説明

ハイブリッド制御システムおよびハイブリッド式作業機械

【課題】複数の駆動機械を高効率に最適分担制御できるハイブリッド制御システムを提供する。
【解決手段】力行時はエンジンでパワーを供給するとともに、バッテリは0出力とし、回生時のパワーはバッテリへの充電で回収する運転をベースとする。これらにより、充放電ロス(補給ロスを含む)による損失を極力排除する。エンジン最大出力パワーを超える負荷要求パワー(ピークパワー)をバッテリから供給する。回生時の充電エネルギのみでピークパワー分をまかなえれば効率がよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力行機能のみを有する第1駆動機械と、力行および回生機能を有する第2駆動機械とを備えたハイブリッド制御システムおよびこのシステムを搭載したハイブリッド式作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンと、油圧ポンプ及び発電電動機を備え、この発電電動機で上部旋回体を直接駆動すると共に回生発電を行う旋回駆動用発電電動機と、発電電動機から電力供給を受け高回生油圧閉回路アクチュエータを介してブームを駆動すると共に高回生油圧閉回路アクチュエータの回生発電を行うブーム駆動用発電電動機と、油圧ポンプの圧油で作業部を駆動する油圧シリンダを備え、発電電動機と各用途用発電電動機との間の給電線に、変換器とコンデンサの直列回路と変換器とバッテリの直列回路を並列に接続し、給電線への給電順序をコンデンサ、発電電動機、バッテリの順に設定する制御手段を設けることにより、回収エネルギの回収効率を高めると共に省エネルギ、低騒音、排ガス低減を図ったハイブリッドショベルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、新エネルギ・産業技術総合開発機構(NEDO)では、シリーズ用ハイブリッド制御システムにおいて、図24に示されるように、エンジン効率はエンジン負荷率が下落すると低下する特性に注目して、できるだけエンジン負荷率を高めるような運転ロジックのハイブリッド制御システムを提案している。
【特許文献1】特開2002−242234号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、ハイブリッドシステムは、内燃エンジンと、発電電動機およびバッテリまたはコンデンサの、2つ以上の駆動機械と動力装置とで構成されるが、種々の運転状態に応じて変化する負荷に対しシステム全体の効率を高めるための複数の駆動機械の最適分担制御について検討したものは見当たらない。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、複数の駆動機械を高効率に最適分担制御できるハイブリッド制御システムおよびこのハイブリッド制御システムを搭載したハイブリッド式作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された発明は、力行機能のみを有する第1駆動機械と、力行および回生機能を有する第2駆動機械と、第2駆動機械からの回生エネルギを充電するとともに第2駆動機械に電気エネルギを放電可能な動力装置と、力行時は第1駆動機械の最大出力パワーまでは第1駆動機械から負荷へパワーを供給し、第1駆動機械の最大出力パワーを超えた負荷分は動力装置から第2駆動機械を経て供給し、回生時は第2駆動機械を経て動力装置に負荷からの回生エネルギを回収する制御装置とを具備したハイブリッド制御システムである。
【0007】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のハイブリッド制御システムにおける制御装置が、動力装置側の充放電要求パワーと負荷側のトータル要求パワーとから両方の要求パワーを満足するベース要求パワーを演算する第1段階の演算回路と、ベース要求パワーに第1駆動機械のパワー不足分を追加補正して動力装置に制御指令として出力される最終要求パワーを演算する第2段階の演算回路とを具備したものである。
【0008】
請求項3に記載された発明は、請求項2記載のハイブリッド制御システムにおける第1段階の演算回路が、動力装置の充電状態に応じた充放電要求パワーを演算する充放電要求パワー演算回路を備え、充放電要求パワー演算回路には、充電側の要求パワーを演算する充電要求域と、放電側の要求パワーを演算する放電要求域とが設けられたものである。
【0009】
請求項4に記載された発明は、請求項2または3記載のハイブリッド制御システムにおける第1段階の演算回路が、動力装置側の充放電要求パワーと負荷側のトータル要求パワーとで小さい方の値を選択するミニマム選択回路を具備したものである。
【0010】
請求項5に記載された発明は、請求項2乃至4のいずれか記載のハイブリッド制御システムにおける第2段階の演算回路が、トータル要求パワーと第1駆動機械の最大出力パワーおよびベース要求パワーとを比較する比較回路と、この比較回路の出力の正負に応じて第1駆動機械のパワー不足分をカバー演算する力行時最終要求パワー演算回路とを具備したものである。
【0011】
請求項6に記載された発明は、請求項3乃至5のいずれか記載のハイブリッド制御システムにおける充放電要求パワー演算回路が、最適充電状態付近で充放電要求パワーを0とするヒステリシス特性を備えたものである。
【0012】
請求項7に記載された発明は、請求項2乃至6のいずれか記載のハイブリッド制御システムにおける第1段階の演算回路が、第1駆動機械よりも第2駆動機械および動力装置を優先使用するよう切換える優先選択回路を具備したものである。
【0013】
請求項8に記載された発明は、請求項1乃至7のいずれか記載のハイブリッド制御システムにおける第1駆動機械が、エンジンを備え、第2駆動機械は、電動発電機を備え、動力装置は、充放電装置を備え、制御装置は、アイドリング状態および低負荷状態の少なくとも一方を検出して、自動的にエンジンを停止し、充放電装置からのパワー供給に切換え、要復帰時にはエンジンを再起動させる機能を備えたものである。
【0014】
請求項9に記載された発明は、請求項1乃至8のいずれか記載のハイブリッド制御システムを搭載したハイブリッド式作業機械である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載された発明によれば、種々の運転状態に応じて変化する負荷に対し、第1駆動機械を高負荷率のポイントで運転することでその運転効率を高めるとともに、第2駆動機械に対する動力装置の充放電ロスを抑制できるので、システム全体として第1駆動機械と第2駆動機械の動力装置とを最適分担制御して高効率で自動運転できるハイブリッド制御システムを提供できる。
【0016】
請求項2に記載された発明によれば、第1段階の演算回路により演算された負荷側と動力装置側の両方の要求パワーを満足するベース要求パワーに基づいて、第2段階の演算回路で適切な最終要求パワーを演算できる。
【0017】
請求項3に記載された発明によれば、充放電要求パワー演算回路は、充電要求域および放電要求域により、充電状態によって強制的に充電要求指令または放電要求指令を出力することができるので、システムの安定性を向上できる。
【0018】
請求項4に記載された発明によれば、ミニマム選択回路により、動力装置側の充放電要求パワーと負荷側のトータル要求パワーとの両方の要求を満足できる制御をすることができる。
【0019】
請求項5に記載された発明によれば、比較回路により、トータル要求パワーと第1駆動機械の最大出力パワーおよびベース要求パワーとを比較することで第1駆動機械の力行パワー不足分をカバーできるか否かを確認した上で、力行時最終要求パワー演算回路により第1駆動機械のパワー不足分を適切にカバー演算できる。
【0020】
請求項6に記載された発明によれば、最適充電状態付近で充放電要求パワーを0とするヒステリシス特性を備えた充放電要求パワー演算回路は、最適充電状態付近を離れると充放電パワー要求が発生するので、常に最適充電状態付近での高効率の運転ができ、かつ動力装置の容量を過度に大きくする必要がなくなり、小型化も図れる。
【0021】
請求項7に記載された発明によれば、優先選択回路により、第1駆動機械よりも第2駆動機械および動力装置を優先使用するよう切換えるので、制御システムを一層汎用化でき、運転のフレキシビリティを向上できる。
【0022】
請求項8に記載された発明によれば、力行時でもアイドル状態または低負荷状態では、これらの状態を検出して自動的にエンジンを停止し、充放電装置からパワーを供給する機能を組込むことで、エンジンでの燃料消費を抑制できるため、一層の高効率運転が可能となる。
【0023】
