説明

ハロゲン含有化合物の変換方法

【課題】金属化合物触媒の存在下、ハロゲンを含有する有機化合物から脱ハロゲンすることにより目的の有機化合物を得る反応において、有機化合物および金属化合物を含む廃水を抵コストで効率的に処理することを目的とする。
【解決手段】ハロゲン含有有機化合物から脱ハロゲン有機化合物を製造する方法であって、a)ハロゲン捕捉剤および金属化合物触媒の存在下、ハロゲン含有有機化合物を活性水素含有有機化合物と反応させて脱ハロゲン有機化合物を得る工程、b)水相に金属沈殿剤を加え、生成した固相を除去する工程、およびc)水相を微生物処理する工程を含む、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲンを含有する有機化合物からの脱ハロゲン反応によって目的とする有機化合物を製造する方法であって、金属化合物触媒および生成した有機化合物を含む水相を微生物で処理することを含む前記方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々のモノマーを効率的に製造する場合など、ハロゲンを含有する有機化合物からの脱ハロゲン反応が有効な場合が多い。例えば、(メタ)アリルクロライド中のクロライドを水酸基で置換することにより(メタ)アリルアルコールを得る反応が例示できる(例えば、特許文献1)。しかし、このような脱ハロゲン反応においては、水相中に生成物である有機物が残存し、このような水相を廃水として河川などに放水する場合には、放流水域の水質保護、あるいは農業用水への影響も考慮しなければならない。
【0003】
水相中の有機物を除去する方法として、液中燃焼で処理する方法や、微生物処理により有機物を分解する方法などが知られている(例えば、特許文献2)。液中燃焼は、大量の熱量が必要であること、また塩素を含む場合は装置が腐食することなどの問題がある。また、上記のような脱ハロゲン反応においては反応を促進するための金属化合物触媒を使用することが好ましいが(例えば、特許文献1)、そのような場合、水相中には有機物に加えて触媒に由来する金属が存在することから、微生物の増殖が阻害され、微生物によって有機物を分解する効率が著しく低下するという問題がある。
【特許文献1】特開2002−371023号公報
【特許文献2】特開2004−033809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、金属化合物触媒および活性水素含有有機化合物の存在下、ハロゲンを含有する有機化合物から脱ハロゲンすることにより目的の有機化合物を得る反応において、有機化合物および金属化合物を含む廃水を抵コストで効率的に処理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を行った結果、脱ハロゲン反応後、触媒である金属化合物に由来する金属イオンを金属沈殿剤で固相化して水相から除去し、さらに微生物処理することにより、廃水を低コストで処理できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)ハロゲン含有有機化合物から脱ハロゲン有機化合物を製造する方法であって、
a)ハロゲン捕捉剤および金属化合物触媒の存在下、ハロゲン含有有機化合物を活性水素含有有機化合物と反応させて脱ハロゲン有機化合物を得る工程、
b)水相に金属沈殿剤を加え、生成した固相を除去する工程、および
c)水相を微生物処理する工程、
を含む、前記方法。
【0007】
(2)a)の工程が、式I:
−Hal (I)
[式中、Rは、有機基であり、Halは、F、Cl、BrまたはIである]
で表されるハロゲン含有有機化合物を、式II:
H−A (II)
[式中、Aは、ヒドロキシ、第1級アミノ、第2級アミノ、−O−(CO)−Rまたは−ORを表し、ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、芳香族基または複素環基を表し、これらの基は置換されていてもよい]
で表される活性水素含有有機化合物と反応させて、式III:
−A (III)
[式中、RおよびAは、上記と同義である]
で表される化合物を得るものである、(1)記載の方法。
【0008】
(3)a)の工程の後に、水相をハロゲン含有有機化合物で抽出する工程をさらに含む、(1)または(2)記載の方法。
(4)Rが、炭素数1〜12の脂肪族基である(2)記載の方法。
【0009】
(5)金属化合物触媒が銅(I)化合物である、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)ハロゲン捕捉剤がアルカリ化合物である、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)金属沈殿剤が硫黄含有化合物である、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)微生物処理が活性汚泥による処理である、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
【0010】
(9)b)の工程の後に、水相を希釈することにより無機塩濃度を10重量%以下として活性汚泥処理を行う(8)記載の方法。
