説明

ハイブリッド自動車

【課題】車両の加速性能を十分に発揮させる。
【解決手段】バッテリの放電パワーPbがバッテリの出力制限Wout未満で且つモータMG2が最大トルクライン上の動作点で駆動しているときには(S330,S340)、エンジンの目標回転数Ne*を所定回転数N1だけ減少させて目標回転数Ne*を再設定すると共に再設定した目標回転数Ne*をパワー用動作ライン上で実現するためのトルクを目標トルクTe*に再設定する(S350,S360)。これにより、エンジンから駆動軸に直接伝達されるトルク(直達トルク)を増加させることができ、直達トルクとモータMG2の最大トルクとの和のトルクにより駆動軸に要求される要求トルクTr*に対応することができる。この結果、車両の加速性能を十分に発揮させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと、発電が可能な第1のモータと、エンジンの出力軸と第1のモータの回転軸と車軸側とに接続されたプラネタリギヤと、充放電が可能なバッテリと、第1のモータの発電電力とバッテリの放電電力の供給を受けて車軸側に動力を出力可能な第2のモータと、を備えるハイブリッド自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド自動車としては、エンジンと、モータMG1と、エンジンのクランクシャフトとモータMG1の回転軸と車軸に連結された駆動軸とに接続されたプラネタリギヤと、駆動軸に動力を出力可能なモータMG2と、二つのモータMG1,MG2と電力をやり取りするバッテリとを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド自動車では、坂道発進時に、駆動軸に要求される要求トルクに基づいてエンジンに要求される要求パワーを設定し、設定した要求パワーとエンジンを効率よく動作させる動作ラインとに基づいてエンジンの目標回転数および目標トルク(目標動作点)を設定し、エンジンが目標回転数で回転するようモータMG1から出力すべきトルクを設定し、駆動軸に要求される要求トルクがエンジンから駆動軸に直接に伝達されるトルクとモータMG2から駆動軸に出力されるトルクとの和のトルクにより出力されるようモータMG2から出力すべきトルクを設定し、各設定値によりエンジンとモータMG1,MG2とを制御する。そして、バッテリの入出力制限の範囲内で要求トルクのすべてを駆動軸に出力できないときには、駆動軸に出力されるトルクが値0から要求トルクまでの範囲内となり且つモータMG1,MG2で充放電される電力の和が入力制限から出力制限までの範囲内となるようモータMG1から出力すべきトルクを変更すると共に要求トルクが駆動軸に出力されるようモータMG2から出力すべきトルクを変更している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−137235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したタイプのハイブリッド自動車では、モータMG2ではエンジンからの動力を用いてモータMG1により発電した発電電力とバッテリの放電電力とを消費して動力を出力することができるが、定格トルクによる制限や高温による制限などによってはモータMG2に供給可能な電力のすべてを消費することができない場合があり、この場合、加速性能を最大限発揮することはできない。
【0005】
本発明のハイブリッド自動車は、その加速性能を十分に発揮させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド自動車は、
エンジンと、発電が可能な第1のモータと、前記エンジンの出力軸と前記第1のモータの回転軸と車軸側とに接続されたプラネタリギヤと、充放電が可能なバッテリと、前記第1のモータの発電電力と前記バッテリの放電電力の供給を受けて前記車軸側に動力を出力可能な第2のモータと、前記エンジンに要求される要求パワーを出力するための所定の動作ライン上の動作点を前記エンジンの目標動作点として設定する目標動作点設定手段と、前記設定された目標動作点で前記エンジンが運転されると共に走行に要求される要求トルクが前記エンジンから前記車軸側に伝達されるトルクと前記第2のモータに課された上限トルクの範囲内で該第2のモータから前記車軸側に出力されるトルクとの和のトルクにより出力されるよう前記エンジンと前記第1および第2のモータとを制御する制御手段と、を備えるハイブリッド自動車であって、
前記制御手段は、前記第2のモータから前記上限トルクが出力されている状態で加速走行が要求されたときには、前記バッテリの放電電力が該バッテリの出力制限を超えない範囲内で前記設定された目標動作点を前記所定の動作ライン上でエンジントルクが大きくなる方向に変更して制御する手段である
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド自動車では、エンジンに要求される要求パワーを出力するための所定の動作ライン上の動作点をエンジンの目標動作点として設定し、目標動作点でエンジンが運転されると共に走行に要求される要求トルクがエンジンから車軸側に伝達されるトルクと第2のモータに課された上限トルクの範囲内で第2のモータから車軸側に出力されるトルクとの和のトルクにより出力されるようエンジンと第1および第2のモータとを制御するものにおいて、第2のモータから上限トルクが出力されている状態で加速走行が要求されたときには、バッテリの放電電力がバッテリの出力制限を超えない範囲内で目標動作点を所定の動作ライン上でエンジントルクが大きくなる方向に変更する。これにより、エンジンから車軸側に出力されるトルクを大きくすることができるから、加速性能を発揮させることができる。また、こうした動作点の変更はエンジンから出力されるパワーの変更を伴うから、動作点の変更をバッテリの放電電力が出力制限を超えない範囲内で行なうことにより、バッテリが過放電するのをより確実に抑制することができる。ここで、「出力制限」は、バッテリが放電できる最大許容電力を示す。また、「動作点」は、回転数およびトルクからなるポイントをいう。
【0009】
