説明

ハードコートフィルム及びハードコートフィルムの製造方法

【課題】保護シートを必要としない、硬度、耐擦傷性に優れた、特に鉛筆硬度に優れたハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】透明基材フィルム10の一面側にハードコート層20を設けたハードコートフィルム1であって、前記ハードコート層の透明基材フィルムとは反対側の面はJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有することを特徴とする、ハードコートフィルム、及び当該ハードコートフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ等の表面を保護する目的等で使用される、透明基材フィルム上にハードコート層を設けたハードコートフィルム及びハードコートフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、プロジェクションディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の画像表示装置における画像表示面は、取り扱い時に傷がつかないように、耐擦傷性を付与することが要求される。これに対して、基材フィルムにハードコート(HC)層を設けたハードコートフィルムや、更に反射防止性や防眩性等光学機能を付与したハードコートフィルム(光学積層体)を利用することにより、画像表示装置の画像表示面の耐擦傷性を向上させることが一般になされている。
【0003】
ハードコート層の硬度を向上させる方法として、無機微粒子を添加する方法があり、一般に、基材フィルム上に無機微粒子を添加したハードコート層を設けたハードコートフィルムが製造されている。
【0004】
一般に、ハードコートフィルムの硬度及び耐擦傷性の評価にはJIS K5600−5−4(1999)に規定するような鉛筆硬度試験が採用されている。
【0005】
特許文献1では、透明基材上に、光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を含む組成物を硬化させた中間層を設け、当該中間層上に更にハードコート層を設け、鉛筆硬度3Hの達成を図っている。
【0006】
また、ハードコートフィルム等の製品は、製造工程での輸送時等において、衝撃等により表面に傷がついてしまうことがあり、このような傷を防止するための保護シートを用いることがある。しかし、工程簡略化、製造コスト削減の点から、このような保護シートによる保護の工程を省き、保護シートのコストを削減することが要求されている。
【0007】
【特許文献1】特開2008−107762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、保護シートを必要としない、硬度、耐擦傷性に優れたハードコートフィルム、特に鉛筆硬度に優れたハードコートフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記問題点について鋭意検討を重ねた結果、透明基材フィルム上に設けたハードコート層がJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有することにより、優れた鉛筆硬度を発揮できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、上記問題点を解決する本発明の特徴は、以下の点である。
【0010】
本発明に係るハードコートフィルムは、透明基材フィルムの一面側にハードコート層を設けたハードコートフィルムであって、前記ハードコート層の透明基材フィルムとは反対側の面はJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有することを特徴とする。
【0011】
上記研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有することにより、ハードコート層表面の鉛筆硬度に特に優れる。
【0012】
本発明のハードコートフィルムの好適な実施形態においては、前記ハードコート層のJIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(500g荷重)の硬度が、3H以上とすることも可能である。
【0013】
本発明に係る第一のハードコートフィルムの製造方法は、上記ハードコートフィルムの製造方法であって、透明基材フィルムの一面側又はJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番を有する研磨シートの研磨材側に、光硬化性バインダー成分を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とする工程、
前記塗膜を乾燥させながら、又は乾燥させた後に、前記塗膜の前記透明基材フィルム又は研磨シートとは反対側に、JIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番を有する研磨シートの研磨材側の面又は透明基材フィルムの一面を貼り合せ、透明基材フィルム/乾燥させた塗膜/研磨シートの三層構造にする工程、
前記三層構造形成後の前記透明基材フィルム側から前記乾燥させた塗膜に光照射し、当該乾燥させた塗膜を硬化させ、ハードコート層とする工程、
前記ハードコート層から前記研磨シートを剥離し、ハードコート層の透明基材フィルムとは反対側の面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与する工程を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る第二のハードコートフィルムの製造方法は、上記ハードコートフィルムの製造方法であって、基材の一面側又はJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番を有する研磨シートの研磨材側に、転写型用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とする工程、
次いで、前記塗膜を乾燥させながら、又は乾燥させた後に、前記塗膜の前記基材又は研磨シートとは反対側に、前記研磨シートの研磨材側の面又は基材の一面を貼り合せ、基材/乾燥させた塗膜/研磨シートの三層構造にする工程、
次いで、前記三層構造形成後の乾燥させた塗膜を硬化させ、当該硬化させた塗膜から前記研磨シートを剥離し、当該塗膜の基材とは反対側の面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与することで、基材上にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有する表面粗さ転写層を設けてなる転写型を得る工程、
次いで、透明基材フィルムの一面側又は前記転写型の前記表面粗さ転写層側に、光硬化性バインダー成分を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とする工程、
次いで、前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜を乾燥させながら、又は乾燥させた後に、当該塗膜の前記透明基材フィルム又は前記転写型とは反対側に、前記転写型の前記表面粗さ転写層側の面又は透明基材フィルムの一面を貼り合せ、透明基材フィルム/乾燥させた塗膜/転写型の三層構造にする工程、
次いで、前記転写型を含む三層構造形成後の前記透明基材フィルム側から前記乾燥させた塗膜に光照射し、当該乾燥させた塗膜を硬化させ、ハードコート層とする工程、
次いで、前記ハードコート層から前記転写型を剥離し、ハードコート層の透明基材フィルムとは反対側の面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与する工程を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る第三のハードコートフィルムの製造方法は、上記ハードコートフィルムの製造方法であって、基材の一面側又はJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番を有する研磨シートの研磨材側に、転写型用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とする工程、
次いで、前記塗膜を乾燥させながら、又は乾燥させた後に、前記塗膜の前記基材又は研磨シートとは反対側に、前記研磨シートの研磨材側の面又は基材の一面を貼り合せ、基材/乾燥させた塗膜/研磨シートの三層構造にする工程、
次いで、前記基材/乾燥させた塗膜/研磨シートの三層構造形成後の乾燥させた塗膜を硬化させ、当該硬化させた塗膜から前記研磨シートを剥離し、当該塗膜の基材とは反対側の面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与することで、基材上にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有する表面粗さ転写層を有する第一世代転写型を得る工程、
次いで、前記基材と同じか又は異なる第二の基材の一面側又は前記第一世代転写型の前記表面粗さ転写層側に、前記転写型用硬化性樹脂組成物と同じか又は異なる転写型用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とし、当該塗膜を乾燥させながら、又は乾燥させた後に、当該塗膜の前記第二の基材又は第一世代転写型とは反対側に、前記第一世代転写型の前記表面粗さ転写層側の面又は第二の基材の一面を貼り合せ、第二の基材/乾燥させた塗膜/第一世代転写型の三層構造にし、当該第一世代転写型を含む三層構造形成後の乾燥させた塗膜を硬化させ、当該硬化させた塗膜から前記第一世代転写型を剥離し、当該塗膜の第二の基材とは反対側の面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与することで第二の基材上にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有する表面粗さ転写層を設けてなる第二世代転写型を得る工程、
必要に応じ、前記第二世代転写型と同じ工程を繰り返して最新世代転写型を得る工程、
透明基材フィルムの一面側又は第二世代を含む前記最新世代転写型の前記表面粗さ転写層側に、光硬化性バインダー成分を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とする工程、
