説明

ハンドルロックシステム

【課題】 従来のようなハンドルロックをするための特別な作業、例えばキー操作という煩わしい作業をせずに簡単にハンドルの回動をロックすることができるハンドルロックシステムを提供する。
【解決手段】 ハンドルロックシステム40は、携帯機24と、ECU21と、ロック装置41とを備える。携帯機24は、運転者が携帯可能になっている。ロック装置41は、自動二輪車1のハンドル7の回動をロックできるようになっている。ECU21は、自動二輪車1に設けられ、この携帯機24と無線通信して認証を行うことができるようになっており、この認証が不成立であるとの第1の条件を含むロック条件が成立した場合に、前記ロック装置41を制御してハンドル7の回動をロックするロック制御部50を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物のハンドルの回動をロックするためのハンドルロックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の盗難防止のためにハンドルの回動をロックするロック装置が実用に供されている。ロック装置としては、例えば特許文献1に記載されるようなステアリングロック装置がある。このステアリングロック装置は、キー操作によって出没するロックピンを備えており、このロックピンは、ハンドルと共にヘッドパイプを中心に回動するようになっている。また、ヘッドパイプには、ロックプレートが設けられており、このロックプレートには、ロックピンを嵌合させるためのロック孔が形成されている。ロックプレートは、ハンドルを所定位置まで回動させたときにロック孔がロックピンに対向するように配置されている。これにより、ハンドルを所定位置まで回動させ、その後キー操作をすることで突出したロックピンがロック孔に嵌合し、ハンドルの回動がロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−238444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のステアリングロック装置では、キー操作をしなければハンドルの回動をロックすることができない。それ故、キー操作することを忘れてハンドルの回動をロックし忘れたり、またキー操作という煩わしい作業を避けるために敢えてハンドルの回動をロックしなかったりすることがある。そうすると、せっかく設けられた盗難防止機能にもかかわらず、その機能が発揮されないということがある。
【0005】
そこで本発明は、従来のようなハンドルロックをするための特別な作業、例えばキー操作という煩わしい作業をせずに簡単にハンドルの回動をロックすることができるハンドルロックシステムを提供する目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述のような事情に鑑みてなされたものであり、本発明のハンドルロックシステムは、運転者が携帯可能な携帯端末と、乗り物に設けられ、前記携帯端末と無線通信して認証を行う制御装置と、前記制御装置により制御され、前記乗り物のハンドルの回動をロックするロック装置とを備え、前記制御装置は、前記認証が不成立であるとの第1の条件を含むロック条件が成立した場合に前記ロック装置を制御してハンドルの回動をロックするロック制御部を有しているものである。
【0007】
本発明に従えば、携帯端末を携帯する運転者が乗り物から離れて認証が不成立になることで、制御装置がロック装置を作動させてハンドルの回動をロックする。即ち、携帯端末を携帯する運転者は、乗り物から離れることでハンドルの回動をロックすることができる。それ故、従来のようなハンドルの回動をロックするための特別な作業、例えばキーを回すという煩わしい作業が必要なくなり、簡単にハンドルの回動をロックすることができる。
【0008】
上記発明において、前記ロック条件は、第1の条件以外の所定の第2の条件を含むことが好ましい。上記構成に従えば、第2の条件が含まれるので、携帯端末が通信不良を起こし、また携帯端末の電池が放電する等して携帯端末と制御装置との間で認証が不成立である場合でも、第2の条件が成立していればハンドルの回動がロックされない。それ故、通信不良や電池不足のような場合における不所望なロックを防ぐことができる。
【0009】
上記発明において、前記第2の条件は、前記乗り物が走行停止状態であることを含むことが好ましい。上記構成に従えば、携帯端末が通信不良を起こして認証が不成立となり、且つ乗り物が走行停止状態になった場合にハンドルがロックされる。即ち、運転者は、乗り物を駐停止した後に携帯端末を携帯したまま乗り物から離れることでハンドルをロックさせることができ、駐停止時の盗難防止に利用することができる。
【0010】
上記発明において、前記走行停止状態は、スタンドが下げられた状態を含むことが好ましい。上記構成に従えば、スタンドが下げられたときにハンドルがロックされる。スタンドを下げるという動作は、乗り物を駐停止する際に行う動作であり、スタンドが下げられている状態では、乗り物が走行停止状態にある。従って、スタンドが下げられたことを走行停止状態に含めることで、乗り物が走行停止状態にある時にハンドルをロックすることができる。
【0011】
上記発明において、前記第2の条件は、前記ハンドルの舵角が所定角度以上の状態であることを含むことが好ましい。上記構成に従えば、運転者は、ハンドルの舵角を所定角度以上にすることで駐停止の意思を表わすことができ、その意思に基づいてハンドルの回動をロックさせることができる。従って、駐停止の意思に応じてハンドルの回動をロックすることができ、不所望なロックを防ぐことができる。また、乗り物のうち自動二輪車等の鞍乗型車両の場合、舵角を所定角度以上にすることで車両自体の姿勢が安定し、その安定した姿勢の状態でハンドル7の回動をロックすることができ、車両の転倒等を防ぐことができる。
【0012】
上記発明において、前記ロック装置は、前記ハンドルの回動を抑制するステアリングダンパと、該ステアリングダンパ内の作動流体の流れを調整する流量調整機構とを備え、前記制御装置は、前記流量調整機構を制御して前記ステアリングダンパ内の作動流体の流れを規制することで前記ハンドルをロックすることが好ましい。
【0013】
