説明

ハニカム構造体の検査方法

【課題】効率的に、ハニカム構造体のセルの傾き、および傾きの方向を測定することが可能なハニカム構造体の検査方法を提供する。
【解決手段】一方の端面15から他方の端面16まで貫通する複数のセル14を区画形成する多孔質の隔壁を有する筒状のハニカム構造体11を検査対象として、検査対象であるハニカム構造体11の一方の端面15を光源1で照らし、光源1から一方の端面15に照射されてハニカム構造体11のセルを通過して他方の端面16から放射される光を、画角を有するレンズである集光レンズ2で集光し、集光レンズ2で集光した光を、カメラ3で受光し、カメラ3で受光した光を画像処理機4で画像処理して、他方の端面16上の光の放射位置を特定し、他方の端面16上の光の放射位置からハニカム構造体11のセル14の傾き、および傾きの方向を算出するハニカム構造体の検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の検査方法に関し、更に詳しくは、短時間にワーク(ハニカム構造体)を傷つけることなく、ハニカム構造体のセルの傾きを測定することが可能なハニカム構造体の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学、電力、鉄鋼等の様々な分野において、環境対策や特定物資の回収等のために使用される触媒装置用の担体、又はフィルタとして、耐熱性、耐食性に優れるセラミック製のハニカム構造体が採用されている。ハニカム構造体は、一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する隔壁を有する筒状の構造物である。
【0003】
このようなハニカム構造体は、その中心軸とセルの延びる方向とが平行であることが好ましい。ハニカム構造体の中心軸とセルの延びる方向とが平行でない場合は、外周付近に位置するセルの端部が外周壁で塞がれ、両端部が開口するセルの数が少なくなることがある。その場合、例えば、濾過面積が低下するという問題があった。
【0004】
そのため、セルの傾きを測定する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平4−43767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の、セルの傾きを測定する方法は、ハニカム構造体の外周部の傾きが内部セルの傾きと同じであるという前提に基づくものであるため、内部のセルのみ傾いている場合は検査できなかった。そのため、中心軸とセルの延びる方向とが平行ではないことにより濾過面積が低下しているようなハニカム構造体を検知することができなかった。また、透過量の大小にて内部のセルの傾きを測定する方法では傾きが測定できても、傾いている方向は測定が不可能である。またCTスキャンにおける方法では短時間での効率的な測定が望めないといった課題がある。
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、効率的に、ハニカム構造体の、セルの傾き、および傾きの方向を測定することが可能なハニカム構造体の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下のハニカム構造体の検査方法を提供する。
【0009】
[1] 一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有する筒状のハニカム構造体を検査対象として、前記検査対象であるハニカム構造体の一方の端面を光源で照らし、前記光源から前記一方の端面に照射されて前記ハニカム構造体のセルを通過して他方の端面から放射される光を、画角を有するレンズにて集光し、前記集光レンズで集光した光を、カメラで受光し、前記カメラで受光した光を画像処理機で画像処理して、前記他方の端面上の光の放射位置を特定し、前記他方の端面上の光の放射位置から前記ハニカム構造体のセルの傾き、および傾きの方向を算出するハニカム構造体の検査方法。
【0010】
[2] 前記集光レンズの中心と前記集光レンズの焦点とを結ぶ直線に対する、ハニカム構造体のセルの延びる方向の角度と、前記他方の端面上の光の放射位置との関係である、セル角度−放射位置関係をあらかじめ測定しておき、前記検査対象であるハニカム構造体の前記他方の端面上の光の放射位置を、前記セル角度−放射位置関係と対比させて、前記検査対象であるハニカム構造体のセルの傾き、および傾きの方向を算出する[1]に記載のハニカム構造体の検査方法。
【0011】
