説明

ハイブリッド車両の制御方法

【課題】モータトルクの制御精密度を向上させ、レゾルバを使用する車両の生産工程時間および費用を減らすことができるハイブリッド車両の制御方法を提供する。
【解決手段】本発明のハイブリッド車両の制御方法は、駆動モータの回転位置を検知するレゾルバのオフセット候補値を設定されたデータに基づいて決定するオフセット候補値決定段階、前記駆動モータを0(zero)電流制御するゼロ電流制御段階、前記駆動モータがゼロ電流制御されると判断されれば、前記駆動モータに発生する電圧を検知する電圧検知段階、前記電圧値検知段階で検知される電圧値の平均値を演算する平均値演算段階、および、前記オフセット候補値と前記平均値を利用して最終オフセット値を演算する最終オフセット値演算段階、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御方法に係り、より詳しくは、エンジンの出力とモータの出力を運行状態に応じて適切に組み合わせて車両を動かすことにより、燃料効率を向上させるハイブリッド車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ハイブリッド車両には駆動モータが装着される。前記駆動モータは固定子と回転子を含むが、固定子に対する回転子の絶対位置を測定するためにレゾルバが設置される。
レゾルバは駆動モータに隣接して設置されるが、その寸法公差と内部コイルの機械/電気的な誤差によって検知された数値からオフセット(誤差)が発生するため、駆動モータの回転子/固定子の絶対位置を迅速かつ精密に測定することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−191758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、モータトルクの制御精密度を向上させ、レゾルバを使用する車両の生産工程時間および費用を減らすことができるハイブリッド車両の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のハイブリッド車両の制御方法は、駆動モータの回転位置を検知するレゾルバのオフセット候補値を設定されたデータに基づいて決定するオフセット候補値決定段階、前記駆動モータを0(zero)電流制御するゼロ電流制御段階、前記駆動モータがゼロ電流制御されると判断されれば、前記駆動モータに発生する電圧を検知する電圧検知段階、前記電圧値検知段階で検知される電圧値の平均値を演算する平均値演算段階、および、前記オフセット候補値と前記平均値を利用して最終オフセット値を演算する最終オフセット値演算段階、を含むことを特徴とする。
【0006】
前記オフセット候補値決定段階において、前記オフセット候補値は、前記設定されたデータの最小値と最大値の中間値であることを特徴とする。
【0007】
前記オフセット候補値決定段階において、前記オフセット候補値は、前記設定されたデータの平均値であることを特徴とする。
【0008】
前記最終オフセット値は、下記(数5)によって実行されることを特徴とする。
【数5】

ここで、

である。
【0009】
前記駆動モータをゼロ電流制御する段階において、前記駆動モータから発生するi軸電流(I)とd軸電流(I)を0に制御することを特徴とする。
【0010】
前記エンジンや前記駆動モータから出力されるトルクが駆動ホイールに伝達されないようにし、前記エンジンによって前記駆動モータを回転させる段階、をさらに含むことを特徴とする。
【0011】
前記電圧検知段階は、設定されたサンプリング期間に実行されることを特徴とする。
【0012】
前記平均値演算段階において、前記電圧値は、前記サンプリング期間に設定された周期で検知されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のハイブリッド車両の制御方法によれば、駆動モータの回転位置検知のために設置されるレゾルバに対し予め設定されたオフセット値と、駆動モータをゼロ電流制御した状態で前記駆動モータにおいて検知される電圧値とを利用することにより、最終オフセット値を迅速かつ正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両を制御するための数式である。
【図3】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両を制御するための電圧を示すグラフである。
【図4】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明について詳しく説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の概略図である。
図1に示す通り、ハイブリッド車両は、モータ/ゼネレータ100(ISG:integrated starting and generating)、エンジン110、クラッチ115、駆動モータ120、レゾルバ125、変速機130、駆動ホイール140、および制御部150を含む。
モータ/ゼネレータ100は、エンジン110を始動したり、エンジン110によって発電を行い、別のバッテリ(図示せず)を充電する。
【0016】
エンジン110は、クラッチ115を介して変速機130と連結され、クラッチ115と変速機130の間に駆動モータ120が配置される。
駆動モータ120は、エンジン110の出力を補助し、あるいはエンジン110の駆動がない場合変速機130に回転トルクを入力する。
制御部150は、モータ/ゼネレータ100、エンジン110、クラッチ115、駆動モータ120、および変速機130を制御する。
制御部150の機能については、詳細な説明を省略する。
【0017】
本発明の実施形態において、クラッチ115が締結された状態で、エンジン110が駆動され、エンジン110、モータ/ゼネレータ100、および駆動モータ120が同じ速度で回転する。この状態で、エンジン110はアイドル状態で駆動され、モータ/ゼネレータ100と駆動モータ120は、エンジン110の駆動力によって発電を行う。
【0018】
レゾルバ125は、駆動モータ120で固定子に対する回転子の絶対(相対)位置を検知し、その位置を制御部150に送信し、制御部150は寸法公差などによってオフセット値を適用することにより、回転子の正確な回転位置を補正する。
駆動モータ120、レゾルバ125、またはモータ/ゼネレータ100を交換したり維持補修する場合、駆動モータ120に隣接するように設けられたレゾルバ125で検知される回転位置を既存のオフセット値によって補正するには問題がある。したがって、レゾルバ125のオフセット値を再設定しなければならない。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係るハイブリッド車両を制御するための数式である。
図2の(数1)は、レゾルバ125に関する電圧微分方程式である。
【数1】