上記構成に従えば、ステアリングダンパを利用することで、ハンドルの回動をロックするための装置を新たに設ける必要がない。
【0014】
上記発明において、前記ロック装置は、前記ステアリングダンパ内の作動流体の流れを規制することで前記ハンドルの舵角が何れの角度にあるときでも前記ハンドルの回動をロックできるようになっており、前記ロック制御部は、前記ロック条件が成立したときの舵角で前記ハンドルの回動をロックするようになっていることが好ましい。
【0015】
上記構成に従えば、従来のように予め定められたハンドルロック位置にハンドルを合わせてロックする必要がなく、ハンドルロック位置に合わせるという煩わしい作業を無くすことができ、簡単にハンドルの回動をロックすることができる。
【0016】
本件発明のハンドルロックシステムは、運転者が携帯可能な携帯端末と、乗り物に設けられ、前記携帯端末と無線通信して認証を行う制御装置と、前記乗り物のハンドルの回動しやすさを調整可能なステアリングダンパと、前記制御装置により制御され、前記乗り物の走行状態に応じてステアリングダンパの減衰力を調整する調整手段とを備え、前記制御装置は、前記認証が不成立であると、前記調整手段により前記ハンドルを回動しにくくして前記ハンドルをロック状態にし、前記ロック状態で前記認証が成立すると、前記調整手段により前記ハンドルの回動しやすくして前記ハンドルを非ロック状態にするものである。
【0017】
上記構成に従えば、携帯端末を携帯する運転者が乗り物から離れて認証が不成立になることで、制御装置が調整手段によりハンドルを回動しにくくしてハンドルをロック状態にする。即ち、携帯端末を携帯する運転者は、乗り物から離れることでハンドルがロック状態になる。それ故、従来のようなハンドルをロック状態にするための特別な作業、例えばキーを回すという煩わしい作業が必要なくなり、簡単にハンドルをロック状態にすることができる。
【0018】
また、本発明では、ロック状態で携帯端末を携帯する運転者が乗り物に近づき認証が成立すると、制御装置が調整手段によりハンドルを回動しやすくしてハンドルを非ロック状態にする。即ち、携帯端末を携帯する運転者は、乗り物に近づくことでハンドルを非ロック状態にすることができる。それ故、ハンドルを非ロック状態にするための特別な作業、例えばキーを回すという煩わしい作業が必要なくなり、簡単にハンドルのロックを解除することができる。
【0019】
更に、本発明では、走行状態に応じてハンドルの回動しやすさを変更できるステアリングダンパと調整手段を用いてロック状態及び非ロック状態の切換が可能であるので、ロック装置を別途設ける必要がなく製造コストを低減できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来のようなハンドルロックをするための特別な作業、例えばキー操作という煩わしい作業をせずに簡単にハンドルの回動をロックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本件発明の第1実施形態であるハンドルロックシステムを備える自動二輪車を示す側面図である。
【図2】ハンドルロックシステムの電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】ハンドルロックシステムに備わるロック装置のステアリングダンパを示す平面図である。
【図4】図3に示すステアリングダンパを切断して示す断面図である。
【図5】ハンドルロックシステムによるロック処理の動作手順を示すフローチャートである。
【図6】ハンドルロックシステムによるロック解除処理の動作手順を示すフローチャートである。
【図7】ハンドルロックシステムによるロック処理の他の動作手順を示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態のハンドルロックシステムに備わるロック装置のステアリングダンパの断面図である。
【図9】第3実施形態のハンドルロックシステムに備わるロック装置のステアリングダンパの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、自動二輪車に騎乗した運転者から見た方向を基準とする。
【0023】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態のハンドルロックシステム40を備える自動二輪車1は、図1に示すように、前輪2及び後輪3を備えている。前輪2は、略上下方向に延びるフロントフォーク4の下端部にて回転自在に支持されている。該フロントフォーク4の上端部には、アッパーブラケット5が設けられ、また該アッパーブラケットの下方には、アンダーブラケット(図示せず)が設けられている。これらアッパーブラケット5及びアンダーブラケットには、略上下方向に延びるステアリングシャフト(図示せず)が架設され、該ステアリングシャフトは、ヘッドパイプ6によって回転自在に支持されている。また、アッパーブラケット5には、左右へ延びるバー型のハンドル7が取り付けられている。運転者は、このハンドル7を回動操作することにより、前記ステアリングシャフトを回転軸として前輪2を所望の方向へ転向させることができる。
【0024】
ヘッドパイプ6には、左右一対のメインフレーム8が設けられている。このメインフレーム8は、若干下方に傾斜しながら後方へ延びており、その後部に左右一対のピボットフレーム9が接続されている。このピボットフレーム9には、略前後方向に延びるスイングアーム10の前端部が枢支されており、このスイングアーム10の後端部には、後輪3が回転自在に軸支されている。また、左側のピボットフレーム9の下方には、前後方向に延びるサイドスタンド11がメインフレーム8に枢支されており、このサイドスタンド11を回動させて下げることで、自動二輪車1を左斜め上方に傾倒した状態で立たせることができる。
【0025】
ハンドル7の後方には、燃料タンク12が設けられており、この燃料タンク12の後方には、運転者騎乗用のシート13が設けられている。また、燃料タンク12の下方には、並列四気筒のエンジンEがメインフレーム8及びピボットフレーム9に支持された状態で搭載されている。エンジンEには、変速装置14が接続されており、エンジンEからの出力が変速装置14及びチェーン15を介して後輪3に伝達される。
【0026】
