説明

ハイブリッド建設機械

【課題】パワーユニットの全長を短く抑えながら、発電電動機を効率良く冷却する。
【解決手段】エンジンハウジング12と電動機ハウジング13を発電電動機2のステータの外周で結合し、冷媒通路22をステータに対して軸方向にオフセットして配置する構成を前提として、電動機ハウジング13の内周側をエンジンハウジング側に張り出し、この張り出し部21を含めた電動機ハウジング13の内周面をステータコア10の外周面に、ステータ軸方向の全幅部分で接触させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンに発電電動機を接続し、かつ、発電電動機を冷却するハイブリッド建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンと発電電動機と油圧ポンプを直列に接続してパワーユニットを構成するハイブリッドショベルを例にとって背景技術を説明する。
【0003】
このハイブリッドショベルにおいては、エンジンに発電電動機と油圧ポンプを接続し、油圧ポンプの吐出油により油圧アクチュエータを駆動する一方、発電電動機の発電機作用によって蓄電器に充電し、適時、この蓄電器電力により発電電動機に電動機作用を行わせてエンジンをアシストするように構成される。
【0004】
このハイブリッドショベルにおいて、電動機ハウジングに冷媒通路を設け、水等の冷媒とステータとの熱交換によってステータ、つまり発電電動機全体を冷却する構成をとるものが公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−181273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この場合、冷却効率の点で、冷媒通路をステータの外周に設けるのが望ましい。
【0007】
ところが、エンジンハウジングと電動機ハウジングをステータの外周で結合する構成をとる場合には冷媒通路をステータ外周に設けることができない。このため、同通路をステータ外周(ハウジング結合面)に対して軸方向にオフセットして設けることになる。
【0008】
しかし、この構成では、冷媒通路がステータから大きく離間するため伝熱ロスが多くなって冷却効率が悪くなる。
【0009】
一方、対策として、特許文献1に示されているようにステータの位置をハウジング結合面から軸方向にずらしてその外周に冷媒通路を設けること(ステータと冷媒通路の両者をハウジング結合面からずらす)ことが考えられる。
【0010】
しかし、これでは電動機ハウジングの軸方向寸法(軸長)が大きくなるため、パワーユニットをエンジンルームという限られたスペースに設置するために同ユニットの全長をできるだけ短縮したいという要請に応えられなくなる。
【0011】
そこで本発明は、パワーユニットの全長を短く抑えながら、発電電動機を効率良く冷却することができるハイブリッド建設機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する手段として、本発明においては、エンジンに発電電動機が接続され、この発電電動機は、エンジンのクランクシャフトに接続されるロータと、このロータの外周に配置されたステータとが電動機ハウジング内に収容されて成り、この電動機ハウジングが上記ステータの外周でエンジンのエンジンハウジングに結合されるハイブリッド建設機械において、上記電動機ハウジングの、上記エンジンハウジングと結合されるエンジンハウジング側端部の内周側に、エンジンハウジング内に嵌まり込む張り出し部を全周に亘って設け、この張り出し部を含む電動機ハウジングの内周面を上記ステータの外周面に面接触させる一方、上記ステータを冷却する冷媒が流される冷媒通路を、上記電動機ハウジングとエンジンハウジングの結合面に対して軸方向にずれた位置で、電動機ハウジングに設けたものである。
【0013】
このように、エンジンハウジングと電動機ハウジングを発電電動機のステータの外周で結合し、冷媒通路をステータに対して軸方向にオフセットして配置する構成を前提として、電動機ハウジングをエンジンハウジング側に張り出し、この張り出し部を含めた電動機ハウジングの内周面をステータ外周面に面接触させる構成としたから、ステータと電動機ハウジングの接触面積(伝熱面積)を増加させて冷却効率を上げることができる。
【0014】
いいかえれば、電動機ハウジングの軸長を増やさずに、必要なステータ(発電電動機)の冷却性能を確保することができる。
【0015】
本発明において、上記張り出し部を含む電動機ハウジングの内周面を上記ステータの外周面に、ステータの軸方向の全幅部分で接触させるのが望ましい(請求項2)。
【0016】
この構成によれば、接触面積を最大限に大きくとって伝熱性を高めることができる。
【0017】
