説明

ハイブリッド用モータユニットの取付構造

【課題】エンジンおよび変速機の各締結部は既存の仕様のままで、同一方向からの締め付け作業によりハイブリッド用モータユニットを取り付ける。
【解決手段】モータユニット20は、第1締結部21cに貫通して形成される複数の第1貫通孔21c1と、第2締結部21a3に貫通して形成される複数の第2貫通孔21d1と、第2貫通孔21d1に嵌入される複数のメネジ部材51と、を備えている。第1貫通孔21c1は、対応する第1ネジ41の軸部の貫通を許容し、各第1貫通孔21c1の内径は、対応する第1ネジ41の軸部よりも大径であり、かつ第1ネジ41の頭部よりも小径であることと、第2貫通孔21d1の内径は対応する第1ネジ41の頭部よりも大径であり、メネジ部材51は、第2ネジ42のオネジが係合するメネジが内周面に形成された筒部51aと、筒部51aに一体的に形成され第2締結部21a3に係止する係止部51bと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド用モータユニットの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド用モータユニットの取付構造の一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図1に示されているように、ハイブリッド用モータユニットの取付構造においては、モータのモータハウジング6は、モータカバー8を介してエンジンブロックに取り付けられている。また、モータのモータハウジング6は、トルクコンバータハウジング2にネジにより取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−137406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のハイブリッド用モータユニットの取付構造において、エンジンと変速機との間にハイブリッド用モータユニットを組み込む場合、エンジンと変速機を締め付ける複数のネジのピッチ等の変更をしないで、すなわちエンジンおよび変速機の各締結部は既存の仕様のままでハイブリッド用モータユニットを取り付けたいという要請がある。
【0005】
エンジンおよび変速機の各締結部が既存の仕様のままということは、モータユニットのハウジングをエンジンに締結するための複数のネジ(エンジン側ネジ)とモータユニットのハウジングを変速機に締結するための複数のネジ(変速機側ネジ)とは同軸上に配設されているということである。このとき、同一方向からの締め付け作業によりエンジン側ネジと変速機側ネジを締め付けようとすると、エンジン側ネジと変速機側ネジとは同軸上にあるため、何れか一方は締め付けることができないという問題があった。
【0006】
エンジン側ネジと変速機側ネジの位置を所定角度だけ相対的に回転させて同軸上とならない配置とすれば、同一方向からの締め付け作業によりエンジン側ネジと変速機側ネジの両方を締め付けることは可能となる。しかしこの場合には、エンジンに対して変速機が前記所定角度だけ相対的に回転した位置となる。
【0007】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、エンジンおよび変速機の各締結部は既存の仕様のままで、同一方向からの締め付け作業によりハイブリッド用モータユニットを取り付けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係るハイブリッド用モータユニットの取付構造の発明は、電動モータを備えたハイブリッド用モータユニットをエンジンと変速機との間に組み付けて構成されている車両用駆動装置に適用され、エンジンにモータユニットのハウジングを取り付けるとともにモータユニットのハウジングに変速機のハウジングを取り付ける取付構造であって、エンジンまたは変速機のハウジングのうち一方に、モータユニットのハウジングに形成された第1締結部を締結する複数の第1ネジと、エンジンまたは変速機のハウジングのうち他方に、第1締結部に対向してモータユニットのハウジングに形成された第2締結部を締結するとともに各第1ネジと同軸に配設され第1ネジと同一方向から締め付け作業が行われる複数の第2ネジと、第1締結部に貫通して形成される複数の第1貫通孔と、第2締結部に貫通して形成される複数の第2貫通孔と、各第2貫通孔に嵌入される複数のメネジ部材と、を備え、各第1貫通孔は、対応する第1ネジの軸部の貫通を許容し、各第1貫通孔の内径は、対応する第1ネジの軸部よりも大径であり、かつ同第1ネジの頭部よりも小径であることと、各第2貫通孔の内径は、対応する第1ネジの頭部よりも大径であることと、各メネジ部材は、第2ネジのオネジが係合するメネジが内周面に形成された筒部と、筒部に一体的に形成され第2締結部に係止する係止部と、を有することとを備えている。
【0009】
また請求項2に係るハイブリッド用モータユニットの取付構造の発明は、電動モータを備えたハイブリッド用モータユニットをエンジンと変速機との間に組み付けて構成されている車両用駆動装置に適用され、エンジンにモータユニットのハウジングを取り付けるとともにモータユニットのハウジングに変速機のハウジングを取り付ける取付構造であって、エンジンまたは変速機のハウジングのうち一方に、モータユニットのハウジングに形成された第1締結部を締結する複数の第1ネジと、エンジンまたは変速機のハウジングのうち他方に、第1締結部に対向してモータユニットのハウジングに形成された第2締結部を締結するとともに各第1ネジと同軸に配設され第1ネジと同一方向から締め付け作業が行われる複数の第2ネジと、第1締結部に貫通して形成される複数の第1貫通孔と、第2締結部に貫通して形成される複数の第2貫通孔と、各第2貫通孔に嵌入される複数のメネジ部材と、を備え、各第1貫通孔は、対応する第1ネジの軸部の貫通を許容し、各第1貫通孔の内径は、対応する第1ネジの軸部よりも大径であり、かつ同第1ネジの頭部よりも小径であることと、各第2貫通孔の内径は、第1ネジを回転させる工具の軸部よりも大径であり、かつ対応する第1ネジの頭部よりも小径であることと、各メネジ部材は、第2ネジのオネジが係合するメネジが内周面に形成された筒部と、筒部に一体的に形成され第2締結部に係止する係止部と、を有することとを備えている。