(10)Rが置換されていてもよいC2−12アルケニルであり、Aがヒドロキシである、(2)記載の方法。
(11)ハロゲン含有有機化合物が(メタ)アリルクロライドである、(1)記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、金属化合物触媒の存在下、ハロゲンを含有する有機化合物から脱ハロゲンすることにより目的の有機化合物を得る反応において、有機化合物および金属化合物を含む廃水を抵コストで効率的に処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書において脂肪族基は、構造式中に環状の原子配列のない、すなわち線状の原子配列(枝分れしていてもよい)で表わされる有機基の一群を指し、炭化水素基だけでなくさらに酸素、窒素および硫黄から選択される複素原子を含む場合も包含される。
【0013】
本明細書においてアルキルは、1〜12個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐の飽和炭化水素基を指す。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル等が含まれるがこれらに限定されない。
【0014】
本明細書においてアルケニルは、2〜12個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有し、少なくとも1個、好ましくは1個の炭素−炭素二重結合を有する直鎖または分岐の炭化水素基を指す。例えば、エテニル、プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、イソブテニル等が含まれるが、これらに限定されない。
【0015】
本明細書においてアルキニルは、2〜12個、好ましくは2〜6個の炭素原子を含み、少なくとも1個、好ましくは1個の炭素−炭素三重結合を有する直鎖または分岐の炭化水素基を指す。例えば、アセチレニル、1−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル、1−ヘキシニル等が含まれるが、これらに限定されない。
【0016】
本明細書においてアルキルカルボニルは、アルキル−C(O)−(式中、アルキルは上記で定義したとおりである)を指し、アルケニルカルボニルは、アルケニル−C(O)−(式中、アルケニルは上記で定義したとおりである)を指し、アルキニルカルボニルは、アルキニル−C(O)−(式中、アルキニルは上記で定義したとおりである)を指す。
【0017】
本明細書において、第1級アミノは、アミノ基の水素原子1つが有機基、好ましくは炭化水素基で置換された1価の基を指し、第2級アミノは、アミノ基の水素原子2つが有機基、好ましくは炭化水素基で置換された1価の基を指す。ここで水素原子と置換される有機基としては、上記アルキル(特にC1−6アルキル)、アルケニル(特にC2−6アルケニル)、C3−10シクロアルキル、芳香族基および複素環基が挙げられる。アミノ基の水素原子が、水酸基を有する有機基で置換されたもの、およびカルボキシ基を有する有機基で置換されたものも含まれる。
【0018】
本明細書においてシクロアルキルは、それを介して結合するC1−6アルキル結合基を含んでいてもよい、3〜10個の非芳香族炭化水素環を指す。本発明に有用な「シクロアルキル」の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書において、芳香族基は、1個以上、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のベンゼン環を含む(縮合環中に含んでいてもよい)基、例えば、アントラセン、フェナントレン、またはナフタレン環を含む基を指し、ベンゼン環が置換されている場合も含む。ベンゼン環またはこれを含む縮合環がカルボニルなどの有機基で連結されている場合も含む。具体的にはフェニル、フェニルアルキル、2-ナフチル、1-ナフチル、ビフェニル、フェナントリル、フルオレニル、アントリル、ピレニル、インダニルならびにこれらの誘導体(置換体を含む)が含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書において、複素環基は、飽和であるかまたは部分的に不飽和であり、S、S(O)、S(O)、OまたはNから選択される1個以上のヘテロ原子置換を含有する3〜12員の複素環を1個以上、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個含む(縮合環中に含んでいてもよい)基を指す。上記複素環は場合により1個以上、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個の他の複素環、芳香環またはシクロアルキル環と縮合していてもよい。複素環基の例には、テトラヒドロフラニル、ピラニル、ジオキサニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、トリアゾリル、ベンゾトリアゾリルならびにこれらの誘導体(置換体を含む)が含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書において、Cx−yという用語におけるxおよびyは、それが付けられている特定の化学基の中の炭素原子の数の最小値と最大値をそれぞれ表す。