請求項9に記載された発明によれば、システム全体として第1駆動機械と第2駆動機械の動力装置とを高効率で最適分担制御できるハイブリッド式作業機械を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を、図1乃至図20に示された一実施の形態、図21に示された他の実施の形態、図22および図23に示されたさらに別の実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図6は、ハイブリッド式作業機械としてのハイブリッド式油圧ショベル1を示し、このハイブリッド式油圧ショベル1は、左右の走行用電動機2mによりそれぞれ駆動する左右の履帯を備えた作動体としての下部走行体2に、作動体としての上部旋回体3が旋回用電動機3mにより旋回可能に設けられ、この上部旋回体3には動力部4および作業装置5が搭載されている。
【0026】
作業装置5は、上部旋回体3に対してブームシリンダ6cにより上下方向に回動されるブーム6が軸支され、このブーム6の先端にアームシリンダ7cにより回動されるアーム7が回動自在に軸支され、このアーム7の先端にバケットシリンダ8cにより回動されるバケット8が軸支されている。
【0027】
図1は、ハイブリッド式油圧ショベル1に搭載されたハイブリッド制御システムを示し、動力部4に設置されたパラレル・ハイブリッド・ブロック10は、力行機能のみを有する第1駆動機械11と、力行および回生機能を有する第2駆動機械12とを有し、第2駆動機械12は、電気母線13により、動力装置ブロック14のエネルギ蓄積・放出用の動力装置15に接続されている。この動力装置15は、第2駆動機械12からの回生エネルギを充電するとともに第2駆動機械12に電気エネルギを放電可能である。
【0028】
第1駆動機械11は、エンジンなどを備え、動力源としての機能と、力行時のパワー供給制御用の駆動機械としての機能とを有する。
【0029】
第2駆動機械12は、電気エネルギで駆動される駆動機械で、電動発電機12mgと電動発電機制御用インバータ12invとを備え、パワーの力行・回生機能を有する。
【0030】
動力装置15は、第2駆動機械12からの回生エネルギを蓄積するとともに第2駆動機械12に電気エネルギを放出可能な電気エネルギ蓄積・放出機能すなわち充放電機能を有する動力源であり、充放電装置制御用コンバータ15conと、この充放電装置制御用コンバータ15conに直流電源ラインを介して接続されたバッテリ、キャパシタ(例えばアルミ電解コンデンサ)などの充放電装置15batとにより構成されている。充放電装置15batには、充電用スイッチ16を介して充電装置17が接続されている。
【0031】
第1駆動機械11と第2駆動機械12は、動力伝達機構18を介してアクチュエータ19に並列接続されている。
【0032】
この動力伝達機構18は、第1駆動機械11と、第2駆動機械12と、アクチュエータ19とを機械的に選択結合し、パラレルハイブリッドを構成するもので、第1駆動機械11と第2駆動機械12とアクチュエータ19との間を断続するためのクラッチ機構を内蔵している。
【0033】
アクチュエータ19は、負荷20を操作する油圧操作機器であり、負荷20の作動速度などを制御する負荷制御機能を有する。このアクチュエータ19が電気式の場合は、電動発電機と、電動発電機制御用インバータとで構成され、また、アクチュエータ19が油圧式の場合は、油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出されて制御弁などで制御された作動油により作動する油圧モータまたは油圧シリンダなどで構成され、下部走行体2、上部旋回体3、ブーム6、アーム7およびバケット8などの負荷20に連結されている。
【0034】
そして、このパラレル・ハイブリッド・ブロック10は、複数(K個)のアクチュエータ19および負荷20を、第1駆動機械11と電気式の第2駆動機械12とで駆動(パワー供給/回収)するパラレルハイブリッド構成したブロックであり、これらの駆動機械11,12から独立して負荷制御(速度制御など)されるアクチュエータ19および負荷20は、単一または複数ブロックで構成される。
【0035】
図3は、アクチュエータ19を油圧機器で構成した例を示し、電動発電機12mgにより駆動される油圧ポンプ19pと、この油圧ポンプ19pから吐出された作動油を方向制御および流量制御する制御弁19vと、この制御弁19vにより方向制御および速度制御される油圧シリンダまたは油圧モータなどの油圧アクチュエータ19acと、制御弁19vからの戻り油により作動され油圧ポンプ19pに再生エネルギを伝達するよう接続された再生用油圧モータ19mとを備えている。1組の電動発電機制御用インバータ12invおよび電動発電機12mgで複数組のアクチュエータ19および負荷20を駆動することも可能である。
【0036】
図1に戻って、アクチュエータ19には、所要動力を演算する所要動力演算装置21が接続されている。
【0037】
電動発電機制御用インバータ12inv、充放電装置制御用コンバータ15con、アクチュエータ19および所要動力演算装置21には、制御監視信号線22を介して、制御装置としてのシステム制御器23が接続され、このシステム制御器23には、このシステム制御器23を操作し監視する操作・監視部24が接続されている。
【0038】
システム制御器23は、力行制御時は第1駆動機械11から負荷20へのパワー供給を原則とし、第1駆動機械11の最大出力パワー以上の負荷分は動力装置15から第2駆動機械12を経て供給し、回生時は第2駆動機械12を経て動力装置15に負荷20からの回生エネルギを回収するものである。
【0039】
操作・監視部24は、ハイブリッド式油圧ショベル1のキャブ内オペレータにより操作される操作レバーまたは操作ペダルなどの操作部と、キャブ内オペレータにより制御指令を入力することも可能なモニタなどの監視部とを備えている。
【0040】
また、パラレル・ハイブリッド・ブロック10および動力装置ブロック14とは別に、拡張システムとして、直接駆動ブロックまたは独立操作機器ブロック30が設置されている。この直接駆動ブロックまたは独立操作機器ブロック30は、駆動機械・アクチュエータ31と、これに連結された負荷32とにより構成されている。駆動機械・アクチュエータ31は、電気母線13により、電動発電機制御用インバータ12invおよび充放電装置制御用コンバータ15conに接続され、また、制御監視信号線22を介してシステム制御器23に接続されている。
【0041】
図4は、直接駆動ブロックまたは独立操作機器ブロック30において、電気式の直接駆動ブロック30aを示し、その駆動機械・アクチュエータ31aは、電動発電機制御用インバータ31invと、このインバータ31invにより制御される電動発電機31mgとで構成される駆動・操作機械で直接負荷32を駆動操作する。この駆動機械・アクチュエータ31aは、第1駆動機械11に連結されておらず、回転数制御による速度制御機能を有するので、アクチュエータ機能も兼ねることができる。本方式は、上部旋回体3用の駆動機械などへ適用できる。
【0042】
図5は、直接駆動ブロックまたは独立操作機器ブロック30において、駆動機械と独立した操作機器を有する油圧式の独立操作機器ブロック30bを示し、その駆動機械・アクチュエータ31bは、電動発電機制御用インバータ31invおよびこのインバータ31invにより制御される電動発電機31mgで構成されるパワー供給・回収制御用の駆動機械に対し、速度制御機能を有する操作機器が別々に構成されたもので、電動発電機31mgにより駆動される油圧ポンプ31pと、この油圧ポンプ31pから吐出された作動油を方向制御および流量制御する制御弁31vと、この制御弁31vにより方向制御および速度制御される油圧シリンダまたは油圧モータなどの油圧アクチュエータ31acと、制御弁31vからの戻り油により作動され油圧ポンプ31pに再生エネルギを伝達するよう接続された再生用油圧モータ31mとを備えている。1組の駆動機械で複数組の操作機器を駆動することが可能である。
【0043】
直接駆動ブロック30aおよび独立操作機器ブロック30bは、単一または複数設置され、合計でn個設置される。
【0044】
そして、ハイブリッド式油圧ショベル1のキャブ内オペレータが、操作・監視部24により、システム制御器23を介して、図3乃至図5に示された回路の制御弁19v、電動発電機制御用インバータ31inv、制御弁31vなどを制御することで、下部走行体2、上部旋回体3および作業装置5の作動方向および作動速度が制御される。
【0045】
次に、図7および図8に示されたシステム制御器23の構成図を参照しながら、ハイブリッド制御システムのアルゴリズム構築のベースとなる概念を示す。
【0046】
図7は、制御システム基本構成を示す制御装置のブロック図であり、システム制御器23は、各負荷20,32が要求するトータル要求パワーを合計するトータル要求パワー演算回路41と、動力装置15の充放電要求パワー指令を演算する充放電要求パワー指令演算回路42と、ハイブリッドインバータすなわちパラレル・ハイブリッド・ブロック10の電動発電機制御用インバータ12invへのパワー制御指令を演算するハイブリッドブロックパワー指令演算回路43と、エンジンガバナにパワー指令を出力するエンジンガバナ制御回路44とを具備している。