[3] 前記光源から前記ハニカム構造体の一方の端面に照射される光が、特定の放射角で広がる光であり、前記放射角が、前記ハニカム構造体のセルの傾きとして想定される最大の傾き以上の大きさである[1]又は[2]に記載のハニカム構造体の検査方法。
【0012】
[4] 前記放射角が、10°以下の大きさである[3]に記載のハニカム構造体の検査方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の目封止ハニカム構造体の検査方法によれば、目封止ハニカム構造体の多孔質の目封止部を透過した光を、画角を有するレンズにて集光し、集光した光をカメラで受光して、画像処理により、目封止ハニカム構造体の他方の端面上の光の放射位置を特定し、当該光の放射位置からセルの傾きを算出するため、短時間にワークを傷つけることなく、セルの傾き、および傾きの方向を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のハニカム構造体の検査方法の一の実施形態を、ハニカム構造体の検査装置を用いて実施している状態を示す模式図である。
【図2】本発明のハニカム構造体の検査方法の一の実施形態を、ハニカム構造体の検査装置を用いて実施している状態を示す模式図である。
【図3A】本発明のハニカム構造体の検査方法の検査対象であるハニカム構造体を模式的に示した斜視図である。
【図3B】本発明のハニカム構造体の検査方法の検査対象であるハニカム構造体の一部を模式的に示した、中心軸に平行な断面を示す模式図である。
【図4】ハニカム構造体の中心軸が、集光レンズの中心線に重なるように配置した状態で、本発明のハニカム構造体の検査方法を実施した結果を示し、セルを通過する光の状態を示す模式図である。
【図5】ハニカム構造体の中心軸が、集光レンズの中心線に対して1.0°傾いた状態で、本発明のハニカム構造体の検査方法を実施した結果を示し、セルを通過する光の状態を示す模式図である。
【図6】ハニカム構造体の中心軸が、集光レンズの中心線に対して2.0°傾いた状態で、本発明のハニカム構造体の検査方法を実施した結果を示し、セルを通過する光の状態を示す模式図である。
【図7】光源から出射される光の広がりを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0016】
1.ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の検査方法の一の実施形態は、図3A、図3Bに示すような、一方の端面15から他方の端面16まで貫通する複数のセル14を区画形成する多孔質の隔壁12を有するハニカム構造体を検査対象とし、中心軸方向に直交する断面(円形の場合)の半径が50〜500mmの範囲であり、中心軸方向長さが40〜500mmの範囲であるハニカム構造体を検査対象とすることが好ましい(断面の形状は制限されない。例えば楕円形、四角、三角等でも構わない)。検査対象であるハニカム構造体は、セラミック製であることが好ましく、例えば、コージェライト、炭化珪素(SiC)、Si−SiC等から形成されていることが好ましい。公知の方法で製造されたハニカム構造体を検査対象とすることができる。また、本実施形態のハニカム構造体の検査方法の検査対象とするハニカム構造体は、中心軸とセルの延びる方向とにより形成される角度θ’が集光レンズ2の画角以下であることが好ましい。集光レンズ2の画角を超えると検査対象のハニカム構造体のセルの角度が測定できない。また、検査対象とするハニカム構造体は、所定のセルの一方の端面における開口部と、残余のセルの他方の端面における開口部とに目封止部が形成された目封止ハニカム構造体であってもよい。ここで、図3Aは、本発明のハニカム構造体の検査方法の検査対象であるハニカム構造体を模式的に示した斜視図である。図3Bは、本発明のハニカム構造体の検査方法の検査対象であるハニカム構造体の一部を模式的に示した、中心軸に平行な断面を示す模式図である。
【0017】
2.ハニカム構造体の検査方法:
本発明のハニカム構造体の検査方法の一の実施形態は、例えば、図1に示すようなハニカム構造体の検査装置100を用いて、目封止ハニカム構造体のセルの傾き、および傾きの方向を測定する方法である。本実施形態の目封止ハニカム構造体の検査方法は、一方の端面15から他方の端面16まで貫通する複数のセル14を区画形成する多孔質の隔壁を有する筒状のハニカム構造体11を検査対象として、検査対象であるハニカム構造体11の一方の端面(光源側を向く端面)15を光源1で照らし、光源1から一方の端面15に照射されてハニカム構造体11のセルを通過して他方の端面(集光レンズ側を向く端面)16から放射される光を、画角を有するレンズ2で集光し、集光レンズ2で集光した光を、カメラ3で受光し、カメラ3で受光した光を画像処理機4で画像処理して、他方の端面16上の光の放射位置を特定し、他方の端面16上の光の放射位置からハニカム構造体11のセル14の傾きを算出するものである。図1は、本発明のハニカム構造体の検査方法の一の実施形態を、ハニカム構造体の検査装置100を用いて実施している状態を示す模式図である。
