説明

ハニカムフィルタ

【課題】微細粒子とNOとを優れた除去効率で排気ガス中から除去することが可能なハニカムフィルタを提供する。
【解決手段】ハニカムフィルタ100は、隔壁112により仕切られた互いに略平行な複数の流路110a,110bを有し、一端面100aにおいて流路110aの一端が封口部114により封口されており、他端面100bにおいて流路110bの他端が封口部114により封口されており、隔壁112が、チタン酸アルミニウムを含む多孔質セラミックス焼結体から構成されており、流路110b内における隔壁112の表面には、触媒下塗り塗膜116が形成されており、隔壁112及び触媒下塗り塗膜116から構成される複合体の気孔率が30〜70体積%であり、NO吸蔵触媒が触媒下塗り塗膜116に担持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気ガスに含まれる有害物質を除去するフィルタとして、隔壁により仕切られた互いに略平行な複数の流路が形成されたフィルタが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。排気ガスには、炭素粒子等の微細粒子(PM)やNOなどが有害物質として含まれている。特許文献1に記載のフィルタは、複数の流路のうちの一部の一端及び複数の流路のうちの残部の他端を、隣接する流路において交互に目封じすることによりDPF(Diesel Particulate Filter)用のフィルタとして用いられている。また、特許文献1に記載のフィルタでは、隔壁の構成粒子の表面にNO吸蔵触媒が担持されていることにより、NOを排気ガス中の可燃成分と反応させる等して還元し無害化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第02/096827号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年の環境規制の更なる厳格化に伴い、排気ガスの浄化効率を更に向上させることが望まれている。特に、微細粒子とNOとを優れた除去効率で排気ガス中から除去することが求められている。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、微細粒子とNOとを優れた除去効率で排気ガス中から除去することが可能なハニカムフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るハニカムフィルタは、隔壁により仕切られた互いに略平行な複数の流路を有し、複数の流路のうちの一部の一端及び複数の流路のうちの残部の他端が封口されており、隔壁が、チタン酸アルミニウムを含む多孔質セラミックス焼結体から構成されており、流路内における隔壁の表面には、塗膜が形成されており、隔壁及び塗膜から構成される複合体の気孔率が30〜70体積%であり、NO吸蔵触媒が塗膜に担持されている。
【0007】
本発明に係るハニカムフィルタは、隔壁により仕切られた互いに略平行な複数の流路を有し、複数の流路のうちの一部の一端及び複数の流路のうちの残部の他端が封口されていることにより、DPF用のセラミックスフィルタとして排気ガス中の微細粒子を捕集・除去することに有用である。また、本発明に係るハニカムフィルタは、NO吸蔵触媒が担持された塗膜が流路内における隔壁の表面に形成されていることにより、NOを還元・除去することにも有用である。そして、本発明では、このように微細粒子及びNOの除去に有用なハニカムフィルタにおいて、隔壁が、チタン酸アルミニウムを含む多孔質セラミックス焼結体から構成されており、隔壁及び塗膜から構成される複合体の気孔率が30〜70体積%である。これにより、本発明に係るハニカムフィルタでは、微細粒子とNOとを優れた除去効率で排気ガス中から除去することができる。
【0008】
上記塗膜は、隔壁内における細孔の表面に更に形成されていることが良い。この場合、NOの除去効率を更に向上させることができる。
【0009】
上記塗膜は、γ−アルミナ及び/又はその前駆体を含むことが良い。この場合、NO吸蔵触媒の担持量を増加させることが可能であり、NOの除去効率を更に向上させることができる。
【0010】
NO吸蔵触媒は、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び貴金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが良い。この場合、NOの除去効率を更に向上させることができる。
【0011】
NO吸蔵触媒は、白金及びパラジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが良い。この場合、NOの除去効率を更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、微細粒子とNOとを優れた除去効率で排気ガス中から除去することが可能なハニカムフィルタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態に係るハニカムフィルタを示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のIb−Ib矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、寸法の比率は図面に示すものに限定されない。
