説明

ハードコートフィルム

【課題】低ヘイズでギラツキが少なく、かつ良好なニュートンリング防止性を具備するハードコートフィルムを提供すること。
【解決手段】バインダー樹脂と特定平均粒径の微粒子とを構成成分として含み、平均粒径1μm以上の大粒子を実質的に含まないハードコート層を有するハードコートフィルムであって、ヘイズおよび表面粗さを特定の数値範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルムに関する。特に、抵抗膜方式タッチパネル用の電極フィルムに用いられ、電極フィルム同士の接触によるニュートンリングの発生を抑制する機能を有するハードコートフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルは、透明ないし半透明の入力デバイスをLCD(液晶表示装置)等のディスプレイ上に直接設けることにより、画面を見ながら入力操作することが可能であり、誰にでも簡単に操作ができ、また文字や絵の入力も可能であることから、マン/マシンインターフェースとして多く用いられるようになってきた。例えば、タッチパネルの用途としては、ATMなどの端末やカーナビゲーションシステム、スマートフォン、音楽再生用端末、ゲーム機など多岐にわたっている。このようなタッチパネルの方式としては、光学式、超音波式、電磁誘導方式、静電容量方式、抵抗膜方式などがあるが、中〜小型のタッチパネルでは抵抗膜方式が主流となっている。
【0003】
抵抗膜方式のタッチパネルは、2枚の電極フィルムを対向させた状態で設置し、そのフィルム同士が接した部分を電圧値として検出する仕組みであるが、その構成上、上下の電極フィルムが接した点を中心にして干渉縞(ニュートンリング)が発生してしまい、タッチパネル操作時に画面が見づらくなるという問題があった。この問題に対して電極フィルムにおいて、電極層の下に設けられるハードコート層に微粒子を添加して凹凸を設けることでニュートンリングの発生を防止する試みがなされていた(特許文献1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−252875号公報
【特許文献2】特開2005−265864号公報
【特許文献3】特開2005−262442号公報
【特許文献4】特開2005−265863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような背景のもと、さらに近年においては、LCDの高精細化により、その上に設けられるタッチパネルに用いられるハードコート層の凹凸と、LCDのRGBの各ドットを構成するカラーフィルターのピッチとが干渉し、タッチパネルの表面に細かいギラツキが発生するという問題がある。また、スマートフォン等の用途においては、クリアハードコート/基材フィルム/干渉を防止するハードコート/透明電極といった構成がとられることが多くなり、ヘイズの低い電極フィルムが求められている。
本発明の目的は、このような課題を解決すべく、低ヘイズでギラツキが少なく、かつ良好なニュートンリング防止性を具備するハードコートフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、バインダー樹脂と、微粒子とを構成成分として含み、平均粒径1μm以上の大粒子を実質的に含まないハードコート層を有するハードコートフィルムにおいて、表面の凹凸を特定の範囲にすることで、上記目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明は、
(1)透明樹脂基材の少なくとも片面に、バインダー樹脂と、平均粒径1nm以上100nm以下の微粒子とを構成成分として含み、平均粒径1μm以上の大粒子を実質的に含まないハードコート層を有するハードコートフィルムであって、トータルヘイズ(Hz)が0.1%以上4.0%以下、ハードコート層表面における中心線平均表面粗さ(Ra)が10nm以上300nm以下、十点平均表面粗さ(Rz)が300nm以上1000nm以下であるハードコートフィルムである。
【0008】
さらに本発明は、
(2)ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)が0.3%以下であること
(3)ハードコート層が、バインダー樹脂と、バインダー成分100質量部中に10質量部以上70質量部以下の無機充填剤とを構成成分として含むバインダー成分、およびバインダー成分100質量部に対して1質量部以上10質量部以下の無機微粒子を後添加してなる塗液を硬化してなるハードコート層であること
(4)ハードコート層表面における表面突起高さ分布の半値幅が100nm以上500nm以下の範囲にあること
のうち、少なくともいずれか1つの態様を具備することによって、さらに優れたハードコートフィルムを得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によればヘイズが低く、抵抗膜式タッチパネルの電極フィルムに使用した場合にもギラツキの発生が抑制され、かつ良好なニュートンリング防止性能を有するハードコートフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ハードコートフィルム]
本発明のハードコートフィルムは、後述する透明樹脂基材の少なくとも片面に、後述するハードコート層を有するものである。
本発明のハードコートフィルムは、トータルヘイズ(Hz)が0.1%以上4.0%以下である。トータルヘイズ(Hz)を上記数値範囲とすることによって、透明性に優れ、ディスプレイ画面においては画像の視認性に優れる。トータルヘイズ(Hz)が高すぎる場合は、透明性に劣り、ディスプレイ画面においては画像の視認性に劣るものとなる。このような観点から、トータルヘイズ(Hz)の上限は、好ましくは3.5%以下、さらに好ましくは3.0%以下、特に好ましくは2.5%以下である。他方、トータルヘイズ(Hz)は低いことが好ましいが、低すぎるとニュートンリング防止性に劣る傾向にある。このような観点から、トータルヘイズ(Hz)の下限は、好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上、特に好ましくは1.2%以上である。
【0011】
