説明

ハイブリッド作業機械

【課題】 高負荷が作用している高速作動中のアクチュエータを急停止したとき、当該アクチュエータを確実に停止させることができ、しかも、電動・発電機に吸収能力以上の高トルクが作用しないようにする。
【解決手段】 コントローラCは、アクチュエータを制御する操作弁1〜5,12〜15が中立位置にあるかどうかを判定する機能と、アクチュエータからの戻り油で回転する油圧モータAMの入力動力を検出する機能と、上記操作弁1〜5,12〜15が中立位置にあって、かつ、油圧モータAMの入力動力があらかじめ設定した第1しきい値を超えたとき、上記比例電磁絞り弁40,41の開度をあらかじめ定めた設定値以下に絞る機能とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アクチュエータからの回生流量を利用した建設機械等のハイブリッド作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、アクチュエータの回生流量を利用したハイブリッド建設機械は、アクチュエータであるブームシリンダと回生用の油圧モータとの間に開閉弁を設けるとともに、この開閉弁は、上記アクチュエータを制御する操作弁が中立位置に戻されたときに閉位置を保つ構成にしている。
【0003】
そして、高負荷が作用している高速作動中のブームシリンダを急停止させるときには、操作弁を中立位置に切り換えるのと同時に上記開閉弁を閉位置に切り換え、ブームシリンダの逸走を防止するとともに、電動・発電機の吸収能力以上の高トルクが、上記油圧モータから電動・発電機に入力しないようにしている。なぜなら、電動・発電機の吸収能力以上の高トルクが作用すると、当該電動・発電機が故障したり、逸走するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−236190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにした従来のハイブリッド建設機械では、当該アクチュエータを急停止させるために操作弁を中立位置に急激に戻したとき、上記開閉弁が敏感に応答してそれを瞬時に閉じなければ、アクチュエータが逸走するおそれがあるとともに、電動・発電機の吸収能力以上の高トルクが当該電動・発電機に作用してしまう。しかしながら、開閉弁の応答性には限界があり、アクチュエータを急停止させることが難しくなるとともに、急停止時に高トルクが電動・発電機に作用してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、電動・発電機の吸収能力を大きくするために、当該電動・発電機を大型化することも考えられるが、その大型化の分、コストがかさむという問題があった。
いずれにしても、従来のハイブリッド作業機では、開閉弁の応答性を敏感にするにも限度がある一方、電動・発電機を大型化すればコストアップの要因になるという問題があった。
【0007】
この発明の目的は、高負荷が作用している高速作動中のアクチュエータを急停止したとき、当該アクチュエータを確実に停止させることができ、しかも、電動・発電機に吸収能力以上の高トルクが作用しないようにしたハイブリッド作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、メインポンプと、このメインポンプを駆動するエンジンと、合流通路を介してメインポンプの吐出側に接続した可変容量型のアシストポンプと、このアシストポンプの傾転角を制御する傾角制御器と、上記合流通路に設けた比例電磁絞り弁と、アクチュエータからの戻り油で回転する可変容量型の油圧モータと、上記アシストポンプおよび油圧モータに連係した電動・発電機と、この電動・発電機に接続したバッテリーと、アシストポンプの傾角制御器および比例電磁絞り弁に接続したコントローラとを備えている。
【0009】
そして、第1の発明は、上記コントローラが、上記アクチュエータを制御する操作弁が中立位置にあるかどうかを判定する機能と、アクチュエータからの戻り油で回転する油圧モータの入力動力を検出する機能と、上記操作弁が中立位置にあって、かつ、油圧モータの入力動力があらかじめ設定した第1しきい値を超えたとき、上記比例電磁絞り弁の開度をあらかじめ定めた設定値以下に絞る機能とを備えた点に特徴を有する。
【0010】