こうした本発明のハイブリッド自動車において、前記所定の動作ラインは、前記エンジンが最大トルクを出力可能な最大トルク時動作点と前記エンジンが最大出力を出力可能な最大出力時動作点とが異なるよう定められ、前記制御手段は、前記エンジンが前記最大トルク時動作点よりも高い出力の動作点で運転されている場合に、前記エンジンの動作点が前記所定の動作ラインに沿って前記最大トルク時動作点に近づくよう前記目標動作点を変更して制御する手段であるものとすることもできる。この態様の本発明のハイブリッド自動車において、前記所定の動作ラインは、前記最大トルク時動作点の回転数が前記最大出力時動作点の回転数よりも低くなるよう定められ、前記制御手段は、前記バッテリの放電電力が前記出力制限未満のときには前記エンジンの回転数が減少する方向に前記目標動作点を変更し、前記バッテリの放電電力が前記出力制限以上のときには前記エンジンの回転数が増加する方向に前記目標動作点を変更する手段であるものとすることもできる。この場合、前記制御手段は、前記エンジンの回転数を所定時間毎に所定回転数ずつ変更することにより前記目標動作点を変更する手段であるものとすることもできる。こうすれば、エンジンの動作点を変更する際のショックの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】トルク制限設定用マップの一例を示す説明図である。
【図5】エンジン22の動作ラインと回転数NeおよびトルクTeの関係の一例を示す説明図である。
【図6】エンジン22からパワーを出力して運転する際のプラネタリギヤ30の各回転要素の回転数およびトルクの力学的な関係を示す共線図である。
【図7】エンジン動作点変更処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】エンジン22の動作点を変更する様子を示す説明図である。
【図9】モータMG2への供給パワーとモータMG2のパワーラインの一例を示す説明図である。
【図10】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図1に示すように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して複数のピニオンギヤ33を連結するキャリア34が接続されたプラネタリギヤ30と、例えば周知の同期発電電動機として構成されプラネタリギヤ30のサンギヤ31に接続された発電可能なモータMG1と、例えば周知の同期発電電動機として構成されプラネタリギヤ30のリングギヤ32に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介して接続されたモータMG2と、直流電流を交流電流に変換してモータMG1,MG2に供給可能なインバータ41,42と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されインバータ41,42を介してモータMG1,MG2と電力をやり取りするバッテリ50と、バッテリ50に接続された電力ライン(低電圧系電力ライン)53とインバータ41,42に接続された電力ライン(高電圧系電力ライン)54とに接続されバッテリ50からの電力をその電圧を昇圧してインバータ41,42に供給可能な昇圧回路55と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。なお、リングギヤ軸32aは、ギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、車両の駆動輪63a,63bに連結されている。
【0013】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号、例えば、エンジン22のクランクシャフト26のクランク角を検出する図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションなどが入力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、エンジンECU24は、図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0014】
モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流,低電圧系電力ライン53の母線間に接続されたコンデンサ57の電圧を検出する電圧センサ57aからの電圧(以下、高電圧系の電圧VHという),高電圧系電力ライン54の母線間に接続されたコンデンサ58の電圧を検出する電圧センサ58aからの電圧などが入力されている。モータECU40からは、インバータ41,42のスイッチング素子へのスイッチング制御信号や昇圧回路55のスイッチング素子へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0015】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された低電圧系電力ライン53に取り付けられた電流センサ51aからの充放電電流Ib,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51bからの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサ51aにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づいてバッテリ50に蓄えられている蓄電量の全容量に対する割合である蓄電割合SOCを演算したり、演算した蓄電割合SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の蓄電割合SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。なお、充放電電流Ibは、放電側を正,充電側を負とするものとした。
【0016】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0017】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてがプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部がプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0018】
