説明

ハフニウム含有前駆体およびジルコニウム含有前駆体ならびにそれを使用する方法

ハフニウム含有前駆体およびジルコニウム含有前駆体ならびにその提供方法を開示している。開示した前駆体は、配位子と、通常の置換基よりも高い自由度を有するように選択される置換基としての少なくとも1つの脂肪族基とを含む。開示した前駆体は、気相堆積方法たとえば化学気相堆積または原子層堆積を使用して、ハフニウムまたはジルコニウム含有層を堆積させるのに使用できる。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
技術分野
開示するハフニウム含有前駆体およびジルコニウム含有前駆体は半導体、光電池、LCD−TFT、またはフラットパネルタイプデバイスの製造の気相堆積方法、好ましくはALDまたはPEALDにおいて使用できる。
【0002】
背景
この産業が直面する重大な挑戦のうちの1つは、DRAMおよびコンデンサ用の新たなゲート絶縁材料を開発することである。何十年もの間、二酸化珪素(SiO2)が信頼のおける絶縁体であった。しかしながら、トランジスタが縮小し続け技術が「フルSi」トランジスタから「金属ゲート/ハイk」トランジスタに移ったために、SiO2ベースのゲート絶縁体の信頼性はその物理的限界に達している。1つの解決策はゲート絶縁体のための他の材料、たとえばハフニウムベースまたはジルコニウムベースの金属酸化物を使用することにある。これらのハイk材料(それらの高い比誘電率のためにこのように呼ばれる)は同様のゲート静電容量を達成しながらSiO2よりも遥かに厚くすることができる。
【0003】
置換シクロペンタジエニル配位子を有するアミノハフニウム含有前駆体およびアミノジルコニウム含有前駆体が説明されている。たとえば、NiinistoらのJournal of Materials Chemistry (2008), 18(43), 5243-5247;Tri Chemical Laboratories, Inc.のWO2007/066546;L’Air Liquide Societe Anonyme Pour L’etude et L’exploitation Des Procedes Georges ClaudeのWO2007/140813;DNF Co LtdのKR2007-0121281;BarryらのUS2008/0102205;UP Chemical Co LtdのKR10-2008-0101040;およびSigma-Aldrich Co.のWO2009/036046を参照のこと。
【0004】
これらの分子の安定性は狭い堆積プロセスウィンドウをもたらしうる。それゆえに、新規のハフニウム含有前駆体およびジルコニウム含有前駆体についての必要性が残っている。
【0005】
表記法および命名法
種々の部材および成分を表すために、いくつかの用語を以下の説明および特許請求の範囲を通じて使用している。
【0006】
元素の周期表からの元素の一般的な略語をここでは使用している。元素をこれらの略語により表すことがあることを理解されたい(たとえば、Hfはハフニウムを表し、Zrはジルコニウムを表し、Pdはパラジウムを表し、Coはコバルトを表す、など)。
【0007】
ここで使用する限りにおいて、用語「脂肪族基」は炭素原子が開鎖として結合している有機化合物の基、たとえばアルカン、アルケンおよびアルキンなどを表し;用語「アルキル基」は炭素原子および水素原子のみを含む飽和官能基を表す。さらに、用語「アルキル基」は線状、分枝または環式のアルキル基を表しうる。線状アルキル基の例としては、限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。分枝アルキル基の例としては、限定されないが、イソプロピル基、t−ブチル基などが挙げられる。環式アルキル基の例としては、限定されないが、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0008】
ここで使用する限りにおいて、略語「CHD」はシクロヘキサジエニル基を表し;略語「Cp」はシクロペンタジエニル基を表し;略語「Me」はメチル基を表し;略語「Et」はエチル基を表し;略語「iPr」はイソプロピル基を表し;略語「t−Bu」は三級ブチル基を表す。
【0009】
ここで使用する限りにおいて、用語「独立して」は、R基を説明する文脈で使用される場合、当該R基が、同じまたは異なる下付文字または上付文字をもつ他のR基に対して独立して選択されるだけでなく、同じR基の任意の追加の種に対しても独立して選択されることを意味することを理解されたい。たとえば、xが2または3である式MR1x(NR23(4-x)において、2つまたは3つのR1基は、必要ではないが互いに同じでもよいし、またはR2もしくはR3と同じでもよい。さらに、特別に述べない限り、R基の価数は、異なる式において使用される場合、互いに独立していることを理解されたい。