【0018】
本実施形態のハニカム構造体の検査方法によれば、ハニカム構造体のセルを通過した光を、画角を有するレンズで集光し、集光した光をカメラで受光して、画像処理により、ハニカム構造体の他方の端面上の光の放射位置を特定し、当該光の放射位置からセルの傾き、および傾きの方向を算出するため、効率的に、セルの傾き、およびセルの傾きの方向を測定することができる。ここで、「セルの傾きを測定する」とは、ハニカム構造体の中心軸に対するセルの角度を測定することを意味する。また、「セルの傾きの方向を測定する」とは、セルが、ハニカム構造体の中心軸に対してどの方向に傾いているか(傾いている方向)を測定することを意味する。
【0019】
本実施形態のハニカム構造体の検査方法は、画角を有するレンズでハニカム構造体のセルを通過した光を集光するため、ハニカム構造体の他方の端面から放射された光の中で、集光レンズに照射され、受光素子にて結像した光だけがカメラで受光されて、画像処理機によりハニカム構造体の他方の端面における当該光の位置を把握することができる。従って、ハニカム構造体の中心軸とセルとが平行である場合、集光レンズ2の中心と集光レンズ2の焦点とを結ぶ直線と、ハニカム構造体の中心軸とが重なる(同一直線になる)ように集光レンズ2及びハニカム構造体11を配置したときには、図1に示すように、ハニカム構造体11の中心軸付近のセルを透過してきた光が集光レンズ2に照射され、受光素子中央にて結像されるため、ハニカム構造体11の他方の端面16の中央部から放射される光が観測される(図4の撮像光21参照)。つまり、ハニカム構造体の中心軸とセルとが平行である場合、集光レンズ2の中心と集光レンズ2の焦点とを結ぶ直線と、ハニカム構造体の他方の端面とが交わる部分から放射される光が観測されるのである。この場合、カメラで受光し、得られた画像は、目封止ハニカム構造体11の他方の端面16の中央部が光る画像である。撮像光として、目封止ハニカム構造体の他方の端面上に観測される光の範囲は、集光レンズの画角によって決まる。
【0020】
また、図2に示すように、ハニカム構造体11のセル14が傾いている場合(セル14と、ハニカム構造体11の中心軸とが平行ではない場合)、集光レンズ2に照射され、受光素子にて結像する光は、ハニカム構造体の中心軸付近のセルを透過した光ではなく、ハニカム構造体の中心軸から少し外周側にずれた位置のセルを透過した光である。そのため、ハニカム構造体11のセル14が傾いている場合、ハニカム構造体11の他方の端面16の中央部(集光レンズ2の中心と集光レンズ2の焦点とを結ぶ直線と、ハニカム構造体の他方の端面とが交わる部分)から少し外周側にずれた位置から放射される光が観測される(図5の撮像光22参照)。ここで、図2は、本発明のハニカム構造体の検査方法の一の実施形態を、ハニカム構造体の検査装置100を用いて実施している状態を示す模式図である。上記ハニカム構造体の「中心軸から少し外周側にずれた位置のセル」以外のセルを透過した光は、集光レンズ2に照射され、受光素子にて結像しないため、カメラでは受光されない。このように、ハニカム構造体のセルが傾いた場合には、上記ハニカム構造体の中心軸から少し外周側にずれた位置のセルを透過した光が、カメラで受光されるため、カメラで受光し撮像された画像においてハニカム構造体の他方の面における光の位置が中心軸からずれていた場合には、ハニカム構造体のセルが傾いていることになる。またその光の位置のずれを2次元的に捉えることにより、その傾きの方向も知ることが可能である。
【0021】