このように構成されるエンジンEの吸気ポート(図示せず)には、図1及び図2に示すように、スロットル装置16が接続されている。スロットル装置16は、スロットルバルブ16aを有している。このスロットルバルブ16aは、ハンドル7の右側に備わるハンドルグリップ7aにスロットルワイヤー17を介して接続されている。スロットルバルブ16aは、ハンドルグリップ7aを回すことで開度を調整できる。スロットル装置16には、前方からの走行風圧を利用して取り込んだ外気がエアクリーナ(図示せず)を介して送られてくるようになっており、スロットルバルブ16aの開度を調整することで、外から取り込まれてエンジンEへと流れる空気の吸気量を調整するようになっている。また、スロットルバルブ16aには、その開度を検出するためにスロットルポジションセンサ18が設けられている。
【0027】
このように構成されるスロットル装置16の下流側には、図2に示すようにインジェクタ19が設けられている。インジェクタ19は、燃料を噴射し、スロットル装置16からエンジンEへと流れる空気に燃料を混合するようになっている。また、エンジンEには、エンジンEへと導かれた混合気を点火する点火装置20が設けられており、この点火装置20により混合気を点火することでエンジンEが駆動するようになっている。これらインジェクタ19及び点火装置20は、制御装置であるECU21(電子制御ユニット)に接続されており、エンジン制御部22によって制御されている。このエンジン制御部22は、スロットルポジションセンサ18に接続されており、スロットルポジションセンサ18から得られるスロットルバルブ16aの開度に応じてインジェクタ19の噴射量及び点火装置20の点火時期を制御し、エンジンEの回転数、即ちエンジン回転数をハンドルグリップ7aの回動量に応じた回転数に制御している。
【0028】
ECU21は、通信部23と繋がっており、通信部23を介して信号を送受信できるようになっている。通信部23は、予め定められた範囲の通信域にある携帯機24と無線通信できるようになっている。携帯端末である携帯機24は、自動二輪車1の運転者又は同乗者が携帯できるような形状になっており、通信部23から送信される信号を受信すると、予め記憶される識別情報(例えばIDコード)を通信部23へと送信するようになっている。この識別情報は、自動二輪車1毎に別々のものが割り当てられており、ECU21は、通信部23から得られた識別情報が自動二輪車1に割り当てられた識別情報と一致するか否かを携帯機認証部25により判定する。即ち、携帯機認証部25は、携帯機24が自動二輪車1に割り当てられたものであることを確認する携帯機24の認証を行なう。この認証動作は、ECU21に接続されるエントリースイッチ26の操作に応じて開始するようになっており、認証が成立した後も一定の時間間隔で行なわれる。携帯機認証部25で携帯機24の認証が成立し、ECU21に接続されるメインスイッチ27が操作されると、スターターモータ(図示せず)によりエンジンEが始動し、エンジン制御部22がインジェクタ19の噴射量及び点火装置20の点火時期を制御してエンジンEを駆動する。
【0029】
また、携帯機24は、トランスポンダ型の電子キー機能を有していてもよい。この場合、ECU21は、携帯機24のキー部分が自動二輪車1に形成されるキー孔に差し込まれたことを検出すると、通信部23から送信要求信号を送信させる。携帯機24は、送信信号を受信することで通信部23に識別情報を送信する。これによって携帯機24による通信域での無線通信ができなくなっても、エンジンEを駆動することができる。
【0030】
また、ECU21には、回転数センサ28、ギアポジションセンサ29、車速センサ30、舵角センサ31及びスタンドスイッチ32が接続されている。回転数センサ28は、エンジンEに設けられており、エンジン回転数を検出するようになっている。ギアポジションセンサ29は、変速装置14に設けられており、1段速、2段速等のギアの位置を検出するようになっている。車速センサ30は、前輪2に設けられており、自動二輪車1の走行速度、即ち車速を検出するようになっている。舵角センサ31は、ヘッドパイプ6及びステアリングシャフト(図示せず)に設けられており、ハンドル7の舵角、即ちハンドル角を検出するようになっている。また、スタンドスイッチ32は、サイドスタンド11に設けられ、サイドスタンド11の上げ下げを検出するようになっている。
【0031】
なお、ハンドル角度を検出する舵角センサ31に代えて、ハンドル角度が予め定める範囲内にあるか否かを判断するセンサを用いてもよい。例えば、リミットスイッチのようなオンオフセンサをステアリングシャフトに設け、ハンドル角度が予め定める範囲内にある場合にセンサが信号を出力するようになっていてもよい。このようにして設けられる4つのセンサ28〜31、及びスタンドスイッチ32は、ECU21に接続されており、ECU21と共にハンドルロックシステム40を構成している
ハンドルロックシステム40は、図2に示すように、更にロック装置41を備えており、ロック装置41は、ステアリングダンパ42を備えている。ステアリングダンパ42は、図3に示すようにアッパーブラケット5の中央部分に取り付けられている。ステアリングダンパ42は、図4に示すように、シリンダ43を有する。シリンダ43は、長尺円筒状に形成されており、軸線方向左右両端が塞がれている。シリンダ43の外周面には、取付部材44が設けられている。取付部材44は、シリンダ43の外周面全周を把持するようになっており、シリンダ43は、この取付部材44を介してアッパーブラケット5に角変位可能に取り付けられている。
【0032】
このように取り付けられるシリンダ43は、アッパーブラケット5に沿って平行に配置されており、そこではロッド45が軸線方向に貫通している。このロッド45の両端は、シリンダ43から外方に突出しており、右側端部がメインフレーム8に揺動可能に設けられている。ロッド45の中央部分には、ピストン46が設けられている。このピストン46は、ロッド45を軸線方向に動かすことで、シリンダ43内を摺動できるようになっており、その外周面とシリンダ43の内壁との間は、密閉されている。このようにして設けられるピストン46により、シリンダ43内は、第1空間43a及び第2空間43bの2つの空間に分断されている。
【0033】