【0010】
概要
式ML(NR783を有する化合物を開示する。ここで、MはHfまたはZrであり、Lはシクロヘキサジエニル配位子またはペンタメチルシクロペンタジエニル配位子であり、R7およびR8はHまたは1〜6個の炭素原子を有する脂肪族基(好ましくは脂肪族部分)から独立して選択される。開示する化合物は以下の側面のうちの1つ以上を含むことができる:
・この化合物は(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリス(ジメチルアミド)ハフニウムまたは(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリス(ジメチルアミド)ジルコニウムから選択される;
・Lはシクロヘキサジエニル配位子であり、この化合物は以下の式:
【化1】

【0011】
を有し、ここでR1、R2、R3、R4、R5、およびR6はHまたは1〜6個の炭素原子を有する脂肪族基(好ましくは脂肪族部分)から独立して選択される;
・R1、R2、R3、R4、R5、およびR6のうちの少なくとも3つはHでない;および
・この化合物は(トリメチルシクロヘキサジエニル)トリス(ジメチルアミド)ハフニウムまたは(トリメチルシクロヘキサジエニル)トリス(ジメチルアミド)ジルコニウムである。
【0012】
また、ハフニウムまたはジルコニウム含有層をリアクタ内に配置された基板上に形成する方法を開示する。開示する化合物のいずれか1つの少なくとも1種の化合物を含む蒸気をリアクタに導入する。ハフニウムまたはジルコニウム含有層を気相堆積プロセスを使用して基板上に形成する。開示する方法は以下の態様のうちの1つ以上を含むことができる:
・少なくとも1種の第2の前駆体を含む蒸気をリアクタに導入する;
・少なくとも1種の第2の前駆体の金属はTi、Ta、Bi、Hf、Zr、Pb、Nb、Mg、Al、Sr、Y、Ba、Ca、ランタニド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される;
・ハフニウムまたはジルコニウム含有層は酸化ハフニウム層または酸化ジルコニウム層である;
・ハフニウムまたはジルコニウム含有層は珪酸ハフニウム層または珪酸ジルコニウム層である;
・少なくとも1種の共反応剤をリアクタに導入する;
・共反応剤はO2、O3、H2O、H22、NO、NO2、カルボン酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される;
・気相堆積プロセスは化学気相堆積プロセスである;および
・気相堆積プロセスは原子層堆積プロセスである。
【0013】
本発明の性質および対象のさらなる理解のために、添付の図面と組み合わせて示した以下の詳細な説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、熱重量分析(TGA)データのグラフであり、(Me5Cp)Zr(NMe23の温度に対する重量損失の割合を示している。
【図2】図2は、C66中の(Me5Cp)Zr(NMe23のプロトンNMRスペクトルである。
【0015】
好ましい実施形態の詳細な説明
ここに、半導体、光電池、LCD−TFT、またはフラットパネルタイプデバイスの製造で使用できる方法および化合物の非限定的な実施形態を開示する。
【0016】
ハフニウム含有前駆体およびジルコニウム含有前駆体を開示する。また、開示するハフニウム含有前駆体およびジルコニウム含有前駆体を使用して、ハフニウム含有層およびジルコニウム含有層を基板上に堆積する方法を開示する。
【0017】
開示するハフニウム含有前駆体およびジルコニウム含有前駆体は式ML(NR783を有し、ここでMはHfまたはZrであり、Lはシクロヘキサジエニル(「CHD」)配位子またはペンタメチルシクロペンタジエニル(Me5Cp)配位子であり、R7およびR8はHまたは2〜6個の炭素原子を有する脂肪族基(好ましくは脂肪族部分)から独立して選択される。
【0018】
好ましくは、開示するハフニウム含有化合物およびジルコニウム含有化合物は気相堆積方法に好適な性質、たとえば高い蒸気圧、低い融点(好ましくは室温で液体である)、低い昇華点、および高い熱安定性を有する。
【0019】