第2の発明は、上記コントローラが、油圧モータの入力動力があらかじめ設定した第1しきい値を超えたとき、上記比例電磁絞り弁の開度をあらかじめ定めた設定値以下に絞るとともに、アシストポンプの傾角制御器を制御して当該アシストポンプの傾転角をあらかじめ定めた設定値以上にする機能を備えた点に特徴を有する。
第3の発明は、上記コントローラが、上記比例電磁絞り弁の開度を絞ってから、設定時間経過後に油圧モータの入力動力が、あらかじめ設定した第2しきい値を超えているとき、アシストポンプの傾角制御器を制御して当該アシストポンプの傾転角を最大にする機能と、上記比例電磁絞り弁を閉じる機能とを備える一方、上記第2しきい値は第1しきい値よりも小さい値に設定した点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
第1,2の発明によれば、油圧モータの入力動力が第1しきい値を超えたとき、その動力をアシストポンプで吸収するようにしたので、電動・発電機にその吸収能力以上の動力が入力したときには、アシストポンプがその動力を吸収できる。
したがって、開閉弁の応答性を上げたり、必要以上に電動・発電機を大型化したりしなくても、高負荷が作用している高速作動中のアクチュエータを急停止したとき、電動・発電機には吸収能力以上の高トルクを作用させずに、当該アクチュエータを確実に停止できる。
【0012】
第3の発明によれば、上記のようにアシストポンプの傾転角を大きくしつつ、比例電磁絞り弁の開度を小さくしてから、所定時間経過後も油圧モータに大きな動力が入力されているときには、アシストポンプの傾転角を最大にして比例電磁絞り弁を閉じるので、アクチュエータを確実に停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】回路図である。
【図2】第1の制御フローを示すフローチャート図である。
【図3】第2の制御フローを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1はパワーショベルに関する実施形態を示すもので、可変容量型の第1,2メインポンプMP1,MP2を備えるとともに、第1メインポンプMP1には第1回路系統を接続し、第2メインポンプMP2には第2回路系統を接続している。
上記第1回路系統には、その上流側から順に、旋回モータRMを制御する旋回モータ用の操作弁1、図示していないアームシリンダを制御するアーム1速用の操作弁2、ブームシリンダBCを制御するブーム2速用の操作弁3、図示していない予備用アタッチメントを制御する予備用の操作弁4および図示していない左走行用モータを制御する左走行モータ用の操作弁5を接続している。
【0015】
上記各操作弁1〜5のそれぞれは、中立流路6およびパラレル通路7を介して第1メインポンプMP1に接続している。
上記中立流路6であって、左走行モータ用の操作弁5の下流側にはパイロット圧生成機構8を設けている。このパイロット圧生成機構8はそこを流れる流量が多ければ高いパイロット圧を生成し、その流量が少なければ低いパイロット圧を生成するものである。
【0016】
また、上記中立流路6は、上記操作弁1〜5のすべてが中立位置もしくは中立位置近傍にあるとき、第1メインポンプMP1から吐出された流体の全部または一部をタンクTに導くが、このときにはパイロット圧生成機構8を通過する流量も多くなるので、上記したように高いパイロット圧が生成される。
【0017】
一方、上記操作弁1〜5がフルストロークの状態で切り換えられると、中立流路6が閉ざされて流体の流通がなくなる。したがって、この場合には、パイロット圧生成機構8を流れる流量がほとんどなくなり、パイロット圧はゼロを保つことになる。
ただし、操作弁1〜5の操作量によっては、ポンプ吐出量の一部がアクチュエータに導かれ、一部が中立流路6からタンクTに導かれることになるので、パイロット圧生成機構8は、中立流路6に流れる流量に応じたパイロット圧を生成する。言い換えると、パイロット圧生成機構8は、操作弁1〜5の操作量に応じたパイロット圧を生成することになる。
【0018】
そして、上記パイロット圧生成機構8にはパイロット流路9を接続するとともに、このパイロット流路9を、第1メインポンプMP1の傾転角を制御するレギュレータ10に接続している。このレギュレータ10は、パイロット圧と逆比例して第1メインポンプMP1の吐出量を制御する。したがって、操作弁1〜5をフルストロークして中立流路6の流れがゼロになったとき、言い換えるとパイロット圧生成機構8が発生するパイロット圧がゼロになったときに第1メインポンプMP1の吐出量が最大に保たれる。