次に、こうして構成されたハイブリッド自動車20の動作、特に、車速Vが所定車速Vref以上の高車速時にアクセルペダル83が大きく踏み込まれて加速が要求されたときの動作について説明する。図2は、実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間(例えば、数msec)毎に繰り返し実行される。
【0019】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,エンジン22の回転数Ne,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,高電圧系の電圧VH,バッテリ50の入出力制限Win,Woutなどの制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、エンジン22の回転数Neは、クランクポジションセンサにより検出されたクランクシャフト26の回転位置に基づいて演算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。さらに、高電圧系の電圧VHは、電圧センサ58aにより検出されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の蓄電割合SOCや電池温度Tbに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
【0020】
こうしてデータを入力すると、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*を設定すると共に設定した要求トルクTr*に基づいてエンジン22に要求される要求パワーPe*を設定する(ステップS110)。ここで、要求トルクTr*は、本実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられるとマップから対応する要求トルクTr*を導出することにより設定するものとした。要求トルク設定用マップの一例を図3に示す。要求パワーPe*は、要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものからバッテリ50が要求する充放電要求パワー(充電側が負)を減じてさらにロス(損失)を加えることにより計算することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じること(Nr=k・V)によって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ること(Nr=Nm2/Gr)によって求めることができる。
【0021】
続いて、モータMG2の回転数Nm2と高電圧系の電圧VHとに基づいてモータMG2から出力できるトルクの上限であるトルク制限Tm2limを設定する(ステップS120)。ここで、トルク制限Tm2limは、本実施例では、回転数Nm2と高電圧系の電圧VHとトルク制限Tm2limとの関係を予め求めてトルク制限設定用マップとしてROM74に記憶しておき、回転数Nm2と高電圧系の電圧VHとが与えられると、マップから対応するトルク制限Tm2limを導出することにより設定するものとした。トルク制限設定用マップの一例を図4に示す。図4中の各ラインは、高電圧系の電圧VH毎のモータMG2の最大トルクラインを示す。
【0022】
そして、エンジン22の要求パワーPe*と閾値Prefとを比較し(ステップS130)、要求パワーPe*が閾値Pref未満のときにはエンジン22の動作ラインとしてエンジン22を効率よく運転するための燃費用動作ラインを選択し(ステップS140)、要求パワーPe*が閾値Pref以上のときにはエンジン22の動作ラインとして効率よりもパワーの出力を優先させたパワー用動作ラインを選択する(ステップS150)。ここで、パワー用動作ラインとしては、エンジン22の性能曲線におけるトルク曲線に沿ったラインを用いることができる。エンジン22の動作ラインを選択すると、エンジン22の要求パワーPe*と選択した動作ラインとに基づいて目標回転数Ne*と目標トルクTe*とをエンジン22の目標動作点として設定し(ステップS160)、必要に応じて目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを変更するエンジン動作点変更処理を実行する(ステップS170)。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図5に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、二つの動作ラインのうち選択した動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。なお、ステップS170のエンジン動作点変更処理については後述する。
【0023】
エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*とリングギヤ軸32aの回転数Nrとプラネタリギヤ30のギヤ比ρとに基づいて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と現在のモータMG1の回転数Nm1との偏差とに基づいて次式(2)によりモータMG1から出力すべきトルクであるトルク指令Tm1*を計算する(ステップS180)。ここで、式(1)は、プラネタリギヤ30の回転要素に対する力学的な関係式である。エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときのプラネタリギヤ30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図6に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。ここで、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクは、モータMG1がエンジントルクの反力を受けてエンジントルクがリングギヤ軸32aに直接に伝達されるトルクとして考えることもできるから、このトルクを直達トルクとも呼ぶ。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0024】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/ρ (1)