また、本発明のハードコートフィルムは、内部ヘイズ(Hi)が1.5%以下であることが好ましい。ハードコートフィルムの内部ヘイズ(Hi)を上記数値範囲とすることによって、透明性を維持しながら、ニュートンリング防止性を高くすることができ、透明性とニュートンリング防止性とのバランスをより優れたものとすることができる。ハードコートフィルムの内部ヘイズ(Hi)が高すぎる場合は、トータルヘイズ(Hz)を維持しながら、ニュートンリング防止性を高くすることが困難となる傾向にある。このような観点から、ハードコートフィルムの内部ヘイズ(Hi)の上限は、さらに好ましくは1.2%以下、特に好ましくは1.0%以下である。他方、ハードコートフィルムの内部ヘイズ(Hi)は低いほど好ましく、その下限は0%以上であることが特に好ましい。
【0012】
上記のようなトータルヘイズ(Hz)、内部ヘイズ(Hi)を達成するためには、ハードコート層におけるバインダー成分の屈折率、微粒子の屈折率、平均粒径、含有量、バインダー樹脂および無機充填剤の屈折率、ハードコート層の膜厚み、透明樹脂基材のヘイズおよび厚みを適宜調整することによって達成することができる。例えば、バインダー成分の屈折率と微粒子の屈折率との差を小さくしたり、微粒子の平均粒径を小さくしたり、微粒子の含有量を少なくしたりすると、トータルヘイズ(Hz)および内部ヘイズ(Hi)は低くなる傾向にある。
【0013】
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層表面における中心線平均表面粗さ(Ra)が10nm以上300nm以下である。中心線平均表面粗さ(Ra)を上記数値範囲とすることによって、透明性およびニュートンリング防止性に優れる。また、ギラツキが抑制される。中心線平均表面粗さ(Ra)の値が大きすぎる場合は、透明性に劣る傾向にある。他方、小さすぎる場合は、ニュートンリング防止性に劣る傾向にある。また、ギラツキの抑制効果に劣る傾向にある。このような観点から、中心線平均表面粗さ(Ra)の下限は、好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。また、中心線平均表面粗さ(Ra)の上限は、好ましくは200nm以下、さらに好ましくは180nm以下である。
【0014】
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層表面における十点平均表面粗さ(Rz)が300nm以上1000nm以下である。十点平均表面粗さ(Rz)を上記数値範囲とすることによって、透明性およびニュートンリング防止性に優れる。また、ギラツキが抑制される。十点平均表面粗さ(Rz)の値が大きすぎる場合は、透明性に劣る傾向にある。他方、小さすぎる場合は、ニュートンリング防止性に劣る傾向にある。また、ギラツキの抑制効果に劣る傾向にある。このような観点から、十点平均表面粗さ(Rz)の下限は、好ましくは400nm以上、さらに好ましくは500nm以上である。また、十点平均表面粗さ(Rz)の上限は、好ましくは900nm以下、さらに好ましくは800nm以下である。
【0015】
本発明においては、上記のような中心線平均表面粗さ(Ra)および十点平均表面粗さ(Rz)の態様を同時に満たすことによって、ハードコート層表面の凹凸の態様が高精細LCDのカラーフィルターのピッチに対して適度なものとなり、ギラツキの発生を抑制することができる。
【0016】
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層表面における表面突起高さ分布の半値幅が100nm以上500nm以下の範囲にあることが好ましい。ここで、表面突起高さ分布の半値幅は、非接触光学粗さ計(ZYGO社製:商品名NewView5022)によって得られた表面プロファイルから、Histogram Plotにより、横軸に突起高さ(単位:nm)、縦軸に頻度(単位:Counts)をプロットした突起分布における半値幅(ピーク位置における分布の高さの、半分の高さの位置における分布の幅)(単位:nm)を示す。表面突起高さ分布の半値幅を上記数値範囲とすることによって、透明性およびニュートンリング防止性により優れる。また、透明性とニュートンリング防止性とのバランスにより優れる。また、ギラツキがより抑制される。表面突起高さ分布の半値幅の値が大きすぎる場合は、透明性に劣る傾向にある。他方、小さすぎる場合は、ニュートンリング防止性に劣る傾向にある。また、ギラツキの抑制効果に劣る傾向にある。このような観点から、表面突起高さ分布の半値幅は、200nm以上450nm以下の範囲にあることがさらに好ましく、300nm以上400nm以下の範囲にあることが特に好ましい。
【0017】
以上のようなハードコート層表面における表面突起高さ分布の半値幅、中心線平均表面粗さ(Ra)および十点平均表面粗さ(Rz)は、ハードコート層における微粒子の平均粒径および含有量を適宜調整することによって達成される。例えば、微粒子の平均粒径を大きくすると、表面突起高さ分布の半値幅の値は大きくなる傾向にある。また、微粒子の平均粒径を大きくしたり、含有量を多くしたりすると、中心線平均表面粗さ(Ra)や十点平均表面粗さ(Rz)の値は大きくなる傾向にある。また、後述する無機充填剤または無機微粒子の一部が適度な大きさの凝集体を形成することも、ハードコートの表面の態様を上記のごとくするための1つの好ましい手段である。また本発明においては凝集体がハードコート層表面付近に優先的に存在していることが、好ましい特性を発現している要因であると考えている。
【0018】
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層表面における鉛筆硬度が、好ましくはH以上、さらに好ましくは2H以上、特に好ましくは3H以上である。かかる鉛筆硬度は、後述するバインダー樹脂の態様を採用することによって達成することができる。
【0019】
[ハードコート層]
本発明におけるハードコート層は、後述するバインダー樹脂と微粒子とを構成成分として含むものである。
また、本発明におけるハードコート層は、平均粒径1μm以上、好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上の大粒子を実質的に含まない。ここで「実質的に含まない」とは、100ppm以下、好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下のことを示す。かかる大粒子としては有機粒子や無機粒子を含み、単分散粒子や凝集粒子を含む。本発明においては、ハードコート層が平均粒径1μm以上の大粒子を実質的に含まないことによって、過度な光の拡散を抑えることができとりわけ透明性に優れる。
【0020】