【0022】
本明細書案においてハロゲンおよびハロ(Hal)には、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)が包含される。
【0023】
本発明の方法は、ハロゲンを含有する有機化合物(ハロゲン含有有機化合物)を、ハロゲン捕捉剤および金属化合物触媒の存在下、活性水素含有有機化合物と反応させて脱ハロゲンする方法において、水相を金属沈殿剤で処理した後、微生物処理することを特徴する。好ましくは、金属沈殿剤による処理の前に、水相を原料であるハロゲン含有有機化合物で抽出する。本発明は、好適には、塩素を含有する有機化合物(塩素含有有機化合物)を脱塩素する方法に関する。
【0024】
換言すれば、本発明は、ハロゲン含有有機化合物から脱ハロゲン有機化合物を製造する方法であって、
a)ハロゲン捕捉剤および金属化合物触媒の存在下、ハロゲン含有有機化合物を活性水素含有有機化合物と反応させて脱ハロゲン有機化合物を得る工程、および
b)水相に金属沈殿剤を加え、生成した固相を除去する工程、
c)水相を微生物処理する工程、
を含む方法に関する。
【0025】
ハロゲン含有有機化合物は、ハロゲン原子を含有する有機化合物であって、脱ハロゲン反応しうるものであれば特に制限されない。一実施形態において、本発明におけるハロゲン含有有機化合物は、式I:
−Hal (I)
で表され、式IにおいてRは有機基である。Rは、好ましくは炭素数1〜12の脂肪族基または芳香族基である。式Iの化合物には、その塩、例えば、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩も包含される。Halは、F、Cl、BrまたはIであり、好ましくはClである。
【0026】
における脂肪族基としては、例えば、アルキル(特にC1−6アルキル)、アルケニル(特にC2−6アルケニル)、アルキニル(特にC2−6アルキニル)、アルキルカルボニル(特にC1−6アルキルカルボニル)、アルケニルカルボニル(特にC2−6アルケニルカルボニル)、アルキニルカルボニル(特にC2−6アルキニルカルボニル)が挙げられ、これらの基は置換されていてもよい。Rにおける脂肪族基は、好ましくは、アルケニル、特にC2−6アルケニル、またはアルケニルカルボニル、特にC2−6アルケニルカルボニルであり、これらは置換されていてもよい。
【0027】
上記Rにおける置換基としては、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルスルファニル、C1−6アルキルスルフェニル、C1−6アルキルスルホニル、オキソ、ヒドロキシ、メルカプト、場合によりアルキル置換されたアミノ、カルボキシ、場合によりアルキル置換されたカルバモイル、場合によりアルキル置換されたフェニル、場合によりアルキル置換されたベンジル、ニトロ、シアノおよびハロゲン等が挙げられる。
【0028】
本発明においてハロゲン含有有機化合物は、好ましくは塩素含有有機化合物であり、塩素含有有機化合物の具体例としては、例えば、塩化(メタ)アクリロイル、(メタ)アリルクロライド、塩化アセチル、塩化エチル、クロロエチレン、塩化メチル、塩化メチレン、塩素化イソシアヌル酸、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、二塩化エチレン、パークロロエチレン、クロロメチル−2,2−ジメチルプロピオネート、四塩化炭素、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、2,6−ジクロロベンザルクロライド、4−メチルベンジルクロライド、モノクロロアセトアルデヒド、珪素含有化合物(例えば、エチルジクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン)、塩素化ポリスチレン樹脂、クロロスチレン、クロロアセトフェノン(例えば、o−クロロアセトフェノン、p−クロロアセトフェノン)、クロロ安息香酸類(例えば、p−クロロ安息香酸、2−アミノ−4−クロロ安息香酸、2,4−ジクロロ安息香酸)、4−クロロ−3−ニトロ安息香酸、1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン、クロロトルエン類(例えば、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、2,3−ジクロロトルエン、2,4−ジクロロトルエン、2,6−クロロトルエン、3,4−クロロトルエン)、クロロニトロアニリン類(例えば、2−クロロ−4−ニトロアニリン、5−クロロ−2−ニトロアニリン、2,6−ジクロロ−4−ニトロアニリン)、2−クロロ−4−ニトロフェノール、クロロニトロベンゼン類(例えば、o−クロロニトロベンゼン、p−クロロニトロベンゼン、1,4−ジクロロ−2−ニトロベンゼン、2,4−ジクロロ−1−ニトロベンゼン)、2−(2−クロロフェニル)エチルアミン、クロロフェニル酢酸類(例えば、2−クロロフェニル酢酸、4−クロロフェニル酢酸)、3−(4−クロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、クロロフェノール類(例えば、o−クロロフェノール、p−クロロフェノール)、クロロベンジルクロライド類(例えば、o−クロロベンジルクロライド、p−クロロベンジルクロライド、2,6−ジクロロベンジルクロライド、3,4−クロロベンジルクロライド)、p−クロロベンジルシアナイド、クロロベンズアルデヒド類(例えば、o−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、2,3−ジクロロベンズアルデヒド、2,4−ジクロロベンズアルデヒド、2,6−ジクロロベンズアルデヒド)、クロロベンゼン類(例えば、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン)、p−クロロベンゾトリクロライド、クロロベンゾイルクロライド類(例えば、p−クロロベンゾイルクロライド、2,3−ジクロロベンゾイルクロライド、2,4−ジクロロベンゾイルクロライド、2,6−ジクロロベンゾイルクロライド)、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジクロロベンザルクロライド、2,6−ジクロロベンゾニトリル、ならびにこれら化合物の誘導体が挙げられる。上記化合物において、塩素を、フッ素、臭素またはヨウ素に置換した化合物もまた、本発明のハロゲン含有有機化合物に包含される。
【0029】
一実施形態において、本発明における活性水素含有有機化合物は、式II:
H−A (II)
で表され、式IIにおいて、Aは、ヒドロキシ、第1級アミノ、第2級アミノ、−O−(CO)−Rまたは−ORを表す。ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、アルキル(特にC1−6アルキル)、アルケニル(特にC2−6アルケニル)、アルキニル(特にC2−6アルキニル)、シクロアルキル、複素環基、芳香族基を表し、これらの基は置換されていてもよい。式IIの化合物には、その塩、例えば、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩も包含される。
【0030】
およびRにおける置換基としては、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルスルファニル、C1−6アルキルスルフェニル、C1−6アルキルスルホニル、オキソ、ヒドロキシ、メルカプト、場合によりアルキル置換されたアミノ、カルボキシ、場合によりアルキル置換されたカルバモイル、場合によりアルキル置換されたフェニル、場合によりアルキル置換されたベンジル、ニトロ、シアノおよびハロゲン等が挙げられる。
【0031】
活性水素含有有機化合物の具体例としては、HO;アミン類(第1級アミンおよび第2級アミンを含む)、例えば、カルバゾール、3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸四ナトリウム(HIDS)、2,2’−イミノジコハク酸四ナトリウム(L−IDS)、カルボキシエチルイミノコハク酸三ナトリウム(CEIS)、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミンのように水酸基を有するアミン、イミノジ酢酸などのようにカルボキシ基を有するアミン、ならびにそのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム塩;アルコール類、例えば、各種グリコールエーテル類およびフルオレノール;フェノール類(ヒドロキシで置換されたフェニルを含む化合物)、特にヒドロキシで置換されたベンゾフェノン、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンおよび2,3,3’,4,4’,5−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン;ベンゾトリアゾール類(ベンゾトリアゾール部分を含む化合物)、特に、2−(2’−ヒドロキシ−5’−ヒドロキシアルキルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−ヒドロキシアルキルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−ヒドロキシアルキルフェニル)−5−ハロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−ヒドロキシアルキル−3’−アルキルフェニル)−5−ハロ−2H−ベンゾトリアゾール、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−ヒドロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−ヒドロキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−ヒドロキシプロピルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−ヒドロキシプロピルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾールおよび2−(2’−ヒドロキシ−5’−ヒドロキシプロピル−3’−t−ブチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール;ならびにカルボン酸類、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などが挙げられる。