次いで、前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜を乾燥させながら、又は乾燥させた後に、当該塗膜の前記透明基材フィルム又は前記最新世代転写型とは反対側に、前記最新世代転写型の前記表面粗さ転写層側の面又は透明基材フィルムの一面を貼り合せ、透明基材フィルム/乾燥させた塗膜/最新世代転写型の三層構造にする工程、
次いで、前記最新世代転写型を含む三層構造形成後の前記透明基材フィルム側から前記乾燥させた塗膜に光照射し、当該乾燥させた塗膜を硬化させ、ハードコート層とする工程、
次いで、前記ハードコート層から前記最新世代転写型を剥離し、ハードコート層の透明基材フィルムとは反対側の面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与する工程を含むことを特徴とする。
【0016】
上記第三のハードコートフィルムの製造方法において、第二世代を含む前記最新世代転写型として、奇数回世代転写型を得て、
次いで、当該奇数回世代転写型を用いてハードコートフィルムを得てもよい。
【0017】
上記第三のハードコートフィルムの製造方法において、第二世代を含む前記最新世代転写型として、偶数回世代転写型を得て、
次いで、当該偶数回世代転写型を用いてハードコートフィルムを得てもよい。
【0018】
JIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有する研磨シートを用いることにより、容易に当該表面粗さをハードコート層に付与し、ハードコート層の硬度、耐擦傷性、特に鉛筆硬度を向上させることができる。
【0019】
本発明において「ハードコート層」とは、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(500g荷重)で「H」以上の硬度を示すものを意味する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るハードコートフィルムは、上記JIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有することにより、鉛筆硬度に特に優れ、保護シートによる表面保護の工程を省き、製造コストを削減することが可能である。さらに、ハードコートフィルム表面に鉛筆による記録及び消しゴムによる当該記録の消去も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、まず本発明に係るハードコートフィルムについて説明し、次いで当該ハードコートフィルムの必須構成要素である透明基材フィルム、ハードコート層について順に説明する。
【0022】
本発明において、研磨シートとは、JIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有するJIS R6251の研磨布、JIS R6252の研磨紙、及びJIS R6253の耐水研磨紙よりなる群から選ばれる1種以上を意味する。
本発明において、微粒子の平均粒径とは、溶液中の当該粒子を動的光散乱方法で測定し、粒径分布を累積分布で表したときの50%粒子径(d50 メジアン径)を意味する。当該平均粒径は、日機装(株)製のMicrotrac粒度分析計又はNanotrac粒度分析計を用いて測定することができる。
上記微粒子は、凝集粒子であっても良く、凝集粒子である場合は、二次粒径が上記範囲内であれば良い。
本発明において、(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートを表す。
本発明において、「ハードコート層」とは、一般にJISK5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験(500g荷重)で「H」以上の硬度を示すものである。
また、本発明の光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。
本発明において、分子量とは、分子量分布を有する場合には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である重量平均分子量を意味し、分子量分布を有しない場合には、化合物そのものの分子量を意味する。
【0023】
また、本発明において膜厚とは乾燥時の膜厚(乾燥膜厚)であり、膜の底面から膜の最高点までの厚さを意味する。膜厚の測定は、公知の膜厚計を用いて行えばよく、例えば、(株)ミツトヨのデジタルシックネステスターで測定することができる。具体的な測定方法としては、例えば、透明基材フィルムの膜厚を測定し、ハードコート層を形成後に前記透明基材フィルムとハードコート層を合わせた膜厚を測定し、後者の透明基材フィルムとハードコート層を合わせた膜厚から透明基材フィルムのみの膜厚を差し引いた値がハードコート層の膜厚となる。
【0024】
I.ハードコートフィルム
本発明に係るハードコートフィルムは、透明基材フィルムの一面側にハードコート層を設けたハードコートフィルムであって、
前記ハードコート層の透明基材フィルムとは反対側の面はJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有することを特徴とする。
【0025】
図1は本発明に係るハードコートフィルム1を模式的に示した断面図である。透明基材フィルム10の一面側にハードコート層20が設けられており、ハードコート層20の表面は、JIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有している。
【0026】
本発明に係るハードコートフィルムは、上述のようにハードコート層の表面がJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有している。当該表面粗さにより、硬度及び耐擦傷性に優れ、特に鉛筆硬度に優れる。
この様に鉛筆硬度に優れるため、本発明に係るハードコートフィルムは、製造時や輸送時の表面への衝撃に強く、ハードコートフィルム表面に保護シートを設ける必要が無い。そのため、保護シートを設ける工程やコストが不要となり、工程の簡略化、及び製造コストの削減が可能となる。
【0027】
また、鉛筆を用いた前記ハードコート層表面への記録、及び消しゴムによる当該記録の消去が可能であり、鉛筆による記録媒体(記録手段)としての利用も可能である。
【0028】
ハードコートフィルムの透明性(光透過性)の点から、JIS R6001に規定する研磨材の粒度1200番〜15000番が好ましい。
ハードコートフィルムの耐スチールウール性の点から、JIS R6001に規定する研磨材の粒度120番〜1200番が好ましい。
【0029】
本発明のハードコートフィルムの好適な実施形態においては、前記ハードコート層のJIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(500g荷重)の硬度が、3H以上とすることも可能であり、より好ましくは4H、さらに好ましくは5Hとすることも可能である。
【0030】
以下、本発明に係るハードコートフィルムの構成要素である透明基材フィルム及びハードコート層について順に説明する。
【0031】
1.透明基材フィルム
透明基材フィルムは、透明性(光透過性)の高いプラスチックフィルム又はシートであり、光学積層体の透明基材として用い得る物性を満たすものであれば特に限定されることはなく、適宜選んで用いることができる。
通常、光学積層体に用いられる基材フィルムには、透明、半透明、無色又は有色を問わないが、光透過性が要求される。なお、光透過率の測定は、紫外可視分光光度計(例えば、(株)島津製作所製 UV−3100PC)を用い、室温、大気中で測定した値を用いる。
【0032】
本発明においては、透明基材フィルムの厚さは適宜選択して用いることができるが、ハードコートフィルムの表面を割れにくく、且つ、硬度を付与する点から、10〜200μmの透明基材を用いることが好ましく、30〜150μmであることがより好ましい。
【0033】
透明基材フィルムの材料として好ましいものとしては、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、アクリレート系ポリマー、又はポリエステルを主体とするものが挙げられる。ここで、「主体とする」とは、基材構成成分の中で最も含有割合が高い成分を示すものである。
【0034】
セルロースアシレートの具体例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート等が挙げられる。
シクロオレフィンポリマーとしては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体樹脂等が挙げられ、より具体的には、日本ゼオン(株)製のゼオネックスやゼオノア(ノルボルネン系樹脂)、住友ベークライト(株)製 スミライトFS−1700、JSR(株)製 アートン(変性ノルボルネン系樹脂)、三井化学(株)製 アペル(環状オレフィン共重合体)、Ticona社製の Topas(環状オレフィン共重合体)、日立化成(株)製 オプトレッツOZ−1000シリーズ(脂環式アクリル樹脂)等が挙げられる。
ポリカーボネートの具体例としては、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の脂肪族ポリカーボネート等が挙げられる。
アクリレート系ポリマーの具体例としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。
ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
【0035】
本発明に用いられる透明基材フィルムとして、最も透明性に優れた材料は、セルロースアシレートであり、中でもトリアセチルセルロースを用いることが好ましい。
トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)は、可視光域380〜780nmにおいて、平均光透過率を50%以上とすることが可能な光透過性基材である。基材フィルムの平均光透過率は70%以上、更に85%以上であることが好ましい。
TACフィルムは、光学的等方性を有するため、液晶ディスプレイ用途の場合においても好ましく用いることができる。
【0036】
尚、本発明に於けるトリアセチルセルロースとしては、純粋なトリアセチルセルロース以外に、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートの如くセルロースとエステルを形成する脂肪酸として酢酸以外の成分も併用した物であっても良い。又、これらトリアセチルセルロースには、必要に応じて、ジアセチルセルロース等の他のセルロース低級脂肪酸エステル、或いは可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸收剤等の各種添加剤が添加されていても良い。