【0047】
充放電要求パワー指令演算回路42は、負荷20,32と動力装置15の両方の要求パワーを満足するバッテリ側ベース要求パワーPr2を演算する第1段階の機能と、第1駆動機械11の最大出力パワーを超えた負荷分を追加補正して第2駆動機械12および動力装置15で最終要求パワーを演算する第2段階の機能とを具備しており、この最終要求パワーに基づいて充放電装置制御用コンバータ15conに動力装置用コンバータ制御指令が出力される。
【0048】
エンジンガバナ制御回路44は、トータル要求パワーTPrから充放電装置制御用コンバータ15conへの最終要求パワー指令Prを差引いた(TPr−Pr)分をエンジン側が自動的に分担するようにエンジンガバナにパワー指令を出力する。トータル要求パワーTPrは、図1に示されるようにパラレル・ハイブリッド・ブロック10の負荷側合計要求パワーΣLPjと、直接駆動ブロックまたは独立操作機器ブロック30の負荷側合計要求パワーΣLPj’との総計である。
【0049】
図8は、図7に示された充放電要求パワー指令演算回路42を機能ブロック別に分けて、その後の展開を解り易く表記した制御システム全体構成図であり、充放電要求パワー指令演算回路42は、第1段階の演算回路47と、エンジンパワー不足分追加演算用の第2段階の演算回路48とを備えている。
【0050】
第1段階の演算回路47は、動力装置15からの充放電要求パワーPr1とトータル要求パワーTPrとの選択回路で、負荷20,32と動力装置15の両方の要求を満足する「ベース要求パワーPr2」を演算するバッテリ側充放電ベース要求パワー演算回路47aと、トータル要求パワーTPrから力行状態か回生状態かを判別する力行・回生判別回路47bとを備えている。
【0051】
第2段階の演算回路48は、各負荷からのトータル要求パワーTPrと第1駆動機械11の最大出力パワーPengine maxおよびベース要求パワーPr2とを比較して、ベース要求パワーPr2に第1駆動機械11のパワー不足分を追加補正して動力装置15に制御指令として出力される「最終要求パワーPr」を演算するものである。
【0052】
また、システム制御器23には、直接駆動ブロック30aまたは独立操作機器ブロック30bがある場合にも対応できるよう、直接駆動ブロック30aまたは独立操作機器ブロック30bの電動発電機制御用インバータ31invへの制御指令を演算出力する直接駆動ブロックまたは独立操作機器ブロック制御回路49を、充放電要求パワー指令演算回路42とは別に、別途用意する。
【0053】
次に、図7および図8のコンセプトを具体化した実際的な方法として、図9乃至図11に示された詳細構成図を示す。なお、詳細部では、若干のバリエーションは有り得る。
【0054】
図9は、優先方式選択オプションが有る場合のバッテリ側充放電ベース要求パワー演算回路47aすなわち優先方式選択機能付き回路を示し、優先方式選択オプションとして、バッテリなどの充放電装置15batからのパワー供給を優先することも手動切換手段により選択できる手動選択機能を持たせたものである。
【0055】
これは、夜間等にバッテリ充電操作を行う運用の場合、またはハイブリッド式油圧ショベル1の屋内使用などの排ガスまたは騒音上の制約があって、できるだけエンジンなどの第1駆動機械11を稼働したくないような場合などへの対応性を考慮したものである。
【0056】
図9において、第1段階を実現するバッテリ側充放電ベース要求パワー演算回路47aは、バッテリの充放電をエンジンよりも優先させる場合のバッテリ側充放電要求パワーを演算する優先選択機能付バッテリ側充放電要求パワー演算回路51と、この演算回路51により演算されたバッテリ側充放電要求パワーPr1'''とトータル要求パワー演算回路41により演算された各負荷20,32のトータル要求パワーTPrとを比較して、小さい方の値を選択するミニマム選択回路52とを備えている。
【0057】
優先選択機能付バッテリ側充放電要求パワー演算回路51は、充放電装置15batの充電状態(以下、この充電状態State of chargeを単に「SOC」という)に応じてバッテリ側充放電要求パワーPr1を演算するバッテリ側の充放電要求パワー演算回路55と、エンジン(またはバッテリ)優先域でのバッテリ分担パワーレベルBを設定するバッテリ要求パワー設定器56と、バッテリ側充放電要求パワー指令Pr1とバッテリ分担パワーレベルBとを比較して大きい方の値を選択するマキシマム選択回路57とを備えている。
【0058】
このマキシマム選択回路57は、加算回路に替えても良い。
【0059】
さらに、この優先選択機能付バッテリ側充放電要求パワー演算回路51は、マキシマム選択回路57に、運転域による選択回路58が接続され、この運転域による選択回路58に、充放電リミット制限回路59が接続されている。
【0060】
運転域による選択回路58は、SOCが通常運転域または放電要求域にあるときはマキシマム選択回路57からのPr1'を出力し(Pr1''=Pr1')、またSOCが充電要求域にあるときはバッテリ側の充放電要求パワー演算回路55からのPr1を出力する(Pr1''=Pr1)。
【0061】
充放電リミット制限回路59は、バッテリ側充放電要求パワーPr1''を、図12乃至図15に示されるSOCに応じた充電リミットおよび放電リミットにより制限する回路である。
【0062】
バッテリ要求パワー設定器56、マキシマム選択回路57、選択回路58および充放電リミット制限回路59は、エンジンなどの第1駆動機械11よりも電動発電機12mgなどの第2駆動機械12およびバッテリなどの動力装置15を優先使用するよう手動で切換える優先選択回路60を構成している。
【0063】
すなわち、この優先選択回路60によりバッテリ優先を選択したときは、力行制御時は動力装置15の充放電装置15batから第2駆動機械12を経て負荷20へのパワー供給を原則とし、動力装置15および第2駆動機械12の最大出力パワー以上の負荷分は、第1駆動機械11から供給する。
【0064】
これを、バッテリ優先選択オプションという。このバッテリ優先選択オプションは、駆動エネルギのベース分を充放電装置15batのバッテリなどから供給し、駆動エネルギのピーク分をエンジンより供給するので、ハイブリッド式油圧ショベル1を屋内に持込んで屋内作業などをする際に、排ガスや騒音上の制約を容易にクリアできる。
【0065】
図10は、バッテリ優先選択オプションがない場合、すなわちエンジン優先に限定した場合のバッテリ側充放電ベース要求パワー演算回路47aを示し、図9で通常運転域でのバッテリ分担パワーレベルBを0とした場合である。すなわち、図9でB=0とすれば図10に示されたエンジン優先、B>0のBを与えればバッテリ優先となる。
【0066】
図11は、エンジンパワー不足分追加演算用の第2段階の演算回路48を展開したもので、この演算回路48は、エンジン最大出力パワーPengine maxと、各負荷からのトータル要求パワーTPrと、充放電装置制御用コンバータ15conへのバッテリ側充放電ベース要求パワー(第1段階の出力)Pr2とから、力行パワー不足分Aの値を、A=−Pengine max+(TPr−Pr2)の式で演算して、トータル要求パワーTPrとエンジン最大出力パワーPengine maxとを比較することでエンジンで力行パワー不足分をカバーできるかの確認をする比較回路48aと、このAの正負に応じた式でエンジンパワー不足分をカバー演算する力行時最終要求パワー演算回路48bとを備えている。
【0067】
この力行時最終要求パワー演算回路48bでは、A=0または<0の場合は、充放電装置制御用コンバータ15conへの力行時の最終要求パワー指令Prを、Pr=Pr2とし、また、A>0の場合は、Pr=Pr2+Aとする。
【0068】
この図11に示されたエンジンパワー不足分追加演算用の演算回路48では、力行時のエンジン最大出力パワーを超えた負荷分はバッテリで供給できるようにアルゴリズムを組込む。さらに、アイドル状態または低負荷状態でエンジンを停止し、同時にエンジン最大出力パワーを0とする機能を組込み、一層の高効率運転を可能にする。このとき、エンジンは負荷となるので、動力伝達機構18のクラッチにより、エンジンを切り離すように制御する。
【0069】
この図11に示された構成と、次の図12乃至図15に示される動力装置(バッテリ)の充放電要求パワーとで、詳細機能要求仕様などを満足できる制御装置を実現する。
【0070】
図12は、バッテリ側充放電要求パワーPr1を演算するための充放電要求パワー演算回路55における充放電要求パワー特性の基本例を例示したもので、充電と放電の両方に対して充放電容量を大きくできる最適充電状態SOCoptを定め、これを含んだ許容範囲内で、力行時エンジン優先を満足できるようにPr1=0とする領域を設ける。この領域をエンジン優先域と呼ぶ。
【0071】
適正なSOCの範囲に保つために、SOCがある値より小で優先的に充電する領域と、SOCがある値より大で優先的に放電する領域を設ける。前者を充電要求域、後者を放電要求域と呼ぶ。