【0010】
また請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2において、複数のメネジ部材のうち連続して隣り合うメネジ部材の係止部を一体的かつ連続的に連結する連結部材をさらに備えている。
【0011】
また請求項4に係る発明は、請求項1または請求項2において、メネジ部材の係止部は、第2ネジが締め付けられる前において、その外径は第2貫通孔よりも小径であり、第2ネジが締め付けられた後において、その外径は第2貫通孔よりも大径に変形するように構成されている。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、最初にエンジン(または変速機)とモータユニットのハウジングとが複数の第1ネジを締め付けることにより取り付けられる。このとき、第1ネジは、軸部を備えた工具の軸部先端に取り付けられる。その状態のまま、第1ネジは、第2締結部に設けた第2貫通孔を通過され、第1締結部に設けた第1貫通孔を通過され、エンジン(または変速機)に螺合される。これにより、モータユニットのハウジングの第1締結部がエンジン締結部(または変速機締結部)に締結される。
【0013】
次に、メネジ部材の筒部が、第2締結部に設けた第2貫通孔に第1締結部側から嵌入される。このとき、メネジ部材の係止部は第2締結部に係止する。
【0014】
そして、変速機(またはエンジン)とモータユニットのハウジングとが複数の第2ネジを締め付けることにより取り付けられる。このとき、第2ネジは、軸部を備えた工具(例えば第1ネジと同じ工具)の軸部先端に取り付けられる。その状態のまま、第2ネジは、変速機締結部(変速機締結部の貫通孔)を貫通し、メネジ部材の筒部に螺合される。これにより、モータユニットのハウジングの第2締結部が変速機締結部(またはエンジン締結部)に締結される。
【0015】
このように、第1ネジおよび第2ネジが同軸上に配設される構成となっていても、第1ネジおよび第2ネジを同一方向からの締め付け作業により締め付けることが可能となっている。よって、エンジンおよび変速機の各締結部は既存の仕様のままで、同一方向からの締め付け作業によりハイブリッド用モータユニットを取り付けることができる。
【0016】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、最初にエンジン(または変速機)とモータユニットのハウジングとが複数の第1ネジを締め付けることにより取り付けられる。このとき、第1ネジは、作業者の手作業によって第1締結部に設けた第1貫通孔を通過され、エンジン(または変速機)に仮螺合される。その後、軸部を備えた工具の軸部先端は、第2締結部に設けた第2貫通孔を通過され、第1ネジに取り付けられる。そして、第1ネジは、エンジン(または変速機)に螺合される。これにより、モータユニットのハウジングの第1締結部がエンジン締結部(または変速機締結部)に締結される。
【0017】
そして、請求項1の作用と同様に、メネジ部材の筒部が、第2締結部に設けた第2貫通孔に嵌入される。そして、変速機(またはエンジン)とモータユニットのハウジングとが複数の第2ネジを締め付けることにより取り付けられる。
【0018】
このように、第1ネジおよび第2ネジが同軸上に配設される構成となっていても、第1ネジおよび第2ネジを同一方向からの締め付け作業により締め付けることが可能となっている。よって、エンジンおよび変速機の各締結部は既存の仕様のままで、同一方向からの締め付け作業によりハイブリッド用モータユニットを取り付けることができる。
【0019】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、複数のメネジ部材のうち連続して隣り合うメネジ部材の係止部を一体的かつ連続的に連結する連結部材をさらに備えている。これにより、複数のメネジ部材と連結部材とからなる一体物を一時に取り付けることができるので、メネジ部材を一つずつ第2貫通孔に嵌入する手間を省略することにより作業性を向上させることができる。また、一の第2ネジを締め付ける際には、その第2ネジに対応する一のメネジ部材は連結部材で連結されている他のメネジ部材が他の第2貫通孔に嵌入しているので、一のメネジ部材が締め付けによって共に回転するのを防止する。よって、締め付け作業の作業性を向上させることができる。
【0020】
上記のように構成した請求項4に係る発明においては、請求項1または請求項2において、メネジ部材の係止部は、第2ネジが締め付けられる前において、その外径は第2貫通孔よりも小径であり、第2ネジが締め付けられた後において、その外径は第2貫通孔よりも大径に変形するように構成されている。これにより、第2貫通孔に、メネジ部材の係止部を第1ネジおよび第2ネジの締め付け作業と同じ方向(第1締結部の反対側)から挿入させ、メネジ部材の筒部を第2貫通孔に嵌入させることができる。さらに、第2ネジが締め付けられると、メネジ部材の係止部が第2貫通孔よりも大径に変形するため、モータユニットのハウジングの第2締結部が変速機締結部(またはエンジン締結部)に締結される。これにより、第1ネジ、第2ネジおよびメネジ部材は同一方向から作業することができるため、作業性、組立性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるモータユニットの取付構造をハイブリッド車にハイブリッド車の一実施形態の概要を示す概要図である。
【図2】(a)は、図1に示すモータユニットを含む周辺部分の拡大断面図であり、(b)は、(a)を図示右方向から見た図である。
【図3】図1に示すモータユニットの拡大断面図である。
【図4】(a)は、図2に示す取付スペーサの正面図であり、(b)は上面図である。
【図5】エンジンにモータユニットを取り付ける組立工程を示す図である。
【図6】モータユニットに取付スペーサを取り付ける組立工程を示す図である。