【0037】
また、本発明においては、TACフィルムに表面処理(例、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよく、プライマー層(接着剤層)を形成してもよい。本発明における透明基材フィルムは、これらの表面処理及びプライマー層も含めたものをいう。従って、プライマー層のみに上記特定の樹脂が浸透している場合も、透明基材フィルムに上記特定の樹脂が浸透している場合に含める。
【0038】
2.ハードコート層
本発明のハードコート層は、前記透明基材フィルムの一面側に設けられる層であって、透明基材フィルムとは反対側の面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有している。当該ハードコート層は、光硬化性バインダー成分を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、当該組成物にはバインダー成分の他にも硬度等の機能性をハードコート層に付与することを考慮して、微粒子、防汚剤、帯電防止剤等の添加剤及び溶剤等のその他の成分が含まれていても良い。
【0039】
ハードコート層の膜厚は、3〜30μmであることが好ましく、更に5〜20μmであることが好ましい。3μmより薄い場合、硬度が不十分となる恐れがあり、好ましくない。30μm超過の場合、カールやクラックが発生する恐れがあり、好ましくない。
【0040】
以下、硬化してハードコート層となるハードコート層用硬化性樹脂組成物に含まれるバインダー成分、必要に応じて適宜用いられる微粒子、溶剤、及び重合開始剤等のその他の成分について説明する。
【0041】
(バインダー成分)
バインダー成分は、光硬化性基を有する光硬化性バインダー成分を含み、光により当該光硬化性基が架橋反応し、バインダー成分間や後述する反応性無機微粒子との間に網目構造が形成され硬化する。また、ハードコート層のバインダー成分は少なくとも前記光硬化性バインダー成分を含み、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、当該成分に加えて、熱硬化性バインダー成分を含んでいても良い。
ハードコート層用硬化性樹脂組成物に含まれるバインダー成分は、その光硬化性基の一部又は全部が架橋反応に使用され、硬化するため、ハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物であるハードコート層に含まれるバインダー成分とは厳密には異なる。
【0042】
バインダー成分は、十分な架橋性を得るために、光硬化性基を1分子あたり3つ以上有することが好ましい。当該光硬化性基としては、光硬化性不飽和基であり、特に好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合及びエポキシ基等が挙げられる。
【0043】
光硬化性基は、光硬化性を有すれば、後述する反応性無機微粒子の反応性官能基と同じであっても異なっていても良い。
【0044】
バインダー成分としては、光硬化性基を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマー、及びポリマー等の硬化性有機樹脂が好ましく、塗膜とした時に光が透過する透光性のものが好ましく、紫外線又は電子線で代表される電離放射線により硬化する樹脂である電離放射線硬化性樹脂、その他公知の硬化性樹脂などを要求性能などに応じて適宜採用すればよい。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系などが挙げられる。
【0045】
バインダー成分として、1種又は2種以上のバインダー成分を用いることができる。
【0046】
光硬化性バインダー成分としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンヘキサアクリレート、及びこれらの変性体が挙げられる。
尚、変性体としては、EO(エチレンオキサイド)変性体、PO(プロピレンオキサイド)変性体、CL(カプロラクトン)変性体、及びイソシアヌル酸変性体等が挙げられる。
バインダー成分としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが特に好ましい。
【0047】
熱硬化性バインダー成分としては、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、及びポリイミド等が挙げられる。
【0048】
(その他の成分)
ハードコート層用硬化性樹脂組成物には、上記成分のほかに、更に微粒子、溶剤、重合開始剤、帯電防止剤、防眩剤を適宜添加することもできる。更に、反応性又は非反応性レベリング剤、各種増感剤等の各種添加剤が混合されていても良い。帯電防止剤及び/又は防眩剤を含む場合には、本発明のハードコート層に、更に帯電防止性及び/又は防眩性を付与できる。
【0049】
(微粒子)
ハードコート層用硬化性樹脂組成物に微粒子を含有させることにより、当該ハードコート層用硬化性樹脂組成物が硬化したハードコート層に硬度を付与することができる。
【0050】
微粒子は平均粒径が1〜100nmであることが透明性の点から好ましい。平均粒径がこの範囲であれば、微粒子は凝集粒子であっても良く、凝集粒子である場合は、二次粒径が上記範囲内であれば良い。微粒子の平均粒径が1〜100nmとすることにより、透明性を確保しながら、ハードコート層に硬度を付与すること可能となる。
【0051】
また、微粒子は、透明性を損なうことなく、前記バインダー成分のみを用いた場合の復元率を維持しつつ、硬度を向上させる点から、粒径分布が狭く、単分散であることが好ましい。
【0052】
微粒子のハードコート層用硬化性樹脂組成物における含有量は、用いるバインダー成分等に合わせて適宜、調節すれば良いが、ハードコート層用硬化性樹脂組成物の全固形分に対し、30〜70重量%であることが硬度向上の点から好ましい。
【0053】
微粒子は単一の材質や単一の平均粒径のものだけでなく、材質や平均粒径の異なるものを2種類以上組み合わせて用いても良い。2種類以上組み合わせて用いる場合は、各粒子の平均粒径が1〜100nm以内で且つ各粒子のハードコート層用硬化性樹脂組成物の全固形分に対する合計重量%が30〜70重量%となることが好ましい。
【0054】
微粒子は無機微粒子でも有機微粒子でも良いが、硬度付与の観点から無機微粒子であることが好ましい。
【0055】
無機微粒子としては、例えば、シリカ(SiO)、酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物微粒子、フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物微粒子などが挙げられる。金属微粒子、金属硫化物微粒子、金属窒化物微粒子等を用いても良い。
【0056】
硬度が高い点からは、シリカ、酸化アルミニウムが好ましい。帯電防止性、導電性を付与したい場合には、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ等を適宜選択して用いることができる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
無機微粒子の表面には通常、無機微粒子内ではこの形態で存在できない基を有する。これら表面の基は通常、相対的に反応しやすい官能基である。例えば、金属酸化物の場合には、例えば、水酸基及びオキシ基、例えば、金属硫化物の場合には、チオール基及びチオ基、又は例えば、窒化物の場合には、アミノ基、アミド基及びイミド基を有する。
【0057】
有機微粒子としては、例えば、プラスチックビーズを挙げることができる。プラスチックビーズとしては、具体例としては、ポリスチレンビーズ、メラミン樹脂ビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ベンゾグアナミンビーズ、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合ビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ等が挙げられる。上記プラスチックビーズは、その表面に疎水性基を有することが好ましく、例えば、スチレンビーズを挙げることができる。
【0058】
前記無機微粒子は、当該微粒子表面に当該粒子同士又は前記バインダー成分との間で架橋反応し、共有結合が形成可能な反応性官能基を少なくとも粒子表面の一部に有する反応性無機微粒子であることが好ましい。反応性無機微粒子同士又は反応性無機微粒子と前記バインダー成分の間で架橋反応することにより、ハードコート層の硬度を更に向上させることができる。
【0059】
前記反応性無機微粒子には、1粒子あたりコアとなる無機微粒子の数が2つ以上のものも含まれる。また、反応性無機微粒子は、粒径を小さくすることにより含有量に対して、ハードコート層のマトリクス内での架橋点を高めることができる。
前記反応性無機微粒子は、ハードコート層に更に機能を付与するものであっても良く、目的に合わせて適宜選択して用いる。
【0060】
本発明の反応性無機微粒子は、中空粒子のような粒子内部に空孔や多孔質組織を有する粒子よりも、粒子内部に空孔や多孔質組織を有しない中実粒子を用いることが硬度向上の点から好ましい。
【0061】
反応性無機微粒子も前記バインダー成分と同様に、その反応性官能基の一部又は全部が架橋反応に使用され、硬化するため、ハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物であるハードコート層に含まれる反応性無機微粒子とは厳密には異なる。
【0062】
反応基官能基としては、上記バインダー成分で記載した光硬化性基と同様のものが挙げられ、反応性官能基と光硬化性基は同一であっても異なっていても良い。
【0063】
反応性無機微粒子は従来公知のものを用いればよく、例えば、市販品として、反応性シリカ微粒子(商品名HC−601、(株)ADEKA製)、(商品名KZ7537、JSR(株)製)を用いることができる。
【0064】
(溶剤)
溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、イソブタノール、メチルグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、メチルグリコールアセテート、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ニトロメタン、N―メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物;ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、テトラクロルエタン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレン等のその他の物;又はこれらの混合物が挙げられる。
ハードコートフィルムの硬度を向上できる点から、MIBK、IPA、ノルマルブタノール及びPGMEが好ましく用いられる。
また、透明基材フィルムがTACフィルムの場合、密着性を向上できる点からMEK、酢酸メチル、酢酸エチル、シクロヘキサノン及びアセトンが好ましく用いられる。
【0065】
(重合開始剤)
本発明においては、上記ラジカル重合性官能基やカチオン重合性官能基の開始又は促進させるために、必要に応じてラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等を適宜選択して用いても良い。これらの重合開始剤は、光照射及び/又は加熱により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
【0066】
ラジカル重合開始剤は、光照射及び/又は加熱によりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。例えば、光ラジカル重合開始剤としては、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N−アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N−アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等が挙げられ、更に具体的には、1,3−ジ(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651、チバ・ジャパン(株)製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名イルガキュア184、チバ・ジャパン(株)製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(商品名イルガキュア369、チバ・ジャパン(株)製)、ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)(商品名イルガキュア784、チバ・ジャパン(株)製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
また、カチオン重合開始剤は、光照射及び/又は加熱によりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。カチオン重合開始剤としては、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、(η−ベンゼン)(η−シクロペンタジエニル)鉄(II)等が例示され、さらに具体的には、ベンゾイントシレート、2,5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシフタル酸イミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
ラジカル重合開始剤としても、カチオン重合開始剤としても用いられるものとしては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示され、更に具体的には、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム等のヨードニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム等のスルホニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のスルホニウム塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等の2,4,6−置換−1,3,5トリアジン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
(帯電防止剤)
帯電防止剤の具体例としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜第3アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基などのアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系などの両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系などのノニオン性化合物、スズ及びチタンのアルコキシドのような有機金属化合物及びそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられ、さらに上記に列記した化合物を高分子量化した化合物が挙げられる。また、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基、又は金属キレート部を有し、且つ、電離放射線により重合可能なモノマー又はオリゴマー、或いは電離放射線により重合可能な重合可能な官能基を有する且つ、カップリング剤のような有機金属化合物等の重合性化合物もまた帯電防止剤として使用できる。
【0070】
また、前記帯電防止剤の他の例としては、導電性微粒子が挙げられる。当該導電性微粒子の具体例としては、金属酸化物からなるものを挙げることができる。そのような金属酸化物としては、ZnO(屈折率1.90、以下、カッコ内の数値は屈折率を表す。)、CeO(1.95)、Sb(1.71)、SnO(1.997)、ITOと略して呼ばれることの多い酸化インジウム錫(1.95)、In(2.00)、Al(1.63)、アンチモンドープ酸化錫(略称;ATO、2.0)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(略称;AZO、2.0)等を挙げることができる。前記導電性微粒子の平均粒径は、0.1nm〜0.1μmであることが好ましい。かかる範囲内であることにより、前記導電性微粒子をバインダーに分散した際、ヘイズがほとんどなく、全光線透過率が良好な高透明な膜を形成可能な組成物が得られる。
【0071】
(防眩剤)
防眩剤としては微粒子が挙げられ、微粒子の形状は、真球状、楕円状などのものであってよく、好ましくは真球状のものが挙げられる。また、微粒子は無機系、有機系のものが挙げられるが、好ましくは有機系材料により形成されてなるものが好ましい。微粒子は、防眩性を発揮するものであり、好ましくは透明性のものがよい。微粒子の具体例としては、プラスチックビーズが挙げられ、より好ましくは、透明性を有するものが挙げられる。プラスチックビーズの具体例としては、スチレンビーズ(屈折率1.59)、メラミンビーズ(屈折率1.57)、アクリルビーズ(屈折率1.49)、アクリル−スチレンビーズ(屈折率1.54)、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズなどが挙げられる。微粒子の添加量は、ハードコート層用硬化性樹脂組成物100重量部に対し、2〜30重量部、好ましくは10〜25重量部程度である。
【0072】
3.その他の層
本発明に係るハードコートフィルムは、上記したように透明基材フィルム及びハードコート層により基本的には構成されてなる。しかしながら、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、ハードコートフィルムとしての機能又は用途を加味して、上記ハードコート層の他に、更に下記のような一又は二以上のその他の層を透明基材フィルムとハードコート層の間又はハードコート層の透明基材フィルムとは反対側の面に設けてもよい。
前記その他の層をハードコート層の透明基材フィルムとは反対側の面に設ける場合は、前記ハードコート層表面の表面粗さを維持するために、その他の層の膜厚を1μm以下とすることが好ましい。
【0073】
3−1.帯電防止層
帯電防止層は、帯電防止剤と硬化性樹脂とを含む帯電防止層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。
【0074】
帯電防止剤としては、上記ハードコート層の帯電防止剤で挙げたものと同様のものを用いることができる。
【0075】
帯電防止層用硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂としては、公知のものを適宜選択して、1種又は2種以上用いることができる。
【0076】
3−2.防眩層
防眩層は、防眩剤と硬化性樹脂とを含む防眩層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。当該硬化性樹脂は、公知のものを適宜選択して、1種又は2種以上用いることができる。
【0077】
(防眩剤)
防眩剤としては、上記ハードコート層の防眩剤で挙げたものと同様のものを用いることができる。
【0078】
3−3.防汚層
本発明の好ましい態様によれば、ハードコートフィルム最表面の汚れ防止を目的として防汚層を設けてもよい。防汚層は、ハードコートフィルムに対して防汚性と耐擦傷性のさらなる改善を図ることが可能となる。防汚層は、防汚剤と硬化性樹脂組成物を含む防汚層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。
【0079】
防汚層用硬化性樹脂組成物に含まれる防汚剤や硬化性樹脂は、公知の防汚剤及び硬化性樹脂から適宜選択して1種又は2種以上を用いることができる。
【0080】
3−4.低屈折率層
低屈折率層は、当該層の基材フィルム側に隣接する層よりも屈折率が低い層であり、低屈折率層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。当該低屈折率層用硬化性樹脂組成物には、前記隣接する層よりも屈折率が低くなるように、適宜公知の低屈折率硬化性樹脂や微粒子を用いることができる。
【0081】
II.ハードコートフィルムの製造方法
本発明に係る第一のハードコートフィルムの製造方法は、上記ハードコートフィルムの製造方法であって、透明基材フィルムの一面側又はJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番を有する研磨シートの研磨材側に、光硬化性バインダー成分を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とする工程、