【0015】
<ハニカムフィルタ>
本実施形態に係るハニカムフィルタ100は、図1(a)、(b)に示すように、互いに略平行に配置された複数の流路110a,110bを有する円柱体である。流路110a,110bは、ハニカムフィルタ100の中心軸に略平行に伸びる隔壁112により仕切られている。ハニカムフィルタ100に形成された複数の流路のうちの一部を構成する流路110aの一端は、ハニカムフィルタ100の一端面100aにおいて封口部114により封口されており、流路110aの他端は、ハニカムフィルタ100の他端面100bにおいて開口している。一方、ハニカムフィルタ100に形成された複数の流路のうちの残部を構成する流路110bの一端は、一端面100aにおいて開口しており、流路110bの他端は、他端面100bにおいて封口部114により封口されている。ハニカムフィルタ100において、流路110bの一端はガス流入口として開口しており、流路110aの他端はガス流出口として開口している。
【0016】
ハニカムフィルタ100では、隣接する流路において流路110aと流路110bとが交互に配置されて格子構造が形成されている。複数の流路110a,110bは、ハニカムフィルタ100の両端面に垂直であり、端面から見て正方形配置、すなわち、流路110a,110bの中心軸が、正方形の頂点にそれぞれ位置するように配置されている。流路110a,110bの断面形状は、例えば正方形である。
【0017】
ハニカムフィルタ100が円柱体である場合、流路の長手方向におけるハニカムフィルタ100の長さは、例えば40〜350mmであり、ハニカムフィルタ100の外径は、例えば10〜320mmである。また、流路110a,110bの長手方向に垂直な断面の内径(正方形の一辺の長さ)は、例えば0.8〜2.5mmである。隔壁112の厚み(セル壁厚)は、例えば0.05〜0.5mmである。
【0018】
隔壁112のBET比表面積は、1〜20m/gであることが良い。隔壁112のBET比表面積が1m/g未満であると、触媒活性が低下する傾向がある。隔壁112のBET比表面積が20m/gを超えると、塗膜が厚くなりろ過抵抗が大きくなる傾向がある。BET比表面積は、例えば市販のガス吸着装置を用いて測定することができる。
【0019】
隔壁112は、チタン酸アルミニウムを含む多孔質セラミックス焼結体から構成され、例えば多孔質のチタン酸アルミニウム焼結体である。このような材料により構成される隔壁112は、熱膨張係数を小さくすることが可能であり、熱膨張係数を例えば1.0×10−7〜1.0×10−5/Kとすることができる。
【0020】
隔壁112は、マグネシウムやケイ素を含有してもよく、特に隔壁112がチタン酸アルミニウムマグネシウム焼結体からなる場合には、熱膨張係数が更に小さく、融点が高く、再生時の耐熱衝撃性に優れ、微細粒子の限界堆積量が大きい点において優れている。また、隔壁112は、X線回折スペクトルにおいて、チタン酸アルミニウム(AlTiO)やチタン酸アルミニウムマグネシウム(Al2(1−x)MgTi(1+x))の結晶パターンのほか、アルミナ、チタニア等の結晶パターンを含んでいてもよい。
【0021】
隔壁112におけるアルミニウムの含有率は、例えば、酸化アルミニウム換算で45〜60モル%である。隔壁112におけるチタンの含有率は、例えば、酸化チタン換算で35〜55モル%である。なお、隔壁112の組成は、原料混合物の組成により適宜調整することができる。隔壁112は、上記の成分以外に、原料に由来する成分又は製造工程において不可避的に仕掛品に混入する微量の成分を含有し得る。
【0022】
後述する触媒下塗り塗膜116が隔壁112上に形成された状態において、隔壁112及び触媒下塗り塗膜116から構成される複合体の平均細孔径は、10μm以上が好ましく、12μm以上がより好ましい。複合体の平均細孔径が10μm未満であると、微細粒子の堆積により細孔が容易に閉塞して圧力損失が急激に大きくなり、浄化効率が低下する傾向がある。一方、複合体の平均細孔径は、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、16μm以下が更に好ましい。複合体の平均細孔径が30μmを超えると、捕集されずに複合体(特に隔壁112)を通過してしまう微細粒子が増加する傾向があり、微細粒子の除去効率が充分に向上しづらい傾向がある。複合体の平均細孔径は、原料の粒子径、造孔剤の添加量、焼成条件により調整可能であり、例えば水銀圧入法により測定することができる。なお、上記複合体の平均細孔径は、例えば、触媒下塗り塗膜116が隔壁112に形成されてなる複合体をハニカムフィルタ100から切り出し、当該複合体を解砕して得られた粉末の平均細孔径を測定することにより得ることができる。
【0023】