上記のようにしたパイロット流路9には第1圧力センサー11を接続するとともに、この第1圧力センサー11で検出した圧力信号をコントローラCに入力するようにしている。
【0019】
一方、上記第2回路系統には、その上流側から順に、図示していない右走行用モータを制御する右走行モータ用の操作弁12、図示していないバケットシリンダを制御するバケット用の操作弁13、ブームシリンダBCを制御するブーム1速用の操作弁14および図示していないアームシリンダを制御するアーム2速用の操作弁15を接続している。なお、上記ブーム1速用の操作弁14には、その操作方向および操作量を検出するセンサー14aを設けている。
【0020】
上記各操作弁12〜15は、中立流路16を介して第2メインポンプMP2に接続するとともに、バケット用の操作弁13およびブーム1速用の操作弁14はパラレル通路17を介して第2メインポンプMP2に接続している。
上記中立流路16であって、アーム2速用の操作弁15の下流側にはパイロット圧生成機構18を設けているが、このパイロット圧生成機構18は、先に説明したパイロット圧生成機構8と全く同様に機能するものである。
【0021】
そして、上記パイロット圧生成機構18にはパイロット流路19を接続するとともに、このパイロット流路19を、第2メインポンプMP2の傾転角を制御するレギュレータ20に接続している。このレギュレータ20は、パイロット圧と逆比例して第2メインポンプMP2の吐出量を制御する。したがって、操作弁12〜15をフルストロークして中立流路16の流れがゼロになったとき、言い換えるとパイロット圧生成機構18が発生するパイロット圧がゼロになったとき、第2メインポンプMP2の吐出量が最大に保たれる。
上記のようにしたパイロット流路19には第2圧力センサー21を接続するとともに、この第2圧力センサー21で検出した圧力信号をコントローラCに入力するようにしている。
【0022】
上記のようにした第1,2メインポンプMP1,MP2は、一つのエンジンEの駆動力で同軸回転するものである。
そして、上記エンジンEにはジェネレータ22を設け、エンジンEの余剰出力でジェネレータ22を回して発電できるようにしている。そして、ジェネレータ22が発電した電力は、バッテリーチャージャー23を介してバッテリー24に充電される。
【0023】
なお、上記バッテリーチャージャー23は、通常の家庭用の電源25に接続した場合にも、バッテリー24に電力を充電できるようにしている。つまり、このバッテリーチャージャー23は、当該装置とは別の独立系電源にも接続可能にしたものである。
【0024】
上記第1回路系統に接続した旋回モータ用の操作弁1のアクチュエータポートには、旋回モータRMに連通する通路26,27を接続するとともに、両通路26,27のそれぞれにはブレーキ弁28,29を接続している。そして、旋回モータ用の操作弁1を中立位置に保っているときには、上記アクチュエータポートが閉じられて旋回モータRMは停止状態を維持する。
【0025】
上記の状態から旋回モータ用の操作弁1をいずれかに切り換えると、いずれか一方の通路例えば通路26から圧力流体が供給されて旋回モータRMが回転するとともに、旋回モータRMからの戻り流体が通路27を介してタンクTに戻される。
上記のように旋回モータRMを駆動しているときには、上記ブレーキ弁28あるいは29がリリーフ弁の機能を発揮し、通路26,27が設定圧以上になったとき、ブレーキ弁28,29が開弁して高圧側の流体を低圧側に導く。
【0026】
また、旋回モータRMを回転している状態で、旋回モータ用の操作弁1を中立位置に戻せば、当該操作弁1のアクチュエータポートが閉じられる。このように操作弁1のアクチュエータポートが閉じられても、旋回モータRMはその慣性エネルギーで回転し続けるが、旋回モータRMが慣性エネルギーで回転することによって、当該旋回モータRMがポンプ作用をする。この時には、通路26,27、旋回モータRM、ブレーキ弁28あるいは29で閉回路が構成されるとともに、ブレーキ弁28あるいは29によって、上記慣性エネルギーが熱エネルギーに変換されることになる。
【0027】
一方、ブーム1速用の操作弁14を中立位置から図面右側位置に切り換えると、第2メインポンプMP2からの圧力流体は、通路30を経由してブームシリンダBCのピストン側室31に供給されるとともに、そのロッド側室32からの戻り流体は通路33を経由してタンクTに戻され、ブームシリンダBCは伸長する。
【0028】