本発明におけるハードコート層は、そのトータルヘイズ(Hzhc)が3.0%以下であることが好ましい。ハードコート層のトータルヘイズ(Hzhc)を上記数値範囲とすることによって、ハードコートフィルムの透明性およびニュートンリング防止性に優れる。ハードコート層のトータルヘイズ(Hzhc)が高すぎる場合は、透明性に劣る傾向にある。このような観点から、ハードコート層のトータルヘイズ(Hzhc)の上限は、より好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは2.0%以下である。
【0021】
また、本発明におけるハードコート層は、その内部ヘイズ(Hihc)が0.3%以下であることが好ましい。ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)を上記数値範囲とすることによって、トータルヘイズ(Hzhc)を維持しながら、表面ヘイズ(Hshc)を高くすることができ、すなわちニュートンリング防止性を高くすることができ、透明性とニュートンリング防止性とのバランスをより優れたものとすることができる。さらに、ニュートンリング防止性を維持しながら、ハードコートフィルムとしてのクリア感をより優れたものとすることができる。ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)が高すぎる場合は、トータルヘイズ(Hzhc)を維持するためには、表面ヘイズ(Hshc)を充分に高くすることができず、ニュートンリング防止性を高くすることが困難となる傾向にある。このような観点から、ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)の上限は、さらに好ましくは0.25%以下、特に好ましくは0.2%以下である。他方、ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)は低いほど好ましく、その下限は0%以上であることが特に好ましい。
【0022】
本発明におけるハードコート層は、そのトータルヘイズ(Hzhc)に対する内部ヘイズ(Hihc)の比率(Hihc/Hzhc)が0.30以下であることが好ましい。かかる比率(Hihc/Hzhc)を上記数値範囲とすることによって、透明性とニュートンリング防止性とのバランスをより優れたものとすることができる。このような観点から、上記比率(Hihc/Hzhc)は、さらに好ましくは0.18以上0.25以下、特に好ましくは0.15以上0.20以下である。
【0023】
上記のようなハードコート層のトータルヘイズ(Hzhc)、および内部ヘイズ(Hihc)を達成するためには、ハードコート層におけるバインダー樹脂の屈折率、微粒子の屈折率、平均粒径、含有量、バインダー成分の屈折率、ハードコート層の膜厚みを適宜調整することによって達成することができる。例えば、バインダー樹脂の屈折率と微粒子の屈折率との差を小さくしたり、バインダー成分の屈折率と無機微粒子の屈折率との差を小さくしたり、微粒子の平均粒径を小さくしたり、含有量を少なくしたりすると、ハードコート層のトータルヘイズ(Hzhc)および内部ヘイズ(Hihc)は低くなる傾向にある。
【0024】
本発明におけるハードコート層の膜厚みは、発明の趣旨を達成できる範囲であれば特には制限されないが、ハードコートとしての硬度とニュートンリング防止性能を両立するためには1〜10μm、好ましくは2〜9μm、最も好ましくは3〜8μmである。膜厚が1μmより薄い場合は十分な表面硬度が得られない。膜厚が10μmを超える場合はハードコート層が脆くなりやすく、クラックなどの問題を生じる場合がある。
【0025】
以下、本発明におけるハードコート層に含まれる各構成成分について説明する。
[バインダー樹脂]
本発明におけるバインダー樹脂は、主に、放射線硬化型樹脂組成物からなる。
かかる放射線硬化型樹脂組成物は、放射線により硬化させることができるモノマー、オリゴマー、あるいはポリマーである。本発明における放射線硬化型樹脂組成物としては、硬化後の架橋密度を高くすることができ、表面硬度の向上効果を高くすることができ、かつ透明性の向上効果を高くすることができるという観点から、多官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、あるいは多官能(メタ)アクリレートポリマー等の多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0026】
かかる多官能(メタ)アクリレート化合物は、分子内に(メタ)アクリロイル基を含有する化合物であるが、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含有することが好ましく、そのような態様とすることによって、放射線硬化型樹脂組成物の架橋反応が進行しやすくなり、表面硬度の向上効果をより高くすることができる。また、本発明における多官能(メタ)アクリレート化合物は、分子内に(メタ)アクリロイル基以外の他の重合性官能基を含有してもよい。
【0027】
分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えばネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート)、メラミン(メタ)アクリレート等、およびこれらのうち少なくとも1種からなる1〜20量体程度のオリゴマーや、これらのうち少なくとも1種からなるポリマーを挙げることができる。このような多官能(メタ)アクリレート化合物は、一種類を単独で用いても良いし、二種類以上を併用して用いても良い。
【0028】
以上のような、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物は、例えばアロニックスM−400、M−450、M−305、M−309、M−310、M−315、M−320、TO−1200、TO−1231、TO−595、TO−756(以上、東亞合成製)、KAYARD D−310、D−330、DPHA、DPHA−2C(以上、日本化薬製)、ニカラックMX−302(三和ケミカル社製)等の市販品として入手することができる。
【0029】
また、本発明においては、より優れたハードコート層を形成するために、バインダー樹脂には、光重合開始剤を添加するのが好ましい。光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フロオレノン、アントラキノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−1−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等を挙げることができる。
【0030】
本発明における光重合開始剤の添加量は、放射線硬化型樹脂組成物100質量%を基準として、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。添加量を上記数値範囲とすることによって、ハードコート層の表面硬度の向上効果をより高くすることができる。添加量が多すぎる場合は、添加した光重合開始剤が可塑剤として働く傾向にあり、ハードコート層の強度が低くなってしまう恐れがある。
【0031】
[微粒子]
本発明における微粒子は、平均粒径が1nm以上100nm以下である。また、有機でもよいし無機でもよい。本発明における微粒子としては、後述する無機微粒子および無機充填剤を包含する。かかる微粒子は、バインダー樹脂100質量部に対して、好ましくは12質量部以上270質量部以下、さらに好ましくは25質量部以上158質量部以下、特に好ましくは44質量部以上103質量部以下含有する。
【0032】
本発明においては、ハードコート層が、大粒子を含まず、バインダー樹脂と後述する無機充填剤とを含むバインダー成分に、後述する無機微粒子を後添加してなる塗液を硬化してなるものである態様が好ましい。かかる態様とすることによって、無機充填剤または無機微粒子の一部が適度な大きさの凝集体を形成し、かつかかる凝集体がハードコート層表面付近に優先的に存在する態様となり、透明性およびニュートンリング防止性により優れたものとすることができる。また、ギラツキの抑制により優れる。
【0033】
[バインダー成分]
本発明におけるハードコート層は、上述のバインダー樹脂と後述する無機充填剤とを構成成分として含むバインダー成分、および無機微粒子を含む態様が好ましい。また、上記バインダー成分に、無機微粒子を後添加して得られる塗液を用いてハードコート層を形成することが好ましく、かかる製造方法を採用することは、本発明が規定するトータルヘイズ(Hz)、中心線平均表面粗さ(Ra)および十点平均表面粗さ(Rz)を同時に達成するための1つの好ましい手段である。かかる態様とすることによって、ハードコート層において、一部の無機充填剤または無機微粒子が適度な大きさの凝集体を形成する。かかる凝集体によって、ハードコート層の表面形状がより好ましい態様となり、透明性とニュートンリング防止性とのバランスをより優れたものとすることができ、これらを同時に優れたものとすることができる。また、ギラツキの抑制効果をさらに向上することができる。
【0034】
[無機充填剤]
本発明におけるバインダー成分は、ハードコート層の表面硬度および強度の向上効果を高める目的、あるいはカールを抑制する目的で無機充填剤を含有する。
かかる無機充填剤としては、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物が好ましく、ハードコート層の表面硬度および強度の向上効果をより高くすることができる。また、透明性およびニュートンリング防止性の向上効果をより高くすることができる。さらに、滑り性に優れる。中でも、ケイ素酸化物が好ましく、表面硬度の向上効果を特に高くすることができ、強度を特に高くすることができる。
【0035】
本発明においては、上記のような無機充填剤を添加することによって、ハードコート層において、強度等の機械特性の向上効果を高めることができるが、本発明の目的とする透明性およびニュートンリング防止性等の光学特性に影響を及ぼさないような無機充填剤を選定する必要がある。具体的には、無機充填剤の平均粒径や屈折率を特定の数値範囲とすることが好ましい。
【0036】
上記のような目的において、本発明においては、無機充填剤の平均粒径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。平均粒径が上記数値範囲にあると、ハードコート層の透明性を維持しながら、表面硬度および強度の向上効果を高くすることができる。また、ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)をより低くすることができる。また、ギラツキの抑制により優れる。無機充填剤の平均粒径が大きすぎる場合は、透明性に劣る傾向にある。他方、小さすぎる場合は、無機充填剤自体の強度が低くなる傾向にあり、表面硬度および強度の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、無機充填剤の平均粒径は、さらに好ましくは5nm以上80nm以下、特に好ましくは10nm以上60nm以下である。
【0037】
また、特定の屈折率を有する無機充填剤を用いることが好ましく、上述のバインダー樹脂との屈折率差が0.1未満である無機充填剤が好ましい。屈折率差が上記数値範囲にあると、ハードコート層の透明性を維持しながら、表面硬度および強度の向上効果を高くすることができる。また、ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)をより低くすることができる。屈折率差が大きすぎる場合は、透明性に劣る傾向にある。このような観点から、屈折率差は、好ましくは0.08未満、さらに好ましくは0.07未満である。
【0038】
無機充填剤の含有量は、バインダー成分100質量部中に、10質量部以上70質量部以下が好ましい。含有量を上記数値範囲とすることによって、ハードコート層の透明性を維持しながら、表面硬度および強度の向上効果を高くすることができる。また、ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)をより低くすることができる。含有量が多すぎる場合は、透明性に劣る傾向にある。他方、含有量が少なすぎる場合は、表面硬度および強度の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、含有量は、さらに好ましくは20質量部以上60質量部以下、特に好ましくは30質量部以上50質量部以下である。
上記のような無機充填剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
本発明においては、粉体状、もしくは粉体状の無機充填剤を溶媒に分散してゾル状とした溶媒分散ゾル状である無機充填剤を用いることが好ましい。無機充填剤が溶媒分散ゾル状である場合は、バインダー樹脂との相溶性を高めるという観点から、分散媒は有機溶媒であることが好ましい。有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等を挙げることができる。中でもメタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンが好ましく、相溶性に優れる。また、無機充填剤の分散性を向上するために、各種の界面活性剤やアミン類等を添加することができる。