そして、本実施形態のハニカム構造体の検査方法は、集光レンズの中心と集光レンズの焦点とを結ぶ直線に対する、ハニカム構造体のセルの延びる方向の角度と、ハニカム構造体の他方の端面上の光の放射位置との関係を「セル角度−放射位置関係」とし、当該「セル角度−放射位置関係」をあらかじめ測定しておき、検査対象であるハニカム構造体の他方の端面上の光の放射位置を、「セル角度−放射位置関係」と対比させて、検査対象であるハニカム構造体のセルの傾きを算出することが好ましい。ここで、「ハニカム構造体の他方の端面上の光の放射位置」というときは、ハニカム構造体の他方の端面上の光の範囲における中心部分の位置を意味する。上記「中心部分」は、光の範囲が円形である場合は円の中心、光の範囲が楕円の場合は長径と短径との交点、そして、光の範囲がその他の形状の場合はその重心に相当する位置である。「セル角度−放射位置関係」は、例えば、一方の端面と他方の端面とが中心軸に直交し、セルの延びる方向が中心軸方向であるハニカム構造体を、ハニカム構造体の中心軸が、集光レンズの中心と集光レンズの焦点とを結ぶ直線(集光レンズの中心線)に重なるように配置し、その状態からハニカム構造体を少しずつ傾けることにより、ハニカム構造体のセルの延びる方向と、集光レンズの中心線との角度を変化させながら、ハニカム構造体の他方の端面上の光の放射位置を測定して得ることが好ましい。更に具体的には、ハニカム構造体の中心軸が、集光レンズの中心線に重なるように配置した状態で、ハニカム構造体の他方の端面上の光の放射位置をまず観測し、ハニカム構造体の中心軸が、集光レンズの中心線に対して1.0°(この角度は所望の角度でよい)傾けた状態で、ハニカム構造体の他方の端面上の光の放射位置を観測し、順次、ハニカム構造体の中心軸と集光レンズの中心線との角度を、1.0°(この角度は所望の角度でよい)ずつ増加させてハニカム構造体の他方の端面上の光の放射位置を観測して、「セル角度−放射位置関係」を測定することが好ましい。「セル角度−放射位置関係」を測定するときの、「セル角度」の範囲は、集光レンズの画角によって決まり、当該セル角度の範囲において、ハニカム構造体の他方の端面から放射される光を観測することができるものであることが好ましい。この場合、検査対象のハニカム構造体の他方の端面から放射される光を観測することができないときは、検査対象のハニカム構造体のセルの角度が、上記セル角度の範囲の最大値より大きく傾いていることになる。
【0022】
本実施形態のハニカム構造体の検査方法において、光源1はハニカム構造体11の一方の端面15を照らす位置に配置され、光源とハニカム構造体の一方の端面との距離は、0mmが好ましい。0mmより長くても構わないが、ハニカム構造体を支える機構を別途設ける必要があること、および、光量低下によるS/Nの低下が問題点となる。
【0023】
本実施形態のハニカム構造体の検査方法において、集光レンズ2は、画角を有するレンズであることが必要である。集光レンズ2は、集光レンズ2と光源1との間にハニカム構造体を配置したときに、ハニカム構造体11の一方の端面(光源側を向く端面)15にピントが合うようにするのが好ましい。また集光レンズ2と一方の端面(集光レンズ側を向く端面)16との距離は40〜2000mmが好ましい。この範囲内では近ければ近いほど、より限定した範囲でのセル傾きを測定することが可能となり、かつ、検査可能な傾きの範囲が広くなる。逆にこの範囲内では集光レンズ2と一方の端面(集光レンズ側を向く端面)16との距離が遠ければ遠いほどより検査可能な傾きの範囲が狭くなるものの、広い範囲でのセル傾きを測定することが可能となり、検査回数を低減させることができる。近すぎると、ハニカム構造体と集光レンズ2が接触し、集光レンズ2が破損する恐れがある。遠すぎると装置の大きさが過大となる。
【0024】
3.ハニカム構造体の検査装置:
本発明のハニカム構造体の検査方法は、以下に示すハニカム構造体の検査装置を用いて実施することが好ましい。
【0025】
図1に示すように、本発明のハニカム構造体の検査方法に用いるハニカム構造体の検査装置100は、検査対象であるハニカム構造体11の一方の端面(光源側を向く端面)15を照らす光源1と、光源1から一方の端面15に照射されてハニカム構造体11のセルを通過して他方の端面(集光レンズ側を向く端面)16から放射される光を、集光する集光レンズ2と、集光レンズ2で集光した光のデータを、受光するカメラ3と、カメラ3で受光した光を画像処理して、ハニカム構造体11のセルを通過した光の明暗(輝度)を表示する画像処理機4を備えるものが好ましい。図1に示される、光源からカメラに向かう矢印は、光の進行を示し、これは、図2においても同様である。
【0026】
ハニカム構造体の検査装置100において、光源としては、面内において均一な照度を保ち、また微弱な信号を検知するため、より明るい拡散光源であることが好ましい。
【0027】