第1空間43a及び第2空間43bは、作動流体であるオイルで満たされ、連通路47で繋がっており、連通路47には、流量調整機構48が介在している。調整手段である流量調整機構48は、いわゆる流量調整弁であり、連通路47の開度を調整して、第1空間43aから第2空間43bへのオイルの流れ、及びその逆方向へのオイルの流れる流路抵抗を調整できるようになっている。
【0034】
このように構成されるステアリングダンパ42は、ハンドル7を反時計回りに回動させると、ハンドル7及びアッパーブラケット5と共にシリンダ43がステアリングシャフトを中心に回動する。ピストン46は、シリンダ43の回動に併せてシリンダ43内を左の方へと移動しようとして第1空間43aのオイルを押す。そうすると、第1空間43aのオイルが連通路47を介して第2空間43bへと押し出され、ピストン46が左の方へと動くことができるようになる(図4の一点鎖線参照)。逆に、ハンドル7を時計回りに回動させると、ピストン46は、シリンダ43の回動に併せてシリンダ43内を右の方へと移動しようとして第2空間43bのオイルを押す。そうすると、第2空間43bのオイルが連通路47を介して第1空間43aへと押し出され、ピストン46が右の方へと動くことができるようになる(図4の二点鎖線参照)。このように動作するステアリングダンパ42は、流路抵抗を増大させることでハンドル7の回動を抑制し、即ち、ハンドル7の回動を減衰し、キックバックの発生を防止することができる。
【0035】
また、このステアリングダンパ42では、流量調整機構48により連通路47の開度を調整することで、ハンドル7の回動方向における減衰力を調整することができる。即ち、流量調整機構48によりハンドル7の回動しやすさを調整することができ、連通路47の開度を大きくすると、ハンドル7が回動しやすくなり、連通路47の開度を小さくすると、ハンドルが回動しにくくなる。流量調整機構48により連通路47の開度をゼロにする、即ち連通路47を閉じると、ステアリングダンパ42内のオイルの行き来が止められる。オイルの行き来を止めると、ピストン46がシリンダ43内で動くことができなくなり、ハンドル7を回動させることができなくなる。即ち、ハンドル7の回動がロックされることになる。このように、ロック装置41は、流量調整機構48により連通路47を閉じることでハンドル7の回動をロックすることができるようになっている。このようにして流量調整機構48により連通路47を閉じることでハンドル7の回動をロックできるので、ハンドル7が回動可能な何れのハンドル角でもハンドル7の回動をロックすることができる。
【0036】
このようにハンドル7の回動をロックすべく連通路47を閉じる流量調整機構48は、ECU21に接続されており、ECU21によって制御されるようになっている。ECU21は、流量調整機構48を制御すべく、図2に示すような状態判定部49、及びロック制御部50を有している。状態判定部49は、回転数センサ28、ギアポジションセンサ29、車速センサ30及びスタンドスイッチ32から得られる情報のうち予め選択された少なくとも1つの情報に基づき自動二輪車1が走行停止状態にあるか否かを判定するようになっており、また舵角センサ31によりハンドル角が所定角度以上であるかを判定している。そして、ロック制御部50は、状態判定部49の判定結果に基づいて自動二輪車1が走行停止状態であると判定されると、連通路47を閉じてハンドル7の回動をロックする。また、状態判定部49は、車速センサ30から得られる情報から自動二輪車1の走行状態、例えば車速を検出し、ロック制御50は、連通路47の開度をこの車速に応じた開度にしてステアリングダンパ42の回動しやすさを調整している。例えば、車速が大きくなるとほど、ステアリングダンパ42が回動しにくいように流路抵抗を調整する。また、ロック解除状態から車速が予め定められる速度を越えるまでは、流路抵抗が最小となるように調整する。
【0037】
以下では、このように構成されるハンドルロックシステム40の動作処理であるロック処理及びロック解除処理について説明する。まず、ロック処理について、図5を参照しながら説明する。ロック処理は、携帯機24の認証が不成立であるとの第1の条件と、この第1の条件と異なる第2の条件とを含むロック条件が成立しているか否かをECU21が判定し、このロック条件が成立している場合に、ロック装置41を駆動させてハンドル7の回動をロックする処理である。このロック処理は、ECU21の携帯機認証部25において携帯機24の認証が成立すると開始するようになっており、ロック処理が開始すると、ステップS1へと移行する。なお、ロック処理は、メインスイッチ27を操作してエンジンEの駆動が停止したことを判断して開始するようにしてもよい。
【0038】
ステップS1では、第1の条件が成立するか否かを判定するために携帯機認証部25が通信部23から信号を発信させる。信号を発信すると、ステップS2へと移行する。ステップS2では、携帯機24の認証が不成立であるか否かを判定する。携帯機24は、通信部23からの信号を受信すると、識別情報を通信部23に送り返す。携帯機認証部25は、通信部23で受信した識別情報が自動二輪車1に割り当てられた識別情報と一致していると、携帯機24の認証が成立したと判定する。そうすると、ハンドル7の回動をロックせずにステップS1に戻り、所定時間経過後に再び通信部23から信号を発信する。
【0039】
逆に、携帯機24が通信部23の通信域から出る等して携帯機24からの識別情報を通信部23が受信できない場合に、携帯機認証部25は、携帯機24の認証が不成立であると判定する。また、携帯機24が通信不良等を生じたりして携帯機24からの識別情報を通信部23が受信できない場合、及び携帯機24からの識別番号が自動二輪車1に割り当てられたものと異なる場合も、携帯機認証部25は、携帯機24の認証が不成立であると判定する。携帯機24の認証が不成立であると判定されると、ステップS3へと移行する。
【0040】
ステップS3では、第2の条件が成立するか否かを判定する。この第2の条件には、自動二輪車1が走行停止状態であることが含まれており、予め定められた判定基準に基づき走行停止状態であるか否かを状態判定部49が判定する。判定基準としては、例えば、回転数センサ28によりエンジンEの回転数がゼロを検出すること(判定基準1)、ギアポジションセンサ29により検出されるギアの位置がニュートラルポジションであること(判定基準2)、車速センサ30で検出される車速がゼロであること(判定基準3)、及びスタンドスイッチ32によりサイドスタンド11が下げられていることが検出されていること(判定基準4)等がある。走行停止状態か否かの判定には、これら4つの判定基準1〜4のうち予め選択された少なくとも1つの判定基準が用いられる。なお、本実施形態では、判定基準1を用いて走行停止状態か否かを判定している。