前記塗膜を乾燥させながら、又は乾燥させた後に、前記塗膜の前記透明基材フィルム又は研磨シートとは反対側に、JIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番を有する研磨シートの研磨材側の面又は透明基材フィルムの一面を貼り合せ、透明基材フィルム/乾燥させた塗膜/研磨シートの三層構造にする工程、
前記三層構造形成後の前記透明基材フィルム側から前記乾燥させた塗膜に光照射し、当該乾燥させた塗膜を硬化させ、ハードコート層とする工程、
前記ハードコート層から前記研磨シートを剥離し、ハードコート層の透明基材フィルムとは反対側の面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与する工程を含むことを特徴とする。
【0082】
(研磨シート)
本発明において、研磨シートとは、JIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有するJIS R6251の研磨布、JIS R6252の研磨紙、及びJIS R6253の耐水研磨紙よりなる群から選ばれる1種以上を意味する。
JIS R6001に規定する粒度40〜15000番の範囲を有する研磨材であれば、研磨材の材質は特に制限なく使用できる。また、粒度は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0083】
研磨シートとしては、例えば、Struers社製、Plain back HV 30−800 Grit80、120、180、220、320、500、800、1000、1200、Plain back HV 30−400 Grit2400、4000、PSA HV 30−800 Grit80、120、180、220、320、500、800、1000、1200、三共理化学(株)製、耐水ペーパー 粒度60、80、100、120、150、180、220、240、280、320、360、400、500、600、700、800、1000、1200、1500、2000や(株)ノリタケコーテッドアブレーシブ製、AH−XMD又はAH−XMSの粒度60、80、120、150、180、200、240、320、400、600、800、1000、1200、1500、2000、3000、6000、9000、三共理化学(株)製、40番、120番、3000番、8000番、10000番、15000番等を用いることができる。
【0084】
ハードコート層用硬化性樹脂組成物は、通常、溶剤に上記ハードコート層において記載したバインダー成分の他、微粒子や重合開始剤等を一般的な調製法に従って、混合し分散処理することにより調製される。混合分散には、ペイントシェーカー又はビーズミル等を用いることができる。また、バインダー成分が流動性を有する場合には、溶剤を用いなくともハードコート層用硬化性樹脂組成物を調製できることがある。
【0085】
ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗布方法は、透明基材フィルム又は研磨シート表面にハードコート層用硬化性組成物を均一に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ピードコーター法等の各種方法を用いることができる。
また、ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗工量としては、得られるハードコートフィルムが要求される性能により異なるものであるが、乾燥後のハードコート層の膜厚が3〜30μmの範囲内であることが好ましく、3〜40g/mが好ましい。
【0086】
乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥又は加熱乾燥、更にはこれらの乾燥を組み合わせる方法等が挙げられる。例えば、ハードコート層用硬化性樹脂組成物の溶剤としてケトン系溶剤を用いる場合は、通常室温〜80℃、好ましくは40℃〜60℃の範囲内の温度で、20秒〜3分、好ましくは30秒〜1分程度の時間で乾燥工程が行われる。
【0087】
ハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥させた塗膜に対し、当該硬化性組成物に含まれるバインダー成分の光硬化性基や微粒子の反応性官能基に応じて、光照射して乾燥させた塗膜を硬化させることにより、ハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層が形成される。
【0088】
光照射には、主に、紫外線、可視光、電子線、電離放射線等が使用される。紫外線硬化の場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等を使用する。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50〜5000mJ/cm程度である。
加熱する場合は、通常40℃〜120℃の温度にて処理する。また、室温(25℃)で24時間以上放置することにより反応を行っても良い。
【0089】
ハードコート層用硬化性樹脂組成物に光硬化性バインダー成分に加えて、さらに熱硬化性バインダー成分が含まれる場合、光照射に加えて加熱することにより、熱硬化性バインダー成分を硬化させ、ハードコート層を得ても良い。
【0090】
本発明に係る第二のハードコートフィルムの製造方法は、上記ハードコートフィルムの製造方法であって、基材の一面側又はJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番を有する研磨シートの研磨材側に、転写型用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とする工程、
次いで、前記塗膜を乾燥させながら、又は乾燥させた後に、前記塗膜の前記基材又は研磨シートとは反対側に、前記研磨シートの研磨材側の面又は基材の一面を貼り合せ、基材/乾燥させた塗膜/研磨シートの三層構造にする工程、
次いで、前記三層構造形成後の乾燥させた塗膜を硬化させ、当該硬化させた塗膜から前記研磨シートを剥離し、当該塗膜の基材とは反対側の面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与することで、基材上にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有する表面粗さ転写層を設けてなる転写型を得る工程、
次いで、透明基材フィルムの一面側又は前記転写型の前記表面粗さ転写層側に、光硬化性バインダー成分を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とする工程、
次いで、前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜を乾燥させながら、又は乾燥させた後に、当該塗膜の前記透明基材フィルム又は前記転写型とは反対側に、前記転写型の前記表面粗さ転写層側の面又は透明基材フィルムの一面を貼り合せ、透明基材フィルム/乾燥させた塗膜/転写型の三層構造にする工程、
次いで、前記転写型を含む三層構造形成後の前記透明基材フィルム側から前記乾燥させた塗膜に光照射し、当該乾燥させた塗膜を硬化させ、ハードコート層とする工程、
次いで、前記ハードコート層から前記転写型を剥離し、ハードコート層の透明基材フィルムとは反対側の面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与する工程を含むことを特徴とする。
【0091】
研磨シートの耐久性を考慮して、第二のハードコートフィルムの製造方法では、研磨シートを用いてハードコートフィルムの代わりにまず、転写型を得て、当該転写型からハードコートフィルムを得る。第二のハードコートフィルムの製造方法は、転写型を用いることにより、工業的に大量生産できる利点を有する。
【0092】
転写型用硬化性樹脂組成物としては、前記ハードコート層で説明したハードコート層用組成物を用いることができるほか、公知の成型用樹脂等を用いてもよい。
転写型用硬化性樹脂組成物には、研磨シートと転写型が剥離しやすくなり、研磨シートの研磨材側表面に転写型成分が付着し難くなるように、フッ素化合物を添加することが好ましい。当該フッ素化合物として、例えば、ダイキン工業(株)製、オプツールDSX等を用いることができる。
【0093】
また、得られた転写型の耐久性を向上させることを目的として、転写型の表面に膜厚0.1〜1μmのニッケルを成膜することが好ましい。当該ニッケル表面を離型剤で処理することにより、さらに耐久性を向上できるため好ましい。
ニッケルとしては、従来公知のものを用いればよく、例えば、DOWAメタニクス(株)製、純ニッケル等を用いることができる。
離型剤としては、従来公知のものを用いればよく、例えば、(株)ネオス製、フリリース50等を用いることができる。
【0094】
転写型の基材は、前記透明基材フィルムを用いてもよいし、当該透明基材フィルム以外の金属やガラス等を用いてもよい。
【0095】
本発明に係る第三のハードコートフィルムの製造方法は、上記ハードコートフィルムの製造方法であって、基材の一面側又はJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番を有する研磨シートの研磨材側に、転写型用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とする工程、
次いで、前記塗膜を乾燥させながら、又は乾燥させた後に、前記塗膜の前記基材又は研磨シートとは反対側に、前記研磨シートの研磨材側の面又は基材の一面を貼り合せ、基材/乾燥させた塗膜/研磨シートの三層構造にする工程、
次いで、前記基材/乾燥させた塗膜/研磨シートの三層構造形成後の乾燥させた塗膜を硬化させ、当該硬化させた塗膜から前記研磨シートを剥離し、当該塗膜の基材とは反対側の面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与することで、基材上にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有する表面粗さ転写層を有する第一世代転写型を得る工程、