触媒下塗り塗膜116が隔壁112上に形成された状態において、隔壁112及び触媒下塗り塗膜116から構成される複合体の気孔率は、30体積%以上であり、35体積%以上が好ましく、40体積%以上がより好ましい。複合体の気孔率が30体積%未満であると、複合体(特に隔壁112)をガスが流通しにくくなって圧力損失が大きくなり、浄化効率が低下する。複合体の気孔率は、70体積%以下であり、60体積%以下が好ましく、55体積%以下がより好ましい。複合体の気孔率が70体積%を超えると、捕集されずに複合体(特に隔壁112)を通過してしまう微細粒子やNOが増加し、微細粒子やNOの除去効率が充分に向上しなくなる。複合体の気孔率は、原料の粒子径、造孔剤の添加量、焼成条件により調整可能であり、例えば水銀圧入法により測定することができる。なお、上記複合体の気孔率は、例えば、触媒下塗り塗膜116が隔壁112に形成されてなる複合体をハニカムフィルタ100から切り出し、当該複合体を解砕して得られた粉末の気孔率を測定することにより得ることができる。
【0024】
図1(b)に示すように、流路110b内における隔壁112の表面には、触媒が担持された触媒下塗り塗膜116が形成されている。隔壁112は、多孔質セラミックス焼結体から構成されており、隔壁112内には多数の微細孔が形成されている。触媒下塗り塗膜116は、隔壁112の表面と共に、隔壁112内における微細孔の表面に更に形成されていることが良い。
【0025】
触媒下塗り塗膜116は、γ−アルミナ及び/又はその前駆体であるアルミニウム成分を含有していることが良い。γ−アルミナは、α−アルミナよりも大きい表面積(例えば比表面積100〜300m/g)を有しており、触媒下塗り塗膜116上に触媒を担持させやすい。γ−アルミナの前駆体としては、例えばベーマイト、アルミナゾル、擬ベーマイト、硝酸アルミニウムが挙げられる。これらの前駆体を焼成するとγ−アルミナが生成し、さらに、γ−アルミナを焼成するとα−アルミナが生成する。触媒下塗り塗膜116は、上記アルミニウム成分を除いた残部として、例えばシリカ、酸化バリウム、酸化ランタンを含有している。なお、触媒下塗り塗膜116は、アルミニウム成分を含有していなくてもよく、ジルコニア、チタニア、シリカ、セリア等の酸化物を含有していてもよい。
【0026】
アルミニウム成分の含有量は、触媒下塗り塗膜100質量部に対して0.5〜20質量部が良い。なお、γ−アルミナ及びその前駆体がいずれも触媒下塗り塗膜116に担持されている場合には、γ−アルミナ及びその前駆体の合計量が上記範囲にあることが良い。なお、アルミニウム成分の含有量は、触媒下塗り塗膜116の原料スラリーの組成により適宜調整することができる。
【0027】
触媒下塗り塗膜116の被覆量は、隔壁112の全量を基準として0.1〜20質量%が良い。触媒下塗り塗膜116の被覆量が0.1質量%以上であると、微細粒子及びNOの除去効率を更に向上させることが可能であり、上記被覆量が20質量%以下であると、流路110bが目詰まりすることが抑制され、排気ガスの浄化効率を更に向上させることができる。なお、触媒下塗り塗膜116の被覆量には、触媒下塗り塗膜116に担持される触媒の質量は含まれないものとする。
【0028】
触媒下塗り塗膜116には、少なくともNO吸蔵触媒が担持されている。本実施形態では、排気ガス中にNOと炭素粒子等の微細粒子とが含まれている場合、例えば、NO吸蔵触媒の存在下において、NOは炭素粒子によって還元されて窒素となり、炭素粒子はNOによって酸化されて二酸化炭素となることにより、排気ガスが浄化される。なお、NOの還元・除去は、上記反応に基づくものに限定されるものではない。
【0029】
NO吸蔵触媒は、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び貴金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが良い。アルカリ金属元素としては、例えばリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)が挙げられる。アルカリ土類金属元素としては、例えばカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)が挙げられる。希土類元素としては、例えばスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)が挙げられる。貴金属元素としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)及びこれらの合金が挙げられる。これらの中でも、NOの除去効率に更に優れる観点から、白金、パラジウムが良い。
【0030】
触媒下塗り塗膜116には、微細粒子の除去効率を更に向上させる観点から、微細粒子の燃焼を促進させる酸化触媒が担持されていてもよい。この場合、上記NO吸蔵触媒が酸化触媒として機能していてもよく、上記NO吸蔵触媒とは別に酸化触媒が担持されていてもよい。上記NO吸蔵触媒以外の酸化触媒としては、Fe、CuO等の酸化物触媒が挙げられる。触媒下塗り塗膜116には、セリアやジルコニア等の助触媒が担持されていてもよい。
【0031】
なお、NO吸蔵触媒及び酸化触媒のいずれも1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。触媒の担持量は、触媒下塗り塗膜の全量を基準として0.1〜100質量%が良い。
【0032】