反対に、ブーム1速用の操作弁14を図面左方向に切り換えると、第2メインポンプMP2からの圧力流体は、通路33を経由してブームシリンダBCのロッド側室32に供給されるとともに、そのピストン側室31からの戻り流体は通路30を経由してタンクTに戻され、ブームシリンダBCは収縮することになる。なお、ブーム2速用の操作弁3は、上記ブーム1速用の操作弁14と連動して切り換るものである。
【0029】
上記のようにしたブームシリンダBCのピストン側室31とブーム1速用の操作弁14とを結ぶ通路30には、コントローラCで開度が制御される比例電磁弁34を設けている。なお、この比例電磁弁34はそのノーマル状態で全開位置を保つようにしている。
【0030】
次に、第1,2メインポンプMP1,MP2の出力をアシストする可変容量型のアシストポンプAPについて説明する。
上記可変容量型のアシストポンプAPは、発電機兼用の電動・発電機MGの駆動力で回転するが、この電動・発電機MGの駆動力によって、可変容量型の油圧モータAMも同軸回転する構成にしている。そして、上記電動・発電機MGにはインバータIを接続するとともに、このインバータIをコントローラCに接続し、このコントローラCで電動・発電機MGの回転数等を制御できるようにしている。
また、上記のようにしたアシストポンプAPおよび油圧モータAMの傾転角は傾角制御器35,36で制御されるが、この傾角制御器35,36は、コントローラCの出力信号で制御されるものである。
【0031】
上記アシストポンプAPには吐出通路37を接続しているが、この吐出通路37は、第1メインポンプMP1の吐出側に合流する第1合流通路38と、第2メインポンプMP2の吐出側に合流する第2合流通路39とに分岐するとともに、これら第1,2合流通路38,39のそれぞれには、コントローラCの出力信号で開度が制御される第1,2比例電磁絞り弁40,41を設けている。
【0032】
一方、油圧モータAMには接続用通路42を接続しているが、この接続用通路42は、合流通路43およびチェック弁44,45を介して、旋回モータRMに接続した通路26,27に接続している。しかも、上記合流通路43にはコントローラCで開閉制御される電磁開閉弁46を設けるとともに、この電磁開閉弁46とチェック弁44,45との間に、旋回モータRMの旋回時の圧力あるいはブレーキ時の圧力を検出する圧力センサー47を設け、この圧力センサー47の圧力信号をコントローラCに入力するようにしている。
【0033】
また、合流通路43であって、旋回モータRMから接続用通路42への流れに対して、上記電磁開閉弁46よりも下流側となる位置には、安全弁48を設けているが、この安全弁48は、例えば電磁開閉弁46など、接続用通路42,43系統に故障が生じたとき、通路26,27の圧力を維持して旋回モータRMがいわゆる逸走するのを防止するものである。
さらに、上記ブームシリンダBCと上記比例電磁弁34との間には、接続用通路42に連通する通路49を設けるとともに、この通路49にはコントローラCで制御される電磁開閉弁50を設けている。
【0034】
以下には、この実施形態の作用を説明する。
旋回モータRMが旋回している最中に旋回モータ用の操作弁1を中立位置に切り換えると、通路26,27間で閉回路が構成されるとともに、ブレーキ弁28あるいは29が当該閉回路のブレーキ圧を維持して、慣性エネルギーを熱エネルギーに変換する。
【0035】
そして、圧力センサー47は上記旋回圧あるいはブレーキ圧を検出するとともに、その圧力信号をコントローラCに入力する。コントローラCは、旋回モータRMの旋回あるいはブレーキ動作に影響を及ぼさない範囲内であって、ブレーキ弁28,29の設定圧よりも低い圧力を検出したとき、電磁開閉弁46を切り換える。このように電磁開閉弁46が切り換えられれば、旋回モータRMに導かれた圧力流体は、合流通路43に流れるとともに安全弁48および接続用通路42を経由して油圧モータAMに供給される。
このときコントローラCは、圧力センサー47からの圧力信号に応じて、油圧モータAMの傾転角を制御するが、それは次のとおりである。
【0036】
すなわち、通路26あるいは27の圧力は、旋回動作あるいはブレーキ動作に必要な圧力に保たれていなければ、旋回モータRMを旋回させたり、あるいはブレーキをかけたりできなくなる。