【図7】モータユニットに変速機を取り付ける組立工程を示す図である。
【図8】メネジ部材の変形例を適用したモータユニットの取付構造を示す部分拡大断面図である。
【図9】(a)は、図8に示すメネジ部材の正面図であり、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明によるハイブリッド用モータユニットの取付構造をハイブリッド車に適用した一実施形態について図面を参照して説明する。図1はそのハイブリッド車の構成を示す概要図である。
【0023】
ハイブリッド車Mは、図1に示すように、ハイブリッドシステムによって駆動輪例えば左右後輪Wrl,Wrrを駆動させる車両である。ハイブリッドシステムは、エンジン11および電動モータ22(電動機)の2種類の動力源を組み合わせて使用するパワートレーンである。本実施形態の場合、エンジン11および電動モータ22の少なくとも何れか一方で車輪を直接駆動する方式であるパラレルハイブリッドシステムである。
【0024】
なお、ハイブリッド車Mの車両用駆動装置は、電動モータ22を備えたハイブリッド用モータユニット(以下、モータユニットという。)20をエンジン11と変速機12との間に組み付けて構成されている車両用駆動装置である。また、本発明によるハイブリッド用モータユニットの取付構造は、エンジン11にモータユニット20のハウジング21を取り付けるとともに、モータユニット20のハウジング21に変速機12のハウジング12aを取り付ける取付構造である。
【0025】
ハイブリッド車Mは、エンジン11、モータユニット20、変速機12、プロペラシャフト13、ディファレンシャル装置14、駆動輪(左右後輪)Wrl,Wrrおよび従動輪(操舵輪;左右前輪)Wfl,Wfrを備えている。モータユニット20、変速機12、プロペラシャフト13、およびディファレンシャル装置14は、エンジン11とエンジン11の駆動力によって駆動される駆動輪Wrl,Wrrとの間の駆動経路にその駆動経路に沿って直列に設けられている。駆動経路とは、エンジン11から駆動輪Wrl,Wrrまでの間の経路であって両者間で動力が伝達する経路である。
【0026】
エンジン11は、燃料の燃焼によって駆動力を発生させるものである。エンジン11の駆動力は、モータユニット20、変速機12、プロペラシャフト13、およびディファレンシャル装置14を介して駆動輪Wrl,Wrrに伝達されるように構成されている。変速機12は、本実施形態では、自動変速機である。この変速機12は、一般的な自動変速機であり、ハウジング12a、トルクコンバータ12b、プラネタリギヤユニット(図示省略)、および油圧制御装置(図示省略)を含んで構成されている。なお、変速機12は、自動変速機でなく、マニュアルトランスミッション(手動変速機)やデュアルクラッチトランスミッションなどでもよい。
【0027】
モータユニット20は、図1〜図3に示すように、ハウジング21、電動モータ22、クラッチ23、電磁切替弁24、電動ポンプ25およびリザーバ26を含んで構成されている。なお、図1において電磁切替弁24、電動ポンプ25およびリザーバ26は電動モータ22と別体に記載されているが、実際には電磁切替弁24および電動ポンプ25はクラッチ23とともに電動モータ22と一体化され、リザーバ26はハウジング21内に形成されている。
【0028】
ハウジング21は、図2および図3に示すように、略円筒状に形成された本体ハウジング21aと、本体ハウジング21aの前方開口部を覆うカバーハウジング21bとを備えている。本体ハウジング21a内には、本体ハウジング21a内を軸方向に区画する隔壁部21a1が形成されている。軸方向が前後方向である。また、エンジン11が縦置きである場合には、軸方向は車両前後方向である。図示左方向が前方向であり右方向が後方向である。
【0029】
本体ハウジング21aの前方開口端周縁部には、環状の前フランジ21a2が径方向外側に向けて凸設されている。カバーハウジング21bの外周縁部は、前フランジ21a2に図示しない複数のネジによりネジ止め固定されている。このカバーハウジング21bと前フランジ21a2とが接合している重複部分が、エンジン11にモータユニット20を締結するための第1締結部21cである。
【0030】
第1締結部21cは、エンジン11のエンジン締結部11bに取り付けられる。エンジン締結部11bは、第1締結部21cが当接する部分であり、その範囲内にネジ孔11b1が配設されている。
【0031】
第1締結部21cには、同締結部21cを軸方向に貫通する貫通孔である第1貫通孔21c1が複数形成されている。第1貫通孔21c1は、その内径が対応する各第1ネジ41の軸部よりも大径でありかつ各第1ネジ41の頭部よりも小径となるように設定されている。第1貫通孔21c1は、対応する各第1ネジ41の軸部の貫通を許容するものである。
【0032】
第1ネジ41の頭部頂面には、工具用の六角状の孔が形成されている。なお、六角状の孔以外の孔、溝を形成するようにしてもよい。
【0033】
第1ネジ41の軸部に形成されたオネジは、エンジン11に形成され内周面にメネジが形成されたネジ孔11b1に係合するようになっている。第1ネジ41が締め付けられると、第1ネジ41は第1締結部21cをエンジン11に締結する。第1ネジ41の頭部は軸部よりも大径であり、かつ第1貫通孔21c1の内径よりも大径である。
【0034】
本体ハウジング21aの後方開口端周縁部には、環状の後フランジ21a3が径方向外側に向けて凸設されている。この後フランジ21a3は、第1締結部21cに対向してモータユニット20のハウジング21に形成された第2締結部である。後フランジ21a3には、同後フランジ21a3を軸方向に貫通する貫通孔である第2貫通孔21d1が複数形成されている。第2貫通孔21d1は、その内径が対応する各第1ネジ41の頭部よりも大径となるように設定されている。
【0035】