ところで、内燃機関の燃料や潤滑油には、硫黄、リン、カルシウム、亜鉛等の成分が含有されており、これらの成分に由来する炭酸カルシウムやリン酸カルシウム等の化合物が生成し、当該化合物がアッシュとして凝集する場合がある。本実施形態において触媒下塗り塗膜116は、これらのアッシュを捕捉する補足材を含有していてもよい。捕捉材としては、例えばガラス質材料や無機化合物フラックス材料が挙げられる。
【0033】
ここで、ハニカムフィルタ100は、内燃機関の排気ガス通路内に配置され、内燃機関から排出される排気ガスは、例えば、ハニカムフィルタ100において矢印G(図1(b))に沿って移動する。すなわち、排気ガスは、一端面100aから流路110bに流入した後、隔壁112内の連通気孔を通過して流路110aに移動し、他端面100bから外部へ流出する。排気ガス中の微細粒子は、排気ガスが流路110bから流路110aへ移動するに際して、隔壁112の表面や、隔壁112の表面に形成された触媒下塗り塗膜116に主に捕集される。そして、触媒下塗り塗膜116に酸化触媒が担持されている場合には、捕集された微細粒子は当該触媒の作用により燃焼・除去される。また、排気ガス中の炭素粒子等の微細粒子は、例えば、NO吸蔵触媒の存在下において生じるNOとの酸化還元反応により、二酸化炭素として酸化・除去される。一方、排気ガス中のNOは、排気ガスがハニカムフィルタ100の内部を一端面100aから他端面100bへ移動するに際して、例えば、触媒下塗り塗膜116に担持されたNO吸蔵触媒の存在下において生じる炭素粒子との酸化還元反応により、窒素ガスとして還元・除去される。このように、ハニカムフィルタ100に流入した排気ガスは、ハニカムフィルタ100内の移動に伴い微細粒子及びNOが除去され、浄化された状態でハニカムフィルタ100から流出する。
【0034】
<ハニカムフィルタの製造方法>
ハニカムフィルタ100は、両端面において全ての流路が開口している点、触媒下塗り塗膜116が形成されていない点、及び、触媒が担持されていない点を除いてハニカムフィルタ100と略同一の形状を有するグリーン成形体を形成した後、流路の封口、グリーン成形体の仮焼き・焼成、触媒下塗り塗膜の形成、触媒の担持を行って得ることができる。
【0035】
[グリーン成形体の形成]
グリーン成形体は、無機化合物粉末、有機バインダ(結合剤)及び溶媒等を混練機により混合して調製される原料混合物を成形することで得ることができる。原料混合物の成形には、隔壁112の形状に対応する出口開口を有する押出成形機を用いる。なお、グリーン成形体を形成した後に、研削加工等により、所望の形状に加工してもよい。
【0036】
{無機化合物粉末}
無機化合物粉末は、アルミニウム源粉末及びチタン源粉末(チタニウム源粉末)を少なくとも含み、マグネシウム源粉末及びケイ素源粉末等を更に含んでもよい。
【0037】
(アルミニウム源)
アルミニウム源は、隔壁112を構成するアルミニウム成分となる化合物である。アルミニウム源としては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)が挙げられる。
【0038】
アルミニウム源は、単独で空気中で焼成することによりアルミナに導かれる化合物であってもよい。かかる化合物としては、例えばアルミニウム塩、アルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、金属アルミニウムが挙げられる。
【0039】
アルミニウム塩は、無機酸との無機塩であってもよいし、有機酸との有機塩であってもよい。アルミニウム無機塩としては、例えば、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウムアルミニウム等のアルミニウム硝酸塩、炭酸アンモニウムアルミニウム等のアルミニウム炭酸塩が挙げられる。アルミニウム有機塩としては、例えば、蓚酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウムが挙げられる。
【0040】
アルミニウムアルコキシドとしては、例えば、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムtert−ブトキシドが挙げられる。
【0041】
水酸化アルミニウムの結晶型としては、例えば、ギブサイト型、バイヤライト型、ノロソトランダイト型、ベーマイト型、擬ベーマイト型が挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。アモルファスの水酸化アルミニウムとしては、例えば、アルミニウム塩、アルミニウムアルコキシドのような水溶性アルミニウム化合物の水溶液を加水分解して得られるアルミニウム加水分解物も挙げられる。
【0042】
アルミニウム源としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、アルミニウム源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。アルミニウム源粉末の粒子径として、例えば、レーザー回折法により測定される体積基準の累積百分率50%に相当する粒子径(D50)は、1〜60μmとすることができる。
【0043】
(チタン源)