【0041】
また、第2の条件には、ハンドル角が所定角度以上であることも含まれており、状態判定部49は、舵角センサ31で検出されるハンドル角が所定角度以上であるか否かを判定している。ハンドル角は、自動二輪車1が直進しているときの角度を基準(角度0度)とし、反時計回り(即ち、左回り)が正の方向、時計回り(即ち、右回り)が負の値としており、前記所定角度は、例えば、サイドスタンド11を下げて自動二輪車1を傾倒させた状態で立たせたときに自動二輪車1が安定した姿勢で自立できる角度である。そして、状態判定部49は、ハンドル角が所定角度以上にある状態が所定時間以上継続していると判定すると、LEDランプ等からなる表示装置51を点灯させてハンドル角が所定角度以上であることを運転者等に知らせる。なお、表示装置51は、メータ装置に設けられている。
【0042】
状態判定部49が、自動二輪車1が走行停止状態でない、又はハンドル角が所定角度以上でないと判定すると、第2の条件が不成立である判定される。そうすると、ステップS1へと戻り、所定時間経過後に再び通信部23から信号を発信する。逆に、状態判定部49が、自動二輪車1が走行停止状態であり、そしてハンドル角が所定角度以上であると判定すると、第2の条件が成立していると判定され、ステップS4へと移行する。
【0043】
ステップS4では、状態判定部49の判定結果を受けてロック制御部50がロック装置41の流量調整機構48を駆動して連通路47を閉じる。連通路47が閉じられることで、ハンドル7の回動がロックされる。このようにして、ハンドル7の回動がロックされると、ロック処理が終了する。
【0044】
このように構成されるハンドルロックシステム40は、携帯機24を携帯する運転者が自動二輪車1から離れて認証が不成立になると、ロック装置41を作動させてハンドル7の回動をロックする。即ち、運転者は、携帯機24を携帯したまま自動二輪車1から離れることでハンドル7の回動をロックできる。それ故、従来のようなハンドルロックをするための特別な作業、例えばキーを回すという煩わしい作業が必要なくなり、簡単にハンドル7の回動をロックすることができる。
【0045】
また、第2の条件は、自動二輪車1が走行停止状態と判定されることとなっている。そのため、運転者は、自動二輪車1を走行停止状態にする、例えば駐停止し、携帯機24を携帯したまま自動二輪車1から離れることで、ハンドル7の回動をロックさせることができる。これにより、従来技術のような煩わしい作業をすることなくハンドル7の回動をロックし、駐停止時の盗難防止を講ずることができる。また、第2の条件を判定基準に組み込むことで、車両から離れないとハンドル7がロックされないので、自動二輪車1を車庫に入れる時等でエンジンを停止しても、不所望にハンドル7がロックされることを防ぐことができる。
【0046】
次に、ロック解除処理について、図6を参照しながら説明する。ロック解除処理は、携帯機24の認証が成立している場合に、ロック装置41を駆動してハンドル7のロックを解除する処理である。ロック処理が終了した後、運転者がエントリースイッチ26を押すとロック解除処理が開始する。このロック解除処理が開始すると、ステップS11へと移行する。
【0047】
ステップS11では、携帯機24の認証が成立するか否かを判定するために携帯機認証部25が通信部23から信号を発信させる。信号を発信すると、ステップS12へと移行する。ステップS12では、携帯機24の認証が成立するか否かを判定する。携帯機24が通信域にない、又は通信部23で受信した識別情報が自動二輪車1に割り当てられた識別情報と一致していない等の場合、携帯機認証部25は、携帯機24の認証が不成立であると判定する。そうすると、ハンドル7のロックを解除せずにステップS1に戻り、所定時間経過後に再び通信部23から信号を発信する。逆に、携帯機24からの識別情報を通信部23が受信し、この識別情報が自動二輪車1に割り当てられた識別情報と一致している場合、携帯機認証部25は、携帯機24の認証が成立していると判定する。携帯機24の認証が成立していると判定されると、ステップS13へと移行する。
【0048】
ステップS13では、携帯機認証部25の認証結果を受けてロック制御部50がロック装置41の流量調整機構48を駆動して連通路47を開く。連通路47が開くことで、ハンドル7のロックが解除される。このようにして、ハンドル7のロックが解除されると、ロック解除処理が終了する。
【0049】
このように認証が成立するとハンドル7のロックを解除する構成であればよく、携帯機24のキー部分が車両に形成されるキー孔に差し込まれたことを判断して、ステップS11に進んでもよい。サイドスタンド11によりスタンドスイッチ32が動作されたこと、ハンドルグリップ7aが把持されたこと、クラッチ操作されたこと等、自動二輪車1を移動させるために必要な動作を判断して、ステップS11に進んでもよい。これによって、エントリースイッチ26を操作せずともロック解除させることができる。これにより、利便性が向上する。
【0050】
このように運転者は、携帯機24を携帯した状態で近づいて携帯機24の認証を行うことで、ハンドル7のロックを解除することができる。それ故、従来のようなハンドル7のロックを解除するための特別な作業、例えばキーを回すという煩わしい作業が必要なくなり、簡単にハンドル7のロックを解除することができる。
【0051】
ハンドルロックシステム40におけるロック処理では、ロック条件に第2の条件が含まれているので、携帯機24が通信不良を起こし、又は携帯機24の電池が放電する等して携帯機24と通信部23との間の通信ができなくなり、携帯機24の認証が不成立となっても、第2の条件が不成立であれば、ハンドルの回動がロックされない。即ち、単なる通信不良及び電池不足等に起因する不所望なロックを防ぐことができる。なお、携帯機24の電池が放電してしまった場合、携帯機24を通信部23に近接させることで携帯機24と通信部23との間でパッシブ方式での通信が可能となり、携帯機24の認証を行うことができ、電池不足のときにハンドル7の回動がロックしてもそのロックを解除することができるようになっている。
