説明

ハニカム構造体

多数の貫通孔が壁部を隔てて長手方向に並設され、これらの貫通孔のいずれか一方の端部を封止してなるセラミックブロックにて構成されたハニカム構造体である。このハニカム構造体は、それを構成するセラミックブロックが、セラミック粒子と非晶質シリコンとからなる複合材にて形成され、その気孔率を高くした場合であっても、優れた圧縮強度を有するとともに、高温に加熱された場合であっても機械的強度の低下が少なく、耐久性に優れている。

【発明の詳細な説明】
関連出願
本出願は、2002年10月7日に出願された日本国特許出願2002−293691号を基礎出願として優先権主張する出願である。
【技術分野】
本発明は、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気ガス中のパティキュレート等を除去するフィルタや、触媒担持体等として使用されるハニカム構造体に関する。
【背景技術】
近年、バスやトラック等の車両や建設機械等の内燃機関から排出される排気ガス中に含有されるパティキュレートが環境や人体に害を及ぼすことが問題となっている。
この排気ガスを多孔質セラミックに通過させ、排気ガス中のパティキュレートを捕集して、排気ガスを浄化することができるセラミックフィルタが種々提案されている。
このようなセラミックフィルタとして、一方向に多数の貫通孔が並設され、貫通孔同士を隔てる隔壁がフィルタとして機能するように構成されたハニカムフィルタが知られている。
すなわち、上記ハニカムフィルタに形成された貫通孔は、排気ガスの入口側又は出口側の端部の一方が封止材により、所謂、市松模様となるように目封じされ、一の貫通孔に流入した排気ガスは、必ず貫通孔を隔てる隔壁を通過した後、他の貫通孔から流出するようになっており、排気ガスがこの隔壁を通過する際、パティキュレートが隔壁部分で捕捉され、排気ガスが浄化される。
このような排気ガスの浄化作用に伴い、ハニカムフィルタの貫通孔を隔てる隔壁部分には、パティキュレートが次第に堆積し、目詰まりを起こして通気を妨げるようになる。このため、上記ハニカムフィルタでは、定期的にヒータ等の加熱手段を用いて目詰まりの原因となっているパティキュレートを燃焼除去して再生する再生処理を行う必要がある。
従来、上記ハニカムフィルタとしては、炭化珪素やコージェライトからなるものが知られているが、上記ハニカムフィルタは、パティキュレート捕集時の高温の排気ガスや再生処理時のヒータ等の加熱手段により高温に加熱されることから、より耐熱性に優れる炭化珪素からなるものが有益であると考えられている。
このような炭化珪素からなるハニカムフィルタとして、炭化珪素粉末を原料とし、それを所定の形状に成形し、乾燥した後、焼成する(再結晶法)ことにより製造されるハニカムフィルタが、例えば、特開平6−182228号公報に開示されている。
また、炭化珪素等のセラミック粒子が、SiO、Al、B及びNaOからなる群より選ばれるガラス質の酸化物によって結合されてなるハニカム構造体が、例えば、特開2001−199777号公報に開示されている。
さらに、炭化珪素粒子に金属珪素と有機バインダとを添加し、混合混練してハニカム状に成形した後、焼成することによって、上記炭化珪素粉末が金属珪素によって結合されてなるハニカム構造体が、例えば、特開2002−60279号公報や、特開2002−154876号公報に開示されている。
このような文献に開示されたハニカムフィルタやハニカム構造体を、その外周に衝撃吸収や断熱等の役割を果たす保持シール材を巻き付けた状態で、筒状のケーシング内に相当の圧縮荷重を加えながら設置し、該ケーシングを内燃機関等の排気通路に配設することで、排気ガス浄化装置を構成し、この排気ガス浄化装置を機能させることにより、上述した排気ガスの浄化を行う。
ところで、近年、上記文献に開示されたハニカムフィルタやハニカム構造体の壁部に、排気ガス中のCO、HC及びNOx等を酸化または還元して除去する触媒や、捕集したパティキュレートの燃焼を促進するための触媒を担持させたものが開発されている。
通常、上記触媒は、比表面積の大きなγアルミナ等の触媒サポート材層を介して上記ハニカムフィルタやハニカム構造体の壁部に担持させるのであるが、排気ガスと触媒との触媒反応の効率化を図るためには、できるだけ多くの触媒を担持させる方が望ましい。そのためには、上記ハニカムフィルタやハニカム構造体の壁部にできるだけ大量の触媒サポート材層を添加する必要があり、上記ハニカムフィルタやハニカム構造体の高気孔率化が図られている。
しかしながら、上記特開平6−182228号公報に開示されたハニカムフィルタは、その気孔率を高くすると、脆くなって圧縮強度が低下してしまうという問題があった。
そのため、上記ハニカムフィルタは、上述した保持シール体を介してケーシング内に設置する際に加えられる圧縮荷重により破壊されやすくなり、ケーシング内に設置することが困難になる傾向にあった。
また、上記ハニカムフィルタは、捕集、再生といった処理を順次繰り返して使用されるので、熱応力を受けることになり、このような熱応力を受けると、セラミック粒子間、すなわち、セラミック粒子そのものが破壊されることになり、その結果、目視で確認できる程の大きなクラックを生じるという問題があった。
また、上記特開2002−60279号公報に開示されたハニカム構造体は、金属珪素を用いて炭化珪素粒子が結合された構造であり、炭化珪素の結合点(金属珪素)において内部応力を多少緩和させることができる。従って、ハニカム構造体を高気孔率化した場合、その圧縮強度は、特開平6−182228号公報に開示されたハニカムフィルタに比べて多少改善されるが、大幅な向上は認められず、ケーシング内に設置する際に加えられる圧縮荷重により破壊されるという問題があった。
また、上記ハニカムフィルタも、捕集、再生といった処理を順次繰り返して使用されるので、熱応力を受けることになり、このような熱応力を受けると、セラミック粒子間にある結合部のシリコンに、目視では確認が難しいが、SEMで拡大すると確認できる微細なクラックが生じ、そのような微細なクラックが拡がるとセラミック粒子の間が破壊され、目視で確認できる程の大きなクラックあるいは、脱粒子が生じるという問題があった。
さらに、上記特開2001−199777号公報に開示されたハニカム構造体は、炭化珪素等のセラミック粒子がガラス質物質により結合された構造であり、上記特開2002−60279号公報や、特開2002−154876号公報に開示されたハニカム構造体よりも、セラミック粒子の結合点(ガラス質の酸化物)において内部応力を緩和させることができ、より圧縮強度が向上したものであった。しかしながら、上記ガラス質の酸化物は、金属珪素よりも低温で結晶質に変化してしまうものであったため、再生処理等においてハニカム構造体が高温に加熱されると、ガラス質の酸化物が結晶化してハニカム構造体自体の強度が低下してしまい、流入してくる排気ガスの圧力により破壊されてしまうという問題があった。
本発明は、従来技術が抱える上記問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、気孔率を高くしても優れた圧縮強度を有するとともに、高温に加熱された場合であっても機械的な強度低下の少ないハニカム構造体を提供することにある。
【発明の開示】
発明者らは、従来技術が抱える上記問題を解決するために、鋭意研究した結果ハニカム構造体を構成する材料として、セラミック粒子と非晶質シリコンとからなる複合材、とくにセラミック粒子が非晶質シリコンを介して結合された多孔質セラミックスが効果的であることを知見し、以下のような内容を要旨とする発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設され、これらの貫通孔のいずれか一方の端部を封止してなるセラミックブロックにて構成されたハニカム構造体において、
前記セラミックブロックは、セラミック粒子と非晶質シリコンとからなる複合材にて形成したことを特徴とするハニカム構造体である。
すなわち、本発明にかかるハニカム構造体は、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設され、セラミック粒子と非晶質シリコンとからなる複合材にて形成したセラミックブロックにて構成され、そのセラミックブロックは、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された柱状のセラミック部材がシール材層を介して複数個結束されることにより構成されていてもよく(以下、前記ハニカム構造体を集合体型ハニカム構造体とも言う)、また、全体が一つのセラミックブロックとして形成されたセラミック部材から構成されていてもよい(以下、前記フィルタを一体型ハニカム構造体とも言う)。
本発明にかかるハニカム構造体は、集合体型ハニカム構造体の場合には、その壁部は、セラミック部材の貫通孔を隔てる隔壁と、セラミック部材の外壁およびセラミック部材間の接着材層として機能しているシール材層とからなり、一体型ハニカム構造体の場合には、一種類の隔壁のみからなっている。