【0072】
充電要求域と放電要求域の一部は、通常運転中にも到達するので、エンジン優先域を含めて、通常運転想定のSOC範囲を設ける。この領域を通常運転域と呼ぶ。
【0073】
SOCでみた運転限界点として、High側リミットまたは1ow側リミットを設ける。
【0074】
バッテリの機器容量で定まる「許容できる最大充放電リミット」として、充電リミットと、放電リミットとを設ける。バッテリ充放電要求パワーは、これらのリミットを超えることはできない。
【0075】
図13は、バッテリの一般的特性を示すが、その充電効率および放電効率は、バッテリaとバッテリbとで等しく、かつバッテリaの充放電容量>バッテリbの充放電容量の場合、b許容運転範囲にSOCを維持できれば、小容量のバッテリbにダウンサイズでき、充放電効率(充電効率および放電効率)もバランスよく、高効率点で運転可能であることがわかる。
【0076】
図14は、充放電要求パワー演算回路55におけるバッテリ側充放電要求パワー特性を改良してヒステリシス付き特性としたもので、充放電要求域に到達しても確実にエンジン優先域の最適充電状態SOCopt付近まで復帰できるように、充放電要求パワーPr1に点線で示されるヒステリシス特性を設ける。
【0077】
すなわち、図12に示された特性では、負荷の大きさでエンジン優先域の充電要求域付近か、放電要求域付近かが決まるので、充電要求域または放電要求域との境界付近で運転を行うおそれが大きいが、その場合は、SOCのHigh側リミットまたは1ow側リミットを超える場合が発生するおそれもある。これに対して、最適充電状態SOCopt付近で充放電要求パワーを0とするヒステリシス特性を設けると、SOCが最適充電状態SOCopt付近を離れたとき充放電要求パワーが発生するので、常に最適充電状態SOCopt付近で運転することが可能となり、図13に示されるように高効率点で運転することができ、かつ動力装置15のバッテリ容量を過度に大きくする必要がなくなり、機器自体の適正化(小型化)も図れる。
【0078】
また、図14に示されたバッテリ側充放電要求パワー特性は、充放電要求パワーの変化をできるだけ滑らかにすることで、エリアシフト時のエンジン負担変化などを滑らかにすることができ、これを、要求パワー値のヒステリシス特性および階段状の特性変化で実現する。
【0079】
なお、図14におけるSOC1およびSOC2は、エンジン優先域と、バッテリ充電要求域との境界および放電要求域との境界を示し、また、SOC3およびSOC4はバッテリ通常運転域の下限境界および上限境界を示し、また、SOC5およびSOC6は、SOCの1ow側リミットおよびHigh側リミットを表わす。
【0080】
図15は、充放電要求パワー演算回路55においてバッテリ運転を優先したバッテリ優先モードの場合のヒステリシス付きバッテリ側充放電要求パワーPr1の特性を示し、図14に示されるようにヒステリシス復帰値(バッテリ優先域でのバッテリ分担パワーレベルB)を0としたものではなく、例えば50%値などに復帰させたものである(0<復帰値<100%の範囲で調整可能)。このバッテリ側充放電要求パワーPr1は、充電リミットと放電リミットの範囲内に制限されている。
【0081】
なお、ヒステリシス終了点は、エンジン優先域またはバッテリ優先域で自由に設定できるが、図14および図15では最適充電状態SOCoptの付近としている。
【0082】
次に、このハイブリッド制御システムの高効率運転を実現する制御方法を説明する。
【0083】
図2に、エンジンとバッテリとの分担イメージで示されるように、高効率運転の基本原則は、力行時はエンジンでパワーを供給するとともに、バッテリは0出力とし、回生時のパワーはバッテリへの充電で回収する運転をベースとする。これらにより、充放電ロス(補給ロスを含む)による損失を極力排除する。
【0084】
エンジン最大出力パワーPengine maxを超える負荷要求パワー(ピークパワーと称す)をバッテリから供給する。回生時の充電エネルギのみでピークパワー分をまかなえれば効率がよい。負荷が大きく、あるいはエンジン容量が小さいため、強制的にエンジンからの充電モードにしないと過放電になる場合は、充放電ロス/補給ロスを考えねばならず、その分、効率は低下する。
【0085】
ただし、エンジンアイドル状態または負荷が低すぎるとエンジン効率が大きく低下し、かえって全体効率が下がるおそれもあるので、このときは、力行時でもエンジンを停止させ、バッテリ運転に切換える機能を持たせることで、一層の効率向上を図る。
【0086】
図2において、必要な力行エネルギの大きさ(上部斜線面積)をEd、負荷からの回生エネルギの大きさ(下部斜線面積)をErとした場合、バッテリ放電エネルギEbdと、バッテリ充電エネルギEbrは、次のとおりである。
【0087】
Ebd=Ed/η1、ただしη1;放電時の全機器効率
Ebr=Er・η2、ただしη2;充電時の全機器効率
【0088】
次に、充放電要求パワー指令制御の詳細要求仕様と留意点を説明する。
【0089】
バッテリ側充放電要求パワーPr1は、バッテリの状態で決まるバッテリ側からの充放電要求パワーである。バッテリ保護および機能を最大限発揮させるために、このバッテリ側充放電要求パワーPr1を定義する。
【0090】
充放電要求パワーはバッテリの許容リミット値以内とする。図13に示されるように、バッテリの充放電容量は、SOCなどにより変わるが、リミット値があり、それ以上の充放電はできない。
【0091】
SOCにより充放電リミットは大きく変動する。運転継続のためには、充放電リミットを必要値以上に維持できるようにする必要があり、そのため最適充電状態SOCopt付近に許容範囲としての通常運転域を設け、SOCがそこに留まれるような工夫が必要となる。また通常運転域ではバッテリの充放電ロスが小なので、この点からも通常運転域は有効である。
【0092】
外れた場合も通常運転域に戻すため、およびバッテリ保護のため、放電要求域または充電要求域を設け、その領域では優先的に放電または充電させて、SOC限界値を超えないようにする。充電要求域または放電要求域は通常運転域の一部と重なる。
【0093】
バッテリ保護上または充放電容量上の運転限界に近づいたことを示すSOC下限のLow側リミットと、SOC上限のHigh側リミットを設け、そこを超えての運転を禁止するため、警報オンまたは運転停止等の保護ロジックを作動させる。
【0094】
次に、バッテリ側充放電要求パワーPr1と負荷側要求パワーとのマッチングを説明する。
【0095】
実際の運用に当たっては、充放電装置15batのバッテリはいつでも充放電両方に対して所定容量を確保しなければならないので、またバッテリ充放電ロスの小なる領域での運転が望ましいので、できるだけバッテリを最適充電状態SOCopt付近で運転できるような制御機能を有するアルゴリズムに工夫する。このため、バッテリ側充放電要求パワーを定め、負荷側要求パワーと矛盾なく制御する工夫が必要となる。
【0096】
回生時は、原則としてバッテリ側の状態によらず負荷からの回生エネルギを充電する必要がある。さらに、充電要求域にあると、バッテリ側充放電要求パワーが負荷の回生パワーを超えていても、充電要求値を充電する必要がある。すなわち、回生時のパワーはバッテリへの充電で回収する運転をベースとする。
【0097】
充電要求パワー指令(回生時)=min(Pr1、TPr)
【0098】
ただし、min(Pr1、TPr)は、バッテリ側充放電要求パワーPr1と、負荷側トータル要求パワーTPrのうち、小さい方を選ぶ関数(以下、min関数という)である。
【0099】
負荷回生パワー<バッテリ充電要求パワーのとき、min関数で負荷回生パワーを選択し、バッテリは自身の要求を超えて充電される。一方、負荷回生パワー>バッテリ充電要求パワーのときは、不足分はエンジンから補填される。
【0100】
力行時は、以下のロジックで充放電要求パワー指令を決定する。力行時は、負荷側トータル要求パワーTPr以上のパワーを放電しない(<TPrとする)ことが必要である。
【0101】
放電要求パワー指令(力行時)=min(Pr1、TPr)
【0102】
負荷要求パワー<バッテリ放電要求パワーのときは、min関数で負荷要求を選択し、バッテリはその値を放電する。一方、負荷要求パワー>バッテリ放電要求パワーのときは、不足分はエンジンから補填される。
【0103】
次に、高効率運転実現のため、バッテリ側充放電要求パワーPr1は、さらに以下を満足させる。
【0104】
力行時でのエンジン側優先運転へ対応するためには、エンジン優先域でのバッテリ側充放電要求パワーPr1=0とする。
【0105】
バッテリが放電要求域に到達するのは、充電エネルギ>放電エネルギの場合で、放電要求域ではバッテリを放電できるようにする。すなわち、Pr1>0とする。図12を参照する。
【0106】
バッテリが充電要求域に到達するのは、充電エネルギ<放電エネルギの場合で、充電要求域ではバッテリを充電できるようにする。すなわち、Pr1<0とする。