出願人は、シクロヘキサジエニル基またはペンタメチルシクロペンタジエニル基を使用することは、高い成長速度を達成しながら広いプロセスウィンドウを提供できるより高い熱安定性を有する化合物をもたらしうることを見出した。理論によって限定されずに、出願人は、ペンタメチルシクロペンタジエニル基またはシクロヘキサジエニル基がHf−NまたはZr−N結合を安定化させることができ、それにより化合物の全体的な反応性を損なわずに分子の熱安定性を向上させることができると考えている。
【0020】
例示的なハフニウムまたはジルコニウムペンタメチルシクロペンタジエニル化合物は、M(Me5Cp)(NMe23、M(Me5Cp)(NEt23、M(Me5Cp)(NMeEt)3、M(Me5Cp)(NMeiPr)3、M(Me5Cp)(NMetBu)3、M(Me5Cp)(NMe2x(NMeEt)y、M(Me5Cp)(NEt2x(NMeEt)y、M(Me5Cp)(NMeiPr)x(NMe2y、およびこれらの組み合わせから選択することができ、ここで、y=2である場合はx=1であり、y=1である場合はx=2である。
【0021】
開示するハフニウムまたはジルコニウム含有化合物としては、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリス(ジメチルアミド)ハフニウム、(Me5Cp)Hf(NMe23、または(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリス(ジメチルアミド)ジルコニウム、(Me5Cp)Zr(NMe23を挙げることができる。
【0022】
開示するペンタメチルシクロペンタジエニルハフニウムまたはジルコニウム含有化合物は、冷たいBuLi/ヘキサン溶液へのHNR78の添加によって調製できる。混合物は約1時間攪拌されその後約0℃まで冷却されうる。Me5CpMCl3が冷却した混合物に添加されうる。次に、得られた混合物を室温で終夜攪拌する。混合物をろ過し、溶媒を減圧下で蒸発させて、M(Me5Cp)(NR783粗生成物を製造し、これは周知の方法で精製できる。出発材料の全ては市販されている。
【0023】
異なるアミド配位子を有する開示するペンタメチルシクロペンタジエニルハフニウムまたはジルコニウム含有子化合物(すなわちM(Me5Cp)(NR782(NR78))を製造するために、上で説明した方法で製造され所望のアミド配位子を有する2種類の異なるペンタメチルシクロペンタジエニル化合物をヘキサン中で終夜混合し、その後、溶媒を蒸発させる。得られた粗生成物は周知の方法で精製できる。
【0024】
第2の実施形態では、開示するハフニウムまたはジルコニウム含有化合物はシクロヘキサジエニル配位子および以下の式:
【化2】

【0025】
を有し、ここでR1、R2、R3、R4、R5、およびR6はHまたは1〜6個の炭素原子を有する脂肪族基(好ましくは脂肪族部分)から独立して選択される。この実施形態では、出願人は、シクロヘキサジエニル(CHD)配位子上の面外にある炭素原子が得られる化合物の融点を下げうると考えている。好ましくは、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6のうちの少なくとも3つはHでない。
【0026】
例示的なハフニウムまたはジルコニウムシクロペンタジエニル化合物は、M(R1−R6CHD)(NMe23、M(R1−R6CHD)(NEt23、M(R1−R6CHD)(NMeEt)3、M(R1−R6CHD)(NMeiPr)3、M(R1−R6CHD)(NMetBu)3、M(R1−R6CHD)(NMe2x(NMeEt)y、M(R1−R6CHD)(NEt2x(NMeEt)y、M(R1−R6CHD)(NMeiPr)x(NMe2y、およびこれらの組み合わせから選択でき、ここでR1−R6は上で規定したものであり、y=2の場合x=1であり、y=1の場合x=2である。
【0027】
開示するハフニウムまたはジルコニウム含有化合物としては、(トリメチルシクロヘキサジエニル)トリス(ジメチルアミド)ジルコニウム、(Me3CHD)Zr(NMe23、および(トリメチルシクロヘキサジエニル)トリス(ジメチルアミド)ハフニウム、(Me3CHD)Hf(NMe23を挙げることができる。
【0028】
開示するシクロヘキサジエニルハフニウムまたはジルコニウム含有化合物は、冷たいBuLi/ヘキサン溶液へのHNR78の添加によって調製できる。この混合物は約1時間攪拌されて、その後約0℃まで冷却されうる。周知の方法で製造できる(R1-6CHD)MCl3が冷却した混合物に添加されうる。次に、得られた混合物を室温で終夜攪拌する。混合物をろ過して溶媒を減圧下で蒸発させて、M(R1−R6CHD)(NR783粗生成物を製造し、これは周知の方法で精製できる。従来技術において開示された方法で製造できる(R1-6CHD)MCl3を除いて、出発物質の全ては市販されている。
【0029】