チタン源は、隔壁112を構成するチタン成分となる化合物であり、かかる化合物としては、例えば酸化チタンが挙げられる。酸化チタンとしては、例えば、酸化チタン(IV)、酸化チタン(III)、酸化チタン(II)が挙げられ、なかでも酸化チタン(IV)が好ましく用いられる。酸化チタン(IV)の結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型等が挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。酸化チタン(IV)の結晶型としては、より好ましくは、アナターゼ型、ルチル型の酸化チタン(IV)である。
【0044】
チタン源は、単独で空気中で焼成することによりチタニア(酸化チタン)に導かれる化合物であってもよい。かかる化合物としては、例えば、チタン塩、チタンアルコキシド、水酸化チタン、窒化チタン、硫化チタン、チタン金属が挙げられる。
【0045】
チタン塩としては、例えば三塩化チタン、四塩化チタン、硫化チタン(IV)、硫化チタン(VI)、硫酸チタン(IV)が挙げられる。チタンアルコキシドとしては、例えばチタン(IV)エトキシド、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)t−ブトキシド、チタン(IV)イソブトキシド、チタン(IV)n−プロポキシド、チタン(IV)テトライソプロポキシド、及び、これらのキレート化物が挙げられる。
【0046】
チタン源としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、チタン源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。チタン源粉末の粒子径として、例えば、レーザー回折法により測定される体積基準の累積百分率50%に相当する粒子径(D50)は、0.5〜25μmとすることができる。
【0047】
(マグネシウム源)
原料混合物は、マグネシウム源を更に含有していてもよい。マグネシウム源を含む原料混合物から製造された隔壁112は、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶の焼結体である。
【0048】
マグネシウム源としては、マグネシア(酸化マグネシウム)のほか、単独で空気中で焼成することによりマグネシアに導かれる化合物が挙げられる。かかる化合物としては、例えば、マグネシウム塩、マグネシウムアルコキシド、水酸化マグネシウム、窒化マグネシウム、金属マグネシウムが挙げられる。
【0049】
マグネシウム塩としては、例えば塩化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、ジメタクリル酸マグネシウム、安息香酸マグネシウムが挙げられる。マグネシウムアルコキシドとしては、例えばマグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシドが挙げられる。
【0050】
マグネシウム源としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、マグネシウム源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。マグネシウム源粉末の粒子径として、例えば、レーザー回折法により測定される体積基準の累積百分率50%に相当する粒子径(D50)は、0.5〜30μmとすることができる。
【0051】
(ケイ素源)
原料混合物は、ケイ素源を更に含有していてもよい。ケイ素源は、シリコン成分となって隔壁112に含まれる化合物である。ケイ素源を含有することにより、耐熱性が向上した隔壁112を得ることが可能となる。ケイ素源としては、例えば、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素等の酸化ケイ素(シリカ)が挙げられる。
【0052】
ケイ素源は、単独で空気中で焼成することによりシリカに導かれる化合物であってもよい。かかる化合物としては、例えば、ケイ酸、炭化ケイ素、窒化ケイ素、硫化ケイ素、四塩化ケイ素、酢酸ケイ素、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、長石、ガラスフリットが挙げられる。
【0053】
ケイ素源としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、ケイ素源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。ケイ素源粉末の粒子径として、例えば、レーザー回折法により測定される体積基準の累積百分率50%に相当する粒子径(D50)は、0.5〜30μmとすることができる。
【0054】
また、原料混合物は、アルミニウム、チタン、マグネシウム及びケイ素のうち2つ以上の金属元素を含有する化合物を含んでもよい。かかる化合物としては、チタン酸アルミニウム、チタン酸アルミニウムマグネシウム、マグネシアスピネル(MgAl)等の複合酸化物が挙げられる。
【0055】
{有機バインダ}