本発明において、ハニカム構造体を構成するセラミックブロックは、その一方の端部では、複数の貫通孔が封止材により封止され、他方の端部では、前記封止材により封止されていない貫通孔が封止材により封止されていることが好ましい。
その理由は、隔壁の表面積を大きくすることができ、そのような表面積の拡大された隔壁を通過させることで、パティキュレートを薄く捕集することができる。よって、排気ガスの通過の抵抗を減らし、圧力損失を下げることができるからである。
また、本発明において、セラミックブロックを形成する複合材は、セラミック粒子が非晶質シリコンを介して結合された多孔質セラミックスであることが好ましい。
その理由は、非晶質シリコンは、フィルタの再生時のような高温雰囲気下では、容易に溶融し、再生完了時のような場合に容易に元の非晶質シリコンに戻るというような、自由度の高い結晶構造となっている。そのため、熱応力を受けた場合に、セラミック粒子の間に微細なクラックが生じても、再度、シリコン間で結合されるので、クラックの伸展を防止できると考えられる。
また、初期の段階においては、セラミック粒子間が弾性質の非晶質シリコンを介して結合され、支持されているので、初期の圧縮強度が強くなると考えられる。
また、本発明において、複合材を構成するセラミック粒子は、炭化珪素であることが好ましい。
その理由は、熱伝導率が高い材料であるからである。
さらに、本発明において、複合材を構成するセラミック粒子どうしを結合する非晶質シリコンは、その結晶性が低いものであり、具体的には、上記ハニカム構造体のX線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅が1.0°以上であることが好ましい。
本発明者らの研究によると、セラミック粒子をシリコンを介して結合してなる複合材から構成されるハニカム構造体を高気孔率とした場合の圧縮強度は、上記シリコンの結晶性に大きく関係しており、上記シリコンの結晶性によって、高気孔率としたハニカム構造体の圧縮強度が大きく変動することを見出した。
すなわち、ハニカム構造体のX線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅が1.0°以上となる程度にセラミック粒子を結合するシリコンの結晶性を低下させることにより、本発明のハニカム構造体は、高気孔率とした場合であっても、圧縮強度が優れたものとなると考えられる。
このことは、通常、上記のように結晶性が低下した非晶質シリコンは、より結晶性の高い結晶質シリコン(X線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅が1.0°未満)に比べて優れた弾性を有しており、上記非晶質シリコンを用いてなる本発明のハニカム構造体は、セラミック粒子間の結合点(非晶質シリコン)が優れた弾性を持つためであると考えられる。
その結果、例えば、高気孔率とした本発明のハニカム構造体を上述した筒状のケーシング内に設置する際、該ハニカム構造体に大きな圧縮荷重が加えられ、大きな内部応力が生じた場合であっても、上記非晶質シリコンが上記内部応力を好適に緩和し、本発明のハニカム構造体は、容易に破壊されることがなく、圧縮強度に優れたものとなる。
このような非結晶質シリコンは、もともと、原料の珪素の結晶性の低いものを選択したりしたうえで、焼成条件を低温にして、焼成することで作製することができる。
なお、上述した特開2002−60279号公報や、特開2002−154876号公報に開示されたハニカム構造体のX線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅は、いずれも1.0°未満であり、その結晶性がやや高く、この金属珪素の結晶性の高さに起因して、従来のハニカム構造体の圧縮強度が充分に高いものとならなかったと考えられる。
上記ハニカム構造体のX線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅が1.0°未満であると、非晶質シリコンの結晶性が高く、該非晶質シリコンを用いてなるハニカム構造体の圧縮強度が充分に高いものとならない。
そして、上記ハニカム構造体のX線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅の上限は、4.0°であることが望ましい。
上記半値幅が4.0°よりも大きくなると、上記非晶質シリコンの結晶性が低くなって、溶融しやすくなる。その結果、結合部分のシリコンが流れ出て少なくなってしまい、再結合が困難になったり、セラミック粒子間の隙間、すなわち気孔が溶融したシリコンによって埋められ、再生後の形状を保持することが困難になると考えられる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明のハニカム構造体の一例を模式的に示した斜視図である。
図2(a)は、図1に示したハニカム構造体を構成する多孔質セラミック部材の一例を模式的に示した斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示した多孔質セラミック部材のA−A線断面図である。
図3(a)は、本発明のハニカム構造体の別の一例を模式的に示した斜視図であり、図3(b)は、図3(a)に示したハニカム構造体のB−B線断面図である。
図4(a)は、本発明のハニカム構造体を製造する際の封口処理の様子を模式的に示す断面図であり、図4(b)は、その部分拡大断面図である。
図5は、本発明のハニカム構造体を製造する様子を模式的に示した側面図である。
図6は、本発明のハニカム構造体を用いた排気ガス浄化装置の一例を模式的に示した断面図である。
図7は、実施例1にかかるハニカム構造体のX線回折を示すグラフである。
図8は、実施例1に係るハニカム構造体の断面を示すSEM写真(1000倍)である。
【発明を実施するための最良の形態】
図1は、本発明のハニカム構造体の一例である集合体型ハニカム構造体の具体例を模式的に示した斜視図であり、図2(a)は、図1に示したハニカム構造体を構成する多孔質セラミック部材の一例を模式的に示した斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示した多孔質セラミック部材のA−A線断面図である。
図1および図2に示したように、本発明のハニカム構造体10では、多孔質セラミック部材20がシール材層14を介して複数個結束されて円柱状のセラミックブロック15を構成し、このセラミックブロック15の周囲には、シール材層13が形成されている。
また、角柱状の多孔質セラミック部材20では、その長手方向に多数の貫通孔21が隔壁23を介して並設されている。
本発明のハニカム構造体10を排気ガス中のパティキュレートを捕集するためのハニカムフィルタとして使用する場合、多孔質セラミック部材20は、図2(b)に示したように、貫通孔21の端部のいずれかが封止材22により封止されていることが望ましい。
すなわち、本発明のハニカム構造体10のセラミックブロック15では、一方の端部で所定の貫通孔21が封止材22により封止され、セラミックブロック15の他方の端部では、封止材22により封止されていない貫通孔21が封止材22により封止されていることが望ましい。
この場合、一の貫通孔21に流入した排気ガスは、必ず貫通孔21を隔てる隔壁23を通過した後、他の貫通孔21から流出されるようになっており、これらの貫通孔21どうしを隔てる隔壁23を粒子捕集用フィルタとして機能させることができる。
なお、セラミックブロック15の周囲に形成されたシール材層13は、本発明のハニカム構造体10を上記ハニカムフィルタとして使用した際に、セラミックブロック15の外周から排気ガスの漏れを防止するために形成されている。従って、本発明のハニカム構造体の用途によっては必ずしも必要でない。
また、図3(a)は、本発明のハニカム構造体の別の一例である一体型ハニカム構造体の具体例を模式的に示した斜視図であり、図3(b)は、そのB−B線断面図である。
図3(a)に示したように、本発明のハニカム構造体30は、多数の貫通孔31が壁部33を隔てて長手方向に並設された多孔質セラミックからなる円柱状のセラミックブロック35により構成されている。
また、本発明のハニカム構造体30を排気ガス中のパティキュレートを捕集するためのハニカムフィルタとして使用する場合、セラミックブロック35は、図3(b)に示したように、貫通孔31の端部のいずれかが封止材32により封止されていることが望ましい。
すなわち、本発明のハニカム構造体30のセラミックブロック35では、一方の端部で所定の貫通孔31が封止材32により封止され、セラミックブロック35の他方の端部では、封止材32により封止されていない貫通孔31が封止材32により封止されていることが望ましい。
この場合、一の貫通孔31に流入した排気ガスは、必ず貫通孔31を隔てる壁部33を通過した後、他の貫通孔31から流出されるようになっており、これらの貫通孔31どうしを隔てる壁部33を粒子捕集用フィルタとして機能させることができる。