Tm1*=ρ・Te*/(1+ρ)+k1(Nm1*-Nm1)+k2∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
【0025】
そして、要求トルクTr*に設定したトルク指令Tm1*をプラネタリギヤ30のギヤ比ρで除したものを加えて更に減速ギヤ35のギヤ比Grで除してモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpを次式(3)により計算すると共に(ステップS190)、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと設定したトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との偏差をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを次式(4)および式(5)により計算し(ステップS200)、設定した仮トルクTm2tmpを式(6)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS210)。ここで、式(3)は、図6の共線図から容易に導くことができる。
【0026】
Tm2tmp=(T*+Tm1*/ρ)/Gr (3)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (4)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (5)
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (6)
【0027】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信し(ステップS220)、駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される動作点で運転されるようにエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0028】
次に、エンジン動作点変更処理について説明する。図7は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるエンジン動作点変更処理の一例を示すフローチャートである。エンジン動作点変更処理が実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、駆動制御ルーチンのステップS130〜S150で選択された動作ラインがパワー用動作ラインであるか否かを判定する(ステップS300)。パワー用動作ラインでない、即ち燃費用動作ラインと判定されたときには、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*を変更する必要はないと判断し、エンジン動作点変更処理を終了する。一方、パワー用動作ラインが選択されたと判定されると、エンジン22の現在の回転数Neが閾値Netmよりも高いか否かを判定する(ステップS310)。ここで、閾値Netmは、パワー用動作ラインにおける最大トルク時の回転数である。回転数Neが閾値Netm以下と判定されたときには、エンジン動作点変更処理を終了する。一方、回転数Neが閾値Netmよりも高いと判定されると、バッテリ50が現在放電しているパワーとしての放電パワーPbを計算し(ステップS320)、計算した放電パワーPbがバッテリ50の出力制限Wout未満か否かを判定する(ステップS330)。放電パワーPbは、例えば、前回の駆動制御ルーチンのステップS180,S210で設定されたモータMG1,MG2のトルク指令(前回Tm1*,前回Tm2*)をそれぞれモータMG1,MG2から現在出力されているトルクとして用いて、前回Tm1*にモータMG1の現在の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)と前回Tm2*にモータMG2の現在の回転数Nm2を乗じて得られるモータMG2の消費電力(発電電力)との和により計算することができる。また、放電パワーPbは、バッテリ50の端子間電圧Vbと充放電電流Ibとの積により計算することもできる。
【0029】
放電パワーPbが出力制限Wout未満と判定されると、バッテリ50の放電パワーPbに余裕があると判断し、前回Tm2*がトルク制限Tm2limに等しいか否かを判定する(ステップS340)。この判定は、モータMG2のトルク指令Tm2*は、バッテリ50の出力制限Woutに起因するトルク制限Tm2maxを除けば、トルク制限Tm2limの範囲内で設定されることから、モータMG2が図4に示す最大トルクライン上の動作点で駆動しているか否かを判定するものとなる。モータMG2が最大トルクライン上の動作点で駆動していると判定されたときには、駆動制御ルーチンのステップS160で設定された目標回転数Ne*に所定回転数N1だけ減じたものを新たな目標回転数Ne*に再設定し(ステップS350)、再設定した目標回転数Ne*をパワー用動作ライン上で実現するためのトルクを目標トルクTe*に再設定して(ステップS360)、エンジン動作点変更処理を終了する。ここで、所定回転数N1は、エンジン22の回転数Neを徐々に最大トルクTemaxの回転数Netmに近づけるためのレート処理に用いる回転数である。一方、モータMG2が最大トルクライン上の動作点で駆動していないと判定されると、モータMG2の出力トルクに余裕がありエンジン22の動作点を変更する必要はないと判断し、エンジン動作点変更処理を終了する。
【0030】
