RZ-FEエンジンと22R-Eエンジンの出力とトルクを示す従来例の図。
【図12】吸・排気カムのリフト・カーブを示す従来例の図。
【符号の説明】
【0033】
1 エンジン
2 クランクシャフト
3 電動モーター
4 コンピューター
5 クランク角度を検出するセンサー
A Bに隣接する図2の駆動・加速運転モード期間
AA 駆動運転モード期間Aの前期
AAA 駆動運転モード期間Aの後期
B Aに隣接する図2の発電運転モード期間
BB 発電運転モード期間Bの後期
BBB 発電運転モード期間Bの前期
D 燃焼工程と同じ時間の全ての気筒の工程
F 図2の発電運転モード期間の終了時期
G 図2の駆動運転モード期間の終了時期
H 図2の従来例との時間の偏差量を示す基準になる水平線
I 図2の時間の経過する方向を示す矢印
L1 3RZ-FEエンジンの最大トルク値
L2 22R-Eエンジンの最大トルク値
M1 図12の吸・排気カムの開弁期間初期
M2 図12の吸・排気カムの開弁期間中期
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動運転モードと発電運転モードの二種類の運転モードの電気的な切り替えが可能な電動モーターの出力軸とエンジンの出力軸を機械的に結合させる事に加えてエンジンのクランク角度を検出するセンサーからの情報に応じて前記の電気的な切り替えを制御するコンピューターを設けたシリーズ・パラレル方式またはシリーズ方式のハイブリッド・エンジンにおいて、
一つの点火時から次の点火時までと同じ長さのクランク角度の期間中に、予め作成してあるプログラムと前記のクランク角度を検出するセンサーからの情報とによって、前記のコンピューターが一対以上の前記の二種類の運転モードの期間を作る様に前記の電動モーターを制御し、
前記のコンピューターが前記の二種類の運転モードの期間の運転を交互に続ける様に前記の電動モーターを制御する事を特徴とするハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項2】
前記の予め作成してあるプログラムと前記のクランク角度を検出するセンサーからの情報とによって、前記の駆動運転モード期間の後期の加速作用の影響が及ばない前記の発電運転モード期間の後期と前記の発電運転モード期間の後期の直後に隣接して前記の発電運転モード期間の後期の減速作用の影響を受ける前記の駆動運転モード期間の前期との和である期間内に、前記のコンピューターが前記のエンジンの吸気工程の開弁時から開弁期間初期のリフト量の小さな時期までの期間を設定し、
前記のエンジンを4サイクルエンジンとする事を特徴とする前記請求項1に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項3】
前記の予め作成してあるプログラムと前記のクランク角度を検出するセンサーからの情報とによって、前記の駆動運転モード期間の後期の加速作用の影響が及ばない前記の発電運転モード期間の後期と前記の発電運転モード期間の後期の直後に隣接して前記の発電運転モード期間の後期の減速作用の影響を受ける前記の駆動運転モード期間の前期との和である期間内に、前記のコンピューターが前記のエンジンの排気工程の開弁時付近から排気工程の下死点時付近までの期間を設定し、
前記のエンジンを4サイクルエンジンとする事を特徴とする前記請求項1に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項4】
前記の予め作成してあるプログラムと前記のクランク角度を検出するセンサーからの情報とによって、前記の駆動運転モード期間の後期の加速作用の影響が及ばない前記の発電運転モード期間の後期と前記の発電運転モード期間の後期の直後に隣接して前記の発電運転モード期間の後期の減速作用の影響を受ける前記の駆動運転モード期間の前期との和である期間内に、前記のコンピューターが前記のエンジンの燃焼継続期間を設定する事を特徴とする前記請求項1に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項5】
前記の予め作成してあるプログラムと前記のクランク角度を検出するセンサーからの情報とによって、前記の駆動運転モード期間の後期の加速作用の影響が及ばない前記の発電運転モード期間の後期と前記の発電運転モード期間の後期の直後に隣接して前記の発電運転モード期間の後期の減速作用の影響を受ける前記の駆動運転モード期間の前期との和である期間内に、前記のコンピューターが前記のエンジンの排気口の開口時から掃気口の開口時までの期間を設定し、
前記のエンジンを2サイクルエンジンとする事を特徴とする前記請求項1に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項6】
前記の予め作成してあるプログラムと前記のクランク角度を検出するセンサーからの情報とによって、前記の発電運転モード期間の後期の減速作用の影響が及ばない前記の駆動運転モード期間の後期と前記の駆動運転モード期間の後期の直後に隣接して前記の駆動運転モード期間の後期の加速作用の影響を受ける前記の発電運転モード期間の前期との和である期間内に、前記のコンピューターが前記のエンジン燃焼継続期間を設定する事を特徴とする前記請求項1に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項7】
前記の運転方法を奇数気筒式に適用する事を特徴とする前記請求項2に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項8】
1サイクルを形成する吸入・圧縮・膨張・排気工程などの工程の一部分の時間が短い事で問題が発生する場合に、前記の駆動運転モード期間の後期の加速作用の影響が及ばない前記の発電運転モード期間の後期と前記の発電運転モード期間の後期の直後に隣接して前記の発電運転モード期間の後期の減速作用の影響を受ける前記の駆動運転モード期間の前期との和である期間内に、前記のコンピューターが前記の問題を発生する期間を設定する事を特徴とする前記請求項1に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項9】
1サイクルを形成する吸入・圧縮・膨張・排気工程などの工程の一部分の時間が長い事で問題が発生する場合に、前記の発電運転モード期間の後期の減速作用の影響が及ばない前記の駆動運転モード期間の後期と前記の駆動運転モード期間の後期の直後に隣接して前記の駆動運転モード期間の後期の加速作用の影響を受ける前記の発電運転モード期間の前期との和である期間内に、前記のコンピューターが前記の問題を発生する期間を設定する事を特徴とする前記請求項1に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項10】
前記の運転方法を3気筒式または7気筒式または偶数気筒式に適用する事を特徴とする前記請求項3に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項11】