異なるアミド配位子を有する開示するシクロヘキサジエニルハフニウムまたはジルコニウム含有化合物(すなわちM(R1−R6CHD)(NR782(NR78))を製造するために、上で説明した方法で製造され所望のアミド配位子を有する2種類の異なるシクロヘキサジエニル化合物をヘキサン中で終夜混合し、その後溶媒を蒸発させる。得られた粗生成物は周知の方法で精製できる。
【0030】
開示する方法は、開示する前駆体を気相堆積プロセスで使用して、ハフニウムまたはジルコニウム含有層を基板(たとえば、半導体基板または基板アセンブリ)上に形成する。この方法は半導体構造体の製造において有用でありうる。この方法は:リアクタおよびその中に配置された少なくとも1枚の基板を用意することと;開示する化合物を含む蒸気をリアクタに導入することと;ハフニウムまたはジルコニウム含有層を基板上に形成することとを含む。
【0031】
薄膜は、当業者に知られている任意の気相堆積方法を使用して、開示する前駆体から堆積できる。好適な堆積方法の例としては、限定はされないが、化学気相堆積(CVD)、低圧CVD(LPCVD)、プラズマ強化CVD(PECVD)、パルスPECVD、原子層堆積(ALD)、プラズマ強化ALD(PE−ALD)、またはこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、堆積方法は、ALD、PEALD、またはこれらの組み合わせから選択される。プラズマプロセスは直接プラズマ源または遠隔プラズマ源を利用できる。
【0032】
開示する前駆体は、純粋な形態または好適な溶媒、たとえばエチルベンゼン、キシレン、メシチレン、デカン、ドデカンとのブレンドとしてのいずれかで供給できる。開示する前駆体は溶媒中に様々な濃度で存在できる。
【0033】
純粋なまたはブレンドされた前駆体をリアクタに蒸気の形態で導入する。蒸気の形態の前駆体は、純粋なまたはブレンドされた前駆体溶液を通常の気化工程たとえば直接気化、蒸留などにより気化させることによって、またはバブリングによって製造できる。純粋なまたはブレンドされた前駆体を液体の状態で気化器に供給し、ここで、それをリアクタに導入する前にそれを気化させてもよい。あるいは、純粋なまたはブレンドされた前駆体は、キャリアガスを開示する前駆体を容れた容器に通すことによって、またはキャリアガスを開示する前駆体にバブリングすることによって気化させることができる。キャリアガスとしては、限定されないが、Ar、He、N2、およびこれらの混合物が挙げられる。キャリアガスによるバブリングは、純粋なまたはブレンドされた前駆体溶液中に存在する溶存酸素を除去することもできる。それゆえに、キャリアガスおよび開示する前駆体は蒸気としてリアクタに導入される。
【0034】
必要であれば、開示する前駆体の容器を、この前駆体が液相でいることと十分な蒸気圧を有することとを許容する温度まで加熱してもよい。容器は、たとえば、約0℃ないし約150℃の範囲内の温度に維持できる。当業者であれば、容器の温度を周知の方法で調節して、気化させる前駆体の量を制御できることが分かる。
【0035】
リアクタは、中で堆積方法を行うデバイス内の任意の密閉容器またはチャンバでよく、限定はされないが、前駆体を反応させて層を形成するのに好適な条件下にある、平行板タイプリアクタ、コールドウォールタイプリアクタ、ホットウォールタイプリアクタ、枚葉式リアクタ、マルチウェハリアクタ、または他のタイプの堆積システムでありうる。
【0036】
リアクタは1枚以上の基板を収納し、この上に薄膜を堆積させる。この1枚以上の基板は半導体、光電池、フラットパネルまたはLCD−TFTデバイスの製造において使用する任意の好適な基板でありうる。好適な基板の例としては、限定されないが、珪素基板、シリカ基板、窒化珪素基板、酸窒化珪素基板、タングステン基板、窒化チタン、窒化タンタル、またはこれらの組み合わせが挙げられる。加えて、タングステンまたは貴金属(たとえば、白金、パラジウム、ロジウム、または金)を含む基板を使用してもよい。基板は、前の製造工程からその上に既に堆積していた異種材料の1つ以上の層をさらに有してもよい。
【0037】
リアクタ内の温度および圧力は堆積プロセスに好適な条件に保持される。たとえば、リアクタ内の圧力は、堆積パラメータによって必要とされるのに応じて、約0.5mTorr〜約20Torr、好ましくは約0.2Torr〜10Torr、より好ましくは約1Torr〜10Torrに保持されうる。同様に、リアクタ内の温度は約50℃〜約600℃、好ましくは約50℃〜約250℃、より好ましくは約50℃〜約100℃に保持されうる。
【0038】