【0107】
通常運転域を外れた運転をすると、放電または充電のどちらかのリミット値が下がり、運転に支障をきたす。または、より大きい容量のバッテリを選定する必要がある。
【0108】
そこで、通常運転域内にとどまれるようにする方法例として、一旦充放電要求域に達したら、上記の処置に加えて、その状態をキープできるようにヒステリシス特性を持たせる。これにより、図14または図15に示されるように、確実に通常運転域に戻すことができる。
【0109】
次に、力行時、エンジン側優先運転に代わり、バッテリ側優先運転への切換ができるようにさらに工夫する。力行時、エンジン側優先運転に代わり、バッテリ側優先運転にする1つの方法として、以下の方法がある。図9および図15を参照して、バッテリ側優先運転の1方法を説明する。
【0110】
力行時の、通常運転域でのバッテリ分担パワーレベルBとして、以下の補正演算をする。
【0111】
バッテリ優先域および放電要求域では、
バッテリ側充放電要求パワーPr1'=max(Pr1、B)、
またはバッテリ側充放電要求パワーPr1'=Pr1+Bである。
【0112】
ここで、max(Pr1、B)は、バッテリ側充放電要求パワーPr1と、通常運転域でのバッテリ分担パワーレベルBとのうち大きい方を選ぶ関数である。
【0113】
一方、充電要求域では、Pr1=Pr1である。ただし、BおよびPr1<放電リミット(許容最大放電パワーで機器の容量限界)を満足することが必要である。
【0114】
次に、直接駆動ブロック30aの負荷要求に等価な指令を出力する機能を有する。ただし、後述の負荷要求を減少させる場合は、この出力も相応分減少させる。独立操作機器ブロック30bの場合も同様である。
【0115】
次に、パラレル・ハイブリッド・ブロック10の電動発電機制御用インバータ12invへのパワー制御指令Pinv*は、充放電装置制御用コンバータ15conへの力行・回生時の最終要求パワー指令Prと、直接駆動ブロック30aまたは独立操作機器ブロック30bの電動発電機制御用インバータ31invへのパワー制御指令Pdとの関係で、以下の式を満たすように演算され、電気母線13でのパワーバランスを保つ。
【0116】
演算式は、Pinv*−Pr+Pd=0
【0117】
また、過渡的などの要因によるアンバランスを補正する補正回路すなわち電圧偏差補正回路などを設ける。
【0118】
次に、図16乃至図20のフローチャートを参照して、システム制御器23による制御方法を説明する。なお、フローチャート中の丸数字は、ステップ番号を表わす。
【0119】
先ず、図16は、全体的な制御フローを示すフローチャートである。
【0120】
(ステップ1)
特性、パラメータを設定する。すなわち、図14または図15に示されたバッテリ側充放電要求パワー(Pr1−SOC特性)、バッテリ運転域、エンジン最大出力パワーPengine max、母線基準電圧、パラレル・ハイブリッド・ブロック10の個数、アクチュエータ19および負荷20の全個数などを設定する。
【0121】
また、オプションとしての通常運転域でのバッテリ分担パワーレベルB、アイドリング状態などにおけるエンジン停止機能の有無を設定する。このエンジン停止機能有りのときはflag1は0でなく、無しのときはflag1=0とする。
【0122】
SOCなどの信号を読込み、バッテリ側充放電要求パワーPr1を求める。各負荷20,32の要求パワーの合計であるトータル要求パワーTPr(力行時は+、回生時は−)を求める。
【0123】
(ステップ2)
エンジン優先モードか、バッテリ優先モードかを判断する。
【0124】
(ステップ3)
エンジン優先モードの場合は、B=0である。
【0125】
(ステップ4)
各負荷20,32のトータル要求パワーTPrと、現SOCにおけるバッテリ側充放電要求パワーPr1とで小さい方の値を選択して、充放電装置制御用コンバータ15conへのバッテリ側充放電ベース要求パワーPr2を決定する。すなわち、Pr2=min(Pr1,TPr)の演算をする。
【0126】
(ステップ5)
トータル要求パワーTPrが正(力行時)か否かを判定する。
【0127】
(ステップ6)
トータル要求パワーTPrが正の場合は、Pr2=0とする。
【0128】
(ステップ7)
負荷状態すなわちトータル要求パワーTPrを判断処理する。
【0129】
(ステップ8)
トータル要求パワーTPrからエンジンがアイドル状態または低負荷状態かを判定する。
【0130】
(ステップ9)
エンジンがアイドル状態または低負荷状態のいずれでもない場合は、エンジンパワーを必要とするので、最終要求パワー指令Prを動力装置15の充放電装置制御用コンバータ15conに入力するとともに、エンジンガバナに入力することで、エンジンガバナは、自動的にエンジンパワー指令を出力する。すなわち、パラレルハイブリッド制御システムでは、システム側で特に制御しなくても、エンジン側で自動的に(TPr−Pr)分だけパワーを分担するので、システムでのエンジン出力は不要である。
【0131】
(ステップ10)
エンジンがアイドル状態または低負荷状態のいずれかである場合は、エンジンを停止する。また、Pengine max=0とする。
【0132】
(ステップ11)
エンジンパワー不足分A=−Pengine max+TPr−Pr2を演算する。
【0133】
(ステップ12)
充電状態SOCがエンジン(またはバッテリ)優先域および放電要求域にあるか否かを判定する。
【0134】
(ステップ13)
SOCが充電要求域にある場合は、A=0とする。
【0135】
(ステップ14)
エンジンパワー不足分Aが正か否かを判定する。
【0136】
(ステップ15)
エンジンパワー不足分Aが正のときは、充放電装置制御用コンバータ15conへの最終要求パワー指令Prを、Pr=Pr2+Aで演算する。
【0137】
(ステップ16)
エンジンパワー不足分Aが0以下のときは、充放電装置制御用コンバータ15conへの最終要求パワー指令Prを、Pr=Pr2で演算する。
【0138】
(ステップ17)
バッテリ優先モードの場合は、B=Bset>0を設定する。Bsetは、エンジン効率低下よりエンジン停止した方がよい負荷レベルとなるように設定しておくことが効率上望ましい。
【0139】
(ステップ18)
SOCに応じたバッテリ側充放電要求パワーPr1と、設定値であるBsetとのうちで大きな値をPr1'として、Pr1'=max(Pr1,B)で演算する。
【0140】
(ステップ19)
SOCがバッテリ優先域または放電要求域にあるときは、選択回路58から、Pr1''=Pr1'が出力され、SOCが充電要求域にあるときは、選択回路58から、Pr1''=Pr1が出力される。
【0141】
(ステップ20)
Pr1''がバッテリ充放電リミットを超えるおそれがあるときは、充放電リミット制限回路59により、Pr1''をバッテリ充放電リミット内に制限したPr1'''を出力する。
【0142】
(ステップ21)
Pr1'''と、TPrとで小さい方の値を選択して、充放電装置制御用コンバータ15conへのバッテリ側充放電ベース要求パワーPr2を決定する。すなわち、Pr2=min(Pr1''',TPr)の演算をする。
【0143】
(ステップ22)
トータル要求パワーTPrが正(力行時)か否かを判定する。
【0144】
(ステップ23)
トータル要求パワーTPrが正の場合は、Pr2=一定値(<TPr)とし、ステップ7に進む。
【0145】
(ステップ24)
ステップ5およびステップ22にて、TPr<0の場合(回生時)は、Pr=Pr2=TPrで演算する。
【0146】
(ステップ25)
直接駆動ブロックまたは独立操作機器ブロック30の電動発電機制御用インバータ31invへのパワー制御指令Pdがあるか否かを判定する。
【0147】
(ステップ26)
パワー制御指令Pdがある場合は、パラレル・ハイブリッド・ブロック10の電動発電機制御用インバータ12invへのパワー制御指令Pinv*は、Pinv*=Pr−Pdで演算する。
【0148】
(ステップ27)
パワー制御指令Pdがない場合は、上式において、Pd=0とする。
【0149】
次に、図17は、図16に示された全体フローチャートの一部を示すもので、図2に示されたエンジン・バッテリ分担制御に対応するフローチャートである。
【0150】
(ステップ5)
力行・回生判別回路47bにより、負荷状態が力行時か否かを判定する。
【0151】
(ステップ14)
ステップ5で力行時の場合は、比較回路48aにより、各負荷20,32のトータル要求パワーTPrは、エンジン最大出力パワーPengine max以上か否かを判定する。
【0152】
(ステップ15)
トータル要求パワーTPrが、エンジン最大出力パワーPengine max以上である場合は、力行時最終要求パワー演算回路48bにより、第1駆動機械11からパワーを供給するとともに、不足分のパワーを電気式の第2駆動機械12および動力装置15から供給する。
【0153】
(ステップ16)