そこで、上記通路26あるいは27の圧力を、上記旋回圧あるいはブレーキ圧に保つために、コントローラCは油圧モータAMの傾転角を制御しながら、この旋回モータRMの負荷を制御するようにしている。つまり、コントローラCは、圧力センサー47で検出される圧力が上記旋回モータRMの旋回圧あるいはブレーキ圧とほぼ等しくなるように、油圧モータAMの傾転角を制御する。
【0037】
上記のようにして油圧モータAMが回転力を得れば、その回転力は、同軸回転する電動・発電機MGに作用するが、この油圧モータAMの回転力は、電動・発電機MGに対するアシスト力として作用する。したがって、油圧モータAMの回転力の分だけ、電動・発電機MGの消費電力を少なくすることができる。
また、上記油圧モータAMの回転力でアシストポンプAPの回転力をアシストすることもできる。
【0038】
次に、ブーム1速用の操作弁14およびそれに連動して第1回路系統のブーム2速用の操作弁3を切り換えて、ブームシリンダBCを制御する場合について説明する。
ブームシリンダBCを作動させるために、ブーム1速用の操作弁14およびそれに連動する操作弁3を切り換えると、センサー14aによって、上記操作弁14の操作方向とその操作量が検出されるとともに、その操作信号がコントローラCに入力される。
【0039】
上記センサー14aの操作信号に応じて、コントローラCは、オペレータがブームシリンダBCを上昇させようとしているのか、あるいは下降させようとしているのかを判定する。ブームシリンダBCを上昇させるための信号がコントローラCに入力すれば、コントローラCは比例電磁弁34をノーマル状態に保つ。言い換えると、比例電磁弁34を全開位置に保つ。このときには、アシストポンプAPから所定の吐出量が確保されるように、コントローラCは、電磁開閉弁50を図示の閉位置に保つとともに、電動・発電機MGの回転数やアシストポンプAPの傾転角を制御する。
【0040】
一方、ブームシリンダBCを下降させる信号が上記センサー14aからコントローラCに入力すると、コントローラCは、操作弁14の操作量に応じて、オペレータが求めているブームシリンダBCの下降速度を演算するとともに、比例電磁弁34を閉じて、電磁開閉弁50を開位置に切り換える。
【0041】
上記のように比例電磁弁34を閉じて電磁開閉弁50を開位置に切り換えれば、ブームシリンダBCの戻り流体の全量が油圧モータAMに供給される。しかし、油圧モータAMで消費する流量が、オペレータが求めた下降速度を維持するために必要な流量よりも少なければ、ブームシリンダBCはオペレータが求めた下降速度を維持できない。このようなときには、コントローラCは、上記操作弁14の操作量、油圧モータAMの傾転角や電動・発電機MGの回転数などをもとにして、油圧モータAMが消費する流量以上の流量をタンクTに戻すように比例電磁弁34の開度を制御し、オペレータが求めるブームシリンダBCの下降速度を維持する。
【0042】
一方、油圧モータAMに流体が供給されると、油圧モータAMが回転するとともに、その回転力は、同軸回転する電動・発電機MGに作用するが、この油圧モータAMの回転力は、電動・発電機MGに対するアシスト力として作用する。したがって、油圧モータAMの回転力の分だけ、消費電力を少なくすることができる。
【0043】
一方、油圧モータAMを駆動源として電動・発電機MGを発電機として使用するときには、アシストポンプAPの傾転角をゼロにしてほぼ無負荷状態にし、油圧モータAMには、電動・発電機MGを回転させるために必要な出力を維持しておけば、油圧モータAMの出力を利用して、電動・発電機MGに発電機能を発揮させることができる。
【0044】
なお、図中符号51,52は、第1,2比例電磁絞り弁40,41の下流側に設けたチェック弁で、アシストポンプAPから第1,2メインポンプMP1,MP2側への流通のみを許容するものである。
【0045】
また、コントローラCは、油圧モータAMに入力する動力の大きさを常に監視しているが、その動力の大きさを演算する方法は、例えば次の3つが考えられる。
1 電動・発電機の発電動力である電流×電圧によって計算する方法。
2 油圧モータAMの傾転角と電動・発電機MGの回転数から流量を計算し、その流量に油圧モータAMの入り口圧を乗じて計算する方法。
3 油圧モータAMのダイナミック特性を数学モデル化して油圧モータAMの傾転角を推定し、この傾転角を基にして電動・発電機MGの回転数から流量を計算するとともに、その流量に油圧モータAMの入り口圧を乗じて計算する方法。
以上3つの計算方法以外にどのような計算方法を用いてもよいが、いずれにしてもコントローラCは、油圧モータAMの入り口側の動力を監視している。