開示する前駆体に加えて、共反応剤をリアクタに導入する場合がある。共反応剤は酸化性ガスでよく、たとえば酸素、オゾン、水、過酸化水素、酸化窒素、二酸化窒素、カルボン酸、およびこれらの任意の2種以上の混合物でありうる。あるいは、共反応剤は還元性ガスでよく、たとえば水素、アンモニア、シラン(たとえば、SiH4、Si26、Si38)、Si−H結合を含むアルキルシラン(たとえば、SiH2Me2、SiH2Et2)、N(SiH33、およびこれらの2種以上の混合物でありうる。好ましくは共反応剤はH2またはNH3である。
【0039】
共反応剤は、共反応剤を分解してそのラジカルの形態にするために、プラズマによって処理することができる。また、N2は、プラズマによって処理されると、還元性ガスとして利用できる。たとえば、約50W〜約500W、好ましくは約100W〜約200Wの範囲のパワーでプラズマを発生させてもよい。プラズマはリアクタ自体の中で発生させてもよいしまたはそこに存在してもよい。あるいは、プラズマは一般に反応チャンバから離れた場所にありうるものであり、たとえば遠隔設置プラズマシステム内にありうる。当業者であればこのようなプラズマ処理に好適な方法および器具が分かるであろう。
【0040】
チャンバ内での気相堆積条件は、開示するブレンドおよび任意の共反応剤がハフニウムまたはジルコニウム含有層を基板の少なくとも1つの表面上に形成することを可能にする。いくつかの実施形態では、出願人は、任意の共反応剤をプラズマ処理することは、開示するブレンドと反応するのに必要なエネルギーを任意の共反応剤に提供しうると考えている。
【0041】
堆積させたい膜の種類に応じて、第2の前駆体をリアクタに導入する場合がある。第2の前駆体は異種金属供給源でありえ、たとえばTi、Ta、Si、Bi、Hf、Zr、Pb、Nd、Mg、Mn、Ru、Cu、Al、Sr、Y、Ba、Ca、ランタニド、およびこれらの組み合わせでありうる。第2の金属含有前駆体を利用する場合、基板上に堆積させて得られる膜は少なくとも2種類の異なる金属種を含有しうる。
【0042】
開示する前駆体ならびに任意の共反応剤および前駆体はリアクタに同時に導入してもよいし(CVD)、逐次的に導入してもよいし(ALD、P−CVD)または他の組み合わせで導入してもよい。前駆体および共反応剤を互いに混合して共反応剤/前駆体混合物をつくり、それからこれを混合物の状態でリアクタに導入してもよい。あるいは、前駆体および共反応剤を反応チャンバに逐次的に導入し、前駆体の導入と共反応剤の導入との間に不活性ガスでパージを行ってもよい。たとえば、開示する前駆体を1つのパルスで導入し、2種類の追加の金属含有前駆体供給源を合わせて1つの別のパルスで導入してもよい[変更PE−ALD]。あるいは、開示する前駆体の導入の前にリアクタが既に共反応剤種を容れていてもよいし、開示する前駆体の導入に続けて任意に共反応剤種の第2の導入を行ってもよい。もう1つの選択肢では、異種金属供給源をパルスで導入しながら、開示する前駆体をリアクタに連続的に導入してもよい(パルスPECVD)。各例において、1回のパルスの後に、導入した過剰量の成分を除去するためのパージまたは排気工程を行ってもよい。各例において、パルスは約0.01秒〜約30秒、あるいは約0.3秒〜約10秒、あるいは約0.5秒〜約2秒の範囲内の期間にわたって続けてもよい。
【0043】
特定のプロセスパラメータに依存するが、堆積は種々の長さの期間にわたって行うことができる。一般に、必要な性質を有する膜を製造するのに望まれるまたはそれに必要なだけ長く堆積を続けることができる。典型的な膜厚は、具体的な堆積プロセスに依存するが、数百オングストロームから数百ミクロンまで変化しうる。また、堆積プロセスは所望の膜を得るのに必要な回数行うこともできる。
【0044】
1つの非限定的な例示的PE−ALDタイププロセスでは、開示する前駆体の気相をリアクタに導入し、ここでそれを好適な基板に接触させる。次に、過剰な前駆体は、リアクタをパージおよび/または排気することによって、このリアクタから除去してもよい。還元性ガス(たとえばH2)をプラズマの出力下でリアクタに導入し、ここでそれは吸収された前駆体と自己停止方式で反応する。過剰な還元性ガスはリアクタをパージおよび/または排気することによってこのリアクタから除去する。所望の膜がハフニウムまたはジルコニウム膜である場合、この2工程プロセスが所望の膜厚を提供する場合もあるし、または必要な膜厚を有する膜が得られるまでこれらのプロセスを繰り返してもよい。
【0045】