第2貫通孔21d1には、メネジ部材51がそれぞれ嵌入されている(または若干の隙間をおいて挿入されている)。メネジ部材51は、図4に示すように、第2貫通孔21d1に嵌入され(または若干の隙間をおいて挿入され)かつ第2ネジ42のオネジが係合するメネジが内周面に形成された筒部51aと、筒部51aの一端部(本実施形態では、第1締結部21c側の端部)に一体的に形成され後フランジ21a3に係止する係止部51bと、から構成されている。係止部51bは、第2貫通孔21d1よりも大径となるよう形成されており、その大径部が第2貫通孔21d1の外周縁部に当接して後フランジ21a3に係止する。
【0036】
複数のメネジ部材51のうち連続して隣り合う複数のものは、それらの係止部51bが連結部材52により一体的かつ連続的に連結されている。すなわち、連結部材52は、連続して隣り合うメネジ部材51の係止部51bを一体的かつ連続的に連結するものである。連結部材52は、円弧状に形成されており、その内周面が本体ハウジング21aの外周壁面に沿って当接するようになっている。隣り合うメネジ部材51とそれらを連結する連結部材52とから、一体構造体としての取付スペーサ50が構成されている。本実施形態では、取付スペーサ50は、2つのメネジ部材51,51とそれらを連結する1つの連結部材52とから構成されている。これに限らず、取付スペーサ50は、連続して隣り合う3つ以上のメネジ部材51とそれらを連結する1つの連結部材52とから構成されるようにしてもよい。
【0037】
第2ネジ42は、変速機12のハウジング12aの前方開口端周縁部に環状かつフランジ状に形成された変速機締結部12a1に貫通して形成された貫通孔12a2を貫通し、その軸部のオネジをメネジ部材51のメネジに螺合されるものである。第2ネジ42が締め付けられると、第2ネジ42は変速機締結部12a1を後フランジ21a3に締結する。これにより、モータユニット20と変速機12とが取付固定される。
【0038】
第2ネジ42は、第1ネジ41と同軸に離れた位置に配設され第1ネジ41と同一方向から締め付け作業が行われる。第2ネジ42の頭部は軸部よりも大径である。また、第1ネジ41と第2ネジ42は、軸部の長さおよび外径が同一であり、頭部の外径、形状および工具で回すための溝、穴の形状が同一である同一仕様であることが好ましい。なお、第2ネジ42の頭部頂面には、第1ネジ41と同様に、工具用の六角状の孔が形成されている。また、六角状の孔以外の孔、溝を形成するようにしてもよい。
【0039】
なお元々、モータユニット20がない場合でも、変速機12はエンジン11に直接取り付けられるようになっている。すなわち、エンジン11のネジ孔11b1のピッチと変速機12の第2貫通孔21d1のピッチは同一であり(エンジン11のネジ孔11b1の位置と変速機12の第2貫通孔21d1の位置は一致するようになっているので)、第1ネジ41(または第2ネジ42)を螺着することができる。
【0040】
本体ハウジング21aとカバーハウジング21bと間に形成される空間内に、電動モータ22およびクラッチ23が収納されるようになっている。
【0041】
電動モータ22は、車輪駆動用の同期モータである。電動モータ22は、図1に示すように、エンジン11とエンジン11の駆動力によって駆動される駆動輪Wrl,Wrrとの間の駆動経路に設けられている。電動モータ22の駆動力は、変速機12、プロペラシャフト13、およびディファレンシャル装置14を介して駆動輪Wrl,Wrrに伝達されるように構成されている。
【0042】
電動モータ22は、車両の加速時にはエンジン11の出力を補助し駆動力を高めるものであり、一方車両の制動時には発電を行って回生制動力を駆動輪に発生させるものである。また電動モータ22は、エンジン11の出力により発電を行うものであり、エンジン始動時のスタータの機能としても使える。なお、電動モータ22は、車輪駆動用の同期モータに限定されるものではない。
【0043】
電動モータ22は、図2および図3に示すように、本体ハウジング21aに固定されたステータ22aと、ステータ22aの径方向内側に同軸回転可能に配設されたロータ22bと、電動モータ22の出力軸である出力回転体23bとを備えている。
【0044】
ステータ22aは、円筒状に形成されており、珪素鋼板(図示せず)を軸方向に積層して構成されている。ステータ22aには、ロータ22bを回転させる磁界を形成するためのコイル(図示省略)が巻回されている。コイルは、バスリング(図示省略)を介してインバータ15に接続されている。ステータ22aは、本体ハウジング21a内にその内周壁面に沿うように配設されている。なお、本願に係る明細書および特許請求の範囲において「同軸に」とは中心軸または回転軸が同軸であることを示す。
【0045】
ロータ22bは、円筒状に形成されており、複数の鋼板を軸方向に積層して構成されている。ロータ22bは、ステータ22aと所定のギャップを保持しながら対向するように設けられている。ロータ22bには、複数の界磁用磁石(図示省略)が周方向に沿って所定間隔をおいて設けられている。
【0046】
クラッチ23は、エンジン11と電動モータ22との間の前記駆動経路上に直列に設けられ、係合時にエンジン11と電動モータ22との間の動力が伝達可能であり一方解放時に前記動力を遮断するクラッチである。本実施形態においては、クラッチ23は、通常時(非制御時)に動力を伝達するノーマルクローズ型のクラッチである。クラッチ23は、通常時に動力を遮断するノーマルオープン型のクラッチでもよい。
【0047】
クラッチ23は、入力回転体23a、出力回転体23b、および断接部23cを含んで構成されている。
【0048】
入力回転体23aは、ハウジング21に回転可能に支承されかつハイブリッド車M(車両)に搭載されたエンジン11で発生された駆動力を入力するものである。入力回転体23aは、インプットシャフト23a1と連結部23a2とから構成されている。
【0049】
インプットシャフト23a1は、カバーハウジング21bの中心に形成された貫通穴21b1に、軸受(図示省略)を介して回転可能に支承されている。インプットシャフト23a1の前端部は、ダンパー(図示省略)を介してエンジン11のフライホイール11aに連結されている。インプットシャフト23a1の後端部には、環状かつフランジ状に形成された連結部23a2が一体回転するように設けられている。連結部23a2は、インプットシャフト23a1と断接部23cとを連結するものである。