また、光源1からハニカム構造体の一方の端面に照射される光が、特定の放射角αで広がる光であり、放射角αが、「ハニカム構造体のセルの傾きとして想定される最大の傾き(角度)θ(想定される、セルの最大の傾き)」以上の大きさであることが好ましい。光源から出射する光の角度(放射角)が、このような角度であることにより、光源からの光が、角度θ傾いたセル内を確実に通過することができるため、より確実にハニカム構造体のセルの傾きを測定することができる。放射角αが、「想定される、セルの最大の傾きθ」より小さいと、光源からの光が、角度θ傾いたセル内を確実に通過することができないことがあり、ハニカム構造体のセルの傾きを測定し難くなることがある。ここで、「想定される、セルの最大の傾きθ」は、製造するハニカム構造体のセルの傾きθ1の許容範囲(規格範囲)における最大の傾きの120%の角度を意味する。セルの傾きθは、ハニカム構造体の中心軸を含む面でハニカム構造体を切断し、ゲージで測定したセルの傾きとする。例えば、セラミック原料を押出成形し、乾燥、焼成することによって作製されたハニカム構造体においては、「想定される、セルの最大の傾きθ」としては、具体的には、5.0°を挙げることができる。光源からの光の「放射角α」とは、図7に示すように、光源1から出射される光の広がる角度βの、2分の1の大きさの角度を意味する。図7は、光源1から出射される光の広がりを示す模式図である。図7において、「矢印」は、光源1から出射される光を示す。
【0028】
更に、上記放射角αが、10°以下であることが好ましい。また、放射角αは、最大のセルの傾き(想定される、セルの最大の傾きθ)と同じ大きさであることが更に好ましい。放射角αがこのような大きさであることにより、光源からの光の強さが弱くなることがないため、より確実にハニカム構造体のセルの傾きを測定することができる。放射角αが、10°より大きいと、光源からの光が広がりすぎて、光の強さが弱くなり、ハニカム構造体のセルの傾きを測定し難くなることがある。
【0029】
ハニカム構造体の検査装置100において、集光レンズ2は、画角を有するレンズであり、光源1から放射され、ハニカム構造体11のセルを通過した光を、カメラ3に向けて集光するものである。集光レンズは測定したい「セル角度」以上の画角をもつものが必要となる。
【0030】
ハニカム構造体の検査装置100において、カメラ3は、高感度であるものが好ましい。カメラ3は、集光レンズ2で集光した光を受光し、その受光したデータを画像処理機に送る機能を有するものである。
【0031】
ハニカム構造体の検査装置100において、画像処理機4は、撮像した画像を表示できる表示器を備えていることが好ましい。もしくは、カメラで受光した光の明暗(輝度)を算出し、ハニカム構造体の他方の端面から放射される光の位置を検出する機能を有していることが好ましい。また、放射される光の位置を検出する機能に加え検出した光の位置からセルの傾きおよび傾きの方向を計算する機能を有していると好ましい。また撮像した画像を表示できる表示器と、光の位置を検出する機能の両方を有していると好ましい。撮像した画像を表示できる表示器、光の位置を検出する機能、及び検出した光の位置からセルの傾きおよび傾きの方向を計算する機能を全て有しているとさらに好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
図1に示すように、鉛直方向の上向きを照らすように光源を配置し、光源の鉛直方向上側で、光源から460mmの位置に集光レンズを配置し、集光レンズの鉛直方向上側で、集光レンズから0mmの位置にカメラを配置し、カメラに画像処理機を接続して、目封止ハニカム構造体の検査装置とした。各機器は、ラックに固定した。
【0034】
光源としては、放射角αが10°の蛍光灯面照明を使用した。集光レンズとしては、直径35.5mm、画角34.09°、焦点距離25mmの、CCTVレンズを使用した。カメラとしては、400万画素CCDカメラを使用した。画像処理機としては、パソコンを使用した。
【0035】
以下に示す方法で作製された目封止ハニカム構造体を検査対象として、セルの傾きを測定した。また、セルの傾きを算出するために用いる検量線は、以下のようにして作成した。検査を行うに際しては、検査対象である目封止ハニカム構造体を、一方の端面を、鉛直方向に直交させた状態で、鉛直方向下向きに向けて、光源から0mm上方(鉛直方向上方)に配置した。光源からの光の強さを80000lxとした。得られた結果を表1に示す。表1における「放射位置」は、中心(目封止ハニカム構造体の他方の端面(集光レンズ側を向く端面)の中心)からずれた距離を示し、画像処理上の単位(ピクセル)で示している。
【0036】
(目封止ハニカム構造体の作製)