また本発明においては、上記電動機ハウジングの内周を、相対的に直径寸法の大きい大径面と、直径寸法の小さい小径面が垂直面を介して連続する段状に形成するとともに、上記張り出し部を上記大径面に連続して設け、張り出し部を含めた大径面をステータの外周面に面接触させる一方、上記垂直面を上記ステータのエンジンと反対側の側面に面接触させるのが望ましい(請求項3)。
【0018】
この構成によれば、電動機ハウジングをステータの側面にも面接触させることができるため、伝熱面積をさらに増加させることができる。
【0019】
一方、本発明において、上記電動機ハウジングの張り出し部を上記エンジンハウジングの内側にインロー嵌合させるのが望ましい(請求項4)。
【0020】
このように、伝熱面積の増加のための張り出し部をインロー嵌合に利用することにより、両ハウジングの同心度を確保し、かつ、組立性を改善することができる。
【0021】
さらに本発明においては、上記電動機ハウジングの外周面に、同ハウジングの外周側に開口する凹溝と、この凹溝の開口を覆うカバーとを周方向に設けることによって上記冷媒通路を構成するのが望ましい(請求項5)。
【0022】
この構成によれば、冷媒通路をハウジング外周面に形成するため、ハウジング内周側に設けた場合のように水漏れ時にステータやロータが浸水するおそれがない。
【0023】
しかも、凹溝とカバーとによって冷媒通路を構成するため、独立した冷媒通路をハウジング外周に取付ける場合と比べて加工、コストの点で有利となる。
【0024】
さらに本発明において、上記エンジンハウジング及び電動機ハウジングの相結合される端部にそれぞれ外周側に突出する放熱フィン兼用のフランジを設け、このフランジ同士を結合するように構成するのが望ましい(請求項6)。
【0025】
この構成によれば、結合用のフランジを、外気との熱交換を行う放熱フィンとして作用させることができるため、放熱性を高め、冷却効率を一層向上させることができる。
【0026】
一方、本発明において、上記電動機ハウジングのエンジンと反対側に油圧ポンプのポンプハウジングを結合し、上記エンジンハウジングと電動機ハウジングの結合面間、及び電動機ハウジングとポンプハウジングの結合面間の少なくとも一方に断熱材を介在させるのが望ましい(請求項7)。
【0027】
この構成によれば、エンジンに発電電動機と油圧ポンプを直列に接続するハイブリッド建設機械において、熱源となるエンジンまたは油圧ポンプから電動機ハウジングへの伝熱をハウジング結合面の断熱材で抑え、冷媒通路によるステータの冷却効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、パワーユニットの全長短縮と、発電電動機の良好な冷却性能を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態によるエンジン、発電電動機、油圧ポンプの結合部分の半部断面側面図である。
【図2】図1の一部を拡大した図である。
【図3】実施形態における電動機ハウジングの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態を図1〜図3によって説明する。
【0031】
実施形態は、図1に示すようにエンジン1、発電電動機2、油圧ポンプ3の三者を直列に接続してパワーユニットを構成したハイブリッドショベルを適用対象としている。
【0032】
このショベルにおいては、動力伝達構造として、エンジン1の出力軸であるクランクシャフト4にフライホイール5が取付けられ、このフライホイール5に発電電動機2のロータシャフト6が接続されるとともに、このロータシャフト6にカップリング7を介してポンプシャフト8が接続されている。
【0033】
ロータシャフト6の外周にはロータコア9が設けられてロータが構成され、このロータの外周に、ステータコア10と、このステータコア10に巻回されたコイル11から成るステータが配置されて発電電動機2が構成される。
【0034】
なお、図の複雑化を避けるため、ロータ及びステータについての符号を省略している。
【0035】
一方、ハウジング結合構造として、エンジンハウジング12と電動機ハウジング13、電動機ハウジング13とポンプハウジング14がそれぞれ次のように結合されている。
【0036】
A. エンジン、電動機両ハウジング12,13の結合
両ハウジング12,13の相結合される端部に、それぞれ外周側に鍔状に突出する放熱フィン兼用のフランジ15,16が設けられ、このフランジ15,16同士が、ステータ(ステータコア10)の外周において、互いの間に断熱材17を挟み込んだ状態で、周方向複数個所でボルト連結されることによって両ハウジング12,13が結合されている。
【0037】
なお、エンジンハウジング12は必要な強度を確保するために鉄等の磁性体で形成するのが望ましい。
【0038】