また、図3には示していないが、セラミックブロック35の周囲には、図1に示したハニカム構造体10と同様に、シール材層が形成されていてもよい。
本発明にかかるハニカム構造体において、セラミックブロックは、セラミック粒子が非晶質シリコンを介して結合されてなる多孔質セラミックから形成されることが好ましい。
上記セラミック粒子としては、例えば、コージェライト、アルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニア、イットリア等の酸化物セラミック、炭化珪素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック等が用いられる。
本発明にかかるハニカム構造体が、図1に示したような集合体型ハニカム構造体である場合、上記セラミック粒子の中では、耐熱性が大きく、機械的特性および化学的安定性に優れるとともに、熱伝導率も大きい炭化珪素が望ましい。
また、本発明にかかるハニカム構造体が、図3に示したような一体型ハニカム構造体である場合、コージェライト等の酸化物セラミックが使用される。安価に製造することができるとともに、比較的熱膨張係数が小さく、例えば、本発明のハニカム構造体を上記ハニカムフィルタとして使用している途中に破壊されることがなく、また、酸化されることもないからである。
本発明のハニカム構造体の圧縮強度は、上記非晶質シリコンの結晶性及び使用するセラミック粒子の種類等により決定されるが、0.1MPa〜60MPaの範囲であることが望ましく、0.5MPa〜30MPaの範囲であることがより望ましい。
その理由は、圧縮強度が0.1MPa未満であると、ハニカム構造体に比較的小さな圧縮荷重が加えられることで、容易にクラックが発生してしまうことがあり、セラミック粒子が、再度、非晶質シリコンを介して結合するのが困難になる。60MPaを超えると、シリコンの自由度がなくなってしまって、再結合化が困難になるからである。
図1および図3に示した本発明のハニカム構造体では、セラミックブロックの形状は円柱状であるが、本発明において、セラミックブロックは、柱状であれば円柱状に限定されることはなく、例えば、楕円柱状や角柱状等任意の形状のものであってもよい。
本発明のハニカム構造体を構成するセラミックブロックの気孔率は、50〜80%であることが望ましい。気孔率が50%未満であると、非晶質シリコンによりセラミック粒子が結合された結合点の量が多くなり、非晶質シリコンの結晶性を上述した程度に低くしなくても、上記結合点が多くなることによりハニカム構造体の圧縮強度が高くなるため、そもそもハニカム構造体の圧縮強度の低下という問題が生じにくい。一方、気孔率が80%を越えると、非晶質シリコンによりセラミック粒子が結合された結合点の量が少なくなりすぎ、この結合点の少なさに起因してハニカム構造体の強度が低下し、容易に破壊されることがあるからである。
なお、上記気孔率は、例えば、水銀圧入法、アルキメデス法及び走査型電子顕微鏡(SEM)による測定等、従来公知の方法により測定することができる。
また、上記セラミックブロックの平均気孔径は、5〜100μmであることが望ましい。平均気孔径が5μm未満であると、本発明のハニカム構造体を上記ハニカムフィルタとして使用する場合、パティキュレートが容易に目詰まりを起こすことがある。一方、平均気孔径が100μmを超えると、パティキュレートが気孔を通り抜けてしまい、該パティキュレートを捕集することができず、フィルタとして機能することができないことがある。
このようなセラミックブロックを製造する際に使用するセラミック粒子の粒径としては、後の焼成工程で収縮が少ないものが望ましく、例えば、0.3〜50μm程度の平均粒径を有するものが望ましい。上記粒径のセラミック粒子粉末を用いることで、上述した気孔率及び平均気孔径の多孔質セラミックからなるセラミックブロックを製造することができるからである。
本発明のハニカム構造体において、セラミックブロックの貫通孔のいずれか一方の端部に充填材が充填されている場合、上記充填材は、多孔質セラミックからなるものであることが望ましい。
本発明のハニカム構造体において、上記充填材が充填されたセラミックブロックは、多孔質セラミックからなるものであるため、上記充填材を上記セラミックブロックと同じ多孔質セラミックとすることで、両者の接着強度を高くすることができるとともに、充填材の気孔率を上述したセラミックブロックと同様に調整することで、上記セラミックブロックの熱膨張率と充填材の熱膨張率との整合を図ることができ、製造時や使用時の熱応力によって充填材と壁部との間に隙間が生じたり、充填材や充填材に接触する部分の壁部にクラックが発生したりすることを防止することができる。
上記充填材が多孔質セラミックからなる場合、その材料としては、例えば、上述したセラミックブロックを構成するセラミック粒子及び非晶質シリコンと同様の材料が用いられる。
本発明のハニカム構造体が図1に示した集合体型ハニカム構造体である場合、シール材層13、14は、多孔質セラミック部材20間、及び、セラミックブロック15の外周に形成されている。そして、多孔質セラミック部材20間に形成されたシール材層14は、複数の多孔質セラミック部材20同士を結束する接着剤として機能し、一方、セラミックブロック15の外周に形成されたシール材層13は、本発明のハニカム構造体を上記ハニカムフィルタとして使用する場合、本発明のハニカム構造体10を内燃機関の排気通路に設置した際、セラミックブロック15の外周から排気ガスが漏れ出すことを防止するための封止材として機能する。
上記シール材層を構成する材料としては、例えば、無機バインダー、有機バインダー、無機繊維及びまたは無機粒子からなるもの等が用いられる。
なお、上述した通り、本発明のハニカム構造体において、シール材層は、多孔質セラミック部材間、及び、セラミックブロックの外周に形成されているが、これらのシール材層は、同じ材料からなるものであってもよく、異なる材料からなるものであってもよい。さらに、上記シール材層が同じ材料からなるものである場合、その材料の配合比は同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
上記無機バインダーとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル等が用いられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機バインダーのなかでは、シリカゾルが望ましい。
上記有機バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が用いられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記有機バインダーのなかでは、カルボキシメチルセルロースが望ましい。
上記無機繊維としては、例えば、シリカ−アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等のセラミックファイバー等が用いられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機繊維のなかでは、シリカ−アルミナファイバーが望ましい。
上記無機粒子としては、例えば、炭化物、窒化物等を挙げることができ、具体的には、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素等からなる無機粉末又はウィスカー等が用いられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機粒子のなかでは、熱伝導性に優れる炭化珪素が望ましい。
シール材層14は、緻密体からなるものであってもよく、本発明のハニカム構造体を上記ハニカムフィルタとして使用する場合、その内部への排気ガスの流入が可能なように、多孔質体であってもよいが、シール材層13は、緻密体からなるものであることが望ましい。シール材層13は、本発明のハニカム構造体10を内燃機関の排気通路に設置した際、セラミックブロック15の外周から排気ガスが漏れ出すことを防止する目的で形成されているからである。
このような本発明のハニカム構造体は、図1〜3を用いて説明したように、該ハニカム構造体を構成するセラミックブロックのいずれか一方の端部における所定の貫通孔に充填材が充填されていると、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気ガス中のパティキュレートを捕集する排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして好適に用いることができる。
また、本発明のハニカム構造体を上記排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして使用する場合、セラミックブロックの壁部には、ハニカムフィルタに再生処理を施す際、パティキュレートの燃焼を促進するためのPt等の触媒を担持させてもよい。