タルク、カオリン、仮焼カオリン、アルミナ、水酸化カルシウム、及びシリカのうちから複数を組み合わせて、その化学組成が、SiO(シリカ)42〜56質量%、Al(アルミナ)30〜45質量%、及びMgO(マグネシア)12〜16質量%となるように所定の割合で調合されたコージェライト化原料100質量部に対して、造孔材としてグラファイトを12〜25質量部、及び合成樹脂を5〜15質量部を添加した。さらに、メチルセルロース類、及び界面活性剤をそれぞれ適当量添加した後、水を加えて混練することにより坏土を調製した。調製した坏土を真空脱気した後、押出成形することによりハニカム成形体を得た。次に、ハニカム成形体を焼成することによってハニカム焼成体(多孔質基材)を得た。焼成条件は、1400〜1430℃、10時間とした。次に、得られたハニカム焼成体に目封止を施した。得られたハニカム焼成体の一方の端面のセル開口部に、市松模様状に交互にマスクを施し、マスクを施した側の端部をセラミック原料としてコージェライト材を含有する目封止スラリーに浸漬し、市松模様状に交互に配列された目封止部を形成した。更に、他方の端部については、一方の端部において目封止されたセルについてマスクを施し、上記一方の端部に目封止部を形成したのと同様の方法で目封止部を形成した。目封止部を形成したハニカム焼成体を乾燥、焼成して目封止ハニカム構造体を得た。得られた目封止ハニカム構造体は、底面の直径190mm、中心軸方向長さ200mmの円筒形であり、隔壁厚さは0.3mm、セル密度は、31セル/cmであった。
【0037】
(検量線の作成)
上記「目封止ハニカム構造体の作製」の方法により目封止ハニカム構造体を作製し、必要に応じ、セルの延びる方向が中心軸に平行でない場合には外周面を研削してセルの延びる方向が中心軸に平行になるようにし、両端面が中心軸に直交しない場合には両端面が中心軸に直交するように両端部を切断することにより、両端面が中心軸に直交するとともにセルの延びる方向が中心軸に平行な目封止ハニカム構造体とする。
【0038】
そして、得られた目封止ハニカム構造体を用いて、目封止ハニカム構造体の中心軸が、集光レンズの中心線に重なるように配置した状態で、目封止ハニカム構造体の他方の端面上の光の放射位置をまず観測し、目封止ハニカム構造体の中心軸が、集光レンズの中心線に対して1.0°傾けた状態で、目封止ハニカム構造体の他方の端面上の光の放射位置を観測し、順次、目封止ハニカム構造体の中心軸と集光レンズの中心線との角度を、1.0°ずつ増加させて目封止ハニカム構造体の他方の端面上の光の放射位置を観測して、「セル角度−放射位置関係」を測定した。そして、得られた「セル角度−放射位置関係」のデータを最小自乗法により直線近似したものを検量線として用いた。得られた直線(検量線)の式は、「y=−47.457x+823.8、y:放射位置(ピクセル)、x:セルの傾き(°)、xの範囲:0.0〜5.0°」であった。目封止ハニカム構造体は、図4における矢印yで示されるy方向には傾けずに、矢印xで示されるx方向にのみ傾けた。図4においてx方向に延びる一点鎖線とy方向に延びる一点鎖線との交点が目封止ハニカム構造体の他方の端面の中心を示す。図5,6において、Xaは、撮像光22又は23の、目封止ハニカム構造体の他方の端面上の中心からの距離を示す。「セル角度−放射位置関係」の結果を表2及び図4〜6に示す。尚、検査対象の目封止ハニカム構造体についてセルの傾きを測定したときに、観測される放射位置(目封止ハニカム構造体の他方の端面上の光の放射位置)が中心(集光レンズの中心線と目封止ハニカム構造体の他方の端面との交点)からずれていた場合であって、放射位置のずれる方向が、x方向にもy方向にも平行ではない場合には、画像処理によりx方向の座標及びy方向の座標を求めることにより、放射位置のずれる方向(中心からずれる方向)を特定することができる。図4は、目封止ハニカム構造体の中心軸が、集光レンズの中心線に重なるように配置した状態で本発明の目封止ハニカム構造体の検査方法を実施した結果を示し、目封止部を透過する光の状態を示す模式図である。図5は、目封止ハニカム構造体の中心軸が、集光レンズの中心線に対して1.0°傾いた状態で本発明の目封止ハニカム構造体の検査方法を実施した結果を示し、目封止部を透過する光の状態を示す模式図である。図6は、目封止ハニカム構造体の中心軸が、集光レンズの中心線に対して2.0°傾いた状態で本発明の目封止ハニカム構造体の検査方法を実施した結果を示し、目封止部を透過する光の状態を示す模式図である。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
実施例1より、本発明のハニカム構造体の検査方法によって、セルが傾いたハニカム構造体のセルの傾き角度、および傾きの方向を測定できることがわかる。