【0052】
また、走行停止状態の判定基準として、エンジンEの回転数がゼロである(判定基準1)、ギアの位置がニュートラルポジションである(判定基準2)、車速がゼロである(判定基準3)、及びサイドスタンド11が下げられている(判定基準4)ことのうち少なくとも1つが採用されている。判定基準1及び2を採用することで、自動二輪車1が走行駆動できない状態になるとハンドル7の回動がロックされる。判定基準3を採用することで、自動二輪車1が走行していない状態になるとハンドル7の回動がロックされるようにすることができる。また、判定基準4を採用することで、サイドスタンド11が下げられた状態になるとハンドル7の回動がロックされるようにすることができる。サイドスタンド11を下げるという動作は、自動二輪車1を駐停止する際に行う動作であり、サイドスタンド11が下げられている状態では、自動二輪車1は走行停止状態である。従って、判定基準4を採用することで、自動二輪車1が走行停止状態にある時にハンドルをロックすることができる。
【0053】
これらの判定基準1〜4は、駐停止時に行なう動作であり、4つの判定基準1〜4のうち何れの判定基準が採用されても、自動二輪車1を駐停止した時にハンドル7の回動をロックすることができるようになる。本実施形態では、判定基準1が予め選択されているが、判定基準1〜4のうち2つ以上の判定基準を採用することも可能で有り、2つ以上の判定基準を採用することが好ましく、走行停止状態の判定基準として4つの判定基準1〜4の全てを採用することが最も好ましい。
【0054】
第2の条件には、ハンドル角が所定角度以上であると判定されることが含まれてもよい。この場合、運転者がハンドル角を所定角度以上して駐停止の意思を表わすことで、その意思に基づいてハンドル7の回動をロックさせることができる。従って、駐停止の意思に応じてハンドル7の回動をロックすることができ、不所望なロックを防ぐことができる。また、自動二輪車1の場合、ハンドル角を所定角度以上にすることで自動二輪車1自体の姿勢が安定し、その安定した姿勢の状態でハンドル7の回動をロックすることができ、自動二輪車1の転倒等を防ぐことができる。
【0055】
また、ロック装置41は、何れのハンドル角でもハンドル7の回動をロックすることができるので、ハンドル角が所定角度以下であっても、ロック条件が成立すれば、何れの位置でもハンドル7の回動をロックすることができる。従って、従来技術のように予め定められたハンドルロック位置にハンドルを合わせる必要がなく、このような煩わしい作業を無くすことができ、簡単にハンドルの回動をロックすることができる。なお、第2の条件には、ハンドル角が所定角度以上であると判定されることが含まれていなくてもよく、その場合、所定角度未満のハンドル角であってもハンドル7の回動がロックされるようになる。
【0056】
更に、ハンドルロックシステム40では、従来から用いられるステアリングダンパ42を利用することで、ハンドル7の回動をロックするための装置を新たに設ける必要がない。
【0057】
なお、本実施形態では、ハンドル7の回動をロックする際、流量調整機構48により連通路47が完全に閉じられているが、連通路47を僅かに開いていてもよい。連通路47の開度が僅かであれば、第1空間43aと第2空間43bとの間のオイルの行き来が規制されるので、ハンドル7を回動させるために必要な力が大きくなり、ハンドル7を回動しにくくなる。それ故、連通路47を僅かに開いていてもハンドル7の回動がロックしたも同然となる。
【0058】
また、第2の条件に含まれる所定角度は、入力手段等を設けて変更できるようにしてもよい。これにより、ハンドル7を所望の角度に回動させた状態でハンドル7をロックすることができる。
【0059】
また、本実施形態のように携帯機24の認証が不成立であるか否かの判定(ステップS2)を第2の条件が成立するか否かの判定(ステップS3)の前に行なう必要はない。例えば、図7に示すように、ロック処理が開始すると、まずECU21は、第2の条件が成立するか否かを判定(ステップS21)し、第2の条件が成立すると判断すると、所定時間間隔毎に通信部23から信号を発信させる(ステップS22)。そして、ECU21は、携帯機24の認証が不成立であるか否かを判定(ステップS23)し、携帯機24から識別情報が受信できず認証が不成立であると、ハンドル7をロックする(ステップS24)。
【0060】
ステップS23にて、ECU21が携帯機24から識別情報を受信し認証が成立すると判定すると、所定時間経過するまで待って(ステップS25)、再び携帯機の24の認証が不成立か否かを判定(ステップS23)する。このように第2の条件の成立を判定してから、通信部23から信号を発信させることで、通信部23が走行中に継続して信号発信することを無くすことができる。これにより、信号発信回数を減らすことができ、ハンドルロックシステム40に係る電力消費量を減らすことができる。
【0061】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態のハンドルロックシステム40Aを示す図である。第2実施形態のハンドルロックシステム40Aは、第1実施形態のハンドルロックシステム40と構成が類似している。従って、第2実施形態のハンドルロックシステム40Aの構成については、第1実施形態のハンドルロックシステム40と異なる構成についてだけ説明し、同一の構成については、説明を省略する。第3実施形態のハンドルロックシステム40Bについても同様である。
【0062】