また、例えば、本発明のハニカム構造体のセラミックブロックにPt、Rh、Pd等の貴金属又はこれらの合金等の触媒を担持させることで、本発明のハニカム構造体を内燃機関等の熱機関やボイラー等の燃焼装置等から排出される排気ガス中のHC、CO及びNOx等の浄化や、液体燃料又は気体燃料の改質等を行う触媒担体として使用することができる。
なお、本発明のハニカム構造体を上記触媒担体として使用する場合、上記充填材は必ずしも必要でない。
以上説明したように、本発明にかかるハニカム構造体は、セラミック粒子が非晶質シリコンを介して結合されてなる複合材から形成されたセラミックブロックにて構成される。
なお、シリコンとセラミックは、例えば、SEMの反射電子像によって、位置を確認したり、EDSによるマッピング等でも確認できる。
上記非晶質シリコンは、その結晶性は低いものであり、具体的には、X線回折(JIS K0131−1996に準じて測定することが望ましい)におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅が1.0°以上であるため、このような非晶質シリコンを用いてなるハニカム構造体は、その気孔率を高くした場合であっても、圧縮強度が優れたものとなる。その結果、本発明のハニカム構造体に大きな圧縮荷重が印加され、その内部に大きな内部応力が生じた場合であっても、上記セラミック粒子間の接合点(非晶性シリコン)において上記内部応力を好適に緩和することができ、容易にクラックが発生することがなく耐久性に優れたものとなる。
次に、本発明のハニカム構造体の製造方法の一例として、セラミックブロックの所定の貫通孔に充填材が充填されたハニカム構造体を製造する場合について説明する。
本発明のハニカム構造体の構造が図3に示したような、その全体が一体として形成された一体型ハニカム構造体である場合、まず、上述したようなセラミック粒子と非晶質シリコンとを主成分とする原料ペーストを用いて押出成形を行い、図3に示したハニカム構造体30と略同形状のセラミック成形体を作製する。
上記原料ペーストは、製造後のセラミックブロックの気孔率が50〜80%となるものであることが望ましく、例えば、セラミック粒子粉末と非晶質シリコン粉末とからなる混合粉末にバインダー及び分散媒液を加えたものが挙げられる。
上記非晶質シリコン粉末を製造する方法としては特に限定されず、公知の方法により非晶質シリコンからなる薄膜を製造し、その後、上記薄膜を細かく砕く方法が挙げられる。
上記非晶質シリコンからなる薄膜を製造する方法としては、例えば、SiH4を原料としたプラズマCVD法、光CVD法、ECR−CVD(electro−cyclotron resonance plasma−enhanced chemical vapor deposition:電子サイクロトロンプラズマ共鳴堆積)法等の化学蒸着法が挙げられる。
このような非晶質シリコン粉末は、後述する脱脂処理後の焼成処理中に溶けてセラミック粒子の表面を濡らし、セラミック粒子同士を結合する接合材としての役割を担う。このような非晶質シリコン粉末の配合量は、セラミック粒子粉末の粒径や形状等によって適宜変わるものであるが、上記混合粉末100重量部に対して、5〜50重量部であることが望ましい。5重量部未満であると、非晶質シリコン粉末の配合量が少なすぎ、セラミック粒子同士を結合する結合材として充分に機能することができず、得られるハニカム構造体(セラミックブロック)の強度が不充分となることがある。一方、50重量部を超えると、得られるハニカム構造体が緻密化しすぎ、気孔率が低くなり、上述した本発明の効果を充分に享受することができなくなることがある。また、例えば、本発明のハニカム構造体を上記ハニカムフィルタとして使用する場合、パティキュレート捕集中の圧損がすぐに高くなり、フィルタとして充分に機能することができなくなるおそれがある。
上記バインダーとしては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が用いられる。
上記バインダーの配合量は、通常、セラミック粒子粉末100重量部に対して、1〜10重量部程度が望ましい。
上記分散媒液としては特に限定されず、例えば、ベンゼン等の有機溶媒;メタノール等のアルコール、水等が挙げられる。
上記分散媒液は、原料ペーストの粘度が一定範囲内となるように、適量配合される。
これら混合粉末、バインダー及び分散媒液は、アトライター等で混合し、ニーダー等で充分に混練して原料ペーストとした後、該原料ペーストを押出成形して上記セラミック成形体を作製する。
また、上記原料ペーストには、必要に応じて成形助剤を添加してもよい。
上記成形助剤としては、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が用いられる。
さらに、上記原料ペーストには、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。
上記バルーンとしては、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)及びムライトバルーン等が用いられる。これらのなかでは、フライアッシュバルーンが望ましい。
そして、上記セラミック成形体を、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機及び凍結乾燥機等を用いて乾燥させてセラミック乾燥体とした後、所定の貫通孔に充填材となる充填材ペーストを充填し、上記貫通孔に目封じする封口処理を施す。
図4(a)は、上記封口処理を行う際に使用する封口装置の一例を模式的に示した断面図であり、(b)は、その一部を示す部分拡大断面図である。
図4に示したように、上記封口処理で用いる封口装置100は、所定のパターンに開口部111aが形成されたマスク111が側面に設置され、その内部が充填材ペースト120で満たされた二組の密閉式の充填材吐出槽110が、マスク111が形成された側面同士を向かい合うように配設されている。
このような封口装置100を用いて上記セラミック乾燥体の封口処理を行うには、まず、セラミック乾燥体40の端面40aと、充填材吐出槽110の側面に形成されたマスク111とが当接するようにセラミック乾燥体40を充填材吐出槽110の間に固定する。
このとき、マスク111の開口部111aとセラミック乾燥体40の貫通孔42とは、ちょうど対向する位置関係となっている。
続いて、封止材吐出槽110に、例えば、モノポンプ等のポンプを用いて一定の圧力を加えて、封止材ペースト120をマスク111の開口部111aより吐出させ、セラミック乾燥体40の貫通孔42の端部に封止材ペースト120を侵入させることで、セラミック乾燥体40の所定の貫通孔42に、封止材となる封止材ペースト120を封止することができる。
なお、上記封止処理で使用する封止装置は、上述したような封止装置100に限定されることはなく、例えば、その内部に攪拌片が配設された開放式の充填材吐出槽を備え、上記攪拌片を上下方向に移動させることにより、上記充填材吐出槽に満たされた充填材ペーストを流動させ、該充填材ペーストの充填を行う方式であってもよい。
上記充填材ペーストとしては、例えば、上記原料ペーストと同様のものが用いられるが、上記原料ペーストで用いた混合粉末に潤滑剤、溶剤、分散剤及びバインダーを添加したものであることが望ましい。上記封口処理の途中で充填材ペースト中のセラミック粒子が沈降することを防止することができるからである。
次に、上記充填材ペーストが充填されたセラミック乾燥体を150〜700℃程度に加熱して、上記セラミック乾燥体に含まれるバインダーを除去し、セラミック脱脂体とする脱脂処理を施す。
上記脱脂処理は、上記非晶質シリコンが溶融する温度よりも低い温度にて実施することが望ましく、また、その脱脂雰囲気は、酸化性雰囲気であってもよく、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気であってもよい。なお、上記脱脂雰囲気は、使用するバインダーの量やセラミック粒子の種類等を考慮して適宜最適な雰囲気が選択される。
次に、上記セラミック脱脂体を900〜1100℃程度に加熱し、非晶質シリコン粉末を軟化(溶融)させ、セラミック粒子が非晶質シリコンを介して結合されて、多孔質セラミックとなり、その全体が一体として形成された本発明のハニカム構造体(セラミックブロック)を製造することができる。
なお、このようにして製造したハニカム構造体のX線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅は、1.0°以上となり、その結晶性が低いものとなる。
上記製造した本発明のハニカム構造体は、セラミックブロックの所定の貫通孔の一端に封止材が充填された構造であり、上述したハニカムフィルタとして好適に用いることができる。また、この場合、上記セラミックブロックの壁部には、ハニカムフィルタに再生処理を施す際、パティキュレートの燃焼を促進するためのPt等の触媒を担持させてもよい。