(数1)において、

は順に、駆動モータ120にかかる抵抗、d軸インダクタンス定数、q軸インダクタンス定数、磁束の大きさ、最終オフセット値、およびオフセット候補値を示す。
さらに、(数1)において、

は順に、d軸電流、q軸電流、d軸電圧、q軸電圧、および回転子角速度を示す。
【0020】
(数1)において、ゼロ電流制御(zero current control)によってd軸電流(i)とq軸電流(i)が0に収斂すれば、(数1)は下記(数2)のように変形される。
【数2】

(数2)の上の式と下の式を組み合わせれば、下記(数3)が誘導される。
【0021】
【数3】

(数3)において、オフセット候補値(α)とd軸電圧(V)、q軸電圧(V)を利用してオフセット値(α)が導出できる。
ただし、オフセット候補値は、複数のオフセット候補値のうちから選択される1つの値であり、d軸電圧とq軸電圧は、センサノイズによりサンプリング時間に応じて変化する値であり、より具体的に設定することが好ましい。
【0022】
図3は、本発明の実施形態に係るゼロ電流制御状態において、ノイズを含む電圧を示すグラフである。
図3の横軸は時間であり、縦軸は電圧の大きさを示す。
図3に示すように、駆動モータ120のd軸電圧(V)とq軸電圧(V)が検知され、d軸電圧とq軸電圧は時間に応じて変動する特徴を有する。
したがって、d軸電圧とq軸電圧を一定のサンプリング期間に設定された時間間隔をおいて検知し、この値の平均値を利用する。
【0023】
下記(数4)により、d軸電圧の平均値によって

が演算され、q軸電圧の平均値によって

が演算される。
【数4】

(数3)と(数4)より(数5)が誘導される。
【0024】
【数5】

したがって、

と、

、および

を式(5)に適用することにより、

を迅速に算出することができる。また、このように算出されたオフセット値は制御部150に送信され、駆動モータ120の回転子の絶対位置の補償に用いられる。
【0025】
図4は、本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の制御方法を示すフローチャートである。
図4に示す通り、S400で、レゾルバ125で検知される信号を補正するための制御が開始される。
S410で、オフセット値における中位値(中間値)をオフセット候補値として選定する。例えば、オフセット値の最小値が1であって最大値が10である場合、中位値は5.5となる。
S420で、オフセット候補値を選択した後に、駆動モータ120をゼロ電流制御する。ここで、電流制御器により、駆動モータ120のd軸電流とq軸電流を0に制御する。
【0026】
S430で、正常状態であるか判断される。本発明の実施形態において、正常状態とは、駆動モータ120に印加されるd軸電流とq軸電流が0である状態を言う。
さらに、エンジン110はアイドル状態で作動するが、駆動モータ120がクラッチ115を介してエンジン110によって回転する状態である。また、変速機130は、入力軸と出力軸が分離して駆動ホイール140には回転力が伝達されないパーキング(P)状態である。
【0027】
S440で、設定されたサンプリング期間のN個のd軸電圧とq軸電圧の各平均値を演算し、S450で、(数5)に、


および

を代入して

を演算する。
最終オフセット値が算出されれば、この値を制御部150に送信し、レゾルバ125で検知される信号を補正する作業を行う。
本発明の実施形態において、オフセット候補値のうちで中間値を選択したが、この平均値を適用することによって最終オフセット値を演算してもよい。
【0028】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0029】
100:モータ/ゼネレータ
110:エンジン
115:クラッチ
120:駆動モータ
125:レゾルバ
130:変速機
140:駆動ホイール
150:制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータの回転位置を検知するレゾルバのオフセット候補値を設定されたデータに基づいて決定するオフセット候補値決定段階、
前記駆動モータを0(zero)電流制御するゼロ電流制御段階、
前記駆動モータがゼロ電流制御されると判断されれば、前記駆動モータに発生する電圧を検知する電圧検知段階、
前記電圧値検知段階で検知される電圧値の平均値を演算する平均値演算段階、および、
前記オフセット候補値と前記平均値を利用して最終オフセット値を演算する最終オフセット値演算段階、
を含むことを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。
【請求項2】
前記オフセット候補値決定段階において、
前記オフセット候補値は、前記設定されたデータの最小値と最大値の中間値であることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項3】
前記オフセット候補値決定段階において、
前記オフセット候補値は、前記設定されたデータの平均値であることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項4】
前記最終オフセット値は、下記(数5)によって実行されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【数5】

ここで、

である。
【請求項5】
前記駆動モータをゼロ電流制御する段階において、
前記駆動モータから発生するi軸電流(I)とd軸電流(I)を0に制御することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項6】
前記エンジンや前記駆動モータから出力されるトルクが駆動ホイールに伝達されないようにし、前記エンジンによって前記駆動モータを回転させる段階、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の前記ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項7】
前記電圧検知段階は、
設定されたサンプリング期間に実行されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項8】
前記平均値演算段階において、
前記電圧値は、前記サンプリング期間に設定された周期で検知されることを特徴とする請求項7に記載のハイブリッド車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−59243(P2013−59243A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−269277(P2011−269277)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】