【0050】
出力回転体23bは、入力回転体23aと同軸にハウジング21に回転可能に支承されかつハイブリッド車Mの駆動輪Wrr,Wrlに駆動力を出力するものである。出力回転体23bは、アウトプットシャフト23b1と連結部23b2とから構成されている。
【0051】
アウトプットシャフト23b1は、本体ハウジング21aの隔壁部21a1の中心に形成された貫通穴21a2に、軸受(図示省略)を介して回転可能に支承されている。アウトプットシャフト23b1の前端部には、アウトプットシャフト23b1と断接部23cとを連結する連結部23b2が一体回転するように設けられている。
【0052】
また、アウトプットシャフト23b1の後端部には、プレート27が一体回転するように固定されている。プレート27には、変速機12のトルクコンバータ12bのポンプインペラ12b1が一体回転するように取り付けられている。したがって、クラッチ23が係合状態にある時には、インプットシャフト23a1に入力されたエンジン11の駆動力が断接部23cを介してアウトプットシャフト23b1に伝達され、変速機12などを介して駆動輪Wrr,Wrlに出力される。
【0053】
出力回転体23bは、発電機としても使用可能である電動モータ22のロータ22bが取り付けられている。ロータ22bの内周面が連結部23b2の外周端部に接続されている。出力回転体23bは、ロータ22bが回転されると回転軸を中心に一体的に回転するので、ロータ22bの回転を外部(本実施形態では変速機12)に伝える電動モータ22の出力軸を構成している。
【0054】
断接部23cは、例えば摩擦クラッチで構成されている。具体的には、断接部23cは、入力回転体23a側の連結部23a2に係合されている複数の第1クラッチプレート(図示省略)、複数の第1クラッチプレートと交互に接離可能に配置されかつ出力回転体23b側の連結部23b2に係合されている複数の第2クラッチプレート(図示省略)を備えている。断接部23cは、通常時には、付勢部材(例えばスプリング、図示省略)により付勢される押圧部材(例えばピストン、図示省略)が前記第1および第2クラッチプレートを係合方向に押圧して係合するように構成されている。さらに、断接部23cは、圧力室(図示省略)に油圧(油液)が供給されたときには、押圧部材が付勢部材の付勢力に抗して解放方向(係合方向と反対方向)に移動され第1および第2クラッチプレートが離れるように構成されている。
【0055】
電磁切替弁24は、図1に示すように、クラッチ23と電動ポンプ25およびリザーバ26との間に設けられている。電磁切替弁24は、3ポートを有する2ポジションの電磁弁である。電磁切替弁24の一のポートはクラッチ23の圧力室(図示省略)に接続され、他の一のポートは電動ポンプ25の吐出口に接続され、残りの一のポートはリザーバ26に接続されている。
【0056】
電磁切替弁24は、非通電時において非作動状態にあり、非作動状態にあるとき、クラッチ23の圧力室が電動ポンプ25の吐出口およびリザーバ26とオリフィスを介さないで連通する状態に切り替えられる。このとき、電動ポンプ25は停止されており、クラッチ23の圧力室内の油液(油圧)がリザーバ26に排出される(戻される)。
【0057】
一方、電磁切替弁24は、通電時において作動状態にあり、作動状態にあるとき、クラッチ23の圧力室が電動ポンプ25の吐出口とオリフィスを介さないで連通するとともにリザーバ26とオリフィスを介して連通する状態に切り替えられる。このとき、電動ポンプ25は駆動されており、クラッチ23の圧力室に油液(油圧)が供給される。一定圧力以上の油液(油圧)は、オリフィスを介してリザーバ26に排出される(戻される)。
【0058】
電動ポンプ25は、リザーバ26に貯められている油液を吸入して電磁切替弁24を介してクラッチ23に吐出(圧送)するものである。リザーバ26は、ハウジング21内の油液を貯めおくものであり、ハウジング21内の底部である。
【0059】
ハイブリッド車Mにおいては、図1に示すように、エンジン11はエンジンECU31に電気的に接続され、変速機12は自動変速機ECU32に電気的に接続されている。また、電動モータ22は、バッテリ16に接続されているインバータ15を介してモータECU33に電気的に接続されている。さらに、電磁切替弁24および電動ポンプ25はクラッチECU34に電気的に接続されている。エンジンECU31、自動変速機ECU32、クラッチECU34およびモータECU33は互いに通信可能に接続されるとともに、これらECU31〜34はハイブリッドECU35とも互いに通信可能に接続されている。
【0060】
エンジンECU31は、エンジン11を制御するECU(エレクトロニックコントロール ユニット:電子制御装置。本明細書において同様。)であり、エンジン11の回転数をエンジン11に設けられた回転数センサ(図示省略)から入力している。回転数センサはエンジン11のクランク軸の回転数(すなわちエンジン回転数)を検出するものである。
【0061】
自動変速機ECU32は、変速機12を制御するECUである。また、モータECU33は、インバータ15を介して電動モータ22を上述した各駆動となるように制御するECUである。インバータ15は、直流電源としてのバッテリ16に電気的に接続されており、電動モータ22から入力した交流電圧を直流電圧に変換してバッテリ16に供給したり、逆にバッテリ16からの直流電圧を交流電圧に変換して電動モータ22へ出力したりするものである。さらに、クラッチECU34は、クラッチ23を制御するECUであり、クラッチ23を構成する電磁切替弁24および電動ポンプ25に制御指令をそれぞれ送信してクラッチ23を選択的に係合・解放するものである。
【0062】