一方、放電パワーPbが出力制限Wout以上と判定されると、バッテリ50の放電パワーPbに余裕はないと判断し、前回Tm2*がトルク制限Tm2limに等しいか否か即ちモータMG2が最大トルクライン上の動作点で駆動しているか否かを判定する(ステップS370)。モータMG2が最大トルクライン上の動作点で駆動していると判定されたときには、駆動制御ルーチンのステップS160で設定された目標回転数Ne*に所定回転数N2だけ加えたものを新たな目標回転数Ne*に再設定し(ステップS380)、再設定した目標回転数Ne*をパワー用動作ライン上で実現するためのトルクを目標トルクTe*に再設定して(ステップS360)、エンジン動作点変更処理を終了する。ここで、所定回転数N2は、エンジン22の回転数Neを徐々に最大トルクTemaxの回転数Netmから遠ざけてエンジンパワー(モータMG1の発電パワー)を増加させるためのレート処理に用いる回転数であり、実施例では、バッテリ50の過大な電力による放電を抑制するために、所定回転数N1よりも高い回転数に定めるものとした。一方、モータMG2が最大トルクライン上の動作点で駆動していないと判定されると、モータMG2の出力トルクに余裕がありエンジン22の動作点を変更する必要はないと判断し、エンジン動作点変更処理を終了する。
【0031】
図8はエンジン22の動作点を変更する様子を示す説明図であり、図9はモータMG2への供給パワーとモータMG2のパワーラインの一例を示す説明図である。エンジン22の性能曲線(トルク曲線)としてのパワー用動作ラインは、図8に示すように、最大トルクTemaxを得る回転数Netmが最大パワーPemaxを得る回転数Nepmよりも低い。このため、パワー用動作ライン上でエンジン22を運転する際にエンジン22の回転数Neが回転数Netmを超えると、回転数Neが高くなるのに従ってエンジンパワーは増加する傾向を示すがエンジントルク(直達トルク)は減少する傾向を示し、要求トルクTr*に対して直達トルクでは不足するトルクはモータMG2から出力されるトルクによって賄われる。モータMG2は、エンジンパワーによりモータMG1で発電して得られる発電パワーPgとバッテリ50の放電パワーPbとの和のパワー(供給パワー)を用いてトルクを出力することができ、最大で発電パワーPgと出力制限Woutとの和のパワー(最大供給パワー)を用いることができる。発電パワーPgはエンジンパワーを増加させるほど大きくなるから、通常であれば、エンジンパワーを増加させるほどリングギヤ軸32aには大きな走行パワー即ち走行トルクを出力することができるはずである。しかしながら、各車速域におけるモータMG2から出力できる最大パワーであるパワーライン(図9中破線で示すライン)は、モータの低コストや小型化の要請などから全車速域で供給パワーの全てを使い切るように設計することは困難であり、特に、高車速域で供給パワーを使い切れないことが多い。この場合、モータMG2のトルク指令Tm2*はトルク制限Tm2limによる制限を受けるため、この状態ではエンジンパワーは増加しても、モータMG2のトルクは増加せずに直達トルクは減少し、要求トルクTr*を出力することができない場合が生じる。実施例では、モータMG2のトルクがトルク制限Tm2limによる制限を受けている場合には、エンジン22の動作点(目標回転数Ne*,目標トルクTe*)をパワー用動作ライン上で最大トルクTemaxが得られるポイントに近づけるから、直達トルクを増加させることができ、この直達トルクとモータMG2のトルク(トルク制限Tm2limによる最大トルク)との和のトルクにより要求トルクTr*に対応することができる。この際、動作点の変更は放電パワーPbが出力制限Woutを超えない範囲内で行なうから、バッテリ50が過放電することはない。
【0032】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、モータMG2が最大トルクライン上の動作点で駆動している状態で加速要求がなされたときには、エンジン22の動作点(目標回転数Ne*,目標トルクTe*)をパワー用動作ライン上で最大トルクTemaxが得られるポイントに近づけるから、直達トルクを増加させることができ、直達トルクとモータMG2の最大トルク(トルク制限Tm2lim)との和のトルクにより要求トルクTr*に対応することができる。この結果、車両の加速性能を発揮させることができる。しかも、エンジン22の動作点の変更は放電パワーPbが出力制限Woutを超えない範囲内で行なうから、バッテリ50が過放電するのをより確実に抑止することができる。また、エンジン22の回転数Neを最大トルクTemaxが得られる回転数Netmまで近づけるときには所定回転数N1ずつ行ない、回転数Neを回転数Netmから遠ざけるときには所定回転数N2ずつ行なうから、動作点を変更する際のショックの発生を抑制することができる。
【0033】
実施例のハイブリッド自動車20では、昇圧回路55を備えるものとしたが、昇圧回路55を備えないものとしてもよい。この場合、トルク制限Tm2limはモータMG2の回転数Nm2に基づいて設定すればよい。
【0034】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の回転数Nm2に基づいてトルク制限Tm2limを設定するものとしたが、更にモータMG2の高温時にモータMG2に対してトルク制限を課すものとしてもよい。
【0035】
実施例のハイブリッド自動車20では、要求パワーPe*に基づいて動作ラインを選択するものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、アクセル開度Accに基づいて動作ラインを選択するものとしてもよいし、要求トルクTr*に基づいて動作ラインを選択するものとしてもよいし、上記の複数のパラメータの組み合わせに基づいて動作ラインを選択するものとしてもよい。
【0036】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動作点を変更する際に、回転数Neを最大トルクTemaxが得られる回転数Netmまで近づけるときには所定回転数N1ずつ行ない、回転数Neを回転数Netmから遠ざけるときには所定回転数N2ずつ行なうものとしたが、いずれも同じ回転数ずつ行なうものとしてもよい。