なお、本発明のハニカム構造体を内燃機関等の熱機関やボイラー等の燃焼装置等から排出される排気ガス中のHC、CO及びNOx等の浄化や、液体燃料又は気体燃料の改質等を行う触媒担体として使用する場合、上記セラミックブロックの壁部にPt、Rh、Pd等の貴金属又はこれらの合金等の触媒を担持させればよい。この場合、上述した充填材を充填する封口処理は必ずしも必要でない。
本発明のハニカム構造体の構造が、図1に示したような、多孔質セラミック部材がシール材層を介して複数個結束されて構成された集合体型ハニカム構造体である場合、まず、上述したセラミック粒子と非晶質シリコンとを主成分とする原料ペーストを用いて押出成形を行い、図2に示した多孔質セラミック部材20のような形状の生成形体を作製する。
なお、上記原料ペーストは、上述した一体型ハニカム構造体において説明した原料ペーストと同様のものを挙げることができる。
次に、上記生成形体を、マイクロ波乾燥機等を用いて乾燥させて乾燥体とした後、該乾燥体の所定の貫通孔に充填材となる充填材ペーストを充填し、上記貫通孔を目封じする封止処理を施す。
なお、上記充填材ペーストは、上述した一体型ハニカム構造体において説明した封止材ペーストと同様のものを挙げることができ、上記封口処理は、封止材ペーストを充填する対象が異なるほかは、上述した一体型ハニカム構造体の場合と同様の方法を挙げることができる。
次に、上記封口処理を経た乾燥体に上述した一体型ハニカム構造体と同様の条件で脱脂処理を施してセラミック脱脂体を製造し、さらに、上記一体型ハニカム構造体と同様の条件で加熱し、焼成を行うことにより、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された多孔質セラミック部材を製造することができる。
さらに、図5に示したように、多孔質セラミック部材20が斜めに傾斜した状態で積み上げることができるように、上部の断面がV字形状に構成された台50の上に、多孔質セラミック部材20を傾斜した状態で載置した後、上側を向いた2つの側面20a、20bに、シール材層14となるシール材ペーストを均一な厚さで塗布してシール材ペースト層51を形成し、このシール材ペースト層51の上に、順次他の多孔質セラミック部材20を積層する工程を繰り返し、所定の大きさの角柱状の多孔質セラミック部材20の積層体を作製する。
なお、上記シール材ペーストを構成する材料としては、上述した本発明のハニカム構造体において説明した通りであるのでここではその説明を省略する。
次に、この多孔質セラミック部材20の積層体を加熱してシール材ペースト層51を乾燥、固化させてシール材層14とし、その後、例えば、ダイヤモンドカッター等を用いて、その外周部を図1に示したような形状に切削することで、セラミックブロック15を作製する。
そして、セラミックブロック15の外周に上記シール材ペーストを用いてシール材層13を形成することで、多孔質セラミック部材がシール材層を介して複数個結束されて構成された本発明のハニカム構造体を製造することができる。
上記製造した本発明のハニカム構造体は、セラミックブロック(多孔質セラミック部材)の所定の貫通孔の一端に封止材が充填されたものであり、上述したハニカムフィルタとして好適に用いることができる。また、この場合、上記セラミックブロックの壁部(多孔質セラミック部材の隔壁)には、ハニカムフィルタに再生処理を施す際、パティキュレートの燃焼を促進するためのPt等の触媒を担持させてもよい。
なお、本発明のハニカム構造体を内燃機関等の熱機関やボイラー等の燃焼装置等から排出される排気ガス中のHC、CO及びNOx等の浄化や、液体燃料又は気体燃料の改質等を行う触媒担体として使用する場合、上記セラミックブロックの壁部にPt、Rh、Pd等の貴金属又はこれらの合金等の触媒を担持させればよい。この場合、上述した充填材を充填する封口処理は必ずしも必要でない。
次に、本発明にかかるハニカム構造体を用いた排気ガス浄化装置について説明する。
本発明のハニカム構造体を上述したハニカムフィルタとして使用する場合、図6に示した車両の排気ガス浄化装置に設置することが望ましい。
図6は、本発明のハニカム構造体(ハニカムフィルタ)が設置された車両の排気ガス浄化装置の一例を模式的に示した断面図である。
図6に示したように、排気ガス浄化装置600は、主に、本発明にかかるハニカムフィルタ60、ハニカムフィルタ60の外方を覆うケーシング630、及び、ハニカムフィルタ60とケーシング630との間に配置された保持シール材620から構成されており、ケーシング630の排気ガスが導入される側の端部には、エンジン等の内燃機関に連結された導入管640が接続されており、ケーシング630の他端部には、外部に連結された排出管650が接続されている。なお、図6中、矢印は排気ガスの流れを示している。
また、図6において、ハニカムフィルタ60の構造は、図1に示したハニカム構造体10と同様であってもよく、図3に示したハニカム構造体30と同様であってもよい。
さらに、ハニカムフィルタ60の壁部には、パティキュレートの燃焼を促進するためのPt等の触媒が、図示しないγアルミナ等からなる触媒サポート材を介して担持されている。
このような構成からなる排気ガス浄化装置600では、エンジン等の内燃機関から排出された排気ガスは、導入管640を通ってケーシング630内に導入され、ハニカムフィルタ60の貫通孔から壁部(隔壁)を通過してこの壁部(隔壁)でパティキュレートが捕集されて浄化された後、排出管650を通って外部へ排出されることとなる。
また、ハニカムフィルタ60の壁部(隔壁)で捕集したパティキュレートを燃焼除去する再生処理は、上記壁部に担持させた触媒を用いて連続的に、又は、ある程度堆積させた後に定期的に行われる。
なお、上記再生処理では、排気ガスの流入側にヒータ等の加熱手段を設け、該加熱手段を用いて加熱されたガスをハニカムフィルタ60の貫通孔の内部へ流入させることで、ハニカムフィルタ60を加熱し、壁部(隔壁)に堆積したパティキュレートを燃焼除去させてもよい。
また、ポストインジェクション方式を用いてパティキュレートを燃焼除去してもよい。
このような排気ガス浄化装置600において、本発明にかかるハニカムフィルタ60は、その外周に保持シール材620が巻き付けられた状態でケーシング630の内部に押し込むようにして設置される。この際、本発明にかかるハニカムフィルタ60には、相当な圧縮荷重がかかり、その内部に大きな内部応力が生じるが、上述した通り、本発明にかかるハニカムフィルタ60は、圧縮強度に優れたものであるため、クラック等が発生することなく、ケーシング630内に設置することができる。
【実施例】
【実施例1】
(1)まず、シラン(SiH4)を用いた化学蒸着法(プラズマCVD法)により非晶質シリコンの薄膜を作製し、該薄膜を細かく砕くことにより平均粒径5μmの非晶質シリコン粉末(後述する方法によって測定したX線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅は5.0°)を得た。
上記非晶質シリコン粉末20重量%と平均粒径30μmのα型炭化珪素粉末80重量%とを湿式混合し、得られた混合粉末100重量部に対して、有機バインダー(メチルセルロース)を6重量部、界面活性剤(オレイン酸)を2.5重量部、水を24重量部加えて混練して原料ペーストを調製した。
次に、上記原料ペーストを押出成形機に充填し、押出速度10cm/分にて図2に示した多孔質セラミック部材30と略同形状の生成形体を作製した。
次に、マイクロ波乾燥機を用いて上記生成形体を乾燥させ、セラミック乾燥体とした後、上記生成形体と同様の組成の充填材ペーストを所定の貫通孔に充填した後、再び乾燥機を用いて乾燥させた後、酸化雰囲気下550℃で3時間脱脂してセラミック脱脂体を得た。
次に、上記セラミック脱脂体をアルゴン雰囲気下1000℃、2時間の条件で加熱し、非晶質シリコンを溶融させて炭化珪素粒子を非晶質シリコンで接合させて、その大きさが34.3mm×34.3mm×254mmの多孔質セラミック部材を製造した。
(2)繊維長0.2mmのアルミナファイバー30重量%、平均粒径0.6μmの炭化珪素粒子21重量%、シリカゾル15重量%、カルボキシメチルセルロース5.6重量%、及び、水28.4重量%を含む耐熱性のシール材ペーストを用いて上記多孔質セラミック部材を、図5を用いて説明した方法により多数結束させ、続いて、ダイヤモンドカッターを用いて切断することにより、直径が165mmで、気孔率が60%、平均気孔径が20μmの円柱形状のセラミックブロックを作製した。
このとき、上記多孔質セラミック部材を結束するシール材層の厚さが1.0mmとなるように調整した。
次に、無機繊維としてアルミナシリケートからなるセラミックファイバー(ショット含有率:3%、繊維長:0.1〜100mm)23.3重量%、無機粒子として平均粒径0.3μmの炭化珪素粉末30.2重量%、無機バインダーとしてシリカゾル(ゾル中のSiO2の含有率:30重量%)7重量%、有機バインダーとしてカルボキシメチルセルロース0.5重量%及び水39重量%を混合、混練してシール材ペーストを調製した。