ハイブリッドECU35は、各ECU31〜34を統合的に制御するECUである。例えば、ハイブリッドECU35は、車両発進時には、電動モータ22でエンジン11をスタートさせ、車両加速時には、エンジン11の駆動力を電動モータ22の駆動力でアシストさせ、高速クルージング時には、電動モータ22のアシストなしでエンジン11の駆動力のみで駆動させるように、エンジン11、電動モータ22、クラッチ23などを制御することができる。また、電動モータ22の駆動力のみで走行させるように制御することができる。また、ハイブリッドECU35は、減速時(制動時)には、電動モータ22を発電させて回生制動力を駆動輪に発生させるように制御(回生制御)する。
【0063】
次に、上述したモータユニット20をエンジン11と変速機12との間に組み付ける組付方法について図5〜図7を参照して説明する。
【0064】
最初に、図5に示すように、モータユニット20をエンジン11に取り付ける。モータユニット20をエンジン11の所定の位置に合わせ、すなわち第1締結部21cをエンジン締結部11bに合わせ、第1ネジ41で締結する。この締結の際に、第1ネジ41は、軸部を備えた工具Tの軸部先端に取り付けられる。その状態のまま、第1ネジ41は、第2締結部である後フランジ21a3に設けた第2貫通孔21d1を通過され(図5にて破線で示す。)、第1締結部21cに設けた第1貫通孔21c1を通過され、エンジン11のネジ孔11b1に螺合される(図5にて実線で示す。)。これにより、モータユニット20のハウジング21の第1締結部21cがエンジン締結部11bに当接して締結される。
【0065】
なお、工具Tは、第1ネジ41および第2ネジ42の頭部頂面に形成された六角状の孔に適合した形状(本実施形態では断面六角形状)が形成された先端部と、直線状に形成され先端に前記先端部が形成された軸部と、少なくとも備えた工具である。工具は手動工具(例えば、ドライバー、レンチ)でもよく、電動工具、エア工具(圧縮空気により駆動する工具)でもよい。
【0066】
次に、図6に示すように、取付スペーサ50をモータユニット20に取り付ける。具体的には、取付スペーサ50を後フランジ21a3に第1締結部21c側から取り付ける。このとき、メネジ部材51の筒部51aが、後フランジ21a3に設けた第2貫通孔21d1に第1締結部21c側から嵌入される。また、メネジ部材51の係止部51bが後フランジ21a3に当接して係止するまで嵌入されている。
【0067】
そして、図7に示すように、変速機12をモータユニット20に取り付ける。変速機12をモータユニット20の所定の位置に合わせ、すなわち変速機締結部12a1を後フランジ21a3に合わせ、第2ネジ42で締結する。この締結の際に、第2ネジ42は、第1ネジ41と同じ工具Tの軸部先端に取り付けられる(図7にて破線で示す。)。なお、第1ネジ41と異なる工具を使用してもよいが、その場合、軸部を備えた工具が好ましい。その状態のまま、第2ネジ42は、変速機締結部12a1の貫通孔12a2を貫通し、メネジ部材51の筒部51aに螺合される(図7にて実線で示す。)。これにより、モータユニット20のハウジング21の第2締結部である後フランジ21a3が変速機締結部12a1に締結される。
【0068】
上述した説明から明らかなように、上述した実施形態によれば、最初にエンジン11とモータユニット20のハウジング21とが複数の第1ネジ41を締め付けることにより取り付けられる。このとき、第1ネジ41は、軸部を備えた工具Tの軸部先端に取り付けられる。その状態のまま、第1ネジ41は、第2締結部である後フランジ21a3に設けた第2貫通孔21d1を通過され、第1締結部21cに設けた第1貫通孔21c1を通過され、エンジン11に螺合される。これにより、モータユニット20のハウジング21の第1締結部21cがエンジン締結部11bに締結される。
【0069】
次に、メネジ部材51の筒部51aが、後フランジ21a3に設けた第2貫通孔21d1に第1締結部21c側から嵌入される。このとき、メネジ部材51の係止部51bは後フランジ21a3に係止する。
【0070】
そして、変速機12とモータユニット20のハウジング21とが複数の第2ネジ42を締め付けることにより取り付けられる。このとき、第2ネジ42は、軸部を備えた工具T(例えば第1ネジと同じ工具)の軸部先端に取り付けられる。その状態のまま、第2ネジ42は、変速機締結部12a1(変速機締結部12a1の貫通孔12a2)を貫通し、メネジ部材51の筒部51aに螺合される。これにより、モータユニット20のハウジング21の後フランジ21a3が変速機締結部12a1に締結される。
【0071】
このように、第1ネジ41および第2ネジ42が同軸上に配設される構成となっていても、第1ネジ41および第2ネジ42を同一方向からの締め付け作業により締め付けることが可能となっている。よって、エンジン11および変速機12の各締結部11b,12a1は取付ネジのピッチの変更・取付ネジの位置の変更することなく既存の仕様のままで、同一方向からの締め付け作業によりモータユニット20を取り付けることができる。
【0072】
また、複数のメネジ部材51のうち連続して隣り合うメネジ部材51の係止部51bを一体的かつ連続的に連結する連結部材52をさらに備えている。これにより、複数のメネジ部材51と連結部材52とからなる一体物(取付スペーサ50)を一時に取り付けることができるので、メネジ部材51を一つずつ第2貫通孔21d1に嵌入する手間を省略することにより作業性を向上させることができる。また、一の第2ネジ42を締め付ける際には、その第2ネジ42に対応する一のメネジ部材51は連結部材52で連結されている他のメネジ部材42が他の第2貫通孔21d1に嵌入しているので、一のメネジ部材51が締め付けによって共に回転するのを防止する。よって、締め付け作業の作業性を向上させることができる。
【0073】
また、上述した実施形態においては、第2貫通孔21d1の内径は、第1ネジ41を回転させる工具Tの軸部よりも大径であり、かつ対応する第1ネジ41の頭部よりも小径となるようにしてもよい。
【0074】