あるいは、所望の膜が2種類の金属からなる膜である場合、上記2工程プロセスに続いて、ある金属含有前駆体の蒸気をリアクタに導入する場合がある。この金属含有前駆体は、堆積させる2種類の金属からなる膜の性質に基づいて選択されるであろう。リアクタへの導入後、金属含有前駆体は基板に接触する。過剰な金属含有前駆体は、リアクタをパージおよび/または排気することによってこのリアクタから除去する。先と同じように、還元性ガスをリアクタに導入して金属含有前駆体と反応させてもよい。過剰な還元性ガスは、リアクタをパージおよび/または排気することによってこのリアクタから除去する。所望の膜厚が達成されたら、このプロセスを終わらせてもよい。しかしながら、より厚い膜が望ましい場合、この4工程プロセス全てを繰り返すこともできる。開示する前駆体、金属含有前駆体、および共反応剤を交互に供給することにより、所望の組成および厚さの膜を堆積させることができる。
【0046】
上で説明したプロセスから得られるハフニウムまたはジルコニウム含有膜または層としては、純金属(M)、2種類の金属を含有する膜(M12)たとえば金属珪酸塩(MkSil)もしくは金属−ランタニド(MkLnl)、金属酸化物(Mnm)または金属酸窒化物(Mxyz)の膜を挙げることができる(ここで、M=HfまたはZrであり、k、l、m、n、x、y、およびzは包括的に1〜6の範囲内の整数である)。好ましくは、金属含有膜は金属−ランタニド、HfO2、またはZrO2から選択される。当業者であれば、適切な開示された前駆体、任意の金属含有前駆体、および任意の共反応剤種の公平な選択によって、所望の膜組成を得ることができるが分かるであろう。
【0047】

本発明の実施形態をさらに説明するために、以下の非限定的な例を提供する。しかしながら、この例は包括的であることを意図したものではないし、発明の範囲をここで説明するものに限定することを意図したものではない。
【0048】
例1、(Me5Cp)Zr(NMe23
BuLi/ヘキサン溶液のアイスコールドバスへのHNMe2(0.186mol、8.4gプラス追加の3.6gを添加した)の添加によって、配位子、LiNMe2を新たに調製した。得られた混合物を1時間攪拌した。再度フラスコを0℃まで冷却し、その後Me5CpZrCl3の固体を添加し、得られた混合物を室温で終夜攪拌した。得られた混合物をろ過し、溶媒をろ液から減圧により蒸発させ、粗製の黄色い固体が得られた。この粗材料の昇華により18g(83%)の純生成物が白色固体として得られた。図1は熱重量分析(TGA)データのグラフであり、この白色固体、(Me5Cp)Zr(NMe23の温度に対する重量損失の割合を示している。図2は、C66中の(Me5Cp)Zr(NMe23のプロトンNMRスペクトルである。1H NMR (C66、δ):1.98(15H、s、(CH355)、2.93(18H、s、N(CH32)。
【0049】
予想例2、[Me5Cp]Zr(NMe22(NMeEt)
例1の生成物は、ヘキサン中で、例1と同様の方法でLiNMe2の代わりにLiNMeEtを使用することによって製造できる[(CH355]Zr(NMeEt)3とヘキサン中で終夜反応させることができ、溶媒が蒸発させられる。粗生成物は周知の方法で精製できる。
【0050】
予想例3、[Me5Cp]Hf(NMe23
Me5CpZrCl3の代わりにMe5CpHfCl3を反応で使用することを除き、例1のジルコニウム化合物について開発した方法によって合成されることが予想される。
【0051】
予想例4、(Me3CHD)Zr(NMe23
以下の手順によって合成されることが予想される。BuLi/ヘキサン溶液のアイスコールドバス中へのHNMe2の添加により、配位子LiNMe2を新たに調製する。得られた混合物を攪拌する。再度フラスコを0℃に冷却し、続けて、周知の方法によって作ることができる[(CH33CHD]ZrCl3を添加し、得られた混合物を室温で終夜攪拌する。反応混合物をろ過し;溶媒をろ液から減圧により蒸発させ、粗物質が得られる。粗材料の精製は純生成物単離をもたらす。
【0052】
予想例5、(Me3CHD)Zr(NMe22(NMeEt)
例4の生成物は、例4と同様の方法でLiNMe2に変えてLiNMeEtを使用することによって製造できる[(CH33CHD]Zr(NMeEt)3と、ヘキサン中で終夜反応させることができ、溶媒が蒸発させられる。粗生成物は周知の方法で精製できる。
【0053】
予想例6、(Me3CHD)Hf(NMe23
以下の手順で合成されることが予想される。BuLi/ヘキサン溶液のアイスコールドバス中へのHNMe2を添加することにより、配位子LiNMe2を新たに調製する。得られた混合物を攪拌する。再度フラスコを0℃に冷却し、続けて、[(CH33CHD]HfCl3を添加し、得られた混合物を室温で終夜攪拌する。反応混合物をろ過し;溶媒をろ液から減圧によって蒸発させ、粗物質が得られる。粗材料の精製は純生成物単離をもたらす。
【0054】