【0040】
以上のような無機充填剤は、例えば溶媒分散ゾル状のケイ素酸化物は、IPA−ST,MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40(以上、日産化学社製)等の市販品として入手することができ、好ましく用いることができる。また、溶媒分散ゾル状のアルミニウム酸化物は、アルミナゾルー100、アルミナゾルー200、アルミナゾルー500(以上、日産科学社製)、AS−150I、AS−150T(以上、住友大阪セメント製)等の市販品として入手することができ、好ましく用いることができる。
【0041】
さらに、本発明における無機充填剤は、バインダー樹脂に対する分散性を向上させる目的、ハードコート層中における分散状態を良好なものとする目的、あるいはバインダー樹脂と架橋点を生成して、ハードコート層の表面硬度および強度を向上させる目的で、重合性の表面処理剤によって表面処理されている態様が好ましい。
【0042】
かかる表面処理剤としては、例えばシラノール基を含有する、もしくは加水分解することでシラノール基を生成する化合物(以下、シランカップリング剤と表記することがある。)が挙げられ、好ましく用いられる。さらにはシラノール基と、シラノール基以外の重合性官能基とを併せ持ったシランカップリング剤が好ましい。このようなシランカップリング剤におけるシラノール基と無機充填剤の表面に存在する水酸基とは、熱等により架橋反応することができ、それによって無機充填剤の表面にシランカップリング剤が結合した態様となり、有機成分中における分散性を高くすることができる。シラノール基以外の重合性官能基としては、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、アクリルアミド基、水酸基等を挙げることができる。
【0043】
上記のようなシランカップリング剤は、例えばTSL−8350、TSL−8337、TSL−8370、TSL−8375(以上、GE東芝シリコーン社製)、A−9530(新中村化学製)、A−187(日本ユニカー製)等の市販品として入手することができ、好ましく用いることができる。
【0044】
表面処理された無機充填剤を得る方法は特に限定されないが、例えば次の方法によって得ることができる。すなわち、まず前記のようなシランカップリング剤と無機充填剤とを混合し、さらにイオン交換水を添加した後に室温で静置することでシランカップリング剤の加水分解を進める。加水分解させるのに必要な時間は、用いる物質によって異なるが、1時間〜24時間程度である。シランカップリング剤の加水分解が十分に進行した後に20℃〜150℃の温度をかけることにより、シランカップリング剤におけるシラノール基と無機充填剤の表面における水酸基とが反応し、表面処理された無機充填剤を得ることができる。
【0045】
[無機微粒子]
本発明における無機微粒子としては、シリカ微粒子、中空シリカ微粒子、アルミナ微粒子、TiO微粒子等の酸化金属微粒子もしくは金属微粒子を挙げることができる。中でも、透明性およびニュートンリング防止性の向上効果を高くすることができるという観点から、シリカ微粒子が好ましい。
【0046】
本発明においては、無機微粒子の屈折率とバインダー成分の屈折率との差(屈折率差)が0.10以下であることが好ましい。屈折率差を上記数値範囲とすることによって、ハードコート層の内部において、無機微粒子による拡散を少なくすることができ、透明性に優れるニュートンリング防止層を形成することができる。このような観点から、無機微粒子とバインダー成分との屈折率差は、さらに好ましくは0.07、特に好ましくは0.05以下である。
【0047】
また、本発明における無機微粒子は、平均粒径が1nm以上100nm以下であることが好ましい。無機微粒子の平均粒径を上記数値範囲とすることによって透明性を維持しながら、ニュートンリング防止性の向上効果を高くすることができる。無機微粒子の平均粒径が小さすぎる場合は、ニュートンリング防止性に劣る傾向にある。他方、大きすぎる場合は、ニュートンリング防止性の向上効果は高くなるものの、透明性に劣る傾向にある。このような観点から、無機微粒子の平均粒径は、より好ましくは5nm以上50nm以下、さらにこのましくは10nm以上40nm以下、特に好ましくは15nm以上30nm以下である。
【0048】
本発明におけるハードコート層は、このような無機微粒子を、バインダー成分100質量部に対して1質量部以上10質量部以下含有することが好ましい。無機微粒子の含有量を上記数値範囲とすることによって、透明性を維持しながら、ニュートンリング防止性の向上効果を高くすることができ、これらのバランスをより優れたものとすることができる。また、ギラツキの抑制効果により優れる。含有量が少なすぎる場合は、無機微粒子が関与する凝集体が形成されにくくなる傾向にあり、ハードコート層の表面において、無機微粒子による突起が形成されにくくなる傾向にあり、ニュートンリング防止性に劣る傾向にある。他方、多すぎる場合は、ニュートンリング防止性の向上効果は高くなるものの、透明性に劣る傾向にある。このような観点から、無機微粒子の含有量は、バインダー成分100質量部に対して、さらに好ましくは0.6質量部以上3質量部以下、特に好ましくは0.8質量部以上1.2質量部以下である。
【0049】
本発明においては、以上のような無機微粒子がハードコート層表面において、適度な凹凸を形成することが重要である。同時に、透明性を大きく低減させないことがないことが重要であり、これらを同時に満足することによって、透明性およびニュートンリング防止性の向上効果を高くすることができる。また、透明性とニュートンリング防止性とのバランスをより優れたものとすることができる。このような作用効果をより効果的に発現するために、ならびに本発明におけるトータルヘイズ(Hz)、中心線平均表面粗さ(Ra)および十点平均表面粗さ(Rz)をより効果的に達成するために、上記のような屈折率および平均粒径を有するシリカ微粒子を、上記含有量において採用することが特に好ましい。このような無機微粒子は、例えばSIトル(G−240)10質量%分散スラリー(シーアイ化成製)等の市販品として入手することができ、好ましく用いることができる。
【0050】