これに対し電動機ハウジング13については、磁性体で形成すると磁力の漏れによって発電電動効率が低下するおそれがあるため、非磁性体にて形成するのが望ましい。
【0039】
B. 電動機、ポンプ両ハウジング13,14の結合
両ハウジング13,14の相結合される端部にもフランジ18,19が設けられ、このフランジ18,19同士が、互いの間に断熱材20を挟み込んだ状態で、周方向複数個所でボルト連結されることによって両ハウジング13,14が結合されている。
【0040】
電動機ハウジング13は全体として円筒状に形成されている。
【0041】
この電動機ハウジング13の内周は、相対的に直径寸法の大きい大径面13aと、直径寸法の小さい小径面13bが垂直面13cを介して連続する段状に形成されている(図2参照)。
【0042】
この電動機ハウジング13の、エンジンハウジング12側の端部の内周側に、エンジンハウジング12に向けて突出する張り出し部21が、同ハウジング全周に亘るリング状に一体に設けられ、この張り出し部21がエンジンハウジング12の内側にインロー嵌合している。
【0043】
張り出し部21は大径面13aと連続して設けられ、この張り出し部21を含む大径面13aがステータコア10の外周面に、ステータ軸方向の全幅部分で面接触する一方、垂直面13cがステータコア10の反エンジン側の側面に面接触している。
【0044】
一方、ステータを冷却する冷媒(水、油等の液体または冷媒ガス)が流される冷媒通路22が、エンジン、電動機両ハウジング12,13の結合面、つまり、フランジ15,16の結合面であってステータの外周に対して軸方向(反エンジン側)にオフセットした位置で電動機ハウジング13に設けられている。
【0045】
図2中、αは冷媒通路22のハウジング結合面からのオフセット量で、このオフセット量αをできるだけ小さくする(冷媒通路22をステータに近い位置に設ける)のが望ましい。
【0046】
この冷媒通路22は、電動機ハウジング13の外周面に、同ハウジング外周側に開口する凹溝23と、この凹溝23の開口を覆うカバー24とをハウジング全周に亘って設けることによって構成され、図示しないポンプにより配管25を通じて外部から冷媒がこの冷媒通路22に供給され、循環する。
【0047】
図2,3中、26,26はカバー取付部分をシールするOリングである。
【0048】
なお、図の複雑化を避けるために、図1において電動機ハウジング13の大径、小径、垂直各面13a,13b,13c、冷媒通路22を構成する凹溝23及びカバー24についての符号を省略している。
【0049】
また、図3において、冷媒通路22のカバー24及び配管25の図示を省略している。
【0050】
このように、エンジンハウジング12と電動機ハウジング13を発電電動機2のステータ(ステータコア10)の外周で結合し、冷媒通路22をステータに対して軸方向にオフセットして配置する構成を前提として、電動機ハウジング13をエンジンハウジング側に張り出し、この張り出し部21を含めた電動機ハウジング13の内周面(大径面13a)をステータ外周面に接触させる構成としたから、ステータと電動機ハウジング13の接触面積(伝熱面積)を大きくとることができる。
【0051】
これにより、上記オフセットによる伝熱ロス分を接触面積の増加によって十分カバーすることができる。
【0052】
いいかえれば、電動機ハウジング13の軸長を増やさずに、必要なステータ(発電電動機2)の冷却性能を確保することができる。
【0053】
また、実施形態によると、次の効果を得ることができる。
【0054】
(i) 張り出し部21を含む電動機ハウジング13の内周面(大径面13a)をステータ外周面に、ステータの軸方向の全幅部分で面接触させ、かつ、垂直面13cをステータの反エンジン側の側面にも面接触させているため、伝熱面積をさらに増加させることができる。
【0055】
(ii) 伝熱面積増加のための張り出し部21をエンジンハウジング12の内側にインロー嵌合させている(張り出し部21をインロー嵌合に利用している)ため、両ハウジング12,13の同心度を確保し、かつ、組立性を改善することができる。
【0056】
(iii) 電動機ハウジング13の外周面に冷媒通路22を構成しているため、冷媒通路をハウジング内周側に設けた場合のように水漏れ時にステータやロータが浸水するおそれがない。
【0057】
しかも、凹溝23とカバー24とによって冷媒通路22を構成するため、独立した冷媒通路をハウジング外周に取付ける場合と比べて加工、コストの点で有利となる。
【0058】
(iv) エンジンハウジング12及び電動機ハウジング13の相結合される端部にそれぞれ外周側に鍔状に突出するフランジ15,16を設け、このフランジ同士を結合しているため、このハウジング結合用のフランジ15,16を、外気との熱交換を行う放熱フィンとして作用させることができる。このため、放熱性を高め、冷却効率を一層向上させることができる。
【0059】