【0042】
(実施例2〜17)
光源の放射角αを表3に示すように変化させた以外は、実施例1と同様にして目封止ハニカム構造体の検査装置を作製した(実施例2〜17)。得られた目封止ハニカム構造体の検査装置を用いて、ハニカム構造体のセルの傾き及び傾きの方向を測定する際の、撮像光の状態(見え易さ)を観察した。尚、撮像光の観察に際しては、セルの延びる方向が、中心軸方向である目封止ハニカム構造体を用いた。そして、目封止ハニカム構造体を、その中心軸が鉛直方向に対して、0°(γ=0°)、1°(γ=1°)、2°(γ=2°)、3°(γ=3°)、4°(γ=4°)及び5°(γ=5°)傾いた状態で配置して、それぞれの角度について観察を行った。尚、角度γは、目封止ハニカム構造体の中心軸と、鉛直方向との角度(小さい方の角度)であり、鉛直方向に対するセルの傾きでもある。また、撮像光の観察における評価としては、「撮像光の見え方」を評価し、撮像光を極めて良好に観察することができた場合を「A」、撮像光を良好に観察することができた場合を「B」、撮像光を観察することができたが若干ぼやけた状態であった場合を「C」とした。
【0043】
【表3】

【0044】
表3より、放射角αが、セルの傾きγ以上であり、且つ、放射角αが5°以下であると、撮像光を極めて良好に検出できることがわかる。また、放射角αが5°より大きく、10°以下であると、撮像光を良好に検出できることがわかる。また、放射角αが、セルの傾きγより小さいと、光量が低下し、撮像光が若干ぼやけた状態になることがわかる。また、放射角αが、10°を超えると、光量が低下し、撮像光が若干ぼやけた状態になることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のハニカム構造体の検査方法は、セルの傾きを効率的に測定することができるため、セルの傾きの少ないハニカム構造体の製造に好適に利用することができ、得られたハニカム構造体は、化学、電力、鉄鋼等の様々な分野において、環境対策や特定物資の回収等のために使用される触媒装置用の担体、又はフィルタとして好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1:光源、2:集光レンズ、3:カメラ、4:画像処理機、11:ハニカム構造体、12:隔壁、14:セル、15:一方の端面、16:他方の端面、21,22,23:撮像光、Xa:撮像光の中心からの距離、x:x方向、y:y方向、α:放射角、β:光源から出射される光の広がる角度、100:ハニカム構造体の検査装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有する筒状のハニカム構造体を検査対象として、前記検査対象であるハニカム構造体の一方の端面を光源で照らし、
前記光源から前記一方の端面に照射されて、前記ハニカム構造体のセルを通過して他方の端面から放射される光を、画角を有するレンズにて集光し、
前記集光レンズで集光した光を、カメラで受光し、
前記カメラで受光した光を画像処理機で画像処理して、前記他方の端面上の光の放射位置を特定し、
前記他方の端面上の光の放射位置から前記ハニカム構造体のセルの傾き、および傾きの方向を算出するハニカム構造体の検査方法。
【請求項2】
前記集光レンズの中心と前記集光レンズの焦点とを結ぶ直線に対する、ハニカム構造体のセルの延びる方向の角度と、前記他方の端面上の光の放射位置との関係である、セル角度−放射位置関係をあらかじめ測定しておき、
前記検査対象であるハニカム構造体の前記他方の端面上の光の放射位置を、前記セル角度−放射位置関係と対比させて、前記検査対象であるハニカム構造体のセルの傾き、および傾きの方向を算出する請求項1に記載のハニカム構造体の検査方法。
【請求項3】
前記光源から前記ハニカム構造体の一方の端面に照射される光が、特定の放射角で広がる光であり、前記放射角が、前記ハニカム構造体のセルの傾きとして想定される最大の傾き以上の大きさである請求項1又は2に記載のハニカム構造体の検査方法。
【請求項4】
前記放射角が、10°以下の大きさである請求項3に記載のハニカム構造体の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−249799(P2010−249799A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23751(P2010−23751)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】