トータル要求パワーTPrが、エンジン最大出力パワーPengine max以上でない場合は、第1駆動機械11すなわちエンジンのみからパワーを供給する。
【0154】
(ステップ24)
ステップ5で力行時でない場合(回生時の場合)は、第2駆動機械12を介して動力装置15の充放電装置15batに回生エネルギを回収する。
【0155】
次に、図18は、負荷状態判断およびエンジン停止指令出力の制御フローを示すフローチャートである。
【0156】
(ステップ31)
エンジン停止条件のエンジン負荷C(後で説明する)を設定する。
【0157】
(ステップ32)
全負荷のトータル要求パワーTPrの状態を判断するステップに進む。
【0158】
(ステップ33)
ここでは先ず、トータル要求パワーTPrが0であるか否かを判定する。
【0159】
(ステップ34)
TPr=0であれば、アイドル状態または力行・回生均衡状態と判断して、flag2=0とする。
【0160】
(ステップ35)
TPr>0であるか否かを判定する。
【0161】
(ステップ36)
TPr>0のときは、力行状態と判断して、flag2=1とする。
【0162】
(ステップ37)
TPr<0のときは、回生状態と判断してflag2=2とする。
【0163】
(ステップ38)
全負荷のトータル要求パワーTPrの状態を判断するステップが終了したら(ステップ32でYESのとき)、エンジン停止条件を判断するステップに進む。
【0164】
(ステップ39)
ここでは先ず、トータル要求パワーTPrの絶対値abs[TPr]が、充放電装置15batの放電リミットPr maxより小さく、かつ時間関数であるトータル要求パワーTPrの過去T時間での平均値avg[TPr,T]が、エンジン停止条件のエンジン負荷Cより小さく、かつSOCが、図14に示された充電要求域の境界SOC1より大きいか否かを判定する。
【0165】
(ステップ40)
ステップ39でYESのときは、タイマtが作動を開始して継続時間を判定する。
【0166】
(ステップ41)
継続時間が設定時間to以上で、かつflag1が0でない(アイドリング状態などのエンジン停止機能有り)か否かを判定する。
【0167】
(ステップ42)
ステップ41でYESのときは、flag3=0とする。
【0168】
(ステップ43)
ステップ41でNOのときは、flag3=1とする。
【0169】
(ステップ44)
ステップ39でNOのときは、flag3=1とし、タイマtをリセットする。
【0170】
(ステップ45)
エンジン停止条件を判断するステップが終了したら(ステップ38でYESのとき)、エンジン停止指令を演算するステップに進む。
【0171】
(ステップ46)
ここでは先ず、flag3=0であるか否かを判定する。
【0172】
(ステップ47)
flag3=0のときは、abs[TPr]<Pr max、かつavg[TPr,T]<C、かつSOC>SOC1の状態が少なくとも設定時間toを継続しているので、エンジン停止を指令し、エンジンクラッチがあればクラッチ切離しを指令する。
【0173】
(ステップ48)
同時に、エンジン分担分のパワーを、充放電装置15batからのバッテリパワー供給に切換える。また、Pengine max=0とする。
【0174】
(ステップ49)
flag3=0でないとき、すなわちflag3=1のときは、エンジン停止条件が解除された要復帰時であるから、エンジン再起動を指令する。
【0175】
(ステップ50)
エンジン停止指令を演算するステップが終了したら(ステップ45でYESのとき)、充電要求域での放電リミット(図14における点線)を変更するステップに進む。このステップは、オプションである。
【0176】
(ステップ51)
ここでは先ず、SOCが充電要求域にあるか否かを判定する。
【0177】
(ステップ52)
SOCが充電要求域にある場合は、動力装置15の放電リミットPr maxをほぼ0にする。
【0178】
(ステップ53)
SOCが充電要求域にない場合は、動力装置15の放電リミットPr maxをそのままにする。
【0179】
この充電要求域での放電リミット変更ステップが終了したら(ステップ50でYESのとき)、スタートに戻る。
【0180】
次に、図19は、バッテリ側充放電ベース要求パワーPr2を演算する第1段階の演算フローを示すフローチャートである。
【0181】
(ステップ61)
マキシマム選択回路57により、通常運転域でのバッテリ分担分Pr1'を演算する。すなわち、動力装置15自体の充放電要求パワーPr1と、通常運転域でのバッテリ分担パワーレベルBとで、大きい方をバッテリ分担分Pr1'とする。
【0182】
(ステップ62)
バッテリ運転域を判断し、運転域による充放電要求パワーPr1''を演算するステップに進む。
【0183】
(ステップ63)
ここでは先ず、SOCが充電要求域の境界値SOC1以下であるか否かを判定する。
【0184】
(ステップ64)
SOCがSOC1以下である場合は、バッテリは充電要求域にあると判断し、Pr1''=Pr1とする。
【0185】
(ステップ65)
SOCが放電要求域の境界値SOC2以上であるか否かを判定する。
【0186】
(ステップ66)
SOCがSOC2以上である場合は、バッテリは放電要求域にあると判断し、Pr1''=Pr1'とする。
【0187】
(ステップ67)
SOCがSOC1<SOC<SOC2の場合は、バッテリはエンジン(またはバッテリ)優先域にあると判断し、Pr1''=Pr1'とする。
【0188】
(ステップ68)
バッテリ運転域の判断とPr1''の演算ステップが終了したら(ステップ62でYESのとき)、通常運転域の判断をするステップに進む。
【0189】
(ステップ69)
ここでは先ず、SOCが、通常運転域の下限境界値SOC3と上限境界値SOC4との間にあるか否かを判定する。
【0190】
(ステップ70)
SOCが、下限境界値SOC3と上限境界値SOC4との間にあるときは、バッテリは通常運転域にあると判定する。
【0191】
(ステップ71)
SOCが、下限境界値SOC3と上限境界値SOC4との間にないときは、バッテリは通常運転域にないと判定する。
【0192】
(ステップ72)
通常運転域の判断ステップが終了したら(ステップ68でYESのとき)、充放電装置制御用コンバータ15conへのバッテリ側充放電ベース要求パワーPr2を演算するステップに進む。
【0193】
(ステップ73)
ここでは、ミニマム選択回路52は、充放電要求パワーPr1''(充放電リミット制限を受けた場合は、そのリミット制限された充放電要求パワーPr1''')と、トータル要求パワーTPrとで小さい方の値を選択して、その値をバッテリ側充放電ベース要求パワーPr2とする。
【0194】
このPr2の演算ステップが終了したら(ステップ72でYESのとき)、スタートに戻る。
【0195】
次に、図20は、最終要求パワー指令Prを演算する第2段階の演算フローを示すフローチャートである。
【0196】
(ステップ81)
力行状態の判断をするステップに進む。
【0197】
(ステップ82)
ここでは先ず、図18に示されたflag2=1(力行状態)でないか否かを判定する。flag2=1でないときは戻る。
【0198】
(ステップ83)
flag2=1(力行状態)の判断をしたら、エンジンパワー不足分Aを演算する。
【0199】
A=−Pengine max+(TPr−Pr2)である。
【0200】
(ステップ84)
バッテリ運転域を判断してバッテリ状態がエンジン(またはバッテリ)優先域にある場合は、ケース1とする。
【0201】
(ステップ85)
バッテリ運転域を判断してバッテリ状態が放電要求域にある場合は、ケース2とする。
【0202】
(ステップ86)
バッテリ運転域を判断してバッテリ状態が充電要求域にある場合は、ケース3とする。
【0203】
(ステップ87)
バッテリ状態がケース3の充電要求域にある場合は(ステップ86でYESのとき)、充電要求域でのエンジンパワー不足分Aの再演算をするステップに進む。
【0204】
(ステップ88)
ここでは先ず、Aが0以下のケース3-1(エンジンパワーが足りている場合)であるか否かを判断する。
【0205】
(ステップ89)
Aが0より大きなケース3-2であるか否かを判断する。
【0206】
(ステップ90)
ケース3-2である場合は、エンジンパワーは不足しているが、充電要求域ではバッテリ放電を0とするため、A=0とする。
【0207】
(ステップ91)
ステップ87〜90のオプションとして以下の条件演算を実施してもよい。
【0208】
(ステップ92)
SOCが充電要求域内でかつ通常運転域内(SOC3<SOC<SOC1)にあるか否かを判断する。
【0209】
(ステップ93)
SOCが通常運転域内にある場合は、A=K3・Aとする。K3は、0以上かつ1未満で、かつPr'=Pr2+K3・A<0を満たす充電要求域での補正係数である。
【0210】
(ステップ94)
SOCが通常運転域内にない場合は、Pr=Pr2+A、A=0とする。すなわち、Pr=Pr2とする。