ハンドルロックシステム40Aは、ロック装置41Aを備えている。ロック装置41Aは、ステアリングダンパ42Aを備えている。ステアリングダンパ42Aは、図7に示すように、シリンダ43と、取付部材44と、ロッド45と、ピストン46Aを有している。ピストン46Aは、シリンダ43内を第1空間43a及び第2空間43bに分断するように配置されている。ピストン46Aには、連通孔47Aが形成されており、この連通孔47Aを介して第1空間43a及び第2空間43bが連通している。シリンダ43内には、この連通孔47Aへ抜き差しできるニードルピン52が設けられおり、このニードルピン52は、コイルばね53により連通孔47Aに向かって付勢されている。また、シリンダ43の外周面には、ソレノイド54が設けられており、このソレノイド54に電流を流すことで、コイルばね53に抗する電磁力がニードルピン52に作用するようになっている。シリンダ43の外周面には、非接触形のリニアポテンショメータ55が設けられ、このリニアポテンショメータ55によりロッド45の変位量を検出する。リニアポテンショメータ55は、ECU21に接続されており、ロッドの45の変位量に基づいてハンドル角を検出するようになっている。
【0063】
このように構成されるロック装置41では、ロック条件が成立していない状態では、ロック制御部50がソレノイド54に電流を流し、ニードルピン52がピストン46Aの連通孔47Aに入らないようにしている。それ故、第1空間43a及び第2空間43bのオイルが連通孔47Aを通って行き来することができる。その後、ロック条件が成立すると、それを受けてロック制御部50がソレノイド54に流す電流を流す。そうすると、コイルばね53によって付勢されたニードルピン52が連通孔47Aに挿入されて連通孔47Aが塞がれ、第1空間43aと第2空間43bとの間のオイルの行き来ができなくなる。そうすることで、ピストン46Aが動けなくなり、ハンドル7の回動がロックされる。
【0064】
このようにハンドル7の回動をロックすることができるハンドルロックシステム40Aは、第1実施形態のハンドルロックシステム40と同様のロック処理によりハンドル7の回動をロックし、また同様のロック解除処理によりハンドル7のロックを解除するようになっている。それ故、ハンドルロックシステム40Aは、第1実施形態のハンドルロックシステム40と同様の作用効果を奏する。
【0065】
[第3実施形態]
図9は、第3実施形態のハンドルロックシステム40Bを示す図である。第3実施形態のハンドルロックシステム40Bは、ロック装置41Bを備えており、このロック装置41Bは、ステアリングダンパ42Bを備えている。ステアリングダンパ42Bは、略扇形のケーシング43Bを有している。このケーシング43Bは、アッパーブラケット5に固定されており、その扇頂部には、ステアリングシャフト56が上下方向に貫通している。このステアリングシャフト56は、扇頂側の内壁に当接しており、それらの間が密閉されている。また、ステアリングシャフト56には、隔壁57が設けられており、この隔壁57は、ケーシング43Bの半径方向に延びている。隔壁57の先端部は、ケーシング43Bの扇端側の内壁に当接しており、それらの間は、密閉されている。このように配置される隔壁57により、ケーシング43B内は第1空間43aと第2空間43bとに分断される。第1空間43a及び第2空間43bは、流量調整機構48が介在する連通路47を介して繋がっている。
【0066】
このように構成されるステアリングダンパ42Bは、第1実施形態のステアリングダンパ42と同様に流量調整機構48により連通路47を閉じることで、隔壁57が動かなくなる。これによりステアリングシャフト56が動かなくなり、ハンドル7の回動がロックされる。逆に、流量調整機構48により連通路47を開くことで隔壁57が動くようになり、ハンドル7のロックが解除される。
【0067】
このようにハンドル7の回動をロックすることができるハンドルロックシステム40Bは、第1実施形態のハンドルロックシステム40と同様のロック処理によりハンドル7の回動をロックし、また同様のロック解除処理によりハンドル7のロックを解除するようになっている。それ故、ハンドルロックシステム40Bは、第1実施形態のハンドルロックシステム40と同様の作用効果を奏する。
[その他の実施形態]
第1乃至第3実施形態では、表示装置51によりハンドル角が所定角度以上であることを運転者に知らせるようになっているが、ハンドル角が所定角度以上になると音声で知らせるようになっていてもよく、またハンドル角が所定角度になると運転者にクリップ感を与えるようになっていてもよい。また、ハンドル7の回動をロックしたときに、ロック制御50によりランプ、又は指示器を点灯したり、またホーンを鳴らしたりして、ハンドル7の回動がロックされたことを知らせるようにしてもよい。
【0068】
ハンドルロックシステム40〜40Bのように、ハンドルロック装置41をステアリングダンパ42で実施した場合、ハンドル7の回動しやすさ(ダンパ減衰量)をECU21で制御可能であればよく、他の構造のステアリングダンパでもよい。例えば、第1乃至第3実施形態では、サイドスタンド11が採用されているが、センタースタンドを採用しても同様の作用効果を奏することができる。さらに、第1乃至第3実施形態では、携帯機24は、電子キーとしているが、単なる無線通信機であってもよく、無線通信可能なものであればよい。また、携帯機24は、上述するようなトランスポンダ型の通信機でなく、単なる送信機であってもよい。
【0069】
第1乃至第3実施形態では、4つのセンサ28〜31とスタンドスイッチ32を備えているが、必ずしも全てのセンサ28〜31及びスタンドスイッチ32を備えている必要はなく、走行停止状態を判定するのに必要なセンサ28〜31とスタンドスイッチ32を備えていればよい。また、走行停止状態を検出するためのセンサとして、GPSや加速センサを用いてもよい。GPSの場合、自動二輪車1の位置を取得して、その位置と経過時間途から走行停止状態であるか否かを判定でき、加速センサの場合、自動二輪車1の加速度から走行停止状態であるか否かを判定できる。
【0070】
また、第1乃至第3実施形態では、認証不成立とともに走行停止時状態の両方の条件を満足すると、ECU21がロック装置41をロック制御するようになっているが、第2の条件が成立せずとも認証不成立の条件を充足しただけでロック制御するようになっていてもよい。また、第2の条件は、走行停止状態、所定値以上のハンドル角度の他、自動二輪車1から運転者が離れたことをであってもよい。自動二輪車1から運転者が離れたことは、例えば、ハンドル7の把持状態を検出するセンサ、シート13に運転者が着座したことを検出するセンサ、サスペンションのストローク量を検出するセンサ、及びヘルメット収納状態を検出するセンサ等のうち何れかを用いることで検出することができる。このように自動二輪車1から運転者が離れたことを第2の条件に含めることで、運転者が自動二輪車1の近くにいるにもかかわらず、不所望なロック制御を防ぐことができる。