本発明においては、上記の無機充填剤や無機微粒子において、各々の粒子の屈折率、平均粒径、含有量を同時に厳密にコントロールすることによって、透明性とニュートンリング防止性の向上効果を高くすることができ、またこれらの特性を両立させることが容易となる。特に、近年タッチパネルに要求されている透明性とニュートンリング防止性とのバランスをより優れたものとすることができる。また、本発明が規定する中心線平均表面粗さ(Ra)および十点平均表面粗さ(Rz)とすることも容易となり、ギラツキ抑制の向上効果を高くすることができる。
【0051】
[その他の添加剤]
本発明におけるハードコート層においては、前記のものに加えて、さらに本発明の目的を阻害しない範囲で、光増感剤、レベリング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、染料等を加えることができる。
【0052】
[透明樹脂基材]
本発明における透明樹脂基材は、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリスチレントリアセチルセルロース、アクリル等からなるシートあるいはフィルムを挙げることができる。中でも、透明性等の光学特性、機械特性、耐熱性、価格のバランスが良いという観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートからなるフィルムが好ましい。これら透明樹脂基材には、ハードコート層との密着性を高める等の目的で、易接着層を設ける、あるいはコロナ処理を施す等、表面処理を施すことができる。また、透明樹脂基材の厚みは特には限定されないが、光学特性とハンドリング性が良好であるという観点から、好ましくは25μm以上300μm以下、さらに好ましくは50μm以上200μm以下、特に好ましくは75μm以上188μm以下である。
【0053】
[ハードコート層の形成方法]
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層を形成するための塗液を、前記の透明樹脂基材上のハードコート層を形成したい側の表面に塗工し、加熱乾燥し、硬化することにより得ることができる。
【0054】
本発明におけるハードコート層を形成するための塗液は、溶媒に、前記バインダー樹脂、微粒子、および任意に添加してもよいその他の添加剤を添加し、混合した溶液である。好ましくは、溶媒に、前記バインダー成分、無機微粒子、および任意に添加しても良いその他の添加剤を添加し、混合した溶液である。各成分の添加にあたっては、粉体等の固体として添加してもよいし、固体を適当な溶媒を用いて溶液あるいは分単体の態様としたものを添加してもよい。本発明においては、無機充填剤を構成成分として含むバインダー成分を添加した後に無機微粒子を後添加することが好ましく、本発明が規定する透明性トータルヘイズ(Hz)、中心線平均表面粗さ(Ra)および十点平均表面粗さ(Ra)を同時に達成するための1つの好ましい手段である。塗液に用いられる溶媒は、特に限定はされないが、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、セカンダリーブタノール、t−ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸ブチル、酢酸エチルなどのエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類等を用いることができ、塗液の分散性が良好となり、ハードコート層の外観が良好となる。中でも、溶解性が良好であるという観点から、ケトン類が好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが特に好ましい。塗液の固形分濃度としては、1〜70質量%が好ましく、このような態様とすることによって、塗り斑等の欠点を低減することができる。
【0055】
ハードコート層を形成するための塗液を塗布する方法としては、それ自体公知の方法を採用できる。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法等を好ましく挙げることができる。これらの塗布方法によって、透明樹脂基材上に塗液を塗布し、塗膜を形成し、得られた塗膜を加熱乾燥する。加熱乾燥の条件としては、50〜150℃で10〜150秒間加熱することが好ましく、50〜120℃で20〜130秒間加熱することがさらに好ましく、50〜80℃で30〜120秒間加熱することが特に好ましい。加熱乾燥後、紫外線照射または電子線照射により塗膜を硬化する。紫外線照射の場合、その照射量は、好ましくは10〜2000mJ/cm、さらに好ましくは50〜1500mJ/cm、特に好ましくは100〜1000mJ/cmであり、表面硬度の向上効果をより高くすることができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中における各評価は下記の方法に従った。
【0057】
(1)トータルヘイズおよび内部ヘイズ
(1−1)ハードコートフィルムのトータルヘイズ(Hz)
ハードコートフィルムのトータルヘイズ(Hz)は、JIS K7150に準拠して、スガ試験機(株)製のヘイズメーターHCM−2Bにて測定を行った。入射光は、ハードコート層側から入射した。測定は、任意の5箇所について実施し、それらの平均値をトータルヘイズ(Hz)(単位:%)とした。
【0058】
(1−2)ハードコート層のトータルヘイズ(Hzhc)および内部ヘイズ(Hihc)
ハードコート層のトータルヘイズ(Hzhc)および内部ヘイズ(Hihc)は次の方法により求めた。まず、上記(1−1)の方法に従って透明樹脂基材のトータルヘイズ(Hzf)を求めた。次いで、かかる透明樹脂基材の片面(ハードコート層を設ける側の表面)に、バインダー成分(JSR株式会社製、商品名:Z7501)を、マイヤーバーを用いて、乾燥後の塗布厚みが約10μmとなるように塗布し、充分に乾燥、硬化させて、バインダー成分層が形成された透明樹脂基材を得た。得られたサンプルについて、上記(1−1)の方法に従ってトータルヘイズ(Hzfb)を求めた。ここで、後述のように、上記バインダー成分層のトータルヘイズは0%であるため、次式によって透明樹脂基材の表面ヘイズ(Hsf)および内部ヘイズ(Hif)を求めることができる。
(Hzf)=(Hif)+2×(Hsf)
(Hzfb)=(Hif)+(Hsf)
(Hsf)=(Hzf)−(Hzfb)
(Hif)=(Hzf)−2×(Hsf)
【0059】