前記の二種類の運転モードの期間の長さが均等でない事を特徴とする前記請求項1に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項1】
駆動運転モードと発電運転モードの二種類の運転モードの電気的な切り替えが可能な電動モーターの出力軸とエンジンの出力軸を機械的に結合させる事に加えてエンジンのクランク角度を検出するセンサーからの情報に応じて前記の電気的な切り替えを制御するコンピューターを設けたシリーズ・パラレル方式またはシリーズ方式のハイブリッド・エンジンにおいて、
一つの点火時から次の点火時までと同じ長さのクランク角度の期間中に、予め作成してあるプログラムと前記のクランク角度を検出するセンサーからの情報とによって、前記のコンピューターが一対以上の前記の二種類の運転モードの期間を作る様に前記の電動モーターを制御し、
前記のコンピューターが前記の二種類の運転モードの期間の運転を交互に続ける様に前記の電動モーターを制御する事を特徴とするハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項2】
前記の予め作成してあるプログラムと前記のクランク角度を検出するセンサーからの情報とによって、前記の駆動運転モード期間の後期の加速作用の影響が及ばない前記の発電運転モード期間の後期と前記の発電運転モード期間の後期の直後に隣接して前記の発電運転モード期間の後期の減速作用の影響を受ける前記の駆動運転モード期間の前期との和である期間内に、前記のコンピューターが前記のエンジンの吸気工程の開弁時から開弁期間初期のリフト量の小さな時期までの期間を設定し、
前記のエンジンを4サイクルエンジンとする事を特徴とする前記請求項1に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項3】
前記の予め作成してあるプログラムと前記のクランク角度を検出するセンサーからの情報とによって、前記の駆動運転モード期間の後期の加速作用の影響が及ばない前記の発電運転モード期間の後期と前記の発電運転モード期間の後期の直後に隣接して前記の発電運転モード期間の後期の減速作用の影響を受ける前記の駆動運転モード期間の前期との和である期間内に、前記のコンピューターが前記のエンジンの排気工程の開弁時付近から排気工程の下死点時付近までの期間を設定し、
前記のエンジンを4サイクルエンジンとする事を特徴とする前記請求項1に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項4】
前記の予め作成してあるプログラムと前記のクランク角度を検出するセンサーからの情報とによって、前記の駆動運転モード期間の後期の加速作用の影響が及ばない前記の発電運転モード期間の後期と前記の発電運転モード期間の後期の直後に隣接して前記の発電運転モード期間の後期の減速作用の影響を受ける前記の駆動運転モード期間の前期との和である期間内に、前記のコンピューターが前記のエンジンの燃焼継続期間を設定する事を特徴とする前記請求項1に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項5】
前記の予め作成してあるプログラムと前記のクランク角度を検出するセンサーからの情報とによって、前記の駆動運転モード期間の後期の加速作用の影響が及ばない前記の発電運転モード期間の後期と前記の発電運転モード期間の後期の直後に隣接して前記の発電運転モード期間の後期の減速作用の影響を受ける前記の駆動運転モード期間の前期との和である期間内に、前記のコンピューターが前記のエンジンの排気口の開口時から掃気口の開口時までの期間を設定し、
前記のエンジンを2サイクルエンジンとする事を特徴とする前記請求項1に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項6】
前記の予め作成してあるプログラムと前記のクランク角度を検出するセンサーからの情報とによって、前記の発電運転モード期間の後期の減速作用の影響が及ばない前記の駆動運転モード期間の後期と前記の駆動運転モード期間の後期の直後に隣接して前記の駆動運転モード期間の後期の加速作用の影響を受ける前記の発電運転モード期間の前期との和である期間内に、前記のコンピューターが前記のエンジン燃焼継続期間を設定する事を特徴とする前記請求項1に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項7】
前記の運転方法を奇数気筒式に適用する事を特徴とする前記請求項2に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項8】
1サイクルを形成する吸入・圧縮・膨張・排気工程などの工程の一部分の時間が短い事で問題が発生する場合に、前記の駆動運転モード期間の後期の加速作用の影響が及ばない前記の発電運転モード期間の後期と前記の発電運転モード期間の後期の直後に隣接して前記の発電運転モード期間の後期の減速作用の影響を受ける前記の駆動運転モード期間の前期との和である期間内に、前記のコンピューターが前記の問題を発生する期間を設定する事を特徴とする前記請求項1に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項9】
1サイクルを形成する吸入・圧縮・膨張・排気工程などの工程の一部分の時間が長い事で問題が発生する場合に、前記の発電運転モード期間の後期の減速作用の影響が及ばない前記の駆動運転モード期間の後期と前記の駆動運転モード期間の後期の直後に隣接して前記の駆動運転モード期間の後期の加速作用の影響を受ける前記の発電運転モード期間の前期との和である期間内に、前記のコンピューターが前記の問題を発生する期間を設定する事を特徴とする前記請求項1に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項10】
前記の運転方法を3気筒式または7気筒式または偶数気筒式に適用する事を特徴とする前記請求項3に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【請求項11】
前記の二種類の運転モードの期間の長さが均等でない事を特徴とする前記請求項1に記載したハイブリッド・エンジンの運転方法。
【図1】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−183651(P2006−183651A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6930(P2005−6930)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(500097245)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(500097245)
【Fターム(参考)】
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