有機バインダとしては、水溶性の有機バインダが良い。水溶性の有機バインダとしては、例えばメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等のセルロース類;ポリビニルアルコール等のアルコール類;リグニンスルホン酸塩等の塩が挙げられる。有機バインダの添加量は、無機化合物粉末の100質量部に対して、通常0.1〜20質量部である。
【0056】
{溶媒}
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール等のグリコール類、及び水等の極性溶媒を用いることができる。なかでも、水が好ましく、不純物が少ない点でイオン交換水がより好ましい。溶媒の添加量は、無機化合物粉末の100質量部に対して、通常10〜100質量部である。なお、溶媒として非極性溶媒を用いてもよい。
【0057】
{その他の添加物}
原料混合物は、有機バインダ以外の有機添加物を含むことができる。その他の有機添加物としては、例えば造孔剤(孔形成剤)、潤滑剤、可塑剤、分散剤が挙げられる。
【0058】
造孔剤としては、例えば、グラファイト等の炭素材、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類、でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーン等の植物材料、氷、及びドライアイスが挙げられる。造孔剤の添加量は、無機化合物粉末の100質量部に対して通常0〜40質量部である。焼成時に造孔剤が焼失することにより、焼結体において造孔剤が存在していた箇所に微細孔が形成される。この微細孔の孔径はディーゼル燃料に由来する微細粒子の粒子径よりも小さい。したがって、気体は微細孔中を通過できるが、微細粒子は通過できない。
【0059】
潤滑剤及び可塑剤としては、例えば、グリセリン等のアルコール類、カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラギン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ステアリン酸Al等のステアリン酸金属塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテルが挙げられる。潤滑剤及び可塑剤の添加量は、無機化合物粉末の100質量部に対して通常0〜10質量部である。
【0060】
分散剤としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸等の無機酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸等の有機酸、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等の界面活性剤が挙げられる。分散剤の添加量は、無機化合物粉末の100質量部に対して通常0〜20質量部である。
【0061】
[封口工程]
封口工程では、公知の方法によりグリーン成形体の流路の端部を封口する。封口材としては、無機化合物粉末(セラミックス材料、セラミックスの原料粉末又はそれらの混合物)、有機バインダ、潤滑剤、造孔剤及び溶媒等の混合物を用いればよい。無機化合物粉末の組成は、グリーン成形体を形成するための無機化合物粉末の組成と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0062】
[グリーン成形体の仮焼き及び焼成]
グリーン成形体を仮焼き(脱脂)し、かつ焼成することにより得られる焼成体は、主にチタン酸アルミニウムの結晶粒子の焼結体から構成される。仮焼(脱脂)は、グリーン成形体中の有機バインダや、必要に応じて配合される有機添加物を焼失、分解等により除去するための工程である。典型的な仮焼き工程は、焼成工程の初期段階、すなわちグリーン成形体が焼成温度に至るまでの昇温段階(例えば、300〜900℃の温度範囲)に相当する。仮焼(脱脂)工程おいては、昇温速度を極力おさえることが良い。
【0063】
グリーン成形体の焼成温度は、通常1300〜1650℃である。この温度範囲でグリーン成形体を焼成することにより、グリーン成形体中の無機化合物粉末が確実に焼結する。焼成温度までの昇温速度は特に限定されるものではないが、通常1〜500℃/時間である。
【0064】
焼成は、通常大気中で行なわれるが、用いる原料粉末の種類や使用量によっては、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス中で焼成してもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガス等のような還元性ガス中で焼成してもよい。また、水蒸気分圧を低くした雰囲気中で焼成してもよい。
【0065】
焼成は、通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉等の焼成炉を用いて行なわれる。焼成は回分式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。また、焼成は、静置式で行なってもよいし、流動式で行なってもよい。
【0066】
焼成に要する時間は、グリーン成形体がチタン酸アルミニウム結晶に遷移するのに充分な時間であればよく、グリーン成形体の量、焼成炉の形式、焼成温度、焼成雰囲気等により異なるが、通常は10分〜24時間である。