次に、ハードコートフィルムのハードコート層上に、上記と同様にバインダー成分層を形成して、バインダー成分層が形成されたハードコートフィルムを得た。かかるサンプルについて、上記(1−1)の方法に従ってトータルヘイズ(Hzb)を求めた。ここで、上記(1−1)で得られたハードコートフィルムのトータルヘイズ(Hz)、上記で得られた透明樹脂基材の表面ヘイズ(Hsf)および内部ヘイズ(Hif)を用いて、次式によってハードコート層のトータルヘイズ(Hzhc)、表面ヘイズ(Hshc)、内部ヘイズ(Hihc)を求めることができる。
(Hz)=(Hshc)+(Hihc)+(Hif)+(Hsf)
(Hzb)=(Hihc)+(Hif)+(Hsf)
(Hshc)=(Hz)−(Hzb)
(Hihc)=(Hzb)−(Hif)−(Hsf)
(Hzhc)=(Hihc)+(Hshc)=(Hz)−(Hif)−(Hsf)
【0060】
さらに、ハードコートフィルムの内部ヘイズ(Hi)は、次式によって求めることができる。
(Hi)=(Hihc)+(Hif)
なお、バインダー成分を乾燥、硬化させて、厚み約10μmのバインダー成分からなる板状サンプルを作成し、上記(1−1)の方法に従ってトータルヘイズを測定したところ、0%であることを確認した。
【0061】
(2)屈折率
(2−1)バインダー成分、バインダー樹脂の屈折率
バインダー成分、およびバインダー樹脂の屈折率は、以下の方法により測定した。
まず、樹脂サンプルをシャーレにサンプリングし、80℃で24時間放置して、十分に乾燥させて、厚さ約1mmの板状サンプルを作成した。得られた板状サンプルについて、ナトリウムD線(589nm)を光源としたアッベ屈折計を用いて、温度23℃、相対湿度65%RHの環境下にて屈折率を測定した。測定は、任意の5箇所について実施し、それらの平均値を樹脂サンプルの屈折率とした。
【0062】
(2−2)無機微粒子、無機充填剤の屈折率
無機微粒子、および無機充填剤の屈折率は、以下の方法により測定した。
まず、粒子サンプルを、80℃で24時間放置して乾燥させた後、屈折率の異なる種々の液(25℃)に懸濁させた。次いで、懸濁液が最も透明に見える液の屈折率を、ナトリウムD線(589nm)を光源としたアッベ屈折率計を用いて、温度23℃、相対湿度65%RHの環境下にて測定し、得られた値を粒子サンプルの屈折率とした。
【0063】
(3)平均粒径
試料台上に、粉体を個々の粒子ができるだけ重ならないようにうに散在させ、金スパッター装置によりこの表面に金薄膜蒸着層を厚み200〜300Åで形成し、走査型電子顕微鏡を用いて1万〜3万倍で観察し、日本レギュレーター(株)製ルーゼックス500にて、少なくとも1000個の粒子についてその面積相当粒径を求め、それらの平均値を平均粒径(単位:μmもしくはnm)とした。
【0064】
(4)ハードコート層の膜厚み
サンプルフィルムを鋭利な剃刀にてカットし、得られた断面を光学顕微鏡によって観察し、ハードコート層の表面において、無機粒子による突起が形成されていない部分の厚みを測定した。測定は、任意の10箇所について実施し、それらの平均値をハードコート層の膜厚み(単位;μm)とした。
【0065】
(5)中心線平均表面粗さ(Ra)、十点平均表面粗さ、突起高さ分布の半値幅
非接触光学粗さ計(ZYGO社製:商品名NewView5022)を使用し、倍率25倍にて283μm×213μmの領域についてスキャンを実施し、表面プロファイルを得た。得られた表面プロファイルから中心線平均表面粗さ(Ra)および十点平均表面粗さ(Rz)を算出した、また、Histogram Plotにより、横軸に突起高さ(単位:nm)、縦軸に頻度(単位:Counts)をプロットした突起分布を得た。得られた突起分布から、そのピーク位置における分布の高さの、半分の高さの位置における分布の幅を読み取り、突起高さ分布の半値幅(単位:nm)とした。測定は、ハードコート層の表面において、任意の5箇所について実施し、それらの平均値を測定値とした。
【0066】
(6)鉛筆硬度
JIS K5400に準拠し実施した。
評価は、ハードコートフィルムのハードコート層表面において実施した。
【0067】
(7)ギラツキ評価
画素ピッチ0.2mmの黄緑色を表示させたLCD上に、サンプルフィルムの片面(反ハードコート面)がディスプレイに接するように2載せ、ギラツキの発生状況について、以下の基準に基づいて評価した。
○:ギラツキがほとんど見えない
×:ギラツキが強く見える
【0068】
(8)ニュートンリング防止性評価
サンプルフィルムのハードコート層側を、裏面を黒色に着色したガラス板に指で押し付けて発生するニュートンリングを、ハードコートフィルムを通して観察した。ニュートンリングの発生状況について、以下の基準に基づいて判断を実施した。
○:ニュートンリングがほとんど見えない
×:ニュートンリングが強く見える
【0069】
[実施例1]
<易接着層を形成するための塗液の調製>
ポリエステル:酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸65モル%/イソフタル酸30モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%と、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%とからなるポリエステル(Tg=80℃、数平均分子量13000)を用いた。
なお、かかるポリエステルは、特開平6−116487号公報の実施例1に記載の方法に準じて常法により得ることができる。得られたポリエステルは、溶液としてテトラヒドロフランを用い、常法により、水分散体(固形分濃度15質量%)として用いた。
アクリル:メチルメタクリレート30モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート10モル%/アクリルアミド30モル%からなるアクリル(Tg=50℃)を用いた。
なお、かかるアクリルは、特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて常法により得ることができる。得られたアクリルは、常法により、水分散体(固形分濃度35質量%)として用いた。
添加剤:シリカフィラー(平均粒径100nm)(日産化学株式会社製、商品名:スノーテックスZL)を用いた。
濡れ剤:ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製、商品名:ナロアクティーN−70)を用いた。