次いで、前記基材と同じか又は異なる第二の基材の一面側又は前記第一世代転写型の前記表面粗さ転写層側に、前記転写型用硬化性樹脂組成物と同じか又は異なる転写型用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とし、当該塗膜を乾燥させながら、又は乾燥させた後に、当該塗膜の前記第二の基材又は第一世代転写型とは反対側に、前記第一世代転写型の前記表面粗さ転写層側の面又は第二の基材の一面を貼り合せ、第二の基材/乾燥させた塗膜/第一世代転写型の三層構造にし、当該第一世代転写型を含む三層構造形成後の乾燥させた塗膜を硬化させ、当該硬化させた塗膜から前記第一世代転写型を剥離し、当該塗膜の第二の基材とは反対側の面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与することで第二の基材上にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有する表面粗さ転写層を設けてなる第二世代転写型を得る工程、
必要に応じ、前記第二世代転写型と同じ工程を繰り返して最新世代転写型を得る工程、
透明基材フィルムの一面側又は第二世代を含む前記最新世代転写型の前記表面粗さ転写層側に、光硬化性バインダー成分を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とする工程、
次いで、前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜を乾燥させながら、又は乾燥させた後に、当該塗膜の前記透明基材フィルム又は前記最新世代転写型とは反対側に、前記最新世代転写型の前記表面粗さ転写層側の面又は透明基材フィルムの一面を貼り合せ、透明基材フィルム/乾燥させた塗膜/最新世代転写型の三層構造にする工程、
次いで、前記最新世代転写型を含む三層構造形成後の前記透明基材フィルム側から前記乾燥させた塗膜に光照射し、当該乾燥させた塗膜を硬化させ、ハードコート層とする工程、
次いで、前記ハードコート層から前記最新世代転写型を剥離し、ハードコート層の透明基材フィルムとは反対側の面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与する工程を含むことを特徴とする。
【0096】
また、上記第三のハードコートフィルムの製造方法に示すように、第一世代転写型から第二世代又は第二世代以降の転写型を得て、当該第二世代又は第二世代以降の転写型からハードコートフィルムを得ることができる。
第二世代、第四世代等の偶数回転写型を得て、当該偶数回転写型からハードコートフィルムを得てもよい。この場合、初めに用いた研磨シートの表面凹凸が反転したハードコートフィルムを得ることができる。
第三世代、第五世代等の奇数回転写型を得て、当該奇数回転写型からハードコートフィルムを得てもよい。この場合、初めに用いた研磨シートの表面凹凸がそのまま転写されたハードコートフィルムを得ることができる。
【0097】
図2は、本発明に係る第一のハードコートフィルムの製造方法の一例を示した模式図である。
まず、図2(a)に示すように、透明基材フィルム10の一面側に、光硬化性バインダー成分を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜30とする。
続いて図2(b)及び(c)に示すように、塗膜30を乾燥させ、乾燥させた塗膜40とした後、乾燥させた塗膜40の透明基材フィルム10とは反対側にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番を有する研磨シート50の研磨材60側の面を貼り合せ、透明基材フィルム/乾燥させた塗膜/研磨シートの三層構造にする。
次いで、図2(d)に示すように、三層構造の透明基材フィルム10側から乾燥させた塗膜40に、光照射70を行い、硬化させ、ハードコート層20とする。
次いで、図2(e)に示すように、ハードコート層20から研磨シート50を剥離し、ハードコート層の表面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与する。
【0098】
図3は、本発明に係る第一のハードコートフィルムの製造方法の他の一例を示した模式図である。
まず、図3(a)に示すように、研磨シート50の研磨材60側に、光硬化性バインダー成分を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜30とする。
続いて図3(b)及び(c)に示すように、塗膜30を乾燥させながら、乾燥途中の塗膜80の研磨シート50とは反対側に透明基材フィルム10の一面を貼り合せ、研磨シート/乾燥させた塗膜/透明基材フィルムの三層構造にする。
次いで、図3(d)に示すように、三層構造の透明基材フィルム10側から乾燥させた塗膜40に、光照射70を行い、硬化させ、ハードコート層20とする。
次いで、図3(e)に示すように、ハードコート層20から研磨シート50を剥離し、ハードコート層の表面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与する。
【0099】
図4A及び図4Bは、本発明に係る第二のハードコートフィルムの製造方法の一例を示した模式図である。
まず、図4A(a)に示すように、透明基材11の一面側に、転写型用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜90とする。
続いて、図4A(b)及び(c)に示すように、塗膜90を乾燥させ、乾燥させた塗膜100の透明基材11とは反対側に研磨シート50の研磨材60側の面を貼り合せ、透明基材/乾燥させた塗膜/研磨シートの三層構造にする。
次いで、図4A(d)に示すように、三層構造の透明基材11側から乾燥させた塗膜100に、光照射70を行い、硬化させた塗膜110とする。
次いで、図4A(e)に示すように、硬化させた塗膜110から研磨シート50を剥離し、硬化させた塗膜110の表面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与し、基材11上にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有する表面粗さ転写層120を設けた転写型130を得る。
次いで、図4B(f)に示すように、転写型130の表面粗さ転写層120側に、光硬化性バインダー成分を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜30とする。
続いて図4B(g)に示すように、塗膜30を乾燥させ、乾燥させた塗膜40とした後、乾燥させた塗膜40の透明基材11とは反対側に透明基材フィルム10の一面側を貼り合せ、透明基材フィルム/乾燥させた塗膜/転写型の三層構造にする。
次いで、図4B(h)に示すように、三層構造の透明基材フィルム10側から乾燥させた塗膜40に、光照射70を行い、硬化させ、ハードコート層20とする。
次いで、図4B(i)に示すように、ハードコート層20から転写型130を剥離し、ハードコート層の表面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与する。
【0100】
図5A〜図5Cは、本発明に係る第三のハードコートフィルムの製造方法の一例を示した模式図である。
まず、図5A(a)に示すように、透明基材11の一面側に、転写型用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜90とする。
続いて、図5A(b)及び(c)に示すように、塗膜90を乾燥させ、乾燥させた塗膜100の透明基材11とは反対側に研磨シート50の研磨材60側の面を貼り合せ、透明基材/乾燥させた塗膜/研磨シートの三層構造にする。
次いで、図5A(d)に示すように、三層構造の透明基材11側から乾燥させた塗膜100に、光照射70を行い、硬化させた塗膜110とする。
次いで、図5A(e)に示すように、硬化させた塗膜110から研磨シート50を剥離し、硬化させた塗膜110の表面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与し、基材11上にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有する表面粗さ転写層120を設けた第一世代転写型130を得る。
次いで、図5B(f)に示すように、転写型130の表面粗さ転写層120側に、転写型用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜91とする。
続いて図5B(g)に示すように、塗膜91を乾燥させ、乾燥させた塗膜101とした後、乾燥させた塗膜101の転写型130とは反対側に透明基材12の一面側を貼り合せ、透明基材/乾燥させた塗膜/第一世代転写型の三層構造にする。
次いで、図5B(h)に示すように、三層構造の透明基材11側から乾燥させた塗膜101に、光照射70を行い、硬化させ、硬化させた塗膜111とする。
次いで、図5B(i)に示すように、硬化させた塗膜111から転写型130を剥離し、硬化させた塗膜111の表面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与し、基材12上にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有する表面粗さ転写層121を設けた第二世代転写型131を得る。
次いで、図5C(j)に示すように、転写型131の表面粗さ転写層121側に、光硬化性バインダー成分を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜30とする。
続いて図5C(k)に示すように、塗膜30を乾燥させ、乾燥させた塗膜40とした後、乾燥させた塗膜40の透明基材12とは反対側に透明基材フィルム10の一面側を貼り合せ、透明基材フィルム/乾燥させた塗膜/第二世代転写型の三層構造にする。
次いで、図5C(l)に示すように、三層構造の透明基材フィルム10側から乾燥させた塗膜40に、光照射70を行い、硬化させ、ハードコート層20とする。
次いで、図5C(m)に示すように、ハードコート層20から第二世代転写型131を剥離し、ハードコート層の表面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与する。
【0101】
上記第三のハードコートフィルムの製造方法においては、図5B(f)〜(i)の工程を奇数回又は偶数回繰り返してもよい。
【0102】
また、上記ハードコートフィルムの製造方法は、1枚1枚のハードコートフィルムを製造するバッチ方式だけでなく、連続帯状のハードコートフィルムを製造する連続方式も含む。