【0037】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図10の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図10における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
【0038】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「エンジン」に相当し、モータMG1が「第1のモータ」に相当し、プラネタリギヤ30が「プラネタリギヤ」に相当し、バッテリ50が「バッテリ」に相当し、図2の駆動制御ルーチンのステップS100〜S160の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「目標動作点設定手段」に相当し、駆動制御ルーチンのステップS170〜S220の処理と図7のエンジン動作点変更処理とを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジン22を運転制御するエンジンECU24とモータMG1,MG2を駆動制御するモータECU40とが「制御手段」に相当する。
【0039】
ここで、「エンジン」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力するエンジンに限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプのエンジンであっても構わない。「第1のモータ」としては、同期モータとして構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導モータなど、駆動輪の動力を出力するものであれば如何なるタイプのモータとしても構わない。「第2のモータ」としては、同期モータとして構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導モータなど、駆動輪の動力を出力するものであれば如何なるタイプのモータとしても構わない。「バッテリ」としては、リチウムイオン電池として構成されたバッテリ50に限定されるものではなく、ニッケル水素電池などバッテリであれば、如何なるタイプのものとしても構わない。
【0040】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0041】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、車両の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
20,120 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51a 電流センサ、51b 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、53 低電圧系電力ライン、54 高電圧系電力ライン、55 昇圧回路、57,58 コンデンサ、57a,58a 電圧センサ、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、MG1,MG2,MG モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、発電が可能な第1のモータと、前記エンジンの出力軸と前記第1のモータの回転軸と車軸側とに接続されたプラネタリギヤと、充放電が可能なバッテリと、前記第1のモータの発電電力と前記バッテリの放電電力の供給を受けて前記車軸側に動力を出力可能な第2のモータと、前記エンジンに要求される要求パワーを出力するための所定の動作ライン上の動作点を前記エンジンの目標動作点として設定する目標動作点設定手段と、前記設定された目標動作点で前記エンジンが運転されると共に走行に要求される要求トルクが前記エンジンから前記車軸側に伝達されるトルクと前記第2のモータに課された上限トルクの範囲内で該第2のモータから前記車軸側に出力されるトルクとの和のトルクにより出力されるよう前記エンジンと前記第1および第2のモータとを制御する制御手段と、を備えるハイブリッド自動車であって、
前記制御手段は、前記第2のモータから前記上限トルクが出力されている状態で加速走行が要求されたときには、前記バッテリの放電電力が該バッテリの出力制限を超えない範囲内で前記設定された目標動作点を前記所定の動作ライン上でエンジントルクが大きくなる方向に変更して制御する手段である
ことを特徴とするハイブリッド自動車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド自動車であって、
前記所定の動作ラインは、前記エンジンが最大トルクを出力可能な最大トルク時動作点と前記エンジンが最大出力を出力可能な最大出力時動作点とが異なるよう定められ、
前記制御手段は、前記エンジンが前記最大トルク時動作点よりも高い出力の動作点で運転されている場合に、前記エンジンの動作点が前記所定の動作ラインに沿って前記最大トルク時動作点に近づくよう前記目標動作点を変更して制御する手段である
ことを特徴とするハイブリッド自動車。
【請求項3】
請求項2記載のハイブリッド自動車であって、
前記所定の動作ラインは、前記最大トルク時動作点の回転数が前記最大出力時動作点の回転数よりも低くなるよう定められ、
前記制御手段は、前記バッテリの放電電力が前記出力制限未満のときには前記エンジンの回転数が減少する方向に前記目標動作点を変更し、前記バッテリの放電電力が前記出力制限以上のときには前記エンジンの回転数が増加する方向に前記目標動作点を変更する手段である
ハイブリッド自動車。
【請求項4】
請求項3記載のハイブリッド自動車であって、
前記制御手段は、前記エンジンの回転数を所定時間毎に所定回転数ずつ変更することにより前記目標動作点を変更する手段である
ことを特徴とするハイブリッド自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−91397(P2013−91397A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234224(P2011−234224)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】