【0032】
ハロゲン含有有機化合物に対する活性水素含有有機化合物の好ましい使用割合は、通常0.7〜20モル倍、好ましくは0.9〜15モル倍、より好ましくは0.9〜1.2モル倍、さらに好ましくは0.95〜1.15モル倍である。活性水素含有有機化合物が、HOの場合のように、活性水素含有有機化合物自体が溶媒としての役割を兼ねる場合は0.9〜15モル倍が好ましい。
【0033】
本発明の方法では、ハロゲン含有有機化合物におけるハロゲンが、活性水素含有有機化合物の求核置換反応により、活性水素以外の部分と置換されて(すなわち、式IIにおけるAと置換されて)、ハロゲン含有有機化合物が脱ハロゲンされ、目的の脱ハロゲン有機化合物が得られる。
【0034】
一実施形態において、本発明の方法における反応は、式IIの化合物におけるAがヒドロキシであり、すなわち活性水素含有有機化合物が水であり、ハロゲン含有有機化合物のハロゲンとヒドロキシが置換される反応である。より好ましくは、ハロゲン含有有機化合物は、アリルクロライド、(メタ)アリルクロライド、塩化(メタ)アクリロイル、塩化アクリロイル、アルキルクロライドであり、活性水素含有有機化合物は水であり、本発明の反応において、塩素がヒドロキシと置換される。
【0035】
ハロゲン捕捉剤は、上記反応において、ハロゲン含有有機化合物に含まれるハロゲンを捕捉し、ハロゲン含有有機化合物からの脱ハロゲン反応を促進する活性を有する化合物を指す。ハロゲン捕捉剤としては、好ましくはアルカリ化合物が用いられる。ハロゲン捕捉剤の具体例としては、4級アンモニウム塩(例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリフェニルメチルアンモニウムヒドロキサイド)、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸亜鉛、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物塩もしくは炭酸水素塩が挙げられる。好ましくは、アルカリ金属、特にナトリウムの炭酸塩、水酸化物塩もしくは炭酸水素塩を用いる。ハロゲン捕捉剤は単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。ハロゲン捕捉剤の好ましい使用量は、ハロゲン含有有機化合物に対して0.7〜5.0モル%、好ましくは0.9〜1.5モル%、より好ましくは1.0〜1.2モル%である。反応後の蒸留時に、塩化水素など塩素含有ガスが発生することを防ぐために過剰のアルカリ化合物を用いる場合がある。これは反応終了後に加えてもよいが、工程が増えるので反応終了時に過剰量となるような反応条件を設定することもできる。
【0036】
金属化合物触媒は、本発明の反応を促進する活性を有する金属化合物を指す。金属化合物触媒としては、例えば、銅、コバルト、亜鉛を含む化合物を使用できる。本発明においては、銅(I)化合物を用いるのが好ましい。銅(I)化合物は、一価銅化合物を指し、例えば、酸化銅(I)、ハロゲン化銅(I)(例えば、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I))などが挙げられる。金属化合物触媒は単独でも用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。金属化合物触媒の形状は特に制限されないが、例えば、粉末または塊状等が用いられる。金属化合物触媒の好ましい使用量は、原料であるハロゲン含有有機化合物に対して、0.1〜3.0モル%、好ましくは0.5〜2.0モル%、より好ましくは0.5〜1.0モル%である。
【0037】
反応における原料の仕込み方法は特に限定されない。原料、すなわち、ハロゲン含有有機化合物、活性水素含有有機化合物、ハロゲン捕捉剤および金属化合物触媒を一括で全量仕込んでもよいし、または金属化合物触媒、ハロゲン捕捉剤および活性水素含有有機化合物を含む溶液に、ハロゲン含有有機化合物を少しずつ滴下してもよく、さらには金属化合物触媒を含有するハロゲン含有有機化合物に、ハロゲン捕捉剤および活性水素含有有機化合物を含む溶液を滴下してもよい。反応温度としては、50〜100℃が好ましく、反応時間は2〜24時間が適当であり、通常、3〜8時間程度で充分である。生成した目的の脱ハロゲン有機化合物の反応液からの単離は以下のようにしてなされる。すなわち、反応後液相が一相である場合は、反応後の共沸蒸留によって留出液を得、二相に分かれる場合は有機相と水相を分離した後に有機相を蒸留して目的化合物を得る。次いで、これに脱水剤を添加するなどして脱水を行い、粗生成物を得る。次いで、上記粗生成物を単蒸留によって一次精製し、さらに必要により精製してもよい。