(v) エンジンハウジング12と電動機ハウジング13(フランジ15,16)の結合面間、及び電動機ハウジング13とポンプハウジング14(フランジ18,19)の両結合面間にそれぞれ断熱材17,20を介在させているため、熱源となるエンジン1または油圧ポンプ3から電動機ハウジング13への伝熱をこの断熱材17,20で抑え、冷媒通路22によるステータの冷却効率を高めることができる。
【0060】
なお、断熱材を両ハウジング結合面間の一方のみに設けてもよい。
【0061】
また、本発明はハイブリッドショベルに限らず、エンジンと発電電動機と油圧ポンプが同軸上で接続されるハイブリッド建設機械、またはエンジンと発電電動機とが同軸上で接続され、油圧ポンプは発電電動機と並列状態でエンジンに接続されるハイブリッド建設機械に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 エンジン
2 発電電動機
3 油圧ポンプ
6 発電電動機のロータを構成するロータシャフト
9 同、ロータコア
10 ステータを構成するステータコア
11 同、コイル
12 エンジンハウジング
13 電動機ハウジング
13a 電動機ハウジングの大径面
13b 同、小径面
13c 同、垂直面
14 ポンプハウジング
15 エンジンハウジングのフランジ
16 電動機ハウジングのフランジ
17 断熱材
18 電動機ハウジングのフランジ
19 ポンプハウジングのフランジ
20 断熱材
21 張り出し部
22 冷媒通路
23 冷媒通路を構成する凹溝
24 同、カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに発電電動機が接続され、この発電電動機は、エンジンのクランクシャフトに接続されるロータと、このロータの外周に配置されたステータとが電動機ハウジング内に収容されて成り、この電動機ハウジングが上記ステータの外周でエンジンのエンジンハウジングに結合されるハイブリッド建設機械において、上記電動機ハウジングの、上記エンジンハウジングと結合されるエンジンハウジング側端部の内周側に、エンジンハウジング内に嵌まり込む張り出し部を全周に亘って設け、この張り出し部を含む電動機ハウジングの内周面を上記ステータの外周面に面接触させる一方、上記ステータを冷却する冷媒が流される冷媒通路を、上記電動機ハウジングとエンジンハウジングの結合面に対して軸方向にずれた位置で、電動機ハウジングに設けたことを特徴とするハイブリッド建設機械。
【請求項2】
上記張り出し部を含む電動機ハウジングの内周面を上記ステータの外周面に、ステータの軸方向の全幅部分で面接触させたことを特徴とする請求項1記載のハイブリッド建設機械。
【請求項3】
上記電動機ハウジングの内周を、相対的に直径寸法の大きい大径面と、直径寸法の小さい小径面が垂直面を介して連続する段状に形成するとともに、上記張り出し部を上記大径面に連続して設け、張り出し部を含めた大径面をステータの外周面に面接触させる一方、上記垂直面を上記ステータのエンジンと反対側の側面に面接触させたことを特徴とする請求項1または2記載のハイブリッド建設機械。
【請求項4】
上記電動機ハウジングの張り出し部を上記エンジンハウジングの内側にインロー嵌合させたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド建設機械。
【請求項5】
上記電動機ハウジングの外周面に、同ハウジングの外周側に開口する凹溝と、この凹溝の開口を覆うカバーとを周方向に設けることによって上記冷媒通路を構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイブリッド建設機械。
【請求項6】
上記エンジンハウジング及び電動機ハウジングの相結合される端部にそれぞれ外周側に突出する放熱フィン兼用のフランジを設け、このフランジ同士を結合するように構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイブリッド建設機械。
【請求項7】
上記電動機ハウジングのエンジンと反対側に油圧ポンプのポンプハウジングを結合し、上記エンジンハウジングと電動機ハウジングの結合面間、及び電動機ハウジングとポンプハウジングの結合面間の少なくとも一方に断熱材を介在させたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のハイブリッド建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−223003(P2012−223003A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88013(P2011−88013)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】