次に、上記シール材ペーストを用いて、上記セラミックブロックの外周部に厚さ1.0mmのシール材ペースト層を形成した。そして、このシール材ペースト層を120℃で乾燥して、円柱形状で排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造した。
【実施例2】
(1) 炭化珪素粒子を非晶質シリコンで接合させた際の焼成条件を1000℃、1時間としたほかは、実施例1の(1)と同様にして多孔質セラミック部材を製造した。
(2) 上記(1)で製造した多孔質セラミック部材を用いたほかは、実施例1の(2)と同様にして排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造した。
【実施例3】
(1) 炭化珪素粒子を非晶質シリコンで接合させた後の焼成条件を1000℃、30分としたほかは、実施例1の(1)と同様にして多孔質セラミック部材を製造した。
(2) 上記(1)で製造した多孔質セラミック部材を用いたほかは、実施例1の(2)と同様にして排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造した。
【実施例4】
(1) 炭化珪素粒子を非晶質シリコンで接合させた後の焼成条件を950℃、30分としたほかは、実施例1の(1)と同様にして多孔質セラミック部材を製造した。
(2) 上記(1)で製造した多孔質セラミック部材を用いたほかは、実施例1の(2)と同様にして排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造した。
(比較例1)
(1) 炭化珪素粒子を非晶質シリコン(半値幅1.5)で接合させた後の焼成条件を1500℃、2時間としたほかは、実施例1の(1)と同様にして多孔質セラミック部材を製造した。
(2) 上記(1)で製造した多孔質セラミック部材を用いたほかは、実施例1の(2)と同様にして排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造した。
(比較例2)
(1) 非晶質シリコン粉末に代えて、シリカゾル(ゾル中のSiO2含有率:30重量%)を用いたほかは、実施例1の(1)と同様にして多孔質セラミック部材を製造した。
(2) 上記(1)で製造した多孔質セラミック部材を用いたほかは、実施例1の(2)と同様にして排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造した。
(比較例3)
(1) 炭化珪素粒子を金属シリコン(半値幅0.6°)で接合させた後の焼成条件を1500℃、2時間としたほかは、実施例1の(1)と同様にして多孔質セラミック部材を製造した。
(2) 上記(1)で製造した多孔質セラミック部材を用いたほかは、実施例1の(2)と同様にして排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造した。
(比較例4)
(1) 炭化珪素粒子を金属シリコン(半値幅0.6°)で接合させた後の焼成条件を1800℃、3時間としたほかは、実施例1の(1)と同様にして多孔質セラミック部材を製造した。
(2) 上記(1)で製造した多孔質セラミック部材を用いたほかは、実施例1の(2)と同様にして排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造した。
(試験例1)
(1) 炭化珪素粒子を非晶質シリコンで接合させた際の焼成条件を900℃、2時間としたほかは、実施例1の(1)と同様にして多孔質セラミック部材を製造した。
(2) 上記(1)で製造した多孔質セラミック部材を用いたほかは、実施例1の(2)と同様にして排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造した。
【実施例5】
(1) まず、シラン(SiH4)を用いた化学蒸着法(プラズマCVD法)により非晶質シリコンの薄膜を作製し、該薄膜を細かく砕くことにより平均粒径30μmの非晶質シリコン(半値幅5.0°)粉末を得た。
上記非晶質シリコン粉末20重量%と平均粒径10μmのα型炭化珪素粉末80重量%とを湿式混合し、得られた混合粉末100重量部に対して、有機バインダー(メチルセルロース)を6重量部、界面活性剤(オレイン酸)を2.5重量部、水を24重量部加えて混練して原料ペーストを調製した。
次に、上記原料ペーストを用いたほかは、実施例1と同様にして生成形体を作製した後、セラミック脱脂体を作製し、多孔質セラミック部材を製造した。
(2) 実施例1の(2)と同様にして円柱状のセラミックブロックを作製した後、円柱形状で排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造した。
本実施例5にかかるセラミックブロックの気孔率は、50%であり、平均気孔径は、10μmであった。
【実施例6】
(1) 炭化珪素粒子を非晶質シリコンで接合させた際の焼成条件を1000℃、1時間としたほかは、実施例5の(1)と同様にして多孔質セラミック部材を製造した。
(2) 上記(1)で製造した多孔質セラミック部材を用いたほかは、実施例5の(2)と同様にして排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造した。
【実施例7】
(1) 炭化珪素粒子を非晶質シリコンで接合させた後の焼成条件を1000℃、30分としたほかは、実施例5の(1)と同様にして多孔質セラミック部材を製造した。
(2) 上記(1)で製造した多孔質セラミック部材を用いたほかは、実施例5の(2)と同様にして排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造した。
【実施例8】
(1) 炭化珪素粒子を非晶質シリコンで接合させた後の焼成条件を950℃、30分としたほかは、実施例5の(1)と同様にして多孔質セラミック部材を製造した。
(2) 上記(1)で製造した多孔質セラミック部材を用いたほかは、実施例5の(2)と同様にして排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造した。
(比較例5)
(1) 炭化珪素粒子を非晶質シリコン(半値幅1.5)で接合させた後の焼成条件を1500℃、2時間としたほかは、実施例5の(1)と同様にして多孔質セラミック部材を製造した。
(2) 上記(1)で製造した多孔質セラミック部材を用いたほかは、実施例5の(2)と同様にして排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造した。
(比較例6)
(1) 非晶質シリコン粉末に代えて、シリカゾル(ゾル中のSiO2含有率:40重量%)を用いたほかは、実施例5の(1)と同様にして多孔質セラミック部材を製造した。
(2) 上記(1)で製造した多孔質セラミック部材を用いたほかは、実施例5の(2)と同様にして排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造した。
(比較例7)
(1) 炭化珪素粒子を金属シリコン(半値幅0.6°)で接合させた後の焼成条件を1500℃、2時間としたほかは、実施例5の(1)と同様にして多孔質セラミック部材を製造した。
(2) 上記(1)で製造した多孔質セラミック部材を用いたほかは、実施例5の(2)と同様にして排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造した。
(比較例8)
(1) 炭化珪素粒子を金属シリコン(半値幅0.6°)で接合させた後の焼成条件を1800℃、3時間としたほかは、実施例5の(1)と同様にして多孔質セラミック部材を製造した。
(2) 上記(1)で製造した多孔質セラミック部材を用いたほかは、実施例5の(2)と同様にして排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造した。
(試験例2)
(1) 炭化珪素粒子を非晶質シリコンで接合させた際の焼成条件を900℃、2時間としたほかは、実施例5の(1)と同様にして多孔質セラミック部材を製造した。
(2) 上記(1)で製造した多孔質セラミック部材を用いたほかは、実施例5の(2)と同様にして排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造した。
【実施例9】
(1)上記非晶質シリコン粉末(半値幅は5.0°)20重量%と平均粒径30μmのアルミナ粉末80重量%とを湿式混合し、得られた混合粉末100重量部に対して、有機バインダー(メチルセルロース)を6重量部、界面活性剤(オレイン酸)を2.5重量部、水を24重量部加えて混練して原料ペーストを調製した。
次に、上記原料ペーストを押出成形機に充填し、押出速度10cm/分にて図3に示した多孔質セラミック部材30と略同形状の生成形体を作製した。
次に、マイクロ波乾燥機を用いて上記生成形体を乾燥させ、セラミック乾燥体とした後、上記生成形体と同様の組成の充填材ペーストを所定の貫通孔に充填した後、再び乾燥機を用いて乾燥させた後、酸化雰囲気下550℃で3時間脱脂してセラミック脱脂体を得た。
次に、上記セラミック脱脂体をアルゴン雰囲気下1000℃、2時間の条件で加熱し、非晶質シリコンを溶融させて炭化珪素粒子を非晶質シリコンで接合させて、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、その大きさが、直径144mm、長さ254mmの円柱形状の多孔質セラミック部材を製造した。これを、排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体とした。
【実施例10】
(1)アルミナ粒子を非晶質シリコンを介して結合させる焼成条件を1000℃、1時間としたほかは、実施例9と同様にして多孔質セラミック部材(ハニカム構造体)を製造した。
【実施例11】
(1)アルミナ粒子を非晶質シリコンを介して結合させる焼成条件を1000℃、0.5時間としたほかは、実施例9と同様にして多孔質セラミック部材(ハニカム構造体)を製造した。
【実施例12】
(1)アルミナ粒子を非晶質シリコンを介して結合させる焼成条件を950℃、0.5時間としたほかは、実施例9と同様にして多孔質セラミック部材(ハニカム構造体)を製造した。
(比較例9)
(1)アルミナ粒子を非晶質シリコン(半値幅1.5)を介して結合させる焼成条件を1500℃、2時間としたほかは、実施例9と同様にして多孔質セラミック部材(ハニカム構造体)を製造した。
(比較例10)
(1) アルミナ粒子を金属シリコン(半値幅0.6°)で接合させた後の焼成条件を1500℃、2時間としたほかは、実施例9と同様にして多孔質セラミック部材(ハニカム構造体)を製造した。
(比較例11)
(1) アルミナ粒子を金属シリコン(半値幅0.6°)で接合させた後の焼成条件を1800℃、3時間としたほかは、実施例9と同様にして多孔質セラミック部材(ハニカム構造体)を製造した。
(比較例12)
(1) 非晶質シリコン粉末に代えて、シリカゾル(ゾル中のSiO2含有率:30重量%)を用いたほかは、実施例9と同様にして多孔質セラミック部材(ハニカム構造体)を製造した。
(試験例3)
(1) アルミナ粒子を非晶質シリコンで接合させた際の焼成条件を900℃、2時間としたほかは、実施例9と同様にして多孔質セラミック部材(ハニカム構造体)を製造した。
【実施例13】
(1)上記非晶質シリコン粉末(半値幅は5.0°)20重量%と平均粒径10μmのアルミナ粉末80重量%とを湿式混合し、得られた混合粉末100重量部に対して、有機バインダー(メチルセルロース)を6重量部、界面活性剤(オレイン酸)を2.5重量部、水を24重量部加えて混練して原料ペーストを調製した。
次に、上記原料ペーストを押出成形機に充填し、押出速度10cm/分にて図3に示した多孔質セラミック部材30と略同形状の生成形体を作製した。
次に、マイクロ波乾燥機を用いて上記生成形体を乾燥させ、セラミック乾燥体とした後、上記生成形体と同様の組成の充填材ペーストを所定の貫通孔に充填した後、再び乾燥機を用いて乾燥させた後、酸化雰囲気下550℃で3時間脱脂してセラミック脱脂体を得た。
次に、上記セラミック脱脂体をアルゴン雰囲気下1000℃、2時間の条件で加熱し、非晶質シリコンを溶融させて炭化珪素粒子を非晶質シリコンで接合させて、気孔率が60%、平均気孔径が20μm、その大きさが、直径144mm、長さ254mmの円柱形状の多孔質セラミック部材を製造した。これを、排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体とした。
【実施例14】
(1)アルミナ粒子を非晶質シリコンを介して結合させる焼成条件を1000℃、1時間としたほかは、実施例13と同様にして多孔質セラミック部材(ハニカム構造体)を製造した。
【実施例15】
(1)アルミナ粒子を非晶質シリコンを介して結合させる焼成条件を1000℃、0.5時間としたほかは、実施例13と同様にして多孔質セラミック部材(ハニカム構造体)を製造した。
【実施例16】
(1)アルミナ粒子を非晶質シリコンを介して結合させる焼成条件を950℃、0.5時間としたほかは、実施例13と同様にして多孔質セラミック部材(ハニカム構造体)を製造した。
(比較例13)
(1)アルミナ粒子を非晶質シリコン(半値幅1.5)を介して結合させる焼成条件を1500℃、2時間としたほかは、実施例13と同様にして多孔質セラミック部材(ハニカム構造体)を製造した。
(比較例14)
(1) アルミナ粒子を金属シリコン(半値幅0.6°)で接合させた後の焼成条件を1500℃、2時間としたほかは、実施例13と同様にして多孔質セラミック部材(ハニカム構造体)を製造した。
(比較例15)
(1) アルミナ粒子を金属シリコン(半値幅0.6°)で接合させた後の焼成条件を1800℃、3時間としたほかは、実施例13と同様にして多孔質セラミック部材(ハニカム構造体)を製造した。
(比較例16)
(1) 非晶質シリコン粉末に代えて、シリカゾル(ゾル中のSiO2含有率:30重量%)を用いたほかは、実施例13と同様にして多孔質セラミック部材(ハニカム構造体)を製造した。
(試験例4)
(1) アルミナ粒子を非晶質シリコンで接合させた際の焼成条件を900℃、2時間としたほかは、実施例13と同様にして多孔質セラミック部材(ハニカム構造体)を製造した。
以上説明したような実施例1〜16および比較例1〜16および試験例1〜4にかかるハニカム構造体について、以下の(A)〜(C)のような評価試験を行った。
(A)炭化珪素粒子を接合する非晶質シリコンの結晶性の評価試験
上記実施例1〜16および比較例1〜16および試験例1〜4にかかるハニカム構造体(及びシリコン原料)のX線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅を測定した。
その結果を下記の表1および表2に示した。
この分析測定に用いたX線回折装置は、理学電気社製のリガクRINT−2500を用いた。X線管回折の光源は、CuKα1とし、測定方法としては、先ず、試料を粉砕・均一化してガラス製の試料ホルダーに充填し、この試料が充填された試料ホルダーをゴニオメーターの試料台にセットし、次に、X線球管に冷却水を流して装置の電源を入れ、電圧を徐々に上げて40kVとし、電流調節つまみを回して30mAに設定した。その後、各条件を設定して測定を行った。
なお、X線回折の測定条件は次のとおりとした。発散スリット:0.5°、発散縦制限スリット:10mm、散乱スリット:0.5°、受光スリット:0.3mm、モノクロ受光スリット:0.8mm、走査モード:連続、走査速度:5.000°/分、ステップ:0.01°、走査範囲:10.000°〜60.000°、モノクロメータ:カウンタモノクロメータ使用、光学系:集中光学系とした。
なお、比較例2、6、12、16にかかるハニカム構造体においては、X線回折におけるシリカ(SiO)のピーク(2θ=22°付近)の半値幅を測定した。
(B)圧縮強度の評価試験(1)
上記実施例1〜16および比較例1〜16および試験例1〜4にかかるハニカム構造体の初期の圧縮強度として、製造直後の各実施例及び比較例にかかるハニカム構造体のアイソスタティック強度を測定した。
なお、アイソスタティック強度とは、各実施例及び比較例にかかるハニカム構造体を、上下にアルミニウム板(厚さ15mm)をあて、全体をウレタンゴムシート(厚さ2mm)で包んで密閉し、冷間静水圧加圧装置(CIP)を用いて加圧速度1.0MPa/分で加圧し、破壊されるまでの強度をいう。
その結果を下記の表1および表2に示した。
(C)圧縮強度の評価試験(2)
上記実施例1〜16および比較例1〜16にかかるハニカム構造体を電気炉にて昇温速度10℃/分で800℃に昇温させ、その温度に30分間保持した後、室温(20℃)に急冷する試験を、10回行った後、アイソスタティック強度を測定した。
また、フィルタの中央部で切断した後、破断面を350倍でSEM観察し、10箇所においてセラミック粒子の結合部分にクラックが生じているかどうか無を確認した。
その結果を下記の表1および表2に示した。
【表1】

【表2】

表1および表2に示した結果より明らかなように、各実施例にかかるハニカム構造体のX線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅は、1.0〜4.0°であり、いずれも1.0°以上となっており、結晶性が低いものであった。
なお、図7に実施例1にかかるハニカム構造体のX線回折のグラフを示すが、図7に示したように、実施例1にかかるハニカム構造体のX線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅が1.0°であることがわかる。