【0038】
本発明の方法では、上記反応後、目的化合物を単離した後、水相を好適に処理することにより、放流するのに適した廃水とすることを特徴とする。ここで水相は、反応後に系に存在する水相の場合もあるし、反応後に新たに添加した水性溶媒を含む水相の場合もある。
【0039】
本発明の方法は、水相に金属沈殿剤を添加することにより、水相中に含まれる上記金属化合物触媒に由来する金属を沈殿させてその含有量を低減させることを特徴とする。水相に含まれる金属イオンの量を低減させることにより、その後の微生物処理において微生物の増殖が阻害されることなく、有機物の分解を効率的に実施することができる。
【0040】
好ましくは、金属沈殿剤による処理の前に、水相を共沸蒸留または抽出することによって残存有機物を分離することが好ましい。抽出においては原料であるハロゲン含有有機化合物を用いることが特に好ましい。水相をハロゲン含有有機化合物で抽出することにより、一部水相に移行した脱ハロゲン有機化合物を水相から除去する。ハロゲン含有有機化合物は有機化合物であることから、水相中の脱ハロゲン有機化合物を効果的に抽出できる。また、抽出した後のハロゲン含有有機化合物は、原料として投入されることから、得られた目的化合物の損失を低減できるという点でも有利である。
【0041】
金属沈殿剤は、反応後の水相中に含まれる金属を凝集・沈殿させる活性を有する化合物を指す。金属沈殿剤としては、硫黄含有化合物が挙げられ、例えば、硫化ソーダ(NaS・nHO)および水硫化ソーダ(NaHS・mHO)(ここでnおよびmは10以下の整数を表す)が挙げられ、結晶性硫化ソーダ(NaS・5HO)、フレーク状の硫化ソーダなどが包含される。また、ボウ硝(NaSO)、チオ硫酸ソーダハイポ(Na・5HO)、四硫化ソーダ(Na)なども使用できる。
【0042】
金属沈殿剤としては、窒素を有する複素環を含む硫黄含有化合物がより好ましい。そのような化合物には、トリアゾール環、トリアジン環、ベンゾチアゾール環、テトラゾール環、チアジアゾール環、ピラゾール環等の複素環に置換基としてメルカプト基を有する複素環化合物およびその塩が含まれる。特に、トリアジン環に置換基としてメルカプト基を有する化合物が好ましい。具体的には、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、トリメルカプトトリアジン(例えば、2,4,6−トリメルカプト−S−トリアジン)、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−S−トリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプト−S−トリアジンおよびこれらの塩などが挙げられる。塩としては、特に制限されないが、無機塩、例えば、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩(例えば、モノナトリウム塩、ジナトリウム塩およびトリナトリウム塩)が挙げられる。これらは結晶中に水を含んでも含まなくてもよく、固体であっても液体であってもよい。固体である場合は粒子径などの形状、純度などは特に限定されない。
【0043】
また、窒素を含有する化合物も金属沈殿剤として用いることができ、例えば、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、ピリジン、塩基性イオン交換樹脂、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0044】
上記金属沈殿剤は、単独で用いてもよいが、複数種を組み合わせて用いてもよい。式Iの化合物で抽出した後の水相に添加する金属沈殿剤の量は、特に制限されないが、水相に含まれる金属の重量に対して、1〜50重量倍、好ましくは1〜10重量倍、より好ましくは1〜5重量倍である。金属沈殿剤は、抽出後の水相に直接添加することもできるが、上記金属沈殿剤の水溶液として添加してもよい。水溶液として添加する場合、通常5〜30重量%の水溶液とする。金属沈殿剤を加えた結果生じる固相の分離方法については特に限定されない。沈降槽、濾過装置、またはこれらの組み合わせ等により金属化合物触媒に由来する金属を効率的に除去することができる。一例として、シックナー濾過機の使用などが挙げられる。沈殿剤によって処理する際のpHについては、使用する沈殿剤によるが、pH2〜14の範囲が好ましい。また、沈殿処理の温度についても使用する処理剤によって異なるが、室温〜60℃の範囲で行うことが好ましい。フィルター等を用いて分離することにより、金属化合物触媒に由来する金属を除去することもできる。
【0045】