この場合の取付方法について説明する。最初にエンジン11とモータユニット20のハウジング21とが複数の第1ネジ41を締め付けることにより取り付けられる。このとき、第1ネジ41は、作業者の手作業によって第1締結部21cに設けた第1貫通孔21c1を通過され、エンジン11に仮螺合される。その後、軸部を備えた工具Tの軸部先端は、第2締結部である後フランジ21a3に設けた第2貫通孔21d1を通過され、第1ネジ41に取り付けられる。そして、第1ネジ41は、エンジン11に螺合される。これにより、モータユニット20のハウジング21の第1締結部21cがエンジン締結部11bに締結される。
【0075】
そして、上述した実施形態の作用と同様に、メネジ部材51の筒部51aが、後フランジ21a3に設けた第2貫通孔21d1に嵌入される。そして、変速機11とモータユニット20のハウジング21とが複数の第2ネジ42を締め付けることにより取り付けられる。
【0076】
このように、第1ネジ41および第2ネジ42が同軸上に配設される構成となっていても、第1ネジ41および第2ネジ42を同一方向からの締め付け作業により締め付けることが可能となっている。よって、エンジン11および変速機12の各締結部は既存の仕様のままで、同一方向からの締め付け作業によりハイブリッド用モータユニットを取り付けることができる。
【0077】
なお、上述した各実施形態においては、第1ネジ41および第2ネジ42を逆方向から取り付けるように構成するようにしてもよい。この場合、上述した第1締結部21cと第2締結部21a3とを入れ替え、すなわちハウジング21の前フランジ21a2とカバーハウジング21bとの重複部分を第2締結部とし、ハウジング21の後フランジ21a3を第1締結部とすればよい。前述した重複部分はエンジン締結部に当接して配設され、後フランジ21a3は変速機締結部12a1に当接して配設される。エンジン締結部はフランジ状に形成されるのが好ましい。
【0078】
また、前述した重複部分に第2貫通孔を形成し、後フランジ21a3に第1貫通孔を形成すればよい。第1ネジ41は、後フランジ21a3の第1貫通孔を貫通して変速機締結部12a1に形成されたネジ孔に螺合される。第2ネジ42は、前述した重複部分の第2貫通孔に嵌入されたメネジ部材51に螺合される。
【0079】
この場合の組み立てについて説明する。最初に変速機12とモータユニット20のハウジング21とが複数の第1ネジ41を締め付けることにより取り付けられる。このとき、第1ネジ41は、軸部を備えた工具Tの軸部先端に取り付けられる。その状態のまま、第1ネジ41は、第2締結部に設けた第2貫通孔を通過され、第1締結部に設けた第1貫通孔を通過され、変速機に螺合される。これにより、モータユニット20のハウジング21の第1締結部が変速機締結部に締結される。
【0080】
次に、メネジ部材51の筒部51aが、第2締結部に設けた第2貫通孔に第1締結部側から嵌入される。このとき、メネジ部材51の係止部51bは第2締結部に係止する。
【0081】
そして、エンジン11とモータユニット20のハウジング21とが複数の第2ネジ42を締め付けることにより取り付けられる。このとき、第2ネジ42は、軸部を備えた工具Tの軸部先端に取り付けられる。その状態のまま、第2ネジ42は、エンジン締結部(エンジン締結部の貫通孔)を貫通し、メネジ部材51の筒部51aに螺合される。これにより、モータユニット20のハウジング21の第2締結部がエンジン締結部に締結される。
【0082】
このように、第1ネジおよび第2ネジが同軸上に配設される構成となっていても、第1ネジおよび第2ネジを同一方向(上述した実施形態と反対方向)からの締め付け作業により締め付けることが可能となっている。よって、エンジンおよび変速機の各締結部は既存の仕様のままで、同一方向からの締め付け作業によりハイブリッド用モータユニットを取り付けることができる。
【0083】
また、上述したメネジ部材の係止部を、第2ネジ42が締め付けられる前において、その外径は第2貫通孔21d1よりも小径であり、第2ネジ42が締め付けられた後において、その外径は第2貫通孔21d1よりも大径に変形するように構成するようにしてもよい。この場合、メネジ部材151を使用した取付例を図8に示す。
【0084】
図9に示すように、メネジ部材151は、上述の軸部51aと同様に構成された軸部151aと、係止部151bとから構成されている。係止部151bは、第2ネジ42が締め付けられる前において、その外径は第2貫通孔21d1よりも小径であり、第2ネジ42が締め付けられた後において、その外径は第2貫通孔21d1よりも大径に変形するように構成されている。具体的には、係止部151bは分割された複数(本実施形態では4つ)の分割部151b1を備えている。分割部151b1の基端は筒部151aの一端面に一体的に接続されている。係止部151bの外周壁面は筒部151aの外周壁面と面一に形成されている。係止部151bの内周壁面は基端において筒部151aの内周壁面と同一径である(面一である)。係止部151bの内周壁面は基端から先端に行くにしたがって内側に傾斜するように形成されている。すなわちメネジ部材151は、係止部151bにおいて(筒部151aより先端側のメネジ部材151において)先端に行くにしたがって内側空間が先細となるように形成されている。
【0085】
この場合の組み立てについて説明する。上述した実施形態と同様に、最初にエンジン11とモータユニット20のハウジング21とが複数の第1ネジ41を締め付けることにより取り付けられる。
【0086】
次に、メネジ部材151がモータユニット20のハウジング21に取り付けられる。このとき、第2貫通孔21d1に、メネジ部材151の係止部151bを第1ネジ41および第2ネジ42の締め付け作業と同じ方向(第1締結部の反対側)から挿入させ、メネジ部材151の筒部151aを第2貫通孔21d1に嵌入させることができる。このとき、係止部151bは後フランジ21a3から係止部151b分だけ突出させるのが好ましい。
【0087】