本発明の性質を説明するためにここに説明および示してきた詳細、材料、工程および部品の配置に関する多くの追加の変更は、当業者により、添付の特許請求の範囲で表される発明の原理および範囲内で行われうることは理解されるであろう。したがって、本発明は、上に示した例および添付の図面における具体的な実施形態に限定されることを意図していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式ML(NR783を有する化合物であって、MはHfまたはZrであり、Lはシクロヘキサジエニル配位子またはペンタメチルシクロペンタジエニル配位子であり、R7およびR8はHまたは1〜6個の炭素原子を有する脂肪族基(好ましくは脂肪族部分)から独立して選択される化合物。
【請求項2】
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリス(ジメチルアミド)ハフニウムおよび
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリス(ジメチルアミド)ジルコニウム
からなる群より選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Lはシクロヘキサジエニル配位子であり、前記化合物は以下の式:
【化1】

を有し、ここでR1、R2、R3、R4、R5、およびR6はHまたは1〜6個の炭素原子を有する脂肪族基(好ましくは脂肪族部分)から独立して選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
1、R2、R3、R4、R5、およびR6のうちの少なくとも3つはHでない請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
(トリメチルシクロヘキサジエニル)トリス(ジメチルアミド)ハフニウムおよび
(トリメチルシクロヘキサジエニル)トリス(ジメチルアミド)ジルコニウム
からなる群より選択される請求項1、3または4に記載の化合物。
【請求項6】
ハフニウムまたはジルコニウム含有層を基板上に形成する方法であって:
リアクタおよびその中に配置された少なくとも1枚の基板を用意することと;
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化合物を含む蒸気を前記リアクタに導入することと;
ハフニウムまたはジルコニウム含有層を気相堆積プロセスを使用して前記基板上に形成することと
を含む方法。
【請求項7】
少なくとも1種の第2の前駆体を含む蒸気を前記リアクタに導入することをさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種の第2の前駆体の金属はTi、Ta、Bi、Hf、Zr、Pb、Nb、Mg、Al、Sr、Y、Ba、Ca、ランタニド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ハフニウムまたはジルコニウム含有層は酸化ハフニウム層または酸化ジルコニウム層である請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ハフニウムまたはジルコニウム含有層は珪酸ハフニウム層または珪酸ジルコニウム層である請求項6に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1種の共反応剤を前記リアクタに導入することをさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記共反応剤はO2、O3、H2O、H22、NO、NO2、カルボン酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記気相堆積プロセスは化学気相堆積プロセスである請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記気相堆積プロセスは原子層堆積プロセスである請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−501815(P2013−501815A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524908(P2012−524908)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/045506
【国際公開番号】WO2011/020042
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】