【0046】
そして、コントローラCは、上記のようにして油圧モータAMの入力動力を監視するとともに、上記操作弁1〜5,12〜15に設けた図示していないセンサーからの信号に基づいて、それらすべての操作弁1〜5,12〜15が中立位置を保持しているかどうかをチェックする。
【0047】
そして、例えばブームシリンダBCを停止するときには、オペレータは操作弁3,14を中立位置に戻すが、このときコントローラCは上記センサーからの信号に基づいて電磁開閉弁50を閉じる。
そして、ブームシリンダBCを急停止するときには、操作弁3,14を中立位置に戻すと同時に電磁開閉弁50を瞬時に閉じなければならないが、その応答性に限界があるので、電磁開閉弁50が閉じるときに応答遅れが生じる。
【0048】
もし、ブームシリンダBCが高負荷動作をしていれば、上記のように電磁開閉弁50に応答遅れが発生すると、そのときの大きな動力が油圧モータAMに入力する。コントローラCは、このときの入力動力を演算し、その演算結果があらかじめ設定した第1しきい値ε1を超えているかどうかを判定するとともに、その判定結果に応じて図2に示すフローチャートに応じた制御を実行する。
【0049】
すなわち、ハイブリッド制御をスタート(ステップS1)させると、コントローラCは、すべての操作弁1〜5,12〜15が中立位置を保持しているかどうかを判定する(ステップS2)。もし、いずれかの操作弁1〜5,12〜15が中立位置以外の切り換え位置にあれば、コントローラCは、通常のハイブリッド制御のために必要な指令信号を出力する(ステップS3)。
すべての操作弁1〜5,12〜15が中立位置を保持しているときには、油圧モータAMの入力動力PLを演算し(ステップS4)、その入力動力PLが第1しきい値ε1よりも大きいか否かを判定する(ステップS5)。
【0050】
上記入力動力PLが第1しきい値ε1よりも小さければ、ブームシリンダBCを急停止させる状況にないと判定し、コントローラCは上記ステップS3に戻る。
しかし、入力動力PLが第1しきい値ε1よりも大きければ、高負荷動作をしているブームシリンダBCを急停止させていると判定してステップS6に移行する。
【0051】
上記ステップS6において、コントローラCは、アシストポンプAPの傾角制御器35を制御してアシストポンプAPの傾転角を大きくし、その1回転当たりの押し除け容積を増大させるとともに、第1,2比例電磁絞り弁40,41の開度を小さくする。したがって、アシストポンプAPからはその1回転当たり吐出量が多くなるとともに、それが第1,2比例電磁絞り弁40,41を通過するので、そのときの圧力損失が大きくなり、その圧力損失分が油圧モータAMに対する制動力として機能する。
【0052】
なお、ステップS2ですべての操作弁1〜5,12〜15が中立位置にあるか否かを判定するようにしたのは次の理由からである。例えば、いずれかの操作弁を中立位置以外の切り換え位置に保っているときには、当該操作弁に接続したアクチュエータを動作させていることになるが、このときにはアシストポンプAPに、上記アクチュエータの負荷が作用していることになる。したがって、ブームシリンダBCを急停止するときにも、アシストポンプAPに作用している負荷で油圧モータAMの入力動力を吸収できることになる。このような理由から、すべての操作弁1〜5,12〜15が中立位置にあるときだけ、上記ステップ6に示す制御を実行するようにしたものである。
【0053】
したがって、例えばクレーンの場合には、伸縮制御をするための操作弁は1つで足りるので、その操作弁が中立位置にあるかどうかを判定するだけで足りる。
なお、上記実施形態では、アシストポンプAPの傾転角の制御と第1,2比例電磁絞り弁40,41の開度の制御とを同時に実行するようにしたが、アシストポンプAPの傾転角をある程度維持しながら、第1,2比例電磁絞り弁40,41の開度を制御するようにしてもよい。
【0054】
また、図2に示すステップ5において、油圧モータAMの入力動力PLが第1しきい値ε1よりも小さかったとしても、時間t1経過後も、その入力動力PLが十分に小さくなっていないときには、ブームシリンダBCが異常な状態にあると判定することができる。
このときには図3に示したフローチャートに基づいた制御を実行すれば、ブームシリンダCを確実に停止できる。
この図3に示す制御形態において、そのステップS1〜S6までは上記図2の場合と同じである。
【0055】