連続方式でハードコートフィルムを製造する場合は、例えば、ローラーに研磨材側が表面となるように研磨シートを巻きつける。コンベア等を利用することで透明基材フィルムが連続帯状で流れる。また、当該透明基材フィルム上にハードコート層用硬化性樹脂組成物が連続供給、製膜される。当該製膜した膜を乾燥させながら、又は乾燥させた後に、当該膜表面に研磨シートが巻き付いた前記ローラーが接触し、透明基材フィルム/乾燥させた膜/研磨シートの三層構造とする。次いで透明基材フィルム側から光照射し、乾燥させた膜を硬化させハードコート層とする。透明基材フィルムとその一面側に形成されたハードコート層が流れるとローラーに巻きついていた研磨シートが剥離し、表面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与されたハードコート層を有するハードコートフィルムが得られる。
上記の他、研磨シートの表面形状をハードコート層に転写できる方法ならば公知のものを適用できる。
連続方式でハードコートフィルムを製造する場合は、バッチ方式で製造するよりも効率良く製造可能となり、ハードコートフィルム1枚当たりの製造コストを低減することができるため好ましい。
【0103】
図6は、上記連続工程によるハードコートフィルムの製造方法の一例を示した模式図である。
連続帯状の透明基材フィルム10にノズル140からハードコート層用硬化性樹脂組成物150が吐出、塗布され、ローラー160により製膜し、塗膜30とし、塗膜30を乾燥手段170を用いて乾燥させ、乾燥させた膜40とし、乾燥させた膜40に研磨シート50を巻き付けたローラー180を接触させ、透明基材フィルム/乾燥させた塗膜/研磨シートの三層構造とし、光照射70により硬化させハードコート層20とし、研磨シート50が巻き付いたローラー180がハードコート層20から剥離し、ハードコート層表面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有するハードコートフィルム1が得られる。
【0104】
ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗布、乾燥、光照射の条件は上記バッチ方式を基に適宜調節すれば良い。
ローラーの形状は特に制限がなく、円筒状だけでなく、塗膜や乾燥させた膜との接触面積が広くなるように適宜形状を設定でき、断面が楕円状、長方形又は正方形となるものを用いても良い。
【実施例】
【0105】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
光硬化性バインダー成分として、ペンタエリスリトール トリアクリレート、日本化薬(株)製、製品名PET30を用いた。
光重合開始剤として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・ジャパン(株)製、製品名:イルガキュア184)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン(株)製、製品名:イルガキュア819)を用いた。
フッ素化合物として、ダイキン工業(株)製、製品名:オプツールDSXを用いた。
ニッケルとして、DOWAメタニクス(株)製、製品名:純ニッケルを用いた。
溶剤として、メチルエチルケトンを用いた。
透明基材フィルムとして、TACフィルム(厚み40μm、トリアセチルセルロース樹脂フィルム、製品名:KC4UY、コニカ(株)製)を用いた。
研磨シートとして、Struers社製、Silicon Carbide Pater FEPA Pの、#120、240、1200、4000、及び、三共理化学(株)製、120番、3000番、8000番、10000番、15000番を用いた(#は、JIS R6001に規定する研磨材の粒度である)。
紫外線照射装置として、Fusion社製、コンベア式 紫外線照射装置を用いた。
電子線照射装置として、岩崎電気(株)製、EC250/15/180Lを用いた。
鉛筆硬度試験機として、(株)東洋精機製作所製、鉛筆引掻塗膜硬さ試験機を用いた。
記録用鉛筆として、三菱鉛筆(株)製、ユニ、硬度3Hを用いた。
消しゴムとして、(株)トンボ鉛筆製、モノ PE07を用いた。
各化合物の略語はそれぞれ、以下の通りである。
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート
MEK:メチルエチルケトン
TAC:トリアセチルセルロース
以下、部は特に記載が無い限り重量部を意味する。
【0106】
(ハードコート層用硬化性樹脂組成物の調製)
下記に示す組成の成分を配合してハードコート層用硬化性樹脂組成物1〜3をそれぞれ、調製した。
【0107】
(ハードコート層用硬化性樹脂組成物1)
PET30:96部
イルガキュア184:2部
イルガキュア819:2部
MEK:100部
【0108】
(ハードコート層用硬化性樹脂組成物2)
PET30:96部
イルガキュア184:2部
イルガキュア819:2部
オプツールDSX:5部
MEK:100部
【0109】
(ハードコート層用硬化性樹脂組成物3)
PET30:96部
MEK:100部
【0110】
(実施例1)
研磨シート(粒度120番)の研磨材側の面に、前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物1を塗布し、次いで、温度70℃で60秒間乾燥し、塗膜中の溶剤を蒸発させた。次に、当該乾燥させた塗膜の表面にTACフィルムを貼り合せ、TACフィルム/乾燥させた塗膜/研磨シートの三層構造とした。
続いて、TACフィルムを上面として、紫外線照射装置で紫外線を積算光量が50mJ/cmとなるように照射して、塗膜を硬化させ、ハードコート層を形成した。
次いで、形成されたハードコート層から研磨シートを剥離し、ハードコート層表面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度120番の表面粗さを付与したハードコートフィルムを得た。
【0111】
(実施例2〜4)
実施例1において、研磨シート(120番)を、表1に示す粒度を有する研磨シートに代えた以外は同様にして、ハードコート層表面にJIS R6001に規定する研磨材の表面粗さを付与した実施例2〜4のハードコートフィルムを得た。
【0112】
【表1】

【0113】
(実施例5〜8)
実施例1において、研磨シート(120番)を、表1に示す粒度を有する研磨シートに代え、ハードコート層用硬化性樹脂組成物を1の代わりにハードコート層用硬化性樹脂組成物2を用いた以外は同様にして、ハードコート層表面にJIS R6001に規定する研磨材の表面粗さを付与した実施例5〜8のハードコートフィルムを得た。
【0114】
(実施例9)
実施例3において、ハードコート層用硬化性樹脂組成物1の代わりに、ハードコート層用硬化性樹脂組成物2を用いた以外は同様にしてハードコート層表面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度1200番の表面粗さを付与したハードコートフィルムを得た。
【0115】
(実施例10)
実施例9において得られたハードコートフィルムの表面にニッケルを1μm成膜し、ローラーにハードコートフィルムをTACフィルムが内側、ハードコート層が外側(表面側)となるように巻きつけた。
連続帯状のTACフィルムが連続して10m/分の速度で通過するようにして、当該連続帯状のTACフィルムにハードコート層用硬化性樹脂組成物1を連続供給し、ローラーで製膜し、当該製膜上にハードコートフィルムを巻き付けたローラーを接触させ、さらに紫外線照射装置で紫外線を積算光量が50mJ/cmとなるように照射して、塗膜を硬化させ、ハードコートフィルムを巻き付けたローラーの回転並びにTACフィルム及びハードコート層の移動によりローラーに巻き付いたハードコートフィルムを剥離し、ハードコート層表面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度1200番の表面粗さを有する連続帯状のハードコートフィルムを得た。
【0116】
(実施例11)
実施例10において、ハードコート層用硬化性樹脂組成物1の代わりに、ハードコート層用硬化性樹脂組成物3を用いて、紫外線照射の代わりに電子線照射(3メガラッド、166kV、1.0mA)し、搬送速度を5m/分とした以外は同様にして、ハードコート層表面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度1200番の表面粗さを有する連続帯状のハードコートフィルムを得た。
【0117】
(比較例1)
実施例1において、研磨シートの代わりに、表面粗さRa0.2nmのガラス板を用いた以外は同様にして、ガラス板表面の平滑形状をハードコート層表面に付与したハードコートフィルムを得た。
【0118】
(ハードコートフィルムの評価)
作製した実施例1〜11及び比較例1のハードコートフィルムについて、以下の様に鉛筆硬度、光透過性、耐スチールウール性並びに鉛筆による記録及び消去を評価した。その結果を表1に示す。
(1)鉛筆硬度
JISK5600−5−4(1999)で規定される500g荷重の鉛筆硬度試験を行い、傷がつかない最も硬度が高い鉛筆硬度を測定した。
(2)光透過性
新聞の上にハードコートフィルムをTACフィルム側を下にして、下側から新聞、TACフィルム及びハードコート層という状態にして置き、この状態で以下の基準で評価した。
A:鮮明に文字が読める
B:やや不鮮明だが文字が読める
(3)耐スチールウール性
得られたハードコートフィルムを#0000のスチールウールを用い、荷重200gをかけながら、速度100mm/secで10往復した時の傷の有無を目視により確認した。評価基準は以下の通りとした。
○:全く傷が認められないもの
×:傷が認められるもの
(4)鉛筆による記録及び消去
硬度3Hの鉛筆を用いて、ハードコート層表面に筆記を行い、記録ができるか、及び当該記録を消しゴムで消去できるかを調べた。
○:記録及び消去ができた
×:記録及び消去ができなかった
【0119】
表1より、研磨シートを用いてJIS R6001に規定する研磨材15000番の表面粗さを付与した実施例8は、鉛筆硬度試験の評価が4Hとなり、それ以外の実施例1〜7、9〜11は鉛筆硬度試験の評価が5Hとなり、優れた鉛筆硬度が得られた。
光透過性については、研磨材の粒度の番数が小さい実施例1及び2は不鮮明であったが文字が読める光透過性を有しており、実施例3〜11は文字が鮮明に読め、良好な光透過性を有していた。
耐スチールウール性については、研磨材の粒度の番数が小さい実施例1〜3は全く傷が認められず、良好な耐スチールウール性を有していた。
また、実施例1〜11はいずれも鉛筆による記録及び消去が可能であった。
【0120】