そして、変速機12とモータユニット20のハウジング21とが複数の第2ネジ42を締め付けることにより取り付けられる。このとき、第2ネジ42は、軸部を備えた工具Tの軸部先端に取り付けられる。その状態のまま、第2ネジ42は、変速機締結部12a1(変速機締結部12a1の貫通孔12a2)を貫通し、メネジ部材151の筒部151aに螺合される。第2ネジ42が締め付けられると、メネジ部材151の係止部151bが第2貫通孔21d1よりも大径に変形するため、モータユニット20のハウジング21の第2締結部である後フランジ21a3が変速機締結部12a1に締結される(図8参照)。これにより、第1ネジ41、第2ネジ42およびメネジ部材151は同一方向から作業することができるため、作業性、組立性を向上させることができる。
【0088】
なお、この場合においても、第1ネジ41および第2ネジ42を逆方向から取り付けるように構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0089】
11…エンジン、11b…エンジン締結部、11b1…ネジ孔、12…変速機、12a…ハウジング、12a1…変速機締結部、12a2…貫通孔、12b…トルクコンバータ、13…プロペラシャフト、14…ディファレンシャル装置、20…モータユニット、21…ハウジング、21a…本体ハウジング、21a2…前フランジ、21a3…後フランジ(第2締結部)、21b…カバーハウジング、21c…第1締結部、21c1…第1貫通孔、21d1…第2貫通孔、22…電動モータ、22a…ステータ、22b…ロータ、23…クラッチ、23a…入力回転体、23b…出力回転体、23c…断接部、24…電磁切替弁、25…電動ポンプ、26…リザーバ、31…エンジンECU、32…自動変速機ECU、33…モータECU、34…クラッチECU、35…ハイブリッドECU、41…第1ネジ、42…第2ネジ、50…取付スペーサ、51…メネジ部材、51a…筒部、51b…係止部、52…連結部材、151…メネジ部材、151a…軸部、151b…係止部、151b1…分割部、M…ハイブリッド車、T…工具、Wrl,Wrr…駆動輪(左右後輪)、Wfl,Wfr…従動輪(左右前輪)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータを備えたハイブリッド用モータユニットをエンジンと変速機との間に組み付けて構成されている車両用駆動装置に適用され、
前記エンジンに前記モータユニットのハウジングを取り付けるとともに前記モータユニットのハウジングに前記変速機のハウジングを取り付ける取付構造であって、
前記エンジンまたは前記変速機のハウジングのうち一方に、前記モータユニットのハウジングに形成された第1締結部を締結する複数の第1ネジと、
前記エンジンまたは前記変速機のハウジングのうち他方に、前記第1締結部に対向して前記モータユニットのハウジングに形成された第2締結部を締結するとともに前記各第1ネジと同軸に配設され前記第1ネジと同一方向から締め付け作業が行われる複数の第2ネジと、
前記第1締結部に貫通して形成される複数の第1貫通孔と、
前記第2締結部に貫通して形成される複数の第2貫通孔と、
前記各第2貫通孔に嵌入される複数のメネジ部材と、
を備え、
前記各第1貫通孔は、対応する前記第1ネジの軸部の貫通を許容し、前記各第1貫通孔の内径は、対応する前記第1ネジの軸部よりも大径であり、かつ同第1ネジの頭部よりも小径であることと、
前記各第2貫通孔の内径は、対応する前記第1ネジの頭部よりも大径であることと、
前記各メネジ部材は、前記第2ネジのオネジが係合するメネジが内周面に形成された筒部と、前記筒部に一体的に形成され前記第2締結部に係止する係止部と、を有することとを備えたハイブリッド用モータユニットの取付構造。
【請求項2】
電動モータを備えたハイブリッド用モータユニットをエンジンと変速機との間に組み付けて構成されている車両用駆動装置に適用され、
前記エンジンに前記モータユニットのハウジングを取り付けるとともに前記モータユニットのハウジングに前記変速機のハウジングを取り付ける取付構造であって、
前記エンジンまたは前記変速機のハウジングのうち一方に、前記モータユニットのハウジングに形成された第1締結部を締結する複数の第1ネジと、
前記エンジンまたは前記変速機のハウジングのうち他方に、前記第1締結部に対向して前記モータユニットのハウジングに形成された第2締結部を締結するとともに前記各第1ネジと同軸に配設され前記第1ネジと同一方向から締め付け作業が行われる複数の第2ネジと、
前記第1締結部に貫通して形成される複数の第1貫通孔と、
前記第2締結部に貫通して形成される複数の第2貫通孔と、
前記各第2貫通孔に嵌入される複数のメネジ部材と、
を備え、
前記各第1貫通孔は、対応する前記第1ネジの軸部の貫通を許容し、前記各第1貫通孔の内径は、対応する前記第1ネジの軸部よりも大径であり、かつ同第1ネジの頭部よりも小径であることと、
前記各第2貫通孔の内径は、前記第1ネジを回転させる工具の軸部よりも大径であり、かつ対応する前記第1ネジの頭部よりも小径であることと、
前記各メネジ部材は、前記第2ネジのオネジが係合するメネジが内周面に形成された筒部と、前記筒部に一体的に形成され前記第2締結部に係止する係止部と、を有することとを備えたハイブリッド用モータユニットの取付構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記複数のメネジ部材のうち連続して隣り合うメネジ部材の係止部を一体的かつ連続的に連結する連結部材をさらに備えるハイブリッド用モータユニットの取付構造。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、前記メネジ部材の前記係止部は、前記第2ネジが締め付けられる前において、その外径は前記第2貫通孔よりも小径であり、前記第2ネジが締め付けられた後において、その外径は前記第2貫通孔よりも大径に変形するように構成されているハイブリッド用モータユニットの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−67336(P2013−67336A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208835(P2011−208835)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】