【0071】
また、走行停止状態か否かは、自動二輪車1の走行を停止する一連の動作、例えば、ブレーキ操作、クラッチ操作、ニュートラルギヤへの切替操作、及びエンジン停止動作がこの手順で行なわれたか否かで判断してもよい。このような手順の一致を判断することで、より確実に自動二輪車1が走行停止状態にあるか否かを判断できる。
【0072】
更に、第1の条件及び第2の条件を判断してから所定時間経過後に、ハンドルロック動作が行なわれてもよい。また、第1の条件及び第2の条件を充足した後でハンドルロック動作が行われるまでの時間について、運転者が任意に設定可能に構成されてもよい。これによって、ハンドル7のロックを開始するタイミングを運転者の好みに合わせることができる。それ故、利便性が向上する。
【0073】
第1乃至第3実施形態では、油圧式のステアリングダンパ42,42A,42Bを採用しているけれども、油圧式のものに限らず、電気駆動式ステアリングダンパをハンドルロック装置41に採用してもよい。また、第1乃至第3実施形態では、ハンドルロック装置41としてステアリングダンパ42が用いられたが、ステアリングダンパ以外のロック装置を用いてもよい。例えば、ステアリングシャフトに嵌合及び嵌合解除可能で、ステアリングシャフトの角変位を物理的に係止及び係止解除するための電気駆動アクチュエータであってもよい。
【0074】
また、第1乃至第3実施形態では、携帯機認証部25がECU21に含まれているが、携帯機認証部25は、ECU21と別ユニットであってもよい。
【0075】
更に、第1乃至第3実施形態では、ハンドルロックシステム40〜40Bを備える乗り物の一例として、スポーツタイプの自動二輪車を示しているが、クルーザータイプの自動二輪車であってもよく、またスクータータイプの自動二輪車であってもよい。また、パーソナルウォータークラフト(Personal Water Craft:略称PWC)のような小型船舶であってもよく、全地形型車両(All Terrain Vehicle:略称ATV)のような鞍乗型の四輪車であってもよい。
【0076】
即ち、ハンドルロックシステム40〜40Bは、携帯機24からの識別信号認証に応じてエンジン駆動が許可され、走行方向が入力される操舵手段と操舵手段をロックするハンドルロック装置41を有する乗物全般に用いることができる。
【0077】
なお、本発明は、実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上のように、本発明は、乗り物のハンドルの回動をロックするためのハンドルロックシステムに適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 自動二輪車
7 ハンドル
21 ECU
22 エンジン制御部
23 通信部
24 携帯機
25 携帯機認証部
32 スタンドスイッチ
40,40A,40B ハンドルロックシステム
41,41A,41B ロック装置
42,42A,42B ステアリングダンパ
48 流量調整機構
49 状態判定部
50 ロック制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が携帯可能な携帯端末と、
乗り物に設けられ、前記携帯端末と無線通信して認証を行う制御装置と、
前記制御装置により制御され、前記乗り物のハンドルの回動をロックするロック装置とを備え、
前記制御装置は、前記認証が不成立であるとの第1の条件を含むロック条件が成立した場合に前記ロック装置を制御して前記ハンドルの回動をロックするロック制御部を有していることを特徴とするハンドルロックシステム。
【請求項2】
前記ロック条件は、第1の条件以外の所定の第2の条件を含むことを特徴とする請求項1に記載のハンドルロックシステム。
【請求項3】
前記第2の条件は、前記乗り物が走行停止状態であることを含むことを特徴とする請求項2に記載のハンドルロックシステム。
【請求項4】
前記走行停止状態は、スタンドが下げられた状態を含むことを特徴とする請求項3に記載のハンドルロックシステム。
【請求項5】
前記第2の条件は、前記ハンドルの舵角が所定角度以上の状態であることを含むことを特徴とする請求項2乃至4の何れか1つに記載のハンドルロックシステム。
【請求項6】
前記ロック装置は、前記ハンドルの回動を抑制するステアリングダンパと、該ステアリングダンパ内の作動流体の流れを調整する流量調整機構とを備え、
前記制御装置は、前記流量調整機構を制御して前記ステアリングダンパ内の作動流体の流れを規制することで前記ハンドルをロックすることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載のハンドルロックシステム。
【請求項7】
前記ロック装置は、前記ステアリングダンパ内の作動流体の流れを規制することで前記ハンドルの舵角が何れの角度にあるときでも前記ハンドルの回動をロックできるようになっており、
前記ロック制御部は、前記ロック条件が成立したときの舵角で前記ハンドルの回動をロックするようになっていることを特徴とする請求項6に記載のハンドルロックシステム。
【請求項8】
運転者が携帯可能な携帯端末と、
乗り物に設けられ、前記携帯端末と無線通信して認証を行う制御装置と、
前記乗り物のハンドルの回動しやすさを調整可能なステアリングダンパと、
前記制御装置により制御され、前記乗り物の走行状態に応じてステアリングダンパの回転しやすさを調整する調整手段とを備え、
前記制御装置は、前記認証が不成立であると、前記調整手段により前記ハンドルを回動しにくくして前記ハンドルをロック状態にし、前記ロック状態で前記認証が成立すると、前記調整手段により前記ハンドルの回動しやすくして前記ハンドルを非ロック状態にすることを特徴とするハンドルロックシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−106166(P2011−106166A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262236(P2009−262236)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】