【0067】
なお、グリーン成形体の仮焼きと焼成を個別に行ってもよい。仮焼き工程では、有機バインダその他の有機添加物の熱分解温度以上であり、かつ、無機化合物粉末の焼結温度よりも低い温度でグリーン成形体を加熱すればよい。焼成工程では、仮焼き工程後のグリーン成形体を無機化合物粉末の焼結温度以上の温度で加熱すればよい。
【0068】
グリーン成形体を焼成することにより、成形直後のグリーン成形体の形状をほぼ維持した焼成体を得ると共に、封口材が焼結して各流路の端部に封口部114が形成される。なお、焼成体を得た後に、研削加工等により焼成体を所望の形状に加工することもできる。
【0069】
[触媒下塗り塗膜の形成]
焼成体の流路内における隔壁112の表面等に触媒下塗り塗膜116を形成する。触媒下塗り塗膜116の形成方法としては、浸漬法、真空溶浸法等により、流路内における隔壁112の表面にスラリーを付着させた後、スラリーを乾燥・焼成する公知の方法を用いることができる。これにより、流路内における隔壁112の表面や、隔壁112内の微細孔の表面に触媒下塗り塗膜116が形成される。
【0070】
触媒下塗り塗膜116の形成に用いるスラリーは、例えばアルミニウム源、ケイ素源、セリウム源、ジルコニウム源、チタニウム源を含む。アルミニウム源としては、例えば硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、γ−アルミナ、η−アルミナ、χ−アルミナ、θ−アルミナ、α−アルミナが挙げられる。また、触媒下塗り塗膜116がアッシュに対する捕捉材を含む場合には、スラリーに捕捉材が添加される。
【0071】
[触媒の担持]
触媒下塗り塗膜116を形成した後に、NO吸蔵触媒や酸化触媒等を触媒下塗り塗膜116上に担持する。担持方法としては、浸漬法、真空溶浸法、沈殿法、イオン交換法等により触媒下塗り塗膜116の表面にスラリーを付着させた後、スラリーを乾燥・焼成する公知の方法を用いることができる。貴金属触媒を担持する場合、貴金属源としては、例えばジニトロアンミン白金硝酸塩、塩化白金酸、塩化パラジウム、ジニトロアンミンパラジウム、塩化ルテニウム、塩化ロジウム、塩化ニッケルが挙げられる。なお、NO吸蔵触媒と共に酸化触媒を担持する場合には、両触媒成分を含むスラリーを用いて担持処理を同時に行ってもよく、触媒成分を分けたそれぞれのスラリーを用いて担持処理を個別に行ってもよい。
【0072】
以上、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0073】
例えば、ハニカムフィルタ100の形状は、円柱体に限定されず、用途に応じて任意の形状(例えば、多角柱や楕円柱)とすることができる。また、流路110a,110bの断面の形状は、正方形に限定されず、例えば、三角形、長方形、六角形、八角形、円形等でもよく、また、複数の形状の組み合わせでもよい。
【0074】
上記実施形態では、触媒下塗り塗膜116は、流路110a,110bのうち流路110bのみに形成されているが、流路110a及び流路110bの両方に形成されていてもよい。また、触媒下塗り塗膜116は、流路内における隔壁112の表面全体や隔壁112内の細孔全体を被覆する塗膜であってもよく、これらの表面の一部を被覆せず断片的な塗膜であってもよい。
【0075】
上記実施形態では、グリーン成形体を焼成する前に封口工程を行っているが、グリーン成形体を焼成した後に封口工程を行ってもよい。また、上記実施形態では、グリーン成形体の焼成や封口工程の後に触媒下塗り塗膜の形成や触媒の担持を行っているが、グリーン成形体の焼成や封口工程に先立って触媒下塗り塗膜の形成や触媒の担持を行ってもよい。
【実施例】
【0076】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0077】
<成型体の調製>
原料粉末として以下のものを用いた。
下記の原料粉末の仕込み組成は、アルミナ〔Al〕、チタニア〔TiO〕、マグネシア〔MgO〕およびシリカ〔SiO〕換算のモル比で、〔Al〕/〔TiO〕/〔MgO〕/〔SiO〕=35.1%/51.3%/9.6%/4.0%であった。
また、アルミニウム源粉末、チタン源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量中のケイ素源粉末の含有率は、4.0質量%であった。
【0078】
(原料粉末)
(1)アルミニウム源粉末
中心粒径(D50)が29μmの酸化アルミニウム粉末(α−アルミナ粉末):38.48質量部
(2)チタン源粉末
D50が1.0μmの酸化チタン粉末(ルチル型結晶):41.18質量部
(3)マグネシウム源粉末
D50が3.4μmの酸化マグネシウム粉末:2.75質量部
(4)ケイ素源粉末
D50が8.5μmのガラスフリット(屈伏点:642℃):3.29質量部
(5)造孔剤(馬鈴薯デンプン粉末):14.30質量部
【0079】
上記アルミニウム源粉末、チタン源粉末、マグネシウム源粉末、ケイ素源粉末及び造孔剤からなる混合物に、混合物100質量部に対して、バインダとしてメチルセルロース5.49質量部及びヒドロキシメチルセルロース2.35質量部、潤滑剤としてグリセリン0.40質量部及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル4.64質量部を加えた。さらに、溶媒(分散媒)として水を29.03質量部加えた後、混練・押出機を用いて押し出し成形して、ハニカム形状のセラミックス成形体(セル密度300cpsi、セル壁厚0.3mm)を形成した。