【0211】
(ステップ95)
ステップ84、85、88でYESのとき、およびステップ93、94に続いて、ステップ95に進み、エンジンパワー不足分をカバー演算するステップに進む。
【0212】
(ステップ96)
ここでは先ず、Aが0以下であるか否かを判定する。
【0213】
(ステップ97)
Aが0以下である場合(エンジンパワーが足りている場合)は、Pr=Pr2とする。
【0214】
(ステップ98)
Aが0より大である場合(エンジンパワーが不足している場合)は、Pr=Pr2+Aとする。
【0215】
(ステップ99)
エンジンパワー不足分カバー演算が終了したら(ステップ95でYESのとき)、放電リミットによる補正演算ステップに進む。
【0216】
(ステップ100)
ここでは先ず、充放電装置制御用コンバータ15conへの最終要求パワー指令Prがその放電リミットPr max以下であるか否かを判定する。
【0217】
(ステップ101)
最終要求パワー指令Prが放電リミットPr max以下の場合は、Pr=Prとする。
【0218】
(ステップ102)
最終要求パワー指令Prが放電リミットPr maxより大きい場合は、Pr=Pr max、TPr=TPr・(Pr/Pr max)、A=A・(Pr/Pr max)とする。
【0219】
最後に、この放電リミットによる補正演算ステップが終了したら(ステップ99でYESのとき)、スタートに戻る。
【0220】
次に、エンジン停止する負荷条件を具体的に説明する。
【0221】
エンジン負荷Cが下記のエンジン負荷C以下のときに、エンジンを停止するとともに、充放電装置15batより充放電装置制御用コンバータ15conおよび電動発電機制御用インバータ12invを経て電動発電機12mgに駆動パワーを供給する。
【0222】
C =(Ph/ηE1)+(Pb/ηE2)
=({(Ph/ηB1)+(Pb/ηB2)}/ηE3/ηb)・ηe
【0223】
ここで、
ηE1は、第1駆動機械11からパラレル・ハイブリッド・ブロック10のアクチュエータ(油圧操作機器)19を経て負荷20に至るエンジンルートの全機器効率(ただしエンジン効率を除く)である。
【0224】
ηE2は、第1駆動機械11から電動発電機12mg、電動発電機制御用インバータ12inv、直接駆動ブロック30aのインバータ31invおよび電動発電機31mgを経て負荷32に至るエンジンルートの全機器効率(ただしエンジン効率を除く)である。
【0225】
ηE3は、第1駆動機械11から電動発電機12mg、電動発電機制御用インバータ12inv、充放電装置制御用コンバータ15conを経て充放電装置15batに至るエンジンルートの全機器効率(ただしエンジン効率を除く)である。
【0226】
ηB1は、充放電装置15batから充放電装置制御用コンバータ15con、電動発電機制御用インバータ12inv、電動発電機12mgおよびアクチュエータ19を経て負荷20に至るバッテリルートの全機器効率(ただしエンジン効率を除く)である。
【0227】
ηB2は、充放電装置15batから充放電装置制御用コンバータ15con、直接駆動ブロック30aまたは独立操作機器ブロック30bの電動発電機制御用インバータ31invおよび電動発電機31mgを経て負荷32に至るバッテリルートの全機器効率(ただしエンジン効率を除く)である。
【0228】
Phは、パラレル・ハイブリッド・ブロック10の負荷20の要求パワーである。
【0229】
Pbは、直接駆動ブロックまたは独立操作機器ブロック30の負荷32の要求パワーである。
【0230】
ηeは、エンジン負荷Cでのエンジン効率であり、負荷が下がると低下してくる。
【0231】
ηbは、エネルギ補給時のエンジン効率であり、高効率点で運転できるとしている。
【0232】
これらの値は、機器が決まれば求まるものであるから、エンジン負荷C、Cを演算でき、エンジン負荷Cがエンジン負荷C以下のときに、第1駆動機械(エンジン)11を停止して、充放電装置(バッテリ)15batよりパワーを供給する。
【0233】
次に、この実施の形態の作用効果を説明する。
【0234】
力行時は、第1駆動機械11からのパワー供給を原則とし、第1駆動機械11の最大出力パワー以上の負荷分は動力装置15から第2駆動機械12を経て供給する。回生時は、動力装置15に負荷の回生エネルギを回収する。このように制御することで、第1駆動機械11をできるだけ高負荷率のポイントで効率良く運転できるとともに、動力装置15の充放電ロスをできるだけ0に近づけて、エネルギ損失を減少させることができる。
【0235】
すなわち、図2に示されるように第1駆動機械11と第2駆動機械12および動力装置15のパワー容量を適切に設計することにより、ベース負荷は第1駆動機械11が受け持ち、回生エネルギの範囲内で動力装置15がピーク負荷を分担することが可能になり、充放電ロスを最小限にできる。
【0236】
このように、ハイブリッド制御システムで種々の運転状態に応じて変化する負荷に対し、第1駆動機械11を高負荷率のポイントで運転することでその運転効率を高めるとともに、第2駆動機械12に対する動力装置15の充放電ロスを抑制できるので、システム全体として第1駆動機械11と第2駆動機械12および動力装置15とを最適分担制御して高効率で自動運転できるハイブリッド制御システムを提供できる。
【0237】
具体的には、エンジンとバッテリの両方で負荷にパワーを供給するとともに負荷からバッテリにパワーを回収する際に、ハイブリッドシステム全体を高効率(エンジン燃料等の消費を最小)に運転できる制御システム(およびアルゴリズム)を構築できる。
【0238】
さらに具体的には、第1段階の演算回路47により演算された負荷側と動力装置側の両方の要求パワーを満足するベース要求パワーPr2に基づいて、第2段階の演算回路48で適切な最終要求パワーPrを演算できる。
【0239】
ミニマム選択回路52により、動力装置15側の充放電要求パワーと負荷側のトータル要求パワーとの両方の要求を満足できる制御が可能となる。
【0240】
比較回路48aにより、トータル要求パワーTPrと第1駆動機械11の最大出力パワーPengine maxとを比較することで、第1駆動機械11の力行パワー不足分をカバーできるか否かを確認した上で、力行時最終要求パワー演算回路48bにより、比較回路48aの出力の正負に応じて第1駆動機械11のパワー不足分を適切にカバー演算できる。
【0241】
SOCにより動力装置15の充放電容量は大きく変動するので、充電・放電両方の容量を所定内に保つには、SOC中間域で運転することが必要となるが、充放電要求パワー演算回路55は、充電要求域および放電要求域により、充電状態によって強制的に充電要求指令または放電要求指令を出力することができるので、システムの安定性を向上できる。
【0242】
特に、最適充電状態SOCopt付近で充放電要求パワーPr1を0とするヒステリシス特性を備えた充放電要求パワー演算回路55は、最適充電状態SOCopt付近を離れると充放電パワー要求が発生するので、常に最適充電状態SOCopt付近での高効率の運転ができ、かつ動力装置の容量を過度に大きくする必要がなくなり、小型化も図れる。すなわち、種々の負荷状態に対して、自動的に運転域をSOC中間域に保つことができ、これにより動力装置15の設備容量を小さくできる。
【0243】
ヒステリシス付きの充放電要求パワー演算回路55と、ミニマム選択回路52とを備えた制御システムにより、SOCの状態によっては指令を強制的に充電要求指令または放電要求指令とすることができ、システムの安定性を向上できる。
【0244】
第1駆動機械11よりも第2駆動機械12および動力装置15の充放電装置15batを優先使用できる優先選択回路60を設け、優先使用するよう切換えるので、制御システムを一層汎用化でき、運転のフレキシビリティを増すことができる。
【0245】
力行時でも第1駆動機械11のエンジンがアイドル状態または低負荷状態では、これらの状態を検出して自動的にエンジンを停止し、充放電装置15batのバッテリなどからパワーを供給する機能を組込むことで、エンジンでの燃料消費を抑制できるため、一層の高効率運転が可能となる。
【0246】
次に、図21は、パラレルハイブリッド制御システムの他の実施の形態を示し、図1に示されたパラレルハイブリッド制御システムと異なる点は、直接駆動ブロックまたは独立操作機器ブロック30が設置されていない構成である。他の構成は、図1に示されたものと同様であるので、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0247】
次に、図22および図23に基づき、本発明に係るハイブリッド制御システムのさらに別の実施の形態であるシリーズハイブリッド制御システムの実施の形態を説明する。なお、この実施の形態において、図1に示されたものと同様の部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0248】