そして、上記ステップS5において、上記のように油圧モータAMの入力動力PLが第1しきい値ε1よりも小さくても、コントローラCは、あらかじめ設定した時間t1後に、その入力動力PLが第2しきい値ε2よりも十分に小さくなっているかどうかをステップS7で判定する。なお、上記第1,2しきい値は、ε1>ε2の関係を保っている。
【0056】
上記ステップS7において入力動力PLが第2しきい値ε2よりも小さくなっていれば、コントローラCは入力動力PLは十分に吸収されているものと判定してステップS3に戻り、通常のハイブリッド制御を実行する。
しかし、ステップS7で入力動力PLが第2しきい値ε2よりも大きければ、コントローラCは、ブームシリンダBCからの入力動力PLが十分に吸収しきれずに異常な状態にあると判定してステップS8に移行する
【0057】
ステップS8において、コントローラCは、傾角制御器35を制御してアシストポンプAPの傾転角を最大にして、その1回転当たりの押し除け容積を最大にする。それと同時に第1,2比例電磁絞り弁40,41を閉じるようにする。
このようにすることによって、ブームシリンダBCは確実に停止し、異常な状態は解消される。
【0058】
なお、上記実施形態では、ブームシリンダBCの回生動力制御を例に説明したが、旋回モータRMの回生動力を制御する場合も上記ブームシリンダBCの場合と同じである。
つまり、旋回モータRMを急停止するときには、操作弁1を中立位置に戻すとともに、電磁開閉弁46を閉じるが、このときの電磁開閉弁46の応答性に限界があるので、油圧モータAMの入力動力が電動・発電機MGの吸収能力を超えた大きさになる。
このときには、コントローラCは、図2,3に示したフローチャートに基づいた制御をする。
【産業上の利用可能性】
【0059】
ハイブリッド用のパワーショベルに最適である。
【符号の説明】
【0060】
MP1 第1メインポンプ
MP2 第2メインポンプ
RM 旋回モータ
BC ブームシリンダ
C コントローラ
AP アシストポンプ
35,36 傾角制御器
AM 油圧モータ
MG 電動・発電機
40,41 第1,2比例電磁絞り弁
46,50 電磁開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインポンプと、このメインポンプを駆動するエンジンと、合流通路を介してメインポンプの吐出側に接続した可変容量型のアシストポンプと、このアシストポンプの傾転角を制御する傾角制御器と、上記合流通路に設けた比例電磁絞り弁と、アクチュエータからの戻り油で回転する可変容量型の油圧モータと、上記アシストポンプおよび油圧モータに連係した電動・発電機と、この電動・発電機に接続したバッテリーと、アシストポンプの傾角制御器および比例電磁絞り弁に接続したコントローラとを備え、このコントローラは、上記アクチュエータを制御する操作弁が中立位置にあるかどうかを判定する機能と、アクチュエータからの戻り油で回転する油圧モータの入力動力を検出する機能と、上記操作弁が中立位置にあって、かつ、油圧モータの入力動力があらかじめ設定した第1しきい値を超えたとき、上記比例電磁絞り弁の開度をあらかじめ定めた設定値以下に絞る機能とを備えたハイブリッド作業機械。
【請求項2】
上記コントローラは、油圧モータの入力動力があらかじめ設定した第1しきい値を超えたとき、上記比例電磁絞り弁の開度をあらかじめ定めた設定値以下に絞るとともに、アシストポンプの傾角制御器を制御して当該アシストポンプの傾転角をあらかじめ定めた設定値以上にする機能を備えた請求項1記載のハイブリッド作業機。
【請求項3】
上記油圧モータの傾転角を制御する傾角制御器を備え、上記コントローラは、上記比例電磁絞り弁の開度を絞ってから、設定時間経過後に油圧モータの入力動力が、あらかじめ設定した第2しきい値を超えているとき、アシストポンプの傾角制御器を制御して当該アシストポンプの傾転角を最大にする機能と、上記比例電磁絞り弁を閉じる機能とを備える一方、上記第2しきい値は第1しきい値よりも小さい値に設定した請求項1又は2記載のハイブリッド作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−241948(P2011−241948A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116604(P2010−116604)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】