金属沈殿剤により金属含有量を低減させた水相を、続いて、微生物で処理することにより水相に残存する有機物を分解除去する。微生物処理は、有機物を微生物で分解するための公知の方法で実施することができる。例えば、微生物を担体に担持しておき、この担体に担持した微生物に、上記有機化合物を含む水相を接触させる態様にて実施することができる。具体的には、担体に担持した微生物を容器や反応槽に収納しておき、その一端から、水相を導入し、処理後、他端から外に取り出す形態を採ると好ましい。微生物による分解処理を、複数段繰り返し、段階的に有機化合物濃度を低減する方式を採用することもできる。担体としては、セルロース、デキストラン、アガロースのような多糖類;コラーゲン、ゼラチン、アルブミンなどの不活化蛋白質;イオン交換樹脂、ポリビニルクロライドのような合成高分子化合物 ;セラミックスや多孔性ガラスなどの無機物;寒天、アルギン酸、カラギーナンなどの天然炭水化物;さらにはセルロースアセテート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、光硬化性樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタンなど包括担体とし得る高分子化合物などがあげられる。また、リグニン、デンプン、キチン、キトサン、濾紙、木片等からなるものも利用できる。
【0046】
有機化合物の分解に使用する微生物の培養は、当技術分野で慣用の方法で実施すればよい。培養に使用する培地としては、基本的には生育に必要な炭素源、窒素源、リン源、無機塩類等を含んでいればよく、通常、各菌株の培養に利用される市販の液体培地、あるいは、各菌株が開示されている文献に記載されている液体培地などを用いるのが好ましい。従って、微生物を培養するために用いられる基本的な培地としては、その菌株が生育するために必要な成分が適量含有されていれば特に制限はなく、例えば、汎用されるLB培地、あるいはM9培地やMSB培地等の基礎塩培地を用い、生育に必要な炭素源等を適量添加して調製することができる。培養は好気条件下で行うことができ、液体培地中での培養でも、固体培地上での培養でもよい。なお、培養温度は、利用する微生物に依存して、適宜選択するが、通常15℃〜37℃の間で選択することが望ましい。
【0047】
反応後の水相には、ハロゲン含有有機化合物からのハロゲンに由来するNaCl、NaBrなどの無機塩が存在することから、好ましくは無機塩に耐性を有する微生物を使用する。用いる微生物の無機塩に対する耐性が弱い場合は、微生物処理を実施する前に、水相を希釈することによって、無機塩濃度を低減させることが好ましい。希釈は水で行ってもよいし、反応で生じた廃水などその他の水性溶媒で行ってもよい。その場合、無機塩の濃度が、通常、10重量%以下、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは1〜3.5重量%となるように希釈することが好ましい。
【0048】
また、上記無機塩は、微生物処理の前または後に、除去してもよい。無機塩を除去する方法としては、イオン交換膜または吸着剤などを用いる公知の塩除去方法を使用できる。無機塩がNaClである場合は、環境への負荷が特に低いことから、無機塩を除去する工程の必要性は低い。
【0049】
本発明において微生物処理には、微生物を含有する活性汚泥による処理も包含される。活性汚泥は、数十種類の好気性のグラム陰性およびグラム陽性細菌と繊毛虫などの原生動物を、フロックと称する沈降に適したサイズの凝集体にしたものを指す。活性汚泥に含まれる微生物としては、例えば、ズーグレア属細菌、バチルス属細菌、シュードモナス属細菌、フラボバクテリウム属細菌、デクロロモナス属細菌、アルカニボラックス属細菌、繊毛虫類のツリガネムシ(Vorticella)、エピスチリス(Epistylis)、アスピディスカ(Aspidisca)、リトノタス(Litonotus)、肉質虫類のアルセラ(Arcella)、アメーバ(Amoeba)、鞭毛虫類のエントシフォン(Entosiphon)、ペラネマ(Peranema)など、および多細胞生物の後生動物として、ワムシ類、イタチムシ、アブラミミズ類、クマムシ、線虫類、ワムシ類、カビ類などが挙げられる。特定の微生物をさらに活性汚泥に追加してもよい。その場合、微生物を上記のような担体に固定化して活性汚泥に添加することが好ましい。
【0050】
活性汚泥を用いた微生物処理方法としては、例えば、標準活性汚泥法、オキシデーションディッチ(OD)法、膜分離活性汚泥法等が挙げられるが特に制限されない。これらの活性汚泥法は、後段の工程で、活性汚泥と溶液とを物理的な方法で固液分離して清澄な処理水を得るものである。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されない。
【0052】
攪拌子付のガラス製の四つ口フラスコに冷却管、滴下ロートを取り付け、メタリルクロライド(227.0g)、炭酸水素ナトリウム(231.1g)、塩化第一銅(1.9g)と蒸留水(432.4g)を投入しオイルバスにて加温し、還流条件にて5時間の反応を行った。反応終了後室温まで冷却し、固液分離を行い、液相へ136.2gの蒸留水を添加し、計算上のNaCl濃度を20.0wt%とした。油層を蒸留することで目的物であるメタリルアルコールを得た。水相は次バッチ原料であるメタリルクロライド(226.3g)で抽出をおこない、その水相669.8gを分析した結果、メタリルクロライドがガスクロマトグラフィ検出限界以下、メタリルアルコールは7.38g(1.1wt%)であった。この廃水中には銅由来の化合物が含まれることから、廃水50gに対して1.13gの2,4,6−トリメルカプト−S−トリアジンを加えてマグネチックスターラーで攪拌後、シリンジフィルター(ADVANTEC PTFE 0.45μm)でろ過し、蛍光X線(XRF)で分析をおこなった。その結果、Cuは2ppm、イオウ成分が1,530ppm、pHは7.23であった。この廃水を100倍の水で希釈して廃水試料Aとした。