上記で得られた各原料を、固形分比率で、ポリエステル60質量%、アクリル30質量%、添加剤5質量%、濡れ剤5質量%となるように配合し、十分に攪拌し、さらにイオン交換水を用いて固形分濃度8質量%となるように希釈し、易接着層を形成するための塗液を作成した。
【0070】
<透明樹脂基材および易接着層の形成>
溶融ポリエチレンテレフタレート(〔η〕=0.62dl/g(25℃、オルトクロロフェノール)、Tg=78℃)をダイより押し出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとした。次いで、かかる未延伸フィルムを縦方向に3.4倍延伸し、縦一軸延伸フィルムを得た。その後、得られた縦一軸延伸フィルムの両面に、上記で得られた易接着層を形成するための塗液を、ロールコーターで均一に塗布した。次いで、横方向に125℃で3.6倍延伸し、220℃で幅方向に3%収縮させながら熱固定を行い、易接着層が形成された、厚さ188μmの透明樹脂基材を得た。なお、易接着層の厚さは0.04μmとした。また、易接着層が形成された透明樹脂基材のトータルヘイズ(Hzf)は1.3%、表面ヘイズ(Hsf)は0.2%、内部ヘイズ(Hif)は0.9%であった。
【0071】
<ハードコート層を形成するための塗液>
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを主成分とするバインダー樹脂(屈折率1.53)と、無機充填剤としてのシリカ(平均粒径20nm、屈折率1.47、シランカップリング剤により表面処理されているもの)とを構成成分として含む塗剤(JSR株式会社製、商品名:Z7501、乾燥後の屈折率1.51、バインダー樹脂と無機充填剤の固形分質量比率60:40)をバインダー成分として準備し、次いでそこに無機微粒子として平均粒径20nm、屈折率1.45のシリカ微粒子の分散体(シーアイ化成製、商品名:SIトルG−240)を、バインダー成分の固形分100質量部に対してシリカ微粒子の固形分が3.0質量部となるように後添加した。これをメチルエチルケトン(MEK)を用いて固形分濃度37質量%となるように希釈し、ハードコート層を形成するための塗液を得た。
【0072】
<ハードコート層の形成>
上記で得られたハードコート層を形成するための塗液を、ロールコーターを用いて、易接着層が形成された透明樹脂基材の片側の表面に、乾燥・硬化後の膜厚みが5.5μmとなるように均一に塗布し、70℃で2分間の条件で乾燥した。次いで、紫外線照射装置(FusionUV Systems Japan(株)製:商品名フュージョンHバルブ)を用いて、光量200mJ/cmの条件で紫外線を照射しハードコートフィルムを得た。得られたハードコート層およびハードコートフィルムの特性を表1および表2に示す。
【0073】
[実施例2]
ハードコート層の膜厚みを4.0μmとする以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。得られたハードコート層およびハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0074】
[比較例1]
実施例1における無機微粒子の代わりに、平均粒径3.0μm、屈折率1.43のシリコーン樹脂粒子(モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン合同会社製、商品名:トスパール130)を用いる以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。得られたハードコート層およびハードコートフィルムの特性を表1および表2に示す。
【0075】
[比較例2]
実施例1における無機微粒子の代わりに、平均粒径3.0μm、屈折率1.45のシリカ粒子(富士シリシア製、商品名:SYLOPHOBIC200)を用い、ハードコート層の膜厚みを5.0μmとする以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。得られたハードコート層およびハードコートフィルムの特性を表1および表2に示す。
【0076】
[比較例3]
実施例1における無機微粒子の代わりに、平均粒径80nm、屈折率1.49のアクリル微粒子を用いる以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。得られたハードコート層、およびハードコートフィルムの特性を表1および表2に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
表1および表2から分かるように、実施例1、2で得られたハードコートフィルムは、低へイズかつ適度な表面粗さを実現し、その結果、ギラツキが少なく、優れた透明性およびニュートンリング防止性を同時に達成できている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂基材の少なくとも片面に、バインダー樹脂と、平均粒径1nm以上100nm以下の微粒子とを構成成分として含み、平均粒径1μm以上の大粒子を実質的に含まないハードコート層を有するハードコートフィルムであって、トータルヘイズ(Hz)が0.1%以上4.0%以下、ハードコート層表面における中心線平均表面粗さ(Ra)が10nm以上300nm以下、十点平均表面粗さ(Rz)が300nm以上1000nm以下であるハードコートフィルム。
【請求項2】
ハードコート層の内部ヘイズ(Hihc)が0.3%以下である請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
ハードコート層が、バインダー樹脂と、バインダー成分100質量部中に10質量部以上70質量部以下の無機充填剤とを構成成分として含むバインダー成分、およびバインダー成分100質量部に対して1質量部以上10質量部以下の無機微粒子を後添加してなる塗液を硬化してなるハードコート層である請求項1または2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
ハードコート層の表面における表面突起高さ分布の半値幅が100nm以上500nm以下の範囲にある請求項1〜3のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。

【公開番号】特開2011−202104(P2011−202104A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72827(P2010−72827)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】