一方、比較例1、3〜5、7〜11、13〜15にかかるハニカム構造体のX線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅は、0.65〜0.8°であり、いずれも1.0°未満であり、結晶性がやや高いものであった。
また、比較例2、6、12、16にかかるハニカム構造体のX線回折におけるSiOのピーク(2θ=22°付近)の半値幅は、2.0°であった。
また、試験例1〜4にかかるハニカム構造体のX線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅は、5.0°であった
まず、炭化珪素とSiO/SiO2について調べると、圧縮強度の評価試験(1)の結果より、各実施例及び比較例2、6にかかるハニカム構造体の初期のアイソスタティック強度は、10.0〜20.0MPaであり、いずれも10.0MPaを超えるものであった。
一方、比較例1、3〜5、7、8にかかるハニカム構造体の初期のアイソスタティック強度は、いずれも10.0MPa未満であった。
また、圧縮強度の評価試験(2)の結果より、各実施例にかかるハニカム構造体の熱処理後のアイソスタティック強度は、9.0〜15.0MPaであり、いずれも初期のアイソスタティック強度の75%以上を保っていた。
一方、比較例にかかるハニカム構造体の熱処理後のアイソスタティック強度は、4.0〜8.0MPaであり、実施例にかかるハニカム構造体のアイソスタティック強度よりも低いものであった。
特に、比較例2、6にかかるハニカム構造体の熱処理後のアイソスタティック強度は、それぞれ6MPa、8MPaであり、初期のアイソスタティック強度の50%及び53%にまで大きく低下していた。
なお、試験例の結果より、試験例1、2にかかるハニカム構造体の初期のアイソスタティック強度は、15MPa、20MPaであったが、熱処理後には、11MPa、14MPaとなり、初期のアイソスタティック強度の73%及び70%にまで低下することがわかった。
最後に、SEM像観察を行うと、各実施例ではクラックの発生がなく、比較例では、8箇所以上でクラックの発生が認められ、試験例では、1、2箇所でクラックが認められると共に、クラックのない箇所において気孔が少し埋められているのが認められた。
上記圧縮強度の評価試験(1)及び(2)の結果より、X線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅が1.0°以上である各実施例にかかるハニカム構造体は、炭化珪素粒子を結合する非晶質シリコンの結晶性が低く、優れた圧縮強度を有しているので、熱処理後も圧縮強度が低下することはない。
一方、X線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅が1.0°未満であるハニカム構造体は、炭化珪素粒子を結合するシリコンの結晶性が高く、圧縮強度が劣るものであった。
また、炭化珪素粒子をシリカで結合してなるハニカム構造体は、X線回折におけるSiO2のピーク(2θ=22°付近)の半値幅が2.0°であり、その結晶性が低く、初期の圧縮強度は優れたものとなっているが、熱処理を施すことで、上記シリカの結晶性が高くなり、熱処理後の圧縮強度が低下してしまうものであった。
また、アルミナとSiO/SiO2について調べると、圧縮強度の評価試験(1)の結果より、各実施例及び比較例2、6にかかるハニカム構造体の初期のアイソスタティック強度は、7.9〜15.8MPaであり、いずれも7.0MPaを超えるものであった。
一方、比較例9〜11、13〜15にかかるハニカム構造体の初期のアイソスタティック強度は、それぞれ7.0MPa未満であった。
また、圧縮強度の評価試験(2)の結果より、各実施例にかかるハニカム構造体の熱処理後のアイソスタティック強度は、7.0〜11.8MPaであり、いずれも初期のアイソスタティック強度の74.7%以上を保っていた。
一方、比較例にかかるハニカム構造体の熱処理後のアイソスタティック強度は、3.0〜6.2MPaであり、実施例にかかるハニカム構造体のアイソスタティック強度よりも低いものであった。
特に、比較例12、16にかかるハニカム構造体の熱処理後のアイソスタティック強度は、それぞれ4.6MPa、6.2MPaであり、初期のアイソスタティック強度の48.9%及び52.53%にまで大きく低下していた。
なお、試験例の結果より、試験例3、4にかかるハニカム構造体の初期のアイソスタティック強度は、11MPa、15MPaであったが、熱処理後には、それぞれ8.6MPa、11MPaとなり、初期のアイソスタティック強度の78.2%及び73.3%にまで低下することがわかった。
最後に、SEM像観察を行うと、各実施例ではクラックの発生がなく、比較例では8箇所以上でクラックの発生が認められ、試験例では、1、2箇所でクラックが認められると共に、クラックのない箇所において気孔が少し埋められているのが認められた。
上記圧縮強度の評価試験(1)及び(2)の結果より、X線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅が1.0°以上である各実施例にかかるハニカム構造体は、アルミナ粒子を結合する非晶質シリコンの結晶性が低く、優れた圧縮強度を有しているので、熱処理後も圧縮強度が低下することはない。
一方、X線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅が1.0°未満であるハニカム構造体は、アルミナ粒子を結合するシリコンの結晶性が高く、圧縮強度が劣るものであった。
また、アルミナ粒子をシリカで結合してなるハニカム構造体は、X線回折におけるSiO2のピーク(2θ=22°付近)の半値幅が2.0°であり、その結晶性が低く、初期の圧縮強度は優れたものとなっているが、熱処理を施すことで、上記シリカの結晶性が高くなり、熱処理後の圧縮強度が低下してしまうものであった。
【産業上の利用可能性】
以上説明したように、本発明にかかるハニカム構造体は、セラミック粒子と非晶質シリコンからなる複合材から構成されており、大きな圧縮荷重が印加され内部に大きな内部応力が生じた場合であっても、セラミック粒子間の結合点(非晶質シリコン)において内部応力を好適に緩和することができるので、容易にクラックが発生することがなく耐久性に優れている。このハニカム構造体は、それを構成するセラミックブロックに、必要に応じてPt、Rh、Pd等の貴金属又はこれらの合金等の触媒を担持させることで、内燃機関等の熱機関やボイラー等の燃焼装置等から排出される排気ガス中のHC、CO及びNOx等の浄化用フィルタとして、もしくは液体燃料または気体燃料の改質等を行う触媒担体として使用することができる。
【図1】




【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設され、これらの貫通孔のいずれか一方の端部を封止してなるセラミックブロックにて構成されたハニカム構造体において、
前記セラミックブロックは、セラミック粒子と非晶質シリコンとからなる複合材にて形成したことを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記セラミックブロックは、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された角柱状のセラミック部材がシール材層を介して複数個結束されたものであることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記セラミックブロックは、それの一方の端部では、複数の貫通孔が封止材により封止され、他方の端部では、前記封止材により封止されていない貫通孔が封止材により封止されていることを特徴とする請求項1または2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記複合材は、セラミック粒子が非晶質シリコンを介して結合された多孔質セラミックスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記セラミック粒子は、炭化珪素であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記非晶質シリコンは、X線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅が1.0°以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載に記載のハニカム構造体。

【国際公開番号】WO2004/031101
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【発行日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541299(P2004−541299)
【国際出願番号】PCT/JP2003/012842
【国際出願日】平成15年10月7日(2003.10.7)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】