図22に示されるように、エンジンなどの動力装置11eと、この動力装置11eにより駆動される発電機11gと、この発電機11gからの出力を制御する発電機制御用インバータ11invとを備えた第1駆動機械11aが、第2駆動機械12に対して直列に設置されている。すなわち、発電機制御用インバータ11invが、電気母線13により、第2駆動機械12の電動発電機制御用インバータ12invおよび動力装置15の充放電装置制御用コンバータ15conに接続されている。
【0249】
さらに、発電機制御用インバータ11inv、電動発電機制御用インバータ12inv、充放電装置制御用コンバータ15con、アクチュエータ19および所要動力演算装置21には、制御監視信号線22を介して制御装置としてのシステム制御器23が接続されている。
【0250】
このシステム制御器23は、図7および図8に示されたパラレルハイブリッドシステムと同様のものである。ただし、パラレルハイブリッドシステムの場合は、ハイブリッド制御システム側で特に制御しなくても、エンジンガバナ制御回路44が、(TPr−Pr)分をエンジン側が自動的に分担するようにエンジンガバナを制御するが、シリーズハイブリッドシステムでは、図23に示されるように、(TPr−Pr)になるように発電機制御用インバータ11invへのパワー指令PGrを演算する発電機制御指令演算回路61が必要となる。
【0251】
このように、本方式は、パラレルハイブリッドシステム、シリーズハイブリッドシステムおよびそれらの組合せたシステムのいずれに対しても適用できる汎用性のあるハイブリッド制御システムを提供できる。
【0252】
また、システム全体として第1駆動機械11と第2駆動機械12および動力装置15とを高効率で最適分担制御できるハイブリッド式作業機械を提供できる。
【0253】
本発明は、例えば油圧ショベルなどの建設機械または作業機械に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0254】
【図1】本発明に係るハイブリッド制御システムの一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】同上システムをイメージ化した説明図である。
【図3】同上システムにおけるパラレル・ハイブリッド・ブロックのアクチュエータを示す回路図である。
【図4】同上システムにおける電気式の直接駆動ブロックを示す回路図である。
【図5】同上システムにおける油圧式の独立操作機器ブロックを示す回路図である。
【図6】同上システムを搭載した本発明に係るハイブリッド式作業機械の側面図である。
【図7】同上システムにおける制御装置のブロック図である。
【図8】同上システムにおける制御装置の充放電要求パワー指令演算回路を機能ブロック別に分けて表記したブロック図である。
【図9】同上システムにおける制御装置の優先方式選択オプションが有る場合の充放電ベース要求パワー演算回路を示すブロック図である。
【図10】同上システムにおける制御装置の優先方式選択オプションがない場合の充放電ベース要求パワー演算回路を示すブロック図である。
【図11】同上システムにおける制御装置の第2段階の演算回路を展開したブロック図である。
【図12】同上システムにおける制御装置の充放電要求パワー演算回路の基本特性を示す特性図である。
【図13】同上システムにおけるバッテリ特性を示す特性図である。
【図14】同上システムにおける制御装置の充放電要求パワー演算回路のヒステリシス付き特性を示す特性図である。
【図15】同上システムにおける制御装置の充放電要求パワー演算回路のバッテリ優先モード特性を示す特性図である。
【図16】同上システムにおける全体的な制御フローを示すフローチャートである。
【図17】同上システムにおけるエンジン・バッテリ分担制御フローを示すフローチャートである。
【図18】同上システムにおける負荷状態判断およびエンジン停止指令出力の制御フローを示すフローチャートである。
【図19】同上システムにおける充放電ベース要求パワーを演算する第1段階の演算フローを示すフローチャートである。
【図20】同上システムにおける最終要求パワー指令を演算する第2段階の演算フローを示すフローチャートである。
【図21】本発明に係るパラレルハイブリッド制御システムの他の実施の形態を示すブロック図である。
【図22】本発明に係るハイブリッド制御システムのさらに別の実施の形態であるシリーズハイブリッド制御システムを示すブロック図である。
【図23】同上シリーズハイブリッド制御システムにおける発電機制御指令演算回路を示すブロック図である。
【図24】エンジン負荷率−エンジン効率特性を示す特性図である。
【符号の説明】
【0255】
1 ハイブリッド式作業機械としてのハイブリッド式油圧ショベル
11 第1駆動機械(エンジン)
12 第2駆動機械(電動発電機)
15 動力装置
15bat 充放電装置
20,32 負荷
23 制御装置としてのシステム制御器
47 第1段階の演算回路
48 第2段階の演算回路
48a 比較回路
48b 力行時最終要求パワー演算回路
52 ミニマム選択回路
55 充放電要求パワー演算回路
60 優先選択回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
力行機能のみを有する第1駆動機械と、
力行および回生機能を有する第2駆動機械と、
第2駆動機械からの回生エネルギを充電するとともに第2駆動機械に電気エネルギを放電可能な動力装置と、
力行時は第1駆動機械の最大出力パワーまでは第1駆動機械から負荷へパワーを供給し、第1駆動機械の最大出力パワーを超えた負荷分は動力装置から第2駆動機械を経て供給し、回生時は第2駆動機械を経て動力装置に負荷からの回生エネルギを回収する制御装置と
を具備したことを特徴とするハイブリッド制御システム。
【請求項2】
制御装置は、
動力装置側の充放電要求パワーと負荷側のトータル要求パワーとから両方の要求パワーを満足するベース要求パワーを演算する第1段階の演算回路と、
ベース要求パワーに第1駆動機械のパワー不足分を追加補正して動力装置に制御指令として出力される最終要求パワーを演算する第2段階の演算回路と
を具備したことを特徴とする請求項1記載のハイブリッド制御システム。
【請求項3】
第1段階の演算回路は、
動力装置の充電状態に応じた充放電要求パワーを演算する充放電要求パワー演算回路を備え、
充放電要求パワー演算回路には、充電側の要求パワーを演算する充電要求域と、放電側の要求パワーを演算する放電要求域とが設けられた
ことを特徴とする請求項2記載のハイブリッド制御システム。
【請求項4】
第1段階の演算回路は、
動力装置側の充放電要求パワーと負荷側のトータル要求パワーとで小さい方の値を選択するミニマム選択回路
を具備したことを特徴とする請求項2または3記載のハイブリッド制御システム。
【請求項5】
第2段階の演算回路は、
トータル要求パワーと第1駆動機械の最大出力パワーおよびベース要求パワーとを比較する比較回路と、
この比較回路の出力の正負に応じて第1駆動機械のパワー不足分をカバー演算する力行時最終要求パワー演算回路と
を具備したことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか記載のハイブリッド制御システム。
【請求項6】
充放電要求パワー演算回路は、
最適充電状態付近で充放電要求パワーを0とするヒステリシス特性を備えた
ことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか記載のハイブリッド制御システム。
【請求項7】
第1段階の演算回路は、
第1駆動機械よりも第2駆動機械および動力装置を優先使用するよう切換える優先選択回路
を具備したことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか記載のハイブリッド制御システム。
【請求項8】
第1駆動機械は、エンジンを備え、
第2駆動機械は、電動発電機を備え、
動力装置は、充放電装置を備え、
制御装置は、
アイドリング状態および低負荷状態の少なくとも一方を検出して、自動的にエンジンを停止し、充放電装置からのパワー供給に切換え、要復帰時にはエンジンを再起動させる機能を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか記載のハイブリッド制御システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか記載のハイブリッド制御システムを搭載した
ことを特徴とするハイブリッド式作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2007−332921(P2007−332921A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168029(P2006−168029)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】