研磨シートの代わりに表面粗さRa0.2nmのガラス板を用いてハードコートフィルムを作製した比較例1では、光透過性は良好であったが、鉛筆硬度が2Hと低く、また、耐スチールウール性の評価でも傷が認められ、鉛筆による記録及び消去が不可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】図1は、本発明に係るハードコートフィルムの一例を模式的に示した断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る第一のハードコートフィルムの製造方法の一例を模式的に示した図である。
【図3】図3は、本発明に係る第一のハードコートフィルムの製造方法の他の一例を模式的に示した図である。
【図4A】図4Aは、本発明に係る第二のハードコートフィルムの製造方法の一例を模式的に示した図である。
【図4B】図4Bは、本発明に係る第二のハードコートフィルムの製造方法の一例を模式的に示した図である。
【図5A】図5Aは、本発明に係る第三のハードコートフィルムの製造方法の一例を模式的に示した図である。
【図5B】図5Bは、本発明に係る第三のハードコートフィルムの製造方法の一例を模式的に示した図である。
【図5C】図5Cは、本発明に係る第三のハードコートフィルムの製造方法の一例を模式的に示した図である。
【図6】図6は、本発明に係る第一のハードコートフィルムの製造方法の他の一例を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0122】
1 ハードコートフィルム
10 透明基材フィルム
20 ハードコート層
30 塗膜
40 乾燥させた塗膜
50 研磨シート
60 研磨材
70 光照射
80 乾燥途中の塗膜
90、91 塗膜
100、101 乾燥させた塗膜
110、111 硬化させた塗膜
120、121 表面粗さ転写層
130、131 転写型
140 ノズル
150 ハードコート層用硬化性樹脂組成物
160 ローラー又はシリンダー
170 乾燥手段
180 ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材フィルムの一面側にハードコート層を設けたハードコートフィルムであって、
前記ハードコート層の透明基材フィルムとは反対側の面はJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有することを特徴とする、ハードコートフィルム。
【請求項2】
前記ハードコート層のJIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(500g荷重)の硬度が、3H以上であることを特徴とする、請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載されたハードコートフィルムの製造方法であって、
透明基材フィルムの一面側又はJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番を有する研磨シートの研磨材側に、光硬化性バインダー成分を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とする工程、
前記塗膜を乾燥させながら、又は乾燥させた後に、前記塗膜の前記透明基材フィルム又は研磨シートとは反対側に、JIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番を有する研磨シートの研磨材側の面又は透明基材フィルムの一面を貼り合せ、透明基材フィルム/乾燥させた塗膜/研磨シートの三層構造にする工程、
前記三層構造形成後の前記透明基材フィルム側から前記乾燥させた塗膜に光照射し、当該乾燥させた塗膜を硬化させ、ハードコート層とする工程、
前記ハードコート層から前記研磨シートを剥離し、ハードコート層の透明基材フィルムとは反対側の面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与する工程を含むことを特徴とする、ハードコートフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記請求項1又は2に記載されたハードコートフィルムの製造方法であって、
基材の一面側又はJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番を有する研磨シートの研磨材側に、転写型用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とする工程、
次いで、前記塗膜を乾燥させながら、又は乾燥させた後に、前記塗膜の前記基材又は研磨シートとは反対側に、前記研磨シートの研磨材側の面又は基材の一面を貼り合せ、基材/乾燥させた塗膜/研磨シートの三層構造にする工程、
次いで、前記三層構造形成後の乾燥させた塗膜を硬化させ、当該硬化させた塗膜から前記研磨シートを剥離し、当該塗膜の基材とは反対側の面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与することで、基材上にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有する表面粗さ転写層を設けてなる転写型を得る工程、
次いで、透明基材フィルムの一面側又は前記転写型の前記表面粗さ転写層側に、光硬化性バインダー成分を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とする工程、
次いで、前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜を乾燥させながら、又は乾燥させた後に、当該塗膜の前記透明基材フィルム又は前記転写型とは反対側に、前記転写型の前記表面粗さ転写層側の面又は透明基材フィルムの一面を貼り合せ、透明基材フィルム/乾燥させた塗膜/転写型の三層構造にする工程、
次いで、前記転写型を含む三層構造形成後の前記透明基材フィルム側から前記乾燥させた塗膜に光照射し、当該乾燥させた塗膜を硬化させ、ハードコート層とする工程、
次いで、前記ハードコート層から前記転写型を剥離し、ハードコート層の透明基材フィルムとは反対側の面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与する工程を含むことを特徴とする、ハードコートフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記請求項1又は2に記載されたハードコートフィルムの製造方法であって、
基材の一面側又はJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番を有する研磨シートの研磨材側に、転写型用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とする工程、
次いで、前記塗膜を乾燥させながら、又は乾燥させた後に、前記塗膜の前記基材又は研磨シートとは反対側に、前記研磨シートの研磨材側の面又は基材の一面を貼り合せ、基材/乾燥させた塗膜/研磨シートの三層構造にする工程、
次いで、前記基材/乾燥させた塗膜/研磨シートの三層構造形成後の乾燥させた塗膜を硬化させ、当該硬化させた塗膜から前記研磨シートを剥離し、当該塗膜の基材とは反対側の面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与することで、基材上にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有する表面粗さ転写層を有する第一世代転写型を得る工程、
次いで、前記基材と同じか又は異なる第二の基材の一面側又は前記第一世代転写型の前記表面粗さ転写層側に、前記転写型用硬化性樹脂組成物と同じか又は異なる転写型用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とし、当該塗膜を乾燥させながら、又は乾燥させた後に、当該塗膜の前記第二の基材又は第一世代転写型とは反対側に、前記第一世代転写型の前記表面粗さ転写層側の面又は第二の基材の一面を貼り合せ、第二の基材/乾燥させた塗膜/第一世代転写型の三層構造にし、当該第一世代転写型を含む三層構造形成後の乾燥させた塗膜を硬化させ、当該硬化させた塗膜から前記第一世代転写型を剥離し、当該塗膜の第二の基材とは反対側の面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与することで第二の基材上にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを有する表面粗さ転写層を設けてなる第二世代転写型を得る工程、
必要に応じ、前記第二世代転写型と同じ工程を繰り返して最新世代転写型を得る工程、
透明基材フィルムの一面側又は第二世代を含む前記最新世代転写型の前記表面粗さ転写層側に、光硬化性バインダー成分を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とする工程、
次いで、前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜を乾燥させながら、又は乾燥させた後に、当該塗膜の前記透明基材フィルム又は前記最新世代転写型とは反対側に、前記最新世代転写型の前記表面粗さ転写層側の面又は透明基材フィルムの一面を貼り合せ、透明基材フィルム/乾燥させた塗膜/最新世代転写型の三層構造にする工程、
次いで、前記最新世代転写型を含む三層構造形成後の前記透明基材フィルム側から前記乾燥させた塗膜に光照射し、当該乾燥させた塗膜を硬化させ、ハードコート層とする工程、
次いで、前記ハードコート層から前記最新世代転写型を剥離し、ハードコート層の透明基材フィルムとは反対側の面にJIS R6001に規定する研磨材の粒度40〜15000番の表面粗さを付与する工程を含むことを特徴とする、ハードコートフィルムの製造方法。
【請求項6】
第二世代を含む前記最新世代転写型として、奇数回世代転写型を得て、
次いで、当該奇数回世代転写型を用いてハードコートフィルムを得ることを特徴とする、請求項5に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項7】
第二世代を含む前記最新世代転写型として、偶数回世代転写型を得て、
次いで、当該偶数回世代転写型を用いてハードコートフィルムを得ることを特徴とする、請求項5に記載のハードコートフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−69839(P2010−69839A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242811(P2008−242811)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】