なお、成形体は、直径25mm、高さ50mmの円柱状であって、高さ方向に多数の流路を有するように形成した。
得られた成形体に対して、大気雰囲気下で、バインダを除去する仮焼(脱脂)工程を含む焼成を行ない、ハニカム形状の多孔質焼成体(ハニカム構造体)を得た。焼成時の最高温度は1500℃とし、最高温度での保持時間は5時間とした。
【0080】
得られたハニカム構造体を乳鉢にて解砕し、粉末X線回折法により、得られた粉末の回折スペクトルを測定したところ、この粉末は、チタン酸アルミニウムマグネシウムの結晶ピークを示した。この粉末のチタン酸アルミニウム化率(AT化率)を求めたところ、100%であった。得られたチタン酸アルミニウム系焼成体の細孔径は15μmであり、気孔率は44%であった。
【0081】
<触媒下塗り塗膜の形成>
純水に硝酸を添加しpH1〜2の硝酸液を作製した。この硝酸液100質量部にベーマイトアルミナ(SaSol社製、PURAL SCF)を60質量部入れ分散させ、コートスラリー液を作製した。このコートスラリー液にハニカム構造体を1分浸漬させ、その後5〜6kg/cmの空気圧でハニカム構造体のセル孔をブローし余分なコートスラリーを飛ばした。コート品を100℃で1時間乾燥後、600℃で2時間焼成してアルミナコート品を得た。ハニカム構造体のコート前後の質量よりコート量を調査した結果、ハニカム構造体100質量部当たりアルミナが6質量部担持されていた。
【0082】
得られたアルミナコート品を乳鉢にて解砕し、粉末X線回折法により、得られた粉末の回折スペクトルを測定したところ、この粉末は、チタン酸アルミニウムマグネシウムの結晶ピークとγ―アルミナの結晶ピークを示した。
アルミナコート品を解砕して得られた粉末の平均細孔径は15μmであり、気孔率は53%であった。
【0083】
<触媒の担持>
以下の手順により、NO吸蔵触媒としてNaOを担持した。
アルミナ(触媒下塗り塗膜)100質量部当たりNaOが5質量部担持されるようにNaO濃度を調節したNaO水にコート品を含浸した。含浸後90℃で1晩乾燥した後に、200℃で2時間焼成してNO吸蔵触媒を得た。触媒中のNaO量をフレーム光度法で測定した結果、ハニカム触媒中のNaO量は0.4質量%であった。
【0084】
<NO吸蔵能調査>
得られたハニカム触媒を1mm以下に解砕した後、内径2cm、長さ10cmの流通式ガラス製反応容器に上下ガラスウールで挟んで解砕品を約3g充填した。反応容器を室温に保ち、反応管入り口から5ppmのN希釈NOガスを6.6N−リットル/分の速度で流し、出口のNO濃度を窒素酸化物測定装置で測定し、入り口濃度と同じになるまで吸着実験を行った。出口濃度の破過曲線よりNO吸蔵量を求めた結果、ハニカム触媒の解砕品あたりNOが0.15質量%吸蔵していることがわかった。
【符号の説明】
【0085】
100…ハニカムフィルタ、100a…一端面、100b…他端面、110a,110b…流路、112…隔壁、114…封口部、116…触媒下塗り塗膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁により仕切られた互いに略平行な複数の流路を有し、
前記複数の流路のうちの一部の一端及び前記複数の流路のうちの残部の他端が封口されており、
前記隔壁が、チタン酸アルミニウムを含む多孔質セラミックス焼結体から構成されており、
前記流路内における前記隔壁の表面には、塗膜が形成されており、
前記隔壁及び前記塗膜から構成される複合体の気孔率が30〜70体積%であり、
NO吸蔵触媒が前記塗膜に担持されている、ハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記塗膜が、前記隔壁内における細孔の表面に更に形成されている、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記塗膜が、γ−アルミナ及び/又はその前駆体を含む、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記NO吸蔵触媒が、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び貴金属元素からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記NO吸蔵触媒が、白金及びパラジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。

【図1】
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【公開番号】特開2012−127336(P2012−127336A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245379(P2011−245379)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】