【0053】
廃水試料Aの生分解性を修正MITI法に従って測定したところ、試験開始14日目において50.4%の生分解率であり、試験開始28日目において62%の生分解性であることがわかった。
【0054】
廃水試料の生分解率は、都市下水道処理場の返送活性汚泥を用いた以外は、修正MITI試験に準じて測定を行った。すなわち、JIS−K0102における生物化学酸素消費量の項に規定されている組成液としての基礎培養液200mlに、試験物質としての廃水試料を100ppmとなるように添加するとともに、活性汚泥を30ppmとなるように添加した。
【0055】
その後、この基礎培養液を暗所下で25℃に保ち、攪拌しながら28日間にわたって培養した。そして、上記培養期間中に、活性汚泥により消費された酸素量を定期的に測定し、生物化学的酸素要求量(BOD:Biochemical Oxygen Demand)曲線を求めた。生分解率(%)は、上記のBOD曲線から得られる試験物質の生物化学的酸素要求量A(mg)と、BOD曲線から得られるブランク、つまり基礎培養液の酸素消費量B(mg)と、試験物質を完全酸化させる場合に必要な全酸素要求量(TOD:Theoretical Oxygen Demand)C(mg)とから、次式と供給物質の理論的酸素要求量(TOD)の比に従って算出した。
生分解率(%)=[(A−B)]/C]×100
また、試験溶液中の全有機炭素量(TOC)の減少をTOC測定器(島津製作所製、TOC−500)を用いて測定した。TOC除去率は次式に従って算出した。
TOC除去率(%)=[(C−CB0)−(C−CBn)/(C−CB0)]×100
ここで、
:試験開始時の試験溶液中のTOC(mg/L)
:n日後の試験溶液中のTOC(mg/L)
B0:供試物質を含まない系(空試験溶液)の試験開始時のTOC(mg/L)
Bn:供試物質を含まない系(空試験溶液)のn日後のTOC(mg/L)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン含有有機化合物から脱ハロゲン有機化合物を製造する方法であって、
a)ハロゲン捕捉剤および金属化合物触媒の存在下、ハロゲン含有有機化合物を活性水素含有有機化合物と反応させて脱ハロゲン有機化合物を得る工程、
b)水相に金属沈殿剤を加え、生成した固相を除去する工程、および
c)水相を微生物処理する工程、
を含む、前記方法。
【請求項2】
a)の工程が、式I:
−Hal (I)
[式中、Rは、有機基であり、Halは、F、Cl、BrまたはIである]
で表されるハロゲン含有有機化合物を、式II:
H−A (II)
[式中、Aは、ヒドロキシ、第1級アミノ、第2級アミノ、−O−(CO)−Rまたは−ORを表し、ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、芳香族基または複素環基を表し、これらの基は置換されていてもよい]
で表される活性水素含有有機化合物と反応させて、式III:
−A (III)
[式中、RおよびAは、上記と同義である]
で表される化合物を得るものである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
a)の工程の後に、水相をハロゲン含有有機化合物で抽出する工程をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
が、炭素数1〜12の脂肪族基である請求項2記載の方法。
【請求項5】
金属化合物触媒が銅(I)化合物である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ハロゲン捕捉剤がアルカリ化合物である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
金属沈殿剤が硫黄含有化合物である、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
微生物処理が活性汚泥による処理である、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
b)の工程の後に、水相を希釈することにより無機塩濃度を10重量%以下として活性汚泥処理を行う請求項8記載の方法。
【請求項10】
が置換されていてもよいC2−12アルケニルであり、Aがヒドロキシである、請求項2記載の方法。
【請求項11】
ハロゲン含有有機化合物が(メタ)アリルクロライドである、請求項10記載の方法。

【公開番号】特開2008−36519(P2008−36519A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213411(P2006−213411)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】